249 :
◆JwKmRx0RHU :
>>232 堺はバスのバンドルを握りながら、海老名サービスエリアの建物に入ってきた最後のゾンビを思い出していた。
あれは警官ゾンビとの戦いで取り逃がした最後の1体。
ゾンビは着替えたりしないから、返り血がドス黒く変色した白衣のままで、再度の襲撃に現れたのだ。
白衣を着ていることから、生前は医療関係や研究者である可能性が高い。
そして、それが群れを操っていたとなると、生前の知能がリーダーの役目を決定付ける要素なのだろうか。
より知能の高い固体が指揮した方が、群れでの狩が成功する確率は高まる。
これが猿であれば、最も戦闘力の高い固体がリーダーになるところだが、
元が人間であるゾンビの場合は、群れ行動に効率が重視されても不自然ではない。
何故なら動物と違ってゾンビに痛覚は無く、しかも既に死亡しているのだから恐怖というものが存在しないだろう。
戦いから逃げたとしてもそれは恐怖からではなく、生存していた頃の記憶と共に自己保存の本能が働いたにすぎない。
そもそも、恐怖を感じることのできる思考能力があるなら、武器を持っている相手に素手のままで挑んだりするとは思えない。
だから、肉体的な強さや戦闘力が意味を持たなくなってしまう。
有り得るかは分からないが、ゾンビ同士が戦えば、一方が相手を圧倒する展開にはならないだろう。
感情が無く、痛覚も無い物体が争い合うならば、双方が動けなくなるまで互いを破壊し続けるに違いない。
しかし、現実には今まで1度たりとてゾンビ同士の争いに出くわしたことはなく、それがゾンビ間の暗黙の了解であれば、
争いによる決着以外の要素でリーダーが決められるというのも、逆に合理的すぎて人間臭くすらある。
あの白衣ゾンビが群れを率い、道路パトロールカーをも引っ繰り返させたと見るべきだ。
怪力で不死の存在が連帯行動するなど、考えたくも無い事態だが・・・。
250 :
◆JwKmRx0RHU :2012/04/15(日) 14:07:01.87 ID:ip3ws+GN0
>>249 工藤は、平泉先生が戦った群れを率いていた個体と、先ほどの脱出戦で最後に入場して来た個体が同じだと気付いていた。
そして、堺が使っていた自動車を引っ繰り返させたのも、あの白衣を着ていたゾンビだろうと推測している。
他の男子は、車をどかさねばならなくなった原因などどこ吹く風で騒いでいるが、工藤はとてもそんな気になれなかった。
ほどなくバスは、海老名ジャンクションを通過して厚木インターチェンジに差し掛かり、そこで足止めを食らう破目に。
料金所から東名高速の上りに合流するポイントで接触事故が発生し、後続車輌が反対車線、つまり工藤らの車線で横転。
そこへ下り(厚木、平塚、小田原・方面)の車輌が次々と突っ込み、この惨事となったらしい。
火災で路面が黒くすすけており、手前で停まれたドライバーも火に巻き込まいと放棄したのか、鮨詰めのまま放置されている。
工藤は珍しいナンバープレートの車を見つけ、ドアノブに手を掛けた。
最低限の手荷物だけ持って逃げたのか、車内には食べ残しや子供の玩具が残っている。
後部のトランクを開けて、驚きを隠すのに一苦労した。
そこには、米軍で使用するアサルトライフルや弾薬など、様々な兵器が収まっていのだから。
兵器に詳しくない工藤でも、これらがどれほどの破壊力を持っているかは容易に想像できる。
「(この量を独り占めできるわけもないが、かと言って無闇にみんなに渡して良いものか・・・。
今の無法状態で、銃を手にしたクラスメイトがどう変貌するのかも分からないし)」
「相模原Y」ナンバー。 在日米軍の登録車輌だと今になって気付いた。
周りに気取られないようにトランクやドアを施錠して車のキーをポケットにしまい、奥の事故現場を調べている堺らのもとに向かう。
251 :
◆JwKmRx0RHU :2012/04/15(日) 14:11:18.80 ID:ip3ws+GN0
>>250 「無理・・・ですよね」 原が意気消沈気味に呟く。
「仮に俺たちがウィンチなどの牽引装置を持っていたとしても、これらの車輌をどけるのは無理です」 堺も認める。
そこに工藤が来て、堺を原から離す。
「な、なに」 全く危険性を感じられない原にすら、聞かせたくない内容だろうことだけは間違いない。
原のもとに堺が戻り、放置車から得られる物資の調達を手伝って上げて欲しいと頼んでから、2人で足早に去って行く。
トランクを開け、青空を背に工藤と堺が覗き込む。
ライフル型の銃が12丁。 散弾銃が3丁。 拳銃が8丁。
それらの弾薬と手榴弾や携帯式無反動砲(AT-4)。対人地雷までもが、所狭しと収まっているではないか。
「(この車自体は軍用ではない一般車だから、家族と共に基地を脱出して来たのだろう)」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%B8%E6%A8%A1%E5%8E%9F%E4%BD%8F%E5%AE%85%E5%9C%B0%E5%8C%BA 「これを頂かない手は無いですよね。 ただ、誰に持たせるかは慎重に決めた方がいいと思ったので・・・」
堺は暫く考え込んでいたが、「うん。 良い判断だ。 君は凄いな。 ご両親は何をやってる方なの」
「・・・。 父は弁護士で、母は専業主婦です」 最低限の返事をして口を閉ざす。
「ん・・・(何だろう、話すのが嫌そうだな)。 これ、バスに入り切らないんじゃないか? もう一台べつに車が必要だね」
「あの・・・、皆に知らせずに積み込みたいんですが」
「え・・・? (確かに、知らせるのは何時でもできるか。) 分かった、そうしよう。 毛布でくるんだり袋に小分けにしてくれ」
毛利と三河が近付いて来たので、慌ててトランクを閉じる。
252 :
◆JwKmRx0RHU :2012/04/15(日) 14:27:28.80 ID:ip3ws+GN0
>>249-251 火災で路面が黒くすすけており、手前で停まれたドライバーも火に巻き込まいと放棄したのか、鮨詰めのまま放置されている。
↓
火災で路面が黒くすすけており、手前で停まれたドライバーも火に巻き込まれまいとしたのか、鮨詰めで車が放置されている。
後部のトランクを開けて、驚きを隠すのに一苦労した。
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後部のトランクを開けて、驚きを隠すのが大変だった。
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