215 :
◆JwKmRx0RHU :
>>208 佐藤の背後で毛利の声がした。
「明美、早く立ってッ みんな行っちゃうよぉッ 明美ッ」
「どうした!?」
「あ、佐藤くん。 明美が脚に力が入らないって」
毛利と一番の仲良しの三河がへたれ込んで動けずにいる。
「俺が負ぶってやる」 佐藤は三河の前に背を向けてしゃがみ込んだ。
すかさず毛利が三河の上半身を抱き起こして佐藤に背負わせる。
「こいつら連れて先に行くぞ」 工藤の返事を待たず出て行ってしまった。
建物で男子が囮になっている間は、ゾンビの大群が戻ってくることはないだろう。
堺は一番先頭でペースを抑えながら走り、囚人、原、川上、生徒たちが続く。
ゾンビ3体は、まだ彼らに気付いてない。
建物の正面側に出る手前で、隊列を停め、堺が一人でゾンビに近づく。
振り向いたゾンビの視界にフォークが飛び込んで来た次の瞬間、景色が傾き、見下ろす人間が踏み付ける。
ゾンビの顔面からフォークを抜き、手招きして隊列を動かす。
足早に2体目のゾンビに駆け寄ると、後ろから生徒の叫び声が上がった。
駐車場の放置車の間から、見落としたゾンビが現れたのだ。
216 :
◆JwKmRx0RHU :2012/04/10(火) 23:01:09.52 ID:Th/nyWGz0
>>215 「いゃぁッ」 女生徒たちが逃げだし、隊列が一気に崩れる。
「くそぉッ」 男子がデッキブラシの柄で突き込むと、柄はゾンビの身体に深く突き刺さった。
と言うよりも、ズヴズヴと飲み込まれたと表現すべきかもしれない。
刺さった柄をものともせずゾンビは襲い掛かって来るので、デッキブラシを諦めて飛び退く。
堺は、2体目のゾンビを仕留め損ない、フォークをゾンビに掴まれて振り回されそうになっている。
剣鉈を抜いて、フォークを掴んでいる指に振り下ろす。
ゾンビの指がバラバラっと足元に転がり、フォークを取り戻せた。
デッキブラシを失った男子は、横の女子が持ってる椅子を奪うと向きを逆に持ち変え、
椅子の脚を握りながら背もたれをゾンビの顔面に叩き込む。
ゾンビはよろめいたが倒れず、バランスを持ち直すと何事も無かったかのように距離を詰める。
デッキブラシの柄で突き刺すのも、椅子を顔面に叩きつけるのも、痛覚が無いゾンビに有効な攻撃ではなかった。
「えぇぃ!」 別の男子がバールの釘抜きをゾンビの後頭部に突立てる。
が、止まらない。
刺さったバールごと引きずられそうだ。
217 :
◆JwKmRx0RHU :2012/04/10(火) 23:04:24.88 ID:Th/nyWGz0
>>216 堺は剣鉈を手離し、フォークの2度刺しで立ったままのゾンビを仕留めた。
囚人がゾンビの背中の衣服を掴み、バールの生徒と力を合わせて一気に引き倒す。
どこからか出した包丁を目から脳に掛けて突き上げると、ゾンビはパタリと動きを止める。
「(あんな包丁など渡してない。 一体どこに隠してた・・・!)」 堺は囚人への危機感を募らせる。
しかし今は残り1体を倒す事が先決だと気持ちを切り替え、鉈を収めるとバスの方へと駆け出す。
「あ、ありがとう」 バールの男子が囚人に礼を言う。
「いえいえ、お互いに助け合いですよ。 さぁ急ぎましょう」 とても罪人とは思えない、爽やかな笑顔だ。
夜が明けようとしている。
堺は、猫のように不気味に光っているゾンビの目を見据え、一気に突き込んで仕留めた。
どうやらコツが掴めてきた気がする。
農具のピッチフォークを満足げに見詰める彼の横を駆け、原がバスの扉を開けて乗り込んだ。
続いた堺は、鍵の位置を教えて貰いエンジンを始動する。
218 :
◆JwKmRx0RHU :2012/04/10(火) 23:12:20.72 ID:Th/nyWGz0
>>217 生徒たちが武器を捨てて乗り込んで来るが、危惧した通りもたつき、
そんな中を堺が大ききクラクションを鳴らしたものだから、女子がみんなして飛び上がった。
モップで、バリケードに阻まれているゾンビどもを牽制していた工藤たちは、クラクションを聞いて撤退を始める。
工藤が運転席の真後ろに座り、原がスイッチを堺に教えながらドアを閉め、
バックしながら着実に海老名サービスエリアから遠ざかるバスのバックモニターに、異様な物体が映り込んだ。