>>906 考えていたのは数秒だが、包囲しようとするゾンビたちが10mの距離まで迫っていた。
もう、迷っている時間は無い。
先手を取って将棋倒しにしてやる。
ピッチフォークを握る手に力を込めた。
その時、記憶が脳裏に。
まだゾンビ災害が起こっていない平和な頃、
妻子とリバーシを遊んでおり、娘に角を取られて大敗。
「パパったら慌てすぎ(笑)」
娘は勝ったのが嬉しくて、繰り返し跳び上がっている。
あと一歩で掴み掛かれる距離のゾンビに踵を返し、
俺は置いてある道路パトロールカーの方へと、
転げそうになりながら無我夢中で走り出した。
30mほど走ってから振り向くと、
4体のゾンビは全く追って来ていない。
それどころか、俺と建物の間に立ち塞がるように並びながら
こっちを虚ろに見ている。
奴らは、俺が建物に入ろうとしていたのを理解しているというのか・・・。
俺とゾンビの群れは30mの距離で対峙し、睨み合う構図に。