■□■幽霊は本当にいるのか170(いないのか)■□■
河原の中に流れあり 娑婆にて嘆く父母の
一念届きて影映れば のう懐かしの父母や
飢えを救いてたび給えと 乳房を慕いて這い寄れば
影はたちまち消え失せて 水は炎と燃え上がり
その身を焦がして倒れつつ 絶え入ることは数知れず
峰の嵐が聞こえれば 父かと思うて馳せ上がり
辺りを見れども父は来ず 谷の流れの音すれば
母が呼ぶかと喜びて こけつまろびつ馳せ下り
辺りを見れども母は無く
走り回りし甲斐もなく 西や東に駆け回り
石や木の根につまづきて 手足を血潮に染めながら
幼子哀れな声をあげ もう父上はおわさぬか
のう懐かしや母上と この世の親を冥土より
慕い焦がれる不憫さよ