874の続き
ひょんなことから安価で船が手にはいったWさんだったが、その船での初漁の
その日に事故で亡くなったそうだ。
月夜でかつ海は凪ぎ、霧も出ていなかったのに、仲間の船がWさんの船の横っ腹に
ぶつかったからだという。
たまたま船の外(甲板?)に出ていたから、衝突の衝撃で海に投げ出されたらしい。
結局数日後に遺体で発見されたのだが、その操作にはKさんたちも駆り出されたそうだ。
まだ漁場に着いていないのにどうして外に出ていたのか、皆首をかしげたらしい。
誰ともなく「Aさんの『念』というか、『生き霊』が船に乗っていたんだろうねぇ」という話が
話していたそうだ。
商売道具、それも新造したばかりの船を一度も使わないままで他人に譲らなければならなかった
無念さというのはいかばかりだったか。
人の『想い』というのは恐ろしいものだとつくづく思った。