【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ19【友人・知人】

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1本当にあった怖い名無し
シリーズ物、霊感の強い人にまつわる話を集めるスレです。
考察や、好きな話について語り合いましょう。(荒れる原因なのでなるべく「乙」だけですましましょう)

・投下歓迎。実話、創作不問。新作も歓迎
・作品投稿者はトリップ(名前欄に#任意の文字列)推奨
・話を投下する際はなるべくまとめてから投下しましょうね
・他スレへの迷惑が掛かるような過度の勧誘やはご遠慮下さい
・投稿作品への批判は荒らし認定、sage進行、荒らし煽り、スルーよろしくです
・『このスレと住人を許さない』系の荒らしがしつこく荒らしています 徹底無視で

・「荒らしに反応する奴も荒らし認定されるよ」のネットルールを忘れずに。

洒落コワ投稿掲示板(煽りは嫌、洒落コワまとめに載りたい!と言う人はこちらへ)
http://jbbs.livedoor.jp/study/9405/

前スレ
【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ18【友人・知人】
http://toki.2ch.net/test/read.cgi/occult/1307855096/
2本当にあった怖い名無し:2011/10/08(土) 13:22:02.99 ID:pwM9hT0iO
もうこのスレも不要だね。
ウニ氏はpixiv移行だし
3本当にあった怖い名無し:2011/10/08(土) 16:43:54.34 ID:7VOUccIb0
今後、単発シリーズと呼ばれる友人知人物は全てこのスレに誘導してください
4本当にあった怖い名無し:2011/10/08(土) 22:37:52.01 ID:dPtCKmiz0
>>3
単発ものはスレ違い
誘導は禁止

しねよ
5本当にあった怖い名無し:2011/10/09(日) 02:59:06.73 ID:y3VoBqIT0
>>4
[962]本当にあった怖い名無し [sage] 2011/10/05(水) 20:41:16.78 ID:uaXrv43f0
AAS
単発シリーズもおk
6本当にあった怖い名無し:2011/10/09(日) 10:33:35.11 ID:i5fGEHM4O
やたら攻撃的な自治厨も相変わらずだな。報酬でも出るんか?
7本当にあった怖い名無し:2011/10/09(日) 12:08:23.23 ID:oPegpVTZ0
>>5
そいつ何様なんだよ?そいつの一言で何でも決められるのかこのスレは?
今までこのスレで単発ものが許されたことはねーよ
むしろウザがられたよ

つーか「シリーズ物総合」とスレタイに入ってるのに単発おkとか馬鹿じゃねーのか
該当するスレいくらでもあるだろ
単発にシリーズつければシリーズ物か?いいかげんにしろよ
8本当にあった怖い名無し:2011/10/09(日) 13:37:10.71 ID:AWvg3x/n0
文だけで誰が誰か分かるようになった
9本当にあった怖い名無し:2011/10/10(月) 20:39:01.84 ID:325S7E0K0
単発投稿は文頭に単発シリーズを付ければいいの
10本当にあった怖い名無し:2011/10/13(木) 19:11:10.91 ID:HWDZ1zYpO
文才の問題
単発でも叩かれずに歓迎された奴もいれば人格まで叩かれる奴もいた。
しかしそれは単発に限った話じゃないし、文才が無い人はシリーズだろうと叩かれる。
単発かどうかはあまり問題なく、読者が続きを読みたくなるかどうかが問題。
読者に望まれない物を書き続けるのはオナニーであると先人が証明済み。
11本当にあった怖い名無し:2011/10/13(木) 19:23:03.13 ID:eV2VPxmp0
好きだった人が帰って来ない…他のスレで書いてるのは見たが…
12本当にあった怖い名無し:2011/10/13(木) 19:55:31.90 ID:m64io/Do0
前スレうめようぜ!
13本当にあった怖い名無し:2011/10/14(金) 08:34:48.31 ID:Ay5h1U130
ここ以外にシリーズ物読めるスレってあんの?
14本当にあった怖い名無し:2011/10/14(金) 12:51:46.98 ID:EHkDt1gi0
どこでも絶対ダメな理由はないよ、儲引き連れてスレ占有したりすれば当然嫌われるけど。
寡作な人(と言うか実話なんだろう)で特定のスレにぽつりぽつり書いてて、
「前にあれ書いた人だな」って判る人はいるね。
15本当にあった怖い名無し:2011/10/15(土) 00:31:58.41 ID:Z6/tjf6J0
単発シリーズってなんだ?
何のために専用スレがいくつもあると思ってるんだ?最低限のルールも守れないなら来るなよ

ま、認めようが認めまいが誰も投下しねーけどなw
16本当にあった怖い名無し:2011/10/15(土) 00:32:43.06 ID:Z6/tjf6J0
>どこでも絶対ダメな理由はないよ、

本気で言ってるのかお前?思い切りアウトだよバカタレ
17本当にあった怖い名無し:2011/10/15(土) 00:34:00.03 ID:Z6/tjf6J0
>>13
は?洒落怖に山怖にいくらでもあるだろ
無知は黙ってろよ
18本当にあった怖い名無し:2011/10/15(土) 10:16:45.26 ID:F9/g2VtT0
山怖の人はいいね
あれはあのスレにあってこそだし
19本当にあった怖い名無し:2011/10/16(日) 07:56:49.09 ID:rM02Q1SH0
隆ラブ読みたいよ




























って書けばノコノコ書くかな
20本当にあった怖い名無し:2011/10/16(日) 09:07:01.89 ID:DH7EHm6y0
>>19
自演乙
毎回の自演、ご苦労なことで
21本当にあった怖い名無し:2011/10/16(日) 21:47:13.68 ID:RnuiYBK60
単発シリーズカモン
22本当にあった怖い名無し:2011/10/17(月) 19:00:51.54 ID:efPwu9K30
>>21
死ねよ
わざと煽って荒れるのが目的か?
23本当にあった怖い名無し:2011/10/17(月) 19:38:33.28 ID:XOxi2Iaw0
そりゃおまえだろ
24本当にあった怖い名無し:2011/10/18(火) 10:19:01.94 ID:nMgFWCEU0
隆ラブいちいちNG登録すんの面倒臭い。
何とかならんか。
25本当にあった怖い名無し:2011/10/18(火) 16:01:44.67 ID:4CuIrhFfO
ごめん意味が分からない
荒らし=隆ラブっていう被害妄想?
26本当にあった怖い名無し:2011/10/18(火) 18:35:53.44 ID:a2ebAXB30
>>25
隆ラブ=メリーさん荒らし
隆ラブ=隆ラブ作品の後に必ず書き込みする胡散臭いファン

いまのところ確認されているのは、この二件。
27本当にあった怖い名無し:2011/10/18(火) 18:57:44.48 ID:X4NmACV+0
>>24=隆ラブ
28本当にあった怖い名無し:2011/10/18(火) 19:07:06.47 ID:94/hzEOv0
見事に釣られまくってるなあ
確認されてるって言うけど、根拠は?
29本当にあった怖い名無し:2011/10/18(火) 19:15:39.74 ID:EfRJJg7w0
単発シリーズおkか
30本当にあった怖い名無し:2011/10/19(水) 00:00:50.07 ID:a2ebAXB30
>>28
メリーさんはID一致
隆ラブの名前でメリーさん投稿も

胡散臭いファンはお前
31本当にあった怖い名無し:2011/10/19(水) 00:21:02.77 ID:fXVsKg9YO
>>30
ごめんよ。胡散臭いファンは俺なんだ
32本当にあった怖い名無し:2011/10/19(水) 04:27:07.97 ID:R8jOzBaR0
いや、俺だ
33本当にあった怖い名無し:2011/10/19(水) 07:05:02.63 ID:zNlIweKu0
>>27
違う。別に批判したい訳じゃないけど。マンセーはしない。
ただ読みたくないだけ。
34本当にあった怖い名無し:2011/10/19(水) 14:33:48.67 ID:A2O9hnMu0
同じスレ内でも住み分けようねってことでいいの?
35本当にあった怖い名無し:2011/10/19(水) 20:26:38.35 ID:y/QXxD0h0
>>30
>メリーさんはID一致

一致って何が?隆ラブとメリーが一致したってこと?そんなの見たこと無いんだが

>隆ラブの名前でメリーさん投稿も

メリーシリーズの冒頭だけを引用しただけの話の事かもしかして?
36本当にあった怖い名無し:2011/10/19(水) 20:28:26.90 ID:y/QXxD0h0
>>34
いいわけ無いだろ
なんで専門別にスレが立ってるのか分からないの?
単発ならいくらでも該当スレがあるって何回言われても理解出来ない低能が
37本当にあった怖い名無し:2011/10/19(水) 21:02:49.62 ID:aC1+snbC0
ネタある人なら単発でもいいと思う
38本当にあった怖い名無し:2011/10/19(水) 23:57:30.38 ID:lNayXX980
>>35
半年ロムれks
39本当にあった怖い名無し:2011/10/21(金) 20:54:18.13 ID:jWFetF/u0
>>37
頭悪いな此処の住人
”いいと思う”じゃねーんだよ
ルールも守れないカスが
40本当にあった怖い名無し:2011/10/22(土) 10:20:03.42 ID:bEhpG1cg0
必死だな

新ネタ待機(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
41本当にあった怖い名無し:2011/10/23(日) 01:49:48.00 ID:bHQI9v4l0
ネタある人なら単発でもいい(断定)
なぜなら俺がルールだから。
42本当にあった怖い名無し:2011/10/23(日) 20:32:46.85 ID:J8/0SSoKO
ネタがある隆ラブなら単発でもいい(断定)
なぜなら俺がルールだから
43本当にあった怖い名無し:2011/10/23(日) 21:34:48.05 ID:6lB+nxMN0
>>42
隆ラブはシリーズ物だろ
俺がルールじゃなくて、そう言うスレだから
44本当にあった怖い名無し:2011/10/23(日) 22:59:33.02 ID:QOsB8WxM0
いやあ隆は勘弁
45本当にあった怖い名無し:2011/10/24(月) 02:13:18.34 ID:Z49ndm6O0
シリーズでも単発でも不可思議な事実を物語り風に語ればいいわけ?
46本当にあった怖い名無し:2011/10/24(月) 02:27:58.65 ID:FPUYS88Z0
病院に入った方がいい人博覧会になってきたなw
47本当にあった怖い名無し:2011/10/24(月) 19:54:36.40 ID:tkvOyyXt0
新ネタカモン
48本当にあった怖い名無し:2011/10/24(月) 19:55:22.54 ID:tkvOyyXt0
単発でもいいし
49本当にあった怖い名無し:2011/10/24(月) 19:57:34.97 ID:tkvOyyXt0
師匠シリーズカモン
50本当にあった怖い名無し:2011/10/24(月) 19:59:36.96 ID:tkvOyyXt0
ウニさんお願いします
51本当にあった怖い名無し:2011/10/24(月) 20:30:50.38 ID:UA8XfSDB0
>>45
>>48
頭おかしいんじゃねーの?
ここはシリーズ物限定スレ。なんで単発ものを執拗に容認させようとしてんだよ
他のスレ行けばいくらでも単発モノの体験談転がってるだろ
なんで他のスレに求めねーの?マジで理解不能だわ
しかも全く投稿無いのに


52本当にあった怖い名無し:2011/10/24(月) 20:59:48.12 ID:tkvOyyXt0
>>51
病んでる?
53本当にあった怖い名無し:2011/10/24(月) 21:06:55.67 ID:C/SGzC64O
なに必死になってんだコイツ?
ほんとゴミしかいねーなこのスレ
54本当にあった怖い名無し:2011/10/24(月) 22:53:30.73 ID:XkOZ7aPn0
【霊感持ちの】【友人・知人】
って書いてあるしこだわるのは阿呆
55本当にあった怖い名無し:2011/10/24(月) 23:59:16.80 ID:F2DKjD2BO
煽って人を集めようとしてるんだろ
56本当にあった怖い名無し:2011/10/25(火) 03:07:00.52 ID:SEPvje9g0
ちがうよ9行目のひとだよ
57本当にあった怖い名無し:2011/10/25(火) 19:03:32.74 ID:GWsXn5YJ0
>>53
しつこく単発ものをシリーズと曲解して認めさせようとしてる馬鹿がいるからじゃん
流れも読めないのか
58本当にあった怖い名無し:2011/10/25(火) 19:07:46.74 ID:GWsXn5YJ0
3 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/10/08(土) 16:43:54.34 ID:7VOUccIb0
今後、単発シリーズと呼ばれる友人知人物は全てこのスレに誘導してください

[962]本当にあった怖い名無し [sage] 2011/10/05(水) 20:41:16.78 ID:uaXrv43f0
AAS
単発シリーズもおk

9 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/10/10(月) 20:39:01.84 ID:325S7E0K0
単発投稿は文頭に単発シリーズを付ければいいの

21 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/10/16(日) 21:47:13.68 ID:RnuiYBK60
単発シリーズカモン

34 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/10/19(水) 14:33:48.67 ID:A2O9hnMu0
同じスレ内でも住み分けようねってことでいいの?

37 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/10/19(水) 21:02:49.62 ID:aC1+snbC0
ネタある人なら単発でもいいと思う

45 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/10/24(月) 02:13:18.34 ID:Z49ndm6O0
シリーズでも単発でも不可思議な事実を物語り風に語ればいいわけ?

48 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/10/24(月) 19:55:22.54 ID:tkvOyyXt0 [2/5]
単発でもいいし

どう見ても同一人物


59本当にあった怖い名無し:2011/10/25(火) 19:08:41.34 ID:GWsXn5YJ0
ちなみにこいつだろ↓

47 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/10/24(月) 19:54:36.40 ID:tkvOyyXt0 [1/5]
新ネタカモン

48 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/10/24(月) 19:55:22.54 ID:tkvOyyXt0 [2/5]
単発でもいいし

49 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/10/24(月) 19:57:34.97 ID:tkvOyyXt0 [3/5]
師匠シリーズカモン

50 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/10/24(月) 19:59:36.96 ID:tkvOyyXt0 [4/5]
ウニさんお願いします

52 返信:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/10/24(月) 20:59:48.12 ID:tkvOyyXt0 [5/5]
>>51
病んでる?
60本当にあった怖い名無し:2011/10/25(火) 19:41:56.12 ID:+/aoWudn0
お前もうぜーよ
61本当にあった怖い名無し:2011/10/25(火) 20:00:28.98 ID:69jM61HU0
>>58
>>3は俺だが他は知らんぞ
62本当にあった怖い名無し:2011/10/26(水) 00:45:04.12 ID:uHqa1odM0
とにかくアゲろ!
63本当にあった怖い名無し:2011/10/26(水) 01:34:05.61 ID:ROVYSpRj0
>>59
別にそうでもいいけど、お前はすごく目立つな
64本当にあった怖い名無し:2011/10/26(水) 17:10:04.64 ID:vSRMgO7R0
投稿していい雰囲気じゃないな
65本当にあった怖い名無し:2011/10/26(水) 18:16:16.89 ID:FFxldVN+0
なる様になるのに59がウザイ
66本当にあった怖い名無し:2011/10/27(木) 21:22:48.19 ID:jxxQdOEn0
新スレになって何週間なんだよ?一個も話が投稿されてないとか終わりすぎ
なんで保守してんのお前ら?
67本当にあった怖い名無し:2011/10/28(金) 06:30:04.03 ID:lJrRxvIq0
モチロンソウヨ
68本当にあった怖い名無し:2011/10/28(金) 12:49:41.17 ID:rFsN5fYb0
終わりと思っちゃいないからさ
終わってると思うなら来なきゃいいんじゃね?
69本当にあった怖い名無し:2011/10/28(金) 12:51:52.29 ID:xLuXSoFeO
空気を読まずに投下する隆ラブに期待だな
70sage:2011/10/28(金) 18:42:51.33 ID:J8nGNShT0
このクソスレに執着するゴミクズどもに対抗して新スレを立てようと思うんだ。
みんなでスレタイを考えてくれよ。
但しウニは来ちゃダメ!
71本当にあった怖い名無し:2011/10/28(金) 19:07:46.89 ID:lJrRxvIq0
ゴミクズどもが考えたスレタイでいいのか?

スレタイ
【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ19【友人・知人】

これがいいと思う
72本当にあった怖い名無し:2011/10/28(金) 19:50:30.33 ID:Uz+ARfe2O
>>70
子供かよ
73本当にあった怖い名無し:2011/10/28(金) 21:51:11.27 ID:1Jp1dqed0
>>69
アレ読みたいの?
74本当にあった怖い名無し:2011/10/29(土) 16:32:09.07 ID:gZ11a89pO
>>73
オレサマが堂々登場するまでお前が露払いでもしておけ
75本当にあった怖い名無し:2011/10/29(土) 23:33:22.99 ID:cC3punl/0
今更ながら此処の住人ってカスだな
76本当にあった怖い名無し:2011/10/30(日) 07:45:44.31 ID:ySotjJLt0
メーテルの自慰シーンだろ
77本当にあった怖い名無し:2011/10/30(日) 09:13:06.27 ID:a1iyw7MW0
雑談もおk?
78本当にあった怖い名無し:2011/10/30(日) 17:57:28.10 ID:aexb/4Yl0
おkだとも!
ところでゴミクズのクソタレども、そろそろはっきりさせようぜ。
シリーズの定義ってなによ?
桃太郎に例えてみろや。
ヤツがババーに拾われて鬼退治を志すまでで第一章(たぶん土、日にかけて投下)
次回からはいよいよダチ集め。
これシリーズ?

桃太郎は鬼を退治したあとかぐや姫と出来ちゃった婚、勢いづいて竜宮城に殴りこみ、乙姫強姦。
これを各セクションに分ければシリーズ?

さらに鬼が島編で知り合った犬が桜の木の下掘るスピンオフは需要ありか?

そもそもシリーズ化するかどうかってのはおまえらクズ読者の反応みてから企画するだろ?
最初の一投二投で決められないだろが。

どうすりゃいいのよ。
それともマジで実話がシリーズ化すると思ってるのか?

79本当にあった怖い名無し:2011/10/30(日) 18:26:54.11 ID:kEXzCujj0
単発シリーズもおk
80本当にあった怖い名無し:2011/10/30(日) 18:52:52.65 ID:jU5TNlNC0
仮に単発がおkだとしても誰も投下しないとう事実w
81本当にあった怖い名無し:2011/10/30(日) 19:07:50.12 ID:gVF5EkDhP
ここはよそで連載始めた人が奨められてやってくるスレであって
そもそも創作目的で来る人はここに行くべき

創作発表板
http://yuzuru.2ch.net/mitemite/

ホラー総合スレッド 2
ttp://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1294146160/
1 名前:創る名無しに見る名無し[] 投稿日:2011/01/04(火) 22:02:40 ID:XcB0hOlg
都市伝説、怪奇現象、得体の知れないナニカ……
そんな背筋が凍るような話・絵を創作してみませんか?
話の流れでグロい描写がある場合は、前文に注意書きを

怖い話カモン!


【過去ログ】
ホラー総合スレッド
ttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220093448/

【避難所】
ホラー総合スレッドin避難所
ttp://jbbs.livedoor.jp+internet/test/read.cgi/3274/1294141046/
82本当にあった怖い名無し:2011/10/30(日) 19:40:32.83 ID:IBvARVZA0
ウニ待ち
です
83本当にあった怖い名無し:2011/10/30(日) 19:55:10.19 ID:1vnopcbvO
じゃぁハイジとタラちゃん、しんちゃんとジャムおじさん
いちばんIQ高いのだれよ?
84本当にあった怖い名無し:2011/10/30(日) 19:57:25.38 ID:1vnopcbvO
すいませんスレおもいくそ間違えました
取り下げて下さい
85本当にあった怖い名無し:2011/10/30(日) 20:44:36.28 ID:IBvARVZA0
ウニさん待ちです
来るかな
86本当にあった怖い名無し:2011/10/30(日) 21:55:14.64 ID:+6ONMYYx0
無茶なお願いすると、物凄い おねだり されるぞw
87本当にあった怖い名無し:2011/10/31(月) 01:24:26.98 ID:xQmaXew8O
HUNTER×HUNTER乙
88本当にあった怖い名無し:2011/10/31(月) 02:51:34.55 ID:Xwv9ZweC0
>>81
えーやだー、そこ良スレじゃん。
ここみたいなクソスレじゃないと恥ずかしくて書けんわい。
89本当にあった怖い名無し:2011/10/31(月) 14:02:05.59 ID:fxAb3TTz0
文芸板は別方向でオカ板より厳しいかなw
90本当にあった怖い名無し:2011/10/31(月) 20:59:02.53 ID:WfhlIkSl0
簡単に創作文芸板にいけとか言うな
ラノベ崩れごときが崇められるとでも思うなよ
91本当にあった怖い名無し:2011/10/31(月) 23:13:55.85 ID:uq4OCBRwO
いや、俺なら簡単に制覇可能だが
むしろそれでは面白くないからここにくるのだが
悪い?
92本当にあった怖い名無し:2011/11/01(火) 01:51:21.48 ID:qaUYqTth0
いいえ
93本当にあった怖い名無し:2011/11/01(火) 09:22:03.08 ID:64+2MhEn0
創作云々以前にオカルトなら問題ナッシングです
94本当にあった怖い名無し:2011/11/01(火) 16:22:18.86 ID:xkKU+WRXO
つまり単発シリーズカモンってことだ
95本当にあった怖い名無し:2011/11/01(火) 16:53:42.61 ID:u5HaOKvl0
あたりまえぢゃないか。
96本当にあった怖い名無し:2011/11/01(火) 18:43:40.77 ID:LWvJ/kju0
おk
97本当にあった怖い名無し:2011/11/01(火) 20:37:21.01 ID:LUOyCOjE0
それじゃあメリーさんシリーズもおkだよな?
なんでもいいんだろ?
98本当にあった怖い名無し:2011/11/01(火) 20:50:05.98 ID:LWvJ/kju0
雑談もおk
99本当にあった怖い名無し:2011/11/01(火) 21:43:47.55 ID:k1FYpuvv0
>>97
隆より大分マシ。
100本当にあった怖い名無し:2011/11/02(水) 10:37:01.20 ID:eLwQUqCr0
隆もメリーもどんとこい!
101本当にあった怖い名無し:2011/11/02(水) 21:20:42.40 ID:RlXZzb3f0
メリーさんシリーズ容認(゚∀゚)キタコレ!!
102本当にあった怖い名無し:2011/11/03(木) 10:37:10.54 ID:13gjVRlP0
シリーズ物と連続ストーリー物に分ければいい
イソップ童話もシートン動物記も、単発の集まったシリーズだから単発シリーズってもの否定は出来ないから
このスレに隔離すればいい
103本当にあった怖い名無し:2011/11/03(木) 12:44:19.60 ID:KP6K7ugt0
>>100
ざけんな
荒らし容認したら
ますます投下しにくいスレになるだろーが

投下したら粘着批判されるから投下しない俺が通りますよ
104本当にあった怖い名無し:2011/11/03(木) 18:53:38.51 ID:V/4aV4gn0
>>102
天才
105本当にあった怖い名無し:2011/11/03(木) 20:08:59.37 ID:KjvTX4uU0
単発シリーズ容認厨の方が荒らしだろ

>>102
お前バカか?
なんで例えにイソップ童話とかシートン動物記引っ張ってきてるんだ?
2chは話題別に板・スレとこと細かく分けられてるのが分からんのか?
このスレ隔離すればいい?
他の該当するスレに該当するのがルールなんだよ。わかりますか?
106本当にあった怖い名無し:2011/11/03(木) 23:27:40.02 ID:nQuRToMp0
なるほど
やはり単発シリーズはおkが主流だな
107本当にあった怖い名無し:2011/11/04(金) 04:49:53.10 ID:G/NpgdcmO
いつもありがとうございます。

彼の心が100%私に戻ってきますように。

彼の心が全部全て私に戻ってきますように。

彼が誰より何より私と私達の赤ちゃんを大切だと思い直して
私の元に戻ってきてくれますように。

神様どうかどうかお願い申し上げます。
どうかお願い致しますm(_ _)m
108本当にあった怖い名無し:2011/11/04(金) 07:46:32.95 ID:K2HcuzzX0
要はオムニバス作品の事を単発シリーズなどと呼んでいたわけね。
オムニバスはオカルトじゃメジャーな作品形態だし、
シリーズ物と言っても間違いではない形態だと思う。

>>105
稲川淳二シリーズやら新耳袋シリーズってシリーズ物だよな?
1つ1つの話は短編でも。
もし、これらのような話(オムニバス作品)が2chに投稿されるとして、
ここは該当するスレに該当すると思うが?
109本当にあった怖い名無し:2011/11/04(金) 14:40:21.28 ID:qLJd4oPY0
いっそのこと何でもアリにしね?
110本当にあった怖い名無し:2011/11/04(金) 19:21:50.19 ID:JZec03qO0
隆は専用スレでおk
111本当にあった怖い名無し:2011/11/04(金) 20:40:28.39 ID:GJFLCdx40
誰も投下する奴いねーカススレなのに、これはおk、これはNGとか馬鹿かよw
基地外荒らしと基地外信者の罵り合いしかねーじゃねーか
112本当にあった怖い名無し:2011/11/05(土) 08:06:13.05 ID:GAUczT+x0
長崎に仕事で行った時に体験した事です
平野というものが無くて山ばっかりだった
山に住宅とかホテルとか学校とかがズラリとならんでいて
まるで建物で作られた山といった錯覚を覚える
しかしこれが夜になると夜景が凄い
普通の観光では眼下に見下ろす夜景と表現されるけど、この地は山に明かりが灯り
眼上に見上げる夜景が広がる
試しに山に登ると低地から山へとカーブを描く壮観
市内を走る路面電車は一回につきどこまでも100円で
硬貨を沢山用意して気ままに乗ったり降りたり
あちこちに歴史を感じる建造物があった

ちょうど今頃の季節
坂をゆっくり上りながら物思いにボーっとしていると
前方から斉藤洋介のような人が笑顔で歩いてくる
http://talent.c.yimg.jp/images/talent/201110/large/m93/m93-1392-111018.jpg
113本当にあった怖い名無し:2011/11/05(土) 10:52:15.09 ID:GAUczT+x0
ニコニコしているしこっち見てるから仕事の関係者かと見覚えの無いことに焦っていた
sさんが少し口を開いた時、二人の間を横切るバイクが急ブレーキを掛けた前方車両車に激突
バイクとそのドライバーが見事に宙を舞って10m先程まで吹っ飛んだ
痛ってえ、とか言いながら直ぐに起き上がる。意外に元気だ、綺麗に吹っ飛んで衝突エネルギーが
体へは掛からなかったのかも知れない。ビックリしたがまあ死亡現場に遭遇しなくて良かった
などと思いながら前を向くとsさんが事故前と同じ顔でこっちを見ている
気味が悪くなった。おかしい、事故に対するリアクションが感じられない、まだ笑ってる
瞬時に嫌悪感が涌き顔を背けた。そのまま左に曲がり坂を下る事にした
延命祈願、延命祈願、死にたくないなら延命祈願、後ろで叫ぶ声が聞こえる。池沼かよ
振り返らずにとっとと下る。
114本当にあった怖い名無し:2011/11/05(土) 12:32:28.43 ID:GAUczT+x0
仕事も忙しく、休みになると一人観光とエンジョイしていた
ここは独特のエンコーの誘い方があり「マックどう?」と声をかけ、OKだとその場でマックに行ったり
行かなかったりしてその後(ry
マックの誘いに乗らない子にそれ以上話しかけると通報されるらしい
営業の奴はしょうがゲフンゲフンとやったらしい
そいつに営業車両を借りて打ち合わせに行く途中、眼の端に延命の文字が写った
池沼を思い出して少し笑った。ここの関係者か?後でまた見に来る事にする
延命○重、と書いてある。人名かとも思ったが、〜寺とか〜院などの大きな札のあるべき場所に書いてある
何より表札が別にちゃんとある。敷地内は民家が有るだけで何か縁が無いと入れそうに無い
「お待ちしておりました」ドアが開きドキッとした。咄嗟に辺りを見渡すとコトンと戸の閉まる音がする
何か異様だと思っていた正体がすぐに解った。ここに隣接する全ての家が隣り合う側の雨戸を閉めてしまっている
そして少し開いた隙間から覗いているようなのだ
115本当にあった怖い名無し:2011/11/05(土) 12:35:24.59 ID:GAUczT+x0
単発シリーズ前編完
116本当にあった怖い名無し:2011/11/05(土) 12:59:28.50 ID:VKRGFpdSO
なんだ荒らしか
117本当にあった怖い名無し:2011/11/05(土) 14:42:57.20 ID:6zaAsWne0
ごめん
それは1つの話?
3つの話?
読んだがよくわからない。

投稿者いなくならないで欲しいから
真面目に感想書こうと思ってたのに…
118本当にあった怖い名無し:2011/11/05(土) 16:48:41.83 ID:Rq2DfuhmO
おまえ彼をしらないのか?
このスレ初めて?
なら教えてあげよう
彼はきっと最後までやりとげる
119本当にあった怖い名無し:2011/11/05(土) 17:01:20.57 ID:N/xi+q9QO
このスレでメリーやら隆ラブやら赤緑やら劣化ウニやら一切合切を受け入れてくれればそれでいい。


そろそろ創作に特化したオカルト系読み物スレをたてようぜ。
俺が読みたいのは糞みたいなシリーズじゃなくて、読み物として成立した話が読みたい。
例えば喪中みたいな話は投下するスレ探してもオカ板には無いから、そういうの受け入れていこうよ。
120本当にあった怖い名無し:2011/11/05(土) 17:09:00.68 ID:vUIdYfvI0
喪中ってどんな話だっけ?
121本当にあった怖い名無し:2011/11/06(日) 21:02:22.22 ID:UxcKDDWc0
単発がいい
122本当にあった怖い名無し:2011/11/07(月) 12:24:17.49 ID:8SjpmrheO
>>119
確かにあの人みたいな糞長い単発は投下する場所がないな。
俺はこのスレのテンプレ変えりゃいいだけだと思うけどな。
スレタイもウニ氏をお手本にしなさいって言ってるようなもんだし二番煎じが量産される環境だよね。
もっと自由に書いて貰いたい。

>>120
読み切りの短編小説みたいなのを書いた人。
123本当にあった怖い名無し:2011/11/07(月) 12:29:14.49 ID:c3uYNMJP0
同一作者による話はシリーズモノで問題ないよ
124本当にあった怖い名無し:2011/11/07(月) 14:36:58.98 ID:iKjJXk5V0
すっかり春とか夏とかいうスレなかったっけ?
125本当にあった怖い名無し:2011/11/07(月) 19:47:32.71 ID:VKPVO/A30
>>122

? 俺はこのスレのテンプレ変えりゃいいだけだと思うけどな。
◯ 該当スレに投下すりゃいいだけだと思うけどな
126本当にあった怖い名無し:2011/11/07(月) 19:49:34.11 ID:VKPVO/A30
3 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/10/08(土) 16:43:54.34 ID:7VOUccIb0
今後、単発シリーズと呼ばれる友人知人物は全てこのスレに誘導してください

[962]本当にあった怖い名無し [sage] 2011/10/05(水) 20:41:16.78 ID:uaXrv43f0
AAS
単発シリーズもおk

9 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/10/10(月) 20:39:01.84 ID:325S7E0K0
単発投稿は文頭に単発シリーズを付ければいいの

21 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/10/16(日) 21:47:13.68 ID:RnuiYBK60
単発シリーズカモン

34 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/10/19(水) 14:33:48.67 ID:A2O9hnMu0
同じスレ内でも住み分けようねってことでいいの?

37 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/10/19(水) 21:02:49.62 ID:aC1+snbC0
ネタある人なら単発でもいいと思う

45 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/10/24(月) 02:13:18.34 ID:Z49ndm6O0
シリーズでも単発でも不可思議な事実を物語り風に語ればいいわけ?

48 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/10/24(月) 19:55:22.54 ID:tkvOyyXt0 [2/5]
単発でもいいし
127本当にあった怖い名無し:2011/11/07(月) 19:54:23.15 ID:VKPVO/A30
79 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/10/30(日) 18:26:54.11 ID:kEXzCujj0
単発シリーズもおk

94 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/11/01(火) 16:22:18.86 ID:xkKU+WRXO
つまり単発シリーズカモンってことだ

95 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/11/01(火) 16:53:42.61 ID:u5HaOKvl0
あたりまえぢゃないか。

96 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/11/01(火) 18:43:40.77 ID:LWvJ/kju0 [1/2]
おk

102 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/11/03(木) 10:37:10.54 ID:13gjVRlP0
シリーズ物と連続ストーリー物に分ければいい
イソップ童話もシートン動物記も、単発の集まったシリーズだから単発シリーズってもの否定は出来ないから
このスレに隔離すればいい

106 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/11/03(木) 23:27:40.02 ID:nQuRToMp0
なるほど
やはり単発シリーズはおkが主流だな

121 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/11/06(日) 21:02:22.22 ID:UxcKDDWc0
単発がいい
128本当にあった怖い名無し:2011/11/07(月) 20:15:44.44 ID:AuE97k/R0
単発の方どうぞ
129本当にあった怖い名無し:2011/11/07(月) 21:44:24.14 ID:ZDLIaMUm0
単発で書いたら叩かれたから他スレいってる
単発オッケー主張しても、無理
130本当にあった怖い名無し:2011/11/07(月) 22:01:05.48 ID:AuE97k/R0
ここも単発おkだよ
131本当にあった怖い名無し:2011/11/07(月) 23:11:41.07 ID:rBW3xa9wO
おれ作ろうかな、遅漏の一発屋が安心して書けるスレ
スレタイどうしようかな
132本当にあった怖い名無し:2011/11/08(火) 01:04:45.41 ID:rSicgKmi0
>>130
だーかーらー
単発で投稿しても何書いても
このスレは叩かれるから
投稿はしないって言ってるの
133本当にあった怖い名無し:2011/11/08(火) 10:01:12.22 ID:rRlhIFMw0
確かにこのスレだと何書いても叩かれるね。
何書いても叩く奴が常駐してるからね。
それが気になるなら仕方ないね。
134本当にあった怖い名無し:2011/11/08(火) 19:20:33.00 ID:qFEj51XO0
糞だから叩かれてるんだろ
何書いても、じゃなくてラノベだから叩かれてるし、気持ち悪い作家と信者と荒らしだけだから誰も投下しなくなったんだろ
とっとと該当板か該当スレに移動しろよ
ここに固執する意味が分からん
135本当にあった怖い名無し:2011/11/08(火) 19:29:35.69 ID:pTdSobTq0
いや、それは違うよ
このスレを潰したくて片っ端から叩いるだけ
136本当にあった怖い名無し:2011/11/08(火) 20:27:09.38 ID:qpRm5zBM0
単発だから出来ることがある
137本当にあった怖い名無し:2011/11/08(火) 20:45:07.12 ID:K3q4+NGR0
おお、荒れはじめたな。そろそろラノベ投下すっかな。
138132:2011/11/09(水) 06:57:50.34 ID:m7RtoRya0
ほらね?
幻滅。
139本当にあった怖い名無し:2011/11/09(水) 13:30:27.01 ID:/hsSxMlI0
俺も投稿したら叩かれたな。みんなもそうなんだろ?
140本当にあった怖い名無し:2011/11/09(水) 13:56:25.18 ID:oJa18Bmt0
>>135
だから、そういう奴が常駐してるスレになんでわざわざ投稿するかって話なんだよ
他にくさるほどスレあるだろ
141本当にあった怖い名無し:2011/11/09(水) 19:22:12.97 ID:68vnrkh70
単発なら叩かれないとおもう
142本当にあった怖い名無し:2011/11/09(水) 19:56:31.36 ID:Q+2EvOVDO
たぶん彼等は自縛霊のようなもので、たとえどこに誘導しようと
どんなスレを立ててやろうとここに居続けると思うよ
誰かが成仏させてやらなければ・・・
143132:2011/11/09(水) 22:37:08.51 ID:m7RtoRya0
>>141
バカなの?
144本当にあった怖い名無し:2011/11/09(水) 22:53:50.58 ID:oJa18Bmt0
単発厨=メリー=隆ラブ

確定だろ
145本当にあった怖い名無し:2011/11/10(木) 00:56:43.14 ID:+3lPYGNK0
スレタイに釣られて来た人をドン引きさせるスレはココですか?
146本当にあった怖い名無し:2011/11/10(木) 02:52:19.64 ID:PUIGrhPA0
ここまで作品なしwww
147本当にあった怖い名無し:2011/11/10(木) 08:06:50.73 ID:zDlzrShDO
ここまでの流れが作品なんじゃね
148本当にあった怖い名無し:2011/11/10(木) 22:51:27.38 ID:d0+6MSEg0
単発ストーリーを待ちわびる声が日に日に大きくなってきた
149本当にあった怖い名無し:2011/11/11(金) 02:28:08.39 ID:Ff0smWBd0
>>147
ついに主人公登場!!
150本当にあった怖い名無し:2011/11/11(金) 08:43:51.29 ID:oQ2QKGE70
ネンチャック集大成ってえw
151隆ラブ ◆4WnrfIQhl6 :2011/11/11(金) 19:38:12.11 ID:xUqltGWg0
久しぶりですね 今日は先週の同窓会の時の不思議体験を発表しようかと
あれは先週の同窓会の時の頃数年ぶりに合う同窓生と和気あいあいとしてる頃のこと
アルバムの話になった もちろん卒業アルバムだよな 誰かが持ってきていたんだ
152隆ラブ ◆4WnrfIQhl6 :2011/11/11(金) 19:40:50.85 ID:xUqltGWg0
うわーナツカシスという声と声野中 俺はこのアルバムが出た頃俺の仲間内で話題になった話題を口にした
そういえばさ この体育祭のページ野中の一万のいの写真に変なやつ紛れ込んでるよな
そうこの体育祭の頁にだれも知らない奴が何故かクラスと紛れ込んで写っていたことがある
153隆ラブ ◆4WnrfIQhl6 :2011/11/11(金) 19:42:13.12 ID:xUqltGWg0
しかも一番前に陣取りまるでクラスメイトかのように溶け込んでいたのである
高校卒業後アルバムを手にして仲間内で集まってああもう卒業だなあと切ない空気の中
誰かが叫んだ
154隆ラブ ◆4WnrfIQhl6 :2011/11/11(金) 19:44:24.53 ID:xUqltGWg0
おいこいつ誰だ!慌ててみると体育祭の頁の一枚にだれも知らない奴がクラスト溶けこんで写っていた
髪型 輪郭 目鼻立ち・・・写真の移り方でちょっと風変わりなふうに映ることはままあること
しかしこいつはマジで見覚えゼロの顔なのである 別にマンモス校ということもない普通の生徒数の高校である
155隆ラブ ◆4WnrfIQhl6 :2011/11/11(金) 19:46:23.02 ID:xUqltGWg0
ほぼ同学年の顔は覚えてるはずである名前は一致しなくても顔だけは覚えているものだよな
しかしこいつは全く知らない しかもだれも知らないのだ 俺ばかりかと思ったらそうでもない 誰も一切知らない
よく見ると若干ふkフェている もしかして先生か?否先生だとされによくおぼえてるはずなのである なんせ絶対数が少ないからさ
156隆ラブ ◆4WnrfIQhl6 :2011/11/11(金) 19:47:55.00 ID:xUqltGWg0
先生でも生徒でもない・・は!もしかして教育実習生とか?
ああもうそれに間違い無いわ 確かめのせずに俺らは女生徒の話題に移った
やれ誰が好きだったのか 意外とこいつ可愛いなとか 俺こいつとやったぜとかありきたりな話題だ
157隆ラブ ◆4WnrfIQhl6 :2011/11/11(金) 19:50:14.63 ID:xUqltGWg0
むしろ俺h男のほうに興味が向いてきたのだけどな そこに隆もいたから二人で目配せしてた
されそんなこんなでこの謎の人物の話題はコレkラ数年後誰もしないまま時は過ぎてゆくのである
数年後それは先週のことどう相違会があった 俺は懐かしい面々とあの頃炉変わらないテンションで話していた
158隆ラブ ◆4WnrfIQhl6 :2011/11/11(金) 19:55:04.81 ID:xUqltGWg0
そんな時だった誰かがねーねーアルバム持ってきたよと持ってきたのがそのアルバムだった
一気にあの謎の人物のことが思い出されたのでひとしきりアルバム談義には流さいた後でそのことをみんなに問うつもりで佇んでいた
しかしなかなか終わらない 当たり前か みんな結構変わったもんな
159隆ラブ ◆4WnrfIQhl6 :2011/11/11(金) 19:56:27.77 ID:xUqltGWg0
そんな俺の横に隆が北 俺は早速謎の人物について話した
すると剛は あああれか・・・あれには手を出さないほうがいいと言うのだ
え?なんで?俺は別にあいつの写真見ても邪悪な者は感じなかったのだけどと聞くと嫌そうじゃないというのだ
160隆ラブ ◆4WnrfIQhl6 :2011/11/11(金) 19:57:33.82 ID:xUqltGWg0
邪悪とかそんなもんじゃないんだよ あの写真の人物はこの世にはいないんだよという
うん?それって普通に幽霊写真のことなのか?と拍子抜けした俺に剛は恐ろしいことをつぶやいた
161隆ラブ ◆4WnrfIQhl6 :2011/11/11(金) 19:59:26.88 ID:xUqltGWg0
いやあいつは魂まで殺されてる お前も知ってるだろ走り屋が多いことで有名な〇〇山(別に山じゃない)
あそこで事故死したんだが死体が密化rなかったらしい
警察が大規模な創作したが見つからないから親御さんがワラニモスガルオモイで霊能者に聞いてみたんだそうだよ
162隆ラブ ◆4WnrfIQhl6 :2011/11/11(金) 20:00:20.83 ID:xUqltGWg0
するとその霊能者はこういったのだそうだよ
この子は魂まで食われたようです 残念です

163隆ラブ ◆4WnrfIQhl6 :2011/11/11(金) 20:02:05.64 ID:xUqltGWg0
俺は驚いた この話にじゃない、いやこの話に驚いたんだけどちょっと違う
この話を聞いたのは俺が高校卒業して間もないころ仲間内で色々車で出歩いてた頃のことであう
〇〇山を通った時に普段遊ばない奴が不意に口にした怪談だった
164本当にあった怖い名無し:2011/11/11(金) 20:02:09.80 ID:mwE3WZXm0
単発おkだよ
165隆ラブ ◆4WnrfIQhl6 :2011/11/11(金) 20:04:02.79 ID:xUqltGWg0
ちょうど1年前頃かな ここで俺らの先輩が来るまで事故ったんだけど車が大破してるのに本人がいなかったんだで探してみたんだけどみつkらない
仕方なく警察に頼んで探してみたが数週間大規模創作されても見つからなかったんだそうだ
でその親がワラニモスガルオモイで霊能者に頼み込んだ 今どこにいますかと
166隆ラブ ◆4WnrfIQhl6 :2011/11/11(金) 20:05:38.69 ID:xUqltGWg0
するとその霊能者は
このひとはこの世にもあの世にもいません魂が食われて完全に消滅しています
コレ聞いたときは鳥肌が凄かったわ その事故現場で俺らはこの階段聞いてるわけだわ
167隆ラブ ◆4WnrfIQhl6 :2011/11/11(金) 20:07:34.04 ID:xUqltGWg0
後年オカ板の残念なあら娘さんは〜を聞いて更に鳥肌ったことを今でも忘れず覚えているよ
とにかくあの怪談の人物が俺らのアルバムに写っていた謎の人物という皇都だよ
もう鳥肌が収まらない
168隆ラブ ◆4WnrfIQhl6 :2011/11/11(金) 20:08:42.65 ID:xUqltGWg0
なんでそいつが縁もゆかりもない俺らのアルバムに映ってるんだよ
隆に聞いてもしょうがない気がするが期間図には置けない
隆はそれが引っかかっているようだった
169隆ラブ ◆4WnrfIQhl6 :2011/11/11(金) 20:09:57.07 ID:xUqltGWg0
俺はそれは知らない 霊視しても個々の部分だけは気持ち悪いと言うかはっきりしないんだよなあとあきらめモードに
ふ^んと何気なくアルバムで盛り上がってる集団を見つめる

そこにいた
170隆ラブ ◆4WnrfIQhl6 :2011/11/11(金) 20:11:56.48 ID:xUqltGWg0
あいつだ
あいつだよ
あいつがこっちをみている
171隆ラブ ◆4WnrfIQhl6 :2011/11/11(金) 20:12:37.21 ID:xUqltGWg0
なんで・?魂まで食われてるはずなのに
隆を思わず見てるミ
青くなっていた
172隆ラブ ◆4WnrfIQhl6 :2011/11/11(金) 20:15:42.75 ID:xUqltGWg0
こいつ・・悪魔だわ
悪魔?そうだよ文字通りの悪魔 
今わかった 魂食われると悪魔になるんだ・・・と言うことは悪魔に魂喰われたのか
173隆ラブ ◆4WnrfIQhl6 :2011/11/11(金) 20:20:11.90 ID:xUqltGWg0
うわわ・・・なんで悪魔が俺見てるんだよ
ションベンチビリそうだ
つかちびったた
174本当にあった怖い名無し:2011/11/11(金) 20:28:05.29 ID:mwE3WZXm0
単発シリーズ

うちの地元に、行けば大抵霊体験の出来る場所が有るんだけど行っていない
175本当にあった怖い名無し:2011/11/11(金) 21:28:14.10 ID:iExafjQm0
屯田ぞ
176本当にあった怖い名無し:2011/11/12(土) 00:38:25.55 ID:rlulD+5c0
もうダメかもしれんね、ホントに・・
177本当にあった怖い名無し:2011/11/12(土) 00:51:09.56 ID:+wJJKWnI0
オオツキ教授の中の人のサイトがあるって聞いたんですが、どこですか
178本当にあった怖い名無し:2011/11/12(土) 17:29:15.29 ID:yx6IyE6z0
ネタがねーな
179本当にあった怖い名無し:2011/11/12(土) 19:43:55.95 ID:Y3A0VwFAO
隆様の話が生で読めるなんて!
180132:2011/11/12(土) 21:21:40.86 ID:hj99sMYb0
>>179
投下後の毎回の自演お疲れ様、隆ラブ
181本当にあった怖い名無し:2011/11/13(日) 06:33:58.76 ID:fUEHO1VG0
>>180
自演お疲れって言ってるのもお前だったのか…
182本当にあった怖い名無し:2011/11/13(日) 08:46:46.18 ID:M2rzfzZQ0
ここのゴミクズのクソタレどもは投稿が有るとスルーする変態の寄り合いだな。
単発ならいいのかよ、どうせスレチ主張するんだろーがカス。
お前らゴミクズは頭おかしいだろ、ここに居る意味って何よ?
頭の弱いお前らクズどもはシリーズ投稿対してやる事があるだろうが!
183本当にあった怖い名無し:2011/11/13(日) 08:51:22.28 ID:M2rzfzZQ0
あよ?
184本当にあった怖い名無し:2011/11/13(日) 16:46:30.77 ID:9m1kjxSuO
嫌いでも好きでもないんだけど変換が酷くて読む気が失せる
隆ラブ日本語でおけ
185本当にあった怖い名無し:2011/11/13(日) 20:40:38.86 ID:PKfBDgbu0
でも意外と面白かったのは内緒
186本当にあった怖い名無し:2011/11/13(日) 22:54:13.06 ID:CF/FSM7v0
ウニさんは来ないのォ?
187本当にあった怖い名無し:2011/11/15(火) 01:09:27.34 ID:M+S92Bmc0
ウニは同人で金稼ぎになったから、もう投下はしないんじゃないかな?
新ネタできたら次の本のネタにしそうな気がw
188132:2011/11/15(火) 07:17:50.73 ID:/svyKeWA0
>>186
こない時期は1年普通に来ないから
またーりスレチェックしとくといいよ
189本当にあった怖い名無し:2011/11/15(火) 17:42:48.22 ID:AEmRr2hm0
こんなところで安っぽい賞賛うけても意味ね〜し
by uni
190本当にあった怖い名無し:2011/11/15(火) 18:07:19.69 ID:6YjYdn1h0
即座に投稿しますので暫くお待ちください
191本当にあった怖い名無し:2011/11/15(火) 18:19:30.04 ID:6YjYdn1h0
久しぶりですね
192本当にあった怖い名無し:2011/11/15(火) 19:10:33.73 ID:N4c7qF1R0
自演wwww
193本当にあった怖い名無し:2011/11/17(木) 10:45:57.11 ID:5ioSCHo60
ウニは活動場所を同人に移したの?
本人が選ぶことなので別にかまわないけど、
時間がたったら転載して欲しいです。
194本当にあった怖い名無し:2011/11/17(木) 15:31:29.95 ID:elpzfule0
このズーズーしさが鳥肌立つほどキライです
byウニ
195本当にあった怖い名無し:2011/11/17(木) 17:45:42.55 ID:5F9kLVri0
逆に考えるんだ
ウニさんが同人でやるなら、師匠系の枠が空いたと考えるんだ
196本当にあった怖い名無し:2011/11/17(木) 18:04:53.79 ID:yNCqipFJ0
メリーさんシリーズはおkになったんだよな?
197本当にあった怖い名無し:2011/11/17(木) 18:27:39.62 ID:Tkey3VCsO
>>195
それで面白いの書いてた人はもう誰もいない
手遅れ
198本当にあった怖い名無し:2011/11/17(木) 19:39:22.90 ID:8MUfbsu40
師匠シリーズ面白かったね
これ超える投稿ないね
199本当にあった怖い名無し:2011/11/17(木) 20:37:55.01 ID:aRUSxPF40
でも好きだったのは坂さんの方
200本当にあった怖い名無し:2011/11/17(木) 23:08:34.07 ID:wqI1ixmg0
上手いのがいいとは限らないしね
自分がウニより好きな人は師匠系ではなかったが
201本当にあった怖い名無し:2011/11/18(金) 15:32:20.20 ID:tIM6Kmcc0
おれも隆とメリーのファンだぜ
202本当にあった怖い名無し:2011/11/19(土) 04:13:01.93 ID:bnoYZe8o0
ここじゃなくて洒落怖だったかも知らんが、坂さん、ケイさん、ナナシ、枯野辺りが同時期にいたことあるよな
みんなどこいっちゃったのかね
203本当にあった怖い名無し:2011/11/19(土) 14:27:03.76 ID:LCKqnqdj0
お前らの・・・

心の中さ・・・
204本当にあった怖い名無し:2011/11/19(土) 21:58:07.76 ID:e61Tdp1k0
いい人はいなくなりウニと嵐が残った
弱肉強食
205 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 【東電 60.9 %】 :2011/11/20(日) 04:07:21.68 ID:cD3q477/O
てす
206本当にあった怖い名無し:2011/11/21(月) 08:26:37.83 ID:NdOIoqAZ0
隆ラブ新作はよ
207本当にあった怖い名無し:2011/11/21(月) 23:53:48.38 ID:/+VOkois0
もう隆ラブにしか期待できないとか終わりすぎだな
とっとと落とせよこんな糞スレ。誰も投稿しないってことは機能してないってことだ
削除依頼出したらDAT落ちしてもらえるのかね?
208本当にあった怖い名無し:2011/11/22(火) 06:03:24.20 ID:bmbc3RJH0
うん。そうだね。
きみはえらいよ。
209本当にあった怖い名無し:2011/11/22(火) 23:06:53.18 ID:fNddoTBy0

こういう奴ってなんなの?
煽りもしない期待もしない、気持ちの悪いやつだ
210本当にあった怖い名無し:2011/11/23(水) 02:59:59.87 ID:AZtWUVoz0
>>209
お前ほどじゃないよ
211考案中:2011/11/23(水) 05:43:45.06 ID:UqUsijgp0
【】作家気取りの外道が集うスレ【】
【】に入れる言葉をお願い。
左右埋まったらオレがスレ立ててみるよ。
212本当にあった怖い名無し:2011/11/23(水) 06:57:56.93 ID:A4Epm1YXO
>>211
【ウニ】作家気取りの外道が集うスレ【赤緑】
213本当にあった怖い名無し:2011/11/23(水) 10:12:00.14 ID:XAZXGYth0
なんで外道なん?
214本当にあった怖い名無し:2011/11/23(水) 13:07:21.72 ID:uYVtICSW0
嫉妬の鬼から見れば人気のある作家は外道とかそんなもんだろうね
215考案中:2011/11/23(水) 14:17:22.50 ID:UqUsijgp0
>>212
作者の名前は荒れるもとだからダメ。
そもそもこのスレからはみ出た人や話のためのスレにするつもり。
>>213
ものを書くってのは時に因果な商売(売ってはいないが)らしいね。
まわりの者みんなを巻き込み不幸にしても書かずにはいられない時がある
傍からは外道に見えなくもない。
特にホラー系は書く対象も人外だったりするしね。
216本当にあった怖い名無し:2011/11/23(水) 16:41:54.20 ID:l+rovP2/0
>>211
【三つ子の魂】作家気取りの外道が集うスレ【千迄も】

みたいな感じ?
217本当にあった怖い名無し:2011/11/23(水) 17:53:06.36 ID:fqdNTn8/0

【それでも】作家気取りの外道が集うスレ【書きたい】
218本当にあった怖い名無し:2011/11/23(水) 17:58:23.97 ID:AZtWUVoz0
>>215
肥溜めの隔離スレからはみ出るとかどんだけショボい話を書いてんだよ
219本当にあった怖い名無し:2011/11/23(水) 18:11:14.03 ID:c74YeGfZO
>>215
ウニは商売してる
しかし赤緑とか懐かしいな
別スレ立てる意味はわからんが
220本当にあった怖い名無し:2011/11/23(水) 19:09:29.86 ID:8JwNPFMV0
別スレは隆専用でおk
221本当にあった怖い名無し:2011/11/23(水) 19:10:12.70 ID:8JwNPFMV0
おk
222本当にあった怖い名無し:2011/11/23(水) 19:34:03.62 ID:oEDV9BZF0
>>210
え?なに言ってるの?
223本当にあった怖い名無し:2011/11/23(水) 19:38:20.40 ID:LbPFXgcf0
ネタはある
だがめんどくせえっていう
このスレ無くなったら書くとこない感じ
224本当にあった怖い名無し:2011/11/24(木) 07:58:49.70 ID:xvU4ywxB0
自分は祟られ屋シリーズが好き
225本当にあった怖い名無し:2011/11/24(木) 10:47:50.97 ID:7tpa+FuN0
>>224
同意
226本当にあった怖い名無し:2011/11/24(木) 20:15:01.63 ID:uOITIdjS0
おk
227 忍法帖【Lv=5,xxxP】 :2011/11/24(木) 20:51:23.53 ID:7qbHEej90
HEY!YOU!?BLUES
228本当にあった怖い名無し:2011/11/25(金) 06:23:44.95 ID:0my9TQlS0
祟られ屋の人は、今の韓流ブームをどう思ってるか聞きたいです。
229本当にあった怖い名無し:2011/11/25(金) 14:16:44.81 ID:g5EUSFEjO
>>216
語呂的にはそんな感じかも、でもイマイチ意味が
>>217
も少しひねりがほしいです。
>>219
僕はただみんなが荒れることことなく安心して書いたり読んだりできるスレを立てたいだけなんだ。
>>218
その口を閉じな!
230本当にあった怖い名無し:2011/11/25(金) 17:06:04.37 ID:6R3S1QQI0
【呪】作家気取りの外道が集うスレ【祝】
【魂】作家気取りの外道が集うスレ【頂きます】
【荒地に】作家気取りの外道が集うスレ【花を】
【創作】作家気取りの外道が集うスレ【上等】
【はみ出し者】作家気取りの外道が集うスレ【ブルース】

好きなの選びな
231本当にあった怖い名無し:2011/11/25(金) 19:11:47.10 ID:6J/vzDl70
>>223
洒落怖まとめの掲示板では駄目なのか?テンプレにもあるが
まー、実際に移動したのは祟られ屋ただ一人だけどな
232考案中:2011/11/26(土) 08:40:19.12 ID:Jet6KvSJ0
>>230
たくさんありがとうございます
荒地に〜は良いですね、使わせて頂くかもしれません。
>>223はどうしても実話系のイメージありますからね
それに回転早いんで数スレに跨る話はむきませんよ、他の投下人に迷惑です。

あまり細かいルールは作りたくないのですが、最低これだけは抑えておけよ、ってことありますか。


233本当にあった怖い名無し:2011/11/26(土) 15:07:00.88 ID:/O599iydO
>>232
常識的に考えて気取りとか外道とか、そんなタイトルでまともな書き手が呼び込める訳ないでしょ。
オカルト物語集とかシンプルなタイトルのほうがいい。
外道の意味が釣り用語の外道を指してるなら荒らしを釣るにはいいのかも知れないけど。
234本当にあった怖い名無し:2011/11/26(土) 15:33:57.76 ID:I8B9BBTQ0
ってかなんでこのスレで相談してんの?
被ってる自覚があるなら重複スレ立てるなで終了
全然違うってんならここではないどこかで相談してください
意見が聞きたいだけなら洒落コワの方が人いるよ
変なのを押し付けるようで気が引けるけど
235本当にあった怖い名無し:2011/11/26(土) 15:57:17.64 ID:YJq4wTc4O
どちらにせよ新スレ建てたところでメリー他の荒らしが荒らすスレが1つ増えるだけだな
236本当にあった怖い名無し:2011/11/26(土) 18:50:04.85 ID:fQGPTGO30
ですよねー
237本当にあった怖い名無し:2011/11/26(土) 19:04:25.41 ID:pVpqjCL50
ここでおk
238本当にあった怖い名無し:2011/11/26(土) 19:55:30.05 ID:+2Etw/7b0
>>233
おれはいくぞーラノベだけどね
239本当にあった怖い名無し:2011/11/26(土) 21:37:23.30 ID:h+SCimwAO
スレ立てしようが、荒れる所は荒れる。
2chはオカ板しか見てないが、見ているスレのほとんどが荒れてる。荒らしが湧かない所なんてそうは無いとおもうんだが。
240本当にあった怖い名無し:2011/11/26(土) 23:29:58.01 ID:WHqaA7Iu0
んんだいじょうぶ
あのー
んー
あたしのねー
あたしさいきんねー
もなんか
はみがきこをかえたの
なんかねー
そしたらねー
はーのねー
こーねー
かえたからねー
ちゃん
だいじょうぶ
241本当にあった怖い名無し:2011/11/29(火) 18:56:57.57 ID:sP4Ofy0y0
http://toki.2ch.net/test/read.cgi/occult/1322560316/

たてたぞー。
書きたいけど一般的なオカルトシリーズものから外れた表現方法に
なってしまう人は↑に来てください。強制じゃないですよ。
242本当にあった怖い名無し:2011/11/29(火) 23:09:24.63 ID:rEHUlmmYO
このスレが埋まったら>>241のスレにみんな移動すればいいのか
243本当にあった怖い名無し:2011/11/30(水) 19:41:57.26 ID:BzLPf12o0
向こうは隔離スレなんで
244本当にあった怖い名無し:2011/11/30(水) 21:43:35.04 ID:FQNM3j1j0
スレタイ変えただけだから向こうに移住でいいべ
245本当にあった怖い名無し:2011/11/30(水) 21:49:24.35 ID:PeqlBVXl0
移住して何が変わるんだ?
お前ら自己中杉だろ
246本当にあった怖い名無し:2011/12/01(木) 19:24:09.75 ID:qn/UM9MG0
おk
247本当にあった怖い名無し:2011/12/03(土) 08:13:50.42 ID:GFGxKJEi0
向こうは博ラブが隆みたいに暴れてて気持ち悪いんだよ?
全くの別人だろうけど
248本当にあった怖い名無し:2011/12/03(土) 20:53:03.45 ID:ArmQ/AHe0
誤字なし、句読点あり

別人だな
249本当にあった怖い名無し:2011/12/03(土) 21:27:33.95 ID:BXJNfKij0
あたしなんかさ
ここにさー
すごいなんか
あかいぶつぶつができて
かいてないのにね
なんかね、ぃいたいの
ねー
なんだかわかんないんだけど
ぶつぶつができた
しっしんだかなー
なんかねー
しっしんなのかな
250本当にあった怖い名無し:2011/12/06(火) 21:57:59.23 ID:twx3eqlS0
なんかねー
ちょっと
どぴゅってでないんだよあんまり
んー
でないんだよねー
んー
あたしの
あん
なんか
あんまり
でないんだよねー
んー
そういうー 
の じゃない、ん のかな
わかんないけどわたしもよく
んん
あんまりでてくれないからさー
んーなんか
こまるよねーでも
あんまりそういうぅ
かんじょうをだしてくれない、のって
ほんとにこまる
んー
ぶんなぐるぞってかんじ
251本当にあった怖い名無し:2011/12/08(木) 19:39:24.42 ID:wrm/xhj00
隣の柿食う客はよく
252本当にあった怖い名無し:2011/12/14(水) 00:36:36.66 ID:AyaPBdS90
(^。^)
253本当にあった怖い名無し:2011/12/14(水) 18:33:23.14 ID:4zidNiIZ0
おk
254本当にあった怖い名無し:2011/12/14(水) 23:02:58.18 ID:M97Ia5xK0
そろそろ未の続きをだな
255本当にあった怖い名無し:2011/12/17(土) 12:36:57.53 ID:rohdtLfcO
>>254
続きは同人でやるっつったろハゲ
256本当にあった怖い名無し:2011/12/17(土) 17:23:46.28 ID:JtnRbKXzO
同人に載せたのはいずれ投下してくれるといっていたのではないかと
「未」は今頃の季節の話だから少しだけ期待してる
257本当にあった怖い名無し:2011/12/17(土) 19:49:47.89 ID:UGOCfPm40
>>255

m9(^Д^)プギャー
258本当にあった怖い名無し:2011/12/17(土) 22:26:56.26 ID:TvJCETIp0
おk
259本当にあった怖い名無し:2011/12/17(土) 22:28:45.07 ID:TvJCETIp0
隣のよく柿食う客は
260本当にあった怖い名無し:2011/12/18(日) 16:10:54.96 ID:y0Girja40
ゾマホンだ
261赤緑 ◆kJAS6iN932 :2011/12/19(月) 09:37:33.10 ID:bETU5NQy0
[雨が降る]

1/18
都会から離れた片田舎。
母方の実家のあるこの町(村と言うと、母は不機嫌になる)に、私は祖父の法事ということで久しぶりに帰ってきた。

最寄りの駅で降り、バスに揺られること約20分。
駅の周辺はまだ拓けているけれど、そこから離れていくにつれてお店の数は減り、田畑が広がってくる。
点々と建っている家は、ほとんどが平屋。
正に田園風景。
これを「村」と言わずして――なんて思っているうちに、バスは目的地に着く。

ベンチがポツンと1つ置いてあるだけのバス停。
唯一の乗客であった私を降ろし、ガタゴトと走り去っていくバスを見送ってから、私はあぜ道を歩いていく。

秋の夕暮れ時。
稲刈りの終わった田んぼに、赤とんぼ。
何だかしみじみとしてしまう。

小中学生の頃は夏休みになると毎年遊びに来ていたけれど、その頃と比べてもここは今もまったく変わっていない。
262赤緑 ◆kJAS6iN932 :2011/12/19(月) 09:39:03.62 ID:bETU5NQy0
2/18
ちょっと良い気分になって歩いているうちに、「杵島」(きしま)の家に着く。
杵島は母親の旧姓だ。

ガラガラと玄関の引き戸を開けると、中からはワイワイと賑やかな声が聞こえてくる。
足元には、靴がわんさか。
既に親戚一同が集まっているようだ。

私「こんにちはー」

私は奥まで聞こえるように声を張り、挨拶をする。
すると賑やかだった声が少し静まり、「あ、来たんじゃない?」「来た来た」といった声と共に、親戚の叔母さんが私を迎えに出てきてくれる。

叔母「あら〜古乃羽ちゃん、よく来たわね〜」
私「こんにちは、お久しぶりです」

ペコリと頭を下げて挨拶をする。
叔母「あらあら、いいのよぉ。ほらあがって、こっちこっち」

何がいいのか良く分からないけど、叔母はそう言うと私の手を引くようにして奥のお座敷に連れて行く。

叔母「ほらぁ、古乃羽ちゃん来たわよ〜」

声高らかに、私の到着を告げる叔母さん。
いつも元気な人だけど、今日はいつも以上にテンションが高いような…?
263赤緑 ◆kJAS6iN932 :2011/12/19(月) 09:41:17.91 ID:bETU5NQy0
3/18
私「あ…こんにちは、ご無沙汰しています…」
お座敷に集まっていた親戚一同の視線を一斉に浴び、少し緊張してしまう。

何でこんなに注目されているかな…

と思いながらも、「先にお線香あげてきます」と言って私は一度その場を失礼し、2階で祖父にお線香をあげてからまた戻ってくる。
すると、待っていましたとばかりに再び視線が私に集まる。

うーん、何だろう?と疑問が浮かぶけど、その理由はすぐに分かった。
親戚一同からの「遠かったでしょう」「久しぶりだねぇ」「大人っぽくなったねぇ」などといった挨拶の中に、こんな質問が紛れていたからだ。

「彼氏さんは一緒じゃないの?」

私「はい…?」

すると、「いやぁ、まだ早いわよぉ」と声が上がり、ちょっとした笑い声が起きる。
そう言ったのは他でもない、私のお母さんだ。
間違いなく、情報を漏らした張本人。
その横には、少し拗ねた感じのお父さんがチビチビとお酒を呑んでいる。

ん、もう――!
264赤緑 ◆kJAS6iN932 :2011/12/19(月) 09:43:36.07 ID:bETU5NQy0
4/18
それから約30分間、怒涛の質問攻めにあった私は、「今は2階の部屋で休んでいる」というお婆ちゃんにも挨拶するためにお座敷から逃げ出した。

さっきお線香をあげに来たときもそうだったけれど、2階に上がると下の騒ぎが嘘のように静かで、少し落ち着いた気持ちになる。

何だか懐かしい香りのする、木造の古い家。
2階は部屋数が多く、仏間などもあわせて大小10部屋もある。
これだけ部屋数が多いとお掃除が大変そうだな、なんて、小さい頃は考えもしなかったことを思いながらお婆ちゃんの部屋に行く。

私「お婆ちゃん、起きている…?」
部屋をノックしてから、そっと扉を開けて声を掛ける。
すると、お婆ちゃんはベッド上でニコニコしながら私を迎えてくれた。

祖母「よく来たねぇ、古乃羽。元気にしていたかい?」
私「うん。お婆ちゃんはどう?」
私は部屋に入ると、ベッドのすぐ近くまで行ってそこに置いてあった椅子に座る。

祖母「相変わらず、ずっと良いよ」
私「良かった…」

今年で74になるお婆ちゃん。でも、具合が悪くなったという話は一度も聞いたことが無い。
しっかり食べて、しっかり寝て、ちょっとした畑仕事もして。
お母さんが、「アレは相当長生きするね。お爺ちゃんが寂しがっているかも」なんて、冗談交じりで言っているくらいだ。
265赤緑 ◆kJAS6iN932 :2011/12/19(月) 09:45:44.20 ID:bETU5NQy0
5/18
お婆ちゃんの部屋で、私は自分の近況などの話をする。

すると、当然というか…付き合っている人が居る、という話になる。

祖母「そういえば、光恵(私のお母さんの名前)がそんなこと言っていたねぇ」
私「そうなの。あっちこっちで言いふらしているみたい」

まったく、恥ずかしくて仕方が無い。
100歩譲って親戚相手だけなら良いけど、家の外でもそんな事言っていたら…なんて心配になる。

祖母「良い人なのかい?」
私「…うん」
祖母「良かったねぇ…。曾孫の顔が見れそうかねぇ」

曾孫…と聞いて、少し顔が赤くなる。
お婆ちゃんの孫の中では、私が一番年上だ。
まぁ…2人しか居ないのだけど。
もう1人は、先ほどの叔母さんの子供――女の子で、まだ5歳。
だから、曾孫を期待するなら当然私が、ということになる。

私「…うん。楽しみにしていてね」

お婆ちゃんの手を握って、そう答える。
他の人に言われたのなら、何言っているの、まだ学生よ?早いわよ、と答えるところだけど…。
266赤緑 ◆kJAS6iN932 :2011/12/19(月) 09:47:59.62 ID:bETU5NQy0
6/18
祖母「古乃羽が好きになった人…どんな人なのかねぇ」
独り言のように呟くお婆ちゃん。

私「…」
質問では無かったのかも知れないけど、私は何となく彼のことを思い浮かべる。

…と。

祖母「古乃羽?」
突然、お婆ちゃんが驚いたような声を出す。

私「ん…なぁに?」
何事かとお婆ちゃんを見ると、お婆ちゃんは目を大きく見開いて、私をジッと見ながらこう言った。

祖母「古乃羽には、出たのだね…」

私「出た、って…何が?」
祖母「…」

私が聞き返すと、お婆ちゃんは視線を落としてため息をつく。

祖母「光恵には出なかったから…」
そう呟くお婆ちゃん。
…何のことだろう?
267赤緑 ◆kJAS6iN932 :2011/12/19(月) 09:50:06.28 ID:bETU5NQy0
7/18
祖母「古乃羽…」
私「…なぁに?」

いつになく、緊張した感じで話し掛けてくるお婆ちゃん。

祖母「古乃羽は見えるのだね?」
私「え…」

ドキリとする。
…前にも何回かあったけれど、私は自分の目の事を言われると、いつもドキッとしてしまう。

私「何で…?」
小さい頃から今まで、お婆ちゃんとそんな話をしたことは一度も無かった。

祖母「杵島の女は、昔からそうなのよ」
私「…」
初耳だ。

祖母「光恵みたいに、出ない場合もあるのだけどねぇ」
私「そうなの…」

私のこの目は、血筋だった訳だ。
今まで聞いたことが無かったのは、お母さんがそうではなかったからだろうな。
268赤緑 ◆kJAS6iN932 :2011/12/19(月) 09:52:50.36 ID:bETU5NQy0
8/18
私「あ…、じゃあ、お婆ちゃんも見えるの?」

私にそう言ってきたということは…と思って聞くと、お婆ちゃんはコクリと頷く。

祖母「見えても何も良いことは無いし、気味が悪いと思われるだけだから…滅多に人には話さないけどね」

確かに私も、あまり人には話さない。
知っているのは美加達だけだ。

祖母「本当に、ただ見えるだけで、何も出来ないからねぇ…」

――そうなのだ。
除霊でも出来ればまだしも、ただ見えるだけ。
まったく無力で、怖い思いをするだけ。
下手をすると、この前の名刺のように大怪我をすることになる。

祖母「古乃羽も気を付けるようにね。危ない目にあわないように…」

実は既に色々と危ない目にあっているわけだけど、それは黙っておくことにした。
余計な心配を掛けるだけだものね。
269赤緑 ◆kJAS6iN932 :2011/12/19(月) 09:55:06.91 ID:bETU5NQy0
9/18
それからしばらくお婆ちゃんと話をした後、私は1階へと降りていく。
すると、丁度降りたところでお母さんがやってくる。

母「あぁ、いたいた。古乃羽、ちょっとお願い」
私「なぁに?」
母「はい、これ」

そう言って、お財布とメモ書きを渡される。
メモには「しょうゆ、お茶」などと書いてある。

母「それじゃ、お願いね」
それだけ言って、戻っていこうとするお母さん。

私「あぁん、ちょっとぉ」
母「なに?」

そんなお母さんを呼び止める。
彼の事を言い触らした件について、一言、言っておかないとな。

母「お買い物はイヤ、なんて言わないでよ?」
私「言わないわよ。それより――」
母「あ、雨月君のこと?いやねぇ、ほら、こうやって外堀から埋めていかないと。そうすればお父さんも分かってくれるわよ」
私「…拗ねていたじゃない」
母「大丈夫よ。いつもあんな感じなんだから」

いつもあんな感じって…それはそれで問題な気がする。
270赤緑 ◆kJAS6iN932 :2011/12/19(月) 10:00:50.84 ID:bETU5NQy0
10/18
母「あ、それより明後日ね?」
私「あ…うん。良いよね?」
母「もちろんよ。明日の法事が終わったら夜にはみんな帰るし、正一たちも「久しぶりだなぁ」って喜んでいたわよ」

正一とは杵島家の長男で、お母さんの弟さんだ。
私を出迎えてくれた叔母さんの旦那さんで、2人の間にはさっき言った5歳になる一人娘がいる。
つまり普段この家には、お婆ちゃんもあわせて4人が暮らしていることになる。

母「それじゃあ、そういうことだから。よろしくね」
私「うん。…って、ちょっとぉ」

文句の1つでも言ってやろうと思ったのに、何だか上手くはぐらかされてしまい、お母さんは私を置いてソソクサと去っていった。

私「もう…」

まぁ仕方ないかと諦めて、私は玄関に向かう…と、
今のやりとりが終わるのを待っていたかのように、今度は小さな女の子が絵本を抱えてトコトコとやってきた。
271赤緑 ◆kJAS6iN932 :2011/12/19(月) 10:02:33.03 ID:bETU5NQy0
11/18
私「あ、唯ちゃん」

やってきたのは、正一さんの一人娘の唯ちゃんだった。
頭に大きな黄色いリボンを付けており、なんとも可愛らしい。

私「こんにちは、唯ちゃん」
唯「…こんにちは」

私がしゃがみ込んで挨拶をすると、唯ちゃんはモジモジしながら挨拶を返してくれる。

毎年お正月には顔を合わせているけれど、唯ちゃんはかなりの人見知り――これくらいの年の子は、大体そうかな?――で、私の前でもいまだにモジモジすることが多い。

私「おリボン、可愛いねー」
唯「……」

私がリボンを褒めると、唯ちゃんは顔を真っ赤にして、持っていた絵本で顔を隠す。

…可愛いなぁ。
私もその仕草、真似してみようかな…なんて思ってしまう。
272赤緑 ◆kJAS6iN932 :2011/12/19(月) 10:04:50.85 ID:bETU5NQy0
12/18
照れている唯ちゃんをニコニコしながら見ていると、唯ちゃんは何も言わずに、絵本をスッと差し出してくる。

私「ん?…読むの?」
唯「…」

コクリとうなずく唯ちゃん。

困ったなぁ…。
絵本を読んであげるのは構わないのだけど――

私「ごめんね。お姉ちゃん、お買い物にいかないといけないの」
唯「……」

えー…という、この世の終わりのように悲しげな表情をする唯ちゃん。

そんな顔をされると、ちょっとタマラナイ。
なかなかコツを掴んでいるじゃない。これも参考にしようかな。

私「じゃあ…、唯ちゃん、お姉ちゃんと一緒にお買い物に行こうか?」
唯「うん!」

代わりにと思い誘ってみると、元気な返事が返ってくる。
良かった良かった。
奥に居る叔母さんに一声掛け、絵本を置いてから、私は唯ちゃんと2人でお買い物に出掛けることにした。
273赤緑 ◆kJAS6iN932 :2011/12/19(月) 10:06:32.24 ID:bETU5NQy0
13/18
買い物先は、去年の暮れにできたばかりだというスーパー。
家からあぜ道を通り、林の間の道を抜けた先、歩いて15分程の場所にある。…何気にちょっと遠い。

田園風景の中にある、多少浮いた感じのスーパー。
そろそろ辺りも暗くなり掛けていたので、私たちは着いて直ぐに頼まれた買い物を済まし、来たときと同じように唯ちゃんと手を繋いで家路に。

帰り道の唯ちゃんの手には、スーパーで買って上げた棒付きのキャンディ。
唯ちゃんは「ありがとう」と言ってくれたけれど、何を隠そう、お金の出所は母のお財布だ。

あ。そういえば…?

林の道に差し掛かったところで、私はふと、あることを思い出す。

――杵島の女。

お婆ちゃんは、戦争で兄弟を全て亡くしている。
そのためか、お爺ちゃんをお婿さんとして迎えており…その子供は私の母と正一さんの2人だけ。
そして、私も唯ちゃんも一人っ子。
つまり「杵島の女」と言うと、お婆ちゃんと私の母、それと私と唯ちゃんの4人だけになる。

母には「出なかった」らしいけれど…じゃあ、唯ちゃんには?
と、思ったときだった。

突然、ポツポツと雨が降り出してきた。
274赤緑 ◆kJAS6iN932 :2011/12/19(月) 10:08:32.93 ID:bETU5NQy0
14/18
私「あれ…雨?」
不思議に思い、空を見上げる。
少し薄暗くなってきているけど、見事に晴れ渡った空。予報でも、今日は一日晴れだったはずだ。
こういうのって確か…

唯「キツネのよめ入りー」

あれ。先に言われた。

私「そうだね。すごい、唯ちゃん、物知りなのね」
唯「おしえてもらったのー」
私「へぇ…」

そう言いながら、私たちは雨を凌ぐために、道の脇にあった大きな木の下に逃げ込む。
私「ちょっと雨宿りしようね」
唯「うん」

雨が降り出したのが、林の道を歩いているときでよかった。
田んぼの真ん中で降られたら、家まで走って帰っても、きっとビショビショだっただろうな。
雨足は大したことは無いけれど、ちょっと距離があるから。
275赤緑 ◆kJAS6iN932 :2011/12/19(月) 10:10:53.67 ID:bETU5NQy0
15/18
私「唯ちゃん、この雨の事、お婆ちゃんに教えて貰ったの?」

雨が止むのを待ちながら、私は何となく聞いてみる。
すると唯ちゃんは、飴を咥えたまま首を横に振る。
どうやら違うようだ。

私「それじゃ、お父さんかお母さん?」

これにも首を振る唯ちゃん。

私「んー…じゃあ、誰かな?」
それなら、きっと私の知らない人なのだろうけど…何となく気になるので聞いてみる。
すると唯ちゃんはスッと手を上げ、道の先を指差す。

え?と思い、私はその先を見る。

一瞬、そこには誰も居なくて…と思ったけど、そこには1人の男の人が歩いてきていた。

私「あ…」

雨の中、傘を差してこちらに歩いてくるその人。
見覚えがある、あの人は――

男の人「やぁ、古乃羽ちゃん。お久しぶり」
私「…明君?」
276赤緑 ◆kJAS6iN932 :2011/12/19(月) 10:12:33.12 ID:bETU5NQy0
16/18
物部明(ものべ あきら)。

地元に住んでいる、私より1つ年上の男の子。
杵島の家の近所に住んでいたので、夏休みに帰省した際にはいつも遊んでいた子だ。
今はここからは少し遠い、町の中心から離れた場所に住んでいる。

明「やぁ、びっくりした。唯ちゃんと一緒にいるの、誰かなぁって」
私「私も驚いた…」

傘を閉じ、木の下に入ってくる明君。
そして、唯ちゃんにも挨拶をする。

明「こんにちは、唯ちゃん。今日も可愛いリボンだね」
唯「…うん」

私の時以上に、顔を真っ赤にする唯ちゃん。
…まぁ、男の人に言われる場合とじゃ、少し違うかな?
明君、背が高くて格好良いし。

明「何年ぶりだろう?5年くらい?」
私に向き直り、明君が聞いてくる。

私「4年かな?前に帰ってきたのがそうだから」
明「そうかぁ…」
277赤緑 ◆kJAS6iN932 :2011/12/19(月) 10:15:05.10 ID:bETU5NQy0
17/18
明「…あ、そう言えば。聞いたよ古乃羽ちゃん」
フフフと含み笑いをするような感じで、明君が言ってくる。

私「…なぁに?」
その様子で何となく予想がついてしまうけど…

明「今、付き合っている人がいるって?」

うわぁ…やっぱり。
お母さんのバカ…。

私「もう。みんなに聞かれて大変なんだから、ヤメテ」
明「ハハハ…悪い悪い」
私「それより、紗希ちゃんは?元気にしている?」

紗希ちゃん。
昔、こちらで一緒に遊んでいた女の子だ。

明「元気だよ。古乃羽ちゃんが来ているって、伝えておくよ」
私「良かったぁ。私まだこっちに居るから、会いたいなぁ…」
明「あぁ、紗希も会いたがると思うから…訪ねておいでよ」

紗希、と呼び捨てにする明君。
昔から仲が良かったけど、どうやら今も良い関係みたいだ。
278赤緑 ◆kJAS6iN932 :2011/12/19(月) 10:18:03.62 ID:bETU5NQy0
18/18
私「――あ、そうだ」
明「ん?」
私「美加のことは覚えている?」
明「美加?…あー、神尾の美加ちゃん?」
私「そうそう」
美加は過去に2、3回ここに来たことがあり、明君達とも会って一緒に遊んだことがある。

私「明後日ね、美加も来るの」
明「へぇ…」

そうなのだ。
明日の法事が終わった後、明後日の朝、美加が遊びに来ることになっている。
何も無いところなのに…と言うと、美加は「それが良いのよ」と言っていた。
自然の中でリフレッシュしたい、ということらしいけど…。

その後も雨が止むまでしばらく明君と話をする。勿論、唯ちゃんも交えて。
人見知りな唯ちゃんだけど、明君とは仲が良いみたいだった。
さすがは地元の人、かな?

やがて雨が上がったところで、私達は明君に別れを告げる。

――その帰り道、私の頭には、1つの疑問が浮かんでいた。

予報にもない突然の雨だったのに、明君はなぜ傘を持っていたのかな、と。


279本当にあった怖い名無し:2011/12/19(月) 10:31:36.65 ID:nhmDPPTx0
また無駄に長い
もっと短くまとめろよ
280本当にあった怖い名無し:2011/12/19(月) 11:26:55.48 ID:38OR141I0
半ば諦めてたから素直に嬉しいw
281本当にあった怖い名無し:2011/12/19(月) 19:32:47.53 ID:bA2ImIg80
駄作シリーズで何でもおk
282本当にあった怖い名無し:2011/12/19(月) 19:33:31.52 ID:bA2ImIg80
おk
283本当にあった怖い名無し:2011/12/19(月) 19:46:46.53 ID:bA2ImIg80
飾らない様に、誤魔化さぬ様に、その目を開いておk、おk
284本当にあった怖い名無し:2011/12/22(木) 12:39:52.52 ID:tmYdRgFl0
まともな作家で一番評価の低い赤緑が残ったのかよ・・・・
285本当にあった怖い名無し:2011/12/24(土) 03:02:23.02 ID:LkTsuXPE0
久々に見たら赤緑来てた!
乙です!
286本当にあった怖い名無し:2011/12/24(土) 12:40:48.59 ID:9e4pKdBzO
なんか空白が続いているけどまたメリ野郎か。
287ウニ  ◆oJUBn2VTGE :2011/12/24(土) 22:43:08.82 ID:CEmZxyJu0
投下しようとしたら、知らない間に忍法帖とかいうシステムが導入されていて驚きました。
この仕様だと、めったに書き込みをしない自分のような人間は長文は書き込めないのですね。
夏の『食べる』は普通に書き込めた気がするんですが。
ピクシブはあくまで2ch投下前の完全版確認用のつもりだったのですが、本格的に2chから撤退しないといけないような感じになってきました。
本当に残念です。
288ウニ  ◆oJUBn2VTGE :2011/12/24(土) 22:46:56.06 ID:CEmZxyJu0
この程度の長さの文でも2回に分けないといけないのか…orz
どなたかにこっちへ代理投下をお願いするか、あるいは少しづつでも自分で忍者?レベルを上げるかするといいのかも知れませんが。
どうすべきか考えてみます。今夜はもう寝ます。
289本当にあった怖い名無し:2011/12/24(土) 23:21:18.41 ID:XlnaFYu90
忍法帳って何のためにあるんだろうな
290本当にあった怖い名無し:2011/12/24(土) 23:52:57.94 ID:EqvaPoaR0
本格的にってことはやっぱり2chと意識的に距離を置く理由があったわけだ
ピクシブ投下するようになってからシリーズ物にウニさん降臨してるぞwwwみたいなプチ祭りも無くなったしな

2chに投下したって見たくもないレス見たりデメリットしかないからね
291本当にあった怖い名無し:2011/12/25(日) 01:30:04.21 ID:qsUPSHq9O
ではなぜ2chから始めた
292本当にあった怖い名無し:2011/12/25(日) 06:02:21.33 ID:Zx0rgfu70
>>291
2ちゃんは当時今よりももっとよかったのだよ。
気軽に書き込めたし、否定意見にもそれなりに筋の通った意見もあったしね。
293本当にあった怖い名無し:2011/12/25(日) 07:24:25.84 ID:X9ZbW/DxO
>>291
昔は信者を集めるのが楽だったから
今ならピクシブとかモバゲーの方が集めやすい
294本当にあった怖い名無し:2011/12/25(日) 07:27:28.17 ID:7JKmSsfmO
でもウニさんは2chでの投下を続けたいと思ってるようだ。いい方法はないのかなあ
295本当にあった怖い名無し:2011/12/25(日) 08:39:28.39 ID:NMeu1tIp0
それはこうよ
ウニ氏が俺に毎日新作を送信する
それを俺が読む
後は俺の胸三寸

てかメルマガ形式にしてみて儲けがあれば
やる気出るとか。
商売何たら〜、のウザイの排除できるし
ああそうだ
配信の条件は感想とか

よしメルマガな
296本当にあった怖い名無し:2011/12/25(日) 12:26:57.27 ID:/7YKUYgx0
>>288
ブログを作るのが一番だと思う。
297本当にあった怖い名無し:2011/12/25(日) 12:27:24.06 ID:/7YKUYgx0
忍法チョウのせいで投下がなくなったのか。
298本当にあった怖い名無し:2011/12/25(日) 13:50:50.09 ID:z2FYertf0
赤緑は投下できてるのに
299本当にあった怖い名無し:2011/12/25(日) 16:34:58.10 ID:HGRx+SgL0
赤緑は専用スレ?でコツコツレベル上げたとブログに書いてたな
300本当にあった怖い名無し:2011/12/25(日) 16:50:19.35 ID:8Marj35F0
>>287-288
テンプレにもあるけど、洒落怖まとめ掲示板という選択肢は念頭にはないのでしょうか?
あと、コツコツレベル上げしても突然レベルリセットするから意味ないよ
301本当にあった怖い名無し:2011/12/25(日) 17:06:09.12 ID:AaMp5m+P0
コツコツったって書き込み容量制限はたったのlv=8で全解除だぜ?
302本当にあった怖い名無し:2011/12/25(日) 17:34:44.92 ID:cXOK7Agh0
ウニさん、週1くらいでしかネット繋がないんじゃなかったっけ?
レベル上げるだけでも時間かかるな
303本当にあった怖い名無し:2011/12/25(日) 18:14:11.48 ID:87BCNUyl0
読めればどこでもいいな
304本当にあった怖い名無し:2011/12/25(日) 18:14:49.32 ID:AaMp5m+P0
レベルの上昇より筆が速くて追いつかないってんなら問題も出ると思うがね
305本当にあった怖い名無し:2011/12/25(日) 18:18:18.91 ID:7JKmSsfmO
レベル8ってどれくらい頑張ったらなれるの?
306本当にあった怖い名無し:2011/12/25(日) 18:38:35.67 ID:AaMp5m+P0
ざっくり言えば、一日一回「てst」でもなんでもいいから書き込むのを7日
307本当にあった怖い名無し:2011/12/25(日) 19:21:09.63 ID:Zgb6DX2N0
ウニ氏のやりたいようにやればいい


・・・と、言いたい所だが。



同人だと読む機会減るな〜〜〜〜

それと洒落怖まとめ掲示板は絶対NGね
コピペするのにも管理人の許可が必要なんだと
308本当にあった怖い名無し:2011/12/25(日) 20:35:31.99 ID:h9lvYYnq0
じゃあこうしよう。
最初の1週間で超SSを投稿。
(ウニと師匠の小粋な会話的な)
レベルが上がった所で本番。
それにより焦らしに焦らされた俺達は悶絶して昇天。
309本当にあった怖い名無し:2011/12/25(日) 20:38:03.11 ID:h9lvYYnq0
>ウニさん、週1くらいでしかネット繋がないんじゃなかったっけ?

最初の2ヶ月に訂正。
310本当にあった怖い名無し:2011/12/25(日) 21:28:42.88 ID:8Marj35F0
>>307

>それと洒落怖まとめ掲示板は絶対NGね
コピペするのにも管理人の許可が必要なんだと

読めればどこでもいいよ
コピペNG嫌がる人ってまとめサイトなりブログなりの管理人以外いるの?
どこに投下しようか迷ってるのにあなたが兎や角言うのはどうかと思うが

>ウニ氏のやりたいようにやればいい

速攻でそれを否定してどうするw
311本当にあった怖い名無し:2011/12/25(日) 22:58:02.84 ID:8Marj35F0
ついでにまとめ掲示板覗いたら祟られ屋シリーズ来てたw
312本当にあった怖い名無し:2011/12/25(日) 23:20:37.29 ID:FG6gti+g0
おまえら涙拭けよ
313本当にあった怖い名無し:2011/12/25(日) 23:53:13.39 ID:FUSTRdwZ0
>>310
お前はいいんだろう
お前はな
314本当にあった怖い名無し:2011/12/25(日) 23:58:29.99 ID:S8rcevei0
何かくっせえの湧いてんな
315本当にあった怖い名無し:2011/12/26(月) 00:22:25.67 ID:nP18Gx7P0
例のネンチャックも必死に洒落コワまとめサイトに誘導してたなあ
316本当にあった怖い名無し:2011/12/26(月) 08:28:17.65 ID:06ti1vP7O
アフィで儲けたいんだろ
317本当にあった怖い名無し:2011/12/26(月) 10:45:40.37 ID:evuxlD5F0
ボリュームある本格的なものは同人、
補完的なSSはここ

これでどうよ?

同人は宣伝ってか情報だけ貰えりゃ・・・って
根本的な解決にはならんか
318本当にあった怖い名無し:2011/12/26(月) 19:49:10.11 ID:Zho6MBBDO
てst
319本当にあった怖い名無し:2011/12/26(月) 23:04:59.09 ID:Mm0KTe900
洒落怖まとめ薦めたら粘着荒し認定されたでござる
意味ワカンネ
320本当にあった怖い名無し:2011/12/26(月) 23:17:56.99 ID:it/31UNG0
ぶっちゃけあんなのは無視しておkなレベルだし、まとめ→ここでいいんじゃないかな?
321本当にあった怖い名無し:2011/12/27(火) 11:45:57.94 ID:kejfjKf90
で、誰がそんな二度手間をやるんだ
同人やピクシブでやってるならここやまとめに投下する意味なんかないだろ
322本当にあった怖い名無し:2011/12/27(火) 12:12:35.04 ID:PB3wFZgn0
なんで誰もが同人誌を手に入れらると思ってるんだよ
323本当にあった怖い名無し:2011/12/27(火) 13:10:23.79 ID:kejfjKf90
乞食したいだけかよ
324本当にあった怖い名無し:2011/12/27(火) 13:51:46.47 ID:g7CNQyMU0
テキストファイルろだにあげて、「うpしたよ」って書いてもらえば終わりだろうにw
325本当にあった怖い名無し:2011/12/27(火) 13:56:47.76 ID:Z6T4FbWH0
>>324


 SO  ☆  RE  ☆  DA   !!!!!!


コピペは我々住人にMA・KA・SE・RO!!!!
326本当にあった怖い名無し:2011/12/27(火) 14:39:04.50 ID:bKiYwLaiO
本屋に売ってるなら喜んで金出して買うけどよ、同人誌?それどこで売ってんだよ
え?コミケ?行けるかボケ
327本当にあった怖い名無し:2011/12/27(火) 19:05:33.52 ID:6N6wVPLf0
誰も買わなきゃやらなくなるでしょ。
でもおまえさん以外にいくらでも買うやついるから諦めなさい。
328本当にあった怖い名無し:2011/12/27(火) 22:18:00.04 ID:TH3KlKth0
ウニさんは同人即売の魅力に取り付かれてしまったのだ
329本当にあった怖い名無し:2011/12/27(火) 23:01:02.50 ID:PB3wFZgn0
あーウニ信者ってマジでムカツクわー
なんであいつ専用スレで投下しねーのか
330132:2011/12/27(火) 23:02:43.81 ID:WhTuM3+A0
>>329
半年ROMれks
331本当にあった怖い名無し:2011/12/29(木) 09:26:35.04 ID:7PumfVB90
霊感タロットで霊感磨けるかな?
332本当にあった怖い名無し:2011/12/29(木) 12:28:55.72 ID:6mgtl/hM0
うんうん、磨ける磨ける
騙されたと思ってやってみな
ただし、5年10年で結果が出ると思うなよ
333本当にあった怖い名無し:2011/12/29(木) 18:12:11.05 ID:I0/G7uwi0
ウニの商業デビューも時間の問題か…
334本当にあった怖い名無し:2011/12/31(土) 18:54:58.71 ID:zBpUU2kx0
おk
335本当にあった怖い名無し:2012/01/01(日) 14:20:48.14 ID:MxBv7tvd0
あけおめことよろ
今年は投稿者増えますように
336未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 22:15:41.13 ID:93PkLSJW0
師匠から聞いた話だ。


大学一回生の冬。僕は北へ向かう電車に乗っていた。
十二月二十四日。クリスマスイブのことだ。
零細興信所である小川調査事務所に持ち込まれた奇妙な依頼を引き受けるために、バイトの加奈子さんとその助手の僕という、つましい身分の二人で、いつになく遠出をすることになったのだ。
市内から出発するころにはかなり込んでいた車内も、大きな駅を通り過ぎるたびに少しずつ人が減ってきた。
はじめはゴトゴトと揺れる電車の二人掛けの席に並んで腰掛け、荷物をそれぞれ膝に抱えていたのだが、閑散としてきたのを見計らい、僕は空いた向かいの席に移動して荷物を脇に置いた。
僕をこの旅に駆り出した張本人であり、オカルト道の師匠でもある加奈子さんはさっきから一体いくつ目になるのか知れないみかんの皮を真剣な表情で剥いている。
その横では窓のサッシに敷いたティッシュの上に剥かれた皮が小さな山を作っている。
「イブに温泉かぁ」
頬杖をつき、特に感情を込めずに僕がそう呟くと、その師匠はみかんの表面の白い繊維を千切れないように慎重に剥がしながら顔を上げた。
「イブってのは日没から深夜二十四時までのことだ。二十四日の昼間はクリスマスイブじゃない」
「本当ですか」
「百科事典で調べてみるか」
師匠はそう言って笑った。
今日は天気がいい。
それでも山肌や、畑。水路。あぜ道。送電線。そして瓦屋根。流れるように過ぎ去っていく景色には、寒々とした冬の色合いが濃い。
今回の依頼は、以前オカルトじみた事件を解決してもらって以来、師匠のシンパになってしまったという、ある老婦人の口利きで転がり込んできたものだった。
北の町の市街地から離れた温泉旅館で、このところ幽霊の目撃談が相次ぎ、営業に支障がでているというのだ。
そんなものは、仮に本物だとしても、いや、ガセだったとしても、どちらにせよ地元の神社やお寺にお願いして祓ってもらえば済む話だろう。ところがそれが全く効果がないらしいのだ。それも目撃される幽霊というのが問題だった。
337未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 22:19:43.56 ID:93PkLSJW0
「神主?」
「そう。神主の格好してるんだと」
師匠はみかんにこびりついた白い繊維をすべて取り去ってなお、まだ残っていないかと、じろじろと見回しながら答えた。
「小さな温泉街だ。そのあたりにあるのも若宮神社っていう一社だけ。歴史はあるみたいで、先祖代々一族で神主を引き継いできてるんだけど……」
「その神社のご先祖様が化けて出てるんですか。温泉旅館に」
「そこなんだよ。理由がわからないんだ。場所も歩いて四、五十分くらいは離れてるらしいし、どうしてわざわざ旅館の方へ出てくるのか」
「なにか因縁があるんでしょうかね」
「それが旅館の方にも、神社の方にも全然心当たりがないらしい。責任を感じて今の宮司がかなり本格的にお祓いをやったらしいんだけど、効果なし。依然として夜中に旅館の中を狩衣(かりぎぬ)に烏帽子、袴姿の幽霊がさまよってるんだとさ」
神職の服装ってのは主に三種類に分けられる、と言いながら師匠はティッシュの中から手ごろなみかんの皮を摘み出した。
「まず、正装。新嘗祭とかの大祭で着る衣冠(いかん)だな。次に礼装。紀元祭とかの中祭で着る斎服(さいふく)だ。
これも頭は冠。最後に小祭、恒例式とか日ごろのお勤めで着る常装。これが狩衣に烏帽子、袴ってわけ」
師匠が順番に指をさす三つ並べられたみかんの皮をどれほど見つめてもそんな違いを感じ取れない。
「まあ、冠と烏帽子はシルエットでも見た目違うから分かるよ」
ではその日常の格好である常装で化けて出てくるところになにか意味があるのだろうか。
「さあ。一番多い格好だからじゃない」
師匠はすべての繊維を取り去り、すべすべになったみかんを満足そうに眺めながら言った。
「まあ、現地を見てみないことにはな」
そうですね。
窓の外に目をやろうとした瞬間、トンネルに入った。
「そういえば、最長で何日くらい向こうにいるんですか」
自分もそうだが、師匠の荷物もあまり多くない。
「その温泉で年越しを迎える馴染み客が何組かいるらしくてな。遅くとも二十九日までにはなんとかしたいらしい。まあ三日もあればなんとかなるんじゃないか」
338未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 22:25:24.66 ID:93PkLSJW0
二十四、二十五、二十六、と師匠は指を折った。
「三日ですか」
僕としては師匠が出向けば即解決か、解決不能かどちらかのような気がしていた。三日というのは中途半端な感じだ。
「強気に出たいけど、神主の霊が出るってのはただごとじゃない気がする。まあそれも踏まえて三日だ」
師匠がすべすべのみかんをまるごと口に放り込んだ瞬間、トンネルを抜けた。一瞬で、光が電車のなかに満ちる。
「お、着いたぞ。西川町だ」もぐもぐと口を動かしながら師匠が窓に張り付く。
緩い勾配の山が四方を囲んだ、盆地のような地形に出た。川が線路と平行に走っている。
田畑が広がっているその向こうに、かすかに市街地が見える。あまり高いビルの姿はなさそうだ。
「さあ、お化けを見に行こう」
師匠は目を細めて嬉しそうに言った。

           ◆

古びた駅の構内から出ると、申し訳程度の小さなロータリーに一台のバンが止まっていて、そのそばで二十代半ばとおぼしき年恰好の女性が立ったままタバコをふかしていた。
バンの側面には『旅館 とかの』と大きな文字で書いてあった。
「あ、小川調査事務所のヒト?」
女性がこちらに気がついてタバコを地面に落として踏みつけた。チェックのシャツに、ジーンズ、スニーカーという格好。
「私、『とかの』で仲居をしてる井口広子っての。よろしくね。あ、荷物後ろに乗っけるから」
そう言ってバンの後部ドアを開けると、僕と師匠のバッグを荷台にひょいひょいと放り込んだ。
スリムな体型に見えるが、意外に力があるようだ。
「まあ、乗って乗って」
僕らを収納し終わると、すぐにバンは発進した。背後の駅が小さくなっていく。
「バスのルートを教えてもらってましたけど」
師匠がクシャクシャになった紙を手にしながら言った。
339未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 22:29:00.65 ID:93PkLSJW0
「あ、そう? まあ、ちょうど私が暇だったから。それにバスだと一度役場の方へ回るからだいぶ遠回りなのよね」
広子さんはあまり丁寧とは言いがたい口調だったが、どこかしら好感を持てるキャラクターだった。
「ねえ、あんまり詳しく聞いてないんだけど、あなた除霊とかするヒトなの?」
「除霊はできませんよ。ただ……」師匠は無遠慮な問い掛けに苦笑する。「ただ、解決するだけです」
「ふうん」
広子さんはバックミラー越しに後部座席の僕の方を見た。
「そっちのコが、助手ってコ?」
「はあ。どうも」
会釈すると、広子さんは顔を変に中央へ寄せて笑顔を作った。思わずこちらもつられて笑ってしまう。
それからしばらく僕らはバンの座席で揺られ続けた。
師匠は広子さんに土地柄に関する質問をして、そのたびにしきりに頷いている。
「とにかくど田舎よ。ど田舎。あたしもいつか絶対こんなトコ出てってやるんだから。……あ、田中屋だ」
広子さんの視線の先には大型のバンが走っている。その後部には「田中屋」という文字。
「あれは、うちのお隣の旅館の車。お隣っても、うちが一番辺鄙なとこにあるから、だいぶ離れてんだけど。うわー、団体客乗せてんじゃん」
宿泊客用の送迎車らしい。
広子さんは舌打ちをすると、乱暴なハンドルさばきであっと言う間に前を走る田中屋の車を追い抜いた。
「へへーん。うちは小さいけど小回りが身上だから」
 同業者なのに、いや同業者だからか、普段からかなり仲が悪そうだ。本人は口笛など吹いている。
いつの間にかバンは市街地から抜け、周囲に田んぼの広がる川沿いの土手を走っていた。広子さんは窓の外に目をやりながら、「枝川っての。線路沿いの増井川の支流」と言った。
窓から外を見ていると、大きな貯水池のようなものが前方に見えてきた。
「ああ、あれは亀ヶ淵っていう溜め池。昔なんとかって武将が作ったんだって」
340未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 22:32:28.14 ID:93PkLSJW0
平地の中にぽっかりと水面が開けている。かなり大きい。溜め池のそばの道沿いに看板のようなものが立っている。書いてある文字は見えなかった。
それからほどなくして蛇行した川を横切る形で橋を渡り、バンは山の麓の方へ進んでいった。
「着きましたよ。お客サマ」
バンが速度を緩めたのは、山に抱かれるような奥まった場所にひっそりと立つ二階建ての建物の前だった。
『とかの』という、ひらがなで大書された屋号が玄関に大きく飾られている。
大きく開かれた門を抜け、玄関に近づいていくと旅館の半被を着た若者が大きな箒を持って枯葉を掃いていた。
「あら。あのお坊ちゃん、また来てるよ。マメだねえ」
お坊ちゃん? 広子さんの口調には呆れたような、それでいてどこか意味深な響きがあった。彼はこの旅館の従業員ではないのだろうか。
広子さんが玄関に車を横付けすると、若者はこちらに軽く頭を下げてから自動ドアの中へ消えていった。
そして僕らが車を降りて荷物を出そうとしていると、白髪交じりの髪を短く刈り揃えた男性がドアから出てきて「お待ちしておりました。お持ちします」と言った。
やはり旅館の半被を着ている。小太りだが、動きはキビキビしていた。「あ、いや、自分で持ちます」と言いかけた師匠から押し付けがましくなく、自然に荷物を受け取った。
どうやら水周りのトラブルに呼びつけた修理工という感じではなく、それなりに客としての待遇ではあるようだ。
「あ、お父さん。くるま、車庫でいいの?」
広子さんの言葉に男性は頷いてから、ニコリともせずに「こちらへどうぞ」と僕らを自動ドアの方へ先導した。どうやら親子で働いているらしい。広子さんは仲居ということだったが、さしずめ父親は番頭というところか。
車を回す広子さんを尻目に僕らは旅館の中に入っていった。
タイル張りのたたきで靴を脱ぐと、狭いが整然としたロビーが目の前にあった。床には赤い絨毯が敷き詰められている。中は暖房が効いていて、ほっと人心地がつけた。
人形などの民芸品で飾られたフロントの奥から、和服の女性が姿を現した。薄桃色の上品な着物だ。
「ようこそいらっしゃいました」
341未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 22:40:29.86 ID:93PkLSJW0
微笑んだ後で頭を下げる姿は流れるようで、いかにも身についた仕草という感じがした。
四十年配の女将は続けて「依頼をした戸叶(とかの)です」と名乗った。師匠が名刺入れを出したので、僕も慌ててポケットを探る。
興信所の所長は僕らバイトにも名刺を作ってくれていた。ただし、大きな声では言えないのだが、偽名だ。バレやしないかといつも不安になる。
女将も懐から名刺を出してお互いに交換した。
「よろしくお願いします」
特に名刺の名前に疑惑を持った風もなく、女将はにこやかに「まずお部屋へどうぞ」と片手を広げた。
ロビーを回り込むように抜けると、先へ伸びる廊下と階段があり、僕らは二階に案内された。
本来師匠が一人でやってくるはずのところを、急きょ僕も助手としてついていくことになったので、部屋が二人分用意されているのか不安だったが、並びで二つきちんとかまえられていた。
和室の中に通されると、思ったより広く、家族連れなどのグループ客が使う四、五人用の部屋のようだった。こんなことろを一人で使うのは申し訳ない気分になる。
女将は「今日はあと二組お見えになっているだけですから、お二階はすべて空いておりますので」とこちらの考えを見通したようなことを言って、「また後で参ります。遠路お疲れでしょうからまずはおくつろぎください」と去っていった。
僕としては、「申し訳ありません、一部屋しか用意できず」、「いえいえ、一向に構いません。ねえ師匠」、「しょうがないなあ。布団だけは離して敷いてくださいね」という展開を心のどこかでは期待していたので、幾分がっかりしたのだが。
とりあえず荷物を置いて、部屋のテーブルにあった茶菓子を掴むと隣の師匠の部屋へ移動した。同じような造りの和室だ。
隣の部屋では師匠がさっそくお茶をいれていたので、ご相伴に預かることにする。
「思ったよりいいところだな」
師匠の言葉に僕はこれまでに見たこの旅館のパーツ、パーツを思い浮かべ、そして頷いた。
「ただで泊めてもらって、その上、バイト代ももらえるなんて最高じゃないか」
「その分プレッシャーなんですけど」
口にすると、なんだか本当に不安になってきた。
342本当にあった怖い名無し:2012/01/02(月) 22:42:40.86 ID:spc33BJaO
ウニさん、あけおめ!
支援
343本当にあった怖い名無し:2012/01/02(月) 22:43:53.64 ID:n7pJz57p0
忍法帖下でも支援は有効なんかな?
344未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 22:45:20.68 ID:93PkLSJW0
興信所の常として、成功報酬は別として、たとえ依頼内容が達成できなくても最低限の基本料金は払ってもらうのだ。もしこれでなにも成果なく逃げ帰るようなことになったら、と思うと……
「いいじゃないか。お化けを退治したら済むことなんだから」
「そう。それなんですよ。なにか感じますか、この旅館に」
僕はなにも感じない。今のところは、だが。
師匠は「うんにゃあ」と気のないそぶりで首を振ると、茶菓子に手を伸ばした。
「とりあえず、ただの噂とか勘違いの路線で裏づけを取る方向ですか? それともあくまで本物という前提でやっつけに行きますか」
これだけなにも気配を感じないとなると、『見る』のは大変そうだ。
「まあ、大丈夫じゃないか。聞いた話でも、出るのは夜だっていうし。それにカンだけど、今回のはたぶんホンモノだよ」
師匠はあっけらかんとしている。「お茶うめえ」などと言って僕の分の茶菓子にまで手をつけている。
そうこうしているうちに、女将がやってきた。そして依頼のことを口に出そうとしたとき、師匠がそれを制した。
「場所を変えましょう。この部屋では、主客が逆転してしまう」
女将は意外そうな顔をしたが、すぐに微笑んで「では下の応接室で」と言った。
なるほど。僕らは依頼を受けた立場で、女将の方が依頼客だ。それなのに、この客室にいては、職業柄女将は僕らを客として遇してしまうに違いない。それではちぐはぐなやりとりになると師匠は考えたのだ。さすがに慣れている。
階段を降り、僕らはフロントのちょうど裏側にあった応接室に通された。
僕と師匠はソファーに腰かけ、テーブルを挟んで向かいに女将と出迎えてくれた角刈りの男性。
「番頭兼料理長の井口です」
女将の紹介に男性は「井口勘介です」と頭を下げた。「先代からお仕えしております」
愛嬌のある顔ではない。薄くなりかけた頭の下に丸い鬼瓦が鎮座している。どこかムスッとしているようだ。
そしてその、お仕えしている、という時代錯誤な言い回しに、犬のような実直さを垣間見た気がした。
女将の名前は戸叶千代子といって、この温泉地である松ノ木郷で五つあるという温泉旅館の一つである『とかの』の三代目だということだった。
345本当にあった怖い名無し:2012/01/02(月) 22:50:10.72 ID:Q2jiagte0
バイバイさるさんは2011/11/11に廃止されました
346本当にあった怖い名無し:2012/01/02(月) 22:50:24.63 ID:RD1C3tCnO
微妙な出来の推理小説
347未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 22:50:28.87 ID:93PkLSJW0
この松ノ木郷は、温泉地としては歴史が浅く、明治に入ってからボーリングによって湧き出したものなのだそうだ。
その温泉旅館の中でもこの『とかの』は一番新しく、大阪で材木問屋を営んでいた初代の戸叶亀吉氏がこちらへ移り住んできて開いたものだという。
一番の新顔ということに加え、よそ者ということで最初は随分苦労したそうだ。旅館組合でもなにかにつけ、意地悪をされてきたという。
そしてそれは代を重ねた今になっても、日陰の下で続いているという話だった。
「私など、生まれも育ちも松ノ木ですのにね」と女将は寂しそうに呟いた。
そのよそ者に対する意地悪も、番頭の勘介さんという存在のおかげで幾分か和らいでいるそうだ。勘介さんの井口家は、地元の水利組合や消防団などでは中心となってきた家で、いわば松ノ木郷では顔役の一つだ。
その息子が番頭をしているというだけで、古参の旅館への睨みが利いていることになる。
勘介さん自身も持ち前の気性で、旅館組合の寄り合いなどで『とかの』が不利になるような取り決めが持ち出されると、真っ赤になって怒鳴りちらし、反故にしてしまうようなことも多々あった。
勘介さんは若い時分、あまりの不良ぶりで実家から勘当されそうになっていたところを、『とかの』の先代、つまり千代子さんの父親に諭されて、ここで働くようになったのだそうだ。
元々なにか打ち込めることがあると、真面目に取り組む性格だったらしく、とたんに人が変わったように汗水を流すようになり、先代にも大変可愛がられた。
それ以来、『とかの』への忠誠心たるや金鉄のごとし、という具合で、今や娘も仲居として親子二代で働いているのだそうだ。
ただこの情報、後半のほとんどはその娘の広子さんから後に聞き取ったもので、当の勘介さんは師匠と女将が応接室で話している間、ほとんど口を利かずに不機嫌そうな顔をしていた。
「幽霊が出るという噂が立ったのは一年ほど前からです」
とうとう本題か。
僕は緊張して膝の上の拳を硬く握った。
『とかの』の宿泊客から「夜中に幽霊を見た」という苦情が出るようになり、その噂が狭い松ノ木郷、そして松ノ木郷のある西川町に広がるのはあっという間だった。
それも決まって「神主の格好をしていた」というのだ。
348本当にあった怖い名無し:2012/01/02(月) 22:51:13.43 ID:n7pJz57p0
>>345
じゃあ放置するTHX
349未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 22:53:05.96 ID:93PkLSJW0
やがて仲居など従業員からも「見た」という証言が出始めた。このままにはしておけないと、地元の若宮神社に相談して、お祓いにきてもらった。しかし、一向にその出没が収まる気配はない。
隣の地区の寺にも頼んだが、やはりどれだけ念仏を唱えてもらっても効き目は現れない。
それどころか、夜に僧侶に来てもらった時など、しつらえられた護摩壇の上にそれをあざ笑うかのような神主姿の霊が浮遊しているのが見えると言って列席者から悲鳴が上がり、読経が中断される騒ぎにもなった。
もはや手の打ちようがなく、噂を恐れて客足は減る一方。
幸いにして「祟られた」だの「不幸があった」だのという話はなかったため、いっそ開き直って「神主さまの霊が現れる有り難い宿」という触れ込みで営業をするしかないのかと、今では迷っているのだそうだ。
松ノ木では比較的新しいとはいえ三代続いた温泉宿だ。もちろんそんなことは本意ではないだろう。女将は暗い顔をして語り終えた。
師匠はソファーに深く腰掛け、天井を見上げるような格好で思案げな顔をしている。
その様子に、なにか見えるのかと女将も不安そうに天井を見上げる。もちろんそこにはなにもなかった。
それにしても、幽霊が出るという噂は旅館業にはつき物だと思うが、ここまで深刻な話になるというのは余程のことだ。
師匠は前に向き直り、左手の指の背を顎先にあてながら女将に問い掛けた。
「あなたは見ましたか」
「はい」
女将は硬い表情でそれだけを口にした。
「一回ですか」
「いえ、何度か」
「その、神主の霊はなにかを訴えているような感じでしたか」
「さあ…… それは分かりかねます」
「こちらに危害を加えそうな様子ですか」
「そう、おっしゃる方もいらっしゃいます」
「あなたはそう感じなかったと?」
「はい」
師匠はこの場では自分自身のことを詳しく説明していない。ただこうしたことの専門家だということだけが事前に先方に伝わっているはずだった。
350本当にあった怖い名無し:2012/01/02(月) 23:10:42.56 ID:/B/Ws0CJO
ウニあけおめ
今年も楽しみにしてる
351本当にあった怖い名無し:2012/01/02(月) 23:11:09.20 ID:kD/8vDXc0
焦らしやがるぜ
352未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 23:13:25.59 ID:93PkLSJW0
女将は師匠のことをどう思っているだろう。テレビで見るような霊能者のように、「この霊はこういうことを訴えているのです」などとすぐさま断言し、そのうえ自ら憑依現象など起こしてみせるようなことを期待しているのだろうか。
「神主の服装は、どうです」
「どう、と言いますと?」
「今の若宮神社の宮司のものと同じですか」
「えっ。それは」
女将は驚いた表情を浮かべた。
「同じ、だったかと思いますが」
「自信はないんですね。では、若宮神社の宮司は霊を見ていますか」
「見て、いないようです」
「服のことは宮司から訊かれませんでしたか」
「はい」
師匠は舌打ちをした。
「大事な要素です。いつの時代の霊か、分かるかも知れないのに……。宮司は霊についてなんと言っていますか」
「どうしてこういうことになるのか分からない、と。とても困惑しています。それはこちらもですが……。とにかく、若宮神社にも私どもにも、まったく心当たりがないんです」
「よそ者、という点に関してはどうです。代々の氏子ではないわけでしょう」
「そんな。町の外から移り住んできた家は他にもありますし、私どももこちらに来てからは初代より若宮神社の氏子です。旅館組合からは継子(ままこ)にされても、若宮さまはわけ隔てなく接してくださいましたから、お互いにうらみつらみもございません。
私は当代の宮司の章一さんとは同じ小学校の先輩後輩で、年下の私を良く気にかけてくださいますし、娘の楓は、章一さんの次男の和雄さんと幼馴染でとても仲が良いのですから」
若宮神社の宮司は石坂という名前らしい。
勘介さんがムッスリした顔のまま頷いたところをみると、そのあたりの事情はそのとおりのようだ。
「では、いったい何のために霊はさまよい出てきているのでしょう」
「私どもには分かりかねます」
それはそちらの仕事だ、という表情で女将は師匠の目を見つめ返した。師匠は溜め息をついてその視線を避けると、少し口調を変えて言った。
「写真はどうです」
353未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 23:15:22.54 ID:93PkLSJW0
「え?」
「写真です。心霊写真。その神主の霊の写真は撮れていませんか」
「写真は…… 聞いたことがございません。写真に撮ったというような話はなかったかと思います」
「そうですか」
師匠は残念そうに自分の額を叩いた。
「いや、しかし、古い霊だと基本的に写真には写らないので、正体を知る上では少しヒントになるかも知れない。わたしの経験上、写真文化の成立前の霊は、心霊写真として撮れないことが多いんです。
写真という、己を写しとりうる機械の存在を知らずに死んだ霊らならば。つまり、江戸時代後期以前の霊ならば……」
はじめてそれらしいことを言った師匠に、女将は困ったような表情を浮かべた。信じて良いものか、迷っているような顔だった。
「まあいいでしょう。あとは、そうですね、この旅館の裏手は山になっていますが、そちらにはもしかしてその若宮神社の分社がありませんか? あるいは昔あったとか」
「いえ、ありません」
即答だった。
「今でも良く気晴らしに登ることがございますが、そういうものはありません。登り口が表から少し回りこんだところにあるんですが、そちらから山に入れます。気になるようでしたら、そちらからどうぞ。
とっても見晴らしが良いところがあるんですよ」
「それはぜひ。では、まず旅館の中を見せてもらいましょうか。恐らくですが、夜までなにも起こらないでしょう。それまで、できるだけ情報収集をしたい」
師匠は立ち上がった。
「運が良ければ今夜中に、相手の正体が分かるでしょう。正体が分かれば対処のしようがあります」
応接室を出るとき、先に立った僕がドアを開けると、すぐ前にいた女性にぶつかりそうになった。
「うわ」という声が出てしまった。相手も驚いたようだったが、ばつの悪そうな顔をして後ろの女将の方を見て首を竦めている。
「楓、なにしてるの」
「あの、いや、ちょっと」
楓というと、さっきの話にも出た女将の娘のはずだ。僕と同い年くらいだろうか。
354未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 23:19:59.14 ID:93PkLSJW0
髪をポニーテールにして、タートルネックの黒いセーターにデニムのパンツといういでたちからは、活発そうな印象を受ける。
どうやら盗み聞きをしていたらしい。
悩みの種だった幽霊騒動のさなか、解決のために霊能力者が雇われた、となると若い彼女が興味津々となるのも無理はない。
「楓、後でこの方々について裏山をご案内しなさい」
溜め息をつきながらの女将の言葉に、楓のすぐ後ろにいた仲居姿の女性が身を乗り出す。
「あ、私が案内しましょうか」
広子さんだ。いっしょに盗み聞きしていたのか。
「おまえは夕食の仕込みがあるだろうが」
勘介さんがボソリと言って自分の娘の頭を小突いた。結構痛そうだった。

           ◆

それから師匠は小一時間旅館の中を調べて回った。特に幽霊が出たという場所では、いつ、誰が、どんな風に見たのかをこと細かく聞き取った。
僕はそれにくっついて回り、書記係となって聞いた内容をすべて大学ノートにメモしていった。
師匠はその間、聞いた内容に関する評価をほとんど下さなかった。ただ淡々と事実を収集していくだけだ。
それらの目撃談は、旅館中に及んでいた。玄関や、廊下、客室や宴会場、そして中庭や温泉。その節操のなさからは、場所に関する拘りをまったく感じなかった。
ただ、その頻度からはこの『とかの』という温泉旅館そのものに対する異常な執念、あるいは執着のようなものを感じられた。
神主姿の霊は、人に危害を加えようとするようなそぶりこそ見せていないようだが、目撃者は皆、なんらかの怨念じみた恐ろしさを感じて怯えている。
廊下の壁から抜け出るように突然現れたかと思うと、反対の壁の中へ消えて行ったり、夜中に宿泊客がふと目を覚ますと布団の周囲を数人の神主姿の霊がゆっくりと歩いているのが見えたり。現れ方も様々だった。
「数人?」
宿泊客からそんな話を聞かされたという仲居の一人に、もう一度確認する。
「ええ。二、三人か、三、四人か。うろうろ歩いていたそうです」
355未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 23:21:52.22 ID:93PkLSJW0
「顔は? もしかして全員同じではなかったですか」
訊かれて四十年配の仲居は首を傾げる。
「そんなことはおっしゃってませんでしたね。でも、私も見たことがありますけど、顔はあまりよく見えないんですよ」
顔のあたりは妙にぼやけていて、ただ蒼白い顔をしている、ということだけが分かるのだという。
「ありがとうございます」
師匠はおおよそ必要と思われる情報を集め終わったのか、あるいはこれ以上聞いても有益な情報は得られないと判断したのか、調査を一旦打ち切った。
時計を見ると午後三時を回っていた。
「では裏山に登ってみます」
師匠がそう告げると、女将は娘を呼んだ。
「楓、ご案内しなさい」
「はあい」
セーターの上からジャンパーを羽織った格好で現れた楓は、元気に返事をすると右手を高らかと挙げてみせた。
「あ、では僕も」
その後ろから旅館の半被を脱ぎながら大柄な青年が現れて、はにかみながらそう言った。さっき玄関で枯葉を掃いていた人だ。
この若者が女将の話に出てきた、若宮神社の宮司の次男らしい。
その掃除している姿を、「お坊ちゃん」と呆れたように評した広子さんの態度が気になって、聞き込みの最中にもう一度広子さんを捕まえ、彼が何者か訊ねてみたのだ。
彼は石坂和雄といって、県内の大学の三回生。キャンパスの近くに下宿しているのだが、冬休みになって実家に帰省しているらしい。
そんなたまの里帰りなら、実家で足を伸ばしてゆっくりすればいいのに、と思うが、広子さん曰く、この旅館の一人娘の楓にホの字らしいのだ。
そのために、ヒマだからなにか手伝いますよと言って、足繁く『とかの』に通ってきては掃除に荷物運びにと、汗をかいているらしい。
そして夕方遅くなると、一緒に晩御飯でも食べていきなさいという話になり、いとしの楓ちゃんといられる時間をがっちりキープする、という具合だ。
もっともそれは今に始まったことではなく、狭い田舎のコミュニティの中で昔から幼馴染として仲良くしてきたらしい。
356未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 23:25:38.44 ID:93PkLSJW0
和雄の父親である現宮司の章一さんは女将の千代子さんと幼馴染であるし、章一さんの奥さんの昌子さんは千代子さんと同じ華道の先生についていた縁で仲が良いらしい。いわば家族ぐるみの付き合いだ。
そして二つ年下の楓が今年の春に高校を卒業し、地元の短大に通い始めてから和雄のアプローチが積極的になってきた。
将を射んと欲すれば、まず馬から射よ。とばかりに旅館に入り込んでテキパキと仕事をしてみせる和雄を、女将は上手く操っているようだ。
女将は十年ほど前に夫と死に別れ、それ以来女手一つで楓さんを育て、親から受け継いだ旅館を切り盛りしてきたのだそうだ。
いずれ楓に婿を取って、跡を継いでもらわないといけない。そこに若宮神社の次男坊であり、幼馴染の和雄といううってつけの人物がいるのだ。これを逃す手はない。
楓自身はまだ短大に入ったばかりで、遊びたいざかり。どうやら和雄のことは憎からず思っているらしいのだが、まだはっきりとは態度で示さず、バイトにサークルにと忙しい日々を送っている。
そんな二人の間を巧妙に取り持って、けっして下手に出ることなく、和雄の方から積極的にこの旅館へ通わせてあれこれ手伝わせているのが、女将の千代子さんというわけだ。
聞くと、和雄は普段の土日にも良く顔を出しているらしい。まめなことだ。
「じゃあ、行ってきます」
楓が玄関先で振り返りながら声を張り上げる。
「和雄さん、お願いね」
「はい」
女将は和雄の方へだけ声をかけた。そして師匠と僕に会釈して旅館の中へ戻って行った。
「こっちでーす」
楓が先導して、敷地の外へ出る。すぐ裏の山なので、旅館の建物を回り込んで行くのかと思っていた。
「この先を回ったとこから入山口があるんですよ」
早足で一人先へ先へ進む楓に苦笑しながら、和雄が説明する。
旅館のそばを流れる川沿いに少し歩くと山側に石段のようなものが見えてきた。「ここから登りまーす」
楓は苔むした石段を二段飛ばしで登っていき、そのたびにポニーテールの先がピョコピョコと揺れた。元気だし、動きが妙に可愛らしい。
357未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 23:27:51.55 ID:93PkLSJW0
和雄でなくとも、こういう子が幼馴染なら悪い気はしないなあ、などと考えていると後ろの師匠から「早く登れ」と尻を蹴られた。
石段はすぐに途切れ、枯葉で覆われた山道が現れた。標高の低い山だが、道はかなり険しい。寒さに慣れた身体はすぐに熱くなり、息が荒くなった。それでも山歩きは今年、師匠にかなり鍛えられたので、ペースを乱すほどではなかった。
楓と和雄も慣れた足取りで平然と登っていく。
「へえ〜。興信所で働いているんですか」
「ああ。その中でもわたしはオバケ専門」
「なんですか、オバケ専門って」
和雄は吹き出しながら師匠と会話を続ける。なんだか如才ないやつだ。体格も良く、少し彫りの深い顔だがなかなかの色男だし、なんと言っても笑顔が爽やかだった。
実に気に食わない。
「僕らも見たんですよ、例の幽霊」
な? と先頭の楓に話を振る。
「うん。見たよ。怖かった」
「どんな風に?」
師匠はこの場にいるのが全員年下のせいか、さっきまでの営業トークから一転してくだけた口調で話しかける。
楓は平日に仲居が一人休んだので、晩の給仕を手伝わされていた時、膳を下げるため廊下を通っていると窓ガラス越しに、やけに白っぽい格好のふわふわした人影が目に入ったのだそうだ。
「出る、って聞いてたけどホントに見たら腰が抜けそうになりますねえ」
人影はすぐに消えてしまったらしい。三ヶ月くらい前のことだった。
「僕の方は風呂場ですよ。二ヶ月くらい前かな。大浴場の外に露天風呂があるんですけど、帰りが遅くなって泊めてもらった時に、お客さんが全員出た後で一人で入ってたんですよね。
そしたら湯気の中からこっちにスーッって水面を歩いてくる人がいるんですよ。やばい、と思って立ち上がって逃げようとしたんですけど、お湯に足を取られて走れなくて、向こうはスーッて近寄ってくるでしょう? 
生きた心地がしなかったですよ。なんとか逃げ切って脱衣所のところまで来て振り返ったらもう見えなくなってましたけど」
あ、露天風呂自体はすごく良いお湯ですから、後でぜひどうぞ。
和雄はさりげなくそう付け加える。
358未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 23:30:00.47 ID:93PkLSJW0
「あなたはその神主の霊の子孫じゃないの? なんでびびってんの」
「いやあ、それなんですけど、なんかピンと来ないんですよね。ご先祖様がなんで『とかの』を祟らないといけないのか、さっぱり分からないんですよ。なにか言ってくれればいいのに、うらめしいの一言もなしですよ。なんなんでしょう、一体。親父も首を傾げてますよ」
父親の章一さんはかなり責任を感じていて、女将や楓に会うたびに頭を下げているらしい。
御祓いも何度も行なったし、それでどうしても上手くいかなかったので、恥も外聞もなくこうしたことに強いというお寺を自ら探してきたりと、とにかく神主の霊が出なくなるように協力してくれている。今のところその効果は見られないようだが。
次男とはいえ、成人した息子が幼馴染の女の子のところへ入り浸って、その家業の従業員のような真似をしているのを叱りもせずに見逃している、というのも、そうした後ろめたさがあるせいなのかも知れない。
「お父さんが宮司なんだよね」
「ええ。もう先祖代々の」
師匠は若宮神社の宮司、石坂家の家族構成を正確に聞き出した。
父親が宮司の章一、母親が昌子、兄が皇學館の大学院に在籍中の修(おさむ)、そして妹が専門学校生の翠(みどり)。あと父方の祖母がいるそうだが、今は西川町の病院に入院中とのことだった。
この一帯の松ノ木郷も行政単位としては西川町の一部なのだが、このあたりの人は町役場のあるあたりだけを指して西川町と呼んでいるようだ。
「兄貴が大学を卒業したら、戻ってくるんですよ。うちで権禰宜をしながら、西川町の高校で歴史を教えるって言ってます。親戚筋の神社からも、神職の手が足りないって相談されてるんで、ひょっとしたらそっちに行くかも知れませんけど」
どっちにしても、いずれはうちの若宮神社の跡を継ぐんですけどね、兄貴は。
和雄は冗談めかして自分の二の腕を叩いた。「だから、僕なんて肩身が狭いですよ。早いトコ手に職つけないと、いずれ実家から追い出されちゃいますから」
和雄の方は神道系のコースのある大学ではなく、一般大学の法学部に在籍している。
「章一さんの前の宮司はお祖父さん?」
「そうです。もう五年になりますね」
すでに亡くなっているらしい。師匠は、『とかの』に現れる霊がそのお祖父さんである可能性はないかと尋ねた。すると和雄は、それはないですねと即答する。
359未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 23:32:02.51 ID:93PkLSJW0
「祖父はあの年代の人にしては凄く押し出しの立派な人でしたから」
今の自分よりも背が高かったんですよ、と頭の上に手をやってみせた。
なるほど。そんな大柄な人なら、たとえ顔がぼやけていようが、幽霊になって現れたらそれと分かりそうなものだ。女将や旅館の人々も先代の宮司を良く知っているだろう。
誰もそのことに触れないということは、どうやら和雄の祖父が化けて出ているわけではないようだ。もっと昔のご先祖様ということか。
「最近、神職の服が盗まれたりってことはない?」
師匠の問い掛けに和雄は眉をひそめる。
「誰かが、イタズラでもしてるってことですか」
「まあ、どんなことでも可能性はあるから」
自分自身、幽霊を目撃したという和雄からすると、それが誰かのイタズラだと言われても納得できないだろう。確かにこれまでに聞いた多くの目撃談からしても、すべて人間の仕業というのは無理がある気がする。
「服が盗まれたことなんてありませんよ。もちろん紛失もありません」
和雄がはっきりそう言うと、師匠は「そう」と言ってそれ以上追求しなかった。
「あ、この先から見えますよ」
楓が指さした先には木々の群れがぽっかり抜けたような空間があった。その開けた所まで登りきると、遠くの景色が見渡せた。
「見晴らしがいいなあ」
師匠が手近な切り株に片足をかけた。
眼下には枯れ木で覆われた山の峰が広がっている。それほど高くは登っていないはずだが、角度のせいか、ここからは『とかの』は見えない。その代わり、平野を隔てた遠くの山の中腹になにかの建物が見えた。
「あれが、うちの神社ですよ」
和雄が指をさす。
「こうして見ると、結構近いな」
「でも『とかの』から歩いたら一時間近くかかりますよ」
見下ろす風景の中には畑や田んぼ、そして枯れ木ばかりの林など、寂しい色彩ばかりが広がっている。その間を縫うように、枝川がくねくねと蛇のようにうねりながら伸びていた。
「なにもないところでしょう。だんだん人口も減ってますし。うちの神社のあたりなんて今じゃバス停も遠くになっちゃって、不便でしょうがないですよ。家族全員バイクに乗ってるくらいです」
360未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 23:33:43.33 ID:93PkLSJW0
「え〜。うちの『とかの』のあたりの方がバス停遠いじゃん。たまにはそのくらい歩きなよ」
そんなことを話しながら、しばらくそこで景色を見ていると、陽が翳ってきて寒さが身体に戻ってきた。風も少し出てきたようだ。
「もう少し先が頂上ですけど」と和雄が尋ねたが、師匠は首を振って「もういいや。戻ろう」と言った。
頂上までの道はここから少し下った後でまた登りになっていたが、そのすべてがすでに見渡せた。女将の言っていたとおり、裏山には神社やそれに関するものは全く見当たらなかった。頂上の反対側の下りも同じようになにもない、と楓と和雄が断言した。
師匠はそれほど残念そうでもなく、また先陣を切って元来た道を下り始めた楓の後ろについて山道を踏みしめていった。
五分ほど歩いただろうか。
右手側に大きくV字形に抉れた谷が広がっている場所に出たのだが、そこで師匠が足を止めた。
谷の方へ身を乗り出して首を伸ばしている。先はかなり急な崖だ。後ろにいた僕は思わず「何をする気ですか」と止めに入りそうになった。
師匠はキョロキョロと周囲に目をやると、手がかりとなる木がまばらに生えた獣道を見つけ、そこから崖の下へ降り始めた。
止める間もなかった。
最初にザザザと山肌を滑るように降りた後、枯れ木にしがみついて勢いを殺し、そこから先は器用に木の枝につかまりながら、あっと言う間に谷の底近くへたどり着いてしまった。
地元民の二人も驚いたようにそれを見つめている。
「なにかあるんですか?」
僕は両手でラッパを作って声を上げる。
師匠は谷の奥でうろうろしながらせわしなく動いている。
「ああ。こいつは地滑りの跡だ」
斜めに生えている潅木を叩きながら返事が返ってきた。その谷は途中から水が湧いていて、さらに下へと流れていっている。
師匠はそのあたりの土を掘ったり木を揺すったりしながらその周囲を探索していたが、やがて山肌から突き出ていた石の前にしゃがんで、堆積した土や苔などを手で払い始めた。
僕たちの眼下でその動きがふいに止まり、またすぐに立ち上がったかと思うと、そばの谷川の淵へ近寄っていった。
361未 本編1 ラスト  ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 23:37:32.59 ID:93PkLSJW0
その先はさすがに危険な地形だったので諦めたのか、師匠は猿のように木の枝につかまりながらこちらへ戻り始ってきた。
「悪い。待たせた」
山道へ戻ってくると、ズボンの土ぼこりや枯葉を払いのけながらあっけらかんと言う。
「すごいですねえ。レンジャーみたい」
楓がそう褒めると、和雄は「危ないからもうやめてくださいよ」と心配そうに詰め寄る。
「わかったわかった。もう帰ろう」
と師匠は笑った。そして楓、和雄の後についてふたたび山道を下り始める。
なにか、予感のようなものがして、僕はそのすぐ後ろについた。すると、前を行く二人としばらく談笑しながら歩いていた師匠が、こっそりとした手の動きで合図をしてきた。
顔を近づけた僕の耳元に素早く口を寄せ、「地滑りの跡に埋もれた石の表面に、こんな模様があった」と囁いた。
そして僕の手を握り、手のひらに指でなにか文字のようなものを書いた。
「え?」
と怪訝な顔をした僕に、師匠は「面白くなってきた」ともう一度囁いて、前を行く二人を早足で追いかけていった。
なんだろう。この字は。
僕は手のひらに残る文字の感触をじっと記憶に刻みながら、そして同時に記憶を呼び覚まそうとする。
漢字だ。
雨冠は分かる。その下に、丸…… いや、口がみっつ。横に並んでいる。そしてさらにその下になにか複雑な字が続いている。龍という字だろうか。あるいは能力の能という字か。
いずれにしても、そんな漢字があるのだろうか。物凄く画数が多い。しかし全体のバランスからして、一つの字としか思えない。
なんだ、この文字は。
僕は自分が足を止めていることに気づく。
前を行く師匠の背中に視線を向けたまま、手のひらに刻まれた文字の感触に身震いする。
なんだ、これは。
そんなことを口の中で繰り返しながら僕は冬枯れの山道に立ち尽くし、じわじわと、その文字に沿って自分の血が流れ出て行くような、得体の知れない悪寒に包まれていた。
362M.C.D.  ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 23:40:12.97 ID:93PkLSJW0
師匠から聞いた話だ。


大学一回生の夏だった。
午前中の講義が終わり、大学構内の喫茶店の前を通りがかった時、僕のオカルト道の師匠が一人でテーブル席に陣取り、なにやら難しい顔をしているのが目に入った。
「なにを見てるんですか」
近づいて話かけると、手にした紙切れを天井の蛍光灯にかざして見上げるような仕草をする。
「どうしようかと思ってな」
つられて僕も姿勢を低くして下から覗き込むと、どうやらなにかのチケットのようだ。横を向いた髑髏のマークが全面に描かれている。
「M.C.D.……?」
髑髏の中にそんな文字が見えた。
師匠が口を開く。
「『モーター・サイクル・ダイアリーズ』だってよ。アマチュアバンドだよ」
地元バンドのライブチケットか。
師匠がそんなものを持っているのは意外な気がした。
「もらったんだ」
そう言ってチケットをひらひらさせる。「行こうかどうしようか迷っててな」
「知り合いでもいるんですか」
そう訊ねると、「ああ」と言ってチケットを睨んでいる。
そのバンドのメンバーからもらったもののようだった。ライブ自体にはあまり興味がなさそうで、もらった手前、義理で行くべきかどうか迷っている、というところか。
「何系のバンドなんですか」
髑髏の絵でなんとなく想像はついたが、一応訊いてみると「パンク」という答えが返ってきた。
なるほど。
「前に聴きに行った時は、もうなんていうかシッチャカメッチャカになってな。なんていうんだ、あれ。おしくら饅頭みたいな」
モッシュか。
僕もほとんどライブなどには行かないので良く知らないのだが、客がノリノリで暴れまわるようなライブハウスだとそんなことが起こるらしい。
363M.C.D.  ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 23:41:13.90 ID:93PkLSJW0
「あれで懲りたんだよな」
かなりハードなバンドのようだ。
チケットを手にとって良く見せてもらったが、ライブは今日の十九時スタートとなっている。もう当日ではないか。
しかしその日時よりも、会場となっているライブハウスの名前を見て、僕はなにか引っかかるものを感じた。行ったことはないのだが、最近その名前をどこかで耳にしたような気がするのだ。
「どうかしたのか」
しばらくチケットとにらめっこをしていると、ようやく思い出した。
「あ、ここ、あれですよ。最近幽霊が出るって噂のライブハウスですよ」
「なに?」
師匠の目が急に輝き始めた。
「研究室の先輩が言ってたんですけど、マジで出るらしいです」
そう言った途端に、師匠がひったくるように僕からチケットを取り返した。
「じゃあ、そう言うことで」
そしてそのまま席を立とうとした。
「ちょっと待ってくださいよ。行くんですか」
「行く」
「聴きに?」
「見に」
やっぱり。
師匠は俄然やる気が出たというように大袈裟に腕を回しながら「ようし。おしくら饅頭用の服に着替えてこないとな」と言った。
ことお化けが絡むと本当にイキイキとしてくるから不思議なものだ。
「僕も一緒に行って良いですか」
「いいけど、チケット一枚しかないよ」
チケットには前売り千二百円、当日千五百円と書いてあった。プロのアーティストのコンサートに比べれば安いものだ。
「自分で出しますから」
「そうか。御主もスキモノよの」
364M.C.D.  ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 23:44:07.07 ID:93PkLSJW0
師匠は上機嫌で集合時間を決めて、「遅れんなよ」と言った。


陽が落ち始めた路上で、僕はライブハウスの外観をぼんやりと見ていた。
入り口のあたりには、ライブ情報などのポスター類が所狭しと張り出され、何度も剥がしたような跡がそこかしこに汚らしく残っていて、けっして悪い意味ではなくなかなか雰囲気のある趣だった。
さっきまで路上にたむろしていた大勢の若者たちが、十八時三十分のオープンと同時にその箱の中に次々と吸い込まれて行き、そんなに沢山入れるのかと心配になった。
時計を見ると、あと十分で開演だ。あんなことを言っていた師匠の方が遅刻しているじゃないか。
満員で入れなくなったらどうしてくれるんだろう。
対バンではなく、ワンマンライブだという時点でそこそこ人気のあるバンドなんだろうとは想像できたが、こんなに客がいるとは思わなかった。
結局、師匠がライブハウスの前に姿を現したのは開演五分前になってからだった。何故か手にはわたあめを握っている。
「どこでそんなもの買ったんですか」
「うん」
答えになっていないが、とにかくわたあめを食べ終わり、割り箸を入り口のそばの灰皿兼ゴミ箱に投げ込んで、「じゃあ行くぞ」と言う。
なんてマイペースな人だ。尊敬してしまう。
ドアの中に入ると、なんとも言えない喧騒が耳に飛び込んできた。ああ、ライブハウスだなあ、という至極当たり前の感想が浮かぶ。
師匠が受付でチケットを渡すと、ドリンク代が別に五百円かかると言われ、「込みじゃないのか」とごねたがダメだったようだ。しぶしぶといった様子で五百円玉を出し、ドリンクチケットを受け取った。
僕の方は当日券とドリンク代で合計二千円を支払った。映画を観に行くことを思えばこんなものか、という気もする。
受付のすぐそばで物販をやっており、『M.C.D.』のロゴが入ったTシャツが売られていた。
こういう物販はもっとメジャーなアーティストがライブをする時に売っているものだと思っていた。地元のアマチュアバンドのはずのなのに、自分たちで作ったのだろうか。
「おい、もう始まるぞ」
師匠はさっそくドリンクカウンターで交換したビールを片手に、会場の方へ向かおうとしていた。
365M.C.D.  ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 23:46:31.10 ID:93PkLSJW0
しかし会場内はあまり広くなく、客でごった返しており、飲み物を手にした状態であの中へ入って行くのは危険な感じがした。
カウンターの中の人に訊くとライブ終了後でもドリンクは交換できるというので、僕はとりあえず後にして師匠を追った。
ライブハウスなので当然オールスタンディングだったが、前の方は特に人口密集地帯となっており、今からあそこへ潜り込むのは至難の業のようだった。
「前回はかなり前の方に並んでたから、人の波に乗って最前列に行ったんだよ。そのせいでおしくら饅頭に巻き込まれたんだ」
だから今日は後ろの方でいいや。
師匠がそう言った時、会場内の照明が落ちた。と、同時に一斉に大きな歓声が上がった。バンドのメンバーが登場したのだ。
背の高い長髪の男が、歩きながらライトを浴びてにこやかに客席に手を振っている。他のメンバーもその後について袖から現れたが、揃ってフレンドリーさの欠片もない殺伐とした雰囲気をまとっていた。
「あのロンゲがボーカルだ」
いかにもそんな感じだ。なかなか男前なのだが、笑顔の下の切れ長の目はどこか冷たく、すべてを見下しているような、そんな印象を受けた。
ヤバそうなバンドだ。
直感でそう思った。
客層もコアな感じで、ごついピアスをしていたり、髪がツンツン立っていたり、鋲打ちのライダージャケットに下はチェーンをジャラジャラ巻いたパンツといういでたちだったりと、やはりパンクファッションをしている人が多かった。
そんな中にちらほら高校生らしい制服姿が混ざっている。
「どのメンバーが知り合いなんですか」
僕が横に向いて訊ねると、師匠は誰かにぶつかられて服の胸のあたりに撒けてしまったビールを「マジか、くそ」とハンカチで拭いているところだった。
「強姦殺人前科一犯って感じのやつだよ」
俯いて服をこすりながら、前を見もせずにそういう返事が返ってきた。
強姦殺人前科一犯か……
「全員やってそうなんですけど」
ボーカルの他も、みんな危険な香りが漂っていた。
366M.C.D.  ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 23:48:14.57 ID:93PkLSJW0
まずギターがスキンヘッドの男で、その深く刻まれた眉間の皺はとても堅気の人には見えなかったし、ベースは顔のほぼ下半分を覆う白いマスクをしている痩せた男。
メイクなのかも知れないが、彼には目の辺りに物凄いくまがあり、病的な感じを受けた。そしてドラムは鋭い目つきをした筋肉質の大男で、何故か最初から上半身裸だった。
首筋に龍のような模様のタトゥーをしている。
その彼らに対して集団ヒステリーのような歓声がひたすらぶつけられている。異様な雰囲気だ。
「かなり久しぶりのライブらしい。このあたりじゃ伝説のパンクバンドらしいぞ」
師匠の耳打ちに返事をしようとするが、あまりの喧騒にかなり顔を近づけないと聞えそうになかった。
「仕事なんかしてなさそうなのに、どうして活動してなかったんですか」
「あのボーカルとベースが交互に警察のご厄介になってたらしい」
警察……
急に身の危険を感じた。この閉鎖空間に満ちる興奮状態に、逆に腹の底が冷えていくような感覚がある。
「ボーカルのロンゲは喧嘩っぱやいヤツらしいから、傷害だったかな。ベースのテロリストみたいなマスク野郎はクスリだ」
今日もキメて来てるんじゃないか? そんな目つきだ。
「あとドラムの放浪癖。この三人のせいで、ほんとにたまにしか活動できてないっぽい」
「ギターの人は?」
「あのハゲは良い人らしいぞ」
このメンバーの中で良い人ポジションということは、その分相当に苦労しているのだろう。そう言われてみると眉間の皺は、ヤクザのような凄みというよりは哀愁を漂わせているような気がしてくる。
メンバーが全員配置につくと、MCなしでさっそく曲に入った。
いきなり目が覚めるような乱れ打ちドラムソロから入り、ボーカルのシャウトと同時にギターが吼えた。
そして割れるような歓声。
歌は英語だ。知らない曲だったので、オリジナルなのかコピーなのかは分からない。観客は前方に殺到し、みんな身を乗り出して、異様な興奮状態だ。ステージとの間の鉄柵から無数の手が空間を掴もうとするかのように伸ばされている。
367M.C.D.  ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 23:50:46.43 ID:93PkLSJW0
僕らは人口密度の低い会場の一番後ろの方にいたのに、それでも周囲で飛び跳ねている人たちに何度も足を踏まれた。そのテンションバーストについていけないと、この場から逃げ出したくなってくる。
わけの分からないうちに一曲目が終わり、すぐに二曲目が始まった。
突き刺さるような激しいギターリフにボーカルの扇情的な声が乗っかり、それに反応した人々と、ホール全体がぐわんぐわんとタテに揺れているような錯覚に陥る。
ステージの前はすでにモッシュ状態だ。歓喜の悲鳴なのか、押されて鉄柵に挟まれ痛くて上げている悲鳴なのか分からないが。男も女も両手を振り乱して喚いている。
「え?」
その、押し合い跳び跳ね回っている連中のあいだに、僕はふと違和感のあるものを見た。
顔だ。
顔が見えた。
熱狂の狭間に、張り付いた氷のようなもの。
激しく動いている人々の背中と背中の間に、ほんの一瞬こちらを向いている顔を見たのだ。それは最前列付近にいるのに、ステージに背を向ける格好で顔をこちらに向けていた。蒼白く、そしてとても冷たい目をしているような気がした。
隣の師匠の肘をつつく。
なんだか嫌な感じがした。
「分かってる」
師匠は短くそう言うとビールを飲み干して紙カップを握りつぶした。そして躊躇なく前へ行こうとする。
しかし前方には人の壁が出来ており、そこへ身体をねじ込んでいくのは至難の業だ。僕も後に続いたが、肘打ちの嵐の中でもみくちゃにされ、ちっとも進めない。
割り込みを怒鳴られ、師匠が負けじと怒鳴り返す。
足を何度も踏まれた。爪先が痛い。親指の爪が割れたかも知れない。
瞬間、ぞくりとした。耳になにか違和感のあるものが入ってきた。
歌だ。
二曲目も英語の歌だったが、ボーカルの透き通った声に被るように別の歌が聴こえた。
周囲の観客も曲に合わせて歌っているが、そんな声とは全く違う。ホールのスピーカーを通した声だ。ボーカルの歌と同じ地平の。
何小節か後で、また聴こえた。明らかに今のボーカルとは別の声だ。
それに少し遅れる形で、ざわっという驚きのような衝動が前方から順に流れてくる。
混線?
368M.C.D.  ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 23:52:32.68 ID:93PkLSJW0
いや、違う。違うと思う。あまりに鮮明な音だからだ。
ダーク……
ざわめきの中にそんな悲鳴が聞こえる。のけぞって耳を塞いでいる人もいた。
ダーク。
すぐ隣の人が呻いた。
なんだ、いったい。
僕は師匠の方を見た。周囲のタテ乗りが凍りついたように止まり、その人の壁に身体を半分挟まれたまま身動き出来なくなっているようだ。
ステージの方に目をやると、ボーカルがきょとんとした顔をしてマイクを口から離した。その瞬間、ぞわっとするような得体の知れない声がホール中に響いた。
日本語だった。今度は音が割れ、内容はよく聞き取れなかった。
恐慌が。
起ころうとしていた。それだけは分かる。
恐怖に腹の底が冷えた。辺り一面から悲鳴が上がる。わけの分からないままとっさにその場を引こうとする。
同じようになにが起こっているのか分からないらしい女性が、隣の連れらしい男の袖を引いている。その男は両手を突き出して喚いた。
その男や他の周囲の人間の悲鳴を解読すると、その内容はこうだ。
レベルダークのボーカルの声が聴こえる。数ヶ月前に泥酔して自動車を運転し、事故を起こして死んだはずの男の声が……
レベルダークというバンドはこのライブハウスのかつての常連で、M.C.D.とも何度か対バンをしていたらしい。だが、確かにそのボーカルは死に、とっくに解散してしまっていると言うのだ。
いつの間にか曲は止まっている。ステージの上のメンバーたちは戸惑ったように自分たちの周りを見回している。
また聴こえた。
マイクは驚いたボーカルの手から床に落ちている。なのに歌が聴こえる。
悲鳴が連鎖していく。
まずい。
背筋に冷たいものが走る。この状態でパニックになれば無事では済まない。
師匠の服の背中のあたりを掴んで、挟まれた人の壁から引き抜こうとする。早く逃げないと危険だ。焦って指先から布地が抜ける。また掴もうとする。
その時だ。
ドラムセットに座っていた男が急に立ち上がり、ステージから飛び降りた。
369M.C.D. ラスト  ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 23:54:48.35 ID:93PkLSJW0
凄い形相で、最前列にいた観客に向かってなにごとか叫ぶ。その剣幕にたじろいでその周辺の人壁が割れた。
ドラムの男は鉄柵を越え、そこへ飛び込んでいった。そして人々の群を掻き分けながら斜めに進み、壁際にたどり着いた。僕から見て、右手前方だ。
その壁際に張り付くように、一人の男性の姿があった。その横顔には見覚えがあった。
二曲目の冒頭、あの違和感を感じた時の顔。一人だけステージではなく客席の方を向いていたあの蒼白い顔だ。
その顔が一瞬、怯えたように歪む。
しかし次の瞬間、その顔があった場所に黒い突風のようなものが叩きつけられた。破壊的な音がして、天井の照明が揺れた。
ドラムの男が殴ったのだ。蒼白い顔を。いや、殴ったのは壁だ。顔は消えている。
消えた?
壁際にいた人間が一人、消えてしまった。
いや、人間ではなかったのか。
立ち尽くす僕の目の前で、人の群が逆流を始めた。われ先にとみんな出口へ向かって逃げて行く。その中でもみくちゃにされながら、僕はなんとかその場に留まろうとする。なにが起こったのか。それが知りたくて。
嵐のような時間が過ぎ、気がつくと僕の目の前には師匠の背中があった。
もう人の壁はない。
師匠はゆっくりと、前方の壁際に進む。
「夏雄」
そう呼びかけながら。
ドラムの男は、自分の右拳を見つめている。拳の先から肘の辺りまで血が滴っている。壁にはその破壊の痕跡として大きな穴が残されている。凄まじい光景だった。
男は拳から目を離し、師匠を見てにやりと笑う。見上げるような長身だ。シャツ一枚身に着けていない上半身には鍛え抜かれた筋肉が張り付いて、蒸気のような汗が立ち上っている。
そいつが師匠にチケットを渡した男だ。
それが分かった。
心臓が冷たく高ぶる。どうしようもなく。
こいつに、勝たなくてはならない。
僕にはそれが分かったのだった。
370ウニ ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 23:56:30.73 ID:93PkLSJW0
日夜、テスト用のスレに「ninja!」と叫び続けてようやく一人前の忍者になれました。
おやすみなさい。
371本当にあった怖い名無し:2012/01/03(火) 00:00:04.40 ID:yi9WGwEg0
おつかれちゃん。
未の続きにも期待。
372本当にあった怖い名無し:2012/01/03(火) 00:01:14.97 ID:vSYXgFDzO
ウニさんありがとう!乙でした!また待ってます
373本当にあった怖い名無し:2012/01/03(火) 00:02:49.64 ID:h7lK/1nd0
うおお大量
とりあえず乙 今から読ませて貰いまっせ
374本当にあった怖い名無し:2012/01/03(火) 00:15:54.57 ID:44H1JoZF0
途中で秋田
おやすみ
375本当にあった怖い名無し:2012/01/03(火) 00:23:02.11 ID:b037L7Ud0
どんどん詰まらなくなる才能に関心します
376本当にあった怖い名無し:2012/01/03(火) 01:36:26.01 ID:hqwdhgBw0
ウニさん、ありがとだってばよぅ!
377本当にあった怖い名無し:2012/01/03(火) 01:51:55.08 ID:HlyNKrGt0
なにこれ…
378本当にあった怖い名無し:2012/01/03(火) 08:14:02.99 ID:hqwdhgBw0
2作品
379本当にあった怖い名無し:2012/01/03(火) 08:36:56.71 ID:Wxy5MwYTO
ちょっと酷い出来だな。大丈夫?
380本当にあった怖い名無し:2012/01/03(火) 09:31:16.52 ID:1/Rrn9X80
ウニさん可愛い
381本当にあった怖い名無し:2012/01/03(火) 10:23:51.13 ID:1b3BhLV60
ウニさん乙。

久しぶりなんで、涙でた。
382本当にあった怖い名無し:2012/01/03(火) 12:57:31.02 ID:hqwdhgBw0
未2がpixivにきているらしい
383本当にあった怖い名無し:2012/01/03(火) 13:02:12.42 ID:44H1JoZF0
儲か儲のふりした本人かしらんけど宣伝乙…
384本当にあった怖い名無し:2012/01/03(火) 16:02:29.84 ID:1/Rrn9X80
何か↑みたいな常に何かと戦ってる奴最近ホント多いよなあ
385本当にあった怖い名無し:2012/01/03(火) 16:13:33.97 ID:b037L7Ud0
何か↑みたいな常に何かと戦ってる奴最近ホント多いよなあ
386本当にあった怖い名無し:2012/01/03(火) 16:27:33.27 ID:XLqfSKsR0
>>370
>日夜、テスト用のスレに「ninja!」と叫び続けてようやく一人前の忍者になれました。
長文投下できてるやんと思ったらそんな苦労が…;;
色々な意味で乙
387本当にあった怖い名無し:2012/01/03(火) 17:11:42.87 ID:phnEAljc0
今年のトップはウニ氏か
乙でした
388本当にあった怖い名無し:2012/01/03(火) 19:35:53.36 ID:0KHeN9n80
なんでいつまでこんなスレに投下してんだよ・・・・
専用スレに移れって何回も言ってんだろ。はっきりいってウニのせいでこのスレ保守するバカが居るんだよな
まとも作品が投下されたのって何ヶ月ぶりなんだよ(赤緑含む)
このスレがたって3ヶ月、まともなのはたった2作品だぞ
とっとと落とせよこんなスレ
389本当にあった怖い名無し:2012/01/03(火) 20:42:53.90 ID:5uGn0nrQ0
むしろ何回も言われてて何で移らないのかを考えたら?
390本当にあった怖い名無し:2012/01/03(火) 20:45:01.45 ID:esqF3AZY0
ウニ乙

>>388
君がこのスレから消える、という選択肢はないのかね?
391本当にあった怖い名無し:2012/01/03(火) 21:39:20.56 ID:b037L7Ud0
>>390
寧ろ君がこのスレから消える、という選択肢はないのかね?
392本当にあった怖い名無し:2012/01/03(火) 22:01:16.33 ID:1/Rrn9X80
頑固なウニさんも可愛いお (^p^)
393本当にあった怖い名無し:2012/01/03(火) 22:27:54.30 ID:FuTrJZI40
>>388は何しに来てるの?
まあどうでもいいやw
ウニさん乙!
394本当にあった怖い名無し:2012/01/04(水) 11:18:08.12 ID:HJqm9vXV0
黒さに驚いた
何事かと思ったらウニだった
395390:2012/01/04(水) 22:33:32.11 ID:WiStwI3v0
>>391
え?なんで?
俺このスレ好きだしそんな選択肢必要ないけど?
396本当にあった怖い名無し:2012/01/05(木) 01:14:16.05 ID:YR2pz71z0
ここに居るのが全員ウニ待ちだと思ってるならちょっと傲慢だな
397本当にあった怖い名無し:2012/01/05(木) 10:59:36.83 ID:MkYM5RJa0
ウニ乙
未もMCDも続きそうでwktk
ってか未が始まってもいなくてフイタw
398本当にあった怖い名無し:2012/01/05(木) 13:47:47.31 ID:gJzC50Kn0
というか、本当にウニだけを待ってるならPixivで見てると思うの
399本当にあった怖い名無し:2012/01/05(木) 19:02:37.00 ID:BKlr+v4C0
俺はシリーズ物を待っている
400本当にあった怖い名無し:2012/01/06(金) 03:15:10.32 ID:26XBx1Xg0
自分もマサさんシリーズを待っている
401未 本編2 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/07(土) 22:17:16.64 ID:HrRb/QUY0
『とかの』に帰り着いたとき、腕時計を見ると午後四時半を回っていた。
旅館の玄関から中へ向かって楓が「ただいま」と声を張り上げる。少しして女将がフロントの奥から姿を表した。
「どうでしたか」
「いやあ、期待はずれですね」
師匠は明るくそう言って、山の上からの景色についてしばらく女将と語り合っていた。僕は地滑りの跡で見つけた石についてどうして黙っているのだろうと疑問に思った。
その師匠の横顔がスッとこちらに向き直る。
「おい、次を見に行くぞ」
「え」
まだどこか行くんですか。
師匠は女将にこのあたりの道を尋ねている。
つい、つい、と袖を引かれた。楓が耳元に顔を寄せてくる。
「なに」
「あの人ほんものなの?」
「なにが」
「霊能力者」
まあ確かにここまでは、まったくそれらしい所を見せていない。
「テレビに出てくるのとは違うけど、霊を見ることに関しては凄いよ」
霊感が強いだけの人なら他にもいるだろうが、師匠の本当に凄い所は、その見たこと、体験したことに対する料理の仕方なのだ。
それはある意味、探偵的と言えるかも知れない。つまり興信所の調査員であるこの今のスタイルで正解なのかも知れなかった。
「ふうん。まあいいや。で、付き合ってんの?」
いきなりすぎて吹きそうになった。
「助手だよ」
「それもう聞いた」
「まあいいじゃないか」
ああ。やってしまった。明確に否定しないという、見栄。
軽い罪悪感に襲われていると、二人でひそひそやっているのが気になったのか、和雄が「なになに」と近づいてくる。
「よし、行くぞ」
師匠に服を掴まれる。軽く引きずられながら「どこへ?」と訊くと「この旅館の周辺の調査」
402未 本編2 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/07(土) 22:22:21.36 ID:HrRb/QUY0
ようするに散歩ですか。
という軽口が出そうになったが、クライアントの前なのでさすがに自重した。
「また案内したいですけど、ごめんなさい。これから用事があって」
楓が頭を下げる。高校時代の友だちとクリスマスイブパーティをするらしい。
それを聞いて、僕はようやく今日が十二月二十四日であることを思い出した。
思わず和雄の方を盗み見するが、「いいあなあ」などと余裕ぶっている。しかし内心はどうだか分からない。
「じゃあ、僕もそろそろ帰ります」
旅館の外に出ると、和雄もそう言って敷地の隅にとめてあったバイクに跨った。排気音とともに手を振りながら去っていく姿を見送る。
「あ〜あ、かわいそうに、あいつ」
人ごとのようにそう言う師匠だったが、十二月二十四日という今日は僕らにも平等に訪れていることを分かっているのだろうか。
「日が暮れる前に行くぞ」
そう言って歩き出した。すでに日の光は西の山の端へ隠れつつあった。
それから小一時間かかって周囲を散策しながら枝川沿いに旅館へ来たときの道を逆に辿っていった。寂しい道で、あまり地元の人ともすれ違わなかった。
やがて道路沿いに背の高い金網で覆われた一帯が見えてくる。来たときに見た貯水池だ。周囲はすでに薄暗く、膨大な水量を蓄えた水面は輝きもせず、死んだようにひっそりとしていた。
金網のそばに看板があった。
『亀ヶ淵(かめがぶち)』という名前のこの貯水池は、応仁の乱の後に戦国武将が各地で覇権を競い始めたころ、この地に侵攻してきた高橋永熾(ながおき)が自身の勢力の新しい拠点として今の西川町一帯を封じた時に作ったものだそうだ。
枝川の水量が安定せず石高が伸びなかったこの地に、持参した地金を惜しげもなく投じて土木工事を行ない、巨大な水瓶を提供したのだ。
師匠はその看板の説明文を読み終えて、ぼそりと言った。
「問題の若宮神社は、この武将が開いたのかも知れないな」
「どうしてですか」
403未 本編2 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/07(土) 22:25:22.50 ID:HrRb/QUY0
「若宮って名前のつく神社は、例えば大分の宇佐神宮を本宮とした場合、その御祭神である八幡神こと応神天皇の子、つまり御子神であるところの仁徳天皇を祀った神社のことだ。
あるいは、単に本宮から新たに迎えた御祭神という意味で若宮と呼ぶ場合もある。その場合は八幡神である応神天皇の分霊を祀っている神社ということになる。
いずれにしても、基本的には本宮ありきの神社なわけだ。そして本宮から新たな若宮を勧請してくるのは、国司やその地の豪族などの実力者と相場が決まっている。
戦国時代にあっては、その役割の中心を担ったのが……」
戦国武将というわけか。
高橋永熾が元々の勢力圏で信仰していた神社から、新たな支配地であるここへ、その御子神か分霊を勧請してきたということならば、確かにありそうだ。
「もう少し調べてみたいな」
いずれにしても、その若宮神社に行って宮司と話をしてみる必要があるだろう。時計を見ると、まだ六時だった。さっきその時間を告げる鐘の音が鳴ったばかりだ。訪ねて行けない時間でもない。
その息子である和雄と面識があるので、話も通しやすいだろう。
しかし師匠は少し考えた末、「また、明日にしよう」と言った。
とりあえず、その旅館に出るという霊とやらを見てみるのが先だということか。
「戻って、飯食おうぜ」
踵を返した師匠に、頷いてから後に続いた。
そう。それが気になってしょうがなかったのだ。旅館の夕食ということで、料理を期待しても良いのだろうか。それとも僕らは仕事で来ているのだから、「え? そちらの夕食は用意していませんが」とあっさり言われたらどうしよう。
近くに弁当とかパンを買える店があったかなあ、と思い悩みながら歩いた。
ようやく『とかの』に帰り着くと、玄関のあたりが妙に騒がしかった。見ると二十代半ばくらいの女性が四人、たむろしていた。
ああ、そういえば今日は僕らの他に二組、客がいるって聞いてたな。
「こんばんわ」
師匠は愛想よく挨拶をして旅館の中に入る。
「あ、こんばんわ」
出迎えた番頭の勘介さんに荷物を渡しながら、女性たちもこちらに笑顔を向けた。みんな暖かそうな服装をしている。仲良しOL四人組というところか。
404未 本編2 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/07(土) 22:28:24.18 ID:HrRb/QUY0
それもクリスマスイブに温泉旅館に泊まるってことは、恋人のいない仲間同士ということだろう。
玄関を通り抜け、廊下の手前で師匠にそのことを囁くと、おもむろに腕時計を見て、その針を示しながら口を開いた。
「日没の後だから、『クリスマスイブ』の用法としては正しい」
まだこだわっているのか。
「あ、ちょうど良かった」
仲居姿の広子さんが僕らの前に現れて、手招きしながらフロントの奥へ入っていく。
「電話かかってきてるみたい」
事務所の電話をとっていた女将がこちらに気づいて、電話口に軽くお辞儀をしてから師匠とかわる。
受話器から声が漏れている。大きな声だ。
「お食事、お部屋にお持ちしますので、それまでおくつろぎください」と僕に言って、女将は忙しそうに事務所から出て行った。
師匠はうざったそうにあしらうような口調で話し終え、受話器を置いてから溜め息をついた。
「例の婆さん。この宿の馴染み客で、わたしを女将に紹介したひとだよ」
ああ、頼みもしないのに方ぼうへ師匠のことを宣伝しているという人か。
「万事任せておけば大丈夫だから、失礼のないようにしなさい、って女将に釘刺してくれたんだと。……他に余計なこと言ってないだろうな、あのばあさん」
そう言って苦笑する。
「自分も正月泊まりに行くから、幽霊退治よろしくな、ってさ」
それから部屋に戻ろうとすると、師匠が「ついでに電話するところがあるから、先に戻ってろ」と言う。
調査事務所の所長の小川さんに今日のことを報告でもするのだろうかと思い、あてがわれた二階の部屋に一人で戻った。
足を投げ出してテレビをぼんやり見ながら先に汗を流そうかと考えていると、広子さんがやって来て、隣の部屋を指さしながら言う。
「先、ご飯食べたいって言うから、あっちの部屋で、一緒でいい?」
師匠も部屋に戻ったのか。もちろん従うほかはない。
広子さんもその僕らの間の力関係というか、雰囲気を、すでに理解している様子で、一応確認というポーズを取っているだけのようだった。
その後、師匠の部屋にお邪魔し、テーブルに向かい合っていると「失礼します」と女将が広子さんを伴って入ってきた。
405未 本編2 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/07(土) 22:32:37.03 ID:HrRb/QUY0
そして目の前に、色鮮やかなお膳が並べられる。
紹介してくれたお婆さんの口添えが効いたのか分からないが、期待以上の食事にありつけた。
山菜の天麩羅など山の物が多かったが、普段美味しいものを食べつけない僕ら貧乏学生にはどれも過ぎた料理ばかりで、二人とも何度もご飯をおかわりして給仕してくれた広子さんを呆れさせた。
師匠は最後に茶碗に残ったご飯にお茶を注ぎ、白菜の漬物を乗せてからかき込んだ。そしてようやく人心地がついた、という表情で箸を置く。
さすがに晩酌はなかった。師匠はそれが少し物足りなそうだった。しかしこれからが仕事の本番なのだ。
そこへ頃合を見計らった女将が部屋に戻って来た。
「いかがでしたか」
そう訊かれて、二人とも素直に料理を褒めた。温泉地としてはあまり有名ではないこの土地で、旅館を三代に渡って続けられているのもこうした付加価値があるからかも知れない。
「少し、いいですか」
師匠は改まった口調で女将に問い掛けた。
「はい」
女将は広子さんにお膳を片付けさせながら、着物の裾を綺麗に整えながらテーブルの脇に正座をした。
そんな風にされるとこちらも落ち着かず、僕は思わず座布団の上に正座で座りなおす。師匠は気にしない様子で、あぐらをかいたまま女将に話しかけた。
「若宮神社は、この先の貯水池を作った高橋永熾が勧請した神社ですか」
「ええ。そう聞いております」
高橋家はその後、息子の代で別の戦国武将に攻め滅ぼされたのだそうだ。それ以来、この地は徳川幕府が開かれるまで、何度も支配する武将が変わっていった。
すらすらと喋る女将からのその言葉の端々から、かなりの教養のほどが窺える。
感心しながら聞いていると、師匠は少し考えるそぶりを見せた後、話題を変えた。
「この裏山ですが、もしかして大規模な土砂崩れが起きたことがあるんじゃないですか」
女将はハッとした表情を見せる。
ついさっき、山から戻って来て「期待はずれでした」なんて言っていたくせに、結局訊くのか。
それにこの部屋で仕事の話をすると主客が逆転してしまう、なんて言っていたのに、もうめんどくさくなったのか。
半ば呆れながら師匠と女将の会話に耳を傾ける。
406未 本編2 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/07(土) 22:36:44.05 ID:HrRb/QUY0
「ええ。私が小さいころですから、もう三十年以上前になるでしょうか。このあたりに記録的な大雨が降ったことがございまして……」


降り止まないどころか、ますます勢いを強くする雨に、子どもながらなにか大変なことが起きているということは分かったのだそうだ。
その日、折からの大雨のために『とかの』に客はいなかったのだそうだが、旅館中をみんながバタバタと落ち着かずに動き回り、夕方ごろには父親と、まだ健在だった祖父とが血相を変えて「裏山を見てくる」と雨具を被って出て行った。
近くの他の家からも大人が何人か雨の中に出てきて、山の方へ向かったようだった。
恐る恐る玄関から外を見ていると、滝のように轟々という音を立てて降ってくる雨の中から「川には近づくなよ」という誰かの声が混ざって聞こえた。
しばらくすると、ふいに地響きのような音が雨空に唸りを上げた。それは耳を塞いでも聞こえてきた。恐ろしい音だった。
住み込みの男性従業員が「崩れたんじゃないか」と叫んで、雨の中に飛び出していった。
父と祖父のことが心配で、気がつくと自分も外に出ていた。バケツをひっくり返したような大粒の雨が絶え間なく上空から落ちてくる。その雨の中を合羽も着ずに走った。視界は悪く、片手で額を覆っても目を開けることが困難だった。
山の方から大人たちの大声が聞こえてきた。「崩れた」「危ない」という言葉が聞こえた。
その中に、父と祖父の声もあって、ホッと胸を撫で下ろした。
安心すると、「見つかったら叱られる」ということに気がつき、「早く戻らないと」と引き返そうとした。
その時、ふいに桜の木のことが頭に浮かんだ。枝川の土手にある桜だ。土手の壁面から斜めに生えていて、増水した時には根元が水に浸かるんじゃないかといつも心配していた。
思わず川の方へ足を向けた。
降りしきる雨の中、目を凝らしても桜の木は見えなかった。このあたりのはずなのに。流されてしまったのだろうか。
土手に近づいて川の方へ目をやると、今までに見たこともないような濁流がうねりを伴って川上から川下へと流れていた。
恐ろしくて足が動かなかった。雨音と川の奔流の音で耳が痛い。
全身を鉛のような雨粒に叩かれながら、猛り狂う川の流れから目を離せないでいると、狭い視界の端に、不思議なものが映った。
407未 本編2 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/07(土) 22:39:53.29 ID:HrRb/QUY0
物凄い速度で流れていく泥水の中に、真っ黒い動物の身体が見えたのだ。その胴体は途方もなく長く、波打っていて、濁流に乗り目の前を通り過ぎようとしていた。
蛇だ。
それも、胴だけで一抱えもある、とてつもない大蛇。その身体が怒り狂うようにうねりながら大雨と濁流の中を流れて行く。
息を飲んでその行方を見守る。遥か彼方へその姿が消え去ってもしばらくその場を動くことができなかった。
「なにしてる、こんなとこで」
怒鳴り声とともに祖父に手を掴まれた。なかば引き摺られながら『とかの』に向かっている間、「おじいちゃん、蛇が、蛇が」と喚いた。
祖父はギョッとした顔をしたが、「変なことを言うんじゃない」と叱りつけた。
『とかの』に戻ると、祖父がここは危ないので小学校へ避難すると宣言し、全員で雨の中を逃げた。
その間中、自分の頭の中には、のたうつ大蛇が川を流されていく姿が何度も繰り返されていた……


語り終えた女将は、我に返ったように慌てて「おかしなことを申しました。子どものころに見た幻でございます」と付け加えた。
師匠は興味津々という顔で、「その後はどうなりました」と尋ねた。
「ええ。幸い、山が崩れたのは川側の方だけでして、結局旅館の方は大丈夫でした。その後、役場が委託した調査会社の方が調べたところによると、今後また万が一土砂崩れがあっても、やはりこの『とかの』の方へは崩れてこないということでしたので、ご安心ください」
ちゃんと、忘れずにフォローもしている。なかなか抜け目ない人だ。悪い噂などどこから広がるか分からないのだから。
「その、大雨の日の土砂崩れの前にも、やっぱり裏山には神社の跡などはなかったんですね」
「ええ。なかったはずです」
「わかりました。ありがとうございます」
師匠はあっさりとそう言うと、女将の祖父のことや先代である父親のことをあれこれと訊いた。
祖父はもちろんだが、父親も母親ももう亡くなっていた。そして入り婿であった女将の夫、つまり楓の父親も十年ほど前に病気でこの世を去ったのだそうだ。
408未 本編2 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/07(土) 22:42:28.81 ID:HrRb/QUY0
師匠はこの戸叶家の事情をおおよそ訊き終えて満足したのか、最後に「では、今夜はわたしと、この助手とで夜中じゅう、交代で番をします」と言った。
他の客が寝静まってから、これまでに神主の霊の目撃が多かった場所を中心に見張るというのだ。
「もしそれまでに出たら、とにかくすぐにわたしに知らせてください」
女将は、「従業員もすべて承知しておりますので、よろしくお願いします」と言って頭を下げた。
お茶をいれなおしてから女将が部屋を出て行った後で、師匠はニヤリと笑って言った。
「こいつは、カナヘビちゃんだぜ」
カナヘビ?
なぜここでカナヘビが出てくるのか。
その意味を訊いても、はぐらかすように「風呂風呂、風呂に入ろう」と手を叩くだけだった。

           ◆

「ねえ、あれ彼氏?」
「違うよ」
「うそぉ」
「まじで」
……
そんな黄色い声が頭の向こうから聞こえて来る。
露天風呂だった。
和雄の言うとおり、広々としていてなかなか良い湯だ。そんな所を一人で占拠するのはなんとも言えない良い気分だった。
岩に頭をもたせ掛けて空を見上げていると、ざぁー、と身体を流す音が遠くから微かに聞こえる。頭の先には竹を組み合わせた壁があり、その向こうには女性用の露天風呂があるはずだった。
湯気が夜空に上っていき、澄んだ空気の果てにある星をゆらゆらと隠していく。
寒空の下、顔は冷たいのに、身体だけは温かい。いつもはシャワーばかりでお湯につかるという習慣がない僕だったが、こういうのもたまには良いものだ。
「ねえ、ほんとに彼氏じゃないの」
「ほんとだよ」
409未 本編2 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/07(土) 22:44:48.00 ID:HrRb/QUY0
消極的な見栄を張った僕とは大違いだ。
ズルズルと背中を滑らせ、そのまま頭の先まで湯の中に沈み込んだ。頭の芯まで熱が入り込んでくる。
「彼氏じゃないのに、旅行してんの?」「なんかそっちの方がやらしい感じ」などという声が水を通して聞こえてくる。
師匠はさっそくOL四人組と仲良くなったようだ。師匠は今二十四歳のはずだから、同い年くらいか。
そうだよな。普通なら働いている年齢なのだ。それどころか子どもがいてもおかしくない。
湯の中に沈みながら、一人でそんなことを考えている。
師匠からはあまり、大人の女、という感じを受けない。子どもがそのまま大きくなったようだ。
なんだっけ。生物学上で、こういうのを。ウーパールーパーとかサンショウウオがそうだよな…… 思い出した。ネオテニーだ。幼形成熟、だったっけ。
まあ師匠の場合、あくまでその性格上の話だが。
頭の中でサンショウウオの姿がぐねぐねと変形し、図鑑で見たカナヘビの姿に変わった。
こいつは、カナヘビちゃんだぜ。
湯から顔を出して、師匠の言葉を反芻する。
女将が見たという大蛇はなんだったのだろう。あの枝川にはそういう『主』の言い伝えは特になかったそうだ。では一体?
大雨。土砂崩れ。大蛇。
あの裏山で師匠が見つけた石に刻まれていた不思議な雨冠の漢字となにか関係があるのだろうか。
そしてそれはこの神主の霊が出るという事件と関係があるのだろうか。
真剣に考えを巡らせていると、また女湯の方から嬌声が上がった。
「もうヤったの?」
「やってないよ」
「うそぉ」
「まじで」
動揺した僕は湯の底についていた手を思わず滑らせてしまった。バシャンという音が立つ。
「ねえ、隣で聞いてるんじゃない」竹で編まれた壁の向こうからの声。続いて、キャーキャーという笑い声。
もう出よう。
410未 本編2 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/07(土) 22:48:29.33 ID:HrRb/QUY0
僕はいたたまれなくなって露天風呂から上がる。ドアを開けて大浴場の方へ戻ると、頭の禿げた父親と小学生くらいの息子が身体を洗っていた。もう一組の泊り客の家族だ。
「こんばんわ」と挨拶をして脱衣所へ向かった。
出なかったな。
和雄が神主の霊を見た、という露天風呂だったがそれらしい姿も気配も、なにもなかった。
浴衣に着替えから廊下に出て、「湯」と書かれた暖簾の前に置いてあった藤製の長椅子に腰掛けて、なにをするでもなく、ただ湯あたり寸前にまで火照っていた身体を冷ましていた。
しばらくぼうっとしていると、師匠を含めた女性陣がもう一つの「湯」と書かれた赤い暖簾の下からわらわらと出てきた。
「あ、やっぱりいた」
なにがやっぱりなのだ。
OLたちはあっちに卓球台があったから、みんなでやりませんか、と誘ってくる。
あ、いいな。卓球は久しぶりだ。温泉に来るとどうしてこんなに卓球をやりたくなるのだろう。
その騒々しい一角に、タオル類を満載した台車を押している勘介さんが通りがかった。
じっとりと睨むような目つきで僕らのそばを通り過ぎる。
『観光気分か……!』
そう詰られたような気がした。
「ああ。ええと、わたしたちは遠慮しとくよ。な」
師匠に話を振られて「はい」と返事をする。
「じゃあさっきお願いしたとおり、オバケっぽいのを見たら教えてね」
師匠はOLたちに手を振りながら僕を引っ張っていく。
それから僕らはまた旅館中を視察して回った。中庭や裏の駐車場を含めて見て回ったのだが、昼間と同じで特に異変は見当たらなかった。
仕方なく一度師匠の部屋に戻り、なぜか備え付けてあった将棋盤を見つけたので二人でパチリパチリと指しながら、今日あったことを確認する。
「なんなんでしょうねえ、神主の幽霊って」
「さあなあ。見てみないことにはな」
「あの、裏山の石に書かれていたっていう漢字となにか関係があるんですか」
「さあなあ」
師匠は気のないような素振りで情報を秘匿していた。明らかになにか掴んでいるような感じなのだが、いつものようにもったいぶっている。
411未 本編2 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/07(土) 22:51:31.04 ID:HrRb/QUY0
「おい、これちょっと待った」
「二回目ですよ」
「いいから」
溜め息をついて、銀が元の位置に戻るのを見逃す。勝負に熱くなってきて前のめりになった師匠は膝を立てて身体を前後に揺すり始める。僕はとうに勝負の見えている将棋よりも、その浴衣の裾が気になって仕方がなかった。
そんなことをしていると、ドアをノックする音が聞こえた。返事をすると広子さんがお盆にケーキを乗せてやってきた。
「残ったから、あげる」
そして、あたしもう寝るから頑張ってねえ、と言いながら去っていった。
クリスマスケーキが二切れ。師匠は脳天から真っ二つにされたサンタクロースの半分が乗っかっている方を取った。硬そうな砂糖菓子なので、切る過程でかなり胴体が生地にめり込んでいる。
それから師匠が紅茶を淹れて乾杯をした。
メリークリスマス。
今ごろ街を華やかに彩っているであろう、赤と白の二色とは縁遠い、地味な和室の中だったけれど、少しだけ気分が出た。素直に広子さんに感謝する。
ケーキを食べ終わると師匠は言った。
「さきに寝ろ」
朝まで交代で番をするから、と。
時計を見ると夜の九時だった。師匠の案では九時から日付の変わった深夜二時までの五時間が師匠の番。そして二時から朝六時までの四時間が僕の番ということだった。
「僕は別に徹夜でもいいですよ」
そう言ってみたのだが、「一晩で済むとは限らない。いいから先に寝ろ」との仰せ。
「わかりました。でもどうして僕の番が六時までなんです」と訊くと「ここは時の鐘が鳴るって言ってたろ」と返された。
そう言えば、訊き込みをしていた時に女将か誰かがそんなことを言っていた気がする。貯水池を見に行っている時にもその鐘の音が鳴っていた。
今のような時計のなかった時代には、庶民が時刻を知るために時の鐘と呼ばれる仕組みがあった。寺や神社の鐘つき堂などで毎日決まった時間に鐘がつかれるのだ。
明け六つであれば六回、昼九つであれば九回という具合に。それを聴いて、人々は仕事や生活の区切りとしていた。
412未 本編2 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/07(土) 22:54:45.21 ID:HrRb/QUY0
例えば昼に八回鐘が撞かれる昼八つであれば現在の午後二時ごろを指すのだが、その鐘を聴くと一度仕事に休憩を入れ、その間に疲労回復のための甘い物などを取る習慣があった。
これが今の「おやつ」という言葉の語源だそうだ。
この松ノ木郷ではくだんの若宮神社に時の鐘があり、今でも一日のうち明け六つ、昼九つ、暮れ六つの計三度、時を告げているのだそうだ。それぞれ朝六時、昼の十二時、そして夕方の六時に。その鐘の音はこの『とかの』へも聞こえてくる。
「こういう、境界を表したものは、古い霊魂には強く影響するはずだ」
師匠は言う。
夕暮れは「誰そ彼(たそかれ)」とも言い、向こうにいるのが誰なのか分からない、という薄暗さを、そして不安な感じを表している。
そして日が落ちきってしまえばそこからはもう人の世界ではなく、魑魅魍魎や悪鬼の類が闊歩する夜の世界へとがらりと変わってしまうのだ。
同じように夜明けのころも「彼は誰(かはたれ)」と言い、向こうに立っているのがいったい誰なのか判然としない、という不安さを表している。
それはやはり夜に住まう人ならぬものたちの支配する時間と、昼に生きる人間たちの支配する時間との境界に位置する時間帯なのだ。
「鶏の鳴き声を耳にして退散する鬼の話を聞いたことがあるだろう」
それは鶏の声そのものに怯えたのではなく、夜と昼の境界を越えてしまったことを知って鬼は逃げ出すのだ。
温かい湯を止まり木の中に流し、無理やり目を覚まさせて鳴き声を上げさせ、まだまだ夜は明けないにも関わらず、鬼を退散させてしまう話もあった。
その鶏の声の役割を果たすのが、この土地では明け六つの鐘というわけだ。
「鐘の鳴った朝六時以降はまず出ないな。今日集めた目撃談でも、暮れ六つより前に『出た』という話はなかった」
 出るのは暮れ六つから、明け六つの間の時間。
つまり、土地の習慣に呼応した古風な霊である可能性が高い。
そう言って師匠は盤上の詰んでしまった自分の王将を爪で弾いた。
「とにかく、もう寝ろ。二時になったら起こしに行くから」
そう言って追い出された僕は自分の部屋に戻り、歯磨きをしてから敷かれていた布団に潜り込んだ。
413未 本編2 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/07(土) 22:58:05.50 ID:HrRb/QUY0
明かりの消えた部屋の玄関のドアから小さなノックとともに師匠が顔を覗かせて「今夜は出ないかもな」とぼそりと言った。
「え?」と訊き返そうとすると、「じゃあ見回りに行ってくる」と言ってそっとドアを閉じた。

           ◆

どれほど眠っただろうか。
長時間電車に揺られ、旅館の中を歩き回ったり、山に登ったりという今日一日の疲れがどっと出た僕は、布団に入って目を閉じたとたんに眠りに落ちてしまった。
静かだった。
夢を見ていた気がするが、いつの間にか遠い土地の旅館の一室に横たわっている自分がいる。
身体が重い。疲れがまだ取れていない。
静かだ。そして暗い。
暖房が効いている。部屋の中は滑らかな暖かさに包まれている。しかし外は冷え込んでいるだろう。
冷たい空気が建物を握り込むようなミシミシという音がどこからともなく聞こえてくる気がする。
何時だろうか。
交代の時間はまだか。また眠気が忍び寄ってくる。
静かだ。
天井が高い。見慣れない天井だ。ここはどこだ。
誰かいる。
部屋の隅に。
誰かが立っているのが分かる。
静かだ。息を吸う音。そして吐く音すら聞こえない。
誰だろう。
仰向けのまま身体が動かない。
重い。石を乗せられたようだ。
部屋の中には自分しかいない。それも分かる。
なのに誰かが立っている。
首を動かそうとする。部屋の隅を見るために。
重い。油が切れた機械のようだ。首の関節の間に、小さな無数のゴミが詰まっている。
どうして黙っているのだろう。
ごとり。
414未 本編2 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/07(土) 23:02:07.12 ID:HrRb/QUY0
首が落ちた。
ような音が。
みしりと、隅から一歩踏み出す音も。
ごとり。
また首が落ちた。
みしり。
また一歩。
ごとり。
みしり。
ごとり。
……
近づいてくる。そのたびに首が落ちる。
落ちた首が畳の上を這うように転がる。いくつもいくつも。
そんな音だけ。
布団の端を誰かが踏んだ。
ぼとり。
掛け布団の上に何かが落ちた。
首が動かない。動け。動け。
逆へ。
逆へ、動け。
見たくない。背けたい。
見たくな

「おい」
身体を乱暴に揺すられた。
「あ」眩しい。人工の光が目に飛び込んでくる。
師匠の顔がある。
「交代だ」そんな言葉が聞こえる。
目が覚めた。
旅館の部屋だ。眠っていたのか。
「寝ぼけてるな。お茶でも飲め」
布団から身体を起こして、師匠が入れてくれた湯気の立っている熱いお茶を口に含む。
415未 本編2 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/07(土) 23:04:14.43 ID:HrRb/QUY0
はあ。
頭が覚醒していく。さっきのは夢か? 夢だとするならば、目覚めた夢。経験上、そんな夢は疲れている時によく見る。そして悪夢であることが多い。
「誰か部屋にいませんでしたか」
「いや」
師匠は眠そうに欠伸をすると、深い息を吐いて「もう寝る」と言った。部屋の時計を見ると、夜中の二時を少し回っていた。
「寒み」
と言って、師匠が僕の布団に入ってくる。
「ちょ、ちょっと」
慌てていると、「なにがちょっとだ。早く出てけよ」と、布団から蹴り出される。
「自分の部屋で寝てくださいよ」
「うるさいな。さっきまで玄関と外をうろうろしてたから、寒いんだよ。布団暖め係、ご苦労」
しっしっ、と手で追い払われる。
僕は仕方なく立ち上がり、大きく伸びをする。「なにか出ましたか」布団に包まった師匠にそう問い掛けると、「いんや」との答え。
僕は溜め息をついた。師匠が番をしている間に、なにか起きるような気がしていたのに。この人の中の普通ではないなにかに、引き寄せられるように、だ。
浴衣を脱いで服に着替えていると、布団の中から声が掛かる。
「でも、なにかいるぞ。ここには」
え。なにか感じるんですか。そんな言葉を口にしようとしたが、ふぅ、という布団の中からの疲れきった吐息に会話を拒絶される。
身支度をしてドアを開けようとしたとき、「気をつけてなぁ」という眠そうな声がもぞもぞと聞こえた。
廊下に出ると、少し気温が下がった。部屋の中よりも空調が効いてないのだろう。天井の大きな蛍光灯は消えているが、その横の小さな黄色い電球にほんのりと明かりが灯っている。
裸足のまま履いたスリッパが足の甲に張り付くたびにひんやりとした感触がある。
二階は全部で六部屋ある。今夜は僕と師匠の二部屋しか使われていないはずだ。念のために残りの四部屋の前に立ってドアをノックし、それぞれノブを回そうとしてみたがどちらにも鍵が掛かっていた。
廊下を進んで一階へと降りる階段に足をかける。折り返しの踊り場で首だけを伸ばして階下を覗き見ると、その先の薄暗い廊下には人の気配はまったくなかった。
416未 本編2 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/07(土) 23:06:25.89 ID:HrRb/QUY0
恐々と下に降り、移動できる範囲で周囲を見て回る。一階には事務室の奥に従業員の仮眠室があり、仲居が寝ているはずだが、井口親子は本館のそばの離れに住んでいるはずだった。
そして本館のすぐ裏には戸叶家の住宅が接していて、女将や楓はそこで寝ているはずだ。
昔は家族は多かったはずだが、二人いたという女将の弟もそれぞれ独立して家を出てしまっていて、四年前に楓の祖母を亡くしてからは、母子二人だけの暮らしになってしまったという。
さぞ寂しいことだろう。
そんなことを思いながら事務所の中を覗いてみると、電話機に接続されたFAXが受信可能な状態であることを示す緑色のランプがチカチカと灯っていて、その光だけが暗い部屋に瞬いていた。
遠くから換気扇を回すモーター音が聞こえる。大浴場の方だろう。
そっちも見に行かないと。
そう思ったが思いのほか億劫で、後にしようかと玄関ロビーのソファーに腰掛けると、そのまま立ち上がりたくなくなった。
不思議なものだ。
ついこの四月に、普通の学生生活が始まったばかりだったのに、いつの間にこんな遠くの温泉宿に泊まりに来て、深夜に誰もいない玄関で得体の知れないものを見張るようなことになってしまったのだろう。
空調の機能を時間帯で落としているのだろうか。肌寒さを感じながらしばし物思いに耽っていると、ふいに玄関の外からなにかの物音がした。
どきりとして立ち上がり、恐る恐る玄関の自動ドアにかけられたカーテンの隙間から外を覗き込む。
旅館の敷地の中の、背の高い街灯が丸い明かりを灯しているその下に、なにものかが動く影が見えた。
自動ドアは、電気スイッチが切れている。しかし僕らがそこからも外に出られるように、今晩だけはロックがされていないはずだった。
二枚の厚手のガラスが合わさるその隙間に指先を入れ、力を込めるとドアは手動でわずかずつ開いていった。
瞬間、冷気が顔に吹き付けてくる。通り過ぎようとした人影がびくりとしたように立ち止まる。
「楓さん」
声を掛けられた相手はスクーターを押して歩いていたところだった。
「わ、びっくりした」
それはこっちのセリフだ。まだ帰ってなかったのか。もう時刻は二時半を回ってい
417未 本編2 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/07(土) 23:08:40.21 ID:HrRb/QUY0
「今夜は寝ずの番なの? あの人は?」
「交代で番をしてるんですよ。今は部屋で寝てます」
そばに近づくと、アルコールの匂いがした。
「飲酒運転」
そう言って指でバツを作ってやると、「堅いこと、言いっこなし」と楓は笑った。それから声をひそめて、しばしのあいだ立ち話をする。今夜はかなり楽しく遊んだようだった。
その中でふと、なんの気なしに僕は問い掛けた。
「和雄さんのこと、どう思ってんの」
女将は明らかに二人をくっつけようとしている。そして周囲もそれを追認しているようだ。もちろん和雄自身も。しかし若者にとって重大なイベント日に、女友だちとの遊びを優先した彼女の心理はどういうものなのだろうか。
楓はう〜ん、としばし唸った後、ぼそりと言った。
「和にぃは、堅物すぎ」
まあ、そこが今どきの男には珍しいんだけど。そう言いながら両手の手袋を片方ずつ脱いでいく。
「もう少し強引じゃないとね。今日だって……」
そう言いかけたところで、おっと、という表情をした。
「まあ、その上の修にぃよりはまだクダケてるけど」
じゃあ、お休み。
そう言って手を振りながら楓はスクーターを押して旅館の裏手へと消えていった。
表の道路と同じように舗装されているので、道が悪いわけではない。ただ客商売をしているので、深夜に帰宅する時は手前でエンジンを切ってくるのだろう。
酔ってはいても、身についた習慣があるのだ。なかなかしっかりした子に思えた。
そんでもって、脈有りだなあ、和雄さん。
僕はしばらくそこに佇んだ後、周囲になんの気配も感じないのを確認してから旅館の中に戻って行った。
空調は弱いが建物の中はさすがに寒空の下とは雲泥の差だ。生ぬるい空気の流れが周囲を包み、わずかな照明だけがロビーの椅子や置物を闇の中に浮かび上がらせている。
なにかが違う。さっきまでと。
立ち止まった僕の心臓がわずかずつ早く脈打ち始める。
なんだこの気配は。
418未 本編2 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/07(土) 23:11:20.50 ID:HrRb/QUY0
息を殺してあたりに目を配る。なにも見えない。動くものも。静止している異物も。
そっと大浴場の方へ足を向ける。ポケットからペンライトを取り出してスイッチを捻る。暖簾をくぐり、脱衣所、浴場、露天風呂と進む。すべて出入り口のロックは外されていた。
師匠もみんなが寝静まってからこのあたりもすべて見回りをしただろうか。
ブーン…… という換気扇の音が自分の呼吸音と混ざる。露天風呂の湯はまだ温かく、湯気が寒気の中に立ち上っている。黒々とした植え込みの影がそれを囲んでいる。
なにも出ない。風呂場を出て、客室へ向かう廊下を足音を忍ばせて歩く。
窓から中庭が見通せる。どの場所も、どの場所も、神主の姿形をしたこの世のものならぬものが現れたという場所だ。
さほど広くないこの鄙びた旅館で、余りにも多くの目撃談がある。これではかえって探し辛い。どこに重点を置いて良いのか分からない。
場所ではない。場所に憑いているのでは、ない。
では一体なにに?
僕は息を殺しながらロビーに戻る。フロアの中ほどに置かれたテーブル。その椅子に腰掛けて玄関のドアの方を向いて座る。
時間がゆっくりと過ぎていく。
なにかいる。わだかまった気配が、それでも形を成さぬように煙か、あるいは水蒸気のような姿で旅館の中を蠢いているようだ。
その姿勢のまま僕は固まり、永遠とも思える時間が流れていった。
朝は、まだか。
いつの間にかそればかり考えていた。繰り返し、繰り返し、そればかり。外はまだ暗い。未だ夜に棲む住人たちの世界。
異世(ことよ)に棲まうものたちの……
…………
いる。
誰かが廊下の隅に立っている。背後に目をやらずとも、それが分かる。いつの間にいたのか。
音も立てず、声も掛けず。じっとそれは立っている。
どんな姿をしているのだろう。
身体が動かない。夢の続きのようだ。目覚めたと思っていた、あの夢の中の。
いや、自分は本当にその後に目覚めたのか。本当はずっと身体はあの和室の布団の中にいるのではないか。
ではここでこうしている自分は誰だ。
ああ、思考がぐちゃぐちゃだ。
419本当にあった怖い名無し:2012/01/07(土) 23:13:30.07 ID:3QEQkkEF0
ウニおつです
つづき早くよみたい
420未 本編2 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/07(土) 23:13:41.51 ID:HrRb/QUY0
誰だ。自分ではない。立っているのは。誰だ。
トットット…… と早いリズムで胸が脈打つ。
動いた。
近づいてくる。
ロビーの隅の暗がりから、それがゆっくりとこちらに近づいてくる。音はない。畳の上のように、その踏み出す足は音を立てない。
ただすーっと気配だけが玄関へと向かうのが分かる。
その途中に、僕がいる。玄関のドアに向かって座っている僕が。気配は止まらない。なにかが起こる。なにかが。
その予感が自分の中で膨張する。そしてそれが弾けそうになった瞬間、僕の耳は確かにその音をとらえた。
鐘の音。
遠く、そしてたなびく様な微かな音の波が乾いた空気を震わせる。
明け六つだ。境界を超えたのだ。
朝六時と決められた現在のこの土地の時の鐘は、この冬場には『彼は誰(かはたれ)』の薄明よりも早く鳴らされるのだ。
いや、外に出れば山の端の空は白みがかっているかも知れない。しかし、玄関のカーテンを閉めたロビーにいてはその微妙な時の移ろいを感じることはできない。
しかし、明け六つだ。確かに人と物の怪の世界を分ける、狭間の時間が終わったのだ。僕は全身の力が抜けるような安堵を覚えた。
鐘の音は続いた。二つ目。そしてその余韻が消え去った後に、三つ目が。それを数えながら、僕は振り返ろうとする。
さっきまであった背後の気配はとっくに消えてい……
その瞬間、心臓が止まりそうになった。
消えていない。気配は、すぐ真後ろまで来ていた。背筋の皮膚が総毛立つような恐怖に襲われる。
なんで。
頭の中にボールペンの先が目にも留まらないような高速で走る。ぎゅるぎゅるという擬音。
す…… 捨て鐘だ……っ!
なんで忘れていたんだ。僕は知っていた。知っていたのに。
明け六つの六回の鐘が撞かれる前に、これから時を告げることの先触れとして、鳴らされる鐘があった。
421未 本編2 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/07(土) 23:18:06.02 ID:HrRb/QUY0
三回の捨て鐘。つまり明け六つは九回鐘が鳴らされるのだ。その最初の三回は、明け六つよりも前、つまり境界の上にある時刻。
それが鳴り終わるまではヒトの支配する時間ではなく、未だたゆたう、狭間の時間に属しているのだ。
背中に、氷のように冷たい気配が触れた。つま先から頭の天辺まで、なにかが走りぬけた。
鐘の音。
四回目の。
その瞬間、背後から触れた気配はそのまま僕の身体を突き抜け、突き抜けながら消えて行った。明け六つの始まりと同時に。
その気配は視覚的には全くとらえることはできなかった。しかし確かに、なにか得体の知れないものが、消えながら玄関の外へ向かうのを感じていた。
その気配に突き抜けられた部分の体温が根こそぎ持っていかれたような気がした。いや、体温だけではなく、生気というか気力というのか、なにかそういうものもベリベリと剥ぎ取られたかのようだった。
気配が完全に消え去り、九回目の鐘の音を聞き終わっても僕はその場で動けなかった。椅子に腰掛けたまま、悪寒が全身を駆け回るのをじっと感じている他なかった。
「おい」
いきなり後ろから肩を掴まれる。師匠がいつの間にか息を切らせて後ろに立っていた。「出たのか」と訊かれて必死で頷く。師匠は舌打ちをすると、周囲を警戒するように見回す。
あのなにものかの気配を感じて布団から飛び起き、そのまま部屋から走ってきたのだろうか。
「神主か」
「たぶん」
はっきりは分からなかったが、最後に本物の明け六つの始まりと同時に消え去りながら、その瞬間に神主の着るような装束を身に纏っているのが見えた気がした。そのことを切れ切れに説明する。
「そうか。後で状況を詳しく教えてくれ。とりあえず部屋で休め」
ヒューヒューと胸の真ん中から体内の空気が抜けていくような錯覚があった。
「大丈夫だ。すり抜けただけなんだろう? 襲われた感じでもないしな」
そう言いながら師匠はズボンのポケットから金属製の薄いケースを取り出した。さらにその中から半紙を畳んだようなものを摘み出す。
422未 本編2 ラスト ◆oJUBn2VTGE :2012/01/07(土) 23:20:31.49 ID:HrRb/QUY0
「これ飲んで寝ろ」
蓋の形に折り込まれた部分を捲ると、中には粉薬のようなものが詰まっているのが見えた。
「なんです、これ」漢方薬のようなものだろうか。
「言ったらプラセボにならないだろう」
言っているし…… 偽薬と。
ともかく僕は師匠からその薬を受け取り、コップに汲んできてくれた水で喉に流し込んだ。苦かったが、気のせいか悪寒が溶けていくような感じがした。
少し楽になって、なんとか立ち上がり、二階の階段に足をかけた。そのとき玄関フロアの明かりが完全に灯り、「おはようございます」という声とともに女将がフロントの奥から顔を覗かせた。
僕は蚊の鳴くような返事をして、師匠が女将に何ごとか話かけるのを尻目に階段を上がり、眠るために部屋に戻っていった。

           ◆

423本当にあった怖い名無し:2012/01/07(土) 23:23:47.75 ID:qvkA2zDfO
ウニさん乙!
424本当にあった怖い名無し:2012/01/08(日) 00:03:31.90 ID:Gq4lgI9/0
3の投下が待ち切れない!
425本当にあった怖い名無し:2012/01/08(日) 05:25:31.55 ID:P4VBKsfH0
ウニ乙
426本当にあった怖い名無し:2012/01/08(日) 11:38:05.73 ID:oQ83bdV20
ウニさん乙
427本当にあった怖い名無し:2012/01/08(日) 12:09:31.25 ID:RHNg2v2l0
3が早く読みたくて辛い・・・
428本当にあった怖い名無し:2012/01/08(日) 20:55:39.75 ID:LtHOhocl0
わーお!
429本当にあった怖い名無し:2012/01/09(月) 12:30:05.56 ID:P0PwmQzV0
ウニが来てもこの過疎ぶりw
スレとしては完全に終わってるな
430本当にあった怖い名無し:2012/01/09(月) 13:51:36.62 ID:IEW4kJgI0
いや…別にウニについては大して興味ないし、ウニには感想言わなきゃいけない決まりとかあんの?
他の人来ないかなと思ってたまに覗いてるが、もう赤緑とウニ以外誰もいないのかね
431本当にあった怖い名無し:2012/01/09(月) 14:41:21.96 ID:dxzV95E/0
なんでそんな怒ってんの?
432本当にあった怖い名無し:2012/01/09(月) 15:02:23.89 ID:NHaF6FKz0
投下してくれる人が居るなら必要なスレじゃん。
不要なスレなんて他に沢山あるし。
433本当にあった怖い名無し:2012/01/09(月) 15:24:45.68 ID:iMy14JT40
熱望 超熱望
早く続きが読みたいです
434本当にあった怖い名無し:2012/01/09(月) 19:18:05.90 ID:P0PwmQzV0
>>432
数カ月に一度しか投下されてないのに必要?
ここはお前が運営してる掲示板か?鯖運用にはかねかかってるんだよ
機能してないスレは要らないって言うのがおかしいのか?
435本当にあった怖い名無し:2012/01/09(月) 20:06:50.36 ID:899vLhrt0
タニマチ気取りw
436本当にあった怖い名無し:2012/01/09(月) 20:56:46.71 ID:hMOkgzLCi
なんだ金出してる人か?
437本当にあった怖い名無し:2012/01/09(月) 22:41:25.43 ID:iMy14JT40
機能してないと言ってるレスも無駄だよ
>>432がスポンサーなら謝るが
違うなら来なきゃいいだろ?
本当に無駄なスレなんか沢山あるだろ?

438本当にあった怖い名無し:2012/01/10(火) 00:43:03.59 ID:ioJRn5uH0
ちっちぇえ奴らだな
嫌なら来るなカス共が
439本当にあった怖い名無し:2012/01/10(火) 00:50:36.83 ID:AMCVOjHC0
みんなはさーん
440本当にあった怖い名無し:2012/01/10(火) 00:57:04.99 ID:99CbKArV0
数カ月に一度だろうが投稿する人もいるし待ってる人もいるんだから必要だろう
>>434みたいに運営が心配ならもっと使われてないスレもあるんだから、それを必死に探して削除依頼でも出してれば良いんじゃない?
441本当にあった怖い名無し:2012/01/10(火) 03:07:45.69 ID:AMCVOjHC0
そもそも2chが不必要だよね
442本当にあった怖い名無し:2012/01/10(火) 15:03:40.14 ID:/uREldn/0
>>440
だから、ここは公の掲示板であっててめえの掲示板じゃないんだよ
機能してないスレは落ちてしかるべきなのが理解できないのか?
他のいくらでもスレはある。
ここがなければ他の該当スレに投下すればよいだけの話
運営の心配?あほか。ルールぐらい把握しておけよ

>>441
機能してない、というのと不必要というのとは全然意味が違うだろう
2chのまとめスレは数多くある。それを楽しみにしてる人もいる
お前だってウニキタ━(゚∀゚)━!とか喜んでるんだろ
楽しまれてる時点で必要なんだよ

それと「機能してない」ってのは全く意味が違うって気づけよ
443本当にあった怖い名無し:2012/01/10(火) 15:23:11.07 ID:wT+wBZ4t0
×機能してないスレは落ちてしかるべき
○機能してないスレは落ちる

まーこのスレ機能してんだわw
残念だったねぇ
444本当にあった怖い名無し:2012/01/10(火) 17:41:43.46 ID:Nwgz4L6b0
>>442
すごくブーメランな訳だが
445本当にあった怖い名無し:2012/01/10(火) 19:55:57.40 ID:/uREldn/0
はあ?数カ月に一度しか投下されないスレが機能してる?
残念もクソもねーよ
信者が必死に保守してるだけだろ。
機能してるって言うなら作品以外禁止にしてみろよ
レスが一定期間無いとdat落ちするから試す価値あるな

446本当にあった怖い名無し:2012/01/10(火) 21:13:25.30 ID:CcF2dF+g0
>考察や、好きな話について語り合いましょう。
テンプレが読めない残念な子なんやな
放置で


まあそれは置いといていよいよ怪異との遭遇と相成った訳ですが、
伏線の張り方といい引っぱるタイミングといいレベルアップしてます
自分の中では見えた(ように思える)部分もあるけどはたして真相は?
447本当にあった怖い名無し:2012/01/10(火) 21:35:33.34 ID:FwpbyzknO
くだらない…
448本当にあった怖い名無し:2012/01/10(火) 21:58:17.75 ID:/uREldn/0
>>446
その考察も好きな話も誰もやってないのも込みで機能してないって言ってるだろ
馬鹿なのか?
で、すぐそのあとに

>まあそれは置いといていよいよ怪異との遭遇と相成った訳ですが、
伏線の張り方といい引っぱるタイミングといいレベルアップしてます
自分の中では見えた(ように思える)部分もあるけどはたして真相は?

って、恥ずかしすぎるだろw
いつものように落ちそうになった時にだけ保守しとけよ馬鹿が
449本当にあった怖い名無し:2012/01/10(火) 22:17:58.11 ID:CcF2dF+g0
>その考察も好きな話も誰もやってないのも込みで機能してないって言ってるだろ
しらんがなw
じゃまあコテトリつけて如何に機能して無いか語れば?
坊やも理論()展開しやすいだろうし、興味ない人はNGしやすい
双方良しで万事オッケー!

あ、以降放置するんでヨロ
450本当にあった怖い名無し:2012/01/10(火) 23:10:46.77 ID:22TDDqZR0
ブーメランが怖いんで黙りますってか
まあ、次スレは既にあるんだからここが落ちてもそっちに移ればいいだけだな
451本当にあった怖い名無し:2012/01/11(水) 00:01:52.11 ID:AMCVOjHC0
必要ってのは必ず要るっていう意味だぞ……
452本当にあった怖い名無し:2012/01/11(水) 00:59:12.53 ID:7NkjRE8y0
勝手に削除依頼だせば良いじゃん
判断は任せれば納得がいくだろ?
とりま、黙ってくれると言う事で良かったよ
453本当にあった怖い名無し:2012/01/11(水) 19:53:55.59 ID:PEVHMlVE0
>>451
じゃあいくらでも代わりのスレが有るこのスレは必要じゃないね!
作品投下はもとより作品への感想や考察より住人の争いが賑わってるって凄いね
454本当にあった怖い名無し:2012/01/11(水) 21:10:00.76 ID:PWzQUg4x0
おk
455本当にあった怖い名無し:2012/01/12(木) 03:14:54.74 ID:tztL9qHc0
>>453
だから2chそのものが不要だと
456本当にあった怖い名無し:2012/01/12(木) 03:26:55.85 ID:VUjNGCnl0
お前ら、おもしれーな
457本当にあった怖い名無し:2012/01/12(木) 17:59:55.78 ID:Y4jqHXlf0
ウニさん待ちです
458本当にあった怖い名無し:2012/01/12(木) 22:15:08.07 ID:A4Nw9chW0
グダグダ文句ばかり書いてるカスは全員死ね。

ウニ待ってるぞ。
459本当にあった怖い名無し:2012/01/13(金) 18:07:41.21 ID:LGU9zp5Y0
おk
460本当にあった怖い名無し:2012/01/14(土) 20:52:44.59 ID:cHcvQ7ht0
>>455
2chが賑わってるという事実が見えないほど脳みそ腐ってるの?
不要ということは誰にも必要とされてない状態のことを言うんだよど低能
延命処置のような保守レスしないと落ちるスレとは違うんだよ
461本当にあった怖い名無し:2012/01/14(土) 22:30:24.47 ID:KbBs/C4c0
これが依存症か……
462本当にあった怖い名無し:2012/01/14(土) 22:51:05.16 ID:NfKHGkkX0
2ch無くなったら世界崩壊するぞとか言い出しそうだな
閉鎖したらまた別のコミュニティ探すんだよ

2chなんて必要悪としてもアングラとしても大きくなりすぎたから一度潰れたほうがいい
463未 本編3 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/14(土) 23:37:27.49 ID:PnBJCiQI0
目が覚めたのは朝の九時過ぎだった。
まだ頭が重く、肌触りの良い布団から出るのは億劫だったがなんとか気合を入れて起き上がった。三時間ほど寝ていたらしい。
広い部屋の真ん中に布団が一組だけ敷いてあるのを改めて眺めると、凄く贅沢な気分になる。
大きな窓のカーテン越しに朝の光が部屋の中に射し込んでいる。浴衣の襟のあたりを掻きながらそちらにぼうっと目をやる。
それから自分の身体の様子を確かめたが、特に異常はないようだ。あの謎の薬が効いたのだろうか。
部屋を出て師匠を探すと、一階の玄関ロビーでOL四人組と話をしていた。見るとみんな荷物を持っている。もうチェックアウトするところらしい。
「結局オバケ出なかったなあ」
「なにつまらなそうに言ってんのよ。一番ビビッてたくせに」
「ああもう。変な噂聞かなきゃ良かった! あんま寝られなかったわ」
「でもさ、ちょっと見てみたくなかった?」
OLたちは朝から元気に声が出ている。師匠は笑ってそれを聴いているだけだ。
「じゃあねえ。年下の彼氏くんも、バイバイ」
そんなことを言いながら彼女たちは僕らに手を振って、外にとまっていた旅館のバンに乗り込んでいった。旅館の中が急に静かになった。
勘介さんが運転するバンがゆるゆると発進していくのを見送ってから、僕は広間に用意されていた朝飯を食べた。焼き魚を中心としたシンプルなメニューだった。
しかし温泉たまごが小皿についていて、それがやたらうまそうに見えて、先に食べるか、最後にとっておくか悩んでしまった。
もう一組の親子連れももうチェックアウトした後だったので、客は僕と師匠しかいなくなったことになる。いや、もう客を装う必要もなくなったわけだ。
先に朝食をとり終わっていた師匠に、僕が体験したことをこと細かく説明しながら最後の温泉卵を残ったご飯の上に乗せて、小瓶に入った、だし醤油を垂らす。
「四回目の鐘で消えたか」
「はい」
味付け海苔の袋を裂いて、さらにその上に千切りながらトッピングする。それを勢いよくかき込んでいると、師匠が言う。
「捨て鐘の意味も理解しているということは、やっぱりこの土地の霊だな。昨日今日やってきたような浮遊霊の類じゃないのは間違いなさそうだ」
さらりと言った言葉の中に、師匠の思想が一本の楔のように通っている。
464未 本編3 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/14(土) 23:39:07.67 ID:PnBJCiQI0
師匠は霊の在り方に普遍的なものをあまり認めない。「死後の霊魂とはこういうものだ」という生前の記憶がその存在の濃度、そして特性を規定するのだ、という思想を持っている。
例えば足のない幽霊画が広く知られている日本では足のない幽霊が現れるが、そんな発想のない外国では幽霊にしっかりと足があるものだ。
境界を越えたことを告げる明け六つの始まりのタイミングを正確に分かっているからこそ、そういう消え方をしたのだ、と言っているのだ。
「食ったら、行くぞ」
「はい」
お茶を胃袋に流し込み、口を拭いた。これから若宮神社に行くのだ。テキの本丸かも知れない場所に。そう思うと少し緊張してくる。
連れ立って広間を出ると、事務所にいた女将をつかまえる。
「今夜カタをつけるつもりです」
師匠は真剣な表情でそう切り出した。女将が訊き返すと、やはり同じ言葉を繰り返した。「今夜です」
それに対し、女将はやんわりとした言葉で説明を求めた。
「今日は、泊り客がいないはずでしたね」師匠は説明の代わりに、そう訊ねた。
「ええ」
この依頼のこともあって、大晦日までなるべく宿泊客をとらないようにしていたらしい。OL四人組やもう一組の親子連れのようにかなり前から入っていた予約の客だけはどうしようもなかったが、そんな客も今夜はいないということだった。
昼から他の従業員も休みになり、『とかの』には女将と井口親子だけになるのだという。
確かに今夜はこの旅館に憑りついた霊と対決するには絶好の場面と言えそうだが、いったい師匠はそのカタをつけるためのどんな見込みがあるというのだろうか。
そう思いながら横顔を見ていると、師匠はズボンのポケットを探り始め、折り畳まれた半紙を取り出す。
「ここに書いてあるものを用意してください。重要なことです。できますか」
女将は渡された半紙を怪訝な顔で見つめる。
「だいたいご用意できると思いますが……」そう言いながら、書かれている後半部分に目を留めて困惑したような表情を浮かべる。
「ああ、最後のは若宮神社にあるでしょう。自分が借りに行きます。それで、済みませんが今から電話をしてくれませんか、貸していただけるように」
「分かりました」
女将は電話をかけに行き、ほどなくして戻ってくる。
465未 本編3 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/14(土) 23:40:38.64 ID:PnBJCiQI0
「いつでもお貸しできるそうです」
「ありがとうございます。ではさっそく今から若宮神社に行ってきます。正直どうなるか、まだ手探りな状態です。が、なんとかして見せますよ。これでもこの手のことは専門家ですから」
 師匠はそううそぶいて、下手な安請け合いをした。
「お気をつけて」
女将は期待しているのいないのか分からないような良く統制された表情で、そう頭を下げた。
しかし、何気なく発した自分の言葉になにか思い至ったかのようにハッとして口元を抑えた。なにか不吉なものを感じたのだろうか。気をつけなくてはらないなにかが待っていると? なんだかこっちまで怖くなってくる。
神社までは歩いて行くのかと思ったが、女将が自転車を貸してくれた。宿泊客用に何台か旅館に備えているらしい。
建物の裏手の駐車場から二台を選んで玄関まで回してくる。
「昼ご飯は、いりませんから」
師匠が女将にそう告げた。
「神社で話を聞いた後、調べものがあるのでそのまま町の図書館へ行く予定です。飯もそのあたりで食べます」
自転車に跨りながら、師匠は「楓さんは?」と尋ねた。
まだ寝ています。
女将はそう言って苦笑しながら母親の顔を見せた。「まったくあの子は」
風が冷たい。外はずいぶんと冷え込んでいる。昨日よりも気温は低いかもしれない。厚着をしてきたつもりだが、身体が縮こまりそうだ。
「行ってきます」
師匠の後に続いて出発する。玄関からダンボール箱を抱えた広子さんがこちらを見ながら指先だけで手を振っていた。また顔のパーツを変に真ん中に寄せたような笑顔を浮かべている。
つられてこちらも笑顔になる。
師匠は寄り道もせずに、昨日裏山の上から見た若宮神社のある方角へ真っ直ぐ進んでいった。
師匠は車ではないときは、僕に自転車をこがせて自分はそのうしろに便乗し、あっちに行けこっちに行けと指示を出すばかりで実に良い身分なのだが、珍しく自分で自転車を運転するときはやたらとこぐのが早い。
スポーツ万能と自分で言うほどのことはあり、身体能力やバランス感覚は目を見張るものがあった。
466未 本編3 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/14(土) 23:44:45.72 ID:PnBJCiQI0
借りた自転車の微妙な性能差もあり、その師匠について行くのが精一杯で、なんとか置いて行かれないように、道端の雑草も枯れたような色合いをしている細い田舎道を、頑張ってペダルを踏み続ける。
十五分ほど走っただろうか。遠くに見えていた山が眼前に迫り、道路にはいつの間にか傾斜がつき始めていた。なだらかな山道に入り、その麓付近の集落をいくつか通り過ぎて、一際立派な木々が鬱蒼と茂っている一角にたどりついた。
「鎮守の森だな」
スギやヒノキといった常緑高木が混合林を形成しているようだ。その背の高い木々の枝葉の隙間から、木造の建物の屋根がちらちらと覗いている。
道路が広くなっている所で自転車を止め、鎮守の森の中へ足を踏み入れるとすぐに赤い鳥居が見えてきた。
「明神鳥居だ。副柱もない、一般的なものだな」
シンプルな形をしているが、古びた佇まいは森とその奥の参道を守り続ける長久の時の流れを感じさせてくれる。
「あれ。でもこないだ行った神社でこれと同じ形のを見ましたけど、春日鳥居って言ってなかったですか」
師匠は振り向くと、鳥居の上部を指差しながら言った。
「笠木を見ろ。両端が中央部に比べて反りあがっているだろう。反り増し、と言って、それがあるのが明神系、ないのが神明系の鳥居だ。春日鳥居は神明系。ていうかこないのだのとのは全然形が違うだろ。台石もあるし」
説教が始まりそうだったので、鳥居から目を逸らし、その両脇を固めるように配置されていた狛犬に近寄って「なかなか立派な狛犬ですね」と苔むしたその身体を触った。
鳥居の右側にあるそれは、厳しい顔をして口を閉じ、懐にいる小さな狛犬の頭を撫でている姿をしている。
しかし師匠はそこにもダメ出しをしてくる。
「よく見ろ。それは獅子だ」
「は?」
「頭に宝珠を載せているだろう。そっちの、頭に角が生えてる方が狛犬だ」
そう言われて反対側に配置されていた方の石像を見ると、確かに角が生えている。口は唸りを上げるように開かれ、足元の丸い玉を踏みつけている姿だった。
「元々は獅子と狛犬が一対になっているのが正式なものだが、時代が下るにつれて獅子と狛犬の区別がなくなって、今じゃ両方とも一般的に『狛犬』と呼ぶけどな。
467未 本編3 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/14(土) 23:49:00.19 ID:PnBJCiQI0
本来は社殿に向かって右側が獅子で、左が狛犬。同じく右側が口を開いた阿形、左が口を閉じた吽形。ここのは阿吽は逆配置だな。しかしこの右側は明らかに獅子の特徴を備えている」
言われてまじまじと見比べたが、普通の狛犬となにが違うのか分からなかった。
「まあどうでもいいよ。狛犬なんて神社によって千差万別だ。職人の個性であって、祀っている神様ともほとんど関係がない」
先に行くぞ。
師匠はさっさと鳥居を潜って行ってしまう。僕も慌てて後を追う。
参道は長く、その道の端には比較的小ぶりなクスノキが枝葉を精一杯伸ばして立ち並んでいる。その下を通るとチチチ…… という鳥の鳴き声が頭上から聞こえてくる。
途中で手水舎(ちょうずや)があったので、並んで口をすすいだ。
参道の奥に拝殿が見えてきた。遠くから見た印象よりもかなり大きい。玉砂利を踏みながら境内を進むと、拝殿のそばで箒を持って枯葉を掃いている男性の姿があった。
白衣の上に黒い着物を重ね着して、下は薄青い袴という格好をしている。見るからに寒そうだ。しかし男性は平然とした身のこなしでこちらに向き直り、「お待ちしておりました」と微笑みかけてきた。
この若宮神社の宮司である石坂章一さんだった。和雄の父親であり、彫りの深い顔が良く似ている。もう五十歳は過ぎていると思われるが、背筋はピンと張っていて背もかなり高い。
師匠のことはすでに女将から聞いているようだ。挨拶を交わし、さっそく本題に入る。
「とかのに現れるという神主姿の霊ですが、お心あたりはないんですね」
「はい」
章一さんは溜め息をつきながら、戸惑っております、と言った。
「和雄さんにも訊きましたが、こちらの装束が盗まれるようなことはありませんでしたね」
「ええ」
「まあ、わたしもこれが誰かのイタズラなんていう線は考えていませんが、噂に便乗した誰かが良からぬことを考えるということはありえない話ではありませんから」
拝礼をさせていただいていいですか?
と師匠は言って拝殿に近づいていく。
「御祭神は八幡神、応神天皇ですね? 作法は二拝二拍手一拝でよろしいですか」
「応神天皇と仲哀天皇、そして神功皇后です。作法はそれで結構ですよ」
師匠は賽銭を投げると、丁寧な動きで拝殿の奥に向かって二回頭を下げ、二回拍手を打ち、また一回頭を下げた。腰が九十度折れている。
468未 本編3 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/14(土) 23:53:17.59 ID:PnBJCiQI0
僕も真似をしたが、綺麗に直角に曲げるのは上手くいかなかった。コツが要りそうだ。
「この瑞垣(みずがき)の奥が神殿ですね」
拝殿の向こうには垣根で囲われた空間があり、その中に一回り小さな本殿の姿が見えた。
「この神社は、戦国武将であった高橋永熾が勧請してきたものだと聞きましたが、それ以前からあった神社はこちらへ合祀されたのでしょうか」
「あまり古いものは分かりません。明治以降なら合祀の記録が残っておりますので社務所の方でお見せしましょう」
「では、のちほどお願いします」
師匠は境内を歩き始める。
「末社はあちらですか」
師匠の指さす先には横に長い社殿のミニチュアのような建物があった。
「手前が摂社で、仁徳天皇、日本武尊、武内宿禰などをお祀しております。末社はその奥です」
末社は一つの小さな建物で、軒の下に塗装が剥げかけた朱塗りの扉がいくつか並んでいる。
「祖霊社はありますか」
師匠の問い掛けに、当代の宮司の顔が少し緊張を帯びた。祖霊社というのは、歴代の神職や氏子の霊を祀った社(やしろ)のことらしい。
「この端がそうです」
鍵の掛かった扉の上部にかけられている額を確認しながら、師匠はその正面に立った。
歴代の神職の霊がこの中に……
その意味を考えて、少し背筋に冷たいものが走る。今朝の体験が脳裏に蘇った。
師匠は目を閉じて、そっと扉に右手を触れる。章一さんと僕が見守る前で、しばらくその格好をしていたかと思うと、ふいに肩の力を抜いてこちらを振り返った。
「違うな」
そう言い切った師匠に章一さんは驚いた顔を見せる。
彼もこんな若い自称霊能者など胡散臭い目で見ていたはずだ。ただ『とかの』に対する負い目から、女将が雇った師匠にそれなりの応対をしてくれていたに過ぎない。
しかしその自称霊能者が、祖霊の仕業ではないと言ったのだ。『そういうこと』にしておけば、話がシンプルになり、やりやすいはずなのに。
「あれが時の鐘ですか」
師匠の視線の先に、鐘楼堂がある。境内の隅の方だ。
近づくと大きな鐘がお堂の屋根の下に釣り下がっている。
469未 本編3 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/14(土) 23:55:03.11 ID:PnBJCiQI0
「鐘はあなたが?」師匠は撞く真似をした。
宮司は頷く。
「時の鐘があるのは神社では珍しいようですが、神仏習合のころの名残でしょうな」
「かなり昔からあるのですね」
「当神社が開かれたころから、と伝わっております」
「鐘自体は新しいものですね」
「ええ、これは昭和になってから鋳造されたものです。古いものはあちらに」
境内の一番奥まった場所に、朽ち果てたような別の鐘楼堂があった。打つための撞木(しゅもく)もついていない。
そちらの鐘はいかにも古そうな姿をしていた。錆が全面に浮いていて、元の色もはっきりとしない。
師匠はその古い鐘の下に歩み寄るとぐるぐると回りながら観察し始めた。
「銘はありますか」鐘の反対側から顔だけを出してそう訊ねる。
「いいえ。あった跡はありますが、欠けてしまっているようです。高橋永熾が持ち込んだ最初の鐘だと伝えられておりますのでこうして今でも保存していますが、もしかすると何代目かのものなのかも知れません」
ふうむ、と呟きながら師匠は鐘の下部を指でなぞった。そして指についた錆をしげしげと眺める。
よく見ると師匠がなぞっていたあたりはとくに錆が多い。下から数十センチにかけてぐるりと別の模様がついているような感じだった。
「なるほど」と呟いた後、師匠は章一さんに問い掛けた。「この錆がどのようにしてついたものか、伝わっていますか」
「錆、ですか」
章一さんは戸惑ったように「いいえ」と言った。
「なるほど、なるほど」と師匠は繰り返し、錆を指から払って手を叩いた。「ではその合祀の記録を見せていただけますか」
それから連れ立って拝殿のそばにあった社務所に戻った。
畳敷きの部屋に通され、しばらく待っていると章一さんが丸めた厚紙を持って現れた。
「これは写しですが」と言って広げた大きな紙には神社の祭神や由緒などが細かい字でびっしりと書き込まれていた。写しと言ってもコピーのことではない。書き写したものということだ。
「合祀の記録は…… と、ここからですね」師匠が紙を指でなぞる。
470本当にあった怖い名無し:2012/01/14(土) 23:58:00.89 ID:ZUDr+NZe0
支援
471未 本編3 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/14(土) 23:59:00.58 ID:PnBJCiQI0
「なるほど、明治以降のものだけですね。合祀したのは七つか。社格は無しか村社…… ほとんどが祭神不詳ですね。単に『カミ』と呼ばれていた村落社会の氏神というわけだ。
記載項目に境内坪数や社殿の間数、それに管轄官庁までの距離まで書いてあるということは、恐らく明治十二年の『神社明細帳』づくりための取調べの際に作成された記録でしょう」
師匠は僕に、明治の「神社整理」に関する簡単な説明をしてくれた。
どうやら明治の初期に、それまで乱立していた全国各地の様々な神社を国策として調べ上げ、仏像を御神体にしているような神社を改めさせたり、由緒も祭神もはっきりしないような小さな神社を
近隣の神社に合祀させたりして統廃合を進めることで地域の神社の機能を再生させようとしたのだという。
この若宮神社もご他聞に漏れず、そうした近隣の「カミ」たちを合祀してきた歴史があった。合祀されたカミは、主に先ほど見てきた末社に祀られているそうだ。
「合祀された七社は、どれも拝殿もないような小さな神社ですね。住み込みの神主などいなかったでしょう。祭りなどの際には恐らくこちらの若宮神社から神主が出向いていたのではないですか」
師匠の推測に章一さんは頷いた。「そう聞いております」
結局この松ノ木郷では、神様に関わる行事はすべてこの若宮神社が関わっていたということのようだ。
「この若宮神社は遷宮もありませんね」
「はい。ずっとこちらに」
「とかのの周辺に分社などもないと聞いていますが」
「その通りです。ございません」
章一さんはそう言った後、慎重に付け加えた。「少なくとも私どもは把握しておりません」
師匠はしばらく社務所の天井を眺めていた。そしてゆっくりと首を戻し、「よく、分かりました」
と言って腰を浮かせた。
「ありがとうございました」
そう言って頭を下げたので、僕は驚いて袖をつつく。
「もういいんですか」
「もういいんだ。聞けることは聞いた」
おいとまします。
師匠がそう言うと、章一さんは「そうですか」と同じように頭を下げ、「あまりお力になれませんでした」と硬い表情で口にした。
472未 本編3 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/15(日) 00:00:55.96 ID:PnBJCiQI0
社務所の玄関で靴を履いていると、章一さんが大きな布袋を抱えてやってくる。
「これを」
師匠は「あ、忘れるところでした」と言ってそれを受け取り、中を覗き込んで一つ頷いた。「どうもありがとうございます。後日返します」
「それ、なんですか」
僕も覗き込もうとすると、「お楽しみは後だ」と見せてくれなかった。ちらりと縄のようなものが見えただけだった。
「そう言えば、和雄さんは?」
話を逸らすように師匠がそう問い掛けると、「少し前にどこかへ出かけましたな」との返事だった。
また『とかの』に手伝いに行ったのかも知れない。まめなことだ。
「この神社は、ご長男の修さんが継がれるんですか」
「いやいや、まだまだ」
そう言って章一さんは手を振ったが、相好を崩している。自慢の息子のようだ。跡継ぎ不足に悩む神社は多いのだろうが、皇學館まで行った息子がいると、まずは一安心というところだろう。
もう一度お礼を言って、僕らはもときた参道の方へ向かう。
鳥居のところまで見送りをしてくれた章一さんの姿が小さくなり、最後に軽く会釈をして自転車を置いてある場所まで歩いていった。
その途中で師匠が呟く。
「もう少しで全貌が見える」
もう少しもなにも、僕には肝心の若宮神社でほとんど収穫がなかったようにしか思えなかった。
師匠はニヤリと笑うと、「さあ次だ」と言った。

           ◆

自転車をこいで西川町の中心街まで出てきた僕らが次に向かった先は図書館だった。
「裏を取るぞ」
師匠はそう言って郷土史のコーナーから本を抱えて閲覧室の一角に陣取った。そして西川町の変遷や若宮神社の歴史などを片っ端から調べていった。
473本当にあった怖い名無し:2012/01/15(日) 00:01:22.55 ID:CLe823bA0
支援!
474未 本編3 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/15(日) 00:03:40.53 ID:PnBJCiQI0
どちらもこれまでの情報の詳細や再確認といったものばかりで、なにか今回の事件に関係していそうなものは見当たらない。
飽きてきて上の空になり始めた僕を尻目に、師匠は楽しそうに頁を捲り続けている。
「お、見ろ。亀ヶ淵のことが載ってる」
あの道路沿いの貯水池のことか。
紙が変色しかかった古い本に、白黒の写真とともに貯水池の歴史が記されていた。
「あんまり詳しくないな」
ぶつぶつ言いながら師匠は顔を近づけて読んでいる。
戦国武将の高橋永熾がこの大規模な土木工事を行った背景と、その効果がどのようなものであったかが、簡単に説明されていた。
かつてこの枝川沿いには亀ヶ淵という名前の沼地があったそうだ。そこを新たに掘り抜いて溜め池として補強し、川から水を引いてくるという工事の工程が図解とともに示されている。
ふんふん、と鼻を鳴らして読んでいた師匠が「うん?」と唸った。
「亀ヶ淵の横に、括弧してショウガブチとカタカナで書いてあるな」
「そうですね」
別の項ではちゃんと「カメガブチ」と振り仮名が振られていたので、読み方としてはカメガブチが正しいはずだ。というかそれ以外読みようがない。
ということはショウガブチというのは別名なのだろうか。
「ショウガブチ…… ショウガブチか。あのあたりではショウガでも採れるのかな」と師匠は首を捻る。
そう言えば昨日の夕食で、山菜の天麩羅の中に薄く切ったショウガを揚げたものがあった。名産なのかも知れない。
その味を思い出すと、口の中に幸せな感触の記憶があふれてくる。今日も旨いものにありつけるのだろうか。
僕が舌なめずりをしていると、師匠は立ち上がって、近くで本を広げていた六十歳過ぎくらいの男性に声をかけた。地元の人のようだった。農協のロゴの入った帽子を被っている。
「このあたりはショウガをやっていますか」
「いんや。ショウガなら隣町だなぁ」
「昔はやっていたんでしょうか。ここに、亀ヶ淵のことをショウガブチと書いています」
「うん?」
男性は老眼鏡の位置を直しながら本を覗き込んだが、首を捻っている。
475未 本編3 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/15(日) 00:06:13.01 ID:a2MmWsar0
「あの溜め池は、ショウガブチなんて呼び方、しねえけどなあ」
そう言いながら近くにいた知り合いの老人に本を見せると、やはり同じような答えが返ってきた。
どうやらショウガブチという呼び名は一般的ではないようだ。もしくはもう廃れた古い名前なのかも知れない。
「ありがとうございました」
師匠はお礼を言って本を抱えると、僕に目配せをした。他の本も片付けろ、と言っているらしい。
「もういいんですか」
「うん」
スタスタと歩き出した師匠を追いかける。
「ショウガブチでなにか分かったんですか」
「たぶんな」
また自分一人理解したという顔ですましている。いい加減じれったい。
「教えてくださいよ」と食い下がると、やれやれとばかりに溜め息をつきながら師匠は指を立てた。
「亀という字の読み方はいくつ知ってる?」
亀ヶ淵の「亀」の字か。
訓読みだと「カメ」。音読みだと「キ」。いくつというか、これくらいしか思いつかない。
師匠は大きな辞典を本棚から取り出して、ペラペラと捲り始める。そして亀という漢字について書いてある頁を開いて見せた。
「他に、亀の手と書いて亀手(きんしゅ)とか、亀裂(きんれつ)、あと中国の西域諸国の中の亀茲(キュウシ)って国も亀の字をあてているな。それから『屈む』の屈(くつ)という字の代わりに亀の字をあてた『亀む(かがむ)』なんて言葉もあるな」
知らなかったが、色々あるものだ。
「人名だとバリエーションが多いな。そういや、わたしの親戚にも亀に司と書いて亀司(ひさし)って名前のオッサンがいたな」
しかぁし……
師匠はもう一度指を立てて左右に振る。
「亀をショウと読む例はどこにも出ていない」
「はあ」
だからなんだというのだろう。
476未 本編3 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/15(日) 00:08:36.15 ID:PnBJCiQI0
「まだ分からないのか」
「はあ」
師匠は溜め息をつきながら首を振った。もの凄くバカにされているらしい。
「いいか。読み方が違っているんじゃないんだ。だったら、間違っているのは漢字の方だ」
「漢字、ですか」
偉そうに言われても、だからどうした、という気がしてくる。
「と、いうわけで、解決だ」
なにが解決なんだか。仮に貯水池の名前の謎が解けたところで、なんの意味もない。
そう思っていると、師匠は満面の笑みで続けた。
「神主の幽霊の謎は、解けたよ」
「はあぁ?」
唖然とした僕の肩をぽんぽんと叩いて師匠は、「さあ、もう少し詰めをするぞ」と言った。
僕はわけの分からないまま、うながされてとにかく図書館を出た。
「腹減った。飯食おう」
師匠が俊敏な動きであたりを見回し、食事のできそうな店を見つけ出した。その喫茶店の前に来ると、どこかで見覚えがあるようなバイクが一台だけ止まっていた。
右のハンドルにヘルメットをぶら下げている。そのヘルメットを見て思い出した。師匠も気づいた様子で、バイクを指さしながら「ししし」と口元に手をやって笑う。
ドアを開けると、からん、と音がした。
小さな喫茶店の中には数人の客がいたが、音に反応してこちらに目を向けた人の中に、見知った顔を見つける。
和雄だった。バイク姿は昨日の夕方に見たばかりだ。
「狭い町だなぁ」
そう言いながら僕らがテーブル席に近づいていくと、和雄は驚いたような顔して、そして次の瞬間、困ったような表情を浮かべた。その向かいの席には見覚えのない女性が座っている。
「参ったな」と言いながら頭を掻いた後、和雄は「妹です」と紹介した。
妹ということは翠さんか。確か楓と同い年のはずだ。髪の長いその女性が丁寧に頭を下げるので、こちらもそれにならう。楓とはタイプが違うが、なかなか綺麗な子だった。
「僕らはもう出ますけど、ゆっくりしていって下さい。ここは昼のAランチが安くて美味しいですよ」
和雄は朗らかにそう言うと、会計を済ませた後で僕と師匠に近づいてきて耳打ちをした。
「ここで僕らを見たこと、誰にも言わないでもらえますか」

477未 本編3 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/15(日) 00:09:33.99 ID:a2MmWsar0
頼みます、とばかり、拝むような仕草をする。
「いいよ」
師匠は特に気にしない様子でそう言うと、大袈裟な身振りでウェイトレスを呼び、早口にAランチを注文した。腹が減って気が急いているらしい。
連れ立って店を出て行く二人を横目で見ながら僕も同じものを頼む。疑問を感じはしたが、Aランチがテーブルに並べられるとそんなものは吹き飛んだ。あれこれ動き回って頭を使っているせいか、昨日からやたら腹が減る。
師匠と二人で、出された料理を黙々と片付けていった。
「満足じゃ」
師匠が箸を置く。そのまま楊枝を探しているようなので、僕の目の前にあった容器を差し出しながら、「神主の幽霊の謎が解けたって、どういうことなんですか」と訊く。
 師匠は楊枝を一本抜き取り、口元を隠しながらこんなことを言った。
「謎が解けた、は言い過ぎかな。フーダニットはクリアになったが、ホワイダニットがいまいち見えてない」
「だから、なんですかそれは」
「まあ、とりあえず、今までの解決手段が間違っていたことが分かっただけでも十分だろう」
最後までそんな抽象的なことばかり言ってはぐらかされた。
納得できていないが、師匠が腰を浮かせたので仕方なく一緒に席を立つ。レジで師匠が領収書をくれ、と言うとウェイトレスは驚いた様子で店長を呼びに行った。
普段は近所の馴染み客ばかり相手にしているから、領収書が欲しいなんて言われたことがないのだろう。僕にしてもこんな興信所のバイトをしていなければ、学生の身分で領収書をもらう機会などそうそうなかったに違いない。
厨房の方から出てきた店長が、レジの下の棚をごそごそ漁っているとようやく未開封の領収書の用紙が出てきたので、それに記入してもらった。こんな食事代も、調査費で落ちるのだろうか。
「一度戻ろう」
喫茶店を出たあと、若宮神社でもらった袋をポンと叩いてから師匠はそれを担いだ。
それからまた自転車に乗って僕らは『とかの』に戻った。相変わらず風は冷たいが、その間師匠はペダルを踏みながら鼻歌などうたっていた。随分と余裕が漂っている。
「余裕ですね」そう訊くと、「そうでもないよ」との返事。しかし、表情はやはり余裕そうだった、
「ピースがあと一つ二つで埋まるって感じ」
478未 本編3 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/15(日) 00:12:19.34 ID:a2MmWsar0
そんな意味深な言葉を吐いてニヤリとした。実に意地悪そうな顔だ。
旅館に帰り着くと、広子さんが暇そうに玄関先に座り込んでいた。
「あ、お帰り〜」
座ったまま手を振っている。今日一日客がいないとなると気楽なものだ。年末のかき入れどきにこれではオーナーは気苦労が絶えないだろうが、従業員としてはほとんど休みみたいなもので、ラッキーとでも思っているのかも知れない。
時計を見ると、昼の二時を回っている。
自転車を玄関前に止めて、師匠は布袋を広子さんに押し付けた。「大広間に置いといて」そう頼むと、広子さんは「いいよう」とえっちらおっちら、それを手に提げて大広間の方へ向かう。
僕らはそれを尻目に二階の部屋に上がった。途中、「他の温泉に入りに行こう」と師匠が僕の方を振り返りながら言う。
「他のって、田中屋ですか」
「とりあえずお隣らしいから、そこかな」
「観光気分ですか」
自分でそう言った後、勘介さんが近くにいないかと首をすくめる。あの人は腹に一物を持ってそうだ。女将のやとった僕ら胡散臭い連中に対し、明らかに敵対心を抱いている。あまり不真面目そうな言動をしていると、いつか怒鳴りつけられそうな気がする。
「人聞きが悪いな。情報収集だよ。古参の温泉旅館は新参者の『とかの』を心良く思ってないはずだからな。その裏を取りがてら、例の噂のことについて訊き込むとしよう」
そうして着替えを持ち出し、玄関先に止めていた自転車に乗ろうとすると、楓が敷地の門のところに立っているのに気づいた。
「お出かけ?」
「あ、どうも」
昨日よりも大人びた感じの服装をしている。
「デートぉ?」
師匠がシナを作っていやらしく訊くと、楓は「そんなんじゃないですよ」と手を広げて左右に振る。
「和にぃが、翠ちゃんと昨日きょうだい喧嘩しちゃったらしくて、仲直りしたいから翠ちゃんの好きなスタンドランプをプレゼントしたいんですって」
そのスタンドランプをどう選んでいいか分からないので、買い物に付き合ってくれと言われたらしい。
479未 本編3 ラスト  ◆oJUBn2VTGE :2012/01/15(日) 00:14:24.67 ID:a2MmWsar0
僕と師匠は顔を見合わせた。それでか。喫茶店での和雄の様子を思い出して、笑ってしまいそうになる。
「あ、きた」
田舎道に控えめな排気音を響かせて、和雄のバイクが姿を現す。なんという車種か知らないが、黒っぽいレーシーなやつで、こうして走っているところを見ると、なかなか様になっていてカッコいい。
旅館の敷地に入り、僕らの前でバイクは止まった。
ヘルメットを取った和雄はすました顔で「昨日はどうも」と僕らにしゃあしゃあと挨拶をすると、座席下の収納スペースからもう一つヘルメットを取り出して楓に渡した。
「じゃあ、行ってきます」
ヘルメットを被りながら僕らに手を振って、楓はバイクの後ろに乗り込んだ。和雄はなにか確認するようにゆっくりと僕と師匠に頭を下げ、それからアクセルを踏んで颯爽と走り去っていった。
それを見送った後で、師匠がぼんやりと言う。「でかいバイクだなあ。ヘルメットが二個収納できるやつだぞ、あれ」
そんなことより、さっきのやりとりに和雄の必死さが伝わってきて、なんだかこっちが恥ずかしくなってしまった。どうやら喫茶店では妹の翠との口裏合わせの作戦会議に出くわしてしまったらしい。
妹をダシにしてデートの口実を作るとは、なりふり構わないというより、その生真面目さが垣間見えた気がして微笑ましかった。
「そんなあれこれ理由つけなくても、もっと強引で良いんじゃないかなあ」
昨日の夜のことを思い出してそう呟いたが、師匠は興味を失った様子で「さあ、行こう。早く汗を流したい」と急かし始めた。
確かにハイペースで自転車をこぎ続けていたので汗をかいたし、しばらく身体を動かさないでいると、寒さで急に服に染み込んだ水分が冷たくなっていく。
「いいですねえ」
僕は本心からそう言った。

           ◆
480本当にあった怖い名無し:2012/01/15(日) 00:19:18.00 ID:3C/Mn++I0
はいはい、乙
481本当にあった怖い名無し:2012/01/15(日) 00:46:42.65 ID:pcUyWILQ0
>>461-462
はあ?依存症?
俺個人がどうこう言ってるんじゃねーよ
不要、という意見に普通に反論してるだけだろ
2chの訪問者数言ってみろよ。何を根拠に不要といってんだ?
大体お前らも覗いてるくせに、何が不要だよw
482本当にあった怖い名無し:2012/01/15(日) 00:48:49.71 ID:pcUyWILQ0
2chなんて必要悪としてもアングラとしても大きくなりすぎたから一度潰れたほうがいい
2chなんて必要悪としてもアングラとしても大きくなりすぎたから一度潰れたほうがいい
2chなんて必要悪としてもアングラとしても大きくなりすぎたから一度潰れたほうがいい
2chなんて必要悪としてもアングラとしても大きくなりすぎたから一度潰れたほうがいい

ww
こういう事一回は言ってみたい年頃ですか?w
483本当にあった怖い名無し:2012/01/15(日) 00:53:05.41 ID:u6PVvARw0
>>463-479
ウニ乙!
484本当にあった怖い名無し:2012/01/15(日) 00:55:08.77 ID:8+FOUEBs0
お〜つ
485本当にあった怖い名無し:2012/01/15(日) 01:16:53.63 ID:YU739wL+0
>>481
何にでも噛み付きたいお年頃なんだよね^^
必要ないと不必要の違いぐらい理解してから来てね〜
486本当にあった怖い名無し:2012/01/15(日) 01:17:39.01 ID:YU739wL+0
>>479
ウニさん乙!
487本当にあった怖い名無し:2012/01/15(日) 01:18:21.60 ID:9jcrHvZP0
>>481
いらんものはいらんよ
「見てる」=「不要ではない」って意味がわからんのだが……
488本当にあった怖い名無し:2012/01/15(日) 02:35:08.59 ID:uogrp2T80
>>479
ウニ乙
待ってた!
489本当にあった怖い名無し:2012/01/15(日) 19:17:40.06 ID:lABedtCO0
ウニアッー
490本当にあった怖い名無し:2012/01/15(日) 21:24:27.37 ID:pcUyWILQ0
>>487
いらんくせに何故覗きに来てるんだお前?

>「見てる」=「不要ではない」って意味がわからんのだが……

ええ?お前こんな超単純な事すら理解出来ないのか?
見てる人がいるってことは需要があるってことだろ。脳みそないのか?
見てるだけじゃない。数多くのまとめサイト・ブログが作られてる
 
ずっとお前不要って言ってるけど、お前個人がが不要という事以外にどういう理由で言ってるんだよ?
人の意見に反対してるだけでお前の考え全く言ってないからただのいちゃもんになってるんだよ
491本当にあった怖い名無し:2012/01/16(月) 14:34:54.04 ID:0rqUO8E70
要らないとか言ってスレの空気を悪くして投稿しにくい空気作ることが目的なんだから
一々釣られて反応してるやつもそれ協力してるということを理解した方が良いよ
492本当にあった怖い名無し:2012/01/16(月) 15:38:59.59 ID:KaXKdTVE0
投稿者に乙だけしとればええねん
ってことでウニ乙
493本当にあった怖い名無し:2012/01/16(月) 15:52:48.14 ID:eP1XodTx0
>必要ないと不必要の違いぐらい理解してから来てね〜

どう考えても同じ事だろ
説明できないくせに逃げやがって
494本当にあった怖い名無し:2012/01/16(月) 16:17:33.89 ID:c+fFWPZqO
いいから投下されたら読んでなくても乙だけ言っときゃいいんだよ
495本当にあった怖い名無し:2012/01/16(月) 22:46:38.34 ID:RmRbi1kJi
ウニ焦らし杉。pixivで4UPしてんだから、コッチにも早く投下してくれよ。

週一投下のペースで5が再来週まで読めないとか、待ち遠しくて辛すぐる・・・
496本当にあった怖い名無し:2012/01/16(月) 22:48:10.63 ID:QTqZ1BDQ0
ウニ乙
497本当にあった怖い名無し:2012/01/17(火) 01:48:56.65 ID:0NmKSODv0
>>490
ずっとお前必要って言ってるけど、「必ず」「無くてはならない」んだよな?
じゃあ2ch無くなったらどうするの? 死ぬの?
498本当にあった怖い名無し:2012/01/17(火) 15:46:48.41 ID:NsZgGooo0
サッカーをするにはサッカーボールが必要。
サッカーボールが無くても、人は死にはしない。

サッカーボールはサッカー専用のボール。
バレーボールはバレー専用のボール。
現在、どんな球技でもできる万能のボールは存在していない。
それ故に各球技は専用のボールを必要としている。
499本当にあった怖い名無し:2012/01/17(火) 20:12:23.23 ID:LnA+fZ0G0
>>497
こいつ日本語できないのか?

何回も「俺個人の事を言ってるわけではない」と言ってるのに「お前は〜」って繰り返してるな
馬鹿だろお前

で、お前は絶対必ず無くてはならない、という確信がなけりゃ必要という言葉使わないのか?
面倒くせえな
如何に人とコミュニュケーション取ってないか分かるな
人に「何か必要なものある〜?」って言われて「とりあえず〇〇持ってきて」というやり取りしたこと無いんだろうな
500本当にあった怖い名無し:2012/01/17(火) 21:02:56.10 ID:EVe5ovAwO
>>499
こいつドヤ顔でこんな書き込みして恥ずかしくないのかなw

マジで言ってるんだったら小4からやり直した方がいい
501本当にあった怖い名無し:2012/01/17(火) 21:09:51.12 ID:1J3jZJ870
くだらねー流れだな
502本当にあった怖い名無し:2012/01/18(水) 00:21:25.58 ID:WQlD/9Te0
自スレに逃げたのが、ウニが来ると荒らしに来てうぜぇ
503本当にあった怖い名無し:2012/01/18(水) 13:15:24.06 ID:OtP0LGYP0
×ウニが来ると荒らしに来る
○書き手が来ると荒らしに来る

うぜえ同意
ところでこいつの自スレってどこなんだろうな
なんでこのスレ荒らすのかね
504本当にあった怖い名無し:2012/01/18(水) 18:56:47.00 ID:9O6Ogfd10
こいつっつーか、「こいつら」じゃなかろうか?
505本当にあった怖い名無し:2012/01/19(木) 20:32:48.23 ID:r82F6SOK0
必要が「必ず要る」って言ってる奴マジで言ってるのか?
「そんなに必要じゃない」とか「そこそこ必要」とかの意味合いどう捉えてんだよ
売り言葉に買い言葉とはよく言ったもんだ

2chは必要という発言だけでここまで引っ張るかね?
506本当にあった怖い名無し:2012/01/19(木) 20:43:37.62 ID:hAut/6eM0
それ火曜日の話題
507本当にあった怖い名無し:2012/01/19(木) 22:07:28.18 ID:GdkMZ/Nb0
見事すぎるブーメラン
お前が何を引っ張ってんねん
508本当にあった怖い名無し:2012/01/19(木) 22:13:26.84 ID:CEdchvaq0
おk
509本当にあった怖い名無し:2012/01/19(木) 23:12:44.07 ID:pHR1oIeJO
日付跨いで何度もレスしてる人はよっぽど悔しかったのかな
510赤緑 ◆kJAS6iN932 :2012/01/20(金) 13:45:02.68 ID:YzBQ2/Pe0
[2人は本を読む]

1/14
堀塚家は、地元の名家だ。

町の中心から少し離れた場所に、立派な邸宅を構えている。

現在の当主は、今は亡き先代の堀塚大安(たいあん)の息子、堀塚真人。今年で52になる。
妻の匡子は48で、美人の奥様として有名だ。
彼女は地元の人間ではないけれど、気さくな人柄で地元の集会や催し物などにも積極的に参加し、評判が良いらしい。
厳格な夫である真人とは大違いだ、と言う人もいれば、あれはあれで夫婦でバランスが取れているから良いのだと言う人もいるそうだ。

そんな2人の間には、1人娘が居る。
名前は、堀塚紗希。
今年で19歳になる彼女は、母親に似た細面の美人で、いかにも「お嬢様」といった感じだ。

…ただ1つ残念なことに、彼女は生まれつき足が悪く、歩くことができない。

そのためベッドで横になっている事が多く、外に出掛ける事も稀であることから、深窓の令嬢と言われている。
511赤緑 ◆kJAS6iN932 :2012/01/20(金) 13:47:01.56 ID:YzBQ2/Pe0
2/14
そんなお嬢様と夏休みに帰省して来るだけの私が友達になれたのは、明君のお父さんのお陰だった。
明君のお父さんは堀塚家で使用人をしており、紗希ちゃんのお世話係にもなっていたのだ。

あれは確か数年前――小学6年生の夏休みのこと。
私と明君と、確か美加の3人で近くの川原で遊んでいたところに、明君のお父さんが車椅子の紗希ちゃんを連れて来てくれたのだ。

紗希ちゃんの第一印象は、触れたら壊れてしまいそうな華奢なお嬢様。
肌が白く、着ている服は綺麗で上品で、何となく近寄りがたい感じのする子だった。

今の唯ちゃんに負けず劣らず人見知りなところがあった私は、ちゃんと仲良くできるか自信がなかったけど、
その頃から既に紗希ちゃんと仲が良かった明君が、私たちの仲を上手く取り持ってくれた。

それ以来、私は帰省するたびに紗希ちゃんに会っていたけれど…
彼女を外に連れてきてくれる人は、初めて会った時以降、明君のお父さんではなく、紗希ちゃんのお母さんとなっていた。

――なぜなら、私達が紗希ちゃんと初めて会ったその翌年、明君のお父さんが亡くなってしまったからだった。
512赤緑 ◆kJAS6iN932 :2012/01/20(金) 13:49:47.68 ID:YzBQ2/Pe0
3/14
父親が亡くなり、物心付く前に母親も亡くしていた明君は、堀塚の家に引き取られることになった。

――養子としてではなく、住み込みの使用人として。

なぜ養子として迎えなかったかは、堀塚家の家風にその理由があった。

それは、「堀塚家に子供は1人」というもので、紗希ちゃんのお父さん――堀塚真人には1人も兄弟はおらず、紗希ちゃんもまた、一人娘だった。
…もし病気とか事故で不幸があったらどうするのかな、なんて、変な心配をしてしまう。

とにかくそんな理由があったため、明君は養子にはならず、名前も「物部」のままとなっている。

養子として迎えられなかったことに対し、当の明君はどう思っているのか…と言うと、彼はそのことを大いに喜んでいた。

…なぜなら、明君は紗希ちゃんのことが好きだったからだ。
彼は養子としてではなく、「婿」として、堀塚家に入ることを望んでいる。

そんな話を、私は彼本人から、4年前に祖父の3回忌で帰省してきたときに聞いていた。
広い邸宅で彼女の家族も居るけれど、紗希ちゃんと一つ屋根の下で暮らせるのは、ちょっと嬉しかったりする、と。
513赤緑 ◆kJAS6iN932 :2012/01/20(金) 13:51:16.68 ID:YzBQ2/Pe0
4/14
――
私が田舎に帰った翌日、地元のお寺で法事を済ませた親戚一同は、簡単な食事会を終えた後それぞれ自分の家へと帰っていった。
私の両親も同じく。

そのためその夜の杵島家には、お婆ちゃんと正一さん一家、それと私という5人だけになっていた。

夕飯の後お風呂を済まし、私は2階に借りた部屋で彼にメールをする。
内容は――まぁ、みんなに冷やかされちゃったとか、そんなこと。
照れくさいね、という彼からの返信。でもちょっと嬉しいかな、なんて惚気ちゃったり。

…と、そんなことをしていると、コンコンとドアがノックされ、唯ちゃんが顔を覗かせる。
何かな?と思ったけど、用件は一目で分かった。
なぜなら、唯ちゃんは満面の笑みで、大量の絵本を抱えていたからだ。

…私も小さい頃、絵本を読んでもらうのが大好きだった。
でも、もう読む側になっちゃったな、なんて思いながら、唯ちゃんを招き入れて絵本を読んであげる。
こんなとき、自然と優しい声が出てくるのは…母性かな?
小さい子に絵本を読んであげるという行為が、自分を優しい気持ちにしてくれる。

唯ちゃんが持ってきた絵本は、私が小さい頃に持っていたもので、どれも見覚えのあるものだった。

ただその中に、『兵士と森の魔女』という、私の知らない絵本が1冊だけあった――。
514赤緑 ◆kJAS6iN932 :2012/01/20(金) 13:53:48.79 ID:YzBQ2/Pe0
5/14
――
『兵士と森の魔女』

あるところに、1人の兵士がいました。

ある晩、彼は家に帰るために森の中を歩いていました。

するとどこからか、人のすすり泣く声が聞こえてきます。
気になった兵士がその声の元に行くと、そこには美しい女の人が1人、猟師が仕掛けたであろう罠に足を挟まれて泣いていました。

これは大変だと思い、兵士が近付くと、その女の人はこう言いました。

「私はこの森に住む魔女です。罠に掛かってしまい、外すことができません。助けて頂けませんか?」

兵士は答えます。
「魔女ならば、それくらいの罠は自分の力で外せるでしょう」
魔女は悲しげな顔で言います。
「それが、今夜は新月なので、力が出せないのです」

なるほど、確かに今夜は新月で、月は出ていません。
兵士はそれならばと、魔女の足から罠を外してあげました。

魔女は言います。
「ありがとうございます。お礼に何でも1つ、願いを叶えてさしあげましょう」

願いを1つと言われて、兵士は少し考えます。
そして、こう言いました。
「それならば、私の妻になってくれませんか」
515赤緑 ◆kJAS6iN932 :2012/01/20(金) 13:55:27.39 ID:YzBQ2/Pe0
6/14
魔女はその願いに驚きますが、断ることはせずに、こう言いました。

「私はこの森から出ることができません。それでもよろしいですか?」

美しい魔女に一目惚れをしていた兵士は答えます。
「もちろん構わない、自分も一緒に森に住もう」

魔女は「分かりました」と言い、こうして2人は、森の中にある秘密の家で暮らすことになりました。

――そして、1年が経ちました。

願い事として夫婦になった2人でしたが、彼らは幸せに暮らしていました。
魔女も次第に兵士に強く惹かれるようになり、森から出られないことも苦にはなりませんでした。

…しかしある日、兵士の国で戦争が起きます。

兵士は当然、戦争に行かなければなりません。
魔女は兵士のために、怪我をしないように魔法を掛けて送り出してあげます。
そして秘密の家で1人、兵士の無事を祈り続けるのでした。
516赤緑 ◆kJAS6iN932 :2012/01/20(金) 13:56:42.32 ID:YzBQ2/Pe0
7/14
――やがて数日が経ち、戦争は終わりました。

兵士の国は、攻めてきた敵国を何とか退けました。

…しかし、兵士は帰ってきません。

魔女は水晶玉を使い、兵士を探しました。
すると、敵国で捕虜となっている兵士を見つけることができました。
兵士が生きていることを知って魔女は安堵しますが、しかし同時に、その捕虜たちが明日の朝処刑されることを知ります。

魔女は、どうにかして兵士を助け出さなければと悩みます。

しかし敵国は遠く、自分の魔法は届きません。

しばらく考えた後、魔女は自ら助けに行くことを決意します。
幸いにも今夜は満月で、魔力が最も満ちるときです。

夜になるのを待ち、魔女は兵士への手紙と1つの小箱を置いて、秘密の家を出ました。
目指すは、兵士たちが捕らわれている敵国の城です。
517赤緑 ◆kJAS6iN932 :2012/01/20(金) 13:58:11.74 ID:YzBQ2/Pe0
8/14
満月に輝く夜空の下、ホウキに乗った魔女は敵国へと急ぎます。
明日の朝まではまだ時間がありますが、魔女には急がなければならない理由がありました。

なぜなら、魔女は森から出ると徐々に力を失っていくからです。

それが、魔女が森から出ることができないと言った理由であり、森から出てすぐに、早くも魔女に異変が起きてきました。
自分の身体が、若さを保てなくなってきたのです。

魔女は、今の若い身体のまま、森の中で数百年を生きてきました。
しかし森から出たことにより、急速な老化が始まったのです。

黒く美しかった髪は白くガサつき、肌は艶を失っていきます。
頬はこけ、顔にはシワが刻まれていきます。
それでも魔女は、兵士の元へと急ぎました。

時間と共にホウキも遅くなっていきましたが、魔女はやがて、敵国の城に着きます。
しかしそのとき魔女は、美しかった面影は欠片もない、年老いた醜い老婆になっていました。

魔女は残り少ない魔力で姿を消し、城へと侵入します。
そして地下の牢屋へと行き、誰にも悟られぬように鍵を開け、愛する兵士を含む、捕虜たち全員を逃がします。

そのとき、魔女は兵士の前に姿を現すことはしませんでした。
なぜなら、醜くなってしまった自分の姿を兵士に見せたくなかったからです。
518赤緑 ◆kJAS6iN932 :2012/01/20(金) 13:59:34.37 ID:YzBQ2/Pe0
9/14
兵士たちが城から逃げ出すと、流石に敵国も異変に気が付きます。
そして、すぐに追っ手を出します。

捕らわれていた兵士たちは、自国を目指して走ります。
しかし、馬に乗った追っ手からは到底逃げ切れそうもありません。
このままでは再び捕まってしまいます。

兵士たちの背後に迫る敵兵。
そして、もはやこれまでかと思ったとき――
魔女が、追っ手の前に立ち塞がりました。

魔女は戦いました。

兵士たちを追わせないため、残り僅かな魔力で戦いました。
徐々に崩れていく身体で、1人で戦いました。
兵士の事だけを想い、戦いました。
幸せだった月日を想い、戦いました。

そして、やがて月が薄れ、朝日が昇る頃――

魔女はついに力尽きました。

519赤緑 ◆kJAS6iN932 :2012/01/20(金) 14:01:07.66 ID:YzBQ2/Pe0
10/14
捕虜となっていた兵士たちは、無事に自国に戻ることができました。

彼らの帰還を喜ぶ声の中、兵士は真っ先に森へと向かい、魔女と暮らしていた秘密の家へと帰ります。

しかし、そこに魔女の姿はありません。
代わりに、魔女からの手紙と、1つの小箱が置いてあります。

その手紙には、魔女の字でこう書かれていました。
「おかえりなさいませ。私を想うなら、小箱を開けて下さい」と。

兵士は迷わず小箱を手に取り、蓋を開けます。
すると中から、不思議な霧が噴き出してきます。

霧を吸い込んだ兵士は、一瞬、頭の中が真っ白になりますが、すぐに我に返ります。
そして、こう思いました。

「なぜ自分はここに居るのだろう。ここはどこだろう。あぁ、早く自分の家に帰らなければ」

兵士は、秘密の家を出て行きます。
そして、二度とそこを訪れることはありませんでした。


――おしまい。

520赤緑 ◆kJAS6iN932 :2012/01/20(金) 14:03:17.57 ID:YzBQ2/Pe0
11/14
――
なにこれ…。

唯ちゃんにその絵本を読んであげた私は、その内容に驚く。
子供には少し難しそうな悲しいお話で、5歳の唯ちゃんには早い気がする。
それとも、最近はこういうのもアリなのかな…?

私「ちょっと難しいお話だったね」
私は横で絵本に見入っていた唯ちゃんに話し掛ける。

唯「絵、キレイ」
私「…うん、そうだねー」

確かに、その絵本の絵は凄く綺麗に描かれていた。
登場人物は全てリアルな人物画で、魔女の姿は本当に美しく、また人物だけでなく、背景など細部に至るまで、きっちりと描かれている。
…でもやっぱり、こんな悲劇的な話より、絵本はもっとお気楽なお話が良いなと思う。
現に、唯ちゃんが持ってきた他の絵本はそういったものだった。
それらは私のお下がりだから、当然と言えば当然だけど…と思ったところで、ちょっと気になったことを聞いてみる。

私「唯ちゃん、この絵本、お父さんお母さんに買ってもらったの?」

すると首を横に振る唯ちゃん。
521赤緑 ◆kJAS6iN932 :2012/01/20(金) 14:04:35.83 ID:YzBQ2/Pe0
12/14
私「じゃあ、お婆ちゃん?」
唯「んーん」

これも違う。じゃあ誰かな?と思っていると、唯ちゃんはこう言った。

唯「あきらくんがくれたの」

――あきらくん?

私「あきらくんって…明君?昨日の?」
唯「うん。ちょっと前に、唯に、って」

…あ、そっか。それで分かった。
この絵本の出所がハッキリした。

これは、紗希ちゃんの絵本だ。

「お金持ちのお嬢様が持っていそうな絵本」。
これはまさしく、それだ。

きっと、紗希ちゃんから唯ちゃんに、ということで、明君が渡したのだろうなと思う。
明君のお友達である唯ちゃんのことなら、紗希ちゃんが知っていてもおかしくない。
522赤緑 ◆kJAS6iN932 :2012/01/20(金) 14:07:05.72 ID:YzBQ2/Pe0
13/14
――
絵本を全て読み終わった後、私はしばらく唯ちゃんとお話をする。

先日、幼稚園で「大きくなったら何になりたい?」という質問があったようで、唯ちゃんは「保母さん」と答えたそうだ。
他には、女の子では「ケーキ屋さん」「お花屋さん」「アイドル」なんてのがあったらしい。

私が唯ちゃんくらいの年の頃、私の夢も「保母さん」だった。
小学校に入ってからは、「学校の先生」。
中学に入ってからは…誰にも言ってないけど「占い師」なんてことを考えていた時期もある。
オカルトにハマりすぎていた証拠だ。

でも、いざ霊感を持ってみると、そんなことは欠片も思わない。
お婆ちゃんの話じゃないけど、こんなことは誰にも知られないほうが良い。
あまりに無力な私は、ただ危険な目にあうだけで――

――あ。

そうだ。唯ちゃん。

私は、横でちょっと眠たそうにしてきた唯ちゃんを見る。
この前はちゃんと確かめられなかったけど、”杵島の女”である唯ちゃんは、私やお婆ちゃんと同じように霊感を持っているのかな…?
523赤緑 ◆kJAS6iN932 :2012/01/20(金) 14:08:59.31 ID:YzBQ2/Pe0
14/14
私「唯ちゃん、ちょっと良い?」
唯「?」
読むわけでもなく、先ほどの絵本をパラパラと眺めていた唯ちゃんが、こちらを向く。
私はそんな唯ちゃんの目を、ジッと見つめる…。
……

ない。

なしだ。
唯ちゃんからは、何も感じない。
あぁ、よかった…。

私「もう遅い時間だね。お部屋に戻ろっか」
唯「うん」
私は、ふわぁと欠伸をする唯ちゃんを叔父さん叔母さんの居る寝室に連れていってあげる。
そして「おやすみなさい」と告げ、私も部屋に戻って眠ることにした。

明日は美加が来ることだし、きっと夜更かししちゃいそうだから、今日のうちにシッカリ寝ておかないと。
そう思い、お布団に入って眠りにつく。

…その夜。

私は、夢を見る。

それは、私がホウキに乗って空を飛ぶ夢だった。



524本当にあった怖い名無し:2012/01/20(金) 14:17:48.41 ID:0h2BVObh0
赤緑、乙。
なかなか面白かったよ。
525本当にあった怖い名無し:2012/01/20(金) 15:05:37.93 ID:BAZ4FIg10
赤さん乙
526本当にあった怖い名無し:2012/01/20(金) 19:27:42.69 ID:+vjOV7VF0
誰にも必要とされてない赤緑乙
527本当にあった怖い名無し:2012/01/20(金) 21:05:26.12 ID:+vjOV7VF0
>>507
>>509

また都合の悪い事はスルーで、ブーメランとか「悔しかったのか」とか論破したつもりでいやがるwww

必要=必ず要る、って事なら>>505
>「そんなに必要じゃない」とか「そこそこ必要」とかの意味合いどう捉えてんだよ

に答えろって。
よくアンケートにも「ある程度必要」という項目あるだろ。
お前の論調で言え「ある程度必ず要る」ってになるんだが、どういう意味なのか教えてくださいww
528未 本編4   ◆oJUBn2VTGE :2012/01/20(金) 23:52:25.86 ID:SywjC5oc0

それから僕らは二人で温泉旅館『田中屋』を皮切りに、その近くにあった他の温泉をいくつかハシゴした。
どの温泉も入浴のみの客でもOKだった。入浴料を払って汗を流し、新しい服に着替えてから旅館の人をつかまえてそれとなく『とかの』の噂を訊き込んだ。
最初はあたりさわりのないことを言っていた古参ぽい従業員も、しつこく話しかけているとまんざらでもないらしく、だんだんとくだけてきて、声をひそめながら、『とかの』に関するゴシップを垂れ流しはじめた。
やはり旅館同士の仲は相当に悪いようだ。その中に例の幽霊騒ぎに関するものもあった。
「呪われてるって話ですよ」
二軒目の『松ノ木温泉旅館』では、女将らしい人がそう耳打ちしてくれた。なんでも『とかの』の初代オーナーがあの土地を買うときに、そこに古くからあった祠を壊してしまったらしい。その祟りだと言うのだ。
しかし、どうして神主が? そう思って訊き返すと、「そりゃあ……」と言いかけた後、考えてもみなかったのか「まあ、ここから出て行けってことですわね」と適当に一人で仕舞いをつけてしまった。
眉唾物の話ではあったが、確かに旅館を建てる前のことはあまり確認していなかったことに気づいた。そこになにか曰くがあるのだろうか。
師匠はそんな話を面白そうに聞いている。
温泉に浸かり過ぎて身体がふやけ始めたころ、三軒めの旅館を出てから師匠が言った。
「よし。もう戻ろう」
「いいんですか。この先にあと一軒あるみたいですけど」
「わたしはもういいよ。まだ入りたいなら、先帰っとく」
「いや、僕も帰りますよ」
どの温泉旅館も『とかの』を良く思っていないのは間違いないようだ。幽霊騒ぎについても噂に尾ひれをつけようとしているのが垣間見えた。
しかし、残念ながらその幽霊の謎について核心に迫るような証言は得られなかった。
師匠はそれを残念がる様子もなく、ほんのり赤くなった顔で口笛を吹きながら気さくに泊り客に挨拶などしている。
僕らが旅館の前に止めてあった自転車に乗ろうとすると、ぽつりと頬に水滴が落ちた。
いつの間にか空は曇っている。「降りそうだな。急ごう」師匠が空を見上げながら手のひらを胸の前で掬うように広げてそう言う。
529未 本編4   ◆oJUBn2VTGE :2012/01/20(金) 23:53:51.77 ID:SywjC5oc0
それから二人して来た道を全力で飛ばしたが、だんだんと雨の粒が大きくなり、『とかの』に帰り着いたときにはちょっとした小雨になっていた。
「あー、もう」
自転車を駐車場に戻し、師匠が濡れた髪の毛をかき上げながら悪態をつく。せっかく温泉に入って温まって来たところだというのに、もう冬の氷雨の洗礼を受けてしまった。袖口から水滴の滴る二人で並んで歩いていると、それでもなんだか楽しい。
「いま何時? 四時過ぎか。まだ少し時間があるな」
師匠はそう言いながら玄関ロビーに向かう。
「時間って、なんのです?」
「決まってるだろ。暮れ六つだよ」
お楽しみの対決の時間だ。
師匠はそう言ってほくそ笑む。
暮れ六つか。僕は今朝の明け六つのときの恐ろしい出来事が自然と脳裏に蘇り、足がすくむ思いがした。
ロビーのフロントには広子さんが立っていて、なにか帳面に書き付けているところだった。
「あ、お帰りぃ。雨降ってた?」
「このざまを見てのとおり」と師匠は笑いながら両手を広げて濡れた服を見せる。
「女将は?」
「大浴場の方だと思う。左官屋さんが来てるから」
「そうか。お、ありがとう」
広子さんが出してくれたタオルを受けとる。その広子さんは大袈裟な身振りで師匠に耳打ちする真似をした。
「ねえ。うちのお父さん、かなりカリカリしてるよ。あんたたちが他の温泉に浸かりに行ったって聞いたから。噴火寸前って感じ」
 聞いた、ってそれを告げ口できたの一人しかいないじゃないですか。
「こわ。必要な情報収集活動なんだけどな」と師匠。
冗談じゃない!
僕は首を竦めてキョロキョロとあたりを見回す。周囲には勘介さんの影は見えない。
「そうそう。その情報収集であった収穫なんだけど、この旅館が建つ前にこの土地に祠(ほこら)があったんだって?」
広子さんはそれを聞いてきょとんとしていたが、やがて「あー」と思い出したような顔で頷く。
「あのお堂のことでしょ。ぼろいやつ。駐車場の裏手にあるけど、あれが確か旅館建てるときに場所を移したってやつだったと思う」
530未 本編4   ◆oJUBn2VTGE :2012/01/20(金) 23:55:56.74 ID:SywjC5oc0
駐車場の裏手のお堂なら昨日見回りをした時に見た気がする。中に石が祀られていたはずだ。
「もう一回見てくる」
師匠がそう言うので僕もついていく。
借りた傘をさし、小雨が降り続く旅館の外へ出て、駐車場の方へ向かう。その敷地の隅に、朽ち果てたような木造の小さなお堂がひっそりと佇んでいた。
覗き込むと、小さな紙垂(しで)のついた格子戸の向こうに石が安置されているのが見える。
どうするのかと思っていると、師匠がいきなりその格子戸に手を伸ばして手前に開いた。そして無造作に石を掴み出す。
紙垂のついた格子戸は明らかに神域と外界とを分かつ境界だ。その意味を知りながら平然とそれを破るあたりがこの人らしい。
いつかこの人が死んで人々に害を成す悪霊にでもなったら、止める手段があるんだろうかと、僕はそんなことをぼんやりと思った。
「字が書いてあるな」
覗き込むと、石の表面に小さな文字が数行にわたって彫られている。苔むしていることと、古い字体のせいでほとんど読めなかったが、かろうじて「とかの」という平仮名が含まれているのは分かった。
ふんふん、と頷いてから師匠は石を元に戻した。読めたのだろうか。
「なんて書いてあったんです」
「神様に代わってこの地を守るってさ。御神体としては大して珍しいものじゃないよ。」
あんまり時間がなくなってきたな。
師匠はそう呟くと玄関の方へ引き返した。それからフロントのあたりで拭き掃除をしていた広子さんに「電話貸してね」と声をかける。
そしてたった二日しかいないのに、すでに勝手知ったる他人の家、とばかりにフロントの奥の事務所に入り込んでいく。
胸ポケットから手帳を取り出して、それを見ながらダイアルをする。
「あ、教授? わたしだけど、昨日頼んだの、分かった? え?」
声が遠かったのか、電話機の音量を上げながら師匠は続ける。
「うん。うん。ああ、神社明細帳とか大小神社取調べとか、そのあたりのはもういいよ。別で分かったから。
で、古いのではどう? うん。うん。…………あったの? まじで? 延喜式にあった? えっ地誌? うん。……うん。延喜式の八十五座って畿内だけだっけ。そうか。やっぱり式台社じゃないか。
でもさっすが、そんなめんどくさそうなとこに潜ってってなんとかなるなんて」
531本当にあった怖い名無し:2012/01/20(金) 23:56:51.55 ID:c7z//cCf0
くだらないね
532未 本編4   ◆oJUBn2VTGE :2012/01/20(金) 23:58:55.16 ID:SywjC5oc0
声が大きくなってきたところで、近づきすぎた僕の視線に気づき、師匠は「しっしっ」と虫を払うように手を振ると電話機を隠すように背中を向けた。
仕方なく少し遠ざかる。
師匠が小声になったので、何を喋っているのか聞き取れなくなってしまった。しかし多分、相手の教授というのはうちの大学の長野教授のことだろうというのは推測できた。
神道や神社に関しては一家言持つその道の大家の一人だ。指導教官でもないのに、師匠はその長野教授と普段から親密なやりとりをしていて、良く言えば教えを乞い、悪く言えば便利使いしているのだった。
どうやって取り入ったのかは知らないが、ほとんどタメ口を利いている。こっちがハラハラするくらいだった。
話している内容が気になるので耳をそばだてていると、いくつかの単語が細切れに聞こえてくる。
『女将』
『神社』
……
あとはほとんど聞き取れなかった。
「どうもありがと。お礼はいずれ、精神的に返すから」
師匠は頭を軽く下げて受話器を置いた。そして「あー」と言いながら両手を挙げて伸びをした。
「順調だなあ」
なにが順調なのか分からない僕は、どうしても気になることを尋ねる。
「女将がどうかしたんですか」
やたらと女将のことを話していたように聞こえたのだが、その理由が分からなかった。
「どうしたもなにも……」
犯人だよ。
そう囁いて、師匠は何ごともなかったかのように手を叩くと「さあ、準備準備」と僕を急き立てようとした。
訳が分からず「ちょっと待ってくださいよ」と抵抗しようとしたとき、さっき切ったばかりの電話が鳴り始めた。間髪入れずに師匠が受話器を取り上げる。
「わたしだけど、なにか言い忘れ? ……って、あちゃあ。ごめんなさぁい。間違えました。そうです。旅館とかのですぅ」
旅館にかかってきた電話らしい。師匠は慌てて取り繕っている。
『こっちこそごめんなさい。家の方にかけたんですけど、だれも出なくて。あの、楓ちゃんいますか』
533未 本編4   ◆oJUBn2VTGE :2012/01/21(土) 00:02:23.29 ID:sWc1D+bL0
若い女性の声が受話器から漏れている。
「ああ、楓さんですね。ちょっと待ってください」
喋りながら師匠がさっき上げ過ぎた電話機の音量を調節すると、相手の声は聞こえなくなった。
「広子さぁん。楓ちゃん、まだ帰ってないよね」フロントの方に向かって大声でそう確認してから、また受話器に向きあう。
「遊びに出かけていて、今いないんですよ。ごめんなさいね。うん。うん。……あ、じゃあ伝言しておくから」
師匠は卓上メモに走り書きをする。
「え? わたし? 新しい仲居ですよぅ。ゆかりって言います。よろしくお願いします」
適当なことを言っている。
「あ、最後に名前伺っておいていいですか」
師匠がそう言って、頷きながらボールペンを走らせていると、ふいにピタリとそのペン先が止まった。
「わかりました。それでは失礼します」
なにごともなかったかのように挨拶をして電話を切った師匠だったが、その顔を見た瞬間、僕はなにかぞくりとするものを感じた。俯いたまま口角を上げているその薄ら笑いのような表情に、ちりちりと周囲の空気が青く燃えるような錯覚をおぼえたのだ。
「あ〜あ。でき過ぎだ。全部埋まっちゃったよ」
パズルの、最後のピースまで。
そう呟いて師匠はゆっくりと顔を上げた。

           ◆

霧雨のような細い雨粒が、旅館の屋根を音もなく叩いている。
外はもう暗い。まだ晩の六時になっていなかったが、雨雲が空を覆い、夕焼けの残滓ももうどこにもなかった。
日が落ちてから、ますます冷え込みが激しい。ここ一週間では一番の寒さだろう。僕は震えながら両腕を抱えると、散策していた中庭から建物の中に戻った。
旅館の中も、昨日よりもほんのりと肌寒さを感じた。客がいないので、暖房の設定温度を落としているらしい。客に相当する僕と師匠はいるのだが、勘介さんあたりが「あいつらは客じゃねえんだ」と無理やり温度を下げたのかも知れない。
一階のフロアの奥に向かうと、宴会場にも使われる大広間の前に全員が集まっていた。
534未 本編4   ◆oJUBn2VTGE :2012/01/21(土) 00:04:41.60 ID:sWc1D+bL0
女将の千代子さん、番頭の勘介さんと仲居の広子さんの親子。女将の娘の楓。そしてさっき楓をバイクで送ってきたばかりの若宮神社の次男坊、和雄。
この五人に、僕と師匠を加えた合計七人が今この旅館にいるすべての人間だった。
「なにが始まるんです」
和雄が僕に問い掛けてくる。デートはそれなりに上手くいったらしい。機嫌が良さそうだ。楓の方も、和雄の策略を知って知らずか、まずまず楽しかったようだ。表情が柔らかい。
「謎解きだと本人は言ってましたが」
そう答えて、他の人と同じように閉じられたままの襖を見つめる。中では師匠が『準備』とやらをしているらしい。
僕も最初だけ手伝ったので、中がどうなっているのか大体は分かっているのだが、なにをしようとしているのかまでは分からなかった。
「大丈夫でしょうか」
女将は戸惑った表情を浮かべて落ち着かない様子だった。
勘介さんはムッスリと押し黙って腕組みをしている。広子さんと楓は顔を寄せ合って何ごとか話をしていた。
また腕時計を見た。
六時までもう少しだ。暮れ六つを過ぎると、そこからは僕らのよく知るこの世の理が少し変わってしまう。なにが起こるか分からない、人の世の境界の外なのだ。
特に、時の鐘が聞こえるこの土地では。
僕は事務所での師匠とのやりとりのことを思い浮かべた。師匠は確かに女将が犯人だと言った。あれはどういうことなのだろうか。
幽霊は本物だ。遭遇した僕には分かる。人間のイタズラなんかじゃない。なのに、女将がこの幽霊騒動の犯人だというのか。
考えてもよく分からない。あるいは、なにか幽霊の出るようになった原因があり、その鍵を女将が握っているということか。
そっと隣にいる女将の横顔を盗み見る。
娘の楓とよく似ている。綺麗な人だ。夫と死に別れているそうだが、独り身になってから言い寄る男の一人や二人はいただろう。その誘いを断り、女手一つで旅館を切り盛りしながら子どもを育ててきたのだ。
その華奢に見える身体に、どれほどの覚悟が詰まっていることか。
覚悟か。
ふいに、左官屋を呼んだという話を思い出した。僕と師匠が温泉めぐりから帰って来たとき、女将は左官屋と大浴場の方で打ち合わせをしていた。浴場の壁を直したいらしい。
535未 本編4   ◆oJUBn2VTGE :2012/01/21(土) 00:07:04.57 ID:sWc1D+bL0
壁……
壁に死体を塗り込める話があったな。
いやな想像が浮かんでくる。僕は頭を振って冷静さを取り戻そうとした。
そうしていると、僕らの目の前で、閉ざされていた大広間の襖がゆっくりと開いた。
「お待たせしました。どうぞ」
師匠が神妙な顔をして左手を広げ、みんなを奥へと誘う。全員が広間に入ったところで師匠が襖を閉めた。
ざわめきが起こる。
畳敷きの大広間の真ん中には注連縄が張られていた。およそ五メートル四方を囲む縄が、天井から糸で吊られて宙に浮いている。
ちょうど胸元くらいの高さで、さっき二人で手分けして半紙から作った紙垂も等間隔につけられている。
言うまでもなく、注連縄は結界の役割を果たすものだ。神域を表し、悪しきものの侵入を拒む境界。
それを、今ここで用意する意味とは、いったいなんだ。わざわざ若宮神社から借りてきてまで。
「なにをしようというのです」女将が師匠に歩み寄る。「神式のお祓いならば、これまでもまったく効き目がございませんでしたのに」
「黙って見ていれば、いい気になりおって」
勘介さんが顔を赤くしながら腕組みを解く。とうとう噴火が始まりそうだった。依頼をした女将の手前、抑えてきた癇癪がついに。
思わず僕はしり込みをした。
「ちょっと、お父さん」広子さんがその前に立ちふさがる。相当に危険な雰囲気だった。
「お静かに」
そんなことにはお構いなく、師匠は短くそう言い放つと、頭を下げて注連縄をくぐった。
「暮れ六つが始まるまで、時間がありません。みなさん、速やかにこの中に入ってください」
振り返りながらそう告げる。
「まあまあ。とりあえず言うとおりにしてみようよ」
楓が師匠と同じように頭を下げながら注連縄の内側に入り込む。それにつられるように他の人たちも次々と腰を屈めて中に入っていった。もちろんこの僕も。
最後に残った勘介さんが、鼻息も荒く元の場所に仁王立ちしている。
「クソガキが、なにをふざけたこと言ってやがる」
それを見た和雄が冗談めかして声をかけた。
「勘介さん。注連縄の中に入らないと、危険ですよ。たぶん」
536未 本編4   ◆oJUBn2VTGE :2012/01/21(土) 00:09:44.51 ID:sWc1D+bL0
広子さんもそれに同調して同じことを言いながら「お父さんってば」と手招きをしている。
「危険?」
師匠が薄ら笑いを浮かべながら口を開く。
「危険なのは、この内側の方ですよ」
そうして畳の上を指さした。全員が息を飲んだ気配がする。
針だ。
畳の上に針がつき立てられている。それも膨大な量だ。女将に用意してもらった針を、こんな形で使うとは。僕も今知って驚いた。
「この針で囲われた空間に入ってください。跨いでもかまいません」
よく見ると、針は円を描くように並べられている。人一人が十分に座れる大きさだ。数えると、その円が注連縄の内側に全部で七つあった。人数分というわけか。
「井口さんはこのまま外にいてもいいですよ。ただし、これから先なにが起こっても、この注連縄の中には入ってこないでください」
師匠は針の上を跨いで、円の内側に入り込んだ。その緊張したような声色に引っ張られるように、他のみんなもそれぞれ畳に刺さった針の円に入る。勘介さんだけは「ふん」と鼻で笑い、その場でそっぽを向いてしまった。
六人が注連縄の中、一人が外。
大広間の中は、これからなにが起こるのか固唾を飲んで見守る雰囲気になっている。
「さあ、そろそろですね」
師匠が時計を見ながらそう言う。
それからほどなくして、遠くから鐘の音が聞こえ始めた。澄んだ冬の空気を震わせて、遠い若宮神社から聞こえてくる時の鐘が。
十秒ほどの間を空けて、鐘の音は休まず続く。二回目。三回目……
最初の三回は捨て鐘。そして次からが暮れ六つだ。
四回目。五回目。六回目……
室内にいる誰もが押し黙っている。ただ微かに聞こえる鐘の音に耳を澄まして息を飲んでいた。
七回目。八回目。九回目……
最後の鐘が鳴り止んで、その余韻が耳の奥にわずかに残り、幻のように反響している。
「さて」
師匠が口を開く。一番奥の円にいて、ただ一人こちらを向いている。他の僕たちと向かい合う格好だ。
537本当にあった怖い名無し:2012/01/21(土) 00:11:45.43 ID:K4MTYSyK0
しえん
538未 本編4   ◆oJUBn2VTGE :2012/01/21(土) 00:13:34.12 ID:sWc1D+bL0
「暮れ六つが鳴り終わりました。ここからは幽世(かくりよ)のうちにある時間帯です。そこでは人はとてもか弱い存在です。現世(うつしよ)のものならぬモノたちが、ほんのひと撫でするだけで命の灯火が消えてしまうような……
くれぐれもお気をつけください。これからなにが起こっても決して我を無くし、この針の結界から出るようなことをしてはいけません」
いいですね?
師匠は囁くような声でそう言った。
みんな静かに聞き入っていて、素直に頷いている。なんだか僕もぞくぞくしてきた。もったいぶるのは師匠の常だったが、今日は特に念が入っている。
「わたしは、この温泉旅館に出るという神主姿の幽霊の問題を解決するために呼ばれました。依頼を受けた時点では半信半疑でしたが、実際にこちらにやってきて、幽霊を見たという人の話を直に聴き取り、現地を見て回った後の印象は違いました。
ここにはなにかがいます。確実に、この世のものではないなにかが。それがなんであるのかを確かめ、どうすれば出なくなるのか、その方法を探る。それを成し遂げるためにこの二日間がありました。
まず第一のヒントは神主姿であるということ。ここからすべてが始まります。しかし、この地域唯一の神社である若宮神社では、そんな幽霊に全く心当たりはなかった。
それどころか、宮司が出向いてきて御祓いを行ってもその出現が止むことはなかった。お寺に頼んでもそれは同様でした。よほど強い怨念を抱いている霊だったのでしょうか。いいえ。なにか違う気がします。
その神主姿の幽霊は、これまで人に危害を加えるような実害を成していません。訴えたいことがあるのかも判然としない状態です。どちらかというと、そのへんのどこにでもいる、弱々しい浮遊霊のような現れ方です。
しかし一年近くにわたって、同じ建物で頻繁に目撃されているというところには、なにか執着心というか、執念のようなものを感じます。ちぐはぐです。実にちぐはぐなのです」
師匠は首を左右に振る。そしてその場に腰を落とし、他のみんなにも座るようにとジェスチャーをした。長くなると言いたいのだろう。
それぞれ思い思いの格好で、針の円の中に座り込む。
539未 本編4   ◆oJUBn2VTGE :2012/01/21(土) 00:15:09.19 ID:sWc1D+bL0
「わたしは神職や僧侶のように、霊を祓い、魔を打ち破るようなことはできません。しかし、あらゆる存在には因果というものがあります。その目に見えない因果の糸を解けば、自ずと解決への道が見えてくるものです。みなさん」
師匠は静かな声でこちらに呼びかけてくる。
「みなさんの中に、この『とかの』で神主の霊を見た、あるいはどんな形でも遭遇した、という方がいたら手を挙げてください」
自分も手を挙げながら周囲を見ると、みんな手を挙げていた。師匠を除いて。
おかしかったのは、注連縄の外の勘介さんまで畳の上に胡坐をかいたまま仏頂面で右手をぴょこんと挙げていたことだ。見ているだけで思わず笑ってしまいそうになる。
「いいでしょう。広子さんと勘介さんはどんな風に遭遇したのか詳しくお聞きしていませんでしたね。ここでお話しいただけませんか」
そう言えば昨日みんなの話を聞いて回った時に、広子さんは「見てない」と言っていたことを思い出した。なぜか嘘をついていて、本当は見たことがあったのだろうか。
「いやあ。私のはたぶん見間違えって言うか。まあ、その、炊事場で一人で洗い物している時にスーッて後ろを誰かが通った気がしたんですよね。あれっ、と思ってそっち見たら、出入り口のトコに一瞬だけ後ろ姿が見えたんですよ」
それが神主が着るような服装だった気がする、というのだ。
後で旅館のみんなに聞いても、誰も炊事場には近づかなかったという。それで気味が悪くなって、しばらくはおっかなびっくり仕事をしていた。怖いものだから、自分でもなにか見間違いだと思い込むようにしていたそうだ。
勘介さんの方は不機嫌さを隠そうともしないボソボソとした声だったが、どうやら数回見ているらしいということが分かった。
一人でいる時に、目の前を半透明の人間が通ったというケースが多かったが、他の仲居と一緒に片付け物をしている時に、二人で同時に目撃したという話もあった。
すぐ目の前で、誰もいないはずの柱の影から音もなく人影が現れて、廊下の奥へ消えていったというのだ。
二人以上の人間に目撃される例は又聞きの噂としてはあったが、実際に体験した本人が喋るとそれとは違った臨場感があった。
女将も何度か見たとは言っていたが、すべての体験談を聞いたわけではなかったので、続けて話してもらう。
540未 本編4   ◆oJUBn2VTGE :2012/01/21(土) 00:17:08.99 ID:sWc1D+bL0
「私が最初に見ましたのは、春先だったと思いますが、夜中に事務所で一人書き物をしておりましたところ、なにかの気配を感じましてふと顔を上げますと、目の前の壁の中に、その、人の姿を見たのです。ええ。壁の中でした」
その人影は神主のような格好をしていたという。悲鳴を上げ、椅子から転げ落ちそうになって慌てて机の縁につかまると、いつの間にかその壁の中の霊は見えなくなっていたのだそうだ。
その後も女将は何度か神主姿の霊を目撃していた。現れ方は様々で一様ではなかったが、共通しているのは、なにか訴えかけられるようなものを全く感じなかったということだけだった。
楓と和雄の体験談は昨日聞いたとおりだ。
楓は客室の膳を下げている時に廊下の外に神主の霊が佇んでいるのを見ている。和雄の方は露天風呂に入っている時に遭遇していた。
そしてこの僕も、今朝恐ろしい目にあったばかりだった。その時のことを思い出してしまい、身震いする。
「なるほど。みなさん、それぞれになんらかの体験をしている。しかし女将と勘介さんは複数回見ていますが、他の方はみんな一度だけの遭遇です。少なくとも知覚しているものは。
一年ほど前から現れるようになった幽霊が、ここでずっと働いている広子さんに対して一度だけしか姿を見せていない。これはかなり低い頻度です。
出るようになったのは一年ほど前から、と聞きましたが、正確にはいつごろか分かりますか。これは推測ですが、女将が最初に見たという、春先ごろが最初ではないですか」
話を振られた女将は怪訝な顔で首を傾げる。
「あー、でもそのころかも。噂が出始めたの」と広子さんが言った。
「ということは、いちにいさん…… 九ヵ月か十ヵ月というところですか。まあ一年弱という表現でもいいでしょう。この期間、覚えておいてください。さて、その個人単位で考えると遭遇頻度の低い幽霊ですが、今日、これから、この場に現れます」
ええ?
そんな声が上がった。僕も少し驚いた。そんなことをあっさり断言するなんて。
しかし師匠は平然と続ける。
541未 本編4   ◆oJUBn2VTGE :2012/01/21(土) 00:18:13.51 ID:sWc1D+bL0
「様々な要因が重なり、その確率は極めて高いと言えます。そうでなくてはこうしてみなさんに集まっていただいた意味もありません。その出現要因はいくつもありますが、例えばまず暮れ六つを過ぎた時間帯であるということ。
これは大きな問題です。それよりも早く現れたケースはこれまでありません。そしてそれは暮れ六つの意味を理解した存在であるということを同時に指し示しています。
次に、噂をすれば影、という言葉があるように、わたしの経験上、霊体は己に興味を示し、その存在を肯定する者の前に現れやすいという傾向があります。
その噂の内容は怯えであったり、からかいであったりと様々ですが、今わたしたちがこうして話をしていることがその出現を誘発しうるというということです。
そしてなにより、この場にわたしがいるということ。また、この場でわたしの次に霊感の強い助手のこいつがいるということも要因の一つです」
師匠の広げた手で紹介される形になり、思わず「どうも」と照れ隠しにみんなに頭を下げた。なにか変な気持ちだ。
しかし師匠は暗に自分の霊感の強力さを自負するような言い回しをしているのに気づいた。これだけ言ってなにも出なければ大恥を晒すことになるが、それを承知で自分を追い込んでいるのだろうか。
「それら多くの要因の中で、非常に重要度の高いものが二つあります。それは今この場に揃っている、ある特別な条件です。そのために、これから間違いなく神主姿の霊は出ます。
約束してください。もし出現しても、けっして動かないで下さい。その針の結界の外には出ないように」
僕は改めて針を見た。どれもかなり長い。良く見ると、畳に刺さっているのは穴のある側だ。尖った方が上を向いている。もしバランスを崩して針の列の上に転んだら、と思うとゾッとする。
「では、これを見てください」
師匠はズボンのポケットから折り畳んだ半紙を取り出した。広げると、そこには漢字が一文字だけ大きく書かれている。
雨冠。その下に口が三つ横に並び、さらにその下に「龍」の文字。
「これは昨日、裏山の谷底で見つけた石に彫られていた文字です。裏山には若宮神社の分社などなんらかの社の類はない、とみなさん口を揃えておっしゃいましたが、これはいったいなんだと思いますか」
542本当にあった怖い名無し:2012/01/21(土) 00:18:49.87 ID:Cgk9Qoqm0
改行しろ
読みづらい
543未 本編4 ラスト  ◆oJUBn2VTGE :2012/01/21(土) 00:24:52.02 ID:sWc1D+bL0
「あ」という声が上がった。和雄だ。なにか気づいたようだ。
「祭祀的な役割のものではなくても、山道の路傍にこうした文字を彫った石を置くことはあります。一里塚のような道標がそうですね。しかし、この見慣れない文字はどうでしょう。一体なにを表しているものなのか……」
師匠は針の円の中に胡坐をかいたまま半紙をひらひらと揺らす。
そのとき、一瞬なにか聞こえた気がした。なんだろう。気のせいだろうか。
「その謎を解くには、まず亀ヶ淵という溜め池の話をしなくてはなりません。みなさんご存知のように、戦国武将である高橋永熾がこの地に侵攻してきたときに領土としての価値を高めるため、水瓶として造ったものです。
元々その場所には沼地があり、その地名が溜め池の名前になったものです。ところがここには実はもう一つの名前があります。
ショウガブチという名前をお聞きになったことがありますか。今や地元の人間ですら知らない、文献にだけ現れる古い古い読み方です。しかしいつからそう呼ばれなくなったのか、推測することができます。
もちろん、溜め池の完成というエポックメーキングのときからですよ。新しい用水路。新しい農法。この周辺で暮らす人々の生活を変えてしまったとき、古いものがひっそりと消えていったのです。
そしてそれは、高橋永熾がもたらしたもう一つのものにも当てはまります」

りん……

ふいに耳にそんな音が入った。なんだ。いまの音は。
僕にだけ聞えたのだろうか。思わず周囲を見たが、特に異変めいたものは見当たらない。
しかし、ざわざわと胸のあたりにざわめくものがあった。
師匠は平然として説明を続け、みんなその一言ひとことに自然と耳がそらせなくなっていった。
544本当にあった怖い名無し:2012/01/21(土) 00:26:23.96 ID:OCgYdyAK0
おわりかいいいいいいいいいいい!!!!!!!
ともあれ乙!
545本当にあった怖い名無し:2012/01/21(土) 01:21:38.07 ID:I05oSMGP0
Pixivの行間の広さになれると確かにちょっと詰まって見えるな
546本当にあった怖い名無し:2012/01/21(土) 04:39:01.78 ID:Aau8GmeE0
>>528-543
ウニ乙!
547本当にあった怖い名無し:2012/01/21(土) 09:36:52.14 ID:dLbr/ePj0
ウニ、よかったよ。!
548本当にあった怖い名無し:2012/01/21(土) 17:04:07.77 ID:6dX/GANj0
オーガニック!
549本当にあった怖い名無し:2012/01/21(土) 17:20:37.14 ID:ng8waz9q0
赤緑乙
海栗乙
550本当にあった怖い名無し:2012/01/21(土) 18:06:31.25 ID:Qcs6+NNSO
おつ
551未 本編5  ◆oJUBn2VTGE :2012/01/21(土) 23:13:27.86 ID:sWc1D+bL0
「高橋永熾は軍事的侵攻のさいに、以前の領土で信仰していた八幡神社をこの地にも勧請してきます。これは他の戦国武将にも往々にしてあったことです。
そうして勧請された若宮を祀る社、『若宮神社』と名づけられたそれはこの地の人々を氏子として取り込み、高橋永熾の野望が破れた後も残り続け、現在まで脈々と信仰が受け継がれています。
今日境内も拝見してきましたが、大変に立派なものだと思います。しかし、庇護者であった高橋家の援助が断たれたにも関わらず、これだけの社格の神社を維持できたのも氏子衆の寄進、そして力添えがあってこそです。
今でこそ、この松ノ木郷は西川町の外れにあり、寂れた印象を持ってしまうような景観です。しかし当時はかなりの人口を抱えていたであろうことが、この神社の大きさからも推測できるのです。
だからこそ、高橋永熾は巨額を投じてこの地に溜め池を建設しようともしたのです。すると、ここに奇妙なことが現れてきます。それだけの数の氏子衆は、若宮神社がやってくるまではいったい何を信仰していたのでしょう」
はっ、としたような空気が広間に満ちた。
これから事件の本題に入ることが分かったからだ。
「その情報は、これまでまったく耳にしませんでした。明治初期の神社整理政策の渦中で、祭神も分からないような無社格の小さな社は次々と若宮神社に統合されていきました。
その名前のないカミたちは、今では若宮神社の境内にある末社で眠っています。しかし、のちにその若宮神社を支えた氏子衆はそんな取るに足りないカミたちをこぞって信仰していたのでしょうか。
いいえ。違います。違うのです。溜め池がどうして造られたのか、もう一度その意味を考えてください。高橋永熾の領土的野心? 百年の大計? そうした側面の前に、もっとも即物的な理由があります。
水です。水がなかったのです。日本中の村々で幾度となく起こってきた飢饉。その原因は水不足です。雨が降らなければ田は、畑は干上がり、作物は枯れていきます。水を引いていた水路も、川などのその源泉が干上がれば用を成しません。
今でこそ近代技術であるボーリングで温泉が湧くような土地柄ですが、この松ノ木郷を懐に抱く山々は低く、おそらく降り注いだ雨をゆっくりと安定的に地表に流していく地質ではないのです。
552未 本編5  ◆oJUBn2VTGE :2012/01/21(土) 23:17:23.76 ID:sWc1D+bL0
土地を流れる枝川の水量は安定せず、干天が続くと水はなくなり、度々飢饉が発生したことでしょう。だからこそ溜め池が造られたのです。
それほど水に困っていた人々が、神に祈らなかったはずはありません。そうした切実な祈りを受け止める神が、この地にいなかったはずはないのです」

りん……

また聞こえた。なんだこの音は。
師匠はその音にまったく反応もせず、漢字が書かれた半紙をもう一度高く掲げながら声を張った。
「雨の下に口を三つと龍を書くこの字は、『オカミ』と読みます。古いやまと言葉です。過去を紐解くと万葉集にこんな歌があります」

 わが岡のオカミに言ひて落(ふ)らしめし
雪の摧(くだ)けし其処に散りけむ

「このオカミとは水の神です。罔象女神(ミヅハノメ)などと並び、各地で人々の信仰を集め、重要な役割を果たしてきた水神です。
高(たか)オカミと呼ぶ場合は山の水を司り、闇(くら)オカミと呼ぶ場合は暗渠、つまり地の底や谷を流れる水を司ります。このオカミを祀った神社は日本中に分布しています。日照りが続くときには、この神に雨を乞うのです。
その際には雨を祈る、つまり祈雨の儀式が行われました。例えば相撲を奉じたり、神楽を舞ったりして神を喜ばせ、あるいは盛大に祭りを催して村中を練り歩いたり、山に登って大きな火を焚いたり、といった様々な行事です。
もちろん古来よりの風習である祈雨の対象はオカミだけではありません。様々な神社が雨乞いの儀式を司りました。
『丹貴』、つまり雨師と称され吉野川の上流に鎮座した丹生川上社や、賀茂川の上流に鎮座した貴船神社を代表とする、祈雨に効ありとされた神社群が朝廷の奉幣を受けてきた歴史があります。
平安期に編纂された『延喜式』の神名帳にも祈雨八十五座と呼ばれる神社が記載されています。また、神道に限らず、密教を代表とする仏教儀礼においても、雨を請う、請雨法の秘術が長らく行われてきました。
密教の『四筒の大法』のうち、『請雨経法』と『孔雀明王経法』は請雨法として知られています。そして密教といえばなんといっても竜王です。
553本当にあった怖い名無し:2012/01/21(土) 23:17:32.25 ID:IdEY3e30O
無駄にだらだら続ければいいってもんじゃないぞ
554本当にあった怖い名無し:2012/01/21(土) 23:20:01.15 ID:6dX/GANj0
わーお!
555未 本編5  ◆oJUBn2VTGE :2012/01/21(土) 23:21:48.80 ID:sWc1D+bL0
空海の招いた善女竜王などの八大竜王やその眷属たちは雷の神であり、水の神であり、そして雨の神でもあります。
竜王の名前を冠した山は日本中には数え切れないほど多くあり、竜王が守護するそうした山は庶民の間でも祈雨の儀式を行うための重要な信仰対象ともなってきました。
そうです。山です。山は降り注いだ雨をその懐深くに溜め込み、絶え間なく平地に水をもたらすための装置です。竜王山に限らず、あらゆる山は祈雨の行事における重要拠点なのです。
もちろん、慢性的な水不足に悩む松ノ木郷に鎮座する、この旅館の裏手の山も」

りん……

その音に師匠の声が重なり、不思議な余韻となってたなびいていく。
「かつてこの裏山にはオカミを祀る神社があったのです。わたしが谷底で見つけた石は、その遺構でしょう。
炎のごとく農地を焼く太陽が、曇ることなく光を降り注ぎ続ける『炎旱』の間、人々はオカミに祈りました。一心に、雨を懇願したのです。
現代社会の、結婚と家の新築、そして葬式の際ぐらいしか関わりのないとってつけたような神式の行事とはわけが違います。雨の降るや降らざるやに、その村で生きるすべての人間の命がかかっている、正真正銘の全身全霊をもって臨んだ『信仰』です。
そうであるがゆえに、その信仰の向かうところであった神社の権勢たるや大変なものだったと推測できます。しかし、その雨乞儀式を司ってきたオカミ神社にも、いつしか転機が訪れます。
もうお分かりでしょう。高橋永熾がもたらした二つの変革の一つ。若宮神社の勧請です」

りん……
りん……

音が大きくなっていく。静けさの中に、その音がなんとも言いようのないざわめきを運んでくるようだ。
556未 本編5  ◆oJUBn2VTGE :2012/01/21(土) 23:24:58.92 ID:sWc1D+bL0
「高橋永熾のもたらした二つの変革は、その実、二つにして一つのものです。溜め池が出来ることで日照りの恐怖は薄れ、雨乞いのための信仰は不要になりました。
そして松ノ木郷の人々の信仰心の新しい受け皿が若宮神社です。この日本でもっとも多くの人に信仰されている八幡神を祀った神社なのですから、その役に十二分にかなうものでした。
この二つの変革は混ざり合い、効率的に古いものから新しいものへとすべてが変わっていきました。その過程で忘れ去られ、消えていったものたちがあります。
かつてこの山に存在し、人々の信仰を集めたオカミ神社の記録が、そして記憶が、人々の中に残っていないのは、運命だったのでしょうか」

りん……
りん……
りん……

師匠の言葉に反応するように、音が大きくなる。
全員が息を飲んで注連縄を見つめている。よく見ると四方を囲むその縄の四隅に、小さな鈴が取り付けられていた。
その鈴が、鳴っている。

「いえ。運命などという生易しい言葉で語ってよいものではないのかも知れません。高橋永熾はただの善意で溜め池を造ったのではありません。統治者として必要性があったから造ったのです。
そして若宮神社による住民の信仰面の統一も含め、この地における新しい支配体制の確立に力を注ぎました。当然、古くからあるオカミ神社の存在は邪魔なだけです。
直接的な力をもって行なったのか、あるいは事故を装ったのか、真綿で首を絞めるように外堀から切り崩していったのか、それは分かりません。
しかし、そのオカミ神社が存続できない程度には具体的に排除を行なったことは想像に難くありません。そして徹底的にかつてそんな神社が存在したことを消し去ろうとしました。
高橋家は二代目でついえていますので、その目論見は完成してはいなかったかも知れません。しかし、現に以前ほどに雨乞いをする必要がなくなったという事実が、新旧の神社の交代を自然に推し進め、人々の記憶を薄れさせていったのです。
あるいは、もしかするとわたしが想像するよりもその交代はずっと穏やかに行なわれたのかも知れません。しかし歴史の闇の中に消えていく側にとって、己の消滅の原因が高橋家、そして若宮神社にあったことは間違いのないことです。
557未 本編5  ◆oJUBn2VTGE :2012/01/21(土) 23:31:37.00 ID:sWc1D+bL0
その恨みが、怨念が、山肌に染み込み、高き場所から流れる川となって、あるいは暗渠に流れる闇(くら)い水となっていつかすべて流れ去っていったのでしょうか」

りん……
りん……
りん……
りん……

鈴が。注連縄が揺れている。
空気が刺すように冷たい。吐く息が白くなっていくような気がする。みんな顔を強張らせ、恐怖に満ちた目を周囲に泳がせている。
「オカミ神社が若宮神社によって奪われたものは氏子だけではありません。雨乞い儀式において重要な役割を果たしてきたあるものも奪われました。
雨乞いの際に行われる儀式や行事には様々な様態があります。例えば仏像や御神体に水をかける行為。泉や池の水をすべて取り替えるという『水かえ』。藁束などを山頂で燃やす『雲あぶり』。
雨乞い面と呼ばれるような能の面を被ったり、特別な鏡を持ち出したり、大量の枡を一斉に洗う百枡洗いや、動物の死骸や糞尿などの不浄のものを神の住む場所に投げ込んでその怒りをもって雨を降らせるような儀式もありました。
その中で全国に幅広く分布するある風習がこの地でも行われていました。『月はいずれ鐘は沈める海の底』という芭蕉の句があります。これは越前敦賀の鐘ヶ崎に沈む鐘の伝説を詠んだものです。
筑前鐘ヶ崎の鐘なども有名ですが、こうした沈鐘伝説の背景には、海の底に住む竜神が鐘を好むために鐘を積んだ船が沈み、そして引き上げることができないという説話があります。
このように竜神が好む鐘を池や浅瀬に漬けることで喜ばせ、雨を降らせてもらうという儀式が古来より日本中で行われてきました。この松ノ木郷ではその『鐘漬け』はある沼地で行われていたようです。
鐘があったのはもちろん雨乞いを担うオカミ神社です。そして鐘漬けが行われてきた沼地は鐘を漬けるための淵、つまり鐘ヶ淵(ショウガブチ)あるいは、湯桶読みをして鐘ヶ淵(カネガブチ)と呼ばれていました。
この鐘はそうやって日照りのたびに沼に漬けられたために、水に触れる下部に幾重にも重なる錆を生じました。和雄さん、あなたの実家の若宮神社にある鐘がそうです。あの鐘は元々オカミ神社にあったものなのです。
558本当にあった怖い名無し:2012/01/21(土) 23:39:51.94 ID:Yo8a+Q8Ni
しえんいる?
559未 本編5  ◆oJUBn2VTGE :2012/01/21(土) 23:39:52.05 ID:sWc1D+bL0
銘を削られ、奪われた雨乞いの神事の象徴はその役割を負えました。溜め池が完成し、鐘が漬けられることもなくなった後、カネガブチもその名前を変えました。
近い読みをする、亀ヶ淵(カメガブチ)と。これは恐らく高橋永熾による改名ではないかと思われます。今浜を長浜と変えた羽柴秀吉の例にもあるように、戦国武将は良くこうした地名改変を行っています。
亀の字をどう読もうとも、ショウとは読まないのです。違っていたのは、字の方なのですよ」

りん……

鳴り響く鈴の音を聞きながら、僕は思い出していた。師匠の言葉を。長野教授との電話の後、「女将がどうしたんですか」と問い掛けた僕に、師匠は言った。
『犯人だよ』と。
違っていたのは字の方なのだ。
「女将」ではなく、「オカミ」
神の名前。あるいは、神社の名前。師匠が告げたのはそちらの真相なのだ。
つまり……
「キャーッ」
いきなり悲鳴が上がった。楓が口元を押さえて叫んでいる。
その視線の先には、薄っすらとした人影がある。じわじわと、その希薄な身体が輪郭を持ち始める。狩衣に烏帽子、袴。神主の、姿をしている。顔はない。
ぼやけているというよりも、青白いのっぺりとした肉がそこにあるだけのようだった。それがなにもない空間から湧き出てくる。
その影は一つではなかった。二つ。三つ。四つ。まだいる。まだ。
「うわぁ」と和雄も叫ぶ。女将も、広子さんも叫んでいる。勘介さんも腰を抜かしたようにへたり込んで泡を吹きそうな顔をしている。
僕もその異常な光景にまともに息ができないでいる。心臓がバクバクと鳴っている。それがこの世のものではないという直感と、なによりその現れ出る姿に異様な恐ろしさを感じだのだ。
影は注連縄の内側に現れていた。邪(よこしま)なものを退けるはずの境界の、その内側に。
近い。たった五メートル四方に切り取られた空間の中に、僕ら六人と不気味な人影たちがひしめき合っている。逃げ場などない。
560未 本編5  ◆oJUBn2VTGE :2012/01/21(土) 23:42:33.52 ID:sWc1D+bL0
朝、玄関で得体の知れない存在に触られたときの感覚が蘇る。すべての生気を吸い取られるような、二度と味わいたくない感触だった。
悲鳴が交錯する中で、師匠が吼えた。
「うろたえるなっ」
その気迫にかき消されるように悲鳴が止む。
「その場を動くな。その針は結界だ。それも即物的な。踏めば痛い、と知っている者ならば、越えることができない」
凛した声が広間に響き渡る。言葉づかいが変わっている。
神主姿の影は注連縄の中をさまよいながら、しかし僕らの身体には触れることはなかった。すべて針の円の外側を音もなく揺らめくように歩いている。
「逆に言えば、注連縄は彼らにとって結界ではない。いや、自分たちが棲まうべき『内側』なんだ。彼らは俗な表現で言う、悪霊なんかじゃない。ある真実を告げるために現れた、祖霊なんだ。
かつて神職であったものたちだ。むしろその存在は神に近いと言っていい。だから直接に人間に接触できないほど希薄な霊体である彼らは、神域である注連縄の内側でこそ力を得て出現する」
これが、今夜この場に彼らが現れるとわたしが確信していた第一の要因っ!
師匠が叫ぶその前を、神主の霊が行き交う。
寒い。頬に風を感じる。冷え切った空気が、その動きにかき回されるように対流を起こしている。
「さすがにこの状況が長く続くとまずい。手短に話す。彼らはオカミ神社の代々の宮司たちだ。四百年以上の昔の。
若宮神社の当代の宮司である石坂章一氏がいくら御祓いをしてもだめだったのは、流派が違うなどという生易しい理由じゃない。オカミ神社の宮司たちにとって、若宮神社は侵略者だ。
自分たちの存在を歴史の中に消し去った張本人たちなんだ。怒りを増しこそすれ、祓われることなどない。なにより、彼らは悪意を持って現世(うつしよ)に現れているんじゃない。
『とかの』の宿泊客や従業員には全く手を出していないことからもそれが分かる。したかったことは唯一つ、警告だ。悪しきもの、邪(よこしま)なものが『とかの』に入り込んでいることに対する警告なんだ」
僕の目の前に顔があった。
目鼻もなにもない顔がわずか二十センチの距離で僕の顔を覗き込んでいる。ぎゅっと心臓が縮み上がる。
561未 本編5  ◆oJUBn2VTGE :2012/01/21(土) 23:46:13.14 ID:sWc1D+bL0
「この地方の古い地誌に、松ノ木郷にあるオカミを祀る神社の記述があった。名前は木編に母と書く『栂野神社』。この地のオカミ神社の正式名は栂野神社というんだ。
わかるか。トガノだ。この符合は偶然じゃない。この温泉旅館『とかの』を開いた戸叶家は、よそ者なんかじゃない。由緒ある栂野神社の宮司一族につながる、れっきとした家柄なんだ。た
だ、新興の若宮神社に氏子を奪われた宮司一族は没落してしまった。やがて他の地方へと落ち延びていった。
そしてどういう変遷を経てか、名を変え、大阪で材木問屋を営むようになり財を成した。それが女将の祖父である亀吉氏の代で、凱旋を果たしたんだ。
もちろん旅館を開く場所に選んだのは先祖伝来の土地であるこの山の麓。かつて栂野神社があった山だ。今この旅館の駐車場には、この土地を買い取り造成工事をしたときに場所を移された祠がある。
その御神体である石には、消えかけた文字でこう書いてあった。とかのの名において、神にかわり、この地を守ると。神社が消え、宮司一族が去った後、ずっと主人の帰りを待っていた石だ。今は役割を終えて眠っている。
そしてその役割は新しい『戸叶家』に受け継がれた。祖父の亀吉氏はその消された歴史を密かに伝え聞いていた。しかし次の代には引き継がなかった。あるいは自分の息子である二代目には伝えたのかも知れない。
だが三代目である千代子さんには伝承されなかった。それはこの地で新しい暮らしを始めた新しい世代に、そのくびきを見せたくなかったのかも知れない。
時は明治の神社整理を越え、若宮神社は安泰であり、もはや栂野神社の復興も適わないという現実がそこにはあった。
ただその山の麓で生きていくことが、先祖の霊を慰め、そしてまた先祖の霊に守られることになるのだと。それだけを思ったのかも知れない。女将、あなたが子どものころ、大雨の夜に見た大蛇は、蛇じゃない。龍だ。
オカミ神社には守護者たる龍を象ったものが置かれることが多い。茅で作られたものなどだ。そして栂野神社には木彫りの龍があった。
そして宮司一族が放逐され、荒廃した神社の遺構が幾度かの土砂崩れで埋まり、御神体の龍があの山のどこかに眠っていた。それがあの夜の大雨でついに土砂ごと枝川まで滑落し、濁流の中を流されていったんだ。
あなたが見たのは、手足を泥水の中に秘めた巨大な龍の胴体だった」
562本当にあった怖い名無し:2012/01/21(土) 23:48:37.68 ID:lOgRV5qM0
うに乙

「奪われた雨乞いの神事の象徴はその役割を負えました
563未 本編5  ◆oJUBn2VTGE :2012/01/21(土) 23:52:42.14 ID:sWc1D+bL0

はぁっ。

命が抜けるような深い息が吐き出された。女将だ。顔面は蒼白になり、両手はその頬に触れるか触れないかという場所でガタガタと震えている。
「ひょっとすると、あなたの祖父はそのとき栂野神社の復権を諦め、あなたの代ではこの地に溶け込んでこれからずっと暮らしていけるよう、真実をその胸に仕舞う覚悟をしたのかも知れない」
師匠のその言葉に、女将は顔を覆って嗚咽を漏らし始めた。どのような感情がそこにあるのかは分からない。しかし見ているだけの僕にも、胸を締め付けられるような感覚があった。
「そして、その地に帰ってきた子孫たちを守り続けてきた宮司の祖霊は、悪しきものの侵入に気づき、警告を発する。それが春先から始まる幽霊事件だ。
思い出して欲しい。わたしはこの場にいる全員にそれぞれの幽霊との遭遇譚を訊いた。その中で一人、たった一人だけ、他の人と異なる遭遇の仕方をしていた。誰だか分かるか」
気がつくと、ざわざわとした気配が僕の周囲からは離れていた。その神主の霊たちはある一箇所に集まり始めている。
「襲われているんだ。その人物だけが」
ハッとした。
僕……? なんだか分からないが、目の前が真っ暗になりそうだった。
師匠が僕の表情に気づいたかのように苦笑する。
「おまえのは、ただ通り道だったというだけだ。明け六つが始まるから、出て行こうとしたんだよ。その進行方向に座っていたというただの不運だ」
そうか。そう言えば、なんというか、害意のようなものは感じなかった。では、その人物とはもう一人しかいないじゃないか。
「ひぃぃ」
泣き声のような悲鳴が上がる。和雄だ。和雄が呻きながら目の前の空間を手で払う仕草をしている。
その周囲には無数の影が蠢いている。まるで群がるように。
「おまえだけだよ。追いかけられているのは」
和雄の姿を見ながら、冷たい声で師匠はそう言った。
「露天風呂で遭遇したとき、おまえは近寄ってくる幽霊からなんとか逃げ切った、と言ったな。なぜおまえだけ、そんな目に会うんだ? 答えてやろうか。ええ? 若宮神社のお坊ちゃん。
564未 本編5  ◆oJUBn2VTGE :2012/01/21(土) 23:57:58.22 ID:sWc1D+bL0
わたしも最初はただお前がこの栂野神社の末裔の地にとっては仇敵の子孫であり、招かれざる客だからだろうと思ったさ。
だが、新しい戸叶家は若宮神社の氏子になり、そんなくびきから解き放たれた生活を始めているんだ。快くは思わないだろうが、祖霊にしてもそれをぶち壊そうとまでするだろうかと考えると、しっくり来ないものがあった。
その謎が解けたのは喫茶店だよ。今日の昼に西川町での喫茶店で会ったろ。おまえはそのとき、女連れだった。そして困った顔で妹だと紹介をした。ここで自分たちを見たことを誰にも言わないでくれ、とも言ったな。
その後で、妹との喧嘩をダシに楓をデートに誘ったことを知ったわたしたちにはちょうどいい目くらましになるところだった。だけどあの喫茶店には、バイクは一台しか止まっていなかった。
おまえ言ったよな。バス停が遠いから、うちの家族はみんなバイクに乗ってるって。喫茶店のバイクには見覚えがあった。おまえのバイクだ。じゃあ妹はどうやって来たんだ。
二人乗り? しかしヘルメットは片方のハンドルに一つだけしか掛けられていなかった。もう一つは座席下のヘルメットホルダーか? だが、おまえのバイクはヘルメットが二つ同時に収納できるタイプだ。
なぜバイクを降りた後、二人がヘルメットを脱いだのに、片方だけをわざわざ座席下に仕舞うようなことをするんだ。どちらかはノーヘルか? いや、顔見知りの多い田舎の街なかを走るのに、そんな無駄な危険を冒すもんか。
ヘルメットなんて始めから一つしかなかったんだよ。ただおまえはあそこで待ち合わせていただけなんだ。西川町に住む女と。あの女は妹の翠じゃない。
顔を知らないわたしたちなら咄嗟に騙せると思ったのか。随分と楽天的だな。さっき、旅館に電話があったよ。楓ちゃんいますかってさ。名前を聞いたら翠と名乗ったぜ。
おかしいな。デートの約束の時間から二時間くらいしか経ってない。喫茶店でアニキと口裏合わせをしてたのが本当に翠なら、楓がいないだろうってことくらい知っているはずじゃないのか。
ありがちな話だ。シンプルに考えればいい。やましい関係にある女と密会しているときに、知り合いに見られた場合の言い訳、その一。『妹なんだ』 ……な? バ
565未 本編5  最後消えたので再掲  ◆oJUBn2VTGE :2012/01/22(日) 00:07:58.14 ID:Gxhfsr1T0
わたしも最初はただお前がこの栂野神社の末裔の地にとっては仇敵の子孫であり、招かれざる客だからだろうと思ったさ。
だが、新しい戸叶家は若宮神社の氏子になり、そんなくびきから解き放たれた生活を始めているんだ。快くは思わないだろうが、祖霊にしてもそれをぶち壊そうとまでするだろうかと考えると、しっくり来ないものがあった。
その謎が解けたのは喫茶店だよ。今日の昼に西川町での喫茶店で会ったろ。おまえはそのとき、女連れだった。そして困った顔で妹だと紹介をした。ここで自分たちを見たことを誰にも言わないでくれ、とも言ったな。
その後で、妹との喧嘩をダシに楓をデートに誘ったことを知ったわたしたちにはちょうどいい目くらましになるところだった。だけどあの喫茶店には、バイクは一台しか止まっていなかった。
おまえ言ったよな。バス停が遠いから、うちの家族はみんなバイクに乗ってるって。喫茶店のバイクには見覚えがあった。おまえのバイクだ。じゃあ妹はどうやって来たんだ。
二人乗り? しかしヘルメットは片方のハンドルに一つだけしか掛けられていなかった。もう一つは座席下のヘルメットホルダーか? だが、おまえのバイクはヘルメットが二つ同時に収納できるタイプだ。
なぜバイクを降りた後、二人がヘルメットを脱いだのに、片方だけをわざわざ座席下に仕舞うようなことをするんだ。どちらかはノーヘルか? いや、顔見知りの多い田舎の街なかを走るのに、そんな無駄な危険を冒すもんか。
ヘルメットなんて始めから一つしかなかったんだよ。ただおまえはあそこで待ち合わせていただけなんだ。西川町に住む女と。あの女は妹の翠じゃない。
顔を知らないわたしたちなら咄嗟に騙せると思ったのか。随分と楽天的だな。さっき、旅館に電話があったよ。楓ちゃんいますかってさ。名前を聞いたら翠と名乗ったぜ。
おかしいな。デートの約束の時間から二時間くらいしか経ってない。喫茶店でアニキと口裏合わせをしてたのが本当に翠なら、楓がいないだろうってことくらい知っているはずじゃないのか。
ありがちな話だ。シンプルに考えればいい。やましい関係にある女と密会しているときに、知り合いに見られた場合の言い訳、その一。『妹なんだ』 ……な? バッカみたいだろ。
おまえ、楓にゾッコンな振りをして、なにを企んでんだ」
566本当にあった怖い名無し:2012/01/22(日) 00:16:13.36 ID:wgy49i/70
ウニ支援!
567未 本編5  ◆oJUBn2VTGE :2012/01/22(日) 00:20:25.99 ID:Gxhfsr1T0
師匠の言葉にみんな耳を疑うように唖然としている。ただ当の和雄だけは自分の回りを取り囲む幽霊の群れに怯えてそれどころではないようだった。
「お取り込み中みたいだから、かわりに言ってやろうか。おまえが次男だからだよ。伝統ある若宮神社は皇學館の院生である長男の修が継ぐことが事実上決まっている。
おまえがいずれ家から追い出されることは自分で言っていたことだ。それまでに手に職をつけなければならない。そんな中、幼馴染だった楓が高校を卒業して短大に入り、随分と垢抜けて可愛くなった。
おいおい。いいんじゃないか。実家は旅館を経営している。なのに、跡継ぎはいない。婿に入れば、旅館はいずれ自分の手に入ったも同然だ。将来は安泰、嫁は可愛い。
母親の女将とも今まで上手く折り合いがついている。最高じゃないか。本命は別の女だとしても、ばれなきゃいい。外に女の一人や二人持つのも男の甲斐性だぜ。なあ、そうだろう」
楓は目を剥いて師匠と和雄を交互に見ている。
「おまえがこの家に頻繁に出入りするようになったのは、楓が短大生になってからだと聞いている。さっきわたしが覚えておいて欲しいといった期間は九ヵ月から十ヶ月だ。
なんの数字だった? 幽霊騒動が始まってから今までの期間だよ。それはおまえが邪(よこしま)な野望を抱いてこの『とかの』にやってくるようになった期間とぴったり重なるんだ。
もう分かっただろう。オカミ神社、つまり栂野神社の宮司の霊が旅館に現れるようになったのは、邪心を隠して持って侵入してきた石坂和雄という異物のことを警告するためだ。
これが今夜この場に彼らが現れるとわたしが確信していた第二の要因。その張本人がいわば釣り餌としてここにいたことだ」
と、いうわけで。
そう言いながら師匠は大袈裟な動作で和雄を指さした。
「複雑怪奇なこの事件、神職ならぬこのわたしに、祓えというなら祓ってやるさ。追い払うっていう手段で」

で・て・け

ゆっくりと一音節ずつ区切って師匠はそう宣告した。その短い言葉には一種抗えないような響きを伴っているような気がした。
和雄は自分に触れようとする霊体たちの手を、狭い円の中で必死で避けながら「助けてくれ、助けてくれ」と繰り返していたかと思うと、「わかった。わかったから。出て行くから」と叫んだ。
568本当にあった怖い名無し:2012/01/22(日) 00:22:09.14 ID:QvK7GRf50
つCだお
569未 本編5  ◆oJUBn2VTGE :2012/01/22(日) 00:23:08.90 ID:Gxhfsr1T0
「たがえるなよ」
師匠はそう口にしたかと思うと、針の結界を踏み越え、黒い影たちの手を掻い潜り、懐からハサミを取り出して瞬時に注連縄の一部を切った。
その切られた部分の端が垂れて地面についた瞬間、神主姿の霊たちの姿が掻き消えた。あれほど濃密だった気配も消滅した。そのとき、わっ、という耳鳴りが駆け抜けたような気がした。
「円が途切れれば、閉じられた世界は終わる。神域を失い、一度散り散りになった霊体が別のアルゴリズムで再び凝集し、現れるまでは時間がかかるだろう。出て行くなら今のうちだ」
うずくまって荒い息を吐いていた和雄が、師匠のその言葉を聞いて跳ね起きた。
そして言葉にならない喚き声を上げながら、広間から飛び出していった。
僕らはみんなそれを見ていることしかできなかった。ただ呆然と。悪夢から目覚めたばかりのように。その中で師匠だけが涼しい顔をして、「一件落着だな」と笑っている。
 天井から糸で吊られ、そして一部が切られた注連縄と、針だらけの畳。その針が作り出す円に閉じ込められた人間たち。そんな異様な大広間の光景が目の前にはある。しかし、さっきまでそこに存在した異界は、同じ形をした少し奇妙なただの日常へと変貌していた。
 そのすべてを操った張本人は、腹が空いたのか右手で胃のあたりを押さえながら、後ろ手をついて腰を抜かしたままの勘介さんを見つめている。なにか訴えたげな眼差しで。

           ◆

「あ、雪だ」
僕は窓の外を見ながらそう呟いた。
夕方から降り続く小雨はいつの間にか、雪に変わっていた。すでに時刻は夜の十二時近くになっている。
僕は改めて師匠にあてがわれた一階の一番高そうな部屋にお邪魔していた。そしてそれから二人でとりとめもない話をしながら酒を酌み交わしている。
とんでもない幕切れとなったこの事件も、一応の解決をみたことになった。この部屋はその褒美というわけだ。女将は何度も師匠に頭を下げた。本当にありがとうございます、と。
和雄のことだけではない、様々な憑き物がとれたような表情だった。代を重ねてもこの地域のよそ者として扱われ、そのことに慣れてしまっていた自分に、今日決別したという顔だった。
最後に「これからも誇りを持ってここで暮らしていきます」とだけ言って、女将は部屋を出て行った。
570未 本編5  ◆oJUBn2VTGE :2012/01/22(日) 00:25:16.59 ID:Gxhfsr1T0
勘介さんもやってきた。遅い夕食はあまり準備ができていなかったので、初日の昨日ほど豪勢とはいかなかったが、その後で酒を飲み始めた僕らに、何度も手の込んだ酒の肴を作ってきては黙って置いていった。不器用な彼なりの感謝と、あるいはお詫びの気持ちなのだろう。
楓は姿を見せなかった。俯いたまま大広間から逃げるように出て行ったきりだ。彼女が負った心の傷は想像するに難くない。それもいつかは時間が癒してくれるのだろうか。ただ、あの無垢な少女が幸せになって欲しいと、それだけを僕は願った。
一番最後に広子さんが僕らの部屋にやって来た。
バツの悪そうな顔をしてモジモジしている。
「和雄の女癖、知ってたんだろ」
師匠にそう言われて、救われたような顔をした。
「あんな街なかの喫茶店で、やましい関係の女と会ってるなんて、脇が甘すぎだっての。お坊ちゃんだね。どうせ知ってる人にはバレバレだったんだろ」
どうやら和雄の女癖の悪さは密かに有名だったらしい。少なくとも広子さんのような情報通の女性たちには。広子さんも楓にそのことを伝えようか迷っていたようだ。
だけど、和雄もいつかは楓の良さに気づいて、心を入れ替えて真剣に付き合うようになるかも知れない。そう思うと、若いその芽を摘んでしまうのに気が引けてしまっていたのだそうだ。
「でもまさか、それがこんな騒動になるなんてね」
広子さんは、心なしかしゅんとショゲながらも、最後は顔のパーツを中央に寄せてニッコリ笑って見せた。
「絶対また来てね」
そうして手を振って部屋を出て行った。
こんな田舎、絶対出て行ってやる、と言っていたその口でそう言うのだ。案外ここの暮らしが好きなのかも知れない。
そして今回も、僕はほとんどなんの役にも立たなかった。助手とは、もっと事件に飛び込んでいって綻びが見えてくるまでかき回す役目ではないのか。なにからなにまで師匠がやってしまっている。
興信所のなけなしのバイト代では泊まれないような宿に二晩も宿泊して、なかば観光ばかりしていた気がする。申し訳ない気持ちだ。ましてこんなクリスマスなんかに、師匠と二人でなんて。
ハッとした。そうだ。今日は二十五日だった。忘れかけていた。
571未 本編5  ◆oJUBn2VTGE :2012/01/22(日) 00:28:05.67 ID:Gxhfsr1T0
そう思って見ると、窓の外に降る雪にも、ジングルベルの響きが聞こえてくるような風情があるではないか。
「ホワイトクリスマスですね」
ぼそっとそう言ったが、師匠はお猪口を片手にほんのり赤い顔をしてカーテンを開け放した窓の外を見ながら、ふん、と鼻で笑った。
「クリスマスってのは、二十四日の日没から始まって二十五日の日没で終わるんだ。言わなかったか?」
そうだっただろうか。じゃあ今はもうクリスマスという特別な時間ではないということか。
なんだか妙な符合を感じた。今夜の暮れ六つで、現世(うつしよ)と幽世(かくりよ)の境界を越えたように、ちょうどその同じころ、クリスマスとそうでない時間との狭間を越えていたのか。
不思議な気持ちだった。
「そういえばあの時、カナヘビだって言ってましたよね」
女将の子どものころの体験談を聞いた後のことだ。あれは足があるかないかの違いだけで、蛇は別の生き物になるということを言いたかったのだろう。
「言ったっけなあ」
師匠はとろんとした目で窓の外に目をやっている。酔いも回り、気分が良さそうだった。
「言いましたよ」
僕も自分の言葉などに大した執着もなく、ただぼんやりとそう返して窓の外を見つめていた。
静かだった。田舎の夜だ。都会ではこうはいかないだろう。
ただ音もなく窓一面の深い闇の中に淡い雪だけが舞っている。
しんしんと。
しんしんと。
遠く、近く。ただ窓を向いた顔だけが冷たい。
僕らは窓辺のテーブルに座り、その名前のない夜の風景をいつまでも眺め続けていた。


          ◇◇◇

572未 本編5  ◆oJUBn2VTGE :2012/01/22(日) 00:30:08.88 ID:Gxhfsr1T0
匂いの記憶というものは不思議なものだ。
すっかり忘れていた過去が、ふとした時に嗅いだ懐かしい匂いにいざなわれて、鮮やかに蘇ることがある。
僕はその人のいなくなった部屋で一人台所に立ち、爽やかな匂いを放つ石鹸をただ握っている。
すべてが輝いていたあのころの記憶が滔々と流れ、そして消えていった。手の届かない過去のどこかの引き出しの中に仕舞われていったのだろう。
蛇口からは水が流れ続けている。それが手の甲を滑るように流れ落ちていく。
追憶の残滓が僕の目頭をくすぐる。しかしそこから水は流れなかった。
『おまえ、強くなったな』
いつか、その人はそう言った。
病室のシーツがやけに白かった。
『もう目が見えないんだ。時計を、見てくれないか』
記憶の再生を、止めた。
強くなんかなっていないですよ。
そう答えたのだったか。
もう忘れてしまった。
蛇口を閉じる。水が出るまでは時間がかかるのに、止まるのは一瞬だ。
しばらく佇んだ後、僕はもう一度石鹸を握った。蛇口を捻り、石鹸を両手で挟み直す。水が流れ出てくるまでの間、僕は両手を擦り合わせる。その人がそうしていたように。
そのわずかな時間。
そっと横目でその光景を見つめていた僕には、祈りのように見えた。
この日本に限らず、世界中のあらゆる民族に雨乞いの風習があった。その作法は様々だ。しかしたった一つ共通していることがある。それは祈りだ。祈りがいつか大地に雨を降らせる。
その間、人は神と、あるいは自然そのものと一体となり、通うはずのない想いを通わせる。
雨乞いの風習があれば、そこには雨乞いを生業とする人々もいる。オカミを祀る神社の守り手たちのように。そうした雨乞い師のことを英語ではレインメーカーと言うそうだ。そしてその言葉には同時に、弁舌以外なにも持たずに大金を稼ぐ弁護士を指し示す、裏の意味もある。
僕は石鹸を擦る。
様々なペテンと、ほんの少しの隠されたな真実を操って短い生涯を駆けてきたその人のことを思いながら。
573未 本編5  ラスト  ◆oJUBn2VTGE :2012/01/22(日) 00:32:03.50 ID:Gxhfsr1T0
『雨乞いなんて、降りそうなときにするもんだ』
帰りの電車の中で窓に頬づえをつきながら、少し笑ってそう言った。その人らしい、と思った。
ささやかな壁に区切られた部屋の外を、車が通る音がする。カラカラと、穴のあいたようなマフラーの音を響かせて。
目を落とし、僕は石鹸を擦る。
祈るように。
爽やかな匂いが鼻腔に広がる。
やがて蛇口からは……



『レインメーカー』完
574本当にあった怖い名無し:2012/01/22(日) 00:32:57.49 ID:yYWRP1e80
ウニ乙!
また来週!!!
575本当にあった怖い名無し:2012/01/22(日) 01:11:22.63 ID:YOQHkFnE0
ウニ乙。
圧倒されました。
576本当にあった怖い名無し:2012/01/22(日) 01:40:19.00 ID:nAKTiVd/0
ウニ乙!
今回も面白かったよ
577本当にあった怖い名無し:2012/01/22(日) 01:47:35.15 ID:0srevac50
雨乞い、神社、オカミ、神社と寺の祈雨、龍、『雨乞いなんて、降りそうなときにするもんだ』の台詞は夢枕獏と岡野玲子の陰陽師から引用しすぎな気がする(読んだことある人なら被りすぎてて速攻分かる)けど面白かったよ
578本当にあった怖い名無し:2012/01/22(日) 05:37:42.47 ID:z/6th5t20
今wiki見たけど、淤加美神の事を初めて知った…
面白かったです。
また来週も楽しみにしています!
579本当にあった怖い名無し:2012/01/22(日) 08:45:54.53 ID:2tpkfVP60
ウニさん、ありがとうです
投下があると嬉しく&楽しく、次回を心待ちにしています(*^-^*)
目が見えなくなってきたのくだりは、切ないですが…
580本当にあった怖い名無し:2012/01/22(日) 09:56:01.01 ID:AN6k4g5gP
おお、ラスト、怒涛の横溝展開でぞくぞくした
タイトル伏せてたのは展開読み防ぐためだったか
雨乞いといえば貴船だもんね

GJ
581本当にあった怖い名無し:2012/01/22(日) 13:34:49.04 ID:9pO5693X0
スレが黒いよw
582本当にあった怖い名無し:2012/01/22(日) 13:55:04.39 ID:4XkXVK8A0
もうすっかり同人・ラノベ作家だな
初期の頃の素朴な師匠シリーズの方が読み物として数段レベルが高い
もうウニ騙るのやめてくれよマジで
583本当にあった怖い名無し:2012/01/22(日) 14:48:24.24 ID:6HrKvSW50
ウニ乙
面白かったぜ
584本当にあった怖い名無し:2012/01/22(日) 17:16:28.74 ID:Y8EeoG/t0
ウニよかったー!
後半好きw
おつー!
585本当にあった怖い名無し:2012/01/22(日) 19:14:31.78 ID:Pzs7Qf9z0
直前に読んだ物の影響判りやすいね
586本当にあった怖い名無し:2012/01/23(月) 11:55:12.01 ID:DJSGZg3n0
和雄の悪さ加減が今ひとつだったと思う。

祖霊が出てこなければならないほどの問題があるとは思えないという点を改善すれば出色の出来だと思う。
587本当にあった怖い名無し:2012/01/23(月) 13:20:20.98 ID:dC+y+zOq0
相変わらず改行全くしないから糞読みにくいわ
ただでさえラノベ風味で読むのかったるいんだから、読み手のこと考えろって
初代ウニは改行もしっかりしてたし、シンプルな文章ながら味わい深い良い書き手だったな

襲名するんだったらせめて初代ウニの様に読みやすくしてくれ
588本当にあった怖い名無し:2012/01/23(月) 15:02:40.21 ID:XOKdIMh4P
関係ないけど1行ごとに空白入れる改行はイラッと来る
589本当にあった怖い名無し:2012/01/23(月) 15:35:56.32 ID:AK+xjJAS0
ウィンドウ幅でなんとかするといいよ>改行

スマホから見てる自分としては段落以外改行しないでいてくれたほうが有難い
590本当にあった怖い名無し:2012/01/23(月) 15:44:16.76 ID:YTpLkyv50
赤緑は行間空けすぎと怒られ
ウニは行間空けろと怒られ
ホンマ難儀なやっちゃで
591本当にあった怖い名無し:2012/01/23(月) 19:35:24.22 ID:gYH661WL0
おk
592本当にあった怖い名無し:2012/01/23(月) 20:22:42.26 ID:XOKdIMh4P
赤緑はポエム系改行多いけど1行改行ほどひどくないよ

ウニは全画面で読んでるのでちゃんと改行してあるのがよくわかる
窓小さくすると却って読みにくかった
593本当にあった怖い名無し:2012/01/23(月) 23:32:53.29 ID:unR8gU+w0
ウニが読みにくいのは全部文頭揃ってるからじゃないだろうか
594本当にあった怖い名無し:2012/01/24(火) 02:59:25.54 ID:ObqGOAhX0
ウゼェな糞がw
ウニは蜘蛛の糸垂らしてニラ落ちだろうな
595本当にあった怖い名無し:2012/01/24(火) 03:21:28.34 ID:ObqGOAhX0
>>593
短編で良いから一本書いて、見本見せてくれ。
待ってる
596本当にあった怖い名無し:2012/01/24(火) 19:08:01.21 ID:MZpTf5fx0
 そう思って見ると、窓の外に降る雪にも、ジングルベルの響きが聞こえてくるような風情があるではないか。
「ホワイトクリスマスですね」
 ぼそっとそう言ったが、師匠はお猪口を片手にほんのり赤い顔をしてカーテンを開け放した窓の外を見ながら、ふん、と鼻で笑った。
「クリスマスってのは、二十四日の日没から始まって二十五日の日没で終わるんだ。言わなかったか?」
 そうだっただろうか。じゃあ今はもうクリスマスという特別な時間ではないということか。
 なんだか妙な符合を感じた。今夜の暮れ六つで、現世(うつしよ)と幽世(かくりよ)の境界を越えたように、ちょうどその同じころ、クリスマスとそうでない時間との狭間を越えていたのか。
 不思議な気持ちだった。
「そういえばあの時、カナヘビだって言ってましたよね」
 女将の子どものころの体験談を聞いた後のことだ。あれは足があるかないかの違いだけで、蛇は別の生き物になるということを言いたかったのだろう。
「言ったっけなあ」
 師匠はとろんとした目で窓の外に目をやっている。酔いも回り、気分が良さそうだった。
「言いましたよ」
 僕も自分の言葉などに大した執着もなく、ただぼんやりとそう返して窓の外を見つめていた。
597本当にあった怖い名無し:2012/01/24(火) 19:16:06.33 ID:XC4gUqcE0
>>596
ウニ乙
598本当にあった怖い名無し:2012/01/24(火) 19:58:30.89 ID:cCv9CoAC0
あれ?何か読みづらいw
個人的にベストは赤緑フォーマットかな?
599本当にあった怖い名無し:2012/01/24(火) 20:00:19.04 ID:cCv9CoAC0
>>598
赤緑乙

>>599
違うわヴォケ


・・・と自分でやっておくw
投稿の仕方も個性だとおもうし、投稿者がベストと思うやり方でいいんじゃないかな〜↑
600本当にあった怖い名無し:2012/01/24(火) 20:04:57.88 ID:P45vmi6s0
問題は初期のウニは行間を適度に開けて読みやすかったのに対して、今のウニは行間全く開けずに長文で読みにくくなってるということ

読むのに疲れるんだよなあ。レス番が多いと萎える。
601本当にあった怖い名無し:2012/01/24(火) 20:49:50.31 ID:o5Vwh1290
あれだけ文章量あったら仕方ないだろ
602本当にあった怖い名無し:2012/01/24(火) 22:41:36.73 ID:MZpTf5fx0
Pixivで読めばええんや
603本当にあった怖い名無し:2012/01/24(火) 22:52:36.12 ID:P45vmi6s0
文章量多いから、行間開けないと読みにくいつってんだろ
頭わる
604本当にあった怖い名無し:2012/01/24(火) 23:05:32.12 ID:TwYmalMc0
読みにくいとかそんなこと意識せず、普通に読んでしまっていた
Pixivは横幅狭くて行間広いから読みやすい
605本当にあった怖い名無し:2012/01/24(火) 23:14:48.09 ID:MZpTf5fx0
まあ確かに>>602だけじゃわかりにくいかもしれんが、せめて自分で見てから言ってくれ
606本当にあった怖い名無し:2012/01/25(水) 01:30:56.59 ID:7LzN198o0
読みにくいとかwどれだけゆとりなんだか。
自分に会わないなら、読むなよ。
小学校の教科書でも読んでろ
607本当にあった怖い名無し:2012/01/25(水) 03:50:30.39 ID:FDQddSax0
段落分けはともかく行間隔はcssや専ブラのスキンで各々調整する時代だよね
608本当にあった怖い名無し:2012/01/25(水) 04:59:16.45 ID:MbQtuxUb0
>>606
教科書すら読めなさそうだ
609本当にあった怖い名無し:2012/01/25(水) 14:10:21.57 ID:pEHFjA4r0
読みにくいからゆとり?
あほじゃねーかこいつ。読みにくいものに学歴関係ねーよばーか
段落分けしてる読み物と比べたらウニのは読みにくい。それだけ。相対評価もできないカスが

自分に合わない?
誰か言ったか?拡大解釈氏ね

てめえで調整しろ?
その時点でアウトだろ。お前の環境が全てだと思ってるのか?そんなものは提供する側が調整するもんだ
610本当にあった怖い名無し:2012/01/25(水) 14:12:09.73 ID:pEHFjA4r0
>小学校の教科書でも読んでろ

>教科書すら読めなさそうだ

煽りが消防並みの酷さww
ホントお前ら筋金入りの信者だな
611本当にあった怖い名無し:2012/01/25(水) 14:35:21.80 ID:nKWoWGZl0
>>610
ここはあなたの滑稽な姿を披露する場所ではないので自重して下さい。
612本当にあった怖い名無し:2012/01/25(水) 18:53:41.46 ID:rXlMzYVK0
暴れてる人の言葉つきは問題あるけど、読み手が合わせろっていう儲論理が痛々しいってのは一理ある。
盲目的過ぎてちょっと怖いよ。
613本当にあった怖い名無し:2012/01/25(水) 19:05:33.76 ID:DtQUsn610
読みにくいけどここで暴れるほどじゃない
614本当にあった怖い名無し:2012/01/25(水) 20:17:01.09 ID:k1flBw1U0
>>612
作者が不特定多数に合わせるのは_ってだけデスヨー
615本当にあった怖い名無し:2012/01/26(木) 14:20:44.61 ID:4tM55Xa7O
合わせる気が無いのと合わせられないは別物だろ
616本当にあった怖い名無し:2012/01/26(木) 19:13:34.34 ID:tQMzmg1P0
別でも俺らに取ったら同じだよな
617本当にあった怖い名無し:2012/01/26(木) 20:23:04.96 ID:e3GLTykd0
いやなら読まなけりゃいい。それだけ。
その分だけ自分がいいモノを読めなくなる。そういうことさ。
618本当にあった怖い名無し:2012/01/26(木) 21:44:46.79 ID:ZGkuNb/G0
おk
619本当にあった怖い名無し:2012/01/26(木) 23:42:55.63 ID:QOTC2pnX0
くだらない
620本当にあった怖い名無し:2012/01/27(金) 00:57:06.58 ID:9/khiN9Z0
ひょ っ ほ う
621本当にあった怖い名無し:2012/01/27(金) 12:34:57.36 ID:SVo0rrzJ0
だーれも嫌だとは言ってないのにねえ
作品自体の批判してる訳でもないのに、読んでるからこその不満なのが分からないのか
つかウニはなにかポリシーがあって段落分けしないのか?
適度に1レスにつき3つほどに分けるだけの簡単な作業なのに
意外と外野からなんやかんや言われるのが嫌な性格なんだろう

擁護してる奴は小説とか読んだこと無いのか?場面展開などでは開けるのが当たり前
開けなかったら編集にダメ出しされるだろ
あと、読み手があわせろよ、と言ってる奴いるけど、俺はそんな方法知らんぞ
専ブラ使ってるけどそんな機能あることも知らん。大多数の人間も知らんだろ
622本当にあった怖い名無し:2012/01/27(金) 18:59:44.74 ID:lMUhVDA80
嫌じゃないなら黙ってればいいのに……
623本当にあった怖い名無し:2012/01/27(金) 19:59:42.28 ID:ShkpOCeT0
もうモンペだな
624本当にあった怖い名無し:2012/01/28(土) 01:13:34.22 ID:7u0j4E6+0
>>621
言いたい事は解った。
まず君の文章が、読みにくいのはどうすれば良いのか?
625本当にあった怖い名無し:2012/01/28(土) 01:44:48.84 ID:SV2JBXvm0
小説の読者側(読んだことないのか?)から創作側(編集にダメ出しされる)に視点がシフトしてるんだから段落分けくらいしたら?
626本当にあった怖い名無し:2012/01/28(土) 02:13:10.67 ID:txkfee3gP
批評家は書き手じゃないけど批評するよね
それと一緒

知り合いが小説教室通ってた時の話だけど
小説の先生は批評するようになってから小説書かなくなったらしい
書くより出来合いのもの批評する方が楽だし、教室では上から目線で気持ちいいんだろう

それを間引いても読み専であるヲタが突っ込みいれるのは普通
それはもう殆ど本能だからしょうがない

>開けなかったら編集にダメ出しされるだろ
しかしアマチュアの無料でレスしてる人に
頼まれてもいないのに俺が編集気取ってやんよは逝き過ぎ
そんな印象
627本当にあった怖い名無し:2012/01/28(土) 12:04:33.96 ID:ZJWI6mcK0
同じような議論がされた事あるけど、ウニは以前改行とか拘ってやってた。
けどそれやると投下するまでに凄い時間かかるから、改行とかしなくていいか?と聞きに来たことがあった。
それに対し、早く読みたいからやらなくていいと言ったのがここの住人だ。
自分達で撒いた種子に文句言ってんじゃねーよ。
628本当にあった怖い名無し:2012/01/28(土) 13:45:53.52 ID:1e7P1Kwv0
>>627
自分それ知らないけどいつ頃の話?
その時と住人が入れ替わっているのかも知れないよ
自分もウニは読みにくくて一度メモ帳に貼ってから読んでるクチだが、大した手間ではないかな
629本当にあった怖い名無し:2012/01/28(土) 16:41:32.26 ID:rEaeIkpu0
>>627
あ〜〜〜〜あったあった
正当性はウニに有る
この上更にイチャモンつけるのはただのクレーマー
即ちウニを叩きたいだけの荒らし
以降スルーで
630本当にあった怖い名無し:2012/01/28(土) 21:11:50.07 ID:QJIS1zJH0
>>627
お前それ間に受けてんの?

何故その話題になったかというと、初代ウニは適度な改行で読みやすかったのに、トリップつけ出した「2代目ウニ」は
改行もしないうんぬんになって成りすまし疑惑が出たんだよ
で、その疑惑を打ち消すようなウニの回答が>>627なわけだけど、どう考えても改行によって投下時間がかかるというのは嘘だろ
拘ってるって誰が言ったんだ?
昔のウニの作品読んでみろ。適度な改行という感想以外になんかこだわり感じるのか?

成りますしがバレそうになったから取ってつけたような言い訳しただけだろ
もともと改行なんて気にしない質だったんだろ。まさか初代ウニとの違いを指摘されるとは思わなかったんだろうよ
何でも作家様の言うことに対してイエスばかり言う信者持つとこうなる

631本当にあった怖い名無し:2012/01/28(土) 21:18:28.52 ID:QJIS1zJH0
>それに対し、早く読みたいからやらなくていいと言ったのがここの住人だ。
自分達で撒いた種子に文句言ってんじゃねーよ。

此処の住人だ?
ウニの信者だ○

その時も改行について不満があったからその話題になったのに、やらなくていいという意見だけを取り上げて住人の総意と取るとかありえねえ

お前らウニがこのシリーズは実話です、と断言したからそれを信じてるんだろww
成りすましじゃない、という言葉を信じてるんだろ?
今だに断筆宣言から何故再開したのか説明もないのに
632本当にあった怖い名無し:2012/01/28(土) 21:42:20.77 ID:EwWZrYtjO
改行してもしなくても読めればおk
633本当にあった怖い名無し:2012/01/28(土) 23:08:29.62 ID:4h8DqSsXO
ならpixivに張り付いてれば解決だな
634本当にあった怖い名無し:2012/01/29(日) 02:11:09.54 ID:QysHf4MD0
何か家庭板みたいだw
トメトメしいw
635本当にあった怖い名無し:2012/01/29(日) 02:57:16.26 ID:5vw5qOQJ0
必死だなwww

読み手としては初代だろうと偽だろうと楽しめればそれでいいんだがんねぇ・・・
636本当にあった怖い名無し:2012/01/29(日) 11:33:13.32 ID:iIahJua5O
赤緑は過去から現在に至るまで内容に関して一切触れられないから本当に可哀想になってきたw

読んでる奴って本当にいるの?
ちなみに俺は読んでないw
637本当にあった怖い名無し:2012/01/29(日) 14:54:33.39 ID:eSXvm4/00
お前ら赤緑に失礼だと思わないの? まあ俺も読んでないけど
638本当にあった怖い名無し:2012/01/29(日) 15:15:09.78 ID:/W1nsR+20
俺も読んでないwめんご
639本当にあった怖い名無し:2012/01/29(日) 18:41:00.73 ID:H5EvX40+P
読んでるけど話を締める気が無いのかなとは思う
登場人物達の親戚知り合い一族郎党出してきて
長期連載漫画における新キャラで場を持たせ続けた結果、
飽和状態になり新規に読む人には辛い内容になってしまっている
話の落ちとかもうあきらめた

シリーズものはそうなってしまう傾向があるので仕方ないけど
マサさんは例外的に事件簿なので基本さえ抑えれば一話完結でどこからでも読めるな
640本当にあった怖い名無し:2012/01/29(日) 21:17:29.17 ID:puAvpMDj0
赤緑って勘違いしてるよな
アンチもいるけど読んでる人がいるから続けてる!って思ってるんだろうけど、実際にはファンもアンチもいない。
読んでる奴がいないだけw
641本当にあった怖い名無し:2012/01/29(日) 23:24:13.67 ID:kxUppbaH0
ウニの次は赤緑が標的か
642本当にあった怖い名無し:2012/01/30(月) 09:20:00.92 ID:7cUcDMcb0
赤緑なんて読んでないんだから!
でも悔しい気になっちゃうビクンビクン
643本当にあった怖い名無し:2012/01/31(火) 03:18:13.46 ID:MadY5mUs0
標的というか赤緑は単純につまらない

このスレじゃなく2以外chの場所で書いてもよさそうな内容というのが率直な感想
延々と書き綴られて不快に思う奴がいるのを赤緑も少しは自覚した方が良いと思うぞ
644本当にあった怖い名無し:2012/01/31(火) 03:20:34.69 ID:MadY5mUs0
すまんミスった
×2以外ch
○2ch以外
645本当にあった怖い名無し:2012/01/31(火) 04:24:50.75 ID:A7pHfbMY0
っ不快なら専ブラ
646本当にあった怖い名無し:2012/01/31(火) 11:05:10.37 ID:dRRxyjXhP
読む人や読まない人の為にみんなコテ付けてくれてるんじゃないか
647本当にあった怖い名無し:2012/01/31(火) 15:57:44.40 ID:Y8/GXZUqO
全くだな
648本当にあった怖い名無し:2012/01/31(火) 16:30:59.11 ID:S7u+Os3M0
つまらないし不快(キリッ
くやしい…!でも…読んじゃう!
649本当にあった怖い名無し:2012/01/31(火) 18:04:22.68 ID:zygiIwQN0
1chとか3chとか10chとかあったなあ
650本当にあった怖い名無し:2012/01/31(火) 18:04:40.91 ID:zygiIwQN0
いや、読んでないんじゃないの?
651本当にあった怖い名無し:2012/01/31(火) 19:38:09.63 ID:S7u+Os3M0
読んでないなら不快でもないしつまらんのも分からんと思うがね
お前の存在そのものがうっとおしいってんなら単なるイチャモンであり即ち赤緑を叩きたいだけの荒らし

ちなみに俺が心底不快と思ったのは忍シリーズ
話じゃなくて忍ってひととなりそのものに
事の顛末に興味があったから不快と思いつつ読んだが、不快だから改めろとか想像もつかないね
652本当にあった怖い名無し:2012/01/31(火) 19:40:17.94 ID:S7u+Os3M0
ちなみに俺がつまらないと思ったのはマサさんシリーズ
読んでないからどうでもいいけど
俺が読んでないから書くな、つまらないと思う奴がいるから書くなってのはマジキチの発想

自分語りスマソ
マジキっちゃんだったらどうにもならんけど、好意的に解釈してやろうず
653本当にあった怖い名無し:2012/01/31(火) 20:29:46.23 ID:NMLbH5De0
マサさんオモロー
654本当にあった怖い名無し:2012/01/31(火) 22:34:13.81 ID:zygiIwQN0
いや、だから読んでつまらなかったから読まないようにしてるんじゃないの?
655本当にあった怖い名無し:2012/01/31(火) 23:30:54.12 ID:dRRxyjXhP
「つまらないと思う奴がいるから書くな」

あー、職場によくいるいる
「みんな」が迷惑している
「みんな」が言ってたよ
「みんな」そう思ってる

他人を引き合いに出すけど「みんな」が誰なのか具体的に出せないんだよな
出したとしても1人か2人でそれが「みんな」
正直に俺が不快だからと言ってる奴より姑息な感じがする
656本当にあった怖い名無し:2012/01/31(火) 23:56:23.60 ID:lDsSwTDT0
君が代に対する某連中の反応と同じでもある。
657本当にあった怖い名無し:2012/02/01(水) 01:23:26.04 ID:uCo1rHsN0
俺がいるぜ
658本当にあった怖い名無し:2012/02/01(水) 01:32:18.84 ID:XGlkg9430
ここ迄、イヤまだまだ読み飛ばしておk
659本当にあった怖い名無し:2012/02/01(水) 21:04:04.13 ID:THAdp6NN0
おk
660本当にあった怖い名無し:2012/02/01(水) 21:07:19.24 ID:THAdp6NN0
おk
661本当にあった怖い名無し:2012/02/02(木) 17:16:37.71 ID:vip6rySz0
りん
りん
りん
・・・
プッw

ウニの話に出てくる女ってみんなアレに似てるよ
「避妊しなくていいから・・・」
この殺し文句で保険金とりまくった女
文章ゴミすぎて登場人物像がかなりナゾだけどたぶん女ならブスでイッテるよね
たとえば加奈子さん?
662本当にあった怖い名無し:2012/02/02(木) 17:29:18.09 ID:vip6rySz0
あと浅学のくせに京極とかのスタイルマネしないほうがいいよ
滑稽通り越して痛く見苦しい

りん・・・

りん
りん
りん

はやく自分のスタイルを手に入れられるとイイネ

りんりんりん!
663本当にあった怖い名無し:2012/02/02(木) 18:46:59.83 ID:QkaSSWKY0
ハンドル入れ忘れてるのかな
664本当にあった怖い名無し:2012/02/02(木) 19:25:09.81 ID:VTtts2Iu0
赤緑が?
665本当にあった怖い名無し:2012/02/02(木) 20:47:21.95 ID:FmI3bmq00
師匠は唯一楽しみに待てる
ジャイアンツの続きも
666本当にあった怖い名無し:2012/02/02(木) 20:59:59.56 ID:KhgVFtgP0
おk
667本当にあった怖い名無し:2012/02/03(金) 01:25:46.21 ID:VwqPaU7v0
まだまだ読み飛ばしておk
668本当にあった怖い名無し:2012/02/03(金) 19:42:43.14 ID:TLb1arO10
京極読んだあとにウニ読むとほんと稚拙だと痛感するよな
なまじっか似てるから余計に感じる
669本当にあった怖い名無し:2012/02/03(金) 20:01:52.42 ID:vK2P19nk0
そこはプロとアマの差でしょ
ただで読んでるんだから、その水準で楽しめたらそれでいいよ
670本当にあった怖い名無し:2012/02/03(金) 21:29:54.45 ID:j8PqAhAL0
京極もタダで読めるじゃん
671本当にあった怖い名無し:2012/02/03(金) 21:58:25.23 ID:7z10vwT70
しかしわざわざ嫌いで見下してるもの読んで文句つけるってのも中々出来ないことだぜ
暇なんだろうな
672巨人の研究  前編  ◆oJUBn2VTGE :2012/02/03(金) 22:00:55.87 ID:WiPg9lRs0
師匠から聞いた話だ。


大学二回生の夏。ある寝苦しい夜に、所属していたサークルの部室で数人の仲間が集まり、夜通しどうでもいいような話をしてだらだらと過ごしていた。
酒も入っていたし、欠席裁判よろしく嫌いな部員の話や色恋沙汰に関する話が主だったが、その中である同い年の女の子がふいに流れを断ち切って、こんな話を始めた。
「そういえば、このあいだ変なもの見たんだよね」
「変なって、どんな」
「なんていうか、小人?」と自分で言いながら小首を傾げている。
彼女が言うことには、数日前の夕暮れ時に街を歩いていると急に雨が降ってきたのだそうだ。傘を持っていなかった彼女は慌てて雨が避けられる路地裏に駆け込んだ。
そしてすぐに止みそうかどうか、空模様を気にしながら往来の方を眺めていると、足下になにかの気配を感じて飛び上りそうになった。
ネズミかと思ったのだ。ところがよく見ると、ゴミの収容ボックスの陰にいたのは小さな人間だった。体育座りのような格好で無表情のまま前を向いてたたずんでいる。
大きさは自分の手のひらくらいだろうか。白いシャツと青いズボン。おカッパ頭の若者のような容姿。そのあたりは薄暗くてはっきりとは見えなかったけれど、人形とは思えなかった。ぼそぼそと口元が動いているようにも見える。
身体は凍りついたように動かない。真横にいる小人のようなものへ視線だけを向けていると、眼球を動かす筋肉が疲れて鈍い痛みがやってくる。
私が気付いているということに小人が気付いたら、いったいどうなるのだろう。
そう思った瞬間、どうしようもなく恐ろしくなり、雨が降り続いている道路へ向って後ろも見ずに駆け出した。
「怖かった、ほんと」
心なしか青ざめた顔で話し終えた彼女へ「人形が捨てられてただけだろう」という突っ込みが入ったが、「あれは人形じゃなかった」と繰り返した。
理由は直感だそうだ。
周りもそれ以上追及せず、「なんだかわからないけど、気持ち悪いな」という空気だけが漂っていた。
「そう言えば私も見た」
別の女の子が口を開く。
「夜中の十二時過ぎくらいだったと思うけど、バイト帰りにいつもの道を通ってたら変な声が聞こえてきてさあ」
673本当にあった怖い名無し:2012/02/03(金) 22:03:22.80 ID:pkuHUugo0
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
674巨人の研究  前編  ◆oJUBn2VTGE :2012/02/03(金) 22:04:35.71 ID:WiPg9lRs0
そうして身振り手振りで説明してくれたところを要約すると、こういうことらしい。
一週間ほど前のバイト帰りでのこと。自転車で住宅街を通り抜けていると、急に前方から人の話し声が聞こえてきた。
小さな声だったが、それらしき人影が見当たらないので妙に気になり、キョロキョロとしながらペダルをこぐスピードを落とすと、「ビン」「ビン」という単語が耳に入ってきた。
ビン?
コーラの空きビンとかのビンだろうか。そんなことを思いながら聞こえて来た方向を見るが、民家の玄関があるばかりでやはり人の姿はない。
恐る恐る近づいて行き、遠くの電信柱に取り付けられた電灯の明かりにうっすらと照らされているブロック塀に添って、その向こう側を伺う。
中庭を隔てた敷地の中には明かりのついた部屋の窓がいくつか見えるが、玄関の門扉のあたりにはまったく人の姿はない。身を乗り出してブロック塀の内側を覗き込んでみたが、やはり誰も潜んではいなかった。
おかしいなと思いつつ、立ち去ろうとするとまた「ビン」「ビン」という小さな声が聞こえてくる。ぼそぼそとしたその話し声の中に「コーヒー」という単語も混じっている。
気持ちが悪くなり、もう帰ろうと自転車に足を向けかけた時、ブロック塀の上に取り付けられた木箱が目に入った。前面に飲料会社のマークが付いている。牛乳の配達をしてもらっているらしい。
ビンとはこのことだろうかと思って近づくと、「ビン」「コーヒー」というぼそぼそとした声が、その木箱のあたりから聞こえてくる。
ぞっとしながらも、好奇心に負けて手を伸ばすと、木箱の上蓋は何の抵抗もなく開き、その瞬間に声がぴたりと止まった。
木箱の中には牛乳ビンが二本、封をされたまま残されていて、そのビンと木箱の間のわずかな隙間に小さな顔が二つ覗いていた。
その二つの顔は呆けたような目を彼女の方へ向けている。
悲鳴を上げて彼女は逃げ出した。
「ホントにほんと。小人がいたんだって。箱の中に」
語り終えた彼女へ、牛乳ビンの他になにか別のものも入っていて、それが顔のように見えたのではないかという疑問がていされたが、彼女はあくまでも見間違いではないと主張した。
家の人が取り忘れたのであろう牛乳ビンについて、夜中小人がなにごとか話し合っていたというのか。奇妙な話だ。
675巨人の研究  前編  ◆oJUBn2VTGE :2012/02/03(金) 22:09:42.33 ID:WiPg9lRs0
「それに顔見る前に声が聞こえてたし。ビン、ビンって」
「でもそれって、配達用の箱が先に目に入ってたから聞こえた幻聴じゃないの」
「なんで。ビンだけじゃなくてコーヒーとかも言ってたし。コーヒーってなんだろうって思ったもん。それで箱の蓋開けたら、牛乳ビンが二本あって、片方色が違うんだよ」
「え?」
周りの仲間が気味の悪そうな声を出した。
「だから、片方コーヒー牛乳だったんだって」
なるほど。箱を開けるまで知りえなかった情報があらかじめ示されていたわけだ。幻聴だと言っていた一人も薄気味悪そうに黙り込んだ。
「実は僕もこの間……」
それまで黙って聞いていた男が手を挙げたかと思うと、おずおずと話し始めた。
数日前、真夜中に部屋に一人でいたとき、ふいに誰かの視線を感じて、思わず「誰だ」と口にしたものの、誰もいるはずがないと苦笑した。その直後にまた誰かの視線を首筋に感じる。刺すような視線。
うそだろう、と思いながら視線の感じる先に恐る恐る近づいていくと、本棚の後ろに女の横顔が見えた。
顔の左半分だけが壁と本棚の隙間から覗いていて、眼だけがギョロリとこちらを見ている。そんな隙間なんて、あっても一センチか二センチだろう。
彼は叫び声を上げて、近くにあった雑誌を顔に投げつけた。壁にあたってずるずると落ちる雑誌の向こうに妙にくすんだ肌色がまだ見えた気がして、喚きながら雑誌と言わずそこらにあったものを手当たり次第に投げつけた。
何も投げるものがなくなったころ、荒い息を吐きながらそちらを見ると、もう顔は見えなくなっていた。彼は本棚に全身を預け、わずかな隙間もなくなるように壁に向って力いっぱい押し付けた。子どものころに祖母に習ったうろ覚えのお経を唱えながら。
「それからその顔、出たの?」
「いや、その時だけ。でもあんなの見ちゃったら寝てられないよ。引っ越そうかなあ」
「そういや、私も友だちに聞いたんだけど、つい最近……」
そうしてその後も、小人やありえないほど狭い場所で人の姿を見たというような怪談話が口々に語られていった。
本人が体験したという話は最初の三人だけだったけれど、これほど似たような体験談が溢れ出てくると気味が悪い。
676巨人の研究  前編  ◆oJUBn2VTGE :2012/02/03(金) 22:10:53.89 ID:WiPg9lRs0
僕は黙って相槌を打っているだけだったが、どれも最近の話だということに引っ掛かりを覚えていた。
あえて口に出さなかったが、実は自分自身も三日ほど前に小さい人を見ていた。夕食後に近所を散歩していた時のことだ。
最初は子どもかと思ったが、道路に倒れこんで足をバタバタとさせていたのに、通行人の誰もがそちらを見ようともしていないことと、子どもにしても小さ過ぎるので、これはこの世のものではないと直感した。
小人は苦しげにもがいていたが、やがてずぶずぶと沈み込むようにアスファルトの中へ頭から消えていった。
自分の経験上、夏は特に霊感が高まる季節なので色々と奇妙なものを見てしまうのだが、小人のような霊を見てしまうことはあまり記憶になかったので、強く印象に残っていた。
(師匠に話してみるか)
友だちの体験談から、だんだんと誰から聞いたのかも分からないようなあいまいな噂話の類へランクが落ちて行っているにも関わらず、ますます盛り上がりを見せる即席怪談話大会を尻目に、僕はオカルトに関して師事している人の顔を思い浮かべていた。



その翌日のことだ。
正午を回ったころに、僕は自転車を駆ってある家を訪ねた。昨日サークルの部室で聞いた怪談話について、こうした出来事に造詣の深い自分の師匠ならどう思うだろうかと、意見を拝聴しに来たのだ。
ボロアパートの部屋の前に立ち、ノックをしたが反応がない。念のためにしばらく叩いていると代わりに隣の部屋のドアが開き、住人が顔を出して「お出かけのようです」と教えてくれた。
礼を言ってもう一度自転車に跨る。今日が土曜日だったことを思い出し、この時間ならあそこだろうとあたりをつけてハンドルを切った。
スピードを上げるとアスファルトで熱された空気が巻きあ上がるように頬にまとわりつくが、じっとしているよりもまだ心地が良い。
やがて目的の公園が見えてきた。公園と言ってもちょっとした球技ができる程度の広さがあり、大勢の子どもたちの掛け声が聞こえてくる。
「腰落とせ、おらぁ」
その声に混じって、子どもではない人の声が一際大きく聞こえてきた。
677巨人の研究  前編  ◆oJUBn2VTGE :2012/02/03(金) 22:14:46.36 ID:WiPg9lRs0
公園の球技用フェンスの前に自転車が止まっている。近づいてみるとやはり師匠のものだった。
フェンスの向こう側では、小学生と思われる十人以上の子どもたちがグローブを手に、土のグラウンドの上を転がりまわっている。
「セカンドどうしたっ、カバーが遅いぞ」
また大きな声を出しながら、金属バットで強烈なゴロを打っている女性がいる。師匠だ。
次々と放たれる白いボールに子どもたちが飛びついて行く。その瞳には、やる気に燃える鋭い光が……ない。うんざりしたような暗い表情で彼らは自分の身体を叱咤するように動かしている。
怒鳴られるから仕方がない。そんな雰囲気がありありと見とれる。
「何度言ったらわかるんだ。手で取りにいくな。腰落として身体で取るんだよ!」
子どもたちのイヤイヤ感などおかまいなしに容赦なくノックは続く。
師匠はその昔、少年野球で男の子に混じって活躍していたことがあるそうで、毎週土曜日にここで野球あそびをしていた子どもたちのふにゃふにゃした動きを見るにつけ、居ても立ってもいられなくなり、昔取った杵柄で金属バットを手にコーチを買って出たのだ。
もちろん子どもたちは喜んでいない。この変なお姉さん、早く帰ってくれないかな、と内心思っているに違いない。
彼らにはユニフォームもない。本当にただの野球遊びであり、どこかの少年野球チームと練習試合をするあてもないのである。
その彼らに、師匠はバントシフトやヒットエンドランなど、無意味と言っていい練習をさせている。
このあいだなど、ライナーをとっさのグラブさばきでみごとに捕球した遊撃手に対して、「落してゲッツー狙いにいけるタイミングだろうが!」などと怒鳴っていた。かわいそうに。
そんな無駄に高いレベルを求めるのであれば、コーチとしてチームの体裁を整え、保護者からお金を集めて、ユニフォームを作り、近隣の少年野球チームに話をつけて練習試合の一つや二つ段取ってあげるのが筋だと思うのだが。
彼女はそうしたことには無頓着で、ひとしきり身体を動かすとそれに満足して「少し休憩」ではなく「あとはやっとけ」と帰ってしまうのだ。完全に自己満足である。
子どもたちもある程度の時間我慢していれば、この変なお姉さんは帰ると分かっているので、口答えもせずに嫌々ながらも従っているようだった。
僕はなぜか申し訳ない気持ちでグラウンドの方へ近づいていった。
678本当にあった怖い名無し:2012/02/03(金) 22:14:59.22 ID:pkuHUugo0
(゚∀゚)wktk
679巨人の研究  前編  ◆oJUBn2VTGE :2012/02/03(金) 22:26:25.59 ID:WiPg9lRs0
その時、師匠の自転車のカゴに一冊のノートが入っているのに気がついて足を止める。
ノート?
近づいて手に取ると、それはどこにでもあるキャンパスノートで、表紙には『巨人の研究』と黒のマジックで書いてある。
そんなに本気かよ。
プロ野球チームの戦術だか技術を小学生に叩き込む気か、と呆れてしまった。
「よおし、かなり動きが良くなったぞ。もう帰るから、あとはやっとけよ」
良く通る声で爽やかにそう告げると、師匠はタオルで汗を拭きながらこちらに引き上げてきた。「ぁしたー」という、嫌に空虚な合唱がその背中を追いかける。
振り返りもせずに右手をひらひらと振って応える師匠は、前に僕が立っているのにようやく気付いたようだ。
「どうした。お前もやりたいのか」
「遠慮しておきます」
師匠は僕のそばまでやってくると、ジャージの土ぼこりを払いながら、腹減ったと呟く。
「昼、まだですか」
「ああ。一緒に食うか。家にもらいものの素麺があるぞ」
軽く食べてきてはいたが、せっかくのお誘いなので御相伴にあずかることにする。
「それにしても、ジャイアンツの研究をするのは勝手ですけど、子どもで試すのはやめてくださいよ。そもそも巨人ファンでしたっけ?」
「なに言ってんだ。こちとら子どものころから阪神ファンだけど………… って、ああ、これのことか」
師匠は吹き出しそうになりながら自転車のカゴからノートを取り出した。
「巨人って、ジャイアンツのことじゃないよ」
笑いながら言う。
「じゃあなんですか」
「お前、そのことで来たんじゃないのか」
「は?」
「小さい人を見たって話だろ」
ゾクリとした。
さっきまで笑っていた師匠の目が、一瞬でこちらの目の奥を透視するような鋭さを帯びた。
「どうして分かるんです」
「そこまでの鈍感野郎じゃないと、期待していたから」
師匠は自転車に跨った。
680巨人の研究  前編  ◆oJUBn2VTGE :2012/02/03(金) 22:29:30.38 ID:WiPg9lRs0
「いつくるか、いつくるかと待ってたんだけどな。ジャイアンに空地へ連れ出されたのび太を、家で待っているドラえもんみたいな心境で」
まあ、家で話そう。腹減った。
そう言って師匠は自転車をこぎはじめた。僕はショックを受けたまま、それでもついて行こうと後を追いかける。
なんだ、この人は。
出会って以来、何十回、何百回目かも分からない言葉を呟きながら。



二人して大皿に盛られた素麺を食べつくし、ようやく人心地がついたと言ってあぐらをかく師匠に「こんなに沢山どうしたんです」と、まだ残っている素麺の束のことを問うと、「消防団に差し入れがあってな」という答えが返ってきた。
この人は学生だというのに、地元の消防団に所属しているのだった。それも副班長だというのだから、あらためてそのバイタリティには驚かされる。
「で、そっちの話から聞こうか」
師匠が麦茶を二つのコップに注ぐ。
僕は昨日部室で聞いたことをすべて話した。そして自分の体験談も。黙って聞いていた師匠は「それが昨日の話か」と確かめるように言って、このカスが、という顔をした。
「このカスが」
言われた。
気づいたのがようやく昨日とは遅すぎる、と言いたいようだ。
「お前は親殺しの夢の時にも前科があるからな」と付け加える。
その時のことは後から聞かされていた。今年の夏の初めに、この街の多くの人が自分の親を殺す夢を見たのだそうだ。
僕もそのころ何度かそんな夢を見た気はするのだが、あまり気にせずにいたので、本気で危機感を覚えて原因究明に奔走したという師匠に散々こき下ろされたのだった。
しかし、そのことと小人を見たという話に何の関係があるというのか。
681巨人の研究  前編  ◆oJUBn2VTGE :2012/02/03(金) 22:33:16.26 ID:WiPg9lRs0
「いいか。小さい人を見るという怪談はよくありそうだが、怪談話全体の比率からすると少ない。それは幽霊というよりも妖怪的な存在だからだ。
なぜなら、日本人の持つイメージの中で、死者の霊の現れ方としては一般的ではないから。小人を見たという怪談には、因縁話がからむことが少ない。
幽霊を見たという話には、それが幻覚にせよ何にせよ、前提として死者への畏敬という『原因』が存在することが多い。ところが小人を見たという怪談には、見てしまった、という『結果』しかない。
小人の姿でヒトのようなものが現れる必然性など、普通はないから。やはり幻覚にせよ、何にせよ、だ」
師匠は麦茶を一息に飲んで、カツンと音を立ててコップをテーブルに置く。
「まあ、なにが言いたいかと言うとだ。因縁話という『原因』があれば怪談は自然に発生するものだ。それがない小人目撃談はどうしても数が少ないんだよ。
もちろん古来から続く、妖怪もしくは妖精的な存在という、それ自体が正体であり因縁となった小人伝説はある。東北の座敷童やアイヌのコロポックル、徳島の子泣爺。一寸法師や桃太郎に代表される童子型の英雄譚も小人の一種だ。
遠く異朝をとぶらえば、ドワーフやレプラコーン、取り替えっ子をするピクシー、グレムリン効果で知られるグレムリンとかも小人だな。もちろんその手前に妖精という括りがまずあるけど。
ただこれらはもちろん、現代において頻繁に目撃されるようなものじゃない」
「それはそうでしょう。座敷童なら今でも出るって噂の旅館とかありそうですが」
「そう言えば、旅館の座敷童の絵がまばたきするっていう恐怖映像があったな。まあそれはともかく、問題なのは小さい人を見たという話がここ最近増えているってのが、いかに異常な事態かってことだ」
師匠は右手で受話器を持つような仕草をする。
「実話って触れ込みのくだらない怪談ビデオを作ってるディレクターに知り合いがいるんだが、電話で訊いてみても特に最近そんな傾向は見られないとよ。少なくとも関東近辺では。予感はしてたが、恐らくこの街だけで起こっていることだ」
たかが小人を見たという怪談話を無駄に大げさにしようとしているように思えて、変な笑いが出てしまった。
じろりと睨まれる。
682巨人の研究  前編  ◆oJUBn2VTGE :2012/02/03(金) 22:36:07.39 ID:WiPg9lRs0
「お前は昨日ようやく三つ四つの体験談を仕入れたところかも知れないけど、わたしはここ二、三週間で既に少なくとも百以上蒐集している。もちろんこの街で、それも最近の話ばかりだ」
百以上? 予想外の数に驚いた。強調されるまでもなく異常な数だ。
一寸法師だとかドワーフだとか、具体的な恐怖心を抱きようのない話に頭が浸かっていたところから、一気に現実に引き戻された気がした。背筋がゾクリとする。
「なんなんです、それは」
「なんなんだろうな」
試すような目付き。
小人を見たという人が増えている? どうしてそんなことが起こる?
考えても分からない。口裂け女や人面犬のように、子どものコミュニティーの中で爆発的に広がる都市伝説はあるが、この小人の話はただ小さい人を見たという共通項があるだけで、現れ方に一貫性がない。都市伝説の類にしては違和感がある。
「なぜなんです」
素直に訊いた。答えがあるならば知りたかった。
師匠は野球の練習に持って来ていたさっきのノートをかざすように手にして、子どものような笑顔を浮かべた。
「虚心坦懐、相対的に物事を見れば、ある仮説が自然と導き出される」
そうしてノートの表にマジックで書かれた『巨人の研究』という文字をゆっくりと指さす。
「小人を見る人が増えているということは、巨人が増えているということだ」
バカだ。
とっさにそう思った。それから少し考えても、やはりバカだと思った。師匠はたまに突拍子もないことを言い出すが、これは酷い。
「デカイ小さいってのは常に相対的なものだ。コロポックルから見れば人間は巨人かも知れないが、大入道から見れば小人だ。そしてその大入道もダイダラボッチから見れば小人に過ぎない」
だからって、いくらなんでも巨人が増えてるなんて話にはならないだろう。巨人の研究って、そんな短絡的な理由で始めたのか。
「まあ聞け」
「いや、でも待って下さいよ。おかしいでしょう。話の出どころが巨人たち自身の噂話だとでも言うんですか。それ自体が立派な怪談、ていうかオカルトですよ」
「フレンド・オブ・フレンドだ。この手の話の出どころに正体はない」
「僕は体験した本人から聞きました。もちろん普通の学生です」
「わたしからすれば『友だちから聞いた話』だ」
683巨人の研究  前編  ◆oJUBn2VTGE :2012/02/03(金) 22:39:28.12 ID:WiPg9lRs0
「だったら連れて来ますよ。直接訊いたらどうですか」
憤慨してそう言うと、師匠は熱くなるな、というジェスチャーをする。「悪かった。今のは冗談だ」
どこまでが冗談なのだか……
目を細めて眉毛を下げながら右手をお辞儀させる師匠を前にして、僕はなんだか疲れてしまった。
「せっかく調べたんだから、巨人の話も聞いてくれよ」
好きにして下さい、という気分だった。師匠はノートを広げてパラパラとめくる。
「ようし。巨人と聞いてまず何を思い浮かべる?」
「ダイダラボッチ」
「それさっきわたしが言ったからだろう」
「じゃあギガンテス。タイタン。アトラス。あとサイクロプス」
「日本でもRPGゲームとかでお馴染みになった名前だな。どれもギリシャ神話に出てくる巨人だ。ギガース、ティターン、アトラース、そしてキュクロープス。
いずれも大地の神ガイアを母、もしくは祖母に持ち、神としての巨人、つまり巨神といっていい存在だ。ただ、後世になるつれ怪物としての側面が伝承上に現れ、卑俗化、矮小化していった傾向があるな。北欧神話では何か知っているか」
北欧神話か。確か主神のオーディンの従者だか子分だかに有名なヤツがいたはずだ。
「ロキでしたっけ」
「お、いいぞ。ロキはオーディンに率いられたアース神族と対立した巨人族の血を引いているとされている。
その巨人族の祖がユーミルと呼ばれる巨人だ。もっともアース神族も一般的な感覚からすると巨人的な存在であることに違いはないがな。
ちなみにこのユーミルや中国の盤古(ばんこ)、それから古代バビロニアのティアマットなどは始原の巨人としての性質を持っている。
つまり、その身体、もしくは死体から大地や海、その他の自然や自然現象が生まれたとされているんだ。多くの神話の中でそれぞれ世界の起源が語られているけど、巨人からすべてが生まれたとするパターンは『世界巨人型』と呼ばれる」
「日本だとダイダラボッチなんかがそうですか」
684本当にあった怖い名無し:2012/02/03(金) 22:59:44.43 ID:pkuHUugo0
(゚∀゚)っC
685巨人の研究  前編  ◆oJUBn2VTGE :2012/02/03(金) 23:04:14.72 ID:WiPg9lRs0
「いや、ダイダラボッチは山や沼を作ったという伝承が各地に残ってるけど、あれは土を盛ったのが山になったり、足跡が沼になったりしただけで、自分自身が大地なんかになったわけじゃない。
デカイってことを強調するための逸話だな。日本にはこの手の世界巨人型の神話は分布していないみたいだ」
ノートには色々と調べたことを書き付けてあるらしい。ページをめくるスピードが上がってきた。
「他に、巨人と言えば?」
テストみたいだ。巨人、巨人、と頭の中で声に出していると、『世界の巨人』というフレーズが浮かんだ。
「ジャイアント馬場」
真面目に答えろと怒られるかと思ったが、師匠は嬉しそうに「それだ」と言った。
「さっきまでの巨人たちとはベクトルがまったく違うけど、これも立派な巨人だ」
僕は見えていた地雷を踏んでしまったかと、少し後悔した。師匠はかなりのプロレスマニアで、地元に興行が来た時に無理やり連れて行かれたことが何度もあった。
そういう人なので、プロレスの話をしばらく聞かされることを覚悟したが、意外にも話は逸れなかった。
「どうして馬場がデカイか知っているか。あれは下垂体線腫と言われる脳下垂体のホルモン分泌異常が原因だ。
下垂体線腫の中でも成長ホルモン産生下垂体線腫と呼ばれる病変は、先端巨大症や巨人症とも呼ばれる。病気で身体が大きくなってしまうんだ。
相撲取りの中でも江戸時代なんかには際立って大きな伝説的な力士がいるけど、あながち誇張とばかりも言い切れない。戦中戦後からこっちでも二メートル十センチ級の力士が何人かいるしな。
あと、最近見ないから引退したのかも知れないけど、バスケの日本代表に二メートル三十センチくらいある人がいたよな。あの人もたぶんこの病気だと思う。海外だともっと凄いヤツがいるぞ。
ロバート・ワドロウってアメリカ人は二十世紀前半の人だけど、二メートル七十二センチだってさ。父親と一緒に立ってる写真を見たけど、父親の頭がちょうどロバート君の股のところだったよ。
二十二歳で死んでしまったけど、ずっと身長が伸び続けていたらしいから、もし生きてたらどこまでデカくなったのか想像もつかないな」
686巨人の研究  前編  ◆oJUBn2VTGE :2012/02/03(金) 23:06:12.16 ID:WiPg9lRs0
実在する巨人か。
巨人が増えていると言ったさっきの師匠の妄言が、微かに輪郭を持ち始めた。しかしそういう人が急に増えるなんてことがあるものだろうか。
「さて、巨人も色々出たようだけど、大きく括れば現時点で二パターンに分類できるな。まず第一の巨人が、ダイダラボッチやギガンテスなどが属する『伝説上の巨人』という分類だ。そして第二の巨人が馬場やロバート・ワドロウが属する『巨人症による巨人』という分類」
師匠は右手を立てて、親指と人差し指を折ってみせる。
「そして」と言いながら中指を重ねるように折る。「まだ出ていないけど、第三の巨人が、ビッグフットや雪男などが属する『UMAとしての巨人』という分類だ」
あっ、と思った。
UMAか。アンアイデンティファイド・ミステリアス・アニマル。未確認生物のことだ。そのことを失念していた。
「伝説上の巨人ほどには荒唐無稽ではないもの、巨人症患者のように確実に存在しているとも言えない。常にその実在が議論の的になる巨人たち。
UMAは和製英語だから、正しくはクリプティッドと言うらしいが、ヒマラヤのイエティや日本のヒバゴン、中国の野人なんかもこれに入るな」
俄然、話が胡散臭くなってきた。師匠はやけに嬉しそうに続ける。
「UMAにも巨人は多いけど、物理的にはなくもないかも、という程度の大きさのものがほとんどだな。せいぜいが二、三メートル台というところか。ネッシーみたいな怪獣型のUMAだと相当でかいのもいるけど。
UMAの巨人はほぼ現生人類の亜種という正体がほのめかされているから、十メートルとか百メートルみたいな無茶も言えないんだろう。
ゴリラとかオランウータンみたいな大型の類人猿の見間違いというのが実際の話じゃないかな。でもこんな面白い話があったぞ。中国のUMAで毛人と書いてマオレンと読むヤツがいるんだが、字の如く毛むくじゃらの亜人間だ。
こいつが捕獲されたあと、研究所の一室に閉じ込めらて毎日実験動物として扱われていたんだけど、ある日研究員が部屋に入るとすでに死んでしまっていた。どんな風に死んでたと思う?」
「死ぬような実験はしてなかったんですよね。病気とかじゃないですか。ヒトに近いせいでインフルエンザに感染したとか」
687巨人の研究  前編  ◆oJUBn2VTGE :2012/02/03(金) 23:10:34.57 ID:WiPg9lRs0
「おしいな。ヒトに近いからというのはいい線だ。実は首を吊って死んでいた、が正解。絶望が死因になるのは人間くらいじゃないかね。いったい彼らは何を捕獲したんだろうな」
どこで仕入れた与太話か知らないが、いかにも師匠が好きそうな話だ。
「この第三の巨人が、現代に生きているとされているものの、その実在がしかるべき研究機関等で確認されていないというものなら、第四の巨人は現代に生きていないけれど過去に確実に実在した巨人、『人類の縁戚としての巨人』だ。
ギガントピテクスというのを聞いたことがないかな。百万年前から三十万年前にかけて中国やインドに生息していた大型の類人猿だ。身長でおおよそ三メートルくらい。年代的に北京原人やジャワ原人と生息期間がかぶっている。
人類の直接の先祖だという説もあったみたいだけど、早々に否定されているな。
他にも推定身長で十メートルを超えるような超特大の人骨が発見されたり、普通の人間の数倍の大きさの足跡の化石なんかが出土したりという眉唾モノの噂がオカルト界ではまことしやかに流れてるけど。
そういうのはどちらかというと第三の、『UMAとしての巨人』の分類に入れるべきだと思う。そして……」
いい加減しゃべり疲れたのか、師匠はまた冷蔵庫に麦茶を取りに行った。そして戻ってくるや、コップを傾けながらあぐらをかいて「で、だ」と言った。
「第一の『伝説上の巨人』と第三の『UMAとしての巨人』の中間に位置するのが、第五の巨人、『妖怪としての巨人』だ。
日本なら大入道や見越入道、野寺坊のような入道、坊主の類から、酒呑童子、瘤取りじいさんの話に出てくる赤鬼、青鬼などの鬼たちも巨人としての要素を持っている。海外にも一つ目鬼などの怪物譚が多々ある。
肉体を持たない幽霊的な現れ方をする巨人もいるけど、それもここへ分類していいだろう。そして最後が、完全に架空の存在としてデザインされた第六の巨人、『フィクションとしての巨人』だ。
まあ、あらためて説明するまでもないかな。漫画や小説に出てくるようなやつだ。レトリックとして使う音楽界の巨人、みたいな表現は無視しても構わないだろう。
これでおおむねこの第一から第六までの分類にどの巨人も収まるはずだ。実際には境界があいまいなケースも多いと思うけど」
なんだかややこしくなってきた。紙に書いて整理してみる。
688巨人の研究  前編  ◆oJUBn2VTGE :2012/02/03(金) 23:12:52.96 ID:WiPg9lRs0
第一の分類が『伝説上の巨人』
第二の分類が『巨人症による巨人』
第三の分類が『UMAとしての巨人』
第四の分類が『人類の縁戚としての巨人』
第五の分類が『妖怪としての巨人』
第六の分類が『フィクションとしての巨人』……
この六つの分類を眺めながら、なんて無駄な労力を使うのだ、と溜息をついた。
「どれが今回増えた巨人なんです」
もちろん厭味だ。
師匠はそれには答えず、ふふふと意味深に笑うだけだった。これだけ巨人のことを調べ上げて、本当に何がしたいのだろう。
「小人の話をいっぱい集めたそうですけど、そっちはどうなんですか」
「小人か。小人のことはまだ調べ切れてないが、とりあえず集めた目撃例では様々なパターンがあるな。小さいおっさんってのが一番多いけど、女や子どもの姿のものもあった。
出るシチュエーションも色々で、家の中とか学校、病院なんかの屋内もあればそのへんの道端でってのも多かった。心霊スポットで見た、なんてのもあったな。
家族や友だち数人で同時に見たというケースもあったけど、基本的には一人で、しかも夜に見るというパターンがほとんどだった」
僕は聞きながら、まるで幽霊と同じだな、と思った。
「さっきガキどもから聞いた話の中に、小人を捕まえたってのがあった」
「ガキどもって、あの野球少年たちですか」
それでノートを持って行っていたのか。
「家の近所の溝の中にぶるぶる震えてる小さいおっさんがいたから、捕まえてカラの水筒に押し込んで蓋を閉めたんだと。凄いことしやがるな。
でも、重さがカラの時と同じくなんか軽い気がして、家に帰ってから開けてみたら、中には何も入っていなかったらしい」
「最初は手で触れたのにですか」
師匠はニヤリと笑う。
689巨人の研究  前編 ラスト ◆oJUBn2VTGE :2012/02/03(金) 23:16:12.89 ID:WiPg9lRs0
「現代における小人との遭遇譚というのは、ほとんどがただ『見た』というだけのもので、それを触ってどうにかしたという話は少ない。
だからそれが手で触ることができない霊的なものなのかどうか、という部分が曖昧なままだ。今回のケースは、一度は触れたのにいつの間にか不可能状態から消失している。
深夜、タクシーに乗って来て、気がつくといなくなっているという幽霊の話に近い気もするけど、どうだろうか」
小人が、実体を持った存在なのかどうか、か。このあいだアスファルトへ吸い込まれていった小人を見てしまった時に、足を掴んで引っ張り出そうとしてみればよかった。
「わたしが怖いと思うのは、だ」
師匠はいやに慎重な口ぶりで顔をこちらに突き出した。
「どの話にも共通点があまり見られないということだ」
「それのどこが怖いんです」
「なにか共通の原因があれば、最近の目撃談の多さにも説明がつきそうなものだけど、例えば子どもに影響力の強いバラエティ番組で小さいおっさんの話が取り上げられた、とかな」
「それって、友だちの間の話題について行きたい子どもが作り話をする、ってことですか」
「作り話とは限らないよ。思い込みが原因でも、結果的に『見てしまう』ということはある」
なるほど。そういうこともあるのかも知れない。
「それなら、そのテレビ番組と同じシチュエーションで小さいおっさんを見た、という話ばかり増えてもいいようなものだ。しかし、さっき言ったように最近の目撃例は分類化できないほど様々で、どうも気持ちが悪い。
それぞれの個人的な体験の分布が、総体で見ると、ある密度を持ってしまっている。こういうまるで意味があるかのような偶然の集積体は、わたしの経験上……」
師匠は言葉を切ってから、ゆっくりと口を開いた。
「怖い」
真剣な表情だった。こちらまで居住まいを正さなくてはならないような。
「もう少し情報が欲しい。今日はこれから用事があるけど、明日、いや明日もまずいな。じゃあ明後日だ。ちょっと手伝ってもらいたいことがあるんだ」
「いいですよ」
そう言いながら、僕は得体の知れない寒気とともに、なぜか心地よい気分の高揚を覚えていた。何をしでかすか分からないこの人が、 僕はどうしようもなく好きだった。


690本当にあった怖い名無し:2012/02/03(金) 23:18:07.97 ID:pkuHUugo0
Cヽ(゚∀゚)ノC
691本当にあった怖い名無し:2012/02/03(金) 23:43:43.97 ID:0ohmJn3A0
ウニが来るとスレが黒くなるのはもはや様式美
乙でした
692本当にあった怖い名無し:2012/02/04(土) 02:19:06.61 ID:HKl72UI50
>>672
ウニおつん
面白かった!
693本当にあった怖い名無し:2012/02/04(土) 08:27:47.17 ID:6tQciWjd0
おk
694本当にあった怖い名無し:2012/02/04(土) 09:38:53.66 ID:mYDKjENH0
宗像乙
一応小学館には一報入れとくよ
次はヒルコでよろしく
695本当にあった怖い名無し:2012/02/04(土) 10:22:14.68 ID:mYDKjENH0
あと次スレは
【星野】オマージュとパクリのダークゾーン【諸星】
に改題しとけ
まったく犯罪者になってまでこのクソスレに投下する意味がわからないね?
696本当にあった怖い名無し:2012/02/04(土) 11:26:46.68 ID:zjnogIAs0
>>689
Bヽ(゚∀゚)ノH
697本当にあった怖い名無し:2012/02/04(土) 17:56:29.77 ID:s/I3Z4/E0
698本当にあった怖い名無し:2012/02/04(土) 21:23:41.89 ID:hr0cf/ty0
っということで
もうこのスレ解散な。
699本当にあった怖い名無し:2012/02/04(土) 21:33:33.24 ID:tbxAa2FLO
>>698
おう、じゃあ先に行って待っててくれ
700本当にあった怖い名無し:2012/02/04(土) 21:51:22.48 ID:hr0cf/ty0
師匠は言葉を切ってから、ゆっくりと口を開いた。
「怖い」

waraeru
701本当にあった怖い名無し:2012/02/04(土) 22:12:06.29 ID:+uKZDfwQO
はじめて来たけど
何この人?
面白かった!
702本当にあった怖い名無し:2012/02/04(土) 22:45:07.65 ID:UOXn9b8d0
ステマw
703本当にあった怖い名無し:2012/02/04(土) 22:53:11.21 ID:Uk9Pjt3z0
ステルスマジでキチガイじみてる人?
ステルスできてねえけど
704本当にあった怖い名無し:2012/02/04(土) 23:38:41.61 ID:9Kfis1p9O
705本当にあった怖い名無し:2012/02/05(日) 02:30:58.89 ID:AZ8/x5BB0
>>701
作者 ウニ
作品 師匠シリーズ(と呼ばれている)

巨人の話、作中に出てくる師匠(加奈子さん)の弟子(僕)の弟子(ウニ)

本筋は僕(ウニの師匠)とウニ(作者ウニの数年前の話と設定されている)の話しがメインで、加奈子さん(本筋では死亡している)師匠編は過去の話

時系列で作品が発表されているわけではないので、謎が多い分、ヒントや謎が解き明かされる所に人気の理由の1つがある

もう十年近く続いてるんじゃないかな
706本当にあった怖い名無し:2012/02/05(日) 04:00:53.64 ID:90chLXvq0
おk
707本当にあった怖い名無し:2012/02/05(日) 04:11:36.55 ID:XCFQsN3K0
僕師匠と弟子ウニの話は実話ベースと思ってたけど
加奈子師匠と弟子・僕の話を読んでから
そうじゃなかったんだなと思うようになった
その場にいなかったウニが細部にわたり書けるわけないもんね
それか、実話ベースを大きく肉付け、脚色したのかな
あ、スレチかも
708本当にあった怖い名無し:2012/02/05(日) 10:39:55.14 ID:8GO+7NEUP
初期は登場人物以外体験談ベースかなと思っていたけど
今は普通にフィクションとして楽しんでいる
709本当にあった怖い名無し:2012/02/05(日) 11:36:33.33 ID:9IGbmSvwO
実話なんだから実話として楽しめよ
710本当にあった怖い名無し:2012/02/05(日) 11:48:29.42 ID:MCrmgZFt0
作者本人が女じゃない限り友達がみんな女でもれなく好意的とかありえねぇだろw
モテない男の妄想小説。
711本当にあった怖い名無し:2012/02/05(日) 11:58:14.04 ID:IKrZIQvd0
霊現象よりそっちの方がオカルトなのかお前の中では
712本当にあった怖い名無し:2012/02/05(日) 13:33:21.14 ID:RAuhnNEj0
実話ベースでも、体験談ベースでも、楽しめればグー
自分は実話のほうがより楽しみ度が上がるけど
ウニさんのは関係なく楽しみにしてる。ありがたやー
713本当にあった怖い名無し:2012/02/05(日) 17:54:10.34 ID:Ug9RyL4Q0
正直実話だの何だの言い始めたらこの板そのものに喧嘩売ってるようなもんだしな
714本当にあった怖い名無し:2012/02/05(日) 18:09:02.78 ID:j5UbBk/a0
パクリはいくない
715本当にあった怖い名無し:2012/02/05(日) 18:59:38.46 ID:9IGbmSvwO
>>714
実話だからパクリじゃないだろ
716本当にあった怖い名無し:2012/02/05(日) 19:47:02.55 ID:vK+aXiPLO
「実話だから」を免罪符にされても…
他にも疑わしいのなかったっけ?
717本当にあった怖い名無し:2012/02/05(日) 21:26:29.37 ID:fyT3EXa80
>>706
そういうことか
718本当にあった怖い名無し:2012/02/05(日) 22:35:49.68 ID:D9q7iJK50
>>669
同人誌として立派な営利活動してますが?
719本当にあった怖い名無し:2012/02/05(日) 22:37:05.78 ID:D9q7iJK50
>>671
もう何回も言われてるけど、誰も嫌いとはいってないのに
信者は不満点があっても見えないらしいからたち悪いわ
720本当にあった怖い名無し:2012/02/05(日) 22:40:16.68 ID:D9q7iJK50
>>704-705
うわあ・・布教活動する信者って気持ち悪いわ
ちょっと褒めただけでこれかよ・・・
まさに信者!

つかウニよ、頼むから段落分けしてくれ。物書きだろお前。読みにくいって意見はスルーですか?
721本当にあった怖い名無し:2012/02/06(月) 10:29:40.31 ID:8dlbTxfy0
同人で相手にされないからまた戻ってきたんだよ
だって発想も文章も貧しすぎるよ、おまけにパクリ疑惑じゃ・・・
安心して同人できない。
722本当にあった怖い名無し:2012/02/06(月) 12:52:47.28 ID:d4CgmthX0
三連レスとか気持ち悪すぎだろ
723本当にあった怖い名無し:2012/02/06(月) 14:09:18.39 ID:dKUf0a/qP

4連に見えるが。

つか>720は誰にレスしようとしてたんだ
ウニ:段落つめてもいい?(レス数多くなってサルになるから?)→レス内名無し「いいよー」
って事があったというレスはスルーですか?
724本当にあった怖い名無し:2012/02/06(月) 17:09:20.03 ID:Puwh7Q000
俺も4連に見えたw
対応するところは対応するし、スルーすべきはスルーする、それが2ch
スルー対象は残念だったね
725本当にあった怖い名無し:2012/02/06(月) 20:50:14.85 ID:HV/8RJV50
そんなことより、「田舎」の後編はいつ出るのだ
726本当にあった怖い名無し:2012/02/06(月) 22:35:27.26 ID:LofBE5bJ0
「田舎」ってほんとにオリジナルなの?
いつぐらいに投下された作品?
書かないというより他人の作品だから書けないんじゃないの?

727本当にあった怖い名無し:2012/02/06(月) 23:45:37.74 ID:PMqWHB5a0
>>720
自分の意見が通らないからって荒らすのは良くないぜ。
728本当にあった怖い名無し:2012/02/07(火) 07:30:29.06 ID:Q0JYLKR30
まあそうだね。
信者が気持ち悪いのにだけは同意するけど、他はある程度仕方ない事じゃないかと…
パクリ云々はよくわからんから、詳しい人がいるなら検証して欲しい気はするが。
729本当にあった怖い名無し:2012/02/07(火) 08:12:52.53 ID:mxR1Nvue0
才能があると嫉妬買って大変だね
叩くやつは大抵同業者で、才能ないやつ。貶めアイテムは「パクリだ!」
10年も続けてるなんて、この人何者なのwそれだけで凄いわ
730本当にあった怖い名無し:2012/02/07(火) 09:14:54.37 ID:mswpIFuZP
2ch系見る限り才能なくても
まとめサイトでアフェリエイトする人や同人やってる人が自キャラを絵板に投稿すると
基地外みたいに叩き出す人がいるよ
要は少しでも金が絡むと発狂すると思われ
731本当にあった怖い名無し:2012/02/07(火) 10:23:17.79 ID:bzZemgJ30
ちょっとでも否定的なレスするだけで荒らすなよ、とか感じるんだったらもう2chには来ないほうが懸命だろう

>>728
パクリは何回も実例出てるよ
「将棋」・・・ウニの投稿以前にほとんど同じ内容の話がどこかのブログにあった。
うろ覚えだがジョジョ作者の荒木飛呂彦の「デッドマンズQ」という作品にそっくりな話があるらしい。
他にもあった気がするが補てんよろ。

「将棋」は特殊な話なので、ウニの「実話だからしょうがない」という弁明は苦しいかと思う
パクリ以前に実話というのがまた香ばしい
732本当にあった怖い名無し:2012/02/07(火) 10:44:38.31 ID:fdlUi/OA0
「雨音」の母娘の描写も洒落怖かなんかで見た覚えがある
733本当にあった怖い名無し:2012/02/07(火) 11:03:14.32 ID:N1VJMU3v0
>>729
おまえも10年以上ロムっているわけで。
じゅうぶんスゴイぜ!
734本当にあった怖い名無し:2012/02/07(火) 13:25:39.36 ID:Q0JYLKR30
>>731-732
ありがとう、でもそれだけだと雲を掴むようだねぇ…
最近のを読む限り、その場その場で他人の影響受けやすい作風かなとは感じるが。
735本当にあった怖い名無し:2012/02/07(火) 13:47:31.45 ID:9DpRjbx/0
ウニ乙
野球のくだりは吹いたw
736本当にあった怖い名無し:2012/02/08(水) 19:02:22.63 ID:L1Gb+CeR0
デッドマンズQにそんな話あったっけ?
俺もそんなよく覚えてるわけじゃないが、そのエピソード入る余地なくね?
737本当にあった怖い名無し:2012/02/08(水) 19:27:31.86 ID:1oqXWpou0
デッドマンズQって始末する側される側の2編しかないんだが
738本当にあった怖い名無し:2012/02/08(水) 19:37:29.40 ID:XqWjTwef0
将棋はモロパクリ
実話と言えばパクリさえも不問にするのがウニ信者のジャスティス!
739本当にあった怖い名無し:2012/02/08(水) 19:44:54.10 ID:Ky+3BeLn0
加奈子師匠編はキャラ設定というのもあるが生き生きしてる
ルックスは、夏の日に街で見かけたあんな子かなーとか想像しながら読める
740本当にあった怖い名無し:2012/02/08(水) 19:51:04.83 ID:Ky+3BeLn0
物語では亡くなってても、一番身近な感じがする
741本当にあった怖い名無し:2012/02/08(水) 19:58:34.86 ID:x/mxqXpt0
スレチだろう。
語るスレでやってくれ。
742本当にあった怖い名無し:2012/02/08(水) 20:28:36.14 ID:/gu9HuHk0
おk
743本当にあった怖い名無し:2012/02/08(水) 21:20:17.75 ID:T5VSGZwMO
ウニはプロすら裸足で逃げ出すほどの魅力ある実話を書くからな
嫉妬して荒らす奴が居るのも仕方がない
744本当にあった怖い名無し:2012/02/08(水) 21:32:55.75 ID:rQLCjMLi0
プロって例えば?
745本当にあった怖い名無し:2012/02/08(水) 22:22:31.98 ID:ccrjdLcs0
山田悠介とか水嶋ヒロとか。
746本当にあった怖い名無し:2012/02/08(水) 22:23:50.45 ID:Da8Dv9w90
ウニは絶対にプロにはなれないね。
プロの世界では嫌われまくって生きていけないよ。
747本当にあった怖い名無し:2012/02/08(水) 23:55:37.81 ID:rQLCjMLi0
>>745
それは凄い話題性だね!
748本当にあった怖い名無し:2012/02/09(木) 10:42:10.88 ID:jr8WuMLp0
ってかこんなところに書いてる自体プロになるつもりなんてないでしょ
749本当にあった怖い名無し:2012/02/09(木) 16:49:38.96 ID:7v6gNkm1P
うん、アマチュアが無料で投稿してるだけなのになぜプロとか持ち出すのか
750本当にあった怖い名無し:2012/02/09(木) 17:15:34.73 ID:/oI0gMwS0
無意識で「こいつプロ並みだよ(ゴクリ」って思ってんじゃない?
751本当にあった怖い名無し:2012/02/09(木) 17:43:31.79 ID:3gFdhd6l0
俺は戦闘のプロだぜ?
752本当にあった怖い名無し:2012/02/09(木) 18:14:16.56 ID:NCeS3+J/0
鉄也さん!
753本当にあった怖い名無し:2012/02/09(木) 18:44:09.74 ID:hW/vQTSA0
単に同人誌と商業誌の区別がつかない奴がプロ扱いしてるんだろ、寒っ
754本当にあった怖い名無し:2012/02/09(木) 20:47:12.68 ID:g0KmyTjK0
>>743
>ウニはプロすら裸足で逃げ出すほどの魅力ある実話を書くからな
嫉妬して荒らす奴が居るのも仕方がない

まさに信者
その裸足で逃げ出したプロって誰だよ?答えてみろよ
嫉妬して荒らす?
そらすげーな。で出版社からはいつ声が掛かるの?
レベルとしてはプロどころか同人レベルなんだよ。事実を認識しろ
ウニの作品はただで読めるにしたら満足できるレベルだが、金払ってまで読むシロモノじゃねーよ
信者のせいで馬鹿にされてるって自覚ないのかな

「プロが逃げ出すほど魅力的」「嫉妬して荒らされるレベル」ってこんな事ばかりいつまでも言ってるから
バカにされるんだよ。ウニじゃなくてお前ら信者がな
755本当にあった怖い名無し:2012/02/09(木) 22:19:26.47 ID:7v6gNkm1P
無料の匿名掲示板で過度に庇うのも一々添削するのも見てる方には、まぁウザい罠
756本当にあった怖い名無し:2012/02/09(木) 22:42:19.93 ID:Wfu6yebv0
>>754
そんなもん叩く為に頑張るとかどんだけ暇なのよ
757本当にあった怖い名無し:2012/02/09(木) 23:48:59.01 ID:pKWwSuHV0
信者もアンチも必死すぎだろwww
758本当にあった怖い名無し:2012/02/10(金) 00:38:24.96 ID:a77qEt+w0
揚げ足取ってるから俺も揚げ足とるけど、逃げ出すほど=逃げ出した ではないんじゃない?
759本当にあった怖い名無し:2012/02/10(金) 02:12:41.15 ID:DNR0kGjVO
>>754
ほら、嫉妬してるから絡んでくるだろ?
760本当にあった怖い名無し:2012/02/10(金) 09:38:24.54 ID:mTT2jE6x0
効いてる効いてる
761本当にあった怖い名無し:2012/02/10(金) 09:52:50.15 ID:mTT2jE6x0
効いてる効いてる
762本当にあった怖い名無し:2012/02/10(金) 11:53:56.08 ID:bml0S6taP
厨二病の一種だと、互い相手を煽ってそれに引っかかるのを楽しんでるか
同一人物が他の名無しを躍らせようとしてマッチポンプしてるかのパターンが多いよね

人を操る、俺カコイイって
763本当にあった怖い名無し:2012/02/10(金) 11:57:23.11 ID:icbbgMkK0
ウニの話なんかよりおまえらの攻防の方がオモシロイよ
764本当にあった怖い名無し:2012/02/10(金) 11:58:04.26 ID:421uW2PB0
それを見抜く俺カコイイ
765本当にあった怖い名無し:2012/02/10(金) 13:05:48.12 ID:Pm+asgBT0
オカルトやでぇ
766本当にあった怖い名無し:2012/02/10(金) 14:14:31.50 ID:iBbOUSg40
>>758

言い方はどうでもいいんだよ
プロも逃げ出すほどって、どういう情報でそういう事言ってるんだよって話
案の定具体的な情報提示せずだんまり決め込んでるようだが
こういう事言うから絡まれるんだよ
767本当にあった怖い名無し:2012/02/10(金) 14:56:15.74 ID:a77qEt+w0
ちなみに俺は>>743じゃないからな
言い方はどうでもいいって、お前が聞いてるんだろw
768本当にあった怖い名無し:2012/02/10(金) 16:57:57.31 ID:O1JiHx1/0
おまいら、変なのに釣られすぎでつよ!(; ・`д・´)
769本当にあった怖い名無し:2012/02/10(金) 21:54:52.74 ID:iBbOUSg40
>>758
というか、揚げ足撮ってるからとか言ってるけど、何をさして揚げ足撮ってるって言ってるんだ?

プロが裸足で逃げ出すほどを突っ込んだこと?まさかこれが揚げ足取ってるって言ってるのか?
確かなソースもないのにプロを愚弄するようなこと言ってるんだぞ?
770本当にあった怖い名無し:2012/02/10(金) 22:46:22.94 ID:2DmkTClx0
>>768
そう言うなよ
こいつら釣られてナンボの昔〜し気質の住人なんだよ
時代についてこれないんだよ、かわいそうにナ〜
でもよ・・・
おっとゴメンよ、むかしここに糸たらさせてもらった縁でよ、ついよ

御代、ここ置くよ、釣りはいらねぇアメでも買いなよ

ところでよ、御前さん方井戸の話は聞いたことあるかい?

じゃぁ、御猿様の話は・・・?
771ウニ  ◆oJUBn2VTGE :2012/02/10(金) 23:03:43.85 ID:0VW1t0FY0
ウニです。どうもこんばんわ。

巨人の研究の中編を投下しようと2chにやってきましたが、なんでか忍者レベルが1になっていました。

心当たりは・・・ある。

でもショックです。

またレベルをコツコツあげるのでしばらくさようなら。
772本当にあった怖い名無し:2012/02/10(金) 23:21:08.35 ID:sKpBFKA6O
残念
773本当にあった怖い名無し:2012/02/10(金) 23:26:03.60 ID:oREP8Qg50
待ってます
774本当にあった怖い名無し:2012/02/10(金) 23:59:27.90 ID:O7RByuhH0
ピクシブ投稿もなしですか?
775本当にあった怖い名無し:2012/02/11(土) 00:19:56.41 ID:4AshB4uB0
まってるぜ
776本当にあった怖い名無し:2012/02/11(土) 00:35:54.30 ID:3XyypkxdP
ぬう・・・おのれ忍者システム
777本当にあった怖い名無し:2012/02/11(土) 00:43:29.24 ID:9Y2BR2DC0
汚いなさすが忍者きたない
778本当にあった怖い名無し:2012/02/11(土) 09:42:07.94 ID:aTASD5X80
↑こんな駄レスがスリーセブン!?
779本当にあった怖い名無し:2012/02/11(土) 11:29:57.57 ID:Pel086tC0
クッキー消しちゃったとか?
780本当にあった怖い名無し:2012/02/11(土) 12:16:21.20 ID:aTASD5X80
言い訳だろ、パクリの?
781本当にあった怖い名無し:2012/02/11(土) 13:43:51.13 ID:/JF1pA8D0
>>771
ざまあww

もう来んな。パクリ・ウニ騙りラノベ同人作家モドキがw
pixivで投下してんだから2chに同じもの貼り付ける意味が分からん
マジで何なのその顕示欲は?向うで信者どもと馴れ合ってろよカス
782本当にあった怖い名無し:2012/02/11(土) 17:01:44.46 ID:m5mSltXJ0
>>781
隆ラブ、いい加減にしろ
783本当にあった怖い名無し:2012/02/11(土) 20:33:38.86 ID:gUNDR5MT0
おk
784本当にあった怖い名無し:2012/02/11(土) 20:41:10.99 ID:gUNDR5MT0
ウニさん待ちです
785あと:2012/02/13(月) 17:55:10.17 ID:s4JjFHcD0
ウニいらん。つまんない+長い
786本当にあった怖い名無し:2012/02/13(月) 18:58:01.88 ID:vWocz2n20
うん
787本当にあった怖い名無し:2012/02/13(月) 20:50:57.90 ID:ju6rkVnl0
隆ラブのピエロっぷりが大好物です
盛り上がるから頑張って欲しいですね
788本当にあった怖い名無し:2012/02/13(月) 21:02:17.91 ID:STt75w+h0
おk
789本当にあった怖い名無し:2012/02/13(月) 21:32:44.25 ID:gr01WTqU0
勘違いで作品投下に10000ペソ
790本当にあった怖い名無し:2012/02/14(火) 11:08:47.86 ID:0kb7yQHR0
パクリのいるスレにはちょっと・・・
791本当にあった怖い名無し:2012/02/15(水) 12:17:55.49 ID:6K1iLIaw0
面白ければウニみたいな盗作でもおk
792本当にあった怖い名無し:2012/02/15(水) 20:51:45.03 ID:/Je2f+F+0
隆ラブのピエロっぷりが大好物です
盛り上がるから頑張って欲しいですね
793本当にあった怖い名無し:2012/02/15(水) 23:15:53.33 ID:+qBwujG60
 発 者 同         . 。_   ____           争
 生 同 .じ     .    /´ |  (ゝ___)          い
 .し 士 .レ      .__/'r-┴<ゝi,,ノ   ro、      は、
 .な で .ベ      ∠ゝ (ゝ.//`   ./`|  }⌒j
 .い し .ル        } ⌒ /`ヽ、_∠l,ノ ・ヽ´
 .! ! か の       /  ´..:.} >、、___,  .r、 ソ、`\
             /   ..:.:.}   /   |∨ ` ̄
            /   ..:.:./    |   丶
           / _、 ..:.:.:.{    .{.:.:.   \
          {   ..:Y  .ゝ、   {.:.:.:.:.    ヽ
          |、  ..:/ 丿 .:〉   >.- ⌒  .  ヽ
          / {. ..:./ ソ ..:./  .(    ..:.:.:`  ..:}
         ./..:.:}.:.:./ ヘ、 ..:./   .\ ..:.:r_,ノ、.:.:}
        ./..:.:/|.:/   {.:./     X.:.:}.}   X X
        /..:.:/ .}.:|    }:/       .Y丶ヽ  Y.:Y
  . __/.:/ { }  《.〈、     _,,__>.:》丶   Y.:\
  /.:.:.:.:.::/   !.:.:ゝ  ゝ.:. ̄ヾ ´:.:.:.:.:.:.:.:.:ヾゝ   \.: ̄>


794本当にあった怖い名無し:2012/02/16(木) 21:25:44.01 ID:F6M5biUD0
おk
795本当にあった怖い名無し:2012/02/17(金) 14:24:52.97 ID:SG8eeJtQO
パクリでおk
796本当にあった怖い名無し:2012/02/17(金) 14:40:53.79 ID:PGSbnw6M0
隆ラブいいかげんウザイ。
797本当にあった怖い名無し:2012/02/17(金) 21:59:51.81 ID:Mzim+IJs0
そうやって荒らしてるのは一人だけ、と思ってればイイよw
798本当にあった怖い名無し:2012/02/17(金) 22:34:45.20 ID:O95j6f910
え? 2,3人だろw 暇人が
799本当にあった怖い名無し:2012/02/18(土) 08:10:47.91 ID:hAxPHsLI0
おk
800本当にあった怖い名無し:2012/02/18(土) 08:16:02.14 ID:hAxPHsLI0
ウニさん待ちです
801本当にあった怖い名無し:2012/02/18(土) 18:01:06.70 ID:cLLi6ctH0
赤緑待ちです
802本当にあった怖い名無し:2012/02/18(土) 18:43:44.42 ID:hAxPHsLI0
隆ラブはいつになったら投下するのさ
803本当にあった怖い名無し:2012/02/18(土) 18:46:28.84 ID:hAxPHsLI0
ウニさんの気配がするから
804本当にあった怖い名無し:2012/02/18(土) 21:59:20.08 ID:hN/xItTW0
ぱくり鬼が棲まうという沼はここかね?
・・・
なるほどのう
たしかに
うぅむ・・・
これはヒドイ

たしかにの、おまえさんの名前の由来を考えればそれも無理がないかもしれんがの
だが他人が多くの時間と労力を使ってやっと集めた資料を何の断りも無く、まるで自分の功績のように
弄ぶのはどうかのう・・・?



805本当にあった怖い名無し:2012/02/19(日) 02:49:09.35 ID:jFuvteHN0
などと意味不明な供述をしており
806本当にあった怖い名無し:2012/02/19(日) 06:12:53.92 ID:NMbG+cxn0
隆ラブとかパクリ過ぎだろ
807本当にあった怖い名無し:2012/02/19(日) 07:41:02.09 ID:RhJIDORq0
師匠シリーズスレのほうにウニ降臨してた

おまえらがそういう話をするから、ウニにかかわらず投稿者はますますこのスレに投稿しにくくなるね
808本当にあった怖い名無し:2012/02/19(日) 11:28:47.21 ID:44aTmxNAP
普通に投下先間違えたのか
ワロタW
809本当にあった怖い名無し:2012/02/19(日) 17:22:34.48 ID:Ts2mFWwk0
ウニさん待ちです
810本当にあった怖い名無し:2012/02/19(日) 18:26:30.38 ID:Ts2mFWwk0
おk
811本当にあった怖い名無し:2012/02/19(日) 19:08:19.67 ID:TL35vFlq0
隆ラブのピエロっぷりが大好物です
盛り上がるから頑張って欲しいですね
812本当にあった怖い名無し:2012/02/19(日) 20:16:21.00 ID:goPjuVrb0
友人の葬式に行った

悲しくて周りの状況はハッキリ覚えてないんだけど、斎場に関係者から届く花が
幾つか有って、それが三回も自分にだけ倒れてきた。
特に原因も見当たらないし、いい加減な葬儀社じゃ無いから不思議なんだ。
葬式が終わってしまって「出会えて良かったです」と伝えて車に戻った。

俺の車のドアは旧式のキーを差し込んで開けるタイプで、確かにロックは解除
したんだけどドアが開かないんだ。
ふと窓ガラスを見たらヤセの俺の顔が膨れてるんだ、デブの友人の顔みたいに。

不意に後ろで声がして振り向くと同級生だった。少しだけ話した後は簡単に車に乗れた。
それだけなんだ。だけどあの世とかただのファンタジーだと思ってた俺は、考えが少し
変わってきた気がする。そういえば香典渡して無かったんだ。
813本当にあった怖い名無し:2012/02/19(日) 22:17:36.07 ID:yGca/SAZ0
葬儀場で誰にともなく「出会えてよかったです」とか独り言言ってる奴がいたら確かに怖いな
オカルトだわ
814赤緑 ◆kJAS6iN932 :2012/02/20(月) 13:50:20.59 ID:fU+mZIGV0
[友人が来る]

1/10
あぁ、のどかだなぁ…

バスに揺られて、ぼーっと窓の外を見ながらそんなことを思う。

古乃羽のお母さんの故郷。
ここには中学に入ってからの3年間、毎年夏休みに古乃羽と一緒に来ていた訳だけど、高校に入ってからは来なくなっていた。

「何も無くて、つまらない」

単純にそんな風に考えていたからだ。
ここの良さが分からないなんて、私も子供だったなぁ…
なんて、大人になった気になって思う。

ベンチ1つのバス亭でバスを降り、古乃羽に書いてもらった地図を見ながら「杵島さん」の家に向かう。
まぁ、地図なんて見なくても道は覚えているけどネ。
昔から道を覚えるのは得意だし…そもそもここには、間違えるほど道が無い。

そんな失礼なことを思いながら歩いていると、前から着物を着た1人のお婆さんが歩いてきた。
815赤緑 ◆kJAS6iN932 :2012/02/20(月) 13:52:11.59 ID:fU+mZIGV0
2/10
上品そうで、穏やかな感じのお婆さん。

ここは通りすがりに挨拶を――と思いきや、そのお婆さんは私の目の前で立ち止まり、「こんにちは」と丁寧に挨拶をしてくる。
相手が止まったのに通り過ぎるのも悪いと思い、私も立ち止まって挨拶をする。

私「こんにちはー」
まだ朝の10時だけど、相手に合わせて「こんにちは」。

お婆さん「東京から、ですか?」
私「え?あぁ…はい」

唐突に質問をされ、正確には東京じゃないけど大体”その辺”なので、はいと返事をする。

お婆さん「そう…」
私「…はい」
お婆さん「東京は、遠いですよね…」
私「え?あ、えぇ、そうですねぇ」

遠くを見るような目で、感慨深げに言うお婆さん。
確かに、ここからはちょっと距離があるけど…何だろう?
…と思っていると、そのお婆さんはこんな事を言った。

お婆さん「私は、ここから出たことが無いのですよ」
816赤緑 ◆kJAS6iN932 :2012/02/20(月) 13:54:54.76 ID:fU+mZIGV0
3/10
私「…え?」

出たことが無いって…?

お婆さん「ずっとここで暮らしていて…もうこの年だし、外に出ることは無いと思います」
私「…はぁ」

それだけ言うと、お婆さんはペコリと頭を下げて去っていく。
突然の事に、私は何とも言えない気持ちでその後ろ姿を見送る。

どうやら「出たことが無い」というのは、この村――もとい、町を、ってことみたいだ。
それが寂しいのか、悲しいのか…それとも、後悔しているのかな?
どう思っているのか、ちょっと分からない。
見た感じ足取りもしっかりしているから、まだどこか遠くに行こうと思えば行けそうになのにな。

家族の人はどうしているのだろう。
子供やお孫さんは居ないのかな?
誰か、ここから外に連れて行ってくれる人は居ないのかな…?
817赤緑 ◆kJAS6iN932 :2012/02/20(月) 13:57:41.32 ID:fU+mZIGV0
4/10
ちょっと沈んだ気分になってしまったけど、私は気持ちを切り替えて道を行き、やがて「杵島さん」の家に着く。
そして呼び鈴を…というところで、ガラガラと引き戸が開き古乃羽が出てくる。

古乃羽「…あ!美加?今から迎えに――」
私「あぁーん、古乃羽〜」

言うが早いか、私はひしと古乃羽に抱きつく。

古乃羽「や、ちょっと…」

むふふ、うろたえろうろたえろ…なんて思いながらギュッと抱きついていると、古乃羽のすぐ横に、大きなリボンの女の子が居ることに気付く。

私「あら?」

古乃羽を解放し、私はその女の子の前にしゃがみ込む。
するとその子は古乃羽の後ろに隠れてしまう。
818赤緑 ◆kJAS6iN932 :2012/02/20(月) 13:59:19.69 ID:fU+mZIGV0
5/10
私「可愛い子ね、古乃羽の子?」
古乃羽「な訳ないでしょ。従姉妹の唯ちゃんよ」
私「へぇー」

古乃羽の後ろに隠れ、恐る恐るこちらを伺っている唯ちゃん。
どうやら人見知りさんのようだ。…まさか、私が怖いとかじゃないよね?

私「はじめまして、私、美加って言うの。よろしくね、唯ちゃん」
唯「……」

モジモジしている唯ちゃん。うーん、これはイイ…。

古乃羽「ちょっと人見知りで…ごめんね。ほら、唯ちゃん」
唯「…はじめまして」

古乃羽に言われて、小さな声で挨拶をしてくれる唯ちゃん。

私「はじめまして、唯ちゃん。おリボン可愛いね」

私がそう言うと、唯ちゃんは嬉しそうに顔を真っ赤にして、それを隠すように古乃羽に抱きつく。
あぁ、私もこういうの見習わないとなぁ…。
819赤緑 ◆kJAS6iN932 :2012/02/20(月) 14:01:14.61 ID:fU+mZIGV0
6/10
それから杵島のおじさんおばさん、更にお婆さんに挨拶を済ませた私は、古乃羽と一緒の部屋に落ち着く。

古乃羽「もうすぐお昼だから、食べたらちょっと出掛けよっか」
私「うん」
時計は11時過ぎを指している。お昼ご飯までは、あと1時間くらいかな?
よし、それじゃあさっそく――

私「あのさ、今ここに来る途中で、ちょっと変わった事があったの」
古乃羽「ん?なに?」

私は、先ほど会ったお婆さんの話をする。
こういうことは、すぐに話したくなるタチなのだ。

古乃羽「――へぇ」
私「何か、感慨深くなっちゃってねぇ」
古乃羽「若い頃に旅行とか行かなかったのかな」
私「そうだろうねぇ」
旅行に行く機会が一度も無かったというのも、何だか不思議な話だが。

古乃羽「いくつ位のお婆さん?」
私「うーん…60から80くらい」
古乃羽「…随分幅があるね」

見た目からはちょっと分からなかった。
年齢当てるの、得意なんだけどな。
820赤緑 ◆kJAS6iN932 :2012/02/20(月) 14:03:08.49 ID:fU+mZIGV0
7/10
――
やがて正午を過ぎ、私は美加とお昼を済ませてから、外に出掛けることにした。

唯ちゃんが一緒に行きたそうな顔をしていたけど、お昼寝の時間ということで断念。
人見知りな唯ちゃんだけど、私と一緒に美加のお迎えに行こうとしていたし、他人と接するのがまったくダメという訳ではなさそうだ。

美加「んーさて、まずはどこに行こうかなー」
薄手のコートを羽織り、外に出たところで美加が言う。

私「それだけど、最初に行きたいところがあるの」
美加「ほう」
男の人のような返事を返す美加。

私「あのさ、明君の事、覚えている?」
美加「明君ね。もちろん。私、そういう物覚えは良いんだから」

私「一昨日偶然会ってね。美加が来たら一緒に会いに行くね、って約束したの」
美加「へぇ…って、じゃあ行きたいところって、もしかして…あの?」
私「うん。あの家よ」

私はそう言って、ここから少し離れた山の中腹にある、堀塚家の邸宅に顔を向けた。
821赤緑 ◆kJAS6iN932 :2012/02/20(月) 14:05:04.91 ID:fU+mZIGV0
8/10
私「紗希ちゃんの事も覚えている?」
2人で並んで歩きながら、美加に聞く。

美加「そりゃ、もちろん」
私「だよね」
美加「うん。絵に描いたようなお嬢様。明君と一緒に紹介してくれたよね」
私「うん。…え?一緒に紹介した?」
美加「そうよ。こちらが明君で、こちらが紗希ちゃん、って」
私「あれ…?」

あれれ…私が紗希ちゃんと初めて会った時、美加も居たような…?
でも、美加の言うとおり、そうやって紹介した気も――

美加「どうしたの?」
私「ん」
ちょっとした疑問で思わず足を止めてしまった私に、美加が声を掛けてくる。

私「勘違いかなぁ…。紗希ちゃんと初めて会った時、美加も居たような気がして…」
美加「古乃羽が紗希ちゃんに初めて会ったのは、いつ?」
私「えーっと…6年生の時かな」
中学には入っていなかったし、これは確かだ。

美加「じゃあ居ないよ。だって、私がここに来たの中学に入ってからだもん」
822赤緑 ◆kJAS6iN932 :2012/02/20(月) 14:06:44.32 ID:fU+mZIGV0
9/10
私「あ、そうだね…」

そうだ。美加を誘ったのは、中学に入ってからだ。

私「じゃあ美加、明君のお父さんに会ったことはない?」
美加「ないねぇ…。私が明君に初めて会った時、お父さんはもう亡くなっているって聞いたし」

どうやら、美加の記憶が正しいようだ。
私が紗希ちゃんと初めて会った時、紗希ちゃんは明君のお父さんが連れてきてくれた。…その数ヶ月後に、亡くなってしまうお父さんが。
でも、そうすると――

私「紗希ちゃんと会った時、私たち川原で遊んでいたの。そこに紗希ちゃんが来て、4人になったのよ」
美加「古乃羽と明君と、紗希ちゃんと…明君のお父さんで4人じゃない?」
私「ううん」
私たちは車椅子の紗希ちゃんを加えて4人で遊んでいて、明君のお父さんはニコニコしながらそれを見守っていた。

私「私と明君と紗希ちゃんと…もう1人居たのよ。確か、女の子――」

そう、女の子だ。だから美加と勘違いしていた。

あの女の子は…誰?
823赤緑 ◆kJAS6iN932 :2012/02/20(月) 14:08:59.04 ID:fU+mZIGV0
10/10
美加「これから明君達に会う訳だしさ、聞いてみればいいんじゃない?」
悩みこんでしまった私に、美加が言う。

私「…うん、そうだね」
そうだ。聞いてみればすぐに分かることだ。
でも――

美加「何かあるの?」
私「ん…ううん」

聞いてみれば分かる。
あの時、もう1人いた女の子は誰?と。

でも何だか…上手く言えないけど、変な感じがする。
美加が時々感じるっていう「違和感」って、こんな感じなのかな?
ただの記憶違いだとは思うのだけど…。

まぁ、どうせ地元の子か、私と同じように夏休みに帰省していた子だろうな。
明君に聞いてスッキリさせよう。

私はそう考えて、美加と堀塚家に向かう。

――それが「聞いてはいけないこと」だということを、私はこの時思い出すことが出来なかった。



824本当にあった怖い名無し:2012/02/20(月) 16:00:17.50 ID:T6gO9Xja0
赤緑  乙。

面白かったよ。
825本当にあった怖い名無し:2012/02/20(月) 19:43:43.81 ID:TQznhexD0
おk
826本当にあった怖い名無し:2012/02/20(月) 20:29:38.62 ID:TQznhexD0
ウニさん待ちです
827本当にあった怖い名無し:2012/02/21(火) 14:37:36.45 ID:uUl+mtWK0
師匠スレ行けよ
828本当にあった怖い名無し:2012/02/21(火) 18:30:24.02 ID:t53l4aAV0
赤さん乙
829本当にあった怖い名無し:2012/02/22(水) 03:24:59.47 ID:048W2gDZ0
なにこれ?
ここ、ラノベ風とかもありなの?
830本当にあった怖い名無し:2012/02/22(水) 04:18:16.44 ID:JiAar68N0
>>829
ラノベ風でもラノベもどきでも行間空けまくりの携帯小説風でもおk
831本当にあった怖い名無し:2012/02/22(水) 04:27:20.13 ID:UWKwN02S0
そろそろご新規の書き手さん来て欲しいね
832本当にあった怖い名無し:2012/02/22(水) 11:20:08.22 ID:gFJ5Ywn90
パクられるからなー
833海 ◆2c5xyi71ig :2012/02/22(水) 17:59:43.96 ID:3LdBQLau0
test
834本当にあった怖い名無し:2012/02/22(水) 20:10:28.74 ID:TbcI6AcQ0
おk
835海 ◆2c5xyi71ig :2012/02/23(木) 00:21:51.42 ID:ZPAi04cc0
横須賀での出来事

初めて関東に行った私はかなりテンションがあがっていました。
古着やアメカジが好きだったため、喜んで上陸し、伍長と二人で横須賀の街に繰り出しました。
「ドブ板通り」というところがあります。米軍基地から少し歩いたところにあり、
古着屋、雑貨屋、舶来品を売る店が軒を連ねており、私からすると宝の山のように思いました。
836海 ◆2c5xyi71ig :2012/02/23(木) 00:26:38.95 ID:ZPAi04cc0
一軒一軒、覗いていき「あれも欲しいなあ、ああこれもいいな」と品定めをしていました。
とある小物を扱っていた店でのことです。
「なあ、ここ覗いていこうぜ」と伍長が行きたそうだったので、「ええ、行きましょう」
と私もついて行きました。
その店はライターや指輪、ネックレスなどのアクセサリーが多く陳列されていました。
837 忍法帖【Lv=16,xxxPT】 :2012/02/23(木) 00:27:57.28 ID:2xEoEIOz0
オカルトSFハイファンタジーメルヘンチックスペースオペラライトノベル携帯小説を出せよ!?♪。
838海 ◆2c5xyi71ig :2012/02/23(木) 00:28:47.82 ID:ZPAi04cc0
「伍長、こんなのに興味あるんですか?」とちょっと冷やかしていると、壁際のケースに
並んでいるジッポライターに目が行きました。
「ベトナムジッポー」と表示があり、ベトナム戦争のとき、実際に米兵が使っていたもの
との紹介文と、表に彫ってある字やイラストは兵士自身が彫ったので、世界に一つだけだ
と書いてあります。
839本当にあった怖い名無し:2012/02/23(木) 06:27:53.39 ID:oPsGMSmu0
それからそれから
840本当にあった怖い名無し:2012/02/23(木) 06:55:35.68 ID:xJ2K6To10
おやおや、ぷっつり切れてるなぁ、
規制に巻き込まれたか、急な召集でもかかったか・・・
841本当にあった怖い名無し:2012/02/23(木) 19:15:46.19 ID:Yx9gfYHN0
世界に1つだけだと書いてあったんだろ
ああ怖い怖い
842本当にあった怖い名無し:2012/02/23(木) 21:07:50.99 ID:ae5bGv5e0
そんなオチ怖くないからやだ
843本当にあった怖い名無し:2012/02/23(木) 23:08:57.31 ID:JIP7kW3h0
実はベトナムで亡くなった兵士のジッポだったってオチか?
前に売っているのを見たわ。
844本当にあった怖い名無し:2012/02/24(金) 06:18:48.23 ID:VHZzFzZN0
海乙
8451巨人の研究後編コピペ1:2012/02/24(金) 12:28:45.42 ID:AVSsPknX0
「さあ、行こう」
その言葉に背中を叩かれ、発進する。大学病院まではお互い無言だった。僕は何かを考えていたような気もするし、何も考えていなかったような気もする。
大学病院の駐輪場に到着し、弾むように後ろから降りた師匠に目で問いかける。
今度はどうしても同席したかった。何が起こっているのか、僕なりに知りたかったから。
「まあ、いいだろう。一緒に来い」
はい、と言ってすぐに自転車に施錠して師匠の後に続く。
正面玄関から入ると、病院のロビーには沢山の人がいた。さすがに大学病院は大きい。インフルエンザに罹った時に行った、自分のところのキャンパスにある、とってつけたような医務室とは雲泥の差だ。
8461巨人の研究後編コピペ2:2012/02/24(金) 12:29:26.53 ID:AVSsPknX0
師匠は勝手知ったる他人の家、というように人の波をすいすいとかき分けてフロアの奥の方へ向う。案内板を見ると入口から一番奥に入院病棟があるらしい。
通路を抜けて、ようやくその入院病棟の待合いに到着した。
そこに見覚えのある人が待っていた。
ほんのりと桜色をしたナース服を身に付けている五十歳前後の女性。怒っているような、呆れているような表情。
「やっぱり、あなただったのね」
野村さん、だったか。
847巨人の研究後編コピペ3:2012/02/24(金) 12:30:00.30 ID:AVSsPknX0
師匠が以前入院していた時にお世話になった看護婦さんらしい。その後も長くつきあいが続いており、戦時中に撮られたというある一枚の写真にまつわる事件にも巻き込まれていた。より酷い巻き込まれ方をしたのは僕の方だが。
野村さんはかつて受け持った患者という枠を超え、まるで自分の娘のように師匠のことをとても気にかけていて、師匠の方はそれを狡猾に利用しているという構図がほの見える。
「センセイ、気が利くなあ。電話してくれてたんだ。じゃあ、用件は分かるよね?」
師匠は「お願い」というように両手を合わせ、上目遣いにシナを作る。
野村さんは何か言おうとして上半身を膨らませたが、やがて風船が萎むように深い溜め息を吐くと、「ついて来なさい」とだけ言って踵を返した。
848巨人の研究後編コピペ4:2012/02/24(金) 12:30:34.62 ID:AVSsPknX0
その様子から垣間見えたのは、長年の経験が降り積もって出来たかのような諦観だった。
気力が抜けたように見えたが、さすがに職業柄、足取りはキビキビとしていた。近くのエレベーターの方へ歩いて行くのを二人して追いかける。
上へ向かうボタンを押して箱が降りて来るのを待っている間、「その節はどうも」と僕からも挨拶をしたが、じろりと睨まれただけだった。
三人で乗り込むとエレベーターは静かに上昇し、七階で停止した。扉が開くと、真っ先に循環器科という案内板が目に入った。
野村さんはすぐ近くにあったナーステーションへ行き、何人かの看護婦と短い話をした後、僕らの方へ振り向いた。
「こっちへ」
そしてさっさと歩き始める。
849巨人の研究後編コピペ5:2012/02/24(金) 12:31:22.02 ID:AVSsPknX0
確か看護婦長だと聞いていたが、さすがに病院でそういう姿を見ると風格というか威厳のようなものがあった。病棟の廊下を歩きながら「この入院病棟の看護婦長なんですか」と訊いてみたが、「上から下まででベッドがいくつあると思ってるの」と笑われた。
説明を聞くに、どうやら各階ごとに小児科だとか泌尿器科だとかに分かれていて、それぞれに専属のスタッフと看護婦長がいるらしい。
では、その妙な症状を訴えるという患者は、たまたま野村さんが受け持っているフロアにいたのだろうか。
僕が抱いた疑問に先回りするように師匠が耳打ちする。
「センセイが診察した、精神以外の入院病棟の患者は全部で十人。そのうち三人がここにいるはずだ」
「会わせられるのは二人だけだからね」
聞こえていたらしい野村さんが怒ったような口調で言う。「いろいろと難しい人もいるんだから。あなたはだいたい……」
その口から憤懣が出掛かったが、また肩を落としてそれが抜けて行く。
850巨人の研究後編コピペ6:2012/02/24(金) 12:32:02.21 ID:AVSsPknX0
師匠は「いいよ、いいよ。会わせてくれるだけも本当にありがたいことでございます」と卑屈にお追従し、ますます野村さんの溜め息が大きくなる。
「ここ」
廊下を歩き続け、立ち止まったのは四人部屋の前だった。前二つのベッドは空いているのが見えた。
「待っていなさい」と先に野村さんが部屋に入り、奥のベッドにいる誰かと話をしているようだった。衝立でよく見えない。
やがて戻って来て、ゆっくりとした口調で言う。
「いい? 余計なことは絶対に言わないこと。何が余計かは、判断できるでしょうね」
「大丈夫。信用して。でもわたしはどんな立場って設定?」
「医学部の学生が、実習の一環で入院している患者一人一人とお話をしに来たってことにしてる」
「ありがとう」
851巨人の研究後編コピペ7:2012/02/24(金) 12:33:37.49 ID:AVSsPknX0
師匠が目で合図したので僕も一緒に病室に入る。薬品の香りが入り混じった、甘ったるい廊下の匂いともまた少し違う、何と言うか独特の匂いがする。
野村さんは外で待っているようだ。
衝立の向こうにはベッドが二つあった。片方は布団がめくれており、住人は不在のようだったが、もう片方には小学校高学年か、あるいは中学一年生くらいの坊主頭の男の子が興味津々という顔でベッドの上に上半身を起こしていた。
「こんにちは」
師匠が愛想よく首を傾けると、小さな声で「こんにちは」と返事があった。
循環器科ということは心臓でも悪いのだろうか。痩せてはいたが血色は良く、重い病気のようには見えなかった。
ベッドのそばにあった丸イスに腰掛けると、師匠は男の子に「いつごろから入院しているの? 退屈?」と親しげに話しかける。
男の子は「退屈」と言って、はにかんだ。
852巨人の研究後編コピペ8:2012/02/24(金) 12:37:46.83 ID:AVSsPknX0
それからしばらく入院中のことや好きな漫画のことなどを話題にして話が弾んでいたが、やがて師匠から「ここ、夜はお化けとか出るんじゃない?」という何気ない一言が零れ落ちた。
隣のイスに座り、ただ二人のやりとりを聞いているだけだった僕も、師匠が本題に切り込んで行ったことが分かって緊張する。
男の子は何か重大な隠し事をこっそり告げるというような仕草で師匠の耳元に口を寄せた。
「出るよ」
「え? ほんとに?」
わざとらしく驚いて見せている。男の子は頷きながら、入院してからこれまでに見た幽霊の話を始めた。
どの話も妙な臨場感があり、夜に聞いていれば相当怖かっただろうと思える内容だったが、僕が期待したようなキーワードが全く含まれていなかった。
小人に関する話が一つもなかったのだ。
師匠も一切水を向けることもなく、ただひたすら男の子の話に怖がって見せているだけだった。一体どうするつもりなのだろうと思って、やきもきしながらも口を挟めないでいると、師匠はふいに持参した荷物をあさり始めた。
853巨人の研究後編コピペ9:2012/02/24(金) 12:44:30.69 ID:AVSsPknX0
そしてさっき買っていた缶ジュースを取り出す。そう言えばまだ飲んでいなかった。もう温くなっているんじゃないだろうか。
師匠はベッドの男の子からは見えない角度で缶ジュースを持ったまま、「ちょっとクイズをするけど、受けて立つ?」と訊いた。
男の子はうんいいよ、と頷く。
「じゃあ目を閉じて。今から渡すものがなんなのか当てられたらキミの勝ちだよ」
「分かった」
素直に目を閉じる。師匠は男の子の右手を取り、缶ジュースを握らせる。ほっそりした手に三百五十ミリリットルの缶はやけに大きく見えた。
「あれ〜。これなんだろう」
男の子は目を閉じたまま首をかしげている。
師匠はもう笑っていない。真剣な表情で缶を見つめている。
「う〜ん」と唸って考え込んだ男の子に、師匠は一言ささやいた。
「ヒントは、かん、ナントカ」
それを聞いた瞬間、男の子の顔が綻んだ。
854巨人の研究後編コピペ10:2012/02/24(金) 12:45:51.41 ID:AVSsPknX0
「分かった」
そしてその口から出た答えは、僕の予想していたものとは違った。
思わず「え?」と言いそうになって、慌てて口を塞ぐ。しかし師匠は「せいか〜い」と言って笑顔を作ると男の子の手から缶ジュースを素早く抜き取り、後ろ手に隠す。
男の子は目を開け、「あれ?」と言ってキョロキョロしている。師匠のジェチャーに気づいた僕はこっそりとその手から缶ジュースを受け取り、荷物の中に隠す。何故か分からないが、もう男の子に見せたくないらしい。
それは、彼がクイズの答えを間違えたことと無関係ではないだろう。
「ご褒美はこれだ。えいっ」
師匠は誤魔化すように素早く男の子のほっぺたにキスをした。
「じゃあ、もうわたしたちは行かなきゃ」
目を白黒させている男の子を置いて僕らは慌しく病室を出て行く。
廊下では野村さんが腕組みをして待っていた。
「なにか変なことしてなかったでしょうね」
「してないしてない。してないよ、な?」
「ええ。まあ」
「とにかく、本当に余計なことは言わないでよ」
855巨人の研究後編コピペ11:2012/02/24(金) 12:52:35.66 ID:AVSsPknX0
野村さんは何度目かの釘を刺すと、さらに廊下の奥へ歩き始めた。僕は後ろをついて行きながら、さっきの不思議なやりとりのことを考える。その横で、師匠は視線を尖らせながら前を見据えている。
「ここよ」
病室の前に到着し、また野村さんが一人で先に入る。すぐに出てきて、「さっきと同じで医学部生ってことにしてるけど、本当に……」と言い掛けた所に、「余計なことは言いません」と師匠が言葉を繋ぐ。そして待ちきれないと言うように病室の中へ消えて行く。
僕もすぐに後を追う。
今度も四人部屋だったが、手前の二つのベッドには老人がそれぞれ布団を被って寝ていた。その奥にはやはり衝立があり、回り込むと、女の子がちょうどベッドから身体を起こすところだった。
「あ、寝ててもいいよ」
師匠が慌てて手を振ると、「大丈夫です」と静かな声が返って来た。
向かいのベッドは空だった。今度は住人がいるような気配はない。僕の視線に気がついたのか、女の子は「隣の人、昨日退院しちゃった」と言って笑った。
さっきの男の子よりは少し年上だろうか。やはり痩せていて顔や服の袖から出ている手がやけに白い。
856巨人の研究後編コピペ12:2012/02/24(金) 12:54:46.93 ID:AVSsPknX0
「どんな人だったの?」
丸イスを引き寄せながら師匠が口を開いた。
「う〜ん。お母さんくらいの年の人」
「そうなんだ」
そんな会話から始まり、また当たり障りのないやりとりがしばらく続いた。僕はすべて師匠に任せきって、邪魔にならない程度に相槌だけを打っている。
「病院って、お化けが出るっていう人いるけど、どうなのかな」
「あ、私見たよ」
さっきの再現のように女の子が体験談を語る。しかしさっきの男の子と同じ話は一つもなかった。
横で聞いているだけの僕には師匠が何を考えているのか分からなかった。
「ちょっとクイズを出すけど、いい?」
「いいですけど」
「今から渡すものが何なのか、目を閉じたまま当ててみてね」
それを聞いた女の子は少し緊張したような顔をする。何かの検査だと思ったのだろうか。
それでも「どうぞ」と言って目を閉じたので師匠は荷物からまた缶ジュースを取り出した。
女の子の右手を誘導して、それを握らせる。
857巨人の研究後編コピペ13:2012/02/24(金) 12:56:16.11 ID:AVSsPknX0
「どう? 何か分かる?」
缶ジュースを右手で握ったまま女の子は考え込む。分かりそうなものなのに、どうしてだろう。
「ヒントは、かん、ナントカ、だよ」
師匠はささやく。さっきと同じ言葉。これでもう分かるはずだ。
分かるはずなのに。
女の子は恐る恐るという様子で、目を閉じたままぽつりと言った。
「かんでんち」
それを聞いた瞬間、鳥肌が立った。
頭が事態を理解する前に、直感が告げたのだ。
乾電池。
さっきの男の子と同じ答え。偶然じゃない。絶対に。
分かった。分かってしまった。一体何が分かったのか、その頭の中の嵐が形になる前に師匠が言った。
「正解だよ。じゃあ今度は目を閉じたまま耳を塞いでみて」
そっと缶ジュースを右手から抜き取る。
そして言われるがままに両手で耳を塞いだ女の子から視線を逸らし、師匠は僕の顔を見る。その瞳が爛々と輝いている。
858巨人の研究後編コピペ13:2012/02/24(金) 13:00:56.59 ID:AVSsPknX0
「これが最近になって急に現れた、精神科にかかる人が訴える奇妙な症状。触覚の異常により、物の大きさを誤認するという事例。目を開けている時には感じない。
つまり視覚により補正される時や、あるいは事前にそれが何なのか認知している時には現れないが、それらを遮断されるとたちまちに現れる不可思議な現象。
小さい。小さい。小さい。何もかもが、実際の大きさよりも小さく感じられてしまう。
缶ジュースを握っているのに、それが乾電池に思えてしまうくらいに」
僕の目を見つめたまま、師匠はささやく。
「わたしは巨人を六つに分類したな。
 第一の分類は『伝説上の巨人』
 第二の分類は『巨人症による巨人』
 第三の分類は『UMAとしての巨人』
 第四の分類は『人類の縁戚としての巨人』
 第五の分類は『妖怪としての巨人』
 第六の分類は『フィクションとしての巨人』
 …………」
言葉を切って、師匠は手のひらで恭しく女の子を指し示す。
「彼女たちこそが、そのどれにも当てはまらない、第七の巨人」
僕は師匠の言葉のそのわずかな隙間の中で息を飲む。
859巨人の研究後編コピペ15:2012/02/24(金) 13:03:33.59 ID:AVSsPknX0
「Giant sensory syndrome, 巨人感覚症候群の発症者だよ」

女の子は目を閉じて耳を塞いでいる。
師匠は彼女に視線を向けもせずに僕を試すように見ている。
巨人感覚症候群…… ジャイアント・センサリー・シンドロームだって?
「ちなみにわたしがつけた名前だ。捻りがないところが気に入っている」
満足げにそう言った時、足音が聞こえて振り向くと野村さんが病室に入って来た。
「なにをしているの」
声が不審げだ。
女の子に耳を塞がせているのは、はたから見るとやり過ぎだったかも知れない。
「いや、もう終わったよ」
師匠は慌てたように立ち上がった。何ごとかと女の子も目を開ける。
「ごめんね、急に用事が出来ちゃって。もう行かなきゃ」
師匠は手を振ると、ベッドに背を向けた。僕も急いで後に続く。
「待ちなさい」
追いすがってくる野村さんに廊下で捕まった。
860巨人の研究後編コピペ16:2012/02/24(金) 13:06:53.29 ID:AVSsPknX0
「あれほど言ったのに何をしているの、あなたは」
かなり怒っている。
「何もしてないよ。余計なことも言ってないよ、な?」
「ええ、まあ」
言い訳はあまり通用せず、それから二人してギュウギュウに絞られた。
やがて他の看護婦の視線が気になったのか、野村さんは来た時に乗ったエレベーターに僕らを押し込んだ。そして自分も乗り込んで一階のボタンを押す。
「だいたい、いつもいつもあなたは……」
僕は際限なく続く説教に、野村さんに普段どれだけ迷惑をかけてるんだこの人は、と唖然としていた。
さすがにシュンとしてうなだれた師匠に少し声のトーンが落ちる。
「そう言えばあなた、最近また検査をさぼってるでしょう。真下先生も心配してるんだから、ちゃんと受診しなさい」
野村さんがそう言った瞬間、到着を告げる音と共にエレベーターのドアが開いた。一階に戻ったのだ。
師匠がバネのように顔を跳ね上げる。
861巨人の研究後編コピ17:2012/02/24(金) 13:21:09.64 ID:AVSsPknX0
そしてエレベーターから我先に出ると、くるりと向き直るや顔を突き出して舌を伸ばした。
「い・や・だ。べろべろべろ〜ん」
そして逃げた。
走って。
「ちょっと、待って」
僕も一緒に逃げ出す。
野村さんが後ろから何か大きな声で怒鳴っているが、良く聞こえなかった。「院内を走るな」だろうか。
病院のスタッフや来院の人に何度かぶつかりそうになりながらも、僕らは無事に正面玄関を抜け出した。
少し胸が苦しい。ハアハアと息をつきながら横目で見ると、師匠もこちらを見て笑った。僕もつられて笑う。
それから追っ手が来る前にと、すぐに自転車に乗り、家の方へ向けて出発する。夏なのでまだ日は高いが、街には夕方がひっそりと近づいていた。空の色で分かる。
五分ほど走ってから、街なかで師匠は降りた。僕も自転車を降りて並んで歩く。そして歩きながら考えをまとめた。
巨人感覚症候群。まるで自分が大きくなってしまったかのような感覚を生じている、他者からはけっして目に見ることができない巨人たち。
862巨人の研究後編コピ18:2012/02/24(金) 13:34:15.84 ID:AVSsPknX0
「あの子たちは、目を開けていると普通なんですか」
「そうだな。視覚や知識など、本来そうあるべき大きさを補正できる手段があるならその触覚の異常は起こらないみたいだ。
いつもつけている下着なんかも視覚には入っていないから大きく感じられそうだけど、それは自分がつけているものがどんなものなのか知っているから大丈夫なんだな。
あ、そうか。愛用のコップって書いたのはまずかったか」
アンケートの最後の設問のことらしい。
あれで巨人感覚症候群に罹患しているかどうか調べるつもりだったのか。手に持った時にコップが異様に小さく感じられると? どちらにしてもピンと来る人には通じただろうから、今日アンケートに回答してくれた人の中にはいなかったに違いない。
「でもな。視覚や知識で補正できるって言っても、病状の初期段階に過ぎないからなのかも知れない」
ぞくりとした。
足が止まりかける。周囲には色々な人が所狭しと歩いている。駅前の大通りだった。
「噂を聞いた時からわたしはそれを懸念していた。何か恐ろしいことが起こるなら、そこから先じゃないかと。さっきセンセイに確認したんだ。精神病床の入院患者の中には、実際に『すべてが小さく見える』と訴える人が、わずかながらいるらしい」
まさか。と思った。それが小人の目撃談と関係しているのか。
「最初に、巨人が増えているって言ってたのは、このことですか」
冗談だと言っていたのが、まるきり真実をついていたというのか。まさか、本当に彼らは症状が進むことで触覚や視覚だけでなく、実際に巨人化して行くとでも言うのだろうか。
師匠は笑い出した。
863巨人の研究後編コピ19:2012/02/24(金) 13:39:22.60 ID:AVSsPknX0
「おいおい。それこそフィクションだよ。そんな無茶苦茶なこと起こるわけないだろ。
まあ二メートル半ばくらいまでなら成長ホルモンの過剰分泌による巨人症でも起こりうるから、一概には言えないが。
でもそんな視覚にまで症状が進行している人自体もまだごく少数だし、それに彼らがその目で他の人間を見て、小さい人がいる、と思ったとしても、それが今街じゅうで湧き出している小人目撃談のオリジナルになりえるかな」
そう言われてみると確かにおかしい。
そこまで病状が進んだ人が、人口に膾炙する噂を流す環境におかれているだろうか。精神病床に入院中ならもちろんそんなことはないだろうし、入院していなくとも、これは人間が小さく見えるどころの話ではないのだ。
すべてが小さく見えるのなら、そんなことを言う人の話を周囲がまともにとりあってくれるだろうか。
それに僕自身が否定しているのだ。小人の話を普通の学生の友だちから聞いたのだから。彼らに取り立てておかしなところはなかった。
特に二人目の女の子の話は、小人が牛乳配達の箱の中にいた、というものだった。箱は普通なのに、人だけが小さく見えている。
まるで噛み合わない。
では一体どういうことだ。巨人感覚症候群と、小人目撃談。嵌りそうで嵌らないパズルのピースだ。
「今日のアンケートで小人を見たという人たちの共通点に気づいたか」
「共通点、ですか」
少し考えたが、まだ集計していないのではっきり思い出せない。
「小人を見たという人たちは全員、今までに体験した心霊現象の項目で小人以外にもチェックを入れていた」
「えっ。そうでしたっけ」
そう言われればそうだったかも知れない。小人の話だけ詳しく訊いたので他の話には食いつかなかったけれど。
864巨人の研究後編コピ20:2012/02/24(金) 13:46:13.17 ID:AVSsPknX0
「全員、幽霊を見ていたな」
そうか。僕もそうだ。
足元の小石を軽く蹴り、師匠は自分のペースで歩き続ける。僕はその横に並んで人の波を避けている。
「今日の巨人感覚症候群の発症者二人も幽霊を見ていた。この符合の意味するところが分かるかな」
かぶりを振る。しかし頭の中にはぼんやりした答えのようなものが浮かびつつあった。
「私は巨人感覚症候群の発生原因には、霊感が関係していると考えている。
ある地域に限定して起こっているという部分で、その原因がある程度は絞られてくるだろうが、細菌やウイルスの飛沫感染や、なんらかの公害、そして特定の多層建築物を媒介とした高周波による脳への影響など、どれもしっくり来ないんだ。
それは私自身感じているある感覚の存在のせいだ」
「ある感覚?」
オウム返しに訊く。
「衝動。叫び。そうだ。咆哮のようなもの。説明しにくいが、耳には聞こえず、幻聴ですらない何かそういうものが、頭の中を通り抜けている気がする。今も」
思わず耳を澄ましたが、ざわざわした雑踏の音しか聞こえない。
「霊感の強い人間はこういうものに影響されやすい。そしてその中でも、普段から心の病を抱えている者や、入院中で心身が弱っている者はそれが如実に現れるんじゃないだろうか」
「それが巨人感覚症候群だと?」
言葉とは裏腹に、師匠は確信めいた表情で頷いた。
865巨人の研究後編コピ21:2012/02/24(金) 13:50:17.59 ID:AVSsPknX0
「だけどまだ分からないことが多すぎる。何故自分が巨人だと感じてしまうのか。それが進行した時に何が起こるのか。その衝動、咆哮の主体は一体何なのか…… でも現時点で推測できることが一つある」
「それはなんですか」
ドキドキする。師匠と出会ってから何度味わったか分からない高揚感。
「それはね」と師匠は僕の方を向いて言った。「その衝動、咆哮に影響を受けているのはそういう弱い人間だけではないんじゃないかってこと。
浮遊する霊体。地縛される魂。人間の死後に現れるそうした存在も、影響を受けうると考えている。幽霊に、その者が生前信じていた宗派の経文や祝詞を唱えると苦しがったり嫌がったりする。これはもちろん『幽霊はこういうものに弱い』という生前の記憶がそうさせるんだ。
そして人間が怖がるものを同じように怖がるというパターンも多い。犬がその代表か。そんな幽霊にこの得体の知れない存在からの咆哮はどう影響されるのか」
「同じ、なんですか」
「そうだ。人間と同じように、この街に存在する幽霊も、その一部がこの巨人感覚症候群と同じ症状に陥っている」
空はまだ高く、夕闇にはまだ時間がある。アスファルトは日中の熱をこもらせて、分厚い空気を足元から立ちのぼらせている。
なのに、どこからともなく寒気がひたひたと押し寄せて来ている気がした。
866巨人の研究後編コピ22:2012/02/24(金) 13:53:22.66 ID:AVSsPknX0
「霊体たちが、巨人化をするとでも言うんですか」
師匠は「違う」と首を振った。
「お前は知っているはずだ。霊はあるべき姿で現れると。若く美しいころの姿で現れる女性の霊。その後に殺された時の血まみれの姿で現れる場合。生命活動が停止し、腐乱した状態で現れる場合。腐敗が進み、骸骨となった姿で現れる場合。
どれもありうる。選ぶのは霊自身だ。己のあるべき姿を。生きている人間のようにはこの物質的世界に束縛されないからこそ、そんなことが起こる。中には生前にはなかった姿へと変貌を遂げる場合もある。四肢の増減や五体の変形。動植物との融合。
怪物化。様々なケースがある。そんな霊が、巨人感覚を得てしまったらどうなるか。想像してみるといい。己の周囲にあるものすべてが小さい。小さい。小さい。まるで違う世界にいるようだ。己が望んだわけでもないのに。その時、あるべき姿はなに?」
寒気が。意思を持ったように体中を這い回る。
師匠が僕を試すように見つめている。
「あるべき姿は…… その小さな世界に適合するための身体」
僕は震える声で呟く。その後を師匠が継ぐ。
「そうだ。そのためにみんな小さくなる。彼らはみな、巨人であるがゆえに、小人なんだ」
師匠と僕の間にあるわずかな空間を、見ず知らずの人々が通り抜けて行く。僕は息を止めてその瞬間を目に焼き付ける。
867巨人の研究後編コピ23:2012/02/24(金) 14:01:25.29 ID:AVSsPknX0
向かい合った師匠が真っ直ぐにこちらを見ている。
小人を見る人が増えているということは、巨人が増えているということだ。
自ら冗談だと苦笑した師匠の言葉が頭の中に蘇る。
冗談だって?
ただの方便だ。師匠は始めから分かっていたに違いない。
アンケートで小人を見たと答えた人たちが、全員幽霊を見たことがあったということもこれで説明がつく。彼らは、そしてこの僕も、ただ幽霊を見ていただけだったのだ。
巨人であるかのような感覚を得てしまったがために、小人になってしまった霊体を。だから目撃例がパターン化されない。幽霊の現れ方など、それこそ千差万別だからだ。
師匠は講義終了とでも言いたげな表情を浮かべ、再び前を向くと歩き始める。僕はそれを呆然と見ている。
その周りを沢山の人々が行き交っている。誰も僕らのことを見ていない。スーツ姿の師匠が自転車の後輪に立ち乗りしていた時にあれほど集まっていた視線が、今はもうない。
女が一人ただ歩いているだけでは、大通りの中の取るに足りない景色の一つに過ぎないとでも言うように。
けれど僕は雑踏の中で立ち止まり、自転車のハンドルを支えたまま、彼女の後ろ姿を見つめている。
どうしてみんなは見ていないのだろう。僕と同じように。
信じられなかったのだ。
この人を知らないで、平気でいられる世界が。

(了)
868巨人の研究後編コピ24:2012/02/24(金) 14:02:16.04 ID:AVSsPknX0
(幕のあとで)


――わたしはしっている

ハッとして周囲を見回す。師匠の背中を見つめたまま、つかの間ぼうっとしていたところから現実に引き戻される。
なんだ今の声は?
どこからともなく聞こえた気がした。けれど、本当に声だったのだろうか。耳に声色が残っていない。白昼夢、いや、幻聴だろうか。
雑踏の音が大きくなった気がする。そばを歩くビジネスマンの肩が当たる。よろけそうになりながら、僕の目はある存在に気づいた。
やはり幻聴だったのだろう。それを見たことにより、頭の中でその言葉が連想されたに過ぎない。
大通りを歩く人々の中に、たった一つこちらを向いている顔があった。道路を隔てた向かい側の歩道に、それはいた。身じろぎもせずに、じっと師匠の方を向いている。
白い仮面。のっぺりとして目鼻の形に表面が凹凸している。目の部分が開いているのかも判然としない。距離が離れているせいか、服装もよく分からない。ただ行き交う歩行者の群の後ろに白いその顔が浮かび上がって見えている。
師匠もいつの間にか立ち止まっている。その存在に気づき、睨むようにそちらを見ている。
ただならないものを感じて、僕はゆっくりと師匠のもとへ近寄った。
「なんです、あれは」
「見たことがある。あの仮面」
師匠の声が高ぶっている。震えているようだ。
「なんとかっていう劇団のポスターにあった」
869巨人の研究後編コピ25:2012/02/24(金) 14:02:59.06 ID:AVSsPknX0
劇団?
そう言われてみると覚えがある気がする。確かあまり有名ではない小劇団だったはずだ。街なかでちらほらとポスターを見かけるが、どこの劇場で公演しているのかも知らない。ただ、全員が白い仮面を被って演じている舞台写真が載っていた。
前衛的なのか、それともそういう手法が一ジャンルとしてあるのか。
「ずっと感じていた視線は、あいつか」
猫の毛が逆立つように、師匠の身体の周りに針のように尖った空気が発散されているのを感じる。
今日出発した時から師匠が言っていたのはこのことだったのか。
どうしてこのタイミングで?
そう思った瞬間に、もう答えはあった。どう考えても、一連の巨人あるいは小人に関する出来事と無関係ではない。
白い仮面の人物は少し俯いたかと思うと、クックッ、と小刻みに顔を上下させた。
笑っている。
間を隔てる片側三車線の道路を沢山の車が通る。前が詰まり、大型バスがゆっくりと僕らの視線を遮った。
十秒。十五秒……
870巨人の研究後編コピ26:2012/02/24(金) 14:03:28.76 ID:AVSsPknX0
やがて動き出したバスが去った後には、もう白い仮面は見えなかった。初めからいなかったかのように。
僕は師匠の性格は知っているつもりだ。
気にいらない相手に対してキレると、すぐに行動に移す。たとえ相手が誰であってもだ。何度もそれを見てきた。道路を車が走っていようが、それをかわしながら最短距離で向かって行くのが師匠のはずだった。
その師匠が動かない。
いや、動けないでいる。
顔色が蒼白だ。唇からも血の気が失せている。僕にもあの仮面の人物のただならない雰囲気は感じられたが、師匠はそれ以上に異様とも言える反応をしていた。
僕は何か話しかけようとして、それが出来ないでいる。雑踏に立ち尽くしている僕らを、みんな迷惑そうに避けて行く。
やがて師匠がこちらを向いて、蒼白い顔のまま口の端だけを上げて笑った。
 
(完)
871本当にあった怖い名無し:2012/02/24(金) 14:06:02.40 ID:+cmV2pb50
ウニじゃないけど、ホンモノ?
872本当にあった怖い名無し:2012/02/24(金) 14:32:56.67 ID:EH7aJe9u0
>>871
しね
873本当にあった怖い名無し:2012/02/24(金) 15:20:22.50 ID:wr6Svuj/0
コピペ乙
中編も頼むよ
874本当にあった怖い名無し:2012/02/24(金) 17:19:21.51 ID:+cmV2pb50
>>873
中編は師匠シリーズスレにあり。
875本当にあった怖い名無し:2012/02/24(金) 18:48:28.32 ID:Mvr8MTsJ0
何なの嵐なの?それとも週末に先手打ってウニに嫌がらせ?
876本当にあった怖い名無し:2012/02/24(金) 18:53:13.02 ID:HeOpYb1f0
中編かと思ったら後編やないか〜い
乙と言って良いのか?
中編を頼む!
877本当にあった怖い名無し:2012/02/24(金) 18:53:19.86 ID:HA7DpqHN0
ドヤ顔でコピペしてるの想像すると笑えるなw
878本当にあった怖い名無し:2012/02/24(金) 19:07:23.96 ID:3H2tRJA+0
ウニへの嫌がらせなのかみんなに褒めてもらいたかったのか
879本当にあった怖い名無し:2012/02/24(金) 20:00:55.34 ID:IH5pgSvN0
>>845
ひでぇーーー!!!

ウニ本人が投下してるのに、なんでコピペ投下してんだよクズ!!!

お前一般常識ねぇの?!
信じられない!!!

ひっこんでろ!!

本気で頭きたわ!!
880本当にあった怖い名無し:2012/02/24(金) 20:12:37.94 ID:w7rrlyVk0
おk
881本当にあった怖い名無し:2012/02/24(金) 20:31:45.49 ID:w7rrlyVk0
ウニさん待ちです
882本当にあった怖い名無し:2012/02/24(金) 21:24:12.81 ID:ifwssBWvO
>>845

最悪だな…
ウニさんを追い出したいのか!?

883本当にあった怖い名無し:2012/02/24(金) 21:37:23.39 ID:jm7jY4ba0
そんなことで追い出されるようなタマじゃないと思うがw
でも感じ悪いのは確かだな‥‥
884本当にあった怖い名無し:2012/02/25(土) 06:43:04.96 ID:Hq0Hh0qW0
うん(笑)
それにスレ全部読んでないかも
885本当にあった怖い名無し:2012/02/25(土) 13:52:57.58 ID:ZCwwJmZn0
僕の目を見つめたまま、師匠はささやく。
「わたしは巨人を六つに分類したな。
 第一の分類は『伝説上の巨人』
 第二の分類は『巨人症による巨人』
 第三の分類は『UMAとしての巨人』
 第四の分類は『人類の縁戚としての巨人』
 第五の分類は『妖怪としての巨人』
 第六の分類は『フィクションとしての巨人』
 …………」
886本当にあった怖い名無し:2012/02/25(土) 18:41:11.79 ID:HtknXnxa0
何ここの信者・・
読めれば誰がコピペしても一緒だろ
頭来る、って何に対して頭にくるの?「ウニがコピペしなきゃヤダー」ってか?馬鹿じゃん
そもそもpixivで読めるものをここにコピペする意味が分からん
わざわざ忍法帖のレベル上げを地道にしてまですることじゃないだろ
887本当にあった怖い名無し:2012/02/25(土) 20:46:35.15 ID:zwuyLi5C0
>>886
うーん、自分の場合は、カラオケを聞かされてる気分
本人じゃないけど、同じ歌詞、同じメロディーなんだから一緒だろ?

いーえ、違います

または、友達に喜んでもらおうと買っておいたプレゼントを
あれ、渡すつもりだったんでしょ?自分が家の前に置いてきたよ、
って無断で勝手なことされたら

金も出してねーおめーが、ふざけたことしてんじゃねーよ!
訴えるぞ!

ですかね
だからあんまやってほしくないなー


888本当にあった怖い名無し:2012/02/25(土) 20:56:39.45 ID:arB4wzmX0
あなた本人なの?
889本当にあった怖い名無し:2012/02/25(土) 22:32:53.02 ID:vXqws/Dg0
著作権って知ってるかな
890トランプ 前編  ◆oJUBn2VTGE :2012/02/25(土) 23:24:13.77 ID:KKcRHKWO0
師匠から聞いた話だ。


大学一回生の冬だった。
その日僕は朝から小川調査事務所という興信所でバイトをしていた。
バイトと言っても、探偵の手伝いではない。ただの資料整理だ。そもそも僕は一人で興信所の仕事はできない。心霊現象絡みの依頼があった時に、その専門家である加奈子さんの助手をするだけだ。
助手と言っても、僕のオカルト道の師匠であるところの彼女は、ほとんど一人で解決してしまうので、なかば話相手程度にしか過ぎないのではないかと、思わないでもなかった。
「おい、どうした」
声に振り向くと所長の小川さんが奥のデスクで唸りながらワープロを叩いていた。
雑居ビルの三階にある事務所にはデスクが五つあるが、いつも使われているのは小川さんが座っている奥のデスクと、そのすぐ前に二つ並んでいるデスクだけだった。あとはダミーだ。
いや、見栄というやつなのかも知れない。僕は県内最王手のタカヤ総合リサーチを除いて、小川調査事務所以外の一般的な興信所というものを知らないが、そんなに何人も所員を抱えている興信所なんて普通にあるとは思わない。
しょせん自営業だ。依頼客もそのくらい分かっていると思うのだが。
その使われているデスクにしたところで、師匠の指定席はたいてい開店休業状態。
何日も資料集めをして必要な情報を得る、というようなスタイルではなく、お化け絡みの話とくればとりあえず出向いて、そのままたいてい即解決、という実に効率の良い仕事をしているのでデスクは依頼完了後に報告書を作るためにちょろっと使うくらいだった。
「まじかよ、おい」
小川さんはのけ反るように椅子にもたれかかり、天井を仰ぎながら左手で顔を覆った。その指には煙草が挟まれている。
僕は新聞記事のスクラップを整理する手を止め、振り向いた。
「どうしました」
そう問いかけると、小川さんは忌々しそうにワープロを小突きながら深い溜息をついた。
「作りかけの報告書が消えた」
「保存してなかったんですか。まめに上書きしないと」
「……」
それには答えず、煙草を消してから伸びをして立ちあがる。そして洗面所の方へ向かった。
891トランプ 前編  ◆oJUBn2VTGE :2012/02/25(土) 23:26:21.42 ID:KKcRHKWO0
小川さんは世に出回りはじめたばかりのワープロのような現代の利器には疎いのだが、字を書くのがあまり得意ではなかったので苦心して使っているらしい。
それでもこうしたトラブルのたびに毒づいて、「エデンのリンゴ」だとわめいた。
知らないなら知らないで良かったのに、なまじ知ってしまったがためにその功罪のすべてを身に背負うことになってしまったことを嘆いているらしい。
やがて洗面所から出てくると、小川さんは幾分さっぱりした顔で「昼飯食いに行こう」と言った。
もうそんな時間か。
「奢りなら」と言うと、すました顔で胸ポケットを叩く。
そんなところに財布が入っていないのは知っているし、どうせボストンなのだろう。いつもツケで飲み食いしては、翌月の支払いの時に、親を殺されたような哀しそうな顔をして払っているのも知っている。
しかし僕も労働基準法違反ではないか、という低時給で働いている身の上なので、奢ってくれるというのなら遠慮などしない。
「服部もどうだ」
もう一つの席にも水を向ける。
服部さんは僕と同じバイトの身だが、本格的に小川所長の助手として働いていて、お化け担当の加奈子さんと異なり、『まともな』興信所の仕事をしている。
「……」
服部さんは無言のまま、弁当が入っているらしい包を手に提げて見せた。
「そうか」
小川さんも苦笑いをして、無理には誘わなかった。
僕は未だにこの服部さんという男性のキャラクターがつかめないでいた。
年齢は加奈子さんと同じくらい。いわゆるフリーターで、この小川調査事務所では無難に仕事をこなしているようだが、いかんせん無愛想でニコリとも笑っているのを見たことがなかった。
自分からは話しかけてこないし、こちらから話しかけても反応がないことが多い。電話対応など、事務的なものはそれなりにやっているが、この事務所にいる人間についてはその全員を嫌っているかのような冷たさだった。
特に眼鏡の奥の目が怖い。
892トランプ 前編  ◆oJUBn2VTGE :2012/02/25(土) 23:27:42.30 ID:KKcRHKWO0
つねに物静かで存在感が薄く、事務所内に一緒にいてもいつの間にか彼がいることを忘れていることがあった。
一度など、小川さんと加奈子さんと僕とで一全員緒に外出した時、留守にするので当然事務所に鍵をかけて出て行ったのだが、戻って来て鍵を開けると服部さんが一人でデスクに向かって仕事をしていた、なんてこともあったりした。
尾行が得意で、かつて所属していた大手興信所ではエースとして鳴らしていた小川さんに言わせても、「あいつはあれだけで食っていける」とのことらしいが、エース云々からして自己申告なのであてにはならない。
そして加奈子さんは服部さんのことを陰で『ニンジャ』と呼んでいた。名前とも掛けているらしい。
この興信所のバイトに本腰を入れているところを見ると、将来はこの道に進みたいのか、とも想像するが、この仕事はいわば客商売であり、この対人スキルで大丈夫かと他人事ながら心配になる。
「じゃ、ちょっと出てくる」
そう言ってドアに向かう小川さんの後を追いかける。服部さんは顔も上げなかった。


ボストンは小川調査事務所の入っている雑居ビルの一階にある喫茶店で、五十年配の脱サラ組らしい髭のマスターがやっていた。いつも客のいないカウンターを「塗装が剥げるんじゃないか」と心配するほど丁寧に拭いている。
アルバイトで女の子を一人雇っていて、ひかりさんという僕より二つ年上の専門学校生のその人のことを、加奈子さんは「マスターとできてるんじゃないか」と下世話な想像を活発に働かせてニヤニヤしていた。
「いつもの」
カウンターのお気に入りの席につくと、小川さんはそう注文する。これでナポリタンが出てくるはずだ。
僕は少し考えて「メープルトーストとアメリカン」と言った。
この店はコーヒーも料理もたいしたものは出てこないが、メープルトーストだけは別だった。
使っているメープルシロップは市販のものではなく、なんでもマスターにはカナダに移住している親類がいて近所の農家が作っているものを分けてもらっているらしいのだが、それをわざわざ空輸で送ってもらっているのだそうだ。
893トランプ 前編  ◆oJUBn2VTGE :2012/02/25(土) 23:29:11.22 ID:KKcRHKWO0
親類に「日本で出てくるのとは全然違うから」と、一度おすそ分けでもらったものを食パンに塗ってみると、これが想像以上においしかったため、無理を言って定期的に送ってもらうようにし、喫茶店のメニューに加えたのだった。
確かに美味い。ふんわりとキツネ色に焼き色のついたトーストの食感と、甘みのなかにメープルの独特の苦みと風味があり、これをコーヒーで胃に流し込むのは至福のひとときですらあった。
並べられたものを無言で食べていると、カウンターの奥のテレビが連続通り魔事件の続報を告げていた。
「これ、まだ捕まってないんですね」と僕が言うと、マスターは口髭を撫でながら「みたいだねえ」と心配そうな口調で返した。「でも変な事件だよね」
このところ市内では弓矢を使った通り魔事件が連続して発生しており、その凶器の特殊性からすぐに犯人は割り出されるものと思っていたが、思いのほか未だにその犯人は捕まっていなかった。
「どうです、名探偵」
いたずらっぽくマスターにそう振られて、小川さんは手をひらひらさせる。
「警察を出し抜いて事件を解決する探偵なんて、あれはドラマの中だけの話ですよ」
「でも、そういうのにあこがれて今の仕事についたんじゃないんですか」
僕からの側方射撃にも動じず、「まったくないね。生まれついてのリアリストだから」と言った。
加奈子さんのような心霊現象専門の調査員を雇っておいて、リアリストが聞いて呆れる。
「だいたいメリットがないでしょう。家賃の支払いにもキュウキュウしている自営業の悲哀でしてね。依頼人もいないのに社会的道義で動くような正義超人にはなりたくてもなれません」
「では、依頼があったら?」
マスターにそう訊かれ、小川さんは口ごもった。そしてしばらくして、ふ、と鼻で笑うだけだった。
昼のニュースが終わって、なにかのドラマが始まったのでマスターはテレビを消した。
相変わらずほかの客は来ない。ウェイトレスのひかりさんもカウンター席に腰掛けて暇そうにしている。
食事を終えて一服をしていた小川さんが「よし」と短くなったタバコを灰皿に押し付けようとした時だった。
894トランプ 前編  ◆oJUBn2VTGE :2012/02/25(土) 23:30:15.03 ID:KKcRHKWO0
ふいにカウンターの隅にある電話が鳴った。クラシックな黒電話だ。
マスターが受話器を取り、「喫茶ボストンです」と出る。二言三言交わした後、黒電話をカウンターの上に持って来て、「君に」と受話器を向けた。
驚いたが僕はそれを受け取り、「もしもし」と言った。
『喫茶店で昼飯か、いい身分だな。またメープルトーストだろう。好きだなお前。それより今からちょっと仕事手伝え』
加奈子さんだ。
漏れた声が聞えたのか、横にいた小川さんがクスリと笑う。
『いいか。まずマスターに紙とペンを借りろ』
顔を上げると、すでにマスターが半紙とマジックペンをこちらに差し出していた。先に伝えていたのか。有無を言わさず、というやつだな。
「で、どうするんです」ひかりさんにメープルトーストの皿とコーヒーカップを片付けてもらって、カウンターの上に半紙を置いた。なぜかわくわくして来くるので不思議だ。
『紙にトランプのマークのスペードとハート、クラブ、ダイヤを並べて書け』
「は?」
妙な指示だ。
「並べるのはタテですか、ヨコですか」
『どっちでもいいけど、じゃあタテに書け。で、スペードのヨコに東、ハートのヨコに西、クラブのヨコに南、ダイヤのヨコに北と、漢字で書く。いいか、東西南北だ』
言われたとおりにする。
「書きましたけど」
『OK、じゃあ次は空いてるところに同じようにまず1から13までの数字を書け』
「タテでいいですか。……はい。書きました」
『次はその数字のヨコに、それぞれこう書くんだ。1には山、2には川、3には野原の野……』
師匠は次々に一文字の漢字を口にしていった。僕は言われたとおりにペンを走らせる。
完成したものを確認すると、こうなっていた。
895トランプ 前編  ◆oJUBn2VTGE :2012/02/25(土) 23:39:29.60 ID:KKcRHKWO0
スペード 東
ハート  西
クラブ  南
ダイヤ  北

1  山
2  川
3  野
4  沢
5  森
6  村
7  岡
8  田
9  崎
10 口
11 方
12 條
13 尾

なんだこれは?
首を捻った。なにがしたいのだろう。
『いいか。この電話を切って、十分か二十分かしてからまた電話が掛かって来る。小さな女の子からの電話だ。その子がある名前を告げて、その人はいますか? と訊ねてくるから、誰あてであってもマスターに電話を回してもらって、お前が出ろ』
「誰あてでも、ですか」
『そうだ。もちろん女の子以外だったら別件だ。その場合普通にボストンに掛かって来た電話だから関係ない』
「その、女の子からの電話に出て、どうするんです」
『トランプのカードを読み上げるんだ』
「カードって、ハートのエース、とかですか」
『そうだ。今作ったその表を見て、呼ばれた名前に対応したカードを読むんだ』
896トランプ 前編  ◆oJUBn2VTGE :2012/02/25(土) 23:42:50.87 ID:KKcRHKWO0
名前?
そう言われてじっと紙に書かれた文字を眺める。
やがて気づいた。なるほど。スーツが名字の一文字目、そして数字が二文字目に対応しているのか。
例えば西山であれば、スーツはハート、そして数字は1だ。つまりハートのエースと言えばいい。
南野であればクラブの3、北條であればダイヤのクイーン、東尾であればスペードのキング、という具合だ。
「カードを読み上げる、それだけでいいんですか」
『ああ。それでもう電話を切っていい。いいな。頼んだぞ。あ、あと所長もいるんだろ。ちょっとお前を借りるから、って言っといて』
そう言い置いて電話は切られた。いつものことだが一方的だ。
マスターとひかりさんは興味津々といった様子で僕を見ている。小川さんは「面白そうだな」と言った後、席を立ちながら「先に戻っとくから」と僕に手を振って、その返す刀でマスターに『ツケデヨロシク』のブロックサインを送る。
慣れたものでマスターの方は『リシガツクヨ』というブロックサインを投げてよこす。小川さんはひかりさんにも妙なウインクを送ってから、店のドアを開けて出て行った。カランという可愛らしい音がした。
残された僕はマスターとひかりさんに愛想笑いをしてから、またカウンターの紙に目を落とす。
師匠がなにをしたいのか、それを読み取ろうと奇妙な暗号表を睨んでいると、マスターが「いる?」と言ってトランプを差し出してきた。
喫茶店のカウンターには本当にいろいろなものが置いてあるものだ。
「ああ、いや、たぶんいらないです。すみません」
そうして僕は紙と睨めっこを続ける。
名前か。トランプに対応した名前。その名前の人物に電話を掛けて来る女の子。その子は何者なのだろう。仕事を手伝ってくれ、といっていたが、小川調査事務所の仕事なのだろうか。なんだか遊んでいるようにしか思えない。
トランプか。手品か何かでもしたいのだろうか。
そう思った瞬間、閃いたものがあった。
897トランプ 前編  ◆oJUBn2VTGE :2012/02/25(土) 23:46:50.06 ID:KKcRHKWO0
そうか。手品だ。相手の選んだカードを当てるマジック。自分で選んだように思わせて、その実、最初から決められたカードを手に取らせている。
あるいは、どれを選んでも残ったカードの山に戻した時点で巧妙にすり替えられている。
そう、ある決められたカードに。
選んだカードを見もしないで当てるのだが、単純に「あなたが選んだのはハートのエースですね」などと言ったり、あるいは山から抜き出して見せたり、といったものはありきたりだ。
かわりに、カードを選んだ人のポケットから出てきたり、レモンの中から出てきたり、といった演出をテレビで見たことがあった。
あるいは、「あなたが選んだカードをあらかじめ予知していました」などと言って密封された封筒から出して見せたりもする。
これはその一種だ。
たぶん師匠はこう言うのだ。
『わたしには予知能力者の知り合いがいて、その人はあなたが選んだカードのことをあらかじめ知っている』と。
あるいは透視能力者かも知れない。
そしてその透視だか予知だかの能力者の名前と電話番号を告げて、その子自身に掛けさせる。
もちろん名前はこの暗号表の法則に従っている。
最初からカードが決まっていないということは、ある決められたカードをテクニックで選ばせるのではなく、その子がランダムに選んだカードを何からの方法で盗み見て、そのカードを名前の暗号を使って僕に知らせるのだ。
師匠はすました顔で黙ったまま、女の子が自分自身でそれと知らずに答えのキーを運ぶのを見ている、という寸法だ。
さっき自由に抜き出して選んだばかりのカードを、電話に出た見ず知らずの人が当ててしまう。
これは確かに驚くだろう。
師匠の仕掛けに気づき、僕は満足して顔を上げた。
カウンターの向こうでは、僕が使わなかったトランプを箱から出してマスターとひかりさんがババ抜きを始めていた。
まだほかの客は一人も来ない。
平日とはいえ、昼時にこれでは経営が心配になってくる。
898トランプ 前編  ◆oJUBn2VTGE :2012/02/25(土) 23:48:34.64 ID:KKcRHKWO0
もっとも、このボストンは昼は喫茶店だが、夜になると酒と簡単なツマミを出すバーに変わるのだ。そちらは多少客が入っているらしい。
謎を解いてしまった僕は、その女の子からの電話が掛かって来るまで手持ち無沙汰になってしまった。
仕方なくカウンターに頬杖をつきながら、目の前で白熱するババ抜き勝負を見るともなしに見ていた。
タイマンなので、自分が持っていないカードは必ず相手が持っている。ようするにババ以外を引けばペアが成立するのだ。おかげで見る見る両者の手札は減っていったが、だんだんとババを引く確率が上がってきた。
ひかりさんが「あ〜」と言ってくやしそうに引いてしまったババを自分の手札に入れ、入念にシャッフルを繰り返す。
お互い手札が残り四、五枚、というところで店の電話が鳴った。
マスターがカードを伏せて電話に出る。
「はい。喫茶ボストン」
「……」
電話の相手はしばらく何も喋らなかった。
思わずそちらに耳を寄せる。
僕はその無言の中に、なにか警戒をしているような空気を感じ取っていた。
やがてボソボソという声が漏れ、マスターが奇妙な表情を浮かべた。そして首をかしげながら、僕の方を見てこう言った。
「浦井さんはいますかって。女の子から」
浦井さん?
僕は思わず聞き返した。マスターは頷きながら受話器をこちらに差し出す。
浦井と言うと、加奈子さんの名字ではないか。
これはどういうことだ。
東西南北と1から13の数字に対応した漢字を合わせた名前で呼んで来るのではなかったのだろうか。
まったく関係のない電話かとも思ったが、タイミングが合い過ぎている。電話をして来たのが女の子であること。そしてここにいない人物の名前を呼んだこと。
それなのにどうしてそれが暗号表に出てくる名前じゃないんだ。
899トランプ 前編  ◆oJUBn2VTGE :2012/02/25(土) 23:50:05.55 ID:KKcRHKWO0
これではなんと答えていいのか分からない。
受け取ったものの、送話口を手のひらで塞いだまま僕は途方に暮れた。
もしかすると、その師匠になにかあったのかも知れない。考えもまとまらないまま、恐る恐る受話器を耳に当てる。
「はい」
すると女の子の声が聞えて来た。
『……あ、浦井さんですか。私が選んだカードはなんですか?』
無邪気な声。
マジックだ!
僕が予想した通りのマジック。女の子は、電話口に出たのが予知能力者か、あるいは透視能力者だと思っている。
なのにどうして、『浦井』なんだ。どうして。
手元の紙に目を落とす。なにか見落としていたのだろうか。
次第に高まっていく鼓動を抑えながら、目を皿のようにするがなにも見つからない。
『もしもし?』
女の子の声が不審そうな声色を帯びたのが分かった。
早くなにか答えないといけない。
ああ、ちょっとまってね、だんだん見えてきたよ、もう少し。などと言って間を持たせた方がいいのだろうか。しかし予知能力者だか透視能力者だか知らないが、どんな触れ込みで紹介されたのか分からない現状で、余計なことは言いたくなかった。
どうしよう。どうしたらいい。
師匠は僕に『頼んだぞ』と言った。どうすればその師匠の期待に応えられるのか。
うろたえて僕は喫茶店の中を見回す。狭い店内だ。マスターの趣味で帆船の模型がいくつか飾られている。
そのマスターはひかりさんと一緒に僕のことを見ている。カウンターにババ抜きのカードは伏せられたままだ。
四枚と五枚。ひかりさんの方が一枚多い。ああ。考えがまとまらない。
余計なことばかり考えている。奇数の方にババがあるのだろう。つまりひかりさんが今ババを持っている状態だ。どうしよう。どうしよう。あてずっぽうでも何か答えた方がいいのだろうか。ひかりさんが今ババを…… ババ……?
900本当にあった怖い名無し:2012/02/26(日) 00:52:42.89 ID:IBODFeIx0
ウニ来てたのか!
901トランプ 前編  ◆oJUBn2VTGE :2012/02/26(日) 01:18:17.84 ID:qCTJ1d4N0
その時、僕の脳裏に直感がやって来た。
ゆっくりと、電話の向こうの顔も知らない女の子に返事をする。
「きみが選んだカードは、ジョーカー。ジョーカーだよ」
電話口の向こうから息を飲んだような気配がした。
「それじゃあ」
僕はそう言って電話を切った。
ひかりさんが自分の手札からジョーカーを取り出して、不思議そうにそれを見ている。
僕はホッとして力が抜けた。思わず笑いが込み上げて来る。
「ジョーカーですよ。ジョーカー。あの人、ジョーカーを抜き忘れたんです。それを女の子に引かれたものだから、苦し紛れに暗号表に出てこない自分の名前を教えたんですよ」
「ああ」
とマスターは大袈裟に手のひらを打って頷いた。
「とっさに馬場さん、という名前にしなかったのはさすがに露骨過ぎたからですかね」
僕はひかりさんの手の中のジョーカーを指さした。
カードの中では道化師の恰好をした男が滑稽なポーズを取っている。
ひかりさんはそのカードを手札に戻し、軽く切り混ぜた。そしてマスターに向かって裏面を広げ、「かかってこい」と言う。
再開されたババ抜きを尻目に、僕は自分でコップに水を注いで息をついた。
さあ、新聞のスクラップの整理に戻ろうかな。と考える。もう少しサボっていたい気もするが、師匠の方の用事はこれで終わりだろう。
あの大量の新聞記事のことを思うと少し憂鬱になった。
もともと日付ごとに小川所長の興味を引いたローカル記事がきちんと並べられてファイリングされており、その日になにがあったかを調べるには都合が良かったのだが、ある特定の事件を遡って調べるには向いていなかった。
そこで今ある記事をすべてをコピーして、内容の種類ごとに分類したうえで、さらにそれを日付ごとに整理して別々のファイルに閉じる、という作業を命じられたのだ。
殺人、傷害、窃盗、詐欺、事故、火事、イベント、政治、行政などといった大まかなインデックスを小川さんが作ったので、それに合う記事を僕が片っ端から並べていくのだ。
902トランプ 前編 ラスト  ◆oJUBn2VTGE :2012/02/26(日) 01:19:03.11 ID:qCTJ1d4N0
しかしなかには分類が難しい記事もあり、単純に『その他』に放り込めればいいのだが、例えば強盗殺人のあと放火した、なんていう複合的な記事はどこに入れていいのか分からない。
小川さんに訊くと、少し考えた後で「それぞれの分類のとこにコピーして閉じといて」と言う。
余計に仕事が増えた。ファイルの数も倍になるかと思いきや、倍ではきかないようだ。
時給さえちゃんともらえればいいのだが、あまり客の訪れない事務所や、小川さんのだらしないスーツの着こなし方、そしていつもの半分ふざけたような態度を思い出すにつけ、バイトを三人も使うような甲斐性があるとは思えなかった。
今のところ、バイト代は雀の涙にせよちゃんと月末にもらっているが、いつ遅配になるかわからない。
その事務所を通して依頼のある心霊現象に関する事件は、師匠のライフワークとも言える仕事であり、水を得た魚のようにいきいきと動く彼女を見ているだけで僕は幸せな気持ちになれた。
しかしそうした依頼で助手を勤める以外では、あまりこの零細興信所に深入りしない方がいいかも知れないと思い始めていた。
さあ、憂鬱な作業に戻ろうかと腰を浮かしかけた時だった。
カウンターに奥に戻されていた黒電話がふいに鳴り始めた。
「はい。喫茶ボストン」
マスターがいつもの調子で電話に出ると、「ああ」と言って僕に受話器を向ける。
「加奈子ちゃんから」
なんだろう、と思いながら電話に出ると、明るい声が聞こえてきた。
『悪かったな。ミスっちゃって。ジョーカーのことをすっかり忘れてたよ。しかし、とっさに良く気づいたな。助かったよ、ありがとう』
「貸しですよ、貸し」
加奈子さんは、生意気な、と言って電話の向こうで笑っている。
「ていうか、仕事とか言って何を遊んでたんですか?」
『いや、遊んでたわけじゃないぞ。あれも立派な仕事で……』
『浦井さんはいますか』
え?
師匠が電話の向こうで何か言い訳をしている。
しかし、その声に重なるように、別の声が聞こえたのだ。

903本当にあった怖い名無し:2012/02/26(日) 01:26:16.93 ID:IBODFeIx0
ウニ乙!さっき来たばかりだから支援できなくてすまなかった。
904本当にあった怖い名無し:2012/02/26(日) 05:21:05.27 ID:H19IHJnJ0
ウニZ!
905本当にあった怖い名無し:2012/02/26(日) 10:04:39.57 ID:5SRHeXkG0
906本当にあった怖い名無し:2012/02/26(日) 10:12:29.69 ID:s0Nw421l0
隆ラブ、赤緑乙
ウニはオリジナルもつまんねーな、後編はいらないから
907本当にあった怖い名無し:2012/02/26(日) 11:40:38.05 ID:xyRZqusH0
何でオリジナルだと判るの?すごいね
908本当にあった怖い名無し:2012/02/26(日) 11:44:44.12 ID:xyRZqusH0
あれ?途中で送信してる。。。
酉つける前のが本当に今の人か判らないよな
909本当にあった怖い名無し:2012/02/26(日) 12:01:42.04 ID:mAJpURS/O
私は続きみたいよw中学生の頃から師匠シリーズ大好きだし。楽しみー
910本当にあった怖い名無し:2012/02/26(日) 12:24:54.77 ID:Nfe+DlV/0
うーん
pixivで既に読んだからあまり感激感ないな
他意はないけど、なぜここにコピペするんだろう?URL貼れば済むんじゃないかな
911本当にあった怖い名無し:2012/02/26(日) 13:35:21.75 ID:8iNqbD2aO
912トランプ後編1:2012/02/26(日) 14:07:45.01 ID:H7Gs8mUq0
『浦井さんはいますか』
ゾクッとした。
あの女の子の声。
思わず「はい」と返事をしてしまった。
『次のカードはなんですか?』
次のカード? 透視ゲームがまだ続いているのか。
しかし様子がおかしい。
『おい、なんだ。どうした』
師匠の声がする。
「いや、女の子が」
僕がそう呟くと、電話口から緊迫した声が響いてきた。
『嘘だろ! もういないぞ』
え? 二人で一緒に一つの受話器に顔を寄せ合って喋っているのではないのか?
『浦井さん?』
女の子が語尾を上げて問いかけてくる。
913トランプ後編2:2012/02/26(日) 14:09:46.33 ID:H7Gs8mUq0
ちょっと、ちょっと待ってくれ。どういうことなんだ。
『今、あの子の声が聞こえているのか』と師匠。
「……はい」
慎重にそう答えると、別々の返事が返ってきた。
『よかった。次のカードはなんですか』
『こっちには聞こえないぞ。おい。お前の方の声は、わたしだけに聞こえてるのか?』
「いえ……」
『え? なんですか。良く聞こえない』
『まずいぞ。とりあえずお前は喋るな』
なんだか分からないが、ただ事ではないことが起きているようだ。ぞわぞわと背筋が冷たくなってくる。
マスターとひかりさんも眉をひそめてこちらを伺っている。
『ここからはわたしの指示通り動け。説明は後でする。まず、その女の子は人間じゃない。今までわたしの前にいたが、もういない。なのに電話では繋がっている。ちょっと試すぞ。いったんこっちの電話を切る』
ガチャン、という音がして師匠の声が消えた。
しかしまだ電話は繋がっている。
『もしもし? 浦井さん?』
女の子の声が、まだ聞こえていた。
914本当にあった怖い名無し:2012/02/26(日) 14:11:47.48 ID:tq0699e/O
いいかげんにしろ!!!
915トランプ後編3:2012/02/26(日) 14:13:50.21 ID:H7Gs8mUq0
姿の見えない、声だけの存在。人間じゃないだって?
僕は思わず閑散とした喫茶店の中を見回す。しかし僕たち三人以外、誰の影も見えなかった。
ふいに電話のベルの音が高らかに鳴り響き、びっくりして瞬間、背筋が伸びた。店内に設置されていたピンク電話だ。それがどこかからの着信を告げている。
いったんこっちの電話を切る、という師匠の言葉を思い出し、今手に持ったままの黒電話の受話器を見つめると自然に答えが出る。
「ひかりさん、あれ、取って」
黒電話を移動させながら、ジェスチャーでピンク電話の受話器を僕の方へ持ってきてほしいと訴える。
それぞれの電話機のコードの限界まで引っ張り、なんとか僕は両方を手に持つことができた。
「もしもし?」ピンク電話の方の受話器に口を寄せて話しかける。
『わたしだ。どうだ、まだあっちは繋がってるか』
師匠だった。いったん切ったものの、僕の方が黒電話の受話器を上げている以上、掛け直しても通話中になってしまい、繋がらないのだ。だから師匠は店にもう一つあるピンク電話の方へ掛けてきたのだった。
「よくこんな電話の番号知ってましたね」
『備えあればなんとやらだ。それよりどうなんだ』
「繋がってます。次のカードはなんですか、と訊かれています」
916トランプ後編4:2012/02/26(日) 14:16:12.85 ID:H7Gs8mUq0
『繋がってるか。まずいな。物理的にどうとかいう状態じゃないな。あの子がどこにいるか分からない。わたしもすぐにそっちに向かうから、それまで間を持たせろ。いいな。その子の電話を一方的に切るんじゃないぞ』
「ええ? 今どこなんですか」
「車だから、十分もかからない。こっちはもう切るぞ」
その時、耳を離していた黒電話の方の受話器からボソボソという声が漏れ始め、それがだんだんと大きくなってきた。
『ねえ、どうして答えてくれないの』
女の子の声。だが、聞いただけで寒気のするような声色だった。さっきまでとどこか違う。声の要素を分解し、再構築したようなどこか人工的な響き。しかしそれが耳にまとわりつくように喫茶店の中をどろどろと流れた。
『どうした』と師匠に訊かれ、息を飲みながらも「声が、変わりました」とようやく答える。「答えろと、言われています」
女の子はまた浦井さん、とこちらを呼んでいた。ということはまたカードはジョーカーなのか。
『うかつに答えるな。間違えたら何が起こるか分からない。今度の名前の指示はわたしがしたわけじゃない。その子は最初に教えた<浦井>という透視能力者にまた訊いてきただけだ。だから何のカードを引いたのかは分からない。いや、まて。
その子はなんと訊いてきた? もう一度言ってくれ』
「浦井さんはいますか? 次のカードはなんですか? と」
電話口で少し間があった。
『次のカード……』
師匠がそう呟いたのが聞こえた。そして次の瞬間、黒電話から血の凍るような声が鳴り響いた。
917トランプ後編5:2012/02/26(日) 14:19:09.14 ID:H7Gs8mUq0
『はやく、答えろろろろろろろろろろろろろろろろろr……』
鳥肌が立った。洒落になってない。
カタカタとカウンターの奥の酒瓶が音を立てている。ガラスケースの中の食器も。
目に見えない振動が発生しているのか。
パニックになって、思わず黒電話の受話器をフックに戻しそうになる。すんでのところで思いとどまり、ピンク電話の受話器に顔を押し付ける。
「師匠!」
『落ち着け。今のは電話越しにこっちにも聞こえた。いいか。一回だ。あと一回だけ当てる』
「え? なんですか」
『いま訊かれているカードだ。もうこれでこっちは電話を切る。すぐに向かうから、もしまた掛ってきてもなんとか引き延ばせ。いいな。その次のカードはわたしにも分からない。勝手に答えるなよ』
「もう間に合いませんよ」
僕の悲痛な叫びに、師匠が答えた。
『あと一回は当てる、って言ったろ。信じろ』
「じゃあそのカードはなんですか」
『ジョーカー』
一言そう告げて電話は切られた。
918トランプ後編6:2012/02/26(日) 14:21:07.44 ID:H7Gs8mUq0
だから、浦井がジョーカーに対応してたのは最初だけでしょ!
そう言い返そうとしたが、また黒電話の方から異様な気配が膨張していくのを全身で感じ、震えあがって、「もう、ちくしょう」と口の中で毒づいたあと、僕は受話器を握りなおした。
「ジョーカーだ。選んだカードはジョーカー」
そう答えた瞬間、ふ、と気配が消えた。
喫茶店の中に、喫茶店が戻ってきたような感じ。
『あたり』
小さな声がそう聞こえた。
それで電話が切れた。ツーツーという音だけが耳に入り込んでくる。
僕は放心して、そのままの格好で間の抜けた顔を晒していた。
「あの、大丈夫?」
ひかりさんの声に反応して、「え、ああ、はい」と言いながら黒電話の受話器をフックに戻す。
チン、という音がした。
静寂が戻ってくる。店の表を通る人の笑い声がドア越しにかすかに聞えてきた。
「なに今の?」
とマスターが怯えた表情で訊いてくる。
919トランプ後編7:2012/02/26(日) 14:24:24.32 ID:H7Gs8mUq0
喫茶ボストンのマスターは小心者で、たまに加奈子さんが持ち込んでくるお化け絡みのトラブルに巻き込まれては持病の胃痛を悪化させているのだそうだ。
しかし小川調査事務所の面々は数少ない店の常連だ。事務所の来客時にもコーヒーや紅茶の出前のオーダーがある。いわば上得意だ。そんな目に遭っても、出入り禁止にもできず胃薬を飲む回数ばかり増えているらしい。
「さあ、分かりません」
そう答えたが、僕にもさっぱり分からないのだ。嘘ではない。
師匠はまたあの電話が掛かってくるかも知れない、と言っていた。それを思うと店から逃げ出したくなったが、この小動物のように怯えているマスターと勝手に巻き込んでしまったひかりさんを置いて逃げるわけにもいかない。
「すぐ加奈子さんが来るんで」
と、僕はマスターにお願いして店を一度閉めてもらうことにした。ひかりさんが表の営業中と書かれた看板を裏返しに行く。どうせ今日は開店休業状態だ。そんなところにふらりとやってきた不幸な客をこんなわけのわからないことに巻き込むわけにもいくまい。
十分もかからない、と言っていたな。
店の時計を見上げる。
まだか。
今また電話が掛かってきたら、と思うと気が気ではない。あれはやばい。直感に頼るまでもなく、それが分かる。
920トランプ後編8:2012/02/26(日) 14:28:09.73 ID:H7Gs8mUq0
ジリリリリリリリリリリリリ……
心臓が縮み上がった。
一瞬、師匠からの電話かと思ったが、ピンク電話の方ではない。黒電話の方が鳴っている。女の子が知っている方の番号だ。
時計を見る。十分経っている。しかしまだ師匠は到着していない。
まずい。どうする。
冷や汗が流れる。
このまま取らなかったらどうなる?
それでやりすごせるか?
そんな言い訳めいたことを考えながら僕が動かないでいるあいだも、電話のベルは鳴り続ける。
「店あてかも知れない」
とマスターが動く。
とっさに「あ、待って」と言ったが、マスターの職業倫理がそれを許さなかった。
「はい。喫茶ボストン」
いつもの声でそう言うと、マスターはすぐに泣きそうな顔に変わった。そしてごめん、とばかり手刀を切りながらもう片方の手で僕に受話器を差し出す。
「浦井さんに、って」
きた。
921トランプ後編9:2012/02/26(日) 14:30:45.10 ID:H7Gs8mUq0
やばいって。ほんとに。
僕も泣きたくなったが、胃の辺りを押さえたマスターにそんな顔をされると受け取らないわけにもいかない。深呼吸をして、受話器を耳に当てる。
『……もしもし?』
女の子の声だ。今度は最初から少し抑揚がおかしい。いつ豹変するか分からない妖しい揺らぎを潜めているような声。
「はい」
『浦井さんですか』
「……はい」
『次のカードはなんですか?』
師匠はまだか。
わかるわけがない。
マスターを見るが、顔の前で手を高速に振っている。ひかりさんはなぜか口笛を吹きながら箒を手にして床を掃き始めた。
『もしもし? もしもし? もしもし……』
じわじわと声色が変わっていく。それと同時にゾクゾクするような悪寒が込み上げて来る。
なにか言わないといけない。
なにを。
922トランプ後編10:2012/02/26(日) 14:33:47.65 ID:H7Gs8mUq0
『もしもし…… どうして、はやく、もしもし…… 答えてくれない…… はやくこたえ』
風船だ。
目に見えない風船が膨らんでいくイメージ。空気が歪み、僕は息が詰まるような圧迫感を覚えた。
『は……や……く……』
店の中になにかが弾ける。
そう感じた瞬間だった。
タイヤが乱暴にアスファルトを噛む音がした。
そして間髪入れずに店のドアが開き、ツバつきの帽子を目深に被った師匠が飛び込んでくる。
「貸せ」
駆け寄ってきた師匠に受話器を奪われる。
「ご指名の浦井だ」
師匠が電話に向かってそう言い放つ。
「ああん? さっきのも浦井だよ。弟だ、弟。あいつはザコだ。わたしなら透視でも予知でもなんでもしてやるよ。それよりお前、どこにいるんだ」
最初から喧嘩腰だ。
923トランプ後編11:2012/02/26(日) 14:35:28.48 ID:H7Gs8mUq0
黒電話からかなりの音量で不気味な声が漏れ出てくる。
『次の……カードは……』
店の照明が揺らいだ。
ひかりさんが箒を持ったまま気味悪そうに天井を見上げる。
「訊いてばっかじゃないか。先にこっちの質問に答えろよ。どこにいるんだよ」
『次のォォォォ……カードォォォォォォォ……』
おんおんと恐ろしい音が響く。
マスターが青い顔をして耳を塞ぐ。僕もただならない空気に足が竦む。
息を飲んで師匠を見つめていると、空いている左手の指で、左の頬の下あたりをポリポリと掻き始めた。そこには古傷があり、興奮すると赤く浮き出て来て、痒くなるのだそうだ。
「上等だよ」
指の動きを止め、師匠はそう呟いた。
それを見つめている僕のうなじにチリチリと静電気のようなものが走る。
師匠の目が爛々と輝き、なにか得体の知れない力がその身体から蒸気のように吹き出てくるような錯覚をおぼえ、思わず僕は目を擦る。
「クラブの10だ」
受話器に、そんな言葉を落とす。
924トランプ後編12:2012/02/26(日) 14:47:02.35 ID:H7Gs8mUq0
電話の向こうから、空気の抜けた風船のようになにかが萎むような気配がした。
しかし師匠は追い討ちを掛けるように続ける。
「切るな。最後までやってやる。続けろ」
『  』
黒電話がなにか言った。しかし聞き取れなかった。
「スペードの10」
師匠が間髪いれずにそう答える。気のせいか、猫科の動物のように帽子からはみ出した毛が逆立っているように見える。
「ダイヤの7、クラブの7」
「ハートのクイーン、スペードのクイーン」
「ハートの2、ダイヤの2」
…………
まったく言いよどむことなくカードを答え続ける。僕らは唖然としてそれを見ているしかなかった。
ロジックなどではない。この世のものではない怪物が二頭、戦っているような気がした。
電話の向こうのトランプのカードなど僕らには何一つ見えなかったのだから。
925トランプ後編13:2012/02/26(日) 14:48:39.53 ID:H7Gs8mUq0
「クラブのクイーン、スペードの6」
「ダイヤの4、ダイヤのキング、クラブの5……」
そうして最後に師匠はふっ、と息をついて優しい声で言った。
「残りは消去法でも分かるな。スペードのジャックだ」
そうして周囲で恐る恐る見守っていた僕らに顔を向け、ウインクをしてみせる。
黒電話からはもうなんの気配も感じない。
ただどことも知れない場所とは、まだ繋がってはいるようだった。
「こんな遊びでいいならいつでもやってあげるよ。とりあえず、電話するならこの番号じゃなく、今から言う方に掛けな。そこならいつもわたしがいるから」
そう言って師匠は自分の家の電話番号を口にした。
そんなこと教えて大丈夫なのか、と思わず手が伸びたが、制止することもできず、その手は宙を掻くだけだった。


926トランプ後編13:2012/02/26(日) 14:53:24.86 ID:H7Gs8mUq0
「だからな、仕事だって言ったろ」
師匠はアイスミルクティーを注文して喫茶ボストンのカウンター席に座りなおした。
電話を切った後、もう女の子からは掛かってこなかった。落ち着いたところで、いったいなにが起こっていたのか、説明をする気になったらしい。
「買ったばかりの分譲マンションの部屋に幽霊が出るからなんとかしてくれって依頼があったんだよ。除霊屋じゃないんだから、追っ払えるか分かりませんよって言ったんだけど、なんでもいいからとにかく来てくれって言うからさ、行ったわけよ」
師匠が出向くと、そこには女の子の霊がいたそうだ。
出来たばかりのマンションで、前の住人が自殺した、といったような見えない瑕疵もない。地縛霊ではなく、浮遊霊の一種がたまたまそこに居ついているんだろうと師匠は当たりをつけた。
その女の子の霊は部屋の隅でトランプ占いのようなことをしていたのだそうだ。
ただそれだけなら気持ち悪いにせよ害はないのだが、その占いの結果が悪かったらパニックのようになって部屋にポルターガイスト現象のようなことが起こるのだという。
家具が揺れたり、皿が飛んだり、テレビがついたり消えたりするような。
とりあえず師匠は占いから、なにか別のことに興味を向けようと思って、手品をして見せてあげようとしたのだが、いかんせんそのトランプに触ることができない。物質的なものではなかったのだそうだ。
そこで、くだんの電話をつかって選んだカードを当てる、透視マジックを披露することにしたのだ。そこでマジックの助手として白羽の矢があたったのがこの僕で、喫茶ボストンはそのとばっちりを受けた格好になる。いい迷惑だ。
女の子がカードを選んだところで、今から掛ける所に浦井さんという透視能力者がいるから、そのカードのことを訊いてごらん、と言ってプッシュホンを押し、受話器をその子の前に掲げた、という次第だったそうだ。
927トランプ後編15:2012/02/26(日) 14:56:13.94 ID:H7Gs8mUq0
見事僕がジョーカーを当て、女の子は不思議がって喜んだ。そしてさあこれからどうしようかと考えていると、師匠の目の前でその子は消えたのだそうだ。
なんだ、これで解決か。あっさりしてるなと拍子抜けして、ボストンに電話してみたところであの騒ぎが起きた、という流れだ。
「なんで二回目のジョーカーが分かったんですか」
僕がそう訊くと、師匠はアイスミルクティーにガムシロップを流し込みながら答える。
「モンテカルロだったんだよ」
「え? なんですって?」
「だから、その女の子のしていた占いが。見たことないか? こう、左から右へ五枚のカードを並べて、その下にまた左から右へって風に縦長に並べてって、タテヨコ斜めで同じ数字があったら、ペアにしてその場から排除できるんだ。
それで空いたスペースを左上に左上にカードを詰めていって、また一つずつペアを作って消していく。
綺麗に全部消えるか、あるいは最後に残ったカードで占いをするっていうゲームだ」
そう言われるとやったことがある気がする。モンテカルロ、なんていう気取った名前だったのか。
「で、わたしが透視マジックをやるって言うと、その子は占いを終えたばかりのトランプの山を整えて、そのまま裏返しにしたんだ。それでカットもせずにそのまま一番上のカードを選んだ」
「それがジョーカーだったんですか」
「そう。普通モンテカルロはジョーカーを除いた52枚でやるんだけど、色々ハウスルールも多いからな。でもそのジョーカーが混ざってる可能性を失念してた。わたしのミスだ。でも結果的にそれが功を奏したんだけど」
928本当にあった怖い名無し:2012/02/26(日) 14:57:02.64 ID:fk/ILnDz0
もっと早く投稿できねえのかよks
929トランプ後編15:2012/02/26(日) 15:03:08.57 ID:H7Gs8mUq0
「どういうことですか」
「二回目だよ。わたしに見えないどこか知らない場所でその子が透視ゲームの続きをしようとした時、また『浦井さんはいますか?』って訊いてきたろ。
わたしが名前を指示したわけじゃないから暗号表も使えないし、実質的にノーヒントだ。でも『次のカードはなんですか?』っていうその訊き方が引っかかってな。
最初に裏返しにした山の一番上を単純に選んだその子が、そういう訊き方をするってことは、もしかしたらそのまま次の二番目のカードを選んだんじゃないかって思ったんだよ。
その場合、裏返す前は山の一番下にあったわけだからペアになり排除されたカード、つまりジョーカーのペアはジョーカーだってわけ。
しかし、最初のペアがジョーカーで良かったな。例えば一枚目がスペードのエースとかだと、ペアになった二枚目はハートなのか、クラブなのか、ダイヤなのかという三択を迫られるところだ…… いや、まてよ」
そこで師匠はなにかに気づいたように眉を寄せた。
そして「あ、そうか」と一人で勝手に頷く。
「最初のペアが、二枚しかなくて、でもそのせいでペアになりにくいジョーカーだったのはツイてたな、と思ってたけど、違ったんだ。あの子はモンテカルロのルールどおりジョーカーは最初に取り除いたんだ。
そしてゲーム開始後にできた最初のペアをその取り除いておいたジョーカーの上に置いて、そのまま排除用の山にしただけだったんだ!」
気づいてなかった。あぶねえ。
そう呟いて額をわざとらしく拭うふりをする。
「でもその後はどうして分かったんです」
「山の上から順番にカードを選んでいく、ってことは想像ついたけど、占いしてるところを最初からずっと見てたわけじゃないし、どのペアがどの順番で取り除かれたか、なんて分かるわけない」
「じゃあ、どうして答えられたんですか」
まさか当てずっぽうではあるまい。偶然すべてが当たる可能性なんて天文学的な確率だ。
たとえ、一枚当たったら二枚目はスーツ違いの同じ数字だと当たりがついたとしても。まして最後は現にペアにならなかったバラバラのカードばかりだったじゃないか。
930トランプ後編17:2012/02/26(日) 15:04:15.00 ID:H7Gs8mUq0
「知らん」
あっさりと言った。
ストローを銜える師匠を唖然として見つめる。
「そんなわけないでしょう」と食い下がると、めんどくさそうに口を開いた。
「あのな。実体がなく、言葉だけでそこに現れている霊なら、その言葉が霊そのものだ。言葉の奥に、言葉にしない隠れた秘密があったとしても、すべては示されている。
声色だか、音の大小だか、タイミング…… そういうところに分解され、分からなくされているんだろう。でも見えるものは見えるんだ。これは、精度と能力の問題だ」
ホントの物質的透視だったら、わたしにも出来ない。
そう言って師匠は僕の頭を小突いた。そして追い討ちを掛けるように続ける。
「お前、好き好んでこっちの世界に首を突っ込んでるがな。いつか、見えなきゃ、死ぬ、って場面に遭遇したら、どうするんだ」
冷たく細められた瞳が僕を見ている。
師匠のその言葉は、小突いた握りこぶしよりもはるかに強く、まるで鋼鉄のハンマーのように僕の頭に打ち下ろされ、チカチカとしたどこか電子的な火花が小さな喫茶店の中を埋め尽くし、それがいつまでも、いつまでも止むことはなかった。

(完)
931本当にあった怖い名無し:2012/02/26(日) 16:46:28.46 ID:a4YEmroa0
乙と言うべきなんだろうが・・・
なんだろうな・・・悪意を感じる
エスパーに目覚めたかも!
932本当にあった怖い名無し:2012/02/26(日) 19:55:18.07 ID:sI1fZ/1C0
ここまで来ると完全に悪意だな
933本当にあった怖い名無し:2012/02/26(日) 20:17:06.38 ID:kXF/AMUBP
ウニさん乙です!
加奈子さんチートだなぁ…師匠はそのレベルまで行けたんだろうか
934本当にあった怖い名無し:2012/02/26(日) 20:20:22.14 ID:At6CeIdj0
926 : ウニ  ◆oJUBn2VTGE : 2012/02/18(土) 23:04:20.67 ID:fQUWiUGe0
最後まで投下するつもりでしたが、眼が疲れたので今夜は終わります。

2chに投下するのには、眼に負担がかかるようだ。
pixivに右目が痛い(レーシック手術の影響?)とあったし、
しばらくはコピペ代行も有りだと思う。
935本当にあった怖い名無し:2012/02/26(日) 21:00:04.35 ID:sI1fZ/1C0
頼まれてもないのに何が「有りだと思う」だよw
936本当にあった怖い名無し:2012/02/26(日) 21:03:45.79 ID:ixJQQ+0s0
じゃコピペに文句言うのは頼まれたの?
ウニ来て何も言ってなかった訳だけど
937本当にあった怖い名無し:2012/02/26(日) 22:23:47.08 ID:NC+PthZr0
ウニさん投下のみで、他はスルーなんでは?
938本当にあった怖い名無し:2012/02/26(日) 22:31:26.11 ID:a1QmKknF0
ウニーーーっ!

どういうことなのーーー

ファンが混乱するでしょうがーーーっ!


代行?荒らし?

こういうワンマン投稿行動は是非どうなの?

ウニ自身からの説明を求む!
939本当にあった怖い名無し:2012/02/26(日) 22:55:47.89 ID:vDxAcDNH0
おk
940本当にあった怖い名無し:2012/02/26(日) 23:03:13.02 ID:vDxAcDNH0
ウニさん待ちです
941本当にあった怖い名無し:2012/02/27(月) 03:16:12.28 ID:CCCDBKm/0
>>936
頼まれてもない事してるから文句言ってるわけだが?
942本当にあった怖い名無し:2012/02/27(月) 03:39:37.63 ID:rsKPfgUs0
著作権法にせよpixivの利用規約にせよ文句言えるのは著作者のウニだけなんだよ
943本当にあった怖い名無し:2012/02/27(月) 07:32:16.83 ID:qvPpRQ2f0
>>942
それ言うなら法的に訴えられるのは、じゃん?
文句言うのは自由っしょ
944本当にあった怖い名無し:2012/02/27(月) 09:44:04.58 ID:iSe0/nXl0
本人が投稿する気があるのにそれに先んずるのはいかがな物か
だがコピペはウニの助けにはなるのも事実だと思うんだよね

巨人中編を誤爆した時も「コピペしんどい」って言ってたしな
じゃあ俺がとも思ったけど、文章量多くて確かにしんどいんだよ
まあ俺の場合忍者のせいでコピペそのものがダメだったけど

ウニ氏の見解を聞きたいところだ
945本当にあった怖い名無し:2012/02/27(月) 10:08:58.76 ID:iSe0/nXl0
しかしそれ以前に一つだけ疑問がある
多分ウニが本当にコピペしてほしいであろう巨人中編に限ってなぜコピペしないのか

頼むよ
946本当にあった怖い名無し:2012/02/27(月) 12:48:53.86 ID:rsKPfgUs0
>>943
著作者には制作物の利用を許諾する権利も有るわけでしょ?
著作者に無断で著作者でない者がその制作物の利用を差し止めようとするのも権利侵害なんじゃないの?
947本当にあった怖い名無し:2012/02/27(月) 13:08:19.03 ID:iYr59Xms0
ウニは「巨人の研究 後編」ではなく「トランプ 前編」をコピペした。
つまり、「巨人の研究 後編」が先にコピペされたことを認識していた。
にもかかわらず何もコメントしてないのは、先にコピペされた事について文句がないからなのか?
948本当にあった怖い名無し:2012/02/27(月) 13:46:47.44 ID:1AIDaxO90
何を言っても無駄だからだろ
949本当にあった怖い名無し:2012/02/27(月) 18:31:44.74 ID:JAwj/ppR0
だろうね
スルースキル高いよ
950本当にあった怖い名無し:2012/02/27(月) 20:00:49.16 ID:CCCDBKm/0
そうじゃなかったら2chで創作物発表なんてこんなに続けられないだろうな
951本当にあった怖い名無し:2012/02/27(月) 20:40:53.79 ID:IfODcj5D0
ただコピペされただけでこの慌てっぷりww何なのお前らまじでww

ウニ「あーコピペしんどいわ」(/ω・\)チラ
   「あー忍法帖のレベル上げる作業しんどいわ」(/ω・\)チラ

これぐらい察してやれよw
ウニがコピペしなきゃヤダ、って子供かよ?同人の作品を無料でpixivに上げてるだけでも有難いのが分らないのか
ちょっとサイト移動すれば読めるのに、信者のわがままで負担かけさせるな
お前ら同じ長文をコピペしてみろよ。忍法帖レベル上げ込みで相当しんどいから
952本当にあった怖い名無し:2012/02/27(月) 20:43:04.44 ID:vbRXDsvkO
分かってないな
ウニの作品が読みたいんじゃなくてウニが投下するのを見たいんだよ
953本当にあった怖い名無し:2012/02/27(月) 21:11:26.14 ID:IfODcj5D0
それが我侭だって言ってんだよ
上でも書いたがいっぺんあの規模の長文コピペしてみろ。その苦労も知らないガキが簡単に、当たり前かのように「投下するのが見たいんだよ」と
軽々しく言うなよ。いらつくわ〜

つーか、ウニの作品が読みたいんじゃなくて?
しね
954本当にあった怖い名無し:2012/02/27(月) 21:49:49.28 ID:1Xexv0i30
おk
955本当にあった怖い名無し:2012/02/27(月) 22:14:32.07 ID:dkUzLP/4O
ウニさん待ちです
956本当にあった怖い名無し:2012/02/27(月) 23:19:54.60 ID:Uqlh0XSR0
>>952
ちょ、笑いすぎて腹が

そんなストレートに言われちゃうと読んでるこっちがなんか照れ臭い
いやあ、まっすぐ、正直、純粋っていいねぇぇぇ
ここ、オカ板だったのわすれそうだった

それはそうと、トランプの続きを早く読みたいな
957本当にあった怖い名無し:2012/02/27(月) 23:35:03.72 ID:b5k8NN4c0
ウニ面白いか?なんか中学生が書いてる感じ。
958本当にあった怖い名無し:2012/02/27(月) 23:38:05.11 ID:RZyakDLj0
起承転までは最高レベルだと思う
それゆえに結が惜しいんだよなあ
偉そうなこと言えんけどさ
959本当にあった怖い名無し:2012/02/28(火) 01:46:14.99 ID:Cusjo24b0
1000行く前に巨人の研究中編はやく!
話がバラバラになっちゃうよ!
960本当にあった怖い名無し:2012/02/28(火) 08:42:41.71 ID:TmIFwr6m0
バラバラ?
961本当にあった怖い名無し:2012/02/28(火) 18:44:54.80 ID:sn9HfK/n0
>>951
仮にそうだとしてもそもそもほのめかす必要がないわけだが
「どなたか宣言の後代行お願いします」とか何とか言えばいくらでもコピペする奴は居るだろ
962本当にあった怖い名無し:2012/02/28(火) 23:35:46.42 ID:MFyFLUJn0
>>961
な、都合の悪い後半部分完全スルーだろ?ほんとガキだな
963本当にあった怖い名無し:2012/02/29(水) 19:20:49.02 ID:GD7IUYyR0
負担かかってるならそうしろ、と言ってるのがわからないならこれ以上書き込む意味はないが……
964本当にあった怖い名無し:2012/02/29(水) 19:36:19.25 ID:BM0ogQip0
隆ラブのピエロっぷりが大好物です
盛り上がるから頑張って欲しいですね
965本当にあった怖い名無し:2012/03/01(木) 03:39:13.45 ID:8K9fPJli0
都合が悪くなると隆ラブ認定するのが滑稽で面白いです
966本当にあった怖い名無し:2012/03/01(木) 19:05:53.72 ID:dBXv7+E00
>>964がどっちを隆ラブ扱いしているのかわからん
967本当にあった怖い名無し:2012/03/02(金) 07:22:56.29 ID:BG9N04TF0
都合が悪い発言するのは全員その何とか言う人なんだろ
てか誰それ
968本当にあった怖い名無し:2012/03/02(金) 20:41:33.91 ID:V4jCj6000
おK
969本当にあった怖い名無し
全員とかwww