【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ17【友人・知人】

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608本当にあった怖い名無し
「どうして電話であんなことを言ったの?」
 と由美は尋ねた。
「それは」と言って女の子は少し考えていた。
609本当にあった怖い名無し:2011/06/10(金) 19:53:38.84 ID:TW2ikg+20
「心配すると思ったから」
「それだけなの?」
 由美はむくれてそう答えた。が、女の子が悪そうにうつむき、何だかおかしくなってきて、くすりと笑った。
610本当にあった怖い名無し:2011/06/10(金) 19:54:43.42 ID:TW2ikg+20
「ごめんなさい。もう怒ってないわよ。だけど本当に心配だったの」
 今度は女の子がすねる番だった。
 由美は落ち着いてきていた。聞きたいことはたくさんあった。
611本当にあった怖い名無し:2011/06/10(金) 20:03:24.88 ID:TW2ikg+20
「お父さんのことは好き?」
「うん」
「お母さんのことは?」
612本当にあった怖い名無し:2011/06/10(金) 20:04:43.40 ID:TW2ikg+20
「好き(答える時に足がカーペットを擦っていて由美はおかしかった)」
 女の子は学校にいる時よりもずっと緊張がないように見えた。
自分が泣いたからかも知れないと由美は思った。それから、彼女がそんな風に母親と話す様子を思い浮かべていた。
613本当にあった怖い名無し:2011/06/10(金) 20:05:23.68 ID:TW2ikg+20
「どんな人?」
「先生みたい」
「わたし?」
614本当にあった怖い名無し:2011/06/10(金) 20:06:13.55 ID:TW2ikg+20
「うん」
「どんなところが?」
615本当にあった怖い名無し:2011/06/10(金) 20:07:48.74 ID:TW2ikg+20
「優しいところ」
 由美は黙った。そうなのかと思った。

616本当にあった怖い名無し:2011/06/10(金) 20:08:38.02 ID:TW2ikg+20
「それじゃあ、好きって言ってくれたけど、あれは――」
「ああ」女の子はスプーンでゆっくりと紅茶をかき混ぜている。
「笑うと思うから」
617本当にあった怖い名無し:2011/06/10(金) 20:10:05.83 ID:TW2ikg+20
「笑わないわ」
「笑ってもいいけど。先生がお母さんになってくれたらと思って」
 そう、と由美は答えた。カップがカチカチと鳴っている。
618本当にあった怖い名無し:2011/06/10(金) 20:10:52.37 ID:TW2ikg+20
「でも、もういいです。一昨日の夜、テレビで『メリーさん』の話をやってたんです。
すごく怖かったけど、自分みたいだなって思って、後で考えたんです。
持ち主が後ろを振り向いてから、どうなったのか。メリーさんは、きっと許してあげたと思います。
619本当にあった怖い名無し:2011/06/10(金) 20:11:33.61 ID:TW2ikg+20
だって、もしかしたら本当にどうしようもない理由で捨てたのかも知れないから。ちょっと驚かして、それでお終い。
だから、わたしもお母さんのこと、もう怒らないようにします」
 そうかと由美は思った。わたしは母親の代わりに心配させられたのだ。
620本当にあった怖い名無し:2011/06/10(金) 20:12:15.14 ID:TW2ikg+20
理不尽な気がしたが、嬉しい気持ちもあった。
「わたし、いい先生になれるかな?」と由美は尋ねた。
「わたしは好き。優しいから」
621本当にあった怖い名無し:2011/06/10(金) 20:12:59.93 ID:TW2ikg+20
「ありがとう。わたし好きよ、あなたのこと」
 二人は紅茶をすすった。メリーさんは仲直りしたのかなと由美は思った。きっとしたのだろう。夜が一つ過ぎて行く。