【小説】ZOMBIE ゾンビ その29【創作】

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蓮田は意味深な笑みを浮かべた。
「なるほど。人間は『本能』のほかに『理性』を持って生きている。
『理性』は人間のプライドともいえる。その理性を奪われたんだから
本能むき出しの自分に恥や劣等感を感じるというわけですね」
「そう、だから理性のある人間を襲い続けるんですよ
しかも、奴らに残された時間は短い。人に感染しないから自分の意思で
仲間を増やすことはできない。だからこそ、人を襲う」
「しかし、工藤先生。まるで誰かが人々から記憶や理性を奪い取っているような言い方ですね」
ここまで来て黙っていても仕方ない。工藤は蓮田に伊坂の『記憶食い』について話した。
「…それじゃあ、その伊坂って人が犯人じゃ」
「わかりません。私自身、彼が本能まで食いとれるような能力を持っているとは
思えません。ただ、彼と類似の能力を持つ第三者がいる可能性は否めません」
「しかし…」
蓮田は何か言いたげだったが男子生徒の悲鳴でそれが遮られてしまった。
「なんだ一体?」
悲鳴は洗面所のほうからした。