思考盗聴システムは実在している!!!その75

このエントリーをはてなブックマークに追加
850記憶喪失した男
  妄想におけるおれの人生

 少年がいた。少年Bと呼ぼう。AよりBのが好きだからだ。
 少年Bが一階下の同学年の学級に出かけた時、少年Bはみんなに嫌われていた。
「なんで喧嘩するの? 乱暴」
「おれはいじめられっこなんだよ。反抗しないと、やられっぱなしだろうが」
 少年Bは怒鳴っていた。

 みんなが下校したはずの夜。
 男の前で、インクで彩色された木の玉をぶつけて、少年Bは口上を述べていた。
 男はそれを注意深く聞き、こいつをどうへこましてやろうか考えていた。男は指定の位置にいた。燃えるゴミが燃えてしまい、軽くなった背後のからくりが動いて、全自動で重さ二十五キロの砲丸を男の頭に落とした。
「ははは、ぼくが手品でもすると思ったの?」
 仕かけはもっと簡単。魔術の真似事は、標的の注意を引くためでしかない。手品が成功しようと失敗しようと関係ない。ただ、標的が自分を見ていてくれればいいのだ。
 男は死んだ。
 それを見ていた中学生はみんな、何が原因で何が起こったのか理解できなかった。少年Bといういじめられっこが、昨日、一日かけて、背後のからくりをつくりあげていたことを知らなかった。
「事故死だね」
 少年Bはどうどうといった。
 異を唱えるものはいなかった。
 ちゃんと悪いやつをやっつけた。
 見ていた少女Bは心に決めた。このモテない少年に初めてを捧げようと。
 少女Bと関係ないところで、少年Bが気のある女の子に聞いていた。
「中学生の間に人を殺した頃がある?」
「ない」
「ねえ。あるわけないよね」
「話しかけないで。あっちいって」
 少年Bと女の子の会話だった。
「何人に?」
 少女Bが聞いた。
「二件。今のと、校長だよ」
 少年Bは答えた。
851記憶喪失した男:2010/09/10(金) 11:48:41 ID:uvt8rekf0 BE:664747643-2BP(791)
 彼の中学校校長は、彼が新設校に転学してから、一ヵ月後に事故死したと発表されていた。
「だが、まちがいなく、死因は服毒死」
 彼が仕かけたからくり道具で、謎の子供からの贈り物だと思って箱を開けると、美味しいお菓子がおいてあったのだ。お菓子を食べると、毒を飲んでしまうからくりだったのだ。
校長が大喜びでお菓子を食べることを少年Bは確信していた。少年Bは、理科室で鍵のかかった中にある注意飲むと死ぬと書かれた毒をわからない量、しかし、殺すには充分な量を盗み取ったのだった。
致死量は、毒の箱に書いてあったので、中学生の少年Bにもわかった。
 校長を殺した箱には堂々と、「頭髪自由化を十七校中一校だけわざと遅らせた罪に対する反抗です」と書かれているわけがなかった。
書いてやりたかったが、犯人を示す手がかりはいっさい与えてはならない。「校長先生へ。女子小学生より」と書いた紙切れがおいてあったはずだ。警察は、少年Bに
「これを書いた者に心当たりはあるかね」
 と聞いたが、
「さあ。少なくとも、ぼくの筆跡ではありませんね。ぼくの筆跡はこんなのです」
 と紙に文字を書いた。
「わかった。わかった」
 と警察はすぐに少年Bを放り出した。
「Yの悲劇だ。こいつはYだぞ」
 と叫ぶ警察官がいたが、
「ぼくは大人も子供も同じくらいの賢さをもっていると思っています」
 と少年Bはいった。
 警察は鼻で笑った。
「あそこにいるガキどもなど、軽くひねることができるぞ」
「ぼくは軽くひねれないと思ってます」
 警察は実際に軽くひねってきた。
 校長先生の死亡は事故死と発表された。
852記憶喪失した男:2010/09/10(金) 11:50:25 ID:uvt8rekf0 BE:886330728-2BP(791)
 十年後、少年Bと少女Bは出会った。
 少年Bは、女を力づくで押し倒そうとしていた。
「何をしているの?」
 少年Bに少女Bが聞いた。
「あまりにもモテないから、強姦しようかと思うけど。一回も成功しない。次はお前だ」
 そして、少年Bは少女Bを犯した。
「一回できれば、とりあえず、満足」
 少年Bは去っていった。
 少女Bは十年がけの計画が成功したのに満足した。少年Bは少女Bの名前をまったく知らない。
 少年Bは、鳥取県で中学生がいまだに丸坊主なのだと聞き、鳥取県知事に電話をかけていた。
「わたしの地元では、かなり田舎ですが、十年前から頭髪は自由化ですよ。
東京はもっと前から当然、どこも自由化している。そんなことだから、若者が県から離れ、自分の故郷を田舎だと蔑むんですよ。
早急に改革してください。来年からいっせいに自由化です。お願いしますよ。メモしてください。全中学、来年からいっせいに全校頭髪自由化」
 少女Bは満足して聞いていた。十年たっても変わらずか。
「中学生の頃、人を殺したことがある?」
 少女Bが聞いた。
「ないよ。あっても、時効だよ。もう、時効」
 少女Bは興味深く満足して少年Bが去るのを見送った。
 殺人の時効がなくなったことに、少年Bがぞっとしたのは、さらに未来。