【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ12【友人・知人】
818 :
◆DJINKbmZw2 :
僕の頭に養護施設を出ていく時の忍の「またな」がよみがえった。
姉の彼氏は年下だとは聞いたが、まさか僕と同年齢だとは考えにくいけれど、男性恐怖症に近い奥手な姉なら…と何度も考えた挙げ句、ある日の深夜。
明け方にトイレにたった僕は姉の部屋の明かりが煌々とと灯っているのに気がついた。
姉は今日も仕事があるはずなのに、こんな時間まで起きて何をしているのかが気になって控え目にノックをして、室内に入った。
絨毯の上に座り込んだ姉は目の前の姿見を眺めながら、無心に髪の毛を抜いていた。
何時から繰り返して続けていたのか、絨毯にはフワフワと毛髪が山のようになっており、髪の分け目部分からは薄く地肌が見えている。
それでも、入室した僕に気がついた様子も無く、一本ずつ髪を指で摘んでは抜く行為を繰り返す姉の手を掴むとようやく姉が僕を見た。
間近で感じる姉の体臭や口臭は紛れも無い覚醒剤使用者のそれで、こんな時に言うべき事では無い話だったが、姉に彼氏に会わせて欲しいと切り出した。
「ダァに会いたいの?なら、一緒に会いに行こっかー」
薬のせいで高揚しているのか、間延びした口調と彼氏の事をダァと呼ぶ姉の奇妙さに、その日の内に姉の勤め先と僕のバイト先に休みの連絡を入れて、向かったのは一軒のドラッグストア。
そこに姉の彼氏が居た。
薬剤師らしい白衣を着た真面目そうな男性だった。警戒したまま、ぎこちない挨拶をすると穏やかそうな彼氏は白いプラスチックボトルを取り出した。
「新しいダイエットサプリメントで、お姉さんにもモニターになって貰っている」
それは、姉が冷蔵庫に入れていたのと同じボトルで僕は出来る限り不自然にならないように、モニターを申し出た。
ダイエットの必要性は感じないけれどと言われながら、新しいボトルを受け取ったがビニールでピッチリと封がされているだけで、メーカー名も何も無い。
819 :
◆DJINKbmZw2 :2010/04/21(水) 21:05:38 ID:xFg9Y6td0
不信感をあらわにしたのを感じとったのか、まだサンプルの試作品段階だから予算削減にパッケージは作っていないと彼氏は話してくれた。
姉の彼氏が忍とは違うと分かり、ダイエットに使っている薬が手に入れば、もう用は無く早く自宅に帰りたかった。
むしろ、まだ彼氏と一緒に居たがる姉は好都合で、僕は一人で平日の昼間は誰も居ない自宅に戻った。
自宅に戻った僕は先ず貰って来たサプリメントを確かめるために、自室のテーブルを綺麗に拭いてから、ボトルの封を切り蓋を開いた。
中には予想通りのカプセルが入っていたが、その一つの中身を開けてそっとテーブルに出してみる。白い細粒が小さな山を作ったのを、そっと指先で押して付着した粉末を舐めてみる。
テーブルの山をウェットティッシュで拭うと、キッチンに向かい冷蔵庫にある姉のボトルを取り出した。
僕が渡されたのと中身が同じである事を祈りながら、カプセルを開ける。
細粒の中に細かく砕かれた氷砂糖の様な結晶があった。結晶を耳かきで脇へ除けて同じ様に指を押し付けて舐める。
それでもまだ、人の良さそうな彼氏を信じたくて、小さな硝子の小皿に水を入れて結晶をソッと落とした。
820 :
◆DJINKbmZw2 :2010/04/21(水) 21:07:27 ID:xFg9Y6td0
彼氏がダイエットサプリのモニターとしての条件として、一日三回必ず服用する事と言っていた言葉を思いかえせば、追い打ちに重ね続けた姉は、これなら一ヶ月で重度の中毒者になる。
しかも、僕が入院している期間だ。一緒に暮らしていれば、すぐに変化に気が付いただろうが、今は姉を覚醒剤から引き離す事を優先した。
幸いにも姉には自分が覚醒剤をやっている自覚は無い。それは逆に入手手段さえ、絶てば姉自らが覚醒剤を求める事が無いと言う事だ。
その日の内に姉のボトルのカプセル一つを残してトイレに流し、僕の貰って来た物とすり替えた。
断薬から来る辛さは僕が世話する事で何とかなる、問題は姉と覚醒剤を引き離すための考えを母に打ち明ける事だった。
午前中に一緒に出掛けた姉は夕方になっても帰宅せず、母と二人きりの時間を持った僕は包み隠さず、今の姉の状況とその証拠として一つだけ残しておいたカプセルを見せた。
821 :
◆DJINKbmZw2 :2010/04/21(水) 21:09:07 ID:xFg9Y6td0
泣きわめき僕に罵声を浴びせ掛けた母が掠れた声で、僕にどうすれば姉を助ける事が出来るかと聞いてきた時に、僕は
「此処とは違う場所、なるべく遠くに引っ越しをさせて、今の交遊関係を絶つしかない」
と告げた。姉が自ら、覚醒剤に手を出す可能性は全く無い事と、入手ルートである交遊関係さえ絶つ事が出来れば安全だからと。
母は今すぐにでも東京にいる古くからの友人に頼もうとしたが、覚醒剤の断薬症状が完全に治まってからにした方が良いと、引き止めてそれまでの期間に新しい住居を完成させるべきだと提案した。
すぐにでも、新生活が始められるように。
それから、姉の職場に退職届けを強引に出し、断薬期間を見守ってから姉を東京に送り出した。
覚醒剤を完全に絶っても姉の言動には以前とは違うものがあったけれど、薬物で一度壊れた人間はもう元に戻れない事を知っていたから、哀しくても諦めなければならないのだと毎日の様に思い続けていた、数ヶ月後。
「お金貸してー、20万。友達に貸したらー、返って来なくて家賃が払えないー」
小遣いの三万円以外は相変わらず生活費として家に入れていた僕には、姉の言う金額はとてもじゃないが用意が出来ない。事情を説明して、母に頼むように言うと通話を切られ、姉を怒らせたのか電話番号もメールアドレスまで着信拒否にされた。
それから、一ヶ月もたたない内に母から姉が家賃滞納でアパートから退去して欲しいと大家から連絡があった事を聞かされた。
母には金の無心が無かった事を確認して、姉の住む東京に二人で向かった。
あらかじめ、アパートの前で大家と待ち合わせをしていて、数日前まで水道等のメーターが回っていた話を聞き、部屋のドアを開ける。
822 :
◆DJINKbmZw2 :2010/04/21(水) 21:10:16 ID:xFg9Y6td0
僅かに開いたドアからは吐き気を催す程の悪臭、腐敗臭がするがその僅か数センチしかドアは開かずに、何かが押さえ付けているようだった。大家と僕の男二人が押しても開かないドアと、異様な臭いに大家からベランダの窓を割って入ると決められた。
一回の右から二番目にある姉の住居だったアパートのベランダの窓。
真ん中で区切られて上半分は普通のガラスだが、下半分の針金が入った部分は既にひび割れて針金と針金が交差した菱形の一つに小指程度の穴が空いていた。
焦った様子で大家が何度も金づちをガラスに打ち付けるとようやく、手首が入る程の穴が空き、率先して僕がベランダの窓を開けた。
天井近くまで溢れかえったゴミ袋の山。ベランダにくっつけるように置かれたベッドにまで生ゴミが溢れていた。靴を履いたまま、大家、僕、母と室内に入る。
風呂場やトイレの便器の中までゴミで溢れていて、玄関のドアも溢れたゴミ袋が押さえ付けていたのだと、ようやく理解した。
823 :
◆DJINKbmZw2 :2010/04/21(水) 21:11:41 ID:xFg9Y6td0
大家のツテでトラック数台で溢れかえったゴミを出し、フローリングまで腐敗した修理費について母が大家と話していた時、不意に僕の携帯が鳴った。
知らない番号。しかもこんな時に。不機嫌さを隠す気もなく電話に出た相手は忍だった。
その時の会話は一生忘れない。
「もう、お前の大事な姉ちゃんは居ない。なぁ、昔、俺が言った一人の人間の体に沢山の魂を住まわせて入れ替わり立ち替わり使わせるっていうの覚えてるか?
シャブ中にしたのは、お前のの目を逸らすためだったんだよな。姉ちゃんが馬鹿やっても、シャブのせいだと思ってただろ?」
「何で、姉ちゃんを。忍に関係ないだろうが!!」
「お前があれだけ俺に期待させて裏切ったから。もう、お前に構うのやめるついでに、ちょっと実験がてら試したら上手くいってさ。
普通、反発しあったり守護霊的なもんに邪魔されるんだけどな。シャブのせいかは分からんけど、良い素材だった」
「ふざけんな!!俺の事ならどうしても構わないから、姉ちゃん返せよ!!」
「本当はあの時に殺すつもりで呪ったんだけどな、間一髪で助けたのは今のお前の声が聞きたかったからかもな」
あくまで楽しそうに話し続ける忍の声。僕の突然の入院までもが忍によって仕組まれていて、その間に姉は。
824 :
◆DJINKbmZw2 :2010/04/21(水) 21:12:39 ID:xFg9Y6td0
僕と忍の会話は母にはせず、最寄の警察署で相談してから、地元の警察署で創作願いを出した。
18歳になると同時に少しでもツテになる人脈を作るために水商売の世界に入った。
同居を始めた祖母が姉の帰省が全く無いどころか、連絡一つ無いことを母と二人で口裏をあわせて、ごまかしてきたが、今年に入ってから祖母の健康状態が悪くなったのを機に、何度も警察に足を運び相談をした。
忍のした行為は伏せたまま。
今、ここで始めて明かしました。
今月末か来月始めに東京都内の一部交番に200枚の貼紙がされます。
URLにある物がそれです。
姉の名前は「東美香」ですが、ミカミ マナやアキと名乗った事もあります。
交番の貼紙は三ヶ月で撤去されますが、見付かるまで何度でもお願いするつもりです。
そして、出来れば住人の方々で思い当たる人物を知っているならば教えて下さい。
http://o.pic.to/13hq5p
いいからとっとと完結して消えろよ作家気取りのアホが
え?なに?忍の人の話は実話なの??!!
驚愕のエンド!
こいつァ洒落になってねぇ!
面白かった乙とか言ってる場合じゃねーぞ!!
!・・・・・
こいつぁびっくりだ・・・。
これは…
画像の詳細よろしく
薬の中身を舐めただけで、シャブとわかったとこに不信を抱いた
一般人がそんな舐めただけでわかんのかよ
水に落とす確認ができる人なんだから分かったんじゃないかな
アドレスのところに追加書き込みされてた
お姉さんは、一時的に憑依されただけで、いつか元に戻って、
元気に帰って来てくれるといいねぇ…
おれも東京都民だけど、お姉さんが失踪したのはどこらへんよ
>>831 今さらなんだよ?創作なんだからサラッと流せや
>地元の警察署で創作願いを出した。
創作創作言われてトチ狂ったかw
くだらねぇ
・・・手配写真に2人ばかり写ってないか?
(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
左胸の下に薄茶色のシミ
臍下に5mmくらいの黒子
膝に1cmくらいの盛り上がった感じの白い傷跡
思い当たる身体的特徴ある?
>>835 ちゃんとポスターにも書いてあるよ…と言おうと思ったら、
画像のURLの所に835への回答がされてるよ。
え、久し振りに見にきたら何これ。
さすがに電話番号まで書いた釣りってことはないと思うんだけど。
つーか、これで釣りだったらもう文句ねーよwww
>天井近くまで溢れかえったゴミ袋の山。ベランダにくっつけるように置かれたベッドにまで生ゴミが溢れていた。靴を履いたまま、大家、僕、母と室内に入る。
ゴミを処分する前に、全部中身を調べたの?
ゴミの中に何か有力な手掛かりがあったかもしれない
>部屋から大量に出て来た空名刺を見ると歌舞伎町のギンレイビルにあったセリエという店に勤めていた形跡もあります(現在は閉店)
>本来の姉の性格では男性客相手の水商売は難しいです。
お姉さんはお金に相当困ってたんでしょ?女が短期間に大金を入れるにはこれしかないよね
それにキャバクラじゃなく、ピンサロやデリヘルだったら、そんな喋んなくてもいいしね
つーかさ、マジなら2chのこんなスレで「シリーズ物」として扱う神経疑うわ
ネタに決まってるだろ。
ホントだったら、作者が最低過ぎる。
この流れで最後に捜索届け晒すとか…
創作乙とか言われたのがよっぽど嫌だったのか、
どうしても実話であると認めて欲しかったのか知らんが、
真面目に探すつもりなら、ネタにしてオカルト板に投稿なんてしないだろ…普通の人間なら。
◆DJINKbmZw2=忍の等質オチかと思ってた
まだ可能性がなくもないけど
ともかく乙
>貼紙は板橋区、豊島区、新宿区に貼られるそうです。
毎日新宿通るから、月曜あたり貼り紙確認してきてやるよ
ガチだったとしてももう死んでるかシャブ漬けにされて風呂に沈んでるだろ
849 :
839:2010/04/25(日) 04:27:53 ID:0tVZt5SE0
去年のGW前、第一京浜沿いにある川崎市消防局の裏手の「飲み屋」にいた女に良く似ている。
俺が会った時は写真より大分痩せていて、髪は肩くらいだったけど。
源氏名なんだろうけど、ミカと名乗っていた。
出身は大阪だと言っていた。
メアドとTEL交換して2度ばかり外でも会ったけれど、今は連絡付かない。
多分携帯も変えたと思う。
大阪に戻ると言っていたけど、行き先は多分TかMかI。
2・3ヶ月のスパンで各地を移動しているようだ。
色々問題はあるのだろうけど、シャブ中とかゴミ屋敷と言った病的な雰囲気はなかった。
別人かな?
お姉さん、早く見つかると良いね。
まじで、よくもこんな不謹慎なネタ書けるなな
実話にしろネタにしろ最低だろ作者
でも尋常じゃない環境で尋常じゃない経験を重ねてきて、その果てに身内が失踪なんて状況に置かれたら、
それこそできる事は何でもしたいし、情報を得るためにネットっていう藁にもすがるのはありじゃね?
不謹慎だろうとなんだろうと、それで見つかる可能性が上がるならしたくもなるよ。
まず関心を持ってもらわなければ、ネットの向こうの人間の身内なんていう、赤の他人の顔があるかもなんて思って周りを見ないし。
罵倒してるのは現実世界が怖くなった子供なのか?
フィクションだと叩き、ノンフィクションでも叩、くない物ねだりなのさ。
話半分に聞いちゃいるけど、もし本当なら忍の個人情報晒すのが効果的と思われ。
その前に姉ちゃんの元彼警察に突き出して忍との関係性追求だな
俺も、これはちょっと最低だと思ったな…。
そもそも、逆効果なんだよな。こんな風に捜索届け貼られても。
創作OKのスレで、創作臭のする話の最後にこんなの見せられても、
信憑性が薄くなるだけだろ。
ネタだと思う人が出てくるに決まってる。
マジの話だったら、作者のしたことって…ちょっと酷くないか?
ここはオカルト板のシリーズ物スレだぜ?
なんでこんなとこでやってるんだ?
真面目に捜したいなら、失踪をネタに話を書くとかするなよな。
本当の話だと思って欲しい筈だろうに、何でこんな風にするんだ?
完結乙!
って流れじゃないの?
なんでマジレスしてんの?
オカ板ですら創作扱いなのに、他の所に書いて信じてもらえると思えんのだが。
859 :
本当にあった怖い名無し:2010/04/26(月) 11:18:12 ID:GlmEnTGUO
新宿のほうに張り紙あったかな
作者さんの過去レスに最終的にスレのみなさんに協力
云々書いてたような気がするけどもともとこの展開を
予定してたのでしょうか
俺は今まで普通の創作シリーズ物と思って読んでたけど、このオチでリアルかもと思うようになったけどな。
なりふり構わず探したいのかもしれないしな
実際、注目されたんだから効果あるかもしれん
綺麗に最悪の形で終わったな(褒め言葉)
乙と言って良いのか分からんけど乙!
賛否両論あろうが、ここで話した事で結果的に見つかる事を祈っている
>>851 身内が失踪してるのに、物語にして長期にわたって投下する神経を疑うって言ってるんだが
本気で探したいんならサイト作って情報提供募るのが普通だろ。
呑気にネタにして「乙!」って言われて「ありがとうございます」って言ってたんだぞコイツ
>>852とか、意味不明だし・・・罵倒されて当然だろ
>>860 俺もだな。頭から創作ものと決め付けてたからな・・・。
このスレは忍に監視されています
創作と思ってたからこそこの結末は衝撃的だったんだけど、
実話と思ってた人はこの結末で嘘くせーってなるのかな?
そういうひともいるだろうケド、ごく稀だよね〜
>>ごく稀だよね〜
^^ ワロタ・・・
ごく稀に反応しましたか〜
870 :
本当にあった怖い名無し:2010/04/27(火) 10:36:45 ID:4U0nA9BV0
・このスレでは作品への批判は荒らしと認定していますので、批判はご遠慮ください
・このスレには『このスレと住人を許さない』という荒らしがしつこく荒らしています
どうかこいつには徹底無視をお願いします。
・「荒らしに反応する奴も荒らし」というネットのルールを忘れずに。
反応するとその人を荒らしと 認 定 いたします
871 :
本当にあった怖い名無し:2010/04/27(火) 17:12:52 ID:qfHkSnhP0
今日新宿に行ってきました
雨が降っててちょっとあまり移動したくなかったので、交番の前だけ見てきましたが
貼り紙は一つもありませんでした
やっぱりネタでずーっと昔の貼り紙を使っていたのかな?それとももうとっくに見つかっているとか
まだ貼り出されてないだけかもしれないし
どちらにしろ現時点ではありませんでした
つーかもうネタ確定で俺の方がオカルトになっていますか?心配です
今月末か来月初めってなってるけど
873 :
本当にあった怖い名無し:2010/04/27(火) 17:46:24 ID:qfHkSnhP0
もう今月末だよなー
ってことはGW明けとかかな、したらまた見に行ってみるわ
ネタ確定でもないと思うよー
私的には中1とかそれより年若い子が覚せい剤とか利用してたって
のがなんかいやなんだけど、凄くありえる場所の話なんだよね
だれか作者さんと同世代のかたがみてないだろうかー
在学中に教師が2人亡くなるって結構衝撃的な出来事だから
覚えてる人いると思うんだけど
話の中で目的のためなら手段を選ばないところが
忍に気に入られてつきまとわれる、という描写が何度も出てくるので
本当だとしてもおかしくない
だってこの中にシリーズ読んでほんとに協力しようとする人がいたとして
もし、万が一、忍に遭遇してそいつがどうなっても関係ないのだから
自分が忍と会わないで姉を探せるならそれでOK
ってことだしょ?
それでまた気に入られてしまうんだ
実話なら、失踪者の気持ちを考えず不謹慎だし、ネタなら実際いる失踪者とその周りの人にとって不謹慎
どっちにしろ糞だな
なんで作者はあれ貼ってから一切レスしてないんだ?
ふんぞり返って笑ってるンだろ
なんで他人事にそんな必死なんだ
何だか矛先がズレてるなぁ
これが今はやりのルーピーって奴か
つーか、こーしてあと引っ張りまくるほうが狙い目通りな気がするが・・・w
貼ってたアドレス携帯のやつみたいだけど、捨てアドだよな?
連投すまん
姉の誕生日と年齢の計算は合うけど、ここだけ差し替えてるかもな
実話かどうかスゲー気になる
頼むぞ
>>871
884 :
本当にあった怖い名無し:2010/04/29(木) 20:26:20 ID:HBaTtWSj0
>>882 とりあえず、明日も見に行くつもりです
明日貼り出されてなかったら多分GW明けかな
それでもなかったらネタ
[疑惑と失望]
1/14
私は車を走らせ、目的のマンションに着く。
本部長の住むマンション。
ここの住所を知っている者は、そんなには居ないだろう。
明らかに本部長に気がある、藤木でさえ知らない。
…私は何となく、優越感を感じてしまう。
部屋の番号を入力してオートロックを開けてもらい、エレベータで5階へ。
ここは…賃貸ではないだろうな。
買うとしたら幾らくらいなのだろう?恐らく8000万以上…ひょっとしたら億はいくかも知れない。
28にして、こんな良い所に1人暮らし…。変な噂が立つ理由も、納得できてしまう。
部屋の前に立ちインターフォンを鳴らすと、すぐに玄関が開き、本部長が出てくる。
高城「ようこそ、汐崎さん。どうぞ上がって」
私「はい、どうもすみません…」
本部長の格好は…まぁ、確かに外には出られない格好ではあった。
少しモコモコした感じの、着心地が良さそうなローブを着ている。
…が、それだけで、露出も少なく、思ったより控えめな格好だ。
私は少し安心する。
2/14
居間に通してもらい、ソファーに座る。
少し薄暗い感じの、落ち着いた雰囲気の部屋だ。
しかし…広い。一人で住むには十分すぎる程の広さだ。
高城「何か飲むでしょ?お酒でいい?」
キッチンに向かった本部長が、声を掛けてくる。
私「え…」
…酒?
私「いや、私は車なので、すみませんが…」
車で来たのは知っているだろうに…?
高城「あら。少し休んで冷ませば良いじゃない。…すぐに帰るつもりなの?」
心臓がドクンと鳴る。
休んで行けって?まさか、すぐに帰って欲しくないとか…?そんな風に言われたのは初めてだ。
年甲斐もなく、自分の顔が真っ赤になるのを感じる。
これは、ちょっと危ないんじゃないか?
そうだ。そもそも、こんな時間に…夜遅くに若い女性の1人暮らしのマンションを訪ねるなんて、非常識だった。
いけない。ここで自分を見失ってはいけない。
自分が、何のためにここに来たのかを忘れては駄目だ。
…真奈美。真奈美のためだ。私は、一人娘のために、あの子の身の安全のために来たのだ。
3/14
私は今年で43になる。
それに対し、高城本部長は28歳。
その差15。一回り以上の年齢差だ。
そんな年下の女性に誘惑されて…惑わされてたまるか。
私は…私は、藤木とは違う。
私「すみません…。遅くなるわけにいかないので」
高城「そう。残念ねぇ…」
そう言うと、本部長はすぐに2人分のティーカップを運んで来る。
高城「じゃあ、紅茶で良いわね?」
私「…はい。ありがとうございます」
私はそれを見て、内心苦笑する。
持って来るのが、あまりに早い。どうやら、私がアルコールを拒否する事はお見通しだったようだ。
まったく、人が悪い…。
よく考えれば、本部長が私相手に、そんな事を望むわけがない。
そう思って彼女を見ると、目が合い、軽く微笑みを返される。
どうやら、見事にペースを握られてしまったようだ。
高城「それで、どんなお話?」
本部長がテーブルを挟んで、私の前に座る。
いつものスーツのような、丈の短いスカートではないので、目のやり場に困る事はない。
4/14
私「実は――」
そう言って、私は本部長を正面から見据える。
ローブ姿ではあるが、決してキワドイところがある訳ではない。
胸元もしっかり閉じてくれている。…十分すぎる胸の膨らみは隠せていないが、その程度なら目を奪われる事もない。
脚も組まず、上品に揃えてくれている。
――よし、これなら普通に話ができそうだ。
私「私には17になる娘がおりまして…」
高城「えぇ、知っているわ」
私「はい。その娘――真奈美と言うのですが、今日、見知らぬ男からこんなものを受け取ったのです」
私は持ってきた名刺をテーブルの上に置き、本部長に差し出す。
高城「あら…」
彼女は名刺を手に取り、表、裏と眺める。
高城「桐谷の名刺?」
本部長はそう言って、珍しく不思議そうな顔をする。
私「はい。しかもそれが…。あの、先日本部に来た2人の学生の事、覚えていらっしゃいますか?」
高城「もちろんよ。あの2人も名刺を持ってきたわね」
私「はい。それで話を聞いてみると、どうやらこの名刺、同じ人物から受け取ったようなのです」
高城「同じ…」
眉をひそめる本部長。
美人だと、こういう顔も絵になるんだな…とか思ってしまう。
5/14
高城「なぜ、同じ人物と?」
私「見た目が…聞いた感じだと、年恰好がまったく同じなので」
私は真奈美から聞いた、男の様子を説明する。
高城「…それだけじゃ、本当に同じかは分からないわ」
本部長は、そう言って名刺をテーブルに置く。
私「しかし、こんなことを複数人でするとは…」
高城「するかも知れないわよ?」
私「まぁ、そうですが…」
何だろう?何か気に障ったのか、不機嫌そうだ。
高城「…で。私には報告をしたかっただけ?」
私「いえ、それもありますが――」
いつも以上に高圧的なものを感じる。
しかし、ここで気圧されて、逃げ出すわけにはいかない。
私「本部長は、何かご存知なのでは?と、思いまして」
思っていたことを、そのままぶつけてみる。
何と言っても、真奈美が絡んでいるのだ。私も悠長な事は言ってられない。
高城「…何でそう思うの?」
当然の疑問だ。
私は答える。
私「以前の名刺のとき、何か…桐谷の事件に関して何か知っているような素振りでしたので…」
高城「…」
本部長の顔が曇る。…一瞬だけの、悲しげな顔。
その顔を見て、なぜだか少し罪悪感が芽生える。
6/14
高城「それは、邪推というものよ」
真っ直ぐにこちらを見つめ、本部長が言う。
私「邪推、ですか…」
高城「えぇ、そう。残念だけど、私は何も知らないわ。あなたも、この件はもう忘れなさい」
ジッとこちらを見つめたまま、私を諭すように言ってくる。
いつもの視線とは違う。私を見透かそうという視線ではない。
…私たちはそのまましばらく見つめ合う。
こんな風に女性と見つめ合う事なんて、妻を亡くして以来、一度も無かった。
本部長は――高城沙織という女性は、自他共に認める美人だ。
色々な意味で、魅力的な人間だと思う。
会の中でも、多少の変な噂はあるものの、彼女は人気がある。もちろん、男性だけでなく、女性にも。
仕事の上で尊敬できる部分も多々あるし、良い上司と言えるだろう。
私を広報部長に抜擢してくれたのも、彼女だ。
普段はあんな格好なので正視することができないが、ローブ姿とはいえ、この露出を抑えた格好なら、問題ない。
いつもこれくらいの格好をしてくれれば良いのに…。
世の男性の大半は、ああいった格好の方が好きな人が多いのだろうか?
…きっとそうだろう。
だから、いつもあんな格好をしているのだ。
7/14
では、今は?
今は…姿を見せる相手は、私だけだ。
それだから、こういった比較的落ち着いた格好をしているのだろう。
私が安心して話をできるように、と。
彼女なりの優しさ…気遣いなのかもしれない。
無理に肌なんて出さなくても、その人の魅力は伝わるものだ。
そんなことをしなくても、彼女なら人を惹きつけることくらい容易にできるだろう。
私としても、今の方が好みだ。とても魅力的に思える。
ひょっとしたら…私の好みに合わせてくれたのかも知れない…
高城「…おわかり?汐崎部長」
私「…はい」
はい…?何が…?
…あぁ、そうだ。私は何てことを考えていたのだろう。
私「どうも申し訳ありませんでした。このような…」
私はテーブルに手をつき、深々と頭を下げる。
高城「いいのよ。そんなに気にしないで…ね?」
優しい口調で本部長が言う。
それを聞き、私はまた、胸が高鳴るのを感じる。
彼女を疑うなんて、何と失礼な事をしていたのか?全て、彼女の言うとおりで――
ピリリリリリ
――と思った瞬間、私の携帯が鳴る。
8/14
ハッと思い、携帯を取り出す。
メールが来ている。送り主は…真奈美だ。
「何時くらいに帰ってこれそう?あまり遅くならないようにね〜」
真奈美から、私を心配するメール…。
私を心配する…?私は、真奈美を心配してここに来たのだ。
心配していたのは私だ。
真奈美を…娘の事を思って。真奈美こそが、私の全てだ。
そうだ…!
頭に霧が掛かっていたような感じから、目が覚める。
どうやら、我を失いかけていたらしい。
目の前の彼女に魅了されていたのか?
…どうだろう。経験が無いから分からないが、そうかもしれない。
私「本部長、すみません。私は――」
高城「汐崎部長。この名刺は、こちらで預かります」
私が言い終わる前に、本部長が言い、テーブルの上に置いてあった名刺を取り上げる。
今その目は…私を見るその目は、先ほどとは異なり、凍るように冷たい目をしていた。
9/14
私「名刺を…?」
高城「えぇ」
このまま渡しても良いだろうか?
…分からない。判断が付かない。
だが…
私「いえ、それはこちらで持っておこうかと…」
取り上げようとする理由が分からないし、どことなく強引だ。
どうもいつもの本部長らしくない。この人なら、もっと上手くできるはずなのに。
高城「…持っていて、どうするの?」
私「どう、というわけでもありませんが…」
ここでふと、ある案が頭に浮かぶ。
私の古い知り合いに、こういう事に詳しい男がいた。
長いこと連絡を取っていないが、彼に見てもらおう。きっと協力してくれる。
私「…娘が受け取ったものなので、娘に返そうかと思います」
高城「…」
私がそう言うと、本部長は名刺を持ったまま黙り込む。
そしてしばらくの後、こう言った。
高城「汐崎部長…」
私「はい」
高城「娘さん…真奈美ちゃん、って言ったかしら?」
その言葉を聞き、私はとてつもなく嫌な予感に襲われた。
10/14
私「はい…そうですが」
高城「17歳だと、高校2年生?」
私「…はい」
本部長はソファーに深々と身を沈め、私を遠目に見るような格好で淡々と質問を続ける。
高城「さっきのメールは、真奈美ちゃんから?」
私「…はい」
高城「帰りが遅いから、心配しているのでしょうね」
私「…はい」
高城「いい娘さんなのね」
私「……はい」
なんの意味も無いような質問だが、その意図はヒシヒシと伝わってくる。
私は知らぬうちに拳を握り締めていた。
高城「確か、近くの女子高に通っているのよね」
私「……」
…知っているのか。
高城「それと…そう。お花屋でアルバイトをしているのよね?」
…!?
そんなことまで…なぜ!?
私は思わず立ち上がる。
これは…これは、明らかに脅迫だ…!
11/14
もし真奈美に何かあったら、許さない…!
そう叫びそうになるのをグッと堪え、私は本部長を睨みつける。
怒鳴りつけてしまったら感情が更に昂り、抑えられなくなりそうだったからだ。
まさか、彼女相手にここまでカッとくることがあるとは、思いもしなかった。
私は、本部長は決して悪い人間ではないと信じていた。
しかし私のそんな思いもむなしく、彼女は悪びれずに言う。
高城「汐崎部長。私、人から見下ろされるのが好きじゃないの。…座ってくださる?」
私「……」
顔を背け、こちらを見ようともしない。
その態度に、私は絶句する。
これじゃ、疑ってくれと言っているようなものじゃないか――
私の中で、今まで本部長相手に描いていたものが、尊敬の念が、崩れ去っていくのを感じる。
若くしてその地位まで登り詰めたのは、こういった狡猾さだったのだろうか?
噂を信じることは無かったが、本当にその身を使ってのことだったのだろうか?
彼女は女性として、とても魅力的だ。私も男だから、正直、惹かれる気持ちはある。
しかし、今までは美しいものと思っていたそれが、急に…汚らしいものに思えてきた。
…私は、彼女に失望した。
12/14
気持ちが萎え、私はソファーに座ることもなく、クルリと後ろを向く。
帰ろう…真奈美の待つ家に。
遅くなって、心配を掛けてはいけない。
あの子のことは、自分が守らねば。
大切なものは、自分の手で守らねば…。
真奈美には、まず、身を守るものを持たせよう。
痴漢対策とでも言っておけば良い。スプレーやらブザーやらを…。
私「…名刺の件は、分かりました」
背中越しに、力無く言う。
私「このことについては、全て忘れます。…失礼しました」
そう言い捨て、振り返ることなく私は彼女の部屋を後にした。
本部長はそれで満足したのだろう、何も答えてこなかった。
13/14
――
汐崎が帰ってからしばらくして、私はノロノロと立ち上がる。
そして玄関まで行き、チェーンを掛け…深くため息を付く。
まったく…。
いつもの鈍感力はどこにいったのか、彼は必要以上に頭を働かせてきた。
上の人間に報告しなければいけない。
広報部長が疑いの目を向けてきた、と。
それが、私の仕事…。
居間に戻り、テーブルの上を片付ける。
ティーカップを見ると、彼は一口も口をつけていないのが分かる。
…せっかく、美味しいお茶を淹れてあげたのに。
私が、せっかく――
ティーカップを床に叩き付け、粉々にしてやりたくなる。
…いけない。
こういうのが、いけない。
これがヒステリーね。
これだから女は…なんて言われてしまいそう。
14/14
ティーカップをキッチンに運び、中身を捨て…綺麗に洗う。
感情のコントロールは大切だ。
感情的になるのは男女で大差はないだろうに、男性に比べ女性のそれは、世間では叩かれる要因になってしまう。
気に入らないことだけど、仕方ない。
それに反抗すれば、またそれもマイナスに見られてしまう。
処世術の1つよ。
私は自分にそう言い聞かせ、洗い物を終える。
何だか、このままでは眠れそうにない。
シャワーでも浴びよう…
私は準備してあった2つのワイングラスを一瞥してから、ローブを脱ぎ捨て、浴室に向かった。
全て、洗い流すの――…
リアルタイムで見たわ。
乙。
もはやコンスタントに投下するのは赤緑だけになったなw
乙
おもしろい話だったが、
ハイパーメディアクリエーターと同じ名字なのが残念
離婚すら話題作りに使われてカワイソス
だから、赤緑はてめえのブログだけでやってろって
いいぞ赤緑もっとやれ
忍の人のお姉さん、早く見つかると良いねぇ…
規制されてんだろうか・・・
忍の人のお姉さんのポスター、見た人いますか?
いなければ、今週あたり新宿行くんで交番前とか見てくるけど
いってら〜
>>906 むしろうpされてた画像のページをプリントして、それ持って交番で聞いてくればいいんじゃね?
[声]
1/18
「光一…?」
部屋をノックする音と共に、俺を呼ぶ声がする。
まったく…
そう思いながら返事をすると、ドアが開き、お袋が入ってくる。
母「何か、連絡とか…」
俺「まだ無いよ。大丈夫だから…早く寝なって」
母「……」
沈んだ顔をするお袋。
まったく…
何やってんだよ、姉貴――。
昨日、古乃羽が退院し、これで後は姉貴が戻るのを待つのみ…と思っていたが、
その翌日、つまり今日になっても…更にその夜になっても、姉貴からは何の音沙汰も無かった。
母「こんな風に居なくなるなんて…」
俺「大丈夫だって。姉貴だってもう子供じゃないし、しっかりしているじゃない」
母「でも、また病気とかだったら…」
俺「病気はもう大丈夫だよ」
…何の根拠もないが、そう言っておくしかない。
2/18
母「でも…ねぇ…」
この状況、心配性のお袋には堪らないだろう。
姉貴だって、それくらい分かっているはずなのに…。
母「何か、事件に巻き込まれたとか…」
俺「考えすぎだって。姉貴は、ほら…危ない所とかには近寄らないだろ?」
…これは嘘だ。昔はそうだったが、今はその逆で、危ない所に近付く傾向がある。
ハァ…と、ため息を付くお袋。昨日の夜から、ずっとこんな感じだ。
俺「明日には帰ってくるって。こっちからもまた電話してみるから、寝ていた方がいいよ」
時刻は23時を回っている。普段なら、お袋はとっくに寝ている時間だ。
そんなに年寄りって訳じゃないが、睡眠時間を削るのは決して良いことじゃない。
母「もう、心配で…。光一は、平気だと思う…?」
俺「…あぁ、思うよ。絶対大丈夫だって」
母「そう…。光一がそう言うなら…」
父親が居ないので、うちに男は俺1人。そのためか、母親には何気に頼りにされることがある。
母「何かあったら、お願いね…」
そう言って、力無く部屋を出て行くお袋。
俺「あぁ、もちろん。おやすみ」
母「おやすみ…」
3/18
お袋が部屋を出て行ってから、俺は携帯を手に取る。
そして、これで何回目になるだろう、姉貴の番号に掛けてみる。
…電波が届かない所にいるか、電源が入っていないため――
ダメだ。
相変わらず、同じメッセージが繰り返されるだけだ。
クソッ…何やってんだよ、まったく…!
携帯をベッドに放り投げ、俺も横になる。
お袋や俺、古乃羽達…誰もが心配すると分かっているだろうに、何でこんな…。
まったくもって、姉貴らしくない。
まさか、本当に何かに巻き込まれた?それとも病気が再発して…?
俺も心配性なところはあるから、嫌な想像ばかりしてしまう。
俺「まったく…」
まったく、まったく。これ、口癖になりそうだぞ。…まったく。
何もしていないと、どうも頭がモヤモヤしてくる。
よし、ちょっと遅い時間だけど、古乃羽にメールしようかな…
天井を見つめながら、そんな事を思ったときだった。
ブー…ブー…ブー…
携帯が振動する。
まさか?と思い、慌てて携帯に飛びつく。
メール…?じゃない、電話だ。発信元は……姉貴!
4/18
俺「はい、もしもし…!?」
勢い込んで電話に出る。
「…光一」
姉貴の声だ…!
俺「姉貴!?どう…えーっと…今、どこだ!?」
何から聞くか、何を言うか、アワアワしてしまう。
舞「…ちょっと、遠いところ…」
俺「遠いところって、どこだよ?」
舞「…ごめんね、言えないの」
???
言えないって…?
俺「…何してんだ?お袋、めちゃくちゃ心配してるぞ?」
舞「…」
俺「俺だって…古乃羽達だって、みんな――」
舞「…ごめんね」
俺「ごめん、って…」
ただ謝ってこられても、どうにもならない。
散々心配させておいて、事情も言えないのか?
5/18
舞「あのね…お母さんに、心配しないで、って伝えて欲しいの」
俺「な…」
心配するなって?何言ってんだ?
俺「心配するに決まってるだろ?…それに、言いたかったら自分で言えよ」
舞「…」
俺「お袋、さっきまで起きていて…昨日から、ずっとなぁ――」
舞「…」
何も言わない姉貴。理由をハッキリ言えないにしても、何か言ってほしい。
黙っていられると、段々とイライラしてくる。
俺「明日の朝でもいいから、携帯じゃなくて家に電話してくれよ。それで、お袋に…」
舞「無理よ…」
俺「無理って…!」
思わず、ふざけるなと怒鳴りたくなる。
何で急に、こんな自分勝手なことを?
姉貴に手を上げたことは無いが、引っ叩いてやりたくなってくる。
6/18
お袋は俺が7つのときに、夫…つまり俺たちの父親を亡くしている。
それから再婚することも無く、女手1つでせっせと働き、俺たち姉弟を育ててくれた。
――俺が中学に上がるくらいのとき、姉貴と2人で決めたことがある。
母親を大事にしよう、と。
夫の居ない1人きりの母親には、俺たちがずっと一緒に居てやろう。
これ以上、寂しい思いはさせないように…悲しい思いもさせないようにしよう、と。
…それを反故にするような姉貴の言動は、俺には許せなかった。
俺「無理って、どういうことだよ?話もできないのか?」
舞「…」
沈黙する姉貴。
俺「…何とか言ってくれよ」
舞「…どうしても、出来ないの」
俺「だから、何でだよ?」
つい、口調が荒くなってしまう。
…が、ここで抑える気はない。
舞「…言えないわ」
何も言えないのか?
これじゃ、話にならない…!
7/18
俺「自分じゃ言えないから、俺に伝えて欲しい、って…?」
舞「…」
俺「俺に、どんな気持ちでそれを言えって!?」
舞「…」
…言い過ぎだ。
いけない、言い過ぎている…と思うが、止まらない。
俺「俺にそんな役目を押し付けて、どこで何をしているのかも教えないって!?」
舞「…お願い」
俺「そんな勝手が、許されるとでも思って――」
舞「お願い、光一…」
あ…
……
姉貴の悲痛な声を聞き、続く言葉が出なくなる。
携帯を握り締めたまま、俺は黙ってしまう。
…知らない内に力を入れすぎていて、手が少し痛かった。
8/18
そういえば――
携帯を持つ手を緩めながら、古乃羽の言葉を思い出す。
「お姉さんのこと、信じている?」
これは、桐谷って人を殺したことかと思ったが、それだけじゃ無かったのかもしれない。
きっと、こういうことも言っていたのだろう。
姉貴が意味も無く、勝手に居なくなるわけが無い。
何か、自分達には言えない、深い理由がある…そう、信じられる?と。
俺はゆっくり…深く深呼吸をする。
俺「…姉貴」
舞「……何?」
少し辛そうな声だ。…しまったな。
俺「身体の調子が…具合が悪いとか、ないか?」
舞「…うん」
俺「怪我したとかも、ない?」
舞「…うん」
俺「もう4日になるけど、食事とかは…?」
舞「平気…」
俺「あとどれくらいで帰ってこられるか、分かる?」
舞「…」
…沈黙。
分からない、か
9/18
俺「何をしているかとか、どこに居るかとか…言えないくらいのこと、って思っていいのか?」
舞「…うん」
俺「俺に…こっちで何かできることは、ある?」
舞「…」
なし、か。
まぁ、言えない程の事なら、そうか。
俺「また電話できるか?俺の携帯でいいから」
舞「…できたら、する」
よし…。
俺「お袋には、うまいこと言っておくから」
舞「…ありがとう」
俺「男と一緒だ、って」
舞「…1人よ」
俺「冗談だって」
舞「……こら」
よし、一本取ってやった。ちょっと気が済んだぞ。
10/18
俺「あのさ。もう少し電話、平気か?」
舞「…多分、あと少し」
あと少しか。どうする…?
…って、悩むまでも無いか。聞いておかないといけない事がある。
俺「あの、古乃羽の事なんだけどさ…」
舞「…」
俺「えーっと、どう説明すればいいかな…」
名刺を貰った所から話をするかな…と思っていると、姉貴が先に言ってくる。
舞「古乃羽ちゃんが霊視したのは…桐谷さんの名刺?」
俺「…え?」
舞「違う?」
俺「いや、そう…その通りです」
驚いて、思わず敬語になってしまう。流石と言うか…知っているのか?
舞「彼女から、話は聞いているのね」
俺「あぁ。…あ、何か言っちゃダメみたいなことだったらしいけど…」
ここは古乃羽をフォローしておかねば。
舞「ちょっとの間、ね。私がここに着くまで、探して欲しくなかったから」
俺「あぁ、そう…」
“ここ”がどこだか分からないが、ずっと言わないでおいて、という訳じゃなかったのかな?
もっとも、古乃羽の性格を考えての、姉貴なりの気遣いかもしれないが。
11/18
俺「古乃羽、瞼を少し切ったくらいで済んだけど…。あれって、何が…?」
舞「…光一の考えは?」
俺「俺の?」
俺の…というか、俺たちの考えでは――
俺「桐谷って人、殺されているじゃない?だから、その犯人がやったのかな…って」
舞「…正解よ。大体のとこは」
俺「大体のとこって?」
「…ぁ…」
…ん?何だ…?
舞「あれは、罠よ。犯人側が仕掛けた罠」
俺「え?あぁ…罠?」
舞「桐谷さんのことを、霊視とか…そういった形で探ろうとする人に対する、罠」
俺「なんでそんな…」
そんな探られ方を予想している、ってのも変わった話だ。
「…ぁー……」
また…何だ?
誰かの声?電波が悪いのかな…?
12/18
俺「それじゃ、名刺を渡してきたのは犯人じゃないってことか?」
名刺を渡してきた人間が犯人だと思っていたが、どうも違うようだ。
そんな罠を仕掛けるくらいなら、わざわざ渡すのはおかしい。
舞「犯人じゃないわね。…でも、渡した人は罠があると知っていたわ。それでも渡したかった。それが危険なものだと分かっていても」
俺「何で?…って、姉貴、渡した奴のこと知っているの?」
「…ぁー…ぉぉ…」
まただ。変な声…呻き声?それが徐々に鮮明に、大きくなってきている。
舞「えぇ…知っているわ。本当は止めて欲しいのだけど…止めないわね」
俺「一体、誰が?」
「…ぉぁぁ…ぁぁ…」
何だよ、これ…
舞「名刺を渡したのは、桐谷さんよ」
俺「…桐谷?いや、だって――」
「おおぉぉおおぉおおああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ」
俺「うわっ!?」
13/18
俺は反射的に、携帯を耳から遠ざける。
ビックリした…。
何だ?今の…。
何か、すごく嫌な…
そう思いながらも、俺は恐る恐る携帯に耳を近付ける。
舞「…光一?どうしたの?」
姉貴が俺を呼んでいる声がする。
あの声は…聞こえない。
俺「あぁ、いや…。何か、電話の混線かな?変な声がさ…」
舞「――えっ!?」
俺がそう言うと、姉貴は珍しく驚いた声を出す。
俺「どうかした?もう、聞こえなく…」
「…ぁ……」
俺「あれ、また…」
また変な声が聞こえる。
何だろう?どこから聞こえてきているのか…?
俺「姉貴、これ――」
舞「ごめんなさい、光一。時間がないわ」
俺「ん…時間?」
14/18
舞「光一、よく聞いて」
俺「…何?」
姉貴の口調が変わる。少し焦っているようだ。
舞「名刺を渡してきたのは、桐谷さんの弟」
俺「弟…」
舞「彼は、あなた達に危害を加えることは無いはずよ」
俺「…いや、でも古乃羽が――」
舞「古乃羽ちゃん、霊視する前に気付かなかったのかしら…?危険だ、って」
あ…そうか。
俺「いや、気付いたんだった。そうだよ。でも、その…」
そうだ。気付いておきながら、危険と分かっていながら霊視したのだった。
理由は…ちょっと言いにくいな。神尾さんのせいにもしたくない。
舞「気付いたのね?でも、その上でそうしたのなら…それは、古乃羽ちゃんには悪いけど、自業自得な部分もあるわ」
俺「ふむ…」
厳しい気もするけど、確かにそう言えなくもない。
「…ぁぁ……」
また、声が徐々に大きくなってくる。…何だか気味が悪い。
15/18
舞「光一、それともう1つ」
俺「何?」
舞「往来会には、関わらないで」
…何となく予想していた事を言われる。
俺「…分かった。危険なんだな?」
舞「そう、危険よ。…特に、美加さんと北上君はダメ」
俺「あの2人…?」
「…ぉぉ…あぁぁ……」
クソ、うるさいな…!
あの2人がダメ、って何だ?
…というか、既にあの2人は一度往来会に行っているけど…それを姉貴に伝えた方がいいのかな?
俺「あのさ、その…」
「…あ…おぁ……ぁぁ…」
呻き声みたいな…何なんだよ、これ!?
16/18
舞「いいわね?桐谷さんのことで、巻き込まれるかも知れないけど――」
姉貴は話を続ける。徐々に早口になっている。
俺「桐谷のことで…?」
舞「そう。それでもし巻き込まれて、関わるようになってしまったら…」
「…おお…お…ぉぉぉぉ……」
声…声が、こっちに迫って来る…?
不意に、そんなイメージが頭に浮かぶ。
さっきまでのように、ただ大きくなるだけじゃない。声が直線的に、こちらに向かってくる感じがする。
俺「姉貴、声が…」
舞「壷に気をつけて。いい?壷よ。人の頭くらいの大きさの――」
「…おぉぉ…おぉぉぉいいいいぃぃぃぃ……」
俺「声が、こっちに…」
舞「っ!」
何だ?何か…何か、いけない…!
舞「光一ありがとう。分かってくれて、嬉しかった――」
「いいいいいいいいいいぃぃあああああぁあぁぁぁ」
俺「姉貴!これ――」
言い終わる前に、携帯が切れる。
それと共に、俺に迫ってきていた声もプツリと途切れた。
17/18
――
切れた携帯を持ちながら、俺はしばらく動けなかった。
色々な事が分かった気がするが、どうも頭の整理がつかない。
それもこれも、あの声のせいだ。
こちらに迫ってきていたあの声。携帯を切ると同時に途切れた、あの声。
まだ耳に残っているあれは…、姉貴の居る場所から聞こえてきていた…?
…きっとそうだ。
だとしたら、姉貴は平気なのか?そんな場所に、ずっと居るつもりなのか?
……
俺「まったく…」
口癖、決定だ。そう思いながら、俺は再びベッドに横になる。
姉貴が平気だと言うなら、信じるしかない。
不安で心配で仕方ないけど、無事を祈るしかない。
でも、とりあえず…。
姉貴が連絡してこない理由は分かった。
あんな声が聞こえてくるんじゃ、誰にも電話なんかできやしない。
お袋に、なんてとんでも無いことだ。
あれは絶対に”イイモノ”じゃないだろう…。
18/18
さて…、と。
これから、どうするかな?
まずはお袋に、姉貴から無事を伝える電話があったことを伝えないといけない。
それから、その他の事を古乃羽達に話さないとな。
名刺を渡してきた人の正体が分かった。
それと、往来会は危険だ、ってことも。
…なぜか知らないが、神尾さんと北上にとっては、特に。
そのことを皆に…。
っと。
あと、壷か。
これもよく分からなかったな。
壷に気を付けるって、何をどうすれば良いのかサッパリだ。
割れ物だから、取り扱いに注意?…って訳じゃないだろうなぁ…。
俺はゴロリと寝返りをうつ。
まぁ、何はともあれ、明日、集まろうかな。
また神尾さん宅にでもお邪魔させて貰おう――
俺はその旨を古乃羽にメールすると、眠るべく、布団に包まった。
…しかしその晩は、あの声が耳から離れず、中々眠る事ができなかった。
そろそろウニさん来てくれないかな…
てす
>>927 うん・・・・ウニが来てくれないとつまんないよな
赤緑さんがんばってるなぁ
久しぶりに「霊感の強い人にまつわる話」が読みたいな
俺は赤緑大好きだぞ
もっとやれ
[報告(前)]
1/10
「おはよう――」
朝。
私はいつものように本部へと出勤する。
「おはようございます」
「おはようございます、本部長――」
笑顔で朝の挨拶を交わすのは、とても大切な事。
こうして、爽やかに自然な笑顔で挨拶をするだけで、印象はとても良くなる。
自分という人間を、良いように見せるための笑顔。
意図して作る、自然な笑顔…。
本部長室に入り、デスクに着く。
そして1日の始めに私がすることは…今日の予定の確認。
――私には、秘書が居ない。
私が「必要なし」としたから。
自分の事は全て自分でしたいし、何よりも…私はここの人間をあまり信用していない。
中には良い人も居るけど、全ての会員を、完全には信用できない。
…バカな話。
信用を裏切ったのは、私の方なのに――
2/10
そんな事を思っていると、コンコン、と扉をノックする音が聞こえる。
私「はい」
声「失礼します」
そう言って入ってきたのは、事務課の三島課長だった。
私「おはよう、三嶋さん」
三嶋「おはようございます」
彼はそう言って白髪混じりの頭を下げる。
三嶋課長――今年で54歳になる彼は、とてもマメな男だ。
仕事の正確さに定評があり、その点は上の人間からも認められている。
…しかし彼には出世欲というものが無いようで、課長という地位に甘んじている感がある。
三嶋「こちら、ご依頼の資料になります」
そう言って、一通の封筒を渡してくる。
私「ありがとう」
私はそれを受け取り、中身を簡単に確認する。
――OK。
三嶋「それでは…」
私「はい、ご苦労さま」
一礼して部屋を出て行く三嶋課長。彼もまた、上の人間のすることには一切口を挟まない人間だ。
3/10
A4サイズの封筒には、私が依頼した資料が入っていた。
依頼内容は、ある3人の調査。その調査結果が、1人1枚にまとめられている。
私はその中から2枚を取り出し、それぞれの名前と写真を見る。
…そう、この2人だ。
あの名刺を持ってきた2人――神尾美加と、北上明雄。
どちらにも、気になる点があった。
特に…神尾美加。
写真だけ見ても、彼女の人柄が良く分かる。
利発的で、意思の強さを感じさせる目。
学校の勉強はどうだか分からないけど、賢いタイプだろう。
人付き合いも良さそうで、資料にもその通りのことが書いてある。
北上明雄の方は、人柄云々にはまったく興味を惹かれない。
ただ気になったのは…あの耳。あの時見えた、1つ多い耳。
あれは、彼の方にあった。
私の予想では、恐らく――携帯電話だ。
誰かに繋がったままの携帯。それを彼が隠し持っていた…と、そういう事だろう。
問題は、その相手だ。それについても調べておく必要があるかもしれない。
資料を見る限り、上の人間はきっと、この2人…特に神尾美加のことを気に入るだろう。
なぜなら、一番大切な点…上の人間が求める、ある1つの条件を満たしているから。
4/10
コンコン、と再び扉をノックする音がする。
本日2回目。今度は誰――?
私「はい」
資料を封筒に仕舞い、返事をする。
…すると、思いがけない人物――1人の老人が入ってきた。
「やぁ、高城君」
それは私の上司である、夏目川副会長だった。
夏目川吉次(なつめがわ よしつぐ)――71歳になる彼は、往来会発足時のメンバーの1人だ。
71という年齢の割にはまだ若々しく、初老と言えるかもしれない。
そんな彼と現会長の2人が、約20年前、この往来会を立ち上げた。
2人は元々易者をしており、それがある時思い立って…、ということらしい。
名前の由来については、現世とあの世を行き来するとか、来るべき往生の時のために云々…なんて、建前はそういった話になっているけど、
本当は町の往来で仕事をしており、そこから付けた名前なのだと、会長が笑いながら話してくれたことがある。
5/10
――私がこの会に入ったのは、8年前。私が20歳の頃だ。
当時学生の身で就職の事を考えていた私に、会長自らが声を掛けてくれた。
それから紆余曲折を経て、私は本部長にまで出世できた訳だけど、
それはやはり、会長の力添えがあったからこそだった。
…会長は、私のことをとても気に入ってくれた。
気に入ってくれたと言っても、私の女性としての部分を…という訳ではない。
会の中で私に関する様々な噂があるのは知っているけれど、会長から――もちろん副会長からも、噂にあるような要求をされたことは一度も無い。
ここに来てから、誰とも、何の関係を持った事はない。
もしそんな要求をされていたら、私はここには居ない。今でも、即刻ここを辞めるつもりだ。
女としての武器とそれとは、別だと思っているから。
でも…、どうしても気になる事がある。
私を見出してくれた会長と違って、副会長は私をどう思っているのか?
私は彼に椅子を勧め、お茶の準備をしながらそんなことを考える。
昔から思っていることだけど、一度も答えが出ない。
私は、会長からマンションまで貰っている。
世間一般的に考えれば、私は会長の愛人ということになるだろう。
それも、少し普通ではない形の…。
6/10
夏目川副会長にとって私という存在は、ハッキリ言って不愉快だろう。
2人で立ち上げたこの組織で、私は本部長という役職にいる。
往来会では社長、副社長というものは無く、これが会長、副会長というものになっている。
そして、専務や常務といった役職が無く、その下が本部長になる。
…つまり、副会長の1つ下は、私なのだ。
こんな言い方はしたくないけど、立場的に、私は往来会のナンバー3ということになる。
副会長にしてみれば、これは納得のいかない事だろう。
私の方にしても、当然、戸惑いはあった。
会長の一存で本部長になった私。
任命されたときは周りから色々と言われ、嫌な噂も囁かれた。
…でも、地位に恥じない仕事をすることで、私はこれに打ち勝とうと決めた。
そして、今もそうしている。
プレッシャーに負けないよう、常に気を張っている。
家に帰って1人になるまで、ずっと。
…いや、最近は家でもずっと。
これが普通に、自然になるように。
気を抜いて甘えたいとか、素の自分を見て欲しいとか、そんな気持ちは、もう――
7/10
私「――こちらに来られるなんて、珍しいですね」
私はお茶を置き、副会長の前に座りながら言う。
ここは会の本部だけど、会長も副会長も滅多に顔は見せない。
…いや、会長に関しては、私の知る限り一度も来たことが無い。
夏目川「あぁ、ちょっとね…」
お茶を飲みながら答える副会長。
その心の内は読めない。読めないけど…何をしに来たのかは、検討がつく。
ここは、私から切り出した方が良いだろう。
私「…桐谷の件ですか?」
私がそう言うと、副会長が頷く。
夏目川「何か、おかしなことになっているみたいだね」
私「はい」
おかしなこと。…そう、少し不可解なことになっている。
夏目川「詳しく聞かせてもらっていいかね?」
私「はい。勿論です」
そう言って私は、副会長に報告を始める。
名刺を持ってきた、あの2人の学生の件。耳のことも含めて全て。
…あと、汐崎のことも報告しなければならない。
報告は義務。
それが私の、本部長としての仕事…。
8/10
夏目川「つまり――」
学生の話を終えた所で、副会長が口を開く。
夏目川「その2人は、何かを探ろうとしていた、と」
私「そのようですね」
夏目川「ふむ…」
腕を組み、考え込む副会長。
私「…これが、その2人です」
私はそう言って、先ほどの資料を見せる。
夏目川「ほぉ…。流石、手が早いね」
“手”が早い?…皮肉かしら。
私「その北上という男の携帯から、何者かが聞き耳を立てていました」
夏目川「この男の…」
男の資料を見る副会長。
…しかしそちらはすぐにテーブルに置き、神尾美加の資料を注視する。
夏目川「…主導者はこちらだろうね」
私「はい。私もそう思います」
そう同意すると、副会長は私を見てニヤリと笑う。
…生意気な、と思われたかも知れない。
9/10
夏目川「その耳の持ち主に、キミのことは?」
私「…私がずっと見ていたことは、知られていると思います」
夏目川「ふむ…」
しばらく沈黙する副会長。
私は、相手に知られたことをミスだとは思っていない。
警告の意味も含め、そうするべきであったとすら、思っている。
…それゆえに、この沈黙は気に入らなかった。
夏目川「相手方の検討は?」
私「…分かりません。こちらの知っている人物ではありませんでした」
夏目川「ふむ…」
私「…」
再び沈黙のプレッシャー。
しっかり仕事をしろ、と言われているようだ。
夏目川「…なるほど、よく分かった」
話を切り上げる副会長。プレッシャーは十分伝わったと分かったのだろう。
私「まだ調べ足りない点があるとは思いますが…」
夏目川「いや、キミは良くやっているよ」
私「…ありがとうございます」
真意は分からないけど、良くやっていると言われたなら、こう返しておくしかない。
10/10
夏目川「報告は以上かね?」
私「……」
報告。報告をしなければ。
…私の仕事として、汐崎のことも言わなければ。
彼の娘が名刺を受け取った事と、彼が私に――往来会に、疑いの目を向けたことを。
その結果、彼がどうなるかなんて考えてはいけない。
…考えてはいけない。
いけない。
私は――
夏目川「まだ何か、あるかね?」
私「いえ――…」
コンコン。
自分が何を言おうとしたのか分からない。
彼のことを言おうとしたのか、それとも話を終わらせようとしたのか?
扉がノックされたのは、そんなときだった。
朝早くから続く、今日3度目のノック。
それは私の言葉を切ってくれる、まさに最高のタイミングだった。
…しかし入ってきたのは、私にとって最低の人間――藤木徹だった。
赤緑さん乙です
乙
おもしろかったぜ
赤いきつねと緑のたぬき
黒い豚カレーのことも思い出してあげて
やっぱウニさん来ないとイマイチ盛り上がらんね
あ、赤緑氏乙
[報告(後)]
1/15
藤木「失礼します――っと?」
返事を待たずに部屋に入ってきた藤木が、驚きの声を上げる。
藤木「副会長じゃないですか!ご無沙汰しています!」
背筋をピンと伸ばしてから、副会長に向かって真っ直ぐにお辞儀をする藤木。
夏目川「やぁ。元気にしていたかね?」
藤木「はい、それはもう…お陰さまで」
含みのある言い方をする藤木。
…それもそうだろう。
なにしろ、藤木に例の仕事を与えたのは、この副会長だ。
夏目川「丁度今、高城君から例の件について、報告を受けていたところだよ」
藤木「例の件…?」
私「名刺の件よ」
藤木「名刺…あぁ、なるほどね」
ほんとに頭の回転が鈍い男だ。
こんなのが支部長だなんて…と、そんなことを思ったとき、藤木が思いもかけない質問を口にする。
藤木「報告と言えば…、本部長、昨日、汐崎に会えました?」
2/15
……!
突然の想定外な質問に、私は必死で動揺を抑える。
何か気取られるのはマズイ。
彼のことを言うにしろ、黙っているにしろ…。
藤木「昨日の夜、探していましたよ?何か急な用事が――」
どこまで知っているの?
この男が、汐崎の用件を知っている可能性は?
このタイミングで聞いてくるということは、もしかしたら…?
…分からない。この状態で考えたところで、分かるわけが無い。
それについて、今ここで聞くわけにもいかない。
でももし、用件の内容を知っていたら…?
私が副会長に報告を怠った事に…隠し事をしたことになる。
それは、事が事だけに、組織に対する裏切りと取られるかも知れない。
…それはダメ。
私にとっても…もちろん、汐崎にとっても、それは一番良くないことだ。
私が彼を庇ったと悟られる事は、彼にとって最悪の事態になる。
間違いなく、私との関わり合いを探られるだろう。
何も無いと言って、彼らが信じるとは思えない。
…何も無いのに。何も無かったのに――。
3/15
私「藤木…支部長。私はまだ、報告の途中です」
藤木「あら…?」
夏目川「まだ何か、あったかね」
副会長が私を見る。
…私は悪びれることなく、その目を見返して答える。
私「はい。今、藤木からもありましたが…汐崎部長のことで」
夏目川「ふむ」
私「…と言っても、正確には彼の――」
良いの?私はこれで良いの…?
私「娘さんの事です」
夏目川「…」
藤木「あぁ、一人娘が居るってな。確か女子高生で…」
私「…支部長、口を挟まないで下さいます?」
八つ当たり気味に藤木をたしなめる。
怖い怖い、と言った顔をして、藤木は黙った。
4/15
私「実は、汐崎の娘も名刺を受け取ったのです」
夏目川「ほぉ…」
私「汐崎の話では、渡してきたのは、先ほどの学生に渡した相手と同じようです」
夏目川「同じ…。確か、学生から話を聞いたのも、汐崎だったかな」
私「はい」
夏目川「なるほど…」
やはり、彼が渦中の人になってしまう。
何も知らないまま、彼はこの件に深く関わってしまっている。
ここは、話を別の方向に持っていくべき…?
私「これは私の考えなのですが…名刺を渡している人物の目星がついています」
多少強引かもしれないけど、興味を惹きそうな話に持っていく。
夏目川「…ほぉ」
藤木「へぇ…。さすが本部長様」
ニヤニヤしながら藤木が言う。
つくづく不快な男だ。
夏目川「私も大体分かってきたよ。…キミの考えでは、誰かね?」
副会長も検討はついたようだ。
まぁ、事情を知っていれば分かる事だろう。
私「おそらく、この男かと…」
私はそう言って、三嶋から渡された資料の最後の1枚を取り出し、副会長に渡す。
私「桐谷隆二。死んだ桐谷達夫の弟です」
5/15
藤木「へぇ、弟ねぇ…」
横から資料を覗き込み、藤木が言う。
夏目川「まぁ、そんなところだろうね」
…見解は一致したようだ。
夏目川「桐谷隆二、27歳。フリーのカメラマン。…現在、行方不明」
副会長が資料を読み上げる。
藤木「両親は既に他界しており、親戚も居ない…と。それじゃ、今は天涯孤独って訳か」
私「唯一の肉親であった兄が殺された訳ですから…事件の真相を調べていると思われます」
多少の皮肉を込めて言う。
目の前に居るのは、その殺人を命令した者と、実行した者だ。
藤木「浅はかだねぇ…。自分の身の安全を考えてないのかねぇ」
私「…」
この男に「浅はか」と言われたらお終いだ。
今の状況と、資料の写真を見ただけで分からないだろうか…?
この桐谷隆二という男は――
夏目川「この男、なかなかの切れ者かもしれないね」
――そう。この男、よく計算して行動を起こしている。
6/15
夏目川「汐崎の娘を突いてくるとはな…」
私「…」
確かに、桐谷隆二は上手いところを突いてきた。
なぜなら、汐崎の娘は上の人間――副会長が「目を掛けていた子」なのだ。
彼女には霊感が無く、素質があるから。
――でも、違う。
私が桐谷の行動で気になったのは、そちらではない。
本当に注意するべきは、もう一方の方…神尾という子の方だ。
夏目川「汐崎の娘に、桐谷隆二の写真は見せたのかね?」
副会長が聞いてくる。
…彼の興味は、汐崎の娘に向かっている。
私「いえ。資料は、今朝受け取ったばかりで…」
夏目川「では、確認するべきだろうね。相手をハッキリさせて、場合によっては彼女にも――」
…ダメ。
汐崎を、これ以上巻き込んではいけない――
私「いえ…。その必要はないかと」
夏目川「…なぜかね?」
7/15
私「汐崎には、この件については全て忘れるように言いました」
夏目川「当然だね」
私「彼は私に名刺を渡し…全て忘れますと言いました」
夏目川「…名刺を受け取ったのかね」
私「はい」
私は名刺入れから例の名刺を取り出し、テーブルに置いた。
私「汐崎については、これで話がついています。これ以上掻き乱すことは――」
夏目川「――桐谷の思う壺、と?」
私「はい」
夏目川「なるほど…」
そう言って考え込む副会長。どうやら、納得してくれそうな気配だ。
…私は更に続ける。
私「それよりも、私としては学生達の方が気になります」
夏目川「こちらか…」
改めて神尾美加の資料を見る副会長。
彼の興味の矛先を、こちらに向ける。
神尾という子には悪い気がするけど…。
8/15
夏目川「やはり、耳が?」
私「はい」
夏目川「その耳は、桐谷のものでは無かったのかね?」
私「いえ…。その写真を見た感じでは、あれは他の者かと」
夏目川「…」
私「桐谷の協力者かもしれません」
これは憶測。
でも、興味を惹ける筈…。
夏目川「本部長としては、こちらを…ということでよろしいかな?」
――責任の話だ。
副会長はこれを私の判断として、私に責任を持たせようとしている。
…でも、それで構わない。私の勘でも、注意するべきはこちらだから。
私「はい。こちらから調べていくべきだと思います」
まず、こちらから。
一応、汐崎の方を完全に切るような言い方はしないでおく。
変に怪しまれないように…。
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夏目川「では、その線でいこう。報告は以上かな?」
私「はい。以上になります」
夏目川「分かった。…いやぁ、ありがとう、朝早くからすまなかったね」
そう言って副会長が椅子から立ち上がる。
私「いえ…。お忙しいのにわざわざ、ありがとうございます」
私も立ち、頭を下げる。
夏目川「この資料は、貰っても構わないかな?」
私「はい。…では、これに」
私はデスクから封筒を持ってくると、副会長から資料を受け取り、そこに入れる。
夏目川「名刺も一緒に、お願いするよ」
私「はい」
言われた通り、桐谷の名刺もそこに入れ、封筒を渡す。
夏目川「ありがとう。では…藤木君、送ってくれるかね」
藤木「え?…あぁ、はい。勿論です」
2人が連れ立って、部屋から出て行く。
私「おつかれさまでした」
私は扉を開けたまま頭を下げ、2人を見送った。
――なぜ今、藤木も連れて行ったのか。
汐崎の事で少し安心していた私は、それを深く考えなかった。
10/15
――
藤木を連れて建物の外に出た私は、車まで歩きながら彼に言う。
私「まったく君も…良いタイミングで入ってきたものだね」
藤木「…はい?」
私「フン…」
車の横には専属の運転手が立ち、私を待っている。
私はそこまで行かず、途中で足を止める。
…聞かれて困る事もないが、聞かれないに越した事はない。
私「高城に、何の用事があったのかね?」
藤木「いや…まぁ、特には…ヘヘヘ…」
誤魔化すように笑う藤木。それで大体想像ができる。
私「彼女に手を出すのは、控えた方が良いと思うがねぇ」
藤木「…はぁ」
どうなろうと知ったことではないが、アレの…会長の物に手を出して問題になっては、具合が悪い。
…藤木は、私の大切な駒だ。
私「それにしても…」
私は封筒を開け、1枚の資料を――神尾美加という学生の資料を取り出す。
私「これは、中々の掘り出し物だな」
資料には、私が求める最高の条件が書いてある。
――霊感、なし。
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藤木「可愛い顔していますねぇ…」
資料を覗き込んで、藤木が言う。
私「この女については、私の方で調べる」
藤木「…じゃあ、自分は男の方ですか?なんて言いましたっけ」
私「北上明雄だ。…だが、コレはどうでもいい」
こちらも霊感なしだが、興味が沸かない。
藤木「ってことは…桐谷の弟をマークしますか?」
私「いや、それもいい」
藤木「…はぁ」
桐谷隆二は、藤木の手には負えないだろう。
コイツの頭で勝てる相手ではない。
それより、もっと適している仕事がある。
私「キミには、汐崎をマークしてもらう」
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藤木「汐崎…部長ですか」
私「そうだ」
藤木「娘じゃなく?」
私「…場合によっては、娘も、だな」
藤木「その場合が良いなぁ…」
…この男の品の無さは、どうしようもないな。
私「キミにはまた、”力仕事”をしてもらうかも知れないよ」
藤木「あぁ…平気ですよ。得意ですから」
ニヤニヤした顔で藤木が言う。
私「汐崎の動きを、見張っていてくれれば良い。何かあったら――」
藤木「直ぐに連絡します」
私「うむ」
藤木は、頭は悪いが、単純作業や”力仕事”には最適な人間だ。
藤木「でも何で汐崎を?関わりすぎたからですかね?」
私「それもあるが…」
私も汐崎という人間は良く知っているつもりだ。
あれは、上からの命令なら何でも従う男だろうし、何かを忘れろと言えば、スッパリと忘れる筈だ。
上の人間にしてみれば、使いやすい男。
…しかし、娘が絡むと話は別だ。
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私「汐崎は、往来会を疑っている可能性がある」
藤木「…あの部長が?」
私「そうだ」
藤木「そんな情報、どこで…?」
私「…キミにそこまで言う必要があるか?」
そう言って藤木を睨みつける。
余計な口出しは結果として自分の首を絞めることを、分かっていないのだろうか。
藤木「あ…いや、いえ…すみません」
私「分かったら、仕事に移ってくれ」
藤木「…はい!それではこれで失礼します!」
藤木はそう言うと、一礼し、本部へ戻っていった。
私「フン…」
私はそのまま車に乗り込み、これからのことを考える。
汐崎が往来会を疑っている…。
これは間違いない。高城の様子を見れば分かることだった。
14/15
彼女は、汐崎を庇っていた。
この私が、汐崎の報告を省こうとした事に気付かないとでも思ったのだろうか?
しかもそれだけではない。
名刺のことがある。
高城は、この名刺を「汐崎がこの件を全て忘れた証明」として出してきた。
一見自然な話だが、見方を変えるとおかしな話だ。
この名刺はそんなことを証明するものではない。
これは、「彼の娘が名刺を受け取った」という事実を証明するものだ。
「これが彼の娘が受け取った名刺です」と言いながら出すのが普通だろう。
「これを渡してきたので、彼の方を調べる必要はありません」なんて、不自然な話だ。
一番大切なこと――事実を正確に報告していない。
彼女は自分の勝手な考えを肯定するために、これを出してきたのだ。
これはまったく、彼女らしくない。
そんな報告の仕方は、”本部長”としての彼女らしくない。
15/15
私「小娘が…」
そう呟き、車の窓から2階の本部長室を仰ぎ見る。
成り上がり者が何を考えているか知らないが、会長の寵愛を受けているからと言って、好き勝手やらせる訳にはいかない。
…しかしまぁ、それもあと僅かの話だ。
今日は収穫があった。
良い「素材」を知ることができたのが1つ。
もう1つは――
死相。
本部長、高城沙織の顔に死相をみた。
彼女は近いうちに、命を落とす。
それが分かった事が、一番の収穫。
邪魔な人間が消えてくれるのは、何よりも嬉しい事だ…。
荒らし?
赤緑さん乙です
赤緑さん乙
赤緑さんしか来なくなって久しいので頑張って欲しいな
相変わらず規制中の人が多いのかな
赤緑読んでないけどがんばって
んで忍の人はどうなったんよ
最近コンビニに山田悠介(笑)の書籍が並んでるんだが、コイツはそんなに評価されてるのかね?
このスレの一連の作品の方が面白いと思わん?
あの電波な文章が嘲笑の対象として変にウケてるだけ。
そろそろ夏だぞ
新作クレ
もうすっかり夏にならないとダメ。
ちょっと前の洒落コワを見ると、霊感のある友人がうじゃうじゃいたのにね。
973 :
1/5:2010/06/03(木) 17:13:32 ID:z37oXUQH0
「俺(Aとする)には凄い霊感を持った師匠がいる。仮にMさんとするか〜」
っていうのを洒落怖に洒落で投稿したものなんすけど。
なんか暇だったのでまた洒落で書いていたら続きができたので、おまいらにやるます。
文章の正式な書き方とか知らんし、適当に煽りの材料にでもしてくだせえ。
自己責任で呼んでください。 一応警告したので始めます。
普段、Mさんは古物商のようなことをしている。
築何十年のボロボロの借家だが、一応店舗も持っている。
「うーす、頼まれたもん持ってきましたー」
「おおA。悪い悪い、ま、茶でも飲んでけや」
奥の居間に通されて座布団に腰をおろす。
「はい、どうぞ」
風呂敷に包まれたものを解いて、机に置いた。
「またおかんから超怒られましたよー、それは持ち出すな!って」
「ああ、その"箱"はなあ、確かに相当やばいからなあ」
「おかんなだめるの大変でしたよー。絶対使わないから大丈夫だって言い張って、持ち逃げしてきました」
この"箱"は見た目は普通の木箱で。大きさはルービックキューブくらい。
ふだんは家の便所に、おかんの趣味のカエルの置物たちと一緒に飾られているものだ。
なんでも、遥か昔に何千体もの悪霊や物の怪の怨念や怒りなどを
とある有名な行者の法力で封じたものらしい。まあ規模の大小はあれ、割とよく聞く話かもしれない。
俺にはそんなヤバイものを見たがるMさんよりも
便所で埃を被ったまま放置しているおかんの神経が分からない。
974 :
2/5:2010/06/03(木) 17:14:56 ID:z37oXUQH0
「で、Mさんこれ何かに使うんですか?」
「まあとにかく、こっちのも見ろよ」
Mさんも小さな古い箱を持ち出す、凄い霊力というか怨念を感じる。
「あれ、これってもしかしてコ○リバコじゃないすか」
「そう、所謂あれだ」
「所謂じゃないすよ。制御が効かない分、ある意味そっちの方が相当ヤバイすよ」
「そんなことはどうでもいい。ところで…」
Mさんの顔が急に真剣になった。
「お前の持ってきた箱だが、多分お前なら"開け"られるよな?」
「まさか、コ○リバコ"焼かせる"んですか」
「別にそれならMさんの"アレ"にやらせてもいいじゃないですか」
「いや、それでもいいんだが、失敗した場合、多分Aのおかん来るじゃん」
「いやそりゃそうですけど。それが何か」
Mさんの顔が泣きそうになる。
「俺、もう嫌なんだよ〜説教食らいながら便所スリッパで全身痣まみれにされるの〜」
「…」
そんな理由でこの"箱"に焼かれる、このコト○バコに少し同情した。
ある意味Mさんの"アレ"の方が、同化されるからまだいいのではないか。
出された茶を少し啜った。よく見たら茶柱が五本くらい浮んでいる…なんか作為を感じてうぜぇ…。
「ふー…いいっすよ、で、焼き具合はどの位が好みですか?レア?ミディアム?ウェルダン?」
「跡形も無いほうが持ち主も助かるから、ウェルダンで」
「なんだ、やっぱり依頼主が居るんすか。じゃ報酬の四割は頂きますね」
「しまった…うちも不況で厳しいんで三割でお願いします…」
風呂敷を四方にきれいに広げると複雑な曼荼羅が現れた、
その中央に箱を置く、あとは呪文を唱え、術式を組み立てるだけだ。
おかんに長年助手をやらされているから、こういうののやり方は詳しい。
「業…い…吸いし……喰ら……ハ……オン……バ…ラ……」
一通り終わると曼荼羅と箱が鈍く光りだした。
「よしっ!大体できました。Mさんの方はどうですか」
「こっちもオッケー。セット完了。これで逃げられないだろ」
柱に荒縄で四方から繋がれた○トリバコが見える。
975 :
3/5:2010/06/03(木) 17:16:50 ID:z37oXUQH0
「では、"開け"ます。Mさんは部屋の隅で避けていて下さい」
「よっしゃ、了解。何回見てもこいつはドキドキするな!なんというか、胸が熱くなるな!」
かなり余裕のある師匠にムカつきつつ、術式の最後の締めをする。
「"囲え"!"箱"よ!」
そう唱えた瞬間、その箱は空中に浮き上がり六面に分解した。
そしてそのまま、コトリ○コに向かい、それを六方から囲い込んだ。
「ではウェルダンでいきます。"焼き尽くせ"」
そのまま徐々に包囲を狭めていきながら、それらはゆっくりと紫色の火花を放ちだした。
そして火花はコトリ○コの表面に燃えうつり、外側からジワジワ焦がしていった。
やがて火が内側に達しそうになるとき、中から悲鳴があがり出した。
「うわぁぁぁぁん…お母ちゃぁぁぁん、熱いよぉぉぉぉぉぉ!!」
「水…水を…火が…」「痛あぃ…いたいよ…」
何十人もの子供の悲痛な叫び声が、箱から大音量で聞こえてくる。
その声に聞き入っていると、俺は地獄行きなのがさも当然のように思えてくる。
本当はこんな呪術を作った輩が最も劣悪なのだが。
976 :
4/5:2010/06/03(木) 17:17:30 ID:z37oXUQH0
もう少しで全ての部分が焦げて無くなろうとしているまさにそのときだった。
ズルリと中から何かが抜け出て、師匠の方へと向かう。
「ありゃりゃ、術式が間違っていたかな。少し逃がしちゃった。Mさん気をつけてー(棒読み)」
「ぉぉぉぉおおおぉぉおおぎゃぁぁあ!!あぁあぉおぉいぃぃぃうううぃい!!!!!」
叫びながら猛スピード這っていくその塊が、師匠と接触する直前に
師匠の肩から真っ黒な腕が現れて、その赤黒い赤ん坊を宙にさらった。
さらに何も無い空間に大きな黒い上下の唇が現れ、
真っ黒な腕がそのあいだに赤ん坊を頭から詰め込んだ。
「ぎゃああああああああああああ」という断末魔と
バリバリムシャムシャという気色の悪い頭蓋骨を噛み砕く音。
師匠のアレだ。旨そうな餌に反応して出てきたようだ。
それは頭蓋骨を一通り噛み砕いたあと
ジュルリ!とさらに気色悪い音を立てて、
赤ん坊の残りの柔らかな身体を吸い込んだ。
「うぇぇぇぇぇぇ…毎度のことながら気色悪いっすねえ…」
「そう言ってやるなよ…こいつも我が身体の可愛い一部だよ」
と言っている師匠の顔は苦笑いしながらも、いつものように若干引きつっていた。
師匠の肩口の上の空間に浮んでいる"黒い唇"が喋る。
「ゴ…チデ…シタ」
「うわっ…言葉覚えたんすか、進化してますねえ、しかもゴチとか言ってますよ。ナウなヤングw」
「うっせボケ。知能が進んでるのは良くない兆候なんだけどな。こっちは泣きたいよ」
「Mサ…ンモットク…ワセテ…モットモ…ットクワセテ」
「謝意をあらわすことも、要求することもできるんですねぇ…敬称すら覚えてる。
はぁ…真面目に日本語覚えさせて、一人漫才でもやったらどうですか。業界人には絶対うけますよww」
「…お前のおかん呼んでくれ…報酬の五割はやるから…」
珍しくガチで弱気になりだした師匠が、さすがに可哀想になり、おかんに携帯からノイズの酷い電話をかける。
977 :
5/5:2010/06/03(木) 17:20:08 ID:z37oXUQH0
その後は、すぐにぶっ飛んできたおかんに説教に次ぐ説教をされながら、
二人とも便所スリッパでぶったたかれまくり痣だらけになった。
師匠は、なんとかアレをまた封印してもらえたが
報酬の七割をドサクサにまぎれておかんに強奪され涙目になっていた。
俺はさらにその後、家に帰ってから顔を合わすたびに
おかんから便所スリッパで数十回ぶったたかれまくった。
最後は真夜中に部屋に侵入してこられて、寝ている布団の上から二十回ぐらい叩かれた。
寝ぼけ眼で、猛抗議する俺におかん曰く、これでも「まだ足りないかもしれない」らしい。
箱の方はこの家のものだし大した事無いのだが、それより師匠のアレの穢れがかなりこびり付いているらしい。
「油汚れはしつこいからねぇ」とはおかんの弁。
"箱"は没収された。何でも俺がまた小遣い稼ぎに悪用しないように
知り合いの高位の坊さんに引き取って貰うらしい。
しかし、数日したらまたトイレのカエルの置物たちの隣に置かれていた。
なぜ元の場所に戻ったかは、いろんな意味で怖くて未だに訊けていない。
了。
ま、終わりかけのスレを五つ埋めたということで。悪文失礼いたしました。
乙でした
面白かったよ
979 :
本当にあった怖い名無し:2010/06/03(木) 18:02:10 ID:QwdNRP+DO
オ…ツデ…シタ
モットヨ…マセテ…
>>978-979 本当にありがとうございます。書いて良かったです。
でも今の凄く嬉しい気持ちで調子に乗って酷い続きを作っても皆さんに悪いので、自重します。
一応作者のトリップだけ付けときます。
またそのうち、今日みたいに思い浮かんだら投稿したいと思います。
久しぶりに面白かった〜お疲れさま♪
次回も楽しみにしています。
携帯規制解除されたぞ
忍の人あれからどうなったんだよ
>>983 規制解除教えて下さってありがとうございます。
恥ずかしい話ですが貼紙を最寄りの警察署から東京の交番に張り出して貰うように預けてからの進展はありません。
姉の元カレは偽造した身分証を使って働いていたらしく全く消息不明で、実感のドラッグストアがあると言われていた場所は確かに元ドラッグストアでしたが差し押さえで潰れていました。
忍と姉の元カレに関しては既に相談済みなのでこれ以上は詳しく書けません。
新宿の方が貼紙が貼ってあるか確かめて下さると言うレスに期待しているところです。
実際の話、貼紙を貼るスペースが無ければ後回しにされる事もあるそうですが警察に確認を取って心象を悪くしたくないので。
テスト
>>983 何か進展ありましたか?貼紙してからそれっぽい連絡ありませんか?
と聞けばいい。人が失踪してるんだから真剣になって当然
3日前から犬が失踪して必死になってる自分からすると心象なんて気にする時点で信じられん
>>986 心象を気にしているのは、貼紙を頼む前に母親が警察相手に色々とやらかしているからです。
もう少し待って僕から進展を聞こうと考えています。
実際のところ、成人した女性の失踪なので重要視されていないこともあるので。
そうか
人の失踪は知らん
犬は死んでた
陰膳してますか?
信じてなかったけど当時は、それくらいしかできなくて、
偶然かも知れないけど15年ぶりに帰って来た親類がいます。
>>990 以前していた事があるのですが母親が嫌がって今は姉の部屋に隠れて供え物をしていますが、それでは効果は薄いでしょうね。
戻って来て欲しい気持ちは確かにありますが、会うのが怖い気持ちもあります。
ここに話を投下している間にも色々と考えていました。
母親や祖母から姉の夢を見た話を聞かされる度に複雑な思いです。
次スレが立てられない…
誰かタノム