615 :
糖質ですが:
「カルテの証拠保全」法学教室2002年1月号「民事訴訟法講義ノート」高橋宏志より。
「白い巨塔」でたまたま見たテーマなので、この際まとめておこうと思う。
証拠保全とは、訴訟での証拠調べ期日を待っていたのでは、証拠方法の使用が不能または困難に
なる場合、本来の訴訟手続きとは別にあらかじめなされる証拠調べ手続きのことである。
現行法上は、証拠調べの前倒しとして構成されている。証拠調べの方法は、証人尋問、鑑定、検証
に限定されず、当事者尋問も書証も含めてすべての方法で可能である。証拠調べであるから裁判官が
行う。申立てに当たっては、相手方当事者の表示、証明すべき事実、具体的な証拠方法、証拠保全の事由を
疎明しなければならない。証拠保全をするという決定に対しては不服申し立ては許されない。証拠方法
が紛失する可能性があるからである。ここでは「カルテ(診療録)」に限って論じたい。
文書が改ざんされるおそれというのは証拠保全の事由となりうるが、広島地裁決定昭和61年では、
「抽象的な改ざんのおそれでは足りず、当該医師に改ざんの前歴があるとか、当該医師が患者側から
診療上の問題点について説明を求められたにもかかわらず相当な理由なくこれを拒絶したとか、あるいは
前後矛盾ないし虚偽の説明をしたとか、不誠実・責任回避的態度に終始した」場合などに「改ざんの
おそれ」が認められるとした。
診療録の保全は検証であるとされ、写真撮影しまたはコピーを取って記録に綴じておくのである。書証
として意味を読み取ることまでは行わないことを意味する。
また、証拠保全決定の執行官による相手方への送達は、現場(病院)での検証開始の直前、30分前か
一時間前になされるのが通常である。相手方としては不意打ち的に実施されてしまい、防御権に欠け、
相手方の目に触れる必要のないものまで対象になってしまうという指摘もある。
大事なのは、証拠調べは裁判官が行うということだ。それを本案の裁判所に送付するのだ。