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糖質ですが:
ボクシングに関しては俺もアマチュアの公式レコードが一試合残っている。専門誌の片隅にも
掲載されたそうだ。俺は一年生である以上、目先の勝利以上に先を見据えていた。試合の
何日前まで激しいトレーニングが許容されるかという問題でまず悩んだ。さらに、減量と
不眠症で悩んでいた。試合では、海外映像で見たフリオ・セサール・チャベスがリングアナウンス
時に行っていた仕草を真似した。名前を呼ばれるときに「ワンツー・ワンツーを打って前屈運動
をして雄叫びを上げる」という仕草だ。ラスベガスで行われていることを京都大学でやったもん
だから、相手は震え上がったw 京都大学の谷口という一年生だったそうだ。試合前にグローブを
合わせて、両コーナーに分かれて俺は谷口の目を見たら、向こうは目をそらした。
試合が始まったが、俺はスタミナロスを怖れて、フットワークもダルな足裁きで省エネ作戦だ。
しかし、右ストレートが何発かヒットした。こっちも無我夢中だ。相手のボディががら空き
だったのが見えたが、ボディ攻撃は練習不足で実践では使えなかった。練習していれば一撃で
終わる相手だった。結局、メチャクチャに腕を振り回したら相手が「儀式」「予定調和」で
倒れてくれた。俺はコンディショニングの失敗で赤っ恥をかかなくて済んだのが嬉しかった。
どっちが強いかといえばこっちが強いのだ。相手がそれで倒れるのがボクシングだ。
しかし、反則打で相手が倒れたのだったらカウントは取らない。不慮のアクシデントとして
休養をとらせて、続行不可能となったら失格負けになるのがルールブック上の実践だ。しかし、
レフェリーは10カウントを取った上で、オープンブローという反則過撃で俺の敗北を宣告
した。勝ち負けは関係なかった。相手をぶったおした。レコードに黒がついたのだけが
悔やまれた。俺の派手なパフォーマンスが嫌われたのかと思って反省する仕草をリング上で
示したが、判定は覆らなかった。試合後、別の大学の女子が俺の写真撮影をしていた。