奥の入り口

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46たまいな ◆EMULivy.cFXL

本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2009/08/26(水) 01:13:33 ID:i85xOcoa0
とりあえず私の体験談を一つ。

青田波打つ山あいの中、夏の青空にくっきりと浮かぶ入道雲を眺めつつ肥薩線の電車に揺られ数時間。
秘境駅には降りず、向かった先は山に隠された名もわからぬ不思議な川。
車窓から一瞬だけ垣間見えるその川は、珊瑚礁を抱えるコバルトブルーの海のようで…。

寂れた駅からしばらく歩き、藪をかき分けて、ようやく目的地の川に辿り着く。
そこは人の気配など一切感じない、水の流れる音だけがこだまする場所だった。
碧い宝石めいた色は水深が深いが為、珊瑚礁の正体は水面近くまでせり出した岩。それらが妖しい幻想を創り出していたのだ。
荷物を下ろし、何も持たずに川へ足を踏みいれる。
…水が冷たい、綺麗な水の証だ。
水面ぎりぎりまである珊瑚礁の上を伝って川の中を進む。真横から見ると水面を歩いているように見えるだろう。
澄んだ水の底がはっきりと目に映りこんだ。

それは神秘的でもあり、一方では心の中に滲み込む怖さだった。
遥か底の方に横たわる巨大な流木や、ゆらゆらと揺れる昆布のような水草が偏執的な妄想を掻き立てた。
人を呑み込む程の肉食魚、細長い手をこちらへ伸ばしてくる河童のような黒い影。
いくら頭の中から拭っても、それらは湧き水のように脳髄へ流れ込んでくる。
心臓の鼓動は激しくなり、足が震えて足元がおぼつかなくなった。踏み外してしまえば瞬く間に川の流れに体をもっていかれてしまう。あるいは底へ引き摺りこまれるか…。
これ以上は進めず、荷物の場所まで踵を返した。




場所は鹿児島県肥薩線。肥薩線の列車の車掌から一瞬だけ姿を確認でき、青みがかった河川といえば、
「霧島温泉駅」と「嘉例川駅」の間に流れる2ヵ所の天降川上流河川のみであり、大庭産業付近部分はは視界が阻まれ目視は困難。
さらに、駅からしばらく歩くので、場所は一点のみに絞られてくる。

※googleマップ検索バーで「31.856921,130.732332」の地点が上記の場所