宇宙最強の人物VS宇宙最強の要塞。
2 :
中常侍 うんこ ◆knhfo7S6wc :2009/10/18(日) 22:19:23 ID:Y73NFaL/O
『煮解賭(にげと)』
明朝末期、中國北東部の男達の間で、素麗建(すれたて)なる遊びが流行していた。
先端に話題旗をくくりつけた棒を地面に立て、合図と共に棒に駆け寄りに旗を奪
い合うという、己の機敏さを誇示する遊びであった。
やがてこの遊びにも飽きた者達が、毒草を煮込んだ煮汁を飲み、その解毒剤を旗
代わりにして奪い合うという競技に発展させた。
これのせいで命を落とす者が続出したが、競走に勝利したものは現人神として賞
賛され、朝廷に仕える者を輩出するほどであった。
この、解毒剤を賭けた戦いは「煮解賭」と呼ばれ、時代を左右する勝負の場でも
最も信頼できる、決定権獲得試合として行われてきた。
己の速さを誇示できることの少なくなった現代社会においては、電子掲示板などで
「2ゲットォォ!」と、機会を変えて、現代人が機敏さを争っているのかもしれない。
(民明書房刊 「DNAに刻まれた勝負心 現代人の奇行のルーツを探る」より)
( ‘ -‘) 不潔よ!でてって
みんなでてってよ〜!
4 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/18(日) 22:50:13 ID:4p5hIm1gO
パチンコの話しぢゃなくって?
5 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/18(日) 23:33:46 ID:wS8BDnKBO
勇次郎がパチンコやったら、店内の玉が足りなくなるなこりゃ。
6 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/23(金) 22:34:31 ID:NuDHY32HO
モニュ…
7 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/28(水) 10:42:37 ID:D7wyC4ET0
誰が得するんだ・・・
8 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/28(水) 11:23:45 ID:d5Jws7Tj0
範馬勇次郎は退屈していた。
南アタリア島で行われた新鋭宇宙戦艦の盛大なレセプションパーティ。
ストライダムの薦めで参加してはみたものの、予見したとおり内容は陳腐そのものだった。
巨大な戦艦の威容は彼をも畏怖させるものがあったのだが、その艦首で長ったらしい挨拶を書かれたペーパーを
延々と読み下すだけの、彼からすれば貧相な人々を眺めていると、良く冷えたビールが飲み頃を逸して
気が抜けて行くようにへたへたと萎んでしまった。
上空では新型戦闘機の航空ショーが繰り広げられていたが、決まりきった展開を予想されるそれは
彼の気分を紛らわせるには程遠かった。
…いや。突然紛れ込んたオレンジ色の航空機。不規則な動きで撹乱するそれは一時彼の目を魅了し、
不意に笑いを誘った。
「やるじゃねえか」
パイロットに彼なりの敬意でも表そうと考えたのか、そっとパーティ会場を立ち去ると、彼は新鋭宇宙戦艦の
目立たない隅の外壁に向かって渾身の一撃を放った。
「邪ッ」
「じ…地震…?だよ…な」
1キロメートルにも及ぶ巨大な超技術の塊が揺らいだ…幾人かは微弱な地震を疑ったが、それもやがて喧騒の中に忘れられていった。
9 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/28(水) 11:40:51 ID:d5Jws7Tj0
どんな豪華な料理と言えど、10人前もたいらげれば飽きが来ようというものだ。
範馬勇次郎は腹ごなしに街をぶらついた後、適当に目に飛び込んだ小さな中華料理屋で
本日のおすすめと壁に大書された一皿を啜っていた。
格段旨いというわけでもないのだが、どこか懐かしい味はここしばらく異国放浪を行っていなかった
彼に一時の休息感を与えてくれていた。
衝撃。
爆音、警報、悲鳴。建造物が崩れ去る轟音。
爆撃。
彼にとってはこれも懐かしい感覚だ。久しく体験してはいなかったが、自然と血が沸って行くのがわかる。
戦場の香りだ。それも、この上なく凄惨な。
扉を蹴破って店頭に飛び出た彼の目には、信じ難い何物かが映っていた。
巨人。
いや正確には人ではなかった。二足歩行の大きな…まるでタマゴにヒヨコのような脚の生えたそれは、
おそらく砲塔であろう筒のようなものを右往左往させてあたりを警戒しているようだった。
突然上空からの放火がそのタマゴをかすめる。動作に支障を来すのか、後部のハッチが開かれ、内容物がのそりと姿を表す。
それは今度こそ正確に巨人と形容されるべき生物だった。
10 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/28(水) 13:07:09 ID:d5Jws7Tj0
巨人が咆哮する。
齢を重ねた大木を何本も束ねたような腕がしなり、巨躯を震わせながらそれまで
勇次郎のはりついていた壁面へと十数トンもある肉塊を高速で叩き込む。
あたりの建物は既に基礎すら浮くような惨状になっていたが、勇次郎は当然のことながら
かすり傷一つ負っていない。
兵士としての訓練は受けている。闘争心も覇気も申し分ない。
威力は確かに目を見張るが…いかんせん動きが格闘のプロではない。
当初こそ物珍しさを感じていたが、これ以上は茶番と言う他ない。
巨人の生体構造は先ほど破壊した脚間接を見る限り人類とさほど変わりは無い。
残りの主要間接をそれぞれ破壊したあと、彼は巨人の首筋に生命を刈り取る一撃を放つ事で
これまでの闘いへの手向けとした。
巨骸の傍らで小さな女の子が声にならない嗚咽を漏らしているのを耳に止めたのは偶然だった。
先ほどの避難を呼びかけるアナウンスが頭をよぎる。
逃げ遅れたか、両親が死んだか…。
逡巡の後で弱肉強食という言葉が彼の頭をよぎるよりも、小さな手が胴着の裾を掴むほうが僅かに早かった。
11 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/28(水) 13:29:34 ID:d5Jws7Tj0
勇次郎は空腹感を感じながらこれまでの行動を反芻していた。
新鋭宇宙戦艦の簡易シェルターに潜りこんだ後の全てをゆるがすような衝撃。
重力の消失。爆発。
類まれなる野性の生存本能を全力で働かせながら、生存可能な区画を渡り歩く事幾数日。
宇宙戦艦がいつのまにか宇宙空間に移動したことをしったときは少々驚いたが、
レセプションに始まるここ数日の出来事を前にしてはやや新鮮味に欠ける。
手持ちの簡易非常食はもはや尽きつつある。
場所が良いのか幸いにして艦内はそれほど寒くもない。だが。
給水パイプを破壊することで水の都合はつけたが、食糧はどうしようもない。
彼は衰弱の色を濃くしつつある、もはや彼になついて離れようとしない女の子を観察しながら、
来るべきその日がいつになるのか考えていた。
鮪。
ばかばかしい幻覚。
いや確かに鮪だった。
少女がもたれかかっている壁面のガラスのように透明な構造材の後ろを、
漆黒の宇宙空間を背にして鮪が悠然と泳ぐように漂っていた。
幼女にエアロックらしき装置の使い方を教え込むには少々骨が折れた。
まあ、別に使い方がわからず宇宙空間に放置されても問題は無いだろう。
鮪にしても数百キロはあるのだし、建材なども浮いている。
命綱があるのだから、100キロ程の質量があれば打撃の反作用で壁位は破れるだろう。
そうたかをくくると、勇次郎は肺、いや全身に思いきり酸素を取り込むべく特殊な呼吸を開始する。
幼女が彼を差してけらけらと笑う姿が若干の不安を彼に抱かせた。
極寒の真空という苛烈な環境は、さしもの彼の鍛えぬかれた肉体にも
刺すような痛みを与えて止まなかった。
さすがに裸眼ではもたないので、瞬発的にまぶたを開き周囲を確認したあと、
最短のルートを割りだして構造物を蹴り鮪へと進んで行く。
首尾良く捉え、帰還ルートの確認のために幼女の待つ船体を視認した彼は危うく吹き出しそうになった。
エアロックがあったあたりの上の階層に灯りがみえていた。
轟音とともにそれまで天井であった構造材が吹きとぶ。突然表れた男と幼女を人々はやがて歓声で迎えた。
だがこのセンセーショナルな帰還も、同日別区間で起こった若きカップルの生還劇の影には忘れ去られてしまうのだった。
13 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/28(水) 16:25:22 ID:d5Jws7Tj0
勇次郎は少し苛ついていた。
異星人との戦争中という尋常ならざる事態であっても、軍人ではない彼には
避難のためにシェルターへと移動することくらいの他には取り立ててすることもない。
かといって軍人になるにしても、ちまちまと遠くの敵を叩き落とすことは性にあわない。
脳裏にはあの巨人との闘いが今でも鮮明に記憶されている。
巨人族と戦争をしているのだ。あいつよりも凄いやつがごろごろといることだろう。
眼前にひろがる女性歌手の媚態と熱狂する観客を見つめる軍人を横目に彼は口を開いた。
「なァ、ストライダム。あの歌ってる娘…軍で使うのか」
ストライダムは思わず吹き出した。いつも思うのだが、この男は重大な軍事機密を
どこから知るのだろうか。
「闘イノ場ニアイドル歌手…君ナラ上等ナ料理ニ蜂蜜ヲブチマクガゴトキ愚行、トイウダロウカ」
「はッ。戦に音楽は古来より付物。それよりあの娘に惹かれて巨人のスパイが来るって話じゃねェか」
本当にこの男はどこまで知っているのだろう。情報保全体制の不備をひしひしと感じながら、
ストライダムは少し前のファーストコンタクトの事、スパイの事、予測される次の侵入のタイミングなどを話す。
特に彼の興味を引いたのは、巨人族がマイクローン技術と呼ぶ巨人を人類サイズに相互変換する技術だった。
勇次郎の要求はこうだった。俺を次に来るスパイに引きわたせ。
ブログでやれ
ゆうてボクやけどな><
16 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/28(水) 18:39:21 ID:zMG2N1hTO
17 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/28(水) 21:03:28 ID:rgyisGHLO
俺は好きです
18 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/28(水) 21:17:54 ID:BT8mneE90
>>8-13 凄い面白い
けどここだと、板違いで削除されるか過疎って落ちるかして人目に付かない
書き貯めてからVIPにスレ立てて投下したら盛り上がりそう
お、反応あるのか。
VIPからここに飛んできたらこのスレ見付けたんで書いてみたんだお。
続きは今書いてるお。
3人の元偵察部隊員たちはすっかり萎縮していた。
翻訳は概ね問題なく行われているのだが、勇次郎の醸し出す危険な空気が周囲を歪ませていた。
正確に言うと彼らは亡命者であってもはや密偵ではないのだが、今だ正式に認められていない。
「もう一度言う。俺をお前らの船まで送れ」
勇次郎が再度依頼する。密偵たちは完全に怯えきってしまい、承服せざるを得なかった。
かといって今更元の巣に戻ったところで消去刑は確実だ。
物珍しげに宇宙船からの景色を観察する勇次郎を後目に散々小田原評定を行った結果、
直衛艦隊所属の艦への亡命が適切と判断され実行された。
「要件はそれだけなのか」
およそ生物が出せるとは思えない太く巨大な、しかしはっきりと女性的な声はそういった。
偵察部隊員たちはどうしようもないくらいに緊張していた。
亡命という行為を甘く見ていたのだ。ゼントラーディの組織編成は層が薄い。
判断に困れば上に繰り越される訳なのだが、分岐艦隊から直衛艦隊への亡命など前例が無く、
紆余曲折の末にこうしてラプラミズ直衛艦隊司令による直々の尋問が行われることとなった。
3人それぞれの亡命申請の後、勇次郎はこの鬼で知られるメルトランに一言、俺を巨人にしろ、とだけ言った。
「司令、あのような者を」
「かまわん。別に禁止されているわけではない。それに…少し興味がある」
ラプラミズは勇次郎の巨大化を諌めようとする副官に耳を貸す気は無かった。
数ヵ月前の第3惑星地表での戦闘で偶然回収された奇妙なゼントランの死体。
敵側のどのような兵器で付けられた外傷でもないそれは、鮮やかに兵士の戦闘能力を奪っていた。
ゼントラーディ兵同士の膨大な徒手格闘戦の記録を手繰ってもこのような例は皆無だ。
亡命希望者によれば勇次郎と名乗るあの敵マイクロン。彼の漂わす邪悪な気配。
自分の想像は妄想に過ぎないのだろうが、仮に現実となれば非常に危険だろう。可能性は限りなく低いが、
艦隊司令としてはおよそ考えられない。しかしラプラミズが勇次郎に感じる「雄」がその判断を惑わせた。
「ほォ。感覚はそれほど変わらねェもんなんだな」
数十万周期に渡って運用されているマイクローン技術は、勇次郎とゼントランの違いも問題なく
飲み込み、やがて巨大化は完了した。マイクローン装置から出た勇次郎は、神経・筋肉・骨格・皮膚・内蔵…
全身のすみずみにまで気を巡らせ感じとろうとしているのか、微動だにしない。
巨大化完了後の一糸纏わぬゼントランの姿はラプラミズにとって特に珍しいというわけではないのだが、
勇次郎のそれはなぜか彼女の深いメルトランの…雌の本能に始原的なざわめきを起こしつつあった。
「ありがとよ」
「!?な、なにをッ!!?」
一瞬で距離を詰められ、当惑したラプラミズの唇を勇次郎が吸う。
「〜〜〜〜〜〜!!!?」
処置室にどよめきが起こる。が、皆あまりの出来事に正体を失ったのか、銃を落としても
目を見開いたまま口をぱくぱくとさせてなにも出来ずにいる。
副官などはぺたりと座り込んだままで焦点の合わない目で宙を見る始末だ。
ラプラミズは完全に思考が飛んでしまっていた。指揮、判断、そんな言葉すらも出てこない。
「大きくなって聞くと、なかなかカワイイ声してるじゃねェか」
勇次郎が何を言っているのか理解はできないが、自分の芯の部分がぎゅっと締めつけられているように
苦しくなっていくことは感じとれた。体が熱い。戦闘行為でもこれほどの興奮はこれまで無かった。
ラプラミズが気付いた時には、勇次郎が既に制服を乱暴に引き裂いてしまっていた。
「おい、そこのお前、言葉ァわかるな?」
副官がこくこくと出来の悪い操り人形のように頷く。
「全通信回線を開いて今からの場面を放送しろ」
ラプラミズの混乱する意識が認識できたものは、雄々しくそそり立つ彼の器官と、文化というものを教えるという言葉だった。
ゼントラーディの派遣軍全艦隊に動揺が走った。
ありとあらゆるスクリーンに映し出されたゼントランとメルトランの、これまでに見たこともないような
荒々しく本能をかき乱す行為。まるで徒手格闘で絡み合うようにも見えるのだが、戦闘に似つかわしくない無防備な裸。
なんとも形容のしようがない、生々しく、粗野で、何故か感じる少しの背徳感が全神経を昂ぶらせてくる。
律動と啜り泣くような叫び。苦痛とも歓喜ともつかない顔に歪むメルトランが逞しいゼントランに蹂躙される様。
またメルトランがゼントランを吸い尽くすように味わう様。痴態。狂乱の宴。
放映された映像はゼントラーディ派遣軍全艦隊の活動をその後数時間に渡って停止させるに十分な破壊力を持っていた。
やがて映像は地球側の新鋭宇宙戦艦にも届く。
ストライダムは絶句した。
程無くして、ゼントラーディの派遣軍全艦隊は地球側との停戦を申し出ることを決定した。
ブリタイ分岐艦隊司令は内心ほっとしていた。どのみちこれまでの地球側戦艦との接触による
艦隊兵士の動揺はもはや隠し切れなくなっていたのだし、亡命者すらも出始めていた。
ここに至ってのこの騒動だ。停戦に対する最大の懸念だった強行派のカムジンもさすがに毒気を抜かれている。
かくいう自分にしてもあの映像のインパクトは想像を絶するものがあったのだ。
もはや戦闘という行為が遠いもののように感じられてくる。しかし…もう一つの重大かつ致命的な問題が彼を悩ませていた。
「元気ソウダナ、オーガ」
ゼントラーディ派遣軍とマクロスとの同盟締結が決まった数時間後、ストライダムは勇次郎のいる
直衛艦隊旗艦を訪ねた。
同盟の交渉はまったく順調だった。ゼントラーディには既に戦闘の意志は無く、マクロス側もまた同じだ。
ゼントラーディと人類には何の変わりもない。それを勇次郎は余すところ無く表現して見せてくれた
…もっとも少々雄弁かつ説得力に富みすぎてはいたのだが。
最後に残る致命的な問題。ゼントラーディ派遣軍の背後にいる基幹艦隊の存在だ。
地球との接触による文化汚染からの体制崩壊を何よりも恐れる彼らは、やがて数百万という大規模な艦隊を率い、
一瞬のうちに超時空移動を行い地球ごと我々とゼントラーディ派遣軍を焼き滅ぼすことになる。
勝機は基幹艦隊旗艦を撃滅し、敵側軍規を利用して残存艦隊を総撤退に追い込むことにある。
ストライダムは作戦の細部を詰めるために実務責任者として各艦隊を忙しく回っていた。
「相変わらず忙しそうだな」
オーガと呼ばれるに相応しい威容を秘めた、巨大で野太い声が応える。悪魔や日本でいう鬼が現世に
いるとすれば勇次郎だと常々思っていたが、自分の想像力は少々薄っぺらかったようだ。これは本物だ。
ストライダムは勇次郎に依頼された伝言を話した。勇次郎が助けたあの幼女が決戦の歌姫作戦でバックコーラスを演ずる。
勇次郎はいつものようにフンと気を吐くだけだったが、その巨大な目は心なしか喜んでいるように見えた。
「勇次郎」
「ラプラミズか…どうした」
ラプラミズは不機嫌だった。勇次郎が彼女の艦の複数の兵士と「文化的」関係を持っている。
その事実を知った時も今も、腹のそこから狂おしいばかりの苛立ちがつのって来る。
しかしその昂ぶりも勇次郎と会っただけで不思議と収まって行く。
愛しい…。勇次郎は教えてはくれなかったが、地球側からの情報にはそのような概念があるのだ。
そんなことを考えながら、ラプラミズは勇次郎の瞳がやや愁いをおびていることに気がついた。
「…どうもしない。勇次郎、なにか考えごとでもあるのか」
勇次郎は率直に語った。何としても闘いたいが、戦闘ポッドなどの機動兵器や砲手、艦長などは性に合わない。
あくまで徒手格闘という手段に拘る。ラプラミズにとってそれは理解できなくはないが、現実的とは
到底言えなかった。徒手格闘とはあくまでも最終手段であるし、状況によっては逃亡が優先すらされる。
しかしラプラミズは勇次郎がかつてマイクロンという非力な体躯でゼントラン兵を屠ってのけたという
事実も知っている。勇次郎なら来るべき決戦では戦闘本能を押さえきれずに素手で飛び出しかねない。
巨大化している今なら真空中での短期間の徒手格闘は可能だろうが、無論待つのは無惨な死だけだ。
ラプラミズは愛する勇次郎がそのような無駄な死へと向かうことを到底許容できなかった。
かといって…。思索の果てに、ラプラミズの脳裏に以前聞いたある伝説、といってもいい情報が浮かびあがった。
「おや、これはこれは。ラプラミズ直衛艦隊司令ではありませんか。それに…勇次郎殿といわれましたかな」
エキセドル参謀はラプラミズたちをいつも通りにうやうやしく迎えたが、
基幹艦隊が迫っているこの時に艦隊司令が直接来艦とは、と内心少々驚いてはいた。
ラプラミズの形式的な挨拶が終わり、切り出した話しにエキセドルはもはや驚愕を露にするほか無かった。
「ぷ、プロトデビルンですとッ!な、なぜそれを!どこで!どうして!?」
「落ち着いて話を聞いて欲しい。正確にはプロトデビルンの器である、としか聞かされていない」
エキセドルは混乱の傍らで理解に努めようとしていた。プロトデビルンの器。エビルシリーズとも言われる、
我々ゼントラーディよりも遥かに強力な生体兵器。我々が悪魔の人形なら、彼らは魔王かそれ以上だ。
あまりの強力さゆえにプロトカルチャーをも滅ぼし尽くした最大の禁忌。なぜ、それを彼女が?
「我々ラプラミズの名を関する遺伝子同意体は、選ばれた個体だけに…恐らく何万周期も前からあるものを共有してきた」
そう語るラプラミズは、これより先の情報は決して口外しない事、記録はとらない事、約束を違えば
あらゆる手段をとっても遺伝子同意体ごと消去に及ぶことを伝え、静かにエキセドルに了承を迫った。
エキセドルはやや躊躇した後、禁忌事態が基幹艦隊からの離脱で相当緩やかになるであろうことも勘案し、
己の知的好奇心に運命を任せる決断を行った。
「エビルシリーズの…卵ですと?」
「そう。我々は恐らく以前どこかの星系の探査においてこれを発見し、あらゆる手段を使っての隠匿を決定したのだろう」
うはwww相変わらず誤変換だらけだお。さすがに酷い。
名を関する→名を冠する
禁忌事態→禁忌自体
「禁忌そのものであるこれの保持…いや発見自体が消去に値する大罪だったのだ。我々の決定を悪くは言えまい」
確かにそうである。プロトカルチャーに関する情報ですら恐慌を引き起こしかねない程なのだ。
ましてプロトデビルンともなれば…。エキセドルは発掘当時のラプラミズの遺伝子同位体の精神の強靭さに驚嘆した。
「これの起動方法は聞かされていない。ただ、エビルシリーズが我々ゼントラーディの高位的存在である以上…」
「ふむ、なんらかの互換性はあってしかるべきですな。よろしい。全力をあげて取り組みましょう」
「感謝する」
「しかし、エビルシリーズの肉体が復活したとて、精神は…まさか…勇次郎殿?」
「当たり前ェだ」
「た、たしかに融合は可能でしょう。しかし…無茶をなさいます。保証はできませんぞ?」
「思いっきりヤれねえくらいなら、生きてる価値なんて無ェよ」
「わたしからもお願いする。勇次郎を頼む」
『これ』は融合炉とでも言うべき強靭なカプセルの中に横たわった勇次郎に抱かれ、
その深い血のような紅さを一層濃くしながら、表面に刻まれた不気味な顔のような文様を妖しく蠕かせていた。
「それでは融合を開始致します。心の準備はよろしいですかな?勇次」
エキセドルの最終確認が終わらぬうちに、警報が基幹艦隊の超時空移動完了をけたたましく告げていた。
基幹艦隊の攻撃は誰の想像をも超えていた。
観測限界を遥かに超える多数の大規模艦隊の出現とその総攻撃。地球は文字どおり炎上した。
そんな中、マクロス・ゼントラーディ連合艦隊は予定通り基幹艦隊旗艦に向けて乾坤一擲の作戦を開始する。
人気歌手を作戦に組み入れるという一士官からのやや突然の提案も、事前のストライダムの
根回しによりスムーズに受け入れられた。
歌手の名にちなんでミンメイ作戦と名付けられたこの作戦は自陣営への士気高揚および
敵陣営への士気低下と言う点で多大な効果をあげつつあった。
特に敵陣営のみに放たれた勇次郎の映像の破壊力は絶大で、多数の敵機敵艦が落とされていった。
ラプラミズは乱戦の指揮を懸命にとりながら、ただ勇次郎の身を案じていた。
エキセドルからは戦闘開始の直前に連絡があったのみだ。ともかく無事を祈る他は今は何もできない。
ようやく旗艦への射線を阻む雲霞のごとくの敵影に穴が開いたかというときに、斜め後方からすさまじい勢いで
何かが接近してくることを監視システムが告げた。
100メートル足らずと戦艦にしては小ぶりであるが、破竹と言う他ない勢いで動きの止まった敵艦を次々と
突き破って落とすという信じ難い動きをしている艦…いや、あれは。思考を直通の緊急通信が阻む。
「ラプラミズ司令!エキセドルです!止まってはなりません。勇次郎殿…あれには区別がついていないのです!」
勇次郎はエキセドルの言葉を思い返していた。
「結論から申しますと、これはエビルシリーズではあるのですが、甚だ不完全なものです。
推測しますに、最初のエビルシリーズ以前のプロトタイプともいうべきものですな。
我々ゼントラーディには遺伝子レベルでエビルシリーズに対する畏怖が封じ込まれているのですが、これには感じられません。
恐らくゼントラーディの身体における潜在能力を限界を超えて強化し、空間戦闘能力を極限まで高めるのでしょう。
本来は戦闘能力の補完のために専用の武装等もあったのでしょうが、失われた今となっては…」
と、まるで自分にあつらえたかのような内容であったのだが、実際融合してみると話はそう簡単ではなかった。
体躯はマイクローン技術による巨大化を再度行ったかのように、さらなる増大と漲りを見せているのだが、
腕、脚、目…体自体が自分とまるで別のもののように動く。
闘争のための本能を体が勝手に理解しているかのように、これまで習得したあらゆる攻撃を
目につくもの全てに加えて破壊し蹴り落としながらひたすら強大なあの旗艦を目指して移動する。
まるで自分の中に自分ではない何かが棲んでいるかのようだ。
「これは…俺じゃねェ」
勇次郎は呟いた。
眼前には既に強攻型にトランスフォーメーションを終えたマクロスが聳えている。
勇次郎であった体はその大いなる姿を敵と認識し、攻撃を開始する。
「巨大…ゼントラン?ひっ…100メートルはあります!?」
オペレータの悲鳴には涙声すら混じっていた。無理もなかろう。全長100メートルを超える人間などありえない。
ストライダムは目前に迫る勇次郎のもはや鬼神としか表現のしようのない姿をみて最後を確信した。
ざわざわと全身に迫る怒気に包まれながら、勇次郎はマクロスの各ブロックをまるで人体に見立てるかのように
致命的な打撃を送り続ける。防衛システムのオペレータたちは必死でピンポイントバリアを操作するのだが、
超高速で送られる打撃の全てを捌くのは当然ながら不可能だった。
数発が命中する。数万トン以上もの強靭な肉体の衝突は小型反応弾並で、
隔壁はおろか基本構造をもゆるがす恐ろしい破壊力をもたらした。もってあと数発と言ったところか。
最後の一撃が艦橋に加えられようとした瞬間、勇次郎の超視力は艦橋中央の特設ステージに設けられた
女性歌手の一団をはっきりと認識した。
「俺は何をヤっている」
幼女の澄んだ目ははっきりと勇次郎を見据えていた。
全身に活を入れる。そう。肉体は闘いを記憶しているが、長年の研鑚と鍛錬を耐えぬく範馬勇次郎の意志は自分そのもの。
タマゴが混じろうがニワトリだろうが、喰らってしまえばもはや自分なのだ。統括するのは意志であり肉体ではない。
強烈な自意識が一瞬にして全身を統制し、衝突寸前だった拳が止まった先をようやくやってきたバリアがちりちりと照らしていた。
勇次郎の渾身の一撃が基幹艦隊旗艦フルブス・バレンスの装甲を破壊し、
数百メートルの大穴をこじ開けながらマクロスとともにひたすら吶喊していく。
ミンメイ作戦はいまだ有効に作用しており、敵の組織だった抵抗はもはや皆無だった。
旗艦中央部で要塞と融合していた司令長官ボドルザーを一撃で吹きとばすと、
マクロスから放たれたありったけの反応弾の爆発を後目に辛くも脱出を果たす。
轟沈。
爆発は敵味方の多くの艦を巻き込んでいく。
一つの戦闘が終わり、長い掃討戦の幕開けとなった。
「ドウシテモ、行クノカ」
ストライダムは自分でも変わり映えのないセリフだと感じて苦笑しながら、
やはり他に言うべきセリフもないと思い直した。勇次郎は言い出したら聞かない。
ゼントラーディの格闘術を含むほとんどの技術を習得しつくした彼にとって、
新たな地平は銀河の彼方なのだろう。
「銀河中に俺の種を蒔いてくるぜ」
ストライダムは彼の最後のセリフをラプラミズに伝えるかどうか今だ迷っていた。
fin.
板違い
高次元の精神生命体であるところのプロトデビルンであればオカルトといえなくもない。
バキは…
35 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/31(土) 00:03:12 ID:QT2ODJjV0
おお、しっかり戦ってる。
36 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/31(土) 00:46:15 ID:q53dZ0/XO
妄想スレはここですか?
37 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/31(土) 23:56:16 ID:fH1xbquN0
そのようです
38 :
本当にあった怖い名無し:2009/11/01(日) 03:42:06 ID:USfOW1HBO
俺の歌を聞け〜
セ〜ク〜ロス
セ〜ク〜ロス
ダッダッダッダッダンッ
セ〜〜クロ〜〜〜ス♪
40 :
本当にあった怖い名無し:2009/11/01(日) 22:53:39 ID:8ZZycEQ/0
_,,‐─-v‐、,,、
,,-‐'": : : : : : : : : : `ヽ
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r': ,、,,.-─''"゛ ミ : : : : : : : 'i、
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ビップ=デ=ヤレー[Vuip De Yale]
(1955~ フランス)
41 :
本当にあった怖い名無し:
ぎゅ〜と抱き締めて☆銀河の果てまで〜!!