【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ10【友人・知人】
立てたんだけど、スレ番そのままにしちゃいました・・・すまんです
次スレ立てる人は12でお願いします
4 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/13(日) 11:08:14 ID:R5A/9lBqO
単発、コテなしも大歓迎です。
5 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/13(日) 11:15:46 ID:N5k0uEXM0
>>1おつ
______
/ ./お 田 ,!
/ ! 断 中,!
/ ,ハ,,ハ ! り ,!
/( ゚ω゚ )`ー‐,!
`ヽ、 \_,!
`ヽ、ノ\,!
`ヽ,!
6 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/13(日) 11:24:16 ID:R5A/9lBqO
田中氏も山田氏も佐藤氏も、鈴木氏もみんな御一緒にどーぞー!
8 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/13(日) 11:49:35 ID:R5A/9lBqO
先生!シリーズの定義が曖昧では?
前スレより
3 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2009/06/17(水) 16:32:22 ID:6nnXLPvV0
テンプレのまとめサイトは更新が止まっているので・・・
こちらが現在更新中のまとめサイト
http://us.eek.jp/occult/
どんなシリーズ物も第一話は単発に見える。
出来れば同時おr短期間に第一話と二話を投稿してもらえるとラスカル。
12 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/14(月) 06:44:13 ID:EokeAF+7O
勝手な事言ってんじゃネーよ!
13 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/14(月) 07:29:08 ID:eJelz0kb0
______
/ ./お N5k ,!
/ ! 断 0uE,!
/ ,ハ,,ハ ! りXMO ,!
/( ゚ω゚ )`ー‐,!
`ヽ、 \_,!
`ヽ、ノ\,!
`ヽ,!
粘着キチガイおことわり
14 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/14(月) 07:31:15 ID:eJelz0kb0
>>お前だろ!ウニの作品にケチ付けるのも
シネヨ!!
15 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/14(月) 07:32:10 ID:eJelz0kb0
新スレ乙
実質11スレ目ね
どうにかしてスレを落としたい奴がいるようだな
粘着質できもい
18 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/14(月) 10:08:18 ID:EokeAF+7O
オレが落ちないようにカキコするからなー
スレ落としたい奴がいるっってwwwwwwww
ちゃんと保守れよwwwwww
[人形(中)]
1/9
舞「まず…佳澄さんに、教えておくことがあるわ」
佳澄「?」
舞「夏美さんのこと。夏美さんと、この病院との関係」
佳澄「…関係?」
私「私の事件の話ね…」
あの事件のこと――。
舞「夏美さん、辛いだろうけど…」
私「ううん、平気よ。もう平気。でも、どこでそれを?」
舞「あなたのお祖母さんに聞いたの」
あぁ…そうか、なるほど。
舞「佳澄さん、夏美さんはね…あなたに会う以前に、一度、記憶を消されているの」
佳澄「え…」
舞さんはそう言ってから、事件の話をする。
私には辛い記憶だけど、受け止めないといけない事だ。
2/9
佳澄「――そんなことが…」
話を聞いて、佳澄が私を見る。その目には何か…今まで見たことの無かった感情が込められていた。
私は笑顔でそれに応える。
私「うん…。でも、もう平気よ」
佳澄「そう…」
何か思い悩むような顔をする佳澄。
佳澄「それじゃ、あれは――」
私「?」
佳澄「やっぱり、夏美だったのね…」
私「…何が?」
佳澄「…なんでもない」
舞「――夏美さんのお祖父さんのことで…」
話を続ける舞さん。
舞「この件は全て終わったと思えたわ。シズエさんもそう考えていた」
私「…」
舞「でも、佳澄さんの存在があったの」
佳澄「私の…?」
3/9
光一「ぅ…ん…」
あ…。
舞「あら、気が付いた?」
光一「あ、あれ?俺…」
佳澄「…思ったより早いじゃない」
光一「あ!えぇっと…」
舞「話をしているところだから、そこで休んでいなさい」
光一「ん、あぁ…。何か頭がクラクラするから…そうする」
良かった。弟さんは無事みたいだ。私みたいになってしまったら、どうしようかと思った。
佳澄「私が、どうしたの?」
佳澄が話を促す。
舞「…佳澄さん、あなたが生まれたのよ」
佳澄「私が生まれた…」
舞「そう。この病院で…死んだまま、生まれたの」
佳澄「死んだまま…?」
私はハッとする。まさか、そんな――
舞「夏美さんが、あなたのお母さんよ」
4/9
佳澄「…嘘よ。そんなの」
舞「そう思う?」
佳澄「ありえないわよ。そんな…」
舞「夏美さんの、あなたに対する気持ちは知っているはずよ」
…許してしまう。私は佳澄のことを、最後には許してしまう。
例えどんなことになっても、この子のすることを、許してしまう。
舞「あなたの方も、夏美さんには特別な感情があったのでは?彼女を完全に、物言わぬ人形にはできなかったでしょう?」
佳澄「それは、別に…ただの…」
佳澄は口ごもる。
舞「夏美さんの手術で死んでしまった魂…それは完全に消えること無く、この病院に居続けたわ」
私の…子供の…。
舞「それは、夏美さんから切り離された憎しみの記憶と、牧村家の霊能力…
それと、父親である男の、非人道的とも言える歪んだ精神。それらを引き継いだわ」
私「そんな…」
歪んだ、憎しみの心…。そんな悪いところだけ?私は自分の子に、何も良いところはあげられなかったの?
舞「それはすぐに、人としての形を持つようになったわ。夏美さんの記憶の形をとって、丁度その年の姿に」
5/9
舞「佳澄さん。あなたのその名前は、どこから?」
佳澄「…」
私「佳澄」
佳澄「拾った、名札…」
舞「そう…」
私「そんな…」
私は佳澄を抱きしめる。
私「ごめんね…名前、付けてあげられなくて、ごめんね…」
佳澄「…いいのよ、そんなの…意味…ない――」
そう言って佳澄は深く項垂れる。
舞「…話は以上よ」
私「…」
私にとって…佳澄にとっても、あまりにショックな話だった。
これから、私たちはどうすれば…?
…と、突然、佳澄が立ち上がる。
佳澄「…話はよく分かったわ」
私「佳澄…」
佳澄「私がなぜ、こうなのか…。お陰さまで、よく理解できたわ」
6/9
佳澄はジッと舞さんを見つめながら言う。
佳澄「でもね…だから、何だって言うの?私のしていることに、ちょっとした理由がついただけよ」
私「佳澄、そんな…もうダメよ」
私も立ち上がって言う。
佳澄「…うるさいわね」
私「こんなこと、もう…やめないと」
佳澄「こんなこと、ね…」
佳澄は私を睨みつけ、こう言った。
佳澄「誰のせいで、こうなったと思っているの?」
私「…」
佳澄「全部、あの男のせいにするつもり?」
私「それは…」
返す言葉が思いつかない。
私はあの事件では被害者だった。でも、佳澄にとっては――
7/9
佳澄「いきなり母親面して…気に入らないわ」
光一「おい…そんな言い方ないだろ?」
佳澄「あら、居たの?光一君」
光一「う…」
私「私のこと、許せないのは分かるけど…」
佳澄「分かる?本当に分かるの?…冗談じゃないわ」
私「…私にできることがあれば、言って」
佳澄「…」
佳澄は私を見つめる。
…舞さんは、そんな様子を何も言わずにジッと見ている。
そして佳澄は一言、こう言った。
佳澄「私のところに、帰ってくればいいのよ」
私「…分かったわ。あなたの物になれば良いのね?もう一度――」
光一「物とか、もうそういうのは…」
私「いいのよ、光一さん。ありがとう」
光一「いや、でも、そんなの…」
舞「黙っていなさい、光一」
光一「…え?」
舞「夏美さんが、自分で決めることよ」
8/9
光一「そんな…」
舞「私たちは、それを見届けるだけ」
光一「…」
私「…ありがとう、舞さん」
舞さんにお礼を言ってから、私は佳澄に問い掛ける。
私「どうすればいい?」
佳澄「同じようにすれば良いわ。ほら、そこに…」
すぐ傍の病室の、入口の床を指差す佳澄。
私「あ…」
そこには、一本の短剣が落ちていた。
私「これ、あのときの…?」
私はそこまで行き、それを拾い上げる。
間違いない。昔、私が持ってきた短剣だ。
佳澄「そうよ。誰かが持っていくことも無いからね」
私「これで、もう一度…?」
佳澄「何度も言わせないでくれる?」
私「…分かったわ」
私は短剣の切っ先を、自分の胸に当てる。
私「これで――」
佳澄「ちょっと…違うでしょ?」
ため息を付いて、佳澄が言う。
佳澄「何も分かってないのね…。自分で刺してどうするの?私を介しなさいよ」
私「あ、そっか…」
私は佳澄の前に行き、あの時と同じような格好になる。
9/9
私「佳澄…」
佳澄「…何?何か言い残したい?今度はもう、余計なことは何も言わない人形にするんだから」
私「私の気持ちは、変わってないわ。あの時と同じよ」
佳澄「…あら、そう」
ヤレヤレといった態度の佳澄。
ごめんね、こんな風にしちゃって…。許してね、何もあげられなくて…。
私は心の中で謝り、佳澄を見つめたまま手に力を込め、彼女に短剣を突き刺す。
佳澄「…ッ」
前と同じように彼女の息が詰まる音がして、私は即座に短剣を引き抜く。
傷口から血が溢れ出てくる。
しかし彼女はそこを押さえることもせず、ただ私を見つめている。
佳澄「ふふ…やったわね…」
彼女は力なく笑う。その口元からも血が流れてきている。
私「これで…」
佳澄「そう、これで――」
佳澄「あなたは自由よ…」
そう言うと、佳澄はその場に崩れ落ちた。
29 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/15(火) 10:03:09 ID:7WOQMW6bO
やれやれ、お次は学芸会の台本かよ…
乙〜♪
>>29 おまいの例えがちょっと上手いと思ってしまったw
>>29 よっ!この例え上手!
学芸会赤緑はもういいって・・・・
赤緑氏乙
俺はなかなか好きなんで
次また暇なときよろ
あ。。。。自分
>>31なんだが、赤緑氏には頑張って欲しいと思ってる
田中はNG指定だけどね
自分も、馴れ合わず定期的に淡々と投下する赤緑に好感がもてる。
色々と言う人間はいるだろうが、頑張ってほしい。
赤緑氏乙。次回作を楽しみにしていますよ
ウニさんだって散々罵詈雑言を浴びせられながらも
投稿し続けた結果、現在のポジションに至っていますからね
>>39 君、いじめられっ子を慰める担任の先生みたいだね
赤緑氏乙。俺も楽しみにしてる一人だよ。頑張って下さい。
42 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/16(水) 13:49:50 ID:O5KJ23f8O
余計なこたぁ言わなくていいんだよ、たこ助。
すぐにその気になるだろが、あのドドメ色。
俺も赤緑の作品を楽しみにしてるから批判ばっかりされて書く気を失われたら困るから
応援の書き込みをする気持ちはわかる
粘着キチガイさんはID変え放題だからな・・・
そこんところ投稿する人は理解しといて欲しい
なんで文句いいつつこのスレ見てるんだろうね
それが生き甲斐なのかな
このスレを潰すのが生きがいですから
色んな意見が出るのはいいんじゃねーの
否定的な奴もいないと悪役は成り立たんよ。
ここの否定的な奴らが『意見』言ってるように見えるか? 量産型の下っ端悪役どもにしか見えないんだけど。
49 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/16(水) 18:51:49 ID:O5KJ23f8O
ザクを舐めるなよ。
多数決ならシャアザクにも負けないぜ。
>>48 褒めてる奴もまったく内容を褒めてないよな
ただ「乙」
ほんとこれだけ
ウニと同列にしてる馬鹿がいるけど、最近のウニへの賞賛レスと学芸会へのレス読み比べてみろよ
別に誰もウニと同等とは言ってないだろ
人の文章どーのこうの言う前にもうちょい読解力付けろw
俺の場合、ウニのは長ったらしくて読む気がしない
のでまとめスレでも見ないかぎり、一生見ることはないな。
「乙」一言だろうが、やっぱ内容の無い暴言よりはマシだよ。
道にツバ吐く奴多すぎ。
>>53 毎日通る道に酔っ払いの吐瀉物が撒き散らされていたら、気分が悪いだろ?
それと一緒だよ
否定意見とはいえ、「乙」「面白かった」等のマンセーレスよりも余程内容に触れてるし、何より的を得てるよ?
反論あるならどうぞ^^
>>54 いや、反論もなにも俺とアンタは同じこと言ってるみたいだが?
>>55 ですよねー
レスアン間違えたんじゃね!?
ここまで誰一人反論できず…とw
静かだな…
>投稿者All
楽しく読ませて頂いてます。
ピクニックの感想文読みたいんじゃなくて怖くなりたいのよ、みんな。
楽しくなってどーする?
早う来て我らの肝寒からしめん、ハゲ。
まとめサイトにあるA坊主の話で、富士五湖道を題材にした話があるんだけど、これ読んでビビった。
先輩が昨年の夏に深夜1人で通ったらしいんだが、高低差からか耳鳴りが酷くなって車を脇に止めたらしい。
外でタバコと飲みかけのコーヒーを飲んで一息つき、さあ出発するかと走り出し、暫く走って何の気なしに後部座席を見ると、その窓一面に手形がついていたらしい。霧の濃い夜だったと言ってた。
何の関係もないかもしれないけど、有名なスポットなのかな?
>>63 洒落コワに行けばいい。
ここにはお前が望む話は何一つない。
>>66 いや、同意見だよ。わかってもらえなくて残念だよ。
ウニも赤緑も同Lvの練り足りなさ、クドさ、
台詞優先で表現が稚拙。そんな風に感じます。
だがそれがいい
嫌いな人もいるのも分かるが好きな人もいると分かってほしい
そしてストーリーとキャラは凝ってていいなと思ってる。これに関しては誰の反論も聞かない。
ウニはもっとぶっとんでイイと思う
いや、ぶっとぶべきだ
石像に「お前は暗示をかけられた人間だよ」とささやくぶっとびこそウニの魅力であり真骨頂
ウニ=ぶっとびと言っても過言ではない
オチ?伏線回収?
細けぇことはいいんだよ!
[人形(後)]
1/9
私「…え?」
佳澄が倒れ、私はしばし呆然とする。
私「何で…!?」
私は短剣を放り投げ、彼女を抱き起こす。
佳澄「…っバカね…また、騙され・・って…」
私「騙すって…そんな、何でよ?」
佳澄「消える…なら、せめて…」
私「消える…?」
佳澄「…約束、したから…ね?」
佳澄は片手を上げ、私の頬に当てる。
佳澄「私の、大切な…」
私「佳澄…!」
私はその手を握る。
佳澄「ひと…」
カクリ、と佳澄の身体から力が抜ける。
そして…その身体は、一瞬にして消え去ってしまった。
2/9
私「何で…?どうして、こんな…」
あまりに急な出来事に、頭が混乱する。
一体何が?なぜ、消えてしまうの…?
近くに舞さんが来る。
舞「夏美さん」
私「舞さん…佳澄、なんで…消えるって…?」
舞「存在理由が無くなったからよ」
私「どういうこと?」
舞「人を物として扱えなくなったから。それを人として認めてしまうと、自分の存在が…嘘になるからよ」
私「そんな…そんなのって…」
舞「立って、夏美さん」
私「うぅ…」
イヤ…もう、こんなの…
舞「約束よ…。あなたは、行かないといけない」
私「約束…」
舞「さぁ、立って…」
舞さんに言われ、私は立ち上がる。
私「どこに…?」
舞「ついてきて。光一も」
光一「あ、あぁ。うん」
3/9
舞さんは病院の奥へと進んでいく。
それに力なく続く私。少しふらつくと、弟さんが手を貸してくれる。
果たして救いはあるのだろうか。こんな私に…何もできなかった私に、救いは…。
舞「ここね」
舞さんが立ち止まる。そこはこの廃墟に似つかわしくない、綺麗な扉の前だった。
私「ここは…?」
舞「佳澄さんの部屋よ。入りましょう」
そう言って舞さんは扉を開けて中に入る。私たちもそれに続く。
そこは真っ白な壁の、清潔感に溢れる部屋だった。
置いてある家具はとても少ない。
簡素な箪笥に、化粧台、柱時計…止まっている…それに、ベッド。
そのベッドの上には――
…!
あぁ…
そうだったのね…
約束、か。
ベッドの上では、1体の人形が、私が迎えに来るのを待っていた。
黒いボタンでできた目で、おめかしをした格好のまま…ずっと。
待ってたぜ
4/9
――姉に続いて部屋に入ると、夏美さんはベッドに座っている人形に目を奪われたようだった。
少し古い感じはするが、綺麗な服を着た、小さな女の子の人形だ。
そうか。あれが、あの…。
夏美さんは、ゆっくりとその人形の元に向かう。
ここまでフラフラと歩いてきた彼女だったが、その足取りはしっかりしていた。
人形を手に取り、抱きしめる夏美さん。
その子に何かを言っている。
俺はちょっと視線を逸らす。なんだか涙が出そうになったからだ。
姉は…?と思い見てみると、彼女は優しい目で夏美さんたちを見つめていた。
そうしたまま、しばらく時間が過ぎていく。
夏美さんは人形に話しかけ、頭を撫で、手を取り、服を整え…たくさんの愛情を注ぐ。
やがて…
夏美さんが言う。
夏美「舞さん。…この子を、私の家に連れて行って欲しいの」
舞「分かったわ」
夏美「ありがとう。あそこなら1人じゃないし…きっと、会えるから」
舞「…そうね」
5/9
夏美「…私、もういかないと。”お迎え”ってやつが来たみたい」
見ると、夏美さんの身体が段々とぼやけていく。
夏美「舞さん、本当に…ありがとう。光一さんも、力になってくれてありがとう」
舞「いいのよ」
俺「あぁ…」
俺は多分、何もしていない。また何も…
夏美「それじゃあ、ね」
笑顔になる夏美さん。
その身体は徐々に薄れていく。
舞「さようなら、夏美さん」
夏美「さようなら…」
薄れていくと共に、そこから光が溢れてくる。
夏美「あ…光…」
彼女は光に包まれ…
夏美「見える…私の、大切な――…」
そして、完全に消えていった。
6/9
――
外に出ると、辺りはすっかり暗くなっていた。
病院から出る途中、姉は一本の短剣を拾った。
俺「あ、それ…」
白谷さんを刺した短剣だ。
舞「これも持っていくわ」
俺「うん…そうだね」
舞「ミセリコルデ、ね」
俺「…はい?」
舞「これの名前よ。慈悲の短剣」
俺「へぇ…慈悲、か」
慈悲の心…夏美さんにはあっただろう。では、白谷さんには?
…きっとあったのだろう。夏美さんから受け継いだ、その心が。
舞「出ましょう」
外に出た俺たちは、車に乗り込む。人形は、姉の膝の上だ。
俺「それが、白谷さんだったのかな」
舞「まぁ、そんなところね」
俺「ふーん…」
俺はまじまじと人形を見る。
俺「…人形も寝るのかな?」
舞「何で?」
俺「だってほら、夢を見るとか…って」
舞「さぁ…どうかしらね」
姉は、人形の頭を撫でながら言う。
7/9
舞「小さい女の子が人形を可愛がるのって、母親の真似事なのよ」
俺「あぁ、聞いたことある」
舞「自分が母親に言われたことを、人形に言ったりするの。叱られたこととか、褒められたこととか」
俺「ふむ」
舞「だから…」
姉は人形を持ち上げて言う。
舞「人形は、自分自身でもあるのよ」
俺「…」
何か意味深だ。
母親としての感情だろうか?男の俺には、ちょっと分からないことかも知れない。
…ただ、人形が自分自身と言うのなら、それを捨ててしまうことはどういう意味を持つのだろう。
そのとき捨てるものは、人形という物だけ…?
…ん?そういえば――
俺「そういえば、姉貴って…」
舞「何?」
俺「人形って、持っていたっけ?何か、こういうのは無かったような」
舞「…これと言って持ってなかったわね」
俺「ふむふむ…」
舞「…どういう意味かしら?」
俺「いや別に…何となく」
人形遊びをする姉の姿は、何となく想像しづらい…何て言ったら怒るだろうな。
80 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/18(金) 11:19:56 ID:AMdyGumIO
ドラクエ乙
8/9
舞「私にはね、必要なかったのよ」
どこか澄ました顔で言う姉。
俺「…なんでさ」
舞「だって、光一で遊んでいたから」
俺「…へ?」
舞「さ、早く行きましょ?」
俺「あ、あぁ…」
今、シスコン云々以前に、俺が姉に対して逆らえない本当の理由が分かったような気がした…が、取り敢えず車を出――
…あ!!
大事なことを思い出した。
なんてこった、俺は…。
俺「姉貴…あの…お姉さま…」
舞「今度は何?」
俺「ごめん…俺、姉貴にとんでもないことを…」
急に思い出した。俺は、操られて――
舞「あぁ、私、襲われたわね」
事も無げに言われる。
9/9
俺「ごめん、ほんとに…」
舞「別にいいのよ。そうなるって分かっていたし」
俺「あら、そう…」
舞「それに…」
姉が俺を見て言う。
舞「あんなので、私が死ぬと思う?」
俺「え…?」
舞「…ほら、早く出してよ」
俺「あ、あぁ」
よく分からないけど、やはり俺は姉貴には敵わないようだ。
俺はアクセルを踏み込み、車を発進させた――。
乙
次も頼む
乙!
赤緑乙
そろそろ学芸会Zに名前変えようぜ。
87 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/18(金) 15:13:34 ID:AMdyGumIO
体育館で寝ると風邪ひくよな。
稚拙、の一言だね
こんなゴミをウニと比較するのはどうかと思う
稚拙なゴミと分かってるのに・・・!
でも悔しい、読まずにいられないっ!
ビクンビクン
今までに完結した話ってナナシシリーズと沙耶ちゃんシリーズ以外にある?
この話の作者さんの新作が読みたい。
赤緑乙
古乃羽出ないのかよ…
>>67 いや、どう読み取っても同じ意見じゃないだろ
本気で同意見だといってるのか?ちゃんと説明してくれ
93 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/18(金) 20:05:26 ID:AMdyGumIO
ほらほら、目くそも鼻くそも仲間割れすんなよー、足下掬われるぞ。
>>92 文盲に何言っても無駄だよ
納得できない気持ちはわかるが諦めろ
>>70 読んでないだけ。で、今読んできた。読んでみての感想。
・表現
内容は会話が多く、演技指導がないだけの台本状態。
描写が薄いのが最大の欠点。その所為で存在感が無い。
故に、よく言えば幻想的だが、登場するあらゆるものに存在が希薄なため
真っ白な空間に人形が置いてあるだけのような印象をうける。
他にも足りない感じを強くうけるが、描写不足によるものだと思いたい。
・内容
霊能の登場するファンタジー小説だが、
ファンタジーであることよりも、暗い要素に重きをおいてある。
だが、それでいて現実的な描写が殆どなく、違和感を覚える。
キャラ名にも非現実さが濃く現れすぎていて、過分に作り物っぽい。
霊というより 麗感目指していたりするのだろうか。
作り物にもリアリティは必要であり、特にリアルな人間の暗い部分に焦点をあてるなら、
その描写にも現実味がないと薄っぺらく感じられてしまう。
ウニのは く ど い 。言葉遣いを洗練して、スッキリと書いてほしいか。
其々に好きって人もいるんだからそれぞれの良さがあるんだろう。
だが、読み手は『批判しないこと』=『その作品を賞賛すること』という失礼な勘違いをしてはいけないし、
書き手は読み手の意見を受け止めつつ、作品に生かす努力をしなくてはいけないと思う。
だが、いわれるままを反映して直ぐに書き方変えてしまう・止めてしまうという、
形にならないよう。今作はこのまま書ききれるよう自分を貫いて頑張ってもらいたい。
…自分偉そうすぎキメェ、けど投稿する。
>>96 いや、言いたいことはわかるし、ウニ本人にもこういった感想は必要だと思う。
内容の無い薄っぺらな罵倒には負けないでほしいな、ウニなら大丈夫と信じてる。
>>97 前半が赤緑さんのレビュー
ウニさんのは真ん中の1行だけ・・。
クドさがなければ、かなり良い線いくとおもったのでそれだけ。
確かに難しいんです、限られた文字数に表現を圧縮するのは。
はいもう、半年Romります。
作者さんがたの健闘を見守りつつ草葉の陰から応援することにします。
>>98 草葉の陰から応援しちゃうの?
オカルティックだ…。
100get
>>98 赤緑氏のレビュー、的確だと思った
かなりグロテスクな場面が多いはずなのに、緊張感や切迫した雰囲気が伝わってこないのはそういう理由なんだな
感情移入できないっていうのは、この手のファンタジー物としては致命的だよね
俺はただ、霊感持ちの友人・知人の
リアルなオカルト話しを観覧したいだけだ。
そうそう。
ここのタイトル通りのお話が読みたいだけだよね〜
104 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/19(土) 05:19:25 ID:cJcOThf9O
シリーズ物総合スレ10、だが?
>>94-95 だからさ、同じ意見だと言うならきちんと説明しろって
俺は普通に違う意見だと読み取った。理由はきちんと書いてある
反論もせず文盲だと罵るばかりか?
メンヘル男ほど面倒くさいものはないな。
いつまでも鬱陶しい。
赤緑相変わらずつまんね。
もう書かなくていいよw
はい次
108 :
>>95:2009/09/19(土) 18:09:55 ID:cSTvm05dO
>>105 だからオマエは間違ってないってのw
一応、オレはオマエを庇ったつもりなんだけどね
性格悪い自演厨にからかわれてただけだから、あんまり気にすんな
>>108 性格悪いけど自演じゃねーよw
>>105 あのさ、こっちこそ本気で言ってんのか聞きてーんだよ。
あんたってなんかさ、
>>95へのレスといい自分側の人間を敵だと思い込むクセあるんじゃないか?
ていうか人の話聞いてないだろ。
説明まだかって、
>>53と
>>54を本当に読み返してるなら説明なくてもわかるはずだ。
俺が言いたいのも「否定派でも的確な指摘をする意見は役立って良い」ってこと。
(これはまず同意見だよな?)
なのにここには内容のない罵倒が蔓延してる。「死ねだ」の「消えろ」だのね。
だから「道にツバはく奴多すぎ」って言ったの。
これに対しては
>>54の
「毎日通る道に酔っ払いの吐瀉物が撒き散らされていたら、気分が悪いだろ? 」
これも一緒のこと言いたいんだろ?例え方が違うだけで。
俺はそれを踏まえ、皮肉も含めて「これだったら『乙』一言の方が気分を害さない分マシだな」
っつったの。「内容の無い暴言よりは」ってところちゃんと読んでほしかったな。
ちなみになんで俺が
>>66では学芸会肯定者になってんだ、誰もそんなこと言ってないだろ勝手に決めんな。
もうこれ以上ひっぱるなよな、いい加減俺もお前もしつこすぎるし。迷惑かけすぎ。
ってか説明させんな! ギャグ説明するみたいで恥ずかしいんだぞ! てか熱くなったのバレたじゃん、どうしてくれる!
あー、ほんのりからこっちに流れた兄貴の人と母親の人こないかなー
わかってないのは
>>109 ちゃんと前後の文脈読もうよ
この場合、道端の吐瀉物ってのは作品に対する罵詈雑言のことではなく赤緑の投下そのもののことだろ
まともな理解力を有するのは
>>105だけってのも…なんか情けない話だね
要は、投下レスの内容に対して
返答レスが、各々の良悪しに限らず
どれだけ触れてるか触れていないかの違いだってさ‥。
それは、個々の感じ方だから一概にソレだ!
とは言えない。とか 言ってみるw
>>117 まだやってるの?
つか、どうしたら納得…つか消えてくれるの?
皆がスルーすりゃレスのしようが無くなるんじゃねーの?
もはやネタなのかもしれんが、敢えてのマジレス
>>117 何もおかしくない
仮にも読み物スレに君みたいなのがいる事が不思議だな、とは思う
121 :
53:2009/09/20(日) 13:08:46 ID:pfllXUXH0
>>116-120 なんかいろいろ迷惑かけたし、すまなかった。もうちょっと大人になるように努力するよ。
>>112 おk納得した。納得したからもう終わろうぜ。
123 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/20(日) 13:12:49 ID:paycKrG40
ちっ!
もっと書き込んでいいんだぞ。
まだ言い足りないことたくさんあるだろ、この機会に全部吐き出しちまえよ。
オマエはりっぱな荒らしになる素質持ってんだから勿体無いぞ。
このように、赤緑が降臨すると荒れまくります
もう来ないでください><
赤緑不要論者が消えればすむこと
逆だろ
学芸会君が消えれば済むことだろ
学芸会君の作品の質の低さが荒れる原因なんだから、今いるアンチが消えても新しいアンチが生まれるだけ
その新しいアンチが来る度同じ台詞を吐き続けるのか?w
必要とされて無いやつが消えればいいだけ。
粘着すれば日本人は言うこと聞くと思うな、ボケ。
>>124 > このように、赤緑が降臨すると荒れまくります
> もう来ないでください><
キモ
>>126 > 逆だろ
> 学芸会君が消えれば済むことだろ
> 学芸会君の作品の質の低さが荒れる原因なんだから、今いるアンチが消えても新しいアンチが生まれるだけ
> その新しいアンチが来る度同じ台詞を吐き続けるのか?w
キモすぎ
教授ん時と同じ流れですね
歴史は繰り返す…か
でも作者がいなくなるって歴史は繰り返して欲しくないんだぜ
人は歴史から学ばなければならない
赤緑氏は大丈夫ですよ
耐性が無ければとっくに消えてると思います
教授は2chから追い出されたけど、ちゃんと話は終わらせたからいいんじゃないか?
赤緑氏にはここで完結を迎えてもらいたいとは思うけど。。。
135 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/21(月) 00:53:59 ID:WzMdpajLO
赤緑乙です。
今までご苦労様でした。
完
舞編はおしまいなのかね?
137 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/21(月) 10:40:22 ID:tZDaZyWM0
あたりまえでしょ、終わりですよ。
何で、死ねとかバカとかもう来んな〜とか言われてまで
このクソスレに書かなくてはいけないのですか、しかもタダで!
じゃね〜。
死ねとかバカとかもう来んな〜とか言ってんの一人だけどな
139 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/21(月) 12:56:36 ID:tZDaZyWM0
ハゲとも言われた。
赤緑氏乙
一つの物語が完結を見た
今回の話が大詰めかなと思ったけど
まだ最大の謎が残されてるよね
次回も楽しみにしています
Me too.
142 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/21(月) 15:49:34 ID:BDH4Oc5e0
あのさ、田中の人の体験読みたい奴って居る?
俺は結構読みたい派なんだけどさ。
読みたい人ってどれくらい居るのか、挙手して
まぁ俺は田中の人のブログ見つけたからそこで読めるんだが。
田中の人に対してキチガイ粘着荒らし居るから、読みたい人挙手で
挙手多かったら単独スレたてるわ。
143 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/21(月) 16:17:55 ID:tZDaZyWM0
ブログあんならそれでいいだろ。
これ以上混乱するような事すんなよ、みんな頭ヨワイんだから、ハゲ!
144 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/21(月) 16:53:24 ID:N+A3HrkCO
はい!携帯なのでみたいです。
赤緑つまね〜
相変わらず成長しない糞文だなw
文才ないからさっさと首吊ったら?
ここの信者どももついでにあの世に連れてけよwww
ばいなら〜wwwwwwwwwwwwwwwwww
>>142 ノシ
でも一人だけ専用のスレってオカ板のローカルルールに抵触したはず
それにそんな事したら赤緑専用、ウニ専用、忍専用スレ立てろって事になってメチャクチャになるからやめたほうがいいよ
田中の中の人のブログについて詳しく・・・と言いたい所だけど、粘着が荒らしにいっても困るしあえて聞かんでおく
147 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/21(月) 18:02:41 ID:WzMdpajLO
ってかこんな所で自分のブログの宣伝すんなよー。
>>142 本人の許可は得てるのか?
誰がどのスレ立ててどう体験談語ろうが自由だと個人的に思うが
場合によっては無断転載スレってことになりかねないぞ
あと、前回の田中さんの行動見る限り2chにスレ立てるのはお勧めできない
アンチや文法気になる名無しが、何か書き込むたび脊髄反射しそうだから
スルースキルの無い書き手がどんな騒動起こすか
昔、某スレッドで目の当たりにしたことがあるし
149 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/21(月) 18:54:29 ID:tZDaZyWM0
田中なんてどこにでもいるせいか全く印象ない。
何した人だよ?
150 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/21(月) 19:54:41 ID:yTBlTco6O
上京して大学に入ってすぐのことだった。下宿先のアパートの近くを散歩していた折、裏通りにある一件の古本屋を見つけた。
昔懐かしな風情のその店は外見からして客に媚びるという考えがないようで、入口と思しき扉の上に
『灯鳴堂書店』
と、立派な書体だがギリギリ読み取れる程度の木看板が付いている。
ガラス越しに覗ける店の中は割合あっさりとしていて、そこかしこに古本が積み上げられている、というのを期待してた僕はちょっと裏切られた気分だ。
中学生くらいまでは結構な本の虫だった僕だが、ここ最近は改めて本を読む機会がなかった。
当時読んでいたお気に入りの作家の続編でも転がってないものかと、冷やかし半分で店に入ってみる。
カランカラン
扉に付けられていた鐘がなる。コンビニなどで聞く電子ベルに慣れていた身には妙に懐かしく、新鮮に聞こえた。
「いらっしゃーい」
店の奥にあるレジから聞こえてきた声は、まったく僕の意表をつく若い女性の声だった。
雰囲気的には、還暦をとうに過ぎた寡黙な主人がジロリとこちらを見やる、そんな店なのだけど・・・。
その場違いな声にひかれて店の奥に目をやると、見た目僕とそれほど変わらないように見える女性がこちらを見て微笑んでいた。
腰まで届きそうな綺麗な黒髪を一つに縛り、なにか憂いを含んだような目をした女性だった。
非常に綺麗な人ではあるのだが、幽気とでもいえばいいのか、常人離れした雰囲気がある。
彼女がこの灯鳴堂の主人、黒沢京子。
僕がこの世とあの世で起きる事件に巻き込まれるきっかけになった張本人でもある。
ツヅク
wktk
152 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/21(月) 20:05:36 ID:tZDaZyWM0
トリつけな〜
153 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/21(月) 20:40:39 ID:sLgSU8N7O
田中とかwwwww本人乙としかwwwww
専用スレwwwwwww
はやくwwwはやくたててwwwwwww
>>150 期待
その事件が起きたのは5年前の事だった。当時小学生の私にはその頃そんな事件があった事など知りもしなかった。
私はこの春スポーツで有名な、とある私立高校へ入学した。
特別得意なスポーツがある訳でもないが、地元でこの学校に入る事は一種のステータスとなっていた事と、某デザイナーがデザインしたという非常に可愛らしい制服を着てみたいという理由で入学を決意した。
学校にはスポーツの特待で授業や試験が一部免除される通称特待科と、国立大などを目指す進学科、その他大勢の私のような生徒が通う普通科があり、生徒総数も方田舎にしてはかなりの人数になる。
それぞれのクラスではほとんど交流がなく、クラス変えもドロップアウトや著しい活躍や成績の向上を除けば無い為に同学年でも知らない顔がかなり居る。
もともと人見知りをするタイプの私はクラスの友達だけで十分過ぎる程だった。
学内には一通りの設備が整っている。プールや体育館、学食や購買などの基本的な設備の他にも、この話の舞台になるクラブハウスがあり、自主トレ用設備や座学用の教室、県外遠征の生徒が宿泊できる設備まで整っている。
生徒なら誰でも利用出来るというふれ込みだったが、ほぼ体育会系の生徒が占有していた。
とまあ普通ほとんど寄り付く事はないのだが、一般の生徒が利用するとしたら、期末のテストで赤点を取った生徒、もしくは何らかの理由でテストを受けられなかった生徒はその後の休みの期間に補習や追試を受けるために数日間ここに寝泊りしなければならなず、
その為に宿泊施設を利用するという時くらいだ。
言ってみればここに寝泊りする事自体不名誉な事であり、出来る事なら避けるべき事態なのだけど。そして非常に遺憾ながら私は高校生活最初の夏休みをニ日半をここで過ごすハメになったのだ。
とは言っても赤点を取った訳ではなく、風邪を引いてしまいいくつかのテストを欠席してしまったと念の為、書き加える。
今回この地獄の学習会には1年生全体で22名が参加する事になり、私のクラスからは私の他にもう1名居た。
鹿島智子。私がクラスの中で気軽に話が出来る数少ない友達の一人だ。少し茶色く染めたツインテールで、まだ幼い愛らしい顔つきをした人懐っこい女の子。
あいにく私とは違った理由で参加しているので、その可愛らしい顔が憂鬱に染まっていた。
8月5日。
夏休みで乗客も疎らな電車に乗り、学校へ向かう。駅前の商店街で智子と一緒になり共に登校する。溜息が多い智子を励ましながら長い坂道を登っていく。
途中、野球部の一団が外回りのランニングをしている所とすれ違う。その中にはクラスメイトの男子で智子の意中の彼という人の姿を見つけた。
同じ中学出身で、地区大会ベスト4のエースだったらしいが、この学校ではその実力も補欠にも入れない3軍からのスタートであり、特待科には入れなかったという。かなり厳しい世界なんだと思う。
その彼の姿を見た智子は先ほどの憂鬱がどこに吹き飛んだのか、機嫌はすこぶる良くなった。現金な子だ。
グラウンドの反対、少し奥ばった所に今日泊まるクラブハウスが見える。
この4階建てのクラブハウスの周りには背の低い植栽が植っていて、ある一点だけ途切れたように植栽が無く、いつも綺麗な花が手入れをされている。
最初に来た時は園芸部か何かが間借りして植えているのかと思ったが、生憎この学校にはそんな部活は無かったので誰が世話をしているのかいつも不思議に思っていた。
クラブハウスを通り越しその先にある校舎に向かう途中で、私は何かに呼ばれたような、いや誰かの視線を感じたような感覚をおぼえ振り返る。休みの為人の通りも少なく、背後には誰も居なかった。
不思議に思いつつも気のせいという事にして前を向こうとした時、クラブハウスの屋上に違和感を感じた。
そこには、黒く長い髪を風でなびかせた色の白い女子生徒がこちらのほうを見下ろしている。
距離はかなりあったが雰囲気で綺麗な子だと感じた。特に知り合いでは無さそうだったので、私は前を向き直し校舎に向かう。
気になったので校舎に入る際にもう一度後ろを振り返ったがその子の姿はすでになかった。
早く行こうと智子に急かされ教室に向う事にした。
赤点を取ってしまった人の為の補習が主な内容のイベントの為、私のように事情があり参加する生徒は基本的に補習を免除、つまり居ても居なくてもいいのだが、その後行われる追試の試験範囲をしっかりカバーする内容なのでほぼ全員が授業を受ける。
私もテストを受けられなかっただけとはいえ、正直ギリギリの学力で入学しているから授業についていくのが精一杯だ。厄介なイベントではあったがあやふやな点を復習できるので私としてもそれほど苦痛ではない。
午前中集中して授業を受けている内に、昼休みを告げるチャイムが鳴り、智子と私は学食へ向かう。
学食内はお昼時という事もあり、ジャージや様々なユニフォームを着た運動部で賑わっていた。空いている席に座り、智子と雑談しながら食事をする。
食事中、ふと朝に見た女生徒の事が気になって智子に話題を振る。
「クラブハウスの屋上って閉鎖されてなかったっけ?」前に誰かに聞いた覚えがあった。智子だった気もするが、よく覚えていない。
「あー、確か先生がそんな事言ってたような気がする。でもどうして?」ああ、そうか。先生だ。危ないから閉鎖されているとか何とか。
「朝、屋上に」そう言いかけた時、私達の隣にサッカー部の上級生二人組が座った。ちょっと外見も中身も軽そうで、私はこういった人達が苦手だ。
そして案の定、話しかけてくる。「君達かわいいね、1年生?」この台詞は、こういった人達の挨拶代わりなのだろう。
私も街で時折、こういった感じで知らない人に話しかけられる。かわいい、スタイルがいい、などと言われればそれはそれで悪い気はしないが、いつも無視をしていた。
しつこく食い下がる男も居れば、なんだよブスと吐き捨てられる事もある。関わらないに越した事はない。そんな男達にひょいひょい付いて行くほど馬鹿ではないつもりだ。
「えー、そうなんですかぁー?」気付けば智子がその二人と楽しそうに会話をしている。おいおい愛しのエース君が見てたらどうすんだ・・。
智子は八方美人な所があり基本的に軽い。誰彼構わず付いていく事はないが会話を拒まないので男子からよく勘違いされる。しかも本人には全く自覚が無いのである。罪作りな女だ。
私の隣の男子が、私の髪を見て「綺麗な髪だなー、触ってイイ?」などと言い、手を伸ばそうとしたのできっぱりと「やめてください」と拒否。
私が結構キツめに言ったからか、その男子も素直にゴメンと謝罪したので事なきを得たが、それ以上絡んできたら冷やしたぬきの残りのつゆを頭からかけてやろうと本気で思った。
「智子、私保健室行くから」と言い席を立つ。保健室に用は無いがこの場から立ち去りたかったのだ。智子も気付くだろうと思ったのだが、返ってきたのは「いってらっしゃーい」という答え。
勝手にやってろ、とトレイを返却口に戻し食堂から抜け出した。三人の笑い声が私に向けられている気がして少し気落ちした。
保健室に入ると、保険医の佐山先生が居た。三十路直前だが、20代前半に見える。優しい顔立ちと、白衣。近付くとわかるのだが、ほんのり石鹸の香りがする清潔な美人。
どこの調査か知らないが男子生徒の憧れのお姉さんNo1、男性教師の嫁さんにしたいNo1、そして一部の女子生徒からもお付き合いしたい先生No1といった栄光を6年連続獲得しているという校内一有名な先生だ。
「あら加藤さん。また胃痛かな?」私の顔を見るやその優しい声で気遣ってくれる。これも人気の秘密の一つ。
「はい、出来れば胃薬を頂きたいのですが」特に胃は痛くないのだが、その気遣いをふいにしてはいけない気がして嘘をついた。
先生は薬箱から胃薬を取り、コップに水をいれ私に差し出す。私はそれを飲み終えると、少し先生と雑談を交した。
佐山先生は非常にモテるのだが、男性と付き合っているという話を聞いたことが無い。その筋の女子から慕われている為、同性愛者の噂もあった。またそれを裏付けるような話を聞いた事がある。放課後の保健室で女子生徒を抱きしめている先生を目撃したという話だ。
あくまで噂は噂であるが、楽しそうに私の話を聞いてくれる先生の茶色の瞳や艶のあるピンクの口紅が塗られた形の良いな唇をどうしても意識し、見蕩れてしまった。
私は特別女性が好きという訳ではないし、気になる男子もいる。先ほどのいい加減そうな男子のようなのはお断りだが。しかしもしも先生に迫られたら断りきれないのではないか、という疑念を持たせる魅力があるのだ。
会話が途切れそうなので、私は先ほど智子に聞けなかった話を切り出す。
「そういえば、クラブハウスの屋上って閉鎖されていましたよね」
私の何気ない問いに先生の顔色がほんの一瞬だが変わったのを見逃さなかった。
「ええ、そうらしいね。でも、どうして?」すぐに笑みを取り戻し、私に尋ねる。
私は朝、屋上で見かけた女生徒の事を先生に伝える。先生は私の話を聞いた後、ちょっと困ったという表情で「見間違いじゃないかしら」と答えた。
何か隠さないといけない事でもあるのだろうか。先生が答え辛そうなので私もそれ以上会話を続ける事が出来なくなり、胃薬の礼をして保健室を出る。
午後の授業が始まる頃、智子が戻ってきた。
私は先ほどの件でまだ頭にきていたので、無愛想に「おかえり、楽しかった?」と嫌味っぽく言う。
「電話番号しつこく聞かれて困った」とニコニコした顔で答える。困ったなら困った顔をしなさいと。教える気が無いのはわかったが、いつかトラブルに発展しそうで少し心配だ。
それから15時まで授業をうけ、その後追試3科目を行う。その内2科目が私の受ける物理と現国だった。授業を聞いていれば誰でも合格点が取れるので、難なく解答用紙を埋められた。
赤点組は全ての教科を受ける必要があったが、私と数人居た試験を受けられなかった人達はその教科以外は自由にしてていい為、2科目が終わった後は読みかけの推理小説を開いて全てのテストが終わるのを待つ。
茹だるような暑さの中、快適に時間を潰せるのはこの教室か保健室くらいだろうが、保健室は今日はもう行き辛く時間を潰すにはここしかなかったのだ。
ようやくテストが終わり、智子と一緒に食堂へ向かった。時間は18時を少し回った所で、外はまだ明るい。学食は夜遅くまで部活をする運動部の生徒の為に夏休み中でも19時まで開いている。
昼とは違い、カレーかソバ・うどんの3択なので二人でカレーを食べる。
本当は外に食べに行きたかったが、商店街まで続く長い坂道を思うと学食しかあり得なかったのだ。
食事を終え外に出るとすでに外は夕闇に包まれつつあった。
二人並んでクラブハウスに向かう。20時までに入浴を済ませないとシャワーだけになってしまう。私は浴槽派なのでシャワーしかないというのは御免だ。
流行りのシャンプーの話をしながら歩くとすぐに目的のクラブハウスが見えてきた。
>>喪中
字多いな。でもC
あれ、やっぱり屋上に誰か居る。
朝見た光景と同じように、そこには一人の女生徒が見えた。もう暗くて顔までは判別つかないが、確かにそこに居る。
歩いてくる私達に気付いたのか、その人が私を見たような気がして目を離せなかった。その姿は夜の闇に消えてしまいそうな儚さを感じる。
「智子、ホラ、アソコ」私は智子の話を中断し、屋上を見るように促す。
「え、なになに?UFO?」いや、女の子が居る、と言いかけた所で気付く。その姿はもうそこに無かった。
「あれ?」
「なになに?どした?まさか女の子が居たとか?」
「うん、居た。朝も見たんだけど。」そこまで言うと智子が急に怖い顔をする。
「ここ、女の子の幽霊が出るらしいよー・・・」
まっさかー!と笑い飛ばしたかったが智子の声色と表情が妙に硬いのと、私自身、その子が果たして人間だったかどうか確かめる術を持たず自信が無くなってしまった。
しばしの沈黙の後、「部屋、行こ」と智子が笑って言った。
幽霊や亡霊など一度も見た事が無かったが昔からそういう話には他の女子と同じように好きな方だった。テレビで心霊番組があれば欠かさず見ていたし、恥ずかしながら実録!心霊写真集などのいかがわしい本も何冊か本棚にある。
見間違いだろうか。いや、どうだろう。私の心に引っ掛かったのは佐山先生の表情だ。何かを隠しているような、そんな表情。
もしかしたら、何かあるかも知れない。そんな不安とも期待ともとれない感情が徐々に私の胸を侵食しはじめていた。
部屋についても何だか落ち着かなかったが、何よりお風呂に入り嫌な汗を流したかったので智子と二人で浴室に向かう。
よく言えば奔放、別の意味ではがさつという性格の智子は脱衣所で無造作に制服を脱ぎ、恥じらいもなく中に入る。女同士で恥じらいも糞もないのはわかるが、もう少し、こう、ねぇ。
私も制服を脱ぎ、自分と智子の制服をたたんであげ中に入る。二人で並んで体と髪を洗い、湯船に浸かる。
「やっぱ胸、おっきーね。触っていい?」「ダメ。」 そんなやり取りをしながら今日のテストがどうだったとか、明日のテストは厄介だとか他愛の無い会話をした。
本当は幽霊の噂を聞きたいと思っていたが、なかなか口に出せずにいた。
お風呂からあがり、いくつかある洗面台に備え付けられたドライヤーで髪を乾かしながら私はついにその事を口にした。
「幽霊の噂って?」
「あれ、里絵子、幽霊とかの信じるの?」智子は笑いながら答える。
私はそれらしき少女を見ているのだ。できる事なら、そんな噂は全くの出鱈目だと思いたい。
「なんかね、何年か前にこのクラブハウスで自殺した女の子が居たらしいよ」
あくまで噂であり、この程度の噂ならどこにでも吐いて捨てる程ある。智子は続ける。
何年か前に、このクラブハウスで飛び降り自殺をした女生徒が居たらしい。理由はわからない。その話はタブーとされて、運動部の中でひっそりと語り継がれているとの事だ。
その数年後から、ここで寝泊りした生徒の中に幽霊の話が出るようになった、という物。
「まあ、噂だけで実際見た人は知らないし。この話に詳しい子を知ってるけど、どうだかなー。」
そう、噂。信憑性はまるでない。私はどこかでこの話を耳にして、心のどこかで期待して、存在しない幽霊の幻を見たに違いない。幽霊の幻とは妙な言い方だが、そんな所か。
「私は信じてないけど、行ってみる?」
「行くって?」私が聞き返すと智子はニヤリと笑い天井を指差した。
階段で4階に昇り、屋上へ向かう階段を見つめる。その必要が無いからか、その先の照明は蛍光灯が外されており薄暗く、不気味な雰囲気を醸し出していた。
パタン、パタンとスリッパの音を響かせながら一段一段昇っていく。実は誰かがその先に潜んでいるのではないだろうか。
誰か、ならまだいい。この世ならざる者がこの先に待ち受けているとしたら。そう思うと足が重くなる。智子が私のシャツをぎゅっと握っている。彼女も信じていないとはいえ怖いらしい。
階段を昇りきると、屋上へ出る扉があった。鉄製の扉で赤く塗装されており、上半分は曇りガラスになっており月明かりを覗かせていた。
何より気味が悪いのは、マジックで「天国への扉」と悪戯書きが施されているのである。悪趣味な。大方、運動部の男子がこの噂を聞きつけ落書きしたのだろう。
私は一息飲むと、ドアノブに手をかけ、左へ捻り、そして意を決して引く。
ガツ、と音がしただけで扉は開かなかった。鍵がかかっているのだ。屋上は閉鎖されたままだ。
押しても引いても、開かない。私は振り返り、智子に首を振って伝える。
「ほらね」今まで怖がっていたのが嘘のように楽しそうにパタパタと階段を駆け下りる智子。
そのほらね、というのはどういう意味だろう。屋上が閉鎖されていた事に対してか?そうなら私が見たのは幽霊か幻になる。幽霊を信じていないという智子が使うのはちょっとおかしい気がした。私の見間違えだという事を言いたかったのだろうか。
何だか悔しくてもう一度ドアノブを捻り開かない事を確認して私も階段を下りた。下りきった頃にはきっと私の見間違えだ、と考えられるようになっていた。
部屋に戻り、このイベントが地獄のイベントである事を智子は再認識させられていた。赤点組はレポート用紙10枚に渡る反省文を明日の朝までに提出しなければならない。
朝から夕方まで授業やテストに追いかけられた後、更にこの仕打ち。おまけに明日の朝は6時からラジオ体操に強制参加させられ、遅刻したらレポートが追加される。
泣きつく智子を少し哀れに思い、レポートを手伝う。10枚分も反省する言葉がある訳ないのに気付き、ほとんどが今日の感想文になってしまったが。書き終える頃にはすでに0時近くなっていた。
このクラブハウスは男子は2階、女子は4階で異性の部屋に入ることは固く禁止されている。
禁を破った者はいかなる理由をもってしても停学処分、大会への出場停止処分、大学への推薦中止、事と次第によっては退学処分まである為に忍び込む人はいないとの事だった。
実際、過去に何組かが停学・退学処分になっていて、これが十分な抑止になっているという。その偉大な先人は、事と次第を起してしまったという事か。
電気を消して寝るまでの間、智子と色々な話をした。驚きだったのが智子が、すでに、その、経験済みであった事だ。受験の前、家庭教師の大学生と。その生々しい告白と、私が大幅に遅れをとっている事が気恥ずかしく、聞き手に回る他無かった。
しばらくして智子の寝息が聞こえてきたので私も溜息をつき眠りにつこうと思ったが、智子のキスの話が頭から離れずしばらくは眠れなかった。
夢を見た。不思議な夢。怖い夢。
夢の中の時間は深夜だろうか。気付くと私とその子はクラブハウスの屋上に居た。
その子の事をどこかで見たことがあるような気がして必死に記憶を探しましたが思い出せない。彼女と私を隔てるのは緑色をした、低めのフェンス。
私はフェンス越しの彼女に向かってやめて、やめてと呼びかけるが、彼女には私の声が届かないようだった。
彼女は一瞬こちらに振り返り哀しそうな目で私を見て、一言、ごめんなさいと呟いた。
刹那、彼女の体が宙に舞い、落下。
永遠にも感じる時間は、思い出したくもない鈍い音で終わりを告げる。
咄嗟にフェンスにしがみつき彼女の姿を探したが、私の位置からは下が見えない。
半ば夢と気付いてたし、智子とあんな話をした為にこんな悪夢を見る事になったのだと心の中で叫んだ。
早く目覚めてくれ、と祈るもその願いは叶わず、私は星空の下で呆然としていた。
どれくらいそこに居ただろうか。一瞬風が強く吹き、泣くような、うめくような声が聞こえる。
「すけて・・・たすけて・・・・」
生きている?彼女は助かったのか?木か何かに奇跡的に引っ掛かり、下で私の助けを待っているのか?
踵を返し屋上から階段を走り降りる。救急車を呼ばなければ。階段の途中、一瞬だけ振り返るとドアに書かれた天国への扉という悪趣味な落書きが見える。
・・・生きているはずがない。落ちたのは4階建ての屋上だ。建物の周りには低木しかないし、彼女が引っ掛かる木の枝も、建物の出っ張りもない。
でも、確かに声は聞こえた。聞き間違えではない。助けを待っているんだ。
迷いを断ち切る為に3段飛ばしで階段を駆け下りる。
そして一階に降り立った時、私の夢はブラウン管のテレビを消すように、そこでブラックアウトを迎える。
「大丈夫?」
目が覚めると心配そうな顔をして智子が私の顔を覗き込んでいた。
ずいぶん魘されていたようだ。時計を見ると朝の5時を少し回っていた。
心配そうな智子に、ひどく寝汗をかいてしまったのでラジオ体操の前にシャワーを浴びると告げ私は部屋を出る。
フラフラしながら浴室に向かい、シャツと下着を脱ぎすてる。
あの夢は何だったのだろうか。
熱めのシャワーで脳が活性化してくるのを感じながら、夢の中の事を思い返す。
私は夢の中でこのクラブハウスの屋上に居た。そこにあの子が居て・・・・飛び降りた。高さは4階建ての屋上。
このクラブハウスの周辺には低木の植栽しかなく、クッションになりえる訳がない。間違いなく即死だろう。じゃあ、あの助けてという声。何か腑に落ちない。
私の声はあの子に届かなかった。けれどもあの子は振り返り、確かにごめんなさい、と言った。誰に?私に?
そしてあの黒く美しい長い髪を靡かせて落ちていった。
・・・黒い髪。唐突に記憶が蘇る。
昨日、私はあの子を見ている。顔こそはっきりとは思い出せないが、朝登校する際と、夕食を終えクラブハウスに戻る際、屋上にあの子は居た。
まさかとは思うがアレは予知夢みたいな物で、これから最悪の事態に陥るのではないか。
いや、やはり屋上に居た事自体が不自然だ。あの場所は立ち入りを禁じられて鍵がかかっているのを実際に確認しているし、第一、夏休みにあんな所で一体何をしていたというんだ。
夢を見た経緯を改めて組み直す。
私は、自分でも忘れているがこの建物で幽霊が出るという噂を聞いていて、無意識で屋上に少女の幻を作り上げた。
それから智子の話を聞き、彼女が屋上から飛び降りる様を想像した。それが夢の中で起こってしまったのだ。
なぜ一度も立ち入った事の無い屋上の様子が鮮明に夢に現れたのかはわからない。だけど、それは深層心理にあった私の屋上像だと思えば納得できる。
それと振り向きざまに見た天国への扉という落書き。悪質な悪戯なら自殺の後に書かれたもので間違いないが、あの文字ははっきりと見えた。
つまり、やはり私の深層心理が作りあげた架空のストーリーだったのだ。
ようやく自分で納得できる回答を組み上げ、シャワーをとめる。もうすぐラジオ体操の時間だ。
新作来たか!
8月6日
ラジオ体操を終え、朝食を摂りに学食へと向かう。一度クラブハウスの屋上を振り返ったが、誰も居なかった。
グラウンドではすでに野球部が練習をはじめており、バットとボールがぶつかる金属音が鳴り響いていた。
鮭と目玉焼きを箸でつつきながら、朝はパンしか食べないのに、とボヤく智子へ、決意とともにある事をお願いする。
一度は自分が作り上げた夢だと納得出来たが、どうしても二つの疑問が残り、その疑問を解く手掛かりが欲しかったのだ。
一つは、佐山先生。あれは何かを隠している顔だった。あの表情が私の夢だけで全ては片付けられない事を物語っている。
もう一つは、自殺の真相。智子はあくまで噂だと言う。もし私がその噂をどこかで耳にしていたとするなら、その噂話ももっとはっきりした輪郭を持っているはずだ。
「昨日言ってたあの話に詳しい子、紹介してくれない?」
「んー、おっけ。ちっと待ってね。」そう言うが早いか、メールをする智子。人見知りするタイプの私は会ってどう聞いたらいいのだろうか急に不安になる。
初対面でいきなり幽霊の噂話をするとか頭がサイコな子に思われないだろうか。そんな事を思いながら溜息をつくと智子の携帯に着信音が鳴る。
「おっけ。今日部活で登校するから、お昼一緒に食べようってさ。でもどうしたの?まさか・・・怖い夢見ちゃった?」と笑みを浮かべる智子。
朝の失態を見られて急に気恥ずかしくなった私は返事の代わりにいじわるな智子の朝食に添えられていた水気の飛んだイチゴを一つ箸でつまみ口に入れる。
「ひどい・・・本気で楽しみにしてたのに・・・」と心から落胆する智子に「ご馳走様でした」と言い渡し席を立った。
身支度を終え、教室に向かう。午前の内容は私の追試とは関係ないもので、参加は免除されていたが智子が寂しいとかいうので教室で本を読むことにした。
図書室で借りた推理小説を読み進めて行くうち、とあるページに何か落書きがしてあるのを見つける。
「犯人は教授。」
そのまま本を閉じ机に伏せこみ、深い溜息とともに犯人を呪った。教授じゃなくこの馬鹿な落書きをした糞ったれの犯人を。
時計は間もなくお昼を指そうとしていた。頭が痛い。
この場所から見える風景。あの日、どんな思いでここに立ったのか。どんな思いでこの風景を見たのか。
私はやり場の無い怒りに苛まれる。
何故こんなに苦しまなければならないのか。何故こんなに哀しいのか。
理由はわかっている。が、どうする事も出来ないのだ。
この場所に立ち、ここからこの風景を見ることくらいしか私には出来なかったのだ。
グラウンドで必死にボールを追いかける野球部。プールで競いあう水泳部。走り続ける陸上部。
この場所から見る風景はまるで現実感がない。
夕闇迫る中、ふと下を見ると二人組の女子生徒が歩いてくる。
その一人と目が合う。
不思議そうに私の事を見つめる目。綺麗な目。柔らかそうな唇。
もし私と彼女が親友だったら、私の気持ちを理解して貰えるだろうか。
・・・いや駄目だろう。
もう決めた事だから。
それでも内にある迷いが私の心を揺り動かしている。
私は溜息をつき、空を見上げる。
すでに夏の恒星がチラホラと輝いていた。
智子の友達は私の心配が杞憂に思えるくらい、明るい子だった。
券売機で冷やし中華を購入し、大きな声で「オバちゃん!お酢、大目にね!」と注文をつける。学食のオバちゃんも笑顔でそれに答える。
彼女は智子と並んで座り、私は彼女の前に座った。
お互いに自己紹介し、食事を始める。彼女はナカガワリョウコと名乗った。リョウコは良い子だよ、と洒落なのか漢字を教えたのかわからない微妙な事を智子が言う。
そういえば新体操部と言ったっけ。学校指定ジャージの下にレオタードを着ているのがわかった。さすがにレオタードで校内をうろつく訳にはいかないようだ。
豪快に冷やし中華を啜り、そして豪快にむせ返りながら「すっぱい」と顔をしかめる。
酢をあれだけ入れればこうなるのは明白じゃなかろうか。
「お酢はね、体を柔らかくするんだって婆ちゃんが言ってた。」と説明する彼女。それ、科学的根拠が無いらしいよと言いかけたが、気持ちはわからなくもないのでやめておく。
私もきつねうどんを食べ終え、彼女が食べ終わるのを待つ。
「で、3サイズと好きなタイプが知りたいんだっけ?」・・・どんなメールを送ったんだこの子は。初対面の女子が3サイズ聞くか?
智子のかわりに弁解し、本題に移る。
「あー・・。アレか、あの話かー」一瞬で明るい顔が陰った。この反応は何だろう。
「私から聞いたって言いふらすのはやめてよね。」と、釘を刺しながら小声で話はじめる。
「これは噂じゃなくて、実際にあった話。5年前にね。」
5年前の夏の夜。一人の女生徒がクラブハウスの屋上から身投げした。理由は不明、遺書はなかった。発見者は宿直の先生。
落下地点は植栽の、花が咲いている場所。そう言われて、あそこだけ何故花なのかが理解できた。
当時はマスコミが来て報道もされたらしいが、夕方のニュースになっただけでそれ以降は何も無かった。
学校側も遺族も大げさにしたくなかったらしく、始業式の朝礼で事故で亡くなったという事にされ、黙祷したくらいで大きな騒ぎを避ける事が出来た。
遺族のほうは自殺したなどと言われ好奇の目で晒されるよりかは事故として扱ってもらった方が良かったのだろう。
学校としても生徒が学校内で自殺をしたと知られればそのダメージは計り知れない。双方合意による、大人の都合という奴だ。
そしてそれから不審な事が起こるようにる。
まず発見者の先生がノイローゼになり、転勤する。噂好きの女子の中ではその子の呪いと噂がたった。
その後、遠征でクラブハウスに泊まった他校の生徒が幽霊を目撃したという噂が広まる。
宿直制も事情を知る先生方が敬遠し、警備会社へ依頼するようになったという。
しかしそういった噂もしばらくして沈静化し、その在校生が卒業してしまえば都市伝説のような七不思議として残るだけとなる。
ここまで一気に噂について語った良子が深い溜息をつき、私の目を見ながらこう言った。
「この自殺した人、山吹美咲さん。私の知ってる人なの」
ガツンと何かに殴られたような衝撃だった。知り合いの知り合いでお茶を濁すのがこういった噂話のセオリーな訳で。
「いわゆるご近所さんでね。ちょろっと色々あって、一緒によく遊んでもらったのよ」
モノクロだった話が急速に色を帯びる。実在した人物。少なくとも良子が嘘を言っているようには思えなかった。
聞いてはいけない質問だったが私は覚悟を決め、問おうとする。
「いやー、色が白くてねー、黒髪が似合ってて、優しくて綺麗な人だったよ」
私が質問する前に良子が答えてくれた。やはりそうだ。その容姿と屋上の彼女、夢の中の彼女が一致する。彼女が山吹美咲なのだ。
私は面識が無いにも関わらず彼女を見ていた。屋上で。夢の中で。何だろうこれは。山吹美咲は私に何かして欲しいのだろうか。
良子の表情が陰った理由も解り、申し訳なく思った。誰だってお世話になった人の死を噂話にしたくないはずだ。
「だからさ、この話はあまり広めないで欲しいんだなー。ちょっと色々あってさ。私から聞いたってのもダメだからね。」
そういいながら周囲を伺う良子にどこか不自然さを感じたがそれは固く約束し、彼女は部活に戻っていった。
「ねえ、何でそんなに気にかかってるの?」良子が去ったあと、お茶を飲みながら私に問いかける。
私が見た事や夢の事を智子に話たら彼女はどう思うだろう。私を笑うだろうか。私を怖がるだろうか。
「何でだろう?」微笑んでそう答える他無かった。多分、本当に怖いのは友達を失う事だから。
あの幽霊、山吹美咲が何を求めているのか、答えが見つからない。
夢の中では助けてと言っていたが、何をどうすべきなのか。死んだ人間を助ける術なんてあるのだろうか。
自縛霊として現在も死の瞬間を繰り返す彼女を救う事。自分の死を受け入れさせる事。
しかし私にはその正しい作法なんか知る由も無い。必死に考え何とか見つかった答えは、花を手向け、彼女の冥福を祈る事くらいなものだった。
私が受ける英語の追試まではまだまだ時間がある事を確認し、智子に少し遅れて教室に戻るからと伝え、駅前の花屋に向かう事にした。
長い下り坂を駅前に向い、木陰を選びながら歩く。それでも夏の日差しは容赦なく私の肌を突き刺す。暑いと言い始めれば限が無いので違うことを考えよう。今年はどこかに行こうかな。去年は受験だったので図書館くらいしか思い出がない。
もうすぐ16歳だ。私だって彼氏の一人くらい欲しい。理想を述べるなら、背が高くて、頭が良くて、清潔で、優しくて、でも厳しさも持ち合わせていて、眼鏡が似合って、顔も人並みより少し格好よくて、私を好きで居てくれる人。
そこまで考えて自分でも思わず笑ってしまう。これだけ注文の多い女は向こうからお断りだろう。こんなだから彼氏出来ないんだろうな。
そんな事を考えながら歩くと、意外にも早く花屋さんに着いた。若い女性の店員が店先の花に水をやっていたので、お供え用として見繕ってもらう。
こんな感じかしら、と作って貰った束は高砂百合とかすみ草だった。今日はお客さん少ないからと、少し値引きしてくれたので感謝して代金を支払い学校へ戻る。
帰りの坂道は暑さもピークの時間帯であった為に倒れこみそうになるくらいきつかったが、ほんのりと甘い百合の香りが私を支えてくれた。
彼女が発見された場所へ着くと、私はその花束を供え、両手を合わせた。
私はアナタの事を何も知らないし、何もしてあげられないけど。アナタの苦しみを理解してあげられないからこんな事くらいしか出来ないけど。でもどうか、心安らかにお眠り下さい。
私は彼女の為に祈りを捧げ、教室に戻る。クラブハウスを見上げたが、彼女の姿はなかった。届いただろうか。届いて欲しい。
皆の邪魔をしないように静かに教室のドアをあけ、必死で睡魔と戦う智子に気付かれないよう席につく。
間もなく補習が終わり、次の時間は英語の追試だ。チャイムが鳴るまで念のために復習する。特別苦手な訳ではなかったのでさほど心配する事もない。
そしてその英語のテストも時間を結構残したまま回答を埋める事が出来た。イージーミスの見直しだけして、ぼんやり外を見ながら時が過ぎるのを待つ。
外では野球部が相も変わらずボールを追いかけている。それを遠目に見ながら物思いに耽る。
私は何の為に勉強しているんだろう。将来の夢なんて漠然としすぎてわからない。適当に進学して適当な会社に入り、その間にいくつか恋愛をしていずれ結婚し、子供を産み老いて行くのだろう。
まるで実感がない。子供の頃の夢、何だっけ。ああ。思い出した。インディ・ジョーンズだ。夢というか、憧れの人?
世界には私の知らないとんでもない秘密が隠されており、いつか私が海に山にと駆け巡り、その謎に挑戦するのだ。
確か小学3年生の頃にそんな作文を書いて父兄参観に来ていた母を赤面させた事があった。思い返すと死にたくなるほど恥ずかしいが。
私は現実を少し冷めた目で見る節があり、いつも何か特別な事が起こる事を願っている。
そしてその思いに至った時、私はある事に気付いてしまう。
私は心のどこかで今も何か非日常的な事が起こる事を望んでいるのではないか。
今回の件にしてもそうだ。私は怖い、気味が悪いと思う反面、この状況を心のどこかで楽しみ、期待している。
不思議な夢を見た事も「私が選ばれた」事として喜んでいるのではないだろうか。花を手向ける事で彼女の物語の登場人物となり、自分に酔いたいのではないか。
馬鹿な。人が死んでいるんだ。私は傍観者であり、自らの死をもって完結した彼女の物語に土足で踏み入れる事などできない。
心から冥福を祈る?彼女を救いたい?。彼女の苦悩を理解したい?
全部違う。私はただの野次馬根性丸出しの覗き魔なのだ。
そしてやってくる激しい自己嫌悪。
認めたくない。私自身が卑下すべき人間である事を認めたくない。
目が回る。クラクラする。逃げ出したい。
気付けばテストが終わっており、私はその場から逃げるように教室を出て保健室に向かった。
保健室に向かう途中、自分でも気付かない内に泣いていた。
保健室から出てきた生徒とすれ違ったが、泣き顔を見られたくなかったので下を向いてやり過ごす。その人は私が泣いているのに気付いたのか、振り返ったようだが私は早足で立ち去った。
部屋の前で涙を拭き、入室する。鍵はあいていたが中に佐山先生の姿はなかった。
私は窓際のベッドで横になる。何も考えたくない。このまま自己批判を続けたらどうにかなってしまいそうだった。
シャツのボタンを緩め少し胸が解放され楽になる。深く布団をかぶり雑念を振り払う。
いい匂いがする。淡い柑橘系の香水。優しい香り。私の前にさっきの子が寝ていたのかな。
知らない誰かに優しく抱かれているような錯覚を覚え、それが心地よかった。
どれだけ時間が経ったのだろう。気付くと満天の星空の下、屋上に居た。
これは夢か。見渡すと、一人の少女がフェンスを背に座り夜空を見上げていた。
山吹美咲。
私は静かに彼女まで歩き、隣に座り、同じく天を仰ぐ。不思議と怖いとは思わなかった。
満天の星空の中、白鳥座のデネブが白く輝いており、星がこんなに綺麗だという事を改めて思い知る。
まるで夢の中のようだ、と思った所で夢である事を思い出し苦笑する。
そんな私を不思議そうな顔をして美咲が覗き込む。背中まで伸びる美しい黒髪。白い肌。長い睫。愛らしい唇。
彼女の細くてしなやかな手がすーっと伸びて私の頬を触り、私の涙を優しくふき取る。スローモーションのように彼女の顔が近くなり、唇と唇が触れ合った。
軽く、長いキス。そこから溢れる想いは、悲しみだった。
彼女の唇が離れ、その時間が終わりを告げる。
目をあけると、最初に見た夢と同じく彼女の表情は暗く、ある一点を見つめていた。
その視線の先を追っても私には何もない暗い空間が広がるだけ。
彼女は立ち上がり、その方向を見つめながら後ずさる。彼女の体がフェンスをすり抜ける。幻のように。
まさか。やめてくれ。もういいんだ。もうアナタがそんな事を繰り返す必要はない。お願い、やめて。
その視線の先に一言、ごめんなさい。と呟き、彼女の体は宙を舞った。私はそれを呆然と、見送った。
目を覚ますとすでに夕方だった。まだ明るいが完全に寝ていたようだ。チャイムが鳴り、カタリ、と誰かが立ち上がる音がしてカーテンが開けられる。
「起きた?大丈夫?」佐山先生だった。
「びっくりしたわよ。職員室から戻ったらアナタが寝てるんだもの。」先生はひんやりした手のひらを私の額に当てる。
「ん、熱は無いみたいね。でも念の為、はい。」体温計を受け取り、胸の隙間から脇に刺す。
体温を測る間、保健室で寝ていた経緯を説明した。夏バテか、寝不足かしらと優しく笑う先生。
この笑顔で何人の男子生徒が彼女の虜になったことだろう。一部の女子生徒からも多大な人気を誇る先生だ。あんな夢を見たからだろうか。先生の唇を意識して赤面してしまった。
「怖い夢を見ました」自然と口から漏れる。先生は冷蔵庫から麦茶を取り出し、コップに注いでいる。
「先生は山吹美咲って生徒をご存知ですか?」何でこんな質問をしたのか。口に出してから後悔する。
先生は一瞬ピクリと肩を動かしたが、何も無かったように麦茶を冷蔵庫にしまう。
「・・・知ってるわ。」コップを一つ、私に渡してくれた。
一口麦茶を飲んで私は決意し先生に夢の話と屋上で下から見上げた少女の事を少しづつ語る。
「不思議な事もあるものね。」そういうと先生は優しく、また少し悲しそうに微笑んだ。
「私がこの学校に来たのは6年前。彼女は2年生だった。」私の話を真剣に聞いてくれた後、先生は語り始める。
貧血気味でよく保健室の世話になっていた彼女と先生はすぐに仲良くなった。大人しい性格で、なかなか新しいクラスに馴染めない。
そんな相談を受けたり、勉強を教えたり。とても綺麗な子で男子生徒からも人気があったけど、そんな性格からかなかなかハードルが高い子だった。
保健室の常連で私と仲良くしてるのを見て、同性愛者と噂がたったり。でも彼女の名誉の為に言うけど、決してそんな事は無かったわ。
彼女は星を見るのが好きで、たまに一緒に屋上から星を見たりした。どこか、放っておけない子。妹みたいで可愛かったから。
先生は遠く昔の事のように彼女の思い出を語る。私の知らない山吹美咲がまた少し色をつける。
年が明けて冬休みが終わり、学校が始まると彼女は恥ずかしそうに私に報告に来た。彼氏が出来たって。
私も自分の事のように喜んだわ。ウチの妹にも好きな人が出来たんだ、ってね。お節介だったかも知れないけど念の為に避妊の大切さを教えたりした。
彼女はそれから暫らく、保健室には来なかった。彼氏が出来たんだもの普通なら幸せいっぱいだよね。私はちょっとだけ寂しかったけど、彼女が幸せならそれが一番だと思っていた。
「でも、それは間違いだったのかも知れない。」
久々に校内で見た彼女は暗く、悲しい目をしていた。私の前では明るく振舞っていたけど、私に心配かけたくなかったのかも知れない。
彼女は3年に進級し、目に見えて暗い表情をするようになったが私に相談しに来ることは無かった。
5月の連休前、保健室を訪れた彼女。泣いていたわ。ここから先は、想像にお任せするけど、とても辛い選択を選ばなければならなかった。
それでも彼女は誰と付き合っているのか、その人の素性だけは明かさなかったの。
そして夏休みのある夜、彼女は。
気付くと先生の声は震え、目には涙が溜まっていた。先生の後悔が棘となり私の胸を冷たく刺す。
先生が落ち着くのを待って二人で保健室を出る。
「加藤さん、あなたの夢に出てきた子は、この子でしょう?」薄暗い廊下で、先生は定期入れからパウチングされた写真を取り出す。
山吹美咲と先生。二人の笑顔が写った写真。まさしく、彼女だ。
「この話はアナタの胸に閉まっておいて。言いふらすような真似はしないでね。」
「変な噂が立って故人を辱める事は、私にとっても悲しい。でも、私なんかよりもっと悲しい人が居るのだから。」
先程も誰かに言われたような既視感を覚える。誰だっけ。
「もし何かを見ても、知らないフリをする礼儀ってものもあるのよ。」去り際に先生が残した言葉。
それは一体、何に対してだろうか。幽霊?
私は美咲が死んだ後も無意味に苦しむ姿は見たくない。これが本当の意味で素直な気持ちだった。
自縛霊としてあの場所に留まり、何度も何度も死を繰り返すだけの存在になってしまっているとしたら。救いが無さ過ぎる。
一応、智子が居るかも知れないので食堂を見に行ったが姿は無かった。
すっかり暗くなってしまった。クラブハウスへ向かう途中、グラウンドでは野球部がトンボかけをしている。今日の練習はこれまでなのだろう。
建物へ近づくにつれ、暗い考えが頭の中を駆け巡る。
美咲の自殺の背景。先生の言い回しから察するに恐らくは、妊娠で思い悩んでいたのではないだろうか。
多分正解だろう。そして中絶を決断した。その事を苦に飛び降りたのだろうか。
ごめんなさい。彼女の最期の言葉。あれは母としてなのか。愛する人の子を産めなかった事についてなのだろうか。
いずれにせよ、悲しい話だ。私以上に先生は辛かっただろう。妹のように思っていた人の死。自殺を止められなかった罪悪感。
美咲の事を知れば知るほど、どこに救いがあるのかわからなくなる。やはり、私には何も出来ないのだ。
そんな事を考えながら歩いていると、気付けばクラブハウスまで来ていた。
もう一度、手を合わせておこう。
再度その場所に立ち、手を合わせる。
あれ、ない。
私が手向けたはずの百合の花束がない。辺りを見回しても、やはりない。
誰かが悪戯したのか?悪趣味な。どこへ行った?誰が持ち去った?
ふと、頭上を見る。
誰もいないはずの屋上に彼女がいた。山吹美咲が。黒い髪を靡かせながら。
また飛び降りるつもりだろうか。いやそんな事はさせない。今度こそ、とめてみせる。
考えるより先に走り出す。革靴を脱ぎ、スリッパも履かずにクラブハウスの中へ。屋上へ。
階段を駆け上がる。1階から2階へ。2階から3階へ。会ってどうする。気付かないフリをするのも礼儀だって?
彼女が幻だろうが幽霊だろうがとめてみせる。3階から4階へ。4階から屋上へ駆け上がる。
そこに天国への扉があった。
ここまで来て、もし鍵がかかっていたらという不安が頭を過ぎる。
呼吸を整え、一度大きく深呼吸して、息を呑む。そっとドアノブに手をかける。お願い。開いて。
喪中氏なんかトリップ変わってるよw
っC
結構いい
私怨
再紫煙
つ、つづきをくれ・・・・・・
180 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/22(火) 01:51:03 ID:lEXSRpQBO
いや、もう沢山。
久々の良作
文章もしっかりしていて、こんなところに投下するのは正直もったいないと思う
しかし続きを期待!
182 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/22(火) 09:24:19 ID:Y66XCQ9S0
話がありきたり。
先の予想が容易。
アマ根性丸出し。
長いのは全く読む気がしない。
それより
>>150の続きが見たい。
幽霊とキマシタワーな展開にパンツ下ろして待機するしかないだろjk
>>150ツヅキ
店の中で本を物色していて気がついたのだが、どうにも横文字なタイトルの本ばかりが目につく。しかもどれも相当に古い。中には革表紙のものもちらほら見受けられた。
どうやら僕にはちょっと読めそうにもないものばかりだ。本に値段を示すものが一切ないのも気になった。
「どういったものをお探し?」
レジの女性から声をかけられる。
「あ…いえ、その…」
まさか中学時代に好んで読んでいた伝奇SF作家の名前を、この店の偉そうな本達を前にして口に出す勇気はない。
オロオロしてる僕の様子を見て、さもありなんといった感じで話を繋げてくれた。
「この店はね、ちょっと特殊な本ばかりが置いてあるの。そうね、一口で言えば魔術書の類ね。錬金術関係や宗教関係もあるけど…」
そこで一旦口を閉じ、改めて僕のことを見つめた。
「ふふ。変な店でしょ?あなた好みの本はないかもしれないわね」
「そうなんですか…。すごいですね…」
何がすごいのかもわからず感想を口にする。魔術書?錬金術?一体全体なんのためにそんな本ばかりを…。
もしかしたら来てはいけない店に入ってしまったのかもしれない。適当に謝ってすぐに店を出よう。そう決心し、行動に移そうとした時だった。
「とはいえ、この店が見えて入ってきたお客様ですもの。おもてなしはしなきゃいけないわね」
「?」
「そうねぇ…あの本だったら大丈夫かしら。あぁでも初心者じゃ魂が抜かれて終わりかしら。だとしたら…」
一人で何事か物騒な事を呟きながら、本棚を探し回っている。
これはいけない。多分妖しい宗教かなにかの店だ。古本屋の装いをしているのは僕みたいな知らずに入ってくる客に警戒心を抱かせないためだ。
女性が本探しに夢中になっている隙に逃げようと、じりじりと扉に近付いていく。
あとちょっとだ…。そっと手を伸ばし取手に手をかける。よし!脱出出来る!そう確信した瞬間だった。
「あった!これならあなたでも大丈夫でしょう」
ふいに大きな声を聞いた僕は驚きのあまり取手から手を離してしまっていた。
ツヅク
日付またいでさるが解除された途端トリップが変化したのだけど・・・。
横入りしたみたいで申し訳ないので ”灯鳴堂” さん支援
>>150 >>185
両方とも期待
意を決してドアノブを回すと、驚くほどあっさりと開いた。鍵はかかっていなかった。
そして目視15メートル先に彼女が静かに佇んでいた。月明かりが彼女を照らす。この世のものとは思えない程、幻想的で美しかった。いや、この世のものでは無いからこそ、か。
私は一歩、歩み寄る。表情までは読み取れないが、彼女も私を見ている。ゆっくり歩みを進める。一歩、一歩。
彼女まで10メートル。お互いの表情が見える所まで来た。
「お願いだから、もうやめて。」彼女に言葉を投げかける。
一瞬、驚いた表情をした美咲。私の言葉が届いたのだろうか。もう一歩距離を詰める。
「美咲さん、あなたはもう死んでいるの。繰り返さないでいいの。」更に言葉を投げかける。
少しの沈黙と考え込むような表情をして、彼女は口を開いた。
「・・・・死んでいる?」夢の通り、とても綺麗な声だ。良かった。会話が出来る。私の言葉は彼女に届くし、彼女の声を私は聞くことが出来る。
「アナタは、誰?」彼女が私に問いかける。
「私の名前は加藤里絵子。」彼女の問いかけに答える。落ち着け。落ち着け。落ち着け。
「美咲さん、あなたは5年前、ここで死を選んだの。覚えている?」
「ええ、覚えているわ。でも何故アナタはそれを知っているの?」
「あなたの夢を見たのよ。夢の中で、あなたはそこから、飛び降りた。」
今までほとんど無表情を保っていた美咲の顔が驚きを見せる。生きている人間と何が違うんだろう。
「それでは、アナタがこの花を?私の為に?」彼女の足元に、私が彼女の為に手向けた花が置いてあった。花と・・・あれは、本?
「そう。あなたを想って花を贈った。半分は確かに興味本位だった。でもあなたの事を心から祈ったのは本当よ。」
「それで、私の苦悩は理解出来たかしら。」
「正直、わからないわ。いくら考えても、答えには辿りつけなかった。でも、あなたを少しでも理解しようと私なりに考えた。」
「そう、それじゃ、アナタは何をしにここに来たの?」
「あなたを、救う為に」
その言葉を聞いた美咲はキョトンとした顔の後、吹き出した。私は幽霊でも笑うのか、という疑問はもう持たなかった。
その笑いがいつしか嗚咽に変わっていた。泣いている。涙を流している。
誰が花を供えてくれたのだろうか。佐山先生だろうか。
今でも想ってくれる人が居る事に、少しだけ救われた気がする。
もうあれから5年も経っているんだ。その年月が過ぎても、私の心が晴れる事はなかった。
階段を駆け上がる音が聞こえる。段々近付いてくるのがわかる。誰だろう。
私は振り返り、扉を見つめる。やがてその曇りガラスに人影が映る。
ガチャリ、と音を立てて扉が開いた。そこには息を切らして私を見る、女の子が居た。
昨日、ここから歩いているのを見かけたあの子だ。先程も、保健室の前ですれ違った。泣いていたように見えたけど。
「お願いだから、もうやめて。」
唐突に彼女が私に向け言葉を投げかける。説得するような、懇願するような、そんな言葉。
「美咲さん、あなたはもう死んでいるの。繰り返さないでいいの。」
その一言で理解した。この子は事情を知っている。恐らくは佐山先生あたりに聞いたのだろう。誰かに言う人では無いと思っていたが、やはり一人の人間だ。
私は真剣なその子の口ぶりに、話を合わせて少しからかってやろうと思った。
「死んでいる?アナタは、誰?」
「私の名前は加藤里絵子。」多分、特待科か普通科の子だろう。
「美咲さん、あなたは5年前、ここで死を選んだの。覚えている?」
「ええ、覚えているわ。でも何故アナタはそれを知っているの?」どうせ噂を興味本位で聞いて回ったに違いない。くだらない。
「あなたの夢を見たのよ。夢の中であなたはそこから、飛び降りた。」
夢の中で?どうして?無関係のアナタが?私は驚きを隠す事ができなかった。
「それでは、アナタがこの花を?私の為に?」
「そう。あなたを想って花を贈った。半分は、確かに興味本位だった。でもあなたの事を心から祈ったのは本当よ。」この百合は、この子が・・・。
「それで、私の苦悩は理解出来たかしら。」
「正直、わからないわ。いくら考えても、答えには辿りつけなかった。でも、あなたを少しでも理解しようと私なりに考えた。」
「そう、それじゃ、アナタは何をしにここに来たの?」
「あなたを、救う為に」
私を、救う為に。何て恥ずかしい事を言う子なんだろうと思う。思わず素に戻り、吹き出してしまった。
でも、演技にはとても思えない、彼女の本心からくる言葉が嬉しくて。本当に嬉しくて。泣いた。
彼女はその場で崩れ落ち、感情のままに泣いた。どれくらい泣いていただろう。私は黙ってその姿を見ていた。
彼女が泣きやむのを待って、最大の疑問を投げかける。
「アナタは誰なの?」
そう。生きているのだ。この幽霊は。髪型、顔の形、肌の白さは間違いなく写真で見た山吹美咲その人だ。
でも生きている。この場所に実在する。私は担がれたのだろうか。良子に。佐山先生に。山吹美咲本人に。
「ここで死んだのは、私の姉よ。」
一気に私の中の疑問が氷解する。
「私は澤岡美里。以前の名前は山吹美里。アナタと同じ1年。勿論、人間よ。」
今まで気付かなかったが、よく見ると同じ一年のリボンをしている。
妹が居たとは知らなかった。良子も先生も一切そんな話はしていなかった。しかし思い返すと、美里の存在は彼女達の話の中の違和感として存在していた。
『だからさ、この話はあまり広めないで欲しいんだなー。ちょっと色々あってさ。私から聞いたってのもダメだからね。』
『変な噂が立って故人を辱める事は、私にとっても悲しい。でも、私なんかよりもっと悲しい人が居るのだから。』
良子は美里と当然顔見知りであり、同級生であり、家に遊びに行く仲だったのだ。あれは美里を気遣っての言葉だったのだろう。
先生は先生で、私が屋上で見た人物が美里である事を確信していた。土足で踏み入れてはならない領域を遠回しに注意してくれていたのだ。
「加藤さん怖がらせてごめんなさい。話、聞いてくれる?」
私達はフェンスにもたれかかって座り、美里が語る言葉に耳を傾ける。
私の名前は美里。私には5つ離れた姉が居た。それが自殺した美咲。幼い頃から私はお姉ちゃん子で、いつも姉さんの後ろをついて回っていた。本当に大好きだった。
小学生になってもそれは変わらず、中学生の姉さんを困らせた。私が駄々をこねるから、姉さんは部活にも参加しなかった。多分、仲の良い友達の誘いを断って私と遊んでくれていたんだと思う。
私が高学年になり、姉さんが高校生になってもその関係は変わらなかった。いつでも私と一緒。私は嬉しかったが果たして姉さんも同じだっただろうか。
でも当時の私はそんな事を考えられなかった。姉さんも私と一緒に居て幸せだと、心の底から信じていた。
ある冬から姉が遅く帰ってくるようになった。今まで夕方には家に帰り、私と遊んでくれていたのに。夕飯の時間になっても帰って来なくなった。最初は週に一度くらい。それから一ヶ月もすると週三度になり、帰る時間も徐々に遅くなっていった。
姉さんは両親に天文部で夜の観察会があると言ってた。実際、先生と一緒の写真を見せたりして、親を安心させていた。
だけど私は信じなかった。姉さんは私と一緒に居る事が苦痛になったんだ。私は姉さんに嫌われてしまったと思い、毎日泣いた。
毎年5月の連休は家族と旅行をしていた。それを期に姉と仲直りするつもりだった。今までごめんなさいと素直に謝ろうと思った。
でもその旅行の前に、姉さんと両親が大喧嘩して中止になってしまった。今まで見た事ないほど、父と母は怒っていた。いつも優しい父が姉さんを叩いた。優しい母が姉さんを庇おうともしない。
そんな喧嘩ははじめてだったので私は怖くなり、自分の部屋で泣いた。
連休中も姉さんは遅く帰ってきたり、帰って来ない日もあった。もう父も母も姉さんと会話をしていなかった。そんな毎日が続き、私は姉さんと話をするタイミングを完全に失ってしまった。
そしてその年の夏休み、その機会は永遠に失ってしまった。
朝の4時頃、警察から連絡があり、父と母は血相をかえて家を出て行った。とんでもない胸騒ぎがしたが、私は連れて行って貰えなかった。
怖くなり姉さんの部屋に入り姿を探したが、今日も帰っていなかった。私は姉のベッドに潜り込んで寝ようとしたが、胸騒ぎと足の震えで眠れなかった。
昼前に母だけが帰宅し、私の為に食事を作ってくれた。血の気が完全に引いていて、作っている時も私が食べている時も、一言も口をきいてもらえなかった。
居間に居づらかったので、私は姉さんの部屋にひきこもった。暫らくして、下から母の号泣が聞こえた。そんな母の泣き声で私はようやく何が起こったかを理解した。認めたくはなかったが。
夕方、父が帰宅するとその足で私達は警察署へ連れて行かれた。向かった先は地下だった。
白い布を被せられた姉の亡骸。全く現実感が無かった。
姉さんが死亡に至った経緯が説明された。
姉さんは4階建てのクラブハウスから飛び降りた。しかし即死は叶わなかった。今、その下にある低木の植栽は当時は一面桜の木だった。
姉さんは2階ほどの高さで一度太い枝に引っ掛かったが、その衝撃で枝が折れ、他の枝を巻き込み再度落下した。
地面に激突した時、その巻き込んだ枝は姉さんの体を背中から刺し貫いた。状況からして飛び降りた時間は深夜2時頃。発見者は宿直の先生で3時半。
そして驚くべき事にその先生が発見した時、姉さんはまだ息があったのだ。
背中から枝が貫かれ大量に失血して、全身を強打しあらゆる骨がバラバラになってもなお、意識があったのだ。
その先生は即救急車を呼び、姉さんの名前を大声で呼び続けながら手を握っていてくれたらしい。
しかし、救急車の到着を待たずして姉さんは息を引き取った。最期の言葉は「ごめんなさい」だったそうだ。午前3時40分。姉さんは死んだ。
長い沈黙。かけるべき言葉が見つからない。
夜空の星を見上げながら、私は込み上げる涙を抑える事が出来なかった。
桜の木は全て、夏休みが終わるまでに抜いてしまったそうよ。そして、あの低木が植えられた。まるで証拠の隠滅みたいに。皆が姉さんの事を忘れたいが為だけに。
そして、この下の花はね。懇意にしてくれていた佐山先生が今でも手を入れてくれていたの。姉さんの事をいつまでも忘れないようにと。
それから私は、姉さんの死がどうしても受け入れられなくて中学2年まで不登校になった。
父と母は互いに自責の念に苛み、うまくいかなくなった。そして離婚。私は母に連れられて母の実家に入ったの。
「もうどうにでもなれって感じだった。あの日、姉さんの日記を読むまでは。」
今までと打って変わってその冷酷な口調にゾクリとする。姉を慈しむ優しい口調に憎悪の火が灯るのを感じた。
火葬される時、身の回りの物を一緒に棺に入れるでしょ。それを母が選ぶ前に、私は姉の部屋に隠された一冊の日記帳を見つけた。
姉さんが死ぬ前につけていた日記。それがコレ。
美里は床に置いてあった革表紙の日記帳を指差して見せた。革のベルトが巻かれており、鍵がついて本来は見れないようになっている。しかしそのベルトは鋭利な刃物によって切られていた。
私は中学2年の時、その日記の存在を思い出した。鍵がどこにも見当たらなくてね。壊してまでして見ようとは思っていなかったし。
その当時、毎日家に引き篭もっていたから髪はボサボサ、肌はカサカサで、鏡を見る度に死にたかった。そこに写るのはあの綺麗だった姉さんの妹じゃなかった。だから、死ぬ前に、読んでみようと思ったのよ。
死ぬ前に?冗談に聞こえない。目が笑っていない。
それを読んで、私は姉さんに愛されていた事を知ったわ。私を嫌いになんてなってなかった。本当に嬉しくて、救われた気になった。
でも代わりに、姉の本当の苦しみを知ってしまったの。私は、復讐こそが姉さんの魂を救う事だと理解したの。
重い空気が足元に纏わりつく。この子、やっぱり少しおかしい。
「加藤さん、あなたに理解できるかしら。理解しようとする勇気、ある?」
美里は足元の日記を拾いあげると、私に差し出す。
「あなたは姉さんの夢を見た。これはきっと、姉さんがあなたにも理解して欲しいと願っているからなのよ。」
「読んでも読まなくてもいい。あなたにあげるわ。私にはもう必要ないから。」
そういうと、美里は階段のほうへと歩き出す。そして思い出したように振り返り
「忘れてた。姉さんの為にお花を供えてくれて、ありがとう。嬉しかったよ。」
そう言い終えると、足早に去っていった。姿が完全に消えるのを見届けて、全身が脱力する。
彼女は幽霊ではかった。しかしそこに居たのは紛れも無く、山吹美咲の亡霊だった。
私は振り返り下を覗き、想像する。美咲はここから飛び降りて、一度桜の木に引っ掛かり再度落下したという。
普通、この高さから飛び降りれば即死だろう。木に引っ掛かり助かった、ならまだ救いがある。
そして神はただでは死なせなかった。自殺という行為こそが罰するべき罪なように、彼女を串刺しにし地面に叩きつける。
すぐには死なさず、長い時間苦しめてから死に至らせる。これを罰とするならば、それこそが罪に思えてならない。
私はこの日記を読むべきか読まざるべきか。残された百合の花から、甘い匂いが漂う。
この日記は、美咲が死へと向かう全貌が書かれており、恐らく死の前日まで続いている。
読む勇気はあるか。
読むにしろ考えるにしろ、とりあえず汗を流してからだ。
一人になった屋上で私は呟き、一呼吸してから革の日記帳を抱え、下へ向かう。
着替えをとりに部屋に行くと、すでにお風呂からあがった智子が居た。突然教室から居なくなった事を非難されたが、気分が悪くて保健室に行っていた事を伝えると逆に心配してくれた。
お風呂からあがったのに化粧をしている智子に、どこか行くの?と尋ねると、最後の夜だからみんなで花火をするという。先生も公認らしい。
私も智子に誘われたがまだ体調が悪いからと断り、智子も納得してくれた。
脱衣所の鏡の前で美里の事を思いだす。
まさか生きている人間を幽霊と間違えるなんて。これだけ偶然が重なったとはいえ、今もきつねにつままれた思いだ。
本当に綺麗な子だった。佐山先生に見せられた美咲の写真と瓜二つだった。美里という人間が本当に居るのだろうかと不安になる。
しかしあれは人間だ。良子や佐山先生が言うとおり、美咲は5年前に死んでいる。嘘をつく理由がない。
湯船に鼻まで浸かり、また考える。
私が見た夢もなんだか妙だ。美里は、美咲が私にも理解して欲しくて夢を見せたのだと言っていた。果たして本当にそんな事があり得るのだろうか。
死んだ者が枕元に立つというのは良く聞く話だけど。それが20名以上も寝泊りしている中で、私だけである事の意味がわからない。結局、私にどうしろと。
いくら自問自答しても答えは出なかったが、私はこう考えるようにした。
美里は姉の秘密という痛みを背負い続け、たった一人で苦しんでいるのだ。美咲の秘密を共有し、私が美里の理解者になる。私が味方になる。一人で背負う痛みも、二人で分け合えばきっと楽になれるのだ。
なんだ、私にも出来る事があるじゃないか。つまり、そんな感じだ。
妙に納得し、お風呂からあがる。濡れた体をタオルで拭き、新しい下着に足を通し、Tシャツとジャージに着替える。
自販機でジュースを買い、部屋に戻ると丁度智子が外に出る所だった。
「少し遅くなるかも知れないから、先に寝ててね」と智子。
かも知れないって?と聞き返すと、男女が夏の夜に花火をするんだから、何があるかわからないじゃない、という答え。
本当にわからないのはこの子だと思った。
布団の上で大の字になり、目を瞑る。お風呂で一度は決意したもののまだ迷いが残っていた。
果たして私という人間が彼女の秘密を覗いてしまって良いのだろうか。『理解しようとする勇気はある?』美里の言葉が頭をグルグル回る。
ここまで来て何を悩む必要があるんだ。理解してやるさ。それであなた達の心が少しでも軽くなるのなら。
意を決して起き上がり私は革の日記を取り出してページを捲った。
日記は10月から始まっていた。しばらくは日常の事が書かれており、その話題の殆どは美里と保健医の佐山先生の事だった。
そこから少し読み進めると、ある人物が浮かび上がる。もう一人の「先生」だ。名前は書かれておらず、ただ先生と書かれている。
内容から美咲が「先生」に憧れていて恋心を抱いていると確信した。更に読み進めるとその想いが徐々に強くなっていき、12月から先は美里や佐山先生の話題を抜いて殆どが「先生」の内容になってきた。
12月20日
先生を屋上に呼んだ。私の想いを伝える為に。受け入れて貰えないのはわかっているけど、もうどうしようもない。先生が来てくれた時、それだけで満足してしまいそうになった。
私は勇気を出して先生に好きですと伝えた。少しの沈黙の後、先生は静かに首を横に振った。わかっていたけど、涙が止まらなかった。先生は教師で、私は生徒だ。叶うはずがない。悲しいけどわかっていた事。
中略。
12月24日
先生に呼び出された。恥ずかしくて顔を合わせたく無かったけど、気付くと屋上に向かっていた。先生は既にそこに居た。
突然、先生に抱きしめられる。一瞬何が起こったかわからなかったけど、暖かかった。自分の気持ちを誤魔化しきれない、俺もお前が好きだ。先生は確かにそういった。嬉しくて涙が出た。つい先日は悲しくて泣いたというのに。
先生の唇が私の唇を塞ぐ。私のファーストキスは美里に奪われているけど、ごめんね、先生。ありがとう。
中略。
12月31日
友達と初詣に行くとお母さんと美里に嘘をついた。ごめんね、美里。スーパーで材料を買い、先生のアパートに。狭くて散らかっているけど、先生の匂いがした。
私が作った鍋を食べながらビールを飲む先生。その姿を見ているだけで幸せ。除夜の鐘が鳴る頃、私と先生は一つになった。想像以上に痛くて血が出たけど、優しい言葉をいっぱい貰ったので我慢できた。
中略。
1月1日
まだ少し痛いけど、愛し合う内に大分慣れてきた。今日は家に帰らなければ。私の胸で眠る先生が本当に愛しくて、子供みたいで可愛い。
中略
1月5日
初めてホテルに入った。制服を持ってくるように言われて少し焦ったけど先生が望むなら大丈夫。一緒にお風呂に入って
中略
1月14日
佐山先生に彼氏が出来たと報告した。先生も喜んでくれて嬉しい。でも、先生との約束だから名前は明かせないのです。私が卒業したら多分、大丈夫かな。
避妊について色々教えてくれたけど、私は先生の子供なら欲しい。
中略
1月16日
放課後に準備室に呼ばれた。入るといきなり鍵をかけられて焦った。かなり強引なキス。そして先生の前に跪かされ
中略
ちょっと待って。知らない間に食い入るように読んでいた。顔が赤いのが自分でもわかる。赤裸々すぎる。
経験の無い私には刺激が強すぎ。パラパラとページをめくるが、・・・・毎日だ。求められたら答える。決して拒まず、受け入れる。加えて日を追う毎にエスカレートしている。
日記というかこれは言わば日誌だ。美咲も美咲だが、この先生は何者なんだろう。
2月3日
A組の桐島さんに校舎裏に呼び出された。そしていきなり叩かれる。先生は桐島さんと付き合っているから近付くなと言われた。そんな訳ない。私と先生は深く愛し合っているんだ。
桐島さんは嫉妬してそんな事を言ってるに違いない。そう思うと可哀想になり、何も言い返さなかった。念の為に先生に尋ねたがキスで答えてくれた。
中略
2月14日
今日はバレンタインデー。先生のついでに美里にもチョコを作ってあげた。そんなに喜ぶとは思わなかったので嬉しい。ただ、先生は他の生徒からもチョコを結構貰っていて嫉妬・・・。
先生にチョコを渡す。食べさせて欲しいと甘えるのでチョコを口に含み先生の
中略
3月9日
今日も授業中に抜け出した。誰にも見つからないように例の屋上へ。先生に全部脱ぐように言われる。見つかったらどうしよう。
私もだけど、先生もただでは済まないハズだ。それだけ深く私を愛してくれているからだと信じ
中略
3月20日
先生のアパートへ。制服のまま両手を縛られ目隠しをさせられる。何度やってもこれは怖い。先生が写真を撮っていいるのがわかった。
それでも先生が望む事だから私は喜んで受け入れる。
中略
4月6日
3年になって先生の要求はどんどん過激になる。大人の恋愛とはこういうものなのだろうか。でも先生が喜ぶなら
中略
4月19日
先生のアパートに行く。信じられない事に先生と桐島さんが裸で抱き合っていた。悪夢を見ているようだ。先生に中に入れと命じられる。脱げと命じられる。
私は従うしかない。最後に微笑んでくれるのが私だけであれば、それでいい。
中略
これは。読み進める内に吐き気がしてきた。美咲がこの男を溺愛しているのを良い事に、この男は美咲をまるで性奴隷のように扱っているのだ。
こんなものがまともな恋愛の筈が無い。こんな教師がこの学校に居るというのか。
4月25日
生理が遅れている。もしかして、と期待しつつ検査薬を買って帰った。反応は陽性だった。心の底から嬉しかった。先生も絶対に喜んでくれるに違いない。明日、先生に話そう。
中略
4月26日
死にたい。
4月27日
母さんに検査薬の箱が見つかってしまった。うっかりしていた。かつてこんなに怒られた事は無かった。先生には堕せと言われたが私は産むつもりだった。
その事を伝えたら父さんに殴られた。母さんは味方になってくれると信じていたけど、頭を冷やしなさいと言われた。でも先生の事は言わなかったよ。約束だから。
中略
5月1日
佐山先生に相談をした。先生と両親の反対を伝えると佐山先生も反対した。高校生でも出産する人は沢山いる。でもそれは周りの支援があってこそなのだと。
私が苦労するのはいい。でも私の我がままで産まれてくる赤ちゃんが苦労する事になったら。先生が苦しむ事になったら・・・。ごめんなさい。本当にごめんなさい。
支援
5月3日
両親に話した。父さんは何も言わず、黙って封筒を私に渡した。中を見ると30万円入っていた。
私はこのお金で、自分と先生の子供を殺しに行くのだ。そう考えると死にたくなった。
5月5日
佐山先生が家に迎えにくる。連休中にも関わらず、先生の知り合いで県外の産婦人科の先生が診てくれる事になっていた。
先生は行きの車の中で何も話してくれなかった。病院につくと、分娩台に座らせられた。手術は驚くほど簡単だった。全身に麻酔が回り、意識を失う。気付けばもう、私の子供は死んでいた。
中略
5月10日
しばらく学校を休んでしまったので今日は登校した。いつもの所で先生に会って報告する。先生は優しく私を抱きしめてくれた。私は涙がとまらなかった。
中略
5月20日
この頃、先生は私を避けているように思える。私にはそれが一番辛い。私には先生しかいない。
中略
5月29日
4時限目を途中で抜け出し、先生のもとへ行く。準備室に行くと先生は驚いた顔をした。何で?私は鍵を閉め、抱いて欲しいと懇願した。
でも先生は首を縦には振らなかった。どうして。私は制服を脱ぎ、先生に後ろから抱きつく。そして先生に教わった事を、先生の為に必死でやった。
ようやく先生が私を抱いてくれた。私には先生しかいない。でも、先生が私に向けて放った言葉は「淫乱」だった。
それでも良かった。先生が私を見てくれるなら。体だけでもいい。私は先生と繋がっていたい。私には先生しかいないのだから。
中略
6月25日
先生は私を求めていない。私が先生を求めるだけだ。それでも毎日、私は先生を求めた。
中略
7月20日
ついに一番恐れていた言葉が先生の口から出てしまった。私はバラバラに引き裂かれる。先生の言葉は殆ど耳に入らなかったが、その全てが私を突き刺した。
辛うじて聞き取れたのは、田舎の彼女と結婚する、だった。
前後の日記は読むに耐えない。日々、死にたいという事が脈略も無しに書かれていたから。
私は人をここまで愛せるだろうか。この先を読む勇気が私にあるだろうか。
心臓が喉から飛び出そうなほど暴れている。思い出すまでもなく、この日記は死へと向かうカウントダウンなのだ。
少しでも冷静さを取り戻そうと深く深く、深呼吸する。読まないといけないのだ。
7月25日
先生が恋しい。先生に抱きしめて貰いたい。優しい言葉をかけてもらいたい。電話をしても出てくれない。部屋に行っても入れてくれない。
中略
もう普通の精神状態で無いことが手に取るようにわかる。
7月30日
先生を私だけの存在にしたいと思うようになっていた。先生を殺して私も死のう。そんな考えが頭を過ぎった。でも私の望みは先生の死ではない。
先生には幸せになって欲しい。先生に私を忘れて欲しくない。永遠に。そう永遠に。
中略
もう彼女を止められる存在は居ない。そしてカウントは0になる。
8月6日
今夜、先生は宿直で学校に泊まる。お父さん、お母さん、ごめんなさい。折角産んでくれたのに、先立つ私をお許し下さい。
私の最期を胸に焼き付けて貰う為に学校に行きます。永遠に先生の胸に抱いて貰えるように。勿論、これが正しい事で無いことは理解しています。でも、駄目でした。
決して悲しまないで下さい。私は幸せになるんです。
美里へ。お姉ちゃんを許してね。遊んであげられなくてごめんね。美里の幸せはお姉ちゃんの幸せです。どうか、幸せになって下さい。
これが、美咲の最期の日記だった。
もし私が美里なら、これを読んでどう思っただろう。
あ。
私なら、先生を恨む。憎む。この人畜非道の男を。幸せにするつもりも無く美咲を食い物にしたこの男を。
美咲だけに飽き足らず他の生徒とも関係し、美咲の気持ちを正面から裏切ったこの男を。あれだけ苦悩した妊娠を堕せの一言で片付けたこの男を。
私の中のスイッチが入る。心が憎悪に犯される。私が美里なら、いや美里でなくともこの男は許さない。絶対に許さない。許される訳がない。
この日記が幸せに埋まる事はもうないのだ。白紙。白紙という結末。
私は理解出来ただろうか。彼女が死を選んだその理由を。答えは出てこない。彼女は先生を愛していた。それは本人以外が見れば歪んだ形かも知れない。
「ごめんなさい。」ようやく、繋がった。
最期を看取ったのはこの先生だ。美咲の目論見通り、美咲の死は先生の胸に焼きついただろう。忘れたくとも忘れられない。永遠にその十字架を背負い生きていく。
正しいかどうかは別として、美咲は永遠に先生の胸に抱かれる。
理解などできる訳がない。それが私が出した結論だった。
どうしてそう思ったかはわからないが、何となく美咲が生きていている気がして、絶対にありはしない8月8日を探そうとページをめくる。
そして、数枚めくった所で、とんでもないものを発見した。
そこには、あってはならない日記の続きが書かれていたのだ。とても正気とは思えない、恐るべき日記が。
9月2日
姉さんが死んで2年。今日はじめてこの日記を読んだ。あれから色々な事があり、私は家から出られくなってしまったよ。お父さんとお母さんが離婚して、姉さんとは違う苗字になっちゃった。
姉さんには悪いと思うけど、私が決着を付けなければならないと思った。私から姉さんと家族を引き裂いた復讐をしなければいけない。
私は明日から学校に行く。勉強もいっぱいして、髪も伸ばして、姉さんと同じくらい綺麗になって、姉さんと同じ高校に行ってその人に復讐する。
美里はやはり同じ考えに至っていたのだ。
日記は残り少なく、次の日付はかなり飛んでいる。
12月9日
ガリガリに痩せていた私だけど、運動や勉強を沢山して大分女の子らしくなってきたよ。お母さんが私の事を美咲と呼び始めた。
前から少しおかしかったけど、日に日に姉さんに似てくる私を見て姉さんだと信じ込む事にしたみたい。少し悲しいけど、死んだのは本当は美里。今居る私は美咲。
4月27日
3年生になれました。鏡を見るたびに私は自分が誰だかわからなくなる。写っているのは間違いなく姉さんだ。月に一度、父さんと会っているんだけど、あの人も名前を呼び間違えた。
家族でも間違えるんだから、あの人が見たら腰を抜かすんじゃないかな。今からどうやって殺すか、楽しみです。
絶句した。
こんな馬鹿な生き方があるものだろうか。出来るものなのか。
6月12日
模擬試験の結果が出た。姉さんと同じ学校へ行けそうだよ。母さんは私の仏壇に毎日手を合わせてくれる。私の為に祈ってくれる。それが嬉しくもあり悲しくもある。
お爺ちゃんが母さんを病院に連れて行こうとしたけど、私が母さんを庇った。私を姉さんと思い込む事で、少しでも罪悪感から解放されるならそれでいいじゃない。
お爺ちゃんは私を美里と呼んでくれる。それでいいと思った。私は美咲で、美里なのだから。
10月12日
中学最期の文化祭が終わり、私は松永君に告白された。こんな私のどこが好きなのかわからない。私が演じる山吹美咲が好きなのか、澤岡美里が好きなのか。
松永君はスポーツも勉強も出来る。顔もかっこいいし、優しい。正直に言うと私も松永君が好きだ。私は持っていたハサミを松永君の首筋にあて、私と死ぬ勇気があるなら、いいよと言った。
それでもいいと言ってくれたけど彼が震えているのを感じていた。私がハサミに力を入れると、彼は私を突き飛ばし逃げていった。それがおかしくて、悲しくて、泣いちゃったよ。
1月28日
合格通知が郵送されてきた。旧姓の山吹で試験を受けたら果たして入学出来ただろうか。あの後、松永君とは口を聞くことは無かった。クラスの皆からも距離をおかれた。
そんな事は大した問題じゃない。ようやくここまで来たんだ。絶対に、目的を果たす。
4月5日
入学式も無事に終わり、今日は校内を見て回ったよ。姉さんが通った学校。姉さんが飛び降りたクラブハウス。あの時とは大分様変わりしていたけど。姉さんが落ちた場所には綺麗な花が咲いていたよ。
きっと、姉さんと懇意にしてくれたという佐山先生だろう。その優しさが溜まらなく嬉しかった。佐山先生にだけは、私の素性を明かさなければ。でも計画を悟られたら駄目だ。会話に注意しないと。
その足で保健室に行き、佐山先生と会ったよ。姉さんの言った通り、素敵な先生だった。髪型とメイクは変えていたけど、すぐにバレてしまった。先生は私を抱きしめて、姉さんを想って泣いてくれた。
私の知らない姉さんの学校での事を色々教えて貰った。時が経つのも忘れてお話したよ。
それで、計画を根本から崩される事実を知った。あの男はもう学校を去っていたのだ。
あの男は姉さんの最期を看取った後、逃げるように学校を去った。今は田舎で結婚し、中学校で教師をやっているとの事だ。
出来ることならこの学校で殺したかった。けどそれは叶わくなってしまった。もっと早く調べておくべきだった。
前に年賀状を貰ったという先生に、姉さんを看取ってくれたお礼の手紙を送りたいと嘘をつき、コピーを貰う約束をした。計画を再度練り直さなければ。
それから閉鎖されているクラブハウスの屋上の鍵を何とか都合して貰えるように頼んだ。姉さん最期に見た風景を見たかったから。
4月7日
もう隠す必要もないので、私は澤岡美里から山吹美咲に戻った。母さんが悲しむから。
すれ違う先生達が私の事を見て何か恐ろしい物を見たかのような表情をする。そりゃそうか。死んだはずの姉さんが歩いているんだもの。
でも誰一人、私に声をかける先生は居なかった。皆、触れないほうがいいという結論に至ったのだろう。
佐山先生から年賀状のコピーと鍵を受け取る。鍵は急いで合鍵を作った。これでいつでも姉さんに会える。
先生はまるで姉さんの生き写しだと言ってくれたよ。それが嬉しかった。
4月15日
計画の大筋を考える。
まず、恐怖させる。姉さんから手紙が来るっていうのはどうだろう。想像しただけで笑ってしまう。手紙を受け取ったあの男の顔が恐怖に慄く。最高に愉快だ。
制服のまま、殺しに行こう。あの男は制服姿が大好きみたいだから。それくらいはサービスしてやろう。私が現れたらどうなるかな。腰を抜かして女のように悲鳴をあげるかな。
問題はどう殺すかだ。存分に苦しめて、後悔させて、もう殺してくれと懇願させてから殺す。
あの男には2歳になる女の子が居るらしい。姉さんの子供を殺しておいて。あの男が見ている前でこの子と妻を殺すというのはどうだろう。考えただけで笑える。
殺し方は、そうだな。包丁で料理してやろう。姉さんを犯した汚らしいペニスを切り取り、ケチャップをつけて食わせてやる。心が躍る。
もう待てない。5月の連休に殺しに行こう。
目を疑う。何という事だ。あの美しい美里の顔が脳裏に浮かび、その顔が狂気に歪み高々と笑う。その手には血の滴る包丁を持って。
これ以上は読めない。読んではいけない。読む勇気なんかあるわけない。
私は逃げるように日記を閉じる。美咲の日記が死へのカウントダウンなら美里のそれは殺人のカウントダウンなのだ。
顔が蒼冷めているのが自分でもわかる。
美里は殺しただろうか。やりかねない。私の中の殺意でさえ本物だった。実の妹である美里が実行に移す事くらい容易に想像がつく。
3年間も自室で自分を悔やみ、そして2年間も復讐の為に生きてきたのだ。
自分自身で美里であることを捨て、母からも美里である事を捨てられ、美咲として生きていく。常人では考えられない辛さだと思う。
それでも彼女はそれを実行し、美咲として生きてきた。その行動原理が何かと言えば、復讐なのだ。
私如きが理解できる苦しみではない。共有するなどとてもできやしない。
時間は間もなく23時を回る。カチ、カチと時計を刻む音がやけに耳につく。眠りたい。眠れるだろうか。
灯りを消し布団を頭からかぶり、目を瞑る。
カチ、カチ、カチ、カチ。
どれくらい時間が経っただろう。ドアがガラリと開き誰かが入ってきた。智子だ。
「おーい、寝た?」小声で智子が呼びかけるが無視して寝たふりをする。とても話す気分ではない。
ゴソゴソと何か音をたて、暫らくすると寝息が聞こえてくる。それでも、私は足の震えがとまらなかった。
殺しただろうか。殺人を犯して、人は普通の生活を続ける事が出来るだろうか。
そんな事をただ延々と考えている内に、いつの間にか私は見覚えのある景色の中に居た。
私と美咲が満天の星空の下、そこに居た。見分けこそつかないが、美咲だった。
「ごめんなさい。」彼女は言う。
謝りたいのはこちらだ。私には何も出来ない。何もしてあげられない。
これは夢だ。ハッキリとわかる。だから私は思い切って問いかける。
「美咲さん、アナタは幸せですか。」
美咲はゆっくり首を横に振る。やはりそうか。彼女は幸せになんかなれなかった。
「私はどうしたらいいの?アナタはなぜ、私にあんな夢を見せるの?」泣きじゃくりながら私は問う。
「私じゃない。アレはあなたの夢。お願い、助けてあげて。私にはできない。私にはできないから。」
助けてあげて?私の夢?どういう事だ?美咲が私に夢を見せたのではない?
支援
「私には美里を救えない。これから起こる事をとめられない。お願い、最後まで日記を読んで。」
段々と、美咲の輪郭がぼやけてくる。闇に溶けていくといった感じで。
「どういう事なの?ねえ、お願い答えて」私は必死に、切実に、消えていく美咲に問いかける。
「お願い、美里を救って。助けてあげて・・・すけて・・」
美咲の姿が完全に消えた。遠くからカチ、カチ、カチと時を刻む音が聞こえる。
次の瞬間、目が覚めた。
私は布団の中に居た。頬を触ると涙で濡れている。これは夢なのか?本当に夢だったのか?
智子を起こさないように布団の中でもう一度日記を開く。携帯を開き、その光を頼りに日記をめくる。
私は続きを読まなくてはならない。何が書かれていようと、それを見届けなくてはならない。
何故かそう思った。理由なんかどうでも良かった。
だが無常にも、あの狂気の日付以降は存在しなかった。白紙。白紙。白紙。
どうして。美咲は消える前に日記を読めと確かに言った。続きなんかないじゃないか!
4月15日に戻る。その一字一句を再度読む。そして次のページへ。
やはり、白紙。いや待て。破り取られている?
よくよく見ると、次のページが破られているのがわかった。私はある事を思いつき、実行に移す。
枕元のバッグから筆入れを出し、一番濃い鉛筆を取り出す。そしてそのまま智子を起こさないようにトイレへ向かう為、部屋から出た。
誰もいない個室トイレの中で破られた次のページを鉛筆で擦る。
ビンゴ。美里の筆圧の高さから、もしかしたらと思ったが、辛うじて読み取れた。
8月6日・・・・今日だ。いやもう昨日か。
その下を鉛筆で擦る。
「姉さんの所に行く。」
それだけだった。心臓が止まりそうになる。
落ち着け、思い出せ。今日は何日だ。そう、日付が変わって8月7日だ。美咲の命日はいつだ。そう、8月7日、今朝だ。どうやって死んだ?屋上から飛び降りた!
私は全てを理解するのは無理だったがこれだけはわかった。美里は美咲の後を追おうとしている。阻止しなければ!
トイレから飛び出し屋上へ駆け上がる。間に合え!強く祈りながら階段を駆け上がる。スリッパが脱げたがそんな事は気にもならなかった。
屋上へ続くドアの前に辿り着く。天国への扉?ざけんな!
ドン、と大きく音を立て扉を開く。間に合ってくれ!
満天の星空の下、美里がいた。
「まて!」私は大声で叫ぶ。
美里は驚きの表情をしつつ、一歩後ずさる。これは間違いなく夢で見た光景だ。夢の中で私と美里がキスをした後、彼女は虚空を見つめながら後ずさり、次の瞬間飛び降りた。
逃がさない!今度こそ助ける!
私は猛然とダッシュし、一気に距離を詰めるが、美里は慌ててフェンスを乗り越えようとする。
間に合わないか?いや諦めない!
私は美里を捕まえるため、大きく跳躍する。美里はフェンスの上で一瞬だけ躊躇した後、飛び降りた。
時が止まる。心音だけの世界。全てがスローモーションに見えた。届いてくれ!
次の瞬間、私の手が美里の手を掴む。半ば落ちかけている美里の体を、フェンスに足をかけ力いっぱい引く。
ヤバイ。私の体重じゃ支えきれないかも知れない。
一度は安全域まで引っ張れたかに見えた。だが美里は手を振り解こうと暴れ、尚飛び降りようとしているのだ。
美里の片足が宙を舞う。手が滑る。
このままじゃ落ちる。私も美里も落ちてしまう。私の渾身の力を込めても、引っ張りあげる事が出来ない。
・・・ここまでか。
そう思った瞬間、不意に誰かが、私の体に重なった気がした。体が軽くなる。薄っすらと、誰かの手が美里の手を掴んでいる。
これは美咲だ。理屈などは存在しない。美咲が私と重なった。彼女の想いが伝わり同化する。
私と美咲は一気に美里の体を引き上げる。美里ももう抵抗していなかった。
美里をフェンスの内側まで誘導すると彼女もそれに応じてくれた。既に美咲の気配は消えていた。
手を握ったまま、二人で屋上のコンクリートの上で大の字になる。
荒かった息が落ち着くと、何故か笑いが込み上げてきた。
そしてひとしきり笑った後、咳き込んだ。
その様子を見て美里も笑う。良かった。生きている。満天の星空の下、二人で笑った。
「日記、読んでくれたのね。」美里が切り出す。
「うん」
この土壇場でようやく、私にも理解できたような気がする。
夢で出会った飛び降りる少女。あれは美咲ではなく、美里だったのだ。
彼女は死を決断していた。そして恐らくそれは運命付けられていた。
彼女達の物語に私という異物が混入されなければ、その運命に従うのみだった筈だ。
私自身の物語としても、同い年の女の子が屋上から飛び降りたなどという新学期の話題で完結する筈だったろう。
何の因果もない私達が、あの日の朝、あの一瞬の邂逅で接点を得て、私の夢という形の無い干渉を与え、その運命を捻じ曲げた。
美咲は夢は私自身の夢だと言ったが、私にそんな予知夢のような力は無いと思っている。
あったとしても、美咲の妹を助けたいと想う強い気持ちが私に夢を見せたんじゃないだろうか。
では、私でなくとも良かったのかといえば、それは否定したい。私でなければ駄目だったと、そう思いたい。
月が煌々と照らす屋上で、美里は語る。
結果的に、彼女はその復讐を全うする事は出来なかったという。
実際にあの男、堂島の住む街まで美里は行った。しかし出来なかった。
彼の家に掲げられた表札には、彼と妻の名の横に小さく美咲と書かれていたらしい。
それが贖罪のつもりなのかはわからない。でもそこで彼女の殺意は崩れていった。
一生涯消える事の無い傷を抱いて生きていく事が死ぬより辛いという事を、美里は知っていたからだろう。
遠巻きにその家族を眺めながら、思い知る。
姉さんは彼の幸せを願っていた。それは歪な形ではあったが、心から願っていたはずだ。
私はどうだろう。何もない。空っぽだ。家に帰っても私は美里ではない。もう美咲ですらない。目的も何もかもが消え去った。
そして始めからあったその結論に至る。死のう、と。
私は、どうしたらいいの?と美里が私に問う。
あなたは美里。それ以上でもそれ以下でもない。何も無いわけない。無いと思うなら、これから一緒に作ればいい。
私は立ち上がり、美里の手を引いて立ち上がらせ、正面から向かい合う。
本当に綺麗な子だ。長くて美しい、眉で切り揃えられた髪。すっと伸びた形の良い鼻。長い睫。愛らしい唇。
月明かりの下で、観客は夏の星座達。何がそうさせたかはわからない。私は彼女を抱き寄せ、軽く唇を重ねる。
何度も、何度も。
夏休みが終わり、新学期がはじまった。
澤岡美里は休みがちだった1学期を取り戻す為、毎日学校に来ている。
その表情も見違える程明るくなり、男子生徒の噂の的になっていた。
進学クラスで成績優秀、おまけにあれだけの美少女だ。噂にならないほうがおかしい。
しかしその注目のおかげで私にも困った噂が立ちはじめていた。
「りーえっこちゃん!」
帰り支度をしている私に後ろから抱きつく美里。暑い。鬱陶しい。
「ちょ、やめ」
顔が近い。近すぎる。
「一緒にかえろー」甘えた声で美里。
目が完全に恋する乙女なのだ。
おまけに毎日、毎朝、毎夕これである。
「加藤と澤岡はアッチの人」こんな噂が立ち所に広まってしまい、好奇の目で晒される。
正直、大迷惑だった。流れであんな事をしてしまったとはいえ、私はドがつくノーマルと自負しているのだから。
それでも、まあ、これでいいのだろう。そのおかげで中々クラスに溶け込めないでいた私に、からかいながらも気軽に声をかけてくれる人が増えた。私も自身も少し変れた気がする。
遠慮がちに接していた美里と良子との関係もすっかり回復し、小学生の頃のように話すようになったという。智子も私と美里の仲をからかいながらも、私と美里を大事に思ってくれている。
私は溜息をつきながらも、この新しい日常を歓迎しているのだった。
私はあの夜の出来事からある能力に目覚めてしまったらしい。
「この世ならざる存在」がしばしば見えてしまう、大迷惑な能力だ。
この妙な能力のおかげで怖い思いをしたり妙な事件に巻き込まれたり。
一番最悪なのはこの能力をどこで聞きつけたのか、双子の変態兄弟に追い回される羽目になったのだ。
全くこの馬鹿共ときたら・・・・。と、今はやめておこう。
結局、天国への扉はどこに繋がっていたのだろうか。
揺れる電車の中、美里と肩を寄せ合いながらそんな事をぼんやりと考えていた。
喪中、なんだ長ぇ、少女マンガくせぇと思ったが、
最後には引き込まれたな。
作者、乙。
211 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/23(水) 00:32:45 ID:Gj8mixewO
喪中氏乙
いや、かなり良かったわ。確かに長かったけど。
後半加速してぐいぐい引き込まれたぜ。
昨日はヤンデレ展開なんて見せなかったのに…
じ、次回作も期待してるんだからね!
忌中、乙。
自分は途中は面白いなって読んでたんだが
後日談はいらんような気がしたなぁ。
屋上の場面の様な雰囲気で終わって欲しかった。
乙、面白かった。
続きもよろ
214 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/23(水) 02:23:40 ID:1f6tydAi0
長い、しかもまったく怖くない。
まるでマンガのようなストーリー展開。
小学校高学年までか。
灯鳴堂書店は1日1レスなの?
赤川次郎 思い出したw
怖くなくてもオカルトな話ならいいんじゃね?
続きを待つざます
219 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/23(水) 08:54:09 ID:/OxyrRGtO
>>185はアニヲタ臭強すぎ…
台詞とか恥ずかしすぎだろ
良スレage
ageてなかった・・・
書き手の皆様乙です!
これなら笑えるぶんだけウニや師匠の方がまだマシだな。
もなか乙
実話を投下したいと思います。
連休中、不思議な体験をしました。
自分の彼女は霊感があり、姿と声が聞こえるそうです。
その彼女とは遠距離なので連休中、自分のアパートに泊めてました。
20日の夕方、比較的山の中にある体育館へバドミントンをしにいきました。
体育館は誰も使用しておらず、管理人に隅の電気だけつけてもらい、遊ぶことにしました。
すると彼女は、暗いとこをしきりに気にして、耳を塞ぐことをしました。
どうしたのと聞くと、声が聞こえるそうです。
訴えてくるらしく、なんて?って聞くと、まだ生きたい!って叫んでくるらしいです。
きみわるくなりバドミントンをやめて、館内から出る途中、彼女はロビーの椅子と机が沢山ある方を見て、
また怖がる様子を見せました。
自分もそちらを見ると、ちらと机の陰から何か見えてしまったのです。
男の子に見えたので、男の子いる?って聞くとあぁ、確かに遊んでると答えが。
ぞっとしながら車に乗り込みました。
車に乗ってもまだ彼女は声が聞こえるらしく、早く出してって急かしてきました。
連休中は他にもありましたが、今の話よりも怖さが劣るため、聞きたいっていう人がいたら書きます。
>>217 赤川次郎のクドい版を見た感じw
>>219 長ったらしい文章より、スッキリしてて見易いわ。
226 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/23(水) 13:01:19 ID:Gj8mixewO
聞きたくないので田中さんは巣にお戻り下さい。
227 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/23(水) 13:33:08 ID:1f6tydAi0
読むほうもバカだが書き手もこんなんしかいないの?
>>185ツヅキ
お目当てのものが見つかった彼女は棚から一冊の本を引き出した。ポンポンと本から埃を掃ってるあたり、この店の衛生管理は大丈夫なのかと心配してしまう。
パラパラと本をめくりながらこちらに来る。目の前まで来たときに気がついたが、意外と背が低い。173センチの中庸な背をした僕から見ても頭ひとつ分ほど見下ろせる。
頭ひとつ分ほど下から見上げてきた彼女は、はい、と言ってその本を差し出してきた。
「あのー、僕英語読めないんだけど・・・」
「だいじょうぶ!それ優しいから」
「優しい?あぁ、中学生くらいの読解力でもなんとかなるってこと?」
「違う違う、本があなたを導くのよ。その方法が優しいってこと」
やはり電波なことをさらっと言う。どちらにせよ読む気もない本を買うつもりもない。
なにせ一人暮らしを始めたばかりの身。これからは些細な出費にも気をつけなければならない。あ、そうだ。家計簿をつけるノートを買ってこなければ。
「わざわざ探してくれたのはありがたいんだけど、今日は持ち合わせもないし、また来ますね」
「ダメよ。逃がさない」
「いや逃げるとかじゃなくてですね…」
「黙りなさい」
黙った。凄い迫力だ。
「いい?あなたはこの本を読むの。お金なんていらないわ。大体、あなたみたいな貧相な貧乏学生風の人がポンと出せるような金額の本じゃないのよ?」
酷い言われようだが、特に事実誤認というわけでもない。というか事実だ。だが初対面の、しかも店の店員にズケズケと言われる筋合いはない・・・のだが、迫力に押され一方的な展開になってしまっている。なにせ僕は見たまんまの弱気で内気な純情田舎青年なのだ。
「そういうわけだから、今日はこの本を黙って持ち帰りなさい。あとは全て本が導いてくれるから」
「・・・持ち帰るだけでいいんですね?もし僕がそのまま返しに来なかったらどうするんですか?高価な本なんでしょう?僕みたいな貧相な貧乏学生じゃ手が出ないような」
皮肉たっぷりに言ってやった。このくらいの仕返しはしとかないと割に合わない。しかし彼女はフフンと鼻で笑うと
「その心配はないわね」
ツヅク
俺は支援する
230 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/23(水) 16:21:19 ID:1f6tydAi0
もうイイのに・・・ウッ (´;ω;`)
灯鳴堂書店にハマってる俺がいる・・・
232 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/23(水) 22:41:04 ID:KzCR+JOu0
ウニの影響なのか、なんでこのスレは創作ばかりなんだ?
233 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/23(水) 23:19:59 ID:g6ry7UQrO
そりゃ自分の部屋しか知らないんだから書きようがないだろ。
私も支援♪
気の利いた台詞や言い回しを心がけてるつもりなんだろうけど…すっごい違和感w
なに、慣れれば癖になる
237 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/24(木) 09:28:18 ID:+Y0gLFde0
ほとんど嫌がらせだよね。
ヘタに無駄な文章より、全然いい。
ウニさん待ち
何?このスレで創作貶すと何か貰えんの?
241 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/25(金) 19:43:34 ID:6S8awk6m0
もらえるよ。
貶して何が悪いの?言論統制するつもり?
いや、そんなつもりじゃないよ。
すごい必死だから何かあるのかと思って
1
相変わらず散漫な文章でごめん。間中の話を投下した者です。
高校2年のちょうどこのぐらいの季節、悟が学校に来なくなった。
あいつの親父は元構成員で、その頃もロクなことやってなかったみたいだったんで、
悟もけっこう道を外したことをやってたんだ。だから、俺は悟の登校拒否ぐらい、
たいしたことじゃないと思ってたんだけど、間中には堪えたみたいだ。
「どうしたら学校に来てくれるかなあ」
とか、
「あたしにできることはないのかなあ」
とか、そんなことばかり毎日愚痴ってた。
悟は女子にはウケが良かったけど、男には反発されるタイプだった。男で仲良かったのって
俺ぐらいじゃないかな。
だからクラスの大半は悟が来ないことを暗に喜んでいた。いつも根暗をからかわれてたBなんかは、
「もう復学はできないんじゃないの?もしかしたら、もうこの世にいなかったりして」
と極論を出して嘲笑してた。
間中はそのBに対してマジ切れしてた。
「あいつがこの世からいなくなればいいのに」
とまで言ってた。俺はむしろ、間中がなぜそこまで悟に肩入れするのかわからなくて、
「そんなに悟と仲良かったっけ?」
と聞き返す始末だったよ。間中は、
「あたし、友だちを作るのが下手なせいか、できた友だちは大事にするの」
って答えた。
2
そんな折、間中はまた高熱を出したとかで何日か休んだ。俺、悟はどうでもよかったんだけど、
間中は心配だったから家まで見舞いに行ったんだ。
間中のお祖母ちゃんって人が庭先で落ち葉を掃き集めてた。俺が、
「明里さん、どんな具合ですか?」
って聞いたら、玄関を開けて間中の部屋まで案内してくれた。
間中はベッドの上でいかにも辛そうに臥せってたんだけど、俺を見たら、
「来てくれたんだ。ありがと」
って喉枯れした声で礼をした。俺は、あんまり気の利いたことができる人間じゃなかったんで、
間中の枕元にポ○リの缶を置いて、
「早く元気になってくれよ。お前がいないとつまんないから」
なんてことを言って励ました。
間中は、
「悟くん、学校来た?」
って聞いた。俺は首を横に振った。間中は、
「まだなんだ…」
ってがっかりしてた。
3
おれが見舞いに来たことで少し元気になったっていう間中は、
「何か食べられるかもしれないから用意してくる。この部屋に持ってくるから、ちょっと待ってて」
って台所らしきドアの向こうに入っていった。
俺、姉貴がいるから女の子の部屋は見慣れてるんだけど、間中の部屋は全然そんなんじゃなくて、
むしろ俺の部屋より殺風景なぐらいだった。
「こいつってふだんどんなことしてんだ?」
興味を惹かれてきょろきょろ見回したら、寝込んでたベッドの枕の横に大学ノートとボールペンを
見つけた。これもまた飾りっけのない5冊1パックぐらいの安物だったんで、つい気軽な気持ちで
覗いちまった。
1ページめ。【悟くん、帰ってきて】
めくって2ページめ。【せいくん(俺のこと)、いなくならないで】
さらに数ページめくって見つけた書き込み。【B、死ね】
…間中ってのはさ、背が小さいわけだ。細身で髪が長くって、…なんつか…愛玩用?タイプでさ。
怒ったりきつい台詞吐いたりしても、あんまり怖くない容姿をしてるわけね。
それが、寝込みながらこっそりこういう落書きをしてるんだと思ったら、ちょっと見る目が変わった。
今日初めての食事だとカップ麺をすする間中は、ときどき咳き込みながらも、
「今回の熱、しつっこいよね。ちょっと負け気味かも」
なんて軽口を叩く余裕は出てきたみたいだ。
「お前ってよく熱出すよな。精神的なもの?」
って改めて聞くと、
「うん。嫌なものを遠ざけようとしているときに出るみたいだよ」
と返した。
「嫌なものって…悟が学校に来なくなったこと?」
確認すると、
「それもあるし、悟くんの悪口を誰かが言ってるって思うことも嫌だし」
視線を手元に落として表情を曇らせる。
「悟が嫌われるのは、悟自身にも原因があるんだよ」
と説明してやった。
4
悟は入学した当初から目立つヤツだった。調子者で誰ともすぐ仲良くなる性格に見えたから、警戒心の
強い俺なんかは内心羨ましかったんだけど、悟が評価されたのはそういう長所だけじゃなかった。
気の弱い同級生から金を無心したり、学内の女子に小遣い稼ぎの売春をやらせようとしてたみたいだ。
だから俺、間中が悟と仲良くなるのは反対なんだよ。
俺とも何度か衝突して(てか、悟と正面きって衝突したのは俺ぐらいかもしれない。他のヤツらとは
なんとなく回避できてたっぽかったから)、でもまあ、根は悪い人間じゃないってわかったから今も
付き合ってるんだけど。
悟の親父は、ほんと、どうしようもないDQNで、学校にも上がってなかった幼児の悟の額に刺青を
入れちまった。だから悟は前髪を切らない。
俺には、
「実は俺、不死人(某漫画参照)なんだ」
とか茶化して赤黒い崩れた刺青を見せたことがあったけど。
親父がそんなんだから、悟はおっかさんが世話してた。スナックで働いてたんだったかな。
「俺、ヤ○ザは親近感あるけど、酔っ払いだけは嫌いなんだよねー」
って悟が言ったのは、親父は許せてもおっかさんに苦労をかける性質の悪い酔客は許せないってこと
だったんだと思う。
間中は俺の話を聞いて、
「…やっぱり、悟くんとまた会いたい」
って言った。
悟の登校拒否が長引いてることもあって、このまま退学かなあなんて思い始めてた俺も、
「ん…。じゃあ、今から様子見に行ってやるよ」
って関わることを決めた。
間中がホッとしたような顔をする。
間中の家を出るとき、またお祖母さんが見送ってくれた。もう足元が見えないぐらい暗くなってたのに、
まだ庭掃除をしてるみたいだ。
5
そのまま悟の家に向かった。……内心、
(悟の親父と会ったら嫌だなあ)
とか
(悟と喧嘩することになるのも勘弁だなあ)
とか思いながら。
悟はボロい長屋作りの団地に住んでいて、両隣も、挨拶しても返してこないような不出来な大人たちだったから、
悟1人を更正させようとしても無理な環境だったんだ。
俺、そのことを知ってから、何度か悟を俺の家に下宿させようと考えた。でも、俺の家庭もあんまり出来は
よくなかったから、けっきょく踏み切れないままだ。
いい機会、かな。悟をこの長屋から引っ張り出すの。高校を卒業するまで俺の家で預かって、そこから
俺と悟で自立すれば充分暮らしていけるだろうし。
玄関に立って大声で呼ぶと(チャイムなんて物はない)おっかさんが出てきた。化粧もしてない。仕事、
休みみたいだ。
「悟?」
って聞くんで、
「うん。学校サボってるから迎えにきた」
って言ったら、
「せいちゃん、あの子といつまで友だちでいてくれる?」
って逆に聞き返された。悟に何かあったんだ。息苦しくなった。
「悟、家にいるの?」
おっかさんの質問には答えなかった。俺、そこまで悟に付き合う自信は…ない…。
「いるわ。呼ぶわね」
おっかさんは、薄暗い電灯しかない室内の先に向かって、
「悟、せいちゃんよ」
と呼びかけた。
6
悟はアホな格好をして笑いながら現れた。パジャマで、氷嚢を頭に乗せたまま、口には体温計を挟んでる。
「本物の病人だってば」
と言い訳する表情は、とてもそう見えないほど明るい。
「つまんねえ演技するな。間中は本気で心配してるんだから」
って思わずマジな声で注意すると、悟は、
「間中?なんで?」
と聞き返してくる。
…なんとなく合点が行った。悟自身に思い当たる節がないんなら、間中のあれほどの心配は間中自身の感情なんだ。
つまり、間中の片想いってヤツ…。
「…学校に来て安心させてやれよ」
って、詳細は話さずに促した。悟は、
「え〜?そういう方向から説得するって卑怯くない?」
とかぼやいてた。
そして、なんでかパジャマの上着をずりおろすと、俺のほうに背中を向けた。
一面に幽霊が彫ってあった。
俺、言葉が出なかった。悟は、
「墨入れると熱出るんだなー。初めて知ったわ。しかも杯交わしちゃったし(ヤ○ザの組に入る儀式ってことね)」
って、ちょっと泣きそうになりながら言った。玄関から出た庭先では、おっかさんがうずくまって泣いてた。
「…なんで?」
とだけ聞いた。
「だって、俺が逃げると母ちゃんが殴られるもん」
と悟は答えた。
7
自宅に帰って俺の親父にその話をすると、ふだんは飲んだくれてるだけのクソ親父が、
「そんな理不尽な話があるか?」
と激昂して、即座に悟の親父と話をつけてくれた。
悟をヤ○ザから足抜けさせること、悟とおっかさんに危害が加わらないように別宅を用意することを
約束させたんだ。ヤ○ザって1回入会するとなかなか抜けさせてもらえないから、しばらく逃げないと
いけないんだってさ。
俺が、
「悟の親父、約束なんか守るかなあ…」
と不安がったので、親父は伝を頼って県外にアパートを確保するまでしてくれた。俺からばれちゃいけないっていうんで、
場所は内緒にされたけど。
手続きが終わったころ、間中が学校に来た。
悟の机がなくなってるのを見てショックを受けてたから謝った。
「悟、復学できなくなったんだ。ごめん」
それから経緯を説明した。間中はひどく落ち込んだけど、
「いつか会える希望があるなら、いい」
って割り切った。
「それまでカノジョ作らないようにって言っといてやろうか?」
って茶化したら、
「何それ?ばっかじゃないの。あたしの好きな人は全然別人だよ」
と呆れられた。
あんなに悟を心配したのは、頭の中に悟の死を示唆するイメージばっかりが浮かんできたから、らしい。
「お前がそういうこと言うと…怖いね」
外れたからよかったものの、もし間中に未来予知の力があるとしたら、と思ったら寒くなった。
「あたしは実現すると思ってた」
間中は、例の枕元に置いてあったノートを鞄から取り出して、俺によこした。
「だから悟くんの運命をBにかぶってもらおうと思ったの。Bなら死んでも惜しくないから」
ノートの【B、死ね】の書き込みは後半ページ全部に及んでた。
でもBは変わらず机にかじりついてエロい絵なんかを落書きしてるだけだったけど。
8
「間中…お前、あんまり際どいこと言わないほうが…いいよ」
帰り道、話したいこともたくさんあったから、間中の家まで付き合うことにした俺は、そう
進言した。こいつが本音を吐くことは、こいつにとってマイナスにしかならないと思えたから。
「際どいことって何?」
と本気でわからない様子の間中。あ、そっか。こいつって自閉症だったっけか。
「だからさ…。B死ね、とか、ああいう言葉を他人に見せないほうがいいよ」
説明すると、少し考え込んで。
「言うのはいけないこと?」
と聞いてくる。
「少なくとも俺はいい気分はしない」
って答えると、
「せいくんが嫌なら、それがあたしの基準になるよ」
間中は、回りくどい言い方だったけど俺の言うことを聞いた。
「もうせいくんしか友だちいないしね」
とも言う。
で、なぜか俺、こんなこと口走ってた。
「間中の好きな人って…誰?」
俺じゃないよな…。俺、友だちだし…。
「言わない」
間中が笑う。
「そこは言っていいとこ」
って促したけど、
「でも言わない」
って頑固に拒否された。
9
家まで送り届けると、間中は庭に向かって、
「お祖母ちゃん、ただいまっ」
って挨拶した。お祖母さん、どっかにいるのかな?返事はない。
「この前はお世話になりました。…って一応言っとこう」
俺も姿の見えないお祖母さんに向かって会釈する。
間中が目を丸くした。
「会ったの?」
「会ったよ」
って返事をしたら、
「すごいね。見えるのあたしだけだったんだよ」
と、玄関の右側にある仏間らしき部屋の窓を指差した。よく目を凝らすと、奥に安置された仏壇の上に
あのお祖母さんの遺影が飾ってあった。
一気に鳥肌が立った。
「あたしが守護霊を見るときもそんな感じ。あれ、この人幽霊なのかな?ってわからないぐらい
はっきりしてるの」
間中はちょっと嬉しそうだ。
でも俺は、できれば2度と、会いたくない。
254 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/26(土) 00:53:17 ID:Y+mgWZ4PO
マジ小学生文庫みたいになってきたな。
もう見るのやめたら?
誰も頼んでないしストレス貯めるくらいなら来ないほうがいいよw
>>255 メ欄に記入なし、携帯、単発、1行、批判レス
これだけ要素揃ってるんだから専ブラならとっととNG。
257 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/26(土) 09:15:02 ID:+kh4v1D/0
批判に脊反する暇あんなら、まずは感想でも書けよ
259 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/26(土) 18:42:15 ID:+kh4v1D/0
書いて下さい、な。
喪中さんって雲丹さんと違うの?
>>252 事実だけ淡々と書いてるところは読みやすい。
でも稚拙な印象も受けるね。
台詞は魅力があると思うよ。
総合的に乙でした。
262 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/26(土) 23:27:25 ID:ZgEUIKND0
実話系シリーズ物が皆無な件
まじでラノベ発表の場と化してるな
263 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/26(土) 23:42:38 ID:Y+mgWZ4PO
文壇批評スレ
実話が欲しけりゃそれ系の所に行けば吐いて捨てる程あるだろうに。
だいたいオカ板で実話って(ry
265 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/27(日) 00:49:01 ID:n66hkbJgO
?
相変わらずささやかな実話で、物語がどこかへ大きく流れて行くようなことはない。
ひとつだけ、その流れを待っている事象があるが、それは松岡の家庭のことだから、
ただヤツからその話が出るのを待つのみである。
待っている間に、聞いた話をしたい。
最近、松岡の休日は月曜日だ。
職業オタク関係、趣味は読書と歴史とゲームに特撮、服装はパンク。
何となく想像がつくと思う。
春の初めに同人誌即売会の会場で顔を合わせた時、
俺は挨拶代わりに「最近は何か変わったことない?」と訊ねた。
それは勿論、数年前に聞いた「流れを待っている話」のことで、
それについてのちょっとした報告はあった。決着はついていない。
「そういえばね」
そのこととは全く関係ないが、先月こんなことがあったよ、とヤツは話し始めた。
給料日後の休み、いつも通り家電量販店やら書店やら、
パンクやゴス服の殿堂みたいなデパートやらを回ってほくほくとしていた午後。
大通りにあふれる人を避け、松岡は一本外れた道へ入った。
メインストリートをほんの少し離れれば、
スーツや制服姿の人がちらほらいるだけで、人を避けて歩く必要がない。
停まっているトレーラーの脇をすり抜け、ごみごみとした細い通りを直進。
ふと見ると、その車道の向こう側の車線に、女性が立っていた。
危ないなぁと思った。
車は走っていないが、歩行者天国ではない。
濃いピンクのキャミソールに細いデニム、グレーがかった赤茶の髪の若い女だ。
何故だかそこにだけ、真夏の日差しがある様に明るく見えた。
車道の真ん中に立ち止まって携帯をいじっている。顔は見えない。
他の通行人は、そんな彼女を気にも留めていないようだ。
見るとはなしに視界の隅に入れていると、そのうちに違和感がわき上がって来た。
何だろうともう一度そちらを見て、その正体が分かる。
顔が見えない。
道路の真ん中で歩道の方を向いて立っている女。
うつむいて携帯の画面を見ているとはいえ、近付くにつれて、
髪に隠れた横顔からだんだん正面向きの顔が見えて来るはずなのだ。
それなのに、まるで松岡の視線から逃れる様に女は顔を背けて行く。
いや。
動いてはいない。頭も、体も。でも顔は見えない。
女と背景の流れが一致していない。
なんだこれは。
横目に女を縫い止めたまま歩みを進めると、
女を挟んで反対側の歩道を歩いて来る男が視界に入って来た。
松岡と変わらない年頃の、茶色いコートを着た会社員風の男だ。
彼もまた、同じように車道の女を見ている。
互いに女との距離が縮んで、男は松岡の視線に気付いたらしく、目で何かを訴えて来た。
松岡は小さく頷いた。男も困惑の色を浮かべた瞳で頷く。
多分彼にも同じように見えているのだと思った。
反対側を、進行方向からやって来るのに。
通り過ぎて少ししてからそっと振り向くと、やっぱり女は真横を向いていた。
「怖いって言うより、何か凄く困る、って言うのが近い。あっちの人もそんな感じだった。」
松岡はそう言って苦笑した。
実は、そんな感じのするものは結構ある。
怖がらせようとか、何かを訴えようとか、そんな気持ちがないのかもしれない。
ただそこに残像があるだけなのかもしれない。
何故か見えてしまう不思議なものを見た時、怖いとは思わない。
どうにも困ってしまうのだ。
考えてみれば、2月の終わりに真夏の服装の女はそれだけで違和感がある。
気付く人が居ないだけで、9月の今も、彼女は新宿の雑踏の中に立っているのだろうか。
恥ずかしながら、俺は今でも実家住まいだ。
忙しい時はひと月丸々家に戻らないなどざらで、
逆に暇な時は何週間も家にいて、夜昼なく自分の作品を描いていたりする。
家が都心への通勤圏なのもあり、どうしてもこの方が便がいい。
その代わり女っ気はあまりない訳だが、それについては放っておいてくれ。
そんな俺だから、ひとつ、全く経験のないことがある。
家探しだ。
仲間内で話していると、よく話題にあがる事柄である。
これは、松岡から聞いた話だ。
「京都のツレが、前にそんな家に住んでたよ。」
一緒にテレビを見ながら、ヤツはそう言った。
その時画面には心霊現象を頭ごなしに否定する学者が映っていた。
こういう人はとりあえず、妻子と一緒に曰く付きの物件に三ヶ月くらい住んでみて
ほしいものだと俺が言うと、松岡は楽しそうに口角を上げて見せたのだ。
それは何、本人が否定派?家族は一緒なの?家族が一緒なことが大事なんだよ、
否定してる本人より家族が見たり感じた時にどう説得するのかそこまで込みで、
…喜々として腰を浮かせる俺に、「いやいや、ひとり」と手を振る。
「ナオさんと同じようなこと言って、わざわざそんな所に引っ越したんだよ。
違うのはナオさんがアレを受け入れていて、そいつは受け入れていないこと。」
うけいれる、俺は口の中で松岡の言葉を繰り返した。
信じているのとは違う。何か、そんなこともあるよな〜と思う受動的な感覚。
俺のそんなうすぼんやりした状態を指しているのだと思う。
「その結果、一週間もしないうちにそいつは色んなものを見た。」
松岡はにやにやしながら続けた。
怪音から金縛り、人の気配に始まって、最終的には廊下を歩く人影まで。
零感で心霊現象否定派の筈が、数日のうちにベタな現象に次々遭遇したらしい。
「で、結局ひと月くらいで慣れた。」
「……慣れた!?」
何か声が裏返った。松岡はけらけらと笑ってまた手を振る。
「幽霊なんて非科学的だ、測定も出来なければ、
万人が知覚出来ないものはないのと同じだって言ってたんだけどね。
そいつは見て聴いて触れて、自分で確認しちゃったんだ。
それで、こう言った。」
『霊感なんかないし信じてもいない俺が見えるんだ、これは実在するものだ。
幽霊なんて便宜上のレッテルを貼ってとりあえず未整理フォルダに突っ込んだだけで、
もっと感度のいい測定機材とかが出てくれば絶対証明される何かの現象だ、
だから幽霊はいない。』
「らしいよ。」
俺は開いた口が塞がらなかった。
彼は結局契約満了までの2年間、
その家で『幽霊じゃない何かの現象』と同居したそうだ。
やっぱり、受け入れていない人は彼のやったことを試してみてほしい。
俺は絶対にイヤだ。
恥ずかしながら、俺は今でも実家住まいだ。
休みが続けば毎日のように爆発的に売れる訳でもない漫画を描いて、
逆に忙しい時は着替えが尽きて洗濯に帰る以外長い間家に戻らなかったりする。
家が都心への通勤圏なのもあり、どうしてもこの方が便がいい。
当然のように彼女もいない訳だが、それが実家住まいのせいかは微妙なところだ。
そんな俺だから、ひとつ、全く経験のないことがある。
家探しだ。
仲間内で話していると、よく話題にあがる事柄である。
これも、松岡の話だ。
松岡の家に入り浸っていたことがあって、まあ別に怪しい関係でも何でもなくて、
することと言えば一緒にテレビを見たりゲームをしたり、
ベッドの下にぎゅうぎゅうに詰まった悪趣味な蔵書を勝手に読んだりしていた。
合鍵を渡されていたので、上がり込んで待ち構えていたりなんてことも可能だった。
俺が転がり込む前は年下の女の子と一緒に住んでいたとか言う話だったが、
彼女が郷里へ帰ってしまい、思えばヤツも人恋しかったのかもしれない。
ある時電話をしたら、松岡は今夜その娘が上京して来ると言う。
まだ部屋に少し残っている荷物を引き取りに来るそうだ。
じゃあ彼女が帰ったら行くから、仕事帰りに浅草で飯でも食おうかと約束した。
仕事が大体の時間通りに捌けて、俺は待ち合わせの場所へ向かった。
ちょうどサンバカーニバルの日で、赤や黄色のド派手なコスチュームの
お姉さんたちが出番を終えて帰って行くところだった。
六区に近いゲーセンで時間を潰していたが、一向に松岡からの連絡がない。
俺は何だか不安な気持ちになって、ヤツの携帯を呼び出してみた。
どうやら電源が切れているようだ。
家にも電話してみる。留守電になっていない。誰も出ない。
胸騒ぎがした。
俺は電車に乗り込んで、慣れた経路でヤツの最寄り駅に向かった。
下車、自転車置き場の脇を抜けて、初めてヤツの家に行った時、
ここで奇妙な現象に出会った道、でも今はそんなことはどうでもいい。
夏の日は長く、そろそろ夕方になろうと言うのに陽射しが強い。
アパートに辿り着き、インタフォンのチャイムを鳴らす。
誰も出ないし、物音もしない。合鍵を差し込み、かちゃりと回す。
「松岡…?いるのか?」
病気で寝込んでいるのではないか、と思ったのだ。
そっと扉を開くと、カーテン越しの光でほの明るい部屋の中、
毛布が人の形に盛り上がっている。
何だ、やっぱりそうだったんだと、「入るよ」と声をかけて靴を脱ぐ。
だが、人の気配はない。
近くまで行って覗き込むと、
なんと毛布はクリームの入っていないコロネよろしく空っぽだった。
いない。
もう一度携帯を鳴らす。電源が切れているか、電波の届かない場所に。
俺は今度は違う焦燥に駆られてカーテンを開けた。
部屋が暗いのは不安定だ。隣の和室の薄暗さが気になる。
俺はベッドの下を覗いた。本の山だ。如何わしい文庫本だらけだ。
押し入れを開けた。クローゼットを開ける。
トイレのドアを開け、風呂場に入る。湯船の蓋が閉まっている。厭だ。
訳の分からない感覚に襲われて、俺は蓋を開いた。
死体はなかった。
湯船は空っぽで、乾燥していた。
多分昨日から使われていないのだろう。
俺は何を探していたんだ。
何故かそこに松岡がいるような気がしてしまったのだ。
昨日前の同居人が来て、何かあったのではないかと思ったのかもしれない。
明確にそんなことを考えた訳ではないが、多分そうだ。
俺がへなへなと脱衣場に這い出すと、
玄関に放ったらかした鞄の中で携帯が鳴った。
松岡からだった。
彼女が昨日の昼間現れて早々に帰ってしまったので、
見送りに行った足で出稽古に行っていたのだと言う。
久しぶりに体を動かして夢中になってしまいこの時間になったと言うヤツに、
俺はほんのちょっぴり安堵した。そして、
「刺されて風呂に突っ込まれてんじゃないかと思ったよ!
なんであれ蓋してあったの?お湯入ってなかったぞ?」と冗談めかして言った。
その娘と喧嘩別れしたなんて話はなかったのに、
俺は何であんなことを思ったのだろう?
玄関に鍵が置いてあったので自転車を拝借して、俺は買い物に出ることにした。
駅前にはコンビニがあり、いつもはそこで買い物をしていたが、
台所を調べたら米しかなかったので、スーパーを探しに行こうと思った。
いつも来る途中の電車の窓から鳩のマークの看板が見えていたので、
線路沿いに少し戻って、そこから3時方向へ1キロくらいではないだろうか。
背の低い松岡が乗るにしては妙にサドルの高い自転車で、住宅街の中へ走り出した。
線路に平行する道がなく、うねうねと路地を縫いながらようやく線路が見えて来た。
高架の下を潜った広い道路に突き当たり、スーパーへはここで道を折れるようだ。
看板はこの道沿いではなく、少し元来た方へ食い込む感じだ。
どうも目測を誤ったらしく、ここからだと1キロでは利かなそうだ。
もう少し手前から曲がれる道があったような気がする。
しかし戻ってもあてもないので、解りやすい道から攻めればいいか、と思い直した。
まっすぐ進んで、看板を目印にまた住宅街の路地へと入り込む。
フェンスに囲まれた駐車場が見えて来たので、俺は自転車を一旦止めた。
向こう側に白茶色の壁が見える。どうやらあれがスーパーだ。裏側かもしれない。
駐車場の右手は竹やぶで、その手前には白い壁のアパートがあった。
塗り直したのか壁は綺麗で、瀟洒な建物だ。
ワンルームらしく、同じ形の窓が整然と並んでいる。
だが、8つの窓には半分程しかカーテンがついておらず、空き部屋が多いようだ。
竹やぶの脇の道を抜けながら見上げると、2階の角部屋の小窓に影が揺れた。
覗いていると思われたらちょっとマズい。
結局スーパーの正面までぐるりと回り込み、帰りはそちら側から道を開拓して帰った。
俺が使ったのとは違う路線の駅の前も通った。
どう考えても、正面側からの道の方が近かった。自分の距離感覚に呆れる。
米を炊きシチューを作り、サラダに載せるトマトを切っている所で松岡が帰宅した。
台所の様子を見て開口一番、
「お風呂にする?ご飯にする?それともナ・オ・ヤ・君?」
などとべったべたの寝言を言うので小突いてやった。風呂なんか用意していない。
そう、風呂だ。
「だから…蓋開けて中見たんだって!お前の死体があるかとビクビクもんだよ!
空にしたら蓋も開けろよ!気持ちわりぃ!
てかまず出稽古行く前に連絡寄越せよ、心配するじゃんか。」
蓋なんかしたかなぁととぼけてへらへらと奥へ入って行く黄色い頭を見送ると、
俺はやっとホッとした心持ちになって飯の支度に集中した。
食事をしながらコロネ毛布の話をして、押し入れやらなんやらを開けた話をして、
俺は松岡の不在の間に部屋で起こったこと(何も起こっていないのだが)を語った。
帰りに松茸買って来たよ、明日の昼は松茸ご飯炊いてあげるからぁ、と宥められ、
意地汚くそこは引き下がることにした。
大体、俺の不安なんて全く根拠がない不安だったのだ。
夜半過ぎ、松岡が支度した風呂に入れられ上がってみると、
ヤツは何やら意味ありげな顔をして笑っている。
俺は察しが悪いので、こいつのこういう表情の真意を9割読み取れない。
「ナオさんは霊感じゃなくて、凄く感性が鋭いって思う時がある。
漫画描いてるせいかな?人と違うものをキャッチしてるよね?
自分では鈍いと思ってるみたいだけど、
時々考えてることを読まれてるみたいに 感じることがあるよ。」
よく解らないことを言う。
「電話で話した時びっくりしたんだよ。
理由はないんだけど何でか思い出したことがあって、ちょうどその後だったからさ。
元相方ね、最初から一緒に住んでた訳じゃないのは話した?」
紫煙
このアパートは上京して最初に借りた部屋だとは聞いていた。
「たまたま二部屋だからアイツが住み着いたんだけどね、
最初はいろんな部屋見てたから、一部屋だったりしたら来なかったのかな。」
どうやら現在のオタクの会社ではない、当時の職場から便のいい沿線で、
かなりの数の物件を見たらしい。
「大体は可もなく不可もなくって感じでね、決め手に欠ける訳。
ここはまあ駅からは少し離れてるけど、前にも言ったみたいに、
新しくて変なモノがなかったのが決定打だったかな。」
「へんなもの」
俺が呟くと、そうそれ、と唇を尖らせる。
「実際の部屋に行くとね、何だかアレな物件もあるんだよね。」
今でこそ訳ありの物件は予めその旨伝えなければならないようだが、
松岡が上京して来た頃なら随分昔だ。伏せておくのが常道だったかもしれないし、
第一分かり易い曰くがあるから怪奇現象が起こるとも限らない。
「地図と間取り図で割といいかなと思ったトコがあって、不動産屋と見に行ったのね。
担当、30になるかならないかの若いオニイちゃん。」
内装も新築のように綺麗だし、ワンルームだけど結構広いし、駅やスーパーも近い。
ここに決まりかな、と思って後は風呂場をチェックしようとドアを開けた。
女がいる。
松岡はドアを開いたまま唖然とした。
バスタブの中に、膝を抱えて体育座りの格好の女がいるのだ。
顔は膝に伏せられ、見ることは出来ない。
ただセミロングの黒髪で、小花柄の室内着を着た細身の女だと判るだけ。
勿論、生身の人間である訳がない。
不動産屋が管理している空き部屋に不法侵入して、
いつ来るか知れない見学客を待ち構える馬鹿はいない。
そして担当者の若い男も女のことなど一言も触れず、
松岡の頭の上から風呂は全部改装されていて風呂釜は未使用だとか話している。
松岡は扉を閉じ、「もう少し検討してみます。」と言った。
部屋を出、店に戻る車の中で担当者はこう切り出したそうだ。
「やっぱり居ますか?」
松岡は「風呂ですか?女の人ですね、若い。」と答えた。
「…やっぱり同じこと言うんですね。お客さんと同じで、
結構乗り気だった方が皆さんそうおっしゃって。」
事件事故は勿論、病死した人もいない部屋なのに。
アパートが出来た時からずっと空き部屋で、なのに、風呂場には女がいる。
どうしてそこにいるのか、どこの誰なのか、全く判らない女。
お祓いをして、改装もしたのだけれど。
何故か、そんな部屋なのだ。
「ナオさん、風呂入る前に聞いたら今夜風呂入れなかったよね。」
松岡はニヤニヤしながら立ち上がった。
「多分そのこと思い出してる時、ナオさんは死体探しをしてたんだよね。
凄いね、以心伝心?違うか。」
風呂入って来まーす、と言って、松岡は俺の反応を確かめもせずに行ってしまった。
俺は松岡に言っていないことがある。
そして、それを確かめていない。確かめるのが怖かった、今でも怖い。
そのアパートはどこにある?
思い過ごしならそれでいい。
以上です。
お付き合いありがとうございましたm(_ _)m
お、枯野氏来てたんだ!
朝からゾクッとしたよ…乙でしたノシ
281 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/27(日) 10:35:31 ID:RWRtn9uo0
一行だけの褒め言葉と「乙」
これだけしか脳がない住人w
枯野いつ以来だろう?乙です。
いるワケない人が場違いな場所にいる怪異って気持ち悪いね。
都内や近郊の話は場所が気になるw
枯野、乙!
ラノベ風(笑)の作品に食傷気味だったので新鮮に感じたw
てか新宿の話めっちゃ怖えぇ!!
284 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/28(月) 00:16:11 ID:tbOXvymBO
笑える?
[正しい除霊]
1/13
佳澄の件から数日経ったある日、私の家にいつもの3人――古乃羽、雨月君、北上が訪ねてくる。
そこで雨月君が、事の顛末を話してくれた。
私も古乃羽も佳澄には危険な目に合わされた訳だが、話を聞くと、少し複雑な気分になる。
私「それで、その人形を牧村さんの家に持っていったのね」
雨月「あぁ。お婆さんも人形を見て、ごめんねごめんね、って…ちょっと気の毒だったよ」
古乃羽「…でも、きっとそれで良かったんだと思うよ」
涙を拭きながら言う古乃羽。彼女はこの手の話に、めっぽう弱い。
北上「あぁ、あの婆さんがなぁ…。でも可哀想になぁ…夏美さん。あの世で幸せになって欲しいなぁ…」
北上も涙もろいようだ。何でも、牧村のお婆さんと面識があるらしく、以前、古乃羽達を助けるのに、力になってくれたという。
古乃羽「そうだね、きっと幸せに…佳澄と仲良くやっているといいね…」
北上「うんうん…」
慰めあう二人。何だか珍しい組み合わせだ。
2/13
ひとしきり話も終わり、しんみりとした空気が流れていたが、
私が何となくチラシ(「チラシお断り」と書いておいても、郵便受けにいつも貯まるチラシ!)の整理をしていると、古乃羽が何かを見つけて、こう言った。
古乃羽「あ、これ…どう思う?私の家にも、よく来るの」
私「ん?」
見ると、それは「往来会」とかいう団体からのものだった。
北上「どれ?…あぁ、うちにもくるよ。”霊に関する事なら何でもご相談ください”って奴ね」
古乃羽「何だか怪しいよね…コレ。何かの宗教なのかなぁ」
私「こういうのが、そんなに流行るとも思えないけどねぇ。何か詐欺っぽいし」
北上「除霊しますとか言って、とんでもない金額請求してきそうだな」
私「そうそう。あなたは悪い霊に取り憑かれています、とか言ってね」
ちょっと怪しむ私たち。しかしそこで、雨月君が意外な事を言う。
雨月「…そうでもないらしいよ」
北上「え?」
古乃羽「知っているの?これ」
雨月「あぁ、ちょっとね。姉貴から聞いた話だけど」
私「へぇ、舞さんがねぇ…」
古乃羽「どんなこと?」
古乃羽の目が輝く。この子はまったく、舞さん絡みの話となると…。
雨月「そこに何か依頼したとかじゃなくて、その会から派遣されました、って人に偶然会ったらしいんだ」
そう言って、雨月君は話を始めた。
3/13
雨月「ある日、姉貴は除霊活動の一環で、とある家を訪ねたんだって」
北上「ほぉ…」
私「いきなり除霊活動で、って聞くと、なんだか舞さんの方が怪しく思われそうね…」
雨月「俺もそう思う…けど、結構受け入れてくれるらしいよ。本当に霊が居て、それで困っている所を訪ねる訳だしね」
古乃羽「舞さんの人柄なら、平気だと思う」
古乃羽様、心酔しすぎです。…実際には、そうかも知れないけど。
雨月「訪ねた先は、ある小学生の男の子の家で、父親が単身赴任中で、母親と2人暮らし。あとペットに犬が一匹居る、っていうとこでね」
まぁ、普通の家庭だ。
雨月「そこを訪ねたとき、丁度その往来会から来た、っていう男の人が居たらしいんだ」
北上「へぇ。かぶった訳か」
雨月「そそ。姉貴の方は、アポとか取らないからさ。会の人は、ちゃんと依頼されて来ていたらしいよ」
私「それで?」
雨月「どうしようか迷ったけど、向こうの人が見ていきなさい、って言うから、姉貴は除霊を見させて貰うことにしたんだってさ」
古乃羽「ふーん…自信あるのね」
上からの物言いが、古乃羽には少しカチンときたみたいだ。
4/13
私「その男の人って、どんな人だったのかな」
雨月「えーっと…30過ぎくらいの、スーツを着た人。眼鏡を掛けた真面目そうな人だった、って言っていたよ」
北上「スーツ姿で除霊とは…新しいな」
古乃羽「ね、意外」
雨月「で、そこの母親の話では、数日前から息子の様子がおかしい、ってことでね。何かこう、変なものが見えるって言い出したり、突然奇声を上げたり…」
北上「…頭の病気とは考えなかったのかな」
雨月「それが、母親がちょっとオカルト好きな人らしくて…病気じゃなくて、これは悪い霊のせいだ、て考えたらしいよ」
私「うわ…」
本当に病気だったら、どうするのだろう?子供としては、たまったものじゃない。
これはこれで、怖い話に思える。
雨月「とにかくそれで、家に来ていたチラシを見て、相談したってことらしい。取り敢えず一回…ってね」
北上「ふむ…」
雨月「で、いざ母親に連れられて、その男と姉貴の3人で息子の部屋に行ったんだ」
古乃羽「うん」
雨月「部屋に入ると、その子は1人でゲームして遊んでいたらしい。でも、一目で分かったってさ。あぁ、これは何か憑いているな、って」
北上「お姉さんが気になって訪ねたなら、そうなんだろうな」
雨月「そこで男も気付いたらしい。これは危険ですね、と。それで、早速始めますから少し下がっていてくださいと言われて、母親と姉貴は部屋の入口まで下がったんだ」
5/13
古乃羽「その人も、普通に分かる人だったのね」
雨月「あぁ。ちゃんと霊感もあるし、普通に除霊もできるでしょうね、って姉貴は言っていたよ」
古乃羽「ふーん…」
少しつまらなそうにする古乃羽。
きっと古乃羽的には、その男がまったくの素人で、舞さんが代わりに…みたいな展開を望んでいたのだろう。
雨月「その子は、何の用だろう?って感じでこちらを見ている。そこに男が、適当に挨拶しながら歩み寄っていく」
北上「うんうん」
雨月「で、すぐ傍まで近寄ったところで、突然その子からガクンと力が抜けて、身体から白いモヤモヤが出てきたんだってさ」
私「取り憑いている何かね」
雨月「うん。姉貴もそう言っていた。それを見て、男もサッと身構える」
北上「で、何か必殺技でも出したか」
雨月「…」
古乃羽「…」
私「…バカ」
北上「…ごめん」
雨月「で…その時だな、飼っている犬…室内犬なんだが、これが駆け込んできて、ソレに向かって吠え出したんだ」
古乃羽「そういうのが分かる犬って、居るみたいよね」
雨月「あぁ。でも子供に飛び掛ったら危ないからって言って、姉貴が抱きかかえていることにしたらしい」
北上「ふむ」
6/13
雨月「それで犬が大人しくなってから、モヤモヤと対峙した男は、懐からお札を取り出す」
北上「霊札ってやつか」
雨月「だな。それで、サッと近寄ると、素早くソレに貼り付けたんだ」
私「…モヤモヤでも貼れるのね」
雨月「まぁ、その辺はよく分からないけどさ。普通の、ただの紙切れじゃ無理だろうけどね」
古乃羽「それで?」
雨月「そうしたら、そのモヤモヤがパッと散開して…そのまま消えていったとさ」
私「あら…。あっけなく、除霊成功?」
雨月「成功だった、って言っていたよ」
北上「なんだ…やるじゃないか、往来会とやら」
古乃羽「意外だね…。ちゃんとした団体なんだなぁ」
北上「だなぁ。…でももしかしたら、凄い金額を請求されていたり…?」
雨月「それは分からないなぁ…。そこまでは聞いてないし、姉貴も聞かなかっただろうし」
北上「そりゃ、聞けないよな」
雨月君の話は、私たちにとっては意外な結末になった。
古乃羽は少しガッカリしている様子だ。まぁ、世の中に除霊ができる人というのは、舞さん以外にも沢山いるだろう。
…でも、何だろう。何か、話の中で引っ掛かるものがある――?
7/13
私はよく、こういった「引っ掛かり」を感じることがある。
そういう時は、必ず何か裏があるハズだ、と自分では信じている。
古乃羽「それで、その男の人は帰っていったの?」
雨月「あぁ。姉貴に一言言って、帰っていったってさ」
古乃羽「なんて…?」
雨月「どなたか知りませんが、こういった事は私共に任せて…とか」
古乃羽「むー…」
ふくれる古乃羽。
北上「まぁ、そう言われても仕方ないのかなぁ…」
古乃羽「ムッ」
北上「…すまん」
にらまれる北上。
私「で、舞さんは?」
雨月「それで大人しく帰ってきたよ。用事も済んだことだしね」
古乃羽「そっかぁ…。舞さんなら無料でやってあげたと思うのにな」
確かにそうだろう。でも、お金が発生しないのが逆に不安を与えることも…と思ったが、口に出すのはやめておいた。私までにらまれそうだ。
それにしても、やっぱり気になる…
8/13
私「あのさ…」
雨月「ん?」
私「うーん…何か、変じゃない?よく分からないけど、何か引っ掛かるのよね…」
雨月「お…」
雨月君は何故か感心したような声をあげる。
私「お…って?」
雨月「いや、凄いなぁ神尾さん。分かった?」
古乃羽「ん?何かあるの?」
私「うーん、何か、ちょっと…」
雨月「これ、姉貴に聞いた話をそのまま話したんだけど…。
姉貴さ、ちょっとイタズラ心というか、わざと要点を言わないで話をしてきたんだよね」
北上「要点とな?」
雨月「後で教えてくれたけど、俺は聞いただけじゃ分からなかったよ。…神尾さんは分かったのかな」
私「うーん…一ヶ所、何か不自然なところが。あの――」
古乃羽「あー、待って待って。まだ言わないでね。私も考えるから」
北上「んじゃ俺も…」
雨月「お前が分かったら、ショックだ」
北上「…みてろよ」
9/13
古乃羽「うーん…」
北上「実は…モヤモヤは霊じゃなかったとか」
雨月「小学生がタバコでも吸っていたか?それは間違いなく霊だったってさ」
北上「…実はその往来会の男が悪霊」
雨月「普通の人だよ」
北上「…実は全部嘘。夢オチ」
雨月「話したことは、全部実際に起きた、本当のことだ。…姉貴に妄想癖はないと思う」
北上「じゃあ、実は…」
雨月「あのなぁ…。そう言っていけば、いつか当たるかも知れないけどさ」
北上「…」
古乃羽「除霊をするためにその家に行って、先に男の人が来ていて、母親から話を聞いて、子供から変なのが出てきて…」
古乃羽が話の順を追っていく。
北上「うんうん」
古乃羽「男の人がお札貼って、消えて、おしまい…って話よね」
北上「そうだよな…。あ、あれか?実はそれだけじゃまだ終わってなかったってパターン」
雨月「どんなパターンだ?ちゃんと除霊は終わったってさ」
北上「うーむ…」
私「その流れ、ひとつ抜けているよね」
古乃羽「…あれ?」
10/13
古乃羽「えーっと…」
私「それだと登場人物が足りない…よね?」
雨月「そそ」
うん。じゃあ、やっぱりそうだ。
古乃羽「…あ」
雨月「分かった?」
古乃羽「…犬ね?」
雨月「そう、正解!」
私「うん。犬のところが、何か引っ掛かったのよね」
古乃羽「そっかぁ…」
北上「あの…俺だけ置いていかないでくれ」
古乃羽「だから、子供に飛び掛ろうとしていたのよ。出てきた霊に、じゃ無くて」
北上「…?」
私「で、その犬が舞さんに抱かれて、大人しくなった訳よ」
北上「そりゃきっと、何かの癒しパワーで…」
古乃羽「それもまぁ、ありそうだけど…この場合は別の可能性があるんじゃない?」
北上「別とな」
私「除霊したのよ」
北上「…あ!」
私「そうよね?舞さんが除霊をしにいったのは、子供じゃなくて、その犬の方なのよ」
11/13
北上「そうか…。じゃあ悪い霊は2体居たんだな」
古乃羽「そう…なのかな。子供の方は、もしかしたら?」
雨月「あぁ。子供の方は、悪い霊なんかじゃなかったってさ。いわゆる守護霊みたいなものだったらしい」
私「え…。じゃあ、その守護霊を消しちゃったの?」
雨月「いや。姉貴の話では、その霊は普通子供に憑くものとは別物で、ちょっと強すぎて、長く憑いていると霊障が出そうだった、って言っていたよ」
古乃羽「そっか…」
雨月「現に、母親の話では少し害が出ていたみたいだしね。ただ、犬に憑いているモノから子供を守るために憑いていたんじゃないか、って」
私「あぁ、それで…」
雨月「うん。姉貴が犬の除霊をしたから、それで安心して、その守護霊も消えたってことさ」
北上「お札で消えたんじゃないのか…」
雨月「そうみたいだな。あんな安っぽいお札で消えるようなものじゃ無いって言っていたよ」
古乃羽「そっかそっかぁ…」
何だか嬉しそうな古乃羽。ま、気持ちは分かるかな。
12/13
古乃羽「何よねぇ…私たちに任せて、なんてさ」
北上「その場で言ってやれば良かったのにな。除霊したのは私ですよって」
古乃羽「いいの。舞さんはそーゆーこと言わないの」
北上「あ、そう…」
また注意される北上。雨月君とは違い、まだまだ古乃羽の事を分かっていないようだ。
北上「でも、まぁ何だ。その往来会も大したこと無いな」
雨月「…さっきと一転したな」
私「んー…でも、ちゃんと霊感持ちの人が来ていた訳よね。何か頼りなくなっちゃったけど」
雨月「そのお札はアレだったけど、それで効果なかったら他にも手があったかも知れないしな」
北上「あぁ、それもそうか。除霊するのに、たった一枚だけお札持って来るってのも、あり得ないよな」
古乃羽「本当の除霊対象は間違っていたかもだけど…それでも、子供に悪い影響のある霊だった訳だしね」
まぁ、何も知らずに守護霊を消そうとしていた、って事にはなるけど。
北上「ふーむ…侮りがたし、往来会…」
雨月「どっちだよ…」
13/13
私「でもさ、その家の人たちにとっては、その往来会の人が除霊してくれた、って認識なんだよね」
雨月「そうなるねぇ」
北上「あながち間違いでもないし、インチキでもなかった訳だからな」
古乃羽「一応はちゃんとした団体なのね。…依頼しようとは思わないけど」
どことなく、敵対心を燃やしている感じの古乃羽。
私「私たちの場合、舞さんに相談しちゃうからなぁ…」
古乃羽「うんうん」
北上「俺の場合は、牧村のお婆さんかなぁ」
古乃羽「…あ。私たちも一度、ちゃんとお礼に行かないとね。そのお婆さんに」
雨月「だなぁ。前に会ったとき、知らなかったから何も言ってないや…」
その後も雨月君は舞さんの話をいくつかしてくれた。
それを聞くにつれて、彼がシスコンであることが明らかになっていく。
これは古乃羽にとってマイナスイメージじゃ…?と心配になったが、
古乃羽はこの点を許しているらしく、逆に舞さんを大事にしないと許さない、くらいの事を言う。
もしこの2人がこのまま一緒になったら…舞さんは少し大変かも知れない。
その時は私が舞さんの相談相手になろうと、心に決めた。
乙!
あれで終わりとは思えませんでしたw
枯野、赤緑乙!
枯野は実話らしい淡々とした内容なのに文が熟れて洒脱なのがいいな、引きこまれるし読みやすい
赤緑はマメさに頭が下がる、これからもよろしく
300 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/28(月) 17:01:47 ID:tbOXvymBO
乙だけでいいよ、無い知恵しぼって無理に下らんコメントつけなくても。
と、本人も思っている。
赤緑乙
面白かった
302 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/28(月) 20:26:32 ID:vvsQ2c5z0
>>300 ウニが来たときは「乙」だけじゃ済まないくせにww
本当に面白いものを読むと自然と色んな感想が湧いてくる
ウニと赤緑へのレスの数と内容が両者の作品の質を物語ってるわw
批判、下げない、単発
満貫未満でもNGしないとだめなスレになっちまったか
赤緑乙
初期赤緑を彷彿とさせるテンポの良さで楽しめました
ウニ、枯野、忍、トンガラシが読めればそれでいいや
あとの人は投下してくれても構わないし、勿論しなくてもいい
なんだか1人一生懸命な子がいるな
遅レスながら喪中さんも乙!
この人が出てくれば全て解決系のシリーズが多いけど、普通の子が悪戦苦闘するのも新鮮だったw
このスタイルで次回作も期待してます。もうちょっとエロ成分増やして下さい><
308 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/29(火) 15:56:53 ID:ANgyDfUq0
創作者ばかりかよ。
309 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/30(水) 13:44:54 ID:B0qzSpCv0
hoi
310 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/30(水) 15:50:49 ID:/aOj/+eXO
hoi
311 :
本当にあった怖い名無し:2009/09/30(水) 20:53:19 ID:SBC2rJfLO
be・ho・i・mi
ナナシシリーズ、師匠の影響をもろ受けてるって感じだな
内容しかり文体しかり、人物設定しかり…
ナナシ作者はウニに心酔してました
314 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/01(木) 12:19:07 ID:OPo4wHgu0
ナナシ?
>>314 洒落コワのシリーズ物にはまとめられてないけど、そういう連作があったんだ
洒落コワ内に点在してる状態だから個人のまとめサイト探した方が早いかも
作者「藤」ってコテだったけど付けて無い時も多かったし
823 藤 2007/07/30(月) 23:01:11 ID:OAPyAtndO
ああ、七島か
最終的に作者と結婚したSって子は可愛いんだろうか
話だけ読んでると腐女子に近い痛さがあるが…
318 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/01(木) 19:00:21 ID:1DJIFGxXO
可愛いんだろうか…
可愛いんだろうか…
可愛いんだろうか…
可愛いんだろうか…
…
…
の、わけねーだろ
あの作者にあのキャラで
もし可愛いならきっと平面だね。
319 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/01(木) 20:52:44 ID:12x6qsW0O
ビビったじゃんw
ほんと、赤緑へのレスが哀れすぎるww
すぐ別の話題になってるし
321 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/02(金) 00:30:20 ID:4SNmUQilO
進歩のないカップ麺みたいなヤツだからな。
322 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/02(金) 00:35:46 ID:G1OiUTk5O
だがちょっと待ってほしい。
一見進歩していないように見えるカップ麺だが、実は地味に進化している。
カップヌードルの謎の肉がコロチャーに変わったように。
改悪じゃないか
コロチャー美味いよ
325 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/02(金) 11:30:15 ID:Zph64+HZ0
問題のすり替えだね。
ズバリ武田鉄矢が嫌われる理由は?
俺はマササンシリーズが嫌いだが、文句言う為に読もうとはおもわんなあ
知らんがな
(´・ω・`) ……
おおぅ、生ウニ?
もしかして「毒」は書きあがらなかった?
(´・ω・`) 毒のことはしばらく忘れてくれませんか。
長文はよほどモチベーションが上がらないと書けないので、
アンケートや時間制限をして自分を追い込んでみましたが
無理でした。
忘れたころにぽろっと書きます。すみません。
(´・ω・`) そのかわりこの負い目を利用して少しペースを上げていこうかと
思っております。
(´・ω・`) では今日は1本だけですが。
あ、あとAAはもう使いません。
師匠から聞いた話だ。
大学二回生の春の終わりだった。
僕は師匠のアパートのドアをノックした。オカルト道の師匠だ。
待ったが応答がなかった。
鍵が掛かっていないのは知っていたが、なにぶん女性の部屋。さすがにいつもなら躊躇してしまうところだが、ついさっきこの部屋を出て行ったばかりなのだ。
容赦なくドアを開け放つ。
部屋の真ん中で師匠は寝ていた。
その日、朝方はまだそれほどでもなかったのに昼前ごろには急に気温が上がり、昨日の雨もあってか、猛烈に蒸し暑かった。
その部屋はお世辞にもあまりいい物件とは言えず、こういう寒暖差の影響はモロに受ける。
師匠は畳の上、うつ伏せのままぐったりして座布団に顔をうずめている。
僕は靴を脱いで上がるとその側に近寄って声を掛けた。
「……」
なにか応答があったが、モゴモゴして聞き取れない。
「師匠」
もう一度言いながら肩を叩く。
ようやく座布団から顔がわずかながら浮き上がる。もの凄くだるそうだ。
また、なにか言った。
耳を寄せる。
「おばけ見る以外、したくない」
はあ?
「ちょっと」
僕はまた座布団に顔をうずめた師匠の身体を揺する。
「これですよ、これ」
そうして左手に下げた紙袋をガサガサと頭上で振ってみせる。
「ちょっと。見てくださいよ、これ」
師匠は薄っすらとかいた汗を頬に拭って顔を半分こちらに向け、眠りかけのうたぐり深そうな目つきでボソリと呟く。
「おばけ以外、見たくない」
>>331 無理に追い込まないで書ける時に書けばいいさー
というわけで支援
ええと。
そんな宣言どうでもいいですから、お金下さい。立て替えたお金。
そもそもついさっきお遣いを頼んだのはそっちでしょう。
僕はあきれて紙袋から印鑑を取り出すと、またもや顔を座布団にうずめている師匠の前で振って見せたが、反応がないので首筋に押し付けてやった。
やっべ。
赤いものがついた。店で試しに押した時のインクが残っていたらしい。
師匠はようやくその感触にすべてを思い出したのか、深いため息をついて上半身を起こした。
「そうか。頼んでたな。いくらだった」
注文していた印鑑ができてるはずだから取りに行って来いという、お願いというより半ば命令だった。
「高かったですよ」
僕の言った値段に鼻を鳴らして恨めしそうに財布を探る。やがて決まりの悪そうな顔になった。
「また金欠ですか」
心なしか痩せて見える。
「いや、金が入るあてはあるんだよ。今日だって…………今日?」
財布を探る手を止めて僕の顔を見た。そしてすぐさま電話に飛びつく。
どこかにかけた。相手が出る。
「すんません。忘れてました」
開口一番それだ。
僕は立て替えた印鑑代が戻って来るのか不安になった。
しばらくのやりとりの末、師匠は受話器を置く。頭をかきながら。
「事務所行くの忘れてた」
事務所というのはバイト先の興信所のことだ。名前を小川調査事務所という。
師匠は時どきそこで依頼を受ける。たいていは他の興信所をたらい回しにされたあげくにやって来る奇妙な依頼ばかりだ。
そんな奇妙な依頼が今回は名指しでやって来たらしい。
噂を聞いてのことだろう。
このごろはそんなご指名による依頼が多い気がする。それなりに結果を出しているということか。
僕はその手伝いをしている。見よう見まねだが割と面白いので師匠から声が掛かるのを楽しみにするようになっていた。
「待ち合わせしてた依頼人、帰っちゃったみたいだけど所長が話聞いてくれたみたいだから、今から事務所行く」
もちろんついて行く。印鑑代もかかっているから。
事務所について早々、所長の小川さんは師匠を叱った。もちろん待ち合わせをすっぽかしたことについてだ。
こんな小さな興信所では依頼の一件一件が大切な商談だから、たとえどんな変な依頼でも割り切って大切に扱わなくてはいけない。少なくとも依頼人の前では。常にそんな心がけをして欲しい……云々と。
小川さんは飄々としているようで締めるところは締めている。
師匠はしゅんとなって聞いてたが、適当なところで説教も切り上げられ、話は依頼内容 にうつった。
「と、言うもののこいつはどうかな。期待に沿えるかどうか怪しい感じがする」
小川さんは砕けた調子で手を広げて見せた。
依頼人の名前は倉持というそうだ。男性で、七十年配の老人。刀剣の蒐集が趣味だという。依頼はその刀剣についてだった。
「金、持ってそうな名前」
と師匠がぼそりと呟いた。
倉持氏は先日、ある日本刀に関する勉強会に参加した。勉強会とは言っても刀剣研究家という肩書きを持つ先生の講義のあと、それぞれ持ち寄った自慢の一品を見せびらかして全員でああでもないこうでもないと、
とりとめもない雑談に終始する集まりなのだそうだ。
その中によくこうした集まりで顔を合わせる同年輩の男がいて、いつになく嫌味たらしい表情をしていると思っていると、大事そうに一振りの刀を取り出して口上を始めた。
ものは新々刀、会津の名工、三善長道。慶応のころというので、おそらく八代目。
刃長は二尺七寸五分。幕末らしい長刀で、非常に見栄えのする姿。
小板目の地肌に、刃紋は匂い出来の大互の目乱れ。
なまウニ支援
やや研ぎ減りはあるものの、元重ねは三分もあり、迫力に満ちた一振り。
などと実に自慢げだ。
三善長道といえば初代は会津虎徹と称される最上大業物の名工。素性の良いものはおいそれと手が出せない高値がつく。
けれど時代が下り、代が重なれば「さほど」ではなくなる。
刀身や拵えなどをひっくるめて総合的に見ると、良い物だとは思うがそれほど自慢したくなるものだろうかという疑問が湧く。以前見せびらかしていた河内守国助の方がよほど良い品だ。
そう思っていると長道を持ってきたその男はこう言った。
「ところがこの迫力、野趣、いったい見栄えだけからくるものだろうか」
なにが言いたいのだろうと、周囲が注目する。
すると男はこの刀の出自に関する話をし始めた。
長々と話したが、要約するにこの三善長道は幕末期に大洲藩のさる家老の家中にあり、そのころ勤皇で固められた藩風のなかその家老の身内に、長州の起こした禁門の変に呼応して私兵により挙兵をしようとした者があった。
八月十八日の政変後の際どい政治情勢のさなか許されない愚挙であったため、家老はこれを強く諌めたが聞く耳持たれず、泣く泣く密かに斬り捨てて御家の安泰を図ったという。
その身内の若き藩士を斬った刀がここにある三善長道である、と告げられて勉強会の面々はほおと感嘆の声を上げた。
刀は人を斬るためのものだが、人を斬った刀というものにはなかなかお目にかかれない。正確には、斬ったという事実を確認できないのだ。なにしろ鑑定書にはそんなものは出てこない。
三善長道を持ってきた男はこれを懇意にしているさる噺家から譲り受けたのだそうだ。噺家の血筋はその家老に通じており、家宝の刀とともに家中の秘密としてその逸話が伝わっているのだという。
それを聞いた刀剣趣味の者たちは興味津々の体で口々に目の前の三善長道を褒め称えた。
「そう言われてみると、なるほど他にはない凄みがある」だの、「刃先からうっすら妖気のようなものが漂ってきている」だのと口にしては触らせてもらっていた。
支援
刀剣研究家の先生までもが「若き血気が志半ばで断たれた怨念が篭っているようだ」と感慨深げに言い出して、倉持氏は内心気分が良くなかった。
銘は本物でもその逸話の真贋は分かるまいに、と思ったが口に出すことは躊躇した。
この場に水を掛けるのはいかにも悪者にされてしまいそうで。
会がお開きになり、家に帰ってからも気分が落ち着かないので所蔵している日本刀をすべて出してきて並べてみると、これらの中にも人を斬ったことのある刀が混ざっているのではないかという思いが湧いてきて、居ても立ってもいられなくなったのだそうだ。
「それで私か」
「そういうこと」
倉持氏は『オバケ専門』の師匠の噂を聞きつけ、鑑定を依頼してきたのだという。
鑑定!
僕は思わず吹き出しそうになった。
う〜ん、これには無礼打ちされた町人の霊が憑いてますねぇ、などとやるのだろうか。
傍目にも胡散臭いことおびただしい。
「刀のことはあんまり分かんないから、ちょっとな」
師匠は困惑した様子でため息をつく。
「ボクだってそうさ。カタナシ、ってやつ」
小川さんは冗談のつもりなのか判断つきかねる軽口を言って手のひらを上げる。
「ただ、実際になにか家で変な気配がしたり音がしたり、心霊現象かと思うようなことが起こってるらしいんだ」
「……思い込みだろう」
「さあね。ともかくそういうこともあって一度専門家に見に来て欲しいんだそうだ」
専門家ねえ、と肩をすくめながらも師匠は興味が湧いてきたような目つきをした。
「もう受けたの?」
「後日連絡ってことにしてある」
師匠は考え込むようなそぶりをしながら思いついたように首を傾げた。
「……三善長道って、なんか聞いたことがあるな」
僕は思わず口を挟む。
340 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/02(金) 22:37:21 ID:KlgUuv/UO
初☆生ウニ!!
支援
「近藤勇の愛刀ですよ。新撰組の。池田屋事件の功に対して京都守護職の松平容保から拝領した物です。近藤勇と言えば虎徹の方が有名ですけど、そっちは偽名だったって言われてますね」
師匠は、なんだおまえ、という顔をした。
「詳しいな」
小川さんは急に真剣な顔つきになった。
「実家にいっぱいあるんで、刀やら脇差やら。門前の小僧程度ですけど」
そう言う僕の肩に、師匠は乱暴に手を置いた。
「よし、受けよう。その依頼」
ええっ。と呻いてしまった。
もしかして、なんか失敗したら僕のせいにされるのではないかという不安がよぎった。
「引き受けてくれるなら、早い方が良いって言ってたぞ。家まで来てくれって」
「じゃあもう今日とかでも?」
「二、三日はほとんど家に居るらしい」
師匠はさほど考えもせずに宣言した。
「今日、今から行くって電話して」
「了解」
零細興信所のたった一人の所員たる所長は、遅刻してきたアルバイトの勝手な都合をあっさり了承した。
「暇だろ?」
師匠は有無を言わせぬ笑顔をこちらに向けた。仕方がなかった。僕だって興味がある。
その後小川さんは倉持氏に電話をして、これからご氏名の所員が助手を一人連れて行く旨を伝えた。
そして住宅地図を確認したり先方に渡す契約書などについて師匠と簡単な打ち合わせをした後で、落ち着かなげな様子で妙に言いよどんだ。
どうしたんだろうと思っていると、「あー」と少し視線を上に向けてから「まあ、なんだ」と言った。
「さっきはちょっと言い過ぎたな。悪かった。いつも変な依頼を回して、すまない」
小川さんは師匠に軽く頭を下げた。
ふっ、と師匠の顔が和らぐ。「いや、すっぽかしたのは弁解できない。気をつけます」
「そうだな」と言ってから、小川さんはネクタイの先をねじった。
「まあ、そういうことをするなとは言わないけど、昼間っからってのはちょっと控えるんだな」
ん? と言う顔をした。僕と師匠で。
小川さんは自分の首筋を叩いて見せた。思わず二人ともその首のあたりを見つめる。細い首だ。
ハッと気づいた表情をして、師匠は自分の首筋を触りその指先に視線を落とす。
薄っすらと赤い色がついている。首筋にもかすれて広がった丸い微かな赤い跡。
あ、印鑑の。
そう思った瞬間、「このボケェ」という怒声とともに師匠の足が鳩尾に飛んできた。
痛ってぇ。
と、右腕をさすりながら事務所の階段を下りていると師匠が何かを思い出したのか「ちょっと外で待ってろ」と一人で引き返して行った。
事務所の下の喫茶店の前で顔見知りのウエイトレスと立ち話をしていると嬉しそうな顔をして師匠が下りて来る。
「なんか食ってこうぜ」
そう言って、千円札を何枚かヒラヒラさせた。
どうやら調査費を前払いしてもらったらしい。しかし家に行って刀を見るだけの仕事で調査費なんて使うことあるんだろうか。
疑問に思ったが、まあくれたからには使っていいのだろう。
「でも今から行くって電話したばかりですよ」と諌めると、師匠は恨めしそうな顔をして「じゃあさっさと片付けてこよう」と僕をせかし始めた。
コピーした地図を見ながら自転車に二人乗りして目的地に向かう。
蒸し暑さに何度も汗を拭いながらペダルをこぐこと二十分あまり。古い家の並ぶ住宅街の一角に倉持氏の家を発見した。
「へぇ」と言いながら師匠が後輪の軸から足を下ろす。
想像していたより立派な日本家屋だ。数寄屋門から覗く庭がかなり広い。
門の傍らについていたインターホンで来意を告げると、倉持氏本人の声で「どうぞお入りください」と返答があった。
>>331 気にすんなよ。金貰って書いてるわけじゃなし
わーお!
庭と言うより庭園とでも言うべき景色を見ながら石畳の上を歩いて玄関にたどり着くと、ガラガラと戸が開いて和服姿の老人が出迎えてくれた。
「倉持です」
痩身から引き締まった表情の顔が伸びている。七十年配だと聞いていたが矍鑠とした姿はもう少し若く見えた。
「どうぞ、お上がりください」
値踏みするように師匠を見つめながら右手を流す。
僕は緊張したが師匠は平然と靴を脱いで倉持氏の後をついて行った。
涼しげな音をさせる板張りの廊下を進み、僕らは庭に面した広い和室に通された。
「いまお茶を」と倉持氏が消え、ほどなくして戻って来たときにはお盆の上に高級そうな和菓子も一緒に乗せられていた。
主人と客がそれぞれに居住まいを正し、もう一度名乗りあった。
僕もおずおずと名刺を差し出す。
「坂本さん」
まだその響きに慣れない。偽名を使うのは所長に無理やりあてがわれたからだが、いつもこの嘘が見抜かれないかと不安になる。
僕の将来に対する配慮らしいが、そんなやっかいごとに巻き込まれる可能性を恐れるならそもそもこんな師匠みたいな人について回りはしないのだが……
「僕の方は助手というか、あの、ただの付き添いです」
口調が気に入らなかったのか師匠が「堂々としてろ」と目で発破をかけながら僕の足を小突いた。
「さっそくですが、ご依頼の品をお見せいただきたい」
契約に関するやりとりを終えて、師匠はそう切り出した。
「ええ、いま」
倉持氏は両手をついて立ち上がった。
二人だけになった部屋で僕は師匠に声をひそめて話しかけた。
「なにか感じますか」
静かな日本家屋は外の蒸し暑さが心なしか緩和されたような空間で、少しづつ汗が引いていくのが心地よかった。
師匠は畳から壁、そして天井の四隅へと首を巡らせた後で「なにも」と言った。
そろそろさる来たかな
00分待ちか支援
僕も同感だった。心霊現象の気配などなにも感じない。どうやら倉持氏の思い込みの可能性が高いようだ。
ということは、自分の所有する蒐集物の中に人を斬った刀があって欲しいという彼の願望がいかに強いかということを暗に示している気がして、少し気が重くなった。
先だっての勉強会で金銭の多寡を超えたその付加価値の存在を認識してしまったことが彼の精神に与えた影響は大きいと思わざるを得ない。
そしてそれはこの依頼の難易度にも関わる問題だった。
もし刀を見ても師匠がなにも感じ取れなければ、その通り告げて終わるというものではないかも知れない。
だからあの倉持氏のいかめしい表情のことを思うとどうしても気が重くなるのだった。
「お待たせしました」
その当人が戻って来て座につく。想像に反してその手は空だった。
そんな僕らの視線に反応して軽く笑みを浮かべる。
「ご鑑定いただくものは別室に用意してあります」
その前に、と倉持氏は含みを持たせるように少し間を置いた。
「ご評判を伺って相談した次第ではありますが、こうしたことは私も初めてですし、テレビなどで霊能者の方を拝見することがありますが、なかなかどうして皆さんそれぞれにやり方も違えば仰ることも違いますのでね、
なんと申しましょうか、ま、私もそうした方にお会いする機会もなく、いったいぜんたいどういうものなのだろうと、こう思う所もございまして」
師匠の顔が曇った。
回りくどい言い方だが、ようするに証拠を見せろと言っているのだ。人を斬った刀かどうか人知を超えた力で鑑定するのというのだから、それが何の能力もない人間に適当なホラを言われたのではたまらないということか。
自分から頼みに来ておきながら、したたかなものだ。
どうするのかと思って見ていると師匠は軽く息を吐いて「いいでしょう」と言った。
「私は死者の霊と交感することができます。ですから、もし人を斬り殺した刀があればそこにこびり付く死者の霊を見ることができるでしょう。……たとえばあなたの背中に今も寄り添う奥様のように」
空気が変わった。倉持氏の顔が緊張で震える。
「どうしてやもめだと?」
「見えるからですよ。そして奥様は私に様々なことを教えてくれます。あなたは先代から続く食料品の卸業で立派な家を建てられた。今では息子さんに会社を譲られ、悠々自適に暮らして趣味を楽しまれている。隣に並んでいるのがその息子さん夫婦の家ですね」
コールドリーディングだ!
僕は興奮した。
たぶん奥さんの霊が見えるというのは嘘だ。さっきこの家になにも感じないと言ったばかりだから。
ということは師匠は実際に目にしたものや、相手との会話から情報を引き出しているに違いない。
インチキ霊能力者と同じ手口を使っているのだ。そうして信用を勝ち取ろうとしている。
なんて人だ。
僕は畏敬と呆れるような思いが入り混じったモヤモヤした気持ちのまま、その師匠がどこで情報を得たのかと目を皿のようにして倉持氏の身に着けているものや部屋の間取、家具などを探った。
そしてこれまでのやりとりを思い浮かべる。
そう言えば倉持氏自身がお茶を運んで来たことなどは今現在独り身であることを示唆しているようにも見えるが、たまたま奥さんが外出中であったり、病院に入院中であったりというケースだって考えられる。
僕にはまったく想像がつかない。どうやって師匠はここまで推理できたのか。
「息子夫婦は確かに隣に住んでおりますが、今も息子のやっている食料品の卸の屋号は私の名字と同じです。広いようで狭い街です。聞き覚えがあったのではないですか」
倉持氏は震える声で、それでも頑張っている。
「いえ、残念ながら。それと奥様はあなたのご病気を心配されていますね。……心臓ではないですか。倒れたこともおありのようだ」
「む」
倉持氏は息が詰まったような声を漏らした。
生ウニ 生米 生支援
ウニとさるはセットだな
なんとかならんのか
「これ以上は今回の依頼内容からは逸脱しますので、別の機会に願いたい所ですが。信じる信じないはお任せします」
師匠はふっ、と力を抜いた表情を見せて続けた「奥様はとてもお綺麗な方ですね。みさこさん、とおっしゃる」
張り詰めた空気が破れ、倉持氏は「失礼」と言って胸元を押さえたまま部屋を出て行った。
僕も驚いていた。気持ちが悪いものを見る目で師匠を見てしまう。
「どうしてわかるんです」
恐る恐る訊いてみると、師匠は涼しい顔をして言い放った。
「知ってたから」
そんなはずはない。依頼人の名前も今日聞いたばかりだ。それも師匠自身は約束をすっぽかしたせいで今の今までその倉持氏とやりとりもしていない。
これは僕の知らない師匠の霊能力なのではないかと、寒気のする思いを味わっていると鼻で笑うような言葉が降って来た。
「あのな。こういう霊能力を期待してるような依頼人と会う時は、会う前から情報収集するのがセオリーだよ」
会う前から? そんなバカな。師匠は僕とずっと一緒にいたじゃないか。僕にはそんな情報、入っていない。
横から試されているような目で見られていると、ハッと気付いた。
そうだ。事務所から出る時、師匠だけ引き返して行った。あの時だ。
お金の無心をしにいったと単純に思っていたが、もしその所長との交渉が一瞬で終わっていたとしたら、僕が下でウエイトレスと立ち話をするだけの空白の時間ができることになる。
「今回の依頼って、私の噂を聞いて名指しで来たって言ってたよね。自分で言うのもなんだけど、私なんか全然有名じゃないし。そんな噂をするのなんて、前に依頼を受けた人に決まっている。
その中で日本刀趣味の七十過ぎの爺さんと交友関係がありそうな人なんて数が限られるよ。というか、もうだいたいそんな噂を広めてるの、あの婆さんに決まってんだけど」
師匠は具体的な名前を一人出した。以前、心霊現象の関わるある事件を解決してからやたら気に入られてしまい、感謝と親切心のつもりで様々な場所で頼みもしないのに宣伝をしてくれているのだそうだ。
「事務所から電話して、その婆さんからできるだけ聞き出した」
つまらなそうに言う。
コールドリーディングじゃなかった。
同じようにエセ霊能力者が良く使う技術で、もっと直接的かつ身も蓋もない裏技。ホットリーディングだったのだ。
そしてその情報を元に、死者の霊との交信を演じて見せたわけか。
凄いと思うと同時に、なんだかやり口が手馴れていて気持ちが悪かった。
この人、その道でもやっていけるんじゃないかと思ってしまう。
「失礼しました」
襖が開いて、また倉持氏が戻って来た。薬でも飲んできたのか、多少青ざめてはいるものの落ち着いた様子だった。
「大変ご無礼を申しました。どうかお気を悪くなさらずに」
僕らよりよりはるかに年長者である老人が頭を下げるのを見て、なんだか後ろめたい気になったが、おどおどしているわけにもいかない。
なるべく無表情を心がけた。
「では、刀を見ても?」
「は、はい。こちらです」
案内を受けて部屋を出、廊下を抜けて別の部屋へ入った。
さっきと同じような造りの和室だが、三、四畳分は優に広い。そして室内には刀掛台がいくつも並べられており、そのどれにも存在感のある日本刀が飾られていた。
数えると大小あわせて十本。ちょっとした光景だ。
「すぐ戻ります」
倉持氏はなにかに気付いたような顔をして部屋から出て行った。
残された僕らはその場に立ったまま刀剣の立ち並ぶ様を眺める。
「なあ、あれ、間違ってるよ」
師匠がおかしそうに指をさすので、なんだろうと思ったがその先には黒漆の一本掛の台に飾られた一振りがある。
353 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/02(金) 23:13:15 ID:eR3PEjBo0
頑張れ
背が反っており、腹にあたる部分が下向きになっている。他の六本はすべて逆に腹を上向きに出っ張らせている。
一つだけ掛け方が異なっているので、間違っていると思ったらしい。
「あれはタチですよ」
小声で注意する。
「え?」
「太刀です。打刀より古い型の武器です。馬に乗って戦うことを前提に作られたもので、刃を下にした状態で腰に吊り下げて使います。『佩く』って聞いたことあるでしょう? いわゆる刀の方は刃を上にして腰に差します。だから台に掛ける時もそれにあわせてるんです」
「なんで刀は刃が上なの」
「戦さの時だけじゃなくて、武士が普段から持ち歩くものになっていったからですよ」
「持ち歩くとなんで刃が上なの」
「下だと刀身の重みで刃が鞘の内側にあたって痛むからです」
へえ。という顔をして師匠はしきりに頷いている。
実は適当に言ったのだが、たぶん当たらずとも遠からずのはずだ。
それにしても、と僕は少し身体を引いた。
当然、それらは茎(なかご)を抜いた状態、つまり裸で並べてあると思っていたからだ。鑑定と言う言葉のイメージがそうさせたのだが、しかし確かによく考えてみると霊能力で鑑定するのだから、柄の内側に隠れている銘など確認する必要はない。
むしろ余計な先入観を与え、鑑定の信憑性を疑う結果になるだけだろう。
この依頼人はなかなかにしたたかな人物だ。
師匠がその太刀に近づこうとした時に倉持氏が戻って来た。手に布を持っている。
そう言えば今日は蒸し暑さのせいで手も汗ばんでいた。
ということは鞘から抜かせてはくれるようだ。
布を受け取り、汗を拭く。師匠もそれにならう。
「抜いても?」と顔を向けると、老人は無言で頷いた。
僕は左端の黒く落ち着いた拵えが印象的な一振りを手に取った。
そして鞘を持つ左手を腰に引きつけ、右手で柄を握ると棟を鞘の中で滑らせながら真っ直ぐに抜いた。
刀身を見て、すぐに白いもやの様な線に気付いた。持ち手から斜めに上がっている。
水影だ、と思った。
二度焼きした時に出る線だ。二度焼きは再刃と呼ばれ、その刀の持っていた本来の価値を大きく損なうものだ。
がっかりしかけたが、よく見ると再刃特有の刃紋の濁りもなく美しい形を保っている。水影がそのまま映りにつながっているところを見ると、これは逆にそうした趣向なのだと気付かされた。
姿からすると堀川物かも知れない。だとすると案外これは値が張る。
持つ手が少し緊張した。
その隣では師匠が別の刀を手に取り、同じく鞘から抜こうとしている。しかし危うげな手つきで、しかも胸の前で刀を横にして左右に力を入れて引き抜こうとしていた。
僕は思わず首を振って注意する。
自分の左手の鞘をもう一度腰にあてて、さっきの僕と同じように抜けというジェスチャーをした。
刀身を晒している時は喋らないのがマナーだということは雰囲気で察してくれたらしい。
師匠は無言のまま見よう見まねで腰から引き抜いた。
唾がつくと錆の原因にもなるので、刀剣を鑑賞する時には会話は慎むのが普通だ。そのために懐紙を咥える習慣さえあったのだ。
刃を上にして抜くのも鞘の内側に擦らないようにするためだ。横にして左右に抜くと、刃を鞘に押し付ける形になり、鞘も痛めるし刃にも「ひけ」という傷がつくことがある。
こんなに素人とは思わなかったのでドキドキしながら師匠の動きを注視していたが、その手に現れた刀身に思わず目が行った。
あまりに滑らかな肌、そして刃紋。
現代刀だ。
木製の漆台も二本掛けで、大小が揃っている。残された脇差の拵えも全く同じ意匠で、しかも鍔に見覚えのある家紋があしらわれている。
さっきの部屋にあった桐の箪笥にあった家紋と同じだ。倉持家の家紋なのだろう。
ということは注文打ちに違いない。
ここで僕の頭は回転を早めた。
まずいな。
支援!
師匠はこのあとどうするつもりなのだろう。
もしなんの霊感も働かない場合、正直にそれを依頼人に告げるだろうか。依頼人は自分のコレクションの中に人を斬った刀があることを望んでいるのだから、そんな結論にあっさりと納得するだろうか。
安くない料金を興信所に払い、その代償としてお金に代えられない付加価値を見出す、というのが倉持氏の目的なのだろうから、逆にそんな刀はないというお墨付きを得た結果になると、これは酷い意趣返しだ。
もし倉持氏がそんなことを想定もしていないような短絡的な人物だったなら、面倒なことになりそうだ。
だから、いっそ師匠は霊視まがいのホットリーディングで見せたようなプロ意識と言うか、割り切った考え方をして「どうせわかりっこないから」と出まかせを言う可能性があるのだ。
たとえば、「この刀はかつて人の生き血を吸っています」と。
その発言がもし今持っているその現代刀に対して飛び出してしまうと実にまずいことになる。
そんなワケないからだ。
けれど師匠はそれを知らない。その刀が最近打たれたものだということを。
せめて家紋に気付いてくれ、と祈りながら師匠を横目で見ていると、首を振りながら難しい顔をした。
(違う)
そう言っているようだ。
僕は手の内の刀を一通り鑑賞したあとで鞘に収めた。師匠もそれにならう。
「これらはすべてご自分で?」
師匠の問い掛けに倉持氏は頷いた。「ええ。若いころからの道楽で、自分で買い集めたものです」
期待するような目を向けてくる。
それから僕らはそれぞれすべての刀剣を抜いた。もちろん一振りだけある太刀も。
どれも高そうなものばかりだった。しかし新刀、新々刀、現代刀と、どれも時代や体配が異なり、あまり蒐集物にこだわりは感じられない。
銘が見てみたかったが、とりあえずここは師匠に任せることにする。
「拝見しました」
座布団の上に居住まいを正し、依頼人に正対する。
「ありません」
きっぱりした口調に倉持氏の顔が強張る。
「ないと」
「はい」
窓ガラス越しに庭の白い砂の照り返しが射し込み、師匠の横顔を照らしている。
背筋を伸ばして前を見据えるその前髪をわずかに開けた窓から吹いてくる風が揺らす。
「少なくとも、人を斬り殺したような痕跡は見つかりません。殺された人間の怨念や情念は全く感じない。以前人を刺した包丁を見たことがありますが、何年経ってもそこに残る怨念は消えていませんでした。
もっとも刀のそれははるかに古いものでしょうから、消えてしまうものなのかも知れませんが。いずれにしても私には見ることができませんでした」
お役に立てず、残念です。
師匠は軽く頭を下げた。
倉持氏はなにかを言おうとして口を開きかけたが、すぐにつぐんだ。あまりにはっきりとした否定に、反論をすべきか迷っているようにも見えた。
信じたくなかったらそれでいい。別の霊能力者を探して同じことを頼めばいいだけだ。
ただ、誓ってもいいが、まず自分で霊能力者を名乗るような人間なら、今僕らがなにも感じられなかったこの刀の中の一振りを無責任に指差すに違いない。
そんなことで満足するならどうぞ御自由に、というところだ。
「そう、ですか。しかし……そんな……では……」
師匠の視線から目を逸らし、倉持氏はぼそぼそと歯切れ悪く放心といったていで呟いている。
見つからなかったからと言って、規定の料金を負けてやるわけにもいかない。その分多少の愚痴はじっと聞いてあげるしかないだろうと覚悟していた。
しかし依頼人は妙に落ち着かなげな様子をしていたかと思うと、その表情に不穏な翳りが覗き始めた。
落胆しているのかと思って見ていたが、その目の色に浮かぶものはそれとは少し違うように感じられた。
なんだろう。師匠も怪訝な顔をしてじっと目の前の和服姿の老人を見つめている。
彼を包むその感情は落胆ではない。絶望? 違う。なんだろう。とても懐かしい感じ。親しみのある感情。
目を、逸らしたくなるような。
……恐怖。
恐怖ではないか。これは。
そう思った瞬間、寒気に襲われた。
わああああああん。
身体が硬直する。
なんだ今の音は。音? 今僕は音を聞いたのか?
部屋を見回すが、変わった様子はない。
しかし、ずうんと重いものが腹の下にやって来たような感覚。
部屋の中の光量は全く変わらないままで、すべてが暗くなっていく感じ。
ビリビリと僕の中の古い、人体に今はもうないはずの感覚器がその気配をとらえていく。
うぶ毛が逆立つ。
死者の霊魂が。凍てつくような悪意が。
今、僕らの周りに湧き出てこようとしていた。
「動くな」
師匠が短く言った。
やばい。
これはやばい。近すぎる。
まったく心構えができていなかった僕はパニック状態に陥りかけた。
知らぬ間に広い畳のそこかしこから、人の頭のような形をした真っ黒いなにかがいくつもいくつも生えてきている。
前を向いたまま動けない僕の首の後ろにも、なにかがいた。無数の気配。吐き気のするような。
外よりいくぶんかましだった蒸し暑さも、そのまま変質したようにどろりとした濃密な冷たさとなって、部屋の中に充満している。
僕は自分の霊感が異常に高ぶっているのがどうしようもなく恐ろしかった。相手の正体も分からない。
倉持氏もその気配に気付いているのか、顔を硬直させたままぶるぶると頬の肉を小刻みに震わせていた。
支援
さっきまで。
さっきまでなにも感じなかったのに。どうして?
畳からずるりと出てきた黒い影たちが、浮遊を始める。
人の形をしている。
視界の端をかすめたそれは首のあたりが千切れかけ、皮一枚で繋がっているようにぶらぶらと揺れているように見えた。
黒く塗りつぶされているようで顔かたちなどはまったく分からない。
ただ、その黒いものが笑っているような気がするのだった。
いくつもの影が部屋の中を浮遊し、そのどれもが身体の一部が欠けていた。
心臓が早く脈打ちすぎて止まりそうだ。
確かに家の中で、変な気配や音、心霊現象のようなことが起こっていると聞いていたのに。
それを、コレクションの中に人を殺した曰くつきの刀があって欲しいと願う心理が生み出した過剰な錯覚だろうと高をくくってしまっていた。
どうしたらいい。どうしたらいい。
視界が暗くなっていく。どろどろと部屋ごと溶けて行くようだ。
師匠が、動いた。
それに反応して倉持氏がそばにあった掛台から脇差の一振りを掴み、中腰のまま胸元に引き寄せる。
怯えた表情だ。周囲を包む異様な空気を察知しているらしい。
師匠は構わず一歩前に踏み出す。そして倉持氏の目を見据える。
「戦争に、行きましたね」
その言葉に老人は目を剥く。
「北じゃない。……南方ですね」
師匠はちらりと横目で影を追うような仕草を見せた。
見えているのか、あの黒い影をもっと詳細に。
「あなたはそこで、人を斬り殺しましたね。軍刀で」
口をへの字にして泣きそうな顔をする依頼人に、容赦なく言葉が浴びせられる。
「斬り口が深すぎる。戦場じゃない。無抵抗の相手に対して振り下ろされた刃ですね」師匠の瞳が大きくなり、左目の下に指が這う。
そろそろ支援
支援〜
支援
しえん!待ってた!
366 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/02(金) 23:46:51 ID:jRX80iX+0
本日2匹目のさるかな?
00分まで長過ぎるので支援age
367 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/02(金) 23:50:45 ID:6C73ARb90
支援!
やべー、盛り上がってるところでおさるさんか
支援
支援!!
支援しますよ
「戦時中のことです。今それを非難するつもりはありません。しかし戦争が終わって新しい生活を送り始めても、あなたにはその凄惨な記憶ががずっと圧し掛かっていた。夜、うなされただろうと思います。死者の恨み、怨念を恐れたはずです。
日々得体の知れない物音に、気配に、怯えていたでしょう。だから……」
師匠は立ち並ぶ刀剣に目をやった。
「勉強会で人を斬ったという刀を見てから、あなたは『上書き』を考えたのです。あるいは無意識に。人を斬り殺した刀が家にあれば、そんな気配や物音も、すべてその刀に憑いているものと思い込めるからです」
そうか。
分かった。
そのために霊能力を雇って来て、そのお墨付きを貰いたかったのか。
倉持氏はなにも言えずにだだ呼吸だけが荒い。鞘の中で刀がカタカタと鳴っている。
「今日私はこの家にお邪魔して以来、なんの霊的な気配も感じませんでした。それは刀を見ても同じでした。しかしそんな霊は刀に憑いてはいないという先ほどの返答とともに、どこにもなかったはずのこの霊気が吹き出してきました。
今まで自分を苦しめた悪霊が、自分ではなく刀に憑いていたものなのかも知れないという期待感によってさっきまでその存在を保留されていたからです。斬った軍刀はここになくとも、死者の一部はあなたの心の中に残っていた。
それが私の言葉で存在を肯定され、湧き出して来たのです」
こうなってはもう。
と師匠は言った。
「死者の念なのか、あなたの心が生み出したものなのか、区別がつけられない」
嘲笑が周囲から流れてくるような錯覚があった。気持ちの悪い気配が、薄くなったり濃くなったりしながら周りを漂っている。
気がつくと鞘の音が止まっていた。
「なにをいう。なにを……なにを……わかったような……」
ぼそぼそと口の中で繰り返す倉持氏の目に暗い色が灯っている。その目は師匠を睨み付けていた。正常と異常の境でわだかまるような目の色だった。
空気が張り詰める。座ったまま、重心が少しずつ動いていく。そろそろと鞘を腰に押し付けていく。
居合いをやっている! この老人は。
無数の針で刺されるような殺気を感じながら、自分の汗が引いていくのが分かる。
師匠との距離は、間合いだ。
息が短く、荒くなる。
左手の親指が鯉口にかかる。
右手の指が柄の下に隠れる。
すべての動きが止まる。
抜く。
そう思った瞬間、僕は機先を制して手元にあったガラス製の灰皿を指に引っ掛けるようにして、投げつけていた。
「あっ」
という声がして、同時に柄の先に硬いものが当たる衝撃音がした。
老人は左手を押さえ、脇差は鞘に収まったまま畳の上に落ちる。周囲のざわざわした影たちが一瞬で引いていく気配があった。
「貴様ッ」
物凄い形相で唸る老人を尻目に、僕は目の前の師匠の肩を抱いた。
「逃げますよ」
有無を言わせず抱きかかえるように走り出そうとする。
師匠はそれに抵抗しようとはしなかったが、ただ一言、老人に向かって短く言い放った。
「業だ。付き合え。一生」
そして畳を蹴って部屋を出た。
出るとき、ぬるん、という嫌な感触があった。自分を包む空気が正常に戻る。
背後からわめき声が追いかけて来る。正気が疑われる。危険だった。
廊下を走り抜け、玄関の靴を持ち、履く余裕もなく太陽の下に飛び出てから石畳の道を一目散に駆けた。
自転車に飛び乗り、師匠の重さが加わるのを確認してからペダルを思い切り踏んだ。
「あ」
と背中から師匠の声。
ギクリとして、それでも自転車をこぎ出しながら「なんです」と訊いた。
「金、もらうの忘れた」
それどころじゃないでしょう。
そう言い返して、僕は全速力でその立派な家の門から離れ始めたのだった。
後日。
小川調査事務所のフロアで僕と師匠は上機嫌の所長と向かい合ってた。
「倉持さんからお金が入ったよ」
報告を聞いて諦めていたそうだが、昨日本人がやって来て規定の料金の十倍を超えるお金を置いていったのだという。
僕と師匠は顔を見合わせた。
「取り乱して悪かったって。あの時のことは他言無用に願うってさ。そりゃまあこちらには守秘義務ってものがあるからね。もちろん、と答えといたよ」
口止め料も含まれているわけか。確かにへたをすると殺人未遂だからな。
思い出していまさらゾッとする。
「ああ、それからこれ。きみたちにと」
デスクの下から大きな箱を取り出して来る。桐製の立派な刀箱だった。
開けると中には目算六十センチ弱の刀剣が一振り入っている。脇差だ。
「え? これをどうするんですって?」
動悸が早くなってきた。
「だから、くれるって」
凄い。こんな高価なものを。
ついていた登録証と保存鑑定書を読みながら興奮を抑えられなかった。
師匠は笑って「もらっとけ」と言った。僕に譲ってくれるらしい。価値が分かっているのだろうか。
「あと最後に伝えてくれって。……『わかりました』ってさ。なんのことだ」
師匠はそれを聞いて、嬉しそうな顔をした。ひょっとして脇差を抱える僕よりも。
その僕は脇差の柄のところに目立つ傷があるのに気が付いた。
あの時の灰皿か。
しっかりしてるな。
倉持氏のいかめしい顔を思い出して、なんだかおかしくなった。
来週
375 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/03(土) 00:02:56 ID:Fdb8bDEoO
良かった!
久しぶりにわくわくした!
乙です
脇差しは後々役に立つ…のかな?
来週も楽しみにしてます
ウニ乙!!
また来週なんて嬉しすぐる!
乙!!
楽しかったです
次もwktk
ウニさん乙でしたノシ
来週も楽しみです〜
ウニさん乙です!
手に汗握ったー!
来週も楽しみに待ってます。
無理せず、書きたいときに書きたいものを書いて下さいね。
>>374 ウニ乙〜楽しく拝見してるよ
わざとだろうけど、師匠のビジュアルってほとんど書かれてないよね。
俺の中ではロッチのメガネの方みたいなキャラが出来てしまったw
また気長に待ってるよ〜
382 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/03(土) 00:10:25 ID:iJ8d18Yr0
ウニ氏乙!
引き込まれたわ〜
来週じゃなくても待ってる!
ウニ乙。
緊張感がビシビシ伝わってきました。
ウニ乙
また来週も読めるかもしれないと思うとたまらん
ウニさん乙です
来週までまた仕事頑張れる!
ウニ乙〜
来週か!待ってる。
乙です!
今読み終わりました。ウニさん乙です。自分的には洒落怖だった。w
389 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/03(土) 03:02:15 ID:h4BRkJvwO
ウニさん乙です!!ぐいぐい引き込まれました!!おもしろかった!!
なにっ! 来週!? あっ、作品の余韻が凄かったのでサラッと流してしまったが、
確かに「来週」って書いてある!!!
失せ者捜しはウニさんの作品ではないんですか?話が繋がるような繋がらないような…
392 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/03(土) 04:15:25 ID:flCqyQA5O
作者も毒者もドクソレス乙!
393 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/03(土) 08:05:13 ID:bpuG7mTc0
????
この話のどこがおもしろいの?
まぁ人それぞれだろうけど、それにしてもこれは・・・。
怖くもなければ緊張感もまるで無い。
現実感も無さ過ぎるし文章は稚拙でまるで小学生の学級新聞だぞ?
こんな文章で満足できるほどみんな退屈しているのか?
ってかバカなの?
↑お前も言えた程ではないがな
ウニ乙
心霊現象だけにとどまらず
その後ろの見えない背景が書かれる展開が好きなんで楽しく読み終えたよ
ウニお疲れ。
ウニが師匠から印鑑代もらえたのかがきになったしまったw
ウニは印鑑代もらえないだろうな
ウニさん乙!!!
今回も面白かったです!来週楽しみにしてますよ
ウニ乙
来週も楽しみだ
>>396 え?師匠と加奈子さんの話じゃねーの?
400 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/03(土) 17:37:35 ID:y+Ib8TpsO
401 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/03(土) 17:39:11 ID:y+Ib8TpsO
ウニ乙!
非常に良かった!
>>397は分かって書いてるだろ。
ウニおもしろかった!来週も楽しみ!
405 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/04(日) 08:57:04 ID:5RM7Vg8cO
も少し刀剣について勉強してから書いた方がいいね。
>>405 ageるならどの辺がおかしかったのか書いてこうよ
そうすればウニも勉強になるし
408 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/04(日) 12:38:15 ID:36ct1Mb+0
刀、おもしろい!
この手の奴が書く訳無いだろ
410 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/04(日) 12:51:57 ID:5RM7Vg8cO
刀ってのは古美術の中でも特に扱いが難しく、通常は素人の目に触れる事はめったに無い。
その刀にまつわる逸話もまたしかり。
おそらく作者は銀座や愛宕の表通りに構えた店を想像したんじゃないかな。
まして蛍光灯やガラス戸から差し込む陽光の下で鑑定なんてありえないよ。
ってか人からタダでモノを教わろうという根性ではいいものは書けないね。
刀そおまっ
オーラソーマみたいなもんか
>>410 表通りに構えた店って何の話だかわかんないし
鑑定なんかしてねえし、そもそもウニは教えてとか言ってねえwww
田舎の後編待ってます。
>>410 >刀ってのは古美術の中でも特に扱いが難しく、通常は素人の目に触れる事はめったに無い。
その刀にまつわる逸話もまたしかり。
古美術なんてわからんが、刀剣類は警察に届出が要るし、そうかもと思うんだが
>おそらく作者は銀座や愛宕の表通りに構えた店を想像したんじゃないかな。
まして蛍光灯やガラス戸から差し込む陽光の下で鑑定なんてありえないよ。
これはどこから出てきたんだw
流し読みして、古美術品の刀として鑑定したと読み違えたのか?
>ってか人からタダでモノを教わろうという根性ではいいものは書けないね。
言い掛かりw
414 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/04(日) 13:55:38 ID:fXhQfzVg0
ageて言え
415 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/04(日) 14:32:16 ID:LWLYC7nOO
真面目に質問だから冷やかし抜きで教えて!
俺は霊感0だと思う。
パチンコを適度に好きで遊ぶけど霊感強い人からしたらパチンコ屋に入って幽霊と遭遇する事あるの?
楽しい事だけじゃなく恨み、自殺とか黒い部分も大きく関わる業界だしパチンコ屋に幽霊存在するんかな。
416 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/04(日) 14:44:13 ID:fXhQfzVg0
____
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| (・) (・) |
(6 つ | / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ___ | < うるせー馬鹿!
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>>415 噂なら聞いたことがある。
パチ屋のトイレで、負けた客が首吊った。
客が当然人が死んだトイレに行きたがらないので、トイレを改装。
そこで霊を見たとか噂がたった。
しばらく営業してたみたいだけど、改装して水周りが全部場所変わったw
近所のパチ屋で飛び降り何件かあった。
怨みやら念が店内に充満してんのかね。前に師匠でパチの話あったけど今度は
ぼやけているけれどそれがくっきりとわかる欲、黒い念の塊が渦巻き澱んでいる
みたいな切り口の語る話を読んでみたいな
CR師匠シリーズは秀逸だったと思う
>通常は素人の目に触れる事はめったに無い。
刀売ってる店なんて、そこらのスーパーみたく沢山あるワケじゃないしね。
そりゃあまり見る機会は無いと思う。
でも売ってるとこには普通に売ってるし、登録もハガキ送るだけで超簡単。
特別なもんじゃあないよ。
422 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/04(日) 23:32:04 ID:5RM7Vg8cO
そうだよねー。
ゲームのアイテムと同じだよねー、坊や。
苦しそうだなw
ID:5RM7Vg8cO
思った通り叩かれてんなw
425 :
sage:2009/10/05(月) 05:31:54 ID:kOA0VBv7O
霊力判別は会わないと出来ないですよ。
しかし、霊感は誰にも必ずあります。強いか弱い、または感じやすいか、鈍いかだけです。
偉そうに書くからには例題をひとつ
浜田雅功、石原良純
この二人どちらでもいいですが、見て何か感じます?分かる人なら必ずある違和感を感じるはずです。
ちなみに二人は関係ないですよ。ただ、同じような状態にあるだけです。
では、のちほど
>>425 sageはメール欄に入れるんだよ、坊や。
>まして蛍光灯やガラス戸から差し込む陽光の下で鑑定なんてありえないよ。
コレが気になる
じゃあ何を光源にするの?蝋燭?
428 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/05(月) 09:24:45 ID:kryJDrLTO
パチンコ屋で自殺かぁ
こりゃ幽霊いても不思議じゃないわな
はじめに…
「一人多いわけ」という話をご存知ですか?
ちょっと不可思議な話で、あちらこちらで様々な考察がされている話です。
今回のこれは、それについての話になります。
なので、元ネタを知っていたほうが分かりやすいかも知れません…。
あしからず。
[40人目の子供]
1/11
雨月「ある爆発事故で、亡くなった子供の遺体が1つ多かったって話、知っているか?」
我が愛しの神尾さん宅に、雨月と鮎川さんと俺という、いつもの4人が集まったときの事のこと。
世の中の不可思議な話を4人でああだこうだと話しているとき、雨月が誰にとも無く聞いてきた。
鮎川「あぁ、あれ?理科室が爆発して、先生と生徒が死んじゃって…ってやつ。「一人多いわけ」って話だっけ」
雨月「そう、それ」
鮎川さんが真っ先に反応する。さすが、自称オカルトマニアだ。
しかし俺も負けていない。
俺「知ってる知ってる。バラバラになった遺体を並べたら、子供の遺体が1つ多かった、ってやつだよな」
神尾「そういえば、そんなのあったね」
この道じゃそれなりに有名な話なので、神尾さんも知っているみたいだ。
簡単に説明すると――
ある日、生徒39人と教師1人が理科室で実験をしていた。
ガス漏れか何かで理科室が爆発。全員木っ端微塵。骨や肉片になってしまう。
事故後にそれらを並べると、教室にいた分だけの白骨死体と余り物が完成する。
…しかし検察官が確認すると、何故か子供の遺体の数が40ある。
おかしいなと首を傾げていると、他の検察官が「数が合っている」と叫んだ、という話だ。
…詳しくはググッてね、っと。
2/11
神尾「当日は晴れだったとか、翌日は予報どおり雨になったとか、天気の話も絡んでいるやつよね」
俺「だっけね。確か、解答が無い…とか言う話だったような」
神尾「でも、いくつかの説はあったよね」
そう、いくつかあったな。えーっと…
鮎川「あれよね。天気の話があるから、そこから考えたテルテル坊主説…って言うのかな?実は最初から、子供の死体が1つ吊るされていました、って」
俺「あったあった」
でもまぁ、実際に死体が吊るされていたら、実験云々の前に大騒ぎになるだろう。
神尾「人体模型か骨格標本の骨でした、って説もあるよね」
鮎川「標本が子供の骨で作られていました、って話よね。ちょっと無理がある気がするけど…」
確かに苦しい。骨格標本を、わざわざ本物の人骨で作るって?しかも子供の?
それに、骨の保存方法に詳しい訳じゃないけど、そんなに綺麗なものは作れない気がする。
俺「一番多い…ってか、支持されているのが、原爆説じゃない?」
神尾「あれね。1人多い子供ってのが原爆の名前の”リトルボーイ”のことで、39ってのは広島と長崎の被害者の数が合わせて39万人、ってやつ」
俺「そう」
天気についても、当日は晴れで翌日は雨…黒い雨が降った、ってことで、何となく辻褄があう感じだ。
3/11
鮎川「んー…でも、私、その説はどうもね…」
神尾「古乃羽は嫌い?」
鮎川「だって…生徒の数が39人、って言っているのに、それが突然39万人のことです、って言われても…ねぇ」
俺「まぁ、いきなり1万倍しているけど、その辺は…な」
鮎川「40って数字が出ているけど、39万に原爆の1を足しても、40にはならないじゃない?39万と1よ」
原爆以外の焼夷弾とか、もろもろ合わせて1万に…ってのは苦しいか。
鮎川「あと一番気になるのが、なんでリトルボーイだけなの?って所かな。
両方あわせての数字なら、…ファットマンだっけ。長崎の方。そっちは足さないのかな?って」
…そう言われてみればそうか。原爆説なら、そっちの分も足すのが自然な気がする。
ファットマン=大人とでもして、大人の遺体は2つありました、と。
俺「なるほどなぁ…」
神尾「広島の方だけ、ってことは?」
鮎川「広島の方だけの被害者じゃ、39万も居ないわ。調べたことあるけど、確か15万人くらいよ」
神尾「じゃあほら、その時だけじゃなくて、その後の後遺症とかによる死者も合わせれば」
鮎川「それだと…どうなんだろ?39万も居るのかなぁ…」
首を傾げる鮎川さん。
鮎川「でもさ、理科室に居た人は全員木っ端微塵でしょ?その場で亡くなった人以外の人数も考えるなら…例えば、39人中15人が即死で、残り24人は大怪我で後日・・・ってならない?」
…あぁ。確かにそうだ。
それにこの話は、検察官が最後に「数が合っている」と叫ぶのだ。それの意味も分からなくなる。
そして更に、もう1つ。一緒に吹き飛んだ先生1名ってのはどうなる?これも1万倍して1万人?何の人数だ?どうも説明が付かない。
支援
4/11
神尾「他にも、先生が妊娠していたとか、教室に死体が埋まっていたとか、色々あるよね」
俺「あるね…。でも結局、どれにも突っ込みどころがあって、これだ、っていう解答が無いんだよな」
鮎川「だから、話自体には実は意味が無い、ともされているよね」
そう。答えが無いのが答え、というやつだ。オカルトとしてはそういうのも有りなのだろう。
さて、ところで…?
俺「で…雨月は何かあるのか?これについて」
話を振ってきたということは、何かあるのだろう。
雨月「あぁ。…と言っても、また姉貴の受け売りなんだけどな」
神尾「へぇ…。舞さんでも、こういうのに興味持ったりするんだ」
神尾さんが意外そうに言う。
雨月「俺が聞いてみたんだよ。こういう話があるんだけど、どう思う?って」
鮎川「そうしたら?」
鮎川さんが訪ねる。気のせいか…いや、きっと気のせいではないだろう。目がリンリンと輝いている。
雨月「こんな説はどう?って話をしてくれたよ」
俺「ほぉ…」
神尾「どんなの?」
雨月「えーっと…」
そう言って、雨月が姿勢を正して話を始める。俺たちも思わず背筋を伸ばし、話を聞くことにした。
5/11
雨月「まず…あれだ。テルテル坊主や死体が埋められていた説みたいに、実は○○がありました、ってのは考えない、ってさ」
鮎川「ふぅん…」
まぁ…そうか。どちらもそもそも無理があるし、検察官が「数が合っている」と叫んだ意味が分からなくなる。
この解答は、検察官がその場で理解できることじゃないといけないんだ。
それと今思い出したが、話の中では「近所で行方不明になった子供は居ない」とされていた。それに対して、”実は”少し遠いところで子供が…とか言い出したら、キリがない。
雨月「あと、天気の話は無視するって。ミスリードに思えるから」
神尾「あら…」
俺「ミスリード…引っ掛けか」
ちょっと強引な気がするが…?
雨月「話として不自然で脈絡が無いし、謎掛けの話なら、ミスリードが含まれている可能性も十分考えられるから、だってさ」
神尾「不自然と言えば、そうかも知れないけど…。でも、逆にそれがキーになっている、ってことも」
雨月「うん。俺もそう思って言ったけど、この天気の話ってさ、当日の晴れの方はともかく、数を調べた翌日の雨って、遺体の数には関係ないんだよね」
神尾「ん…?」
俺&鮎川「どういう意味?」
鮎川さんとハモッて質問する。
雨月「この話はさ、検察官が子供の遺体の数を確認したら40でした、って話なんだよな」
俺「だな」
雨月「話の中に出てくる検察官にとってはさ、その翌日の天気なんて関係ないだろ?子供の遺体は、今、目の前に40あるんだよ」
神尾「あぁ…そういうこと」
???
さっぱりだ。
6/11
神尾「40ある時点ですでに謎は生まれている訳で、翌日の天気なんて関係ない、ってことね」
雨月「そう。姉貴はそう考えたみたい」
俺「あぁ、なるほど…」
そういう考えはなかった。しかし検察官の立場に立ってみれば、確かにそうだろう。
既に今日、そこに子供の遺体が40あるんだ。
神尾「でも、それってつまり…この話を、実際に起きた事として考えている、ってことなのかな」
雨月「そうだね。実際に起きる可能性がある話だ、ってさ」
俺「へ?実際に遺体が増えたって…?」
その考えもなかった。これが本当に起きた事と仮定して…なんて、考えた事もない。
鮎川「それでそれで?」
鮎川さんが促す。
雨月「それで…だ。姉貴が言うには、話を追っていけば自然と1つの答えに辿り着くんじゃない?ってさ」
俺「む…。何回も追った記憶があるんだけどな…」
鮎川「私も…。これ、結構考えたのよね」
でもここで改めて考えてみれば、何か分かるかもしれない。
俺たちは雨月に従って、話をもう一度追ってみることにした。…実際に起きた事と考えて。
7/11
雨月「理科室には、生徒39人と先生が1人。それ以外は誰も居ないのが大前提。あと、当然生徒は子供で、先生は大人。これもいいな?」
俺「うむ」
頭の中に、小学校の理科室が浮かぶ。実験の時間は何だか楽しくて、好きだった。
雨月「そこで大爆発。全員が木っ端微塵で、骨と肉片になる」
頭の中の理科室を爆発させる…のは、経験がないから無理だった。
まぁとにかく、映画の爆発シーンを思い浮かべ、骨を散らばらせる。…肉片はあまり想像したくない。
雨月「で…それを、検察官が体育館だっけ?そこに並べるんだ」
俺は検察官になり、バラバラになった骨と肉片を組み合わせ、並べていく。
1つ1つ丁寧に、地味で気味の悪い作業だが…
…あれ?
俺「これって…、無理じゃないか?」
考えてみれば、そうだった。
ここにあるのは、生徒39人と先生1人…つまり40人分のバラバラになった骨だ。
これを全部組み合わせて並べるなんて、出来るだろうか?
神尾「ちょっと無理よね…40人分でしょ?仮に大人と子供の区別がついたとしても、子供は39人分…」
鮎川「あ。この辺にヒントがある?」
雨月「ヒントに…なるのかな?でも、なんとか並べられると思うんだよね。個々に特長のあるパーツならさ。頭とか胴、腕や足とかなら」
神尾「そっか。正確には無理だけど、ある程度なら可能かもね」
8/11
雨月「で、それらを並べ終わると…白骨死体と余り物ができるわけだ」
俺「あぁ、そうだな」
鮎川「で、そのときの子供の数が…40なのよね」
雨月「うん」
神尾「…どこかに解答があったのかな」
俺「うーん…?」
俺は首を傾げる。
雨月「話はここからなんだ。…ちょっと難しいかも知れないけどさ」
鮎川「何?」
雨月「この時の白骨死体って、どんな感じになっていると思う?」
俺「ん…」
白骨死体。所々肉片が付いていたりする、ちょっとグロい死体だ。
俺「…気持ち悪いな」
神尾「40体が入り乱れていたから…パーツはあべこべ。でも一応、人の形はしているかな」
雨月「一応、だよね。人の形はしているけど、完璧じゃない。どこかしら欠けている箇所はあるはず」
鮎川「うん…。そうなるよね」
雨月「その欠けたところが、余り物だ」
俺「だな」
なんてことはない。そのままの話に思えるが…?
9/11
神尾「…えっ!?」
突然神尾さんが驚きの声をあげる。
俺「ど、どうした?」
鮎川「美加、何か分かったの?」
神尾「どうだろう…なんか凄いこと考えちゃった。ヤダヤダ…」
そういって自分の両肩を抱く神尾さん。何だろう…?
雨月「もし…、さ」
雨月が言う。
俺「もし?」
雨月「ある子供は頭の一部分が欠けていたとする」
俺「ふむ…」
雨月「またある子供は腕の一部分が、ある子供は足の一部分が欠けていたとする」
鮎川「え…」
雨月「そうやって集まるのは、39人分の欠けた部分」
鮎川「うわ、嘘…ヤダ…」
鮎川さんが口を押さえる。…なんだなんだ?
また1人だけ分からない俺。
しかしそんな俺も、次の雨月の一言で全てを理解した。
雨月「その欠けた部分を集めたとき、それが人の形になっていたら…?」
俺「あ…」
俺にも分かった。
それは39人から生まれた、40人目の子供だ。
私怨&乙
10/11
俺「偶然…?」
ただの謎掛け話だと思っていたが、急にオカルト色が強くなった。
だけど、そんな事が起きるだろうか?
余った部分が偶然、人の形になるって…なんか無理があるような気がするぞ?
雨月「偶然ではない、ってさ。姉貴が言うには、検分が目的だったなら起きうることだとさ」
神尾「あ、そうか…」
俺「どういうこと?」
神尾「ほら、バラバラになった骨の山があるとするじゃない?現場からかき集めた、肉片が付いている骨の山…ちょっと気持ち悪いね。
そこから、1つのパーツを取り出して並べていくのよ。適当にじゃなく、人型をイメージして、それを完成させる目的で」
俺「だな」
神尾「その途中でさ、手に取った骨が、既に他に置いてある骨の欠けた部分であると気付かないで、別のところに並べたら…?」
俺「ふむ…」
そうか。それが、40人目の子供が生まれるキッカケとなる訳だ。
後は、人型を作る目的で、そこに他のパーツを組み合わせていくだけだ。
俺「ん…?でも、気付かずに並べるものかな?数えてみれば、それが40体目だ、って分かるよな」
雨月「それが、作業中は遺体の数を数えてないんだ。…だって、40体あるのに気付いたのは、並べ終わってからだろ?」
あ…なるほど。
数を数えずに並べていたという事実も、その要因になる訳だ。
11/11
鮎川「実際には、ミスがあってもなくても、中途半端な体がいくつか完成するだろうね」
雨月「爆発の具合は分からないけど、どうしても完璧にはならない遺体は、いくつかあるだろうな」
そうだ。つまり、仮に足が一本無い遺体でも、それを”1体”と数えただろう。
完全に粉微塵になって、復元できない部分もあるはずだから。
俺「そういった要素で出来たのが、40人目の子供ってことか」
雨月「あくまでも、姉貴が考えた1つの答えとして、な」
1つの答え。そうだろう。正解なんて分からないし、これだってきっと、ちょっと考えれば突っ込みどころはあるのだろう。
…しかし、だ。
この説だと、最後の検察官の叫びにも頷ける。
実際の子供の数は「合っている」のだ。子供は39人。この数に間違いは無い。
神尾「なるほどねぇ…」
鮎川「なんか不気味な話になったね…」
雨月「で、不気味と言えばさ、最後に姉貴にこんなこと言われたよ。…イジワルでさ」
鮎川「何?」
雨月「身元が分かっている39人の生徒と、1人の先生。この分の供養はできたと思うんだ」
俺「そうだろうな」
雨月「でも、そこで作られてしまった40人目の子供。死体から作られた、この子供はどうなったのか?
自分が誰かも分からないこの子は、ちゃんと成仏できたと思う?って」
443 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/05(月) 13:06:28 ID:E+gcv3NlO
丸パクりだろこれはw
異人館村殺人事件を思い出した。
以前より読みやすくなっているけど、使い古されたネタと解釈だからちょっと…。
>>446 一々突っ込まないでも… 『色んな意味で』 というニュアンスなんだがな。
察しろ。
448 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/05(月) 15:00:32 ID:IYZsDlsT0
. ┌一´ ̄`ー┐
\_____/
l A|
, L__」‐ 、 __
/ \ ヽ ____________
// `∨ /
,ィ^ヽi〈 , ´ O | |
. l | ||  ̄ ○ ', < うるせー馬鹿!!
. ヾ__,ハ _(_0 0)} |
. l l \ `ー‐′/ \____________
. /`ヽ__/ >ー―‐-- '´ \
ヽ_ ノ / {>ロ<} _ ノ }
. l_lヽ/ /o o〈_|__ノ,
. / /o o ',
〈 /o o |
. \l________/
ヽ_/ ヽ_/
. ヒ_」 V⌒)
 ̄
DNA鑑定
>434
>目がリンリンと輝いている。
爛々(ランラン)と輝くんじゃないんだw
ここだけ妙に気になってしまった。
451 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/05(月) 19:44:21 ID:IYZsDlsT0
┌一´ ̄`ー┐
\_____/
l A|
, L__」‐ 、 __
/ \ ヽ ____________
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,ィ^ヽi〈 , ´ ((●)| |
. l | ||  ̄ ((●)) ', < うるせー馬鹿!!
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ヽ_ ノ / {>ロ<} _ ノ }
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ヽ_/ ヽ_/
. ヒ_」 V⌒)
 ̄
>>444 異人館村殺人事件て金田一少年の事件簿で
島田荘司の占星術殺人事件のトリックをパクって訴えられた奴だっけ
ドラマもこの回だけ欠番で収録されてないとか
454 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/05(月) 23:18:59 ID:n4MYzno0O
俺はどちらか読まないと殺すって言われたら…
どちらも読まないな。
でも師匠のお袋にヤらせるって言われたら
赤緑を読むね。
ウニの話はありきたりでおもしろくないんだよね。
赤緑の方がギャグとしてはまだ読める。
>>425 二人とも自分的には気に入らない芸能人という共通点しか思いつかない。
459 :
奈々氏:2009/10/06(火) 04:12:21 ID:PCSh759N0
おととい占い師に「あなたには霊感がある」と言われました。
今まで幻聴の言葉と思って聞いていましたが、霊言だったなんてー。
正直、感激しています。ここで勉強させていただきます。
よろしくお願いします。ではまた。
461 :
奈々氏:2009/10/06(火) 04:36:30 ID:PCSh759N0
462 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/06(火) 05:58:22 ID:/tA0pecEO
彼氏が見える人のようです。
今は営業マンなのですが、昔は検査技師とか言う医療関係の仕事をしていた頃見えるようになったらしい。
なんでも、
ある病院に赴任した際、地下霊安室の隣の部屋にあるホルマリン漬けの遺体(各部位にばらされてる)を洗って新しいホルマリンに入れかえる作業を夜中にやらされたそうな。したっぱは辛いね。
その当時は幽霊がいるかどうかなんて気にもならなかったらしいのですが、流石に怖いです。同期の人と一緒にびびりながら、樽(?)にずぼずぼと入った人の足を洗い続け、さっさと片付けようとした。
が、
黙々と洗っていたその時、その場所には自分達二人(生きてる人間は)しかいないはずなのに物音がしたので作業の手を止めてしまったそうな。彼が言うには、気がついたと言うことを知らせてしまった、ということらしいです。
一緒にいた人にも聞こえたらしく、二人で顔を見合わせたその時、
ガンっとすごい音をたてて樽が跳ねた!
んだそうな。
もともとかなり重い樽が、内側から蹴ったかのように…
本気で逃げ出したかった。けど、ふと『ここで逃げたら後々ヤバそう』と思ったんだと。
そこで内線があるのを思い出し、なんかあったら電話しろと言われていたのでとりあえずナースコール。婦長さんがすぐに出てくれました。ことの次第を説明すると、驚くどころか『よく逃げなかったね』と。
どうやら、新人はみんなやらされる仕事で、ほとんどが同じ目に会ってるんだとか。今までの人はそっこー逃げてきちゃったらしい。でも結局最後までやらされるので意味がない。むしろ一人残らず近い内に怪我をする。足を。既に恒例行事になってるような話をされた。
電話を繋ぎっぱなしにして、半べそ状態で、音をたてた樽も開け、足が飛び出してくることもなく、なんとか全てを洗い終え、帰還。
逃げなかった奴は初めてだったらしい。
怪我もすることなく、その一件は終わったが、
それ以来、見えちゃうようになったそうな。
満月と半月の前後限定で。
私が『なんかここホコリっぽいねー』って言ったら『ん、これ自縛霊の残骸。見えるんじゃんw』って突然言うもんだからもう二度と行けない…なんも見えなくていい(´・ω・`)
長文駄文ごめんなさいm(_ _)m
464 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/06(火) 06:06:03 ID:/tA0pecEO
466 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/06(火) 06:23:53 ID:/tA0pecEO
>>465 わかた
もしもしだからちょっと遅くなるわ
ちょっと待っててね
467 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/06(火) 06:50:38 ID:/tA0pecEO
さっきの『自縛霊の残骸』の話です。
そこそこ田舎の駅近くの十字路の一角に、昔(と言っても5年くらい前)あんまり雰囲気のよろしくない病院がありました。
そこは今おしゃれめなマンションになってて跡形もありません。
その隣には病院があった頃からあるビルの1階にボロいゲーセンがあって、で、そこに好きな音ゲが回数増ししてあるからよく彼に連れてってもらいました。
一人で入るにはちょっと治安が悪いのと、何故だかあんまり近寄りたくなかったからでし。
その嫌な感じを私が『ホコリっぽい』と表現したのでした。
見えないけど細かいチリか何かが漂ってるように思えたからです。
そしたら、それは『自縛霊の残骸』なんだと言うのです。
今は無い病院の方に向かって扉と通路があるので、マンションになってから流れ込んだ状態みたいです。
自縛霊も時間がたつと劣化して崩れてくんだと言ってました。
そこまで崩れてるとほとんど影響はないとも言ってるのですがやっぱり怖いです。
すみません、遅くなりました
病院時代の話の方がいいかな?
468 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/06(火) 06:59:56 ID:/tA0pecEO
ちなみに、彼が病院にいた頃の話はホルマリン漬けの話が一番怖かった話です。本人が言うにはレベル3くらい。
それ以上は話すとちょっと影響があるらしいのでまだ聞いてないです。
>>468 乙!
面白かったよ。聞ける範囲で聞いて欲しい。
さすがに今回の赤緑氏、ちょっとひどいな
タイトルはウニ氏の『三人目の大人』を彷彿させるし、オカルト板の古典を引用し展開するのも同氏の十八番
内容に関しては…赤緑氏は若そうだし、掲載当初から既に島田荘司へのオマージュとして発表された金田一少年〜の方しか知らなかった可能性の方が高いけれど
赤緑氏のような軽い感じの作風も嫌いではないのだけれど、これだけパクリを重ねられるとさすがに…
ちょっとスレ住人をなめ過ぎでは?
>>468 自縛霊が不変の存在だとしたら、視える人にとってはエラい事だろうな。
古い時代の霊の目撃例が少ないのも、そういう理由からかもね。
とりあえず乙。また頼むぜ。
472 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/06(火) 14:38:30 ID:FCaYLjzb0
おまえらもう超能力板行けよ。
473 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/06(火) 16:13:40 ID:zaDudSJBO
どうしても赤緑氏の話は、セリフの前の名前表記が気になる
てか、読んでて冷める
それに情景や人物の動作の説明が足らない…というよりほとんどない
だから、読んでてその場面の映像が頭に浮かばないし、
それぞれのキャラの個性が見えてこない
あと、会話の中の無駄な相づちが読んでて鬱陶しい
てことで、誰かが言ってたようにセリフだけの台本の域を越えないレベル
もっと描写が欲しいよな。かといって、
吉里吉里人の主人公の様に書かれても困るが。
どうも描写がキャラクターとその表情にばかり向いて
状況・風景・動作 が無いんだよね。
ある程度は想像で補えなくもないけど、
それは読者への甘えだろうから、
どっぷりと自分の世界を表現して欲しい。
っつーとウニ系の長文になる。
この程度の三文小説家はゴロッゴロいるけど、
次のステップとして、言葉の略ではなく省を目指し、
語彙を駆使して奇麗にまとめる
なんてことが出来たら一流作家になるしなあ、
まあ頑張ってとしか言い様が無い罠
476 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/06(火) 18:14:29 ID:/tA0pecEO
>>471 自縛霊が劣化して崩れてくなんて聞いたこともなかったからわたしもびっくりした
前に聞いてるのがいくつかあるから書きためて今晩ぽつぽつ投下しようと思うよ
霊感持ちの母さんの話はスレチだろうか?
母さんがおおらかな人なんで、あんまり怖くなくてほのぼの系になってしまうけど。
>>473 たしかにセリフの前に名前が入っている読み物は、読み物ではなくただの台本と聞いたことがあるな
そこや描写がよくなれば良い感じになると思う
>>477 以前もそういう感じの話あったし、何話かあるなら問題ないと思うよ
>>470 >これだけパクリを重ねられるとさすがに…
赤緑全く読んでないけどパクリまくりなの?
482 :
477:2009/10/06(火) 20:55:24 ID:alOzxdpTO
うちの母さんには霊感がある。
本人は否定しているが、酒とか飲ますとポロリと心霊体験を語ってくれる。
これもその一つだ。
母さんが父さんと付き合って間もないころ、自転車の二人乗りをしていると、信号待ちのとき、白いワンピースで日傘を差した女の人が隣に立った。
信号が青になって、自転車を漕ぎ出す。ワンピースの人が動く気配を見せなかったので、二人して振り返ると…そこにはもう女の人はいなかった。
田舎なので隠れるところのない、ただまっすぐな道で、父さんと母さんはぽかんとしてた。
ら、そこに信号無視のトラックが通過。
あのひとがいなかったらひかれてたね〜、と笑いながら家に帰ったそうだ。
後日家族のアルバムで見た、母さんの死んだばあちゃんは大正時代のハイカラさんな恰好を好んでしてた。写真にもワンピースに日傘スタイルで映ってたらしい。
ばあちゃんには特別可愛がってもらってたからねぇ、でも、若いかこで出てこられたらわかんないじゃんねぇ。
っていう母さんは、ちょっと嬉しそうだった。
別の話として、
父さんがこのばあちゃんに説教された話があるんだけど、時間あるときまとめてみます。
赤緑氏の作品はまったく読んでいないんだけど、いつも同じような評価が出ているので逆に興味を持った。
そこで今回投下された
>>430 の [40人目の子供] 1/11を少々改変してみた。
赤緑氏作[40人目の子供]を少し改変してみたバージョン
我が愛しの神尾さん宅に、雨月と鮎川さんと俺の4人が顔を揃えた時のこと。ふと雨月が誰にともなく話し始めた。
「ある爆発事故で、亡くなった子供の遺体が1つ多かったって話、知っているか?」
自称オカルトマニアの鮎川が、目を輝かせて真っ先に反応する。
「あぁ、あれ? 理科室が爆発して、先生と生徒が死んじゃって…ってやつ。「一人多いわけ」って話だっけ」
雨月が同意する。その話なら俺も聞いたことがある。早速鮎川の話を補足することにした。
「知ってる知ってる。バラバラになった遺体を並べたら、子供の遺体が1つ多かった、ってやつだよな」
俺の話を聞いて神尾さんも思いだしたようだ。
「そういえば、そんなのあったね」
この道じゃそれなりに有名な話のようである。簡単に説明すると――
教師1人と生徒39人が理科室で実験中、ガス漏れによる爆発事故が発生した。
その爆発は想像を絶するほど大きなものであり、事故現場は凄惨を極めた。
居合わせた全員が文字通り木っ端微塵。
骨が砕け肉片は周囲に飛び散って、まさに地獄絵図のような状況になっていた。
検察官により事故後の実況検分が行われた。
飛び散った遺体をかき集め、数を把握するため順番に並べると、改めてその事故の悲惨さに目を覆いたくなる。
しかし、遺体を整理し終えると一つの違和感が首をもたげた。
その原因を確認するため、並べられた亡骸を一体ずつ確認していく。
事故発生当時、教師が一名、生徒が39名いたはずだ。
しかしここに並べられた遺体の中に、大人の物と思われる骨が見当たらない。
そして子供一人分の遺体が余計に有るのだ。これは一体…。
同僚の検察官に話を切り出すと、「数が合っている」と一喝され、この件は片付けられてしまった。
485 :
477:2009/10/06(火) 21:13:41 ID:alOzxdpTO
父さんは優しいけど、そのぶんモテてつねに女性の影があった。
母さんは、「まあ最後にうちのとこに戻ってきたらいいや」って感じで、あまり気にもしてなかった。
その父さんが、ある日突然土下座してきたという。
ああ、別れてくれって言われるんかなあ、とよく話を聞いてみると、
「除霊してくれ!それか許してくれ!」
とのこと。
よくよく話を聞いてみると、友達と心霊スポットに遊びにいったときに、日傘の人に再び会ったらしい。
日傘の人はまっすぐ父さんのほうにやってきて、すごい勢いで掴みかかる。
「あんたこんなとこでなにしてんの!うちの子をほったらかして!だいたいあんた(以下略)」
とまくしたてられ、わけもわからず振りほどこうとしたら手が相手の体を通過。
友達は先に逃げちゃって、一人で帰ってきたらしい。
日傘の人のおかげで父さんは既婚者と思われて誘いは激減。
父さんひとりでナンパにいっても、日傘のひとが常に視界のすみに…。
で、母さんは前から金縛りとかあってたしなんとかしてくれると思って転がり込んできたという。
うちの子ってことは、ご先祖様かな?と思ってアルバムをしらべたらばあちゃんの若いころの写真に行き当たり、父さんは泣きながら仏壇に手を合わせて
「(母さん)はおれが一生まもるんで許して下さい!」
と仏壇の前でプロポーズした。
今も実家の仏壇には、位牌とばあちゃんの写真が飾ってある。
少々台詞が多すぎるので補足すると長くなってしまうな。
重要な状況説明がアッサリしすぎているので、少しイメージしやすいように補足してみた。
台詞回しは一切変えていないけど、要らない物を削除した。
こんな感じだったらどうなんだろう?
488 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/06(火) 22:57:05 ID:/tA0pecEO
ただいまです
元検査技師の人の続き(?)です
検査技師ってどういう仕事なのかはよくわからないけど色んな病院をめぐったらしい
ホルマリンとは別の病院
夜中に急患で救急車が到着すると、自分のいる詰所(休憩室?)から走って1階まで行くのが毎晩だったそうです。
エレベーター使うよりその横の階段の方が早いのでエレベーターは見向きもせず通過。
ただ、
夜中なのによく車椅子のおばあちゃんがエレベーターを待っているのに気がついたそうな。
でも急いでるから視界の隅でしか捕らえてなくてどこの病室の人かはわからなかったから看護婦さんに聞いてみた。
そしたら『わからない』で何人かに聞いてたら婦長さんに伝わって『ウメさんが見える新人ってあなたねー?』といきなりいわれたそうな。
そのおばあちゃんはウメさんと言って、生前は毎朝、上の階のコミュニケーションルーム?でお歌の時間、と言うか、子どもやお年より向けな会を楽しみにしていたらしい。
明け方ごろエレベーターを待っているが、朝になると動き出したエレベーターに乗って会に参加し、楽しそうにしてるから大丈夫だそうだ。
夜勤だった彼は会に参加してるウメさんを見れなかったらしいけど、その婦長さんが言うには、
オルガンの横がウメさんの定位置で、曲に合わせてにこにこと手拍子しているんだそうだ。そして会が終わると皆が自室に戻っていくのと一緒に消えていくんだと。
なんら悪影響も無いし楽しそうにしてるからそっとしておいてあげてね
とも言われたらしい
婦長さんすごい
しばらく不思議体験とはご無沙汰してたんだが、
ちょっとあったので書く。
話と呼べる話でもないので、暇つぶし程度で。
渡辺さんのお祖母さんにお守りをもらってから、鈴木はにわかに手に入れた霊感を失いつつあるらしい。
それがお守りの効果かどうかは知らないが、ただ見えるだけなんぞ絶対に良くないに決まっているので、
鈴木が見えなくなることはよいことなんだと思う。
心霊体験が聞けなくなることは残念だが、一応友人として奴の身の安全を素直に喜ぶことにする。
鈴木の霊感さえなくなってしまえば俺にも平安が訪れる。
そんなわけで、ここしばらくおかしなことは全くなかった。
けれども不思議との遭遇は、九月の終わり頃に再び始まった。
大学が始まってまだ間もないんだが、先日名前も知らない女の子にいきなり告白された。
それなんてエロゲ? とは言わないでほしい。自分で言ったから。
女の子に告白されるなんぞ人生で初めてだったから、俺はてんぱってしまい、
なんて言ったら良いのか分からず「お互いもうちょっと知ってから」とかベタな返事をしたと思う。
そしたら女の子は「じゃあアドレス交換してよ」と言い、
俺はその女の子の名前とアドレスを手に入れることに成功した。
全然知らない子だったが(一応学科は同じだった)、顔は普通より少し可愛いめだし、
ちょっと独特の雰囲気があったけど俺的には好みのタイプだった。
あと、正直に言ってしまうとこの年まで彼女いない暦=年齢だったので、
付き合ってと言われたら断る理由はなかった。
何度かメールの交換をして、本当に普通の女の子っぽかったので、
OKの返事を出そうかと思いながら寝た日、夢を見た。
闇の中で、誰かがこちらをじっと見ている。その顔に見覚えがあったが、すぐには思い出せなかった。
俺より少し年下だ。高校生くらい。そいつが、暗闇の中に真っ直ぐに立ってこちらをじっと見ている。
俺と奴の他には何もない、本当に真っ暗な空間だ。
俺は気づいたらそこに立っていて、奴と見つめ合っていた。
生徒ではない。同級生でもない。後輩でもない。友達ではない。
なのに見覚えがあるのはなぜだろう。そう思っていると、奴が口を開いた。
何かを言っているようだ。けれども、俺には何も聞こえない。
口だけ動いているが、俺は読唇術など身につけていないので何を言っているのかは分からない。
そのままぼんやりとその少年の顔を見ていると、俺はようやく彼が誰なのかを思い出した。
お守りをもらう前に俺の周りに頻繁に出没し、俺を恐怖のどん底に叩き落としたあの少年だった。
けど、夢の中だからかな、俺はそれに気づいても、奴から逃げようとしなかった。
本当に、ただぼーっと奴と向き合っているだけだった。
やがて奴は言葉を止め(聞こえないけど口の動きが止まった)、またこっちをじっと見た。
近づいてきていれば分かったはずだが、気が付いたら奴は俺の目の前にいた。
しかし、瞬間移動でもしたかのような場所移動に俺が驚くよりはやく、アラームが鳴って俺は夢から覚めた。
ベッドの上で、しばらく動けなかった。夢から覚めた途端、恐怖が襲ってきたのだ。
あの少年が現れた。お守りはまだ身につけている。枕元の携帯に、しっかり結びついている。
それなのに、なんで現れたんだ?
それ以来、少年は毎晩俺の夢に出てくる。昨日も出てきた。多分今日も出てくると思う。
出てくると、決まって俺に何かを言っているんだが俺にはそれが聞こえない。
一応俺は、夢の中で少年から逃げようとするんだが、逃げても逃げても少年は俺の前に現れる。
しかも、逃げるごとにだんだん距離が近くなっていく。
また、お守りをもらう前と同じく、起きているときも少年が視界の端にチラ見えするようになった。
バイト先で鈴木をとっつかまえて、俺に少年が憑いているか聞いてみたが、何も見えないという。
渡辺さんは、テストが終わったとかの時間割調整でしばらく塾には来ない。
俺はどうすれば良いんだろう。
寝るのが怖い。
女の子への返事はまだ保留にしてある。
けど、あの女の子の告白からこの異変が始まったことを考えると、
なんだか付き合わない方がいい気がしてきた。
オチがなくてごめん。はやくオチがつくことを、誰より俺が願ってる。
493 :
元検査技師の彼女:2009/10/06(火) 23:15:58 ID:/tA0pecEO
やっぱり別の病院でのこと
エレベーター繋がりで一緒に聞いた話です
普段あまり別棟に行くことはなかったのが、なんかの用事ができてよそのエレベーターをつかった時のこと。
手持ちの資料を読みながら待っててもなかなか来ないエレベーターに、ふと顔を上げると
なんだ、ボタン押してないから素通りされてた(笑)
ただのアホやん、なんだけど
よくよく思い返すとエレベーターのボタン押すの久しぶりだった。いつもは何もしなくてもだいたいドアが開く…あるいは既に押された後かボタンのランプが点いてたらしい。
なにげなくいつも使ってるエレベーター
押し忘れて待ちぼうけ食らったので今度は忘れまいと遠くから押されていないボタンを見ながらエレベーターに近づいたんだと。
そしたら押す直前にランプが点いて、地下にいたエレベーターが到着した。
勿論、他にボタンは無いので誰かが押したわけじゃない。
ここでミソなのはエレベーターがいつも地下から来ることだった。
不思議に思って、なんかそういうシステムでもあんのかと観察するようにしてみたら、そのエレベーターは誰ものらなくなると必ず地下に降りていくことがわかったとな。
なんでミソかって言うと、地下には階数ボタンを暗証番号順に押さないと行けないはずだからなんだと!(私はそんなシステムがあることにもびっくらした笑)
このときは看護婦たちさんにもわからなくて、暇人が集まり(おもしろそうだからと)警備員室に押し掛けた。
話を聞いた警備のおっさんがそのエレベーターの監視カメラを見せてくれたそうだ。
2画面使ってエレベーターの中と外を同時再生してみたら、ボタンが押される直前に誰もいないエレベーターの中のボタンが、押そうとした人のいる階がぱっと点いてた。
エレベーターがわざわざ迎えにきてくれてるみたいだったと言ってました。
その時は彼も何も見えなかったけど、それまで誰も気が付かなかったのがまず不思議…
しかも地下にはパスなしで降りてってたそうです。
それからはエレベーターが迎えに来てくれたらお礼を言うようにしてみたけど現れてはくれなかったって。親切でシャイさんだったみたいです。
494 :
元検査技師の彼女:2009/10/06(火) 23:24:28 ID:/tA0pecEO
怖い話をするとよってくるよく言いますが、
彼が言うには、霊はもとからそこらへんにいて、怖い話をすると話してる本人の霊感が強まってくから見えちゃったりするんだ、とか言ってました。
彼は人の霊よりも動物霊をよく見るようで、特にネコが多いそうです。
よく散歩とか昼寝してるって。普通の生きてるネコとかわらん(笑)
ただ、たまに何かを訴えてくることもあるみたいで、
知り合いの足元をネコがずっとうろうろしてるのを見ていたら、ふと、ちょっとお高そうなネコ缶ぽいものが見えたんだとさ。
とりあえずその知り合いを連れてスーパーに行き、見えたネコ缶に似たものを探して『ネコにこんなネコ缶あげてなかった?』って聞いてみたら大当たりだった。
どうやらお高いそのネコ缶は昔飼ってたネコに、たまにあげてたやつで、お供えにはしてなかったらしい。高いのが食いたかったみたい。ぬこかわゆい…
逆に、街で見かける人の霊はあんまよろしくないのが多いと言います。
ある日、お寺さんの横の通りを二人で歩いてた時でした。突然がしっと両脇を捕まれ足早に歩かされたので振り返ろうとすると『前見てて』って小声で言われました。
お寺さんからかなりはなれたところでやっと解放されたので聞いてみると、お寺さんの塀(屋根つき)の上からリーマン風のおっさんが通りを見下ろしてたそうな。
しかも気が付いたのを悟られちゃまずいタイプでそうとう嫌なかんじがしたみたいでした。
様子からしてグロだったのかもしらん…見えなくて良かった…
とにかくオカルトなネタの絶えない彼ですが、どこまでほをとだかはわからんです、営業で口もうまいし(笑)
もう一つ変な話があるんですが、幽霊じゃないからスレチかもなのでやめときます。
何を期待してんだか知らないが、最後の一文いらないだろ?
>>486 〈簡単に説明するとーー〉以降はむしろ元のままの方が簡潔でいい
というより、
>>430よりそれ以降のキャラ同士のやりとりの方が改変しがいがあると思う
会話の合間に人物の動作や表情入れたりして
そうすれば必然的にセリフの前に発言者名を入れる必要もなくなるし
>>496 ふむふむ、「簡単に説明すると」以降の方は確かに簡単に説明した本物のほうが良かったかもしれませんね。
2以降はまるっきり読んでいないので、その後の展開がよくわからなかったんだけど、ちょっと読んでみますよ。
しかし改変は作者さんに失礼なのでやらないで置きます。これは一つの可能性を示したかっただけなのでね。
498 :
497:2009/10/07(水) 02:16:47 ID:DEnqriqT0
× しかし改変は作者さんに失礼なので
○ しかし2以降について、これ以上の改変は作者さんに失礼なので
今、2以降も全部読み終わった。
なるほど、本当に会話が中心のストーリー仕立てなんだね。
こういうスタイルも一風変わっていて面白いな。
>>494 乙。
不謹慎だが病院は心霊ネタには事欠かないな。
勤続するだけでも大変そうだ。
俺も死んだ飼い猫の霊が視えたらなぁ・・・。
赤緑氏の話読んだ。
誰もが知る有名なネタを作中で考察してる、って話でしょ。
ガイシュツとかパクリとか言うかねぇ?
ここでの肝は、
>そこで作られてしまった40人目の子供。
>死体から作られた、この子供はどうなったのか?
>自分が誰かも分からないこの子は、ちゃんと成仏できたと思う?
ここに集約するんだろうけど、そもそも40人目は「いない」んで問題ないぜと答えるかな。
(業務上の不備で書類が一人分余計に増えただけ)
空気読めと言われるかもしれないと思いつつ…
でもいい雰囲気の話でした。
502 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/07(水) 12:52:00 ID:aKP//3frO
>>501 むしろその存在しない40人目の子供が具現化して意志を持ち始めるんじゃないかみたいなことでしょ
いずれにせよ、話の内容に限っていうなら、最後のセリフが良いオチになってて悪くはないと思う
だからパクリやら二番煎じやら突っ込まれるのを考慮するなら、
むしろ作中で金田一や島田荘司を引き合いにだして開き直ったほうが最後のセリフが生きてくるのかもしれないね
>その存在しない40人目の子供が具現化して意志を持ち始める
これ入ってたらゾっとしたかもしれない。
生存者の子供が二人居て、死体と数合わせると40人居る、
1人は身元がわかったけど、2人目はブラックジャックよろしく継はぎの体で… とかね。
ネタを1個潰したかもしれないけどキニシナイ。
もう一度赤緑氏の作品をじっくり読んでみた。
ほぼ会話中心に進んでいるストーリー展開だけど、ネタは面白いと思う。
あまり詳しくは知らないけど、既存の都市伝説的な話をモチーフにした話ということですよね。
後は会話以外の部分でもう少し場景の描写があればもっと面白くなると思う。
盛り上がってまいりました!
>>494 >もう一つ変な話があるんですが、幽霊じゃないからスレチかもなのでやめときます。
彼女にまつわるオカルト話なら何でもアリだ
続けたまえ
>>507 × 彼女
○ 彼 じゃなかったか? 揚げ足取るほどの事でもないけど。
どちらにせよ投下希望
うむ、素で間違えたよ
失礼
>>485 意味不明な事でレス消費してんじゃねーよ
511 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/07(水) 23:32:54 ID:B8JHaH+3O
あ、ごめんなさ
ageてしまいますた ><
514 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/08(木) 01:23:32 ID:mhUCzVgE0
ageたらアカンの?
>>492 逆に考えて付き合ってみれば?
少年の正体が分かるかもよ?
516 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/08(木) 15:14:04 ID:tgbYoE0uO
なるほど!
虎穴に入らずんば虎子を得ず、という奴ですよ
私が今日、幸村さんに聞いた話。
幸村さんっていうのは私の彼氏なんだけど、まだ幸村さんと付き合ったばかりの頃、
幸村さんは私に「いつか俺の体験した面白い話を聞かせてあげるよ」と言っていた。
何故幸村さんがそんなことを言ったのかというと、学校の帰り道に心霊体験をしたとき、妙に落ち着いた彼を見て私が
「幸村さんって幽霊とか信じてなさそうですよね」
と言ったからだった。幸村さんは私のその言葉に、少しだけ笑いながら「いつか話すよ」と言ったのだ。
そして、今日がその「いつか」だった。
幸村さんの家から私の家まで車で移動している時、私と幸村さんはずっと無言でいた。
幸村さんの家から私の家までは車でも1時間以上かかって、今日は特に雨も降っていたのでもっと時間がかかっていた。
幸村さんはよく、移動中の退屈しのぎに「KEN、何か話を聞かせて」と言ってくる。
私は割といろんな雑学や小ネタを持っているので、彼はそれを求めてくるのだ。
でも今日はすごく眠たいらしく、私の声を聞いていたら寝てしまいそうだという理由で、私に話を求めてこなかった。
長い沈黙の中、雨の音だけが響く。
「そういえば幸村さん。去年あたりに、私に面白い話をしてあげるって言ってましたよね?」
私がそう切り出すと、幸村さんは眠たそうな顔で「そうだっけ?」と言った。
「言いましたよ。ほら、私が幸村さんは幽霊とか信じてなさそうって言った時!」
「………んー…言ったような言ってないような…」
幸村さんは首を傾げたまま、欠伸をする。私は少しムキになって「言いましたったら!」と幸村さんの頬を叩いた。
すると幸村さんは、目が覚めたのか、何かを思い出したように目を見開いて「あぁ、」と言った。
穴にはいるだなんていやらしいです><
要するに挿入しなければ子供はできないってことですか?
「もしかして、俺の叔父さんの話しかな?」
「叔父さんの?」
「俺が中学の時、叔父さんが亡くなったんだ」
「…叔父さんが」
「うん。大晦日だったなぁ…俺母さんと一緒に年末の買い出しに行っててさ。ほら、お歳暮とかの。
で、買い物終わって家についたとき、俺は荷物おろし担当だったんだよ。
だからお歳暮おろして、次に一升瓶のお酒2本おろそうとしたんだけど……」
幸村さんは、信号にさしかかったため、車のライトを切った。
彼は、信号のたびに車のライトを消す習慣がついている。
「おろそうとしたんだけど……?」
私がくり返したとき、信号が青に変わった。幸村さんはライトを再びつける。
「うん。その一升瓶が、破裂したんだ。2本ともね」
「破裂!?」
「そう。バーン!って、いきなりね。俺ビックリしてさぁ…俺今何もしてねーぞ!?ってね。
だけど先に家に入ってた母さんはそれ見てないからすげー怒るし、
破裂したんだって言っても信じてくれないしで…俺拗ねてさぁ」
幸村さんは思い出しておかしくなったのか、クスりと笑った。
「だから俺、その年の年越しは拗ねたまま寝ちゃったんだ。
カウントダウンもしてなくて、目覚めたのは早朝の5時で、もう年は明けてた…」
>私は少しムキになって「言いましたったら!」と幸村さんの頬を叩いた。
ここが、なんかダメだ…
「寂しい大晦日ですね」。
「そうそう。でもそのときの俺には、寂しいと気づく暇も
HAPPY NEW YEARを言う暇もなかった」
幸村さんは、笑うのをやめて言った。
「早朝5時に、俺を起こした母さんが言ったんだ。今から叔父さんの家に行くから準備しろ!って」
まさか…という言葉を、私はのんだ。もしかしたらという考えは浮かんだが、それは言わずに幸村さんの言葉を待つ。
「新年の挨拶にはまだ早いだろーって布団に抱きついたままの俺に、母さんはまた深刻そうな顔で言った。
『叔父さんが昨日、海に落ちた』ってね。それだけで、もうわかるでしょ?」
幸村さんは、不意に私を見て言った。私は、予想してた展開にコクンと頷いた。
すると彼は、私の頭をポンポンと撫でてから続けた。
「叔父さんは漁師をしててね、その年最後の漁に出ていたらしい。
夜からかよ!って感じだけど、まぁ、独り身だったから。
で、一緒に船を出してた漁師仲間が言うには、大晦日だし年が明ける前に引き上げようっていうときに
、叔父さんの漁網がその人の船に絡まってしまったらしい。
暗闇じゃほどけねーよ!ってその人は言ったみたいなんだけど、
叔父さんは聞かずに船から身を乗り出して網に手をかけたらしくて…それでボチャン。
見てたその人は慌てて海中を見たんだけど、叔父さんは浮いてこなかったみたいで。
迷ったあげく、いったん港に引き返したらしい」
幸村さんがここまで話したとき、いつの間にか車は私の家についていた。
「…ついたけど、どうする?」
幸村さんは、私のお泊まりセットのリュックを後部座席から引っ張り出して訊ねる。
私は迷うことなく、最後まで聞く!と言った。
「そっか。どうせもう話はオチだけどね。
…その見てたっていう人が言ってる叔父さんの落ちた時間が、俺の目の前で一升瓶が破裂した時間とほぼ一緒なんだよ。
よくある、予知・予兆、…シンクロなんかのケースかなぁって俺は思ってて。
母さんも、今度は俺の話しを信じてくれて…泣いてたよ」
幸村さんはそう言って、私のリュックを肩に担いだ。
彼は2泊3日のお泊まりセットを、必ず家まで運んでくれる。
「幸村さん…」
私は、不思議な話しを聞けた幸福感でいっぱいになっていた。
オカルトチックな話しを聞いた時、私の体はホクホクと温まる。
「なに?」
「えっと…素敵な…って言ったら不謹慎ですけど、…不思議なお話、ありがとうございました」
「…ううん。KENこそ、聞いてくれてありがとう」
幸村さんはニコリと笑って、車から出た。私も続いて車を出る。
「でも、叔父さん…残念でしたね」
私は自宅のアパートを登る階段を歩きながら言った。幸村さんも私の言葉に頷く。
「うん。しかも叔父さん…死体がなかなか見つからなくてさぁ。
余計可哀想だった。流されてたんだろうね。
落ちたと思われる場所とはかなりかけ離れた場所で、浮いてたって」
「…そうなんですか」
「実はさ、この話しにはもう一つ不思議なことがあって。
叔父さんの死体を見つけたのは、叔父さんが可愛がっていた黒猫だったんだ。リリーに似てる猫」
リリーとは、私の飼っている猫だ。
「何故かその猫が港にいて、叔父さんが流れついてるとこでミャーミャー鳴いてたってさ」
私たちは、無事自宅の前についた。
「よし、ついた。今日は早く寝なよ?明日学校だから」
幸村さんは、ケロリとした顔で私に言った。私は黙って頷き、小さく手を振った。
「ありがとうございました」
今も、私の体はホクホクと温まっている。
525 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/09(金) 14:17:24 ID:1Ik4PW4w0
ごくろうさま
ハイ次
>私は、予想してた展開にコクンと頷いた。
>すると彼は、私の頭をポンポンと撫でてから続けた。
携帯小説乙
>>518 スマートな話ですね
私はこういうの好き(笑)
幸村さん連呼しすぎ
ウニさん待ち
ウニが来るまで今夜は眠らない
いや、眠れない
私の住んでいる県には、「ユタ」と呼ばれる能力者がいる。
いわゆる「イタコ」みたいなもので、中には「賢者(方言ではムヌシリ)」と隠語で呼ぶ人もいるらしい。
このユタとは、お金を支払えば、霊能力で精神的悩みや肉体的病を解決してくれる。
インチキではなく、本当に病を治したりするユタ。(一部偽物もいるらしいが)
ユタには、生まれつきユタになる運命が決まっているらしい。
「医者半分、ユタ半分」ということわざもあるほどに、県内では信頼があつい。
(主に年配の方から支持されている)
そんなユタだが、ユタの力は生まれつき発揮されるわけではなく、何かをきっかけに解放されるものらしい。
それは自身の事故だったり病気だったり、身内の不幸だったりと様々だ。
もしもユタの運命を受け入れなかったら、天罰としてその人は狂ってしまうのだという。
実は今日、私はそんな「運命に背いたなり損ないのユタ」に会った。
その人に会うのは、そう難しいことじゃない。
その人は、「独り言おばさん」と呼ばれている、街の有名人だ。(悪い意味で)
私の近所に普通に歩いている独り言おばさんは、恋人の幸村さんの同級生のお母さんらしい。
独り言おばさんは名前の通り、(あだ名だが)いつもぶつぶつ独り言を言っている。
しかもかなり大声で、何かに怒っているように。
「ついてくるな!」と、自分の右側あたりを見て叫んでいるのが日常茶飯事だ。
すれ違うといきなり「あんた、殺されるよ!」と怒鳴ってくるので、周りからは怖がられている。(私もこわい)
私はわりとよく独り言おばさんを見かけるが、話しかけられたのは今日が初めてだった。
「こいつ、あんたを殺すって!」
コンビニから出てすぐ出くわした独り言おばさんは、私に言った。
「こいつ」がそこにいるのか、親指で右肩あたりを指差している。
幸村さんも一緒にいたけど、独り言おばさんは私だけを見ていた。
初めて話しかけられた私は、完全にビビってしまっていた
。隣を見ると、幸村さんは平然としている。
「KEN、いいよ無視して。行くよ」
幸村さんはそう言うと、私の手を引いて歩き出した。
そしてとめてあった車に乗り込むと、エンジンをつけて笑った。
「気にすることないよ。あの人、誰にでもあんなこと言ってるから」
やはり平然としている。車に乗ったことで落ち着きを取り戻した私は、後ろを見ながら言った。
「それは知ってますけど…でも」
独り言おばさんはもういなかった。
「…なんであの人、あんなこと言うんですかね?」
「……俺さ、あのおばさんの家に遊びに行ったことあるんだ。
小さい頃に一回と…中学の時一回。ほら、俺あのおばさんの息子と同い年じゃん?」
幸村さんは、また何か面白いことを話すとでも言いたげな笑みを見せた。
「…だからわかるんだけど、小さい頃に遊びな行った時は、あのおばさん普通の人だったんだよ。
遊びにきた俺に、いらっしゃいって言って手作りクッキーとかくれてさ」
「え」
驚く私。幸村さんは続けた。
「でも、中学のとき行った時は、もうダメだった。
あの人、家のお隣さんは殺人鬼で、向かいの家はスパイだと思ってるんだよ。
だからずっと何かに怯えててさぁ〜、カーテンもピッタリしめてんの。
息子いわく、おかしくなったのは父親が死んでしばらくしてかららしい。
医者が言うには、旦那が死んだショックで精神的にまいっちゃったんだって。
でも、ある日親戚の紹介でユタに見せる機会があって、その時はこう言われたらしい」
幸村さんは、一旦切ってからコンビニで買ったコーラを飲む。幸村さんはコーラが好きだ。
「…あなたのお母さんは、ユタの運命に背いた為に天罰を受けました
ってね。
息子は最初、意味がわからなかったらしいけど、後々調べて、ユタには生まれつき運命が決まっていることと、
身内の死がきっかけでユタの力が目覚めることを知ったらしい。
背いたとき、天罰が下って狂ってしまうんだっていうことも」
車の中はやけに静かだった。幸村さんのコーラを飲む喉の音だけが響く。
私は、ユタの運命の重さに鳥肌がたった。
「……その話しを俺にしたときのあいつ、すごい切なかったなぁ」
あいつとは、独り言おばさんの息子さんのことだろう。
「もうお母さん手作りのクッキーじゃなくて、市販のクッキーを食べながら……
必死で苦笑いしてたわ」
幸村さんはそのあと、独り言おばさんの話をやめた。
ドラゴンボールの話をしだして、車内の雰囲気はわずかに明るくなった。
でも、私は心の中でずっと考えていた。
独り言おばさんには、何が見えてるんだろう。
そろそろウニさん来るかな〜わくわく
539 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/09(金) 22:34:30 ID:YAKIIJ3t0
ウニ来ないかねぇ・・・
携帯小説の雰囲気を一掃してほしいところどけど
最近のでもいいですか?二日前に母が夢にて祖父(母の親)が病院で寝ている横で祖母
(母の親)が笑っていたそうです。
で、二日後にあの世に逝きました。
ついでに祖母が亡くなった時には、従兄弟達が広告で折った千羽鶴が火葬されても残っていたそうです。
私たち、親子は祖母の火葬された遺骨をみていたのでみてませんでしたw
こんな感じとかなのでしょうか?
他のスレみたら豚の霊を相談していた…。
何言ってるのか分かりません…
>>540 とりあえず落ち着け
そしてもう一回客観的に自分の文章を読んでみることから始めよう
質問してるのに答えを聞かずに話し始めるとは…大物だな
日本語が崩壊した
明日バイトだけどウニさん来るまで眠れないぞ
最近のウニは文章長いから疲れる。最近のシリーズものも影響受けて小説にしすぎ。心理描写とかそんな要らないんだよね。
今日は保守係さんがんばったね
548 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/10(土) 00:02:59 ID:3H+Tb7U+O
保守
ウニのファンて排他的だから嫌いだわ。
そういうファンで調子はづいてあちこちのスレ汚すウニもなんだかなあ…。
以前「師匠シリーズ」が面白いと書いたら、「祟られ屋シリーズ」もお勧めだよと
勧めてくれた名も知らぬ方にお礼を言いたい。
祟られ屋シリーズは読みごたえが有るし、得も言われぬ恐怖が漂っている。
最新作が早く読みたいんだけどどこに公開されているのかな?
今「契約」を読み始めたところなんだけど、これよりも新しい作品は公開されてないのかな?
洒落怖まとめサイトのBBS見て来たけど、まだないんじゃないかなぁ…
552 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/10(土) 08:14:11 ID:8ijR2H4kO
アポンの用意はいいか?
久しぶりに見たら、シリーズ物総合-まとめサイトの更新が止まってる…
>>540 これは、流石に酷過ぎる…。ちょっと俺が推敲してあげるか…。
-------------------------------------------------------------
最近の話しです。
二日前に母が自分の両親の夢を見たそうです。
病院で寝ている祖父の横で、既に亡くなった祖母が笑っていたそうです。
その二日後、祖父があの世へ逝きました。
また、以前祖母が亡くなった時にも、不思議なことが起こりました。
従兄弟達が広告で折った千羽鶴を棺に入れたのですが、
火葬されてもその千羽鶴が残っていたそうです。
私たち、親子は祖母の遺骨しか見ていなかったので、
その千羽鶴(のかけら)には気が付きませんでした。
-------------------------------------------------------------
> こんな感じとかなのでしょうか?
> 他のスレみたら豚の霊を相談していた…。
ごめんこの文章は正直どのように解釈すれば良いのかわからなかった…。
同じ内容なのに書く人によってこんな変るんだな。
> こんな感じとかなのでしょうか?
> 他のスレみたら豚の霊を相談していた…。
この最後の文は翻訳に必要な文献が散逸してしまったか何かで解読できないんじゃないっけ?
556 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/10(土) 19:16:55 ID:80LjWf4S0
文章比較スレかよ。
モロ携帯小説じゃん。
それ書いたの田中って池沼なのでスルーでおk
>>554 名詞の場合、『話し』より『話』を使った方がよいです。赤ペン先生より
>そんなユタだが、ユタの力は生まれつき発揮されるわけではなく、何かをきっかけに解放されるものらしい。
嘘付けよ
ユタはがっつり修行を積んでやっと力が発揮されるんだよ
>>560 同意
ユタは修業で元々の霊感を上げる。
後天タイプも修業で霊感を上げる。きっかけに発狂や発熱が多いらしいが一週間程度で勝手に治まる話しが多いし、なり損ないは初耳だ。
後天タイプは導かれ師匠が着く系が多い。
ユタバカニスルナヨ!
>>560 だから『何かをきっかけに解放されるもの』って言ってるじゃん。
とマジレスw
だからポっと出るもんじゃねえって事だろとマジレス
面倒くさいからちゃんと読んでないけど沖縄の人なのでマジレスすると
ユタは修業を積まないとなれないとおもうよ。(あくまで"思うよ"です)
沖縄にはユタの修業場として有名な公園があるがそこはかなり危険
突然現れた才能だけで務まるものではなくもっと伝統を重んじるイメージ
多分家系とかも関係しそうだな
どうでも良い事ばかり長々とすまぬ
566 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/11(日) 08:21:31 ID:NEB1l8zX0
そもそもあの文章には何者に対しても敬意というものがありませんよね。
オカルト語るには百億万年早いって感じですか。
ユタって誰でも激しい修行すりゃなれるわけじゃないよ。ユタになれる人は突然何かをきっかけにユタの道が切り開けて、そういう人だけが修行してユタになれるんだよ。
道が切り開けてもないのに修行する奴はキチガイだし何の力もない。
逆に、道が切り開いたのに修行しないやつも、キチガイになる。
…と習いました。
ちなみに、身内の不幸で道が切り開くのはよくあることです。
>>565 なんか昔NHKでやってたドキュメンタリーでユタのことやってた
うろ覚えだからはっきりとしたことは言えないが、家系は関係なくて、スカウト制らしい
がっつり修行が「何かをきっかけ」になるのか?
きっかけの意味調べてこい禿
ID:p9PsREnNO
こいつユタの話書いた作家だろ
>ユタになれる人は突然何かをきっかけにユタの道が切り開けて、そういう人だけが修行してユタになれるんだよ。
これも間違い
ユタになれる人ってのは生まれたときから決まってるというのが定説
家系とかスカウトとかはあるだろうけど、何かをきっかけになんて事はないよ
>>570 そうなの?ゴメン、じゃあガセ掴んだわ。地元では『ユタは突然目覚める』が定説で、キチガイ見るとユタのなり損ないってみんな言うんだ。
…作者ではないけど。
・人がユタになれるかどうかは生まれた時から決まっている
・ある日突然目覚めてユタになる
こおのふたつって別に矛盾しないんじゃね?
ユタになる運命の人が、ある年齢の時に、本来持っていた(潜伏していた)能力が覚醒したと考えれば。
普通の霊能者と同じじゃん
生来持ってたり事故やショックで突然目覚めたり
ただ、霊能者と違って能力が消えるのはあんまり聞かないね>ユタ
ここ、いつから携帯小説スレになったの?
575 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/11(日) 18:30:10 ID:NEB1l8zX0
いや、もう携帯小説ですらないから。
殆ど落書き、AAに近い?
シリーズ物、霊感の強い人にまつわる話を集めるスレです。
考察や、好きな話について語り合いましょう。(荒れる原因なのでなるべく「乙」だけですましましょう)
・投下歓迎。実話、創作不問。新作も歓迎
・作品投稿者はトリップ(名前欄に#任意の文字列)推奨。
・話を投下する際はなるべくまとめてから投下しましょう
・sage進行、荒らし煽りはスルーでお願いします。
・他スレへの迷惑が掛かるような過度の勧誘やはご遠慮下さい。
・このスレでは作品への批判は荒らしと認定していますので、批判はご遠慮ください
・このスレには『このスレと住人を許さない』という荒らしがしつこく荒らしています
どうかこいつには徹底無視をお願いします。
・「荒らしに反応する奴も荒らし」というネットのルールを忘れずに。
反応するとその人を荒らしと 認 定 いたします
577 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/11(日) 21:47:11 ID:B2CKPw9nO
認定って…
おまえが、
>>1でもないのに?
ナ・ニ・サ・マ!
>>575 全然うまい事言えてないぞ
むしろ的外れ
あと1/4くらいまで来てるんですが、書き終わらなかった…
しかも書いてみると思ったより長くなったので、今夜と明日の二回にわけます。
今夜は14レス分。
>>579 超楽しみに待ってましたよ! 二夜連続なんて最高じゃないですか!
いらっしゃい、お待ちしてました
大学一回生の冬だった。
そのころ俺は大学に入ってから始めたインターネットにはまっていて、特に地元のオカルト系フォーラムに入り浸っていた。
かなり活発に書き込みがあり、オフ会も頻繁に行われていたのだが、その多くは居酒屋で噂話や怪談話の類を交換して楽しむという程度で、一応「黒魔術を語ろうという」というテーマはあったものの、
本格的にその趣旨を実行しているのはごく一部の主要メンバーだけという有様だった。
俺もまた黒魔術などという得体の知れないものを勉強しようという気はさらさらなく、その独特のオカルティックなノリを緩く楽しみたいという、ただそれだけの動機だった。
そんなある日、いつものように居酒屋でオフ会をしたあと、Coloさんというフォーラムの中心メンバーの家に有志だけが集った二次会が開かれた。
その前の居酒屋ステージで、はじめてオフに参加したという軽薄そうな男が京介さんというハンドルネームの女性にしつこく言い寄り、ついに彼女がキレて一人で帰ってしまうという騒動があったせいで白けたムードが漂い、常連だけで飲みなおそうということになったのだ。
マンションにあるColoさんの部屋で買い込んできたお酒をダラダラと飲んでいると、自然とオカルト話になる。俺を含め、全部で五人。
そういう話が好きな面子が揃っているから当然なのだが、考えるとこれだけ何度も集まりながらまだ話すネタがあるというのが結構凄い。
特に沢田さんという女性と山下さんという男性は怪談話の宝庫だった。
沢田さんは看護婦をしていて、実体験はあまりないものの、病院にまつわる怖い話をかなり蒐集しており、その頼りなげな語り口は恐怖心を必要以上に煽ったものだった。
山下さんは三十年配の最年長組で、霊感が強いのか体験談がやたらと多く、他のメンバーからは「半分以上眉ツバ」などとからかわれていたものの、時に異様なリアリティで迫ることもあり、一目置かれた存在だった。
その夜も沢田さんの病院話とみかっちさんという女性の子どものころの話、それから山下さんの話とが順番に語られていった。
その中でも一番印象に残ったのが、山下さんがボソボソと語った「疲れてくると人間の顔が四パターンしか見えなくなる」という話だった。
俺はかなり眠くなっていて、みかっちさんに「寝るな」と小突かれていたのだが、カシュン、という缶ビールのプルトップが開く音に反応して頭が多少クリアになった。
「ぼ、僕はね。疲れると四つのパターンしか顔が見えなくなるんだ」
山下さんは缶ビールから口を離し、おずおずとそう切り出した。
「なにそれ。四パターン? それ以外の顔は?」
十歳以上年下のはずだが、みかっちさんは少しでも顔見知りになった人にはたいていタメ口だ。
「だから、人間全部が四パターンのどれかの顔になるんだ」
「はあ? なわけないじゃん」
「ま、まあ僕にそう見えるってだけで……」
せめられてるような表情をして口をつぐみかけたので、俺はみかっちさんを制して続きを促す。
「と、言っても、よっぽど疲れたときだけなんだけど。なんかこう、疲れて外歩いてると、道行く人の顔がだんだん同じように見えてきて、く、区別がつかなくなるんだ」
「それ、疲れてるんだって」とみかっちさんが口を出し、我ながら面白いことを言ったとでも思ったのかやたら一人でウケて笑いはじめた。
「うるさいな、もういいよ」
山下さんは怒り出し、目つきが鋭くなった。
彼にはエキセントリックな所があり、俺は少し扱いづらい人だという認識をしていた。
沢田さんがみかっちさんの口を塞ぎ、なんとか話の続きをしてもらう流れに持っていく。そんな途中で止められると気になってしかたがない。
「か、完全に区別がつかなくなるわけじゃなくて、この人とこの人は同じに見えても、その横のこの人は別の顔って感じ。それがぜ、全部で四パターン。同じパターンの中での区別はつかないから、その中に知り合いがいても分からない」
不思議な話だ。みかっちさんではないが、それはたしかによっぽど疲れてるんだろう。
「それって、どんな顔なんです?」
沢田さんが興味津々という様子で身を乗り出す。
「それが、疲れてないときには、は、はっきり頭に浮かばないんだ。なんていうか、その、……あああ、せ、説明しにくいな」
待ってました!支援します
「絵とかにも描けない?」
Coloさんが久しぶりに口を開いた。
「描けない」
「その四パターンって、醤油顔とかソース顔とかって分け方と関係ありますか。あと、なんだっけ。タヌキ顔、キツネ顔ってのもあったな」
俺の問い掛けに、山下さんは首を横に振る。
「か、関係ないみたい。もとの顔は、関係ない、みたい」
元の顔が関係ない? じゃあどうやって四パターンに分かれてるんだ?
「よっつって、血液型かな」
「あ、かも。A、B、O、ABの四パターン」
あ、それか、と一瞬思ったが、考えてみると、道ですれちがっただけ人の血液型なんて分かりっこないじゃないか。
案の定、山下さんも頭を振る。
「じゃあ、そうね。男と女で二パターンでしょ。あとはぽっちゃりと痩せ気味あたりで分けてるんじゃない? もう疲れてくると、脳味噌がめんどくさくなってきて、個人の識別がテキトーになるのよ」
みかっちさんが一人で納得している。
すると、山下さんが驚くようなことを言った。
「お、男とか女とも関係ないと思う。だ、男女の区別もつかない」
「はあ?」とみかっちさんが変な声を出す。
「男と女の区別がつかないって、それどんな顔よ」
「だ、だから、説明がしにくいんだけど、とにかくそういうのじゃない四パターンなんだ。あ、で、でも正確に言えば性別は服装とか髪型でだいたい分かるよ」
男女の区別もつかない顔って、どんな顔だろう。想像してみるが、ホラー映画に出てきそうな、のっぺりした仮面が頭に浮かんで少し気持ち悪くなる。
「でももっと疲れてきたら、髪型とか輪郭とか体型とか、さ、最悪は服装まで同じように見えてきて、完全に誰が誰だか分かんなくなる」
ゾッとした。
そんな世界に一人で取り残されたらと思うと、気持ちの悪い寒気が背中を走った。
「でも、それでも、よ、四パターンなんだ」
sien
缶ビールが空になっていることに気づいて、山下さんは舌打ちをする。
「わたしはどれです? 誰と一緒?」
沢田さんが自分を指差す。
すると山下さんはColoさんと俺を指差して、それからこの場にいないオカルトフォーラムのメンバーの名前を何人か挙げた。
「ちょっと、なんでわたしだけ仲間はずれよ」
みかっちさんが不服そうな顔をして身を乗り出す。だいぶ酔っているようだ。
「は、半分以上、沢田さんのグループなんだ」
どうやら、四つのパターンにも勢力の違いがあるらしい。
話を分かりやすくするために、とりあえず俺たちはその四パターンを頻度が多いという順にA、B、C、Dと名づけた。
山下さんの言うことには、半分以上がA、その半分がB、さらにその半分がC、Dはかなり少ないらしい。
「わたしはどれよ」
みかっちさんに詰め寄られ、山下さんは答えに窮した。
「い、今はまだ普通に見えてるし、そんなに疲れてるときにあんまり知り合いに会わないから……」
そう言って思い出そうとしていたが、しばらく経ってから「たしかC」という返事をようやく搾り出した。
「なによそれ」と言いながら、一番少ないというDじゃなかったことに、心なしかホッとしているようだ。
その後は、どうして人間の顔が四パターンに見えてしまうのかという謎を解き明かす、というより完全に興味本位で、テレビに出てくる有名人の顔を次々に挙げてはどのグループに属するかを無理やりに聞きだし、それに一喜一憂して楽しんでいた。
「ちょっと、わたしのCの組、ブスばっかりじゃない。どうなってんの」
「たまたまでしょう。男前の俳優もいたじゃないですか」
「女はブスだらけじゃない」
「女優と女子アナつかまえてブスブスって、あんまりでしょ。どういう基準なの」
「そういえばBは美人揃ってる気がしますね」
「Aはなんかごちゃまぜって感じ。個性がないのよ個性が」
そんなことを言いあっては笑い飛ばしていたのだが、だんだんみんな気づき始めた。
俺が空気を察してそれを言い出そうとすると、それより先に沢田さんが口を開く。
「……Dは?」
まだ誰もDのグループに属する人が出てこなかった。
結構な数の有名人や知り合いをかたっぱしから挙げていったというのに。
それを聞いた山下さんは一瞬、なにかに怯えるような表情を浮かべて言い淀んだ。
みんなにじっと見つめられ、やがておずおずと口に出す。
「し、知ってる人には、いない」
場が静かになる。気持ちの悪い沈黙だ。
「それ、どんだけ少ないのよ。Dの人ってよっぽどハブられてんのね」
みかっちさんが軽い口調で言ったが、変な余韻を残してその語尾が宙に消えた。
「じゃあ、Dの人ってどんなとこで見るんです」
恐る恐る俺がそう訊くと、山下さんは強張った顔をして眼鏡の奥の視線を落ち着かなげに上下させた。
「み、み、道で、とか」
どうしてそんな言い方になるのだろう。はっきり言えばいいのに。そうじゃないと、なんだか……
怖くなってくる。
「あと…………」
そう言って迷うような仕草を見せた。みんなそれを変に緊張した面持ちで見つめる。
そばにあった空の缶ビールを半ば無意識に持ち上げかけて、一瞬その軽さに驚いたような顔をした後、山下さんはゆっくりと口を開いた。
「部屋の中、とか」
ゾクリとする。
なんだ、部屋の中って。
往来ですれ違う不特定多数の人々の中に混ざってごく少数だがDに属する顔をした人がいる、というならイメージは湧く。
なのに。
部屋の中?
意味が分からない。状況設定が見えてこない。
一回目の支援!
生ウニ!?
支援〜
みんな山下さんの言動から目が離せなくなっていた。
「ほんとうに疲れてる時だけど、こ、こないだお風呂に入ろうとして洗面所のドアを開けたら、まだお湯張ってない湯船に、立ってるんだ」
え? どういうこと。どういうこと。
沢田さんがそんな言葉を口の中で呟く。
「だ、誰だか分からない。区別のつかない顔。何度か見たことがある、一番少ない顔」
それが、立ってて。
と、山下さんは半笑いのような変な顔をして続ける。
「そのままドアを閉めたら、ず、ずっと静かなままで、しばらくして開けたら誰もいなかった。……それから、夜中めちゃくちゃ疲れて家に帰ってきた時、げ、玄関のドアを閉めて鍵掛けて、
靴脱いでから部屋の中に入ろうとしたら、なんとなく振り向きたくなって、ふ、振り向いたんだけど、玄関のドアが半分開いてて、その、Dの顔が覗いてた。……近づこうとしたらすぐに閉まって、取っ手のとこ見たら、鍵掛かったままだった」
みんな口が利けなかった。
「一人暮らし、でしたよね」
Coloさんが確かめるように言う。
怪談だ。いつのまにか。
変化球から入った分、心構えができていなかった。ドキドキする。
「それ、生きてる人間なんですか?」
沢田さんが怯えながらも問い掛ける。
「さあ」
この世のものではないという印象は持つけれど、生きている人間だとすると、そっちの方が怖い気がする。
姿がはっきり見えていながらそれが誰だか分からない。そしてありえない場所に現れる――
聞いている方も無性に気持ち悪いのだから、それを見ながら正体を認識できない本人の方がよほど気味が悪い思いをしていることだろう。
初生ウニ
支援
山下さんは急に明るい声を出して「次、つぎ。次の話に行こう」と囃し立てた。あまり深く語りたくないようだった。
そうしてまたいつものありがちな怪談話のループに戻って行ったが、どこか皆気が乗らない様子だったのは、すっきりしない四パターンの顔の話が妙に気になっていたからかも知れない。
俺も疲労時の山下さんの頭の中でDという共通の顔にまとめられる、なんだか分からない存在のことが心のどこかにずっとこびりついていた。
それからみんな酒が進みだんだんと無口になってきて、俺は気がつくとみかっちさんに揺さぶられていた。
寝てしまったらしい。
時計は十二時を回っていたというのに、みかっちさんとColoさんは「鏡占いに行こう」と言って俺を揺する。
とりあえず顔を洗わせて下さい、と立ち上がった時に部屋を見回したが山下さんと沢田さんはいなかった。
「疲れたからって、帰った」
みかっちさんはバカにしたような口調で酒臭い鼻息を部屋にまいた。
その日以降、オフに山下さんが現れることはなかった。
ネット上の掲示板でも書き込みがほとんど見られなくなっていた。
ある夜、ふと気になって山下さんが最後に書き込みをしたのはいつごろだろうと調べてみた。
それは五日ほど前だった。タイムスタンプから逆算すると、Coloさんの部屋であの話を聞いた時から二週間あまり経っている。
内容を見たとき、スクロールするマウスが止まった。
え?
嫌な感じが背中を走った。
こんな書き込みがあっただろうか。覚えていない。
『Dが増えている』
たったそれだけの一行レス。前後の他の仲間の会話と噛み合っていない。紛れ込んでいる、という表現がしっくりきた。
それより古いレスを見てみたが、そこから四日前に仲間の会話へ当たり障りのない合いの手を入れているだけだった。さらに遡ると、くだんのオフ会以前まで行ってしまう。
Dが増えている。
俺は黒を背景色にした掲示板を見ながら呟いた。
椅子が小さく軋む。
Dとはもちろん、あの山下さんが見るという四パターンの顔の一つだろう。
それも誰もいないはずの風呂場に立っていたり、鍵の掛っているはずのドアから覗いていたりといったありえない現れ方をする存在。
それが増えるとはいったいどういうことなのか。
Dは出現頻度としては少なかったはずだ。次に少ないというCと比較してもかなり少ないような印象だった。
それが増えるということは、AやB、もしくはCに見えていた人間が、いつのまにかDの顔に見えるようになったということだろうか。
俺は薄気味悪くなって首を回し、卓上鏡を横目に見た。
いつもの自分の顔が映っている。
これが山下さんには他の人間と区別のつかない、ある種の仮面的な顔に見えるというのか。
俺の顔はAのはずだった。
今もAだろうか。
自分の顔に変った所がないか、鏡に近づいてしげしげと眺める。心なしか目の周りがむくんで見えた。
伸びをして、瞼を手の平の腹で押す。
山下さんに見えている顔とは、どんな顔だろう?
誰でもあって誰でもない顔を想像してみたが、どうしたって知っている誰かに似ている気がした。
さらにその二日後、夕飯を食べてぼうっとしている時にPHSが鳴った。
見覚えのない番号だったので、「はい」とだけ言って出ると「良かった。いた」という声。
沢田さんだ。
たまのオフ会以外ではほとんど接点がない。電話を掛けてくるなんて初めてではないだろうか。
しえん
ウニ乙!支援
田舎も完結させてほすい(´・ω・`)
「掲示板見てる?」
「いえ」
そう答えながらブラウザを操作し、オカルトフォーラムのページを表示させる。
「二時間くらい前」
そう言われて最新のレスを確認すると山下さんのハンドルネームがそこにあった。
『Dが増えている』
以前見たレスと同じ内容。
けれど始めに見たものよりも得体の知れない気持ち悪さがあった。
そのレスの少し前にも山下さんの書き込みがあった。
『怖い』
そのたった二言だけ残して山下さんは去っている。なにかが起こっているような予感がして鳥肌が立った。
「家に電話してるんだけど、出ないの。携帯も」
「落ち着いてください。大丈夫ですよ」
沢田さんの声が切羽詰まったような響きだったのでなるべくゆっくり話し掛ける。
「怖い、っていう書き込みに気づいてすぐに電話したのよ。でも出てくれなくて、何度か掛け直してたら、『Dが増えている』って書き込みがあった」
電話を鳴らしている間に書き込みが?
それが事実ならおかしい。
家にいながら電話を無視していることになる。それとも別の場所でパソコンを使っているのだろうか。
「家に行ってみたいんだけど、一緒に来てくれない?」
「今からですか」
「そう。ちょっと、怖いし」
どうして俺なんだろうと思ったが、考えると確かにフォーラムの常連には男性が少なく、山下さんが当事者となるとあとは俺くらいしかいないのだった。
「京介さんは」
女性ながら俺より頼りになりそうな人の名前を挙げてみたが「バイト中みたい」との返答があった。
やっぱり行かないといけないのか。
ウニ支援
できたら家でごろごろしていたかったが、心配する沢田さんの気持ちも分かる。なんだか変だからだ。
仕方なく俺は同行に了承して電話を切った。
山下さんの家は知らなかったので沢田さんの指定するコンビニへ向かう。
自転車をこぎながら嫌な胸騒ぎがするのを必死でごまかそうとしていたが、頭の中には『Dが増えている』という言葉ばかりがぐるぐるとリピートされその度になけなしの勇気を振り絞らなくてはならなかった。
コンビニの車止めの上に立って背伸びしていた沢田さんを見つけて、声を掛ける。
「ちょっと先なんだけど」
そう言う沢田さんについて自転車を押しながら歩いた。
人通りの少ない夜の遊歩道を抜け、物寂しく点滅する街灯の下を歩き、やがて二階建てのアパートが見えてくる。
「一階の右端なの」
緊張した声でそう言うと、沢田さんは携帯を取り出しリダイヤルボタンを押した。
しばらく耳を当てていたがやがて諦めて腕を下ろす。
「やっぱり出ない」
顔を見合わせていたが、とりあえず部屋を訪ねてみないことには始まらない。道端に自転車をとめ、右端のドアの前に立った。
横にある台所らしき窓は真っ暗だ。ドアの真ん中に口を開けている郵便受けからはなにもはみ出していない。ずっと留守をしているのなら、新聞やチラシが詰め込まれていても良さそうなものだ。
チャイムを鳴らしてみる。耳を澄ましたが、中でちゃんと鳴っているのかよく分からない。
しばらく待ってからドアを叩く。
「山下さん」
「山下さぁん」
さらに待っても反応は無かった。
左の方から光が近づき、乱暴な音とともに背後を通り過ぎる。俺がその車に気を取られてよそ見をしていると、「開いてる」という声がした。
振り返ると沢田さんが口を押さえてドアノブを握っている。
「山下さん」
そろそろ10レス/1hでおサルかな。
>>600 いや、多分0分またいで一度リセットされてる
そのために微妙な時間に始めたんだと思う
つC
もう一度呼びかけながら二人でドアの隙間から中を覗き込む。暗くてよく見えない。
「いるような感じがしませんね」
俺は声を潜めて玄関にソロソロと足を踏み入れる。そして壁際に手を這わせ、電気のスイッチを探り当てた。
眩しさに一瞬顔をしかめながら靴を脱ぐ。
「鍵の掛け忘れですかね」
山下さんの部屋は一人暮らしにしては割と広い。そしてとても綺麗に整理整頓されている。余計な物が全く無く、有る物はすべてきっちりと相応しい向きに並べられている。台所も料理道具が揃っているのに、まるでほとんど使われていないかのようにピカピカだった。
神経質な彼の性格そのままの部屋だ。
テレビの前にあるベッドを見ると掛け布団がほとんど起伏もなく伸ばされている。
生活臭がない。一体いつごろまで彼がこの部屋にいたのかも分からなかった。
「でも二時間半くらい前まではいたはずなんですよね」
机の上のパソコンに目を遣った。近づいて本体のパワーボタンに手を伸ばしかけると「ちょっと、悪いよ」とたしなめられる。
それもそうだ。様子が変だからと訪ねてきたものの、勝手に留守中の部屋の中をいじくって良いはずはない。失踪したわけでもないのに。
そう思った時、ふと頭にその単語が引っ掛かった。失踪? どうしてそんなことを思ったのだろう。パソコンの前に立ったまま床に目を落として考える。
その思考が、一筋の悲鳴にかき消された。
ハッとして振り向くと、洗面所があるらしきドアの向こうから続けざまに短い声が上がる。
「どうしたんです沢田さん」
そちらに足を踏み出しかけると、いつかの山下さんの話が脳裏を過ぎった。
『まだお湯張ってない湯船に、立ってるんだ』
Dが……
ぞわぞわと背筋が冷たくなる。誰だか分からない人物が無表情でドアの向こうに立っているのを勝手に脳がイメージしてしまう。
とりあえず支援
躊躇しかけて、なんとかそれを振り払うと半分閉まったドアを開け放つ。
沢田さんが小刻みに身体を震わせながら立っている背中が目に入る。その肩越しに、洗面所の鏡があった。
その真ん中が割られていて、放射状に亀裂が伸びている。怯える沢田さんの顔がまるで切り裂かれたように不鮮明に映っていた。
俺も固まりかけたが、嫌な予感がしてすぐさま風呂場の戸に手を掛ける。思い切って開け放つと、ひんやりした空気が顔に当たった。
中には誰もいなかった。湯船の蓋は取られ、お湯も張られていない。
はあ、という声がしてそれが自分の出した安堵のため息だと気付くまで少し時間が掛かった。
「どうして、これ、こんな」
割れた鏡の前で棒立ちになっている沢田さんに「大丈夫です」と無責任な声を掛ける。
他に異常はないかと部屋のすべての場所を確認して回ったが結局なにも見つけられなかった。
他人の部屋で勝手に家捜しをすることに対する引け目をあまり感じなかったのは、あまりに生活感のない空間だったからだろうか。
しばらくして落ち着いた沢田さんに「もう帰りましょう」と言うと、軽く笑って頷いた。
山下さんの携帯は相変わらず通じないし、部屋に帰ってくる様子もなかったが、なにかの事件に巻き込まれたと判断するには材料が乏しすぎる。
割れた鏡は気になったけれど物取りや暴漢に襲われたにしては部屋の中に全く荒らされた形跡がない。
この程度で警察に連絡しては山下さんにとっても迷惑だろうという判断をせざるを得なかった。
ただあれだけ神経質に部屋を整理整頓している人が、どうして割れた鏡をそのままにしているのか、それだけはよく分からない。
『Dが増えている』という書き込みをしてから、山下さんは鍵も掛けずに出て行った。
まるで何かから逃げるように。鏡はその時割れたのか。割ったのは誰?
あれこれ考えているとまた薄気味悪くなってくる。沢田さんにつつかれて我に返ると玄関に向かった。
支援ですよ〜。
部屋を出るとき、上がり口に見覚えのある靴が置いてあるのに気がついた。山下さんがいつも履いている靴だった。
裸足で外へ? まさかな。
他の靴くらい持っているだろう。
変な考えを振り払い外へ出ると、すぐにドアの鍵を掛けられないことに思い至る。開いていたからといってそのままにして行くのはまずい気がして、どうしようか悩んでいると沢田さんがドアの側に置かれていた小さな鉢植えの下に手を入れる。
引っ張り出したのは鍵だった。
「内緒」
人差し指を唇に当てながら彼女はドアに鍵を掛け、また元の場所に戻した。
そう言えば、二人は付き合っているという噂があったことを思い出す。今さらだが、沢田さんがやけに山下さんを心配している理由が分かった。
途中まで沢田さんを送ってから自分の家に帰る間、自転車をこぎながらふと思ったことがある。
山下さんの体験の中で、帰宅直後に鍵をしたはずのドアが開いていて誰かの顔が覗いていたという部分。
その後近づくとドアが閉まって、ノブを見ると鍵が掛かったままだったという怪談じみた話だったが、実際ああしてドアの側に鍵を隠してあったのなら、それを知る人間には不可能なことではない。
一体山下さんの言うDとは、彼の脳が生み出す幻なのか。それとも彼の脳が被せる匿名の仮面を着けた生身の誰かなのか……
そんなことを考えながら家に帰り着き、軽くかいた汗を流すためにシャワーを浴びた。シャンプーをしている時、いつも以上に背中の方が気になった。目を閉じている間、後ろに誰かがいたら嫌だというあの感じ。
シャンプーが沁みるのを我慢してチラチラと薄目を開けながら早めに洗髪を切り上げる。
風呂場から出てしばらく布団の上でまったりしていたが、思いついてパソコンの電源を入れる。
ブラウザを立ち上げ、いつもの掲示板に入り込んだ途端、最新の書き込みに目を奪われた。
『またDがきた。出て行ったあとに取っ手を見たらまた鍵が掛かっていた』
支援支援
わーお!
山下さんだ。なんなんだこれは。
一瞬ゾクッとしたが、すぐにその書き込みの意味を理解する。
書き込まれたのは『Dが増えている』という山下さんの書き込みを見てから沢田さんと二人で彼の部屋へ行った後だ。
鍵を掛けて出ていったDとは俺たちのことに違いない。
なんの悪ふざけなんだこれは。
留守に見せかけてどこかに隠れていたのか。あれほど探し回ったのに。
気分が悪い。山下さんが何故そんなことをするのか、理由が思い浮かばなかった。怪談話を真に受けて乗ってきた俺たちにイタズラを仕掛けたということなのか。
『ワサダさんが連絡取りたがってましたよ』
ワサダとは沢田さんのハンドルネームだ。そう書き込んでしばらく待ってみたが反応はなかった。もう落ちていたのだろう。
バカらしくなってパソコンを切り布団に寝転がった。
まったく、心配して損した。
けれど眠りにつく少し前、さっきの書き込みのタイムスタンプがふと頭に浮かんだ。
あれ?
その時間って、俺たちがまだ部屋にいた時間じゃないか?
まさか。そんなはずはない。たぶん俺たちが部屋を出てすぐに書き込んだんだろう。隠れ場所から這い出てきて。ほくそ笑みながら。
そんなことを思いながら瞼を閉じた。
4円
明日
お疲れさま!!
ウニ乙
バチスカーフで見てるけど気になるような変な改行はないよ
長くなると折り返しになるだけ
ブラウザの癖かも知れんね
三年も前にネタ振りされてた話とはちょっと驚いた
明日も楽しみにしています
きになる〜乙!
ウニさん乙ノシ
明日も楽しみだ
ウニさん乙でした。明日も楽しみに待ってます。
ウニ乙!
明日まとめて楽しみに読みますw
ってことで、明日もお待ちしてます
619 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/11(日) 23:41:40 ID:4+I89BXA0
ウニさん乙!
明日を楽しみに待ってます
鏡占い…だと…?
ウニ乙です!!
ウニさん乙です!
待ってた甲斐があったー!
『鏡』のエピソードが此処に繋がってたとは…
明日もめっちゃ楽しみにしてます。
622 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/12(月) 00:29:42 ID:uGYfIiTOO
そこらの怪談師より面白い
ウニさん来てたのか‥!自分タイミングわりぃorz
今から読みます〜投下ありがとです!
624 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/12(月) 00:35:44 ID:snuC8LBlO
今回のはなんか怖かったー
一人暮らしだから余計に
ウニさん乙です。師匠の出番か、それとも京介?
ウニ乙です。
続きめっさ楽しみだわ〜。
629 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/12(月) 03:38:40 ID:LRrvInLc0
たしかに刀は使わなければ錆びるけど
切る相手を間違えると刃毀れするよ。
刀だけの話ならまだいいけどね、幾らでも取替えがきくから。
ここに話を落としていった連中もそこに気付いたからこそ去って行ったんじゃないのかい。
何も生み出すことの出来ないこのスレ住人のような
無能で無責任な連中に義理立てして才能(と言っていいのかワカラナイが。)を無駄遣いすることはないよ。
それともここに書くことで何か御褒美を欲しているのかな。
まぁあまり深みにはまらない内に退散する事をお勧めするよ。
今のキミは連中の格好の餌食だよ。
美味しそうな海栗様江
ウニ乙
朝からめっちゃ気になるじゃないか(´∀`)
明日でも来週でも待つぜ!
相変わらず凄い反響だな。
とにかく明日も楽しみだ、ウニさん乙。
ウニ乙
最近ので一番怖かった
ここまでの盛り上がりは最高
しかしウニの弱点はオチなんだよなあ・・・・・・・・・
頼むぜホント
面白かった!
続きが待ちどうしい!
やっと読んだ。乙。
そしてあの公園のサラリーマンか、サラリーマンなのか!?
ウニさん、楽しみにしてます!
今日続きがくるのかと思うとwktkし過ぎておまいらの顔がみんなDに見えてくるぜッ!
そしてウニさん、田舎の後編とか毒とか・・・いつまでも待ってますw
638 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/12(月) 19:38:14 ID:uf9QoBeXO
これであの占い師のおばちゃん以外の人物が出揃ったかな…
てか鏡が割れてたってことは…ヒィィィィィ
>>572 矛盾以前の問題
>・人がユタになれるかどうかは生まれた時から決まっている
・ある日突然目覚めてユタになる
これの「ある日突然目覚めてユタになる」、これが間違ってるんだから
生まれたときから決まっててかつ修行して初めて身につく
wktk
wktk
ごめんなさい。
無理でした。来週です。
日をあけるとハードル上がるから嫌なのに……
今度から完全に書きあがってない状態での予告は控えることにします。
(同じ過ちを繰り返しているような)
死にたくなってきたのでグラコロを買いに行ってきます。
おお、あまりお気になさらず…
グラコロ食べて生きる気力を養ってくださいw
644 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/12(月) 21:30:30 ID:yg9nfJ4jO
グラコロw
顔文字付けてほしかった
グラコロか…
俺も買いに行こう
646 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/12(月) 21:43:48 ID:snuC8LBlO
馴れ合いウゼー、締め切りくらい守れよ自宅警備員のくせに。
>>642 そ、そうだったのか…。
何やら大変そうなので来週と言わず納得がいくものが仕上がったら
投下ということでよろしくお願いします。
楽しみに待ってます。
もうグラコロの季節か
来週迄楽しみが延びた!
652 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/12(月) 22:34:04 ID:OIpEYlRaO
>>642 納得できる物が出来るまで、無理せず頑張って下さい。
ウニさん無理しないでグラコロ買ってきて下さい〜来週楽しみにしてますww
こんな深夜にグラコロ……だと……?
>>655 それはキミが読んだ時間は深夜だろうけど…。w
うむ
グラコロ食べたくなってきたな
買いに行くことにしよう(深夜だっつの)
658 :
878:2009/10/13(火) 01:40:55 ID:+82l8o2U0
やっぱダメだ。
Dirct3Dは使えるバージョン見つかったけど
3Dゲームやるとノイズが出て使い物にならない。
グラボが逝っちゃったかな…
誤爆失礼
660 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/13(火) 21:50:41 ID:EmboKL6ZO
マルチage厨うぜー
>>658 FPSマルチやってて時々マップ探索しようと自鯖建ててやってると
自分以外誰もいるはずの無い戦場にときどき自分以外の足音がしたり
覗いたスコープに人影が映ることがある。
勝手に外人が入ってきただけなんだけど、気付くまで背筋が凍る。
スレチ、スマンコ
>>662 ホントにスピーカーから聞こえてきた音だった??
664 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/14(水) 09:13:49 ID:yvIK5Wm+O
生意気にハードルだと?
オマエじゃハードルどころかバリアフリーも越えられんだろが。
玄人気取りで予告して書けませんでした?
カッコワリーなおい。
携帯 sageない 単発 気分を害する発言
を "脊髄反射"(笑) でNGしまくってるんだけど、
ココのところ凄く平和。もう黙ってればいいのに。
666 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/14(水) 10:27:45 ID:A27PG7lB0
パソならいいの?
お前が黙ってればいいのに
668 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/14(水) 14:59:29 ID:yvIK5Wm+O
一々反応してくれるからお前らスキよ〜。
669 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/14(水) 15:02:02 ID:U9GduMUQ0
ヘタレなのは、腹が座ってないからだな
仮分数なオーラは頭にばかり気が行って
下半身はお留守、そりゃすぐに倒れるわ
671 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/14(水) 22:09:13 ID:yvIK5Wm+O
脊髄反射でNGしまくればいいみたいだよ
>>664 二行目のレベルが高すぎて理解できないぜ
「ハードルどころかバリアフリー」を「超える」……………だと?
ダメだ、論理が飛躍しすぎているのか、レベルが高すぎて自分にも理解できない…。orz
良し、真面目に考えてみようヽ(・ω・`)
バリアフリーとは障害のある方でも日常生活を不便なく送れる、つまりバリア(健常者との垣根)をフリー(無くす)という事だね。ヽ(・ω・`)
それを超えると言うことは、
………ヽ(・ω・`)
……
…
(´・ω・`)
(´・ω
(´
(´・ω・`)
(´・ω:;.:...
(´:;....::;.:. :::;.. .....
言葉の意味は分からんが、とにかく凄い自信だ(俺がウニを倒す的な意味で)
バリアフリーでは生ぬるい
障害を持つものは弱者なんだから、税金で付き人をつけて至れり尽くせりVIP待遇をしろ
こんな感じじゃない?
これ程じゃないにしろ、こういった下衆のニュースを聞くようになったね
678 :
1/6:2009/10/15(木) 12:44:36 ID:w+qhZ557O
週に一度は知らない所から電話がかかってきて、家ではラップ現象が生活音のように鳴り響く。
これはそんな友人と私の体験の覚え書きだ。
「それは知らないよ」
親友であり幼なじみであるサチが妙な事を言い始めたのは小学5年の時だったと記憶している。
そんな彼女と今も同じ大学に通っているのだが、今回書かせていただくのは中学時代の話だ。
サチと私が入学した学校は都内だったこともあり、所謂心霊スポットや怪談話には無縁の生活を送っていた。
そんな中に初めて囁かれたのが“美術室の怪談”だ。
内容は『放課後、美術室の前を通ると猫の鳴き声がする。気になって覗いてみると、四つん這いの黒い人間が机と机の間を駆け回っている』と言う想像すると気持ち悪いものだった。
そんな噂が私の耳に入ってくるのにさほど時間はかからなかった。
そして彼女に知っているか聞いてみると冒頭の台詞が帰ってきた次第である。
「まさかとは思うけど気になるの?」
私を駄目な娘を見るような視線を送ると、彼女は溜息混じりにそう前置きした。
「本当ショーコはそう言うの好きだよね」
ショーコとは私の事である。
「良いじゃん、みんな見てるのに私見たことないんだもん」
679 :
2/6:2009/10/15(木) 12:46:08 ID:w+qhZ557O
零感であるところの私がムスッとしていると、サチはまた溜息を吐いて言った。
「なんていうか、隣の芝はすべからく青く見えるモノだよ」
時を同じくして隣のクラスの生徒が不登校になった。
今となっては、卒業アルバムを見てやっと名前を思い出す程度の接点しかないような子だ。
そう言えば最近年上の相手と結婚したと風の噂で聞いた気がする。
話を戻そう。
学校での怪談、それに続いての不登校とくれば多感な少年少女が食いつかない訳がない。
例に漏れず私もその中の一人で、普段全然話すことのないクラスメートと不思議と打ち解けていた。
「生霊ってセンが濃厚なんだってさ」
クラスで主流の説を帰り道に話しているとサチは驚くほど真面目な顔でなるほど、と頷いた。
「でも生霊って本人の所に現れるものだと思ってたよ」
「って言うと?」
私が頭から疑問符を出している私へ彼女は単語で応えた。
「源氏物語」
「えっ?それがどうしたの?」
疑問符が増える一方の私にさらにたたみかける。
「六条御息所」
「えっ?えっ?何?」
解らないことだらけの私はいよいよ泣きそうになった訳なのだが、最後の単語でハッとした。
「葵の上」
「あ…そっか。」
680 :
3/6:2009/10/15(木) 12:47:50 ID:w+qhZ557O
やっと答えにたどり着いた私に優しく微笑みかけるサチ。
「それに、ホントにそうだったとして放課後見れれば良いけどね」
「そっかー」
「じゃあ着替えたらウチ集合で」
この雲行きは不穏である。確かに、私は心霊現象が全般的に好きだ。
「見たいのはショーコでしょ?なるべく急いで来てね」
だが何を隠そう恐がりだったのだ。
「ぶえええええ!?」
私が夕方の学校に異常な恐怖感を抱えているのは何が原因かと問われれば、彼女と答えるに決まっている。
夕方。
L字型をしている私の学校の短い方の三階に件の美術室はある。
「ねぇ、サチ。入れないんじゃない?」
狙いを定めたのかはたまたそう言う運命だったのか、奇しくもその日は午前授業だった。
「大丈夫、事務の人に言えば入れてくれるよ」
そんな他愛もない会話をしている内に学校に到着してしまった。
事務員と二、三言交わすとサチは親指で玄関を指し示す。
どうやら許可が降りてしまったようだ。
「元々怪談は二つしかなかったらしいんだよね」
上履きに履き替えたところでサチはポツリと言った。
「お父さんに聞いた話なんだけど、美術室で猫が殺される事件があったんだって」
「それで猫の声が聞こえるって?」
681 :
4/6:2009/10/15(木) 12:48:40 ID:w+qhZ557O
疑問を提起した私をまぁまぁ話は最後までさ、と諫めつつ彼女は続ける。
「全部で三件あったらしいんだよね、猫殺し。一件は事故みたいだから実際は二件なのかな?猫好きな私としては絶対に許せないね、首を斬って殺すなんてさ」
首を斬られた猫を想像してしまって気持ち悪くなる。
「それからなんだよ『美術室から猫の声が聞こえる』のは。ショーコ、これがどういう事かわかる?」
「いやいやいや、待って、待ってよ」
すんでのところで吐き気を飲み込んだ私はサチをまくし立てようとした。
「じゃあ黒い人間はどうなのか、って言いたいんだよね?ホント、猫の幽霊ならまだしも下らないモノだよ」
顎で指し示した先には美術室のドアがあった。
「もう一度聞くよ」
怖いものは見たくなるのが人間というものだろう。
嫌な予感と好奇心が入り混じった不思議な気分のまま、ドアの窓に顔を近づける。
「なんで怪談は一つになったのかな?」
嫌な汗が額をつたう。
思わず目を閉じる。
目を開ければすぐそこに黒い影が蠢いているような気がして開けられなかった。
瞬間、猫の鳴き声が聞こえた気がした。
私は情けない事にヒッと後ずさった拍子に転んでしまった。
682 :
5/6:2009/10/15(木) 12:50:14 ID:w+qhZ557O
「 」
サチは何かを言うと美術室に入ってしまった。
軽くパニック状態に陥っていた私も置き去りにされたくない一心でサチに続く。
入って一番始めに気付いたのは一人の女子がこちらを振り向いた事だった。
私から見るとモロに逆光だったが、細身でシルエットからそう判断した。
ほっと胸をなで下ろして近づこうとした矢先「なんで」と声が響く。
準備室から出てきた声の主は驚愕していた。
「一匹しか居ないはずなのに」
気付いてもう一度黒い少女の方を見るが、表情を伺うことは出来ない。
と、少女が私の方に歩きだした。
何をすることも出来ない私がしたことと言えば、走り寄るサチの方を向いて泣きそうな顔で口をパクつかせること位だ。
いよいよ詰まる距離に限界を感じた私の体は、少女の体がぶつかったと同時にサチによって引き倒された。
私の記憶はドアから出ていく影をサチと見送った所で途切れている。
数日後、朝礼で美術の教師が交通事故にあったと校長から話があった。
事故が起こったのはどうやら私達が影に出会った次の日らしい。
その事を知ったときは、理由はどうあれ同時に後ろめたい気分になった。
きっかけに過ぎなかったとしても、無視する事は出来ない。
683 :
6/6:2009/10/15(木) 12:51:15 ID:w+qhZ557O
結局の所、あの影は不登校の少女の生霊だったらしい。
美術教師と女生徒の関係は以前から噂になっていたそうだ。
「大方、痴話喧嘩を見られて誤魔化そうとして噂を広めたんじゃないかな。それが現実に侵攻してきてしまった。そりゃ学校に来たくなくなるよ。言葉の力は怖ろしいよ、まったく」
私は殆どサチとしか話さなかったし、彼女は彼女で余り他人と話すような性格ではないので情報が入ってこなかったのだ。
「なんで美術室だったんだろう?」
帰り道、兼ねてからの疑問を尋ねてみた。
生霊だったなら当人の元に出れば良い話で、わざわざ学校に出る理由が私には解らなかったのだ。
私の質問を聞いてサチは一瞬呆気にとられた後、吹き出した。
「相変わらずショーコは面白いね」
「なにがよ」
バカにされたと思い膨れているとサチは優しく私に問いかける。
「先生の家、場所解る?」
言われて合点がいった。
「家の場所が解らなかったとか?」
それが一つ、と微笑んでサチは続ける。
「それか、私達の知らない恨みがあったのかもしれない」
なんてね・とサチは笑ったが、私は自分の背後に顔のない影が立っている気がした。
ロリコン外道教師は死ねばいいと思うよ
685 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/15(木) 22:15:34 ID:xPV6lFX0O
ウニが面白いならこれも充分面白い。
「覚え書き」ならblogがオススメだよ♪
>>683 ショーコ乙!
面白かったから、また書いてよ!
688 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/16(金) 15:20:30 ID:Vxi1OooqO
パチンコ屋での心霊ネタ書いて
単発モノはスレ違いだと何度言ったら分かるんだ?
他に該当スレいくらでもあるだろ
690 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/16(金) 20:58:55 ID:hPMBQeLU0
なぜシリーズものではないと?
シリーズの定義は?
オマエこそくだらない発言はスレ違い。
>>678-683 100点満点中、55点
小説などを好んで読んでるのか、語彙や表現はそれなりに引き出しはあるようだが、イマイチ使いこなせてない
文体も堅さと柔らかさがゴタ混ぜになってる感じだから全体的にアンバランスな印象を受ける
構成もそれなりの作りにしようしているようだが、所々錯綜していたり説明が少々不明瞭なところがあったりと読み手としては少々戸惑う部分がある
もうちょっと全体のまとまりに気を使うと良い感じになると思う
692 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/16(金) 22:45:04 ID:BmyJYjsyO
ダレもオマエなんぞの意見聞いてないから。
とっとと文学板へ帰んな!
693 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/16(金) 23:40:52 ID:lBwHUvjjO
短パン
>>691 言えるね。書きたい気持ちが先走って、つなぎの文脈がすっとんでる印象も受けるし。
キャラの魅力で話を盛り上げる気なら、もう少し個性が必要だな。
695 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/17(土) 08:44:13 ID:xqOI9PxZO
↑こいつがオレ様の文学批評をダレか聞いとくれとよ。
>>690 なんで今まで投下されてなくて、本人が「まだ色々とあります」的な発言もない話がシリーズ物と言えるのか?
反論するんならその話がシリーズ物と言える根拠ぐらい書いてよ
お前は
>>678の話がラノベチックだからシリーズ化するものだと決めつけてるだけだろ
>>696 どんなシリーズ物も1話目は単発みたいなもんだから見わけつかねーよな。
初投稿の場合は「これからシリーズになります」と明言してほしい。もし無口な作者を演じたいなら
1話・2話を同時投稿とかだったらわかりやすいかもな。後者は長くなりそうだけど。
もし
>>678が今までも投稿してた人で、シリーズの一つだとしたら、
トリぐらい付けてくれよって思うわ。
698 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/17(土) 15:36:10 ID:baei5oQ+O
最初は洒落コワにするか、最低2話連投した方がいいのかね
洒落コワまとめでも同じ人のエピソード2話程度なら普通にあるし
無理矢理に連続物にする方が害が大きい気がす
699 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/17(土) 18:22:14 ID:xqOI9PxZO
オマエらなに勝手にキメゴトつくってるの?
何様?
結局自治厨がこんな有様だからテンプレ通りの劣化師匠しか出てこないわけだろ。
スレ違いだろうが何だろうが受け入れる懐の深さがないよね。前スレでもこんな流れだった気がするが。
SSスレでも立てるか?単品短編もシリーズも受け入れる創作スレがあったほうが書き手の人も書き易いしどうだろうか。
701 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/17(土) 21:09:20 ID:Vwt4hc09O
ウニは?
ウニ、来週って言ってたから今日は来ないのかな
今日じゃないのか!
暇だ
暇
暇
俺はあえて「ゆっくりでいいよ」と言いたい
705 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/18(日) 00:00:51 ID:IiS8SS4zO
オマエだけがな。
俺はあえて「書かなくていいよ」と言いたい
>>706 ゆっくり休んで鋭気を養ってから書いてくださいということですね?
わかります。
>>700 自治厨がこんな有様〜うんぬん言っておいて俺ルールを押しつける気か?
ルールを守れないなら出て行けよ
そして新たに「単発創作モノ」スレでも立てとけよ
>スレ違いだろうが何だろうが受け入れる懐の深さがないよね。
めちゃくちゃだなお前
分かった、お前「アレ」だろ?またそう言う事言ってコピペシリーズとか再開するつもりだろ
710 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/18(日) 12:07:04 ID:aCUrNLOrO
シリーズに固執してるのはお前と
>>1だけだろw
>>7を勝手に追加してんじゃねーかw
↑こいつ、あの粘着荒らし確定だわ
最近静かだったのにまた復活かよ
713 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/18(日) 15:48:47 ID:x14uhuWM0
>>708もああ言っていることだし。
ここはひとつ華々しく単発創作スレでも立てようじゃないか。
そしてこのスレにも今まで通り、荒らしにお邪魔させてもらおうじゃないか。
翌日、バイトが終わってこれから家に帰り夕飯を食べようという時に沢田さんから電話があった。
昨日の山下さんの書き込みを見て、フォーラムの管理人をしているメンバーに連絡をとったのだそうだ。やはり沢田さんも書き込み時間がおかしいことに気がついたらしい。
山下さんが『またDがきた』と書き込んだのは自分たちがまだ部屋にいた時間だった、と沢田さんは断言する。
「部屋にいたとき時計見たから間違いない」
だからあの書き込みは別の誰かがしたものか、あるいは本人が別の場所にいて書き込んだか、そのどちらかだと。
そう思って管理人に問い合わせると、「ほぼ間違いなく山下さんがいつものパソコンで接続したもの」との回答があったのだとか。
アクセス解析で分かるのだそうだ。
「これってどう思う?」
「どうって。さあ。確かに不思議ですけど」
そう答えたものの、頭の中にはいくつかの可能性が浮かんでいた。
ひとつめ。山下さんはいつも自分の家ではなく、別の場所からネットに接続していた。
ふたつめ。俺たちがオフで出会い、山下さんだと認識している人物は、ハンドルネーム『山下』を名乗る人物とは別人だった。
みっつめ。沢田さんが案内してくれたあの部屋は、山下さんの部屋ではなかった……
現実的なのは、ひとつめか。
どうしてネット環境があるのにわざわざ自分の部屋以外で? という疑問は残るが、ありえなくはない。
ふたつめは気持ちの悪い回答だが、これまでの掲示板やオフでのやりとりなどで同一人物であることを疑う理由はないように思われた。
みっつめは単なる沢田さんの勘違いという線。部屋を間違えて、そこの住民がたまたま留守だったという締まらない話だが、沢田さんは一度ならずあの部屋に来たことがある様子だったから、それもなさそうだ。
玄関のドアの横に表札があり、それが『山下』だったことを俺自身覚えていることからしても。
もし仮に山下さんと沢田さんがグルで、二人して俺をからかおうという腹ならまた話が違ってくるけれど。
そんなことを考えていると、重要な部分を聞き逃しそうになった。
「ちょっと待ってください。鍵が消えてたって、今日も行ってたんですか」
「そう。書き込み時間はなにかの間違いだとしても、あの部屋、絶対どっか隠れる場所があったはずだと思ったから」
なのに昨日帰るとき元の場所に戻したはずの鉢植えの下の鍵がなくなっていたのだと言う。
ドアは施錠されていて入れなかった。ノックしても応答はなし。
「もうなにがなんだか分かんない」
疲れたような声でそうこぼす沢田さんに「まあ、なにかあったわけでもないし、しばらくほっときましょうよ」と言ってみたが、オカルト仲間とは言え赤の他人の俺と違ってそこそこ親密なお付き合いのあるらしい彼女にとってはそう割り切れるものではないようだ。
「まあいいや、色々ごめんね」
と電話が切られた。
静かになってこれまでの経緯を一人で思い返していると、どうも沢田さんが一方的に山下さんから避けられているだけのような気がしてきた。
確かに掲示板への書き込みが減り、その内容もおかしなものになってはいたが、おかしいと言えばもともとオカルトフリークの集う奇妙な場所なのだし、中には前世がどうとかもっと無茶苦茶なことを言い出す人もいるのだから取り立てて騒ぐほどのものでもない。
ただ沢田さんが個人的に連絡を取ろうとしてそれが上手くいってないだけなのではないだろうか。
痴話げんかの類ならもう関わらないでおこう。
その時は無責任にそう思ったものだった。
「四パターンの顔ねえ。それ面白いな。要は世の中の人みんなが四種類のお面のどれかを被ってるようなものか」
「しかも疲労のピークに入ったら体格とか服装まで区別がつかなくなるらしいです」
「てことは国民総着ぐるみ状態か」
大学の先輩でもあるオカルト道の師匠に会ったとき、たまたまその話をしてみるとやけに嬉しそうに食いついてきた。
「病んでるね、その人」
まあ普通ではない人だけれど、あなたに言われたくはないだろうと思う。
ニヤニヤしながらひとしきり頷いた後で、師匠はぼそりと言った。
「Dは明らかにこの世のものじゃないね」
それは自分も思った。現れ方もそうだが、元々霊感の強い人なのだし。
「実際は三パターンと考えた方がいいかも知れない。大多数のA、次点のB、少数派のC。すべての人間がそのどれかに見えてしまう心の病気。
それに加えて、霊感で察知したこの世のものではない存在を、そのどれにも当てはまらない第四の姿で認識してしまうんだ。だとするならば、その山下さんの霊感はかなり強いね」
「どうしてです?」
「他の三パターンと質的に同じレベルで見えてしまってるからだ。多少見えてしまう人でも、たいていはそれはそれと分かる」
確かに俺も経験上、人間なのか霊なのか分からないものを見てしまうことはあったが、それでもほとんどのケースでは普通の人間と同じようには知覚していない。霊は霊だ。
「そういう、常に霊を視覚的に人間と同レベルに認識してしまう人はごく稀にいるみたい。それの極まったような物凄い例を知ってるけど、そんな人はまずまともに世間では暮らせないね」
「誰です。その人」
「アキちゃん」
知らない名前だった。まだその時は。
「まあともかく、その山下さんに見えているDが霊的なものだとしたら、それが増えているってのが気になるな」
そうだ。最初にその書き込みがあってから彼と誰もコミュニケーションをとれていない。少なくともフォーラムの仲間内では。
「単純にDを霊と置き換えると、目に見える霊が増えているってことか」
「霊感が上がってきてるってことですか」
「いや、とは限らないよ。そのまんま、実際に霊が増えているのかも」
あっさりと師匠は言う。
「彼の周囲で。それとも雑踏の見ず知らずの人々の群れの中で。あるいはテレビに映る無数の人間たちの中で……」
この人はまた嫌なことを言って俺を怖がらせようとしている。咄嗟に心の中の眉毛に唾をつける。
717 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/18(日) 22:22:17 ID:JQT9f0bwO
わぁ生ウニさん!!
というわけでウニさん支援あげ↑
冒頭でいきなり「翌日」って何?
やっぱり書き方変わったよな
「そもそもこの街に何人の人間がいるかなんて、誰も正確な数を把握していない。役所? 役所が把握しているのは形式上住所を置いている人の数だけだろう。特に大学生なんて住民票を移さずにこの街に住んでる代表格だ。その住民票がない人間だっている。
本当にこの街にいる人間の数を知りたかったら、時間を止めてひとりふたりと数えていくしかない」
その結果、少々人間の数が多すぎたところで。と師匠は続けた。
「本来誰も気づきはしない」
なにを言っているんだこの人は。
「まあ、それはさて置いて、その山下さんの見ているDが増えてきたってのは、どかかから湧いてきたというわけじゃなさそうだ」
「なぜです」
「またDがきた、っていう書き込みは部屋を訪ねた君らのことを言ってるように受け取れるけど、二人とも前のオフ会の時点ではAだったはず」
そうだ。本人がそう言っていた。
「ということはAに見えていたものがDに見えるようになったってことだよ」
「ちょっと待ってください。Dは霊的な存在じゃないんですか」
「自分でも知らないうちに、そうなってるんじゃない?」
指を向けられ、思わず目を反らす。でもそんなわけはない。
「おっ。否定するね。自分が死んでることを認めたがらない。典型的な霊体の症状です」
からかわれている。さすがにむかついてきた。
「まあそう怒るな。Dになった君が依然として霊的存在ではないとすると、初めからDは人間だったってことになるんじゃないか」
Dは人間。
それは俺も考えた。玄関のドアから覗く顔は植木鉢の下の鍵を使えば人間にも可能だ。
帰宅した山下さんが中から鍵を掛けたのを見計らって植木鉢の下から鍵を出し、ドアを開ける。気づいた山下さんが近づいてくる前にドアを閉じて、外から差したままの鍵を捻って施錠し、逃げる。一階の端部屋だったから、角を曲がれば上手く逃げ隠れできるだろう。
誰がなぜそんなことを、という疑問は残るが。
ただ風呂場に立つDは分からない。その風呂場はこの目で見たが、小さな窓はあったものの人間が出入りできるようなものではなかった。気づかれないように家宅侵入して、同じく気づかれないように出て行くなんてことができるだろうか。
「難しく考える必要はないよ。ヒトは生身の人間ではなく、まして霊でもない人間を見ることがあるじゃないか」
「幻覚だと」
でも、師匠も山下さんの霊感が強いのを認めていたじゃないか。
「だとするならば、ってつけてたよ。Dを霊と仮定した場合の話だ。僕の結論は最初に言ってる」
師匠はまたニヤニヤ笑いながら言った。
「病んでるね、その人」
だったらさっきまでの話はなんなんだ。本当に回りくどいなこいつは。
「最初は幻覚が見えたんだよ。それでも生身の人間と幻覚の区別がついてたんだ。それがだんだん本物の人間まで幻覚のように思えてきたって話。末期的だね」
あからさまに他人事だと言わんばかりの口調で、幻聴の場合だとどうだとかいう話をつらつらと続けた。
「あんまり関わらない方がいいと思うよ」
最後にそう忠告してくれたが、それは結局俺の結論と同じだった。
それからしばらくは山下さんのこともDのことも、あまり考えることなく過ごした。新しく始めたバイトやサークル活動で忙しく、オカルトフォーラム自体にもほとんど顔を出さなかった。
沢田さんからの電話もなく、俺の中で終わったことになりかけていた。
ところがある夜、寝る前に何気なくフォーラムの掲示板を覗いてみると、一番下に『殺し方ってなに?』という書き込みがあって、思わずドキリとする。
嫌な予感がした。
その少し前の書き込みに対するレスのようだった。投稿者は俺の知らないハンドルネーム。新顔だろうか。
緊張しながら上にスクロールしてみる。
すると今から一時間ほど前に、山下さんの名前で書き込みがあった。
『あいつらの殺し方がわかった』
その文字を見た瞬間、心臓の鼓動が早くなった。
あいつらってなんだ? 殺し方って?
さらに遡る。
『いや、フリじゃない。ツモリなんだ』
間に、業者の宣伝がいくつか入り込んでいる。俺は画面から目を離せずにゆっくりとマウスを動かしていく。
『あいつらは人のフリをしている。ぼくだけがそれを見抜くことができる』
危険だ。
俺は立ち上がった。
なにをしようと思ったわけでもない。ただ無意識に身体が動いたのだ。
山下さんの書き込みはその三つだけ。五分ほどの間に書き込まれ、そしてそれから現れていない。
何人かが冗談めかしてレスをしているが、常連の名前はなかった。
みんなこの書き込みの意味を理解していない。情緒不安定なんてものじゃない、山下さんは本当に危険な精神状態にある可能性があるのだ。
Dが増えている。彼の平穏な生活を脅かすDが。疲れた時、人の顔が四パターンに見えたように、少しずつ狂っていった彼の精神が、増えていくDに追い詰められていく。
そして彼の中でついに暗く恐ろしい決断が下された。
その増えたDとは。あいつらとは。俺であり沢田さんであり、大多数のただの人間のはずなのに。
俺は家を出ると自転車に飛び乗り山下さんの部屋に向かった。ドロドロと纏わりつくような嫌な予感がして仕方なかった。
まずコンビニに到着し、前回のコースをそのまま辿る。やがて見覚えのあるアパートが見えてきた。
ドアに掻きつくように駆け寄ると激しくノックする。名前を呼ぶ。深夜だが周囲の迷惑など気にしていられない。
「山下さん」
動きを止めて静かにしてみたが、中からはなにも聞こえない。裏に回ってベランダ側から覗き込もうとしてもカーテンに覆われていて中は伺えない。しかし明かりは一切漏れておらず、相変わらず人の気配は無かった。
次に俺は周辺道路を歩き回った。山下さんらしき人影がないか目を凝らしたが、見つからない。
疲れ果てて、なんの収穫もないまま帰らざるを得なかった。
三ヶ月が経った。
あれからついに山下さんの姿を見ることはなかった。失踪したのだ。仕事先にも告げずにいなくなったらしいということを沢田さんから聞かされた。
しばらくは新聞やテレビで地元の傷害事件のニュースがあるたびに山下さんが関わってはいないかと恐れたものだったが、杞憂に終わっている。
アパートの部屋は保証人になっていた家族が片付けたそうだ。今はその部屋にはそんな経緯も知らない新しい住人が入っている。
春になり、有形無形の様々な別れがやってきた。
看護婦をしていた沢田さんが実家のある県外の別の病院へ移ることになり、オカルトフォーラムのメンバーでお別れ会と称したオフ会を開いた。
人当たりも良く、オカルティックな話題を多く提供してくれた功労者ならではの扱いだった。
沢田さんは散々回りからお酒を注がれてかなり酔いが回ったらしく、口数が減ってきたかと思うと外の空気が吸いたいと言い出したので俺が付き添って居酒屋の外に出た。
主役がいなくても盛り上がっている宴席を尻目に沢田さんは歩道に植樹されたケヤキにもたれかかるようにして立っている。
「吐きますか」
と訊いて近づこうとした俺に彼女は頭を振って、かわりに「電話があった」と言った。
「誰からです」
「山下さん」
一瞬誰のことか分からなかった。ヤマシタさん。ヤマシタさん?
「元気か、なんて言うから、どこにいるのって怒鳴ってやったら、部屋にいるよ、って」
山下さんって、あの山下さんなのか。
「いるわけないじゃない。あの部屋、もう他の人が住んでるんだし。そう言ってやったら、そんなはずはないって笑うの。ぼくはずっとここにいるって」
半ば覚悟していた狂気に寒気がするのと同時に、妙な符合が頭に引っ掛かる。
最初に沢田さんと部屋を訪ねた時、俺たちがそこにいたと思われる時間帯に書き込みがあったこと。その俺たちをどこかで見ていたかのようなその内容。そして玄関の靴。
まるで目に見えない彼がひっそりとそこにいたかのような。
「なにしてたのって訊いたら、ずっと探して回ってたって」
なにを? 決まっている。Dだ。
後編というよりもただ分けただけで1個の話なんだろうね
生ウニ!支援!
生うに初遭遇
無理せず頑張ってくれ
実体と霊の区別がつかない『アキちゃん』て、「ビデオ」で出てきた不登校中学生の娘か
今後また別の話で出てくるのかな
また面白くなってきた
「あいつらは人間のつもりなんだって。いつの間にかその本人と入れ替わってるんだって。自分でも気づいていないから普通の人間みたいに生活してるけど、ぼくにだけは分かるんだって。Dの顔に見えるから」
探して、どうしたんだ?
沢田さんは顔をケヤキの幹の方に向けたままポツリポツリと語る。
「フリじゃなくて、ツモリだから、教えてあげればいいだけなんだって。おまえは人間じゃないよって。そしたら……」
忌まわしい言葉を飲み込むように押し黙る。
「怖かった。彼がなにを言ってるのか分からない。電話越しに声が近くなったり遠くなったりしてた。狂ってると思った。でも狂ってるのは私かも知れない。そんな電話本当は掛かってきてなかったのかも知れない」
小さな声が微かに震えている。
自分の周囲の人間がいつの間にか良く似た全く別の存在に入れ替わられているという妄想にとりつかれるというのは聞いたことがあるが、山下さんは少し違うようだ。
入れ替わっているのは、彼自身なのではないか?
いや、入れ替わりと言っていいのか分からない。
客観的に見て彼のいる空間と我々のいる空間とが交わっていないという、この不可思議な現象にこちらの頭もこんがらがってくる。
山下さんは確かに狂いかけていた。けれどその狂気が、内側にだけでなく外側、つまり現実にまでじわじわと浸潤していったというのか。
「もう街に人がほとんどいなくなったって。見つけ次第、自分が殺してあげたから。誰もいない街を毎日歩いて歩いて、それでも不安が消えない、って泣きそうな声で言うのよ。それで……」
会いたいって。
沢田さんは絶句した。
俺はちょっと待って下さいと小さく叫んで手を前に突き出す。
割れた鏡が頭に浮かんだ。
彼のいない部屋に残された唯一の生きた痕跡。いや、あの時も彼はいたのかも知れない。部屋に侵入してきた二人のDに怯えながら。
鏡。鏡。もう一つどこかでその言葉を聞いた。
そうだ。彼が初めてその四つの顔の話をした夜。俺はいつの間にか眠ってしまっていて、起きた時には彼はもういなかった。疲れたから帰ると言い残して。
生ウニ私怨!
その時、鏡占いに行こうという話になっていたはずだ。鏡。鏡。
疲れたから帰る?
疲れた時には四つの顔が見える。鏡の向こうには何が見える?
俺はA、沢田さんはA、ColoさんもA、みかっちさんはC……彼自身は?
誰も訊かなかった。どうして訊かなかったんだろう。思い返すと、どうも彼がその話題にならないよう上手くかわしていたように思う。
彼は鏡を見たくなかった。だからあの夜、先に帰った。そして自分の部屋の鏡を割った。
なぜ見たくなかった?
俺は想像する。
鏡の前に立っている俺自身を。そしてその鏡に映っている顔が、一瞬、どこかで見たような、どこでも見ていないような、知っている誰かのような、知らない誰かのような、無表情の人間の顔に見えた気がした。
ハッとして我に返る。
すべてのDを殺して回っているという彼が本当に恐れているのは……
自分に真実を告げる他者の存在。
「会いたいって言うのに、私、来ないでって」
沢田さんが口元を押さえる。
それで実家へ帰るのか。
急な引越しの理由が分かった。
あれ?
その時、急にデジャヴを感じた。こうなることを知っていたような気がするのだ。なんだろう。気持ちが悪い。
「『分かった』って、そう言って電話が切れた。もう繋がらない。掛けても、現在使われていない番号だって……」
沢田さんは泣いているようだった。
しばらくそうして二人とも黙ったまま夜風に吹かれていたが、やがて落ち着いた頃合を見て席に戻ろうと言った。
居酒屋の自動ドアの前に立ち、それが開く瞬間、ガラス製の不完全な鏡に映った俺と沢田さんの後ろ、誰もいないはずの空間に、無表情の人間がひっそりと立っているような気がした。
終わり
ウニ、乙!
乙です!
楽しませてもらいました!
生ウニお疲れ様でした!
ウニ乙です
もししんどかったら
無理に約束だからって投下しなくてもいいのに
まってたけどw
736 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/18(日) 23:23:48 ID:lbaR8Gph0
ウニお疲れ様!
楽しませてくれてありがとう。
ウニさん乙!
正直待ってたからすっきりしたよww
山下さんは鏡の世界にいっちゃったんだろうか
そこはABCDの逆転した世界なんだろうか
740 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/18(日) 23:33:41 ID:XhcXbmcRO
ウニさん来てた!!今から読ませてもらいます!!乙です!!
>>737 分ける気はなかったんじゃないの
前編後編って感じは確かにしない
ウニお疲れ
今回もオチがラストまで読めなくて非常に楽しめた
「鏡」や「ビデオ」の伏線も良い感じに張ってあって秀逸
乙
山下さんは普通にこの話では生き残るものと思っていたから驚いたわ
>>742 「ビデオ」と繋がってたっけ?
「追跡」と「鏡」はわかったけど…
745 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/19(月) 00:39:05 ID:dNgXKtoRO
生ウニ様初遭遇で感激w
お疲れ様です
すごい不気味な独特の後味
これが大好きw
ウニ乙!
>>747 あー、そっか!アキちゃんいたっけ。サンクス!
なんかゾクゾクするね〜
750 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/19(月) 03:04:14 ID:WonYOXrMO
ウニさん乙です!
続きがありそうな
>>744 逆に聞きたいんだけど、「追跡」とどこかリンクしてた?
>>752 490 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2009/10/19(月) 00:17:28 ID:iBgdr8h0O
>>488 『追跡』でウニが最初に本を読んだじゃん?その中に『人間もどき』って話があって、たぶんそれが今回の話に繋がってるんだと思う。あの本は歩くさんが見た予知夢をまとめたものらしいし。
説明下手でスマソ。一回読み返した方がわかりやすいかも。
>>753 なるほど
ホント奥深いな師匠シリーズは
755 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/19(月) 04:06:08 ID:S5VNDP8jO
多分山下さんはゲシュタルトしてたんじゃないか?
よくもまあダラダラダラダラ・・・
特に
>>351後半、師匠の師匠、の言葉遣いが明らかに別人
ID抽出も・・・
>「おまえは人間じゃないよ」
この話ってあれだよね。『追跡』で歩くさんが書いて(予言して)た夢小説。
>>753 そうすると今後、他の予知夢小説の話も読める可能性があるってことか。
ウニさんひゃっほう!
>>452 ウニ信者は同人グループ
この話もなんかの自費出版物に載せて金稼ぐつもりだから、
サクラもたんまり湧くだろ
>>477 個人的にはそういう話が増える事を期待したいよ
素人が、体験談やそれに少し(読む人が読み易いように)手を加えた程度の話
ウニさん乙です。
が・・よくわかんない。俺馬鹿?
一人だけ時が遅れてる
山下さんみたいにここにいるけどいないんだね…
ゆとりのつもりはないがイミフ
>>761 >>728-730でのウニの見解は
山下さんは最初からDで皆には隠していたのではなかったかというもの
ただ人が4種類に見えてしまうならともかく
山下さんは前編で第3者にそれを話してしまい、あまつさえDがなんであるのか仮設に至る
生きてる人たちの中で自分だけがD
それを自覚してしまったために山下さんは生きている自分のアイデンティティを失い
Dである自分を見せる鏡を破壊した
と解釈したけど
でも、鏡の世界が逆転してるならAの人はDに見える
つまりAの人が鏡の前に立つとDに見えるわけで
山下さん本当はAなのにDと思い込み、向こうの世界へ入っちゃったとか…
colo
PHS
人の顔が認識できなくなる病気って、実際にあったと思う
764
親切に解説、有難う。
馬鹿な俺には、初期の頃の話しがシンプルでよかったな。
最近のウニさんは、まどろこっしい。
769 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/19(月) 19:09:12 ID:YbGmX6tH0
これは何人目のウニなの?
何人目というか、同人グループという認識で決着してる
何人目とかいう話はもう飽きた。それぞれが自分の中で思ってればいい。
ウニ氏が何人いるとか、あんまり意味はないと思う。
何年にも渡って続いてきたシリーズだし、仮に一人で書き綴って来たとしても、
それだけ書いていれば文体も変化するだろう。
プロ作家でないなら、私生活の変化や仕事の忙しさ次第でクォリティも上下するはずだし。
素直に楽しんで読んだ者勝ちだと思うんだ。
本 当にあった怖い名無し
をNGワードにすればとても読みやすいよ
洒落怖からはほぼ抜け出てるし、面白ければそれでいいと思うよ
>>769 >これは何人目のウニなの?
綾波を思い出した。
長編の合間合間に師匠の軽いハッタリを聞きたい
>仮に一人で書き綴って来たとしても、それだけ書いていれば文体も変化するだろう。
まだこんな妄言吐いてる信者が居るのか
ていうかこの話って、そのまま「墓」にリンクするじゃないか。。
師匠がD。とか。。
投下しにきたけど、ウニ氏登場した後じゃタイミングが悪いなぁ。
ってことで、今回は投下は見送りウニ乙を叫ぶ。
最近のはオチや解釈を読者に任せる文体が多いね。ハッキリ言って
嫌いじゃないぜ。楽しませてもらいました。
783 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/20(火) 21:07:41 ID:85kDrF/00
いくら無料でももう少しまともに書いた方がいいね。
知的障害児の妄想日記かとおもったよ。
こんな所でいい気になっているうちに感性も文章を書く力も完全に錆び付いてしまったね。
面白いけど、怖い話から人物の絡みの物語に変わったよね
久々に怖い話が読みたいです
後日投下しようと思ったけど、よく考えたら
俺のシリーズは師匠シリーズファンに見てほしいから
やっぱり今がタイミングだ。ってことで投下。よろしくです。
ある日、オカルト好きの相棒に、「何故そんなにもオカルトなことが好きなのか」
と、聞いたことがある。そしたらやつはものすごくニコニコ笑いながら
「だって、オカルトって、この世で最も近くにある異世界だろ」と言った。
その言葉に、俺はあまりにも納得してしまった。俺がオカルトに魅了されるのは、
この世界以外の何かに触れて、ファンタジーな体験をしたいからだろう、と。
そしてそのとき、俺はこいつを生涯の相棒にしようと決めた。
そんな、相棒と俺の話。
俺も相棒も、オカルトな物語の主人公になれるような特殊能力なんて、一切ない。
だけど、興味は体験を呼ぶもので、俺達はそれなりに結構な体験をしてきた。
「こないだ、廃墟寸前のいい感じな家見つけたんだけど。」
俺達のオカルト体験は、いつも相棒の一言から始まる。
「廃墟寸前ってことは、普通の人家なんじゃん」
「そーだけど、誰も住んではないよ。貸家って看板は出てるけど」
「そんな家のどこがいい感じなんだよ」
俺は、オカルトな話には食いつく前によく偵察する。と言っても、ただ単に
相棒にあれこれツッコミながら根掘り葉掘り訊くだけだけど。
そうすると、決まって相棒は俺に興味を持たせるようなことを言ってその気にさせる。
「馬鹿だなぁ。いい感じの家だから、貸家なんだよ」
俺たちは、その家に行ってみることにした。
その家というのは、俺達が通っていた小学校の裏門のすぐ近くにあった。
とたん屋根の、古い家。一階建てで横に広い家だった。
「ここ、鍵あいてるんだぜ」
「マジかよ。投げやりだな」
「入るぞ」
俺達は玄関を開けて、土足で中に入った。鍵は開いてるくせに、電気は通っていない。
時刻はまだ20時過ぎくらいだったが、中はもうすでに真っ暗だった。
俺達は自慢のオカルトグッズの内の一つ、ペンダント式小型ライトを首からはずして
明かりを照らしていた。ライトを当ててみると、床とかの荒んだ色や壁の色で、
やっぱり相当古い家なんだということがわかる。
「これってやっぱ廃墟じゃねえの?」
俺は相棒に言った。それほど、とても人が住めるようには感じない場所だった。
「お前失礼なやつだな。どっちでもいいけど、一番奥の部屋行ってみようぜ」
相棒が言う一番奥の部屋とは、台所の向こう側にある木のドアでピッチリ閉まった部屋のことだ。
俺は、この家の全体を大体見回したときから、その部屋が一番嫌な感じだと思っていた。
「やだよ。なんか出たらどうすんの」
「そのなんかを見にきたんだよ馬鹿」
ごもっともなので、俺はしかたなく相棒について行きその部屋のドアの前にたつ。
「せーの、で開けるぞ」
「逃げんなよ」
「逃げるかよ」
「せーの…っ」
ドアは、スーとふすまみたいに横に開ける仕組み。小学校のドアみたいな。
だけどそのドアは相当重たかった。ず、ず、ず、と一定のリズムをとって開けるのがやっと。
少しずつ開いていく様は、文章にできないほど怖かった。
やっと人一人が通れるくらいの隙間が開いたドア。それ以上は、どうしても開きそうにない。
「え、ひとりずつ入んのこれ」
「大丈夫。縦になって一緒に入ろう」
「そーゆうのをひとりずつっていうんだよ」
「大丈夫だよ。先はゆずるから、」
「歪んだ優しさ押しつけんなよ。やだよ、お前から行け」
俺たちは、オカルト愛と反比例してかなりビビりだった。でも俺よりは勇気のある相棒が
先にその隙間をくぐることになった。
「新撰組の、死番みたいだな」
相棒はわざと明るく言いながら入って行った。正直少しも笑えない状況だったが、俺もそれに乗って
「じゃあ俺は隊長か!永倉新八がいいな!」と笑った。相棒の姿はすっかり部屋の奥に消えていた。
だけど、なんかおかしい。俺の冗談に返答すらしない。俺は相当怖くなって大声で相棒を呼ぶ。
「おい、相棒!どうしたんだ!」
そんなに気になるなら自分も中に入ればいいのに、俺は完全にビビってしまって、中に入るのは
もう無理難題な状態になっていた。相棒の返答は、まだない。
「相棒!相棒!」
やばい。俺は自慢のオカルトグッズのふたつめ、数珠をウエストポーチから取り出した。
小さい頃おばあちゃんが神社で買ってくれた立派な数珠。それを手にからませてひたすら
「南妙法蓮華経、南無阿無陀物、なうまくさまんだばざらだんかん」
と、てきとうなお経を唱えていた。すると、必死な祈りが通じたのか、中から相棒の声がする。
「おい!いま、ドアを…、開けてみ…」
「は、なんで」
必死で拝んでくれた相手に対する第一声がそれかよ。と思いながらも、
俺は相棒に言われたとおりドアを横に引っ張った。
二人がかりでも、この隙間が限界だったじゃないか。俺一人で、開けられるわけがない。
…そう思っていたのに、びっくりするくらい簡単に、それこそ学校のドアみたいにスーッと、
そのドアは開いた。
「相棒、何で…」
中には、自慢をオカルトグッズのみっつめ、灰塩(相棒の家の仏壇の線香を立てる灰と塩を混ぜた)を
自分の全身にぶっかけた相棒の姿があった。
「あとで話す、出るぞ!」
相棒はそれ以上何も言わず、ズンズンと玄関に向かって歩き始めた。俺はわけがわからなかったが、
出るぞ!という意見には大賛成だったので、黙ってついていった。
玄関にたどりつき、外に出る。外はびっくりするくらい明るかった。時刻はまだ21時。
俺は灰だらけになった相棒とふたり、小学校の裏門から学校を通って明るい道まで走った。
やっと正門を抜け大道路に出た時、俺達はお互い心底安心して、何があったのかを語りあった。
「お前、中で何があったんだよ」
「…中に入ったとき、俺怖いこと考えないようにしながら、ライトで部屋中を見てたんだ。
それで、そういえば何でこのドア開かねーんだよ、と思ってドアにライトを当ててみたんだ。
そしたら……」
相棒は、どんな状況下でも恐怖に直面したときは反射的にポーチから灰塩を取り出し己にぶっかける。
つまり、今日もそうしなければならないような恐怖を感じたのだ。
「そしたら、ドアが開かない原因を見ちまったんだよ。…小学生くらいの男の子が、
ドアを閉めようとしている体制で立ってて、ライトを向けられた瞬間こっちを見たんだ」
俺はゾーッと背筋が凍った。じゃあ、何か。あのドアがあの位置で開かなくなったのは、
その男の子が踏ん張ってたからなのか。じゃあ最後、簡単にドアが開いたのは…
「俺マジでビビって、とっさに灰を被ったんだ。そしたらその男の子スーっと消えて行ってさ」
「だから…、最後は開いたのか」
それから俺達は、無言で家に帰った。その日は怖くて眠れなかったけど、次の日相棒が電話で
「すごかったよな!だからオカルト活動はやめられないよな!」とハイテンションで言ったので
次の日からはそんなに怖くなくなり、また別の心霊スポットへ行けるようになった。
これが「シンデレラ」の異名を持つ俺の相棒と、その日から相棒に「永倉隊長」と
呼ばれるようになった俺のオカルトな体験物語。
スレ汚しすみませんでした。失礼します。
>>785 面白かったよ。乙。
テンポのよさに笑いながら読んでたら、ドアが開かない理由でかなりゾッとさせてもらった。
また待ってます。
>>785 乙!
読みやすくて、面白かった
また是非
>>785 GJ 面白かった
次の体験談、待ってる! 乙
ありがとう!あと5話くらい書きあがってるから、
今後も投下させてもらいます。1日に何話も投下は
さすがにスレ汚しすぎて汚れ落ちないから今日はやめとくけど。
みんながあったかくて泣きそう。今夜はよく眠れるぜ。
796 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/20(火) 23:42:31 ID:rmtF/2c3O
ウニの文章って読む者に迎合していて
醜怪で呼んでて不愉快。
798 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/21(水) 01:26:54 ID:803/Zr/pO
教えてください
怖い話で主人公は東北在住で憑かれやすく 合気道?を嗜んでいて
その師範に当たる人は女性で浄霊能力が高くて酒に強く 空手の有段者の彼氏がいてで主人公を顎で使う
という話が何話かあったと思うのですが
何シリーズというのか また掲載されているサイトを教えてください
>>795 読みやすくて面白かった
次も楽しみにしてる!
独り言だけど、
ウニの話、隈無く読みつつ叩いてるヤツ
別人説唱えてるヤツって何なの?
あー腹立つ腹立つ原辰徳。
私は今後も読みたいけどもうこんなならウニが可哀想だから
ここに投下するのは止めてもいいんじゃないかと思ってしまう。
自己サイトでもいいしそろそろマジ出版社に持ち込むなり賞物に投稿するなりしてみたらいいのに。
アホ相手に才能の無駄遣い勿体無い。
>>800 アンチは放って置け。
一番理不尽な思いしてるのはウニだろうし。
だから投下してくれた後にはしっかりと乙ってやれ。
叩くのが目的に読んでる人もいるようです
2ちゃんだしある程度は仕方ないかもね
804 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/21(水) 11:12:16 ID:3WB4tRiy0
ってかオカ板で得意になってオナニー文章撒き散らしてるのが鼻につく。
ほんと文芸板行ってくれ、オカでもなんでもないんだから。
もっともあのお粗末な文章じゃ叩かれるのは必至だけどな。
俺の相棒との話をさせてくれ。相棒というのは、オカルトの道をツーステップで
頑張っていこうと誓いあったある友人のことだ。俺がその相棒のことを相棒と呼ぶのには
単純な理由が二つある。ひとつは、あの有名な某刑事ドラマが大好きだということ。
あのドラマのせいか、相棒って言葉には何だか男の友情を感じる。
それともうひとつが、オカ板の住人なら誰でも知っている『師匠シリーズ』が好きなことだ。
俺達はよく、「師匠みたいな師匠欲しーよな!」と言い合うくらいあのシリーズのファンで、
本格的に心霊スポットめぐりなどを始めたのもあの作品に影響されたからだ。
俺たちはあのシリーズの主人公みたいに「オカルト道の師匠」こそは見つけられなかったけど
「オカルト道の相棒」を見つけたんだ!と喜び合った。
そんな相棒との話で、大好きな師匠シリーズにまつわる不気味な体験がある。
これは別に、幽霊とか妖怪とかそういうオカルト話じゃないので、苦手な人は注意。
その出来事は、相棒が見せてくれたあるチャット会で起こった。
「なんだこれ、師匠シリーズなりきりチャット?」
「知らないか、なりチャって」
相棒はニヤニヤしながら、なりチャについて語ってくれた。何でも、漫画や小説のファンたちが
その作品のファンになりきってチャットで会話することらしい。
「それがなんだよ。まさかお前師匠になりきってるんじゃねーだろーな」
「や、俺がなりきってるのは京介さんだよ」
「………」
相棒の話では、今現在このチャットには『ウニ』『京介』『koko』『みかっち』
などの主要人物がそろっているらしい。みんな本当の素性は少しも明かさないで、
心底キャラになりきっているから会話を見ているだけで面白いという。
「なあ、何で肝心の師匠がいないんだよ」
俺は、単純に気になってそう聞いた。みかっちなんていうマイナー(でもないか?)キャラは
いるのに、タイトルにもなっている、ドラえもんで言ったらドラえもんにあたるような人物を
誰も演じないのは違和感があったからだ。その質問に、相棒はちょっと苦笑い気味で口を開く。
「それ、俺も最初思って。何気なく、京介さんの口調でウニに
『お前の師匠はどうしたんだ?来ないのか?』って訊いてみたんだ。そしたらさ、
ウニの返答が『師匠はずっと前に失踪したきりじゃないですか。何言ってるですか』
だったんだよ。俺そのなりきり具合に、超ゾーッとしちゃってさ…」
相棒は腕を組んで背筋を震わせた。確かに気持ち悪い、というか不気味な話だと思った。
「普通、なりチャって、死んでるキャラとかも登場して仲良くなりきるもんだろ。
このチャットの世界はどうも違うんだよなー。なりきり過ぎて、ちょっとでも世界を
壊そうものなら批判がすごいみたいなんだ。しかも、俺を除く三人は24時間チャットに
ログインしててさ。すごくね?」
相棒の話に、世の中すごい熱狂的なファンもいるもんだなぁと俺は感心した。
で、相棒の誘いもあって俺はそのチャットに参加することにした。
しかも、敢えて師匠で。
【師匠さんが入室しました:】
「おー、いいね!」
すでに先にログイン中の相棒はそう言いながら、すぐに京介の口調で師匠(俺)にレスをした
【京介:よく来たな。お前今まで何処行ってたんだ】
俺もすかさず、京介(相棒)にレスを返した。
【師匠:ちょっと野暮用で、あと久し振りに壺とか見に行ってた。腹減った、そうめんない?】
ちょっとボケをかましてみて、俺達は大笑いする。
これは他の三人の反応が楽しみだぞ、と思っていた。でも、いくら待っても奴らは
レスをしてこなかった。イライラし始めた相棒は何度も何度も【更新】ボタンを押しながら
文句を言った。
「なんだよ、いつもレス速いくせにー」
「もしかして本当に師匠が来たと思って歓喜に満ちてるんじゃねーの?」
「ありえるかもな」
俺達はまた大笑いした。そして、相棒が何回目かわからない【更新】ボタンを押した。
そして、そのあと更新により一気に出てきたレスを見て俺達は絶句した。
【みかっち:死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね】
(本当はこれが一面真っ黒になるくらい続く↑)
【ウニ:邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔
邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔
邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔
邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔
邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔】
(上記に同じ)
【koko:呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う
呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う
呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う
呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う】
それは本当に、ゲシュタルト崩壊を起こしそうな数だった。俺も相棒も、この3人の
陰険さと息のピッタリ具合に気分が悪くなって画面を閉じてしまった。
「何だよ、こいつら…」
「普通じゃねえな」
それは、本当に、そこらの心霊体験よりも不気味なものがあった。
しばらくして、ちょっと気持ち悪さもひけたので、二人でもう一度チャットの様子を
見に行ってみた。すると何事もなかったかのように、本当に原作の3人も交わしそうな
会話が繰り広げられているだけだった。俺達は、もういたずらする気にもならない。
「やっぱ俺、もうこのチャットもう参加しねえ」
相棒は小さくそれだけ言った。俺も、その方がいいと思った。あれは、もう普通の人たちじゃない。
熱狂的なファンという名の、呪いにも似た執着を感じる。
いつも恐怖に直面すると、持ち歩いているオカルトグッズの灰塩を無意識に頭から己にかぶる相棒だが
今回はそれをしなかった。きっと直感でわかるのだろう。あんなもの、人間には通用しないから。
「俺が入ったとき、京介さんがいなかったのも、もしかしたら今までの京介さんも
あいつらの世界を壊しちゃって追い出されたからかもなぁ」
ケータイを閉じながら、相棒が言った。きっとそうだと、俺も思う。
人間は幽霊や妖怪よりもタチが悪いとよく言うけれど、そのとおりだろう。しかも、人間は
年々、時代によってその不気味さを変えている。こんなにオカルトな話はねー。
心霊的な話じゃなくてごめんなさい。
>>809乙です。人間の心理も一種のオカルトですね。
トリってこれでいいのかな?素人丸出しだ……
洒落怖231の
>>241です。
父から自分の一族にまつわる風習や掟を聞かされましたので、
一番ヤバイとおもったのは洒落怖にもう書いたのでこっちでは
それ以外のをいくつか投下します。
ちなみに、怖い前提ではないのでそれ目当ての人は微妙かもしれません。
・「子戻し」
自分たち一族の魂が再び一族に戻ってくるように妊婦に行う儀式らしい。
妊婦のおなかを切り、そこに一族の長の血を垂らす。これが子戻し。
切るといっても、どちらも深い傷ではないらしいけど衛生上どうなんだ?と思う。
子戻しをするかしないかは当主の判断。子戻しをしなくても一族の子どもだと
判断したときはしない。判断方法は当主にだけ伝えられてるとか。
子戻しをして生まれてきた子どもが一族ではないと判断された場合、儀式は失敗とされ
昔はそのまま殺してしまっていた。ただ、そもそも失敗自体が当主の信頼を失うため
結構ごまかしたりしてるらしい。父の話では、数十年近く失敗した例はないようで。
なお、いまでは本家のみで行われていて私の時にはやっていない。
・水廻り
昔から、一族内で悪いことをした場合の裁判方法。本家の裏山にある池の中を、まず
一回り、そのあと横断するというもの。この池には神様が祭られていて、その神様に許して
いただけるかを問う。
ちなみに一回りしている間は足がつくけど、横断は足がつかないので泳ぐことになる。
逸話としては、昔一族内で事件が起きた時容疑者が二人あげられた。その際、水廻り
を二人に実行させ、一人が生き残り、一人はすぐに沈んでしまった。犯人は沈んで
しまった方で間違いなかったということで、この池が真実であると言われてる。
他にも、一族から盗みを働いた人が囲まれてこの池を逃げるため横切ろうとしたとき、
やはり途中で沈んでしまったそうだ。
今は、裁判として使われるより子どもに対するしつけとしてこの話されることが多い。
現物の池を見たことがあるが、話を聞いたこともあってか結構嫌な雰囲気が漂ってた。
・厄降ろし
一族内に、異変が起きたときに行われる儀式。厄を一人に集め、その人を川に流す事で
厄をまとめて排除するというもの。
水で浸した降霊殿というところで、川を跨いだような建物になってる。
術者はその時の当主以外の祈祷師として能力の高いものとされ、術者はそこで亡くなるまで
祈り続け、亡骸を降霊殿から流すという過程となっている。その時、降霊殿に浸していた
水が無くなっていれば成功だそうだ。失敗した場合、成功するまで術者を変えて行うという。
話では、最後に行ったのは江戸時代でその時は22人もの術者を犠牲にしている。
ちなみに例の祟りの際には厄降ろしを行うか、話し合いがあったそうだ。
結果は、祟りの元凶が分かっているのでそちらを解決する、逆にいえばそちらを解決しなければ
祟りは収まらないという結論に達した
現在では祈祷師として活動している人はごくわずかなので実行できるのかは不明。
そもそも、法律上問題だと思う。
ただ、神託を授かったり、お祓いをしたりと祈祷師の仕事場でもあるため降霊殿そのものは
ちゃんと残っているらしい。
・一族版「胎内めぐり」
これはすでに私も体験しているので父から聞いた話ではないけど……。
清水寺にある胎内めぐりと似ているものが本家の裏山にもある。
ただ、清水寺と違って数珠の手すりはない。
光が一切ない暗闇の中を歩く。他に頼れない環境で、自分の心を目覚めさせるとか。
15歳になってからは、毎年正月に必ず行うことになってる。ちなみに20分ぐらいかかる。
ついでに言えば、戦時中は防空壕にも使われていたそうで、結構中で死んだ人もいるとか。
ただ、霊的なものを見たことはないですが。
・禁忌(変わってると思ったもの)
これもすでに私が体験しているのです。
頭を他者がさわる行為は禁止。魂を守る見えない殻が壊れ、出ていきやすくなるから。
ちなみに私も親に頭を撫でられた経験がない。
魂・霊という意味合いの言葉は儀式時以外禁止。霊に寄られる、魂が出ていくといった
反応が起きるため。書きは大丈夫で、会話の際にはどちらも「玉(ぎょく)」と言う。
魂(たましい)・み霊(みたま)→たま→ぎょくという隠語になってる。
基本的に朝4時前の活動禁止。魂の休息時間は極力削らないというもの。ちなみに
本来は夜も10時以降の活動禁止だった。こっちは現代社会で実行が難しかったりするけど。
水渡りは禁止。前述の水廻りの関係もあるが、一族で水とは良いこと、悪いことどちらも
もたらすので、善悪を審判するものとされているため。そのため善悪関係と無関係のときに
水を通過するのは、水神の機嫌を悪くするとされている。橋、船は大丈夫。
水泳はダメだったので、授業があった時は朝に水神にお参りをして、お許しをもらっていた。
お金は不浄のモノとして、手に入れたら水で洗わないとダメ。
さすがにお札はしないけど、小銭は今でも家から帰ったら洗ってる。
あとは割と普通なものなので割愛します。
ひとまずは以上です。他にもいろいろあるみたいなので
機会があればまた聞いてみたいと思います。
>>810-815 乙。興味深いな。
なにかすごく閉鎖的でよそと交わらない地域性というのが伝わってくる。
まあ昔の日本の村落の多くはそうなんだろうけど。
またなにか書いてくれ。
>241 ◆RTVQOknmVI
注意。
多分ボロクソに叩かれます。
文章の上手い下手じゃなくて、新規の書き手を徹底的に叩くアホがいるのです。
心を強く持ってください。
乙津でした。
818 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/21(水) 14:52:23 ID:3WB4tRiy0
【相棒:死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね】
(本当はこれが一面真っ黒になるくらい続く↑)
【相棒:邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔
邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔
邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔
邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔
邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔】
(上記に同じ)
【相棒:呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う
呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う
呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う
呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う】
文字オーバーになって書き込めない・・・
>>818見て何この人こわッ!と思ったら、自分のコピペだった。
オカルティじゃない話投下しちゃって今更ながら後悔。
なので、ちょっとはオカルトな話も投下します。
長いので、先に謝罪しときます。長ったらしくてごめん。
彼女いない歴=年齢。そんな俺だけど、別にもてないわけじゃない。
…嘘です。俺は本当にもてないガリヤローです。だけど、そんな俺とは裏腹に
俺の相棒は女の子にもてる。ビジュアルこそはそこそこな奴だけど、明るくて
話上手だから女の子もついてくるのだ。うらやましい。
でも、そいつは何もうらやましい人にばかり好かれるわけじゃない。
あいつには、生霊にストーキングされるというショッキングな体験話がある。
今回はその時のことを話そう。
「お前のクラスの、あの物静かな子。別名笑わずの宮田だっけ?
俺昨日あの子と選択授業でペアになったからあの子を笑わせてあげようと思ってさ、
色々面白い話を聞かせてやったんだよ」
体育の授業中、相棒が言った。体育教師がインターハイ応援とかでいなかったから
男子は自習でソフトボールをやっていたけど、俺も相棒も汗かくのがダルイので参加せず
おしゃべりをしていたのだ。そのときは、次のオカルト活動のテーマを決めるための
話し合いだった。相棒と俺は、小・中・高とずっと同じ学校に通っているけど、
同じクラスになったことがない。話すようになったのだって、高校に入ってからだから
まだ友達歴は浅い。だけど、隣のクラスだからこうして体育は一緒に受けるのだ。
「アホだな。宮田が笑うわけねーのに」
俺は相棒の馬鹿さにあきれた。宮田とは二年間同じクラスだったから、
そいつがどんだけ暗いかも、どれだけ『笑い』とは遠い存在かも、よく知っていた。
いくらべしゃりの達人相棒でも、彼女を笑わせるなんて無理に決まっている。
「でもさ、宮田が、俺の話にすげー笑ってたんだよ」
「は?」
そんなわけねーだろ、と俺は目を丸くした。
「そんなわけねーって。だいたい何を言って笑わせたんだよ」
「覚えてねーよ。でも、最初は無愛想だったけど、一回笑うとそれはもう、
思春期の女の子並みに笑ってたぜ。俺が声を放つたびに笑ってるんじゃねーのってくらい」
マジかよ。俺はすなおに驚いた。そして、やっぱこいつすげーな、と我が相棒を尊敬する。
「でも、何でそれが今回のオカルトのテーマなんだよ。いくら笑わずの宮田とはいえ
笑ったくらいでオカルト扱いされたらたまったもんじゃねーぞ」
「違う違う。まだ、この話の本筋はここからなんだよ。実はさ、その時、宮田が
ものすごーくおっかねーこと言い始めたんだ」
「おっかねーこと?」
「ああ。あいつ、ものすごーく色が白いだろ。で、腕とかの欠陥がすごく透けてるんだ。
グッピーで言ったらオス、的な。で、その欠陥をスーと指でなぞりながらさ、
『私、決めた。私の体には、魔女の血が流れてるの。
だから、この血の力を使って、あなたのこと守るわ』なんて言い放ったんだよ」
そんな京子チックなキャラだったのか宮田。(また師匠ネタでスマソ)
俺はビビッて顔をひきつらせた。確かに、あの容姿的に魔女的な血は流れてそうだけど、
その力を使って相棒を守るって…
「まぁ。守るっていうんだから別に悪い気はしねーけど。その魔女の血ってのが気にならね?」
「魔女の血ねー」
正直、魔女の血よりも、俺は宮田が相棒に守るとか言い出したことの方が悪い予感がしたし、
気になるところだったけど、一応話を合わせておいた。宮田…相棒に惚れたな。
そんな話をしているうちに、体育が終わった。結局、今後どうするかってな話にはならなかったので、
俺達のオカルト活動は一時休止だった。
そしてその日の夜、相棒から電話がきた。
「もしもし、な、永倉隊長?さっきの話だけどさ…」
「ああ、宮田の?」
「そうそう。俺、なんかやばいかもしれない」
「なんで、何がだよ」
「あいつ、リアル京子かもしれない。」
相棒の言う「リアル京子かもしれない…」とはつまり、こういう意味だ。
『宮田は本当に、魔女的な力を使えるかもしれない』
「何かあったのか?」
「…とにかく、俺の家にきてくれ」
相棒からのSOS。俺はサッとオカルトグッズの入ったウエストポーチを装着し、ペンダント式ライトを
首にぶらさげながら、自転車で相棒の家にダッシュした。
相棒は、高校生ながらにマンションで独り暮らしをしている。親は、ふたりとも仕事で県外。
本当は4つ上のお姉さんと二人暮らしだけど、お姉さんは彼氏と同居していて滅多にいない。
俺は、相棒から渡されている合鍵(ってなんかキモイけど)を開け、相棒の家に入った。
「相棒、大丈夫か!?」
中に入ると、相棒は自分の部屋ではなく仏間(と言っても、単に仏壇がある部屋のこと)の隅にいた。
なんだかおびえたように、オカルトグッズの内のひとつ水晶(修学旅行で買ったらしい)を
握りしめていた。
「た、隊長…よくぞ来てくれた」
「どうしたんだよ、自慢の水晶まで出して、灰だらけだし」
相棒は、怖いことが起こるとすぐに線香の灰と塩で作った灰塩を自分にかける。そのせいで、
他のオカルト仲間からは『シンデレラ』と呼ばれている。
「み、みやたが、家に入ってきたんだ」
「へ?」
「だ、だからみやたが。そ、そこにいなかったか?」
俺は相棒が指さす方向を見た。そこは、まだ布団が干されっぱなしのベランダ。
そこに宮田の姿はない。というか、ここから入ってこれるはずがない。ここはマンションの4階だ。
「落ち着け。宮田なんていない」
俺は相棒の肩ポンポンと叩き、落ち着かせた。相棒はやっと落ち着いたようで、水晶を握る
手の平の力を少し弱めた。
「そうか、俺のこの水晶が効いたか」
「それはわかんねえけど。でも、何があったんだよ。宮田が入ってきたって?」
「俺もわけがわからないよ。ただ、夜だし布団でも入れようかなってカーテンをめくったら、
そこに宮田の顔が浮いてたんだよ」
なんだよそれ超こえー。
俺は相棒の話にマジビビりした。でもそれを見たという相棒はもっともっとマジビビりで、
今日は泊っていけ、と強くお願いしてきた。(それから布団入れてくれとも)
しかたないから俺もその日は泊ることにして、ビビりっぱなしの相棒と二人仏間に布団を敷いて寝た。
次の日、朝目が覚めると、ゲッソリした姿の相棒が俺の脚元でうずくまっていた。
「どうしたんだ、すげーキモイ顔で」
「永倉隊長、てめー何で俺が助けを呼んでんのに起きねーんだよぉ」
「助け?また何かあったのかよ」
「また、来てたんだよ。宮田が」
「!」
相棒の話によると、昨日俺が眠って、自分も寝なきゃなーとうとうとし始めた頃に、
仏壇の横の壁から、宮田の顔がスーッと浮いて出てきたんだという。水晶を握ろうとしたけど
恐怖で動けず、声だけで必死になって俺を呼び続けたらしく、数十分して宮田の顔が消えるまで
ずっと金縛りみたいになっていたとのことだ。顔が消えてすぐ俺の布団に隠れ、俺に起きろ起きろと
呼びかけたが、宮田の力で殺されたんじゃないかと心配するほど俺は深く眠っていたらしい。
確かに、起こされた記憶が一切ない。
「もう、何なんだよあの魔女、俺が何したんだよ」
「やー。お前に惚れたから、魂だけでストーキングしてるんだろ」
「お前人事だな。信じてないだろ」
「信じてるけど。俺がいるときには表れないからなぁ」
「お前、今日学校で宮田に文句言ってこいよ。どうして俺の相棒を狙うんだ!って」
「えーはずいよ。お前の妄想だったらどうすんだよ」
「妄想でこんなにゲッソリするか!師匠じゃあるまいし。いいから、早く学校行けよ!」
「おまえは、」
「休む。ここで水晶バリア作っとく」
相棒がそんな状態なので、俺は仕方なく相棒の制服を着て学校へ言った。
学校へつくと、いつもと変わらない宮田の姿があった。俺は気がのらないが、相棒も心配なので
宮田を空き教室に呼び出して話をすることにした。宮田は、俺に呼び出されても表情を変えず、
黙って教室についてきた。だから余計に、なんか切り出しづらい。
「あのさ、宮田。あの、俺の友達のことなんだけど…」
切り出しづらいどころか、これはなんて言っていいのかすらわからなかった。
こんな非現実なことで責めるのって、なんか明らかにおかしい気がする。俺は何も言えずに
ただ「あのさ…」と「それで…」を繰り返していた。すると、その繰り返しを最初はただ
黙って聞いていた宮田だったが、突如色の白い顔をくしゃりと歪ませて、
大きい目をもっと開いて驚いたように言った。
「なんで、あなたがあの人の制服を着てるの!?」
「え。」
俺は突然のことに驚いた。というか、相棒の制服を借りて学校に来ていたことすら忘れていたし。
「あ、これ。これはあいつに今日借りたんだ。ってか何でこれがアイツのって…」
「だからだったんだ!」
「はい?」
「だから、あの人に魂を飛ばせなかったんだ!」
な ん だ っ て ?
俺は耳を疑った。まさか、本当にこの女…
俺はとっさに着ていた制服のブレザーを脱いだ。何か無いか探してみる。すると、あっさり
怪しげな何かを胸ポケットから見つけた。
それは、女の髪の毛を適量で丸めて作ったような、毛玉だった。
「これは、宮田、お前が?」
「それで、私が彼を守るんだから」
やばい。こいつ、リアル京子だ。誰か、タリスマンをくれ。京介さんを呼んでくれ。
師匠でもいい。俺は気持ち悪さにパニックになった。オカルトな展開なのに、変にリアルで
気分が悪くなる。だいたい、魂を飛ばすってなんだよ。
「説明してくれ」
俺は、一言そう言った。こんな非現実なこと、信じてやるって言ってんだ。
説明を補足してくれてもいいじゃないか。俺はそう思いながら強気で宮田を見た。
そしたら、宮田はしばらく黙っていたけど、やがて口を開いた。
「私には、魔女の血が流れてるの…」
「あいつに、聞いた。その魔女の血ってのが何なのか説明してくれ」
「私のお母さんね、私のお父さんと結婚するために、お父さんの元恋人を呪殺したのよ」
「……」
敢えて、無言の俺。京子は…間違った、宮田は淡々と続けた。
「お母さん、小さい頃から教えてくれたの。人に魂を飛ばす方法。あのね、髪の毛って、
人の魂が宿りやすいんだよ。だから、すこし練習すれば、自分の髪の毛になら魂をつなげることが
できるようになるんだ。お母さんは、その方法でお父さんの元恋人を精神的に追い詰めて
自殺させたんだって…」
その親にしてこの子あり。まさにそれだと思った。それってつまり、生霊ってやつじゃねーか。
生霊はタチが悪いって、よく聞いてたけど。こりゃあ本当みたいだ。
「宮田、お前、それを何であいつに。あいつを追い詰めたいのか?」
「そんな、まさか!私は、あの人を守るために、いつでも見張っておこうと思って、」
「でも、それであいつは追い詰められてるぜ。たった一日でゲッソリだ」
俺は、昨日のアイツを語った。相棒がどれだけビビっていたか。今日あいつがどんなに
ゲッソリしていたかを鮮明に。この非現実なストーカー行為をやめてもらわないと、
このままじゃあいつの家中が灰だらけになってしまう。
「私は、ただ、私なんかに話しかけてくれたあの人を守ってあげたいと思って、」
「…形を間違えてるんだよ。そんな自分の毛引っこ抜いて守るようなやりかたじゃなくて、
そばによってパンチパンチキックな守り方のほうが、男は嬉しいもんだよ」
俺はパンチパンチキックでもごめんだけど。俺が若干てきとうなことを言ってやると、宮田は
シュンとした顔で、「そうだね」と言った。
「人を自殺に追い込むような方法で、人が守れるわけないね」
「そういうこと。まぁ。この毛玉はお前に返すから、今後こういうことはやめてあげてね。
俺は、お前とあいつのこと、応援するから」
俺は毛玉を宮田につっ返しながら言う。すると、宮田の白い顔はみるみる赤くなっていった。
「わたし、別にそんなんじゃ…」
「かくさなくてもいいよ、頑張れよ!」
俺は空き教室を出た。これで多分、相棒はもう魂に見張られたりにないだろう。この体験は
人生でナンバースリーに入るくらいオカルティな体験だな。まあ、俺は目にしたわけじゃないけど。
その日、俺はすぐこのことを相棒に話した。相棒はかなり安心しきったようで、
作りかけみたいだった水晶結界とやらの作り方の本を床に投げた。
「なんだ、よかったぜ。」
「もてる男はつらいなー」
「うるせ。もう絶対、あんな電波な女に話しかけたりしねーぞ」
俺たちはそう言いあって、笑った。
それから、学校での宮田にちょっとした変化があった。まず、長かった髪をショートにして、
元気よく俺達に話しかけてくるようになった。これにはみんなびっくり。
「これからは、パンチパンチキックであなたを守るわ」
そう言って相棒に微笑む宮田。その時、ちょっと宮田を可愛いと思ったのは、誰にも内緒。
ミヤタ/完
>>810-815 遅れたけど乙!儀式とか風習とか、そういうホラーが大好きな俺にはたまらない話でした。また是非!
>>820-827 話は悪くないしオチもあってなかなか良いんだけど、師匠シリーズに迎合する語り口はどうにかならんかね
チャットの話はしょうがないにしても、今回のみたいのは読んでて覚める
まぁ、俺も師匠シリーズは好きなんだけどさ
830 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/21(水) 17:01:22 ID:eY3sylUbO
>>829 師匠シリーズはパロディのつもりで入れてるんだけど、やっぱり入り過ぎはウザイかな…、萎えさせてゴメン。実際会話に師匠シリーズの話はよく出てきてさ。でもせっかくアドバイスもらったんで、改善していきます!
宮田さん、今どうしてるのかな…
シンデレラさんと結婚してたら凄いねぇ
書き出し見て「ああ、劣化コピーか」と思って普通に飛ばしてた
読んでないから内容についてはなんとも
833 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/21(水) 18:08:15 ID:mJC2OHKN0
流れ豚切りスマソ
私と近しい人の能力?を簡単にまとめてみた
・霊のようなもの(透けた人間や焼けただれた人間など)が見える
・妖怪のようなもの(三本脚で半分骨のカラスなど←ヤタガラス?)が見える
ちなみに彼は4人の霊と同居しているが全く気にならないのだとか…
ここから下の能力は対象に恋愛感情を持ったときのみ発動?できるらしい
・感情のオーラ?のようなものが見える
・相手の守護霊の特徴・霊力の強さがわかる
・性行為の最中に相手の意識に潜り込める
・半径2kmくらいならどんな体勢をとっているかわかる
・↑の能力は距離が離れていても電話など直接相手の声を聞けばわかるらしい
こんな感じです。
以前オカ板にカキコした時は「本当ならあまりにレアな能力」と言われました。
私も初めは信じていなかったのですが「本当かもしれない」と思わざるを
得ないエピソードが多すぎて困ります…。
834 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/21(水) 18:25:44 ID:x8dcunK0O
そいつアタマだいじょうぶかよ?
>・性行為の最中に相手の意識に潜り込める
なんと迷惑なwww
>>相棒シリーズ
これはこれで面白い。
宮田さんもちょっと感性が曲がってるだけで悪意ある子じゃないみたいだし、
サブキャラとして定着してくれるといいな。
次なる話にも期待です。
>>819 何かとオカルトオカルト連呼しててウザイなー。
ウケ狙いの部分とか鼻に付くし、なにより日本語が不自由なのが致命的だわ。
と思ってたんだが、オカルティで吹いたWWW 君のこと好きになれそうだWWW
>>837 2行目まで読んで、なにこの人手厳しい…
と思ってたけど、3行目で俺もあなたが好きになれると悟った。
みんな、感想とか意見とかありがとうです。補足ですが、相棒シリーズは
師匠シリーズに影響を受けた二人組の話だから、ちょくちょく師匠話が
出てきてしまうと思います。けど、なるべく省くようにはするんでよろしくお願いします。
839 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/21(水) 19:16:42 ID:mJC2OHKN0
>>835 その能力で過去に元カノの浮気が解り別れたらしいです。
自分以外のモノ(下ネタスマソ;)が入ったのがわかったんだとか
もちろんしっかり裏を取り、証拠も掴んで別れたらしいですけどね。
別れる際の修羅場で元カノに「何で分かったの!?」と叫ばれたらしいです。
841 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/21(水) 19:37:14 ID:mJC2OHKN0
>>840 その話は結構長いらしいんですが彼にとっては苦い記憶らしく
詳しくは話してくれないんですけどね^^;
カプ板修羅場では妄想乙wwwwとか相手にされなさそう…
あと女子から「そんな思い込みで別れるなんてサイテー」とか
言われちゃいそうですしね…。
まあその彼というのも私の彼氏なんですが;;
私も脳内を読まれまくりらしいです。
一回本当に聞こえているのかどうか試したくて、
挿入最中に「聞こえてる?」みたいなことを心の中で思ったら
にやっと笑われてて「聞こえてるよ」と言われたことあります…
>>841 それに付きあえる841も懐の深い良い女w
妄想プラスな自分は萎えるぞwww
そっか、カプ板も難儀だわなw
気が向いたらここでもいいんで不思議エピよろ!
>>800 もうお前は2chに来るなよ
叩きだけで(自分が叩かれてるわけでもないのに)こんな腹立つならまとめだけ読んでろよ
で、早くシリーズものに相応しい話を書いてくれ
すっかりこのスレ、ラノベ志望作家とヲタの馴れ合い場となったな
846 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/21(水) 20:36:19 ID:3WB4tRiy0
ど〜して師匠とウニはどの代でもこうも叩かれるのか。
847 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/21(水) 20:45:14 ID:cdpwl9QrO
相棒カモン
848 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/21(水) 21:16:33 ID:cRth0YMGO
[相棒]<・・・呼んだ?
849 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/21(水) 21:37:38 ID:cdpwl9QrO
次の話し欲しい
暇なのよ〜
来れ
>>810-815 乙
『ひぐらしのなく頃に』を思い出す・・・・・
まだまだありそうだねw 期待 大
852 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/21(水) 22:06:16 ID:mJC2OHKN0
>>833です
前述の霊感彼氏についての不思議エピをいくつか投下したいと思います。
彼には先ほど述べた通り、好きになった相手限定で透視能力があります。
現彼女は私なので私限定なのですが、それを裏付けるようなエピがありました。
ゲーセンにデートに行き、1階と2階に分かれて遊んだ時
彼は2階でメダルスロットをして、私は1階でUFOキャッチャーをしてました。
私はUFOキャッチャーで運良くお菓子が取れたので、お菓子を鞄にしまい
2階に上がっていきました。彼は私の顔を見るなり、
「お菓子、うまく取れて良かったね^^」
といきなり言いました。私は何も言っていないのに…。
私がびっくりしていると、「箱のお菓子でしょ?」とお菓子の種類まで
あてられました。
当時は彼氏の不思議能力については全く知らず、彼氏になぜわかったのか
しつこく問い詰めました。彼氏はふざけてはぐらかしていました。
853 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/21(水) 22:17:50 ID:mJC2OHKN0
他にも、彼はいつも私の思考を先回りすることが多かったので
「私ってわかりやすいの?」と聞いてみたことがあります。
私がお腹がすいていると、黙っていても「ご飯食べたいの?」と聞いてきたり、
なんとなくくっつきたいと思うと何も言わなくてもしてくれたりと
いうことが多々ありました。
すると彼は
「○○(私の名前)は何かしたいと思うと周りの色が変わるからすぐわかる」
と言われました。
言われた瞬間はハァ?な感じだったのですが、彼の説明曰く、
・喜んだり楽しんでいる時は黄色やオレンジっぽいオーラ
・悲しんでいる時は青っぽいオーラ
・怒っているときは赤いオーラ
・いちゃいちゃしたりエッチなことがしたいと思っているとピンク色のオーラ
・何かに悩んだり嘘をついたりする時は黒っぽいオーラ
が見えるらしく、何をしたいかはこの色を見れば分かるらしい。
お腹が空いた時は感情の色が濃くなるから分かるとのこと。
ちなみに私は大体いつも黄色をしているらしい…。
嘘をつくと確かに即バレします;;;
そして最近分かったことですが、本気?を出せば他人のオーラも見えるとのこと。
どんどん投下して早く消えてくれ
うーん、
>>833については広がりもなさそうだし、お話として今一つ…
特殊な能力というより、推理力洞察力の範疇に見えるしな
>>798 美咲さんシリーズ
厳選洒落怖の投稿 怖い話 シリーズ作品
かな?
857 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/21(水) 22:38:22 ID:mJC2OHKN0
そして彼自身の身に起きたエピ
今年の初め、原因不明の高熱に悩まされ、激しい吐き気を覚えて目を覚まし
トイレで吐いてから戻ってくるとデジタル時計の時間が
6:66
になっていた。
ありえない、と思ってもう一度時計を見直すと朝の5:50だったそうです。
その次の日に原付で事故に遭いかけ、職場で熱を出して病院行き。
退院してから1週間、朝起きると口の中から長い髪の毛が一本ずつ
出てきた(明らかに彼の髪の毛ではなく、私のものとも長さが違う)。
何かに憑かれてるのでは、と私が心配して聞いても何も教えてくれませんでした。
今はそういった現象も治まりましたが、「自分でなんとかした」と言っている辺り
怖くて何も聞けません…。
>>810-815 興味を引かれる内容だな
海外でも子供の頭を撫でちゃいけない国があるよね
>>798 2ch外の厄介者を引き込まないでくれ
承知でやってるなら本人様乙
>>858 タイではやたらと子供の頭を撫でてはいけない事になってるよね。
頭には神様が宿るというのが基本的な考え方としてあるらしい。
電車(BTSスカイトレイン)の吊皮なども、座席に座る人の頭上に
手をかざすことが無いよう配慮された作りになっている。
豊作だね!
861 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/22(木) 01:55:51 ID:wb+oU7SNO
>>856 ありがとうございます
>>858 荒らす気は無いです
もちろん本人ではありません
板 汚してすみませんでした
反応があって驚きましたwありがとうございます。
しばらく父は出張でいないから、本家に突してみようかな……
その方が話はもっと聞けるとおもいますし。
たぶん、明日にはいくつか投下できると思います。
>>858 >>859 割とよくある禁忌みたいですね、そういう話を聞くと。
863 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/22(木) 11:01:26 ID:mBKo6Ain0
まず医者じゃないの?
865 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/22(木) 11:24:32 ID:WtYPCk+/O
そうした状況下で普通の感覚ならまず内科か精神科行くと思うのだが。
そうしなかったのは何か下地が既にあったの?
何かすごくバランスを欠いた行動の気が。
おまいら頼むからアンカーはきちっとつけてくれ。
どれが誰へのれすなんかサパーリわからん。
>>843 お前の2ちゃんかよ!
お前はそうやっていつも上から目線だから誰からも嫌われるんだよ!
お前が出ていけ!!!
>>800 > ここに投下するのは止めてもいいんじゃないか
> 自己サイトでもいいしそろそろマジ出版社に持ち込むなり賞物に投稿するなりしてみたら
この部分は同感だな
師匠シリーズは、掲示板に投下されることで「本当の話かも」「こんな世界があればいいな」っていう期待を読者に抱かせ、人気を博したんだと思う。
最初っから今みたいな内容だったら、出版社はおろかネラーにすらそんなに相手にされなかったと思う。
今は「本当の話かも」なんて思うような読者はそんなにいないだろうけど、長きに渡って掴んだ ファンの数は相当だから、きっと出版してもコケはしないだろう。
…まぁ、シビアなこと言うとにちゃんねるに投下した時点で著作権はないんだけどね。
大きなお世話だと思うよ?
俺はオカ板に書いてある事はホントかも。っていうスタンスで読んでるけどな。
これは嘘だろ、ネタだろ。と考えるよりその方が楽しい。
全力で釣られる。それがオカ板クオリティ。
釣られてナンボ。それでこそ2ちゃんねらーだ。
873 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/22(木) 17:12:14 ID:WtYPCk+/O
それじゃ無知蒙昧、ただのバカじゃん。
チンドン屋の笛でも踊るなんて、そんなのオレは嫌だな。
874 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/22(木) 17:13:36 ID:mBKo6Ain0
>>332 22&camp=243&creative=1615&linkCode=as1&creativeASIN=4862526780&adid=04BA9JQBZQAT2GHD56NH&
875 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/22(木) 18:38:43 ID:2g5O699a0
手品を見てタネをあらさがしするタイプかマジシャンの技術に単純に感心するタイプかの違いと同じかな
俺は後者だけど
877 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/22(木) 20:28:45 ID:WtYPCk+/O
後者だと偉かったり善人だったりするの?
何かトクするの?
後者だと楽しみが増える
前者は人のあらさがしみたいになってたまに嫌われる
879 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/22(木) 22:28:47 ID:tcgGBMFL0
ただ単に楽しんで見てるかそうでないかの違いじゃないのかね
楽しんでるかそうでないかの他に、楽しんでる人を邪魔するかっていう三択目がいるからねぇ…
881 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/22(木) 23:14:59 ID:YyXBFYna0
お粗末な答だな、小学生の道徳の時間か?
逆だ、お前が小学生並みのあおりで優越感に浸ってるだけだよ
>>881ちゃん
流れ切ってゴメン。
今更なんだけど「四つの顔」に出てくる山下さんって
「怪物」に出てくるメガネかけたサラリーマンのおっさんの事なのかな。
それに関しては専スレで議論されてた気がする。。。
>>884 専用スレは全く覗いていないので気付きませんでした。
ありがとうございます。散ってきます。
>>886 そこは飛び散って(ry…って言わないとw
888 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/23(金) 12:32:24 ID:X91nuj6GO
888
一族の風習とか掟を投下した241です。
なんか投下の雰囲気でない気もしますけど……
また仕入れてきましたので
投下してもいいでしょうか??
ぜひ
ではでは、お言葉に甘えて。
・人被りになる儀式
山で狩りをおこなうとき、必要だった儀式とのこと。
山に入る直前の血を染み込ませた紙を人形に組み、名を書いて
山の入口にある小さな祠に奉ります。
自分が穢れていないことを示し、山でもやましいことをしない
ということを誓うことで山の神様に狩りを許可していただくそうです。
この儀式を行うことで自分の魂を祠に置き、自分ではない存在「人被り」に
なってようやく狩りを自由に行えるそうです。
狩りが終わった後、狩った生き物の心臓を奉り魂を山の神様に還した後
自分の人形をとり、狩りが終わったことを告げ祈りを唱えながら燃やす
事で自分に戻ります。
魂を還した後の心臓は、山の動物(神様の使い)が再び山に還してくれるそうです
昔、人被りから人に戻らずに帰ってしまって別人のように凶暴になった人もいたという
逸話も残っています。
ちなみに、山に入ること自体は特別な儀式は必要ないそうです。
ただ、儀式を行わずに山の中での殺生は禁忌となっており、山の神様から
罰が下るそうです。
ただ、私は小さい頃よく昆虫採集を行っていたんだけど……大丈夫なのかな?
現在では狩りは行っていないため、せいぜい熊退治のときぐらいしか行わないらしいです。
・山の動物の夢
昔から、夢に山の生き物が出てきたら裏山の頂上に行くという風習があります。
山の生き物がでてくるのは神託の合図、もしくは動物の魂がさ迷って紛れ込んだ仕業とされ、
翌日頂上にある神木に少し血が出るぐらいに切った手のひらを当ててお伺いをします。
もし神託ならばお告げがいただけて、魂の場合は神木を通して山にお返しできるとのことで。
もし魂の仕業である場合には、魂の本来の持ち主が道中にいるのでわかるそうです。
多くの場合は死んでしまっているそうですが、まれに生きていて魂を神木を通して返した帰りに
生きているのを目撃できた時もあるそうで。
もし風習に従わなければ、神託ならば山の神様の機嫌を損ねるし、魂の仕業ならその動物に憑かれる
ことになり、どちらにしても良くはないそうで。
今回は以上です。わざわざ本家まで聞きに行ったのにあまり話が聞けなかったのは残念です……。
ただ、そういった資料はちゃんと蔵に納めてあるとわかったので許可があるときなら監視つきで
みれるようです。
余談ですが、この話を本家の人に言ったとたん「継いてくれるの!?」と食い付いてきましたw
私にそんなつもりはありませんwwやっぱ後継者不足なのかな……。
これは興味深し
血なまぐさすぎて俺が同じ立場でも敬遠するなあ。
>>858 >2ch外の厄介者を引き込まないでくれ
承知でやってるなら本人様乙
これ気になったんだけど、祟られ屋シリーズのことだよね。
なにが厄介者なの?
ただ単に「こういう内容の話知りませんか?」って聞いてるだけでなんでこんな答え方してるんだ君は?
一族の人乙。
自分も興味深いです。また書いて下さいね。
>>891-892 乙
いろんな掟(?)があるようですね
一族のその昔むかしの話とか出てきたら面白そう
>>891 ひぐらしや零みたいなお話乙です。またお願いします。
今日も駄文を投下します。長いんで注意。
−−−
俺の友人に、クリストファーという奴がいる。通称は、クリス。
クリスは同じ団地に住む幼馴染の男だ。おさななじみと言っても、クリスは俺のひとつ下で、
名前のとおりハーフ。俺が小学5年生の時にこの団地に引っ越してきた。
引っ越してきた理由が「両親の離婚」らしく、クリスは日本人であるお母さんと二人暮らしだ。
クリスはお父さんをひどく毛嫌いしていて、両親が離婚してからは一度も会っていないらしい。
それ故か、誰かに「外人だ!」と言われるのをひどく嫌う。わざと英語もわからないふりするし、
外人と間違えられれば「俺は日本人だ!」と怒鳴ったりもする。でも、顔はマジで外人。
そんな、ちょっと気が強くて生意気なクリスだけど、昔から俺にはよくなついている。
仲良くなったきっかけはよく覚えていないが、多分団地の公園で独りで遊んでるクリスに俺が
話しかけたんだと思う。たしか仲良くなった当時、団地の子供では俺だけがみんなから浮いていて、
(要するに根暗だった)俺自身も一人で遊んでいることが多かった。俺はクリスを他の子供のように
「外人だ!」とからかったり好奇な目で見たりもしなかったから、そこが気に入られたんだろう。
とにかく、クリスは大きくなっても俺のことを「一番の親友だ!」と称し遊びに来る。
でも俺は、高校に入って大好きなオカルトの仲間「相棒」と出会ったことで、
前ほどクリストはつるまなくなっていた。
別に相棒とクリスと3人で仲良くつるんでいればいいのだろうけど、残念なことに、
クリスと相棒はものすごーく仲が悪い。会えばガキみたいに低レベルな文句をぶつけ合う。
仲が悪くなったきっかけは、俺が相棒を家に連れてきたときにクリスと遭遇した時だった。
その時が初めての対面となる二人。俺は前から相棒にクリスのことを話してあったので、相棒は
クリスを見るなり「お!お前が噂のクリス君か。俺は噂の相棒だよ!仲良くしようじゃないか♪」と
友好的に話をかけた。相棒はもともと人見知りしないタイプなので、誰とでもすぐに仲良くなる。
俺はそのとき、このまま3人で仲良くできたら面白いなーとか考えながら、
二人が仲良くなることに期待した。が、現実はそう甘くなかった。
「ねー、お隣さん。このチビ誰?」
俺は固まった。クリスの言うお隣さんとは俺のことで、家が隣同士故の呼び名だ。
俺は友好的な相棒の声を無視したあげく、一応先輩であるあいつに「チビ」呼ばわりしたクリスに
かなり焦っていた。
「誰って、いつも言ってる俺の相棒」
「あいぼー?こんなのと遊んでるの?」
「おいおいクリス…」
今思えば、あの出会いは確実にクリスが悪かった。あいつはそういう性格なので、人に嫌われやすい。
ほんのちょっと尖っているだけで根はいい子なんだけど、そんなのは初対面の人にはわからない。
当然、相棒も切れた。(相棒は身長を気にしてるので、よけいに)
「おい。お前先輩に対する敬語ってものもわからないのか」
「自分より小さい人に使う敬語なんてまだ知らないなー」
「身長の問題じゃないだろ。お前まだ中学生のくせに、残念な野郎だな」
「高校生なのに170そこそこしかないなんて男として残念じゃん」
中学生ながら180近くあるクリスと、170あるかないかの相棒。
ガキみたいな二人の喧嘩はとどまることを知らなかった。
「そっかそっか、そういえばアメリカって敬語とかないんだったな。しかたねー。多めに見てやるか」
そう言ってクリスに背を向けた相棒は、相棒なりにこの喧嘩を折れたつもりだったんだろう。
相棒はクリスが外人といわれることを嫌ってるなんて知らなかったから仕方ない。だからこれは
かなり大人の対応だったと思う。が、この言葉はクリスの逆鱗に触れることになる。
「俺は日本人だ!」
それからのことを語るには、あまりにもオカ板の志向からずれるので省略しよう。簡単に言うと、
それからクリスが相棒を殴り、相棒はクリスを殴り返し、その繰り返しで大乱闘になった。
結局俺が間に入って仲裁することでその時は終戦したが、以来二人は犬猿の仲だ。
クリスと相棒の紹介だけでこんなにスペースとってすみません。だけど、今回何故クリスを
こんな風に紹介したかというと、今回話そうと思っている話がこのクリスを巻き込んだ体験談だからです。
ある時、相棒が「百物語をしようぜ」と言った。
季節は確か夏で、夏休み前半だった気がする。相棒は「場所は、最近見つけた廃墟だ!」と言って
その場所かと思われる地図を見せた。手書きの地図で、場所場所のポイントを上手くおさえてるので
無駄にわかりやすい。そこは、俺の家から割と近い場所だった。
「百物語って、百個の話すんだぞ」
「すればいいじゃないか」
「ローソク百本立てるんだぞ」
「ローソクの数は御愛嬌だ。一本でいい」
「お前百個の話知ってんのかよ」
「怖い話のまとめサイトを読めばいいじゃないか」
相棒は、オカルト好きだが雰囲気というやつをあまり気にしない。
携帯を見ながら百物語をするなんて、きっと四谷怪談もびっくりだ。確かに話はつきないだろうけど…
「それにしたって、二人じゃ無理がある」
俺は、やる気まんまんの相棒に言った。俺は相棒よりも現実主義なのでこういうことにはうるさい。
相棒は俺の言うことにも一理ある、と思ったのかなにやらひらめいたような顔をして、
「じゃあ、クリストファーを誘おうぜ!」と言った。
「やだよ。お前たち仲悪いんだもん」
「大丈夫だって。俺もガキじゃねーんだから、前みたいに喧嘩したりしないし」
「何でそんなに呼びたそうなの。クリス嫌いじゃなかった?」
「大嫌いだ。だけど、怖い場所行って怖い話にビビるあいつを見てやりたい」
相棒は、どこまでも陰険だった。でも俺はどんな形にしろ相棒とクリスが仲良くしてくれそうなら
別にいいかなーと思い、クリスを誘ってみることにした。
俺が「相棒が一緒に百物語をしようって言ってるよ」と誘うと、クリスは最初絶対に行かない!と
首を横に振っていた。だけど、「行かないとあいつのことだからお前のこと臆病者って言うぜ」と
ありえすぎる煽りを入れると、目の色を変えて「絶対行く!」とノッてくれた。
正直、二人は似た者同士な気がする。
そんなわけで、俺達はその次の日に相棒と待ち合わせをして、相棒の地図通りの場所に向かった。
ついた場所は、いつも何気なく通り過ぎてしまっていそうな二階建ての廃墟だった。
木造の家で、一部の窓が割れていたり茂みの中に埋もれてしまっていたりはするけど、キレイにすれば
まだまだ住めそうな家だ。俺とクリスは、その家で相棒と合流した。
「この家、夜見ると迫力あるだろ」
「まぁな。でも、ここ入れるのか?鍵とか掛ってねー?」
「玄関は外から掛ってる。だから、窓から入るんだよ」
相棒は、そういいながら割れてる窓を指差す。ガラスが散らばっていて危ないけど、
割れた隙間から窓の鍵を開けて窓自体も開けられそうな感じだった。
「ビビッて帰りたくなっても、入っちゃったらすぐには出られないぜ。帰るなら今のうちだぞ」
窓の鍵を割れた隙間から開けると、相棒はからかうような口調でクリスに言う。
なれない恐怖スポットに来たせいか今まで静かにしていたクリスも、この挑発に口を開いた。
「誰が。それよりその身長で窓這いあがれるの?」
「んだとコラ」
「もうやめろよ!さっさと入るぞ!」
俺が注意すると、二人と素直に黙り込む。一人ずつ中に入って、いよいよ百物語が始まった。
その廃墟は、外から見るのと中に入るのとではだいぶ雰囲気が違った。まず、部屋が暗い。
時間はもう21時過ぎで、オカルトグッズのペンダント式ライトで照らして中途半端に把握できる
廃墟内の間取りがよけいに怖かった。何より、出口が小さい窓だけというのが怖い。
「よ、よし。始めるか。隊長、ろうそくを点けてくれ」
「おっけー。本当に一本しかないからな」
俺は言われるままに、仏壇用のろうそくに火を点け、みんなが座っている真中に立てた。
ろうそくでちょっと明るくなったせいで、みんなのビビってる顔がよくわかる。
「で、誰から話すの」
中でも一番ビビり顔のクリスは、精一杯なんでもなさそうにさりげなく言った。相棒の建前、
ビビることは許されないのだろう。それは相棒も一緒だった。
「俺から話すよ。とっておきの怖い話を。せいぜいビビッてくれよクリスちゃん」
目が挙動不審の奴にそんなこと言われても、全然悔しくない。
クリスはいつもみたいに売り言葉を買わず、ただ黙って相棒の話を待った。相棒は語りだす。
「実は、俺が一番最初に話すのは…この家の話だ」
風もないのに、ろうそくはゆらゆらと揺れ俺達の影をも揺らしていた。
携帯のメールに文章をまとめてあるようで、相棒は随時携帯を見ながら語る。
紫煙が足りねぇ?
ゴメンなさい。客人が来ちゃいました。
中途半端で申し訳ないがまたあとで投下します。
話が面白くなってきたとこで中断とは、焦らし上手にもほどがあるWWW
とりあえず支援しながら我慢のコ
寸止めかよ!
たまたま居合わせたせいでマゾいプレイになったw
まだなのか…
なんか文章から腐女子の臭いがするな
今までのラノベとどう違うんだと言われたら困るけど
とりあえず中途半端は嫌なので続きよろ
お待たせしてすみません。支援ありがとうございます。でも
今の流れだと、待たせた癖に糞展開かよ!てなりそうだな。
−−−−
「この家、実は割と最近まで人が住んでたらしいんだ。つっても、7年前くらいだけど。
…住んでいたのはある女のひとで、一匹の猫と暮らしていたらしい。その人は、まだ若いのに
他人と仲良くしようとしない人だった。飼っている猫だけを愛し、他人のことはまるで無視。
だから、近所でもこの家の人は無愛想な人だと嫌われていた。
そんなある日、近所の人は地域のゴミ置き場のゴミが猫に荒らされていることに気づいた。
近所中、この家の女の人が嫌いということもあって、この家の飼い猫を疑った。
すぐに近所終結してこの家に苦情を言いにきた。でも責められた女の人は
「うちの猫じゃない。疑うのなら毒でもまけばいいと」と言って疑ってきたご近所さんたちに怒った。
「そしたら、うちの猫以外の死体がゴミ捨て場に転がることになるはずだ!と。
さすがに毒までは…とみんなはその提案を否定。でもやっぱり疑いを晴らすことはできなくて、
みんなは次のゴミの日は隠れてゴミ捨て場を見張ることにした。
そして、近所の人たちは恐ろしい真相を知ることになる…」
相棒の話に、俺は恐怖で死にそうだった。別にまだ全然怖い話なんかじゃないのに、その場所で聞くと
ものすごく怖くてたまらない。俺は手のひらの冷や汗を洋服でふきながら、相棒の話の続きを待つ。
その時、ふとクリスの顔を見た。クリスは、何やらものすごく緊張しきった顔で、ある場所を見ていた。
俺はおいおいやめてくれ、と思いながらその視線をたどる。その視線は、壁にある影にあった。
「!」
俺は、絶句する。そこには、俺のでも、相棒のでも、クリスのでもない人の影があった。
その影というのが、髪の長い女のひとが呆然と立ち尽くしているような形で、頭のアホ毛や
足のO脚具合まで鮮明な影だった。俺は恐怖でクリスと同じような状態になる。
こういう時人間は、「キャー!」みたいな悲鳴を上げることができない。ただ恐怖に黙り込む。
むしろ、敢えて何もないかのように面白い話をしようとしたりするものだ。
俺は影に気づいてないふりをして、わざとその場を盛り上げようとした。
「なんだよ相棒〜幽霊的な怖い話じゃなくて、人間的な怖い話じゃねーかよー、それ!」
「ばっか。今から怖くなるんだよ」
相棒は、俺とクリスの見ている影に気づいていないようだった。それもそのはず。その影は
相棒の背中がわの壁にあったのだから。
「じゃーさっさとオチで落とすぞー」
相棒はもう話すことに夢中だった。俺とクリスは正直、相棒の話のオチなんてどうでもよかった。
無意識に見てしまうその影。位置からして、階段のところに立っているな…なんて考える。
すると、続きを話そうと思っていた相棒すらビビる出来事が起こった。
ろうそくの灯が、急に縦に高く伸びたのだ。
「なんだよっこれ、」
クリスはもうパニック状態だった。俺や相棒も、「幽霊がいると火がよく燃えるらしい」っていう話を
どこかで聞いたことがある分、もうやばかった。相棒はウエストポーチに手を伸ばす。
俺はどうしていいか分からず心の中で「神様神様神様」と唱え続けていた。
すると、パニック状態のクリスがまさかの行動に出る。
メラメラ燃え盛っていたろうそくの火を、息を吹きかけて消したのだ。目の前には、闇が広がる。
その瞬間…
【ドタドタドタドタタッ】
という、階段を駆け上がる音が家じゅうに響いた。
「わーッ!」
「あーッ!」
もう、誰が何を叫んだのかわからなかった。ただ俺達は、とっさに立ちあがって入ってきた窓から
転がるように外にでた。慌ててるのにちゃんと順番に窓から出れたのは後になるとちょっと笑える。
外に出た俺達は、落ち着かない様子で黙り込んでいた。
やがて落ち着いてくると、灰塩を頭からかぶって真白になっている相棒が「なんだったんだ」と、
俺とクリスに言った。俺たちは、あきらかにあの影の女が階段を駆け上がった音だと思ったけど、
何も言わなかった。まだ口にだすのは怖い。
その日は百物語も失敗で、何も語る気にはならないので、とりあえず帰ろうということになった。
クリスにいたってはビビり過ぎて何も言えない状態になっていたけど、相棒はそれをからかわず、
「また今度な」と静かに別れを告げた。あれは誰だって…仕方ない。
その日、クリスは俺の家に泊っていった。
相棒も誘ったけど、相棒は「俺はいい」とさっさと帰宅してしまった。格好をつけたつもりらしい。
さらに相棒は、去り際に脅えてるクリスを見てかなり真面目な顔で
「こんな暗闇のどこが怖いんだ。目をつぶってみろ。それがこの世で最も深い闇だ」
なんてことを言っていた。今思うと、灰かぶっておいて何だお前はって感じ。
夜、眠りにつきそうな俺に、クリスは「あの人、小さいくせに意外とすごいんだな」と言った。
俺は突然のことにビックリしたけど、ちゃんと「ああ。あいつはすげーやつだよ」と同意しておいた。
それから何日かたって相棒と会ったとき、俺はクリスと俺が何を見たのかを相棒に話した。
相棒はその話を聞いただけでビビッて、「マジこえー」と今にも灰塩をかぶりそうな勢いだった。
その姿にやっぱり別にすげーやつじゃないかも、と思ってしまう。
「そういえば、あの時の話のオチ。あれ、なんだったんだ?」
「あー。あの家の女の人がーってやつ?」
「恐ろしい真相がなんとかって言ってなかったっけ?」
「んーあれな。実は、俺の作り話だったんだ」
「は?」
「いやー。とにかくあのガキをビビらせたくて。それにはその舞台の怖い話が一番だと思ってさ。
あのあとは、俺の作り話だよ〜ん★とか言ってやろうかと思ってた」
相棒はそう言ってゲラゲラ笑う。ほんと、どこまでも陰険なやつだ。しかも、今考えると
話だって少しもこわくないし。俺はクリスの口から「あの人はすごい」みたいな言葉が出たことを
話してやるつもりでいたけど、これは絶対話してやらねーと考え直した。
すごい長くなっちまったけど、相棒と俺+生意気なクリスと3人の体験でした。
失礼します。
リアルタイム遭遇かね?
酔っ払って帰ってきてもいい事あるもんだ
かっこいいな相棒
後日談は?
待っててくださった方々、ありがとうございます。
後日談としては…すみません。あの家の女がなんだったのか、とか
何故階段を駆け上がったのか、とかそういうのは結局わかってません。
ただ、相棒とクリスはこれからも仲良くないです。犬猿です。
それから、腐女子っぽいのは多分登場人物が男だけだからかな?
…夜中から、本当ごめんなさい。
>>918 乙。はっきり見えたのに原因になる話が作り話だったってのがますます怖いね。
俺、あんたの話のテンポ好きだよw
>>914 「目をつぶってみろ〜」の下りって何か引用元があるのかな?
師匠シリーズでも使ってたよね
相棒が師匠シリーズの話を読んで真似たってことかな
またラノベかよ・・・・
どいつもこいつも右へならえでうんざりだよ
>どいつもこいつも右へならえ
つまりこのスレには貴方が望むような作品は来ないということ
別の所で貴方好みの作品を探して下さいな
>>921 そういうことじゃなくてな…
まぁいいか、したり顔で言ってのける相棒ワロスw
また「またラノベかよ…」かよ…
どいつもこいつも右へならえでうんざりだよ
ラノベに失礼な気がするんだが…
927 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/25(日) 09:36:22 ID:+Aj/sIRyO
相棒乙w
だなブギーポップはオモロイ
クリスとかいう人
つまんないからもう書き込むのやめてくれん?
調子に乗るなよ
師匠シリーズの劣化パクリ部分を無くすだけで、これだけ良くなると
>>918 >すごい長くなっちまったけど、相棒と俺+生意気なクリスと3人の体験でした。
ここだけ見てもそうだけど全体的に言葉の選び方が古臭くて読んでて恥ずかしい
腐女子臭さもそこから来てる
まあ今のままで十分楽しんでる人も多いみたいだから余計なことかもしれない
茶々いれてすまんかった、乙
>>930 いえいえ。文章を引用した具体的な意見を出せる人は大好きです。
言葉選び…古いかな。
恥ずかしい。
とりあえず腐女子とラノベに申し訳ない。すみません。
それでもまた投下するつもりでいてゴメンなさい。
乙ってくれた人のために書きたい。
もし師匠が見たら「やめてくれ」と言うだろう
もちろんウニの書く師匠シリーズもだ
ウニは自分が若くてバカやってた時の回顧録書いてて
ヒーロー物の真似っこする小学生みたいな読者がいるのを知って困るかも知れない
真似して死んだり怪我されたって責任負えないもんな
それでも自由投下型の匿名掲示板なんで好きにやればいい
>930
なんかさ、やってもいない自分の黒歴史読まされてるような居たたまれない恥ずかしさなんだ
933 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/25(日) 20:01:12 ID:D1FkZc7FO
>>928 でたよ、ウニと師匠以外は皆排除、死ねよクズども。
Byクリス
-
だからウニのファンて嫌い
師匠シリーズも相棒シリーズも、どっちも面白い!
逆にラノベっぽいから読みやすい。次回作も楽しみです!
>>931 いちいち馴れ合いに来るなよ
作家気取りで居る奴が一番ウザイ
939 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/26(月) 00:37:23 ID:yXw8KNE30
お前ら元気なんだな
流れを読まず投下します。
俺のせいで空気悪くなってるみたいだから、この話を最後に
投下は控えようかなって考えてます。
※この作品には師匠シリーズを引用した部分があります。
パロディが苦手な方は読み飛ばしてください。
----
「心霊写真を撮りに行こうぜ!」
その日も、また何やらひと騒動起きそうなことを相棒は言った。
この相棒とは、高1の時に学校の図書室で出会った。
出会ったと言っても、小・中・高・と同じ学校だったので、お互い顔は知ってけど。
相棒は、小学生の時から明るくて場を盛り上げるタイプだったので、人の陰に隠れるタイプの
俺とは疎遠な人物だった。でも俺は昔からよく、作文とかで表彰されることは多かったから、
そのせいで相棒もギリギリ俺の名前は知っていたみたいだった。
そんな、絶対に交じり合わなそうな俺達が何故こうまで仲良くなって、
そいつを相棒と呼ぶようにまでなったのか。それは、オカルトマニアという共通点があったからだ。
高校に入ったばっかだった頃の俺は、残念なことにあまり学校になれず、
長時間休みは図書室で過ごす日々を送っていた。俺の通う高校は、学校内全部に
クーラー完備で図書館が涼しいからと言って人のたまり場になるという心配もなかった。
むしろ、学校のはずれにあるその図書室は、びっくりするくらい人の来ない場所だった。
図書の先生でさえもあまり来ない。後に知ったがそこは参考文献的な書物が置いてある部屋で
正式な図書室は別にあるらしい。だからあんなに静かな場所なのだ。
とにかく、そこは俺にとって快適な場所であった。
静かなのはもちろんだが、何より嬉しいポイントは『妖怪』『心霊』『神話』『黒魔術』『錬金術』
などといった、俺の大好きなジャンル、要するにオカルティな本がたくさん置いてあったことだ。
毎日、一人で静かにそういった本を読みあさる毎日。幸せだった。
だけどその静かな日々は、ある人物が図書室にやってくるようになって幕を閉じた。
そのある人物というのが、その相棒である。
相棒がくるようになってから、俺は憂鬱だった。絶対に話せないタイプの人だと思ったし、
俺がそういう本を読んでいるのをからかわれたらどうしようという不安があったから。
だけど、俺のその心配はあっさりと消え去った。
だってそいつは、俺の好きなジャンルの本が置いてある本棚の前に立ち
「やっべー、超いい本そろってんじゃーん!」と、その中の一冊を手に取ったのだから。
それは、俺が前の日にすでに読み終えていた本で、俺はびっくりと意外性のあまり、思わず
「それ、ホントよかったぜ!」と声をかけてしまっていた。
その時振り返った相棒の嬉しそうな顔は、今も忘れられない。
それから俺達は大好きな『師匠シリーズ』についても語りあい、ますます仲良くなった。
そんな、思い出ある図書室で、俺たちはある計画を立てていた。
「だから、最近の心霊写真なんて全部フォトショップじゃん」
「だからって、本物の心霊写真撮るなんて難しいだろ。第一、どこで撮るの」
「俺がいい心霊スポットを見つけておいてやったよ」
相棒はいつも、どうやって見つけるのか高校生の俺達でも行ける範囲の場所に、とてもいい
心霊スポットを見つけてくる。中にははずれもあるけど、でも雰囲気だけはいつも最高にいい。
「今度はどこだよ。なんか噂あんの?」
「ラブホテル」
「は。」
「だから、隣町のラブホ通りのうちのひとつに、心霊写真が撮れたって噂のホテルがあるんだよ」
「いや、お前。いくら撮れても…その代わりに大切な何かを失うだろ、それ」
俺は相棒からちょっと離れる。いくら相棒でも、ホテルなんかに一緒に行くのは嫌だ。
すると、相棒は持っていたペットボトルのカラで俺の頭を叩く。
「変な想像するんじゃねーよ。馬鹿、お前と俺じゃねーよ。今回は協力者がいる」
「協力者〜?」
なーんか、嫌な予感がした。
「それって、」
「宮田だよ」
予感、的中。
「そっか、宮田とお前が行って写真を撮ってくるわけか。へーいいんじゃない」
「バッカ。俺があの女と一室で過ごしたら、俺が襲われて終了に決まってるだろ」
「違う意味でね。じゃあどうすんだよ」
「お前と宮田が行くんだよ」
な ん だ っ て ?
「お前と宮田って結構、お似合いだと思うぞ」
相棒はニコニコと笑った。そんなわけないじゃないか。
俺はさんざんその作戦を拒否したけど、それを聞いてくれるような男じゃなかった。
必死の抵抗も空しく、俺たちはその次の土曜日に心霊写真撮影作戦を決行した。
ホテル通りをタクシーで走り、目的地につく。場所は、ホテル通りの外れ。
何件かの潰れたホテルに囲まれている。ここにつくまでの道中のタクシー内は、
相棒一人が楽しそうに話していた。運転手さんは明らかに変な目で俺達を見ていた気がする。
俺はもうさっさと終わらせて帰りたいと思っていた。
「このホテルの、何号室だよ」
「えーと、確か。一番はじっこの部屋だな。このホテルは車なしでも入れるんだ」
「やっぱ三人で行こうぜ」
「ダメだって。人数多いと心霊現象起こらないかもしれねーじゃん」
「二人も三人も一緒だろ」
「うるせーよ。それでもお前は隊長か!」
隊長じゃねー。さんざん拒否した俺だけど相棒の言いなりの宮田に連れられて仕方なく中に入った。
入ってすぐ、外側からはドアが開かないようにロックがかかる。そして目の前に広がる細い階段を
上って行ってまたドアを開ける。そこには、意外にキレイな部屋があった。
「こんなとこ、本当に幽霊がいんのかよ」
俺はなんでもないように言ってベッドに寝転がった。
大丈夫。童貞だけど、ホテルぐらいよゆーだから。
「なぁー、宮田?」
「………」
「みやた?」
宮田の様子が変だった。俺は焦って宮田の手を引っ張る。
「おい、宮田!」
「永倉君、この部屋…なんか嫌な雰囲気がする」
「嫌な雰囲気…?」
宮田の顔はマジだった。俺のように、初めてのラブホテルにビビってるような顔じゃない。
俺は急に、ここが心霊スポットなんだということを実感してしまった。そういえば、妙に寒い気がする。
「確か、この部屋の窓から誰かが覗いてる…だっけ?」
「おお」
俺たちは、早く写真を撮って戻ろうと、窓にシャッターを向けた。
やっぱり相棒をつれてくればよかった。
「もうこれくらいでいいんじゃね?」
窓だけじゃなく、部屋中を撮った俺達は頷き合い、部屋を出る準備をした。
そのとき、俺の携帯が大音量で鳴った。
「ビクッた…、何だ、相棒じゃねぇか」
俺は電話を取る。
「もしもし、どうした?」
「隊長、まだ部屋出てくるな。いい噂をゲットしたぜ」
「はぁ?」
「その部屋、ベッドで寝てたら、必ず男側が金縛りにあって、何かを見るらしい」
「まままま、マジ」
「とにかく、まだ出てくるなよ」
「ふざけるな、俺は出るぞ!」
俺はもう強引に携帯を切り、宮田に叫んだ。
「あいつがまだ出るなって言ってるけど、ここマジ危ねー感じだ。出ようぜ!」
「いやだ」
「は?」
「あの人が出るなっていうなら、出ちゃダメ」
そうだった。こいつは相棒のことが好きなんだ。俺より相棒に従うに決まってる。
俺は宮田だけを置いていくわけにもいかないので、大きくため息をついた。
「あいつ、だから宮田を選んだんだな」
「ゴメンね、永倉君」
もうどうにでもなれ、と思った俺は、速やかにベッドにもぐった。
宮田も続いてベッドに入ってくるがさっきの話が怖すぎて変な気分にもならなかった。
違う意味でドキドキがとまらない。
「電気消すね」
宮田が電気を消す。すると、今までとは比べ物にならないくらいの悪寒が俺を襲った。
「み、みやた、なんかやばくね?」
「うん。なんか、くる気がする」
「……」
それからしばらくすると、カッチカッチという、何かをぶつけあうような音が聞こえ始めた。
やばいやばいやばい。やっぱり電気をつけてほしい。
「みやた…俺が、金縛りになったら、シャッターを押せよ」
「うん」
カチカチ音は、どうやら窓の外から聞こえる。ああ、なんかくる。そう思った。
そして次の瞬間、俺の体は動かなくなる。宮田を呼ぼうと思うが、声も出ない。
でも多分、宮田のことだから俺の異変に気づくだろう。そう思って宮田に心の中で助けを求める。
シャッターなんてもういい。助けてくれ。
カチカチ音が俺のすぐそばまで近づいてくる。どうせ固まるなら、目をつむっておけばよかった。
このままじゃ、何かを見ちゃう。
瞬きもできないでいると、急に目の前に黒い影が広がった。そしてその真ん中には、
この世のあらん苦しみを背負ったみたいに苦しそうな顔で俺を見る女のの姿があった。
その女は何を言うでもなく口をパクパクさせながら、上の歯と下の歯をカチカチぶつけていた。
さっきからするこの音は、この女の音だったんだ。俺はゾーッとなって震えた。
こいつは、やばい。きっと「心霊写真を撮ろう!」なんてことを考えていた俺達に怒ってる。
南無阿無陀物、助けて。
目の前の女が俺を覗き込んできて、顔がものすごく近くになったその時、俺はもうダメだ、
噛みつかれる!と思って死を覚悟した。が、どうしたことか、突如鼻先でカチカチしていた女が
かたまった。俺はどうしたんだ?と思い息をのむ。そういえば、瞬きができる。
…金縛りが解けたみたいだ。
すぐそこまで来ていた女の姿は、瞬きをしている一瞬の間にいなくなっていた。
俺は安堵の息をのみ、動けるようになった体を起こした。
隣にいた宮田がずっと無言だったのが気になっていた。
「宮田…?おい、大丈夫か?」
声をかけた瞬間、宮田はものすごい勢いで体を起こした。その起き方もなんか不気味で、
俺はもうどうでもいいと思い、宮田を引っ張って部屋を出た。
(ちゃんとフロントに電話して「出ます!と言い、料金も支払い窓口から支払った)
階段を下りて、もうひとつのドアを開けて外に向かって走る。
ドアの向こうにはすぐ、相棒が立っていた。
「お疲れさん」
俺は体の力が抜け、その場に崩れこんだ。宮田も崩れて、相棒は宮田だけを抱えて助ける。
「いったん帰るか」
俺達は、相棒の家に帰ることにした。家につくと、相棒はデジカメの写真を見ながら語り始めた。
「ふたりにいかせて、悪かった。何か出ただろ」
「悪かったじゃねえよ。本当に金縛りにあったんだぞ」
「あそこ、どんなに霊感がないやつでも心霊体験するみたいだぞ。ネットの噂で見た」
「そういうのはお前が行けよ。宮田も全然役に立たないしなぁ」
俺は相棒宅についてからも黙り込んだままの宮田に言った。宮田は青白い顔で静かに俺を見る。
「おい、さっきから大丈夫か宮田?気分悪いのか?」
俺が青白い顔の宮田を覗き込んだとき、相棒が大げさに声色で言った。
「永倉隊長〜、そりゃあないぜ。宮田が隊長を救ったみたいなもんなのに」
「へ?」
相棒の言葉の意味がわからなくて、俺はきょとんとする。
すると、相棒は俺のウエストポーチの前ポケから毛玉みたいなものを取り出した。
「これは…」
見覚えのある、適量の毛玉。それを見て、俺は宮田が静かだったわけや気分の悪そうなわけ、
そしてさっきの女の幽霊が消えたわけを知る。
「よく言うだろ。幽霊ってのは、自分よりやばい霊が来たらその場から去るんだよ」
「…あぁ、」
「生霊ってのはそういうやばい霊の部類に入るしな」
相棒はそう言いながら、な!と宮田の肩を叩いた。宮田は嬉しそうに「うん、」と笑う。
俺は今更、相棒が今回の協力者に宮田を選んだわけに気づいた。
「おっ、ふたりとも、おつかれー。これバッチリ写ってるぜ」
「え」
「あ」
相棒が見せてくれた写真には、窓の横にさっき見た女の形をした黒い影が写りこんでいた。
「今回の作戦は、成功だな」
こうして、今回も俺達のオカルト活動も終わった。
後日知ったけど、その心霊写真を撮ったホテルでは昔女の人が男にふられて自殺をしたらしい。
死んだのは運ばれた先の病院だったみたいだけど、女の霊は死んだ場所ではなく、
自分自身で死に場所に選んだそのホテルにとどまっていたのかもしれない。
カッチカッチ/完
---
ありがとうございました。
寝る前に新しい話読めてラッキー
>>940-948 乙
読みやすいし、話がまとまってるから個人的には好きなんだけどなぁ
ウニ信者にもアンチウニにも嫌われる要素はあるけども、
まぁ、こんな場だし叩かれるのはしょうがないと割り切ってまた気が向いたら書き込んでくれ
書き出し見てスルー余裕でした
べつにウニ信者って訳じゃないけど、他人の褌で相撲を取ろう根性が気に食わないなぁ
他の作者さんのパクリでも確実にスルーした・・・内容以前の問題だし
ま、でも所詮匿名掲示板に1個人の趣味で書き込んでるんだから、これ以上どうこうは無い
今後ともオレ個人がスルーするだけの話
パロディ≠パクリ
953 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/26(月) 06:37:56 ID:drox02EJO
>>951 オマエ個人のそれだけの話ならわざわざ書き込むなよ(笑)
954 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/26(月) 08:21:03 ID:JhcdSZIuO
相棒乙!また書いてくれ、宮田の話もっと頼む
相棒の人乙です。
いつも楽しみにしています!
>>898 一族の昔話ですか?
口伝なものでよければ覚えているもの書いてみます。
956 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/26(月) 10:32:28 ID:ryAdr+ucO
相棒乙
宮田www
友人の呼び方が「相棒」に「お隣さん」。
中2病の人?
師匠シリーズ内のネタを実行して怪異に見舞われるのはパターンとしてアリでしょう
手を重ねて安心するとか、屋上から目を瞑って飛び降りるとかね
>>946 >南無阿無陀物、助けて。
南無阿弥陀仏でなければ助けてくれんぞ。
パクリとパロディは違うじゃん
他人の土俵でとかなんとかは読者の見解で
相棒は師匠が好きなだけ
961 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/26(月) 14:49:31 ID:w0Y158CZO
カッチカチやぞ!ワイのチンコカッチカチやぞ!
「師匠かぶれの愛すべきバカ」の面白ストーリーだと思ってみてるけどね
パクリじゃなくスピンアウトというべき
おいしいキャラ的な意味でのバカだと付け加えておく
スピンアウトでありオマージュであるといったところか
投下準備ができましたけど、書き込む空気じゃないかな……?
まぁいいや、ちょっと時間がないので投下します。
・山頂の儀式
その昔、裏山に迷い込んだ落ち武者が人被りの儀式を知らずにウサギを弓で
射ち殺し、食べてしまいました。
その晩、野宿をしていた落ち武者がふと目が覚めると周りからいくつもの視線
を感じ、気味が悪くなった落ち武者はその場から逃げだしました。
必死に逃げても視線は追ってきて、無我夢中だった落ち武者は、夜中だったため
崖に気がつかず落ちてしまいました。
翌朝、一族の人が裏山の見回りをしていると崖の下に落ち武者が倒れているのを
発見し、救出することに。介抱された落ち武者が目を覚ますと、落ち着くのを待って
なぜあそこで倒れていたかをたずねました。
落ち武者が昨夜の出来事を一通り話し終えると、それは山の神様のお怒りだと一族の
人は教え、殺してしまったウサギを供養して山の神様に許しを乞いなさいと勧めましたが、
落ち武者は信じるばかりか視線の正体は一族の人たちだと思い込み、怒り狂いました。
暴れる落ち武者をなんとか落ち着かせようとしましたが、落ち武者の興奮が収まらず
ついには止めようとした一族の娘を一人、切り殺してしまいました。
それに怒りだしたのはその娘の父親。近くにあった農具で襲いかかったそうです。
突然の反撃に怯んだ落ち武者は、逃げ出しました。しかし、怒りの収まらない娘の父親は
山の中まで追いかけていきました。
逃げた落ち武者は、娘の父親に山頂まで追い込まれてしまいました。そこで何があったのか
は誰も見ていません。しかし、他の一族が追いついた時には一本杉に貼り付けにされるように
自分の刀を突き刺された落ち武者と、心臓が抜き取られ、山の神様に祈るような姿で息絶えた
娘の父親の姿がありました。
娘の父親は、落ち武者の刀を奪って突き刺した後に自分もまた裏山で命を奪ってしまったため、
自らの命を持って山の神様に許しを乞うたのではないかとされています。また、娘の父親には
あの時に山の神様が降りていて、落ち武者に罰を下したという説もあるそうです。
それ以降、年に一度この事件が起きた時期には山頂で儀礼を守り、山の神様を敬うと宣言する
儀式がおこなわれています。
今回は一つですが、儀式だけでなく裏にある物語を紹介しました。小説(ラノベ?)調を期待していた人は
すみません。ああいうのは得意でないので……。話にも矛盾等もあると思いますが、口伝なので変化して
いったり、曖昧になったところがあるそうです。個人的にはどうやって心臓を抜き取ったのかが気になる。
あれから、一族本家からの勧誘がスゴい……電話毎晩かかってきます。
どの山か聞くのはNGかい?
山岳信仰研究者の血が騒ぐ。
>>966-967 明快、簡潔にまとまってて面白かったよ、乙
がっつり小説調も悪くないのだが、実話系や言い伝え系は
こういう風に簡潔にまとめてある方が個人的に読みやすくて嬉しい。
しかし、本家の勧誘が大変そうだな。
興味深い話ばかりなのでいろいろ聞けるのはスレ住人としては楽しいが、
あんまりやばそうだったら、しばらく親戚筋から遠ざかったり
そっち系の話は探らないようにして、
ほとぼりを冷ましたほうがいいんじゃまいか?
970 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/26(月) 19:19:25 ID:JhcdSZIuO
241乙!かなり興味深い、またよろしく
スピンアウトって番外編とか姉妹編って意味じゃ?
スピンオフと言いたいのかな…。
973 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/26(月) 20:02:22 ID:drox02EJO
山岳信仰研究者が2ちゃん…
相棒の人は、書かなくなるくらいなら洒落コワ投稿掲示板においでよ。
>カッチカッチ
面白かった。これが最後と言わずにまた投稿してほしい。
師匠シリーズのパクリだという意見もあるけど、「ユリ・ゲラーの番組を見てスプーン曲げを試した」という描写が出てきたら、
それはユリ・ゲラーのパクリだろうか?
私は違うと思う。
「こんな暗闇のどこが怖いんだ。目をつぶってみろ。それがこの世で最も深い闇だ」というセリフも作者がパクッたわけではなく、
登場人物が師匠シリーズに出てきたセリフを真似して使った、という描写だし。
それをパクリだと言ってしまうと、「トム・ソーヤーの冒険」も「宝島」のパクリという事になってしまう。(作中にキャプテン・シルバーごっこの描写があるのです)
有名な話に感化された登場人物が、似たような行動を取ってみたら……というのは、物語の設定としては割とポピュラーな部類で、
二次創作とかパクリという事にはならないと思うよ。
977 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/27(火) 01:03:38 ID:OQ7B3NQ2O
>>966-967 乙カレー
こういうのもなかなか良いもんだ
淡々とした語りも遠野物語みたいで、内容も民俗学的な見地からみてもなかなか興味深い
(地域がわからんから、そこはアレだが)
むしろラノベ調にしたら嘘くさくなって、かえって興醒め
>この作品には師匠シリーズを引用した部分があります。
パロディが苦手な方は読み飛ばしてください。
もうあほかよこいつ・・・・
ラノベならまだしもパクっておいてそれをいちいち口上にするとか興ざめもいいとこ
まじで戻ってくるなよ
またおまえか
980 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/27(火) 01:49:22 ID:0cvKmMGXO
てすと
>>978 そんなに嫌いなのにトリップをNG登録もせずにわざわざ読んでるのか
荒らしたいだけなんだろ
>>940 このスレは常時こんな感じだ
気にせずに頼む
>>968 どの山かを言うのはNGですね、すみません。
ただ、「中部甲信越のどこか」とだけ言っておきます。
>>969 遠ざかろうにも本家のすぐ隣の家なので逃げられませんw
勧誘もある意味恒例行事なので凄いといっても気にはしてません。
というか、親戚一同で聞き流してるからちょっと可哀そう…
もうすぐこのスレも終わりだのぉ。
>>2 にもあるけど、次のスレ番は12になるんだな。
スレ立ては990の人…?
じゃあ、うめうめ
988 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/27(火) 20:21:53 ID:neWw4RI0O
ペガサス流星拳
お姉系美人ギャルの幽霊とかにならとりつかれたい。
>>940-948 相棒の人乙!!
『師匠シリーズ』のウニ氏はかなりすごい
が霊感がある者の世界としてって感じ(でも、引き込まれる)
『相棒シリーズ』は一般レベルとしての楽しみ方で読める
どちらもかなり好きだ
>>955 >>965-967 一族の人乙
いろんな儀式にまつわる裏話・・・・・
カナーリ興味深い!!
いろいろ書いて欲しいけど、本家の方が大変かな?
また、投下できたらしてください
991 :
本当にあった怖い名無し:2009/10/27(火) 22:38:01 ID:wkm4qd+NO
うも
梅がてらに。今まで鈴木の話を書いていた者です。
鈴木はやっぱり完全にインスタント霊感を無くしたみたいだ。
本人は少々残念がってたけど、これでよかったんだと思う。
あと、俺のほうの少年の話も解決しました。
やっぱり女が原因だったようで、
俺の大学の友人が彼女の高校の時の同級生だったようなんだけど、
彼女、結構変わり者というか、ちょっと行動がおかしな人で、
今までも告白されて付き合った挙げ句に散々つきまとわれた人が何人かいるらしい。
彼女は別に恋人を求めているのではなく、執着できる相手を探しているだけなのだとか。
それで、なぜ彼女のことがあってからあの少年が復活したのかというと、
これは渡辺さんの推測なんだけども、
彼は俺の守護霊的存在だったのではないかということだった。
なので、俺が将来的に危険な目に会うのを止めるために現れたんじゃないかと。
あと、渡辺さんが初めて少年を見たときに「危険なものではない」と思ったのも、
彼が俺を害する目的で俺に憑いてたわけじゃないからじゃないかと。
根拠はもう一つあるんだが、ちょっとそれはこういうところに書くべきことか
判断に迷うので書かないでおくが、まあ、とにかく彼は悪いものじゃなかった。
で、俺の不思議体験も解決したし、鈴木の霊感もなくなったし、
俺の話はこれでおしまいにします。
読んでくれた方、ありがとうございました。
一族の方とかすごい話がまたぞくぞく投下されているんで、
それを楽しみに読ませてもらう方に戻ります。
>>hraA6qfSug
最後まで乙でした。アンタは最高です。
鈴木の話、楽しかったよ。
乙。
鈴木の人 乙
梅
コツコツと梅
寝る前に梅
梅
めう
わー、銀河鉄道だ!
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千本目の蝋燭が消えますた・・・
新しい蝋燭を立ててくださいです・・・