322 :
1:
以前、自動車屋さんに勤めてたときの話。
従業員数20人ほど、その中に2年先輩のYさんという痛い人がいた。当時、25歳。
失礼だけど、小さい、太い、おしゃれじゃないぶ厚いメガネ、真面目なのにDQN高卒、
運動苦手、趣味無し、整備工なのに不器用・・・と、ちょっと可哀想な感じの人。
それだけなら仕事仲間としては普通に付き合えるんだろうけど、Yさんが聞かせてくれる
プライベートな話がちょっと怖かったのと、約2年分の現実にあったことも含めての話です。
以下、プライベート部分は本人に聞いたそのまま書きます。
あるとき、Yさんは整備工からサービスフロントマンになることになった。
(たぶん現場で使い物にならなかったからっぽい)
保険の資格を取るために研修に行ったとき、昼休みに可愛い女性に声をかけられて
一緒にランチを食べに行った。
それを皮切りに、様々な場所でいろんな美女(必ず美女)に声をかけられるようになった。
私たちが聞いていて「ステップアップしたな」と思ったきっかけの話がある。
それまでの漠然とした感じではなく、話が具体的で詳細になっていったきっかけと思う。
ビー○ルズのコピーバンドが出演するライブハウスに1人で行ったとき、
2人組の美女が声をかけてきて一緒に飲んだ。
と言っても、Yさんは下戸なので車で行っていたから2人を送っていくことになった。
2人は降ろしてもらうのを譲り合ってもめていた=片方を降ろした後、自分が2人きりに
なりたかったから。
でも、紳士のYさんは2人とも同じ場所で降ろし、連絡先も告げずに去った。
因みに、なぜかこの頃からタバコを吸い始めた。
尤も、うまく吸いきれずふかしてただけなんだけど。
323 :
2:2009/09/19(土) 08:42:19 ID:K82F0oDM0
あるとき、所用で飛行機に乗ったらCAのお姉さんにそっと連絡先メモを渡された。
これまでの美女とは格が違うものすごい綺麗な人。
それからは休日は彼女のフライトに合わせて同じ飛行機に乗るようになった。
こちら関西だけど、日帰りで北海道、日帰りで東京、日帰りで熊本・・・などなど。
必ずお土産をくれたり、飛行機のチケットの半券を見せてくれた。
幸せな時は半年ほど続き、ある時彼女は病に倒れた。ガンだった。
余命3ヶ月、CAを辞めて故郷である四国に帰る彼女。
それからは毎週四国への旅。
1度、私の同期の男の子に「空港まで乗っていくのに車を貸して欲しい」と言ってきた。
その日、急に四国に行くことになったが自分は電車で来ていたためという言い分だった。
Yさんはそれまで乗っていた車を新車に乗り換えたところだったし、
なんか変な話と思いつつも、Yさんから見たら後輩の彼は断りきれず車を貸した。
返してもらった車の走行距離は、空港までどころか四国まで往復できるぐらい伸びていた。
Yさんは「彼女の体調が良くて、ウェディングドレスとタキシードで写真を撮ってきた」
と上機嫌で、ちょっと気持ち悪くて車の謎は追及出来なかったらしい。
324 :
3:2009/09/19(土) 08:43:47 ID:K82F0oDM0
その頃、私ともう1人の女の子に社長がまとまった休みをくれてLA旅行に行った。
まあ、仕事上いろいろなことがあってご褒美的に。
しばらくしてYさんも休みをくれと言い出し、3日間の休みを取った。
その3日間でLAに行って帰ってきた。
何しに行ったのかは不明だけど、本当に行ってきた模様。
似たようなことは他にもあった。
趣味でバンドをやってる人と、元バンドマンだった人が音楽論で盛り上がってた翌日、
Yさんがいきなり数十万円のベースを買ったと持ってきて見せていた。
バンドマン2人は、中古だけど相当良いものだと言っていた。
もちろんYさんはベースなんて触ったこともなかったし、その後も弾いているという話は
出たことがなかった。
他にも、Yさんは数人で風俗に遊びに行きハマってしまった。
「奢るから」と言っては後輩を誘って行っていたようだった。
その頃から、先輩たちには時々1万、2万と借金するようになり、当然そのうち誰も
貸さなくなっていった。
325 :
4:2009/09/19(土) 08:44:57 ID:K82F0oDM0
ある朝、Yさんが出勤してきていきなり「今日は昼までで早退したい」と言った。
余命3ヶ月と言われた彼女が2ヶ月ほどで亡くなってしまい、葬式に出たいという話。
社長は3日間の休みをあげてYさんを送り出した後、私にいつもと違う仕事を命じた。
Yさんの少ない仕事量の割りに多すぎる回収残と領収書を調べること。
領収書は各自1冊ずつ持っていて、3枚綴りで全てにナンバリングされていた。
Yさん担当の回収残の理由のほとんどが「集金に行ったがもらえなかった」というもの。
そのうちの社長が懇意にしていたお客様数件に電話をかけて、事務手続き上で
不手際があったとお詫びして確認したところ、その全てが支払い済みだった。
私はYさんの居ない3日間で全てのお客様に確認を取り、社内の人からの借金も調べた。
Yさんの使い込みと借金は200万を少し超えていた。
3日後、帰ってきたYさんは、棺に例の婚礼写真を入れたとか、最後まで綺麗な顔だったとか、
いつも以上に饒舌で悲劇のヒーローに浸りきっていた。
社長は「これからしばらくは回収だけに動くように」と言った。
残が多すぎるから、とにかく行って、もらえなくてもいつもらえるか約束してくるようにと。
一応Yさんは出て行ったが、集金に行けるはずはない。
何時間か経って、Yさんは電話をかけてきて「集金したお金を落とした」と言ってきた。
社長は、自分から横領したことを言い出すチャンスを与えたつもりだったが限界がきた。
帰ってきたYさんとは社長が1対1で話したため、細かいことは分からないけど、
全て認めた様子だった。
因みに、乗り換えたところだった新車はとっくに中古車屋に売り払った後だった。
四国行きの時の車の謎が解けた。
326 :
5:2009/09/19(土) 08:46:26 ID:K82F0oDM0
社長は、とりあえず解雇にはしないけど、翌日からは現場に戻らせることを伝え、
身の振り方は自分で考えるように言い、その日はそのまま帰した。
Yさんは2度と出社することはなかった。
翌日、Yさんの両親が揃って来られて、泣きながら社長に詫びてお金を置いていった。
お母さんが帰り際に私のところにやってきて「あなたが○○さん?息子があなたには
寂しい思いをさせて申し訳ないと言ってました。あんな息子を愛してくれたのに、
本当にごめんなさい」と泣いて謝られた。
家では私がヒロインの物語が展開されていたらしい・・・。
長文、ほんとにごめんなさい。
でも、すっきりした。