【今夜】百物語2009本スレ【恐怖】

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483グレゴリー ◆yNuURBcNkQ
「お供え」

おれの弟は小さい頃難しい病気だった。
皮膚の一部が固くなって、痛みを伴うという症状だ。
田舎医者を散々回ったが、どこの医者も、治すどころか病名すらよくわからないという有様だった。

少し話はそれるけど、うちには仏壇と神棚がある。
おれたち兄弟が小さい頃は、数ヶ月に一回という頻度で白飯をお供えしていた。
そんな状態だから少なくとも子供たちにとっては、仏壇や神棚の存在は希薄だった。

ある日、祖母が仏壇と神棚にお供えをしていて、ふと言った。
「毎日新しいご飯をお供えすればあの子の病気も治るかもしれない」
おれは内心、んなことあるわけねえじゃん、と思っていたが、母も「それがいい」と賛成した。
藁にでもすがりたいってのはこのことをいうのかななんて子供ながらに思っていた。

それからすぐのことだった。
弟の病気についてわかるかもしれないと、東京に住んでいるおばから医者をすすめられた。
わざわざ東京まで行って、弟をその医者に診せたところ、地元の大学病院の先生を紹介された。
今まで地元のいろんな医者に見てもらったのになんでまた地元の医者に?って思ったけど、
紹介された先生に弟を診てもらったところ、不思議なくらいとんとん拍子に治療が進んでいった。
検査、入院、食事療法で、弟の皮膚の固くなった部分はすっかりきれいになったのだった。
家族みんなで喜んだ。もちろんおれも嬉しかった。

それ以来我が家では毎日、仏壇と神棚に炊きたての白飯をお供えしてお参りをしている。
おれはあのとき、藁にでもすがりたいなんて思ったことを恥じるようになった。
偶然といわれたらそうなのかもしれないけど、おれは今でも、
神仏が弟を助けてくれたんだと思っている。