【今夜】百物語2009本スレ【恐怖】

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429蟹々 ◆TMS6xPnAiUhZ
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子供の頃から何かと心霊体験に縁があるのだが、今でも忘れられない話をひとつ。

ある夏の蒸し暑い晩、安いパイプベッドの上で何度目かの寝返りをうつと、ちょうど仰向けになったところで体が動かなくなった。
金縛りだ。
割りと慣れっこだったので、いつものように「俺はあなたの相手はしません。去ってください」と心の中で唱えた。普段なら、それで金縛りは解けていたのだ。
しかし、この時は様子が違った。一向に体が動かないばかりか、ベッドがギシギシと揺れ始めた。最初は左右に小さく振動していたのが、次第に縦揺れをし出し、

ドン!!

と一度ベッドが床から浮き上がる程の大きな揺れをみせて静かになった。

430蟹々 ◆TMS6xPnAiUhZ :2009/08/08(土) 02:55:51 ID:ycVrPVCvO
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だが、金縛りはそのままだ…と思うと首から上だけが動く。揺れについては地震だったのかもしれないと、部屋をぐるりと見回してみた。常夜灯の薄ぼんやりとした視界の下だが、物が倒れたり動いた形跡はなさそうだ。
「俺は相手をしないから出ていけ!」と、今度は少し強い調子で声に出して言った。
その途端、頭を強い力で掴まれ首をベッドとは反対側の窓の方へ向かされた。

すると、表の街灯に青白く照らされた畳半分の大きさのすりガラス一面に、男の横顔がシルエットで黒く張りついていて、ゆっくりとこちらを向いた。
影絵のようにぽっかりと開いた口が、何か言葉を紡いだように見えたが、何を言いたかったのかはわからない。

俺の部屋には時々、こういうお客がやってくる。


【完】