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zon ◆Q5K1TGcrWY :
以前勤めていた病院の話です。
その日は救急当番で、救急車からの連絡で、うちの病院で対応できる患者さんは受け入れる日なので忙しい夜でした。
夜中、交通事故の男性が運ばれてきました。腹部に出血があることがわかり緊急手術になりました。外来から直接手術室に行き、病棟が迎えに行くことに。
同乗していた妻は別の、大学病院に運ばれたと。
手術が終わって、手術室まで迎えにいくと、
先生たちが3人、床に座り込んでいました。立っていたのは、非常勤で来ているS先生だけでした。
患者さんを病棟に連れて行く準備をしていたので何も声がかけられませんでした。
病棟に帰るときに、
「先生方、どうしたんですか。」と声をかけても疲れたように首を振るだけでした。
その時、まだ麻酔が抜けきらない患者さんが腕を上げて天井を指をさして唸りだしました。
S先生が駆け寄り、「大丈夫、もういないよ」と声をかけていました。
病棟に帰り、患者さんの状態も落ち着いて、記録をしていた時にS先生が病棟に来て患者さんの様子を見ていました。
「先生、何かあったのですか?」と聞くと、
S先生は、「ああ、連れて行かれそうだったから、第一刃目を俺に切らせてもらっただけだよ。なんかみんな疲れちゃったみたいだね」と応え、病棟を後にしました。
患者さんは回復して退院しましたが、、。
あとから聞いた話。
車を運転している途中で、急に隣にいた奥さんにおなかを包丁で刺されて事故を起こしたとのことでした。
その後、奥さんも回復したそうです。
(完)