【今夜】百物語2009本スレ【恐怖】

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323杏仁湯豆腐 ◆nnT9NOPZ4w
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「誰の手?」

高校入学したその月、母が交通事故で亡くなった
その日は高校で警察の人から交通安全についてお話を聞く日だった
朝、俺は母にいってきますとなぜか言わなかった。
遅刻しそうで急いでたのもあるが、家を出てから少し違和感があった
家を出る瞬間母もそんな慌てて行くもんじゃないと言ったよくある言葉もどこか引っかかった
そして警察が高校に着き、全校生徒が体育館に集まった時、担任が俺を呼んだ
「おじいちゃん来てるから、早く行って。お母さん事故にあったんだって」
普通なら驚く所かも知れないが、最近、俺の乗ってる車が衝突事故があり、全員無傷だった
そのせいか(また事故か。大丈夫かな?骨折とかしてないといいけど)
と、それくらいしか思ってなかった
俺がじいちゃんの車に乗った時、じいちゃんが
「死んだ」
一言、ただそう言った。じいちゃんは前の事故の時も同じことをいっていた
事故=絶対死んでると考えるくらい大げさな人だ
俺はじいちゃんのいつもの大げさだと思っていた。そう思うのが自然なくらいいつも大げさなのだ

病院に着くと姉も兄も、父も様子がおかしかった
この時初めて頭が真っ白になった
誰かが泣いてる訳でもない、ただ父の顔は今までみたことのない顔だった
この日、母は自転車に乗ってるとき、信号を無視した車と事故にあったらしい

病院に着いてもだが俺は泣かなかった
ドラマや小説だと家族が亡くなると泣き叫び崩れ落ちるものだろう
でも実際、体験してみると不思議と涙は出なかった
その日の夜、自分の部屋でおにぎりを食べようとしたら、いきなり涙が止まらなく溢れた
死を認めなくなかった、口をあけようとした瞬間、強張っていた表情を崩した瞬間、何かが切れた
この時、初めて母がこの世にもういないと絶望した時だった
324杏仁湯豆腐 ◆nnT9NOPZ4w :2009/08/08(土) 00:45:03 ID:9Kr5KgiS0
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ここまでだとただの家族を亡くした一人の男の話
こんな長いのは母の存在は、知り合いにも家族にも好かれているすばらしい母だったからだ
だから、実話なだけにこの話には納得がいかない部分があった



あんなに優しかった母がいない生活は寂しかった
ある日、姉と買い物から帰って家を開けようとしたら手が横から伸びてきた
姉が開けようとしたのかと思い、後ろを振り返り姉に
「いま開けようとした?鍵まだ開けてないよ」
と言うと姉は
「え?いや・・・開けようとしてないよ?」
と、俺は寒気がしたが姉がすぐに
「もしかしてお母さんじゃない?いつも買い物お母さんだし開けてくれようとしたんだよ」
そう言い、俺もその言葉を聞き(あぁ、いつも傍にいてくれるのかな)と思った
その前の日などトイレに入ろうとしたら黒い影が見えたりと錯覚かも知れないが不思議なことはあった。
俺の家は、俺だけだが以前にも黒い影が見えたという現象があった
心霊写真のようなものも取れたし、その頃はそれが面白い年頃だったので気にしなかった
でも今は母かも知れないと思えるようになったせいか昔のことは忘れていた
逆にいつも見てくれてる、いてくれると思い嬉しかったかもしれない


それから数日後、家の猫が数匹事故死した
数ヵ月後、兄が亡くなった
そしてその年、今は完治したが父が重い病気になった
家族が、その一年で不幸に起きすぎた

今はもう黒い影は見なくなった
よくよく考えると母が亡くなる以前に影だけは見ていたのだ
それが母ということはまずあり得ない
今でも思い出す。あの手は誰の手だったんだろう