【今夜】百物語2009本スレ【恐怖】

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275石原 ◆dqzTAWg8r6
霊を抱く男 1/5


まだオレが幼稚園生だった頃の話。

内容が内容だけに、どこから話していいものやらわからないんだが、
よく子供には、大人には見えないものが見えるっていうだろ。
妖精とか、小さなおっさんとか。
オレもそんなヘンな子供だった。
ようするに、幽霊が見えてたんだな。

恐怖心はなかったよ。
ってのは、オレの家は母子家庭でさ。
小さい頃から、母親が仕事に出ていたから、家では一人ぼっちだったんだ。
寂しくはなかったよ。家政婦さんが来ることもあったけど、ほとんどは友だちと
夕暮れまで遊んでたから。
何より、家には女の幽霊が住みついてたんだ。
テレビの前で、じっと体育座りしている青白い人で、いっさい何もしゃべらない。
オレはそれを母親変わりにしていたんだと思う。
だから、恐怖心というよりは、保母さんって感じでしか見ていなかった。
こっちから何か話しかけると、それに反応して振り向いてくれるのがうれしかった。

そんなある日、家にセールスマンがやってきた。
マンションのドアを叩いて、「すいませーん」と声をかけてくる。
実はオレ、幽霊なんかより、セールスマンの方が怖かったんだよ。

母親に、「誰が来てもぜったいにドアを開けるな」って言われててさ。
それを徹底させるためか、母はオレに「トントンおじさん」っていう人の
創作話を聞かせていたんだ。