映画「レクイエム・フォー・ドリーム」
後味の悪い映画の王道なんで超既出かもしれないけど・・・(エログロ注意)
老女サラは夫に先立たれ、ブルックリンの古いアパートで一人暮らし。
友人がいない訳ではないが、部屋に篭り一日中TVを見ながら、
冷蔵庫を開けては甘いものを口にしている。
サラには一人息子のハリーがいるが、金がなくなると家に帰ってきて、
サラの大切なTVを無理やり持ち出し質屋に持ち込む。
その金で少量のヘロインを買っては退屈な現実から逃避している。
サラはその度に質屋に出向いてTVを買い戻すことを繰り返している。
質屋の主人からは警察に相談するように諭されるが、
夫を亡くした今息子をまで失うことを恐れて忠告を受け入れない。
サラが楽しみにしているのは視聴者参加型ダイエット番組。
ステージ上のダイエット成功者が司会者と観客から祝福される番組だ。
ある日その番組から参加依頼の電話が掛かってくる。
サラは喜び、お気に入りの赤いドレスを着て出場しようと決心する。
夫と一緒にハリーの高校の卒業式に出席した思い出のドレスだった。
袖を通してみるとファスナーが上がらない。食事療法を始めるものの
半日ももたず、友人の勧めで病院で処方されたダイエットピルを飲み始める。
その頃ハリーは友人タイロンと格安のヘロインを売りさばくことを思いつく。
ハリーは恋人のマリオンがデザインした服を売る店を開くことを夢見ている。
マリオンは美人で裕福な家に育ったが、両親の愛に飢え自分に自信が持てない。
ハリーと出会ったことで初めて人の愛情を感じ、自分も変われると思い始めていた。
ハリーはそんなマリオンの夢を叶えようとしているのだ。
タイロンも亡き母親との「将来えらい人になる」という約束を果たすために
ヘロインは商売道具と割り切り、マフィアに近づき信頼をされるようになる。
商売は面白いほど成功し、3人は明るい未来を確信するようになる。
サラのダイエットは見る見る効果をあげ、体力が漲り気持ちも明るくなる。
友人たちの輪にも率先して入っていくようになった。
ハリーは今までの償いとして新しいTVを贈ろうとサラを訪ねる。
明るく饒舌になったサラを見てハリーは嬉しく思うが、同時に違和感を感じる。
それは薬物中毒の症状だった。ダイエットピルは覚醒剤だったのだ。
ハリーはすぐにピルの服用を辞めさせようとするが、
赤いドレスを着て大好きなTV番組に出演するのが唯一の生き甲斐だと
懇願する母親を見て強く言えずに家を後にする。
ハリーはマリオンと共に辛い現実から逃避するためクスリに依存してゆく。
そんな矢先にタイロンが取引中に警察に逮捕された。
今までの稼ぎは保釈金に消え、更にヘロインの入手ルートが絶たれた。
イタリア系マフィアによって相場が一気に跳ね上がったのだ。
クスリが切れたことでハリーとマリオンの関係もギクシャクし始める。
ハリーはマリオンにカウンセラーに金を無心するように持ちかける。
実はマリオンは両親にカウンセリングに通っていると嘘をついている。
その口止め料としてカウンセラーはマリオンを頻繁に食事に誘っていた。
マリオンはカウンセラーを毛嫌いしていたのだが、
ハリーの提案は暗にカウンセラーと関係を持てということだった。
マリオンは仕方なく従ったが、2人の間には大きな壁が出来てしまった。
一方、サラはピルの効果が弱くなっていると感じ服用量を増やしていた。
するとTVの中に赤いドレスを着た誇らしげな自分の姿が映し出された。
それを無邪気に喜ぶサラ。TVと現実の区別が付かなくなっていたのだ。
幻覚は徐々に悪夢に変わり、冷蔵庫が牙を剥いて襲い掛かり、
TVの中の人々が部屋の中で乱痴気騒ぎをしている。
みんながみすぼらしい老女サラをあざ笑っている。
半狂乱になったサラは部屋を飛び出した。
ハリーとタイロンはマリオンが工面した金を持って取引に行くが失敗に終わる。
残された手段はNYから遠く離れたフロリダの元締めに会うしかない。
クスリの禁断症状に苦しむマリオンはハリーを口汚く罵る。
ハリーは1件の電話番号を書きなぐると、タイロンとフロリダへと発った。
番号はビッグ・ティムという売人のもので彼は女の体でしか取引しない。
マリオンはティムとの取引に応じ、事が済むと次のもっと大きな取引に誘われる。
ティムから渡されたクスリはわずかで、マリオンは次の取引場所へと向かった。
そこは金持ちが集まるセックスを見世物にするショーの会場だった。
フロリダへの車中、タイロンはハリーの異変に気付く。
ハリーの腕は注射跡が壊死して真っ黒になっていた。
慌てて病院へ駆け込むが警察へ通報されてしまう。
タイロンはそのまま刑務所へ収監、ハリーは手術室へと運ばれた。
NYの街を彷徨ったサラはTV局へと辿り着いた。
ダイエット番組へ出演したいと必死に訴えるが、哀れみの目を向けられるだけだった。
そもそも出演依頼自体が誰かの心無い悪戯だったのだ。
まともな受け答えができないサラは精神科へと搬送された。
病院のベッドで目覚めたハリーは、片腕を切断されていた。
看護婦は彼女が迎えにくると慰めるが、ハリーはマリオンが
もう自分の元に戻らないことを悟って泣き崩れた。
自宅のソファに横たわったマリオンは、クスリの包みを抱きしめていた。
体はボロボロだったが、顔には満足げな微笑みを浮かべていた。
刑務所のベッドには強制労働で疲れ果てたタイロンがいた。
硬く目を閉じ、亡くなった母親のことを思い出していた。
精神科のサラは摂食障害と薬物中毒に加え、拷問のようなショック療法によって
廃人になっていた。見舞いに来た友人たちの顔もわからない。
ベッドに横たわるサラの目にはTVの世界しか映っていなかった。
赤いドレスを着てステージ登場するサラ。司会者と観客からは喝采が上がる。
正装したハリーも登場する。息子をを抱きしめ喜びの涙を流すサラ。
4人は、まるで胎児のように背中を丸め眠りにつくのだった。
文才ないんで分かりづらいかもしれんが、薬物依存の恐怖というより
親や恋人への愛情表現が下手で逆に相手を苦しめてしまう悲劇に感じた。