後味の悪い話 その102

このエントリーをはてなブックマークに追加
6921/2
「杜子春伝」の原作は、芥川龍之介の「杜子春」の方を先に知ってると
登場人物が皆なんだかなー…って感じの利己的で、締めのオチもなくモヤモヤが残る。
まぁ、説教臭い起承転結になってなくて、伝奇物らしいっちゃらしいけど。

------
  裕福だった若者が遊び呆けて財産をつぶし、仙人と出会って財を授かり
また散財して落ちぶれるのを三度ほど繰り返すところまではほぼ同じ。
  仙人の弟子になり、何があっても動じず一言も声を発しないよう言い置かれて
数々の責苦を受ける修行を耐え抜いていくが、最後に声を発してしまい仙人になれない
という大筋のストーリーも同様。

●芥川龍之介版
・貧乏になったとたん手の平を返す人間の薄情さを悟って絶望し、厭世的になる杜子春。
・さまざまな責苦や誘惑をはねのけて沈黙を守り通す杜子春だったが、
 死んだ両親が馬の姿に変えられて眼前で地獄の鬼に激しく鞭打たれ
 それでも「大丈夫、お前のためなら私たちはどうなっても」と言うのを聞いて
 思わず「お母さん!」と叫んでしまう。
・「最後まで人の情を捨てられず仙人になれなかったが、それでかえって良かった」
 と、迷いの晴れたすがすがしい顔で語る杜子春。
 仙人も、「もし痛めつけられる親を知らん顔で見過ごしていたら、わしがお前を殺していた」
 と杜子春の選択を祝福し、家と畑を与えて人里へ帰す。
6932/2:2009/05/03(日) 01:56:18 ID:LyD4OFQX0
●原作
・杜子春は、金策の用立てに応じてくれない親戚に怒って、文句を仙人にまくし立てる。
・仙人に弟子入りする前の身辺整理で、恩ある人へは報いるが、仇ある相手へは復讐して来る。
・仙人は、仙薬作りの材料として“何事にも動じない冷徹な人間の心”を必要としており、
 そのために杜子春に黙行を課す。仙人に恩がある杜子春は、それに従う。
・途中の試練では、「お願いだから答えて」と命乞いする妻を杜子春が無視して
 妻が魔物に一寸刻みにメッタ斬りにされたり煮られたりと、描写が結構えげつないグロ。
・杜子春は地獄に堕とされた後 女に転生するが、
 一言も喋らない杜子春を見て、唖の子が生まれたと両親は悲しむ。
 杜子春が喋らないのをいいことに、親戚の男らが慰み者にしていく。
・年頃になって美しさを見染めたエリートに求婚され、両親は「うちの娘は唖だから…」と辞退したが、
 「ペチャクチャお喋りな女より、よっぽどマシです」といって嫁にする。
 なのに数年後、妻の気を引こうとしてあれこれ話しかけたのに反応しないことへ腹を立てた夫は、
 「夫婦がこんなんで、子供がいたって意味あるか!」と今までの鬱憤を爆発させ
 2歳児の息子の足をひっ掴んで頭を石に打ちつけ、脳漿を飛び散らす。杜子春は「ああッ!」と叫ぶ。
・仙薬作りは失敗し、釜の火が天井へ焦げ上がるのを消しながら
 「このアホ! 人選を誤ってワシまでこのザマじゃ! お前は適性がない。もう帰れ。
 まぁ、人間界でせいぜい頑張れや」と杜子春をほっぽり出す仙人。
・杜子春は約束を破って声を出した我が身を恥じ後悔するが、後の祭り。