>>186 「夕刻、練習所(現アステールプラザ)の焼け跡を後にして帰路に着いた。隣接の県庁舎の跡地を通るとき、
がれきの中に大きな金庫が一個どっしりと腰を据えていた。何もかも焼け崩れている中に、
それだけが厳然とその存在を誇示しているように見えた。『お金はどうなっているのかな』と誰かが
扉のとってに手をかけて引いた。意外にも施錠がなく、ギギーと重い音をたてて開いたが、
皆あっと声を立てて慄然とした。金庫いっぱいに膨れあがった軍装の陸軍兵士がいた。
身の安全を求めて大金庫の中に隠れ、蒸されて死亡したものであろう」
大本忠夫(当時25歳) 呉署 吉浦派出所 巡査
「原爆回想録 四十年目の検証」 広島県警友会 P273-274