じわじわ来る怖い話21じわ目

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481本当にあった怖い名無し
「自作都市伝説を流行らせようぜ」
ある日馬鹿な友人がそんな馬鹿げたことを言い出した。
「ネタはもうあるんだよ、実は半分実体験だけどさ」
彼はそう前置きして、その「置き忘れたルージュ」と題した都市伝説を語った。

要約すると、
真っ赤な口紅が印象的だった恋人と別れ話をした。
一筋涙を流すと、分かったわ、と言って彼女は彼の部屋から出て行った。
彼女のお気に入りだった白いマグカップに、赤い口紅が付いていた。
彼女との思い出を洗い去るように、彼はそのカップを丁寧に洗った。
彼女の訃報を知ったのは翌日の夕刊だった。
電車に飛び込んでの轢死。明らかな自殺。
自分の言葉を悔いながらも、彼はもはやどうすることも出来ずに泣いた。
翌日、一睡も出来ず憔悴した彼は、コーヒーを飲もうと食器棚を開けた。
彼女のお気に入りだったカップに、赤い口紅が、
今まさに彼女が口を付けたかの様に、残っていた…。

「ふーん、お前にしては気の利いた作り話だな」
「半分実話ってどの部分だよ?」
私たちは話を聞き終わってから、口々に尋ねた。

「うん、彼女が死んだってのは嘘なんだ。
俺から別れ話をしたってのも嘘。別れたくねえし。
彼女は赤い口紅もしてないし、白いマグカップなんて俺んちにはない」
「おいおい…」
「ただ、真っ赤な口紅だけがあるんだ。
拭いても拭いても拭いても、真っ赤な真っ赤な口紅が消えないんだ」

彼は引きつった笑みを浮かべて言った。
「血のような真っ赤な真っ赤なルージュがさ……」