じわじわ来る怖い話21じわ目

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416本当にあった怖い名無し
「早く寝ないと妖怪が来るぞ〜」
父は幼い頃の私によくそう言った。
「どんな妖怪?」
好奇心旺盛だった私は、その度に父にそう質問した。
「んー、腕が四本、足も四本、頭が二つで身体はVの字に折り曲がってる」
「ブイってなあに?」
「こんな形だよ」
「名前はー?」
「えーと…、妖怪…、妖怪フタリガサネ…かな。うん。
怖いぞー。その二つの顔は両方真っ赤で、二つの口から吐き出す息は荒々しい。
時々あーとかおーとか叫んで、ドロドロした汚い水を吐き出すんだ。
そしてその姿を見た者は、見たことを誰にも言えない呪いを受けてしまう。
怖いぞー。怖いものを見たのに誰にも言えないんだぞー」

その夜、妖怪フタリガサネを想像して目が冴えきっていた私は、
なかなか寝付けずに布団の中で何度も寝返りを打った。
そして聞いてしまった。
「あー」という、うめく様な声を。
妖怪フタリガサネだ!
恐怖と興奮の中、私はそっと布団を抜け出し声のする方へ忍足で進んだ。

そして、確かに、妖怪フタリガサネを見た。
私は父の言う通りの呪いを受け、好奇心の怖さを学び、
誰にも打ち明けることなく恐怖を抱えたまま日々を過ごすこととなった。

今、父親となった私は、あの頃の父と同じ台詞を息子に言って聞かせている。
妻が台所仕事を終えたようだ、そろそろ話を始めよう。