720 名前:おさかなくわえた名無しさん[sage] 投稿日:2007/12/20(木) 14:53:13 ID:PaMInY1r
片道9キロの通学路(山あり谷あり、途中3km程は獣道)を小中9年間往復してた私。
低学年の頃は学校に着くまで2時間以上掛かってたが、中学にあがる頃には片道1時間弱で行き帰り出来るようになった。
最後の2年間は一緒に通う上級生がいなくなってしまい、女子1人での通学は危険ということで、飼い犬の佐助(大型の雑種犬)と一緒の通学が認められた。
佐助は学校に着くと職員室の南側につながれて、授業が終わるの静かに待つ賢い犬だった。
雨の日や冬の寒い日には職員室に入れてもらい、ボロ毛布の上で丸まって寝ていた。
授業が終わって佐助のところに行くと千切れんばかりに尻尾を振って私にしな垂れ掛かり、嫌というほど顔を舐めてくる。
佐助は行きも帰りも道先案内人のように、私の5メートルほど先を着かず離れず歩いた。
時折振り返り「ちゃんと付いて来てるかい?」と言いたげな目で私を見て、また黙々と歩く。
私が小学4年のとき家に来た秋田犬とシェパードの雑種。
佐助は、中学生になっても小柄で泣き虫のひ弱な私を「俺が守ってやらなきゃあかんべな」と思っていたに違いない。
高校進学で山奥の実家を離れ、県庁所在地で下宿生活。夏休みと正月に帰ると大喜びで迎えてくれた。
休みを終え下宿へ戻ると、私を探してキュンキュン泣いて4,5日は餌を食べなかったらしい。
その後、大学へ進学し都会へ就職。実家へ帰るのは正月だけになってしまったが、1年逢わなくても私を忘れず熱烈に歓迎してくれた佐助。
職場で知り合った人を連れ実家に結婚の挨拶に行ったのが私26の5月。
日がな1日寝ていることの多くなった15歳の佐助は老いていたが、私を見つけると起き上がり甘えた声を出して体を預けてきた。
後に夫となる彼を「お姉ちゃんの旦那さんになる人だよ。よろしくね、佐助」と紹介すると彼の顔を見て一声「ワン」と吠えた。
それから3日後、佐助が死んだと電話があった。佐助は実家の柿の木の下に眠っている。