http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%82%AA%E3%83%B3%E4%BF%AE%E9%81%93%E4%BC%9A シオン修道会
ロンドンに戻ったリンカーンは、BBCに勤める友人たちにこの話をした。彼らはこれに興味を抱
き、うち2人がレンヌ=ル=シャトーに行った。
ジェラール・ド・セドは、彼らのつくる予定の番組の監修を引き受けており、第二の謎の暗号を
解く鍵を提供してくれた。それは信じられないほど複雑な暗号で、暗号専門家が「ヴィジュネ
ール法」と呼ぶ手法が使われている。まず、アルファベットを26回書く。最初はAから始め、次
にB、次はC、、、、と言う具合だ。その後、キーワードである(MORT EPEE)を暗号文の
上におき、ヴィジュネールの一覧表を使って文字を転換していく。
「貴族マリ・ド・ブランジュフォール」テキスト(ソニエールが抹殺しようとしたもの)は、また別のキーワード
で解く。最後にチェス盤の上に文字をおき、ナイトの動きにしたがって読んでいく。こうして
現れた文字列は――「誘惑のない女牧童、ブッサンとテニエが鍵を持つ、平和681、十字架と
この神の馬のそばで、私は正午にこの警護の悪魔に達する、青い林檎」。
この暗号文こそ、恐らくソニエールに莫大な富をもたらしたものである。だが、そのからくりは?
その後のTV番組「司祭、画家、悪魔」の中で、リンカーンは一つの仮説を提唱した。元来の暗
号文の中に、他の文字に比べて小さく書かれているものがあるのに彼は気づいていた。こ
れを書き出すと(REX mundi(世界の王))という単語ができたのだ。そこで彼は、この
物語にはカタリ派が何らかの役割を果たしているのではないかと考えた。カタリはというのは、
キリスト教会によって血みどろの弾圧を受けた中世の異端宗派だ。
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,:2008/06/21(土) 17:57:47 ID:w2X7nadZ0
626 :
,:2008/06/21(土) 18:00:42 ID:w2X7nadZ0
恐らく最も興味をそそるヒントは、番組の放送直後にもたらされたものだ。英国国教会の
元教区主管者代理がリンカーンに手紙をよこしたのである。それによれば、「財宝」とは黄金や
宝石のことではない。イエスが西暦33年に磔刑に書せられてはおらず、西暦45年まで生き
てきたことを示す文書だと言うのだ。
リンカーンは彼にいった。元牧師は明らかに余計なことを洩らしてしまったことを後悔していた。
だが最終的に、この情報の出所は国教会の学者で聖堂参事会員アルフレッド・リリーであることを
認めた。そして――これを聞いたとき、リンカーンの心臓は踊っただろう――リリーはサン・シュルピス
を根城とする学者たちと密接な関係を持っており、ソニエールをドビュッシーに引き合わせたエミュール・オフェの知人でもあった。
このことは魅惑的な可能性を引き起こす。もしもドビュッシーが実際に(シオンの僧院)の総長で
あったなら、彼もまたイエスは十字架でしんではいないという考えを持っていたのだろうか?
そしてそれこそが、ソニエールの最後の最後の告白を聞いた司祭を震え上がらせた秘密だったの
だろうか?
確かに、その可能性は高まる一方だ。
前述のように、ソニエールはパリを去る際、ルーブルでいくつかの複製画を買ったが、その1枚が「ア
ルカディアの牧童」だった。そこでは3人の牧童と1人の女牧童が墓の前に立ち、その墓には
(Et in arcadia Ego)の銘がある。
最初の番組をとっていたとき、リンカーンがド・セドから聞かされた話によれば、この絵に出て
くる墓の実物がレンヌ=ル=シャトーからそう遠くないアルクにあったという。その墓にはラテン語の銘こ
そなかったが、それ以外の点では絵の中の墓とまったく同一であり、絵の中で牧童が足を
乗せている石まであったという。ニコラ・ブッサン(1594-1665)は、当時最も有名な画家の一人だ
った。ノルマンディーの生まれだが、彼が名声を博し、生涯のほとんどをすごしたのはローマだった。
そして短期間だがルイ13世とリシュリューに仕えたこともあった。
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,:2008/06/21(土) 18:03:34 ID:w2X7nadZ0
ブッサンの「アルカディアの牧童」は、大変な骨折りの末にルイ14世の主有するところとなる。だ
がようやくその所有者となった後、彼はこれを自分の部屋に封印してしまった。うわさで
は、王はこれを公開すれば何らかの秘密が明らかになる、といって恐れていたと言う。
一見したところ、この絵自体は何の手がかりもなく、なぜ王はあれほど熱心にそれを求め
たのか、そして入手後はなぜ世間の目から隠してしまったのか、まったく不明だ。
判明している事実としては、1656年、王の財務長官であるニコラ・フーケが、弟のルイをローマに送っ
てブッサンに会わせている。そしてルイは兄のニコラに次のように書き送ったのだ。
「彼と私はある計画を持ちました。それについては、もうすこししたらすべてお知らせで
きます。ブッサン氏を通じてあなたにもたらされる利点は、王といえども彼から手に入れるこ
とは極めて困難でしょう。そして彼によれば、この世の何人といえども、今後数世紀の間
は手に入れることはできないそうです。しかもそれはさほどの資金もなしに入手でき、ま
たこれを金に換えることもできます。これを調べるのはきわめて難しく、ゆえに今の時代
に存在する何者も、これ以上の、あるいはこれに匹敵する富ををもたらすことはありません、、、。」
これは一体何の話をしているのだろうか? 「これ以上の、、、富をもたらすことはありま
せん」というのは、何らかの財宝を思わせる――だが、彼はまた「金に換えることもでき
る」とも述べている。ということは金そのものではないらしい。
確かなことは、5歳で王座に就いた王が、この才気煥発で野心的な財務長官に対する嫌悪を
次第に募らせていったということだ。
フーケはとてつもない大金持ちとなり、コルベールによれば、その財産は彼が毎日帳簿をごまかし
続けて作ったものだという。1661年、ルイはフーケを逮捕し投獄した(ある歴史家によれば、彼
こそあの「鉄火面」だという。だが彼は、この謎の囚人の23年前に死んでいる)。
フーケは、謀反の意図を持って弟をプッサンのところに使わしたのだろうか?
おそらくそうなのだろう。そしてこの謀反には、またしても(シオン僧院)の影が揺曳しているのだ。