弓月城太郎の『神秘体験』(オカルト版)

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1たま ◆K2uHgYNZss
弓月城太郎の『神秘体験』ってどうよ。

2本当にあった怖い名無し:2007/03/20(火) 05:30:31 ID:uH9idetu0
しかたなく2ゲット
3たま ◆K2uHgYNZss :2007/03/20(火) 05:33:32 ID:zzDCqkGp0
――その昔、岡山県と広島県の県境に位置するところ、瀬戸内海に御神島{みかみじま}と云う島があった。
島の名の由来には複雑な起縁があって、島で不吉な事件が起きる度に、島民たちはその忌まわしい記憶を拭い去ろうとして、島の呼び名を変えた。
それも幾度となく呼び名が変わっており、最も古くには三神島{みかみじま}と呼ばれていた。
三上が三神に転じ、それが御神となり、最後に御の字が取れて神と云う名だけが残った。
現在、神島{かみしま}と呼ばれている場所が其処である。
天禄元年、世は平安中期、源満仲執政の時代、ひとりの陰陽師がこの島に渡ってきて、天皇の勅旨により此処に社を創祀した。
4たま ◆K2uHgYNZss :2007/03/20(火) 06:32:12 ID:zzDCqkGp0
 一方、京の都ではその頃、陰陽師として名高い安倍晴明が宮中の祭祀で己が才気を思うが儘{まま}に揮っていた。
 安倍清憲は、その遠縁に当たる人物であり、清憲の祖父清行は彼の有名な小野小町と和歌を遣り取りする程の文才があったと伝えられている。
清憲もまたその血を引いており、殊の外、占術と文才に秀で幼少の頃より神童の誉れ高き俊英であった。
 清憲が宮中を出奔し、三上島に渡り住んだのには曰{いわ}く一廉{ひとかど}の理由{わけ}があった。
占事に長{た}け、時を知り、天の声を聴く、とまで謳{うた}われた清憲の炯眼{けいがん}も浮世の喧騒に乱されぬ静かな生活あっての事。
権力闘争に明け暮れる官人たちの毒気に当てられてはその眼{まなこ}も曇ると、自ら進んで都落ちを希望した。
また、余りに歯に衣着せぬ物言い。その竹を割ったような性格は凡{およ}そ宮仕えには不向きであった。
話が決まるや否や、まるで火の点いた牛車のような勢いで清憲は宮中を出奔した。
5たま ◆K2uHgYNZss :2007/03/20(火) 06:33:51 ID:zzDCqkGp0
 そのような経緯で辺境の地、三上島に赴任してきた安倍清憲は、朝{あした}には深山幽谷にて霊睠{れいげん}を研ぎ、
谷川で身を清め、昼間は護摩堂に入りて加持祈祷を行ない、夕{ゆうべ}には庵にて書を認{したた}めた。
 そして苦節三年目にして大悟を啓{ひら}き、独自の陰陽道を編み出した。
それは皇天上帝を天とし、天・地・人の三極大君を以ってひとつの神と奉じる本家とは異なる陰陽道であった。
 幾ら歯に衣着せぬと云っても清憲も馬鹿ではない。
そのようなものを書状に認めて本家に書き送ったとて破門の憂き目に逢うが必定と分を弁{わきま}えていた。
 それでもどうにか我を通したくて、清憲はこの島を三上島から三神島へと改名し、我が陰陽道を以って封じねば、国家三分の危機を招く恐れあり、と天皇を脅迫したのである。
この計略は見事に清憲の思う壺となった。
6たま ◆K2uHgYNZss :2007/03/20(火) 06:36:21 ID:zzDCqkGp0
 請願叶って知己を得、すっかり島の太守となった清憲にも悩み事はあった。
――神算鬼謀、容貌怪異。清憲はその姿形の醜さ故、顔を他人に見られることを極端に嫌い、
参拝者の相談事に耳を傾けるときも、いつも御簾の向こうからか、天狗の面を付けてしか逢おうとしなかった。
それ故、いつしか島民の間では清憲のことを島に棲む天狗と噂するようになった。
 その清憲が最初に見初{みそ}めた娘が、さくらであった。
さくらは年の頃は十五、六。見目麗しい御酒造りの娘で、ある夏の夕暮れ、親の使いで神社に御神酒を奉納しに参ったのが事の馴れ初{そ}めであった。
清憲二十三歳、さくらが平民の娘であると承知の上の恋であった。
 清憲はひと目見てさくらを気に入り、金子を与えては、さくらに幾度も酒を持ってくるように所望した。
さくらの親も商売だからと云って、最初のうちはさくらに酒を持たせて神社に届けに行かせていた。
7たま ◆K2uHgYNZss :2007/03/20(火) 06:48:39 ID:zzDCqkGp0
 そのうち、さくらが清憲の気持ちに気付き、酒を届けに行くのを渋るようになると、
さくらの親も嫁入り前の大事な娘の身に何かあっては大変と、他の使用人を使いに出すようになった。
 これに憤慨した清憲は、身分や歳の差も弁{わきま}えずさくらに宛てて熱心な恋文を認{したた}めた。
 毎日のように届く清憲からの恋文や恋の歌にもさくらは一向に心を動かさず、男勝りにも、
「天狗の嫁になど誰が行くものですか」とのたまった。
そうこうするうちに恋文はやがて脅迫に変わり、果ては呪詛と成り果てた。
8たま ◆K2uHgYNZss :2007/03/20(火) 06:50:15 ID:zzDCqkGp0
 その頃村では奇妙な噂が飛び交うようになっていた。
頭に蝋燭{ろうそく}を燈した五徳を戴き、胸に鏡を吊るし、朱染めの衣を身に纏った鬼が、夜な夜な神社の境内にある神木に藁で編んだ人形{ひとがた}を釘で打ち付けていると云うのがその噂であった。
また神社のある三神島の方角から、御酒造りの屋敷に鬼火が飛んできているのを目撃したと云う者まで現われた。
 さくらは毎晩恐ろしい悪夢に苛まれ、目は落ち窪み、体は衰弱し、やがて病に罹って床に就き、程なくして没した。
 さくらの葬儀が済んでまだ間が無い頃、さくらの墓が何者かによって荒らされ、亡骸が盗まれると云う事件が起きた。
 清憲は屍と成り果てたさくらの体を社に持ち帰り、温かい湯に浸して抱き、はじめて女に対する思いを遂げた。
そして寝所に寝かせたさくらの体が、日が経つにつれ赤黒く腫れ上がり、腐乱してゆく様を眺めるうちに、ようやくにしてさくらへの恋慕の情を消し去ることができた。
9たま ◆K2uHgYNZss :2007/03/20(火) 06:58:44 ID:zzDCqkGp0
 ――さて、年を経ること七年、清憲生涯二度目の恋も、やはり狂った恋と相なった。
 隣島より参拝の礼に訪れた巫女、鈴姫が此度の相手であった。
 さて、神主の娘であった鈴姫には、もうひとり義理の兄がいた。
藤原輝正、氏族である名門の出であるが、養子であるために鈴姫と血の繋がりはない。
輝正は鈴姫と年の頃同じくして仲睦まじく、ふたりが成人する頃には、白い玉砂利を敷き詰めた境内の立派な社に住む美しい兄妹の噂は、遠く京の都でも評判になり歌に詠まれるほどであった。

  白砂{しらさご}の 吉備{きび}の社に 行く雲の
   行きや別れむ 人ぞ恋しき
10たま ◆K2uHgYNZss :2007/03/20(火) 07:00:32 ID:zzDCqkGp0
 畢竟{ひっきょう}、清憲の恋は今度も叶わなかった。
さくらのとき同様、やはり最後には鈴姫を憎むまでに相なったが、今度はさくらのときのように呪殺は思うように事が運ばなかった。
 清憲が鈴姫に向けて放った式神は、輝正の「身固めの術」によって、ことごとく式神返しに逢った。
 しからばと清憲自らが生霊となって鈴姫に取り憑き、鈴姫を呪殺せんと試みたが、生霊となった清憲も、巧妙に張り巡らされた輝正の結界を破ることはできなかった。
 秘術の限りを尽くしたふたりの陰陽師の戦いは、輝正の完全な勝利に終わった。
戦いに敗れ、霊力をすべて使い果たした清憲は乱心した。
11たま ◆K2uHgYNZss :2007/03/20(火) 07:03:17 ID:zzDCqkGp0
 ある嵐の夜、清憲は般若の面を付け、神棚に掲げてあった破邪の剣{つるぎ}を携えて隣島に渡り、鈴姫のいる社に押し入った。
そのとき清憲が手にしていた剣は、「悪しき者しか斬れぬが、ひと度鞘を払うと、それを手にしていた者は人を斬らずにはいられなくなる」と云う言い伝えの魔性の剣であった。
その剣の柄には魔力の込められた青玉の象嵌{ぞうがん}が施されていた。
 清憲は当たるを幸いにと、次々と神官たちを斬り殺していった。
清憲は奥の間にいた輝正と鈴姫をも斬殺しようとした。
しかし鈴姫にひと太刀浴びせたあと、身を挺して鈴姫を守ろうとした輝正を斬ることは叶わなかった。
そこで清憲は社に火をかけて、すべてを焼き払うことにした。
清憲は最期に、「七度生まれ変わってでも、必ずこの想い遂げてみせようぞ」と、大音声{だいおんじょう}で叫び、焼け崩れてゆく社の中で自らも自害して果てた。
輝正は既に虫の息であった鈴姫を、最後まで見棄てることなく、ふたりは共に火の海に呑み込まれていった。
 隣島で起きた神官皆殺しの事件は、その余りの凄惨さ故、当家の安倍氏はおろか、清憲を島主と戴いていた三神島の恥と目された。
家系図にあった清憲の名は墨で黒く塗り潰され、清憲が生涯にわたって書き溜めた奥義書は、清憲の家財道具一式と共に、身内の手によって浜で焚書に処せられた。
 天禄十八年、島の名が三神より御神へと変じたのも丁度この頃であった。
安倍清憲の起こした不祥事は時の権力者によって箝口令が敷かれ、禁を破りし者については、死一等を以って罰せられた。
島民たちは畏れ、黙して語らず、ついに安倍清憲の名は永久に歴史の闇に葬られたのであった。
12本当にあった怖い名無し:2007/03/20(火) 09:08:01 ID:xWQJmU8v0
貼り逃げしたようだな・・・
13本当にあった怖い名無し:2007/03/20(火) 13:07:20 ID:EaxcWIuO0
京極夏彦二世?
14本当にあった怖い名無し:2007/03/20(火) 18:58:41 ID:r5TRHWWz0
二世降臨まじ?
15本当にあった怖い名無し:2007/03/21(水) 12:28:56 ID:gMYIjldX0
昨日の奴はもう来ないんだろうか・・・
16本当にあった怖い名無し:2007/03/21(水) 20:42:21 ID:gMYIjldX0
弓月城太郎と言えば、相当な異端児だな。いい意味でも悪い意味でも異端児。
作品は少ないが、絶対に他の作家が真似できない作品を書くことで有名だな。
17本当にあった怖い名無し:2007/03/22(木) 10:57:26 ID:x0pq+vzG0
18本当にあった怖い名無し:2007/03/23(金) 14:20:27 ID:IG3hYOoy0
フィギュアスケート板にも作品が貼ってあった。
http://ex20.2ch.net/test/read.cgi/skate/1165698484/
19本当にあった怖い名無し:2007/03/23(金) 19:01:39 ID:8rI8aad30
>>16
いろいろと噂があるようだな。恐ろしい話も。
20本当にあった怖い名無し:2007/03/26(月) 18:37:56 ID:tfR92mFE0
何なん?その恐ろしい話て
21本当にあった怖い名無し:2007/03/26(月) 19:28:48 ID:VcNUKPktO
スレタイが女体の神秘に見えた・・・
病院行った方が良いな
22本当にあった怖い名無し:2007/03/27(火) 18:50:54 ID:3fPzvg670
弓月城太郎の『神秘体験』(アダルト版)もあるようだ。
http://blogs.yahoo.co.jp/yuzukijoutarou
23本当にあった怖い名無し:2007/03/28(水) 18:52:17 ID:A+INEq0X0
↑ちっきしょう!騙された!!
何がアダルト版だ!
違うじゃねえかよ!!
24本当にあった怖い名無し:2007/03/28(水) 20:57:34 ID:NoO1nKtD0
みんなあげちゃうの人か
25本当にあった怖い名無し:2007/03/29(木) 07:09:16 ID:+mDSq4460
>>24
そうれす。
ここはすぐ倉庫入りなもんで、打ち上げ花火みたいにぼんぼん上げんとね。
26本当にあった怖い名無し
>>19
で、その恐ろしい話て何なんよ?