死ぬ程洒落にならない怖い話をあつめてみない?160

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115携帯感染1
トゥルルルルルル…
トゥルルルルルル…

なかなか出ないな、槌田のヤツ何してるんだ…


二週間前。
石塚は電話を待っていた。
槌田からの電話、友人の槌田からの電話を待っていた。
携帯電話は電源が入ったまま、じっと石塚の顔を見上げている。
電話は石塚を待っていた。
ひたひたとそれは近づく、電波は忍び寄る。
トゥルルルルルル…
トゥルルルルルル…
電話は鳴り響く、石塚は電話を取る、電話は石塚に取られる。
「おい、遅いじゃ…!」
石塚は気づく、電話は知っている。
青白い画面に浮かび上がるのは「非通知」の文字。槌田ではない。
石塚は慌てて電話を切ろうと思う。ボタンを押そうと思う。
電話の相手は許さない。
電話の相手は語りかける。

「 暗い、暗い、暗い、暗い、暗い 」

石塚から血の気が引いた。
この電話は普通のものではないと気づいた。
石塚は電話を切った。
同時に石塚の手首が切れた。
石塚は痛みから叫んだ。
傷口は滴る血で叫んだ。
116携帯感染2 :2007/03/28(水) 01:53:58 ID:nchp3oJk0
一週間前。
石塚は電話を待っていた。
槌田からの電話を待っていた。
手首には包帯、滲むような痛みがまだ続いている。
トゥルルルルルル…
トゥルルルルルル…
電話が鳴った、石塚はそれを取った、ボタンを押してから気づいた。
また「非通知」の文字。
急いで切ろうとする、だが電話の相手は許さない。

「 痛い、痛い、痛い、痛い、痛い 」

石塚は電話を切った。
同時に石塚の足首が切れた。
石塚は痛みから叫んだ。
傷口は滴る血で叫んだ。
117携帯感染3 :2007/03/28(水) 01:54:59 ID:nchp3oJk0
三日前。
石塚は電話を待っていた。
槌田からの電話を待っていた。
両手両足には包帯。
ズキズキと耐えられない痛みが続いている。
傷口がただれ、模様のようなものが包帯からにじみ出ている。
時々、ふさがったはずの傷口が裂け、痛みが走る。
そのたびに石塚は叫ぶ、痛みで叫ぶ。
トゥルルルルルル…
トゥルルルルルル…
電話が鳴った。
震える手で携帯電話の画面を覗きこむ。
「槌田文也」の文字。
石塚は今までのことを相談するため、ボタンを押した。
フッと名前の文字が消えた。
「非通知」に変わった。
汗が吹き出た、また傷口が裂けた、血が流れる、包帯が赤く染まる。

「 アハハ!アハハ!アハハハハハハ!アハハハハハハ! 」

電話は笑った。けたたましく笑った。
ビリビリと窓が震えるほどに笑った。
石塚は耳を塞いだ。手がべったりと何かで濡れた。血、だった。
鼓膜が破れた、耳からどくどくと血が流れた。
石塚は叫んだ、聞こえない自分の耳は叫びを聞く事はなかった。
電話になんとか血まみれの手を伸ばした。
石塚は、電話を切った。
同時に石塚の首が切れた。
石塚の首は、落ちた。
傷口は噴出す血で叫んだ。
118携帯感染4(終) :2007/03/28(水) 01:56:03 ID:nchp3oJk0
トゥルルルルルル…
トゥルルルルルル…


まだ出ないな、槌田のヤツ何してるんだ…
石塚は携帯を血にまみれた手で握り締め、ただ槌田に電話をかける。

ふと、電話が繋がった。
槌田の声がした。

「 暗い、暗い、暗い、暗い、暗い 」

石塚は含み笑いを込めて、繰り返した。
血まみれの体で繰り返した。
石塚の周りからも声は繰り返されていた。
何十人もの血まみれの人間達が、ただ電話をかけていた。






トゥルルルルルル…
トゥルルルルルル…


槌田は電話を切った。