トム・ガリクソンは、プロのテニスプレイヤーである。
彼はある時、タイ・ブレークで最悪の経験をした。
どのゲームも良いプレーをし、競り合っていたのだが、6-6でタイ・ブレーク
に突入するや、ガリクソンは、おかしくなってしまったのだ。
タイ・ブレークというだけで、彼は、誰にも勝てなかった。
ガリクソンは、苦手なタイ・ブレークになると、緊張して、神経質になってしまう
のだ。タイ・ブレークに対する憎悪がつのり、彼のプレーに影響を及ぼした。
ガリクソンは強制的に思考改造をした。「ガリクソンはタイ・ブレークが大好きだ」
と宣言した紙を家中に貼った。いつでも、家に帰る度、「ガリクソンは、タイ・ブレーク
が大好きだ」と読まざるをえなくしたのであった。
毎日毎日繰り返し、「ガリクソンはタイ・ブレークが大好きだ」と。
所詮潜在意識のパクリw
やり過ぎに聞こえるかもしれない。レストランで彼に出くわすと、「ガリクソン
は、タイ・ブレークが大好きだ」とブツブツ独り言を言っているか、紙ナプキンに
「ガリクソンはタイ・ブレークが大好きだ」と書き付けているようであった。
この自己流の強制的思考改造のすえ、悲惨なタイ・ブレークの結果が11試合中九試合は
ものにできるようになった。
大好きではないまでも、それで充分だった。
ガリクソンの思考改造は、朝鮮戦争の時にアメリカ人捕虜に行われたものと、本質的
には何ら変わりがない。収容所に入れられるや、常にこう言われ続けるのである。
「おまえの国は、おまえを見捨てた。おまえの妻は、おまえがこのバカげた戦争に来ている
間、恋人と一緒だ。おまえの上官はバカで、おまえの事なんかどうでもいいんだ。
おまえは、裏切られたんだ」
はじめは、彼らも笑いとばしていた。しかし、繰り返し、繰り返し、言われ続けた。
するとしまいには、捕虜の態度が変わったのだ。停戦の後も国に帰るのを拒否する捕虜がでたのだ。
何度も何度も繰り返し叩き込まれたシンプルなメッセージは、態度を変えさせる。
他人に迷惑掛けずに無理なく願望が達成されればそれでいい
それは、ガリクソンの態度を変えた。「あーあ、また嫌なタイ・ブレークだ」と
思う代わりに、「タイ・ブレークが大好きだ」と考えるように反応した。
彼はもはや、神経質ではなく、イライラしてもいなかった。彼のプレーは何百倍も
良くなったのだ。
自分自身を強制的に思考改造する事によって、自分が対処しなければならない
嫌な出来事に対して、ポジティブな態度で向かえるようになる
トレーニングの方式(ポジティブな思考改造)は、簡単である。
1 自分のネガティブな態度を確認する。
どのような思考習慣が、いつもきまってネガティブな思考を生み出すのか?
2 自分が身に付けたい態度を何度も何度も、繰り返す。
それを詩にして、歌って、書いて、読むのだ。
自分の内部に入り込むまで、続ける。
3 心の中に望まないネガティブな思考が入り込む度に「ストップ!」
と言う。すぐにそれを、ポジティブな思考と入れ替える。
ネガティブな思考が起った時、ストップと言いながら、あらかじめ腕にはめた
輪ゴムで腕を「パチン」と弾く事もネガティブ思考→腕の痛み、という条件反射
を作くり、ネガティブ思考を減少させて行く効果が期待できる。