有名な怖い話をクールに反撃する話に改変しよう 12
432 :
鴉 ◆SURvnsCrow :
【メリーさん】
『私、メリーさん。今、貴方の家の前にいるの』
この電話を貰った時、何だか嬉しかった。
普通の奴だったら怖がるかも知れない。
俺だって、今日じゃなかったらビクビク怯えているだろう。
それとも、怖くないと強がっているだろう。
でも…本当に嬉しかった。
『私、メリーさん。今、貴方の後ろにいるの』
待ちに待った電話が来た。ゆっくりと後ろを振り返る。
人形を思わせる様な可愛らしい金髪の少女…彼女が俺の死神か。
「ようこそ…来てくれてありがとう」
優しく挨拶すると、少女は怪訝そうな顔をした。
無理も無い、犠牲になる者が歓待するのは普通可笑しいんだろう。
『どうして…怖がらないの?』
「嬉しいから…ずっと、誰かに来て欲しかった」
更に訝しがる彼女だったが、周りを見渡してようやく納得したらしかった。
俺は彼女に自分の身の上を語る。
ここは伝染病系の隔離病棟。
俺はある伝染病にかかっていてもう末期だった。
家族はおろか誰も会いに来ない、食事を運ぶ者さえ中にまでは来ない。
填め殺しの窓から空を眺め、命終わるまでの時を数える日々…
もうそろそろ、そんな時間も終わる。
(続きです)
『怖く…無いの?』
「この病気にかかった者は、皆眠る様に安らかに死ねるらしい…
最初の頃は「寝たらもう目が覚めないんじゃ無いか」と不安がったが慣れた」
彼女の問いに淡々とした声で答える。
死神を前にしているのに、心は落ち着いて穏やかだ…
『そう…私が手を出さなくても貴方は死んじゃうのね…さよなら』
「待って!」
興味無さ気に去ろうとした彼女の腕をつかむ。
帰って欲しくなかった、傍にいて欲しかった。
『ど、どうしたのよ…そんな顔して?』
ああ…今の俺は凄く変な顔をしているんだろう。
もし、鏡が目の前にあったら、きっと泣きそうな顔が映っているのかも。
「今日…誕生日なんだ。それに…医者は今日が命日になるだろうと言っていた」
暗に言われただけだが嘘じゃ無かった。現に、目が霞んで来てる。
俺の不調に気付いた彼女は小さく溜息を吐くと苦笑いした。
『いいわ、側にいるから…ベッドに寝てなさい、歌位なら歌ってあげる』
何だろう…凄く嬉しかった。霞んだ視界が更に涙で滲む…
ベッドに寝た俺に、彼女は「ハッピーバースデー」を歌ってくれた。
年齢を訊かれた時に答えを渋ったら「貴方は女の子なの?」と言われたが…
段々、眠たくなって来る。
意識が途切れそうになる…
意識を保つのが難しくなって来た頃、歌が変わっているのに気付いた。
優しく切ない子守唄…まるで、母親の様な。
「…あり…が…とう…」
途切れがちの声で礼を言い、俺は意識を手放した。
最期の声は彼女に届いただろうか…