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本当にあった怖い名無し:2006/09/26(火) 02:29:21 ID:dCV2eqGvO
ERROR!
ERROR!
さてここらで怖い話でもするか。
須藤アリサはただベッドに横たわって、腰の動きに合わせて
適当に喘いでいた。
つづく
あの日以来何も感じない。あの憎たらしいくそったれの山形ユウジロウに
もてあそばれてからというもの、あの敏感だった小さな突起も、快楽を
もたらしてくれた柔らかに濡れる肉の深淵も。
彼女は知らなかった。自らが施された秘術。陰行流艶術『止め抑え』。
それは元は浮気防止の為に考えられた技術である。術を施された者は
性的快感を得られない身体になる。(第五十七夜 『陰の宴』 参照。)
それでも徐々に快感は戻るが、それには何十年という長い時間を要する。
もっとも、もう一度陰行流艶術をマスターした者と交われば、ただちに復活
することもできた。その技術を『打ち戻し』という。
戦や貿易などで長期に渡り、妻と離れなければならない者たちの要望に
より編み出されたその技術は一方で、不倫などの罰としても使用された。
つまりは『打ち戻し』を行わないままに捨てるのである。そうなった女は、
以降何十年と性的快感を得ない身体のまま生活しなければならない。
須藤アリサは全く快感を得ることなく、ただ肉棒を受け入れていた。感覚と
しては、かゆくもない鼻の穴をほじられているようなものである。
それでも彼女は必死に感じている風を装っていた。嫌われないために。
女子テニス部は崩壊しみなばらばらになった。元より友情などというものはない。
解散以降、誰がどうなったかなどどうでもよかった。ただ快楽だけを求めて、
合法ドラッグだかマリファナだかに手を出した奴がいる、程度の話は聞いていた。
つづく
ぎしぎしときしむベッドの揺れが止まった。
男はおもむろにペニスを抜くと、むくりと起き上がって、サイドテーブルに
置かれたセーラムを咥え、シルバーのジッポライターで火を着けると、
世話しなく大きく一息吸って、吐き出した。
動きの一つ一つが荒々しく、苛立っていることは一目瞭然だった。
「え…なんでやめちゃうの?」
「人形とやってんじゃねぇんだからよ…」
「なんで?すごい気持ちよかったし」
「フカシこいてんじゃねぇっ!」
手の甲で思い切り頬を張られる。勢いベッドに突っ伏して、アリサは泣いた。
「先に金払ってんだからよぉ。ふっかけやがって。このガバマン女が。
金返せよオラ!」
泣いているアリサの後頭部を容赦なく小突く。アリサは泣きながら自分の
ルイ・ヴィトンのバッグからプラダの二つ折りの財布を取り出すと、五枚の
一万円札を出して相手に渡した。
「アホか。五も取りやがってよ。顔だけか。顔だけならグラビアでも見て一人で
シコるよ。バカ女」
つづく
何の商売をやっているのかは知らないが、三十歳近くに見えるホスト風の
その男はホテル代までアリサに出させ、腹立たしげに帰っていった。
また夜の街へ出て、公園へ。ここは『ナンパ公園』と呼ばれ、若い男女の
出会いの場として栄えていた。ただし決して健全なものではない。
肉体だけを求める男。金を求める女。単に一晩一緒にいてくれる人がいれば
いいという寂しい者。肉体を捧げる代償として一晩の宿を求める家出少女。
いずれにせよ、一般に言う、『まっとうな若者』が来る場所ではない。
中央にある噴水のある泉のほとりにアリサは座った。泉の周辺は女の場所で
ある。その周囲を男はぶらぶらと歩きながら品定めし、気に入った者がいれば
声をかける。
誰がルールを作ったわけでもないのに、数年前からそういうことになっていた。
と、二人連れの男が声をかけて来た。
「一人?俺達とかどう?」
「あたし、売りなんだけど」
「売り?何枚?」
五枚と言いかけてやめた。
「…さ、三枚。一人、三枚」
つづく
「高くね?もうちょっとどうにかなんない?二人で五枚とか」
「…いいよ…」
結果は同じだった。いやもっとひどかった。折檻を受けたのだ。二人は
サディストだった。
二人で責めてもアリサが感じていないと気付くや突然暴力的になり、
乳首をちぎれるほどに捻りあげられ、尻が真っ赤になるほど叩かれ、
尻の穴まで犯された。
二人掛かりで三時間、散々いたぶられ、やっと拷問は終わった。
終わった時には身体中の至る所が腫れ、赤くなり、青みを帯びている
ところもあった。熱いように痛い。
しかし、事が済めば彼らは料金をきっちりと払い、無論ホテル代も出した。
通常二人のところを三人と一人分追加した上、一時間延長しているので
休憩代金とはいえかなりの額になる。
その後二人は、クルマにアリサを乗せ、自宅まで送った。
まだ痛みの残る中、車中でアリサは思い立ってある提案を二人に持ちかけた。
売春の斡旋のようなことである。
『ようなこと』というのが彼女のしたたかさだった。
つづく
相手二人がある有名私立大学の生徒であり、その学生には、経済力が
ある者が多いこと。そこでアリサは考えた。どうにか金を引き出す方法は
ないか。
自分の身体は使い物にならない。それはもう諦めよう。ではどうするか。
他人の身体を使えばいい。売春の斡旋?いやだめだ。儲けが少ない。
儲けからすれば、実際に身体を売った人間の方に大きい金が動く。
仲介手数料はわずかだ。せいぜい取れて一万か二万。
もっと稼ぎたい。身体を売る人間が得る稼ぎをこちらに流すことはできないか。
仲介をしつつ、身体を売る女にはただ働きをさせる。
そうすれば収入は丸々自分の下へ入ってくる。それだ。それがいい。
アリサは二人に持ちかけた。そういうことはできないかと。
「…怖ぇな。でも相手中学生だろ?ヤバくね?」
「でも処女率高いよ」
「最近の中学生カワイイ子多いもんなぁ」
「いいよ。その話。面白そうじゃん」
つづく
大学生二人は女好き、それも年下好きの男を集めた。
「中学生と合コンできるんだけど、どう?」
手当たり次第である。場合によっては女に縁がなく、更にロリコンと
噂されるいわゆる秋葉系、オタクの連中にも構わず声をかけた。
参加費はまず三千円。これは全てアリサの懐へ入る。
合コンそのものは全て大学生が料金を持つ。オゴリだ。それを出しに
して、アリサは合コンの参加者を集めた。
そろそろ大人の世界に興味を持つ者がちらほらと現れる世代である。
相手は有名私立大学生。健全なものであることをアピールしつつ、
頭数を揃える。
そして当日は、大学生のやりたい放題である。さすがに相手は中学生で
あるから、居酒屋などには連れて行けない。主にカラオケボックスなどを
使い、酒を飲ませる。
大学生の方には『中学生とヤレる』という認識がある。不慣れでわずかな
酒で酔った中学生を自宅かホテルに誘い込み、前後不覚の状態の彼女
たちを犯すという流れだ。
カラオケボックスを出、それぞれ気に入った女子を連れ、一緒に帰る段階で、
それぞれから五万円ずつを、幹事であるアリサがこっそりと徴収する。
これで集まった大学生かけることの五万円がアリサの懐に入る。後どうなろうが
知ったことではない。とにかく持ち帰りの段階で五万という前約束である。
つづく
しかし、それでは、大学生を集めた二人に何のメリットもないようだが、
彼らには無料で女子中学生を持ち帰れる権利が与えられた。
そして悪魔の宴の第一回が開催されたのである。
集まった大学生は例の二人を除いて八名。参加費一人三千円だから
二万四千円がこの時点でアリサの懐へ。
アリサは酒も飲まずとにかく周囲に気を配っていた。酒を勧められ、
拒んでいた他の生徒達もカラオケやらゲームやらで盛り上がり、遂に
酒に手を出し始める。
十対十だが、ある程度の時間で頑なに『帰る』と言い出す者が出てくる。
説得も聞かず、最終的には十対六となった。
しかし、残った六人はもう泥酔の状態である。
大学生の中で密議が行われ、それぞれが誰を持ち帰るかが決定した。
「まともに立てないね。クルマで送っていくよ」
それまで当然ながら大学生達は紳士的である。酔いに任せて、女子が
了承する。契約成立。この段階で、六人から五万円ずつ。三十万をアリサは
手に入れた。もちろん彼女が集めた女子たちには内緒である。
つづく
一方で、二人きりになった大学生が、『あのアリサという子が五万円で君を
売ったんだ』と言い出さないように善後策も取られていた。
もしばらしたら二度とこの会には参加できないこと。更に、アリサが、その密告
した大学生に犯されそうになったと警察に虚偽の通報をすること。
虚偽であっても、その日、大学生と中学生の間で会合が開かれたことは
事実であり、また酒を飲ませたことも例の大学生二人が証言することに
なっていた。
要するに、正義漢ぶれば自分で自分の首を絞めることになるのだ。また二人の
大学生も、そんなことをしない性欲の塊のような連中ばかりを集めていた。
ちなみに十対六となった段階で、無料で女子を持ち帰れる権利を持つ二人は
その権利を放棄して降りていた。金を払う者が優先である。
全てアリサの計画通りだった。
その晩、自業自得とはいえ六人の少女の処女が奪われた。
まさか大学生と合コンに行って酒を飲んで犯されましたとは親に言えまい。親に
言ったとしても、学校まで話は及ぶまい。
須藤アリサに誘われたと告げられて、その親が何か言ってきても、自分も被害者面を
していればいいのである。
つづく
案の定、どういう形でかは知らないが処女消失をした女は暗い顔で
登校して来た。
アリサも暗い顔をして彼女らに言って回った。
「ごめんね。何かひどいことされなかった…?あたし、犯されたんだ…」
首謀者であり、発起人であるアリサも犯されたとなれば責めるわけにも
いかず、ただみんな黙っていた。
ざまみろ。馬鹿女。これで三十二万四千円。超ボロい!半端だから今日帰りに
二万四千円使っちゃおうかな。
その後、『アリサから誘われたら絶対行っちゃダメだよ!』という噂が広まって
しまえば一度きりで終わらせるつもりだったが、そういうこともなく、大学生側
からは、『次はいつ?こっちはもう人手集まってるよ!』と要望があり、もう一度
手を出すことにした。
さて誰にするかと触手を動かす彼女を見る者があった。新聞委員会校内担当
長野シュウイチである。
つづく
校内のこととなれば鋭い嗅覚を持つ彼である。
ましてや、動き出したのは悪名高き女子テニス部元主将の須藤アリサ。
間違いなく何かある。それとなく聞く耳を立てた。
「…大学の…合コン…すっごい楽しいって…みんな優しい…全然
そういうじゃなくて…」
途切れ途切れだが聞こえた。大学生と合コン…。的場リュウジゆずりの嗅覚が
長野シュウイチを動かした。
編集部のドアを開ける。
「編集長!」
「いねーよ」
「どこへ?」
「台湾」
「…orz」
いるのは副編集長の志賀マサトだけである。
「何か事件か?」
「須藤アリサがまた動き出した!」
つづく
「須藤…あぁ女子テニス部のクソ女か」
「大学生と合コンをやるらしいんだ」
「やるだろ。アイツなら。そんぐらい」
「それが大人しそうな子ばかり誘ってる」
「へー」
「おかしいだろ?絶対に何かあるよ!」
「しゃーねーな。尾行してみっか。日取りはいつだ?」
「まだ分からない…」
「分かったらすぐ知らせな」
「分かった!」
編集部をシュウイチは飛び出していった。
「…相手は大学生か…素人とはいえ容赦はしねぇ」
マサトはデトニクス45の弾倉を確認した。小型ながらパワーのある
45ACP弾六発を弾き出すオートマチックピストルである。
当然的場リュウジから授かったものだ。
つづく
志賀マサトは新聞委員でありながら、的場リュウジとは違った
価値観を持っている。
事件後になって駆けつけ、報道するのは良しとして、偶然にも事件現場に
居合わせてしまったらどうするか。その点が的場リュウジと大きく違う。
的場リュウジは事件の成り行きを記録し、あくまで報道することに集中する。
事件を解決、被害者を救出するのはジャーナリストの仕事ではなく、警察および、
消防の仕事であるとし、写真を撮る、現場の状況をメモ、記憶するといったこと
しか基本的にしない。余裕があれば助けるといった程度だ。
しかし志賀マサトは違う。ジャーナリスト以前に人道主義者で、救出すべき人、
回避できる危機が迫っていれば率先して救出、解決に全力をかける。その際
報道は二の次である。
例えば包丁を持っている男が歩いていたとして、的場はその男が事件を起こすまで
待つ。志賀はまず取り押さえる。その違いである。
その点でよく二人は信頼関係にありながらも反目し合っていた。シュウイチは
どちらかといえば、マサト派であるが、考えの上だけで、恐らく包丁を持った男が
歩いていればまず逃げることを選択するだろう。
数日後。今日も何事もなしと志賀マサトが帰り支度をしていると携帯がなった。
着信メロディで分かる相手はシュウイチだ。
「俺だ」
つづく
『アリサがみんな連れて駅の方へ向かってる。すごい数だよ!』
「何!?」
『今日も編集長はいないの?』
「今日は別府にいるそうだ」
『別府?温泉の?』
「そうだ」
『何か事件で?』
「いや単に温泉だ」
『…とにかく来て!』
「何処に向かうのか分からんのか?」
『わかんないよ!』
「おちつけ。すぐに行く!」
校庭を駆け抜け取材車(自転車)にまたがると駅に向けてマサトは走り出した。
つづく
マサトが駅に付く頃には、シュウイチはいなかった。
メールが来ている。どうやら新宿方面に向かっているらしい。
マサトも続いた。
都内のカラオケボックスでやっとシュウイチと落ち合う。
「探すのに苦労したぜ…」
「よかった…間に合って…」
「状況は?」
「ウチの女子が十二人。須藤も入れて。相手の大学生も十二人で
この店に入って行ったよ」
見上げるビルには様々な店が入っていたが、カラオケボックスの看板が
あった。
「カラオケか…」
「うん。エレベーターの表示で確かめた」
「よし。突入だ」
「と、突入?」
つづく
「デバガメ大学生どもを血祭りに上げる」
「ダメだよ!まだ何もしてないかもしれないし…」
「…しばらく待つか…」
待っているとエレベーターから見知った女子が降りてきた。
「あれ?志賀くん?」
「真鍋か…」
真鍋美代子、志賀と同級生だった。顔が赤い。
「どうしたの?こんなところで」
「お前こそ何をやっていた?」
「大学生と合コン」
「須藤に誘われたか?」
「そうそう。でもそろそろ門限だから…」
「中の様子は?」
「別に普通だよ。ただお酒は飲んでるけど…」
つづく
「『飲んでいる』のか、『飲まされた』のか、どっちだ?」
「うーん…飲まされた、かな…。別に変なこととかしないけど、お酒だけは
すごい飲ませようとする」
「分かった。帰って良し」
「…あ…うん…それじゃ…ばいばい」
真鍋美代子は志賀の無愛想に呆れながら帰っていった。
「酒を飲ませた上でレイプする気だな。間違いない」
「やっぱりそうかな」
「帰る人間がいるということは売春じゃないな。参加者は何も知らずに参加
している。恐らく須藤に仲介料が入るシステムになっている」
「なるほど!」
「金に汚い女だからな…」
寒い中しばらく待っていると、ぞろぞろとエレベーターから男女が降りてきた。
知った顔もあった。
料金表が張り出された大きな看板にシュウイチとマサトは身を隠す。
つづく
雑踏の中、切れ切れに男女のやり取りが聞こえる。
「だいぶ酔ったね。送っていくよ…いいよ遠慮しなくて。クルマだし。大丈夫大丈夫!」
マサトは思った。分散すると。まずい。分散されては救いようがない。
仕方がなかった。とりあえずターゲットを絞って追跡するより方法はない。
男女は繁華街のコインパーキングまで歩くと、それぞれクルマに便乗して走り去った。
問題はここからだ。作者は全くこの後の展開を考えていない。
「馬鹿かお前は!」
とりあえずタクシーへ飛び乗り、適当な一台を追跡するようドライバーに言った。
繁華街を抜けて、唐突に現れた住宅街の、豪奢なマンションの地下駐車場に目的の
クルマが入っていく。
それを見届けたマサトはタクシーを止め、降りた。
「お客さん!料金は!?」
「軽子沢中学に請求しろ!」
「えー!」
マンションを見上げた。しばらくすると、最上階、角部屋の窓が明るく灯った。
「最上階だ!行くぞシュウイチ!」
つづく
しかし、ロビーにすら入れない。暗証番号を押さないと建物にさえ入れないのだ。
「くそったれめ!」
デトニクスが火を噴いた。砕け散るガラスドア。
「続け!シュウイチ!」
警報が鳴る。
「セコムか!」
「い、いいの!?」
「かまわん!最上階だ!」
十二階建てのマンションである。エレベーターを使う。
「そうすぐに犯したりはせんだろう…時間はある」
「だ…大丈夫かな…」
「クルマに乗っていたのは男女一組じゃない。三対三だ」
「…そこまで見てたの?」
「恐らくここで乱交でもするつもりなんだろう。許せん…」
つづく
最上階の角部屋。とりあえずドアチャイムを鳴らすが反応はない。
しかし中から人の気配はする。無視しているようだ。
「くそっ!セコムが来るぞ!」
45ACP弾がドアノブに向けて立て続けに発射される。ドアノブは破壊されたが
ドアは開かない。
「くそぅ!映画のようにはいかんのか!」
しかし爆発音を聞いてさすがに驚いたのかドアが向こうから開けられた。
チャンス!
飛び込み様、まず一人目を投げた。ロシア格闘術システマが炸裂する!
ロシア特殊部隊出身、元陸軍大佐のミカエルリャブコが開発した、言わば
ロシア式合気道システマ。志賀マサトは既にこれをマスターしていた。
いとも簡単に投げ飛ばされる大学生。
「的場だけじゃないぜ。志賀も忘れるな!」
瞬く間に制圧。泥酔した三人の女子をシュウイチに託す。
「後は頼んだ!」
つづく
「さぁショータイムだぜ…」
志賀マサトはガチガチのホモセクシュアルである。淫らな大学生に淫らな制裁を。
既に全裸勃起の状態でやる気満々の構え。異様ともいえるその巨根たるやユウジロウを
遥かに凌ぐ。日本一の超硬度を誇る恐るべき巨根である。
初めて受け入れた際にはさすがの的場リュウジの肛門も裂けたものである。
「な…なにをするん…アッーーーーーー!!」
「お前たちが女にしようとしたこと…それをそのままお返しするぜ!」
全く容赦なしの超巨大肉棒が肛門を襲う。
「勘弁してくれ!」
「ならぬ!俺の肉棒をしゃぶれ!」
「…そんな…デカすぎて…」
「四つん這いになれ」
「なれば許して頂けるんです…アッーーーーーーーー!!」
シュウイチと三人の女子が逃げ出すと入れ替わるようにセコムと警察が到着した。
サイレンの音が響く。
「チッこれまでか!」
つづく
と、強烈なサーチライトが部屋へ向けられた。爆音も聞こえる。窓を開け放つと、
そこにはヘリが浮いていた。
「マサト!迎えに来たぜ!」
「リュウジ!」
ヘリのボディには『警察庁』とある。
「飛び乗れ!」
マサトがヘリコプターに飛び込むと同時に、ヘリはその巨体を傾けるようにマンションから離れていった。
メールでマサトは逐一行動をリュウジに伝えていたのであった。全裸のマサトにリュウジが言う。
「よし一緒に別府へ行こう!」
「おう!」
「大分に飛んでくれ!」
ヘリは南の空へ消えた。
翌日、
『大学生三名肛門に裂傷!』
の見出しが翌日の紙面を飾った。関係した大学生らは未成年者への飲酒、暴行せんとした
罪で全員逮捕され、彼らの証言から須藤アリサの罪も白日の下に晒された。以来彼女が
学校へ来ることはなかった。噂によれば性病を患い入院しているとのことだ。
終
…途中で止められたもんだからわけ分からん話に…
なんだこりゃ^^;; とりあえず寝る。おやす♪
作者さん乙です!
もうそろそろ容量オーバーじゃないかな〜と思いつつ、
でしゃばるのもどうかと躊躇しておりました。
とは言え、2回目だし、皆気づくと思うけど・・・
このスレで100話いっちゃうかもですね。うれしいようなさびしいようなそんな気持ちです。
リュウジ・・・中学生で日本全国温泉めぐりとは・・・しかもヘリでwww
作者さん乙です!
今回も面白かった〜。リュウジは両刀使いみたいだけど
マサトはガチガチのホモなんだw
マサトも結構すごいなぁ。なんちゅう人材が集まった中学だw
助けに来たんだか、犯しに来たんだかwwww
>>27 このシリーズは続いてほしいなぁ。別に山形先生が主人公じゃなくても
いいし、作者 ◆xDdCPf7i9g ワールドでw
個人的にはリュウジとケンシロウのファンなんでヤツ等には
頑張ってもらいたいですw
>>27 あたしも様子見ながらだったんだけど…結構長くなっちゃったんだよね…。
しくじったよ^^;;
多分昨夜は遅かったから、今晩読む人多いだろうしびっくりするんじゃないかな。
容量オーバーだと次スレのお知らせもできないんだよね…。まぁ前もそうだったし
検索してくれるでしょ…とか無責任だったり…。とりあえず480KBぐらいになったら
注意しよう…。
読んでくれてありがとう。容量気にしてくれてありがとう。今度はデシャバっていいよ(笑)
>>28 そうそう。そろそろ終わりなもんで、キャラクターの謎の部分の整理に入ってるんです。
残り20話程度だから、そろそろ手をつけないと間に合わないな、と。その上、最終3話
98、99、100話は3話連作にするつもりなので…。実質あと…16話?その中で語る
べき部分は語っておきたいです。
なので今回は志賀マサトの回ということで、『マツタケドロボー事件』以来出てない彼の
キャラクターを使ってみようかなと。リュウジと似ているようで、リュウジよりも乱暴な、
部分、(リュウジはもう少し繊細ですね。『セコム』を解除するか、突破するかの部分で
表現してみました(笑))正義感が強い部分を見てもらえたら嬉しい。
あぁあと完璧なホモセクシュアルって所ね。
ただスレ立て〜沈下待ちの間にテンションがちょい落ちた上に全くオカルトを忘れてた
ことに後悔…。最近たまにあるんだよな…。まぁアリサの女の怖さがオカルトって所
で…。
あと設定なし段取りなしですが、最終3話についてはさすがに段取りつけます。もう
考え始めてるけど…。
さてここらで怖い話でもするか。
山形アカネは湯船に浸かりながら何か奇妙な違和感を覚えていた。
まだ早い十七時過ぎではあったが、厚い雲に覆われた空は既に暗い。
つづく
今日は、夜、兄ユウジロウと二人で『枡や』に行くことになっていた。
帰りが遅くなりそうなので、先に風呂へ入っておこうと思ったのだ。
焼き鳥をあぶる煙で髪に臭いがつきそうだったが、それでも帰ってきてから
軽く頭をすすげば済むだろうと考えた。
デートていうわけでもないし、『枡や』も気安い店なので、すっぴんでも構うまい。
立ち上がると、濡れた黒髪がまとわりついた艶かしい乳房が現れた。
しかしこの奇妙な感じはなんだろう。
冷たい風に煽られるのも嫌なので、窓は閉めてある。確認するが間違いなく、
ぴたりと閉まっていた。
「…」
振り向いて、浴室の戸を見るが当然閉まっている。
気のせいだろうと椅子に腰掛け、頭からシャワーの湯をかけた。ポンプボトルから
シャンプーを押し出して頭を洗う。
アカネは子供の頃からの癖で、洗髪する際、目を開けることができない。シャンプーが
目に沁みるのが怖いのだ。
一人、闇の中で、更に違和感は膨らんでいく。背後から視線を感じる。
頻繁にユウジロウが覗くので少し過敏になっているのかもしれないが、気のせいでは
済まされないほどの鋭い何かを感じた。
つづく
ライブktkr!
も、萌え…
もう少し洗い足りない気がしたが、視線が気になり早々に湯をかぶる。
シャンプーをすすぎ落とすとすぐさま後ろを振り向いた。
浴室の戸は曇ガラスで、はっきりとは分からないが、人がいるかいないか
ぐらいのことなら分かる。
何か人影が瞬間動いて、消えた気がした。少し間をおいて、引き戸を開ける。
しかし誰もいない。いた形跡もない。しばらくそのまま耳を澄ませていたが、
人がいるような気配はない。
いつもならば、戸を背にして身体を洗うのだが、今日に限っては戸に顔を向け
洗った。
アカネはいつも思うのだ。上半身を洗っている時はいい。しなやかなに伸ばした
腕をボディスポンジで洗い、艶っぽく顎をあげ、首筋を伸ばして首を洗い、
それほどの大きさはないが形のいいバストを丸く洗う。
足もいい。立ったままにしろ、椅子に腰掛けているにしろ、少し自慢の長い脚を
まっすぐに伸ばして、柔軟体操のような恰好で汚れを落とす。
しかしながら。女性自身と肛門。要するに股を洗うのにもう少しさまになるスタイルは
ないだろうか。大股開いて洗うほかない。あの女優やあのモデルもこんな恰好で股を
洗っているのだろうか。
股の洗い方だけは世界一の美女も、八百屋のおっさんも同じなのだろうか。
つづく
しかし股を洗う以上股を広げなくてはならない。恰好のいい股の開き方が
あるのだろうか。
もう十年以上研究を重ねているが、さすがのアカネも美しい股の洗い方を
知らない。一時期はそんなはしたない恰好で股を洗う自分が嫌で、ろくに
洗わなかった時期があったが、何やらかゆくなるわ、臭くなるわで結局
洗うことにした。
ところで作者はアカネに何か恨みでもあるのだろうか。久しぶりの登場、しかも
せっかくの見せ所である入浴シーンで『股の洗い方』の話である。
でも気になったので仕方ない。
身体を磨き上げ、シャワーを浴びる。若い肌に水がほとばしった。ボディソープの
泡に隠れた見事な肢体が、シャワーによって少しずつあらわになる様は、妖艶と
いうほかない。
濡れた顔が気になってかぶりを降ると、それだけで水滴が珠と散った。
何もせずとも充分に水分を含んだ若い肌が、外部からの水を受け付けない。
タオルで拭き取るまでもなく、軽く振り払うだけで済みそうな印象を受ける。
メイクを落とし、洗顔しているとまた何か気配を感じた。流す間もなくうっすらと
細目を開けるとガラス戸の向こうに誰かがいるのが見えた。
「…お兄ちゃん?」
と、音もなくその人影は、滑るように消えた。
つづく
慌てて泡を流し落とし、戸を開けるが誰もいない。そのまま全裸で
脱衣所を出た。廊下が玄関まで続いている。
誰もいない。隠れるとすれば、トイレか、居間か、和室か、階段に潜むか。
玄関の鍵は締めてあったはずだ。アカネはしばらくそのままじっと耳に意識を
集中した。
したしたと黒髪から滴る水が床を打つ音以外は無音。
「…やはり…気のせいか…」
脱衣所に戻り、身体を拭き、服を着ると、髪をタオルでくるむ。頭が冷えないように
ドライヤーですぐにでも髪を乾かしたかったが、ドライヤーの立てる音が侵入者の
気配を消してしまう恐れがある。
その辺り、用心深い山形家の女である。一通り家中見て回ってやっと安心する。
やはり誰もあらず、施錠もなされていた。
しかし人影が見えた気がする。一体何だったのだろう。
頭を乾かし、化粧水をはたく。気を紛らわせる為のローズティを飲む頃にはだいぶ
気分が落ち着いた。
少し神経質過ぎた自分を恥じて、夕刊を取り忘れていることを思い出し玄関を出た。
門柱に郵便受けが埋め込まれている。
つづく
ちょうど門柱の天辺と、視線が同じ高さにある。
何かがあった。
それは切手に似た、プラスチック製の何かだった。新聞と共に
持って家に入る。
金属の部分もあるぞ…。多分何か機械の部品だな。何だろう。
Sって書いてある。その隣に…何だ?CDの絵かな?半分のCDの
絵みたいのが描いてある。その下に256MB…。なんだこりゃ?
いいやお兄ちゃんに聞いてみよう。
一時間もすると、兄、ユウジロウが帰宅した。
「いやすまん。遅くなった。いやあ腹が減ったな。『枡や』行くぞ」
「あ、お兄ちゃんこれって何?知ってる?」
「ん?」
「これ」
「あぁSDカードだな」
「SD…」
「書いてあるだろ。思いっ切り。SDって。ほら」
つづく
「あーこれって『D』ですか?」
「他に何に見えるんだ?」
「半分のCD…」
「…あーなるほど。見えんでもない。で、それどうしたんだ?」
アカネは経緯を話した。風呂で感じた違和感も含めて。
「へー…何だ気持ち悪ぃな…」
「そのSDカードって何するものなの?」
「メモリーカード…って言っても分かんないか…何でもいいんだけど、とにかく
写真とか、動画とか、そういうのを入れておくもの。デジカメとかで使うんだ」
「じゃそれにも写真とか入ってるの?」
「見てみなきゃ分かんないけど…でも覗かれてた感じがするっていうのを聞くと
ちょっと気持ち悪いな…」
「ウチでも見られる?」
「あぁ。俺の部屋のパソコン使えば見れるぞ」
つづく
実は山形アカネ、いわゆる機械音痴である。特に最新家電については全く
分かっていない。パソコンは全く分からず、携帯電話ですら全ての機能を
使いこなせていない。電話するのと、メールだけだ。
色々とユウジロウに聞きはするのだが、ユウジロウが説明を面倒くさがって、
最終的にやってあげてしまうこと、またアカネもそっちの方が楽でいいやと
思っていることが大きな原因である。
そもそもアカネ、原理から知らないと駄目なタイプなのだ。何を説明しても、
『なんで?』『どうしてそうなるの?』と余計な疑問ばかりが出てくる。
一度パソコンを教えようとしたが、六時間かけてたどりついた先が、二進数の
話であった。
だからユウジロウは特に何を説明するわけでもなく、パソコンを立ち上げ、
メモリーカードのリーダーをUSB端子に差込んで、SDカードの中身を見た。
「256メガあればそこそこのものが入るわな…」
「256メガってなに?」
「256にゼロが六つ。容量だよ。大きければ大きいほどたくさんデータが入る」
「へー…」
よく分かっていない。とりあえず画面を見ている。
「mpegか…動画だよ。いくつか入ってる…」
つづく
「ビデオで撮ったやつ?」
「何で撮ったかまでは分からん。ただデジカメでも動画の撮れる機種は
いくらでもあるそ。携帯でも撮れるしな」
「へー…」
全部で四つの動画が入っていた。
「…見てみるか?」
「やっぱり…覗かれてたのかな…」
「しかし覗いて動画まで撮ったのに、そのデータを置いていく奴がいるか?」
「自己顕示欲、みたいな…。『ちゃんと見てたんだぞ!』ってアピール…」
「…それはかなり悪趣味だぞ…」
ユウジロウは色々と考えていた。曲りなりにもパソコンの授業を担当する教師である。
デジカメで撮ったとして、本体のメモリに動画を残しつつSDカードにデータをコピーして…。
そうすればデータは手元に残るが、本体にそんなデカい容量持ってるデジカメあった
かな…。しかしせっかく撮った動画ファイルを置いていくってのは考えにくいぞ…。
二台持ってた?その線はあるかもしれない…。まぁ見てみるしかないな。考えていても
仕方ない。
つづく
一つ目の動画。
山形家の門が移っている。ひどくブレていて見ているだけで酔いそうになる。
動画は割りと鮮明で、一見した感じ携帯ではなくデジカメの動画モードで
撮影されたもののようだ。
「まぁ…携帯なら普通miniSDだわな…」
「あれ待ってお兄ちゃん。時間が変だよ」
「え?」
「あたし暗くなってからお風呂入ったけど、まだ明るいよ?」
確かに動画は明らかに日中撮られたものである。撮影者のものらしい興奮した
ふぅふぅという息遣いが入っていて気味が悪い。
「ふう…はぁ…こ、こ、ここが…アカネちゃんチでーす…はぁ…はぁ…」
薄気味の悪い男の声が入っている。恐らく撮影者のものだ。周囲に人がいるのを
気遣っているのか微妙に小声なのが尚更不気味だった。
「やだ…気持ち悪い…」
つづく
アカネはツネコの家から行政上の住所を移していない。近所だからいいだろうと
思っていたのだが、郵便物だけは困るので、郵便局にだけは転居届けを出し、
こちらへ回してもらっていた。
配達員が困らぬよう、『山形ユウジロウ』という表札の下に、『同 アカネ』という
手作りの表札を掲げている。だから、この動画を撮った人間がアカネの名を知る
ことは簡単なことであろう。
動画は唐突に終わった。
「え?終り?」
「別の動画があと三つ…」
「…見せて」
二つ目の動画。
そこは既に山形家の屋内であった。廊下。玄関から撮ったアングルである。
「入られてるじゃないか!お前何やってたんだ!?」
「わかんないよ何時なのこれ?」
もっともな質問と言えた。そもそも今日撮られたものかどうかも分からないのである。
データは幾らでも改ざんできる。ただ、電灯がついていないのに廊下が明るいという
ことは、やはり日中であることを示していた。
つづく
(((゚д゚;)))
あいかわらず、吐息が激しい。しかも屋内に入り更に興奮の度合いを
増したのか、テンポが上がっている。
撮影しながら進んでいく。突き当たりはトイレだ。その左手が脱衣所。
歩きながら撮影者は、全ての歌詞が『アカネちゃん』の、自分で適当に
作った歌を歌っている。
また唐突に動画は終わった。
「吐きそう…」
「…三つ目は?」
「見るよ…」
三つ目の動画。
脱衣場内。そこには洗濯機も置かれている。相変わらず『アカネちゃん』の
歌を歌い続けながら、洗濯槽の中を覗いたり、洗濯かごを覗いたりしている。
何もわざわざ撮影する必要はないと思うのだが、とにかくカメラのレンズは
イコール男の視線らしい。
また動画が終わる。
「…これやっぱり今日だよ…今日のお昼だ。あたしが買い物行ってる時…」
つづく
「なんで分かる?」
「洗面台にかけてあるタオル。あれ今日のだもん」
「あーそっか」
「あとバスタオルも一緒だし」
床に置かれたバスケットに今日使う分のバスタオルを入れておく。
それも一緒だという。基本的にタオルの類は自分で買わず、新聞屋や
中元、歳暮でもらった物を使用しているので二つとして同じ物はない。
特にローテーションが決まっているわけでもないから、洗面所のタオルと
バスケットのバスタオルが一緒であるということは、今日と考えてよさそう
だった。
最後の動画。ユウジロウは一番これが気になっていた。データサイズから
すればこれが最大。要するに録画時間が最も長いと思われたからだ。ただ
そのことは特にアカネに言わなかった。
「最後の動画だ」
「…うん」
つづく
四つ目の動画。
激しくブレでいる。相変わらずの歌。息遣いは更に荒い。しかも更に
ブレも息も荒くなっていく。
「んぁっはあっはあっアッカネちゃんっ!はぁっふぅっはああっ」
画面はがくがくと揺れ、何が映っているかすらよく分からないが、
浴室内であることは確かだ。
と、急に男が大人しくなった。
突然下にアングルが下がる。そこには、勃起したイチモツが映っていた。
多少ブレはあるが先ほどよりだいぶましになっている。
イチモツはしごかれていた。男は山形家の風呂場で自慰行為にふけって
いたのである。
次の瞬間、射精が果たされる。瞬間、イチモツが不自然な方向に曲げられた。
イチモツの先には、ポンプ部分が取り外されたボディソープのボトルがあった。
大量の精液がボトルに注ぎ込まれる。
動画は、終わった。
終
ん?このスレって頭に『:』ついてる??つけた覚えないんだけどな…。
変なの。
うぅわ…きっついなこれ('A`)
アレが入ったボデーソープを使っているアカネを見てたんだね…
こわいよママー(´;ω;`)
・・・股 洗っちゃったのね。
妊娠はしなくても気持ち悪いだろうね。
家のシャンプーとかに入ってたらと思うと…
(((;゚д゚)))
さてここらで怖い話でもするか。
軽子沢中学新聞委員会委員長的場リュウジは、屈強な外人二名に肩を
預け、国内某所の山中にいた。
つづく
お!
向かって左側は白人、右側は黒人いずれも身長百九十を越す巨躯である。
間に挟まれたリュウジは目隠しをされ、イヤホンをつけられている。
かなりの音量なのだろう。ドラムとベースの音が漏れ聞こえていた。
以下の会話は全て英語である。
「よし、ここらでいいだろう」
「そうだな。俺達が戻れなくなっちまう」
二人は豪快に笑い、お互いでお互いの煙草に火を着け合った。彼らのオイルライターには
USAFの文字があった。United States Air Force。アメリカ空軍である。
朽ちた枯木の大木の根元に、リュウジを座らせると、そのまま二人は談笑しながら、煙草の
煙と共に消えた。
的場リュウジは頭の中でゆっくりと、百を数えていた。
何も見えず、何も聞こえずの時間がどれ程経ったか。
時間の感覚さえない。
空腹。ひどい空腹だった。便意もひどいものだった。
つづく
百をカウントし、まず目隠しを外す。全く見覚えのない山中。つづいてイヤホンを外した。
それでもイヤホンからは音楽が漏れ続けている。そのままカーゴパンツのポケットをさぐり、
MP3プレーヤーを取り出すと電源を落とした。
やっと静寂が訪れる。カーゴパンツにタンクトップ一枚。寒い。寒いが気温は東京とそれほど
変わらないように思えた。
「…いずれにせよ本州…中部以北と言ったところか…」
足元にはリュックサックが転がっている。食料と、ベレッタ9ミリピストル、予備の弾倉が二本、
発炎筒、サバイバルナイフ、それと小さな機械が入っていた。
機械にはスイッチだけがあり、それを入れると赤い発光ダイオードが光った。
食料を食べながら思い出す。あの米兵二人との会話。無論全て英語である。
「…分かったリュウジ。そこまで言うなら協力しよう」
「ただ安全だけは保障させてもらうぜ」
「どういう意味だ?」
「発信機をつけさせてもらう」
「発信機?」
「そうだ。万が一リュウジが遭難しても、すぐに居場所が分かるように」
つづく
「…わかった」
「日本の民間人、それも中学生を山に置き去りにしたことがバレたら俺達の
身分も危ういからな。下手すれば国際問題だ」
「うむ」
「制限時間は二十四時間。それでタイムアウトだ。二十四時間で下山できなければ
発信機の電波をたどりただちに救出する」
「…」
「それに、何か問題が発生したらすぐに発煙筒を焚け。必ず、だ。守らなければ、
以降リュウジとの接触は絶つ」
「了解した」
「やれやれ全く…お前には参るよ…」
リュウジが自分から提案した一種の訓練。自分が何処の山中にいるのか分からない
状態で無事下山できるかどうか、というゲームである。
東京から視覚、聴力を奪われた状態でクルマに揺られ、何処を走っているのかも
分からず、適当な所で下ろされ、更に山を登らされ、置き去りにされる。
せめてコンパスと時計だけは持って行けという米兵の支持をリュウジは無視した。
つづく
「…やはりコンパスは必要だったか…」
時間も方向も分からないのである。ただ太陽は見える。
「…感覚からすれば午前中ではない。だとすればあちらが西だ…」
太陽の高さから見て、午後二時過ぎだとリュウジは判断した。それが正しければ
ゲームオーバーは明日の午後二時ということになる。
五時頃には暗くなり、その辺りで足を止めざるを得なくなる。野営をして、明るくなり
行動ができるようになるのは明日の六時過ぎ。
二十四時間の内、十三時間は足止めを食う。要するに十一時間で下山せよ、という
ことだ。
しかし、クルマを降りてから歩いたのはせいぜい六時間程度。それもリュウジの
方向感覚を麻痺させるためわざと迂回をしたり、通った場所を戻ったりしただろうから、
恐らく直線でいけば三時間から四時間。その程度で下山できる地点にいるはずだ。
「…夕暮れまでに下山してやる…」
とりあえずリュウジはベレッタ片手に勘だけで南へ歩き出した。
つづく
暗くなってしまった。
「無謀だったか…」
山は深くなるばかりで、あちらこちらを見回しても街の灯りすら見えない。
上手い場所に置き去りにされたものだ。
気温が低いが、そのまま眠って死んでしまう程ではない。しかし、地面が
妙に湿っぽい。そのまま横たわれば大地に体温を奪われる可能性はあった。
「…待てよ。さっき歩いていた辺りは乾いた地面だったが…」
耳を澄ませば、ちょろちょろと川のせせらぎが聞こえてきた。
「…俺の勝ちだ…」
川さえ見つけてしまえばほぼ下山ができると考えてよさそうだった。高い所から
低い所へ流れ、やがては海へたどりつくわけであるから、川の流れに従って
あるけば仮に遠回りになったとしてもいずれは山を出られる。
果たして川はあった。
川原にて、集めて来た薪と、ナイフで削ったおがくずで火を起こし、焚き火とする。
地面は細かい石が堆積していた。寝心地は悪いが湿った土の上よりましだろう。
石はいずれも小ぶりで、丸っこい。
「…かなり下流か…明日の午前には下山できるだろう…」
つづく
ところで全く話は変わるが今日は平日である。軽子沢中学では日中授業が
行われている。彼が台湾や別府、人知れぬ山中にばかりいて、出席日数は
大丈夫なのかと思う向きもあるだろうが、全て委員会の仕事の一貫であり、
出席したことになっているのである。くれぐれも御理解頂きたい。
焚き火に当たりうとうととしていると、背後の森に気配があった。瞬間的に
伏せ、ベレッタを構える。
「誰か!」
問いかけるが答えはない。
「誰かっ!?」
返答はない。しかし、ちらちらと光るものが目に入った。かなり低い位置である。
何か懐中電灯のようなものをこちらに向けてゆっくりと振っているようだ。
「…?返事ができないなら光を消せ!」
光が消えた。
「よし、光を着けろ」
また、光る。
つづく
油断なくベレッタを構えたまま、光の元へ。やはり懐中電灯だ。懐中電灯を
持った老人が突っ伏していた。
「おい!大丈夫か?」
「…イノシシに…足ぃやらちまってぇ…」
「…なんてこった…立てないのか?」
「へ…へぇ…」
やはり山男だけあってか、老人は都会の老人と比べたくましかった。肩を貸し、
立ち上がらせると、懐中電灯を老人に持たせる。
「家まで…連れて行ってもれぇねぇでしょうか…」
「…構わんが暗いぞ?」
「道は分かっとりますで」
「よし分かった。行こう」
頼りない灯りの中、老人はあっちこっちと道を指図する。熊除けの鈴の音が
静寂に響いた。
小高い丘を登り、頂上に何とかたどり着くと、急に視界が開けた。
つづく
眼下に小さいながらも町の灯りがぽつりぽつりと見える。
その遥か手前、もうすぐ目の前といったところに、古い民家があった。
「あすこがウチですんで。はい…」
「そうか…よかった」
民家の窓は暗い。老人の話では妻がいるということだが、既に眠って
いるのだろうか。ドアチャイムもないので、激しく戸を叩いた。
と、中で人の気配がして、玄関灯がついた。
「どなた様ですかぁ?」
「旦那を連れてきた!」
「…はぁ?」
「旦那を連れてきたんだ!」
がちゃがちゃと鍵を開ける音がして、立て付けの悪い引き戸が引っかかり
ながらも開いた。
「見つかったんですかい?」
「川のそばでな」
と、老人が力なく倒れそうになった。家について安心し力が抜けたのだろう。
つづく
抱き抱え、家に入るが妻である老婆が随分と困惑した様子だった。
「いや、あの…どうしたもんだか…」
「救急車を呼ぶんだ。足をひどくやられてる」
「んだども…」
リュウジはもたもたしている老婆に苛立ちながら、腕の中の老人に奇妙な
感じを覚えた。軽いのだ。
「もう死んでおりますに…」
「!」
確かに腕の中の老人は既に腐りかけた完全な死体だった。危うく投げ落とす
ところだったが、老婆がとりあえずここへ寝かせてくれというので、今まで老婆が
自分で寝ていただろう布団に横たえさせた。
山菜取りに行ったきり戻らなかったと言う。山狩りをしたが出てこなかったそうだ。
場所はどこかと聞かれたので、リュウジはおぼろげな記憶をたどって何とか説明
したが、意外とその場所は山が浅く、灯台下暗しで逆に発見しずらかったのでは
ないかという話だった。
諦めかけていたけれど、見つかってよかったと老婆は涙した。
つづく
そんな話はどうでもよかった。的場リュウジ、アメリカ大統領でもぶん殴ってみせる
度胸の持ち主だが、幽霊だけは勘弁だった。
ぼろぼろ泣いているのは感涙ではない。幽霊を見てしまった恐怖の涙だ。
そんなこととはつゆしらず、若いのにこんな老人を憐れんでくれて、ありがたいと
布団を敷いて、是非泊まって行ってくれと言う。
化けてでた老人の死体と一つ屋根の下一晩明かせとは無理な話である。必死で
断るが、かといって自分はどうすればいいのだろうと思った。
確かに町まであとわずかだが、民宿の類はないという。無論二十四時間営業の
コンビニエンスストアも、漫画喫茶もない。山間のうら寂しい集落である。
こんな時間に泊めてくれと飛び込んで、迷彩ズボンにタンクトップの薄汚れた
男を泊めてくれる家があるとも思えない。
野宿も絶対に今晩はお断りだった。だとすれば一人でも生きている人間のいる
ここが一番よいではないか。
いや、ギブアップするか。ここなら電話もあるようだ。しかし、下山目前にして
ギブアップもどうだろう。いや待て。そうだ。下山して、あの集落の公衆電話か
ら連絡すればいいのだ。そうすれば俺の勝ちだ。
色々と考えていると老婆は今日はお通夜だから、どうか是非一緒にいてやって
下さいと告げてきた。親戚もなにもいないのだという。
いたたまれない気持ちもあって、リュウジは一晩泊まる事にした。
風呂で軽く身体を流し、浴衣を一着貸してもらって布団に入ると、気分も
よくなってきた。
老婆は夫と同じ部屋で眠っている。隣の部屋ではリュウジが一人、電灯を
着けっ放しにして寝転がっていた。
疲れもあって、そのまま眠った。
朝。スズメの鳴く声に起きる何時だろうか。だいぶ明るい。しかし何か匂う。
老人の遺体の臭いだろうか。いや、自分の布団が臭いのだ。
妙に湿気っていて、気持ちの悪い布団である。家屋全体も昨夜より
埃っぽい印象を受けた。やはりほの暗い中で見るのと明るい中で
見るのとでは印象が変わるのだろうか。隣の部屋を覗く。
老人と老婆が眠っている。老人は腐っている。老婆も、腐っていた。
リュウジは家を飛び出すと泣きながら発煙筒を炊いた。
下山手前わずか四百メートルで、的場ギブアップ。
老婆の死因が衰弱死であったことから、夫が行方不明になり、捜索が打ち切られて
からというもの、老婆を世話する者もおらず、失意の中で彼女は食べる物も食べずに
衰弱し、いつしか人知れず死んでしまったのだろう、ということだった。家からは
食べ物も見つかっており、一種の自殺だったのではないかと見られている。
以来、リュウジはちゃんと学校へ来て、家族の誰より早く寝ている。今のところは。
リュウジ〜wwwww
頑張れ〜世の中、生きてる人間の方が恐ろしいぞ〜www
あれ?まだ続いてるのかな?
>>63 リュウジも懲りて中学生らしくなるかな?
いや、無理だなwwww
そういや前の心霊写真ちゃんとお払いしてもらったのかな〜。
あ、ごめん『終』つけ忘れた…すまんです。
>>63 リュウジに兄弟とかっているのかなぁ?お姉さんとかいたら凄そうw
いつも話の中でリュウジはクールで真剣そのものなんだけど
何故か笑ってしまうw
なんだかすごくリアルなキャラでいいです^^
(『終』をつけ忘れたのでお詫びの1話です。完全なパラレル世界です。絶対まとめサイトに
掲載しないで下さい。絶対です。誰がなんと言おうと絶対駄目よ(はぁと)
さてまたここらで怖い話でもするか。
的場リュウジは苦悩していた。クラブハウスの一角。
軽子沢中学新聞委員会、編集部である。
つづく
恐る恐るデスクの最下段のひきだしを開ける。
そこには凄まじいものが入っていた。
獣のような表情で長野シュウイチを犯す自分の写真。
その自分の顔の上に不気味な女の顔が映し出されているのである。
(第六十七話 『適者生存』 参照)
オカルトに詳しいとされる山形ユウジロウに相談したところ、よくないものだから
神社などへ持って行けと言われたのだが、さすがにこの写真は持っていけなかった。
『恐らくこれのせいだ…』
何日か前の悪夢を思い出した。知人の米兵に無理矢理頼んだ一種の訓練。
ろくな装備のない状態で、自分が何処にいるのかさえ分からない状況のまま山に
取り残され、無事下山できるかどうか。
紛争地域でテロリストやゲリラに誘拐される危険性がジャーナリストにはある。
それを想定した模擬訓練のはずだった。
結果は下山を目前にリタイヤ。
つづく
終わったと思ってたらまたキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!
おお、心霊写真のその後か。
どないしたんかなと思っていたんだ。やっぱり持っていたかww
しかし、中学生なら模擬訓練より模擬試験だろww
山の中で奇妙な現象が起こったのである。山中、老人に助けを求められ、
肩を貸し、共に歩いた彼が実は既に腐乱した遺体だった。
その上、彼に案内された家にいた妻も既にこの世の人ではなかったのである。
そういえば最近ろくな目に合っていない。北朝鮮で貧しい村の取材中、当局に
追われ、自衛隊の演習を取材しようと勝手に立ち入り禁止地域を歩いていたら、
迫撃砲弾が降って来た。あれは危なかった。
更には飛行機内に特注のポリカーボネイト製ナイフを持ち込もうとしたらバレて
危うく逮捕される所だった。
最近ろくな目に合ってない…。間違いなくこの写真のせいだ。
恐々と手にする。持った感じごく普通の写真だ。リュウジはテープで柱に写真を
固定し、ベレッタを構えた。
「成仏!」
これでいいのだろうか。標準は自分の顔の上、恐ろしげなおんなの顔だ。
人が撃って殺せるなら、霊も撃って殺せるはずだ。そうだ簡単なことだ。いくぞ!
引き金は、引かれなかった。
つづく
>更には飛行機内に特注のポリカーボネイト製ナイフを持ち込もうとしたらバレて
危うく逮捕される所だった。
そりゃろくな事ない以前の問題だよ、リュウジ〜wwwwww
インターネットで『心霊写真 処理』を検索した。いい情報がない。
ただ、どうもやはり、『粗末にすると祟られる』ことが判明した。
「なんということだ!」
『…A君は、そんな心霊写真ウソにきまってるよ!といい、クツで、ふみました。
つぎの日、そのA君が足にほうたいをまいてやってきたのです。どうしたの?ときいたら
急にクルマがとび出してきて、ぷつかったといいます。ケガをした足は、その
写真をふんづけた方の足だったのです』
リュウジは泣いた。こんな恐ろしい話があるのかと泣いた。
しかし見ているのは明らかに子供向けの怪談系ホームページだ。漢字が少ない。
危うく撃つところだった。
踏むと自動車に轢かれる。
とすれば
恐らく9ミリ弾で銃撃すると、ロケットランチャーで粉微塵にされるぐらいのお返しが
待っているはずだ。
恐るべき兵器!まるでアメリカだ!
つづく
まさかgooキッズとかで検索していたりしてw
泣かないで〜。
とりあえず、手榴弾に写真を貼り、ピンに指をかけた。
そうだ。写真が残っているからいけないんだ。
跡形もなく消してしまえば大丈夫だろう。
しかし待てよ。
踏むと自動車に轢かれる。
とすれば
恐らく手榴弾で爆破すれば東京に核ミサイルが落ちるぐらいのお返しが
待っているはずだ!
恐るべき兵器!まるでアメリカだ!
反撃力は恐らく百倍から千倍…、手の打ち様がない。ひどいことをすれば
するほど、恐ろしいしっぺ返しが待っている。
ならば逆に優しくしたらどうだろう。
そうだ!アメリカと同じだ!
リュウジは『手厚く葬る』の意味を理解した気がした。とりあえず上っ面だけでも
味方のふりをして優しくすれば、お返しがもらえる。
アメリカだ!アメリカと同じだ!
つづく
しかし写真相手に優しくするというのはどういうことだろう。
とりあえず額に飾り、机に置いた。霊は女だ。
「愛してるよ。ハニー。君はなんてキュートなんだ…」
よし何かいい感じだ。続けるようにしよう。
悪いことが少なくなってきた気がするので、リュウジは写真を
持ち歩くことにした。財布に入れて、休み時間の度に優しく
囁いた。
「今日も一段は美しいぜ…とろけてしまいそうだ…」
女子に見られた。しかもかなり口やかましい女子だ。
「えー的場くんの彼女?見せて見せて!」
教室中騒ぎになってしまった。硬派で通っている的場リュウジだ。遂には
男子数名に取り押さえられた。
仕方がない。リュウジは教室内で、閃光音響手榴弾のピンを引いた。
霧原家で使ったものと同型のものである。
何とか写真は死守した。
つづく
持って帰る。とりあえず褒めておけば危険はないだろう。
「可愛いよ可愛いよ」
自分でも馬鹿馬鹿してと思っているのでかなり適当になってきている。
とそこへ身の丈二メートル三十を超える大男が入ってきた。
「リュウジいぃぃぃぃいるのかあぁぁぁぁ」
正に巨大な筋肉の塊。兄、リュウイチである。
「あ…兄貴!」
「ぐおおおぉぉぉ!溜まってるんだ。ケツを貸せ!」
「!兄貴!それだけは勘弁だ」
「なんと!貴様兄の言うことが聞けぬの申すのか!」
リュウジの兄リュウイチは、傭兵である。つい去年までフランス外人部隊にいた。
ただ、最大の欠点は敵と味方の区別が全くつかないことである。
ちょっと頭がどうかしているのだ。
つづく
だーーーーーっ!!
閃光音響手榴弾使ったのかw
しかしリュウジの頭の回転と言うか連想はグレートオナニーオニヅカ事件に
匹敵するくらい飛びすぎているw
「ケツを貸すか、死ぬか、選べ!」
リュウイチのイチモツは勃起すると太さがあの、お歳暮で贈られてくる
ハムぐらいの太さになる。挿入は即ち死を意味した。
どっちにしても死ななければならないらしい。
と、兄は机の上の写真を気にした。
「なんだこれは?」
「あ、それはその…」
「まぁいい。もらっておくぜ。オカズにしてやる」
ずしんずしんと音を立てながら兄は出て行った。
リュウジは気付いた。これで所有権は兄に移った!やった!
一方リュウイチは写真をモリモリと食べていた。食べながらシコっている。
どうも『オカズ』の意味が分かっているのか分かっていないのかはっきりしない。
つづく
兄は死んだ。なぜか死んでしまった。死因は心臓麻痺。
真実を知っているのはリュウジだけである。
…多分タタリだ…でも兄貴が全てを処理してくれた!ありがとう兄貴!
お通夜。葬式。そして兄は荼毘に付された。
兄はちょっと頭がどうかしていたので意思の疎通も取れず、仲良くも
なかったので悲しくはない。そもそも傭兵として活躍している段階で
いつか死ぬだろうと覚悟はできていたリュウジである。
火葬場で骨を拾う。
「いい仏様が出まし…あれ?」
半ば炭化した骨にまじって、一枚の写真が出てきた。
終
リュウイチおかしいよ〜wwww
ああ適当に書いたけど意外に面白ぇや。(笑)
えっ!あっ!リュウイチ死んじゃったの??
しかもラスト恐すぎ〜ww
うわぁぁ、怖い・・・。
初期の頃のよく死ぬ人が出ていた頃のジワジワくるもんがある・・。
リュウジはこれから亡き父と兄の分まで強くたくましく、
そして面白おかしく頑張ってくれ〜ww
一応読み返しましたが、ちょっとリュウイチのキャラクターが作中
世界からはみ出してるかなと思いつつ、怖い話としてなりたって
いるので、まとめサイトに入れるかどうか…どうしよう。
入れよう。ごめん。なんか欽ちゃん球団みたいになっちゃったけど(笑)
入れておいて下さい。すいません。お願いします>>まとめ人さん
いやもう今日のライブは良かった。書いてて楽しかったです。
それぞれレスできないけど合いの手くれた人感想くれた人、ありがとうです。
嬉しかったよー^^
>>87 こっちこそすっごい面白かったです!
お疲れ様でした。お休みなさい〜ノシ
>>65 >そういや前の心霊写真ちゃんとお払いしてもらったのかな〜
>>67 >リュウジに兄弟とかっているのかなぁ?お姉さんとかいたら凄そうw
作品の参考にさせて頂きました。勝手に使わせて頂きました。
事後報告になってしまいましたが感謝いたします。おかげで楽しい
怖い話しが書けました。どうもでした。ありがとう^^
今、来て読んで爆笑w
リュウイチ・・、なんて強烈なキャラなんだw
この兄弟の父親ってすごかったんだろうな。
ほんと、楽しい怖い話だw作者さん乙です!
さてここらで怖い話でもするか。
その晩、山形ユウジロウの姿はは埼玉県の山深い森の中にあった。
赤い軽自動車は既に舗装された道をはずれ、砂利の悪路を進んでいる。
つづく
しばらく進むと、植物が生い茂り、進むに進めぬ状況となった。
グローブボックスから懐中電灯を取り出すと、エンジンを切り、ユウジロウは
一人山中に分け入った。
歩くこと十分。そこには意外な人物がいた。
有吉健二。人呼んでホーク有吉。伝説的なアダルトビデオ男優である。
アダルトビデオ業界の黎明期を支えた一人でもあり、また現役でもあった。
「有吉…」
「…ユウジロウか…。いずれ来るとは思ってはいたが…まさか…」
「よりによってこんな場所とはな…」
ラッキーストライクの煙を吐きながら、ユウジロウは尋ねた。
「一体、何があった…」
冷たい秋風の中、有吉は語った。
あるビデオの出演依頼が舞い込んだ。無論、アダルトビデオである。
つづく
共演キタ――(゚∀゚)――――!!!
ただ彼が気になったのは、『モイライ』という製作会社だった。
新進のアダルトビデオ製作会社で、業界内でも話題になっていた。
話題といっても良い話題ではない。『モイライ』には悪い噂が付きまとっていた。
主にプロの女優を使わず、素人の女性を起用したアダルトビデオが『モイライ』の
特徴であったが、メインがいわゆる、レイプモノ、鬼畜モノと言われる類で、しかも
出演者の女性に対して事前の説明がないという。
「…要するに本気の強姦ってことか…」
「そうだ」
「しかしそんなビデオ今までいくらでもあっただろう」
ユウジロウは鑑賞はするが業界内の本当の事情というのはしらない。ただ、時折、
『あれは本物のレイプを撮影したビデオだ』という噂が流れることは多々あった。
実際に見たこともあるし、リアリティも感じていた。
しかし『モイライ』は悪質に過ぎるという。時には覚醒剤を使い、時には出演者の精神を
狂わせ、肉体を破壊し、『訴える』と言う者に対しては後ろ盾となっている暴力団がその
動きを力づくで封じる。
その上、出演者の女性に約束通りのギャランティは払われず、二束三文で済まされて
しまうという。
つづく
「確かに女の方にも落ち度はある…。素人とは言え街でスカウトされるか募集告知を
見てやって来るか…」
「いずれにしてもAV女優を目指してか、高収入を見込んでやって来るわけだな」
「そうだ。こっちも商売だ。ルールはある」
「『モイライ』はそのルールに反していると…?」
「業界のルールに反してもいれば社会のルールにも反し、法も犯している」
「しかしそんな製作会社はいくらでもあるだろう」
「度が過ぎる。依頼を受け、現場に行って驚いた」
苦虫を噛み潰したような顔を有吉は見せた。若作りをしているようではあるが、深い
しわが刻まれた。
「あの不衛生な環境。相手の女は素人。素人一人を十人で犯す輪姦モノの撮影だった。
しかもコンドームもなければ女はピルも飲んでいない…。聞けば男優の性病検査も
まともに行われていなかった。そのビデオのメインで出ろという話だった」
「…断ったんだな?」
「そうだ。断ると連中、脅迫してきやがった。バックの暴力団を動かすとな」
「バックの暴力団ってのは?」
つづく
「銀竜会系、静岡組…」
「銀竜会傘下か…」
「余り大きい組ではないが、色々と汚いシノギで稼ぎはあるらしい」
「…脅されて、山の中、ってわけか…」
「…そういうことだ」
ユウジロウはラッキーストライクのパッケージの中身を確かめると、
有吉に投げて渡した。
「すまんが五本しか入っていない」
「…悪いな」
自宅につく頃には既に早朝と呼んでもいい時間になっていた。そのまま
眠らず学校へ行き、仕事を終えるとすぐさまツネコの家に向かった。
「母さん、『蟹の爪』を貸してくれ」
「…相手は…?」
何もユウジロウは答えなかった。ツネコはゆっくり一杯の茶を飲むと、奥の部屋
から、一振りの日本刀を大事そうに抱えて持ってきた。
つづく
もしかして有吉はもう……
「…アカネは任せなさい」
「頼んだ」
『蟹の爪』と呼ばれる変わった名を持つ日本刀の由来をユウジロウは知らない。
とにかく山形家ではその日本刀を『蟹の爪』と呼んできた。
ユウジロウは『蟹の爪』を赤いぽんこつの軽自動車の後部座席に横たえると
クルマを都内に向けて進めた。
見事な冠木門を構える邸宅の前で止まる。表札には『陣内』とあった。広域指定
暴力団銀竜会元会長、陣内レツザン邸である。(第六十一夜 『天元』 参照)
黒いスーツの男に呼び止められる。
「なにか、御用ですか?」
「レツザンに会いたい。山形ユウジロウが来たと伝えてくれ」
「…はぁ…」
通常、陣内レツザンを、『レツザン』などと呼び捨てにするのは財政界の大物ぐらいの
ものである。対して、ユウジロウは冴えないスーツによれよれのコートという余りに
身分違いの恰好をしていた。
つづく
いや、あくまでも推測ね^^;
しかし昨日の話とすごい雰囲気の違いだ、ゾワゾワするw
「陣内様、山形ユウジロウ様なる御方がお見えになっておりますが…」
「…通してくれ」
「は」
陣内は葉巻に火を着けると、身構えるように座りなおした。
ユウジロウが現れる。びりびりとした痺れを陣内は感じた。
「久しぶりだな。会長」
「…元、会長だ。何用か?」
「静岡組について知りたい」
「…静岡…」
組織が巨大になり過ぎて、記憶がおぼろげである。末端の小さい組などは
全く知らないこともあった。ましてや陣内は現役を退いている。
「…その静岡組がなにをした…?」
「友人が脅迫されてね…。山にこもっちまってるんだ」
「…で?」
「つぶす」
「…」
つづく
「…わかった。少し時間をくれ…」
「三時間で何とかしろ。明日も仕事があるもんでね」
そういうとユウジロウは出された茶にも手をつけず立ち上がった。
「何処へ行く気だ?」
「…『モイライ』ってのをまずつぶしてくる。帰りに寄る」
「もいらい…」
「いい名だ。クロトが運命の糸を紡ぎ、ラケシスが糸をたぐり寄せて、
アトロポスがその糸を断ち切る…。無残に壊された女の運命そのままだ…」
「何を言っておる…」
「爺さんには関係のないことだ」
「…警察は動けんのか?」
「この世の正義は当てにはならぬ…」
「天の裁きも待ってはおれぬ…か…」
「闇に裁くしかないんだよ」
「…気をつけろ…お前は嫌いではない」
つづく
都内の雑居ビルの一室に『モイライ』はあった。
後部座席の『蟹の爪』を持ち、ゆっくりとビルの階段を上がる。
薄いスチールのドアに、『モイライ』と印刷された表札代わりの紙が
貼り出されていた。
鍵も掛かっていない。そのまま室内へ入る。中には四人の男たちが
いた。
「な、なんだてめぇ!」
「許せぬ悪を…何とする…。天の裁きは、待ってはおれぬ。この世の正義も、
当てにはならぬ…闇に裁いて…仕置きする…」
ユウジロウがしたこと。それは『蟹の爪』を抜き、三度突いて、一度振っただけだ。
それだけで四人は死んだ。
血まみれの室内で、返り血を浴びながら、ユウジロウは部屋の本棚にあった、
関東全域の地図を認めると、有吉と出会った場所に印をつけ、それを目立つ所に
広げておいて、『モイライ』を後にした。
再び、陣内邸である。ガードマンでもある黒服の男は血で染まったユウジロウに
驚きを隠せない様子だったがレツザンから告げられているのか、そのまま通した。
つづく
「分かったかい…?」
朱に染まったユウジロウを見てもレツザンは大して驚く様子も見せず
ゆっくり葉巻をふかしている。
「静岡組だったな…。色々調べさせたがどうも放っておくと厄介らしい…」
「…」
「こっちのケジメはこっちで取らせてくれ。なぁユウジロウ…」
「小指一本で済ますつもりか…?」
質問には答えず、陣内は袱紗に包まれた何かを机の上に置いた。
「…お前が静岡組の名を出さなければ、いずれは銀竜会に泥を塗る結果に
なるところだった。礼を言う…これはせめてもの…」
「いらね」
そのままユウジロウは葉巻の煙を蹴散らして帰っていった。
つづく
翌日『モイライ』事務所での惨劇が大きくニュースに取り上げられた。
しかし、暴力団との関係も警察は既につかんでいて、そちらの方面で
捜査がすすんでいるという。
一方で、銀竜会系静岡組の組長以下幹部三名の乗ったクルマが突堤から
海に突っ込んだらしく、乗っていた四名は全員死亡したというニュースも
小さく扱われた。泥酔した上での運転ミスが原因とのことだった。
また、『モイライ』の事務所で発見された地図には印があり、その場所に
何があるのかと捜査したところ、人気アダルトビデオ男優ホーク有吉の
刺殺体が発見された。
これもまた、『モイライ』の事件とからめて大きく報道されることだろう。
アダルトビデオ業界人、彼を師と仰ぐ男優、彼と共に寝た女優、また出版、
芸能関係者と多くの人々が参列する通夜の中、最も悲しんでいた男がいた。
山形ユウジロウである。
まだ果たしていないことがある。対決である。彼もそれを望んでいた。それだけが
悔やまれた。
有吉健二。その墓の前で全裸オナニーをしていたところ寺の住職に発見され、
追い掛け回されるのもまたユウジロウである。
終
>>97 いきなりバラしちゃうもんなぁもぉ!(笑) バレバレだった?
気ぃ使ったんだけどなぁ。悔しいぞ!
合いの手サンクスでした♪
>>99 ごめんねー。競演もさせたかったんだけど決着もつけさせたくなかったんだ。
なんかユウジロウが一方的にすごそうだけどハッタリの可能性もあるからね。
ホーク有吉永遠なれ。彼は伝説のまま終わらせたかった。衰えず。老いず。
永遠のシンボルとして。そして彼は神となる。
ホ、ホーク…。・゚・(ノД`)・゚・。
これは泣いた・・・。
っていうか合いの手入れるのはいいけど、途中で展開を予想したりするのは良くないよ。
水をさす以外の何物でもない行為だよね。
作者さん優しいから責めたりしないけど、もし自分がされる方の立場ならどんな気持ちに
なるか位わかるでしょ。
作品を読ませてもらってる以上はもう少しモラルを考えたらどうかな?
すみません、消えますorz
110 :
本当にあった怖い名無し:2006/09/29(金) 10:27:14 ID:f1qbV/LO0
まぁまぁ
ハッとして、思わずそういう合いの手入れちゃったんだよね…?
次から気を付ければおkって事でいかがでしょうか?
みんなで100話まで楽しみましょうよ^^
ホークが!ホークがぁ!!!・゚・(つД`)・゚・
>>109 消えんでいいです(笑) また合いの手よろしくです。
ただ私的には構わんのですよ。ライブだから逆に手がばれたと思えば違う
方向に流すこともできるわけですから。今回は前提として『ホークの死』が
あったので、シフトしようがなかったわけですが…。
ただ、『怖い話』の一種の伏線の張り方って『推理小説』に近いものがあるん
ですよね。『生きてると思ってる人が実はもう亡くなっていた』とか、『何かおかしい
地点があって、調べたら凄惨な事故現場だった』とか。
これ書く順番によるんですよ。倒叙モノって推理小説でもあるんですけど、『コロンボ』
とか『古畑任三郎』みたいな、『先に犯人が分かってるタイプ』ですね。
それをどう推理するかを楽しむ、という。
だから怪奇モノでも時間軸をそのまま、今回のお話だったら、『モイライ』からホークに
依頼が来る→現場で驚いて断る→静岡組に殺され、埋められる→ユウジロウが来る
というふうにもっていけば一番素直なんです。
ただ、面白くする為にユウジロウが来る、というところから始める。その時、ホークが
死んでいることは伏せられてる。勿論意図的なものなわけですが。
だから私としては、ヤラレタ!というところですよね。隠し切れなかったと。それは私の
文章の稚拙さや、文章上のトリック(叙述トリック)のヘタクソさが原因ですから^^;
ですが、読んでる方にとってみれば、『オチ』に相当する部分で、推理小説でいえば、
『先に犯人の名前を言われてしまった』的不快感があるかもしれないです。その辺り、
ふんで頂ければ幸いかと。
いずれにせよ読みはお見事。私も見抜けない叙述ができるよう精進します。
>>108 合いの手にも色んな種類がありますからね。
いやぁ…雑談スレに書くべきなんだろうけど、『静岡組に脅されて、埼玉県の山中に
とりあえず身を隠している』というふうに思わせたかったのだけど、強引過ぎた
かなぁ。
やはり海がよかったかなぁ。読者さん全員を欺くってのは難しいことなんだな、と
痛感。レスこそしないまでも気付いた人も多かったんだろうか。
いずれにせよ、もしお怒りのようなら、私の顔に免じてどうか…。
自分も気づいていたけど(スナックママの時とか似てたんで)
合いの手は入れない主義だから見ていた。
揉めるんだったら合いの手は禁止にしたら?
こういう合いの手はOKとか駄目とか決まった決まりもないし。
>>115 > 揉めるんだったら合いの手は禁止にしたら?
ライブの意味がなくなります。合いの手の存在があるから、あぁ読んでくれてる人が
いるのだな、と思えるんです。
考えてみて下さい。2時間から下手すると4時間一人で投下してるわけです。合いの手
禁止にするぐらいなら、こちらで適当に書いてあらかじめ準備し、単にコピペします。
というか2ちゃんねる(掲示板)に投下する意味自体が失われます。できれば合いの手の
禁止は勘弁していただきたいなと。
2〜4時間レスなしで書き続けるってちょっと作者さん
可哀相な気がする
とりあえずネタばれレスのみ禁止でいいんじゃないの?
雑談スレの方でリクでましたのでリク受付終了です。
また、昨夜の話で85話を数え、残り15話となりました。
今回、リクが出ている話が2つですので、その話を消化すると、残り13話。
また最終3話においてはほぼ内容が決まっている
(というか、最終3話ひとかたまりで最終話)ので、実質、自由に書けるのは
10話です。
よって、特別私のネタが尽きてリクエスト募集をお願いしない限り、リクエストは
これにて完全に受付終了とさせて頂きます。今までリクエストをくれた皆様、
ありがとうございました。
さてここらで怖い話でもするか。
赤いポンコツの軽自動車は、上信越道を長野県に向かい走っていた。
速度こそ遅いが走りは軽快である。
つづく
カーナビゲーションシステムもなく、MDもCDデッキもない。
ラジオとカセットだけである。一応持ってきたMDが聞けないことを知った
木下サエは残念そうだった。
「ねぇ先生もっとノリのいい曲ないの?テクノとか…せめてユーロビートとか…」
同じ事ばかりを三十分に一度程度のペースで口に出すので運転手である
ユウジロウは無視をした。
「霧原のクルマ借りればよかったのにぃ」
「ついてくるって言ったのはお前だぞ」
「…だけどさぁ…」
向かう先は長野県のある山中である。そこに霧原家の保有している屋敷があるの
だと言う。と、言うよりも霧原家の保有している山にその屋敷が建てられているらしい。
霧原トオルの父方の祖父、テツザンが妻アヤメと暮らした屋敷である。
((第五十一夜 『雪解』 参照)
トオルが幼い頃から両親は世界中を飛び回っていて、幼い彼は日中保育園に預けられ、
食事の面倒や夜寝るときなどはベビーシッターがついていた。
ただ夏休みや、冬休みになると長野県のその屋敷へと連れて行かれ、祖父らと暮らしたそうだ。
つづく
思い出深いと言う。
しかし、小学生に上がる頃、祖父と祖母は連れ添うようにあの世へ旅立ってしまった。
以来、長野の山が懐かしく、事ある毎に、そこへ連れて行って欲しいと両親に
願い出るのだが、『また今度ね』と適当にはぐらかされている。
両親にとって見れば、もう祖父と祖母のいない屋敷などに用はないのである。
また一人で行こうにも行く方法がなかった。何せ最寄り駅までクルマでさえ一時間は
かかるのだ。
それを聞いたユウジロウは、じゃあ連れて行ってやろうかと提案した。普段余り表情を
表に出さないトオルが子供のように喜んだのが印象的だった。
アカネも提案に乗ったが、一応トオルの恋人である木下サエにも一言言っておいた方が
いいのではないかと連絡をとってみると、受験生であるにも関わらず、勉強道具の一つも
持たずについて来た。
土曜の朝明けきらぬうちに出発し、向こうで一泊して、日曜日にゆっくり帰ってくる予定。
もう主を失って十年近く経つ屋敷だが、両親が老後に暮らすために残してあり、管理人も
雇いきちんと管理されており、すぐに生活できる状態にあるとのことだった。
長野県に入り、地図を見ながら山道を進む。途中途中、山間の集落らしき場所があり、
そこでとりあえず休憩した。
つづく
屋敷の管理人には既に連絡がついていて、食料も適当に用意しておいてくれるらしい。
全くの手間なしであった。
一応見た目はコンビニエンスストア風だが、店名も聞いたことがない、近代風よろず屋と
いった風情の店で飲み物を買い、ユウジロウは何時間かぶりのラッキーストライクを
美味そうに吸った。
何となくその様子をサエが興味深げに見ていた。
「どうした木下?」
「え?あぁ、何でもないです」
「…そうか」
さて、とユウジロウは考えた。この先、いよいよ道がよく分からないのだ。トオルもほとんど
覚えていないという。ちょうど店の向こう隣が駐在所だったので無駄だと思いつつも訊ねて
みた。
と意外にも霧原家ではその辺りでは知られた名家で、詳しい地図まで書いてよこしてくれた。
それでも、屋敷に行き着くまではここから四十分はかかるという。
再び、赤い軽自動車は走り出した。少し山道を苦しそうに。
つづく
きてた
_ ∩
( ゚∀゚)彡
⊂彡 りゅうじ!リュウジ!
しばらく行くと、駐在所の巡査が、
「しばらく道なりでいいんですが、途中大きな分かれ道があります。それを
絶対に左へ行って下さい。右へ行くと道が途中でなくなって、Uターンをする
スペースもないんで厄介です」
といった場所とおぼしきY字路が現れた。一度クルマを止めて巡査が書いてくれた
地図を確かめる。御丁寧にY字路の箇所の右側には赤いボールペンで×印が
書かれ、左へ行くよう矢印が書かれていた。
「左左…と…」
かなりの悪路である。タイヤが心配だった。しばらく交換していない。ゴムもだいぶ
硬くなっているのではないだろうか。こんな所でパンクだけはしてほしくなかった。
「アカネ、この辺りって携帯入るか?」
「ん?」
二つ折りの携帯を見ると『圏外』との表示だった。サエもトオルも確認したが、結果は
同じだった。
三十分は走っただろうか。山の頂上というわけではないが峠に差し掛かり、道が平坦に
なる。しばらく進むと、突然それは現れた。
つづく
「こ…こりゃあすげぇ…」
ユウジロウは、文化祭でトオルの亡くなった祖母と祖父らしき人物を不思議なことに目撃
している(第五十一夜 『雪解』 参照)。和服をきっちりと着こなした人物だった。
それにトオルが『屋敷』というので、つい、和風の邸宅を想像していた。
しかし目の前に現れたのは完全な洋館である。それも凄まじい巨大さだ。そのままホテルに
してもどれだけの客を収容できるか。
「すげー!これ霧原のお爺ちゃん家?」
「そうそう。懐かしいな…そのまんまだ…」
「大きいね…お城みたい…」
クルマ一台悠々と通れる門を抜け、芝生の上を走り適当な所に止める。と、もう一台スズキの
ジムニーが止まっているのが見えた。
館から、一人の老人が出て出迎える。
「やぁ…トオル坊ちゃん。お待ちしておりました」
よく覚えはないのだが、その管理人はまだ祖父が生きていた頃執事のようなことをしていたらしい。
館の鍵を渡し、色々と説明をすると老人はジムニーに乗り山を下っていった。
毎日下の集落から通っては館の面倒を見ているのだ。
つづく
「『弟切草』か『バイオハザード』って感じだな」
「どっちも怖いよ」
西洋風に和風にしろ、豪奢な建築物には何処となく恐怖感を覚える。実際西洋の城や
館、武家屋敷などを舞台にした怪談や怪異譚は数多い。これも一種のルサンチマン
のようなものなのかとユウジロウはぼおと考えていた。一方で全く見当違いな気もした。
中は清潔で、扉を入って正面に巨大な階段が二階へと伸びている。床は赤い絨毯が
敷き詰められていた。
「宝塚のセットみたいね」
『宝塚』と聞いてサエのこめかみに青筋が浮いた。彼女に『宝塚』は禁句である。
(七十三夜 『忘れ物』 参照)
「懐かしいな…」
「部屋はいくつあるの?」
「数え切れないぐらい。多分俺が入ったことない部屋もあるよ」
「へー…」
「あ、荷物忘れてたな」
クルマに一日分だが着替えを入れたバッグを忘れてきた。巨大な扉に手をかけるが、
微動だにしない。
つづく
「…あれ?」
開け方にこつでもあるのだろうか。管理人は確かにここから出てきた。鍵をかけた
覚えもないが。
「霧原、悪い、クルマに荷物を忘れたんだ。ドア、開けてくれ」
「自分で開けなよ」
「開けられるなら開けてるよ。開かないんだ」
「?そんなの普通に…」
やはり開かない。鍵をいじってまた開けようとするが開かない。
「あれ。本当だ。開かないや」
「じゃテラスの方から出よう」
「テラス!洒落てるなぁ」
赤絨毯を踏みしめて、向かって右の部屋へ。そこからテラスへ出られるらしい。ちなみに
洋館であるから土足である。
その部屋に入った瞬間、ユウジロウとトオルは恐怖した。
つづく
奇妙なのである。大きな窓からテラスへ出られるようになっているのだが、
テラスの外に何もないのだ。
何もないというのは比喩的表現でも何もない。ただ真っ白で、何もない空間が
あるだけなのである。
「な…なんだこりゃ?」
テラスの柵を乗り越え外へ。そこは地面も、周囲も空も、全てが白い、単なる空間
だった。どこまででもいける。いくら走っても終わりのない空間。
山中の屋敷である。しかし木の一本もなければ青い空も、芝の地面もなく、ただ、
純白ばかりがそこにある。もちろん赤いポンコツの軽自動車もない。
言ってしまえば、白い空間に屋敷だけがあるのだ。
「…で…出れるけど出れねぇ…どうなってんだ霧原!」
「し…知らないよ!」
慌てて広間に戻る。
「あれ、荷物は?」
「えらいことだぞ!出れるけど、出れないんだ!」
つづく
「なにそれ?なぞなぞ?」
「違う違う!」
「あっちの部屋はどうだ?」
どたどたと走り回る男二人に仕方なく女二人もついて行くことにした。
せっかくのロマンチックにムードが台無しである。
しかし、その部屋に入った瞬間、女はそれを理解した。
「…え…何これ…」
やはり窓の外は真っ白だった。何もない。手も出せる。空気はあるらしいが
風を感じるわけでもないし、暑いわけでも寒いわけでもない。
次々と部屋を覗いたが、全て窓の外は白かった。
「こ、この部屋は?」
「何だったかな…」
「頼りないなー!」
開けるとそこには、どうも見たことがあるが、いてはいけないものがいた。
つづく
ピカ○ュウである。絵ではない。実際にどう見てもピ○チュウらしき謎の
生命体がいた。
「…あれってピカチュ○だよね…?」
丸々と太った猫に見えなくもないがどちらかといえば○カチュウだ。そいつは
ばりばりとレタスを食べていた。厨房である。
可愛いが現実にいてはいけないものだ。近寄っていいものかどうかも迷う。
しかしレタスを食べているところから考えると草食だろうか。
「見なかったことにしよう」
「…そうだね…」
とりあえず厨房を後にする。
するとその瞬間、人の叫び声と何か爆竹を鳴らすような音が聞こえた。二階からである。
「二階だ!」
二階へあがる。するとそこには、高さが二メートル程ある更に奇妙なものがあった。
人体である。ただし頭部がなく、なにか公園にあるクルマ止めのような『コ』の字の
器具が顔に相当する部分にあり、肩がひどくえぐれていた。それがゆっくりとこちらへ
迫ってくるのである。皮膚は白く、妙な光沢があり、何かオイルかローションを塗りつけた
ようでもある。
いずれにせよかなり不気味なものだ。
つづく
「デタ━━(゚Д゚;)━━━ン!!!!!」
「誰だ!誰かいるのか!?」
声がする。その二メートルの何かの背後からだ。
「いるいる!」
「離れていろ!手榴弾を使う!」
日本でそんなことを言う奴はそういない。
「的場か!」
「なに!?ユウジロウか!」
「何やってんだ!」
「貴様こそ!」
「ここは霧原の家だ!手榴弾はやめろ!」
「何だと!わかったとにかく離れていろ。すきを見てそちらへ向かう!」
とりあえず四人は階下へ降りた。
何分かすると、命からがらといった様子で的場リュウジがやってきた。
今日はM16アサルトライフルを携えている。
つづく
「どうなってるんだ畜生!」
ユウジロウは説明を求めた。リュウジは訓練中だったという。何の訓練かはもう
どうでもいい。大体突撃銃がジャーナリストに必要かどうかという問題から入らなければ
ならなくなる。
遭難し、山中をさまよい歩いていたところ、この洋館を発見し、まさかと思いドアを開けたら
あっさり入れたのでそのまま一晩泊まっていたという。
「鍵はかけてあったはずだけど…」
表にジムニーが泊まっていて、人の気配がしたとリュウジは言う。おそらく管理人が今日
トオルたちがやって来るので準備をしていたのだろう。その隙に入り込んだのだ。
そして管理人の気配が消えたので、誰もいなくなったのだろうと疲れて眠りこけていると、
また人の気配がし、飛び起きた。つい何時間か前。
「また管理人のおじさんが来たんだね」
「そうだろう。しかしその時は何ともなかった。また隙を見て脱出しようと考えていた」
しばらくすると今度は賑やかな声がした。ユウジロウら一行である。彼らが館に入った
その瞬間に、突然様子がおかしくなり、何事かとうろうろしていると、先ほどの化け物に
出くわし、今に至る。
つづく
「…何者だ奴は…?」
意外と冷静なリュウジにユウジロウは驚いた。的場リュウジ、お化け、幽霊の類は全く
駄目ではなかったか。
訊ねると、実は彼には明確に幽霊とそうではないものの判別の仕方があるらしい。
物理的な攻撃が有効であれば大丈夫なのだそうだ。
要するに触れれば怖くないし、触れなければ怖いということだろう。ただ心霊写真、呪い、
祟りは全く駄目だと言う。
「一発ぶっ放したが、当たった」
先の怪物にリュウジは発砲している。確かに着弾したそうだ。だから大丈夫らしい。
「ただ、血も何も出なかったぞ。ダメージもないようだった…」
「だから手榴弾か?」
「そうだ」
「ってか化け物退治よか出ること考えない?」
「なに?やはり出れないのか?外が真っ白だが…」
「出れるには出れるけど、その白い世界から抜けられない」
「なんてこった…」
つづく
「明日になれば管理人のおじさんまた来てくれるけど…」
「外部からはどうなってるんだ?」
訳も分からず話していると、遠くから何か声が聞こえる。
「誰か!」
身を伏せつつM16を構える。呆れてサエが言った。
「あんたのデカい声にビビるよ…」
「…音を立てるな…っ」
「…ぉ…ょぉ…」
「!」
何かが確かに聞こえる。二階ではない。同じ一階からだ。
五人固まって音の方向に向かう。定期的にその音は聞こえてくる。やはり
人間の声らしい。
「…ぉ、ぃぃょぉ…」
「何か言ってるね…」
つづく
「…ねぇ…あれってかくれんぼの時の声じゃない…?」
アカネが言った。かなり耳はいい方だ。アカネにははっきりと、
「もぉいいよぉ〜」
と聞こえているらしい。言われてみれば確かにその響きだ。独特の抑揚がある。
「子供が忍びこんでる…?まさか…」
リュウジは少し泣きそうだった。今度こそ幽霊かもしれない。
「先生、的場くんが泣きそうです」
「か、からかうんじゃねぇ!」
「的場、とりあえずここは霧原の家だ。発砲と爆破は許可しない」
「…そんな…」
仕方なくリュウジはM16の安全装置をかけ、グリップから手を離した。
「もぉいいよ〜」
また、聞こえる。
つづく
「だったら探すのやめようぜ。見つけて何になる?」
「…確かに」
「でもあの声聞くとつい探したくなるよね」
「余計なことは言うな!」
とりあえず、直接身の危険はなさそうだが、二階をうろついている謎の巨人が
気になる。最大の問題はいつ出られるのかだった。
「ねぇここって天国ってことはないよね…?」
「え?」
「例えばさ、あたしたちってもう実は死んでて…」
「アカネ」
「…」
とりあえず悪い方向に考えが及ぶことは避けたかった。誤った判断を招きやすい。
ときおり微かに聞こえる『もぉいいよ〜』が気になる。不思議なもので、一度何と
言っているか確認してしまえば、あとは元々聞き取れなかった場所にいてもそう
聞こえてしまう。
つづく
「霧原、煙草吸ってもいいか?」
実を言えば、的場リュウジと霧原トオルは一年の時の同級生である。知らない仲
ではない。
「あぁ、おじいちゃんの部屋に灰皿があるから取ってくるよ」
「…一人で平気か?」
「うん」
この状況の中で、不思議とトオルは冷静であった。自分でも妙に思っていた。見知った
場所だからだろうか。祖父の書斎は一階の階段の裏手にある。
入るとそこには、髪の長い女が立っていた。こちらに背を向けている。瞬間、何かが一瞬
脳裏をかすめた。何か、懐かしい感じ。
女は振り返った。しかし、女は振り向いても後ろ向きだった。顔がない。胸も、腹もない。
あるのは後頭部と背中だけ。どちらを向いても後ろ向きなのである。
電撃的に思い出した。
「ウシロオンナ!」
つづく
ちょw
M16カコイイ!(・∀・)wktk
戻ってきたトオルは何故か笑顔だった。
「何笑ってんだ?灰皿は?」
「あ、ごめん。忘れた。ついてきて」
このメンバーの中でトオルが主導権を握るなどまずあり得ないことだった。
しかし従うほかない。
躊躇なくトオルは階段を上がっている。
「おい上にはあの化け物が…」
「いいのいいの」
気でも狂ってしまったかとユウジロウは思った。こんなに楽しそうなトオルは
見た事がない。しかもよりによってこの状況で。二階へ上がり長い廊下を
直角に曲がると先ほどの化け物がいた。
トオルは近づいていく。すると、化け物は近づいてくるトオルにかしこまるように
膝を折った。
「コイツはね、こうやって遊ぶんだよ!」
ただし頭部がなく、『コ』の字型の器具が顔に相当する部分にあり、肩がひどくえぐれている
怪物。トオルはその怪物に乗った。えぐれている肩の部分には太ももがちょうど乗る。そして
頭部の『コ』の字型の器具を握った。
つづく
ようでもある。
ごめん前レスの最後の一行無視して。何か残ったらしい…微妙に文章つながってて
変だww つづくようでもあるって…(笑)
怪物が立ち上がる。それは正に『肩車』である。肩車をするに都合のいいように
できている。
二メートルの怪物に肩車されたトオルは三メートル程の高さから見下ろして言った。
「思い出したよ!」
残る四人は完全に呆気に取られている。
「ついて来て」
怪物に肩車されたままトオルは進む。ついて行くしかない。長い廊下途中にはただ
ひたすら『でんぐり返り』を繰り返し、自らがタイヤのようになって転がっていく女の子や
ワニとブタを合わせたような奇妙な生物、他にも説明不能な不可解なものが館中に
存在していた。その度にユウジロウやアカネ、サエ、リュウジは驚くのだが、トオルは
止まらない。
止まらないどころかその全てを知っているかのように説明までしてくる。
「…じゃあさっきのレタス食ってたピ○チュウみたいのは…」
「あれはエレキネコ」
「エレキネコ…ネコなんだ…」
「そうそう。電気出すのもピカ○ュウと一緒。偶然だけどね」
「あ…へぇ…」
つづく
「もう降ろして。ありがとう。楽しかった」
怪物はまた膝をついて、トオルを降ろした。天井から鎖がぶら下がっている。
それを引くと、がらがらとハシゴが降りてきた。
「ここから天井裏に行けるんだ」
ぞろぞろとトオルに続いて天井裏へ。さすがに管理人の手も及ばないのか埃っぽい。
沢山の玩具が転がっていた。ユウジロウの世代からすれば最近の玩具だが、サエ
やリュウジから見ればどれも懐かしい品々だ。
「おぉ。これは俺が欲しかったやつだ!」
中二トリオは盛り上がっている。しかしどう見ても二十台半ばのリュウジが玩具を見て
喜ぶ様は少々不気味ですらあった。
「…おい霧原、それで、一体この館はどうなってるんだ?」
つづく
ユウジロウの質問にトオルはにこにこと笑ったまま答えず、部屋の隅に置かれた木製の
箱の上からスケッチブックを持ってきた。
「これが答え」
渡され、開いてみると、書かれているものは全て館にいた奇妙な生物や怪物たちだった。
表紙には、つたない文字で『ようかいひゃっか』と書いてある。
アカネは理解した。館にいた妖怪たちは、トオルが作り出した幻影が顕在化したもの。
幼いトオルが創った妖怪たちだ。姉はいたが歳は離れていたし、父や母はかまってくれない。
孤独なトオルが遊び相手として想像し創造した妖怪。それがこの館には住み着いている。
ユウジロウからスケッチブックを取り上げて、最後のページを見ると、『かえりたくない』という
文字と、『おじいちゃんとおばあちゃんとぼくだけのいえ』とあり、この館そっくりの絵が描かれ
ていた。夏休みや冬休みが終わればまた寂しい我が家へ連れ帰られるトオルの無念をアカネは
感じた。寂しかったんだね。ずっとここにいたかったんだね。
玩具に夢中になっている三人をしばらく放っておく。兄のユウジロウは何が何だか分からない
様子だったが、とりあえずアカネに大人しく座っているように言われたのでそうしていた。
玩具遊びが終わるとアカネは言った。
「そろそろいい?」
「…うん。充分」
スケッチブックをアカネから手渡されたトオルは最後のページをしばらく眺め、一粒涙を流すと
一ページだけ破り去った。瞬間、白い空は青々と輝き、屋根裏部屋の玩具を更に明るく照らし出した。
終
>>123 ごめんなんか変に爽やかな話しになってしまった(笑)
リクではリュウジVS妖怪の話だったんだけど…。
そもそも俺オカルト好きだけど、妖怪ってのは余り知らなくて、
やるならオリジナルにしてみようと思ったのが大きな間違い(笑)
>>138 合いの手サンクス!
揉めたってほどでもないけど、合いの手入れにくい空気になってないですか?
なってなけりゃいいんだけども。ガシガシ入れてくれた方がこっちも嬉しいです。
合いの手ないと結構寂しいんですよ(笑) たまにド深夜なんかに書き込むと
そういう日もあるんだけどね。
>作者さん
今日の話もよかったです!特に肩車されたトオルにみんながついて行く。
そしてトオルが創造したたくさんの妖怪(?)とすれ違うシーンは宮崎
アニメのようでした。怖いような、かわいいような。あと少しですね。
応援しています。がんばって下さい!!
作者さん乙です!
今日の話もよかったー!
途中妖怪が続々出てくるシーンではこれからどんな展開になっていくのかとwktkしました。
意外な展開(いい意味でです)に驚きましたが、
いいじゃないですか爽やかで!w
たまには爽やかな話もいいもんですw
>>145 こんな時間に感想が…ありがとう。宮崎アニメ…畏れ多いです^^;;なんか、
アカネの想像したものが出てくる話(第七十一夜 『幸御魂』)みたいに
なってしまって…。細かい部分を書ききれませんでした。でも個人的に好きな
話です^^
>>146 なんかもういっぱいいっぱいで…。リクでは妖怪vsリュウジ+新生オカルト同好会
だったんだけど全くあらぬ方向にいってしまって…。話としてはいいと思うんですけど
ね…。本当合いの手ありがとでした。リュウジが完全に脇に回ってしまってすまん
です。。
やはり精神的な弱さが出ますね。強い心が欲しいです。
さてここらで怖い話でもするか。
長野県某山中、霧原邸の夜である。
晩の食事はカレーだった。
つづく
お、続き?
幼い霧原トオルのスケッチブックにあった、遊び相手の妖怪たちはもういない。
『ようかいひゃっか』と題されたスケッチブックがトオルに回収された時点で、
消えてしまったらしい。いや、むしろ『絵に戻った』と言うべきか。
管理人が用意した食材は適量で、ちょうど明日の朝食べる分程度が用意されていたが、
的場リュウジを巻き込んだことでバランスが崩れた。
『たらふく飯を食った奴が最後まで生き残る』と父親から教育されたきたリュウジの食欲
たるや凄まじく、人の三、四倍は平気で食べてしまう。
それでも、まあ朝食一食抜いた程度で死ぬこともなかろうということになった。
霧原邸の浴室も当然のように広い。アメリカ映画に出てくるような、脚のついた、金色の
バスタブである。粗暴な木下サエもやはり少女なのだろうか、憧れがあったらしくひどく
喜んでいる。無論、アカネも同様である。しかし実を言ってしまえばアカネはラブホテルなどで
凝った作りの浴室は一通り見たことがあるので、サエほどの感動はない。
「アカネさん一緒に入ろうよ!」
純粋なサエの申し出。アカネのプロポーションに良さは服の上からでも分かる。同性愛的感情
ではないが、一種の憧れとして大人の女性の裸体を見てみたい気持ちがあった。
しかしアカネは気になった。ユウジロウとリュウジである。トオルは問題なさそうだが、危険な香りを
漂わせる男が二人いる。
別々に入ることになった。
つづく
とりあえずリュウジの武装を完全に解除させ、ベレッタはアカネが持った。
居間の机に四人で座る。椅子から少しでも降りる素振りを見せたらアカネは
本気で撃つつもりである。
「…ちょっとトイレ」
ちゃ。銃口が向く。安全装置が外された。扱いは分かっているらしい。
「…」
座りなおす。
「そうだ。美しい星空の写真でも撮りに…」
ちゃ。銃口が向く。
「…」
座りなおす。
やがて、髪の毛からうっすら湯気を立て頬を上気させたサエが戻ってきた。
寝巻き代わりにジャージを着ている。
「おまたせ!」
銃の扱いのレクチャーを受けたサエは、アカネが風呂に入る間、同じようにして
三人を見張った。
つづく
遠くでシャワーの音が立ち始めた。
ユウジロウはアカネの裸など見慣れているので特別動きはない。トオルも
目の前に彼女がいる状態でまさか他の女のシャワーシーンを覗きたいと
思わせる素振りなどするはずもない。
「だめだ!」
しかし問題はリュウジである。山中にこもり続けていたためここ三日ほど、
性処理を行っていない。椅子から立ち上がった。
「撃つよ!」
「ふん。的も撃ったことがないド素人が生きた人間など撃てるはずが…」
ぱん。乾いた音が響いた。
「ぐわあぁぁぁ!」
弾丸はリュウジの頬をかすめて背後の柱に食い込んだ。倒れこんだリュウジの
額にぴたりとベレッタの銃口が押し当てられる。
「…次は外さない」
「座る!大人しく座る!」
頬から鮮血が滴っているが治療することさえ許されなかった。ユウジロウとトオルは
かちんこちんに固まっている。
つづく
頭にバスタオルを巻いてアカネが戻ってきた。簡単なスウェット姿だが、
そろそろ大人の艶香が漂い始める年頃である。
トオルは一瞬目を奪われたが、サエがいる手前じろじろと見ることも出来ずに
いた。
「あれ?的場くん、どうしたのほっぺた…」
「動いたから撃った」
「…よ…よく撃てたね…」
末恐ろしい女である。これでことセックスに及べばかなりのマゾだというのだから
世の中分からない。
やっと自由に動くことを許されたリュウジは応急処置用の救急セットで頬の治療に
当たった。アカネがやってあげると申し出たが、硬派で通しているリュウジである。
断り自分で治療した。といっても出血量の割りに傷は縫うほどでもない。絆創膏でも
貼っておけば大丈夫そうだった。
ただ、あと数センチずれていたら死んでいただろう。
「はい。ありがとう」
殺しかけた相手に礼を延べ、その殺しの道具として使った拳銃を笑顔で返す女。木下サエ。
リュウジは、彼女の適職を『暗殺者』と診断した。
つづく
夜もふけて、男衆もそれぞれ適当に風呂に入りシャワーを浴び、
ユウジロウは山の麓の酒店で購入した地酒『霧原』の栓を抜いた。
なんでも、『霧原』というのはこの辺り一帯の古い知名なのだそうだ。
無論それはこの付近を開拓した中心人物である霧原家から取られた名である。
普段余り日本酒は飲まないユウジロウであったが、さすがに教え子と同じ名を
持つ酒に興味を持ち思わず一升購入した。無論空き瓶も家に持って帰るつもり
である。
トオルは興味を示さなかったが、サエは飲んでみたいと言い出した。教育者として
問題だが、舐める程度ならいいだろうとほんの少しだけ飲ませた。
「へー…飲めるもんだね」
「結構甘口だな。飲みやすい。的場はどうだ?」
給食の時間ですらバーボンを平気で飲む的場リュウジである。完全に別格扱いだ。
見た目が二十台半ばというのも要因の一つだろう。これで一昨年までランドセルを
背負っていたというのだから驚く。
「自分のがある」
尻ポケットからスキットルを抜き出すと、一口飲んだ。中身はフォアローゼスだという。
煙草も吸いたい気分だったが山形アカネがいる。嫌煙者がいる前では原則吸わない。
リュウジなりのマナーだった。
つづく
「しかしすごいもんだなぁ。自分の名前がついた地酒があるなんて…」
「別に俺の名前って訳じゃないよ…」
話は霧原家の話しになったが、古い話しはトオルもよく知らないらしい。
「将来はお父さんかお母さんの会社継ぐのか?」
複雑な家庭環境を考えると聞いてはならない質問のような気もしたが、
あまくちで飲みやすい日本酒『霧原』がユウジロウの口を軽くした。
彼は全くその気はないらしい。まだ将来のことは決めていないそうだ。
サエも適当、アカネもはっきりと将来を決めているわけでもないし、
それはユウジロウも同様だった。何せ色々と問題のある行動を起こしている。
教師の職を失う日が来るかもしれない。そう考えると最も将来の展望が
はっきりとしているのは的場リュウジだけということになる。
「すごいよね。実際世界中飛び回ってさ」
サエに褒められたようだが、リュウジに実感はなかった。彼は単に好きなことを
好きなようにやっているに過ぎない。大人しく、危険のない事件記者にでもなれば
よいものを敢えて戦場カメラマンの道を選ぶ選択が、果たしてすごいことなのか
どうか。単に命を無駄に削る愚か者ではないかと思うことがある。
表では、山から吹き降ろす風が不気味に唸りを上げていた。
サエとトオルは元はオカルト同好会のメンバーであり、またユウジロウは顧問だった。
つづく
一しきり、話が落ち着いて、風の音に耳を傾けていると、二十三時を
告げる時計の音がぼおんと鳴った。
「…怪談しようか?眠くなるまで」
「!…眠い!」
サエとトオルは知らなかった。的場リュウジの唯一最大の弱点。
基本的に弱味は見せないリュウジである。もう『怪談』と聞いた時点で
怖い。いつかホームページで読んだ怖い話を思い出した。
心霊写真を粗末に扱った子供が自動車に轢かれ怪我をした。
そして自分が撮影した心霊写真。
死んだ兄の遺骨から再び現れた心霊写真。
山の老夫婦…。
「眠いなら寝てていいよ」
絶望的状況に追い込まれた。ここに残れば怪談を聞かされる。だからと
いって一人、寝室で寝るのもいやだ。夕方、それぞれの寝室を確認したが、
ベッドがあるだけでテレビもラジオもない。そんな部屋で一人で寝られない。
つづく
霧原邸にはいくつか来客用の寝室があり、今晩はそこで眠る
ことになっていた。それぞれベッドは二つあるので、トオルと
リュウジ、アカネとサエがそれぞれ一部屋ずつ使い、ユウジロウは
一人で眠る。
せっかくの夜だからサエはできればトオルと共に眠りたかったが、
さすがに言い出せずにいた。
「寝ないの?」
「…いや、今日は眠すぎる。ここで寝るとしよう。構わず怪談を続けたまえ」
腕を組みこうべを垂れて、そのままリュウジは寝ようとした。
途端に怪談が始まった。スピード勝負である。怪談が怖くなる前に寝てしまえば
いい。ここならみんながいるから大丈夫だ。早く眠らなければ…
「じゃあ、この辺りのことで話そうか。せっかくだし」
「あるの!?」
「あるよ。それもすぐ近くの話しなんだ。この山はウチで持ってる山なんだけど。
この山って形がちょっと変わってるんだ」
「山の形が?」
「うん。いや、詳しくは知らないんだけど、お爺ちゃんが言うにはね…」
つづく
「この山は、階段みたいな形になってるんだって。ピラミッドみたいに」
「階段?」
「そう。山の坂道があるでしょ?しばらく登ると平坦な場所になる。その
平な場所を進むとまた山の登り道。しばらく登るとまた平らになる」
机の上に指で図を書きながらトオルは丁寧に説明した。
「それで、その平坦な場所を、僕の祖先たちが開墾して、畑やたんぼに
したんだ」
「へー…」
「でも山一つなんて面倒が見切れないから、小作人を雇って、それぞれに
畑を貸したんだよ」
「昔話に出てくる庄屋さんみたいだね」
「そんな感じそんな感じ。あぁ、それで今日、ここに来るまえ、交番に寄った
でしょ?」
「駐在所だな」
「うん。そこで、お巡りさんが説明してくれたでしょ?分かれ道があって、左へ
行けって」
つづく
ユウジロウは思いだした。そう。確かに駐在所の巡査は、わざわざ地図まで書いて、
『途中大きな分かれ道があります。それを絶対に左へ行って下さい。
右へ行くと道が途中でなくなって、Uターンをするスペースもないんで厄介です』
と教えてくれた。妙に強調するなとは思っていた。
表の風が強くなり、どこかの部屋の窓がかたかた鳴る音が不気味に聞こえ始める。
「その分かれ道を右へ行くと、そこにもその平坦な土地があって、そこにはこの山でも
かなり大きい畑があったんだ。だから小作人の一家族じゃとても面倒がみきれない。
だから、七家族の小作人たちが、集まって住んでた」
「ちょっとした村、だな」
「うん。でもその村である晩トラブルがあった」
「トラブル?」
「それが何なのか分からない。とにかく、トラブルなんだ」
「どういう意味…?」
「ある一晩のうちに、七家族全員死んじゃったんだ」
「!」
つづく
「当時は一家族に六人とか、七人とか当たり前で、七家族って言っても、
四十人近くの人がいたらしい。でもみんな死んじゃった」
「それっていつ頃の話しだ?」
「明治の始め頃とか言ってたかな…?」
なんとなくユウジロウは横溝正史の小説、『八つ墓村』とそのモチーフに
なったとされる実際の事件、『津山三十人殺し』を思い出した。
『何々村』と名のつく噂話の類は多い。何か狂気に走った人間が、一晩で
村を全滅させ、以来その村は呪いの村として伝説となり、偶然訪れた人は
祟り殺される。しかし、そこに意図的に行こうとしてもなかなか行き着くことは
できない。
そんなところか。ユウジロウは思った。しかし特に突っ込むわけでもなく、
そのまま聞いていた。
「みんな死んだってどうして死んだの?」
「それが妙なんだよ。村中みんなで殺し合ったらしいんだ」
「!」
「…え、じゃあ…犯人とかいないの?」
「いるとすれば、村人全員」
つづく
さすがのユウジロウも毛穴が開くのを感じた。新しいタイプだ。
大体は一人の男が村人全員を殺したという話しになっている。
それが村中で殺し合ったとは。
「何がどうなったのか分からないんだ。生き残りもいないんだから。
山にはイノシシやクマなんかもいて、鉄砲を使う人もいた。撃たれて
死んだ人もいたし、オノで首を切られた人、包丁で刺された人、とにかく
色んな死体が転がってたんだってさ」
「…それでおしまいなの…?」
「うん。だって警察だって分からなかったらしい。クマが襲ってきたんじゃ
ないかって話もあったけど説明がつかない。何をどうしても説明がつかない
んだ」
しばらくみんな無言だった。アカネが聞いた。
「じゃ今、その村があった場所は…?」
「そのままほったらかし。何か残ってるかもしれないし。何もないかもしれないし。
ただ、まだお姉ちゃんが生きてた頃、二人で行ってみようって話しになったんだけど、
お爺ちゃんがすごい怒って止められたんだ。行った人間は帰って来れないんだって」
「…なんでだろ…」
つづく
「警察が捜査したり、新聞が取材に来たりもしたんだけど、その時は
何ともなかったんだ。ただ事件後しばらくしてから、その亡くなった村人の
親族や、郷土史の研究家なんかが、村へ入れてくれって入って行ったこと
はあるんだけど帰ってこない」
「やべ…怖いわ…」
「で、もう村に続く道も草が生えて木が生えて、ほとんどなくなっちゃってる
からただの遭難じゃないかって、捜索隊も入って行ったらしいんだけど、
その一部の人も帰ってこなかったってさ。だからお爺ちゃんもその辺りには
行かなかった」
「すげぇ話し…」
腕を組んで寝ているリュウジは起きていた。声も立てずに泣いている。村人
全員殺し合いまでは全く平気だった。しかし、以来村に行った者が帰ってこない
というのは怖い。だめだった。
「もうその話しだけで充分だよ…寝よう…怖くなってきちゃった…」
「うんうん」
アカネとサエが席を立ったので、じゃあそろそろ寝ようかという話しになる。
困ったのはリュウジである。
つづく
このままでは置いていかれる!電気も消されるだろう。どうしよう!
「あぁあ〜」
大あくびをわざと装い起きたふりをした。涙はあくびで出たものだと
ごまかせる。我ながらナイスなアイデアだ。
「ん?あれ?怪談は終わりか?よし。寝よう寝よう。やはり寝るのは
ベッドが一番だ!」
五人がやがやと怪談を昇り、それぞれおやすみなさい、と声を交わして、
一番手前の寝室にはサエとアカネが、次の部屋にはユウジロウが、
一番奥の寝室にはトオルとリュウジが入っていった。
零時である。
「おやすみ」
「…あ、あぁ…」
電気を消すと全くの闇だった。よりによって空は厚い雲に覆われているようだ。
月明かりさえない。二つのベッドの間にはベッドサイドチェストと電気スタンドが
ある。
「おい、霧原」
「え?」
「一緒に寝てくれ」
つづく
「は?」
「一人じゃ眠れないんだ」
「やだよ。男同士で寝るなんて」
「変なことはしない」
「そういう問題じゃなくて!」
「力づくでも一緒に寝る!」
「絶対いやだ!大体なんで一緒に寝なきゃいけないんだよ!」
「お前のせいだ」
「え?」
「あの話は…怖すぎた…」
既にリュウジは立ち上がり、暗がりの中トオルを見下ろしている。
「…絶対やだからね!」
「一緒に寝るんだ!」
「やだよ!」
つづく
その瞬間、思わず右手がリュウジの手に触れた。寝る際は誤って誰かの
手に触れるなどということはないから手袋は外してある。(第六十九話 『美草』 参照)
リュウジの感情。それは恐怖で真っ黒に染まっていた。これほどの恐怖が
あるのだろうか。これはもう一種の病気レベルだ。
「…」
トオルはリュウジのベッドインを許していた。さすがに心を覗いてしまうと可哀想に
なった。
「…すまん…」
「…いいよ…」
夜中に何かで触れてしまうのも嫌なので手袋を再びトオルは身につけた。
しばらくすると、さすがに疲れたのかトオルが上品な寝息を立て始めた。華奢で細い
身体。向かい合うのが嫌なのだろう、あちらを向いているが、少し茶色がかった、
柔らかで細い髪が、闇夜に光っている。
気付けばリュウジは勃起していた。
「…大変だ…」
つづく
抑えれば抑えるほど高まる性欲。木下サエの湯上りの赤みをおびた頬、
濡れた髪、山形アカネのうっすら浮き出た乳首。
「…イッツ…セクシャル…」
とりあえず自慰で済まそうと、パンツに手を突っ込んだ。既に我慢汁と
呼ばれるものが亀頭を濡らしている。
しかし目の前に獲物がある状態で自慰というのも虚しい。
ここは襲うのが礼儀ではないか?
いや待て待て。霧原は男だ。しかも彼女がいるところから見てノンケだ。
いや待て待て。バイセクシャルの可能性があるじゃないか!俺と同じように!
いや待て待て。俺が目覚めさせてやる。俺が野郎にしてやるぜ!
そっとベッドを出た。もう既に目は慣れている。ベッドの向こう側に回りこむ。
そういえば霧原、女のような顔をしているな。今まで意識していなかったが
これはかなり美しい。
額にかかる前髪セクシー。
脱力している。思い切り突っ込めば口に挿入できそうだ。
「…よ…よし…」
つづく
ワロスww
パンツを脱ぎさる。
「キャノン砲準備完了…座標位置確認。OK。目標は…口!」
寝ている際に、突然いきり立った肉棒を口に突っ込まれた者はいるだろうか。
作者にはまだそういった経験がない。ただ驚くことだろう。まず何かが分からない。
何かが口に入ったのは当然分かるが果たしてそれをどうするべきか。
恐らく反射的に吐き出すだろ。何せ食べ物かどうか不明なのだ。しかもデカい。
「ぉおうぅえぇぇぇぇ!」
やはりトオルのリアクションも同じであった。全力でリュウジを押し返す。
しかし我に返ったリュウジには抜くに抜けぬ事情があった。このままトオルが騒ぎ出したら
大変だ。えらいことになる。とりあえず口をチンコで塞いでおかなければ!
更に恐怖が襲った。
待て!もしバレた上に危険人物と朝まで個室に閉じ込められたらどうしよう…。お化けが
出たらどうしよう…。
喉の奥まで強制的にものを突っ込まれるとどうも人間は勝手に涙が出るらしい。トオルの
潤んだ瞳が憎々しげにリュウジを見上げている。
「しまった!萌える!」
つづく
快感と恐怖が混在する中で、リュウジは腰を動かした。
「んっ…んー!!んー!」
叫んでいるつもりだがイチモツで口は塞がれている。声が出せない。
館の壁は厚く、この程度の声では誰にも聞こえない。
「き…霧原…よく聞け。助けを呼ぶのは構わんが…この状況を見られる
ことになるぞ…。木下、サエにな!
(ごめん途中で送信しちゃった…そのまま続けるね…すまん…)
この期に及んで脅迫である。自分で最低だと思いつつ、その手段しかなかった。
「彼女にバレたくなかったら、大人しく、しゃぶるんだ…」
「…」
トオルは目を堅く閉じて腰の動きに従った。確かにこの状況は絶対に見せられない。
「よし…いいぞ…。こっちを見るんだ…」
潤んだ瞳に浮かぶ怒りの色。それがリュウジにはたまらなかった。
「っあーいい…いいぞ霧原…」
できれば尻穴を犯したかったが、口からイチモツを離した瞬間に叫ばれたらおしまいだ。
このまま口で果てよう。
快感が上り詰めてくると、罪悪感が沸いて来た。
「…許せよ…それもお前の美しさが悪いのだ…」
リュウジは泣いた。トオルも泣いている。それでも腰は動き続け、イチモツが口の中を
往復するのである。暗闇の中で。祖父が暮らした思い出の洋館の中で。
つづく
口一杯に注がれた精液をトオルはティッシュに吐き出していた。
舌にこびりついている気がする。また新しいティッシュを取ると、それで
舌をこそいだ。それでもなにか貼りついているような、絡まっているような
感覚が取れない。
苦い。何かしょっぱい気もした。それに何か生臭いような、不味い葉物野菜の
ような…。
リュウジはベッドサイドに全裸で腰かけ、トオルに背を向け、わずかに開けられた
窓に向かってセブンスターの煙を吐いていた。
「…申し訳ないと思っている」
トオルは何も答えず泣いて、精液の処理を続けていた。
「…お前には彼女がいるからいいが、俺には彼女がいないんだ」
とんでもない理由である。言い訳にすらなっていない。
「許してくれとは言わんが…勘弁してほしい」
要するにやっぱり許してほしいらしい。
トオルは何やら切なくてどうしていいのか分からず、何故かアカネに
抱きしめられて慰められたかった。サエではない気がする。しかし今
アカネの所にいけばサエも一緒にいる。
どうしうよもない。ただ完璧に安全な誰かに優しく抱いてほしかった。
つづく
バロスwwwww
突然ドアが開いた。急に開いたわけではない。そっと開けられた。
廊下の明かりが室内を照らす。
すぐに気付く。精液の臭いだ。
トオルは舌を拭いている。
リュウジは全裸で煙草を吸っている。
ユウジロウは全てを悟ってしまった。嗚呼なんということか。リュウジの
ことは知っていた(第六十七話 『適者生存』 参照)が、まさかトオルまで…。
確かに女性ホルモンが多そうな顔をしている…。何も言うまい。俺は何も
見なかった…。
そっと扉を閉めようとした。
「待って!」
と、突然トオルが胸に飛び込んできた。わんわん泣いている。これはただ事
ではない。室内に入るとそっと扉を閉めた。
「一体どうなってんだこれは!」
「…すまん…全て俺が悪いんだ…」
つづく
とりあえず、トオルをなだめ、リュウジの言い分を聞く。
性的なことに関しては相当なことを聞いてもまずユウジロウは驚かない。
「…なるほど…。俺の配慮も足りなかったか…」
ユウジロウ、リュウジの幽霊が苦手なことを知りながら、怪談話をトオルに
させてしまったことが全ての発端と考えた。
結果として、リュウジは一人で眠れなくなり、トオルのベッドにもぐりこんで、
このような残念な結果になったわけである。
「とりあえず、霧原、大丈夫か?許してやってくれよ。何とか」
まだトオルは泣いている。ただ一応うなづいてはいるので、許す方向に
考えているのだろう。
「ユウジロウ…いや、先生、お願いだ!俺は幽霊嫌いを克服したい!こいつの
せいで色々とトラブルが起きるんだ!」
「…しかしそりゃ精神科か何かに行ったほうがいいんじゃないか?カウンセリング
とか…」
「頼む…頼むよ先生…」
つづく
(今日長丁場だなぁ…まだまだ続くぞ。ちょっと休憩させて。20分ばかし。酒買ってくる。
燃料切れだ(笑))
霧原カワイソスwww
なにげにこれまでで一番長い話になりそうな予感!
作者さん、超ガンガレヽ(゚Д゚)ノ
(よっしゃー再開しよっかー。合いの手くれた人さんきゅー^^)
泣く子二人の面倒を見るのは大変だった。しかしことがことだけに
女性陣には明かせない。
とりあえずトオルを寝かせてしばらく頭を撫でてやる。
トオルにしろリュウジにしろしっかりしている方だとは思うがまだ十四歳
である。
だからといっていきなり寝ている人間の口にイチモツを突っ込んでいい
という話にはならないわけだが、一番微妙な年齢だ。
時に大人は、子供にもっとしっかりしろ、もう十四歳なんだから、もっと
大人にならないとと叱り、また一方では、まだ十四歳だろ、早すぎる、
大人の真似事をするなと叱る。
高校生にでもなればもうほぼ完全に大人の扱いを受けるが、十四、十五歳は
最も微妙だ。大人から見ても子供として扱うべきか大人として扱うべきか、
迷う年頃なのである。
「先生、もう大丈夫…」
「…無理してないか?」
「うん」
リュウジと握手をさせる。トオルを素手にして。裏技のようなものだがトオルには
これが一番だろう。
つづく
申し訳ないと思う気持ちは痛い程分かった。
「悪かった霧原…」
「もうしないでね」
「しないよ」
手を離すと、安心したのかそのままトオルは眠った。とりあえず一人は
これでいい。問題はもう一方のデカいのだ。
「さてと…じゃあ行ってみるか」
「どこへ…?」
「例の、二度と帰れぬ、皆殺しの村だよ」
「なに!」
「かなり強烈なスポットらしいからな。そこをクリアしたら大丈夫だろう。
慣れだよ慣れ。こんなもんは」
「慣れなのか…」
「初めて銃撃戦にあった時怖くなかったか」
「あれはひどかった…」
つづく
「今は?」
「まぁ別に。何てことはないな。当時に比べれば」
「同じことだ」
「そうなのか?」
「そういうことにしとけ」
深夜の館を抜け出し、軽自動車に乗り込むと、一度山を下る方向へ向かい、
件のY字路を戻るようにして曲がる。
しばらく悪路が続くが次第にそれはひどくなり、やがて進退極まった。戻るには
バックで戻るしかない。Uターンするスペースもない。
「なるほど言うとおりだ」
「…この先は歩きか…」
「そうなるな」
ライフルも含めてリュウジは装備を全て持ってきていた。当然ライトもある。
つづく
「暗いのは平気なんだよな?」
「あぁ」
「それでお化けが怖いというのが信じられん」
「倒せないから怖いんだ」
「倒せない?」
「こちらから攻撃ができない。向こうから攻撃されたらされるがままだ」
「そういえば昼間、化け物に会った時も似たようなこと言ってたな。要するに
倒せればいいのか?」
「そうだ。倒せれば問題はない」
「教えてやろうか?」
「あるのか!方法が!」
「あるよ。奴らは大声に弱い」
余りに呆気ない回答にリュウジはいぶかしんだ。
「本当かぁ?」
つづく
「そうだよ。よく坊さんが気合入れたりするだろ。塩ってのも効くらしいが、
持ってなきゃ話にならん。そんな時には大声だ。昔から太鼓の音とか、
デカい音ってのは、場を清めるんだぜ」
「…でかい声か…」
「おどおどしてるから付け入られるんだ。堂々としてりゃいい」
「なるほど、なるほど」
「神社で打つ拍手、がらがら鳴らす鐘、全部そうだ。デカい音だ」
「なるほど」
「分かったな。じゃあ行って来い」
「ひ、一人でか!?」
「当然だ。待っててやるから。早く戻れよ」
「…」
リュウジの腕時計スント『アドバイザー』には電子式の方位磁石機能が
搭載されていた。そのまま道なき道を真っ直ぐと進む。
つづく
一方、赤いポンコツの軽自動車の中、ユウジロウは持ち込んだ毛布に
包まって眠っていた。
何分経っただろうか。リュウジは奇妙な場所に立っていた。確かに以前
村があったかのような印象を受けるが、木も草も生え放題である。
しかし何となく人工物らしいものの残骸が見られる。
ここなのだろうか。確かにしばらく登り道であったがここは平坦な森のように
なっている。と、後ろに気配を感じた。
それは頭に斧が食い込み、頭蓋骨をばっくりと割ったおぞましい農夫だった。
明らかにこの世の者ではない。
『お…大声…』
しかし恐怖に声帯が縮みこんで声が出ない。逃げ出す。すると正面には、
首がもげ、皮一枚でつながっている頭をだらりと下げた女らしきものがいた。
『…だ…だめだ…声が出ない…』
「ひ…ひぃ…ひぃぃぃ…」
つづく
一体どんな殺され方をしたのか、次々と霊らしき者は現れた。体中の骨を
砕かれてしまったのか、うねうねと芋虫のように這い迫ってくる者もいる。
しかし不思議なことに、彼の服装は現代の服装に近い。
霧原トオルは以来のここに来た者は二度と帰らないと言った。恐らくこの
男は最近たまたま何かでここへ来て、霊に殺された男なのだ。
俺もあんなふうになっちまうのか…冗談じゃない。
しかし声は相変わらず出ない。しかし死霊は次々に迫っていた。
でかい音…!そうだ!
でかい音と強烈な光でお馴染みの、閃光音響手榴弾である。
凄まじい爆音と閃光が山に轟く。
伏せていた顔を上げるとまんまと霊は消えていた。成功である。
「…やった…やった!倒せる!殺せるぞ!」
つづく
歓喜に打ち震えた。これで全ては克服した。閃光音響手榴弾、
XM84スタングレネードさえあれば、幽霊なんて怖くない!
「あはは!やった!殺してやった!」
と、耳元で囁く声がした。
『…もうとっくに死んでるよ…』
リュウジはそのまま気を失った。
翌早朝、ユウジロウはクルマが四人乗りなことに気がついた。リュウジは
乗せて帰れない。
それに早く屋敷に戻らないと、連中、騒ぎ出すぞ。何せ誰にも告げずに
出てきたんだ。早く戻らねば。リュウジは結局帰ってこなかったか。
やはり帰れずの村。事実であったか。許せリュウジ。
ユウジロウは慎重にバックでY字路まで戻ると、霧原邸に向けて、走り出した。
終
5時間頑張りました(笑) リュウジの生死に関する質問には一切お答えできません(笑)
最初から最後までライブで見てた人いるの?いたら本当にお疲れ様です。風呂入って
寝よう(笑)
作者さん、長丁場お疲れさまでした(≧ε≦)
でも「許せ」で済ましていいのか…ユウジロウ。。
途中からの参加でしたが、最後まで見届けさせていただきました!
リュウジは結局克服出来なかったのかな?w
でも、トオルの不幸を考えると当然の報いのような気もします。
今回の2連作も読み応え充分でした!乙です!
作者さん乙です!
まさに長編大作!エロ?あり笑いありオカルトあり、読み応えありましたー!
今回はとにかくリュウジが最高でしたw
寝ていたふりのこざかしい作戦wなど、かなり笑いましたwww
トオルはちょっとかわいそうでしたが…w^^;
長時間、ホントにお疲れさまでした。
作者さんにとっては、ライブでしかも長編を書くとなるとかなり大変でしょうが、
読んでいる側としては、まだ続く、まだ続く、と嬉しくなってしまうんですよね〜^^;
毎回毎回楽しませていただいて、本当にありがとうございます^^
>>187 おー早速レスが…ありがとう。うーん、元々ユウジロウって悪役として登場して、
もう90近く話しが進んで良いことしたり、平気で善良なおでん屋を殺したり…ww
100話終わった段階で、アイツは果たしていい奴だったのか悪い奴だったのかって
キャラクターにしたい想いがありますね。
>>188 読み応えばかりで出来は中途半端だったかなぁ…。調子はいいんだけど、
いくらブッツケとはいえ無駄に長かったかな、と…。リュウジってそういう意味
では一番扱い難しいんですよね…。お笑いキャラではないんですよ。決して。
むしろ二枚目なんです。ただ何かがズレてて面白いという。クオリティを
一定にさせるのが難しいですね。もちろんプロの人でも全て面白い話を書くって
のは無理なことだとは思うけども。
遅くまでありがとうございました。感謝です^^
>>189 いや恐縮です…。トオルは案外大丈夫みたいですよ。私の中では立ち直り早い
キャラクターですから(笑) 書くのも楽しいです。こちらこそ、色々テレビとか、
他のインターネットサイト、他の板、他のスレッドがたくさんある中で読んで頂けて
嬉しいです。ありがとうございました。嬉しい^^
リュウジ・・・wwおまいは死んだかもしれないが、遺伝子はトオルのティッシュの中にしっかり・・・。
今回の作品長かったけど、長いのは個人的に好きだ。もちろん読ませる文章のに限ってだけれど。
好きな作品の世界観の中にはできるだけ長くいたいもんだし。
そういう意味でも作者さんの作品は好きだな〜。一難去ってまた一難、一山越えてもう一山くる
所がなんというか、読んでて得した気分になるというかww確かに作者さんは大変なんだろうけど・・・。
本当、毎回楽しみにしてる僕や皆のためにも百話まで頑張ってください。風邪等ひかぬよ
うにあったかくしてね。
PS.ザーメンの味についての描写が細かかった事にはつっこまないことにしますw
>>191 > ザーメンの味についての描写が細かかった事には
それ私も思ったwww
えー…頼りないことを言うようですが、今日の話はかなり入り組んだ話に
なります。通常ならば段取りを組まなければ恐らく書けない話ですが、
あえてブッツケでやらせて下さい。
途中で破綻するかもしれません。もしかしたら収集がつかなくなって、途中で
投げてしまうかもしれません。
そうなったらすいません。でもやるだけやらせて下さい。自分勝手ですいませんが
もしライブに参加してくださる方がいらっしゃったらよろしくお願いします。
さてここらで怖い話でもするか。
的場リュウジは寒さに目を覚ました。気付けば畑の真ん中である。
幾つかの民家が見えたが、それはるで東南アジアの貧しい村を彷彿とさせた。
つづく
時計を見るとまだ夜の八時を過ぎたあたりである。
にもかかわらず、月夜に照らされた民家に灯はなく、ただ一軒の
最も大きい家屋にだけ、小さい明かりが灯っていた。
装備を確認するが一通り揃っている。記憶をたどるが、例の『皆殺しの村』跡地
らしき場所で怪奇な現象に見舞われてからの記憶がない。
それからしばらく時間が経っているような気もするし、その直後のような気もする。
とりあえず、明かりのついている家に向かう。最も大きいといっても立派というわけでは
なく、単に大きな小屋、といったところだ。作りは粗末であった。
中からは数人の話し声が聞こえる。いずれも男、それもとれなりに年齢のいったしわがれた
声である。
壁に耳をつけると、中の音は筒抜けであった。
「…しかし霧原家がいなけりゃあまとめる人間がいなくなるぞ」
「うん。俺も反対だ。してはならねぇことだと思う」
「おめぇの所はどうすんだ?」
「…うぅん。掴まらないか心配だ」
「それが一番だな。それを考えると、このまま暮らすのが一番だ」
つづく
「…じゃウチもやらね」
「さて、どうするね?」
「…みんなの言いたいことは分かった。じゃウチもこっちで相談して、
また話しつけよう」
「んー」
「じゃ帰ろう。そろそろクマの腹が減る頃だ。夜道は危ね」
がたがたと人の動く気配があったのでリュウジは家屋の裏手に周り、様子を
伺った。ぞろぞろと玄関から人が出てきて、手に手に提灯を持って、並んで
歩いていく。
提灯とはどういうことだろう。リュウジは薄々感じていた。ここは現代の日本では
ないのではないかと。
提灯に浮かぶ、人の姿もまるで時代劇で見る農夫の姿だった。
と、また屋内で何者かの声がし始めたので、リュウジは聞く耳を立てた。
「…父様、どうだったの?」
「他の連中は腰抜けだ。みんな反対らしい」
「そう…」
つづく
「とりあえずまた明日、ウチのみんなで話し合う」
「もうやめようよ、こんなこと」
「おめぇが口出すことじゃあねぇ!早く寝ろ!」
家長らしいその男は相当憤っている様子だった。
しばらくして、その家の明かりも消えた。
的場リュウジは考えた。
『霧原家がいなけりゃあまとめる人間がいなくなるぞ』
『つかまらないか心配だ』
と彼らは言っていた。そしてこの家の恐らく娘は、『これ』をやめてほしい
ようだが、家長の怒り具合からして家長は『これ』を強引に推し進めたい
らしい。
そして『これ』は、下手をすると『つかまる』行為で、『これ』が実行されれば
『霧原家がいなく』なる。
なるほど。結論は出た。この連中は霧原家に何かを仕掛けようとしている。
恐らく、霧原家を潰そうと考えているのではないだろうか。
つづく
リュウジは軍用のザックから、ポンチョとビニルシートを取り出すと、それに包まり、
森の中で一夜を過ごした。
クマが出るようなので油断はできない。
しかし的場リュウジ、とりあえず丸三日は全く眠らずとも問題のない肉体を
持っている。
秋の夜長がやっと明けた。もう気温からすれば冬だ。畑の土もかさかさと荒れて、
特に何が植えられているわけでもない。朝になっても農作業に出てくる者は
いなかった。
日の出の時刻などから考えて、腕時計、『アドバイザー』の時刻は大体あっている
ようだ。
数えればこの小さい集落には大小七つの家屋があった。聞いた『皆殺しの村』の話でも
殺し合った村人は七家族、四十名程だったはずだ。
『…やはりここは皆殺しの村、か…』
昨夜、と表現していいのか、とにかく、リュウジの体内時間的に昨夜、霧原トオルから
『皆殺しの村』の話を聞いた際、事件が起こったのは明治の頃だという。
昨夜の村人の恰好や提灯、また電線の類も見えないことから考えると、事件当時の頃に
やってきてしまったのではないだろうか。
しかし土地勘が全くない。この姿で村人の前に出るわけにもいくまい。正確に時代を
知りたかったが、人に尋ねることはできないだろう。
つづく
ましてや、村全体を覆う不穏な、殺気立った空気をリュウジは感じていた。
いい雰囲気では決してない。下手に姿を見せ不審がられりば、拘束されるか
場合によっては殺されるような気もしないでもなかった。
とにかく村が動き出すまで、リュウジは森の中でじっとしていた。
喉が少し渇いたので、小石を拾い、手で土をこすり落としてしゃぶった。
日も高くなって朝の九時過ぎ、村が動き出す。家々から男が出て来、昨夜
会合がもたれていた家に入っていった。
また静まり返ったのを見て、リュウジは村を周りをぐるりと回り込み、再び壁に
耳をつけた。
「…やっぱり他の連中はやらねぇのか」
「あんなに説得したのによ!度胸のねぇやつらだ」
「おい、村長、俺たちだけでもやっちまうべ」
「そうだ。俺らなら男手だけでも十八もいるんだ。鉄砲だってある!」
「逆に俺たちが、霧原に取って代わって、みんなから小作料取ればいいが!」
「うん。反対した連中が悪ぃんだからよ!」
「やるぞやるぞ!」
つづく
…なるほど。霧原家はこの山の持ち主で、山に点在する集落の元締めだ。
畑を貸す代わりに小作料を取っている。それが不当に高い値段なのか
どうかは知らないが、少なくともこの集落の連中はそれが不服らしい。
だから霧原家を潰すことを考え、他の集落の連中にも声をかけた。昨夜ここに
集まったのはそれぞれの集落の代表者だろう。ところが会談は決裂した。
そして今、この集落の人間だけで蜂起し、自分たちが霧原家にとって代わろうと
している。
そのまま、彼らは昼間から酒盛りを始めた。血気を高める為だろう。
壁から耳を離しても中の賑やかな戦の前の宴が聞こえてくる。
しかし歴史がどうなっているのか。果たして『皆殺しの村』の伝承は本当なの
だろうか。このまま彼らのクーデターが成功を収めれば、平成の世にいる
霧原トオルはどうなってしまうのか。それとも違う時間軸に自分はいるのか。
いや、クーデターを成功させた上で、その首謀者が霧原姓を名乗ったのかも
しれない。地名にもなっている程だから由緒ある家系なのだろう。その威を借る
可能性も捨てきれない。
とすれば霧原トオルは、反逆者の子孫なのだろうか。
つづく
あ、成る程。リュウジね。
突然表の戸が開く音がした。リュウジは再び、森に身を隠し、様子を伺う。
女が一人、とことこと小走りに村外れへと向かうのが見えた。昨夜、父親に
反対していた娘だろうか。
森の中を音もなく駆け、娘の姿を追った。
村を出て、しばらく進んだ所で、娘はある男と出会った。様子からすると
待ち合わせていたらしい。
何やら話しているようだが、これ以上の接近はさすがに気付かれる。
手のひらを耳の後ろに当てたり色々とやってみたが話し声が全く聞こえない。
逆に不自然であった。内容までは聞こえなくとも、声の一つぐらいは聞こえても
いいはずだった。この距離からして、全く何も聞こえない方がおかしい。
『…声を潜めている…』
人里離れた上に、小声で喋る。ただごとではない。直感的にリュウジは気付いた。
娘は自分の村が独自にクーデターを決行することを知り、彼に伝えているのでは
ないか。
だとすると男は霧原家の人間だろうか。しかし身なりがよくない。やはり薄汚れた
野良着のような恰好をしている。身分のいい人間には見えなかった。
つづく
どうするんだリュウジ!未来はおまえにかかってるぞwww頑張れ〜!
あー、早く続き!続き!
しばらく眺めていると、二人は木陰に隠れるようにして抱き合った。
恋仲らしい。
リュウジは静かにザックのサイドポケットからケンコー社製の単眼鏡を
出し覗いた。八倍の倍率を持つ小型の望遠鏡である。
助平心からの覗き趣味ではない。表情を見たかったのだ。
しばらく抱き合った二人は離れると、一言二言短い会話をかわした。
男の表情がかなり真剣である。娘はこちらに背を向けているので顔は
分からない。
読唇術をマスターしておくべきだったとリュウジは思った。
二人は別れ、娘がこちらへ向かってきたので、リュウジは森深くに身を
隠した。
しばらく時間をおいて村へ戻ると、ちょうど宴会が終り、それぞれが家路に
つく頃だった。家路とはいっても家々がかたまっているので、少し歩けば
それぞれの自宅だ。
やがて日が暮れる。宴会まで開いて英気を養っていたのだから今夜あたりが
決行日かと思ったがどうもあてが外れたらしい。
闇に紛れて村長の住む家へ。村長と娘の声が漏れてくる。やはり娘は、
クーデターを中止にさせたいらしい。しかし父親はもう決まってしまったこと
だからと取り合わない。
つづく
結局親子の話は物別れに終わり、家の明かりが消えて、二十二時。
電気のない時代で、冬の午後十時といえばもう深夜だろう。
リュウジは、井戸にそっと釣瓶を落とし、がぶがぶと水を飲んだ。
腹が減ったが食料がない。栗の木も柿の木も既に実を全て落としている。
火が使えないのが痛かった。寒さに体力も奪われる。仕方なく、どこぞの
家の軒に下がっていた干した大根を奪い、かじった。
村長の家屋が鳴った。こんな時間に戸が開いたのだ。
リュウジの目が提灯の頼りない光に照らされた娘の姿を捉えた。
『…こんな時間にどこへ…』
考えられる可能性は二つしかなかった。昼間会っていた若者との逢瀬か、
霧原家へ密告をしに行くか。
しばらくすると、別の家で人の動く気配がした。男が飛び出てきて、隣の家へ。
そして今度はその家から二人の男が飛び出しまた隣の家へ。するとまた人数を
増やし男たちが飛び出てくる。
最終的に六人になった男たちは、提灯片手に村を出て行った。
娘を追う気らしい。
つづく
『…マズいことになった…』
恐らく酒の席で娘が反対していることを、村長が漏らしたか何かしたの
ではないだろうか。
いずれにせよ、村長の娘は既に裏切る可能性ありとマークされていたのだ。
闇を疾走する。男たちも必死で走っているので相当の音を立てても気にする
ことはないだろう。
リュウジが追いつくと、やはり男たちは娘を捕らえていた。
見えない。地面に転がった提灯が燃えている。
男たちの乱暴な声と、時折娘の叫ぶ声が聞こえたが、その音は森の木々に
吸い込まれた。
猿ぐつわでもされたか、女の声が聞こえなくなった。ただ呻く声と、何か冷かし、
煽り立てるような声が聞こえる。
『…犯してやがる…』
相手は六人である。三時間陵辱され、娘は男たちに身体を引きずられるようにして
村へと連れ帰らせれた。
提灯の燃えかすだけが現場に残った。
つづく
深夜二時。ぼろぼろにした娘を連れ、六人の男集は村長の家の戸を
荒々しく叩いた。
余りの騒がしさに集落中の人々が目を覚まし、何事かと集まってきた。
「こいつは裏切り者だ!霧原のところへ俺たちのことを告げ口に行こうとした!」
「ほ、本当か!」
「危ねぇところだったぜ。なぁ!」
「ああ。俺が見張ってなければ今頃こいつは霧原に俺たちの事を言ってるところだ」
「おい村長、どういうことだ!えぇ?おめぇの娘だろが」
「…まさか村長もぐるじゃなかろうな?」
「…まさか!とんでもねぇ話しだ。娘のことは知らん!」
「わからねぇぞ。そんなこといって、自分だけ霧原に取り入るつもりじゃなかろか?」
「とんでもねぇ話しだ!」
「村長も信用ならねぇ。朝まで交代で見張るんだ」
「それがいい」
つづく
村人らの剣幕たるや凄まじく、遠く森の奥からでもやりとりがよく聞こえた。
更にそのまま村長宅の裏手へ回ると、村長は自分の信用がなくなったのは
お前のせいだと娘を責め立てていた。犯され、ぼろぼろになった娘をである。
リュウジはそのまま、村長宅の背後に広がる森で朝を待った。眠らないつもり
だったがついうとうととしていると、突然背後で気配がした。
眠気のせいで反応が遅れた気配は近い。
「…誰かいるのか…?」
『…しくじった…見られたか…!』
M16の安全装置を外し、ゆっくりと振り返った。森の中、男が立っている。
向こうもこちらを警戒しているようだ。
「…おいよ、誰かいるのか?」
「…ああ。いる」
人間かと安心したのか男は近づいてきた。しかしこんな夜更けに明かりも
持たず、森を抜けてくるとは。
つづく
男は昼間見た男だった。村長の娘と会っていた男である。
「おめぇこんな夜中になにしてんだ?」
その異様ないでたちにかなりの警戒心を持っているようだ。
「…おまえ外人か?」
「いや…日本人だ。何しに来た?」
「おめぇには関係ねぇ」
男がそのまま村長宅へ近づこうとするので、リュウジはそれをつい
止めてしまった。
「行くな。見張りがいる」
「…見張り…?」
「いいからちょっとこっちへ来い。ここじゃ気付かれる」
森奥深くへ男を連れ込み話を聞くと、やはり村長の娘に会いに来たらしい。
夜に会おうと約束したが待てど暮らせど来ず、一度は自分の家に帰ったが
心配なのと恋しくてどうしようもなくなり、来てしまったと言う。
つづく
リュウジはこの村で起きていることを伝えた。娘が犯されたことはさすがに
伝えられず、そんな状況で、一人反乱に反対している娘が村人から信用されず、
見張りを立てられ出るに出れない状況なのだと言った。
「…霧原さまの家をつぶす話は聞いてたけど…まさか本気でやるなんて…」
やはりこそこそと会うだけあって、村長の娘との恋は密かなものであるらしい。
実際ここにやってきたのはいいが、堂々と玄関から入れる間柄ではなく、
とにかくいても立ってもいられなくなってここへ来たのだそうだ。
彼はクーデターを心配しているようでもあり、また何処か期待しているようでも
あった。恐らく、クーデターは失敗に終わると思っているのだ。成功したとしても
首謀者である村長は確実に逮捕される。そうすれば娘と付き合えるようになると
でも思っているのだろう。
しかし今度は反逆者の娘と付き合うことになるのだ。そちらのリスクを分かって
いるのだろうか。
「…今年は何年だったかな…?」
「何言ってんだしっかりしろ。四十三年だ」
『…明治四十三年か…』
霧原トオルは、『事件は明治の初頭に起こった』と語ったが多少ずれがあるらしい。
とにかく、娘は無事で、家にいることを告げると青年を帰した。最後まで青年は
リュウジが何者かを気にしていたが、適当に答えた。
つづく
リュウジが青年から話を聞いている間、村長の家の戸がそっと開いた。
見張りの男は眠りこけている。彼のかたわらには槍があった。
槍といっても、木の棒に包丁を紐で結わいつけただけのものだ。霧原家
襲撃の為に作られた武器である。
娘はそれを手に取ると、自分の腹をかっさばいて果てた。
恋仲の男との関係は許されず、また父親は反逆を企て、何とか阻止しようと
思えば犯されて、それも全て父を、村を守りたいが為であるのに、村人からも
父からも理解されず責められ、絶望した彼女は死を選んだ。
自らを人身御供として反逆を阻止しようとしたのだ。自分を犯した男衆や、
村人、父親に少しでも善意があるのであれば、自分の死によって、今から
自分たちが犯そうとしている罪を思い知らせることができるのではないかとも
思った。
しかし自分の身をもってしても反乱が止められないならば、この村の全てを
呪おうとも思った。
声も立てず、血を流し、彼女は死んだ。なるべく壮絶な死に方をする必要が
あった。その惨さで、村人の気持ちを下げなくてはならなかった。
今の言葉で言えば、盛り上がって上がりまくった村人のテンションを、徹底的に
おとしめる必要があったのだ。それには自分の死が無残であればあるほどいいと
彼女は考えた。
つづく
「ひ…ひぃぃ!」
その声にリュウジは立ち上がり、村の全てが見渡せる位置まで移動した。
『…なんてことだ…!』
腹からはみでた腸がずるずると何メートルも伸びていた。血の池に村長の
娘は横たわっていた。
「大変だ!」
どんどんと村長の家の戸を見張りの男は叩いた。慌てて寝巻きのまま出てきた
村長は娘の凄惨な死に様を見て怒り狂った。
「お…俺じゃねぇ!」
村長は完全に見張りの男のせいにしていた。当然といえば当然である。彼の
槍が娘のかたわらにある。
何故彼女は自宅の包丁でも使わなかったのか。簡単な話である。とにかく
霧原家攻略にあたり、武器になりそうなものは全て武器にすべく利用されて
いたのだ。村長の家の包丁も槍となり、その彼が持っていた槍の先について
いた。
つづく
村長は家に戻ると、鉄砲を持ち出し、腰を抜かしている彼を撃った。
銃声がこだまし、その音で一斉に家々から村人が飛び出してくる。
死んでいる村長の娘。銃を持つ村長。死んでいる見張りの男。
「…む…村長が…!」
七世帯。三十七人の村で一度に二人が死んだ。死んだ見張りの
男にも五人の家族がいた。長男であった。息子の名前を叫びながら、
村長に襲い掛かる父親をも村長は撃った。
裏切り者疑惑が出ていた村長が、である。
霧原家襲撃の日。反乱が成功すれば自分たちが霧原家にとって代わり、
夏の暑さにも、冬の寒さにも、泥の汚れにも悩むことなく、裕福な暮らしが
できるようになると夢見た、その夢が手に届こうという時に起きた惨劇。
村長の娘の思惑は大きく外れ、恨みが怨みを呼び、怒りが殺意を呼んだ。
狭い村社会の中で鬱屈したそれぞれの感情と思惑もあった。
三十七人の人がいるとは言え世帯数ではたったの七である。家族の一人でも
殺されればその一家全員の怒りに火がついた。
生憎なことに武器は揃っていた。
つづく
ひぇぇぇ・・(((;゚д゚)))
逃げ惑い、怒り狂い、銃声が響き、流れ弾に当たり、斧が振り下ろされ、
殴り合い、刺され、斬られ、叩きつけられる。
それでも血気盛んな若者数名が力尽きると混乱は収まりつつあった。
しかしそこへ怒号を上げて飛び込んでいく若者の姿があった。昨夜あった彼である。
村の真ん中で横たわる、愛する人の姿を見たのだ。彼は彼女のかたわらに
落ちていた槍をつかむと、次々と生き残っている村人を刺し、槍が折れれば斧を
拾い逃げ惑う老婆の頭を叩き、銃を拾えば村の出口辺りまで逃げてきた少年に
狙いを定め撃った。
最後に残った青年は、そのまま村を出て行った。
そして、誰もいなくなった。
村を訪れる者もなく、そのまま血生臭い夜を迎えた。
的場リュウジは森の中、さてこれからどうしたものかと思いつつ、深く昏々と眠った。
つづく
ちょwwwwwリュウジ寝るのかwwwww
起きれば村はなく、ただ深い森であった。
朝もやに、朝日が差して、妙に神秘的で、しかし枯れた木がうら寂しい。
山を下る。道はない。全く記憶と違っている。全て夢だったのか。
やっと道らしい道へ出た。そう。山形ユウジロウと別れた場所だ。ここで
クルマを降ろされた。
はっきりと時間の感覚がつかめないままとにかくその道を進んだ。
Y字路へ出る。音がした。クルマの音である。しばらく待っていると、山の下から
スズキのジムニーがあがってきた。
さすがにM16を見られるのもまずい。モデルガンです、といっても不審がられる
ことは確実だ。彼はためらうことなくライフルを茂みに捨てた。
つづく
ジムニーが止まり窓が開いた。
「あんたこんなところで何しとるね?」
「すいません。道に迷ってしまって」
「…そうかい。まぁいいや。乗りなさい。近くの駅まで連れて行こう」
霧原の屋敷に忍びこんだ時にあったクルマだ…。だとするとこの男が館の
管理人か…。
悪路に揺られながら、慣れたハンドルさばきでジムニーを駆るその老人の顔が、
あの青年の面影を残しているような気がして仕方なかった。
またカメラを持っていて、あれだけの事件に遭遇しながら、何故一枚も撮影
する気にならなかったのか。それも不思議だった。
終
ちょw捨てちゃうんかいwww
…どうだろう…これから読み返すけど感想お待ちしています…。
ちょっと伝奇風というか、横溝先生風にしたかったんだけど。。
あと、ちょっと長野とか信州方面は縁遠いので方言とか、そういう
部分全く分からずなんか変な感じかもしれんです。
その辺りは御容赦下さい。
リュウジ生きててくれて良かったよ〜。
ちょっとはリュウジも変わったんだろうか?
うあああぁ…変なタイミングで合いの手を入れてしまったorz
作者さん乙です。
とりあえずリュウジが生きていて安心しましたw
いやー、最後までドキドキで楽しめましたー!
しかも最後の最後にそうくるか、みたいな。
もう妄想が膨らみまくりですよw
>>222 うん。なんか、『お化け嫌い』って核心になかなか迫らせてくれない…。
ブッツケで勢いだけで書いてると自分でコントロールできないんだよ。
不思議なもんで。勝手に書きあがってく。今回はリュウジの幽霊嫌い
克服の話書くぞーと勢いこんでも書き終わってみると全くそこに触れて
ない。
途中でいかんと思うんだけどその時には調整できなくなってるんだな…。
でも少しずつ慣れてはいるんじゃないかと。多分。
>>223 そうですね…。自分でも何とも言えない話が書いてみたくて。最終的に
感情が中和されてしまうような。途中では怖いとか、悲しいとか切ないとか
あるんだけど、読み終わる段階で全てが中和されて何とも感想の述べようが
ない。ただなんか不思議で奇妙な感じだけが残る。そういう話が書きたいな。
書けたかな。そんなところですね(笑)
作者さん乙です。
過去の話、すでに終わってる話としてなんだかいい感じでしたよ。
リュウジがそれを分かってて歴史に介入しないように
しているのが描写から分かりましたし。
淡々と読めたけど色々後から思うことが多くて面白かったです。
リュウジがあの時、娘さんを助けてたらどうなっただろうとか・・
言うならば、自分自身の過去とシンクロしちゃった。
あの時、違う学校に入ってたらどうなったかなぁ・・とかw
済んでしまった事だけど後に残った色々な思い・・・。
本当に奇妙で不思議な話でしたwお疲れ様です。
>>225 > 言うならば、自分自身の過去とシンクロしちゃった。
> あの時、違う学校に入ってたらどうなったかなぁ・・とかw
> 済んでしまった事だけど後に残った色々な思い・・・。
> 本当に奇妙で不思議な話でしたwお疲れ様です。
最高の褒め言葉です。ありがとうございました!
すごい嬉しいです。これからも頑張るです!
やった!見ろ!見てるか本田先生!こんなこと言って
もらっちゃったぞ!今日は幸せに眠れる!
ありがとうでした!^^
作者さん乙です。
管理人さんが本当にその「青年」なのかそうじゃないのか。。。
こんなところを読み手の自由になさるなんて…
私も妄想が進みます。。。
なんか作者さんのキャラさん達って私の中にもいるんじゃ…って思うことがあります。
100まで頑張ってください〜応援してます〜
>>タイトルの中の人 さま
おつかれさまです^^ ありがとう。さてさてどんなタイトルをつけてくれる
かいのと思えば『諧謔』ときましたか…さすがです。お見事。参りました(笑)
コントなんかも一種の諧謔ととらうれば、正にその通りですね。あれはほとんど
コントですよww
ところで、『陽炎』の詩の読み人はどなたですか?大変素敵ですね。
空蝉の世は常ならむ…すぅと沁みます。色は匂えど散りぬるを。
>>230 避難所にもありましたが、確かに難しかったですw
心霊写真相手に悪戦苦闘するリュウジも良かったのですが、アニキがあまりに強烈過ぎて。
「ケツを貸すか、死ぬかって選択肢それだけかよ!」ってツッコミを入れてしまいましたよ。
陽炎の詠み人は、えー恥ずかしながら私めにございます…
ユウジロウも教師の端くれですし、有吉を偲ぶ詩の一つも詠めるのではなかろうかと。
君は光射す遥か遠くへ行ってしまった。私は長きに渡り君の事を仲間達に伝えていこう。
(君は)信念を貫いて、彼岸花に囲まれ草木になってしまった。
(君の)敵を討ったのだけれど、決して喜びも沸いてこない。
死んでしまった君と競ってみようとしたが、むなしく、辛く、つまらないものだ。
無闇矢鱈に君の墓所を歩いてはみても、この気持ちをどうすることもできない。
この世の中は無常であると分かっていても、とても残念でやりきれない。
という感じです。
やり場の無い気持ちを全裸オナニーであらわしてしまったのですね、ユウジロウw
>>231 御見それ致しました。お見事です。有吉も報われたことと存じます。
ええっ・・・タイトルの中の人さんすごすぎ・・。
ビックリした〜すごい詠。
さてここらで怖い話でもするか。
彼女の肌は透き通るように白く、髪と瞳が赤茶けていた。
生まれつき、色素が薄いのだと言う。
つづく
これは美人とみた。
・タイトルの中の人さんほんとにすごいね!
吹奏楽部に途中から入ってきた雪野カエデ(第五十九夜 『付喪神』 参照)に
最初に話しかけてきてくれたのも、その女性だった。
軽子沢中学、東棟三階。音楽室の放課後である。西に向いた窓からは夕日が
鋭く差し込み、彼女の目に入ると、その瞳は燃えるように赤く輝くのである。
サヨリ。彼女はみんなからそう呼ばれていた。だからカエデも彼女をサヨリさん、
と呼んでいた。胸につけたクラス章から、二年B組の生徒であることは分かって
いた。
霧原トオルと同じ学級である。
しかしそれ以上のことは何も分からなかった。彼女は自分のことを語ることを
避けているようだった。
ある日のこと、その赤い瞳がぐるぐると炎の車輪のように回転しているのをカエデは
見た。正直、何か空恐ろしい何かを感じたものである。
しばらく見ていると、炎の車輪がぴたりと止まって、カエデの顔を見据えた。見ては
いけないものを見てしまったのではないかとカエデは目を伏せた。
間をおいて視線を上げるとそこには赤い瞳があった。近すぎる。尋常な距離ではない。
ほとんどキスの距離に近かった。
「…見た?」
つづく
久々のライブ遭遇キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
椅子に腰掛けているカエデに対してサヨリは立ったまま腰を曲げ、
顔を近づけている。
「…ねぇ、今の見た?」
「…はい」
「…ふふ」
その距離で再び瞳がぐるぐると回転を始める。カエデは恐怖に包まれた。
目の前で、自分の顔が、赤い瞳に映りこんでいるのが見えるほどの距離で、
赤目が時計回りにぐるぐると物凄い速度で回転しているのだ。
何回転したか何秒経ったか、回転は止まった。
「…楽譜を見ながら演奏するでしょ。目が音符を追えるように眼球運動。ぐるぐるぐる」
「…あ、あぁ…そうなんですか…すごい、速いです…」
やっと顔が離れて、サヨリはやはり紅い唇を大きくゆがめて笑うと、椅子をひきずって
来て、カエデの隣に座った。
特に仲がいいわけでもなく、部活があっても毎回何か話すわけではない。むしろ、
話すことの方が少ないぐらいだ。隣に座られて、カエデは困惑した。
何か話すことはないか。
つづく
「あの、サヨリさんって、上の名前は何て言うんですか?」
「あなたは雪野カエデ?」
質問を質問で返してくる。それも当たり前すぎるほど当たり前の質問。
「…はい。雪野、カエデです…」
「『踊る大捜査線』って見たことある?」
「…え、あ、映画のなら…」
「水野美紀って知ってる?」
「出てましたよね。踊る大捜査線にも…」
「そう。柏木雪乃っていう名前でね。カエデちゃんの苗字が名前と一緒なの」
「…はい」
「見たことあるって言ったよね?映画で『ユキノ』って台詞が出たとき、ドキっと
しなかった?ちょっとでもしなかった?少しだけでも?」
「…え、ちょっとだけ…あの、刺されて、ユキノさん!って叫ぶところとか…」
「そうだよねそうでしょう。そういうのってドキってするよね」
「…はぁ」
つづく
なんか…サイコな香りがする…
会話のテンポが速い、というか、サヨリの返答の速度がもう既に相手の
言葉を予測しているかのように飛び出してくる。カエデは何か嫌な感じが
した。
「サヨリって本名じゃないの」
「…え?」
「山田サユリが本名なの。でも本名で呼ばないでね。あたしはサヨリなんだ」
「やま…」
「本名で呼ばないで。サヨリなの」
「サヨリ…」
「そう。山田サユリって名前も苗字もありきたりで、病院の待合室とかで山田さーんとか、
テレビ見てても山田優とか、吉永小百合とか名前出てくるたんびにドキっとするのよ。
あたし嫌なんだそーゆーの。だからとりあえずサヨリって名乗ってるけど、もし、サヨリって
名前の芸能人とかなんか出てきたら絶対名前変えると思うし。でもサヨリって結構気に
入ってるから変えたくないなぁなんて思ったり。もし今度入ってくる新入生にサヨリとかいたら
どうしようとか考えるよ。殺すかも。とかいってとかいって。冗談だよ。でも今ウチの中学では
サヨリって名前はいないんだ。だからあたしだけ。サヨリって言われれば間違いなくあたし。
間違いない。ドキってする必要もないわけ。とにかく呼ばれたらそれは自分ってことだからさ。
サヨリって呼ばれたらはーいって振り返ればいいんだよ」
つづく
まくしたてて喋る。言葉が出るたびに紅い唇がしなやかに動いた。
それは何か紅い蟲が二匹、うねっている様にカエデには映った。
「ねぇ天気予報ってあるじゃん」
「…ありますね」
「あれで明日の雨の確率って言うよね?どういう意味なんだろう?」
「え?」
「アメノカクリツ」
「…そのまんまの意味じゃないですか?」
「天気がくもりってのをとりあえず外して、雨と晴れって考えたら、絶対
五十パーセントじゃない?二分の一じゃない?」
「…?そうなんですかね?」
「ずっと疑問なんだよね。どうでもいいことだけどさ。でも確率って面白いよね。
さまよえるユダヤ人の話って知ってる?」
そろそろカエデは話すのが苦痛になってきたが止まる様子がない。話は更に
膨らみそうだ。
「サマヨエルユダヤジン…?」
つづく
「さまよえるユダヤ人って話があってさ。キリストが死んだ時の話。
ゴルゴダの丘って所でキリストは殺されるんだけど、殺されるって
言ってもそのあと復活したりしてるから殺されるって表現が正しいか
どうか分からないんだけど、その辺はまぁ置いといてさ、ゴルゴダに
連行されるときに、ある家の前でちょっと一息ついたんだよね。キリストが。
そしたらさ、その家の奴がさ『ウチの前で立ち止まるんじゃねぇ!』って
言ってブツクサ文句言ったわけ。そしたらキリストがさ、あのキリストがだよ?
あのキリストが、『行けと言うなら、行かんでもないが、そのかわり、お前は私が
帰るまで、待って居ろよ』って呪いをかけちゃったんだ」
雪野カエデ、元はオカルト同好会である。宗教の勧誘だったらどうしようと
思いつつ、話しが呪いになるに至って話に興味を持った。
「キリストの呪い…?」
「そう。どうなったと思う?」
「死んじゃったとかですか?」
「逆。キリストがまた降臨するまで死ねないの。ずっと生きて、世界中さまよってるの。
だから『さまよえるユダヤ人』」
「…へぇ…」
変わったことを知ってるなとカエデは思った。そんな話し、聞いたこともない。ずっと
死なずに生きていると言えば、サンジェルマン伯爵とやらなら知ってはいるが。
つづく
萌え系かと思ったらサイコ系Σ (゚Д゚;)
なんかカエデちゃん、取り込まれそうだ…
「キリストが降臨する時ってのは最後の審判の時ね。黙示録の」
「…はい。それならちょっと聞いたことあります」
「その、『さまよえるユダヤ人』アハスエルスっていうんだけど、実は
それってあたしなんだ」
「え?」
「…って言ったら信じる?」
「ん〜…ちょっと信じられないです…」
「でも確率の上ではゼロじゃないよね?カエデちゃんがアハスエルス
かもしれない」
少しややこしい話になってきて、何となくカエデには理解できなかった。
つづく
また別のある日のことである。偶然学校近くのコンビニエンスストアに
サヨリはいた。
基本的にカエデは人を好き嫌いしない。友人とそうではない人の区別程度は
あるが、友人ではないからといって嫌いというわけではない。
サヨリもそんな中の一人として位置づけられていた。
「カエデちゃん」
「お買い物ですか?」
「ねぇ透明人間になれる方法って知ってる?」
「そんなのあるんですか!」
「あたしはできるよ。あたしには人の視線が見えるんだー」
「人の視線?」
言われてみれば思い当たる節はあった。部活をしている時、何となく、
彼女の白い肌や、染めることもなく綺麗に茶色がかった髪が羨ましくて
眺めていると、どんな状況にあっても必ず彼女はこちらを向くのである。
つづく
「人に見られるのが嫌でねー。あたしって白いでしょ。生まれつきだけど。
それでよく見られるんだジロジロって。それがいやでねー」
「綺麗ですよ?」
「でも見られるの苦手だったんだよねー。そしたら視線が見えるようになった」
「…へー…」
「その視線に入らないようにすれば透明人間になれるの」
「…へー…」
「見せるね」
サヨリはコンビニエンスストアの店内に入っていった。しばらくすると、普通に雑誌
二冊と弁当一つとおにぎりを持って出てきた。
「?」
「万引き」
「…!」
確かに袋にも入っていなければ、袋はいらないです、と言った時に貼られるテープも
貼られていない。
つづく
そのまますたすたとコンビニエンスストア向かいの公園へ歩いていくので、
カエデもついていった。ベンチに並んで座る。
「おにぎりあげる」
「…どうも…」
「信じてないんでしょ?」
唐突に言われて右を向くと、そこには雑誌二冊と弁当が重ねて置かれている
ばかりで、サヨリの姿がない。
からかっているなと探すが全く見つからない。しかし公園の砂の地面をじゃりじゃりと
動く回る音はする。どこかに隠れてじっとしているわけではないらしい。
「ね、必ず死角に入れる。視線が見えるんだよ」
すぐ背後で声がした。振り向くが誰も居ない。ただざざっとすばやく動く音だけが
聞こえる。カエデは観念した。
「すごい。忍者みたいです…」
と、すぐ横にサヨリは立っていた。紅い唇を歪めて。この一件で、カエデはサヨリに
大きく興味を寄せた。
つづく
つづく
サヨリは何でも知っていた。芸能、スポーツ、歴史、難しい哲学のような
ことまで知っているようだったが、カエデには分からないことばかりで、
果たしてそれが本当のことなのかどうか分からなかった。
完全に常識から外れているようなことも彼女は平気で言うのだ。だから
全てを信用することはできないなとカエデは思っていた。
部活動が終わり、みんなでわいわいと話していると、気付けば外は暗く、
サヨリとカエデは二人きりになっていた。
「あれ、もう暗いですよ。帰りませんか?」
「カエデちゃん、前に確率の話をしたでしょう?」
記憶はほとんどなかったが、そう言うならそうなのだろうとカエデは適当に
相槌を打った。サヨリはよく人の言うことを無視する。質問しても全く見当
外れなことを言い出したり、違う質問が返ってきたりした。だから会話の
食い違いにはそろそろ慣れている。
つづく
「こういうのってどうかなー」
椅子を縦に二つ並べた。前の席にカエデを座らせ、自分は後ろの席に座る。
「あたしからはカエデちゃんの背中が見えるね。カエデちゃんにはあたしが
見える?」
見えるわけがない。サヨリはカエデの背後にいるのだ。
「今あたしって喋ってるからあーいるな、生きてるなってカエデちゃんにも分かる
だろーけど、あたしが黙りこくったらどーなるんだろ?あたしの生きてる確率
何パーセント?」
よく分からずにいると、それきりサヨリは何も言ってこなくなった。話しかけても
答えない。ふざけているなとは思ったがいい加減耐えられなくなり振り返ると、
ただ椅子があるばかりだった。
また死角に入ったのかと探すが気配すらない。
以来彼女を学校で見ることはない。ただ、たまに、すぐ近くで上履きと床の
こすれる音がすることがある。誰もいないのに。
終
うへぇ〜シュレーディンガーの猫みたい。
>>252 やっぱそこいっちゃうよなぁ〜読み返して思った。
全く忘れておりますたT_T
俺が先に生きていれば…(笑)
俺は「幼稚園の時、仲良かった友達がいたんだけど、
確かにいたはずなのに他の誰も覚えてないし、集合写真にも写ってない」的な
話を思い出したよ。
他の誰とも同じでは居たくなかったなかったサヨリ。
彼女が身を隠すに至った理由は?
さまよえるユダヤ人の話といい、なんだか不思議な読後感のある話でした。
こういう話、好きですw
>>読者の皆様方へ。
今夜、投下するお話で、90話目となります。この作品名『◆xDdCPf7i9g』通称、
『山形先生シリーズ』は100話にて一度完全に終了します。
雑談スレの方では、その後の存続の可能性について語られていますが、とにかく
一度、終わってしまいます。その後、例えば『パート2』のようなものの製作等に
おいては全くの未定です。要望については目を通しますが、こちらが了解し得ない
場合もありますので御了承下さい。
また、残り十話内において、唐突に本編とは関係のないキャラクターや場所などの
シーンがインサートすることがありますが、それについての質問については一切
お答えできません。これもまた御了承下さい。よろしくお願いいたします。
さてそろそろ九十話でも書くか。
新聞委員会編集員、長野シュウイチは軽子沢中学、西棟一階を、
更に西に向かって歩いていた。
つづく
西棟一階の端には大きな鉄の扉があり、そこから渡り廊下が延びていた。
そして体育館と接続している。
彼の目的地は体育館であった。肩から取材用のバッグが下がっている。
体育館に近づくにつれ、木の床をボールが叩く音や、床のスニーカーのゴム底が
きゅっきゅとこすれる音が騒がしく聞こえてくる。
放課後の部活動で体育館の使用を許可されているのは女子バレーボール部、
女子バスケットボール部、男子バスケットボール部、そして卓球同好会だった。
手狭なのでそれぞれ曜日を代え、順に使用するようになっていた。曜日からすれば、
今日は女子バレーボール部と、男子バスケットボール部、卓球同好会が使っている
はずだ。
その中で、シュウイチの目的は男子バスケットボール部だった。
新聞委員会の発行する『軽子沢新聞』は週に一部のペースで発行される。何か
国際的な事件が起きる度に号外と称して別冊が発行されるが、それは主に
的場リュウジが勝手にやっていることで、シュウイチはタッチせずに済んでいた。
あくまで長野シュウイチの担当は校内である。もっとも、校内新聞であるのだから、
全員が校内担当でなければならないのだが、基本的に、リュウジは国際、マサトは
国内担当となっており、それぞれ世界中、日本中を駆け回っているので、本来主役で
あるべきはずの校内担当シュウイチの扱いは散々たるものだった。
つづく
しかも、世界のあらゆる場所からリュウジによって送られてくる電子メール、
郵便物、電話などを受け、それをまとめて新聞にするのもまたシュウイチの
仕事である。まだデジタルカメラの画像であればそのまま編集しやすいので
いいのだが、父親の形見であるニコンにこだわるリュウジからは下手をすれば
現像前のフィルムがそのまま送られてくるのだ。
それを現像し、スキャナで取り込み、それに、場合によっては国際郵便で送られて
くる手書きの原稿をパソコンに打ち込み、画像に添えて、体裁を整え印刷し新聞に
する。せめて電子メールで送ってくれればと思うのだが、アマゾンの奥地からでは
それも無理かと考える。
勿論マサトからも怒涛の様に国内事件を扱ったメールや画像が送られてくる。
更には自分本来の校内取材もしなければならない。
カメラマンであり取材記者であり編集員であり印刷屋なのだ。
長野シュウイチは多忙であった。
先月から毎週それぞれの部活を回り、その主たる活動以外の話題を紹介する
シリーズものの記事を書くことになっていて、今回の主役が男子バスケットボール部
だった。
主たる活動以外の話題、というのがなかなか難しい。男子バスケットボール部で
あれば当然バスケットボールを行っており、その試合結果などは当然掲載されるわけ
だが、そういった、バスケットボール部であれば何かバスケットボール以外の話題は
ないか、という趣旨の取材をする。
つづく
九十話きた…(`・ω・´;)
あと10話かぁ(´・ω・`) 一話、一話噛み締めて読まねば
例えば、変わった練習法を取り入れているとか、何か試合で部員がミスをした
場合に面白い趣向を凝らした罰ゲームがあるとか、そういった具合の記事。
先週は野球部が対象だったが、練習でばててしまった時に飲む秘伝のスペシャル
ドリンクのレシピや、主将の実家がお好み焼き店で、軽子沢中学野球部員だけが
注文することができる『軽子沢スペシャル』というボリューム満点のお好み焼きが
あるという記事で、なかなか好評だった。
意外と、他から見れば珍しい、面白いことでもも当人たちからすれば当たり前の
ことで、『何か変わったことはないですか?』と取材してもなかなか回答が得られず
難しい取材といえた。
体育館は半面を男子バスケットボール部が、半面を女子バレーボール部が使い、
哀れ卓球同好会は舞台に卓球台を上げて、舞台上で練習している。まるで、
『欽ちゃんの仮装大賞』のような状態だ。何か始まるのではないかと期待を持たせるが
淡々と卓球をこなしている。しかも真剣味がない。ただ、今体育館内で活動している
部の中では唯一男女混合なので、その点は楽しそうではある。
体育館の半面と半面では全く雰囲気が違っていた。方や女子ばかり、方や野郎ばかり。
女子バレーボール部には力強さもあったが華やかさもあり、また何かいい香りがした。
しかし男子バスケットボール部には力強さと汗、筋肉、マッチョ、ぶつかりあい、蒸れた
臭いと野郎の空気が漂っていた。
つづく
とりあえず主将の顔は知っていたので、初対面だが声をかける。
ちなみに悪名高く今は無き女子テニス部前主将、五十嵐ヒトミの彼氏は、前任の
男子バスケットボール部主将だ。(第五十七夜 『陰の宴』 参照)
前主将はかなり短期気の荒い人物として知られていたが、現主将は、長身でやや
人相が悪いものの、面倒見がよく、優しい人物だった。
「あれ?新聞委員?…あー読んだ読んだ。野球部の、ね。あのドリンク作ってみたよ。
すっげぇ不味ぃのね。ははは。そっかぁ今回はウチかぁ…何かあっかなぁ…」
やはり同じ対応。ここからは粘りが必要だった。
「ちょいちょい、練習やめぇ!おいおい、やめろって!新聞屋さんが来てるんよ。何か
変わったことないかって。なんかねぇかな?」
前主将が現役だった頃のバスケットボール部も知っていたが、主将が変わるとこうも
雰囲気が変わるものなのだろうか。以前はどこかぴりぴりとした緊張感が伝わって
くるようだったが、今は部員全員、晴れ晴れと部活動を楽しんでいる様子だった。
それでいて、試合の結果などは前主将退任後の方が上々といえた。
わざわざ練習の手を止めて部員全員でうんうんと考えてくれている。シュウイチは
何やら申し訳ない気持ちになってきた。
つづく
「何でもいいんですよ。何かあればこっちで適当に面白おかしく書きますから」
「そうだなぁ…」
出ては来るが、誰が誰とつきあってるとか誰が誰を好きだとか、そのような話で、
さすがに個人の色恋沙汰の記事は書けない。それでも相手の口を少しでも軽く
する為、大袈裟にいいですね、なるほど、などといいながらメモを取るふりをした。
「何か他にないですかね?」
「あとは『思い出ボール』ぐらい?」
やっと何かそれらしい話が出てきた。他の部員も、ああそれがあったという表情を
見せた。
「『思い出ボール』?なんです、それ?」
とりあえず、ことのあらましを聞いた。何でも代々伝わる『思い出ボール』なるものが
あるらしい。何か楽しいことでも悔しいことでも、内容はよく分からないが、とにかく、
思い出のつまったボールが体育準備室に保管されているという。
体育準備室に保管されているといっても、通常バスケットボールでもバレーボール
でも卓球台や跳び箱に至るまで全てそこにしまうようになっていた。
部員に練習の再開を促すと、案内してくれるというというのでシュウイチは主将に
ついて行った。やはり体育準備室。それは体育館の重い鉄の扉を開けたすぐ向こうの
誇りっぽい部屋だ。
つづく
体育館内で使用する運動器具の類はボールなども含めて全て
ここに収納されている。
屋外スポーツで使用する道具は校庭にまた別の物置があった。
そこに比べればまだ土に汚れたものがないだけ清潔だった。
キャスターのついた、鉄製のかごにそれぞれの競技で使用する
ボールが詰まっている。
「『思い出ボール』はまず使わないから一番奥なんだ」
狭い室内にとにかく跳び箱やらマットやら、そのボールを詰めたかごやら
が所狭しと置かれている。
主将はその長身をぐりぐりと捻りながら準備室の奥へ入っていくと、隠れて
見えなかった、ボールの入ったかごを一台、ごろごろと引っ張ってきた。
狭いので、無理矢理に引きずり出す。跳び箱にぶつけようが、バレーボールの
ネットにひっかけようがお構いなしだ。
しばらくしてやっとそのかごは、シュウイチの目前に置かれた。他のボールを
収納するかごの塗装が全てブルーなのに対し、これは赤い。しかし所々ペンキが
剥げて、ブルーの地が見えている。
どうも元々は同じブルーのかごを区別する為に赤く塗ったようだ。
つづく
「はい。これが『思い出ボール』」
「…一体何なんです?」
「さっきも言ったけど、先輩たちの思い出がつまってるんだって」
「なるほど…」
「それで、ウチはいま部員がちょうど二十人いるから、ボールは二十個
あれば充分なわけよ」
「はい」
「で、このカゴと、このカゴに、大体十二個ずつボールが入ってるから、
これがあれば充分なんだよ」
主将は、ブルーのボールかごに触れながら言った。
「そうですね」
「でも、もしボールが足りない場合?そういう時はこの『思い出ボール』を
使うしかないんだけど、決まりがあって…」
すると、主将は赤い『思い出ボール』のかごに向かって、深々と礼をしながら、
「『思い出』、一つ、お借りしまーす!」
と大きな声で行った。そして一つボールを手にし、一度ドリブルするように床に
バウンドさせるとボールを手に取った。埃が舞う。
つづく
「これが決まり」
「え?」
「どうしても『思い出ボール』を使わないといけない時は、『思い出、一つ、
お借りします』って礼をしながら言って取らないといけないんだ。ああ、もし二つ
いっぺんに取るんだったら『思い出、二つ、お借りします』、ね」
「へぇ面白い…風習と言うか…習慣と言うか…。何年ぐらい前からあるんですか?」
「ずっと前からあるんじゃないかな?その辺は知らないなぁ。悪ぃけど」
「いえいえとんでもない」
メモを取り終えると、シュウイチは取材用のバッグから、サンヨーのデジタルカメラを
取り出し、普通のブルーのかごと、『思い出ボール』の赤いかごを並べて写真を撮り、
更に、『思い出ボール』を持って、かごの傍らで笑う主将を撮った。
「あぁ、せっかくだから部員のみなさんと『思い出ボール』の写真もいいですか?」
「いいね!撮ってやってよ。集めるから」
がらがらと赤いかごを引きずって、準備室を出ると部員に声をかけ、集めた。
「おぉい、新聞出れるぞー。写真撮るぞ写真!」
わらわらと部員が集まってきた。
つづく
クオリティが高いというか、校内新聞にはアメリカ大統領や内閣総理大臣、
また国内事件の記事なども同時に載るため、校内新聞に出ることは、
一般紙に出るようなものだった。何せブッシュ大統領などと写真が並ぶのだ。
それだけで一種の記念になる。事実通常の中学の校内新聞であれば、まとも
に読まれないか、読まれても大概はすぐに捨てられてしまう。しかし軽子沢新聞は
自分関係の記事が掲載された場合、保存している者が多いと聞く。
世界情勢などと共に掲載されるので、後に『あぁあの試合に勝った時は、こんな
ことが世界であったのか』という、記憶をたどる目安になるらしい。
まず一枚目は赤いかごを囲んだ部員の写真。のりがいいたちなのか、主将は
赤いかごの前に寝そべって、ふざけた恰好をしている。楽しそうな写真が撮れた。
次はそれぞれ部員が『思い出ボール』を手にした写真を撮ることになった。
「思い出二つ、お借りしまーす!」
腰を折って、元気よく言い、主将がかごから二つボールを取ると、一つを副主将にパスした。
後も続いてそれぞれ部員が、
「思い出二つ、お借りしまーす!」
「思い出一つ、お借りしまーす!」
と主将にならった。かなり浸透している習慣らしい。しかしカゴにはまだまだ
『思い出ボール』が入っている。
つづく
面倒になったのか、二年生のある部員が、
「思い出四つ、お借りしまーす!」
叫んだ。主将は驚いた顔をしている。
「おい四つってお前そんなに持てるのか?」
「だいじょぶっすよー」
どうも、あくまで『思い出ボール』を取れるのは、幾つ借ります、と宣言した
本人だけで、誰かが言い、別の人間が取ったりするのは禁止らしい。しかも、
宣言した数を取り終えるまで、他人に渡したり、床に置いてもだめなようだ。
その部員はまず一つのボールを取り、二つ目のボールも取った。ここまでは
問題ない。
その後、取った二つのボールを縦に雪だるまのように重ね、屈んで、太ももと
あごの間に器用に挟んだ。そして三つ目のボールを取り、それを股の間に挟み
最後の一個をようやく取ろうかという時、バランスが崩れて、太ももとあごで
挟んでいた二つのボールがこぼれた。
「ほら見ろ。四つは無理だよ」
みんな笑っている。あくまで風習なのでそれ程深刻なことでもないのだろう。その後
はそれぞれ、習慣通りにボールを取り、二十人全員に『思い出ボール』は
行き渡らなかったが、ボールを持った部員を前列に、持ってない部員は適当にふざけた
ポーズを後列で取って、撮影した。
つづく
シュウイチは編集室に取って返して早速記事を書き上げた。更に写真を
チェックする。どれも楽しそうに取れているが、最後の一枚、『思い出ボール』を
みんなで持って撮影した写真、四つ借ります、と宣言して取りこぼしてしまった
彼の表情がどことなく暗い印象を受けて、使うかどうか迷った。
むしろ、その前に取った、赤いかごをみんなで囲んでいる写真の方が明るく見え
楽しそうな雰囲気もあって、そちらを使うことにした。
午後七時までかかってなんとか原稿を仕上げ、あとは明日の朝一番で印刷し、
明日中には生徒の手に渡るだろう。
安心したが、結局その記事は使えず仕舞いで、取り急ぎ穴を埋める為、シュウイチは
マンガ同好会に所属する友人に無理をいって八コマ漫画を書いてもらい、その漫画
に記事は差し替えとなった。
宣言通りに『思い出ボール』を取れなかった彼が、帰宅途中にバイクにはねられ、命に
別状はないものの、三箇所を骨折する重傷で、今朝になって主将の方から、記事
差し止めの突然の申し出。面白がって『思い出ボール』取りに挑む者が出るといやだから
と言う。
事故そのものを記事にすることもできたが取材が間に合わなかった。誰々が事故で
重症、というだけの情報では紙面が埋められない。正確な情報を得るには時間が
足りな過ぎた。
人知れず、『思い出ボール』が一つ、増えていた。
終
お疲れさまです!やっぱり思い出を粗末にしちゃいかんですね。
こうしてボールが増えていくのか…。
体育館の描写、まるっきり自分の中学時代と同じで、懐かしく感じられました。
有難う!
『蒸れた臭いと野郎の空気』っていいキャッチコピーだわー…(笑)
>>270 ありがとうって俺がありがとうだよ^^;;
モデルは当然あたしの中学の体育館なんだけど…まぁ体育館
なんてどこも似たようなもんだよね。ただ記憶をたどるのが大変…
しかも体育館なんかあまり縁がなかったからなぁ…。
よくドラマで昼休みとか放課後に体育館を開放してるらしい描写って
あるけどどう?普通入れなかったよね?
なんかよく青春ドラマみたいので親友と二人っきりで体育館でバスケの
シュートやって、「そろそろ卒業だな。俺達…」みたいな。
ウチはガッチリ南京錠かかってましたよ。えぇ。
>>272 うちの学校は開放されていましたよ。
流石に放課後は部活で使われていましたが、
高校のときなんかは毎日昼休みにバスケやってました。
で、汗だくになって午後の授業は寝ているとw
TVの青春ドラマのような風景はありませんでしたけど、
日曜洋画劇場とかでロッキーやシュワルツェネガーが放送されると
翌日の昼休みは体育館にあったウェトレ室が満員になっていたり…
バカですね、高校生ってw
>>274=タイトルの中の人 さま
タイトルありがとう^^
すげ!ウェイトトレーニング室なんてあったの!
ないよないよ…。あ、でも高校にはあったか…。あの野郎臭さに耐え切れず
入れなかったけど…。格技棟ってのがあって天下一武闘会やった。ガチで。
二回優勝したけど第5回大会(毎週やる(笑))で、柔道部の120キロぐらい
ある奴に殺されそうになった。13回大会で一人が失明しかかって、テレビ
が取材に来た(笑)
なんかボクシングは詳しくないんだけど、異常なマニアが何故か4人いて、
何か色んな名試合を再現するのが面白かった。
本当詳細に再現する。鬼塚対タノムサクとか、もうここでジャブが何発
入ってここでクリンチしてってのが何ラウンドでも頭に入ってる。
そいつらがロッキー対アポロとか、ロッキー対ドラゴとかをリクエストすると
やってくれる。もうそのまんま。二人は選手。一人は実況と解説。一人は
エイドリアンとコーチ(笑)。もうそのまんま。あいつらすごかったなぁ。
バカですよ。高校生。俺なんかクソでかいラジカセ肩に担いで登校してたし。
一体何をしたかったのか不明(笑)
うちの中学は体育館開放してたな。
昼にバスケはみんなやるんだね。
ズボン脱がしを壇上でやったり…
さてここらで九十一話でも書くか。
的場リュウジはクラブハウスの一室、編集室にいた。
ゆっくりとセブンスターをふかしながら、ワイルドターキーを舐めている。
つづく
近くの机では、長野シュウイチが何事かインターネットで調べていた。
ここにいる時が最も安らげる時間だった。口もとに穏やかな笑みを浮かべ、
机にグラスを置くと、あごを手で撫でた。そろそろ無精ひげとは呼べなくなりつつある。
そろそろ剃るべきだろうか。そういえば風呂にもここ何日か入っていない。
彼の肉体からはむせ返るような男の匂いが漂っていた。
と、編集室のドアが乱暴に開けられた。志賀マサトだ。
「編集長!」
「どうした!?」
「龍神湖畔の山で謎の生物バリゴンの目撃情報です!」
「何!?」
「しかもバリゴン捕獲に成功すれば、一千万円の懸賞金が出ます!」
「何だと!」
「よし準備にとりかかれ。午後一時にここに集合だ!」
「了解!」
長野シュウイチを頭痛が襲った。
つづく
一人三十キロはある装備を背負い、取材車(自転車)で、龍神湖まで
向かう。二十キロの道程だ。
龍神湖はそもそも都民の水瓶として作られた人造湖である。その背後には
山が広がっている。
そこに謎の未確認生物バリゴンが現れたのだ。龍神湖から山の中腹辺りまでは
サイクリングコースや遊歩道が整備され、地元民の憩いの場として利用されて
いたが、最近になって、そのサイクリングコースや遊歩道に、全身毛で覆われた、
謎の怪奇生物を目撃したという情報が多く警察などに寄せられた。そしていつからか
それはバリゴンと呼ばれるようになった。
それに目をつけたあるオカルト雑誌が、バリゴン捕獲に一千万円の懸賞金を賭けた
のである。
果たして、軽子沢中学新聞委員会の面々は、龍神湖にたどりついたのである。
しかしいきなり、そこには市の広報車が、スピーカーで、山に立ち入らないようにと
注意を促しながら徐行している。
どうも、一千万の懸賞金は雑誌社が行政などに全く無届けで勝手に出したもので、
余りに集まってしまったバリゴン捕獲を目的とする者、一目見ようとする者などの
対応に追われているらしい。
確かに道は路上駐車のクルマが列をなし、本格的な装備をした者から、デート
ついでのカップルまで、多くの人が龍神湖周辺に集まっていた。
つづく
「…なんてこった…出遅れたか…」
「何せ一千万ですから…」
「よし。装備を確認しよう」
適当な場所に取材車(自転車)を置いて、装備を確認する。テント、寝袋は必須
だった。もう冬である。
「…今日は帰らないんですか…?」
「捕獲するまで、帰るつもりはない」
断言である。シュウイチは胃が痛くなってきた。
「よし。まず銃器類だ。俺はコイツを使う。スミスアンドウエッソン、M500ハンター。
世界最強の拳銃だ。五十口径のマグナム弾を五発ぶっ離せるリボルバーだ。
こいつで撃たれればさすがのバリゴンもイチコロだ」
「…す…すげぇ…」
つづく
「…ふっ…マサト、お前にはこいつだ。ドラグノフスナイパーライフル。旧ソ連が
開発した狙撃銃だ。有効射程は約三百メートル。信頼性が高いセミオートの
狙撃銃だ」
「俺に…それを?」
「そうだ。バリゴンをまず遠距離で補足した際にはドラグノフで。接近戦になれば、
俺のSWを使い、敵を粉砕する」
捕獲に成功すれば一千万ではなかったか。粉砕してはいけないのではないか。
「信頼してるぞ!マサト!」
「…おう!」
熱い、男の涙をマサトは流している。
「そしてシュウイチにはこれだ」
「…え?」
正直、長野シュウイチは驚いた。マサトはリュウジから信頼され、唯一、父親の形見
であるニコンを触ることを許されていたし(第六十七話 『適者生存』 参照)、拳銃も
渡されている(第八十一話 『衆合地獄』 参照)。しかし、シュウイチに銃器類を授けた
ことはない。
つづく
どこかで信頼されていないのだろう、もしくは格下に扱われているのだろうと
シュウイチは心のどこかで思っていた。
しかし信頼を勝ち得たのか気まぐれか今日、初めて銃器類を授けられるのだ。
彼は驚くと共に嬉しさを感じていた。
「フェーザー・モデルガーディアンエンジェル!」
素晴らしい名前である。いかにも力強く、気品があり優雅な名前だ。
「二十二口径ロングライフル弾を叩き出す銃だ」
「二十二口径…それってどのぐらいの威力なんですか?」
「ハナクソ程度だ。下手すると頭蓋骨すら打ち抜けない。しかも装弾数は二発
コッキリだ」
「…え…」
「まぁおもちゃみたいなもんだ。大事に使え」
リュウジは世界最強の拳銃を持ち、マサトは有効射程三百の信頼性の高い狙撃銃。
シュウイチはハナクソ程度の二連発。
つづく
まずバリゴンの特徴を確認する。
全身毛むくじゃらで、二足歩行をし、人間のような立ち居振る舞いをする。
ただし言葉は発せず、おうおうという獣らしい声を出すらしい。性格は
凶暴という情報もあり、散歩中に追いかけられたと証言する女性もあった。
見た目は教科書などに掲載されている類人猿や、原人に極めて近い。
知能もそれなりに高いようで、石を投げてきた、棒を持って襲ってきたという
情報もあるが、真否のほどは分からない。
さて、山に立ち入ると、とにかくすごい人である。平日であるにも関わらず
ごった返している。いずれも一千万を狙っているらしい。
市の職員が必死で山は危険だから入らないようにと説得しているが、隙を
見ては遊歩道のガードレールを越え、山中へと入っていく。
少年の姿まであった。
その中でも新聞委員会の姿は異様であった。問題はマサトが持っている
ドラグノフ狙撃銃だ。全長一メートル二十センチは優にある。
リュウジのSWは腰のホルスターに入っていてそれ程目立たないし、
シュウイチのフェーザーに関してはポケットに入ってしまう程の小ささだ。
対してドラグノフは長大さは余りに目立った。
つづく
山深くに入るとさすがに人影もまばらになる。
リュウジはザックからP−90PDWを取り出した。特異なデザイン、
サブマシンガン程度の大きさながら特殊弾薬を使用することにより
ケプラー製の防弾チョッキを打ち抜くパーソナルディフェンスウェポン。
それがP−90である。
「…あの、捕獲って、生け捕りしたら一千万って意味ですよね…?」
恐る恐るシュウイチが訊ねた。マサトは、そうだ、と答えた。
「撃っちゃったら生け捕りにならないのでは…」
「これらの装備はあくまで戦闘になった場合に使う。捕獲の際にはこいつだ」
またもリュウジはザックから変わった形の銃を取り出した。
「これはガス圧で麻酔弾を打ち込む麻酔銃だが、かなり接近しないと効果が
ない。有効射程はせいぜい五メートル。しかも麻酔弾は一発ずつ込めなければ
ならない。連射はできない」
「たったの五メートル…!」
「そうだ。ぎりぎりまでひきつけ、一発で仕留める。そして一千万は我々のものだ」
「俺が五百。マサトが四百。シュウイチが百だ。文句はあるか?」
つづく
一見不公平に見えるが、実際にバリゴンと遭遇した際に主戦力として
捕獲に当たるのは主にリュウジとマサトだ。
リュウジの作戦ではまず発見後、リュウジがぎりぎりまで接近、マサトは
遠方からドラグノフで援護、リュウジが無事麻酔弾を打ち込めれば作戦は
完了。
もし反撃などに合い、リュウジがピンチの際には、マサトがドラグノフで
バリゴンを撃つ。
要するにシュウイチは作戦に直接関係なく、最も安全といえばその通りなのだ。
よってリュウジが提示した金額は危険度の割合から見ても妥当であり、むしろ
成功の暁には何もしないで百万円を手に入れられるシュウイチは幸運とも言えた。
山頂近くまで来たがバリゴンのいた形跡らしいものもない。
「とりあえずここをベースキャンプにしよう。テントの準備だ」
テントをシュウイチ一人に任せ、リュウジとマサトは山の向こう側を下って行った。
つづく
シュウイチはテントを張り、更に、長期戦を見越して、炊事ができるよう、
火を炊いた彼らと行動を共にすることでいつの間にかそういった基本的な
技術は身についている。
そもそも一人残して、行ってしまった時点でかなりリュウジの厚い信頼を
受けているはずなわけだがシュウイチはそれに全く気付かなかった。
とりあえず湯でも沸かしておいた方がいいだろうと火に鍋をかけ、川の
水を沸かす。水はかなり澄んでいるので、沸かせば飲めないことは
ないだろう。
リュウジとマサトはそれぞれ重いザックを置いて行ったので覗いてみるが、
最も重要である食料が全くない。自分も持ってこなかった。
リュウジのザックには簡単な調理器具とコンパス、寝袋、地図、手榴弾や、
何故か高性能プラスチック爆弾らしき物が入っており、マサトのザックには、
寝袋とゲイ向けのポルノ雑誌ばかりが入っていた。
季節は冬である。とはいえ、一時間もあれば下山でき、さらにそこから二十分
ほど走ればコンビニエンスストアがあるので、餓死することもないだろう。
しばらく待っていると二人が登ってきた。タヌキを担いでいる。
「今夜はタヌキ鍋だ」
意外と重宝するのが味噌である。とりあえず味噌と煮れば大概のものは美味しく
頂ける。シュウイチは味噌を持ってきていた。
つづく
美味そうにタヌキ鍋を食ってはいるが、果たしてちゃんとバラゴンのことを
覚えているのだろうかとシュウイチは不安だった。
この二人、目的を忘れる、唐突に路線を変更するなど日常茶飯事だ。
単にキャンプに来たとでも思っているのではないだろうか。
「…あのバリゴンは…」
「いない」
「え?」
「山中探したが、いない。デマだ」
「…そ、そうなの?」
「二日捜索して、何も見つからなければ下山だ」
聞けばそれなり色々と調べたそうだ。糞や、木の実などを食べた痕跡など。
しかしバラゴンの痕跡は見当たらなかったと言う。しかもこの山、龍神湖の
方から見るとなかなかに堂々とした立派な山だが、向こうに抜けると中腹から
急激に開けて住宅が迫っているらしい。
「もしバリゴンがいるとすれば、そっちの住宅の方でも目撃情報が出るはずだ。
でもそんな話は聞いたことがない。あくまで山のこっち側だけの話だ。妙だと
思わないか?」
つづく
少し残念な気もしたが、二日で帰れることは嬉しかった。
テントで休み、翌日、三人で手分けをして集中的に山を捜索したが、
全く手がかりもない。
噂によればバリゴンは二メートル近い大きさがあり、人間と似ていると
いうことで、人間の糞と似たような物を排泄するはずだと仮説をたて、
そのようなものを探したが発見できなかった。
山といっても携帯電話の電波が入るので連絡はつきやすい。
とりあえず昼、集合ということになった。
「何もないな…」
「他にたくさんバリゴンを探している連中と山で会いました。相当な数の人間が
出張ってきています。この山は意外と狭い。そう考えるとやっぱりガセネタでは…」
「…そう考えるのが自然だな…。ただ夜行性かも知れん。今日はもう休んで夜に
なったら捜索してみよう」
「了解」
普通、テントを張るような場所ではない。そんなところでキャンプを張っているので
地元の子供がやってきてはテントに石を投げてきたり、勝手に覗いたりする。
その度にリュウジは銃をぶっ放していた。
つづく
夜である。二十二時を回っていた。
「よし。そろそろ動こう。今夜駄目だったら明日、帰る」
「了解」
ああやっと帰れるのか。いくらテントがあり寝袋があっても、やはり
自宅の寝心地にはかなわない。早くもっとまともなものが食べたいのと、
柔らかな布団でゆっくり休みたい気持ちでシュウイチの心は一杯だった。
「シュウイチは番を頼む。とりあえずスタングレネードを置いていく。もし
何かあったら迷わず鳴らせ。すぐに帰る」
「…わかりました」
そこまでするなら強力な重火器の一つでも置いていってほしいのだが、
やはりハナクソ程度の威力の銃しか預けてもらえないようだ。
強力なライトを持って二人は出かけていく。
思えば空腹であった。今朝、タヌキ鍋の残りを食べたが充分な量がなく、
三人とも満足に食べていない。この季節、動物も食べるもがなく痩せている
のだ。タヌキの肉も微々たる量だった。
つづく
何か食べたいが何もない。どんぐりのようなものや、きのこが
自生していたが果たしてどう食べるべきか分からなかった。
川を覗いたが魚もいない。
と、銃声が響いたのを聞く。音は二種類あった。その後静寂が
訪れ、何事もなく、だんだん不安になってきた。間違いなくあの
二人が発砲したのだろうが、無事だろうか。
火が小さくなりつつあったりで、シュウイチは薪をくべて、火を
大きくした。もしも二人がこちらを目指して帰ってくるなら、その火が
目印にもなるはずだった。
何分待ったか。二人は帰ってきた。血みどろである。
「…編集長!大丈夫ですか!」
「あぁ。俺の血じゃない。コイツのだ」
どすんと、何かが地面に置かれた。
「腹減っててよ。そう思ったらツキノワが出やがった」
「ツキノワって…熊?」
「おうよ。今日は熊鍋だっ!」
つづく
重く、二人ではどうしようもないので倒したその場で裁いて
肉だけ持ってきたという。
鍋に放り込み、味噌で仕立てて熊鍋とする。
リュウジが適当に食べられる野草を鍋に入れた。
「熊肉は珍味だぞ」
やや臭みがあるが空腹のせいもあってか確かに美味だった。
「まだ新鮮だから生でもイケるんだぜ」
かなりの大物でまだ倒した現場に大部分は残っており、もったいないので
翌朝改めて行って、肉を取り分け、持ち帰ることになった。
ところで度々言うが今までのことは全て平日、通常ならば授業に出なくては
ならない日である。
テントで一晩休み翌朝、テントをたたみ、寝袋を各々丸めて、さて、帰るかという
話になった。残念なのはバリゴンであるが、それでもそこそこ楽しいキャンプ
体験ができてシュウイチは満足だった。
熊の肉とやらを回収に向かう。確かこっちだ、いいやあっちだと、歩いていると
それはあった。無残に切り裂かれていたが、熊のようで熊ではない。
むしろ巨大なチンパンジー。毛むくじゃらの人。類人猿…。
暗くてよく分からなかったのだと言う。
新聞委員会。一千万円の肉を食す。
終
バリゴン食った━━━━━(゚д゚;)━━━━━!!!
楽しいキャンプも終わって、どんなオチになるのかと思ったら…w
いやー、やられました!
バリゴンとウホッ!な展開かと思いきや、食っちまうとは・・・w
>>まとめ人 さま
すいません。数箇所『バラゴン』となっていますが、正式には『バリゴン』です。
本当は『バラゴン』でやる予定だったのですが、一応検索してみたところ、
『地底怪獣バラゴン』という怪獣が実在する(いや創作物の上でですよ(笑))
らしいので、『バリゴン』したのですが、所々でやはり頭に残っていたらしく…。
すいません。もし余裕があれば訂正願います。余裕があれば、で結構です。
さて九十二話でも書くか。
『情報倫理学』の授業が行われていた。三年C組の授業である。
担当である山形ユウジロウは窓を小さく開けて、口から煙を吐いていた。
つづく
基本的に『情報倫理学』の成績などというものはあってないようなもので、
直接進学や受験にはまず響かない。
この時期受験対策に追われる三年生に対しては、全て自習としていた。
パソコンを使える環境にある授業であるから、インターネット上で志望校の
情報を見るなり、模擬試験をネット上で受けるなり、好きにさせている。
退屈なのでユウジロウは一人窓辺でラッキーストライクを吸っていた。無論
授業中の教師の喫煙、喫煙場所以外での喫煙は禁止されていたが、構う
こともなかった。
生徒が他の教師などに訴え出れば問題にはなるのだろうが、その点、彼は
妙に生徒に人気がある。恐らく適度な助平さをあからさまに生徒の前で出して
いるからだろう。
男子生徒には十八歳未満禁止のポルノサイトを進んで紹介し、また女子にも
セクハラまがいの行為をする。しかし嫌がる相手に無理に見せたり、触ったり
することはなく、また程度もわきまえていた。いきなり無修正の衝撃的セックス
シーンを見せるわけではなく、まあ相手が中学三年生ならこの程度だろう、と
一応彼なりに考えていた。
セクハラ行為にしても同様で、軽く触り、更に褒める。このあたりは人格と
テクニックといったところだろうか。女子の容姿の変化などにもさすがに鋭かった。
髪を切った、少し染めた、痩せた、スタイルがよくなった、基本的に嘘はなく、また
逆に気に障るようなことは務めて言わなかった。例えば少々胸が大きすぎる女子
生徒に対しては胸のことは言わない。逆に大き過ぎることを気にしている懸念が
あるからだ。
つづく
そういった気遣いは、若い頃に繁華街で色々と遊んでいた時に自然と
身についたものである。
故にユウジロウも安心して煙草を吸っていた。
自習といっても授業の一環であり、これ幸いと真剣に勉強する者も
あったので、一応、騒がしくする者については注意していた。ただ
寝ている者はそのまま寝かしておいた。特に人の迷惑にはならない
からである。
騒いで授業妨害をするぐらいなら寝ていろ、ユウジロウはいつも思うのだった。
立ち歩きも容認していた。数人の女子が固まってなにやらこそこそやっている。
三年C組には元オカルト同好会、極秘ながらモンロービルプロモーションから
アイドルとしてデビューが決まっている草壁アヤがいる。
彼女もその輪の中にあった。
「何やってんだ?」
「あ、先生…」
悪びれることもなく、教室内の雰囲気を察して小声で会話する。
何かインターネットを利用した遊びをしているらしい。
つづく
一部生徒の間で流行っているのだと言う。
「どんな遊びなの?」
「マウスだけ使って、知りたいことを探すゲームです」
「マウスだけ?」
「キーボードは使っちゃいけないんです」
意味がよく分からなかったが、聞けば、要するにリンクだけであらゆる場所に
飛び、問題の答えを得るゲームだそうだ。
無論検索サイトなどで直接検索することは許されない。
例えば、『浜崎あゆみのファーストシングルの売上げ枚数は?』というお題が
あるとする。そして、それとは全く関係のない個人サイトなどからゲームは始まる。
そこにあるリンクから、とにかく情報に近づく方向へとリンクをたどり続けるのだ。
無論全く外部へリンクの張られていない個人サイトなどへ踏み入ってしまうと
ゲームオーバー。また、大手企業ホームページも『鬼門』だという。
「…へー…大手企業なんてよさそうだけどね」
「いや、リンクが中にしか張られてないんです。閉鎖的なんですよ。意外と。一度
入り込むと、色々とリンクはあるけど、その会社で扱ってる商品のページとか、
関連企業のページとか、中でグルグル回されるだけで外に出れなくなるんです」
つづく
「あぁ…なるほどね」
「でも、大手企業のホームページから、CM紹介のページに飛んで、そこに出てる
芸能人のページにリンク張ってあったりすると出れます」
「うんうん」
変わった遊びを思いつくものだとユウジロウは感心した。聞けば一週間がかりで
解答を得られる場合もあるらしい。途中で一度やめる場合は、とりあえず今見ている
サイトを『お気に入り』に入れておき、次回またそこから始めるのだそうだ。
当然ながら、学校のパソコンの『お気に入り』は勝手にいじれないので、それについては
自宅のパソコンに限るが。
今は一時間の授業のうちに解答を得られるかのタイムトライアルらしい。
ならば邪魔するのも悪いと、盛り上がるのもそこそこにな、と一言行って、また教卓に
戻った。
しばらく眺めていると飽きたのか草壁アヤたちは解散した。しかしパソコンを操作している
一条マイは真剣に画面を眺めてはこちこちとクリックの音を響かせている。
彼女に課せられたお題は、『現警視総監の名前は?』というものだった。一時間の授業内
での早解きとあって、ある程度答えが出やすい問題にしたつもりなのだが、てこずっていた。
つづく
運良くあるブログから、ニュースサイトへのリンクがあったのでニュース
サイトへ飛び、そこから、警察関係省庁へのリンクはないかと探したが
なかなか見つからない。
特に苛立ちはない。そもそもこのゲーム、クリアすることの方が稀なのだ。
むしろ、色々とクリックしているうちにたどりついたサイトを楽しんだり、
自分の興味の幅を広げたりすることの方が大きい目的といえた。
行方不明の女子が見つかり、保護され、彼女は知らない男にクルマで
連れ回されていたと証言したが、実はそれは両親らから叱責されることを
恐れた狂言で、単なる家出だったというお騒がせ少女の記事に当たった。
少女は小学五年生だった。警察も児童連れ去りの方向で一度は動いた
ようだし、確かに大変に迷惑な話ではあるのだが、事件にどこかユーモア
を感じて一条マイは少し愉快だった。
小学五年生の女の子に振り回される大人たちの姿を想像すると滑稽だった
のだ。
彼女は色々と知らない事件もあるものだなと、ゲームを忘れてニュースサイトに
並ぶ興味を煽る見出しを次々とクリックしていった。
色々とリンクをたどるうち、やはり行方不明者関連の記事で、話題の下に『注目!』
と称して外部リンクが張られていた。そこは様々な行方不明者を取り扱い、
捜索している家族などの依頼を受け、行方不明者の特徴や写真を掲載し、
掲示板でその情報を募るといったサイトだった。
つづく
掲示板を覗いてみたが、どれも荒れており、適当な情報で溢れていた。
一見真面目な書き込みに見えるが真偽の確かめようがない。ひどい
ものになると、『天国で見かけました』などという悪質な書き込みもあった。
結局一時は賑わっていたようだがもうサイト自体が廃れ、掲示板も
もう二週間書き込みがない。
そこからは様々な行方不明者に関連するサイトへのリンクがあり、マイは
色々とクリックをしてリンクをたどり、当初の目的はすっかりと忘れ、世の中には
こんなにも行方知らずの人がいるのかと、様々なサイトをめぐった。
高校生の娘の写真を公開し探している親のブログ。自身が失踪した経験がある
者の失踪日記のようなもの。
どうリンクをたどったかはもう既に忘れた頃そのサイトは現れた。
『一年間の行方不明者数は約十万三千人。また捜索願の出されていない場合を合わせて
推定すると、年間の行方不明者数は二十万人に達すると思われる。しかしながら、捜索願
の提出された行方不明者についてはその約半数が発見、保護されている。更に発見された
者の内半分、つまり行方不明者数全体の内の二十五パーセントは自ら帰宅している』
という文章で始まるこのページは果たして、発見されない半数の行方不明者がどこへ
行ってしまったのかを考察していた。
つづく
じゃあ残りの半分は?)
(ごめん
>>301の最後の一行はミスです…メモ変わりにとりあえず書いておいたものが
残ってしまった…)
結論から言えば、これだけ人口がいる、ある程度の治安が確保されている国で、発見
できない以上大部分は亡くなっているのではないか、いう極端な論調だった。
『しかし、自殺であれば、やはり最終的に親族に発見してもらいたい、弔ってもらいたい
という心理が働くと思われ、遺書を残す、ある程度目立つ場所を死に場所として選ぶ
などと考えるのではないだろうか。そう考えると発見されない行方不明者の大半は、
実は殺人の被害者なのではないかと私は考える』
そんな考えもあるのかと、下にある『トップへ』という文字をクリックしてトップページを
見た。行方不明者から連続殺人、快楽殺人などを扱ったページらしい。
そこに『真の殺人魔とは?』というコンテンツがあり、彼女は興味を惹かれた。
そこには切り裂きジャックに始まり、ジョンゲイシー、テッドバンディ、ジェフリーダーマー、
チカチーロ、といった著名な快楽、連続殺人犯についての批判が掲載されていた。
批判といっても人道的なものではなく、『彼らは完璧な殺人犯ではなかった』と書かれている。
何事かとよく見てみると、要するに真の殺人魔とは、容疑もかけられず、警察に追われる
ことも、掴まることも、もちろん裁判にかけられることもなく、そのまま一生人を殺し続ける
者だと書かれていた。
そんな馬鹿なと眺めていると、そのサイトの作者はその人物を知ると書かれている。
つづく
『ある時は完璧に自殺に見せ掛け、ある時は死体を完全に隠蔽し、殺人で
あることすら誰にも気付かせない。無論無名である。犯罪史に残ることも
ないだろう。しかし彼は確実に存在するのである』
長々と細かいフォントが書かれたレポートなので読みにくい。彼女は、マウスの
カーソルで一行ずつ文字をなぞって見ていた。すると、ある文字のところで何か
違和感を覚えた。
何だろうともう一度その辺りをマウスでなぞってみると、そこだけ通常矢印型の
カーソルが、指の形に変わった。それはリンクが張られていることを意味していた。
隠しリンク…。彼女は迷わずその一文字をクリックした。
漆黒の画面に、白い文字で、
『 ツギ ハ オマエ ノ バン ダ 』
なんだ脅かしか。と思ったところでチャイムが鳴った。
翌朝、彼女は自室で首吊り死体となって発見された。遺書はないが、間違いなく自殺だそうだ。
終
(´;ω;`)怖いお
これは久々に純粋に怖かった…((((((;゚Д゚))))))
バリゴンの話はいいですねぇ。三人のやりとりが最高www
都市伝説的な話は大好きですw
100話を目前にして、作者さんの文章に更に磨きがかかったような気がします。
もうすぐ100話か…。
楽しみでもあるし寂しくもある、なんともいえない気持ちだ…。
後からクる怖さがあるね(((( ;゚Д゚)))
>>307 いつも本当にありがとう…。お忙しいでしょうに…。
『ふぐるまようひ』なるものは大変面白いですね。まさにネット社会と
なってからは活躍しているのではないでしょうか。
この膨大な文字ばかりのサイトである2ちゃんねるの中にも潜んで
いそうです。本来の言霊であるパロールに対するエクリチュールたる
『ふぐるまようひ』
そのような妖怪が存在していると考える先人のセンスには脱帽せざるを
得ません…。
また知ってるタイトルさんにも脱帽せざるを得ません。感謝です^^
ちょっと今日は帰宅が遅くなり、12時あたりからぼつぼつとネタを
絞っているのですが、通常で1時間〜2時間かかり、そこから書込みに
2〜3時間を要すると思うので、休みたい方は先に休まれた方が賢明と
存じます。
また明日も日中少々用事がありますので、場合、今晩は休載とさせて頂く
可能性があります。俺は時間がたっぷりあるぜ!という方も、2時を過ぎて
スタートしない場合、相当な事情(布団に入った瞬間突然、江戸川乱歩先生の
作品を越えるストーリーがひらめいた、また今夜書かないと殺すと警視庁公安部
からの電話が入るなど)がない限り休載とさせて頂きますのでどうかお休み下さい。
勝手ながら御了承下さい。申し訳ないです。
310 :
SAGE:2006/10/06(金) 01:12:21 ID:RTfI0zo0O
作者さん、了解しますた!
(ちょっと遅くなっちゃったけど、ミスったのかな。あがっちゃってたんで沈下を
待ってました。これから投下します。約束破ってごめんね。その上ちょっと短く
なるかも。それも勘弁勘弁。)
さて九十三話書くか。
山形アカネは朝から憂鬱だった。兄、山形ユウジロウはその顔である程度のことは
察していた。
つづく
いってきます、も言わず黙ってユウジロウは職場である軽子沢中学校へ。
アカネは一人朝から酒を飲みはじめた。兄の安物のウイスキーである。
とはいえ、酒に強いとはいえない彼女にとっては、それは喉に灼熱の苦痛を
もたらすものだった。
身体が反射的に吐き出そうとするのと必死で飲みこむ。たちまち顔にほてりを
感じ、軽い眩暈と、ほんの少しだけ、罪悪感に似た何か嫌な感情が遠ざかるのを
覚えた。
小さなグラスでやっと一杯飲み終えた頃、彼はやってきた。
やや頬がこけ、疲れた顔をしているが端正な顔立ち。長身の男だった。
「山形アカネさん…ですか?」
「はい。本日は…」
「よろしくお願いします」
アカネは彼を客間に通し、茶を振舞った。
「…いきなりで申し訳ありませんが…」
「あ、はい。お金ですね。少しですけど…これが精一杯で…」
「ありがとうございます」
つづく
茶封筒を受け取るが中身は特に確認しない。ただ厚みで、大体約束の
金額が入れられていることは分かった。
正確な金額は正直どうでもいい。
「…こちらがお約束の品です」
机の上にアカネは小さな小さな巾着袋をそっと置いた。男の目が釘付けに
なった。
「…本当に痛みも苦しみも…?」
「はい。信用できるある医師の処方で作られています。眠るように。安らかに」
安心した様子を見せたが、それでも男の緊張した表情はほぐれなかった。
男が茶を飲み終えるのを待ってアカネは訊ねる。
「どんなプレイを御希望ですか?」
思い出したように男は言った。
「…あ、いや、そちらの方は結構です。そういう気分にもなれませんし…」
先ほど受け取った封筒から、半分ほどの札を取り出すと、アカネは彼に返した。
しかし彼はそれを受け取らなかった。
つづく
男は名を秋田ダイサクと言った。本来、アカネは名を聞かないのだが、
彼が勝手に名乗った。
「…売れない役者です…」
ある程度のことは聞いていたが、詳しい事情は知らない。知る必要もないし、
知りたくもなかった。しかし彼の話さずにはおれないといった表情に、アカネは
負けた。
まだ彼は充分若かったが、それよりも更に若い時期はそれなりに人気があり、仕事も
ある俳優だったという。
「まぁ…子役みたいなもんですけど…。学生の役が多かったんです。当時、学園モノの
ドラマとか映画、多かったんですよ」
不良的な役や、問題児の役ほやらせるといいと定評があり、彼は様々なドラマに顔を
出した。しかし年齢を重ねるにつれ、さすがに中学生や高校生の役をさせるに無理が
出始め、気付けばヤクザ映画のチンピラ役となり、次第に台詞も減り、最近ではほとんど
エキストラ扱い。台詞もなく、オファーをもらって張り切って演技をしても、上映の段階
ではカットされているなど、上手くいっていないらしい。
「…大変そうですね」
「だからいっそ、もう死んでしまおうかと思って」
彼は皮肉っぽく笑った。
つづく
「負け犬なんですね」
きっぱりとアカネは言った。突然言われたことに秋田ダイサクは面食らったが、
何やら色々と言い訳をはじめた。
「私には才能がある。認めない連中がおかしいんです。私は負け犬なんかじゃ
ない」
「…相手を認めさせればいいじゃないですか」
冷ややかだった。アカネの目がいつもと違う。既に酔いは醒めている。ただ、
どういうわけか、怒りの色が瞳に見えた。
「…でもいくら頑張っても…だから私はこの世を怨んで、憎んで死んでやるんだ!」
「自分を殺すことと、自ら死を選択すること。その違いが分かりますか?」
しばらくダイサクは黙っていたが、どう考えてもその違いが分からなかった。
「あなたは自分が自分らしく生きられないから逃げているだけ。だったら自分らしく
生きてみてはいかがですか?」
「でも社会が、周りが認めてくれないんだ!」
激昂して彼は言った。しかしアカネは顔色一つ変えなかった。
「だったら認めさせれば?」
つづく
「…ずっと、ずっとそうやって頑張ってきましたよ!でも、どうやったって、
何をしたって、…駄目、だったんだ…」
怒りを向ける相手を誤ったせいか、やるせないのか、ダイサクは一度見せた
怒りの色を冷ました。
「…自分を認めない社会を怨んで怨んで死にたいんですね…」
「そういうことです…」
「死んだら怨むこともできませんよ。死んで怨みを晴らすなどと言うのは、
所詮、弱者の逃げ口上…。自分を認めない社会を怨んで死ねば、結局
その社会に殺されたことと同じ。結局負け戦です。だから、あなたを負け犬と
言いました」
悪びれる様子もなく、アカネは淡々と言った。既に小さい巾着袋は自分の手元に
戻してある。
そんなことを言われてもそれなりの努力をし、やれるだけのことはやってきた
ダイサクは困りあぐねた。これだけやってまだ努力が足りないと言うのか。
何か他に方法があるのか。
この年齢、幼い頃から芸に身を捧げ、学歴もなく、手に職もなく、生きる道はない。
そもそも芸の道以外を行くようならばやはり死んだ方がいい。
彼は芸能、役者という仕事が心底好きだった。
つづく
「あなたは負け犬といわれたことを否定しました」
「…」
「だったらあなたはまだ負けてない。本当の負け犬なら、負け犬と
言われ怒ることもないでしょう。あなたはまだ生きるべきです。
生きていれば、勝利者になる可能性はあります。いつか、御自分が本当に
負け犬と信じた時、またいらっしゃって下さい。…お代はお返しいたします」
茶封筒が机の上を滑った。ダイサクはまだ納得し難かった。この女に何が
分かるというのだ。生きていれば勝利者になる可能性はある?これだけの
可能性を試してきたのに。それで駄目だったのに。
「…いつまでも自分にこだわらず…。本来の御自分を演じてみてはいかが
ですか?むしろ過去に囚われているのはあなただと思います」
意味の分からない言葉を最後に、ダイサクは怒り半分で山形家を出た。
しかしその怒りが一体何なのかは分からなかった。社会に向けられたものか
自分に向いているのか、山形アカネにむけられているのか。
ただ彼の耳にはアカネの最後の言葉だけが残っていた。過去に囚われず、
本来の自分を演じろ…。
つづく
しばらく自堕落な生活が続いたが、それでも彼の頭は動いていた。
何か、山形アカネに言われたことが引っかかっていたのだ。酒も煙草も断ち、
彼はひねもす、古いアパートの一室で、かび臭い布団に身を横たえずっと
考えていた。
そんなある日、知り合いの映画関係者から、オーディションを受けてみないかと
話があった。資料を送るというので待っていると、有名監督による大作映画の
オーディションだった。
資料に目を通し、彼は一応応募することにした。やつれてはいるが、ルックスは
悪くはないし、過去の芸歴もある。一次審査は通り、監督やプロデューサーの
前で面接を受けることになった。
当日になって台本を渡される。それはこの映画のクライマックス部分の台本だった。
それを監督らが見る前で演じて見せろというのである。
設定としては、ある些細なことがきっかけで社会的地位を失い、妻にも逃げられ、
やっとの思いでつかんだ小さな幸せを逃し、絶望して死んでいく男の話だった。
まさに悲劇。今時このような映画が大衆に受けるかどうかは別して、監督は既に
高齢ながら名監督として海外にも知られていたし、その映画の主演となれば、
役者としてのキャリアは間違いなく高められるはずだ。
つづく
幸せを逃し、絶望して死んでいく男の話。まるで自分だな。ダイサクは思った。
その瞬間彼は電撃に打たれたのである。過去に囚われず、本来の自分を演じる。
答えが見えた気がした。彼は監督の前に立つ。こけた頬、落ち窪んだ目。過去の
栄光は既にそこにない。あるのはあるがまま、現在の自分、秋田ダイサク本人
だった。
人生から落伍し、世をはかなんで、怨み、絶望して死ぬ男。彼は監督の前に立つなり、
よろしくお願いしますとも言わず、自己紹介も勿論せず、では始めて下さいの言葉も
待たずにいきなり演技を始めた。
「全部…終わった…。俺は…最後なんだっ!自分で終わらせてやる!」
いきなり始められても困るのでプロデューサーが止めようとしたが、監督がそれを制した。
ダイサクの演技は続く。
彼はカッターナイフを取り出すと、ちきちきと刃を出した。そしてそれを自らの首に押し当てる。
「おい!きみ!!」
プロデューサーは立ち上がり、女性スタッフが叫び声を上げた。監督はただ震えている。
つづく
「単に自分を殺すのではなく…、自分が自分である為に、俺は死ぬ!」
台本にはない台詞を叫び、カッターの刃が深くダイサクの喉を滑った。
血が噴き出し面接会場が朱に染まる。
全員が無言だった。
「…ありがとうございました…」
深々と、秋田ダイサクは頭を下げた。そこには一滴の血もなく、またカッターナイフも
ない。ただ深々と礼をする一人の役者があった。
「…見事だ!」
全員が呆然と立ち尽くす中、監督だけが立ち上がり手を叩いた。彼だけが全てを冷静に
見ていた。ダイサクは首を切るふりをしたに過ぎない。ただその壮絶な演技力が、
ナイフと血を人に見せたのだ。
オーディションはその場で打ち切られ、後に控えた者は監督の一存で全員返された。
彼以外にこの役はもう考えられない、監督の言葉である。
監督はダイサクの不健康そうな顔が気に入ったようで、まずはラストシーンから撮影され、
その後徐々に健康体に戻しつつ、ストーリーとは逆行して撮影が進められた。これを編集
すると、始めは健康体で幸せそのものといった主人公が転落するに従い、やつれていく様が
映像的に表現されるわけである。
映画はそこそこのヒットという感じであったが、クライマックスでのダイサクの渾身の演技は
話題となり、一躍実力派人気俳優として確固たる地位を築き上げた。また普段の演技と
そぐわないひょうきんなキャラクターもうけて、バラエティ番組にも数多く出演している。
終
良かった・・・。アカネもこれで少しは救われたかな?
九十四話書くか。
岡崎リョウコは全裸でベッドに横たわっていた。
股を開いて、陰部に指を沿わせている。
つづく
いきなりエロきたwwww
吐息が荒くなる。隣は父親の書斎なので声は出せない。
中指と薬指を、肉の谷間に差し込むと、そこは思いのほか濡れていた。
罪悪感。
しかし衝動は止まることなく、指も半ば彼女の意思に反して、中身を
攻めていた。
快感にのけぞる。
こんな忙しい時期に。一時間でも惜しい時に。性欲に駆り立てられて、
自分を慰めなければならないなんて。
勉強になかなか集中できずにいた。時間は経てど頭に入ってこない。
いつしか彼女は、自分の性欲に気付いた。
元は彼女も女子テニス部で、ある程度遊んだ口だ。(第五十七話 『陰の宴』 参照)
セックスも既に何度も経験済みである。
しかし部を追い出し同然に辞めてからは、自分の愚かさに向き合い、
中学生らしく卒業までおとなしくしていようと心がけていた。
それでも時折、止めようのない性欲にさいなまれる。
結果、いつも彼女は自己嫌悪に陥りながら、彼女自身に手をかけるのである。
つづく
頭に思い描くは、ろくでもない、淫らな過去である。
それでも彼女の指は止まらなかった。
喘ぎとも、溜息ともつかない呼吸を繰り返し彼女は次第に
絶頂へ向かう。
しかし、彼女が求めているものは指ではなくなっていた。
本物が欲しい。
あのグロテスクで、どこが神秘的な肉の棒。それは明らかに
指とは異質だった。
与えられる快感もまた、しかり。
男の匂い。体温。絶頂に近づきながらも、彼女はその熱くいきり立った、
男そのものを求めた。
彼女は己の淫らを嘆き、涙した。一人ベッドの上。ひざを抱えて。
こんなことをしている場合じゃないのに。
自分の美しさを武器にテニス部にいた頃の男で、まだしつこく何かと
つきまとってくる者はいる。電話一本ですぐに抱いてくれることだろう。
しかし弱味を握られるようで嫌だった。お前がしたい時にしてやったんだから
俺がしたい時にもしてくれよ。
つづく
知っているのはそんなことを口に出す男ばかりだった。
もう売春に手を出すのも嫌だった。
それでも散々もてあそばれた彼女のヴァギナは当時の快感を
忘れることなく、時折要求するのである。
ひどく濡れている。指ではもうごまかせない。男のたくましい肉体と
硬直した棒が欲しい。
葛藤した。下着を履き、服を着て再び机に向かうが、頭の中は全く
別なことを考えていた。
二月に一度、こんな日がある。それでもしばらくすれば波が引くように
それは心の奥底へ再び収納される感情だった。
しかし今まで誤魔化し続けてきた感情が一度に噴き出してきたようだ。
決壊したダムのように押し寄せ、男を求めさせた。
勉強も手につかず、また眠ることもままならなかった。
何度も彼女は肉体に懇願するが、肉体が要求を聞き入れることはなく、
時が経つにつれ、更に求めるのである。
ふと触れれば、それはもう泉のように濡れている。
つづく
彼女は起き上がると、着替えて寒い外へ出た。肉体の要求を
かなえる為ではない。少し散歩でもして気を紛らわせようとしたのだ。
川沿いの道へ出て、ランニングやサイクリングができるようになっている
遊歩道を歩く。まだそんなに遅い時間ではない。
犬の散歩をさせている中年の夫婦を見て心が和むがそれも一時的な
こと。
少し年上か、高校らしい青年が力強くランニングする様を見ると途端に
子宮がうずいた。
以前、遊び半分で付き合っていた男に言われた言葉を思い出す。
『お前ってほんとにスケベだよな?』
顔は美しく、性的には奔放。重宝がられたものだった。つきあった男は皆
身体目当て。真剣に悩み事を相談すれば面倒くさがられ、それでも体だけは
求めてくる。嫌気がさしてこちらからふれば、最後に一回だけやらせてくれと
せがまれる。
今更人のせいにはしまい。全ては自分が悪いこと。少し大人びて見えるのを
いいことに、何も考えずただ金のことだけを考えて援助交際を初め、荒稼ぎ
した結果がこれだ。
少しばかり容姿に優れているからといって調子に乗り、適当に男を
取替え引換えした結果がこれだ。
つづく
遊歩道に置かれている木製のベンチに腰掛、一人川面を眺める。
そろそろ空気が澄んで、明るく見えるようになった星が映っていた。
ぼけえと眺めていると、声をかけられた。
「大丈夫ですか?」
見れば優しそうな笑顔をたたえたジャージ姿の青年が立っていた。
こんな時間に、一人ぼおと川を眺めていたので自殺志願者とでも
思ったのだろうか。笑顔の影に、心配の色が見て取れた。
「あ、なんでもないんです。ただちょっと散歩してて…」
「そう。なら、いいんだけど」
彼はリョウコの隣に座った。隣といっても、ベンチの端と端。距離は
多少離れている。
走ってきたのか、この寒いのに彼は汗をかき、それを首からかけた
タオルで拭っていた。また子宮が反応した。
「…毎日走ってるんですか?」
「いや、気が向いた時だけ…。今日は何か部屋に一人でいると色々
考えちゃって」
「あたしもです」
つづく
リョウコは一見大学生ぐらいに見える。はたから見れば、その男と、
同い年ぐらいに見えることだろう。
爽やかに微笑む彼に、リョウコは好感を覚えた。
気付けば彼と、つまらない話題で盛り上がりながら一緒に走っていた。
彼はリョウコがまだ中学生と聞いて随分と驚いたようだった。
それでも特に態度を変えたりということをしない。あくまで対等に扱って
くれた。彼は大学一年生だという。
東北から上京し一人暮らしをしているが、もう冬になるというのに友人の
一人もできず、寂しくなるとこの道を走るらしい。
リョウコが受験生であることを知ると、彼は色々とアドバイスをくれた。
お定まりの言葉だったが、リョウコは心遣いが嬉しかった。
「…色々と不安がある時期だと思うけど、今は勉強に専念するべきだよ。
早く気持ち切り替えて、家に戻りな。もう時間も遅いし」
彼の言葉には少し東北弁のイントネーションが残っている。そのありきたりな
優しさにもリョウコの子宮は敏感に反応していた。
つづく
「あそこに見えるのが俺のアパートだ」
まだ新しいアパートが見えた。と、彼はそこで折り返して、道を
逆送し始めた。
「まだ帰らないんですか?」
「いや、とりあえず近くまで送るよ。心配だし」
「えー!いいですよ。一人で帰れます」
「だめだよ。最近物騒だし。特にきれいな娘は…」
褒められて悪い気はしない。嬉しいというよりむしろ照れくさかった。
しかし、送ってもらうのは気が引けた。もう五キロ以上走っている。
「本当、もうここで結構ですから」
「そう?本当に大丈夫?」
「はい。一人で帰れます」
とは言いつつも、男のペースについてきたリョウコはかなり疲れていた。
近くのベンチに腰かけ、少し休んだら帰ります、と言った。
つづく
大学生も一緒にいた。
「休憩終わるまで一緒にいてやるよ」
やはり駄目だ。その大学生の下心のようなものは薄々感じていた。
しかしそれに従おうとする自分がいる。
中学生であることは言ったが名前も、学校名も住んでる場所も何も
言っていない。後腐れもない。この男と一晩寝てしまおうか。
良からぬ考えがリョウコを支配しつつあった。決して褒められた行為で
ないことは分かっている。ただ、その欲望の抑えようがなかった。
「せっかくあそこにアパートがあるんだったら、そこで休みたいな…。なんか
すごい疲れた」
「そ、そう?じゃあ寄っていきなよ」
「いい?」
「いいよ。汚い部屋だけど」
子宮に突き動かされて、彼女は名も知らぬ男のアパートに足を踏み入れた。
部屋は清潔だった。汚い部屋、というのは謙遜だろう。
「いやー今日も走ったな。少しシャワー浴びてきてもいい?」
「あ、どうぞ」
「悪いね。テレビでも見て待ってて」
つづく
男に妙な焦りが見えた。友達がいないとか、恋人ができないとか
嘆いていたのは本当かもしれない。
何となく男からは緊張感が漂っていた。
それならばいきなり乱暴なセックスもされないだろう。今夜出会ったのも
何かの縁だ。抱いてもらおう。でもそれでいいのかな。そんな簡単な
ものなのかな。
リョウコは漏れ聞こえてくるシャワーの音を聞きながら考えた。
セックスをしたい気持ちはあるがあくまで自分のエゴで、相手が好きなわけ
ではない。しかも一度きりで済まそうとしている。一番楽な形だが、相手は
本気で好きになってしまうかもしれない。
だとしたら一度身を結んだきり会うことも電話することさえできなくなったあたしを
どう思うだろう。
やはりいけないことだ。何となく、これは動物の本能みたいなものだから、と
自分で許していたが、それに従えば、テニス部の頃と何も変わらなくなる。
少し休ませてもらって、そのまま帰ろう。何もせずに。
セックスは、ちゃんと好きな人を作って、告白して、つきあってもらってからする
ものだ。そうじゃない場合もあるかもしれないけど、あたしはそれがいい。
そうしたいと思う。
つづく
喉が渇いた。勝手に開けるのも悪いかなと思ったが、彼女は部屋の隅に
置かれている小型の冷蔵庫を開けた。
やはり休むのもやめよう。このまま帰ろう。いけないことだったんだ。
優しくしてもらって悪いけど。優しくしてもらってありがとうと思うけど。
でも帰るね。ごめんね。ばいばい。
冷蔵庫のなかに、サランラップでくるんだ女の人の手首から先だけが
いくつも入ってるんだもん。
怖いよ。したい時にえっちできないのは辛いけど、手切られたり殺されたり
するぐらいなら我慢できる。
勝手に上がりこんで、勝手に冷蔵庫開けて、勝手に帰って。
ごめんなさいと思うけど。さようなら。
終
ちょwww怖い怖い怖い怖い!
エロくるかと思ったら…怖いよおぉぉー((((((;゚Д゚))))))
静か〜にゾゾーo(T□T)oっときました…
取り乱すでもなく『ごめんね。ありがとう』で帰るリョウコが更にゾゾ…
今までで一番怖かったかも(T^T)
寝れないよぅ、、
諸事情により本日、今夜の投下は休ませて頂きます。申し訳ないです。
(気の迷いでもしかしたらするかもしれないけど…)
よろしくです。
了解でし!(`・ω・´)ゞ
うぃ!
了解でーす
∧_∧ +
(0゜・∀・) ワクワクテカテカ
(0゜∪ ∪ +
と__)__) +
九十五話。
駅近くの喫茶店、カフェ・ク・ドゥイユ。その落ち着いた雰囲気と、
味わい深いコーヒーから、若者よりむしろ大人たちに愛される店である。
つづく
そこに若い二人はいた。木下サエと、霧原トオルである。
特にコーヒーの味が分かる二人ではない。むしろ、サエはコーヒーが
苦手ですらある。
ただ、若者や親子連れの集まる騒がしいファストフード店や、ファミリーレストランの
雰囲気をトオルが嫌い、二人はよくここを利用していた。
トオルはオリジナルブレンドのコーヒーを。サエは温かいココアを飲んでいた。
何とも言えない陰鬱な、灰色の雲が垂れ込める休日の午後である。予報では雨は
降らないという。
余り、霧原トオルは口が軽くない。むしろおとなしいタイプだから、何も言わずただ
黙って頬杖をついている。表情も特にないが、それでも彼は彼なりにこのデートを
楽しんでいるつもりだ。
付き合いたての頃は、相手がひどく退屈しているのではないかと思い、その態度が
気になった仕方のなかった木下サエだが最近はその無言の時間を楽しむすべを
覚え始めた。
とろりと濃厚で、芳醇なカカオの香り漂う甘すぎないココアを、ほんの一口飲んで、
愛する人の、その無表情な顔をちらりと眺めるだけで幸せを感じることができた。
時折目が合う。その時トオルはたまらなく優しい目をするのだった。できればその目を
じっと見返していたかったが、サエはそれが照れくさく、つい視線を反らしてしまうの
だった。
つづく
そっとトオルが左手を狭いテーブルの上に置いた。その上を向いた
手のひらに、サエは自分の右手をかさねる。
そして無言で手遊びをした。相手の指と指の間に自分の指をはさみ
入れたり、中指で手のひらを撫でたり。
複雑にからみ合う手のひらと手のひらを、トオルはまるで自分の手では
ないかのように不思議そうに見ていた。
その目は、仔猫同士が戯れているのを見ている者の目に似る。
余り表情を顔に出さない彼ではあるが、目の表情は豊かだった。物言わず、
ころころと変わるその目がサエは好きだった。異性ながら、憧れのような
感情を抱く。
我が恋人ながら、なんと素敵な人だろうかと思うのだ。自分など無骨で、
粗野で、女らしさもなく。それに比べて彼の何としとやかなことか。やはり
血筋なのだろうか。
気品と上品さを霧原トオルは持っていた。そんな彼が本当にこんな自分を
愛してくれているのか、たまに分からなくなる。一体何がいいのだろう。
しかし一方で、霧原トオルも彼女の、その猛々しいともいえる性格に惹かれて
いるのである。お互いにないものをお互いに持っている。単純に言ってしまえば
それだけの話なのだ。
つづく
窓辺の席で、誰に見とがめられるわけでもなく、二人は手悪戯を
続けた。
どこかその行為にエロティシズムさえ覚える。
サエの女がうずいた。そんな自分に恥ずかしさを覚えて、床から天井まで
ある巨大な窓に目をやると、そこにはにやにやと二人の手悪戯を見ている
者の姿があった。
草壁アヤと、雪野カエデである。
ぎょっとしてサエは手をしまいこんだ。窓の外で二人はげらげらと笑っている。
アヤとカエデも店に入ってきた。
「いつから見てたんだよ!」
「ずっと。あはは」
「仲いいんですねー」
トオルとサエが陣取っていたのは二人席だったが、邪魔者二人が加わったので、
店員の女性に声をかけて、四人席に移った。カフェ・ク・ドゥイユのメニューは多少
高額だったが、トオルがおごるというので、アヤとカエデはそれぞれカフェオレと
グレープフルーツジュースを頼んだ。
つづく
「おごってやる必要なんかあんの?」
デートを邪魔されたことをサエはしばらくぶりぶりと怒っていたが、
そのうちどうでもよくなっていた。同学年のアヤはともかく、カエデ
とはなかなか機会がなく会っていない。
これに岡崎リョウコが加われば、元オカルト同好会のメンバーが
全て揃う。
「一応メールでもしておきますか?」
「呼ぶだけ呼んでみ。多分勉強中だよ」
ところが彼女も駅前の書店にいたらしく、十分もしないうちに合流してきた。
「早っ!」
「集まるなら前もって声かけてよー」
「偶然集まっちゃっただけです」
「へー…すごい偶然もあるもんだね」
「あのね、サエちんとトオルちんね、手でこんなことして…」
つづく
「余計なこと言うな。学校中にバラすぞ」
バラす、というのはアヤのアイドルデビューの件である。(第七十八話 『才能』 参照)
ここにいるメンバーは全員知っていた。
ちなみにお分かりのことと思うが一人やけに乱暴な口調で話しているのはサエである。
四人席に更に椅子を一つ持ってきてもらい、リョウコはオリジナルブレンドを注文した。
「霧原先輩のおごりみたいですよ」
「…そう。でもあたしはいいよ。自分で出すから」
「時間は大丈夫なの?」
「うーん…まぁとりあえず暗くなる前に帰れば」
「解散してから全員で集まるのってはじめてだっけ?」
「…全員ってのは…初めてじゃない?いつも誰か欠けてた」
「同窓会みたいですね」
「…うーん…でもまぁそれぞれ学校ン中でちょくちょく会ってるからな…」
つづく
「木下先輩ってあたしのこと嫌いですか?」
「何だよ急に」
「だって全然メールとか返してくれないから…」
「あーサエさんはメールとか返さない人だから。気にしない」
「あたしこないだサエからワケわかんないメール来てさ」
「そんなん出したっけ?」
「一言だけ。『知らない』って」
「あー出した出した」
「何ですか『知らない』って?」
「あたしが三日も前に出したメールの返事。信じらんない。三日後だよ?」
「あはは。サエさんはやりそうだ」
「しかも一言だけって…」
「…だってメールってなんかまどろっこしいんだもん」
「霧原先輩とはメールとかしないんですか?」
つづく
(ごめん間違った。
>>347の『サエさん』ってのは『サエちん』の誤りです…ごめん)
「あくまりしないよ。ね。霧原」
「うん」
ほとんど女同士の会話で、トオルは参加しない。しかしそれはオカルト同好会の時も
同様だった。しかも彼女達は全く彼に気を使わない。
トオルはそれはそれで良いのだった。逆におとなしくしていて、会話にさんかできなくて
可哀想だと思われる方が苦痛だった。発言こそしないが、彼女達の話を聞いていることが
つまらないわけではない。むしろ楽しかった。
彼は彼なりに無言ながら会話に参加はしているのである。沈黙の聞き手として。
「でもさー同好会続けたかったなぁ。受験とかなければ」
「言えますね…」
「解散後の方が色々ある気がしない?」
「するする!」
「バリゴンとか。(第九十一話 『真剣勝負』 参照)」
「殺したの誰なんだろう…。人間がやったって。ニュースで」
つづく
「一部の肉が切り取られてたらしいからね…」
「キャトルミューティレーションかも…」
「そういえばチューバッカに似てたね」
「誰よチューバッカって?」
「スターウォーズ知らないの?」
「…いるんだ。あんなの」
「映画だけど…」
「やったのムックだったりして(第四十二話 『不惑知らず』 参照)」
「怖ぇ!」
「ってサエ、あんたもトオルくんの田舎でなんかあったんでしょ?」
「あれは衝撃的だったわー」
「何それ何それ?」
「霧原先輩の書いた絵が、妖怪になった出てきたって聞きました」
「はあ?」
つづく
それぞれが校内などで会うたびに、お互いの情報を交換しているので、
リョウコはこの話を知っているがアヤは全く知らないとか、もしくはその逆で
あるとか、とにかく情報は錯綜していた。
単なる仲良しグループではない結果だった。通常であれば、みんなが知っていて
自分だけ知らないとなると何かいやな気分になりそうなものだが、その点彼女たちは
さっぱりしていた。別に自分がのけ者になったとは思いもしない。
結局、それぞれがそれぞれの身に起こったことの報告会のようになった。
サエとトオル、といっても主にサエが話し、トオルが補足するといった程度だが、彼女らは
霧原家所有の長野県某山中、霧原邸のことを語った。『第八十六話 『追憶ノート』 参照)
「すご…信じがたいな…」
「でも新聞委員の的場もいたんだ」
「何でいるのよ?」
「訓練中とか…」
「誰ですか?的場さんって」
「知らないの?新聞委員のヒゲの人」
「あんま学校いないからなぁ…あいつ…」
本当はカエデは的場リュウジの顔を知っていた。写真を見せれば、あああの人かと
納得したはずである。ただ彼女はあの中学生離れしたリュウジの風貌から、教師の
一人だと思いこんでいるのだ。
つづく
「でもそういえば霧原先輩って絵、上手いですもんね」
「あー文化祭の時書いてもらったなー(第五十一話 『雪解』 参照) 」
「あんた彼氏のことぐらい覚えてなよ」
「あと『皆殺しの村』っていうのがあってさ…」
リョウコの言うことをサエは完全に無視したがリョウコは腹も立てない。
「うわ…怖そう…」
「どんな話だっけ?霧原」
「忘れたの?」
ぽりつぽつりとトオルは語ったが、その静かな話しっぷりが恐ろしかった。
しかも事件は結局謎のままというのが一層ミステリアスである。
(第八十七話 『荒療治』 参照)
的場リュウジはことの一部始終をどういう形でだか見ていたが、夢の可能性が
捨てきれないということで、記事にもしなければ他言もしていなかった。
(第八十八話 『舫い綱』 参照)
つづく
「あとは校長の四人殺し!」
「ちょっとアヤ、声大きい…」
「…ごめごめ」
「…な…何ですかそれ…?」
「カエデは発表会でいなかったんだよね。確か…」
若者に恐喝されかかったが、気付けばその若者達が不自然な死を遂げ、
軽子沢中学校長、鬼塚ケンシロウが何事もなかったかのように立ち去った
事件。
報道もされたが、校長がからんでいることを目撃者であるリョウコ、アヤ、サエは
誰にも言っていなかった。(第七十九話 『賢しらな羊』 参照)
「…でもあの校長先生が強いようには見えませんけど…」
「あたしは『内調』の仕業と見てるね」
「あるの?ほんとに(第七十六話 『真理』) 参照)」
「あるって聞くよ。ただ『内調』に所属してる人間は、絶対秘密なんだって」
「そんなのあるかなぁ…」
つづく
一年生のカエデでさえ『内調』、風紀委員会別室校内調査部の噂は聞いたことが
あった。それだけ知られていながらその実態は全くの闇の中であった。
その存在もある意味では不気味である。サエは、『軽子沢中学には不良がいない』
という事実と、『内調』の存在を関連づけて、自論を力説した。
同刻。
十二畳の広いリビングで、軽子沢中学校長、鬼塚ケンシロウはやや型の古い愛用の
携帯電話を手に顔を紅潮させていた。
「…中止ですか…はい…。えぇ…。ではお伺いしますが我々が三十年がかりで
取り組んできたことはなんだったのですか!せめてあと五年!五年お待ち頂ければ…。
もしもし?もしもし!…」
己の血が沸騰するように熱くなるのを感じながら、ケンシロウは自らの肩を抱き、耐えた。
「…誰にも止められてなるものか…」
その目は爛々と輝き、食いしばった犬歯がやけに鋭く見えた。
「そういえばアヤの同級生、自殺しちゃったんだよね…?原因分からないんでしょ?」
つづく
「マイちんのことね…。あれも少し気持ち悪いよ。絶対自殺する子じゃないもん。
遺書もないし、理由もないんだよ?(第九十二話 『文車妖妃』 参照)」
「ニュースでもそう言ってたけど…」
「あの日、マイちん、態度変だったんだよね…帰りとか。いつも一人で帰ってたのに
一緒に帰る人探したりしてさ」
「でも…いきなり死にたくなる時ってあるよね…」
「ちょっとリョウコあんた冗談じゃないよ?」
「…うん。しないけどさ」
「なんかあったんですか?」
「…いや…」
思い出していた。つい先日のこと。性欲に囚われ、冷たい風にでも当たろうと川べりを
歩いて出会った男。女の手首を収集し、冷蔵庫に保管していた男。(九十四話 参照)
ほぼ間違いなく犯罪者であることは確かだったが、リョウコはそれを誰にも言えずに
いた。この場で言ってしまおうかとも思ったが怖かった。
あの日はそのまま逃げるように男の部屋から帰ってきてしまったが、その後男は何を
思ったろう。自分が冷蔵庫を覗いて、手首のことに気付いたから逃げたのだと思うはずだ。
男からみれば自分はいつ警察に通報すねか分からない危険人物。もしかしたらもうされた
と思っているかもしれない。
つづく
そうなれば口止めの為か、通報したことに対する恨みからか、どっちにしても
男が自分を狙い、探し歩いているのではないかと気が気ではなかった。
「…絶対誰にも言わないでね」
周囲を気にしつつ手首コレクターの男の話をリョウコは口にした。ただ、自分が
なぜ川べりにいたかの理由は、単に眠気を飛ばすためと嘘をついた。
「…マ…マジっすか…」
「…マジっすよ」
「そ、そんなこと誰にも言えるわけないじゃないですか…」
「どうしよう…あたしたちも聞いちゃったよ…」
「…!怖ぇ…」
聞いたはずだかトオルは特にリアクションを起こさなかった。いつも広い屋敷に両親も
おらず、ほとんど一人暮らしをしているに近い状態なのに怖くないのだろうかとサエは
気になった。何かそこに彼のたくましさを見た気がしたからだ。
「霧原あんた何も言わないけど怖くないの?いつも一人だし…家…」
「セコムあるし」
「あ、そ…」
つづく
「でも色んな事件があったんですねぇ〜」
話題を帰るためカエデは精一杯の明るい声を出した。幽霊や妖怪は
ともかく、やはり生きてる人間、それも犯罪者のたぐいはやはり真剣に
怖い。
そうだと思い立って、カエデも話題を出した。
「あ!吹奏楽部にサヨリさんって先輩がいるんですけど変わった人で…」
山田サユリ。自称サヨリ。ありきたりな苗字、名前を嫌がり、あくまで仮名で
通す女。あらゆることを知りながら一方で常識が欠如し、また視線が見えると
のたまい、人の死角に入っては消え、カエデの前から姿を消した奇妙な女である。
(第八十九話 『観察』 参照)
「…え?サヨリって…いるよ。俺のクラスに」
そうであった。クラス章で見た学級は霧原トオルと同級だった。
「え」
「いるよ。普通に。いなくなってなんかないよ」
「そ、そうなんですか?」
「毎日会うもん」
「…」
つづく
立場なしである。最後、椅子を縦に二つ並べ、前の椅子にカエデを、
後ろの席に自分が座り、背後から声をかけられている場合はいいが、
背後にいる人間が黙り込んでしまった場合、後ろの人間が生きているか
死んでいるか、振り返らず確認することはできないという疑問を残し、
カエデの前から消え去った女が、普通に登校しているという。
「でも本当に視線が見えるって死角に入るんですよ!見えなくなっちゃうん
です!それで、公園で証明してくれたんですよ!」
「誰も信じてないとは言ってないよ。信じるって」
サエは優しく言った。
「…とにかく、同好会が解散してからも不思議なことはそれぞれに起こってる
ってことね」
「受験がなけりゃ色々検証したいねー」
「もう一度組みませんか?オカルト同好会」
「ちょっと、アヤはともかくあたしとサエは受験生だよ。無理だよ。元々が人数
ギリギリだし」
「あたしもレッスンとか忙しいから無理だよー。やりたいけど…」
「そうですか…残念です…」
「俺はやってもかまわないよ」
つづく
オカルト同好会復活!?(・∀・)イイ!
そうは言ってもカエデとトオルだけでは同好会にならない。
少なくとも七人いなければ公式に同好会として認可されない。
オカルト同好会も実際に活動していたのはこの五名だが、
幽霊部員が二名いたからなんとか成り立っていたのである。
「二人じゃ無理だよ…」
「集めてみます?」
「…だって雪野、吹奏楽部だろ?部活は二つ同時に所属できないよ」
もっともなことをトオルが言った。
「それに百話で終わるのにもう九十五話だし…。作ったって活躍できるのは
たった五話…」
「悲しいです…」
つづく
「面白そうね」
突然隣の席から声がした。透き通るように色の白い女がいた。神秘的なほどに
淡く、そのまま消えてしまいそうであった。
「…サヨリ!」
同じように純白のカップに注がれたカフェロワイヤルを上品に飲みながら、
紅いくちびるの端をあげてサヨリは微笑んでいた。
「…いつの間に…」
「ほら!死角に入るんですよ!見えないんですよサヨリさんは!」
「オカルト同好会。入れさせて」
「それにしたって三人…」
「必ずしも学校公認である必要があって?」
全くの盲点だった。確かにその通りで、勝手にやればいいのである。
奇しくも摩訶不思議な能力を持つ三人が集まった。人の感情、思考、記憶を読み取る
右手を持つトオル。視線を認識でき、人の死角に入ることができるサヨリ。そして誰にも
語られていないが『ヤオヨロズ』の声を聞き、また使役することもできるカエデ。
ここに新生オカルト同好会、通称『軽子沢調査隊』発足。
終
ここに来て同好会復活。楽しみだなぁ。
新生オカルト同好会!
キタワー.*:.。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。.:*!!☆
校長の様子が気になるが・・・???
九十六。
新生オカルト同好会は雪野カエデによって、『軽子沢調査隊』と名づけられた。
隊長は、何故か最年少のカエデである。名付け親だから、という理由からだ。
つづく
もっとも自主性の余りない霧原トオル。やる気はあるようだが何を
しでかすか分からないサヨリというメンバーからかんがみれば、
それをまとめるのは雪野カエデが適任といえた。
山形ユウジロウにかけあったところ、やはりたったの三人では学校として
正式な部活動しては認められないが、勝手にやる分には構わないという
ことで、彼が担任をしている二年A組の教室も放課後であれば勝手に
使って構わないということだった。
そもそも、放課後各教室は、主に委員会活動に利用されるのだが、二年
A組だけは開いている。何故かといえば、本来そこは新聞委員会が使用
するべき部屋なのだ。
それを不服とした的場リュウジがクラブハウスの一室を勝手に占拠し、
編集室として使っているので、必然的に二年A組の教室は空き部屋と
なった。
しかし、いずれにせよ、学校側から正式な部、同好会として認められるに
越したことはないので、色々と当たってみたが、メンバーは集まらなかった。
致命的なのは、霧原トオルとサヨリは同じクラスで、しかも両者とも全くと
いっていいほど友人がいないのだ。
カエデも吹奏楽部が気に入っていたし、部や同好会に重ねて所属することは
できないので、そのまま非公認で活動を続けることにした。
つづく
早めの投下来てた!
まずはネタなのだが、そのネタがない。噂される『内調』の実在について
調べてみようとの話も出たが、オカルトと呼べるかどうかというもっともな
疑問に突き当たってしまった。
「…新聞委員に聞いてみましょう」
やけに長い制服のスカートをひるがえして、サヨリは校庭に出て行った。
クラブハウスの最も端に彼らはいる。長身のサヨリにちょこちょことカエデは
ついていった。そのだいぶ後ろからトオルが続く。
部屋がノックされた。
新聞委員会委員長、的場リュウジは手元のベレッタ9ミリピストルに軽く手を
置いて、客の名を尋ねた。
「サヨリ」
いやな奴が来た。リュウジは思った。彼女の死角に入る特技、彼もよく知っていた。
それでいてつかみ所がない。彼にとってはやりにくい相手の一人だった。
「…入れ」
三人でぞろぞろと入っていく。カエデは驚いた。見かけたことはある。この人が
かの的場リュウジだったか。余りに老けているので教師の一人だと思っていた。
つづく
「一年B組、吹奏楽部所属の雪野カエデを筆頭に、二年B組の霧原トオル、
同じく山田サユリが、オカルト同好会を再び結成したそうです」
「…たったの三人で、か?」
「あくまで現時点では非公認…。ただ雪野カエデが勧誘に動いています。
集まりは悪いようですが…」
「…オカルトか…くだらん話だな…。なぜ報告する?」
「我々についての情報を嗅ぎ回っているようです」
「『内調』について…?」
「はい」
「…もう関係のない話になるやも知れん」
「それはどういった意味ですか?」
つづく
「校内のことにいては隈なく知る必要があるが、私について隈なく知る必要はない」
「…はい。失礼しました」
「また報告しろ。場合によっては私が直接に指導する」
「分かりました」
男は一度ドアの前に立ち、ドアの外の気配に感覚を集中させて、周囲に人の気配が
ないことを確認すると、すばやい動作で校長室を出て行った。
一人残された鬼塚ケンシロウは親指と人差し指で、両目の目頭を強くつまんだ。
「オカルト…か…くだらん…実に…くだらん…」
誰に言うわけでもなく呟き、デスク横の電話の受話器を上げた。
「オカルト同好会か…。三人とは随分寂しいことだな」
「新聞委員と一同じこと」
えてして的場リュウジは知らない人間が見れば、いつも何かに不満を持っていそうな
ふうに見える。本人には自覚はないが、判りやすく言えばいつも怒っているように見えた。
年下のカエデにとってはそれが少し怖かった。確かに相手はたかが一歳違いの男なの
だが、どう見ても二十台半ば、三十近くにも見える。
つづく
その上放課後とはいえ部室で煙草を吸い、酒を飲んでいるのだ。
そんな男に対して、不仕付けともいえるサヨリの態度が、いつ彼の逆鱗に
触れはしないかとカエデは気が気ではなかった。
「口の減らない女だな…」
「あなたほどじゃない。それより何か面白い話、ない?」
「…俺の新聞が不満か?」
「あたしたちが知りたいのはあの手の情報じゃない、むしろあなたが敢えて
記事にはしないようなことね。龍神湖のバリゴンとか(第九十一話 『真剣勝負』 参照)」
「!」
明らかにピンポイントで突いて来た。やはりこの女は苦手だ。どこまで何を
知っている。いや単なるハッタリか。もっとも知られたところで弱味というわけ
ではないが、誰も他言していないはずだ。
「あたしたちが欲しいのは、そういう情報…。分かるでしょ。オカルト同好会、
なんだから」
一つだけ的場リュウジには心当たりがあった。心当たりどころか、気になって仕方の
ないことだ。例の心霊写真である。(第六十七話 『適者生存』 参照)
しかしそこに映っているのは自分の余りに破廉恥な姿だ。その時リュウジはひらめいた。
つづく
「…分かった。提供しよう。心霊写真に興味はあるか?」
「!あるんですか!」
オカルトといっても様々で、雪野カエデは怖い物好きだ。UFOやバリゴンなど
にはそれほど興味はないが、怪談や心霊写真には目がない。
「ある。強烈なヤツだ。粗末に扱った人間は、死ぬ。(第八十四夜『諧謔』)」
「…見せて頂けますか…?」
「処分に困っていた。できれば持って行ってほしい」
デスクのひきだしから写真を取り出す。三人が寄ってきたが、それを彼は制した。
「ちょっと待ってくれ。心霊写真なんだが、俺が撮ったものじゃない。校内新聞で
使えないかとある生徒から受け取った写真だ」
完全な嘘である。マツタケドロボーを取材するため松ヶ森に出向き、夜、シュウイチを
犯し、マサトが撮影したものだ。
「ところが心霊写真としてはともかくセンセーショナルな写真でな…。その持ち込んだ
生徒の人権に配慮して、被写体の顔は塗り潰させてもらう。構わんな?」
言いながら、有無も言わせず彼は自分の顔と犯されているシュウイチの顔をマジックで
塗りつぶした。
つづく
「これだ」
写真を覗きこんだトオルは吐きそうになった。あの夜(第八十七夜 『荒療治』 参照)
以来、同性愛は関連のものは彼の心的外傷になっていた。
暗い森の中で交わる二人の男。その片方の男の上に不気味な女が映りこんでいる。
「…色んな意味でショッキングね…」
「持って帰れよ。絶対だからな。ただ粗末にしたら死ぬぞ。実際一人死んでいる」
心の中で安息感が広がっていく。また所有権が移った。今度は完璧だ。以前のような
ことはないだろう。リュウジはしかめっ面を崩さず、心の中ではにやけていた。
「カエデちゃん、トオル、見た?」
「…見た…怖い…はっきり映ってるね…」
「もういいよ…。とりあえず見た」
「それじゃー本当に粗末にしたら死ぬか、実験してみる?」
「え?」
言うなりサヨリは写真を破り細かくして、更に靴で踏みつけた。目は真剣そのもので、
見開いた目は赤く光、口は大きく歪んで笑っている。異様な迫力をもって彼女は
千切れた写真を踏みにじった。
つづく
「…ばっ馬鹿野郎!死にたいのか!」
「失礼ね。野郎じゃない…」
カエデとトオルは完全に気圧されていた。写真を破り始めてから、
今までのサヨリの顔には狂気が漂っている。
「リュウジ、あなた、さまよえるユダヤ人って知ってる?(第八十九夜 『観察』 参照)」
「…ヨーロッパではよく聞く伝説だ」
「行けと言うなら、行かんでもないが、そのかわり、お前は私が帰るまで、
待って居ろよ…。そのキリストの呪いと、この写真の女の呪いと、どちらが
強いかなー?」
「…何言ってんだ?」
「リュウジ、あたしを撃って」
「なに?」
「持ってるでしょ。拳銃。撃ってよ」
「…馬鹿が。撃てるか」
「…腰抜け。あなたの父親と一緒」
つづく
父親。エチオピアとエリトリアの紛争で死んだ戦場カメラマン。
勇敢な人だったという。彼の意思をついで今の的場リュウジが
ある。
愛用のカメラも父親が使っていたものだ。
それを、サヨリは、腰抜けと、言った。
「貴様ぁっ!」
ベレッタの銃口ほサヨリに向け、撃鉄を起こした。引き金に指が
かかっている。あとほんの何センチか指を曲げれば、9ミリ弾が
サヨリに向けて飛び出す。
父親のことを言われてリュウジは冷静さを欠いていた。
「…あれ?撃てないの?腰抜け」
「もう一度でも言ったら…」
「腰抜け腰抜け腰抜け腰抜け腰抜け腰抜け腰抜け腰抜け腰抜け」
カチ。撃鉄が弾薬の信管を叩いたはずだった。しかし弾丸は出ない。
「…不発…!」
「残念。ごめんね。許して。あなたもあなたの父親も勇敢だよ…」
ひどくサヨリは寂しそうな顔をするのだった。
つづく
部室を出ると、カエデはサヨリを質問責めにした。しかしどれも適当な
返事だった。
一方、部室に残された的場リュウジはそのままもう一度撃鉄を起こして、
柱に向けて引き金を引く。柱に、九ミリの穴が開いた。
「…あり得ん…」
「その…さまよえるユダヤ人って何?」
トオルの質問にカエデが一生懸命答えた。所々間違っていたがおおむね
あっていたのでサヨリは特に訂正をしなかった。
「でも心霊写真にあんなことしちゃだめですよ」
「…そうね。カエデちゃんの言うとおり…。もうしない」
「気をつけて下さいね。帰りとか。何かあったらお祓い一緒に行きましょう」
「あはは。優しいね。わかった。お祓い、つきあってね」
そのまま校門を出て、カエデは右へ歩いていく。トオルとサヨリは同じ方向だった。
「あれ…家、こっちなんだ?」
「うん。見られるの嫌でいつも死角に入ってるから…」
彼女が人の視線を見ることができ、死角に入ることで姿を認識上消すことができると
いう話は聞いていたし、実際自分も体験したのでトオルはその事実を受け入れていた。
つづく
信じがたいことではあるが、自分の右手の能力に比べたら
まだ科学的だろう。
単に相手の見えない場所に入り込むだけで、身体が透明に
なるわけではない。
「…トオル、少し離れてた方がいいよ」
「…?」
「巻き込まれるよ。呪いにね」
よく意味が分からなかったが一緒に歩いているところを見られるのが
嫌なのだろうと思い少し後ろに距離をとった。
しばらく歩いていると、普通の直線道路であるのに、突然ワンボックスカーが
不自然な挙動を見せ、タイヤをきしませて横滑りしたかと思うと、そのまま
ごろんごろんと横転しながらサヨリに向かって転がっていった。
しかしサヨリはそのまま歩き続けている。見えないはずがない。
ワンボックスカーは鉛筆転がしのように転がっているので、もうドライバーの
意識云々で操れる状態ではなく、とにかく慣性の法則に振り回されている。
サヨリがちょうど電柱の横に差し掛かったとき、ワンボックスカーはその電柱に
激突し、やっと動きを止めた。タイヤが空に向いている。
その直後、電柱から巨大なトランスが落下してきたが、その時サヨリは既に
わずか先を歩いていた。
つづく
何事もなかったかのようにサヨリは歩く。少しでも驚いて足を止めるか
何かしていれば間違いなく被害にあっていただろう。
後続のクルマのドライバーらが降りてきて、警察や消防へ連絡を
取り始めたので、トオルはそのまま事故現場を横目にサヨリに
駆け寄った。
「…近寄らない方がいいよ。まだ、多分終わってない…」
「…本当に死なないの…?」
「見てみる?」
手をサヨリは出した。その手を右手で触れれば、二千年の呪われた記憶が
見えるのだろうか。興味を持ったが、何か薄ら寒く、結局彼女の手を握る
ことはできなかった。
事故があった場所から少し進むとアパートがあり、そこでサヨリは別れの
文句を述べた。
「あたし、ここだから」
「…え?一人暮らし…?」
どう見ても独身者用のワンルームマンションだ。それもかなり古い。アパート、
下宿という言葉の方があっている。
つづく
「…もしあたしがさまよえるユダヤ人だったとして…親はどうなったと
思って?」
呪いを受けたのはあくまで『さまよえるユダヤ人』、アハスエルスだけ。
当然ながら両親は二千年近く前に死んでいるはずだ。
トオルは答えられなかった。
一人暗い部屋にサヨリは帰る。電気もガスもない。水だけは出る。
制服を脱ぎ全裸になると、彼女の白い肌には見るも無残な傷や火傷の
跡らしくものが数限りなくあった。
冷蔵庫も電子レンジもテレビすらない部屋に置かれているのは、小さな
机と、ベッドだけ。
彼女はその傷だらけの白い身体をベッドの柔らかな布団に潜り込ませて
ただ泣いた。
終
ウェ工エエェェ(´д`)ェェエエ工工
ちょっとサヨリツラス(´;ω;`)
今夜の話につきましては、ストーリーの構成上、今までのような
(第XX話 『○○』 参照)という文言は敢えて挿入いたしません。
たまたま今夜初めてこのスレを訪れ、読んでくださる方がもしいたと
するならばかなり混乱するかもしれませんが、御了承下さい。
万が一、そういう方がいらっしゃれば、まとめサイトをご覧になるか、
あとで御質問頂ければ回答差し上げます。
九十七。
福岡ユウコは苛立っていた。かなり初期から登場するレギュラーメンバー
ながら、最近めっきり名前が出ない。
つづく
確か、当初は山形アカネと双璧を成すヒロインの一人だったと思うのだが、
最近はリョウコだのサエだのアヤだのカエデだの、ましてや最後になって
サヨリなどというキャラクターを持ち出してきた。
しかも明らかに憧れ、恋心を抱いてはずのユウジロウとの絡みもない。
恐らく読者の持つイメージは崩れに崩れ、『枡や』で一人酒を飲んでいる
やさぐれ女程度にまで落ちぶれているのではないか。
一応元暴走族のリーダーだったという過去は明らかにされたが、その後
その設定が活かされることもない。むしろ悪いイメージを植えつけただけの
気もする。
しかも仕事もうまくいっていない。覚えている者も少ないだろうが彼女は
二年D組の担任である。二年D組には元オカルト同好会井上マユが在籍
していた。彼女は召還した悪魔によって焼け死んだ。
更に、実はかの悪名高き元女子テニス部主将須藤アリサも実はD組の生徒
なのである。彼女は現在性病で療養中である。
もっといえば、元オカルト同好会幽霊部員、名前しか出てこなかった加藤ケンゴも
彼女のクラスだ。
まともな生徒がいない。
その上、あくまで二年D組の担任だ、というだけで担当授業も明らかにされていない。
ここにきて記しても仕方がないことだが国語教師である。
つづく
彼女の姿は、軽子沢中学から少しはなれた国道沿いの、この辺り
では比較的大きい古書店、『ブックオフ』にあった。
二階建てで、一階は中古CDと漫画の単行本で占められている。
彼女は二階に昇り、新書の置かれている棚を物色していた。
読書が趣味だけあって、月に十冊程度は軽く読んでしまう。
興味の幅は広かったが、特に好きな作家がいる、というわけでもない。
ジャンルもドキュメンタリーから、荒唐無稽なものまで、何でも読んだ。
しかし、それでもやはりタイトルを見て惹かれる本、惹かれない本というのは
あり、何となく目についたものはあらかた読んでしまっていた。
かといって何の魅力も感じない本を手に取るのも面倒である。面倒というより、
無意識的に視界から排除されていた。
若干活字中毒気味なので、収穫なしかと帰るわけにもいかず、何度も往復
して天井まである本棚を右へ左へと眺めていると、ある変わったタイトルの
本を見つけた。
『◆xDdCPf7i9g』
黒字に赤い字でそう書かれている。それだけの本だった。
つづく
うおおお!『◆xDdCPf7i9g 』の本!!(゚Д゚;≡;゚Д゚)
今夜はどうなるんだっ!?
その不気味な装丁から、ホラーものだと判断した。基本的に
立ち読みはしないで、そのまま購入するのが彼女の常で、
楽しみでもあった。
彼女は三百円の値がつけられたその本を購入し、自身の
マンションへと戻る。
おおよそ、彼女のような若い教師が住めないようなマンションに
彼女は住んでいる。
実家が資産家で、家賃を払ってくれる上、仕送りまでくれるのだった。
彼女はもういい加減に独立したいのだが、父がそれを許さなかった。
家賃を払ってやらなければ、セキュリティの甘いアパートか、公務員用の
住宅に入ることになり、この物騒な世の中それは余りに危険すぎるという
心配からだった。
仕送りもいらないというのだが、仕送りをしなければ、食生活も貧しいものに
なり健康を害するに違いないと勝手に思い込んでいる。また、貧しい思いを
させると、若く美しい彼女のことであるから、何か良からぬ金稼ぎをするのでは
ないかとも思っていた。要するに余り信用されていないのである。
また福岡ユウコ、自分でちゃんと働いているから援助の必要はないと言い
ながらも、元々の贅沢な暮らしを捨てられずにいた。若くしてそこそこのクルマや
バイクを所有し、その上毎晩のように『枡や』に通うこと自体、仕送りなしでは
不可能なことだ。
実際、いらないいらないと言いつつも彼女の貯金残高は大した額ではない。
自分の給料も含めて、使うだけ使ってしまっているということだ。
つづく
食事は外で済ませてきた。ゆっくりと風呂に入り、化粧水をはたいて、
テレビのニュースを見終えると、電灯を消して、ベッドに入る。
枕元に置かれたスタンドを着け、いよいよ『ブックオフ』の袋から、謎の
本、『◆xDdCPf7i9g』を取り出した。
タイトルは面白いが内容はどうだろうか。単に奇をてらっただけの駄作
かもしれない。
とりあえず前書きによれば、この本のタイトルは
『菱形スモールエックス・ディーディーシーピーセブンアイナインジーヤマガタ』
と読むらしい。インターネットの『2ちゃんねる』、『オカルト板』でひっそりと四ヵ月
近くに渡って連載された、全百話に及ぶ、
『なんともいえない話』(と前書きにある)
だという。福岡ユウコは少しがっかりした。まずプロによって書かれたものでは
ないこと。また『2ちゃんねる』発祥ということで、話題になった『電車男』のような
ものかと思う。
当然彼女も売れ筋の本には大概目を通しているので『電車男』も読んだが、
果たしてどうも何が面白いのやらよく分からず、まず小説化されていないこと、
また時折現れるアスキーアートなども余り好みではなかった。
つづく
ドキドキの展開!!ヽ(´Д`;≡;´Д`)丿
前書きには
『エロとオカルトの融合。正にエロ怖いの世界が展開』
なる謳い文句があったが確かにその通り。しかし少し下品が過ぎる
気がして嫌な気分になった。ただ、主人公である山形ユウジロウという
教師のキャラクターが妙に自分の知っている同姓同名の教師に似ている。
何話か読み進めたが彼は余りに似すぎていた。
彼女は思った。これは自分の学校の生徒か教師か、とにかく関係者が
自分の学校をモデルにして書いたのではないか。
興味は沸いたが、ひどい文章である。これでよくも書籍化できたものだと適当に
ぺらぺらと眺めていると、『福岡ユウコ』なる人物まで出てくる。
間違いない。これはうちの学校の関係者が書いたものだ。面白くはないが自分が
どうも美人女教師として描かれている。意外なところで自分と出会い、福岡ユウコは
照れくさかった。
今一度彼女は本の頭から、隅々を読んでみることにした。山形ユウジロウがいて、
その妹にアカネがある。そしてアカネは教育実習生としてやってくる。
事実である。ただ、そこに書かれている山形ユウジロウの死については、虚構だ。
そんな話は聞いたことがない。
つづく
虚構と事実が複雑に絡み合ってこの物語はできている。
文章はひどく稚拙ではあるが、ユウコは夢中になってページを
めくった。
知りえないこともある。青木先生が山形先生に暗視スコープを
貸してノゾキに行かせた?まさか。あの明るいが真面目そうな
青木先生がノゾキなんて。
しかし次第に福岡ユウコは蒼褪めるのである。はじめてユウジロウに
誘われ『枡や』に行った日の出来事。彼を部屋に招き、抱かれかけた。
「…うそ…」
誰にも言っていない。誰が知っている?知っているのは自分と山形先生だけだ。
だとすれば。
書いているのは、主人公である山形ユウジロウ、本人。
しかも話数を重ねるに従い文体は整えられ、ある程度まともな物語へと発展する。
そして同時に虚構部分は減り、現実の話ばかりが目立つようになる。
つづく
しかし中には山形ユウジロウが関係しない話も出てくる。
ユウコはわけがわからなくなった。
しかも、校内では謎、警察でさえさじを投げた事件の真実が
幾つも書かれている。例えば井上マユの死。
悪魔を呼び出したと書かれているが虚構なのだろうか。そうだ。
そうに決まってる。
話は次第に広がりを見せる。ホーク有吉。有名なAV男優だ。
こないだ死んだとワイドショーで話題になった。そんな人まで
登場するのか…しかも実名で…。
山形ユウジロウの過去、アカネの過去。アカネは妹ではなく、ユウジロウの
娘であるという記述。
にわかには信じがたいが、年齢の差など全て辻褄が合ってしまうのだ。
やはりこれを書いたのはあの山形ユウジロウ本人だろう。
村野マユミによる山形ユウジロウ刺傷事件。これも事実だ。しかし刺した
村野マユミの心理描写までなされている。これもまた想像なのだろうか。
つづく
徳島教頭の過去。霧原トオルと木下サエの性癖。的場リュウジ、校長、
ユウジロウによるノゾキ…。
あの事件は校長がホモセクシュアルで霧原トオルに性的いやがらせを
した事件ではなかったのか。
三ヶ月給料が支払われないのは事実だ。その話は聞いている。しかし
その裏話としてこんな話があったと想像できる想像力…。
完全に山形ユウジロウによる著作だと判断した彼女であったが、その次の
話で、そのほぼ確定していた仮説を捨てざるを得なかった。
『枡や』、群馬泰蔵、通称『テッちゃん』から聞いた事務所荒らしの話。あれは
その後誰にも話していない。自身の手だけを残し逃げた事務所荒らし。
違う。山形ユウジロウによって書かれたものではない。いや、『枡や』の店主が
後に、彼に、こんな話があって、と伝えた可能性も考えられるが…。
そこで彼女はあることに気が付いてしまったのである。
決してこの本はあってはならないのだ。
なぜならば、その『枡や』での話から、一月も経っていないのである。そして
その話は七十七話とある。全部で百話。そしてこの一連の物語はほぼ一日
一本のペースで書かれたと前書きにあった。
つづく
全く計算が合わないのだ。なぜ一月も経っていない実際の話が、既に
書籍化され、ましてや古書として売られているのか。この後どうなるのか。
時間も気にせず彼女はページをめくり続けた。
ホーク有吉が死んだ。ほんのついこないだの話だ。しかも事の仔細まで
書いてある。アダルトビデオ製作会社『モイライ』襲撃事件。それも記憶に
新しい。犯人は今だ見つかっていない。
もし書いている人間が山形ユウジロウ本人だとしたら丸きり犯行声明では
ないか。
ページが進むにつれ、今現在に迫ってくる。彼女はめくる指を抑えたかったが
好奇心には勝てなかった。
バリゴン。話題になった。その犯人が新聞委員会?
バスケットボール部員の事故。一条マイの死。本当についこないだの話では
ないか。まだページは残っている。
しかし七十七話を最後に、ぷっつりと自分が登場しなくなっていた。このまま
百話になった時自分はどうなっているのだろう。誰が書いているのかしらないが
忘れられているのだろうか。
しかしそれは百話を目前にして唐突に現れた。
福岡ユウコは苛立っていた。かなり初期から登場するレギュラーメンバー
ながら、最近めっきり名前が出ない。
終
…やりたいこと分かった?(笑)
無限ループwww
なんか予定してたオチと全然変わってしまったんだが…
まぁいいかってところで…。なんか『世にも奇妙な物語』とかに
ありそうだし、中学生辺りの子でも思いつきそうな話で…。
申し訳ない。力量不足でした。
合いの手たくさん入って今夜は楽しくかけました。ありがとう^^
いよいよ、ラスト3話ですね
本日も大変興味深く読ませていただきました!
ゆっくりお休み下さい。
>>396 > いよいよ、ラスト3話ですね
> 本日も大変興味深く読ませていただきました!
これまた…。興味深いというのは…。お褒め頂いていると受け取って
よろしいのでしょうか…。何となく今回の話は自信がもてません。
ラスト3話。もう内容は固まってるので明日3連続投下してもいいん
だけどね…。
1日で終わらせるか3日かけるか…。
いずれにせよ、九十八話に相当する話は多分かなり短い話になると
思います。あくまで最終回の導入部分ですから…。そのへんお許し
ください。
投下の性質上、作者様の精神状態にも話の出来が左右されるのでしょうねw
物足りない話もあればずば抜けた話もある、人間ですもの、それでいいと思います。
長々とすいません
今夜はこれで失礼いたします。
体を壊さないように気を付けてくださいね。
ついおとついこのスレを発見した新参者です
夢中になって読み耽ってやっと最新話まで追い付きました。
あと3話で終わってしまうのですね〜(´・ω・`)
すんごくおもしろいのでなんだか淋しいです。
作者様、お体に気を付けて執筆がんばってくださいです。
>>399 えー!一昨日!そんな人もあるのか…。いやある意味ショックだわ…。
毎日投下はもう無理だと思うけど、それなりに需要があればパート2
なり別の話なり書く余裕は全然ありますので、もしよかったら雑談スレの
方に続編希望の旨、一筆頂けると幸いです。
他の方も続けて欲しいなど要望ありましたら雑談スレの方へお願いします。
事実上大した労力は使っていないので別に気を使わんでもいいです。
趣味でも書きますが、多い日で一日原稿用紙40枚ほど書きます。それに
比べると ◆xDdCPf7i9g はほとんど片手間で書けるんで。
重ねて、オカルト板以外でもっと適切な板を知っているという方も情報くれると
嬉しいです。たまに、『オカルト板だからオカルトからめないとなー』というのが
重荷になることがあります。ほのぼの板使っちゃっていいのかな…。ID出ると
いいんだけどね。
って要望なかったら哀しいよな(笑) まぁいずれにしてもこのスレ放棄するのも
何だし、色々面白いことやってみようかなというつもりはある。とりあえず本スレ
が終わるまでは。(削除依頼出されたりして(笑))
俺は3日に分けてじっくりと読みたいです(・∀・)
>>401 うん…読み手さんの方からすればそりゃそうだよなぁ…。
一応、98、99、100、あわせて最終回です。ただし話としては独立しています。雰囲気と
しては、長野のトオルのおじいちゃんちに行った86〜88話みたいな感じかな?続いてる
けどエピソードとしてはスタンドアローンというような。
だから、いきなり話ぶった切って、『どうするユウジロウ!〜つづく〜』みたいな系統には
したくないな…と。
そんな感じなんで、ジリジリと待たなければならないということにはならないと思います。
なんか、緊張します…。
今日からいよいよラスト3話の祭りですね!
何時ごろかなぁ。参加できたらいいけど・・。
ゲリラの頃を思い出しなんだか寂しく、寒くw(もうすぐ冬だし)
なってきちゃいましたよ。
頑張ってね〜ノシ
九十八
軽子沢中学校長鬼塚ケンシロウは職員用トイレの鏡の前で、
ネクタイの結び目を確認し、一本目立って出ていた鼻毛を認めて、抜いた。
つづく
ぬっくんキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
校長室へ戻り、応接セットの椅子を整え、机の上を拭く。灰皿も用意し、
自分は窓を背にして、黒い革張りの椅子に座して時を待つ。
午前十時。約束の時間まであと三十分。
十五分間、険しい表情を見せたケンシロウだが、残りの十五分で無理に
笑顔を作る練習をした。
ひきつる頬を手で揉みほぐし、不自然な笑顔で、一人。
校庭からは体育の授業だろう生徒達の明るい声が登ってくる。
やがて十時三十分。校長室のドアがノックされた。
「どうぞ」
その場で立って出迎える。その頃には慇懃な笑顔ができあがっていた。
あくまで表面上であるが。
ドアから入ってきた男たちはいずれも地味なスーツ姿で、足元のスリッパが
間抜けであった。青いスリッパに金字で『軽子沢中学』とある。
校内は何人たりとも土足厳禁。来客用のスリッパである。
つづく
「お待ちしておりました。どうぞお掛け下さい」
当然だ、という態度で男たちは応接用のソファに腰を降ろす。一人の
男が持つ、アルミのアタッシェケースが気になった。
「わざわざお出向き頂いて恐縮です」
「…仕事ですから」
男は淡々とアタッシェケースを開け、何枚かの書類を取り出した。
「軽子沢中学校校長、鬼塚ケンシロウ先生への辞令と異動命令が
出ています。先日、お電話した通りです」
「…辞令というのは…?」
「教職に対する辞令、というわけではありません。あくまで特命教師としての
辞令。通常の校長職に戻っていただきます」
「…御検討は頂いたんでしょうな…?」
笑顔が一瞬消え、相手を凍りつかせるような鋭い視線をケンシロウは投げかけたが、
相手は書類を確認するばかりで彼の表情など見てもいない。
「…既にプロジェクトの中止は決定しています。そもそもこのプロジェクト、現大臣すら
知らなかったとの話…。一部文科省役人の暴走行為という見解を我々はしています」
つづく
「暴走…!三十年かけて築き上げてきたものを暴走の一言で片付けるの
ですか!?」
「旧文部省の一部、更に警視庁関連の一部までをも巻き込んだプロジェクト…。
これを暴走と呼ばずして何を暴走と言いますか?検討の余地は全くありません」
「そんな…」
「…もっとも当時の一部官僚による極秘のプロジェクトとの話…。鬼塚先生は
あくまで一つの『コマ』に過ぎなかった。その事情を鑑み、校長職だけは続けられる
ようこちらでも善処してつもりです。お疲れ様でした」
「その一部官僚たちも既に現役を退き、今やその亡霊たちが惰性で動いているに
過ぎない…」
暴走。亡霊。ほぐれたはずのケンシロウの頬はいよいよ引きつった。
「もっとも、あなた方は結局、何の結果も出せなかった。それが最大の問題です」
それを言われてしまうとケンシロウは何も言えなかった。しかし計画は最終段階まで
来ていたのである。
窓の外をケンシロウは眺めた。明るく、生徒達がボールを追いかけている。
「…現実をご覧下さい。この学校へ赴任して五年。五年かかってこの平和を築き
あげた…」
つづく
「平和…。夢ですな。校長。あなたは優秀な教師であり校長であったかも
しれない。しかし全てはもう手遅れ。新しい手段を講じなければ、日本は
既にぎりぎりの窮地に立たされている」
「今ある問題に目を向けて頂けないと困りますな。既に教師一人、校長一人の
力でどうにかなる時代ではないのですよ。いやむしろ一時代としてそんな時代は
なかった。あくまでプロジェクトは暴走。勝手な思い込みに過ぎません」
「お分かりいただけますね。鬼塚さん」
全く納得はできなかった。三十年散々振り回され、目標達成直前で全てが水泡の
如く弾けて消える。
「…すでに他の特命教師…とはいえもう大半は定年で退職されましたが…。その
方々には御理解頂けました。残るはあなた一人だけ。御理解下さい」
理解しろという方が無理だった。プロジェクト。『素晴らしき子供たち計画』その最終段階を
ケンシロウは確かに見ていた。三十年かけて見えたゴール。それがゴールどころか、
コースごと全て失われる。
「元は…元は大臣が言い出したことだ…文部大臣…」
「今は文部科学省です。そして当時の大臣も当に故人となっています。正直申し上げて、
鬼塚先生、あなたは、過去の遺物に過ぎない」
「…過去の…遺物…」
つづく
九十七キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
しかもチェンジマン!がんばれケンシロウ!
「定年まで、あとわずかです。鬼塚校長、ごゆっくりなさって下さい」
数枚の書類がケンシロウに渡された。
「…受理、しかねますな」
机に置かれた書類をケンシロウは見ようともしない。
「鬼塚先生!先ほども申し上げたとおり、我々も精一杯の妥協したのです。
場合によっては校長資格を失いますよ?」
「…脅迫ですか…?」
次第にスーツの男たちの顔色が変わってきた。彼らは単に書類を渡しに来た
だけに過ぎない。議論をしに来たわけではないのだ。
「…『素晴らしき子供たち計画』…私はやめる気がありません。無論その下地を
築いたこの軽子沢中学を離れるつもりもない。教師を辞める気もなければ、
校長を退くつもりもない…。私はあくまで特命教師だ…」
「…こちらとしてはその旨、現大臣に報告するまでですが…?先ほど申し上げた
警視庁の一部勢力も既にその関係を否定しているんですよ?」
「簡潔に申し上げて、あなたは孤立無援の状態にある。なぜプロジェクトに
こだわるのですか?」
「…私の三十年がかかっているのだよ…教師生活の全てが…人生の大半が…!」
つづく
ケンシロウ負けるな!!
議論は感情の昂ぶりを見せたが、スーツの男たちは間を置いて、
冷静を心がけた。
既に文科大臣の印鑑の押された書類が発行されている。中学校の
一校長があがいたところでどうにもならない段階まで来ている。
同情するつもりもない。そもそもそのプロジェクト自体が夢のまた夢。
単なる税金と三十年間という長い時間の無駄遣いでしかなかったのである。
言ってしまえば、話を聞くまでもなく、書類だけ渡して帰ればそれでいい
仕事なのだ。説得は仕事のうちに含まれない。
「…書類はお渡ししました。御熟読の上、以後その指示に従って下さい。また
特命教師としての特別手当はもう出ません。ただし、こちらで検討させて頂いた
結果、退職金の方でそちらのいいように、処理させて頂きます。御安心下さい」
「我々としても驚いているのですよ。そのようなプロジェクトがかつてあり、未だ
進行中であったこと…。旧文部省の気の迷いとしか言いようがない。それに
振り回された、先生の御苦労はお察し致します…」
「では、我々はこれで。お疲れ様でした」
つづく
オシム氏!(・∀・)
誤爆スマソ(´;ω;`)
「…お待ち下さい…」
アタッシェケースを閉じ、立ち上がったスーツの男たちをケンシロウは止めた。
「まだ、何か?」
溜息混じりに、やや呆れた表情で男が言う。既に気が緩んだのか、その顔には
鬼塚ケンシロウをねぎらう気持ちは見えず、ただしつこいな中年を相手にしなければ
ならない面倒の色だけが見えた。
「…私だ。校長室まで来てくれないか?『内調』全員を集めてくれ」
風紀委員会別室校内調査部。通称『内調』。彼らは各クラスに一人ずつ、計十二名
いる。その全員が集まることはない。そもそも完璧な秘密主義の為、十二名はお互いに
その名も顔も知らないのだ。
彼らはそれぞれ学校から与えられたプライベートとは別の携帯電話で連絡を取り合うこと
はあったがその際も、全て『一』から『十二』のコードナンバーで呼ばれることになっていた。
それを全員集める。全員が集まれば当然顔を合わせることになる。何度か確認したが、
ケンシロウは構わないと答えた。
初めて『一』から『十二』までの『内調』が顔を合わせた。校長室である。そこにあったのは、
アタッシェケースと散乱した書類。四人の男の無残な骸。
そして、照明器具を固定する頑丈な金具から伸びたローブに揺れる、鬼塚ケンシロウの
首吊り死体だった。
終
ええええぇぇぇぇ!!ケンシロウ!!童貞のまま・・。
死ぬ人大杉!これからどうなるんだろう・・・・。
ぎ、ぎゃああああああ!!ケンシロウ!!!!!!!!1111
悪夢ははじまったばかりだy=-( ゚д゚)・∵
うおお…ケンシロウが死ぬとは思わんかった!
そ、そんな…( ゚Д゚)
422 :
ペヤング三号:2006/10/12(木) 04:03:56 ID:Co11aWzkO
相変わらずコンビニにペヤング売ってねぇや
九十九
冬の澄んだ空気を鋭く貫いた陽光が、天井から力なくぶら下がる校長の
背を照らしていた。
つづく
校長室中の壁は血の朱に染まり、スーツの男たちの中にはまだ不気味に
痙攣している者もいる。
「…これは…」
「け、警察に連絡を!」
風紀委員会別室校内調査部、内調の生徒らは混乱した。総勢十二名。初めて
顔を合わす。お互いに持っている情報を交換することも余りない。
あくまで彼らは情報を収集し、それを校長に提供するだけ。情報の統合、処理は
全て校長が行っていた。よって彼らは情報解決能力に長けているわけでもなければ
チームワークなど微塵もない。ましてや少年である。
「その必要はない」
聞き覚えのある声だった。目を上げると、天井から首をくくられ宙吊りになっている
鬼塚ケンシロウが話している。
「…校長…!」
死んでいなければならない。いや生きているとしても声が出せる状態ではない。ロープが
首を圧迫しているのだ。
「私にはまだ仕事が残っている。協力してくれるね?」
つづく
重みに耐え切れなくなったのか、天井の金具がもぎとられ、校長は
ゆっくりと赤い地面に降り立った。そしてさも鬱陶しそうに首に巻きついた
ロープを外すと、耳元まで裂けた口で笑った。鋭い犬歯が光っている。
目は血走り、禿げ上がった頭頂部からは馬のたてがみのような、美しい
黒毛が生えてくる。
スーツを脱ぎ、ワイシャツをネクタイごとむしり取ると妙に光沢のある肌が
あらわになった。気付けばいつの間にか彼の身長は天井に届くほどに伸び、
既に人間、鬼塚ケンシロウの原型を留めぬほどの変形を遂げていた。
「…返事は…どうした?」
叫び声をあげ、ほとんどのメンバーが逃げ出す。残った者も単に腰を
抜かして、動けないだけだ。
「協力者には…力を与えてやるぞ?」
逃げ出した内調メンバー、『五』は職員室に飛び込み校長室での惨事を伝えた。
ただ、教師の誰もその意味が分からない。しかも時間は授業中である。教師も
全員揃っているわけではない。
仕方なく教頭と山形ユウジロウが様子を伺うため東棟、二階に上がった。
つづく
特に何事もないようだったが、突然校長室の重厚なドアが吹き飛び、
何かが飛び出してきた。
それは人間の下半身である。履いているズボンから見て生徒のものだ。
「…!」
そしてそれは姿を現した。巨大な口と、たてがみを持つ人外の者。それは
余りに巨大だった。
「…なんだこりゃあ…」
「…山形…私だよ…鬼塚だよ…」
「こ、校長!?」
怪物は握っている何者かの腕を、骨付き肉にでもかぶりつくかのように食っている。
「…全て能無しの貴様らと…おちこぼれた連中のせいだ…」
いつの間にか教頭は逃げていた。ユウジロウとケンシロウ。ユウジロウも四十一歳に
してはたくましい肉体を持ってはいるが、挑んで勝てる相手ではないだろう。
「…全て、私に従っていればこんなことにはならずに済んだ…」
「何が言いたい…?」
つづく
校長は握っていた、もう骨ばかりになった腕を食べ終えるとそれを捨て、
急激に身体を縮め、元の姿に戻った。
頼りない、頭の禿げ上がった鬼塚ケンシロウである。ただし全裸だった。
彼は目に涙さえ溜めてユウジロウに語り始めた。
「…まず学生運動があった…。私の青春時代だったよ…。そして私は
教師になった…」
「…」
「言葉は古いが…ツッパリ、暴走族、校内暴力…様々な教育問題が
山積していた…」
「…ありましたね。そんな時代が」
「…旧文部省は危機感を覚えていた。そしてあるプロジェクトが発足した。
先の学生運動の煽りも受け、警視庁内の一部勢力もプロジェクトに参加した…」
「文部省と警視庁…?」
「犯罪者予備軍となる少年を育成しない為だよ。『素晴らしき子供たち計画』…」
何か昔を思い出すようにケンシロウは遠い目をした。ただその肉体は血塗られていた。
つづく
「文部省は全国から若い有能な教師を選抜。特命教師とした。私も
その一人だ」
「…」
「長い月日がかかった。特命教師から提出されるレポートにより文部省が
指導方針を固め、それに乗っ取り、教育する。ところが、時代は我々に
追いつかせることを許さなかった…。
いじめ、自殺、登校拒否。一見不良ではない善良な、おとなしい生徒による
犯罪。一方で教師に対する不信感は強まり、何も手が出せなくなった…。
学級崩壊。引きこもり、そしてニート…。
レポートを提出し指導要項が変わることには既に次の問題が生まれている。
我々は時代に翻弄された。時は過ぎ、多くの特命教師達も定年を迎え去って
いった。そして最後。プロジェクトの最終段階として、この軽子沢中学に白羽の
夜が当たった」
「…なぜウチに…?」
「全てが平均的だったからだ…。成績、生徒世帯の年収、不登校生徒の数、不良の
数…様々なデータを比較し、我が校が最も平均的な中学校だと判断を下した。
私の任務は校長としてこの学校を平均以上の学校へ高めること。公立校として
最高水準の学校へ高めることだった」
つづく
「そして二〇〇一年私はやってきた。それからわずか五年。プロジェクトは
中止された…」
「中止…?」
「三十年間で結果が出せなかったからだそうだ…。しかし私がこの学校へ
やってきてから、この学校は変わった。その卒業生達はまだ社会へ出て
いない。せめて二〇〇一年に我が校へ入学してきた生徒らが、大学を卒業し
社会へ出るまで、結果が出るまで待つよう陳述したが…無駄だったようだ…」
「…」
「だから私は死を選んだ…」
「…どういう意味ですか…?」
「私が長年、特命教師をやってきて気付いた点が幾つかある…。まず、教師
一人の力には限界があること。当然のことだが身をもって感じた…。テレビ
ドラマのようにはいかんのだよ…。だから私は校長となり、生徒の上に立つ
教師の更に上に立つことにした。
そしてもう一つ。校長という立場の人間に入ってくる情報はごくわずか。現場
教師からの報告は全くあてにならないということだ。
そこで私は、生徒に目をつけた。彼らの方が学校の事情についてははよっぽど
詳しい。かつ情報も速く正確だ…」
つづく
「しかし校長と生徒…。その距離は果てしなく遠い。山形君。君、中学生
だった頃の校長の名を覚えているかね?どんな人物か知っていたかね?」
「…いや…覚えていません…」
「そうだろう。私もそうだ。その距離を縮める為に私はあらゆる方法を使ったが、
難問だった。それがある日いともたやすく解決したのだよ」
そんな方法があるのかとユウジロウは考えたが答えは見つからなかった。
「一冊の本を見つけたんだ。神田の古本屋でね…。偶然とは恐ろしいものだよ。
普段興味も持たないそんな本がどうしても欲しくなった…。『悪魔召還の法』と
いう本だよ。馬鹿げているだろう…?」
「!(第三十六夜 『紅蓮栄華』 参照)」
「君が元、オカルト同好会顧問だということで話そう。私は悪魔を呼び出し、契約
した。私に絶対的な力とカリスマ性を与えてくれるならば、死後私の肉体を捧げようと」
「…なんてことを…」
「無論もっと直接的な願いをすればよかったのだが…私の教師としてのプライドも
あってね…。
そして私は死んだ。故にこの肉体はその悪魔のもののはずだが…どういうわけか、
私はまだ…『鬼塚ケンシロウ』、らしい…」
つづく
「私は悪魔の力を借り、カブロを編成した」
「カブロ…?」
「今の『内調』だよ。当時はカブロと言った。今でこそ平和を保っているから
『内調』も大した仕事はしないが、ここに赴任してきた当時、カブロは随分と
活躍してくれたよ。私も徹底的に彼らを洗脳した…まあ、そんな話はどうでも
いい…」
一瞬、ケンシロウは苦悶の表情をし、右肩に右耳をつけ、左手は後ろから誰かに
捻り上げられているかのような不自然な形にして、腰を左に曲げて、奇妙な
恰好をした。
ユウジロウはひどく邪悪なものを感じた。
「こ…この、クソッタレで役立たずの学校の全てを…我に、捧げよ…」
再びの異形。ユウジロウはとにかく騒ぎ立てて廊下中を走り回った。何事かと
授業中の教室から生徒が、教師が顔を出す。彼らの目に映ったものは既に
校長とは呼べぬ化け物だった。
更に火災警報のボタンを押す。後は速やかに避難してくれればいいが…。
つづく
三年B組の教室では数学の授業が行われていた。
火災警報が鳴っているので、教師が生徒を落ち着かせ、ゆっくり校庭に
出るよう指導している。
「それじゃ廊下側の者から順番に出て。ゆっくりだぞ。走るなよ」
特に火の手が回っているとか、煙が充満しているということもないので生徒も
落ち着いたものである。
廊下側で最もドアに近かった岡崎リョウコはそのまま廊下へ出た。そこに怪物がいた。
声も出ない。足もすくんで動かない。
「…おい、進んでくれよ岡崎」
「…だ、だって…」
巨大な目がリョウコを捉えた。全く動けないリョウコは呆気なく怪物につかまり、制服を
引き裂かれ全裸に剥かれる。
わけの分からない叫び声で教室中は混乱し、誰も助けるものもなく、教室のもう一つの
ドアに生徒達が殺到する。その中で、小柄な男子生徒が後ろから押し倒され、踏みつけられ、
耳から血を流して死んだ。
リョウコは叫び抵抗するが、前戯も何もなく、ヴァギナを貫かれた。怪物のその巨大な肉の棒は
子宮を突き破る勢いで、彼女を串刺しにしたまま校内を練り歩く。
つづく
歩くたび振動で腹部に耐えられぬ痛みを感じ、痛い痛いと彼女は叫んだ、
火災警報と女の叫び声で、他の教室の生徒らも混乱する。
何事かと廊下へ出れば異様な光景である。金属のような光沢を持ち、目は
ぎょろりと大きく、たてがみをなびかせ、口は耳元まで裂けた巨大な怪物の
下半身に、醜悪なそれとは正反対の美しい美女をつけたまま歩いているのだ。
しかも美女は狂ったように叫んでいる。
怪物は、彼女の腕をつかんで引っ張り上げ、誇らしげに歩く。それは美女の顔を
した馬に乗る怪物のようにも見え、また美しいフィギュアヘッドを持つ巨大な帆船の
ようにも見えた。
一方、いち早く脱出を試みた一団は既に玄関にたどり着いていたが、そこに見慣れた
光景はなく、ただ薄暗い不気味な空間が外に広がるばかりだった。また玄関のドアは
全く開かない。
一人の生徒が消火器を持ち出し、それで玄関のガラス戸を叩き割り表に出ようとしたが、
割れたドアに頭から勢いよく飛び込んだ瞬間、彼の上半身はぽっかりと消え、血しぶきを
あげ下半身だけがこちら側に残った。
玄関は阿鼻叫喚の巷と化した。
校舎から外へは出れない。指一本外に出せば、校舎から出た分の指が丸ごと消滅する。
つづく
なり続ける火災警報に続々と生徒が玄関に集まってきた。
外に出ることは危険と知っている生徒が、押すな押すなと絶叫するが、
それは他の叫び声にかき消され、彼はドアと迫り来る群集の間で、
窒息死した。
奇妙なことに岡崎リョウコの下半身と怪物の下半身は半ば一体化し、
まるで岡崎リョウコの上半身自体が怪物のペニスのような状態で
そそり立っている。それでもリョウコには意識があるらしく、まともに
言葉は発さないが涙を流し、うめき声をもらしていた。
リョウコとは隣のクラスである木下サエはなだれ込む人の群れの向こうに
強大な怪物を認め、敢えてそちらに向かって進んでいた。
そして彼女は目の当たりにする。
「…リョウコ!」
「…見ないで…見ないでぇ…っ…」
「木下サエ!知ってるぞぉ!よぉく知ってる…」
「…化け物…」
勇敢にもサエは怪物の下半身からリョウコを引き離そうとするが、完全に下半身は
一体化して、引き離せるものでもない。
つづく
しばらくしたいようにさせていたが、やがて怪物は退屈した。
「邪魔だ」
軽く腕を振るっただけで、木下サエの首が、飛んだ。
軽子沢中学は三年生が二階、二年生が三階、一年生が最上階の四階を使用している。
火災警報を聞いて三階から二年生が、四階からは一年生が降りてきたが、二階が
混乱を極めておりそれ以上下には進めず、階段で足止めをくっていた。
怪物はとにかく手当たり次第に生徒を虐殺し、時に食っていた。
混乱の中、草壁アヤは男子数人に囲まれ教室内で犯されていた。怪物が教室を覗き
こんだが、彼はそのままそれを無視した。
アヤを犯している男たちはいずれも内調のメンバーだったからだ。
「…もうやめて…お願い…許して…許してぇっ!」
内調のメンバーも既に人の心を失いつつあった。彼らもまた悪魔に魂を売ったのだ。
膣奥深くに大量の精液が流し込まれている。自分の生死よりもこれで芸能界デビューが
なくなったことの絶望が大きかった。
つづく
三発の銃声があった。間違いなく頭部に当てたはずだか彼らは
苦しみはするものの死ぬことはない。
痛みでのたうつ彼らに的場リュウジは至近距離から更に二発ずつ
弾丸をぶつ込んだ。やっと三人の動きが止まった。
「大丈夫か。草壁」
全裸で放心状態の草壁アヤは首を横に振った。彼女は救ってくれた
的場リュウジの銃を握る手を持つと、それをあらわになった自分の
美しい胸に押し当てた。
「…お願い…」
しばらく考えていたが、リュウジは引き金を引いた。
「くそったれえぇぇぇぇぇ!」
弾倉が空になるまで倒れている内調の男の死体に弾を打ち続ける。それを
後から入ってきたマサトが制した。
「やめろ。もう死んでる…」
窓から外を見て、校舎から出れないことは分かっていた。クラブハウスも校舎の
外である。編集室にいけば強力な火器があるが、今はリュウジのベレッタと、
マサトのデトニクスとかない。しかも弾数が限られている。
つづく
彼らはいち早くユウジロウから情報を得ていた。こういった事態に
最も活躍しうる者として。そして、一般教室のある西棟の階段を避け、
東棟の階段を使い降りてきたのだ。
そして、犯される草壁アヤを見たのである。
「…校長をやっちまおう…」
「…あぁ…」
上着をアヤの遺体にかけ、リュウジとマサトは教室を出た。
しばらく進むと怪物が見えた。背後から襲える。二人は頭部目掛けて
弾丸を放ったが完全に跳ね返された。まったく効いている様子はない。
「…あぁん…?校舎内で銃を撃つのは…的場君だなぁ…?」
振り向いた異形にマサトは一瞬躊躇したが、リュウジはその弱点を見極めた。
『目と口だ…』
一発目の弾丸が目を捉えた。やはり効いたらしい。妙な叫びを上げて開いた口の
中にありったけの弾丸を撃ち込んだ。
「があぁぁぁぁぁっ!」
つづく
「マサト!口だ!岡崎に当てるな!」
リョウコは怪物の股間から反り上がって、顔が怪物の胸元まで来ている。
しかし彼女は何事か呻き、瞳にも生気が見えた。
口を閉じられればチャンスはない。マサトも口を狙い射撃した。
遂に怪物は膝をつき、口から大量の血を吐いている。すばやくベレッタの
弾倉を代え、リロードを完了したリュウジは一気に距離を詰めて、近くから
怪物の口へと狙いを定めた。
連続して乾いた音が二度した。
「…な…なんでぇ…」
倒れたのリュウジだった。更に二発。今度の弾丸はマサトに向けられていた。
志賀マサト。絶命。
薄れる意識の中でリュウジは見た。長野シュウイチの姿を。
フェーザー・モデル・ガーディアンエンジェル。確かに自分が授けた銃だが、
不思議なことに手首から先が直接銃になっている。指がない。
「…編集長…あなたは、憧れだった…。この銃をもらった時も嬉しかった…」
つづく
「できれば編集長につきたかったけど…僕は内調、九だ…」
「…!」
「新聞委員である前に内調…。編集長よりも校長なんだ…。止めたいけど…
止まんないよぉ…」
弱々しく泣きながらシュウイチは銃口をリュウジの額に向けた。
ぱん。
同時だった。リュウジは額を打ち抜かれ、シュウイチは心臓をやられた。
「…やるじゃないか…」
的場リュウジ、長野シュウイチ両名死亡。
怪物は口からだらだらと血を流しながら笑った。
「いいぞ!九!内調の鑑だ!」
怪物は手当たり次第に殺戮を繰り返し、玄関前にどやどやと集まっている生徒らを
襲った。一度その強大な腕を振るえば軽く四、五人は身体中の骨を砕かれて死ぬの
である。人の手に負えるものではなかった。
つづく
生徒らは散り散りになり、それぞれトイレや誰もいなくなった教室の教卓の
下などに隠れた。
外へ逃げ場は求められないのだ。
怪物は一人立っていた。
「…これからがお楽しみぃぃ…かくれんぼの時間かな…?」
校舎中を練り歩き、人を見つけては殺す。
福岡ユウコはたまたまその時担当していた一年D組の生徒を連れ、校舎内を
移動していた。
『やっぱり外には出れないのか…』
校長が怪物になったことまでは知らなかったが、怪物が殺戮を繰り返し、更に
校舎から出れないという状況だけは冷静に見ていた。携帯電話も既に試して
通話できないことも確認済みである。
とりあえず救いは怪物の移動速度が大して速くはないことだ。全速で逃げれば
逃げられる。
「みんな、離れないでね。大丈夫。先生一緒だから」
相手はまだ一年生だ。恐ろしさに泣く子もいた。
つづく
恐怖は突然やって来る。怪物が天井を突き破って降ってきたのである。
「…ミツケタゾ…」
「!逃げて!」
生徒を後方に逃がし、自分は怪物の注意を引く。
「…女一人に何ができる…?」
「馬鹿にすんじゃねぇよ。舐めてたら殺すぞ?」
「…」
『愚麗死威』の初代総長、『紅暴走天女』。福岡ユウコ。その血はまだ
生きていた。
「タイマンだ。ボケナス…」
しかし攻撃のしようがなかった。岡崎リョウコの上半身が前面にある。
ましてや相手の顔は手をいくら上げても届かない位置だ。足元だけしか
攻撃する部分がない。
また素手で戦うにも相手が悪すぎる。
つづく
泣きながら逃げてくる一団をカエデはつかまえて、今怪物がどこにいるのか
雪野カエデは尋ねた。
男子は泣きながら、福岡ユウコのことを伝えた。東棟の三階にいるらしい。
恐怖の余り男子生徒は質問にだけ答えると彼女の手を振り払って逃げていった。
「…助けに行きましょう…」
「サヨリさん!だめですよ!逃げましょう」
「どうせ外には出られない…。あたしなら、恐らく勝てる…」
階段を昇っていく。カエデはついていった。
全裸にされ、乳房を食いちぎられた福岡ユウコの死体が転がっていた。怪物は何が
したいのかしゃがみこんで反応を失った彼女の陰部をいじっている。
「…見つけた」
「…」
「…ど、どうやって戦うんですか…?」
「死角に入る。どうせあたしは死ねないんだから。ずっとやってればあたしが勝つでしょ?」
つづく
サヨリはゆっくり呼吸をすると怪物の視線を読んだ。死角へ回り込む。
その時はじめて、しかし余りに遅くサヨリは気付いた。
『…!死角が…ない!』
一撃。一撃でサヨリは左腕をもがれ、吹き飛んで動かなくなった。
「サヨリさんっ!!」
しかしサヨリは動かない。カエデは半狂乱になり人の声とは思えぬ
高い声で叫んだ。叫び続けた。
すると教室から得体の知れぬ者が現れた。技術室から現れたそれは、
とにかく技術室にあるありとあらゆる物を複雑にくっつけてそのまま
ロボットの形にしたようなものだった。
『カエデ大変!オレたち許さない!』
『おれコイツ大嫌い!』
『俺たちお前倒す」
やってはいけないこと。『妖精さん』、即ち『ヤオヨロズ』の使役。しかし、
その禁忌を破るほどにカエデは怒っていた。この理不尽はなんだ。
理由もなく殺され食われ、陵辱され。あたしはこいつを許さない!
つづく
「…奇妙な…こんな力を持っていたか…」
巨大さからいえば同一。しかしパワーが圧倒的に違う。
ヤオヨロズが遥かに有利だった。リョウコを避け、頭部に攻撃を集中。
怪物はよろめき、呻いて、膝をついた。
その時、怪物はもはや自分のイチモツと化しているリョウコに手をかけた。
「こいつを殺すぞ?」
「!」
「今すぐこのバケモノを解体しろ。攻撃を中止しろ!」
そもそもその岡崎リョウコはリョウコとして生きているのか疑問だった。カエデは
しばらく考えた。
「…カエデ…殺…して…」
そのリョウコの言葉は逆効果だった。彼女が彼女として生存していることを証明
してしまったのだ。カエデはヤオヨロズを解散させ、その直後、食われた。
つづく
ユウジロウは無人となり、惨殺された生徒らが転がる玄関の血の海に
一人座って何やらやっていた。
背後から怪物が迫っていたが全く気付いていない。
血の海をびしゃびしゃと荒らしながら怪物がユウジロウの背後に迫る。
その時、何か空間が歪んだように見えた。
「?」
そして空間にぽっかりとラグビーボール型の穴が開き、そこから男が
現れた。やはり巨体である。怪物は自分と同じ匂いとその者から感じていた。
「…何奴…」
「岩手…ノリオ…」
いうなりノリオは拳を怪物の頬にたたきつけた。下駄箱を蹴散らして吹き飛ぶ。
「息子の邪魔はさせん…」
「倒せると思っているのか…?」
「時間が稼げれば…それでいい」
つづく
がっぷり四つに組み合う。ノリオははなから真正面の勝負を
挑んでいない。言うとおり、しばらくユウジロウに時間を与えて
いるの過ぎなかった。
はなから勝ち目がないことを彼は知っていた。
だから組み付いて相手の動きを封じ、前進させないようにすれば
それでいいのである。
「何を企んでいる!」
「…」
怪物もそれに気付き始めた。明らかな時間稼ぎ。何の為の時間なのか
全く分からない。まさか山形ユウジロウに自分に勝てる力が備わるとも
思えない。
押し相撲が何分続いたか、ノリオも力尽きてきた。今こそ好機と怪物は
ノリオをサバ折りにし、背をへし折った。
校舎内に何人の人間が生存しているかは全く分からない。しかしユウジロウは
一人静かに、玄関で座り込んでいた。
終
初ライブでした。
昨日から読み始めたのですが、既に思い入れが有るかの如く
ハラハラしっぱなしでした。
なんて恐ろしい事に・・・・
いよいよラスト1話ですね。
作者さんご苦労様です。
ココに来てとんでもないことになっておりますがw
実は、作者さんが「ラスト3話で1つのお話」と言われてから、
私のほうでもタイトルを1つに纏めようと考えて居ります。〜1、〜2、〜3って感じですけどね。
で、何気にそのタイトルも作者さんがラスト3話と投稿する前から決めてあったりしますw
もちろん、話の内容如何によっては、その内容に沿った形で考え直しますが、
恐らく、こんなラストじゃないかな?とういう予想の下に考えてみました。
さて、ラスト1話でどう完結するか。非常に楽しみでもあります。
(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブルガタガタブルガタガクガクガクガクガク
いよいよラストですね。ドキドキワクワクと寂しいのが入り交じっています(´・ω・`)
今日のライブも早いのかな?
百
霧原トオルは天井を見据えていた。埋め込み式の照明は消えている。
薄手のカーテン越しに入ってくる陽が鮮やかに室内を照らしているはずだった。
つづく
しかし高熱のせいだろうか。視界が全体にセピアがかって見える。
部屋の空気もいつもよりとどんよりとして何か不潔に思えた。
突然今朝になって体調を崩し、自ら学校に電話をして、薬を飲んで
眠った。異様に疲れていた。そのまま日が暮れるまで寝ていようと思う。
ところが目が覚めてみればまだ十時を過ぎたあたりだった。
身体がだるい。寝ようと試みて何度も寝返りをうつが全く眠れず、そのまま
三十分ほどじっとしていた。
しばらくして、何か人の叫ぶのを聞いた気がしたが、構わずそのまま寝転がって
いるとやがてまどろみが訪れた。
瞬間、目が醒めた。
右手がぴりぴりと痺れる。
「…サエ…」
恋しくなった。体調が優れないためか、何なのか、唐突に木下サエに会いたくなった。
何か不安を感じる。
愛する人が、しばらくの間、海外留学へ行くことになったりするとこんな気持ちになるの
だろうか。トオルは何となくそう思った。
つづく
右手の痺れがひどくなっていく。
単なる風邪ではなく何か神経系の病気を疑った。脳のどこかに異常が
あるのかもしれない。
先日テレビで見た、海外の不幸な出来事を思い出す。少年がバスケットボールを
していて、たまたま転び頭を強く打った。
その時は何ともなく、家に帰ってからも異常なく食事を摂った。しかし猛烈に眠くなり
毎日シャワーを欠かさなかった彼はベッドで寝入ってしまう。朝起きると足にしびれを
感じたがそのまま登校した。そして彼は授業中に居眠りをし、そのまま亡くなった。
そんな事件だった。やはり病院に行くべきか。
眠いが眠れず、遂にトオルはベッドから抜け出した。途端、痺れが治まった。
「あれ…」
もう一度寝転がってみるが痺れはない。気のせいかともう一度起き上がろうとすると、
ある一瞬、痺れを感じた。
気になって、手を振ったり、上げたり下げたりしていると、手がある方向に向いた時だけ、
痺れを感じることが分かった。
次に彼は手を床と水平にまっすぐに伸ばし、身体を回転させてみた。するとやはりある
一点で痺れを感じる。
その手の遥か先には、彼の通う軽子沢中学があった。
つづく
彼は制服にも着替えず、寝巻きの上からコートを羽織っただけの
かっこうで、学校へ向かった。
頭が高熱で朦朧とする上、学校の方へ手をかざすと何か多くの思念が
複雑に絡み合ったどろどろとしたエネルギーを感じた。その度に急激に
体力を奪われるようで、彼は自転車にも乗ることができず、ひたすら
よろよろと歩いて学校への道を急ぐ。
平日の午前中とあってすれ違うタクシーもない。あっても既に誰か客を
乗せている。
近づくにつれ、右手からは容赦なく、わけの分からない、ただし決して良くはない
入り乱れた思念が流れ込んできて彼を苦しめた。
近づけば近づくほどにその歩みは遅くなる。
行ってはならないという感情と行くべきだという感情のジレンマの中で彼は身体
全体を引きずるように、それでも学校に近づいていく。
つづく
途中、何度も道端に吐いた。胃の中は空っぽで、ただ酸っぱい
わずかな胃液を何度も吐いた。
何度か誰かに声をかけられた気がするが気にも留めなかった。
右手はおろか、鈍感な左手さえ、その異様な信号を受け取っている。
恐らくこの場に斧があったなら、彼は恐らく自らの右手を切断しただろう。
それほどの苦痛を右手は彼に与え続けた。
坂を昇りきると、眼下に学校が見えるはずだったが、そこにあったのは
灰色のもやだった。
彼は急いだ。後ろから何か音がして、自分の横すれすれにクルマがエンジンを
ふかして走り去っていく。すれ違い様、運転手から何か言われた気がするが、
理解する余裕がない。
トオルは道のど真ん中を力なく歩いていた。
つづく
目は充血し、口元からは唾液か胃液か、何か液体を滴らせている。
そこに普段の美少年の姿はなかった。髪も激しく乱れていた。
学校の校門前にはちょっとした人だかりができている。
軽子沢中学の校舎全体が、灰色のガスか霧のようなもので覆われているのだ。
天気は快晴である。
通りすがる時間のある者は興味深げに、こんなこともあるのかとその様子を
見ていた。
ある者が面白がって、もやの中へ入っていったが出てこない。どうしたのかと
続いた者もまた出てこない。
もやの中はしんと静まり返り、何の音もせず、入っていった者に、声をかけても
返事はなかった。
校庭の半分ほどはもやから出ていたが、体育などをしている生徒もいないようだ。
見ている者も何かただならぬものを感じてはいたが、果たして誰を呼ぶべきか、
どこに連絡すべきか迷っていた。
確かに事件ではないから警察を呼ぶ必要もない。怪我人がいるわけでも火の手が
あがっているわけでもないから消防でもない。
市役所だ、保健所だ、気象庁だ、と色々と野次馬の中で話はもたれたが、誰もその
連絡先を知らなかった。
つづく
「お、おいなんだよ、押すなよ!」
その野次馬の群れにトオルは突っ込んで、人を掻き分けて
校舎の異常を見た。
後ろでは彼の異常な雰囲気、強引な行動をぶつぶつと非難する
声があったが彼は耳を貸さなかった。
校門を入る。
「おい、お兄ちゃん危ねぇぞ!入った奴は出てこれないんだ!」
中年の男が言うとトオルはそこで立ち止まり、ゆっくり手を、校舎に、
もやにかざした。
強烈な思念が流れ込んでくる。そりは余りに混乱していた。同時に
数十人の人間から耳ともでぎゃあぎゃあと騒がれているような不快感。
ただその中に、一際大きい意思を感じた。しかしそれは、大群衆の怒号の
中から、一人の人間の発する声を聞き分ける行為に等しい。
トオルは頭が割れそうになるのに耐えながらじっとその一人の声を聞いた。
つづく
そしてそれは短時間ではあったが強烈にトオルの頭を叩く。
彼は告げていた。それは三度同じ事を繰り返し、消えた。
「…山形先生…」
充血した目から涙を流し、トオルは歩を進めた。後ろから彼の無謀を
止める声がしたが、力づくで連れ戻そうなどという勇敢な者はいなかった。
しかしそれはかえって好都合だった。体力的にはもうぎりぎりである。
もやの外側にクラブハウスの一部が飛び出している。
一番手前の新聞委員会、編集室。トオルはそこへ入り、的場リュウジの
散らかったデスクの上を漁り、それを見つけた。
つづく
キタ━━━━━━━━━━━(゚∀゚○=( ゚∀゚)=○ ゚∀゚)━━━━━━━━━━!!!!!!!!!!!!!!!!
プラスチック製のカバーが取り付けられた赤いボタン。カバーはどこからも
開けることができず、トオルはそれをデスクにあった置時計で破壊した。
そして赤いスイッチを押す。
ユウジロウからの最後のメッセージ。
『編集部、的場リュウジのデスクにある『自爆スイッチ』を押し、三分以内に逃げろ』
それを三度だけ繰り返して、ユウジロウの思念は消えた。
トオルは濡れた目で赤いボタンを三分間見続けた。
『軽子沢中学爆破事件の続報です。今だはっきりしたことは分かっておりませんが、
爆発直前、校舎が濃い霧のようなものに覆われていたという証言が多数あることから、
警察は天然ガスによる爆発の可能性も考えられるとし、事件と自然災害、両面からの
捜査を進めています。校舎全体が跡形もなく吹き飛んでおり…
あ、お待ち下さい。現在速報が届きました。軽子沢中学爆発事件についての速報です。
消防は生存者一名を確認。救出しました。繰り返します。生存者一名が救出された
模様です。えー…名前は…出ませんか…?はい。名前も明らかになっているようです。
生存者の名前は…』
完
誰よ?
それを想像するのが読者に与えられた自由じゃない?
>>465 誰よ?って…聞いちゃダメでしょ。それは。
ややウケしたけど。
作者サマ、百話大変お疲れさまでした!
とうとう終わっちゃったんだなぁ…って気持ちでいっぱいです(;_‖
でもこんな事になっちゃって、アカネが黙ってるわけない!!と思うのはMeだけでしょうか、、
また明日も普通に山形スレを開きそうです。。
校長・・・il||li_| ̄|○ il||li
作者さんお疲れさまでした!
なんかショックですが…面白かったです( TДT)
これからも作者 ◆xDdCPf7i9g 氏の活躍を期待します!!
あぁ…ついに終わってしまったか(つД`)・゚
でも、一人生き残ったということは……
ひとまずは 作者さん 大変お疲れ様でした。そして、ありがとうございました。m(__)m
なんつーか・・・・。みんな消された・・。
あかねは・・・どこに・・・・?
作者さん、余韻をもたせた終わり(・∀・)イイ!
正直なところ「ん〜なんだかな〜」というのが感想です。
色々考えるところはあるのでしょうけど、なんというか消化不良というか。
とりあえず、私の思惑はおもいっきり外れましたwww
ので改めてタイトル付けを行わさせて頂きました。
これらは全て物語の内容に沿った詩のタイトルに引用いたしました。
まぁ、私が以前合唱やっていたときに歌ったことあるものばかりなんですが、
興味のある方はぐぐってみて下さい。
全文が何処かにはあると思いますので。
いずれにせよ百話続いたこの話に参加できて楽しかったです。
作者さま、お疲れ様でした。ありがとうございます。
まとめサイトの方もご苦労様です。ありがとうございました。
そして拙いタイトルを読んでくださいました読者の皆さま、お付き合いくださいましてありがとうございました。
>>473 正直な感想ありがとう御座います。
また、100話までお付き合いくださりありがどうございました。
色々と御面倒をおかけした申し訳ありませんでした。
>>474 面倒なことなんてあるもんですかw
楽しかったですよ。
社会人になってからというもの仕事以外で物事考えるなんて滅多にありませんでしたから。
中にはタイトル付けるのが非常に難しかった話もあります。
「この話にこのタイトルっておかしくないか」とか
「作者さんの意図するところとずれてないか」とか
「読んでる人達もピントずれてるって思わないか」などなど。
反面「これは会心でしょ」とぴったり嵌ったのもあり、そんなときはホントに気持ちのいいものでした。
これは、本文書かれている作者さんも同じだと思います。
私は一つ一つ大事にタイトルを付けてきたつもりです。
作者さんも全ての話が自分にとって大切な作品だったのではないでしょうか?
これからもその大切な作品をどんどん増やして行ってください。
>>475 そうですか…。最終三話はひどかったと思います。
消化不良。正にその通りで、非難されるべき内容であると私は
自分で書いておいてなんですが思います。
自分の中でも終わらせるべき最終手段といえる内容でしたが…。
納得ができないということがこれ程の苦痛を伴うとは思いませんでした。
大切な作品であると共に、勉強になった4ヶ月でした。
私の意図、などというものはそもそもないんです。私は作家として様々な
ものをごり押しする人が嫌いです。人としても尊敬できません。
だから私はなるべく自由度の高い作品を書いているつもりです。読み手の
方が好きに感じて、考えてくれればいいような。活字を読まないと馬鹿に
なるという方が多いですが、単に活字を読むだけでも人は馬鹿になると
考えます。自分で何か感じ、考えなければ。ある程度与えられた世界の
中で想像で遊び、楽しむ。私はそういう作品を書くように心がけている
つもりです。人から説明不足、文章が稚拙、描写が下手と言われようと。
そんな中でタイトルさんのタイトルはいずれも素晴らしいもので、時には
嫉妬すら覚えました。正直申し上げて、尊敬するとともに今もそれはあります。
勝ち負けなどという概念自体がナンセンスですが敢えて申し上げれば、
勝ち目がない、敵に回したくない、タイトルさんに対してはそんな気持ちが
あります(笑)
悪いものではないですけどね^^ 重ね重ね、ありがとうございました。
>>まとめ人 さま
お名前を見かけなくなりましたが、名無しさんでいらっしゃっているの
でしょうか。
本当にお疲れ様でした。レスで、一昨日から見始めた、昨日から見始めたと
いう方を見かけるたびに、まとめサイトの威力を思い知るのです。
誤字を訂正していただき、また改行位置などの調整など、細かい点で、面倒
だったと思います。
お世話になりました。いつも書く前にはまとめサイトを見て、あいつは最近
出ていない、こいつは最近出すぎ、と気にしながら書き上げたので、全体に
登場人物のバランス、エロ話、怖い話、しんみりした話のバランスも適度に
とれたと思います。
初めての短編。それも連日連夜の100連発。どうなることかと思いましたが、
まとめサイトがなければ途中で断念していたと思います。
また『枡や』モノ、『オカルト同好会モノ』と密かにジャンル分けされて、あとで、
『第○○夜『XX』参照』とする際大変に便利でした。
いつもお礼を言おう言おうと思いつつ、結局最後になってしまいましたが、
ありがとうございます。お世話になりました。これからは読者として、ゆっくり
楽しんでください。あのまとめサイトは100話で凍結させて頂けると嬉しいです。
重ねてお礼申し上げます。お疲れ様でした^^
山形先生100話達成したし、新スレ作ろうか?
『作者 ◆xDdCPf7i9g氏の降臨を待つスレ』とか、そんなタイトルでいいのかな?
>>478 とりあえずここ使い切りましょう。ゆっくり考えればいいよ^^
ただまた調子乗って書いてると、512KB(だっけ?)制限で、ブチ切れるから、
その時は誰かお願いします。俺が立てるのはなんか違う気がする。
あー止まったなと思って誰かがスレ立ててくれたら俺はそこで書くよ。
えー、とりあえずといっては何ですが、トリップがそのまま
作品名になってしまったので、気持ちを切り替える意味でも
トリップを変えさせていただきます。今はまだ前の状態ですが…
こんなん出ました。以後、お見知りおきを。
>>479 では、前スレが705でストップしたんで、600超えたあたりで作るってことでいいですよね?
まとめ人さん、本当にお疲れ様です。
人物紹介とか、細かく更新しててすごい!と思いました。
>>481 新トリップで気分も一新!(゚∀゚○=( ゚∀゚)=○ ゚∀゚)
早くもwktkモードですwww
さてここらで怖い話でもするか。
『◆xDdCPf7i9g』は壮絶な形で終わっていた。(第九十八夜 『夢みたものは』〜参照)
ざっとではあるが読み終えた頃には既に深夜の二時を回っている。
つづく
福岡ユウコは震えていた。生徒を守り啖呵を切ったまではいいが、
全裸にされ、乳房を食いちぎられた上に、ヴァギナを校長にいじり
回されるとある。(第九十九夜 『死んだ男の残したものは』 参照)
「…まだ処女なのに…」
呟くなり、ユウコは部屋の明かりをつけ、生徒名簿を取り出した。
時間がない。自分が『◆xDdCPf7i9g』を読み終えた翌朝には事件が
始まる。とにかく自分を、生徒を守らなければ。
奇妙な話だが、自分しか知りえないこと、また誰も知りえないことまで
書かれているこの謎の書物は恐らく予言書に限りなく近いものだ。
たまたま昨夜自分が手に取ったのも何か見えざる力によるものに
違いない。誰かが言っているのだ。
『福岡ユウコ、世界を救え』
と。
まずは信用されなくてはならない。かつ、力になる仲間を集める必要がある。
時間はない。校長への直談判は危険が過ぎる。相手は悪魔に心をあった
魔人なのだ。
悪魔に対抗し得る最高、最強のメンバー。それは、軽子沢調査隊+新聞委員会。
これ以上のメンバーは考えられなかった。
つづく
しかし問題がある。まず自分が福岡ユウコであることは明かせない。
信用されない可能性がある。また『◆xDdCPf7i9g』という書物の存在も
秘匿する必要があった。
その本に全て書いてある、と見せるのが最も手取り早いのだが、そこには
見られたくない自分の過去まで掲載されているし、他の生徒、教師のプラ
イベート、場合によっては犯罪行為まで書かれている。
生徒名簿には、生徒の名前、住所、電話番号は明記されているが、さすがに
個人の携帯電話の番号までは載っていない。
こんな時間に電話するのもはばかられたが未来の為だ。仕方がない。
とりあえず、霧原トオルは、最悪の事態になった際の切り札になるようだから、
作戦に加えるべきではない。また、長野シュウイチも『内調』であると書かれて
いて危険だ。
メンバーは、的場リュウジ、雪野カエデ、サヨリ。それだけで充分だろう。
なるべく短時間でメンバーを集め、明日の始業時までには作戦をまとめ実行
しなくてはならない。余り人数が多すぎても厄介だ。志賀マサトは無視することに
した。
カエデの家に電話すると親が迷惑そうに出たが、軽子沢中学の者ですが、と告げ
何とか電話を取り次いでもらい、呼び出すことに成功した。
つづく
愛車、ブルーのアウディで雪野家へ向かいつつ、違法ではあるが
車内から的場家へ電話した。
『◆xDdCPf7i9g』では校長による大殺戮当日、学校に登校しているよう
なので自宅にいるだろう。
想像通り、リュウジはいた。しかも真っ先に電話に出た。それはラッキー
だった。
何とか名前を隠しつつ、『いいネタがある』と誘い出す。
問題はサヨリだった。名簿に電話番号がない。直接家に行くしかなさそうだ。
アウディは古びたアパートの前に止まった。
『…すごい所に住んでるな…』
ボアホンを押したが壊れているのか反応がない。仕方なくノックするとドアが
開いた。夜の暗がりに、彼女は肌は光るように白かった。
「…だれ?」
「いいからついてきて」
「…」
つづく
投下来とる━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!
軽子沢調査隊+新聞委員会キタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!
サヨリを助手席に乗せ、そのまま雪野家へ。カエデは玄関前で
待っていた。
運転席にいるユウコにひどく驚いた様子だったが、助手席にサヨリが
載っていたのでそのまま後部座席に滑り込んだ。
的場家の前にはリュウジとなぜかマサトがいた。
「…ネタがあるらしいが貴様何者だ?」
「いいから載ってちょうだい」
「…女か…」
福岡ユウコ、アウディの運転席で、真紅のフルフェイスヘルメット、白いサラシに
特攻服、下はニッカポッカに地下足袋という完全な暴走族スタイルである。
そのままファミリーレストランの駐車場に入った。
「…お客様…ヘルメットは取って頂かないと…」
カエデはユウコの特攻服の背中にある赤い刺繍が気になった。『愚麗死威』。
声から大よその判断はついていたがどうも彼女は福岡ユウコらしい。
(第五十五夜 『彼岸峠』 参照)
「あ、すいません。この人、顔に病気があって、人に見せられないんです…」
カエデはフォローしたが特攻服とニッカポッカの説明になっていない。しかし
店員はそれで引き下がった。
つづく
席についてからも客の視線を浴びた。フルフェイスの暴走族、二十台半ばの
無精ヒゲ、中学生男子、やけに色白の女、小学生ぐらいの女の子。
絶対に家族ではないし友達でもなさそうだ。
「あの、福岡先生、ヘルメット取ったら…」
「福岡って誰?」
「…」
「おい先生、ネタって何だ?」
「先生って誰?」
「…」
「御注文は…」
「ドリンクバー」
「ウイスキー」
「俺はいらない」
「チョコパフェ」
「…水」
つづく
「あたしは預言者、ダマクルスよ」
「…福岡先生…」
「ダマクルス」
「…ダマクルス…」
明らかにばればれだが、とにかく福岡ユウコは適当に考えた『ダマクルス』と
いう名前で通した。そして信用させる為、それぞれしか知りえない情報を
それぞれの耳元で囁いた。
リュウジには、『皆殺しの村』についてのこと。(第八十八夜 『舫い綱』 参照)
カエデには『妖精さん』のこと。(第五十九夜 『付喪神』 参照)
サヨリには、誰も知らないその貧しい私生活のこと。(第九十六夜 『倨居(うつい)』参照)
マサトにはホモであること。
それきり、皆はダマクルスの話に耳を傾けるばかりになった。
「福岡先生って超能力あったんだ…」
「預言者ダマクルス!」
「ダマクルス…」
つづく
ダマクルスワロスww
とりあえず、『ダマクルス』こと福岡ユウコは、今日、これから
夜が開けて起こることを話した。
リュウジとマサトは信じられるわけがないと反論したが、カエデが
話に聞いた、校長による四人殺し(第七十九夜 『賢しらな羊』 参照)
の話を持ち出し、真実味を持たせた。
「まさか…」
更に、旧文部省による『素晴らしき子供たち計画』の内容を話す。そして
その悲願実現の為に結成されたカブロ、そして内調、長野シュウイチが
その一員であること。
「…編集長、これは信憑性高いと見るぜ俺は…確かにシュウイチの校内に
おける情報に詳しい…」
「…しかし相手が悪魔とは…」
「そうだ的場君、あなた、心霊写真でお兄さん亡くしてるでしょ?(第八十四夜 『諧謔』 参照)」
「!」
「だったら悪魔だって…信じられない?」
「そんなことまで知ってるのか…」
「それがサヨリさんの手に渡ったこともね。でもサヨリさんにはもっと強い呪いがかかってる」
つづく
「…行けと言うなら、行かんでもないが、そのかわり、お前は私が帰るまで、
待って居ろよ…そうよね?」
「…あたしはダマクルスを信じる」
本名山田サユリ。普段から偽名であるサヨリを用いている彼女も、相手が
福岡ユウコであることは完全に見抜いていたが、同じ偽名を使う者同志、
偽名を尊重することにした。
「…わかった。とにかく時間がない。信用できるできないの議論は無駄だ。
最悪のケースを考えて計画を考えよう」
「さすが的場君!やっぱり呼んでよかったー」
「…ダマクルスさんよ、だんだん福岡先生っぽくなってるぜ?」
「預言者ダマクロス!」
「ダマクルス…じゃなかったでしたっけ…?」
「ダマクルス!」
「もうバレてんだからメット取れよ…今写メ撮られたぜ…」
「…恥ずかしいから死角入っていい?」
「それより計画だ…」
つづく
とりあえず、計画で最重要な点は、校長、鬼塚ケンシロウの扱いである。
彼は、悪魔に魂を売り、死後、肉体を好きにしてよい、と契約を結んだ。
要するに、彼が死ねば悪魔化する。よって彼を暗殺することはできない。
すればたちまち悪魔化してしまう。
「…なるほど。遠距離からの狙撃は不可能だな。意味がない」
「そういうこと」
「いっそRPG−7で木っ端微塵にしてしまえばいいのではないか?」
「何ですかそれ?ゲーム?」
「対戦車ロケット弾だ。対人兵器として使えば相手は原型をまず留めない」
「それ準備できる?」
「…中国のブローカーに連絡を取る必要があるが翌朝までには無理だ…」
「…燃やせば?」
「…焼身自殺などの場合は焼け死ぬ前に、炎に酸素を奪われ窒息死する。
まだ肉体を保っている間に窒息すれば、その直後に悪魔化することになるが…。
リスクがでかすぎる」
つづく
( ;∀;)未来は君達の手に!
危険な話の連続である。明らかに異常だ。狙撃、対戦車ロケット弾、燃やす、
悪魔化、もう反政府勢力なのか新興宗教なのか話だけでは意味が分からない。
しかも話の中心人物はフルフェイスの暴走族風の女。それでいて名前が預言者
ダマクルスなのだ。
もう狂人の集まりとしか見えない。
それでも夜が白々と明けはじめる頃には作戦がまとまり、それぞれ普通に登校
することになった。運がいいことに『◆xDdCPf7i9g』には明確に時間が書かれて
いた。
午前十時三十分。その時間に文部科学省の役人が辞令と異動命令を持って
くるのだ。そして話し合いはこじれ、怒った鬼塚ケンシロウにより役人四名は
殺害され、続いてケンシロウは首を吊る。
そして大殺戮がはじまる。目的は文科省役人の生命を守ることと、校長の自殺を
食い止め悪魔化させないこと。
帰宅するアウディの中でダマクルスは音楽を大音量でかけ、戦意を奮った。
みんなで歌おう!新聞委員会+軽子沢調査隊=軽子沢警備隊のテーマ。
つづく
「…福岡ユウコって言ってますけど…」
「…」
「『あとサヨリ』の『あと』って何よ?」
「…オマケの上に俺、盾なの…?」
「先生、あんた二十五のはずだが…少し曲が古過ぎないか?」
「いいのよ。好きなんだから!いいから歌う!」
「…」
そしてやがて夜は明けた。
福岡ユウコは休みを取った。一応確認したところ、霧原トオルも休むらしい。
やはり『◆xDdCPf7i9g』にあった通りの展開だ。
彼女はそのままの恰好でアウディからホンダドリームCB400FOURに乗り換え、
学校裏手の職員専用駐車場が見渡せる位置に陣取った。
文科省の役人が来れば、間違いなくこの駐車場を利用するはずである。
つづく
十時十五分。志賀マサトは目出し帽をかぶり、校長室隣の音楽室を
制圧占拠した。
「我々は軽子沢中学生徒の命を守る連合軍だ!」
我々だの連合軍だの言っているが一人である。
「騒ぐなおとなしくしろ!この教室は我々が乗っ取った!大人しくしなければ
殺す!」
『命を守る連合軍』なのに殺す。えてしてこういったテロリスト集団の名称は
やっていることと矛盾する。自由解放軍などと言いながら、やりたいことは
独裁政治だったりするのが好例だ。
しかし手にしたH&K社製MP5KA4は充分生徒に恐怖を与える。
「…音楽室制圧完了」
「了解。次の作業に移れ」
「ラジャー」
音楽室と校長室の間の壁にコンクリートマイクを設置する。これで、校長室内の
会話は筒抜けのはずだった。しかしよりによって音楽室である。防音壁の厚みで
コンクリートマイクが用をなさい。
つづく
むしろ、役人が校長室に入ってから、単に校長室のドアに耳でもつけた
方がよっぽど効率がいいわけだが、どうしても何かを占拠、制圧しないと
気が済まないらしい。
リュウジとマサト。最もタチの悪い戦争オタクの部類に入るだろう。
「…駄目だ!部屋の内部の様子が分からない!」
「…落ち着け。文科省の連中が来るまでまだ時間はある」
十時二十分。見慣れない黒い日産の乗用車が駐車場に入っていった。
無線でユウコが報告する。
「こちらダマクルス。文部科学省到着」
「…了解」
「雪野さん、準備はいいね?」
「…はい」
「…マサト、連中が校長室に入るのを確認しろ」
「了解…来た。校長室に今入った。繰り返す。校長室に入った」
「雪野さん、お願い」
つづく
カエデが何をするかは、ダマクルス、福岡ユウコとカエデだけの
秘密だった。
彼女がすることは、とにかくヤオヨロズをやたら滅法に使役し、教室を
混乱におとしいれ、生徒を一人でも多く校庭に出すことだった。
運のいいことに、軽子沢中学の全体の『く』の字型をした校舎で、
一般の教室は西棟に、校長室などは東棟にある。
多くの生徒が西棟にいるわけで、西棟で相当な騒ぎが起こってもそれが
東棟の端、校長室に届くことはまずない。
机がひっくり返ったりモップが飛び回ったりするのでわけも分からず多くの
生徒が校庭に逃げていく。
ちなみに、念力のようなもので動かしているわけではなく、あくまで物体に
宿ったヤオヨロズが勝手に好き放題動いているだけなので、どれだけの
ものを動かしてもカエデが特に疲れるということはない。
『好きに遊んでいいよー』
と伝えればそれだけで大混乱が巻き起こる。
一方サヨリは特にやることがないので廊下の上を死にかけのカエルのように
這っていた。
「貞子が出たぞ!」
効果は充分であった。
つづく
一方で、リュウジはハーネスを装着し、東棟屋上からロープで降下。
二階校長室の窓のすぐ上まで来ていた。逆さ吊りになっている。
マサトは音楽室からの盗聴を諦め、校長室の重厚なドアにコンクリート
マイクを設置した。
『…書類はお渡ししました。御熟読の上、以後その指示に従って下さい。また
特命教師としての特別手当はもう出ません。ただし、こちらで検討させて頂いた
結果、退職金の方でそちらのいいように、処理させて頂きます。御安心下さい」
「我々としても驚いているのですよ。そのようなプロジェクトがかつてあり、未だ
進行中であったこと…。旧文部省の気の迷いとしか言いようがない。それに
振り回された、先生の御苦労はお察し致します…』
『では、我々はこれで。お疲れ様でした』
「…リュウジ、そろそろ終わる。連中が帰るぞ!」
「…了解。予定通り煙幕弾を使用する。突入後速やかにそちらから進入。役人を
確保しろ。五秒後に突入する」
その頃、ダマクルスのCB400はあろう事か校舎内を走っていた。階段を駆け上がり、
西棟から東棟へ進んでいる。
つづく
校長室の窓が割られ、冷たい風と共に何か缶のようなものが転がって
きた。そのうち缶から凄まじい煙がもうもうと立ち、見る間に部屋中を
グレイ一色に染め上げる。
同時に校長室のドアが開き、ガスマスクをした男が、役人たちを急いで
外へ連れ出す。
「ごほっ…な…なんだ…ごほっ…」
煙が晴れると、パラシュートロープで拘束されたケンシロウが校長室の
赤絨毯の上に転がっていた。
「校長確保!状況終了」
やがてバイクが校長室前に到着。
「な…なんなんだ君たちは!」
「軽子沢警備隊だ!」
ガスマスク二人のフルフェイス一人。素顔が分からない。校長は怯えている。
「悪魔と契約したな?」
「な…何の話だ!」
つづく
「『素晴らしき子供たち計画…』」
「…!何故それを!」
「…吐け!悪魔と契約したな!」
「何を言っとるんだ君たちは!悪魔なんぞ知らん!」
リュウジはザックから何か粘土のようなものを取り出した。
「何それ?」
「C4爆弾。校長の身体を粉微塵にする」
「ちょ!おい!やめてくれ!何でも話す!何でも話す!」
つづく
「悪魔との関係を言え」
「だからそれは知らん!」
「爆破しよう」
「ちょ!何でも言うから!」
「悪魔に魂を売り渡したな?」
「何だそれは!」
「爆破決定!」
「ちょ!待ってくれ!本当のことを言う!」
「悪魔と契約したな?」
「だから、それは、ないって!」
「セット完了!」
「ちょ!ま!やめてやめて!」
つづく
全く話が進まない。校長は泣き始めた。仕方がないので
『素晴らしき子供たち計画』について聞いた。
「…それは…健全な肉体健全な精神が宿る、という理念の元に、
スポーツを大いにやらせるべきだという、旧文部大臣主導による
教育改革だった…」
「…スポーツ?じゃあ特命教師って…?」
「単に体力自慢の教師のことだよ。スポーツ万能の…。今考えれば
私も少し意地になっていたが滅茶苦茶な計画だよ。当時の文部大臣が
大の相撲好き、野球好きでね…勉強そっちのけの言わばプロスポーツ
選手育成計画みたいなものなのだった…」
「…全然話が違うようだが…」
「…だって本に…」
「本?」
「あぁ、いや、何でもない…」
「日本人選手のメジャーリーグでの活躍や、サッカー選手の海外進出が加速度的に
進んだのはプロジェクトがやっと実を結んだ為だと私は今でも信じているよ…」
「…へぇ…じゃ異動命令っていうのは…?」
つづく
「命令?とんでもない私が希望を出したんだよ」
「なぜ?」
「ハゲだのホモだのノゾキ魔だのセクハラ校長と呼ばれこの学校では
私の立場がないだろう。だから新しい違う学校に行きたかったんだ…」
「あぁ、そうですか…あ!」
「こ、今度は何かね!」
「駅前で人を殺しましたね?見た生徒がいるんですよ?」
「!まさか…!」
「やはり…悪魔か!」
「違うあれは兄のケンゴロウだ!
「兄!」
「そうだあれは兄の犯した事件だ!」
「…ちょっと待てよ?校長、あんたの名は?」
「ケ…ケンシロウ…」
「事件を犯した兄の名は」
「ケンゴロウ…」
「おかしいな。お前がケンシロウなら兄は普通ケンザブロウだろ。なんで
先に五で、あとが四なんだ?おかしくないか?」
「…待ってくれ!作者が間違えたんだ!」
「本当か!」
「本当。ごめん」
「そうか。作者が言うなら間違いないな!」
「あれは弟のケンゴロウが犯した事件だ…。既に逮捕されている…」
「…」
つづく
「さっきもいったように特命教師はスポーツ万能だ。私と瓜二つの
弟、ケンゴロウも同じく体力がある上凶暴な奴でな…」
「…なんかこの話の設定って『兄弟が凶暴』ってのが多いな…」
「俺の兄貴もそうだった」
「恐らく作者の兄弟が凶暴なのだろう」
「なるほど」
尋問は続いたが、どうも校長と悪魔の関連性はなく、C4爆弾は解除。
縛られたまま校長は朝まで泣いた。
一方生徒はそのまま帰った。
みんな帰って、元通りとなった。
福岡ユウコは自宅で『◆xDdCPf7i9g』を探したが何故か見つからず、
何が書いてあったか、記憶も定かでないほどに薄れていた。眠いのに
慌てて読んだからだろうか。自分に関する記述以外、余り思い出せない。
しかし変わりに『◆gby2MQSCmY』という本が見つかった。『◆xDdCPf7i9g』と
似た装丁だったが、なぜか、最初の数ページ以降全てが白紙だった。
サヨリは一人暗い部屋で、あたしのいる意味あったのかなーと一人ぼおと考えて
いたが、退屈しない夜を過ごせて久しぶりに少し楽しかった。
終
スペシャルサンクス
アポロを割るぞ ◆PRyJ/w4T5U さま。
並びに続編を希望してくれた皆様。
>恐らく作者の兄弟が凶暴なのだろう
そうなん?
www
>>514 体型が大乃国クラスだから冗談でやってることが
殺人行為に近いです(笑)
冗談で乗っかられただけでアバラにヒビ入る…。。
糖尿になって今は随分スマートになりましたがねww
>>515 それは難儀なことでしたねw
やっぱ調査隊+新聞委員の活動は(・∀・)イイな
台詞しか書かれていなくても誰の台詞か分かるのは、しっかりキャラクタが立っているからだろうね。
ガキの頃ってこういうグループに憧れるんだよね。
BD7とか…。
各々が特殊な技能持っていて、それぞれ得意の分野で発揮して何かを解決みたいなの。
個人的には冷静なトオルがリーダーがいいな。
>>516 タイトルさんは俺なんかより少し上かなぁ…。少年探偵団は
俺が生まれた頃の作品です。
俺らのころは、ちょっと漢字を忘れたけど、
『思いっきり探偵団はあど組(『はあど』は漢字)』
とか、「まりん組(同じく漢字)」ってのがあったけどもう大きく
なってたからなぁ…。
ただ少年探偵団は再放送で意味も分からない頃に確かに見ました。
記憶に残ってるのは怪人(?)の正体が、「?」になってるのに、どう
見ても『帰ってきたウルトラマン』だってバレバレだったことぐらい…(笑)
記憶は定かでないけど。何かと混同してたらすまんです。
>>517 はい、少し上ですw
正解、怪人二十面相は帰ってきたウルトラマンの外の人ですね。
ちなみにナレーションはキレンジャーの外の人でした。
軽子沢警備隊マンセー(*゚∀゚)=3
ぬっくん確保までのスピード感溢れる展開!その間に笑い所もあって、
とっても楽しめました。
みんな死ななくてよかったお・゚・(ノД`)・゚・。
これからも沢山の作品を読ませて下さいね!
>>518 色々詳しいなぁ…でもそれぞれの得意分野で…っていいですよね。
スパイ大作戦や、特攻野郎Aチームなんかもある意味ではそうかな。
オーシャンズ11なんかも…。
思い出すとたくさんあるなぁ。
でもやはり子供である部分に魅力を感じますね。あとなんだか由来
不明のニックネーム…コードネームというべきかな。例えば機械
いじりが得意なら、『ペンチ』とか、頭がよければ『ハカセ』とかね。
そんなあだ名欲しかったなぁ…。
そういう部分は『必殺!』や『ハングマン』の影響を受けてるかも…。
組紐屋とか、三味線屋とかw
ずっこけ3人組とかはまた別のくくりになっちゃう(ほとんど読んだこと
ないけど…)宗田理さんの『ぼくら』シリーズは該当するのかなぁ…。
映画は見たけどやはり読んだことはない(笑)
いやタイトルさんと話すと尽きませんよ。風呂にでも入ってきます。
合いの手ありがとう御座いました^^
>>519 ぬっくんっていつの間についたあだ名なんだ(笑)
初め全然わからんくて誤爆かと思ったww
そろそろちょっと可哀想なので、鬼塚さんの運気を急上昇させます。
作者っていいよぉ。神になった気分だ!(笑)
>>521 あ、自分もぬっくんは誤爆だと思ってたw
ケンシロウのあだ名なんだ。いつの間についたんだww
良かったら由来教えて
>>519さん。
いやぁ、終わったと思ってなんだかガックリ来てしまっていたのが
投下見てうわぁぁぁぁって大爆笑w
ダマクルスなんじゃそりゃ〜。福岡ユウコ先生ナイス!
ユウコ先生が面白おかしすぎて最高!
最後の終わり方が良かった。すごく良かった。
サヨリがとても可愛く笑ったのが見えた気がしたよ。
もう、こうなったら365話まで行こうよ!
新しいタイトルは「毎日が作者 ◆gby2MQSCmY」でw
まぁ、毎日じゃなくてもいいし、365話までいかなくてもいいから
やっぱり続けて欲しい。ほとんどROMだけど見るのがもう日課だし。
ところでケンシロウはよそに赴任するんだろうか?いて欲しいなぁ・・。
523 :
519:2006/10/14(土) 23:52:31 ID:sWKG2poeO
雑談スレで校長=俳優の温水さんのイメージ、ってカキコしてた方がいませんでした?
自分は、それ以来ぬっくんの愛称で親しんでおりますww
あれ…薮睨みの老人でしたっけ?
でももうチェンジマソとか完全に温水さんで脳内再生してるから、
自分の勘違いだとしても、「校長=温水さん」から離れられないw
>>523 あ、それ私ですw
私も「校長=温水さん」が離れません。たとえスポーツ万能でも
筋肉質だったりしても校長は温水サン^^
リュウジは竹野内豊。ユウジロウはまた最近定まってないなぁ・・。
ユウコ先生は午前中に時々N○Kで放送されている「さわやか3組」とかいう
番組に出てくる女の先生がイメージにぴったりで脳内再生はいつもその女性。
ところでケンシロウのケンゴロウの話とか作者サンが間違えたとか
面白すぎw本人たちが至って真面目に話してるのが最高。
私もケンシロウには他の学校に行かないでほしいなぁ・・。
んで、作者サンが
>>521で「鬼塚さん」って書いてるのを見て爆笑しますたw
何故に・・・www
何はともあれ面白かったです!お疲れ様でした!!
こんばんわ。作者です。さすがに日曜日は皆さんおとなしいようで(笑)
ところで、新シリーズ(本当はかっこうよく『シーズン2』とかいいたいんだけど
話の性質が…www)になって無事とりあえず一話が終わったわけですが、
現在、私の専用ブラウザではこのスレッド370KBとなっております。512で
スレストかかるんだったかな…。
さて新シリーズなのですが、ネタが尽きてきたというか、オカルトという枠組みに
捉われたくない気持ちが強いのです。しかしオカルト板で続ける以上オカルトを
からめなくてはならないような、義務感めいたものがあります。
恐らく、読んで下さる方は、気にしないで読んで下さっていのでしょうが、やはり
『板違い』ということには多少の引け目を感じます。
また、誰か新しい読者さんが見られた際に『板違いでは?』の指摘をかいくぐる
すべがありません。
色々と板を回っているのですが最適な板がなく、性描写などから雑談のスレのある
『ほのぼの板』も違う気がしますし、できればIDが出たほうがいいとも思うのです。
恐らくはオカ板住民の方でたまたま見て、『なんじゃこりゃ?』と思われた方もある
と思います。ただスレ自体の雰囲気が悪くはないので、邪魔するのも無粋で、
見逃して頂いている部分もある気がするのです。
どなたか、適した板を知っている方、いらっしゃいましたら御一報下さい。ただ、ない
というなら、やはりオカルト板が一番それらしいのかなぁという気もします。たとえば、
『ウミガメのスープ』スレッドなども板違いといえば板違いで成立しているスレッドです
から。
さてここらで怖い話でもするか。
鬼塚ケンシロウは十二畳の広いワンルームマンションで一人、
苦手なパソコンのキーボードを叩いていた。
つづく
未だwindows98を使っている。それだに満足に使いこなせていないのだった。
久しぶりにインターネットにつなぎ、彼は、検索サイトに『自殺』というキーワードを
入力していた。
両手の人差し指をゆっくり、丁寧に使って。
一時は無法地帯などと呼ばれ、様々な情報が飛び交っていたが、今となっては
それほど凄まじい情報に容易にたどりつくことはできず、彼は溜息を漏らしていた。
新聞には確かに、銃が密売されていた、法に触れる薬物が売買されていた、自殺者が
ネット上で集って集団自殺をしたという事件が掲載されてはいるが、実際にそういった
情報にたどりつくには、ある程度のタイミング、そして運が必要である。
彼は、一緒に死んでくれる仲間を探していた。
文部科学省の役人が学校に訪れている時に謎のテロ集団に襲撃されね校長室を占拠
された上に、生徒は皆避難したにも関わらず、自分だけは翌朝まで縛られ、校長室の
床に転がっていたのだ。
ただでさえ、不祥事を起こして、給料を差し止められている最中だというのに。
その上、異動願いは不受理となった。軽子沢中学に残れというのだ。
58歳。童貞。彼は絶望の淵で、死を選択した。
しかしこのまま孤独に死ぬのも嫌だった。
つづく
何時間経っただろうか。あるサイトに行き当たった。やはり自殺志願者を
募る掲示板だった。
今までも幾つかそういったサイトは見たが、既に廃れているのか、最後の
書き込みがもう一年も前のものだったり、色々と荒らされ、滅茶苦茶な
書き込みばかりが並んでいたりと、ろくなものがなかった。
ひどいものになると、自殺志願の若い女性に対しては、死ぬ前にやらせろだの、
簡単に死ねる薬を販売します。先払いでお願いしますなどと、振込先の口座番号
までもが載っていることもあった。恐らくそんなところに注文を出したところで金を
むしり取られるだけだろう。
またどうせ似たようなものだろうと掲示板に入ると、妙な表現だがなかなか盛況で、
一緒に死にましょうと仲間を募るもの、また止める者、さまざまな書き込みが毎日の
ようになされている。
その中でも、定年退職と同時に妻に逃げられ、生きる希望も収入も失い、死にたいと
いう、六十台の男の書き込みが気になった。
相手が少し年上だが同世代である。彼は自動車も所有しており、既に練炭など準備は
できているという。適当に気が済むまで、関東近県をドライブでもして、最期の想い出と
して、死にましょう、とあった。ただクルマの制限人数の関係で、募集は四名までの
先着順。連絡は直接メールで、とのことだった。
つづく
こんな時間に
* .※ ※ ※. *
* ※ ☆ ☆ ☆ ☆ ※ *
* ※ ☆ ※ ※ ☆ ※ *
* ※ ☆ ※ ※ ※ ☆ ※ *
* ※ ☆ ※ ※ ☆ ※ ※ ☆ ※ *
* ※ ☆ ※ ※ ☆ .☆ ※ ※ ☆ ※ *
* ※ ☆ ※ ※☆ ☆※ ※ ☆ ※ *
* ※キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━ !!!※ *
* ※ ☆ ※ ※☆ ☆※ ※ ☆ ※ *
* ※ ☆ ※ ※☆ .☆※ ※ ☆ ※ *
* ※ ☆ ※ ※ ☆ ※ ※ ☆ ※ *
* ※ ☆ ※ ※ ※ ☆ ※ *
* ※ ☆ ※ ※ ☆ ※ *
* ※ ☆ ☆ ☆ ☆ ※ *
* .※ ※ ※. *
ケンシロウはすぐにメールを送った。
やっと夜になった送られてきた返信には、待ち合わせの時間と場所が書かれていた。
もう彼が四人目、最後だという。
間に合ってよかったという気持ちと、これで最期か、意外と呆気ないものだなという気持ちは
あったが、不思議と恐怖はなかった。まるで歯医者の予約を取った、程度の感情しかない。
彼は自分の一生、自分の命について考えながら、いつの間にか眠っていた。
待ち合わせの時間までは余裕があったので、彼は学校に体調不良でしばらく休むという連絡を
いれ、遺書を記した。三千万円の貯金と、株券など合計で七千万程の資産がある。独身で、家も
クルマも趣味も持たず慎ましくやってきた結果だ。彼はこれを全て学校に寄付するつもりだった。
『…銅像の一つでも建ててくれれば嬉しいな…。でも自殺じゃそうもいかんかな…』
彼は駅へ向かった。
待ち合わせの時間。中途半端な時間である。午後三時。主催者のメールによれば、とにかく
ガソリンがなくなるまで、都内の夜景を見たり、どこか景色のいい港から日の出を見たり、
山か、寺院を回るなどして、明日の夜、ひっそりと静かな森の中で練炭による、一酸化中毒死を
しよう、ということだった。ケンシロウはそのプランも気に入っていた。
夜は六本木ヒルズか、レインボーブリッジ、御台場のフジテレビ社屋なども見ておきたいな。
朝やけは横浜か横須賀辺りで。明日の日中は鎌倉か、富士山がいい。彼はわがままながら
そんなことを考えながら電車に揺られる。
つづく
やがて待ち合わせの駅についた。いい時間だ。ある程度余裕があったので、
最期に何か記念に残るものを食べておこうと、モスバーガーに入った。
余りに慎ましいが、年柄、ファストフードには縁があまりなかった。子の一人
でもいれば口にしたのだろうが、一度食べておきたいとは思っていたのである。
注文の仕方もよく分からず、セルフサービスとはこういうものなのかと実感しながら
なんとか、想い出にハンバーガーを食べることができた。
シェイクなるものも飲んでみた。なるほどソフトクリームをもう幾らか柔らかく溶かして
ストローで飲むとは考えたものだと今更ながらケンシロウは感心するのである。
午後三時。待ち合わせの時間になったが、ついぞクルマは現れなかった。彼は都内に
しては寂しい駅前で、小一時間立ち尽くしていた。
主催者のメールアドレスを携帯電話に打ち込んでおくべきだったと思ったが、やり方も
よく分からず時既に遅く。彼は待ちぼうけをくう。
と、切符の発券機の前にたたずむ中年女性の姿が気になった。やはり辺りをきょろきょろと
気にしているようで、思い出せば自分がハンバーガーショップから駅に戻ってきた頃から
ずっとそこにいる覚えがある。
何となくきまぐれで、ケンシロウはその女性に声をかけた。中年とはいえ、自分よりずっと
若い。まだ四十がらみの、艶気を残す大人の女だった。
「あの、失礼ですが、インターネットで…?」
つづく
Σ(゚Д゚)ケンシロウ脱童貞?
頑張れ!
女は少し戸惑った様子だったが、うなずいた。しかしインターネットといっても
色々ある。ケンシロウは意を決して訊ねた。
「…あの、自殺の…」
少し恥ずかしそうにしながら女は、一言だけ
「はい」
と言った。ケンシロウは簡単な自己紹介をして、どうやらすっぽかされたらしい
ということを彼女に伝えた。彼女もそのようですね、と答えた。
バス停のベンチに座り、しばらく二人で話すうち、意気投合し、寒さもあって、もう
主催者のクルマは来るまいと、駅前の適当なレストランに入る。
女は夫を若くに亡くしていた。長男も病死し、次男もいるが、まともに家にも帰らず、
果たしてどこでどんな生活をしているのか、彼女も分からないと言う。
ケンシロウも身の内を明かす。独身で、女性と付き合ったこともなく、ずっと寂しいと。
そして女を励ました。亡くなったとは言え愛する人と一時でも共にいれたことは幸せな
ことだ。私はずっと一人。たった一人で生きてきた。
女はむしろ一人の方が気が楽だと言う。愛する相手がいなければいなでそれはそれで
いい。ただ一度愛してしまうとそれに捉われてどうしようもなくなる。そしてその愛の結晶
ともいえる、次男の姿を見る度に、愛する人の面影を見てしまう。
つづく
結局、二人はお互いが、それぞれどれだけ幸せか、言い合っていた。
あなたの方が幸せだ、いやきみの方がしあわせだ。
そんなことを話しているうちに馬鹿馬鹿しくなってきて、二人笑顔になり、
では私たちは幸せなのだね、という結論に至る。
二人は安物ではあるがワインで乾杯し、散々不幸話を言い合ううちに気が
すっかり楽になっていた。
「…あなたに会えたことは、死ぬことより価値があったかもしれない」
くさいと思いつつも、正直な気持ちであった。むしろ、自殺グループの主催者が
現れなかったことに、感謝さえしている自分がいる。
「…そうかもしれませんね」
「もう少し、生きてみませんか。お互い人生半分。あと半分で、どうせ死ねるんです」
女はそうですね、と上品に笑った。笑ったのは自分はともかく、ケンシロウは人生半分
というには少し行き過ぎていた気がしたからだ。
二人は酔った。その頃にはちょうどいい時間。大人の男と女の時間だった。
つづく
長野シュウイチは、今まで皆勤、一度も学校を休んだことがない校長が
休むと聞いて、なにやらただならぬものを感じ、尾行していた。
そして彼は見た。軽子沢中学校校長。五十八歳定年間際にして独身。
童貞の鬼塚ケンシロウが、まだ四十台の女とホテルに入っていくのを。
驚くべきことだった。余りにショッキングで記事にできない。
新聞委員会への報告もためらわれた。
何故ならば。
ケンシロウとホテルに入っていった女が、新聞委員会委員長、編集長、
的場リュウジの母親だったからだ。
終
途中(
>>533)で気付いた奴がいたら尊敬する。(笑)
このオチすごすぎwwww
>>537 こんな時間だから寝てる人も多いでしょ。明日(ってか正確には今日だけど…)
驚けって感じで(笑)
>>538 合いの手サンクス!特に
>>529はすごい綺麗だった。初めて見たわ。愛してる。
とりあえずもうオカルトはあんまり気にしないことにしたから(笑) あと、雑談スレ
見てもらえば分かると思うけど、自分的には文章を書く仕事が将来的にしたいし、
もういい歳なんで、色々と懸賞出したりするのに文章書いてて、そっちの都合も
あるんで、多分毎日投下はしないから期待しないでね。
本当はこっちで投下した作品を、懸賞に出せればいいんだけど、著作権の
問題とというか、ほぼ全ての懸賞が『未発表の作品に限る』って条件出して
るんで無理なのよね。
そんなんで。前作みたいな勢いはないと思うけど。その分『質』を高めたいと
思っております。よろしくね。
>>作者さん
途中参加ですが、100話まで読ませて頂き、新しいシリーズも楽しんでいます。
プロでの活躍、充分可能かと思います。
アドバイスさせてもらえば、懸賞よりも持込をされてみてはいかがですか?
かなり即戦力的な印象を受けます。恐らく、ただちに連載を請け負っても可能
な能力が既に備わっていると思います。特に雑談の方での独白調文体は興味深く、
江戸川乱歩のようなモダンな雰囲気と、ブルースの歌詞のような文章構成に芸術
的なセンスを見ます。また軽快な文章のもつリズムと、簡素な単語で情景を表現
するテクニック、しつこさがない魅力的な人物描写には驚かされます。
応援しています。がんばってください
今読んでビックリ!!
なんと、リュウジのお母ちゃんだったとは!!
そういやぁ、あのすごいリュウイチ、一応病死だったな・・・。
次男がどこにいるか分からないって・・、中学生なのにww
ケンシロウとリュウジのお母ちゃんが再婚だなんてなったら
どうしようwww
何はともあれケンシロウ童貞卒業かな??おめでとう!
そして作者さんも引き続き頑張って下さいね!
>>540 …なんか分析されると照れるな…そこまで読み取ってくださるなら弱点も
教えてくれると嬉しいです。優しくね。じゃないと泣いちゃうから…。
>>541 はーい。頑張るね^^ ありがとう。
>>542 そんな板あったんだ…今見てきたけど色んな意味ですごいな…。俺の書いたの
なんかクソミソ言われそうだ…。こわいこわい…。
>>542 そんな板あるの?探せなかった・・。
ところで、探す途中でなんか色々見たけど出版ってなんか難しそうだね。
やっぱり作者さんには懸賞に応募して頑張ってもらいたいね。
変な甘い罠には気を付けて・・・。
ここでの偉業も評価されてほしいけどなぁ。
>>544 『2ちゃんねる 創作文芸板』で検索したら出るよ。普通のブラウザで
ちょっと見た程度だけど。
出版は大変だよぉ。本になるんだもん。自分の書いたことが。ましてや
それでゴハン食べていこうなんて…。
でももう俺には他の選択肢がなかったりする(笑)不器用だし体力もないし…。
まあやるだけやって駄目なら飢え死にだ。
>>545 できる限りいろ〜んな事やってみなよ!
本で読んだり頭の中で考えたことだけじゃなくて色々体験してみるのはプラスになると思うよ。
筒井康隆も若い頃は劇団で役者とかやってたみたいだし。
まだまだ30歳だもの。全然遅いなんてこと無いよ。
普通に会社員で考えたら、俺らが今まで生きてきた長さと同じ分だけまだ働かなきゃいけないんだぜ。
オレは三十路を迎えたときに、それを考えて軽く憂鬱になったけどなw
色々経験して、色々考えて、面白い作品が本屋に並ぶの楽しみにしてるよ!!
>>547 ありがとうございます。頑張ります。もし書店に並ぶようになったら
お知らせしますので、買ってくれとはいいません、私の本をせめて
目立つ場所にこっそり移動させておいて下さい(笑)
だめだ。精神面は大丈夫だけど単にネタがない…。今日は休むです。
待っててくれた人、本当にごめん…。
明日楽しみにしてるよ(。・ω・)ノ゙
>>549 精神的に大丈夫なら大丈夫だっ!!
のんびり休め〜ノシ
552 :
544:2006/10/17(火) 15:22:02 ID:17vFTbd40
>>546 遅くなったけどありがd
うむむ・・、確かに色々な意味ですごい板だ。
他でも見たけど共同出版とかって甘い罠らしいね、なんか複雑だ。
自費とかで出すよりかはやっぱり懸賞に応募して受賞する方が
いいんだろうね。
作者さん頑張ってよ〜^^
えー今回書こうとしている話、複雑です。本当は下書きがしたいぐらいなんですが、
時間の都合でぶっつけでいきます。途中で破綻したら謝る。上手く書けたら褒めて
くれ…。本当なんで2ちゃんねるって削除キーないんだろう…。
さてここらで怖い話でも書くか…。
軽子沢中学校、東棟二階。東棟に入ってすぐの所に図書室がある。
今日は文学部が活動していた。
つづく
一番乗りや!
部であるからには十名以上の部員がいるわけなのだが、限りなく帰宅部に
近い、といわれる文学部、まともに活動しているのは数名である。
特に今日は定例の『読み会』があるというのに、たったの四名しか参加者が
いなかった。いやむしろ『読み会』を嫌ってみんな出てこないのだ。
『読み会』というのは、年に二度ほど行われる文学部の定例行事で、誰も
一度も読んだことのない本を探し、全員で一斉に読み、読み終わったら
その作品について、あそこがよかったとか、登場人物の心理がどうだとか、
色々と意見を交わすのである。
ただ、この図書室にある本で、同じ本が何冊も存在することはないので、
『読み会』で読まれる本は、全員で書店に出向き、自費で購入することに
なっていた。
そのわずかな経済的負担。更に作品が仮につまらなくても最期まで読破
しなければならない面倒、その上、作品について議論しなければならない
手間などから、『読み会』を嫌う者も多いのである。
しかし普段は適当に集まっては図書館にある本を漁り、好きな本を勝手に
読んで、適当な時間になったら帰る、という極めて個人的な活動が主な為、
せっかく部としてみんなが集まっているのだからと、『読み会』は文学部
唯一の共同作業として重要視されてもいた。
もっとも、そういった共同作業がわずらわしくて、この部に入ったものが大半で
あるから、嫌われても仕方のない趣向でもあった。
つづく
ともあれ部長である宇都宮ケンジを筆頭に、斉藤アンナ、宮崎ユリ、高知ヒデトは
バスに揺られて、ブックオフに向かった。
この巨大古書店ブックオフができてからというもの、『読み会』で読む本は、この店の
百円の文庫コーナーで探すことが常となっていた。
色々と探し、ちょうど人数分、四冊が売られていた『いのちみじかし…』という恋愛小説を
用いることになった。
一応ぱらぱらとめくってみると、変わった本で、主人公の女性マイコの日記、という
形式になっている。彼女が体験した、たった一ヶ月の短い恋が綴られていた。
主な登場人物は書き手であるマイコを含めて四名。女二人に男二人という構成である。
購入し、帰りのバスを待つ間、宮崎ユリが変わった提案をした。
「ねー、この小説さ、日記になってるでしょ?それぞれ役になりきって毎日過ごしてみない?
一日ずつ」
「えー!全部やるのに一ヶ月かかるんだぜ?面倒くせー」
「面白そうじゃん。やってみようよ。どうなるのかな?」
「絶対先に後読むのは反則だからね!」
つづく
結局、女子に巻き込まれる形で、配役が決定してしまった。物語の書き手で
あり主人公のマイコは斉藤アンナ。その親友ユキは宮崎ユリ。二人と同じ
部活に所属しているケンジは名前が同じという理由で宇都宮ケンジが、残る
マサシは高知ヒデトが演じることになった。
四人の共通点が、『同じ部活に入っている』という点でも作中の四名と、アンナ達は
共通していた。
ルールは簡単である。毎朝、『いのちみじかし…』その日の分を読んで、大体その通りに
行動するのだ。あくまで大体でいい。細かい点では不可能なことも多かったし、何より
『いのちみじかし…』は一夏の物語なのだ。季節からいえば正反対。
だから例えば海水浴に行くシーンがあるとすれば、駅前のファストフード店か何かで
お茶を濁せばそれでよかった。更に他人の介在が必要な場合は無視するか、それに
よって大きくストーリーが変化するようであれば、中止にするか、あくまで、そういった
人物がいて、そういうことをしましたよ、という仮定の元で動くことにした。所詮お遊び、
その辺りは臨機応変というか、適当である。
日記形式とはいえ、一応小説であるからはじめの数日間は何も起こらず、人物紹介の
ようなものに費やされる。それほど特殊な小説ではなく、純文学的なもので、人物にも
これといって目立った特徴はない。ごく普通の中学生四人だった。
その辺りは演じても面倒なので、読むだけ読んで、演じることについては飛ばすことに
した。『いのちみじかし…』などという多少物騒な、何か恐怖を煽るタイトルがついては
いるが、その後に続く言葉はどうせ『恋せよ乙女』であり、まあ純愛小説の類なのだろうと
文学部員たちには察しがついた。ただその恋の行方がどうなるのか、演じる方としては
鼓動の高まる思いである。
つづく
物語は五日目から動き出す。四人で、電車に揺られ、信州の
高原へ遊びに行くのだ。
ただそんなことは夏休みでもない限りできないので、とりあえず
図書室を『信州の高原』とした。
そこで、主人公マイコはケンジに恋心を抱くのだ。夏とは言え涼しすぎる
高原で、ケンジは上着をそっとマイコにかけてやるのである。
図書室でべらべらと適当に談笑していると、適当にタイミングを見計らって
さりげなく宇都宮ケンジは斉藤アンナの肩に上着をかけてやった。
当然残る二人もそこで、マイコ(アンナ)が、ケンジ(ケンジ)に恋の炎を
燃やすことは読んで知っているから、何か冷やかすような視線でその行動を
見ている。しかし物語の中ではそれはひっそりと行われ、二人は何も気づか
ないことになっているので、何も言わない。
そんな何気ない日が続いて、マイコ(アンナ)は次第にケンジ(ケンジ)の優しさに
心を奪われてゆく。
そしてある晩、電話で告白するのである。
演技と分かっていてもさすがにアンナは緊張した。また待つ方のケンジも緊張
していた。いつかかってくるかとまんじりともせず待っている。
母親が『ゴハンよ』と呼びに来ても、鬱陶しがって、声を荒げて追い返す程だ。
つづく
電話が鳴る。内容は分かっている。告白だ。そしてそれを自分は受ける。
ただの芝居がなぜこうも緊張するのか。彼はしばらく着信メロディを聞いて、
やっと通話ボタンを押した。
「もしもし…」
「あ。ケンジ?あたし。アンナ…」
本来は、名前も作中の人物にならって、という話だったが、学校生活を営む
上で色々と不都合があり、名前だけは本名を使うことになっていた。
とりとめもない話が続いて、そろそろ通話料金が気になりだした頃、アンナは
言った。
「それで…その、好きっていうか。なっちゃって…。あの、よかったら…つきあって
くんないかな…?」
「あぁ…うん。いいよ…」
「…ありがと…それだけ、なんだけど…」
「…うん。わかった。ありがとう」
「それじゃ。明日、学校で…」
「うん。ばいばい」
つづく
いきなり
∧∧
┃ ┏━┃ (,,゚∀゚) ┃┃
━┏┛ ┏━┃ ━━/ つ━━┛ .┃┃
━┏┛ ┛ ┃ 〜( ,ノつ ┛┛
┛ ┛ (/ .┛┛
何か中途半端な、気持ちだった。緊張は本物だがあくまで芝居、
全て約束事の中で動いている。本当に斉藤アンナが自分に告白してきた
わけではない。
ただそれが、寂しいような、嬉しいような、何やら複雑な心境に至るのだ。
翌日、アンナはケンジへの告白に成功したことをユキに告げる。以前から、
ケンジのことが好きだということはユキに相談していた。告白してみろと
アドバイスしたのもユキである。
ユキはアンナを祝福する。
ところが、その何日か後、ユキもマサシに突然の告白をするのである。
『いのちみじかし…』はあくまでアンナの日記、という形で進行しているので、
ユキの心中までは書かれていない。とにかく自分のこと以外は事実が淡々と
述べられ、書いてあったも、それは相手が直接吐露してことであったり、
アンナの想像であったりした。
いずれにせよ、結果として、マイコ(アンナ)とケンジ(ケンジ)、ユキ(ユリ)と
マサシ(ヒデト)という二組のカップルが成立した。三人ならばともかく、男女二名
ずつだからバランスがよい。とりあえずどろどろとした三角関係などには発展
しなそうではある。
つづく
ところが、ユキ(ユリ)は、無闇に自分とマサシ(ヒデト)がいかに仲が良いかと
いうところを、マイコ(アンナ)に見せ付け始めるのだ。
そのことに対し、マイコは日記で激しい嫉妬を覚えた、と記している。
マイコがマサシを好きなわけではない。単にユキとマサシの関係そのものに
嫉妬を感じたのだ。
ケンジは比較的照れ屋で、余り人前でべたべたとするタイプではない。しかし、
ユキとマサシは一目もはばからずにいちゃつくのである。
更に駄目押しをするが如く、ユキ(ユリ)はマイコ(アンナ)に日頃、自分たちが
どれだけ仲がよいか、マサシ(ヒデト)がどれだけ自分によくしてくれるかを
自慢し始める。
「どっちが先にキスするか競争しようか?」
ユキ(ユリ)の冗談めかした提案に、マイコ(アンナ)は乗るが、『いのちみじかし…』の
中では、その勝負、マイコの完全敗北という形になっていた。
提案のあったその日のうちに、早速ユキはマサシと唇を重ねるのである。無論、実際、
ユキ役のユリと、マサシ役のヒデトはキスをした。もう相手が本当は好きなのか、演技
なのか区別ができなくなってきていた。
つづく
更に『いのちみじかし…』ではユキが暴走し始め、マサシと肉体関係すら
持ってしまう展開になる。
毎日その日のうちに起こる出来事を朝、『いのちみじかし…』を読んで確認
することになっているのだが、アンナは禁を犯し、翌日分の日記を読んで
しまったのだ。
明日のことだ。明日、ユキ(ユリ)とマサシ(ヒデト)は身体を結ぶ。
焦ったアンナは何を思ったか、その前日、即ち今日、ケンジと誰もいない図書室で
身を重ねた。薄暗い図書室のかび臭さの中で、ひんやりとした巨大な木製の机に
裸体を横たえ、ケンジを誘ったのだ。
そこまできて、本と違うからだめだと、ケンジは言えなかった。その後の展開は
分からない
。本のままにいけば自分とアンナ、ケンジとマイコは何の関係も持たずに
終わって
しまうかもしれないのだ。
処女と童貞は、不器用にその腰を振って、小さき喘いで、果てることはなかったが、
それでも行為を終わらせた。
つづく
翌日、即ち、『いのちみじかし…』ではユキ(ユリ)とマサシ(ヒデト)が
関係を持つ日、四人は部活で集まることになっていた。
そこで、既に今夜肉体関係を結ぶことを決意していたユキは、うぶな
マイコを見下した目で見るのだ。
しかしそこでシナリオが変わった。
「あたしね、昨日ケンジとしたの…」
書架の間、ユリの耳元でアンナは言った。
「ちょっと何それ!違うじゃん!」
「だって、先越されるのやだったんだもん」
「…先に読んだの?」
アンナはにやりと笑った。手こそ出さないもののひどい喧嘩となり、ケンジとヒデトが
必死で止めた。
「そうそんなんなるんだったらやめようぜ!何かおかしいよ!」
「俺ももうやめたい。なんか自分が自分じゃないみたいな、気持ち悪くなる」
しかし、ユリとアンナは芝居の続行を主張した。アンナがユリに謝罪し、もうルール
違反はしないと約束したのだ。
つづく
そしてその晩、原作通り、ユキ(ユリ)とマサシ(ヒデト)はセックスに
挑むのである。中止を要求したヒデトであったが、欲求には勝てず、
そのまま原作のなるに任せたのだ。
原作では、マイコ(アンナ)はケンジ(ケンジ)と関係を持っていない。
そしてユキ(ユリ)に先を越されたと知ったマイコ(アンナ)は、その関係へ
嫉妬して、好きでもないユキ(ユリ)の彼、マサシ(ヒデト)を誘惑し、奪わんと
するのだ。
結局誘惑されたマサシ(ヒデト)はその欲情を抑えることができず、マイコ(アンナ)
襲い、関係を持ってしまう。
ヒデトは閉ざされた美術室の清掃で一人残っていたアンナを襲い、つい先日
ユリを貫いたイチモツで、アンナを後ろから乱暴に犯した。
抵抗を見せはするものの、全てはマイコ(アンナ)の思惑通りである。
そしてその晩、マイコ(アンナ)は泣きながら、ユキ(ユリ)に電話をする。
「…どうしたの?アンナ、泣いてるの?」
「…乱暴されて…あたし…もう…」
「ちょっとしっかりしてよ!誰にやられたの?」
「…言えない…言えないよ…」
つづく
しかし最終的にマイコ(アンナ)は、ユキ(ユリ)の彼であるマサシ(ヒデト)に
犯されたことを告げるのである。
これにより、ユキ(ユリ)とマサシ(ヒデト)の関係は終わる。
「ヒデト、アンナから聞いた…」
「え?」
「やったんでしょ?アンナと」
「あれはあの女が…」
「とにかくあたしもう駄目だから。さよなら」
「…おい…!」
マサシ(ヒデト)にしてみれば誘惑に乗っただけに過ぎない。乗った自分も悪いが、
誘ってきたマイコ(アンナ)にだって罪はある。どういうつもりなんだ。
彼はマイコ(アンナ)に迫るが、彼女は全くそ知らぬふりで、被害者を装うばかり。
ケンジ(ケンジ)にもそのことが耳に入ったが、彼は悩んだ末に、ケンジ(ケンジ)を選択し、
彼を信じて、理由はどうあれ彼を陥れた悪女、マイコ(アンナ)をふって、マサシ(ヒデト)
との友情を約束した。
つづく
それでそれで??
なんだか暗雲めいた感じになってきたぞww
「俺はヒデトを信じるよ」
「ケンジ…」
「アンナとはもう別れてきた」
「いいのか?」
「いいよ。俺に必要なのは信頼できる人間だ」
『いのちみじかし…』ではその後、マイコと、ユリもそれぞれの競争意識の悪を
反省し、彼女らなりの友情を確かめ合うところで終わる。
マイコ(アンナ)とユキ(ユリ)は偶然川原で出会うのだ。そう書かれているが、演じる
以上偶然はなく、二人は『いのちみじかし…』に書かれた大体の時間を予測して川原に
向かった。黄昏時である。静かな川原で二人は出会う。
アンナそろそろかな、と頃合を見計らって、家を出た。
ポケットにカッターナイフを忍ばせて。
終
キテター
オワッテターww
しかし、恐ろしい。子供は現実と擬似世界の区別がつかんからなぁ
おぉ…なんかゾクっとした…((((;゚Д゚))))
合いの手&感想ありがとうです。
ちょっと時間の都合で最後、急ぎ足になった…。
そもそも一ヶ月この遊びやってるはずだけど一ヶ月に思えねぇww
「俺はヒデトを信じるよ」
「ケンジ…」
「アンナとはもう別れてきた」
「いいのか?」
「アッー!!」
・・・な展開かとオモタ。
>>574 もう新聞委員会だけで充分です…(笑)
そこはあくまで『いのちみじかし…』の台詞そのまんまってことに
なってるから。ってかそこまで引っ張っといてオチがそれなら
俺多分天才だよ(笑)
ほしゅ
さてここらで怖い話でもするか。
強姦という卑劣極まる犯罪がある。時代や地域による道徳観、倫理観の変化で、
この性質はは可変的ともいえるが。
つづく
しかし、強姦され、精神的に大きくな傷を受け、自殺してしまうケースも
あり、その行為は殺人的と言っても過言ではないだろう。
しかし一方で、古い日本の村社会などでは『夜這い』などと呼ばれる
強姦に限りなく近い行為が一種の文化的行為、当然の男女のあり方として、
存在していたことも厳然たる事実だ。
強姦の被害者の性別は特に区別されるわけではないが、どうしてもその
肉体的、体力的な差異から、男性が、女性を犯す、というケースが圧倒的
だろう。
しかしながら、その犯された女性、直接の被害者の精神的苦痛もさることながら、
それをとりまく、間接的被害者の精神的苦痛もまた計り知れない。
妻を犯された夫、彼女を犯された男、姉を犯された弟、妹と犯された兄。そして、
娘を犯された親。
いずれの苦しみ、犯人に対する怒りも察して余りあるものであろう。
ここに一人の男がいた。彼が帰宅すると、妙なことに気付いた。
玄関に見知らぬ、履き古された、男物の革靴があったのだ。
誰か客だろうかと居間に向かったがそこからは、客と談笑する母の声ではなく、
苦しげに喘ぎ、男に抵抗の意思を示す言葉を繰り返す母の声が聞こえた。
つづく
男の荒立った声も聞こえる。今まさに、扉一枚向こうで母親が犯されつつ
あるのだ。
彼は足音を殺し、自らの部屋に向かうと、何やら巨大なケースを持って、
また、外へ出て行った。そして、十五キロ近くあるそのケースを持ち、
一キロ走り続け、ある高層マンションのの最上階へ昇った。
天井を見上げると、屋上に出られる保守点検用のハッチかある。運の
いいことに施錠されていない。彼はそこから難なく屋上へ出た。
ケースをあける。そこには黒光りする異様な物体が数々入っている。
彼は手馴れた手付きでそれらを組み立てた。
つづく
それは。全長一二六センチ。重さ十二.五キロの化け物だった。
12.7ミリ口径の大口径狙撃銃。
ゾブロジェブカベスティン・ファルコン・スナイパーライフルである。
チェコで作られたその狙撃銃はメーカー発表によれば二千メートル狙撃が
可能。
ちなみにいえば、12.7ミリ口径以上の狙撃銃はアンチマテリアルライフルと
呼ばれ、その凄まじい威力から、直接対人兵器として、人間を撃つ事は国際
条約で違反とされている。
主に、装甲車、ヘリコプター、その他各施設を狙撃することに用いられる。
しかしながら、戦場においては、その威力と射手の腕次第では、千メートル先の
五百円玉を打ち抜く精密さから、未だ対人兵器として活用されてもいる。
違反ではあるがいくらでも言い訳はできる。背後の戦車を狙ったつもりだった、
装備していた無線機を狙ったつもりだった、エトセトラエトセトラ…。
無論直撃を受けた人体の破損は凄まじい。まず着弾した箇所を中心に真っ二つだ。
当然こんなものを日本で個人所有しているのは軽子沢中学新聞委員会編集長、
的場リュウジである。
つづく
母親を犯す、憎き強姦魔を一撃で吹き飛ばすのだ。
しかし一刻を争う事態になぜ彼は、居間に突入し、すぐに母親を
救わなかったのか。
理由は簡単だ。
『狙撃したかったから』それだけである。
しかしなぜアンチマテリアルライフルを使用する必要があったのか。
理由は簡単だ。
彼の家の窓は全て、防弾ガラスを二枚重ねたものになっている。通常の
狙撃銃では歯がたたない。一見普通の築二十年は重ねた、ごく普通の
家屋に見えて、その堅牢性、耐久性はさながら要塞である。壁にも防弾、
防炎、防爆素材を用い、更に厚さ十センチの鉛が仕込まれている。
よって彼の家は見た目は普通だが中は思った以上に狭い。壁が厚過ぎる
のだ。
彼は我が家の居間に狙いを定めた。
しかしその時彼は驚くべき事実に気付いたのである。
つづく
キテター!
『狙撃したかったから』
バロスwwwwwwwwwwwwww
誰が狙撃されるんだろ。
wktk
『…カ…カーテン…!!』
居間のカーテンが閉まっていた。もうどうしようもない。下手に撃てば
母親に当たる。
彼は静かにファルコン・スナイパーライフルをばらし、部品を箱に収めた。
残るは突入作戦だが、彼は突入作戦に飽きていた。
『どうせまた閃光音響手榴弾が煙幕弾か…あーあ。つまんないなー』
上の台詞に驚かれた読者も多いだろう。『あーあ。つまんないなー』
しかしこれは心の声である。彼もまだ十四歳。どこかに幼さは残っている
のだ。
しかし主眼は既に遠距離狙撃におかれ、母親がレイプされていることが
もう半分どうでもよくなっていることがお分かり頂けるだろう。
さすがというべきか、死地をかいくぐってきた男の余裕である。単にずれて
いるといってもいい。
つづく
しょんぼりと家に帰ると、居間から母親の喘ぎが聞こえていた。
もうレイプとは呼べない。普通に気持ち良さそうにしている。
四十とはいえ女の盛り。
更にリュウジはつまらない気分になった。これでは突入すること自体が
悪いことではないか。さっきまでいやがってたくせに。
相手は誰だ。
やっと出た。普通最初に疑問に思うべきことである。相手は誰か。それを
全く無視して狙撃、突入などと考える的場リュウジ。お前は正しいのか。
何もかも面倒になって普通に帰宅したふりを装い、玄関から、大声で
「ただいまー!」
と叫んだ。『ただいま』が似合わない男である。ここはやはり『今、帰ったぜ』と
言って欲しいところだが、もうどうでもよくなって、単なる中学生になりつつある。
渋い、ハードボイルド、とされる人物も多少自分で演じている部分が少なからず
ある。案外そういう人物の部屋を訪れると、モノトーンな家具に混じって、恥ずか
しそうに『消臭力』が置かれていたりするものだ。
彼らも普通の人間である。ふと、本棚をみれば、『こち亀』の一冊や二冊は発見
できる。作者自身がそうなので分かる。
つづく
リュウジ、気持ちは分かる
オレも狙撃ってのはやってみたい…
居間から母親の声がして、もう明らかに異常な騒ぎである。
ベルトのバックルがかちゃかちゃいう音が何の恥ずかしげもなく
聞こえてくる。
「はーい。おかえりー。部屋におやつがあるわよー」
部屋におやつ。普段外にいて、家に帰ってくる日など月に四日も
あるかないかなのに、部屋におやつ。
何時に帰ってくるかさえ分からないのに、部屋におやつ。
通常は台所か、食卓にあるばすのものだろうに、部屋におやつ。
あるわけがない。大体おやつを食べる習慣自体、的場家にはない。
もしもレイプだとして、母が本当に危機的状況にいれば、これ幸いと
助けを求めるだろう。それを彼女はむしろ遠ざけようとした。
とすれば彼氏の一人でもできたか。
リュウジは一人、狙撃銃の収められたケースを持って二階へあがった。
部屋。警察無線や消防無線を受信する機械、重火器も含めた銃器、弾薬、
爆発物、世界中の武装組織、テロ組織に関するデータ、新聞の切り抜き、
日本で最も危険な六畳間である。
的場リュウジは考える。
つづく
母親に彼氏ができた。結婚する可能性も大きいだろう。
だとすれば、その彼氏は自分の新しい父親になる。
理解してもらえるだろうか。
いや、絶対に無理だ。むしろ理解してくれるとすれば、母の
再婚相手は超一級の危険人物だ。
確かに自分のやりたいことは、ジャーナリストとしての取材で
あるから兵器は正直必要ない。
全部売れば数千万にはなる。売る相手を考えれば一億近くで
売れるだろう。特にたまたま戦場に落ちていた未使用のスティンガー
ミサイルはかなりの額で捌けるはずだ。
しかしスティンガー。一度撃ってみたかった。やっとの思いで国内に
持ち込んだのに。
しばらく考えたが使い道がない、。なさ過ぎる。地対空ミサイル。空を
飛ぶものに使うわけだが何に使えばいいだろう。
つづく
『えーんえーん』
『どうした!?』
『お兄ちゃん、私の風船が…』
『よし。任せろ。スティンガーがある』
『ドガーン』
意味がなさすぎる。単なる極悪人だ。それに赤外線追尾式なので、
風船には当たらない。何か熱いものでなければ。
『えーんえーん』
『どうした!?』
『AH−64アパッチヘリコプターがいじめるよー』
『よし。任せろ。スティンガーがある』
『ドガーン』
文句はないが一生に一度あるかないかの出来事で、多分ある確率の方が
圧倒的に低い。
『…やはり売るか…』
つづく
絶対ねーよwwwwwwww
部屋のドアがノックされた。
「誰か!?」
「あたし。お母さん」
「入室を許可する!」
「あんたいい加減にそれ、やめてくれない?」
「…」
「ちょっと下に降りてきて欲しいんだけど。紹介したい人がいるの」
やはり来る時が来たか。
リュウジは多少緊張していた。やはり母親に恥はかかせられない。
彼は迷彩ズボンは相手に威圧感を与えるだろうと判断し、唯一持って
いるジーンズのパンツに着替えた。彼なりの中学生らしい恰好をして、
居間へ向かう。
階段の途中、母の背に訊ねた。
「再婚するの?」
つづく
誰か!?
ってお前は旧日本兵かよw
母は一瞬足を止めて、振り返ると、少し切ない顔をして、
「ごめんね」
と言った。
…まさかよりによって…。相手は恐らくテロ組織のボスだ。そうか。母親
ではなく、俺の武器が目当てなんだな!母は脅されている!だから
そんな切ない目で俺に…。許せん!許せんぞ!
リュウジはわっときびすを返して上に登った。下から母の呼ぶ声がする。
安心しろ。母さん!俺が守る!俺が母さんをそして日本を守る!俺の武器を
クーデターなんぞに使わせてなるものか!
カールグスタフ84ミリ無反動砲。通称『ハチヨン』 自衛隊から先日奪った
ばかりの小型大砲といってもいい兵器だ。
先日の『軽子沢警備隊』での活動の際、一撃で人体を粉微塵にする兵器の
必要性を考え強奪した。
こいつがあれば、どんなタフな奴でも木っ端微塵。
細胞単位で破壊してやる。血は全て蒸発し、あとに痕跡も残さない。
あるのは爆音と爆風!それだけだ!
つづく
594 :
本当にあった怖い名無し:2006/10/20(金) 00:26:19 ID:saWDR5900
終 了
心配してドアの前で待っていると息子が何やら全長一メートルほどの
筒を持って出てきた。
「母さん安心しろ。そいつは俺が、仕留める!」
「仕留めるってあなた!」
さっきまでは正義感であったが、今は無反動砲ほ撃ちたい一心である。
もう誰にも止められない。
居間のドアを開ける。緊張した空気が流れていた。
「貴様か!」
「ひ…ひぃぃぃ!バズーカ!!」
「バズーカと一緒にするな!見た目は似ているが弾の出足が違うんだ…」
確かに無反動砲、一見すると、いわゆる『バズーカ砲』に見えるのだが、
そもそもバズーカ砲というのは、第二次大戦時に米兵らによってつけられた
あくまでM1ロケットランチャーのニックネームで、と、そんな話はどうでもいい。
狙いを定めたその顔は、見覚えがあった。あり過ぎた。
「…校長…」
「…すまん…的場君…」
終
あああああー!校長がー!!
ついにこの日が来たのか。どうするリュウジ!?
相変わらずリュウジ面白いw
途中の合いの手がまた絶妙で余計に笑えたwww
乙です!
母さんに「入室を許可する!」って
リュウジぃぃww
あああぁぁぁぁ〜www
ついにこの日が・・、しかしなんちゅう対面の場だww
さすがリュウジ、母の紹介相手が何故テロ組織のボスになるんだw
リュウジ最高!!
さてここらで怖い話でもするか。
美しかった頃の肌のつやはなく、わずか十四歳にして彼女はもう落ちぶれた、
疲れた表情を見せていた。
つづく
以前は歩く度、颯爽とたなびいていた整えられたきれいな髪も、単に
後ろでくくってゴムで止めているだけ。
顔かたちがそう変わるわけだはないが、彼女は明らかにその精彩さを
欠いていた。
ほんの何ヶ月かで彼女は大きく変わってしまっている。
現存しない、元テニス部部長、須藤アリサ。
(第五十七話 『陰の宴』、第八十一話 『衆合地獄』 参照)
遊び呆けた挙句の『止め抑え』により、その性的快感を奪われ、更に
それでも彼女は身体を武器に男を漁り、金を引き出し、それでも
満ち足りず、同級生たちを売った。
全ては新聞委員会にキャッチされ報道もされたが、彼女の名が出る
ことはなかった。
しかし彼女はいつの頃からか性病に感染していたらしく体調不良から入院。
すぐに退院できたものの、しばらく不登校の状態が続いていた。
そして、つい先日、久しぶりに登校するも、周囲の反応は冷たいものだった。
つづく
級友を言葉巧みに大学生との合コンに誘い、泥酔させた上、大学生に
事実上その級友を『売り渡していた』ことが、どこからかばれたらしいのだ。
そのことを彼女はとっくに知っていた。
性病で療養中にも、非難、中傷のメールが続々と携帯に送りつけられて
きたのだ。彼女は携帯電話を解約し、新しい物に買い換えた。
そろそろほとぼりもさめている頃かと出ては来たが、状況は全く変わって
いなかった。無視、聞こえよがしの陰口、悪質な悪戯。
時として子供の豊かな想像力や、実行性が悪い方へと傾くと、それは大人の
それを遥かに上回り、想像を絶するものになる。
授業中背後から丸めた髪が頭越しに飛んできて、机の上にぽとりと落ちた。
彼女は振り向かない。振り向けばそこには好奇と悪意に満ちた眼差しがある
ことを知っているからだ。かさかさと紙を広げると、
『性病で死ね!』
と書かれていた。しかも同じ文章が寄せ書きのように、様々な筆跡で多数
書かれている。教室中を巡り巡って、怨みつらみを重ねた上で彼女の元へ
届くのだ。それはもはや、呪術と言えた。
つづく
怒りもあったが、個人の怒りも集団呪術の前ではなすすべもなく、
怒る気力すら失い、同時に生気も奪われつつあった。
同じ、元テニス部部員の元へ向かうが、彼女達は彼女達なりに
何とかやっているらしく、それでも元は悪名高き女子テニス部で
ある。
男子はともかく女子の友人を手に入れるまでは相当な苦労があった
ようで、その新しい友人達を失いたくないが為、彼女達ですら、元部長
アリサを避けた。
いっそ身なりを今一度整えて、男子に取り入ろうかとも思ったが、男子は
男子で、彼女の美しさに惹かれないわけでもないだろうが、何より性病の
リスクは冒したくはない。
すっかり治癒したはずなのだが、彼らの中では不治の病というふうに
思い込まれているのだ。
確かに悪事に手を染めたことは事実だが、それ以上の事実無根の噂も多く
流れているらしい。
疲れ果て、何とか今日も一日堪えて、自宅に戻り、ろくにシャワーも浴びず、
食事にも手をつけずにベッドに入る。両親も彼女に対しては冷たかった。
彼女が幼い頃から世間体を気にする親だった。
しかし、その世間体を余りに気にする姿勢、周囲にとりあえずよく見せるだけの
しつけが、今の彼女を創ったといってもいい。男、特に年上男性への取り入り方、
分かりやすい言葉でいえば、彼女の『可愛い子ぶりっこ』は当時の育て方に由来
する。
つづく
やっと安らいで、柔らかなベッドだけが唯一の味方、そこだけが
自分の居場所なんだと彼女は思う。
頭まで潜り込んで、それは胎内回帰といってもいいかもしれない。
彼女は畳一枚分の子宮の中でその暖かさに感謝した。
と、携帯が鳴った。まだ親にしか教えていないはずだが、メール
らしい。
『死ね』
学校の誰かからなのだろうが、相手はインターネット上のフリーメールを
使っていた。体育の授業で着替えた時か、とにかく隙を見てメールアドレスを
盗み見られたらしい。
彼女は携帯電話の電源を落とした。その呪術はついに彼女の唯一の居場所。
子宮たるベッドさえも侵食し始めた。
翌朝、今一度携帯電話を立ち上げ、メールを確認してみると、夜の間に五十通の
メールが入っていた。いずれも嫌がらせのメールだ。複数のアドレスから送られて
きている。夜通し誰かが一人でやったわけではなく、何人か何十人か、持ち回りで
行ったのだろう。
つづく
一晩休んで回復した体力が一気に奪われた気がした。
親に休みたいと申し出たが、行けという。
授業中でも手紙が回ってきたり、前から回ってきたプリントを
後ろの者に渡そうとすると、
「すいません。先生、プリントが汚いので、新しいのと変えて下さい」
などと言われる。無論、『汚れている』というのは、身体の穢れたアリサが
触ったから、ということだ。
教師も薄々感じてはいるようだったが特に何をいうでもなかった。
ただクラス中の押し殺した嘲笑があった。
休み時間もただ座っていてはろくなことはないので教室の外に出る。
向こうから、透き通るように白い女が歩いてきた。その歩みにはどこか風格と
いうか、威厳があった。
サヨリである。廊下の窓から差し込む光が彼女の髪と目と唇を赤々と照らして
いた。
小学校の時の同級生だ。何度か話したこともある。彼女は擦れ違いざまに言った。
「ざまみろ」
つづく
サヨリキタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!
その唐突な言葉に驚いて振り返ると彼女は既に消えている。
他のクラスの者からは、陰でこそこそと何やら言われることは
あるにせよ、直接何かひどい嫌がらせのようなことは受けてはいない。
ついに他のクラスにまで及び始めたか。それにしても何故サヨリが。
こないだの体育の授業の際、先に一人出て行くと、残された持ち物に
何をされるか分かったものではないので彼女は警戒して、一番最後に
教室を出た。
そういえばメールアドレスはどこから知れたのだろう。まさかサヨリが?
廊下でそんなことを考えているといきなり背後から頭を平手で激しく
叩かれた。反射的に振り返ったが誰もいない。もう一度前を向くと、
同じクラスの女子数人が何事もなかったかのように歩いている。
その姿が逆に不自然に見えた。きっとあの中の誰かが頭をはたいて、
そしらぬ顔をして通り過ぎたのだ。
時が経つにつれ、嫌がらせはひどくなり、もういじめと呼んでも差し支え
ない程になっていた。彼女が無視をすればするほどエスカレートする。
いじめる側は、とにかく相手の嫌がる顔、泣く姿、視覚的なものを求めがちだ。
無視するのが最も効果的な防御法ではあるが、相手はとにかく無視できない
レベルに達するまで、その行為を増長させる。
つづく
気付けばアリサは屋上にいた。ペンキの剥げた、さび臭い鉄柵に
手をかけて、遠くを見つめる。
そこからは透明の道が実は続いていて、そのまま柵を乗り越えて、
一歩歩き出せば、そのまま宙を歩けそうな気がした。
隣に、サヨリがいた。
「!」
赤黒い髪と長いスカートが風になびいている。
「…な、何よ急に!」
突然現れた彼女に驚いてつい口が出た。それほど彼女は唐突に隣にいた。
「…何もしてないよ」
「…」
「…死ぬの?」
つづく
答えられずにいると、サヨリは急にアリサの首筋に顔を近づけて、鼻息が届く
ほどの距離で彼女の首の匂いをすんすんと嗅いだ。
「…ちょっ何…!?」
慌てて離れるとサヨリは嬉しそうに笑って言った。
「…死の匂い…」
ただ、その紅い目だけが全く笑っていない。むしろ不気味な威圧感をもって
彼女を射るように見つめるのである。
「…キモい!」
他に誰もいないからか、はたまたサヨリが別のクラスの人間だから油断したのか、
彼女は素直に怒りを表し屋上から姿を消した。
サヨリは一人残って、柵の上を平均台で遊ぶようにして歩いたり、その上で片足を
上げたりしている。ひどく気分が良かった。
つづく
須藤アリサは分かっていながら時折、携帯電話の電源を
入れてはメールを見てしまうのだった。
書かれている文句はそれぞれ違えど内容はほぼ同一。
『死ね』
『お前は社会のクズ。軽子沢のゴミ。早くいなくなって下さい。正直言って
目障りです。ばーか』
『死ね』
『軽中の恥。死んでくれるとみんな喜ぶ。あんたがいると教室が臭い』
『死ね』
『ちょwwwww中二で性病ww終わってるwwwwwwwwwww』
『死ね』
『親戚一同、学校一同、人類の為に消えろ』
彼女はセーラムライトの煙を虚空に吐き出しながら、冷静に一文一文、
メールを読んだ。
つづく
夜の暗がりの中で、携帯電話の液晶のバックライトに彼女の顔が
ぼんやりと照らし出されている。
煙草こそ吸ってはいるが、一見ごく普通の、高校生か中学生に見える
ことだろう。
轟音がして、光の列がかなりのスピードで通り過ぎていく。
遮断器が上がると、何台かのクルマと、何人かの人の行き来があった。
アリサは折りたたみ式の携帯電話をたたむと、バッグに入れて、そのバッグを
地面に置いた。煙草一本吸い終えて、吸殻を足で踏み潰すと、星空を眺めた。
オリオン座ぐらいしか知らないが、オリオンの腰の三連星が綺麗に見えた。
白い息がオリオンに向かって上がっていく。
警報音が鳴って、遮断器が降りた。誰もいない。
つづく
オリオンの三連星より遥かに明るい二つの光が目を射した。轟音が
近づく。足元の線路が思った以上に振動して、彼女は電車の重量と
パワーを今更に思い知った。
「少し怒らせたりなかったかしら?」
また、サヨリがいた。しかも目の前に。
「ちょっとあんた危ない!何してんの!?」
「怒ってる人間は死なない」
電車の警笛が鳴った。このままだと先にサヨリが轢かれる。
「サヨリ!危ないの!どきなよ!」
「あなたのことは嫌いじゃない…」
「何わけわかんないこと言ってんの!?」
警笛の音。鉄が擦れる嫌な音。光。そして衝撃。
つづく
白い天井があった。自分のものよりももう少し固いベッド。
暖かい布団。ただ身体はそれほど自由に動かせない。
終電が出た後、車両基地へ向かうだけの回送列車。その車体は
人を積んで入っているときよりも軽く、制動が効いた。
そんな列車であるから、その後のダイヤなどにも特に影響はなく、
鉄道会社も娘が自殺未遂をした両親に対し、そのショックのダブル
パンチになるような、賠償金の請求であるとか、そのようなことは
特にしなかった。
二人は車体にぶち当たり、車輪に巻き込まれることもなく、運良く
吹き飛ばされて、線路脇の茂みに落ち、救急車で運ばれたのである。
「…気付いた?」
首だけを横に向けるとサヨリがいた。彼女は首を固定されていて上ばかりを
見ている。
アリサは黙っていた。
中年の太った看護婦の説明によれば、十箇所近い打撲に、何箇所かの骨折。
命に別状はなく、全治に四ヶ月はかかるが、アリサはすぐに退院できるそうだ。
やはり手前にいたせいかサヨリの方が怪我はひどいらしい。
つづく
「すぐに御両親を呼びますね」
何日眠っていたかと思えば、翌朝らしい。たった一晩眠っただけで、
随分と長く寝た気がする。
うるさい両親が来る前にアリサは隣のベッドのサヨリに話しかけた。
「サヨリ…、あなたのことは嫌いじゃないって、言った?」
まるで昨夜のことは夢のようで何かぼやけている。その言葉だけが
気になっていた。
「言ったよ」
「どういう意味?」
「欲望に素直な人間は分かりやすい…。単純な人間は好きだ」
「…なにそれ?」
何か馬鹿にされているような気がした。
つづく
「アリサ、あなた、どうせ嫌われてるんでしょ?生きにくい?」
「…」
「うちに来る?」
「え?」
サヨリがいうところの『うち』の意味が分からなかった。
「オカルト同好会。軽子沢調査隊…。不器用な人間の集まり」
オカルトに興味はないが、居場所は欲しかった。しかしここに来て、彼女の
プライドに小さな火が灯った。
「…考えとく…」
「単純」
「何よ」
「ばーか」
まぶたが閉じて、その美しい紅い瞳はその日一日、光を宿すことはなかった。
終
わぁ!いいなー好きだなーこの話。
色々あったけれど、アリサにも再び光が射す日が来ればいいな。
今度は、本当に友達と呼べる人が出来ればいいね。
投下キテター!
サヨリの意外な一面…オカルト同好会のリクルート活動してたとはw
最近山形家の出番がないね(´・ω・`)
そろそろ怖い話でもするか。
山形アカネはいら立っていた。前シリーズ最終回はおろか、新シリーズに
なっても全く出番がないのである。
つづく
「…お兄ちゃん…何でだろう…」
兄、軽子沢中学二年A組担任、山形ユウジロウの作った昼食の煮込みうどんを
すすりながら、アカネはひどく悲しい目をした。
「…何だ、お前台本読んでないのか?」
「台本?あぁ、台本ね。読んではいるけど?」
「いいか、ここが重要なところだ」
うどんの具として入っている軽く茹でたホウレンソウをしゃくしゃくと咀嚼しながら、
ユウジロウは『◆gby2MQSCmY』と表紙にある台本の、出演者欄に開いて見せた。
『◆xDdCPf7i9g』の台本の出演者欄には、まず筆頭に『山形ユウジロウ』そして、
『山形アカネ』とあったはずだった。しかし新しい台本に彼らの名はあったものの、
それはかなり最後の方であった。
「…どういうこと?」
「新シリーズ、俺たちは、主役じゃない」
「!」
つづく
主役交代キタ━━━━ヽ(-_-,,)ノ━━━━!!!!
「嘘!?」
「アポもらった時言ってただろ。作者が。新しいシリーズは、主役なし、
その回その回、それぞれが主役になりますって。聞いてなかったのか?」
「…知らなかった…」
「しかもさ、昨日も話したけどまとめサイトがないから早くもバランスが
取れなくなってるらしい」
「…いつもまとめサイトで誰が何回出たか、何回発言したかまで計算してた
もんね…」
「あと、一回しか出てこなかったキャラクターの復権、新しいキャラクターの
掘り下げ、あと今まで出てこなかった教師キャラクターの拡充まで考えてる
らしい」
「できるわけないじゃん!」
「アイツ、ちょっと頭どうにかなってるんだ。生徒全員のエピソード書くとまで
言ってるんだから。まぁ絶対無理だろうけどさ」
「…そんな学園モノ見たことないよ…ドラマでもマンガでも…」
「力道山ってプロレスラーが昔いてな、その人が有名になるには、『今まで誰も
やってことがないことを一生懸命やること』って言ったらしいんだ。真に受けてる
みたいだよ」
つづく
「じゃああたしが出れるのって何十回に一回とか、そうなるの!?」
「前シリーズはまずキャラクターが前面にあって、そのキャラクターが
どうするかって話を考えてた。今回は基本的に話が先にある。こういう
ストーリーがあって、じゃあそれを最も効果的に演じられるのは誰か、
っていう。適任者がいなければ新しい奴が出てくる」
「…とうがらし取って…」
「…おいヤケになるな。かけすぎだ。その方がずっと楽なんだとさ。お前は
いいじゃないか、今度の文学賞に出す長編小説の主役もやるんだろ?」
「…まぁね。でも役が地味で…」
「文句言うなよ。俺なんか主役滅多にないぞ。基本的には悪役多いし…」
「いいなぁサヨリとかいう子…新人なのに…」
「あんま裏話をぺらぺら喋るもんじゃないよ」
「だって出たいんだもん!」
「作者に言っとけよ。気が弱いからねじ込んだら結構どうにでもなる」
「うん。ところで、お兄ちゃん、今日、サエちゃん来るんだ」
「あぁ家庭教師か…」
つづく
山形家で煮込みうどんといえば、具はホウレンソウとナルトと豚肉だった。
アカネは一口も肉を食べず全てをユウジロウの丼に入れて、食事を終えた。
「…じゃあ俺は今日は出番なしね…」
「前シリーズ最終回にすら出れなかったあたしよりましでしょ」
「…ジムでも行って来るか…」
「いってらっしゃい」
準備をして出かけると、ユウジロウは途中、血相変えて走り去る的場リュウジを
見た。何か巨大なアタッシェケースのようなものを持っていたが何だろう。
まさかその中身が彼の母を犯す鬼塚ケンシロウを射殺する為の、
ゾブロジェブカベスティン・ファルコン・スナイパーライフルであることなど知る由も
ない。
ユウジロウはラッキーストライクを咥えながら思うのである。新生オカルト同好会、
メンバーを増やせ。そうすれば正式に同好会として認可され、顧問として登場する
機会も増える。
彼もやはり出番は欲しかった。
つづく
「こんにちわ。お邪魔します」
元オカルト同好会木下サエは相変わらず快活だ。一応、毎週土曜日の
午後一時から、六時までが勉強の時間ということになっていたが、恐らく
そのうちの延べ二時間は雑談か休憩である。
彼女の苦手は数学と英語だった。当然アカネもそれらを集中的に教える。
山形アカネ、実は英語に堪能で、支障なく英語圏の人間と会話することは
できたが、実際の英語と、中学校で習ういわゆる受験英語の違いに戸惑って
いた。
ここはこうだろうと思い教えると、参考書の答えでは違うことが書かれていたり
する。その点で、木下サエも英語に関しては若干の不安があった。
しかし木下サエは特にランクの高い高校を狙っているわけではないし、最悪中卒
でも何とかなると思ってすらいた。最終的にある程度収入のある人間と結婚して
しまえば学歴など関係なくなる、そんな考えがどこかにある。
アカネも彼女のその考え方を知っていたから、それほど真剣に勉強を教え込む
つもりもなかった。逆に彼女が本気で勉強したいと思うならば家庭教師役など
かって出ることはなかったろう。
場合によっては相手の人生に関わることである。そんな大きな責任は背負えな
かったが、サエの、適当でもいいので、という申し出で、とりあえず引き受けていた。
つづく
「トオルとは最近どうなの?」
「相変わらず…かな?」
休憩中、ローズティを飲みながらサエは言った。
「でもトオルからすれば不安だろうね」
「え?どうしてですか?」
「だって、学校離れ離れでしょ?不安になるよ。やっぱり」
「そうかなぁ?今も別に学校じゃ話さないよ?」
「すぐに話そうと思えば話せる、会おうと思えば会える、同じ学校っていう
環境と、そうじゃない環境って、だいぶ違いあると思うな」
「そうかな…」
「特にサエちゃんは美人だしね」
ローズティの暖かい湯気の中でアカネは優しく微笑んだ。
「そんなことないよー!」
つづく
「放っとかないと思うよ」
「…なのかな…」
少しサエは照れた。彼女は理想の女性としてアカネを見ていた。その女性から
褒められたのだ。何か気恥ずかしい。
「…こんな、男顔だし…」
「…だったら女の子にも注意しないとね…」
「え?」
アカネは立ち上がると、サエの隣に座り、じっと顔を見た。
「…すごい、きれい…」
「…あの…え?アカネさん…」
手と手が重なって、顔が近づいて、その鼓動に耐え切れず目を閉じると、くちびるに
柔らかく熱い感触があった。どこか淫猥な、それでいて何かそそる匂いがした。
肩に手が回り、手に重ねられた手が胸の突起に。うっとりとして思わず出した舌を、
アカネの柔らかなくちびるが挟んだ。
つづく
これ程長く濃厚なキスを、トオルともしたことがあっただろうか。
ブラの上からでも分かるほどに乳首は隆起し、逃れたい思いと、
このまま快感に溺れたい欲の狭間で、木下サエは喘いだ。
濡れている。気持ちがいいのも事実だ。逃れたい。逃れられない。
両の足の間を、アカネの指は的確に攻めてきた。
「…トオルには…内緒、ね?」
やっと開放されたくちびるは、まだ続けてアカネのくちびるを求めて、
小さく震えている。それに応じるように、またくちびるは重なった。
息をついて、大きく口を開くたびにアカネの舌が入り込んでくる。
何でこんなことをするのだろう。今までそんな素振りを見せたこともないのに。
その疑問は快楽に打ち消される。
「…サエ…あたしのも触って…」
いいのだろうか。自分は今、とんでもない世界の入り口に立っていて、進めば
二度と戻れないような気もしたが、女の丸みを帯びた、アカネの肉体を知りたい
とも思った。
つづく
キャアアアア〜!*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)n゚・*:.。..。.:*
今日は発泡酒を飲みつつライブ参加w
絡みキター!щ(゚Д゚щ)
∧∧ ∧∧
エロキタ━━━━ (*゚∀゚) (∀゚*)━━━━━━!!!!!!!!!!!!
彡 ⊂ つ⊂ つ ミ
(( ⊂、 / \ 〜つ ))
ミ ∪ ≡ U′ 彡
気付けば二人、乱れた衣服でソファにもつれ合っている。
サエは遠慮がちにアカネの肉体に触れた。その弾力は脂肪でも
なければ筋肉とも違う。一度触れたら、もう離したくないような、
吸いつく様な魅力を持っていた。
乳首舌先を這わせながら、
「…マゾだったっけ?」
というなり、アカネはサエの乳首を軽く噛んだ。指を差し入れていた
ヴァギナが一瞬、きゅんと締まった。
「すごい…敏感なんだね…」
「…ぃやぁ…アカネ…さん…それ以上されたら…」
「…どうなるの?」
強く乳首を指で弾く。また、女性自身は締め付けて、サエはのけぞった。
「…ねぇ…どうなるの…」
「…おかしく…なっちゃぅ…」
「…なって…?」
つづく
何をしたのか理解できなかった。陰行流艶術、『小手返し』。アカネは
陰行流艶術を学んでいない、あくまで彼女が知っているのは陰行流艶遁術。
『お留め』である。しかし度々兄、ユウジロウから攻められるうち、いくつか
基本的なテクニックは覚えてしまっていた。
「っあぁっ!…だめえぇぇっ!そこっ!だめなの…!」
「でもすごい濡れちゃってるよ?」
「…んっ…っ…」
「…まだいっちゃだめ…」
「…いかせて…お願い…いかせて下さい…」
「トオルに随分調教されちゃったんだね…すごい…やらしー…」
「やだ…そんなこと…何で…」
サエは涙を見せたが、それがマゾヒストの感涙であることをアカネは知っていた。
アカネは親指を彼女のクリトリスに、中指と人差し指を内部深くに挿入して、両面
から責めた。この手の形を『カギ手』という。非常に有効なのだが、欠点はかなりの
器用さと修練が必要なことと、何より指がひどく疲れるのだ。
また親指にはそれほど力を入れず、逆に、挿入した二本の指にはある程度の力を
込める必要がある。
つづく
やはり修練なしでは厳しいものがあったが、それでもサエは愛液を
ほとばしらせて、絶叫のうちに果てた。
「…霧原…ごめん…霧原…ごめん…」
茫然自失として、突っ伏し、泣きながら呟く彼女を見て、アカネはひどい
自己嫌悪にかられ、彼女を抱き起こして、そのまま抱きしめると涙を
浮かべて何度も謝った。
月に何日か、生理の周期に関係するのだが、山形アカネは異常に性欲が
昂ぶる日がある。それは突然にやってくるのだ。普段は自慰で済ませていた。
しかしよりによって今日は、木下サエという相手と共にいてしまった。
その昂ぶりは抑えることができず、遂に事に及んでしまった。穢れた山形の血で
また一人汚してしまったのだ。
しかしサエはアカネを許した。サエにそんなことはなかったが、リョウコや他の友人
から、どうしてもしたくなる日がある、という話は聞いたことがある。
「…女同志だし…浮気ってわけじゃないし…」
「ごめんね…」
つづく
あっさりした性格の本領発揮というか、既にサエにとっては、憧れの
アカネの素肌を見、触れられてよかったということと、気持ちよかったと
いう点で、謝られるようなことではないという思いに至っていた。
その後二人はいつも通り六時まで勉強をし、今日のことはなかったことに
しよう、と言い残してサエは帰宅した。
一方ユウジロウは庭で下半身を血に染めて倒れていた。ジムが休日で
混んでいて、行く当てもなくぶらぶらし、やることもないので家に帰ろうと
ドアの前で不穏な空気を感じ、庭から覗いた。
そこにはレズビアンショーが待っていた。早速全裸になりオナニーを
始めたところ、なぜか機嫌の悪かった愛犬ユタカにイチモツをかじられた
のだ。
夜になってアカネによって発見され、救急車で運ばれた。
翌週。土曜日。午後一時。まだイチモツのケガが癒えておらず、オナニー
禁止を言い渡されているユウジロウと入れ替わるように木下サエが入ってくる。
普段はバッグから参考書を出すところを、彼女は手錠と、バイブレーターを
出して、潤んだ瞳で言った。
「アカネお姉さま…今日はこれでいぢめて下さい…」
終
>>628-630 …おまいら…激しくワラタwww
『オリオンの三連星』と名づけよう(笑)
おおおおおーサエ!www
久々?のエロに興奮だーw
トオルよりアカネにはまっちゃいそうだねw
>>617 一応リクエストとして受け取りました。実際そろそろ書かないととは
思っていたのですが…。ちょっとキャラクター増やしすぎて…。
それぞれのファンの方には申し訳ないと思っております。
また、今回の話、頭で、主役交代の話が出てきますが、まぁベースは
『山形先生とその周囲』です。そこから逸脱することはないので、
ユウジロウが主役といえば主役であることは間違いないです。
ただ、軽子沢調査隊、新聞委員、ケンシロウと色々と立ち上がって
いるので、ユウジロウの出番そのものは以前よりは減るだろうと。
そういった意味合いです。御理解頂ければな、と思います。
また全校生徒全員のエピソードを書く、という発言に関しては全くの
フィクションです。そんな馬鹿なことはできません。
しかし一度しか出てこなかったキャラクター、生死不詳のキャラクター
などはネタの都合で再登場、再利用する確率が前シリーズより高いと
思います。
そういった意味合いでもやはり、ユウジロウの直接の出番は減る、というか
満遍なく描くという意味では、それぞれの出番が減ると言ってもいいかも
しれません。
物足りないぞーという方は是非リクエスト下さい。できる限りお応えします。
みんなエロが好きなんだなwwwww
いや、俺は大好きさ?エロ
作者さん乙です!
面白かった〜^^
リュウジが大好きなんでリュウジの話と言うよりは
リュウジに恋してしまった可哀想な女の子達の話なんか
読んでみたいなぁ。
以前にチラッと話が出てましたけど、確かにリュウジに付いて行くのは
難しそうw
とりあえず、リュウジと母とケンシロウの話の後でも
いつでもいいんでお願いしま〜っすww
さてここらで哀しい話でもするか。
軽子沢中学新聞委員会委員長、的場リュウジは文具店で、写真を飾る、
フォトフレームを求めた。飾り気のない、地味なものである。
つづく
そこに、何ヶ月か越しでやっと決心して焼いた写真を収め、自分のデスクに
置いた。
隣には、どこかの国の兵士に囲まれ、どこかの国の、ビールか何か、酒瓶を
手に掲げる笑顔の男の写真が、やはり似たようなフォトフレームに飾られて
いる。
彼の首から下げられたカメラは、今はリュウジの手元にある。写真の男は彼の
父だった。
二枚の写真を眺めながら、彼はジムビームをグラスになみなみと注ぐと、一気に
覆って、アルコールくさい溜息を吐く。
そして、今年の夏の、ある出来事を思い出していた。
山形ユウジロウからの電話。
「会ってほしい人がいる」
確か、そんな短い電話だった。
出かけた先は病院で、そこで彼女と会った。一年生の時に同じクラスだった藤谷ユミ
だった。二年になり、クラスは変わって、今はA組、つまりユウジロウが担任を務める
クラスの生徒になっていた。
つづく
こんな時間にキタワァ*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)n゚・*:.。..。.:* ミ☆
一年の頃も病弱で、余り学校に姿を見せず、休んでばかりいた。
その時よりも更にやつれた印象を受ける。
何故自分が呼ばれたのか意味も分からずにいると、ユウジロウは
ロビーに彼を連れ出して、訳を説明した。
彼女は難病に侵され、いつ死ぬとも分からない身であるらしい。
そのことは幼い頃から分かっていて、現に今まで生きてこられたのが奇跡と
いっても過言ではないそうだ。
彼はてっきり彼女のことを取材して、校内新聞の記事にしろとでも言い出すのかと
思ったが、そうではなく、実は彼女。的場リュウジに一年の頃から恋心を抱いている
らしい。
いつ死ぬやも分からぬ身、せめてもの思い出に、デートの一つでもしてやれないか。
それがユウジロウが彼を呼び出した理由だった。
彼は当然のように断ったが、事もあろうに、彼女の両親までもが現れて、懇願された。
柄にもないこと。デートなどしたこともない。何をしていいのかさえ分からない。
そもそも的場リュウジ、十四歳にしては女性経験は確かに豊富であったが恋愛経験は
全くない。どれも東南アジアや南米で、売春婦相手に性交渉をしていただけに過ぎない。
彼自身、初恋すらまだだった。
つづく
しかし涙ながらに頼み込む藤谷ユミの両親を見ていると、さすがに
心が痛んで、とりあえず一度だけならと了承してしまった。
医師は体力がもたないと反対したが、両親の説得に負け、彼女の
外出を認めた。
彼女も幼い頃からそんな状態であるから、好きな人と一緒にでかける
などしたことがあろうはずもなく、また同級だった一年の時も、まともに
挨拶したことすらない二人である。
両親から、お願いしますと、三枚の一万円札を受け取ったが、何を話す
べきか、何をするべきかも分からずとにかく病院からタクシーに乗り、
駅に向かった。
車中、彼女はしきりに謝った。親が気を使って、何かしたいことはないかと、
毎日しつこく言うものだから、つい口に出してしまったらしい。
男の人とデートがしてみたかった、と。
そうなると当然相手は誰がいいかという話になる。そして彼女は憧れていた
彼の名を出してしまったらしい。
自分とは正反対。体力と精神力に満ち溢れ、世界中を所狭しと自由に駆け巡る
彼が羨ましかったのだと言う。
つづく
愛に発展するかどうかはともかく、恋は意外と単純に始まる。自分に
似た部分を見るか、自分にない部分を見るか。
彼女は彼に自分にない部分を見たのである。
彼女は、リュウジに色々な話を聞きたがった。特にもう自分が行けないで
あろう世界の話。名前だけでしか聞いたことのないアメリカ、中国、ヨーロッパ、
アフリカ。それらが本当はどういった所なのか、彼女は知りたがった。
リュウジは分かる範囲で説明をした。小難しい話や物騒な話は抜きにして、
あそこで食べた何という料理は美味かったとか、アジアのあるホテルでは蚊の
集団に襲われてひどい目にあったとか、そんなどうでもいいくだらない話を
言って聞かせた。
やっと心がほぐれたのか、彼女は動物園に行きたがった。しかし動物園といえば
当然歩いて中を散策する。体力的にどうかと思ったが、彼女はどうしても動物園が
いいと言った。
実は的場リュウジ、動物園など行ったことがない。
興味もあって、都内の動物園に電車で向かった。
車内は混んでいたが、彼は、シルバーシートに座る若者に、ユミが病気で余り体力が
ないことを丁寧に告げ、席を譲ってもらうなどした。彼らしくない行為だがその心使いが
ユミは嬉しかった。
つづく
動物園は駅から少し距離がある。リュウジは彼女にかなり気を使っている
ようだった。
しきりに大丈夫か、と声をかけてくるが、彼女は息を荒げながらもついて来た。
動物園でチケットを買い、真っ先に休憩する。気を使っている部分もあるが、
無理をするよりは休めるうちに休んでおく、というリュウジの戦場で身につけた
癖のようなもので、特別気を使っているというわけではない。
休憩所で高いジュースとホットドッグを食べながら、リュウジは彼女の近況を
聞いた。
「…生きていたい気もするけど…入院するとお金もかかるし、親には迷惑
かけたくないし…。親もそろそろ死ねばいい、ぐらいに思ってるんじゃないかな…」
親が娘に死ねばいいと思う。そこについては否定したい気持ちもあったが、
リュウジは敢えてそこは無視した。
「…国からの助成金みたいな制度があった気がするが。一年間の医療費が一定額を
越えたらあとは国庫が負担してくれるような…」
「うん。よく知ってるね。あるみたいだけど…。とりあえずのお金がないんだよ…」
一年間である一定額以上の医療費がかかってしまった場合、申請すれば、後の金額が
戻ってくる制度はある。しかし、それは、あくまで、申請した後、つまり、医療費を支払った
後に、返金される制度で、それ以前に払う経済力がなければ意味がない。
借金で医療費を支払ったとしても、戻ってくるのはあくまで医療にかかった金額だけで、
借金した際の利子までは面倒を見てくれない。
つづく
当然既に入院している彼女が民間の医療保険に加入できる
はずもなく、とにかく彼女の存在が、藤谷家の経済的負担に
なっていることだけは間違いがなかった。
二人は動物を見て回った。ユミは以前幼稚園の頃に来たことが
ある。
リュウジは初体験で、その上、アフリカなどにも取材に行くが、
実際象やライオンといった動物を間近に見るのは初めてだった。
彼も見た目が二十台半ばとはいえ、好奇心旺盛の十四歳。多少
はしゃいでいた。
歩いて上気したせいか、ユミの顔にも血の気が戻ったように見え、
改めて見ると、なかなかの美少女だった。
隣り合って歩いて、距離が近づいて、つんつんと手の甲が触れ合う
頃になると、自然と二人は手をつないでいた。
「あ、カバがいる!」
「…?好きなのか?」
「星新一って作家がいてね。『おかばさま』ってお話があるの。ちょっと
哀しいお話なんだけど」
「…へぇ…」
つづく
「未来の話で、人類はコンピューターに頼ってるの。色々なことを
コンピューターが教えてくれるの」
「…」
「そしたらコンピューターがね、カバを大事にしろって言うんだ。しかもさ、
『おかばさま』って尊敬しろって言うの。だからみんな、カバのことを『おかば
さま』って読んで、大切にするんだー」
「…それで?」
「町中カバだらけになっちゃうの。スーパーも勝手にカバは来て、野菜とか
食べちゃう」
「大変だな」
「そしたらある日、家畜に伝染病が流行って、肉が食べられなくなっゃうの。
そしたらコンピューターか言うのね。今まで増やしてきたカバを食べろって。
カバは伝染病にかからない動物だったの」
「…へぇ…」
「最後は可哀想なんだけど、カバがいっぱい町にいるって面白くて」
動物園のカバ舎にいるカバは酔いつぶれた酔っ払いのように四肢を曲げて
夏の暑さに参ったのか突っ伏して、動かなかったが、彼女はそれでもいい
ようだった。
つづく
「…写真持ってくれば良かった…。売店で『写るんです』売ってたよね?
買って来る」
「おい待てよ。カメラなら、ある」
ザックからニコンを出した。父親の形見である。
「撮ってやるよ」
「…一人で?」
ひどく、ユミは寂しそうな顔をした。父親のニコン。誰にも触れさせず。触れて
いいのは同じく新聞委員会の志賀マサトだけと決めていた。しかし、彼は初めて
例外を認めた。
ちょうど首からキヤノンの一眼レフを提げた中年の男性を見たので、リュウジは
彼ならカメラの扱いも大丈夫だろうと彼にニコンを預け、撮ってくれるよう頼んだ。
中年男性はカメラマニアらしく、彼のニコンの古さと手入れの良さを褒め、喜んで
応じてくれた。シボリやビントを合わせる手付きも慣れたものである。
「…カバも一緒に入るようにお願いします」
「分かってるよ。もうちょっと寄って寄って。そうそう。いいね。撮るよー」
シャッターは切られた。
つづく
いそいでおかばさまぐぐってきたら続きに書いてあったー!(゚∀゚)
夏でまだ明るかったが閉園時間が迫っていた。ユミは一日、持ちこたえた。
「…大変だったな。疲れたか?」
「ちょっとね」
肩で息をしている。顔は満面の笑みだった。恐らく辛さに慣れているのだろう。
肉体的な苦痛と精神的な快楽を彼女は分けるすべをいつの間にか身につけて
いたのだ。彼女自身が病気のことを告知されたのはまだ生死の意味すら分から
ない頃だったという。
「…的場くん、ピストルとかって持ってるの?」
「…どういう意味だ?」
「…楽に、死にたいの」
「…」
死ぬことに、楽も苦もないと言いたかったが、それが奇麗事であることは知っている。
戦場で苦しみ、あと数時間で死ぬと分かっていながら無駄ともいえる治療を受け、
苦痛の余りに殺してくれと哀願する者を何度か見た。
つづく
明日死ぬかもしれないと告げられ、毎朝目覚め、今日も生きていると
いう喜びと、明日は死ぬかもしれないという苦しみ。
それと彼女は何年戦ってきたか。毎日毎日、その繰り返し。
しかし、待てど暮らせどその治療法は見つからず、また原因すらよく
分からず、とにかく『不治の病』などと一言で片付けられてはいるが、
確実な死をもたらす。
確実に死ぬと分かっていながら、一日一日生きることは果たして有益なのか。
単なる無駄か。
いっそ楽に死んで、来世かあの世に希望を持つのも無理はなく、仮にそんな
ものがないとしても、少なくともいつ死ぬかという恐怖からは開放される。
「…本当言うとね、的場くんのこと好きでも何でもない。ただピストル持ってるとか、
そういうことに詳しいとか、話は聞いたから、それだけ…」
「…」
恋ではない。単に利用できそうだから利用するだけ。リュウジは何故かその時、
怒りもなく、ただ気が抜けた。今日一日なんだったのだろう。二人で撮った写真。
誰にも触れさせまいとした父親のニコンを人に預けてまで撮った写真。そこに
ある笑顔。そこにある意味。それはどこへ行くのだろう。
つづく
「…嘘ついてごめんね…。あたしは…楽に死にたかっただけ…。苦しいのは
もう、やなんだ」
「…そうか。帰ろう…」
すいた電車に揺られながら、無言でリュウジはあるカプセル剤を彼女に渡した。
『…拳銃の件は単なる噂だ。ただ、これを飲めば楽に死ねる…』
彼女は渡された薬を握り締めると顔を伏せた。
それは、テロ組織などに捕らえされた際に自害する為の毒薬だった。
数日後、藤谷ユミは死んだ。彼女が薬を用いたのか、それとも無理に外出したのが
祟ったのか、それは分からない。ただ、通夜に出席したリュウジに、彼女の父親から
ユミが書いたという手紙を預かった。
中には、可愛らしい文字でこう書かれていた。
『的場君へ。 ごめんね。ホントは本気で、好きでした』
横にはカバのイラストが書かれていた。
珍しく笑っているリュウジと、ユミとカバの写真。彼はジムビームをもう一杯注いだ。
余りに短く、余りにむごい、的場リュウジの初恋である。
終
これは…これは…
。゚(゚´Д`゚)゚。ウワァァァン!!
>>639 『可哀想』の意味を取り違えたかな…。でもこんな話になりました。
ちょっと倫理的にもどうかと思います。しかし私も、ユミほど具体的な
苦痛がないとはいえ、鬱病で自殺したいと思うことが時折あり、こういった
テーマで一度書きたいと思っておりました。
手塚治虫先生なども、ブラックジャックにおけるドクターキリコのようなお話、
また、山形先生でも山形アカネによる自殺幇助の話、出てきますが、今回は
具体的に迫っている死ほ早める、というテーマで書いてみました。あと、
リュウジ=バカ話というのを払拭したかったというのもあるです。
リクエストした内容と余りにかけ離れていたら申し訳ないです。リクエストあり
がとうございました。
>>642 合いの手ありがとうでした^^ わざわざぐぐらせてごめんね。
あ、ごめんなさい。書き忘れました。
国による医療費負担の話が出てきますが、、以前ドキュメンタリー
番組で取り上げられていたのを見た記憶だけを頼りにしていますので
間違っている点、もしくは改善された点、あるいは財政難から改悪された
点もあるかもしれません。
調べてはいませんので、その点御了承下さい。すいません。
658 :
657:2006/10/23(月) 19:15:37 ID:wxvRkCiH0
おそらく、700くらいで書き込み不可能になると思われます。
まだ書き込めますので、コチラを使い切ってから新スレに移動しましょう。
よろしくお願いします。
…やはり今日投下しないとマズいかな…。早く古いほうのスレッド使い
きらないと混乱するよね…。新スレ立ってるとは思わなかった。
いっぺんに使い切ってしまいたいけど予測で716…。。まだ50以上あるのか…。
2話…。下手に休むと新スレが落ちる…。
旧スレ使い切れと憤慨されておられる方もあるようだし…。
適当でもいいから何か書くか…。
軌道修正行います。
23時までネタの搾り出し、それでも出ないようなら、適当に書きます。場合に
よっては、全く『山形先生』とは関係ない話になるかもしれません。
(ずっと読んでくれてる方があれば分かるかな。以前、私自身を主人公にした
話を二本ほど書いた記憶があります。そんな感じになるやも)
それでもネタがない場合、とにかくリョウコとアヤがだらだら喋る、もしくは、オールナイト
スッポンの連打、単なる私の怖い思い出、とにかく早々に旧スレを使い切る方向で動きます。
御了承下さい。
新スレは保守だけしとけば大丈夫じゃないかな?
作者さんペースでゆっくりどうぞ(゚∀゚)
駄目だ…。タイムリミット…出なかった…。だから俺は駄目なんだ…。新スレを
立てて下さった方、新スレに感想を書き込んでくれた方、また旧スレを使い切る
べきだともっともな意見を下さった方、そして私の愛する人、全てに謝罪すると
共に、私は返上できぬ汚名を着る。
何日か先に書こうと思っていた話を今日書きます。雑談スレにおいてはバランスを
考えているなどと偉そうなことを書いておいて、何たる失態。正に生きる価値なし。
生ける屍。それでいて死ぬ勇気もない。私は私を軽蔑する。だから全てに逃げられ
る。それでいて愛されようなど図々しいにも程がある。くたばれ。与え続けろ。貴様には
何も与えられない。与え続けることでせめて生きる罪を償え。生まれながらの敗北者め。
そろそろ怖い話でもするか。
十二畳のリビングに置かれた、ゆったりとしたベッドで、その決して若いとはいえない
二人は身を重ねて、品性の欠片もなく、さかった犬のように腰を振っていた。
つづく
俺もタイムリミットまでに精子が出なくてよく困るぜ
恥らった喘ぎも、やがてまともな言葉に聞こえず、単に呻くばかりで、
相手にその意味が伝わるわけでもなく、単に快感に溺れる息苦しさと
悦楽に浸る恍惚に満ちていた。
意味もなく名を呼び、だめと言いつつ求め、上になり下になり、時に肉を
打つ音が響く程に激しく乱れていた。
「ああぁ…鬼塚さん…っ!」
「…ケンシロウと呼んで下さいっ…」
「ケンシロウ…!あっ!そこぉ…!!」
「ここが…ここが何です?」
「い…意地悪しないで…ぇ…あぁ…」
随分と、鬼塚ケンシロウの腰使いも滑らかになったものである。旧文部省の大臣の、
健全な肉体に健全な精神が宿るという、という考えの下に始まった『素晴らしき子供たち
計画』そしてその指導者として選抜された元特命教師、鬼塚ケンシロウ。その体力は、
六十前の男のそれとは思えなかった。
恐らくは体力、精力からすれば、山形ユウジロウとほぼ互角といえるかもしれない。
今まで童貞だった分を取り戻すかの如く、彼は果てるまで腰を振り続けた。
つづく
行為を終えた二人は、互いの肌を晒したまま、甘みの強い白ワイン、
ヴェルドッゾトラミネールパッシートで乾杯をして、ベッドの上で、
その甘さに酔った。
「…週末に、どこか温泉にでも行きましょうか?」
「いいですね」
「どこかいい宿を知りませんか?」
「いえ。温泉なんて何十年ぶりか…」
「私もほとんど行きません。調べてみましょうか」
下着を身につけると、ケンシロウはベッドからワイングラス片手に抜け出して、
パソコンを立ち上げた。得意ではないが、温泉宿の検索と、予約を入れること
ぐらいはできる。
「クルマがないので不便ですな。免許の一つでも取っておけばよかった」
ベッドの上では、的場リュウジの母、ケイコが、いそいそと恥ずかしげに下着を
つけていた。
「最近は熱海あたりは昔に比べて寂れてしまったが、その感じがまた、いいんです」
「熱海ですか。いいですね。行ったこと、ないんです」
つづく
的場ケイコは東北の出身だった。東京に出てきて、出版社に勤め、その時
夫と出合った。ところが夫は今のリュウジと同じく世界中を飛び回るカメラ
マンで、二人で出かけたことなどほとんどない。
あっても日帰りが常だった。デートといってもせいぜい都内で食事をする程度で、
互いの忙しさに旅行などすることもなかった。
新婚旅行すらなかったのだ。予定はあったが、海外である事件が起きて、結婚式の
直後、夫は一人旅立った。
ケイコは出版社を退職し、専業主婦となったが状況は変わらず、まともな旅行と
言えば、女学校時代の修学旅行か、出版社の慰安旅行ぐらいである。
それでも特に不満はなかったが、やはり、心惹かれる男性にどこかに連れて行って
やると言われれば、嬉しくないはずはない。
彼女は身支度をすると、半裸で椅子に腰掛けるケンシロウの肩越しにパソコンの
モニターに見入った。乳房が肩に当たる。その感触を多少意識しながら、ケンシロウは
熱海の、老舗旅館のホームページを眺めていた。
「ここなんかどうですかね?」
「随分と高そうですね。もっと気安い所でいいですよ」
「お金の心配なら構いません。気にしないで下さい」
「でもこんな立派な旅館…」
つづく
「この部屋なんかは、専用の露天風呂がついてます」
「…」
ケイコは顔を赤らめた。ケンシロウの言わんとしていることは、
要するに一緒に風呂に入れるぞ、ということだ。彼女は黙っていた。
「週末は空いてますか?」
「息子も帰ってこないでしょうし…」
「じゃあ決まりだ」
一泊一人二万四千円。高級な部類に入る宿だとは思ったがケンシロウは
迷わず二人分の予約を入れる。
老舗とは言え、寂れた温泉街の高級旅館、空いているのか、ネット上から
予約状況が確認できたが、すぐ明日にでも予約が取れそうな具合だ。
サイト上から予約が入れられるようになっているが、予約にはメールアドレスが
必要らしい。ケンシロウは自分のメールアドレスを記憶していなかった。
とりあえず、他の必要事項を記入して、メールソフトを立ち上げる。
そこでアドレスを確認して、何とか無事予約を入れた。
説明によれば、自動ですぐに予約確認のメールがこちらに届くので、確認してくれ
とのことだった。
つづく
何秒も経たない内にメールは届いた。御予約ありがとうございます、との
タイトルで、先ほど入力したこちらの代表者の名前から住所、電話番号、
どの部屋を予約したかまで書かれている。
「便利な世の中ですね」
余りパソコンが得意ではない鬼塚ケンシロウは、オークションどころか、
こういった宿やホテルの予約さえネット上で行ったことがない。そもそも
一人旅の趣味があるわけでもなく、また一緒に行く相手もいなかった。
「楽しみ」
たった一言の鬼塚ケイコの言葉が、彼は嬉しかった。女性と二人きりの
旅。生まれて初めての経験である。
ところで、メールがもう何通か送られてきているのが気になった。
タイトルだけ見ると、一通を除いて、出会い系サイトか何かの広告メール
だった。問題は残る一通である。
タイトルは『お詫び』とある。
『先日、しじんの村で、仲間を募った、ゴドウィンです。待ち合わせの場所へ
向かおうと思ったのですが、突然のエンジントラブルでクルマが使えなくなり、
携帯電話番号なども教えられていなかったので連絡することもできず、失礼
致しました』
つづく
しじんの村、それは、絶望した鬼塚ケンシロウと、的場ケイコが自殺仲間を
求めたサイトである。
ゴドウィンとはその中で、年退職と同時に妻に逃げられ、死にたいと掲示板に
書き込んだ、六十台の男である。
彼はクルマを所有していて、既に自殺の準備はできていて、クルマでぶらぶらと
関東近県を周遊して、満足がいったら自殺をしましょうと、共に逝く仲間を募って
いた。
ケンシロウとケイコは彼に連絡をつけ、都内のある駅で待ち合わせたが結局彼は
来なかった。そして待ちぼうけをくった二人は出会い、愛し合うようになったのだ。
そのゴドウィンからの、詫びのメール。しかしそれは単なる謝罪のメールでは
なかった。
『つきましては、後日再度決行したいと思いますので都合のいい日など、御連絡
下さい』
再度決行。幸せなこちらはともかく、ゴドウィンはまだ自殺を図るつもりらしい。
恐らく同じ内容のメールが、ケイコのパソコンにも届いていることだろう。
しかし二人の意思は固まっていた。
「断りましょう」
つづく
勝手といえば勝手だが、自殺などというものは半ば勢いのようなもので、
あらかじめ、何月何日にしようなどと思ってできることではない。
ましてや、一度気持ちがそがれてしまえば、しばらくは自殺をする気など
起こさないものである。
その上、ケンシロウとケイコは今、幸せなのだ。口約束とはいえ結婚の
約束をし、旅館に予約まで入れた。ケイコの息子、的場リュウジにまで
ケンシロウを紹介した程である。
もう自殺する気などない。あの日、クルマでゴドウィンが約束通り、駅に
現れれば、そのまま死んだかもしれない。しかしもうそのタイミングを
失っている。
仮に、クルマのエンジントラブルという、意思の外の、ゴドウィンには何の
悪気も罪もない理由だとしても、それは充分に断わるに値する理由になる。
二人連名というのも妙なので、ケンシロウはケンシロウで、ケイコはケイコで
帰宅してメールを確認してから、丁重に断りのメールをゴドウィンに返す
ことにして、その日は余りいい気分でもなく、別れた。
律儀といえば律儀だが、ケンシロウにとっては迷惑な話だった。
彼は、本当に自殺する気はあり駅で待っていたが現れず、その間、色々と
自殺について考えているうちに、生きることに対する願望のようなものが
芽生えてしまい、恐ろしくなったので、もう今は死ぬ気はない、という意味の
返事を書いた。
つづく
更なる返信がすぐに届いた。
『申し訳ありませんが、既に決定していることです。約束は守って
頂かないと困ります。確かにクルマのトラブルについては私の責任
ですが、考え直して頂けないでしょうか?私自身何度も一緒に死ぬ
仲間を募りましたが、当日になって怖気づいたのか、断られることも
しばしばで、やっと今回仲間が揃ったのです。どうか今一度御検討
下さい』
考え直せ、というのは普通自殺する人間に対し、止めさせる為に
言う言葉だ。ケンシロウは逆にお前が考え直せと心の中で呟いた。
そしてもう一度、丁重に断りのメールを入れた。
しかし水掛け論というか、とにかく、約束は守れというゴドウィンと、
既に気がそいでしまったので断るというケンシロウのメールの応酬が
続く。
電話で確認したところ、的場ケイコに対しても同様らしい。
ゴドウィンは四名の自殺仲間を募っていた。これはクルマに乗れる人数
から出た人数だろう。そして、ケンシロウが最後の四人目であったはずだ。
だとすれば、ケンシロウとケイコを除いてもあと二人、ゴドウィン含めて三人の
自殺仲間がいることになる。
つづく
三人もいれば充分だ。こちらが散々断っているのだから、三人で
実行すればいい。
しかし、どうも、残りの二名もタイミングを逃して怖気づいているらしいのだ。
つまり現段階で本気の自殺念慮があるのはゴドウィンただ一人。
恐らくそうであろうと思わせるのはメールの文面が次第に荒れ、『どいつも
こいつも』という言葉や、『みんな道連れ』といった言葉が目立ってきたからだ。
「あんまりひどいようなら警察に言ってみましょう」
ケイコの意見にケンシロウは賛成だった。ゴドウィンのメールは次第に常軌を
逸し、脅迫めいたものに変わっている。
それでも相手を余り刺激しないように、ケンシロウはまめに断りと謝罪のメールを
送り続けた。
そして数日が経って、ケンシロウとケイコは熱海へ旅立った。
部屋のベランダに当たる箇所に、露天風呂が備えてある。海が一望できるその
露天風呂で二人、初めて一緒に入浴した。
一緒に風呂に入る、という行為は意外と性行為とは別の恥じらいがある。
その恥じらいに任せて二人は、青々と広がる空の下、静かに交わった。
つづく
豪勢な夕食を済ませて二人、ビールを飲みながら、その余りの
静けさに、テレビをつけていた。
「今日は本当に楽しかった…ありがとう鬼塚さん」
「…ケンシロウと呼んでください。敬語もそろそろ変でしょうか?」
「…そうですね…」
「すいませんね。女性経験が全くないもので…どうしていいやら…」
「経験があり過ぎるよりいいんじゃありません?」
二人は笑った。テレビのニュースキャスターが言う。
『…発見された自殺者の氏名は未だ不明ですが、男が乗っていたクルマ
からは、別の男女二名の他殺体が発見されており、自殺した男が男女を
殺害した後に自殺した可能性が高いとみて警察は捜査を進めており…』
お互いの肉体が気になって、耳にも留めず、一晩乱れて、翌日二人が自宅に
戻ると、どういうわけか、互いの家の鍵が強引に破壊され、何者かが侵入した
形跡があったが特に何を取られたふうでもなかった。
相変わらずゴドウィンからはしつこいメールが届く。
『約束は守ってもらわないと困ります。必ず道連れにします。必ず』
終
アワアワアワ…((((((;゚Д゚))))))
向こうのスレ覗いたら感想たくさん欲しいとの事だったので改めて書き込み。
いや、正直怖いです。
自分の身に置き換えるともう…((((((;゚Д゚))))))
なんというか、今日のように余韻の残る話というのは本当に怖いですね。
まだ恐怖は終わっていない!みたいな…。
でもきっと軽小沢調査隊がなんとかしてくれるはず!なんて、脳内妄想を広げていますw
校長死ぬとえらいことになっちゃうしねw
リュウジもお母さんを守るはず…。
って書いているうちに、そんな感じの続編を読みたい気がしてきましたがだめですよね。
スイマセン^^;
作者さん乙です!
>>674 いやいや、自分もリュウジが何とかしてくれるはずと思ってしまった・・、で、
続編も密かに期待してしまった^^
前に作者さんが世にも奇妙は話とかみたいなんが好きって言ってたけど
これぞ、まさにそんな感じの得体の知れない恐怖がジワジワくる話ですよね。
怖い・・。
なんとなく色々な意味での恐怖を感じ取りました。
自殺の問題だけじゃなく、ネットの問題とか・・・。
>>662の問題も大問題だw
いやはや、乙でした!!
>>674 感想ありがとう^^ うーん…。。これって、自殺したニュースの男がゴドウィン
なのかどうかが『?』って部分で、アソビを持たせてあるから続編作るのは
キツいかなぁ…。
そもそもこのシリーズで、まともに『霊』が扱えるのはユウジロウただ一人で、
軽子沢調査隊には心霊系に強い人間が一人もいない。
でリュウジは相変わらずお化けは駄目。自殺した男がゴドウィンとは無関係で、
ゴドウィンは生きていて単なるサイコ野郎として襲い掛かってくれば、リュウジ
最強だろうけど…。軽子沢調査隊…トオル…カエデ…うーん…サヨリも興味
なければ助けなそう…むしろサイコ野郎の味方しそうだし(笑)
そのへんの、結末が分からんので怖いって辺りでどうか御理解下さい。
>>675 感想どもです^^ 上記理由と同様です。ネタを完全に明かさないことで成立
している部分があるので、明かしてしまうと…。ファンの方いたら申し訳ないけど、
小説の『リング』って、本当に怖くて面白いのって、途中まででしょ?なんか、
色々と貞子の情報が開示されるごとにだんだんつまらなくなっていくというか、
『怖さ』は減っていくというか…。私は『らせん』が限界でした。『ループ』や、
『バースデイ』は見てないので最終的にどうかという話はできませんけど…。
そんなんで御勘弁を…。でもリクには応えたいなぁ…どうしよう。俺なりの
解決策があるのだろうか。あるとすれば一つなんだけど…。。。
えー個人的に色々ありまして、沈んでおりましたが、今は
晴れやかな気分で、今日はまぁパーっと行きたいと思って
おります。
で、書かないといいましたが、書きます。前夜の続きですが、
何というか、一つの可能性、とでも言うのでしょうか、こういう
続きも考えられるよ、という一つのアイデアの提示に過ぎません。
前夜の話と直接つながってはいますが、これが全てではない。
分かりにくいかもしれませんが、前夜の話はかなりのアソビが
持たせてあり、読者の方々個人個人様々な想像をされたと
思います。ですので、それはそれで大事にして下さい。そういう
他力本願、読者任せのお話だったのです。
とりあえず、続編を希望しておられる方がいる為、リクとして
受付、続きを書きますが、これはあくまで私のアイデアで、全て
ではありません。『真』は全て読者の方々の頭の中にあるものと
して、御一読下さい。くれぐれもそのようにお願いします。
(要するに、案外くだらいないオチだったな、と思うなってこった(笑))
さてここらで怖い話でもするか。
軽子沢中学校校長、鬼塚ケンシロウは、的場リュウジの母、ケイコに
電話をした。彼女は携帯電話を所有していないので、的場家の電話である。
つづく
『もしもし、的場ですが…』
「私です。鬼塚です」
『あぁ先日はどうも…楽しかったです。温泉』
「あーいえいえ。こちらこそ…。ところで…」
用件は、二人が出会うきっかけとなった『しじんの村』という自殺系サイトの
ことである。彼らはゴドウィンと名乗る人物の誘いに乗り、自殺することを
決め、都内の待ち合わせ場所へ向かった。
しかしクルマのトラブルでゴドウィンは結局現れず、偶然の形で、ケンシロウと
ケイコは出会ったのだ。そして恋に落ち、熱海に二人、旅行に行くほどの関係に
発展した。
しかし、ケンシロウのパソコンには毎夜毎夜、ゴドウィンからのメールが届くので
ある。一度は約束したのだから、とにかく一緒に死んでくれなくては困る、という
内容で、いくら断ってもしつこくメールは届いた。
脅迫めいた内容にケンシロウは畏怖を感じ、また、同じく彼とコンタクトを取ったで
あろうケイコのことが心配で連絡をしてきたのだ。
しかしケイコはパソコンをしばらく立ち上げていないのでメールのことは分からないと
言い、ならば見てみますと、一度電話を切った。
つづく
しばらくすると、『男はつらいよ』のメロディがケンシロウの携帯電話
から流れた。的場家からの電話に割り当てられた着信メロディだ。
「もしもし」
『あ、ケンシロウさん?見てみたんですけど…毎日毎日すごい数の
メールが来ていて…。無視するなとか、一緒に死んでくれなければ
困るとか…怖いですね…』
「やっぱり…!」
『やっぱり警察に言ってみましょうか…?』
そこでケンシロウは自分の社会的地位が気になった。不祥事も色々と
続いている。その上自殺サイトで自殺仲間を探したなどとなれば下手を
すればテレビニュースに流れてもおかしくはない不祥事になるやもしれ
ない。
生徒の自殺は連日報道されている。そこへきて今度は教師、しかも校長と
なればマスコミが飛びつくだろう。
ケンシロウは素直にその不安を打ち明けた。
『…そうですよね…。どうしましょう…』
その後もしばらく話は続いたが、直接何か被害にあっているわけでもないし、
もう少し様子を見ようという話になった。
つづく
珍しく家にいたリュウジはリビングのパソコンの前で不安そうに
している母の様子が気になった。
「どうした?」
「あぁリュウジ…。実はね…」
自分が自殺を試みようとしていたことなど言いにくいことではあったが、
彼女は正直に打ち明けた。そしてついでにそこでケンシロウと出合った
ことも告げた。
ケンシロウとは学校の集まりでたまたま出会ったということになっている。
それがどうもリュウジを騙しているようで気にはなっていたのだ。
「…なるほど…。確かに物騒なメールだな…。相手の素性は分からんのか?」
「…ゴドウィンって名前ぐらいしか…。あと乗ってるクルマは分かるわ…どの
メールだったか…あぁ、これこれ。ホンダの…CR−V?それで待ち合わせの
場所に来ることになっていたの」
「…CR−V…?」
リュウジは思い立って、少し前の新聞を漁り出した。
「何かあったの?」
つづく
( ^Д^)来てるやんか〜
これだこれだと出してきた社会面の比較的大きい記事。そこには、
『他殺?自殺?山中に謎の遺体三名』
とあり、ある山の中で、密閉した車内で練炭自殺を図ったと見られる
男性の遺体が見つかったという記事が出ていた。しかし不思議なことに、
その車内には男の一酸化中毒死の自殺体以外に、二つの遺体があり、
それらは刺殺体だったという。
警察は、自殺した男が二人を殺した上、自分は自殺した可能性が高いと
して捜査しているが、身分を示すものが何もなく、誰が誰やら分からない
というところで記事は終わっていた。
「…CR−Vだ…」
記事に直接車名が出ていたわけではないが、現場で撮影された写真には
確かに黒のホンダ、CR−Vが映し出されている。
「どういうこと…?」
「いや、やめよう。ありえない。そもそも人気車種だ。偶然だろう」
リュウジはちょっと泣きそうだった。相変わらずお化け、幽霊は駄目だ。まさか
その記事にある自殺した男がゴドウィンで、彼の怨念がメールを送り続けている
など考えただけでも胃が痛くなった。
つづく
リュウジは早速、軽子沢新聞、国内担当、志賀マサトを呼び出した。彼らに
休日はない。
「何か事件らしいな…」
「マサト。この事件を知ってるか?」
新聞を眺めるなりマサトはその後の警察の捜査状況をぺらぺらと話始めた。
やはりこの二人、異常である。どういうコネクションを持っているのか。
「…まだ地元警察は遺体の正体を割り出せないでいる。捜査本部が立っている
から県警も動いているはずだがまだ何も情報は得られてないはずだ。何なら
聞いてみるか…」
静岡県警の刑事に電話し、聞いてはみたがやはり有益な情報はないらしい。
そこで、リュウジは母、ケイコの元に届いているメールについて話した。
「…CR−V…車種は共通しているようだな…。やはりフリーメールか…追跡は
まず不可能だ…」
志賀マサト、委員会は新聞委員会だが、部活動は電算機同好会。パソコンに
詳しい。特にハッキング、クラッキングの類には明るかった。
「…しかしもしこのゴドウィンって野郎がが静岡の自殺体だったとしたら…?」
リュウジは泣いてしまった。
つづく
「…餅は餅屋…軽子沢調査隊に協力要請…」
「そうだ!それがいい!」
的場リュウジ、意外と薄情だ。例の心霊写真についてもそうだが、
自分の手に余ることについては人任せな部分もある。
(第九十六話 『倨居(うつい)』 参照)
「…と、いうわけだ」
「…何か怖いですね…」
雪野カエデは興味を示した。霧原トオルとサヨリは話を聞いているのか
いないのかよく分からない。
「是非、君たちに調査してもらいたい!期待しているヨ!」
もうかなり人格が変化しているが的場リュウジの発言である。とにかく
幽霊は駄目なのだ。
いそいそと二年A組の教室をリュウジは出て行き、調査隊だけが残った。
「…どうするの?」
「どうしよっか」
「…ゴーストさま…(第四話 『天体観測』 参照)」
つづく
「ゴドウィンを呼び出してみるんですか?」
「そういうこと」
「本名分からなくてもできるのかな…?」
「ネオ・ゴーストさまで試してみましょう…」
「ネオ!」
聞いたことがない。『ゴーストさま』は、いわゆるコックリさんや、
エンジェル様の一種であるが、特定の故人を呼び出せる特徴が
ある。例えば徳川家康を呼び出すことすら可能なのだ。
その進化系である『ネオ・ゴーストさま』をサヨリは知ると言う。トオルも
カエデも初耳だった。
「ど…どうやるんですか…?」
「ゴーストさまは紙を使う。しかしネオ・ゴーストさまは肉体を使うの」
「肉体!」
「そう…。身体に霊を、降ろすのよ!」
教室の窓ガラスを木枯らしが叩いていた。
つつづく
マジックで、サヨリの額に『ゴドウィン』と書く。
それだけ。
『ネオ・ゴーストさま』は呆気ないほど簡単だった。
「コンニチワ。ボク、ゴドウィンデース」
「え?」
「ゴドウィン。何デ呼ンダ?忙シイ。早ク帰リタイデース」
「…サヨリさん…ですよね…?」
「ボク、ゴドウィン」
「何でカタコトなの…?」
「外人。ボク外人。トム、ゴドウィン」
「…お帰り下さい…」
「グッドラック」
ばったりとサヨリは倒れた。
つづく
「はっ!あたしどうしてたの!記憶がない!」
「嘘くせぇ…」
「…手に負えないですね…」
結局事件は振り出しに戻り、的場リュウジの手元に戻された。
「使えねぇ…」
「しょうがないよ…相手がメールじゃ俺の右手も使えないし…」
「『調査隊』だろうが貴様ら!『調査』しろ!」
「あんたも新聞委員でしょ…」
「…怖いんだね…要するに…。お化け…」
またリュウジは泣いた。
「あの、とりあえず、ゴドウィンさんからの誘いを受けて、待ち伏せて
みるのはどうですか…?」
意外なカエデの提案に凍りつく。そうだ何故それをしなかったのか。
一応のるだけのってみる価値はある。もし祟りや呪いの類であれば、
とっくに何らかの被害を受けていていいはずだ。
つづく
相手がせいぜいメールを出してくる程度の能力しかなければ、
そのまま迷惑メールとして処理すればいい。
待ち合わせにこなければ単なるこけ脅し、やって来たら来たで
それこそ的場リュウジの出番である。
「大丈夫かしら…」
提案に、的場ケイコは不安な顔色を見せた。
「俺に任せろ。マサトもついている」
「…頼むよ!リュウジ君!」
「貴様にリュウジ呼ばわりされる覚えはない!」
まだ、校長を未来の父親と認められないリュウジである。
「…ま、的場君…」
「それでよし!」
つづく
『分かりましたそんなに言うなら約束ですから一緒に
死にましょう、待ち合わせの時間と場所をお願いします』
というメールを出すと、ただちに丁寧な返事がゴドウィンからあった。
待ち合わせ場所は以前と同じ。ケンシロウとケイコが出会った、都内の
ある小さい駅である。
駅前はロータリーになっていて、クルマの流れは一方向だった。南側から
やってきて、駅前のロータリーをぐるりと回ってまた南に向かっていく。
これは好都合だった。駅前に向かう道はその一本の一方通行。狙撃には
もってこいだ。駅から五百メートルほど離れた雑居ビルの屋上にリュウジは
待機。ゾブロジェブカベスティン・ファルコン・スナイパーライフルを構える。
アンチマテリアルライフル。相手が戦車ならともかく、ホンダCR−Vなど
一発で貫通する。貫通どころか、車体は木の葉のように舞い上がり、確実に
破壊できるだろう。
駅前には緊張の面持ちのケンシロウとケイコ。そのすぐ側にはさり気なく
マサトを配置。そして更に遠巻きにして、軽子沢調査隊メンバーが様子を
伺う。何故かサヨリは白い着物姿で雪女のようだった。余りに目立つので
死角に入るためちょこまかと動いていて鬱陶しい。
「なんでそんなの着てきたんですか?」
「寒くないの…」
「…ファッション…都内だし…」
つづく
「ファッションって普通人に見られる為にするんじゃないの?」
「…真のファッションは自己満足よ…トオル…」
「…へぇ…」
「ところでCR−Vってどんな形なんですかね?」
「…俺は知らないよ…」
「あたしも存じ上げないわ」
「…」
だめだめである。
やがて、南に、一台の怪しげな車影が見えた。ゆっくりとこちらに近づいてくる。
マサトが無線でリュウジに言う。
「CR−Vだ!見えてるか!」
慌ててスコープを覗くが確認できない。
「…確認できない!」
「今、ファーストキッチン前を通過!こちらに向かっている!」
つづく
「落ち着けリュウジ!今サンクスの前だ!前にタクシーがいる!」
やっとスコープで捉えることができた。
「確認!」
「構わん!射殺しろ!」
「指揮権はこちらにある。俺の判断で決める」
「了解!」
スコープがCR−Vの運転席を覗いた。そこは、無人だった。
「…ジーザス…!!」
的場リュウジ、失神。
「…リュウジ…どうした!撃たないのか!目標、更に接近!」
リュウジからの返答はない。CR−Vは駅舎に近づき、ケンシロウたちの前で
止まると助手席のドアが開いた。中には誰も、何者も乗っていなかった。
『…お待たせしましたゴドウィンです…どうぞ乗って下さい…』
「!」
つづく
マサトは無人の車内にM67手榴弾のピンを抜いて投げ入れた。
パイナップルと通称で呼ばれる確かにパイナップルに似た手榴弾、
MK2に比べ重量は半分。しかし威力は同等の炸裂破片型手榴弾。
単に爆風、爆圧によるダメージだけではなく、その容器の破片そのもの
が爆発で四散し、特に狭い空間においては有効な兵器だ。
こんなものが車内で爆発すれば乗っている人間は粉々になった手榴弾の
破片を雨あられと浴び、致命傷を負う。
投げ入れると同時にクルマのドアを閉め、両肩にケンシロウとケイコを抱いて、
倒れ込むように伏せる。
CR−Vは爆発し、吹き飛んだ。
「状況終了。速やかに退避!」
近くに交番もある。とにかく早く逃げる必要があった。ケンシロウとケイコを
連れて駅へと消えるマサト。離れて見ていた軽子沢調査隊の面々は、ただ
新聞委員会の手際の良さに感心するばかりである。
リュウジは雑居ビルの屋上で、対物ライフルを抱えたまま失神していた。
以来、ゴドウィンからのメールは来ない。
終
もう怖いんだか笑えるんだか…
トムってだれだよwwwwwサヨリが笑いキャラクター
695 :
674:2006/10/25(水) 02:25:22 ID:gUcNaAF+O
うおお…。本当に続編が!!!
作者さん、ありがとうございます!^^
が、作者さんを困らせてしまった様でスイマセンでしたm(__)m
でもこれで校長達もひとまず安心ですね^^
よかったよかった。
しかし新聞委員会は相変わらずやることが大胆すぎwww
リュウジとサヨリにも笑いましたwwww
リュウジかわいいよリュウジ(´Д`*)
サヨリも意外とお茶目(死語w)な一面があるんですね。
軽子沢調査隊のみんなとより仲良くなりつつある、という事なのかな??
まぁそれがまた彼女の辛さに繋がってしまうのでしょうけれど…。
リュウジ、やはりまだ克服出来てないのかぁー。
またユウジロウに荒治療して貰うのだ!
そういやユウジロウも初期はお化けにビビリまくりで、しかもただの変態だったな〜。
リュウジも最近内面描写増えてきたから、その内渋い影のあるキャラに変わっちゃうかもなw
リュウジ失神したままかよ〜www
新聞委員やることが凄すぎwしかもいたって本人たちは
実戦そのものの真剣さでそれが現状とのギャップで面白すぎww
作者さん最高です!!!
それにしてもサヨリが確かにちょっとお茶目で可愛かったw
サヨリの制御が全くできない…こんなキャラクター初めてだ…。
怖い…怖いよ…(;´д⊂ヽ
このまま『あぶない刑事』の、浅野温子さんみたいな『単に変な女』
ってキャラクターにならなきゃいいけど…。俺が描きたいのは人の
明と暗だ。(全作共通)
あと一話入りきるかな…今日分は短めでいくか。
700 :
本当にあった怖い名無し:2006/10/25(水) 21:46:20 ID:XOyhre3t0
さてここらで怖い話でもするか。
その日、岡崎リョウコの姿は図書館にあった。帰宅して、受験勉強をしようと
思っていたが、近所で道路工事が行われていて、騒音が気になった。
つづく
耳がいいというわけでもないが、リョウコは道路工事や自動車の騒音、
また隣近所から漏れ聞こえてくるテレビの音や音楽などが苦手だった。
集中力を奪われるのだ。普段の小さな邪魔な音ならば、自分の好きな音楽
でもかけて、かき消してしまうのだが、その道路工事の音は近く、騒がしく、
そう簡単にかき消えてくれそうにない。
夜になれば終わるだろうと、とりあえず図書館の自習室を使わせてもらおうと
思い立った。
しかし、自習室は既にいっぱいで、彼女は仕方なし、書架を眺めていた。
高い位置に『西洋 魔女狩りの歴史』という本を見つけて興味を持ったが、
手を伸ばしても微妙に届かない。
すると、横からにゅうと手が伸びてきて、その背表紙をつかむと、
「これ?」
という声が聞こえた。横を見ると、高校生か大学生か、とにかく自分より少し
年上の青年がいた。顔立ちが美しかった。
「…あ…はい…」
身長が高い彼は、その本を引きずり出すと、リョウコに手渡し、微笑んだ。
図書館でナンパか…リョウコは思ったが、美しい彼に多少の魅力を感じない
ではなかった。
つづく
面食い、というわけではない。今まで何人か付き合った男子はいたが、
いずれも周囲から、何で彼を選んだのか、と聞かれることもしばしばで、
見た目よりも、内面を彼女は重視する。
しかし、彼の美しさは単純に芸術的に評価できた。恋愛感情とはまた
違う。人間に対して失礼だとは思ったが、鑑賞に堪えうる容姿を彼は
していた。
「ありがとうございます」
頭を下げると、彼は言った。
「日本の文化を勉強したいのだけど…」
彼が言うには、日本の文化、特に日本人の特色について色々と学びたくて、
図書館に来たのはいいが、漢字が難しくてよく分からないので、話を聞かせ
て欲しいらしい。
しかし口に出す言葉は流暢な日本語で、顔立ちも美しくはあるが、日本人的で
あった。韓国か、中国の人だろうか。でもそれなら漢字が読めないというのは
おかしくないか。やはりナンパか、とも思ったが、二人は図書館の外のちょっと
した庭のベンチに腰かけて話をすることになった。
彼は基本的な日本文化については知っているようだったが、決定的に間違った
部分もあり、相変わらず日本人は主に下駄や草履を履いているなどと思っていた
らしい。
つづく
会話は流暢だった。全く日本人と変わりはない。話が進んで、つい
リョウコは彼に何人か訊ねた。
「宇宙人…って言ったら信じてもらえる?」
しばらく考えていたが、彼の目は人を馬鹿にしたような目をしていなかった。
「…うん、信じる」
実際に宇宙人は見たことがある。(第四十二話 『不惑知らず』 参照)実際に
見たのだから、信じろと言われれば信じられる。
「…笑いもしないですぐに信じてくれる人は始めてだ…」
驚いているのはむしろ彼の方だった。今まで何人かと接触はしたらしいが、
彼が真剣に宇宙人だということをアピールすればする程、呆れてしまうか
怒ってしまうかして、逃げられてしまうと言う。確かに無理からぬことだろう。
「じゃあ、あたしが日本のこと教えたら、そっちの星のこと、教えてくれますか?」
「いいよ。もちろん」
彼は優しく笑った。ある程度のことを聞き取ると、彼はサブカルチャー的なこと、
流行っている小説や、映画、遊びなどのことも色々と知りたがった。
じゃあ駅前に出ようと二人歩き出すと、並んでいる街路樹に辛うじて残っている
枯れた葉や、木枯らしにも負けず青く茂る常緑樹の葉、雑草などを集めては
何かバッグに詰めていた。いかにも私は宇宙人ですと言わんばかりの行動だが、
彼は真剣な様子である。
つづく
駅前で、彼はリョウコに勧められて何冊かのファッション雑誌や
漫画を購入した。他に興味をもったアダルト雑誌も恥ずかしげも
なく彼はリョウコの見る前で手にし、レジに向かった。
「…お金は偽物のお金なんだ。余り使うと迷惑…」
「あぁ…そうなんだ…」
「あれはゲームセンターというの?」
「そう。余り行かないけど…」
「あの前で余っている人は何をしてるの?」
「プリクラ。写真。分かる?みんなで写真撮ってるの」
「分かるよ。カメラで撮るやつ。撮ってどうするの?記念?」
「うーん…そうだね。記念っていうか、友達の証し…?」
「…友達…。一緒に撮ってくれる?」
何か、急に告白されたように、心臓が高鳴ったがリョウコは応じて、
二人でプリクラを撮った。どうしていいのか分からないらしい彼は、
真面目な顔でレンズを覗き込んでいた。
「撮ったら、落書きするの」
「写真に?」
つづく
リョウコキテタ―――(o≧∇≦)o
私もリョウコ――――(*´∇`*)
>>706 そんなこと言っちゃうとオチがこわいよwwwww
プリクラの写真に落書きする。リョウコはせっかくだから、彼の
星の文字を書いて、とねだった。彼は彼の名前を書いた。
不思議な文字だった。
「なんて読むの?」
「日本人には発音が難しいよ。リャウドヌゥスルヴィェットラゥトゥル。僕の名前」
「…難しいね…ベトラって呼んでもいい?」
とりあえず聞き取れた部分はベトラと聞こえた。
「うん。ベトラ。中途半端だけどね」
「中途半端って?」
「君の名前は?」
「岡崎リョウコ」
「だとしたら…、ザキリって呼ばれるのと一緒。中途半端」
「おか…ザキリ…ようこ…?ほんとだ。中途半端だね」
二人は笑って、夜になった。いいものを見せてあげると彼は彼女を
駅からだいぶ離れた公園に連れて行った。第二子供広場。閑散とした
その公園は、二人、知る由はないが、山形アカネが幼い頃、『薮睨みの
老人』と出会った、その公園である。(第七十一話 『幸御魂』 参照)
つづく
ベトラは、流線型でスタイリッシュな携帯電話かリモコンのような物を
取り出すと何か操作した。すると、公園の中央に光り輝く、美しい
メリーゴーラウンドのようなものが空間に浮かび上がった。
「…すごい…きれい…」
「UFOって呼んでるやつだよ。乗り物。これに乗って帰る。今日は
いい勉強ができたよ。ありがとう。後一つ、頼みたい」
「何?」
「日本人の食文化が知りたい。歳を取ると食べるものの好みがどんな
ふうに変わるか。若い人と、歳を取った人と食べる好みが違うと、聞いた」
「…そうだね。でも何て説明すれば…」
二人はキスをしていた。優しく腰を抱かれ、引き寄せられて、くちびるを合わ
せて。リョウコはわけがわからず、しかし抵抗もしなかった。何かが口の中に
入ってくるのを構わず、飲み込んだ。
「それでいい。それで分かる」
彼は口移しで、リョウコにある小さな小さな機械を飲み込ませた。それは胃に
留まり、リョウコが口にする食べ物の成分などの情報を絶えず彼の元へ送り
続ける機械らしい。人体には無害だという。
地球上でキスと呼ばれる行為は彼の星ではごく当たり前で、握手のようなもの
らしい。リョウコは日本では特別な意味があることを教えた。
つづく
ベトラはひどく困惑して、謝罪したが、リョウコは許した。そして、ベトラは、
日本人のキスの意味としても今のキスは正しかったと言い残すと、輝く
円盤に乗り込んだ。
リョウコは今になって少し寂しい気分になったが、自分の体内にあるこの
不思議な機械があるだけで、ずっとベトラが見守ってくれているような気が
して、何となく幸せだった。
円盤は更に輝いて、音もなく空に浮いた。高く高く。
その時何か、がんと金属同士が強くぶつかるような音がして、円盤は光を
失って、ふわふわと舞い落ちる木の葉のように落ちてきた。
「?」
ベトラは降りてきて、不思議そうな顔をして言った。
「故障かな…すごい音がした…直るまで飛べない…」
「じゃあもうちょっとここにいるの?」
「いるしかない」
何だか、リョウコは嬉しくて、思わず彼に抱きついた。
つづく
その頃、第二子供広場から、三百メートルほど離れた
高層マンションの屋上にいた、的場リュウジは泣いていた。
「やっと…やっと…」
母親を半ばレイプしていた鬼塚ケンシロウを撃ちもらし、更に
ゴドウィンのCR−V狙撃の際には失敗し、とにかく狙撃したい
一心で何かないかと毎夜毎夜待機していた甲斐があった。
怪しく光る円盤をゾブロジェブカベスティン・ファルコン・スナイパー
ライフルの12.7ミリの弾丸が撃ち抜いたのだ。
そして謎の光る円盤は光を失った。狙撃は成功した。
リュウジは、セブンスターに満足気に火を着ける。格別であった。
終
リュウジGJとしか言えんwwww
はからずも銃弾がキューピッドの矢に・・・
作者さんほんわかさせてくれてありがとう!
>>706 えーリョウコタン…綺麗なお名前ですよねー。女なら俺もリョウコが
いい…。合いの手サンクスです!
>>707 そんなこと言うから面白いオチになっちゃったじゃん(笑) いやはじめ
から怖くするつもりはなかったよ^^
今回の作品は、筋肉少女帯の『くるくる少女』という曲にインスパイア
されて書いております。新スレにUFOの話を希望された方がおられた
ので一応リクとして受け付けました。ありがとうです^^