ほんのりかどうか。
腹減って来たけど先に書いてみる。
子供の頃、クラスメイトと一緒に夕暮れどきの河原で遊んでると、近所に住んでるらしい上背のある爺さんが寄ってきた。
俺等を見ると「何やってるの」「それ楽しいの」などと話しかけて来て、爺さんの人懐こい笑顔に釣られて、俺達は爺さんに餓鬼にとってしか重要でない話しを色々と聞かせた。
爺さんは暫く俺達の傍に居て愉快そうに笑っていたが、夕焼け色が濃くなって来ると、徐に水辺に近付いて、夕陽を見たまま動かなくなった。
どうしたんだろうかと思って近付いてみると、爺さんは夕陽を見上げながら突っ立って、事も有ろうか息子をスコスコ。子供心に「こんなに近くに餓鬼が居るってのに、こりゃ善良に見えて変態だな」と思い、やなモン見たなとすぐに視線を落したのだが、その先に変な物を見た。
朱色に染まった水面から、白い女の顔がプカリ。
口を半開きにして、珍しいモンでも見付けたように爺さんの息子を凝視。
俺は驚いてスッ飛んで逃げ出し、他の連中もそれに続いた。
追憶してみれば、よく増水しちゃあ、人を引き摺り込む川だった。
あの爺さんも連れてかれたかもと空想してみるものの、それ以来河原へは近付かなくなったから、オチらしいオチは無い。