自宅が幽霊屋敷の人yo集まれ

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7作者 ◆xDdCPf1Ny.
さてここらで怖い話でもするか。

最近オカルト同好会で話題になっているブログがあった。

その名も「宗ちゃんの幽霊屋敷」

神奈川県某所に住まう宗何某という人物が夜な夜な我が
家に取り付いた霊とコンタクトを取る様が実録形式で
公開されているという。

なぜか一枚の写真もアップされず、ほぼ文章のみの
コンテンツでありながら連日更新されてはその都度
反響を呼び、アクセス数はうなぎ登り、掲示板への
書き込みも半端ではなかった。


つづく
8作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 00:42:13 ID:Lqwn9U1w0
当然そんなエロ画像の一枚もアップされていないような
代物に山形コウジロウが興味を示すはずもなかったが、
生徒である会員があまりにもしつこく薦めるのに負けて
一度だけ覗いてみたことがあった。

適当にクリックした過去ページがちょうどその「交霊術」
の解説で、幽霊(カマジュンと呼ばれているらしい)は姿を
見せない代わりにラップ音で意思表示をし、宗何某の
質問にも答えてくれるという。

ただしモールス信号のような複雑なものではなく、
いわゆる決定疑問文(yesかno)でしか答えられず、
yesなら「コン」と一回、noなら「コンコン」と二回
乾いた音を放つという。


つづく
9作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 00:42:57 ID:Lqwn9U1w0
(ご都合主義もいいところだ)と早くも呆れながら

「ねー先生も一度見てみてよう〜。
感想聞かせてね〜♪」

と一番かわいい女子会員に腕をつかまれて甘えられた
時のその笑顔と未発達な胸の感触を回想して鼻の下を
伸ばしながら(ただしこの程度では一物のほうはピクリ
ともしない。コウジロウは基本インポである)何とか
我慢してもう一ページだけ読み進めた。

最初はその幽霊が何者でいつどのように死んだのか、
現世に未練があるのか、成仏はしたくないのかという
おざなりな応対だったが、だんだんおかしな方向へと
変わっていった。


つづく
10作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 00:44:07 ID:Lqwn9U1w0
「俺のこと好き?」
「(・・・コン)」

おいおいこれ何てエロゲ(ry

どうも「信者」と呼ばれる固定ゲストたちが掲示板で
面白おかしく煽った結果らしい。

(要するに萌え系ネタブログか)コウジロウはそこで
ブラウザを閉じた。

「美人の幽霊とヤれる話とかならともかく。
もう生きてる女は飽きた。
あ〜あヤりてー」


つづく
11作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 00:44:54 ID:Lqwn9U1w0
翌日の放課後、同好会の時間が始まるまで、生徒には
何と報告しようかという軽い不安がコウジロウに
のしかかるが、意外にも生徒のほうからそれを払拭して
くれた。

あのブログの新展開の話題で持ちきりだったのだ。

「先生!オフ会に行きませんか!」

女生徒が唐突に問い掛ける。

「オフ会?何それ?」

「オフラインミーティングですよ、知らないんですか?
いやだなあ〜」


つづく
12作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 00:45:45 ID:Lqwn9U1w0
「それは知ってるよ、だから何のオフ会なの?」

かなり興奮気味の模様だったが、根気良く聞いている
うちに事情が飲み込めてきた。

宗何某が件の自宅を開放してオフ会を開催する予定で、
ただし参加者は希望者の中から抽選で選ばれ、当日
ギリギリまで場所は明かされないという。

今やすっかり「信者」である女子会員たちは一も二も
なく応募したが、そのうち一人があっさり当選したの
だという。

しかし問題はこれからだ。

いうまでもなく彼女は未成年である。


つづく
13作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 00:46:36 ID:Lqwn9U1w0
年齢層もまちまちで見ず知らずの集団に一人で乗り込む
のは危険極まりない。

掲示板の雰囲気では「信者」は男女半々くらいらしいが
実際は知ったことじゃない。

「現実には男と女がいるが、ネットには男とネカマが
いる」

というのがコウジロウの情報倫理学の授業での口癖でも
あった。

当然親にも反対されるだろうし、やはり参加は
ためらわれるという。

そこでコウジロウに代理を頼んだのだった。


つづく
14作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 00:47:34 ID:Lqwn9U1w0
「ねー先生お願いしますう〜。
こんなこと頼めるの先生しかいないんですう〜」

キャピキャピのアニメ声で篭絡にかかる女生徒。

しかしコウジロウには興味も何も無い、大方キモオタ
集団であろうオフ会など想像もしたくなかった。

助けを求めるように視線を事実上唯一の男子会員である
霧原トヲルへと走らせるが、これも未成年には
違いないし、かなりの美少年である。

「霧原くんは絶対ダメ!
ウホッされてアッー!だよ!!」


つづく
15作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 00:48:39 ID:Lqwn9U1w0
先回りするかのように早くも腐女子の片鱗を見せる
女性徒。

結局代理としてオフ会に参加する羽目になるコウジロウ。

女生徒の話では最近幽霊が二人に増え、宗何某が
言うには波長が合うようになってきて、少しずつ容姿も
視認できるようになった。

いずれも若い女性の霊でなかなかの美人らしい。

実際のところは「信者」連中の憶測らしいのだがそれに
一縷の望みを託し、また数年後には「食べ頃」になって
いるであろう女生徒に恩を売っておこうという魂胆も
あった。
16作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 00:49:36 ID:Lqwn9U1w0
「万が一本当だとしたら」

と気分の切り替えも早く妄想モードに突入する
コウジロウ。

「二人まとめて頂くか!
幽霊相手ならゴムいらねーし、
万一赤ちゃんできてもそれも幽霊!
これがホントの水子霊ウヒャヒャ。
キモオタどもは先に皆殺し!
死者も生者も文字通り極楽往生、
昇天させてやる!」

邪悪な笑みを満面に浮かべ、気味悪がって遠巻きに
なった群集には目もくれず、電車に乗って目的地へと
向かう山形コウジロウであった。


つづく
17作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 00:50:20 ID:Lqwn9U1w0
K駅の改札を潜り西口から出る。

東口は昔ながらの繁華街だったが、こちら側はかつての
日本有数の家電メーカーの本工場が閉鎖・解体されて後、
その跡地が荒涼茫漠と広がっているという、そのまま
西部劇のロケでもできそうな、まさに荒野のような
殺風景ぶりであった。

すこし歩けば商店街などもあるにはあるが、東側とは
比べようも無い寂れようである。

当選者当てのメールに指定された集合場所はそこから
少し北へ、T川沿いに歩いて行ったところであった。


つづく
18作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 00:51:10 ID:Lqwn9U1w0
青テントの立ち並ぶ川岸を横目に歩きながら、何やら
徐々に異世界に足を踏み入れつつあるような錯覚を
覚えるコウジロウ。

線路一本隔てた向こう側はデパートや銀行が軒を連ねた
繁華街だというのに。

初めて訪れる土地だけにあらかじめ地図は用意して
あったが、ありえない位置(川の中)に家が建って
いたり、何も無いはずの公有地に住宅街(というか
バラック)が出現したりと、もはや山の手育ちの
山形コウジロウの理解の範疇を超えていた。


つづく
19作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 00:52:09 ID:Lqwn9U1w0
引き返すなら今のうち、と一瞬踵を返そうとするが、

「なあに一度は死んだ身。
幽霊になって美人霊とハーレム暮らしもまた一興」

と無意味に勇ましく歩を進める。

この男の神経もまた我々の理解を超えている。

ひび割れ、所々水溜りの残るアスファルトの道や、
時には全く舗装されていない泥道を通り、
迷路さながらに複雑に入り組んだバラックの並びを
抜けながら、時折さまざまな角度から人の視線を
感じたが、奇妙なことにこの地区に足を踏み入れてから
ただの一度も人の姿を見ていない。


つづく
20作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 00:52:46 ID:Lqwn9U1w0
「まさか幽霊屋敷どころか町そのものが幽霊町?
これがホントのゴーストタウン♪」

オヤジギャグに自ら声を出して笑う四十男コウジロウで
あった。

やがて集合場所である教会のような建物へとたどり着く。

すでに午後5時、日はかなり傾いていたが時間通りだ。

だがほかの参加者の姿は見えない。

生徒からプリントアウトして渡された招待状を見直すが、
場所も時間も正しいはずだ。


つづく
21作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 00:53:27 ID:Lqwn9U1w0
「あの、もし、『宗ちゃんの幽霊屋敷』ですか?」

不意に声をかけられ顔を上げると、そこには小柄な
青年の姿があった。

言葉に少し訛りがあり、顔立ちも日本人とは若干
違うようだったが、これから幽霊を犯そうという
コウジロウにとって驚くほどのものではない。
そうだと返答する。

「お待ちしておりました。
ハンドルネームと参加者IDをどうぞ」

慌てて招待状を見直すが、あの女生徒のハンドルが
これまた読みにくいギャル文字であった。


つづく
22作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 00:54:02 ID:Lqwn9U1w0
「≠ョゥ⊃」=「キョウコ」と解読するのに少し時間が
かかり、また下のほうに小さくプリントされている
番号を読み上げるのに手間取った。

不信がられたかと思ったが、青年は無表情のままうなずくと

「どうぞこちらへ」

とコウジロウをさらに町の奥へと案内した。

行けども行けども代わらぬバラック風景、さらに日は
暮れ行き視界は赤一色に染まり、段々時間感覚も
失われるようだった。

もう何キロも歩いているような気がしてきた。


つづく
23作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 00:54:46 ID:Lqwn9U1w0
青年は終始無言で先を歩いていたが、さすがに我慢
できなくなって背中から声をかける。

「あの・・・あなたが宗さんですか?」

「そう」

(それはひょっとしてギャグで言っているのか?)

青年は振り向きもせずさらに歩き続ける。
ここで置いていかれたら間違いなく迷子だ。

四十路にもなってそれはシャレにならない。


つづく
24作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 00:55:24 ID:Lqwn9U1w0
「ほかの参加者の皆さんはどうしたんですか?」

追いすがりつつ今更ながら当然の疑問をぶつけてみる。

「皆様には時間をずらして来ていただきました。
恥ずかしながらここの住人はよそ者を歓迎しませんので、
余計なトラブルを避けるために。
キョウコ様が最後です」

(俺はカイジか!)

さらに質問しようと思った矢先、いつしか道の左側には
長い塀が伸び、こんもりとした木立が茂っていることに
気が付いた。


つづく
25作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 00:56:01 ID:Lqwn9U1w0
「もうすぐですよ」

そう励まされ疲れ気味の足を歩ませるが、これまた
ゲームの3D迷路のように再び同じ風景が延々と続くの
だった。

(この塀の向こうには何が・・・?)

沈む夕日の最後の光を頼りに何とか中をのぞいて
見ようとするが、木立に遮られてほとんど何も見えない。

「ここです。お疲れ様でした」

視線を正面に戻すと、そこにはいつの間にか門があり、
青年が鍵を開けているところだった。


つづく
26作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 00:57:10 ID:Lqwn9U1w0
「お入りください」

静かだが鋭い視線を向けられ、急かされるように門を
くぐるコウジロウ。

そこでまた目を疑うような光景が。

木立だと思っていたものはほとんど森と言ってもいい
代物で、細い一本道が視界の限界まで続いていた。

一体どれほどの広さがあるのだろう。

地図を取り出して確認しようかと思った矢先、背後で
ガシャンと重い金属質の音がした。

「真っ暗になる前に行きましょう」


つづく
27作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 00:58:04 ID:Lqwn9U1w0
施錠を済ませた青年が再びコウジロウを先導し、その
有無を言わさぬ雰囲気に気圧され、もう膝が笑いそう
なのを我慢してコウジロウもとぼとぼと歩く。

夕べはアヤネと少し頑張りすぎたのか、腰まで痛い。
椎間板ヘルニアか何かになりそうだ。

まさに1分が1時間に感じられるというのが比喩でも
なんでもない状態であった。

完全に日は沈み梢越しにかすかに星が見える。
フクロウの声まで聞こえてくる。

とても百万人都市の市内とは思えない。


つづく
28作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 00:59:45 ID:Lqwn9U1w0
もうどれほど歩いたのか分からないほど歩きに歩き、
もはや体力の限界を越え、かろうじてコウジロウを
支える気力も尽きかけたその時、彼方に小さな白い光が
見えたようだった。

「あれが我が家です。
カマジュンと真チャンがお待ちかねですよ」

青年の声を合図とするかのようにそれは少しずつ
家の形になってきた。

そこでみるみる回復するコウジロウの気力。

青年の背中を突き飛ばし、信じられない程の
韋駄天ぶりで走り出し、砂漠でオアシスを見つけたかの
ようにまっしぐらに白い家を目指す。


つづく
29作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 01:02:13 ID:Lqwn9U1w0
「待ってろ幽霊!
足腰フラフラにしてくれた御礼だ!
そっちも足腰立たなくなるまでヤってやる!
あ、幽霊に足は無いかw」

鬼神コウジロウが完全に覚醒したようだ。
あっという間にその家にたどり着く。

小さな窓からはこうこう光が漏れ、ドアは閉まっていた
がお構いなし、

「間合いが遠いわ〜!」

とばかりに猛烈なショルダータックルをかます
コウジロウ。


つづく
30作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 01:03:16 ID:Lqwn9U1w0
幽霊「屋敷」と呼ぶにはお粗末過ぎる山小屋のような
平屋で、ドアも頑丈ではなかったのか、簡単に破られた。

そこにはまさにコウジロウが望んでいた通りの光景が
広がっていた。

全裸で床にマグロ状態で横たわる数十人のキモオタ達と、
彼らと代わる代わる相手をするこれまた二人の全裸の女。

噂の幽霊か、生身の女か、そんなことは今更どうでも
イイ!

「オレを差し置いて何しとるか〜!!!!!」

気合一閃、コウジロウの全身はみるみるバンプアップし、
服は裂け四方八方にキャストオフする。


つづく
31作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 01:04:05 ID:Lqwn9U1w0
これぞ陰行流艶術奥義、愛染明王呼吸法!

常人には30%が限度といわれる性欲の身体能力への
転化の、残り70%をも引き出せるのだ!!

シュワルツェネッガー顔負けの肉体へと変貌し、全裸で
仁王立ちとなるコウジロウの股間には、まさに鬼に金棒
とばかりにそそり立つ一物が!!!

「うをををを〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」

二人の女をキモオタ達から無理やり引き剥がし、
あらゆる体位で同時または交互に犯すコウジロウ。


つづく
32作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 01:04:55 ID:Lqwn9U1w0
不意の新顔に驚いたのか、またコウジロウのあまりの
激しさに耐えられなかったのか、コウジロウの肌が裂け
血がにじむほど爪や歯を立てる女達であったが、
痛みをも性感に転化できるコウジロウには何の障害にも
ならなかった。

やがて二人ともすっかり従順になり、コウジロウの
言いなりとなり、ロータリーピストンのように交互に
体位を入れ替えては激しく交わる3人。

もう何度射精したか思い出せないほど無尽蔵に湧き出す
コウジロウの精液。

こんな気持ちいい3Pは久しぶり、いや初めてだ!


つづく
33作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 01:05:44 ID:Lqwn9U1w0
さすがのコウジロウもそろそろ限度を感じ、
もう後一回戦だけ、と少しだけ冷静さを取り戻した時、
女たちがぐったりしていることに気がついた。

(まずい、少しやり過ぎたか!)

一気にコウジロウの血の気が失せる。

肩を揺さぶったり頬を叩いてみたりしたが何の反応も
無い。
息をしている気配も無い。

(強姦致殺・・・)

手錠をかけられ連行される自分を想像するコウジロウ。
母シネコと妹アヤネが泣いている・・・


つづく
34作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 01:06:37 ID:Lqwn9U1w0
「蛇牙!狸虎!」

いつの間にか先ほどの青年が戸口に立っていた。

振り返ると同時にコウジロウは恐るべき事実に初めて
気が付いた。

見るも無残に破壊され、血の海に浸された肉塊の只中に
いたのだった。

すぐ足元にはかろうじて人の頭部と認識できる物体が
転がっていた。
野獣に食いちぎられたかのような痛々しい傷がある。

あのキモオタ達の一人であろうか?


つづく
35作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 01:07:22 ID:Lqwn9U1w0
(馬鹿な・・・)

いまだに状況を把握できないコウジロウ。

「違う、オレは殺ってない!
犯ったことは犯ったけど殺ってはいない!」

的外れな弁解をするうちに筋骨隆々だったコウジロウの
肉体は見る見るしぼんでいき、元の貧相な四十男の
それになっていた。
愛染明王呼吸法のタイムリミットが来たのである。

同時にとてつもない疲労感に見舞われるコウジロウ。
まるで10年分の精力を使い果たしたかのようである。


つづく
36作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 01:07:59 ID:Lqwn9U1w0
床に手を尽き、肩で息をしながら目を閉じ、呼吸を
整えつつ再び目を開けると、そこには見たことも無い
醜悪な怪物が二体横たわっていた。

体は人間の女のそれであるが、顔は片や蛇のように鱗に
覆われ、ギョロっとした目、長い牙と舌を剥き出し、
片や虎のように剛毛に覆われ、上下に並んだ鋭い牙を
覗かせていた。

「よくも私のかわいい妹を・・・」

コウジロウににじり寄り、怒りをあらわにする青年の
顔ももはや人間のそれではなかった。
狐か狼か、イヌ科の猛獣のそれのようであった。


つづく
37作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 01:08:43 ID:Lqwn9U1w0
「ま、待て、話せば分かる!」

「キエーッ!」

甲高い怪鳥音と共にコウジロウに飛び掛る青年。

そのまま飛び蹴りが顔面にヒットしていた。
たまらず床を転げまわるコウジロウ。

しかし打点が高すぎたのか本来の威力を発揮
できなかったようだ。
でなければ即死だったろう。

幸い青年も妹と称する怪物の死体に気を取られ、まだ
次の攻撃には移ってこない。


つづく
38作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 01:09:25 ID:Lqwn9U1w0
うつぶせに大の字になったコウジロウに目もくれず、
コウジロウ同様無駄な介抱を試みた。

それらが全て徒労だと分かったのと、コウジロウが
何とかヨロヨロ立ち上がるのとが同時だった。

再び戦闘モードに入る二人。

しかしコウジロウはもはや立っているのがやっと、
青年は怒りに燃え、今度こそ必殺キックを繰り出す構え。

そもそもコウジロウの格闘技経験といえばブラジリアン
柔術をかじった程度で、お家芸の陰行流艶術もシネコや
アヤネのように「お留め」の技術は伝授されていない。


つづく
39作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 01:10:02 ID:Lqwn9U1w0
素手ではまさに「犯れるが殺れない」のがコウジロウと
いう男であった。
劣勢は誰が目にも明らかである。

徐々に間合いを詰める青年に対し、後ずさりしては壁際
まで追い詰められるコウジロウ。
もはやここまでか――

その時背中に何かの感触を感じ、とっさに振り向くと
そこには何らかのスイッチがあった。
電灯であろうか?

「キェーッ!!!」

そう思うが早いか青年の怪鳥音と、床を踏みしめ
飛び上がる音が聞こえた。


つづく
40作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 01:10:46 ID:Lqwn9U1w0
(どうとでもなれ!)

コウジロウは迷わずスイッチを押した。

すると青年のキックがコウジロウの無防備な背中に
ヒットする直前に、それとは別の横殴りの一撃を受け、
コウジロウは前のめりに倒れこんだ。

あの壁はどんでん返しの構造になっており、
コウジロウは壁の向こう側に放り込まれたのだった。

そしてそのままウォータースライダーのように螺旋状に
転げ落ちるコウジロウの体。


つづく
41作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 01:11:30 ID:Lqwn9U1w0
「ウォーッ!!!!!」

憎い仇を取り逃がした怪物の咆哮が上から聞こえ、
徐々に遠ざかっていく・・・

一体どれほど落ちたのであろうか。

落下が止まり、最下層らしい真っ暗な空間に横たわり、
助かったのかそれともこのまま死ぬのか、もうどうでも
良くなってきたコウジロウの意識が途絶える直前、
ドンという振動が上から響き、パラパラとホコリが
顔面に落ちてきた。

「アヤネ・・・母さん・・・」


つづく
42作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 01:12:41 ID:Lqwn9U1w0
「いました、生存者です!」

「・・・オレは殺ってない・・・犯ったけど殺ってない・・・」

「おい、しっかりしろ!」

コウジロウは奇跡的に救助されたのだった。

担架に乗せられ、酸素マスクをあてがわれ搬送される
コウジロウが、霞んだ視界からかろうじて目にした
ものは辺り一面の焼け野原、特殊部隊のような
完全武装の男たち、所属を明らかにする目印が何も無い
黒塗りの大型ヘリコプターであった。


つづく
43作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 01:13:23 ID:Lqwn9U1w0
「オレは・・・殺ってない・・・オレは・・・」

うわ言を言うコウジロウの右腕に注射針が刺さると、
再び意識を失った。

次にコウジロウが意識を取り戻したのは病院のベッド
だった。

担当医師の説明では工場跡に残っていた化学薬品の
引火による爆発事故で、偶々付近を歩いていた
コウジロウはそれに巻き込まれたという。

幸い外傷は軽微であったが、頭を打ったらしく
意識障害を起こしていたのだと。


つづく
44作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 01:14:01 ID:Lqwn9U1w0
「3週間ほどで退院できますよ。あなたは運がいい。
ご不幸にして亡くなった方も大勢いますからね」

医師は笑顔でそう言いながらコウジロウの耳元に口を
寄せ、

「あそこで見たものは一切忘れるんだ」

と言い残し去っていった。

コウジロウの予後は良かった。
3週間の見込みが2週間で退院できそうだった。

アヤネもシネコも、学校の同僚や生徒たちも代わる
代わる見舞いにきてくれた。


つづく
45作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 01:14:35 ID:Lqwn9U1w0
特にコウジロウに代理を頼んだ女生徒は毎日のように
現れ、

「ごめんなさい、ごめんなさい」

と泣きじゃくるのだった。

「先生なら大丈夫だよ。
君がこんなことにならなくて本当に良かった」

と口では言いながらも、

(だったら下の世話でもさせちゃおうかなー)

などと良からぬ妄想にふけるのだった。


つづく
46作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 01:15:22 ID:Lqwn9U1w0
その間見舞い客からは外界の情報を提供してもらって
いたが、どれもあの医師の言ったことと大差は無かった。

化学工場跡で市の公有地での事故で「幸い」被害者は
少なかったとのことであるが、市当局は真摯に謝罪と
賠償に努めるとのこと。

あれから数年が経った今でも時折ネットで話題になる
「幽霊屋敷」ではあったが、「あれはネットの黒歴史」
「頼むから思い出させないでくれ」という
事件そのものを風化させようという動きと、足が生えて
歩き回る「動く幽霊屋敷」のような荒唐無稽な脚色で
実態とはかけ離れた都市伝説化させようという動きが
混在し、もはや真相を知ることは不可能であった。


つづく
47作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 01:16:03 ID:Lqwn9U1w0
もともと地図上には存在しなかったあの地区の一切は
市当局によって撤去され、地上からも完全に姿を消して
いた。
今では市営住宅になっているという。

そのあまりの敏速さに当初はいろいろ黒い噂が
ささやかれたが、やがて人々は新しい話題を
追いかけては徐々にそれを忘れていった。

唯一の生き証人であるコウジロウでさえ、いまだに
あれが現実のできごとであったという実感が湧かない。

かつての入院先に問い合わせても当時の担当医師は
実在しないと言われ、自分を救助した集団が警察なのか
自衛隊なのか、何の手がかりもなかった。


つづく
48作者 ◆xDdCPf1Ny. :2006/08/19(土) 01:18:14 ID:Lqwn9U1w0
「あれは一体何だったのかなー」

偶然キャッシュに残っていたのを保存しておいた
ブログの一ページをぼんやり見つめながらつぶやく
コウジロウ。

「俺のこと好き?」
「(・・・コン)」





*この物語はフィクションであり、実在の人物、団体、
  事件などにはいっさい関係ありません