数年前、とある高校に将来プロ入り、果てはナショナルチーム代表を期待された有望なサッカープレイヤーがいた。
彼は父親が外国人、母親が日本人のハーフで、二重国籍?というのだろうか、そういった人だった。
高校生の中では群を抜いた技術を持ち、当然のように大会前などは雑誌の取材などが訪れていた。
しかし、彼のインタビューへの返答は
父親の祖国を褒め称えるもので、国籍は絶対父親のほうのものを取り、代表として日本を倒す!などそんなものばかりだった。
そんなわけで、雑誌に彼のインタビューがのるたびに悪意のあるものたちは、
日本で生まれ育って何様のつもりだ!とか、そんな父親の母国がいいならとっとと帰れ!とか
そんなことを彼の通う学校に電話やメールなどを行い、嫌がらせをしてきた。
苦情の受付先となってしまった学校側は、彼に対して、日本にも好意的なメッセージを答えてほしい。
親日のイメージで答えてほしい、と彼に要求した。
彼は「絶対にいやだ!自分は今のままのスタイルを貫く!」と譲らなかったが、学校側が無理やり彼に学校の望む返答を取らせてしまった。
日本が好き、とか、日本の国籍をとり代表入りも考えている、とかそんなことをね。
そしてその回答の載った雑誌販売から数日後、
町には松葉杖をつきながら歩く彼と、割れた家のガラスの掃除をする彼の家族の姿があった。
「だから親日っぽい答えなんてしたくなかったんだよ・・・・こうなるのは目に見えていたよ・・・」
そう言っていた彼は今、手取り16万の安月給で軽自動車のローンを払いつつ、
親戚の焼肉屋でオージービーフの塊を切っている毎日。
しかし、もしも学校が彼のスタイルを貫かせ、彼が骨折によりサッカーをあきらめていなければ、
もしかしたら彼は派手なスポーツカーにモデルの彼女を乗せて豪遊するような生活をしていたかもしれない。