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本当にあった怖い名無し:2006/07/31(月) 01:31:24 ID:yWD/WzltO
エロオカルトでありながらも、数多くのファンを魅了し続けている
『山形先生』シリーズ。
ここはそんな『山形先生』の降臨を待つスレです。
■前スレ同様、作者氏宛てのネタの投下・作品の感想など、このスレをご利用ください。
■作者氏との交流・雑談スレも用意しました。気軽にどうぞ☆(
>>3記載)
さて、ここらで久しぶりに怖い話でもするか。
中学校教師、山形ユウジロウは夏休みを利用して、
さいたま県にやってきていた。
つづく
『こどもの教育を考えるシンポジウム』
に参加するためだった。と、同時に美人女教師でも来ていないか、
という不純な動機もあった。
広い会場には相当数の人間が集まっていた。これから教師を目指す
のだろうまだ二十歳そこそこの若い世代もいる。
人が多すぎて、かえって美人を探すのに苦労したが、適当なターゲット
を見つけた。歳の頃からいえば二十五辺り。現役教師だろうか。
落ち着いた雰囲気があるが何となく明るさが見て取れるのが気に入った。
愛想がよさそうだ。
とりあえず、傍らに立ち、「となり、よろしいですか?」と問いかけると、
「どうぞ」と笑顔で答えた。
つづく
ユウジロウが隣に座ると向こうから話しかけて来る。
「どちらからですか?」
「あぁ、東京です。中学校でパソコンの授業を…」
「そうですか。あたしも中学で」
「そうですか」
ハーフかクォーターか、純粋な日本人のように見えなくもないが、
鼻筋がすぅと通って、印象的な目をしている。ジプシーの衣装が
似合いそうな女性だ。
名刺交換をして、相羽 スズカという名前であることが分かった。
「素敵なお名前ですね。女優さんみたいだ」
「よく宝塚みたいって言われるんですよ」
つづく
大きな目を細めて笑う。
「失礼ですけど、御結婚は。されてるんですか?」
「いえ、最近、ちょっと…」
愛想笑いをする。黒い影が射した。最近失恋でもしたのかな。
ダッタララッキーイタダキマス!!
シンポジウムは別段面白いわけでもなく、退屈のうちに終わった。
その後、会場を変えて親睦会なるものが開かれるということで、
一応ユウジロウは参加することにした。
帰る人間と親睦会に向かう人間の波の中でスズカを見失う。
つづく
しくじった、と思ったが親睦会会場ですぐ見つけることが
できた。やはりモテるタイプらしく男数人に囲まれている。
立食パーティー形式だ。スズカに近づくチャンスを計っていると、
驚いたことにスズカの方からこちらへやってきた。
「楽しんでますか?」
「いや…こういう雰囲気は苦手で。ただ食事をしに来ただけですよ」
ユウジロウは笑った。スズカもニコニコとユウジロウを見ている。
軽い食事を取りながら、色々と話をした。
話題が、どんな所に住んでいるのか、という内容に及ぶと、彼女は
途端に無口になった。住所を知られまいと警戒しているのかと思えば
そういうわけでもなさそうだ。
つづく
「幽霊とかって…信じますか?」
「幽霊?信じますよ。きっといるでしょうね。私も何度か不思議な
体験をしていますし」
「そうなんですか?」
「えぇ。まぁ、錯覚かもしれませんがね。ははは」
聞けばスズカは最近このシンポジウム会場の近所に越してきたのだが、
部屋の様子がおかしいと言うのだ。
部屋にある色々な小物の配置が変わっていたり、夜中、変な物音に
起こされたり。
アタアァァックチャアァァァァンス!!
つづく
「もし、問題がなければ私が見てみましょうか?」
しばらく思案していたが、スズカは今夜、ユウジロウに部屋
を見てもらうことに決めた。見事ユウジロウはアタックチャンス
を制した。
一時間後、二人はスズカの住むアパートの前にいた。
若い女性が暮らすにはちょっと物騒なアパートだ。オートロック
も何もなく、駅からも遠く、住宅街にひっそりとたたずんでいる。
簡便に言えば、『貧乏臭いアパート』だった。
そんなことをユウジロウが考えていることを悟ったのか、彼女は
「ちょっとお金を貯めたくて」
と言い訳めいた言葉を口にした。
つづく
二階に彼女の部屋があるらしいが、階段も飾り気の一つも
ない鉄製の、雨に滑りそうな階段だった。
スズカのハイヒールの靴音がカンカンとやたらとうるさい。
階段を登りながらユウジロウは訊ねた。
「いつ頃からそういったことが?」
「ここに入居してその日からです。もう一月経つかなぁ…」
何となく、スズカの気のせいではなく、本物の『何か』が関わっている
気がした。難しいケースでなければいいが…ユウジロウは思った。
下手をすれば、スズカの肉体を楽しめなくなる。目的を履き違えては
ならない。目的はあくまで
スズカタントエッチシタイナ!!
つづく
鍵の束を出すとスズカは部屋の鍵を開け、
いやな音のする金属製のドアを開け放った。
ユウジロウを先に促すように、手の先を室内に向けた。
「どうぞ」
「…失礼します…」
瞬間、分かる。いる。間違いなく。ビリビリとした緊張がユウジロウ
の背筋に走った。
霊に関わったことは多いが、きちんと教科書通りの手順を踏んで
除霊をしたり、経文の勉強をしたり、聖書の文句を覚えたりなどということは
したことがない。
まだ霊が人の形を保っていてくれれば助かる。会話はできるからだ。
説得することもできる。
つづく
ただ、霊気そのものが部屋全体を覆ってしまい、
ただの『雰囲気』と化しているともうどうしようもない。
コンタクトのしようがない。この部屋はどうもその類らしい。
部屋全体がおかしい。空気の感じが違う。呼吸をすると、
ねっとりと粘度を持った空気が気管に流れ込んでくること
が分かる。
「どうですか?何か感じますか?」
玄関から先に進もうとしないユウジロウにスズカは聞いた。
除霊は諦めた。しかしスズカを頂かない手はない。
何とか靴を脱ぎ、部屋に上がりこむ。
つづく
部屋はきれいに片付いている。かすかにアロマテラピーの
残り香がする。この匂いはイランイランだ。
確かに机の上にはコンセントにつないで使うタイプのアロマポット
があった。
「どうでしょうか…?」
不安そうなスズカに無理に作った笑顔で、
「特に何もないですよ」
とユウジロウは答えた。
「なら、いいんですけど…」
疲れたのか安心したのか崩れるようにソファにスズカは座り込んだ。
サテ、レイプシチャオウカナ!
つづく
スーツの上着を脱いだスズカにユウジロウは襲い掛かった。
「ちょっ…いや!!」
激しい抵抗を見せる。
「こんな安アパートじゃあまり声を出すと…聞こえちゃいますよ…」
「…!」
ブラウスを乱暴に破り取り、愛撫する。この女のツボはどこか、探る
その時間が最も危険だ。ツボさえ抑えればこっちのもの。
乳首、くちびる、首筋、耳、腹部、下腹部、太もも…
明らかに敏感に反応する箇所があった。内太もも。ここがスズカのツボだ!
つづく
指先が触れるか触れないかの絶妙な距離感。
くすぐったいような快感。適度に脂肪の乗った内太ももの奥の筋肉が
びくんびくんと反応しているのが分かる。そろそろヴァギナの湿度が
上がる頃合だ。
「あ…そ…」
口を開いた。そこに口を重ね、舌を入れる。上あごの、でこぼこした
部分をユウジロウの舌が這う。
「んっ!」
やはりそこを攻められるのは初めてか。反応が大きい。ソファのスプリング
が二人の体重できしむ。
つづく
と、突然ピシッという音とともに、電灯が消え部屋は暗闇に包まれた。
いずれにせよいいタイミングだ。タイトスカートをたくし上げて、いよいよ
真の目的地へ。熱い。しっかりと濡れている。何とか勃起も果たした。
下着を引き摺り下ろした頃にはもう全く抵抗する気がなさそうだ。
何となく泣いているような音が聞こえるが気にはならない。
これからは先は快楽の時間だ。
挿入。
スズカの身体がえび反る。処女ではない。ある程度開発されているヴァギナ
だ。それは好都合なことであった。
腰の前後の動き、ペニスの挿入角度、突く勢い、グラインドの速度。全てが
完璧だった。
つづく
「んっ…はぁっんっ…なにこれ…すごい…すごいよぉ…」
「…?」
違和感。何だ。ぐらりと。意識が。溶ける。自分が、溶け出す。
セックスは続いた。不慣れなセックスだ。ただ必死に、何も
分からず、ただ我武者羅に硬直した肉棒で突く。
腰を動かせば手が留守になり、手が動けば腰が止まる。
経験の少ない男の動きだ。いやという程わかる。
わかる。
わかるよ。
いつも一生懸命だったもんね。
ありがとう。
つづく
スズカは涙をこぼしながら抱かれた。身体を重ねる。
頬と頬が密着する。息遣いが聞こえる。
「これで最後だから…」
「ありがとう…ケイ君…」
「どうしていいのか分からなくて。ごめん。不器用だから…」
「また会えて、嬉しいよ」
「それじゃそろそろ。さようならだよ」
「うん。さようなら。それだけ、言いたかった」
つづく
しぱらく、我武者羅で不慣れで、みっともないセックスが続いて
暗闇の中、二人は果てた。
目を覚ますと、外はもう明るかった。ここは…そうだ。宝塚みたいな
名前の…そう相羽 スズカの部屋だ。
横にはスズカがまだ寝ている。
起き上がり、下着を履く。部屋を見回したが、昨日のような不気味な
雰囲気は消えて、ごく普通の部屋になっていた。
それにしても、彼女を抱いた記憶が曖昧だ。酒も飲んでないのに。
背の低いたん笥の上に写真が乗っている。スズカと、一人の男が
映っている。
つづく
彼氏はいないと聞いた。いや、結婚しているかと聞いたら、
曖昧な答えをした。
そういうことか。写真には落書きがしてあって。
ケイスケ スズカ ラブラブ ふぉ〜えば〜
という単語が見て取れた。
最近引っ越して来たとも言ってたな。そういうことか。
写真の男に向かって呟く。
「気付いて欲しかったんだな。だからって人の身体使いやがって。ばかやろう」
ユウジロウは身支度を整えると寝ているスズカを残して
部屋を出て行った。
終
2スレ目の始まりにふさわしい名作!最後のユウジロウの言葉に痺れました。
文章の感じがこれまでとはちょっと違うような・・・腕を上げましたね!?
山形先生シリーズの新しい方向性を見たような気がしました。乙です!
>>24 本当??褒めすぎじゃない?でも嬉しい感想だなぁ。
ありがとう!!
新作投下、作者さん乙です!
途中までいつもの変態山形先生なのに、ラストは渋いですね。
読みおわって、切なくなった・・・
ダメだ。十時から考えてるのに何もまとまらない。今日あと一本
行きたかったなぁ…。前スレ見てもらえれば分かるんだけど、一本
仕上げるのにちょうど2時間前後なんだよね。
全部計算したわけじゃないのに何故か2時間前後で終わる。
今から書き始めたら夜中の2時ぐらいになっちゃうかな。
でも起きている自信がないからそろそろ諦める…。ネタ投下
してもらっていいですか?誰か何かあれば。
前は一日二本とか書けてた気がするんだけどなぁ。
なんか調子悪いよ。新しい恋もしたいよ。何かしんどいなぁ。
もしネタもらっても使ってあげれなかったらゴメンナサイね。
>>27 山形先生がエロエロな夢を見て(ありえないくらいモテるとか)
それは淫霊夢魔の仕業だったとか、どうでしょう?
>>28 夢オチかぁ〜。前からインキュバス、サキュバスの絡んだ話は考え付くんだけど
安易と思って避けてるんだよなぁ。でも上手く書けばなんとかなるかもしれんね。
一応頂いた貴重なネタですんで、ちょっと考えさせてください。今晩中には無理
だと思うけど。
というわけでネタ募集一旦停止しまーす。ありがとうございました。
〜追伸〜
いつも頼りない作者で本当に申し訳ない。。(苦笑
>>29 いえいえ、思い付きでネタ振りしちゃいました。
気を使わずスルーして下さいな。
>>30 いや、腕の見せ所ですよ。仮につまらない作品になったとしても、あなたが
悪いわけじゃない。単に私の実力不足。ネタの募集をかけたのは私です。
『腹がすいているから何かめぐんでくれ』と言う人に、『それじゃどうぞ』と
食パン一枚をめぐんであげたとして、『なんだこれっぽっちか』と言うのは
おかしいでしょう。
あなたのネタが『食パン一枚程度のモノ』と思っているわけじゃないですよ。
ただ、募集をかけて贅沢を言うのは大間違いのクソッタレの行為だと思う
んです。
私はそんな大間違いのクソッタレにはなりたくない。ありがたく、頂戴致します。
それをどう料理するかは私次第。文句を言われるのも私一人で充分です。
あなたこそ、どうかお気を使わずに。
>>31 ネタ募集続行してみては?
ひとつひとつ書かなくても、いろんなネタが混ざった話も楽しそうです。
ネタ振りした人達は「あ、ここでこう使ったんだニヤリ」
と気付くと思いますよ。。
>>32 難しいですね。もしどうしても入れ込めないネタが出てきてしまう気がします。
落語の『三題噺』のように、とりあえずその『単語』だけ出てくればよい、という
ものでもないですし、ネタ同士が矛盾することを考えると不安です。
入れ込めなかったネタを考えて下さった方にも失礼だと考えます。
あと、作品の自由度が極端に低下する懸念があります。ネタが主で、それを
つなげるのが精一杯で、それに終始してしまう。
それは書き手としての私のわがままですが、私のテイストを入れる部分が
欲しいんです。
例えば『水着姿のアカネ』『無人島』『旧日本軍の幽霊』という三つのネタが
投下されればもう一つの話しか作れなくなる。『無人島でバケーションを
楽しむアカネの前に旧日本軍の幽霊が現れる』という流れだけです。
場合によってはラスト、オチが容易に判断できてしまうという怖さもあります。
それに、私は、投下されるネタというのを大事にしたいんです。その人なりに
色々と考えて、『山形先生シリーズ』の為に投下してくださる。増えれば当然
邪険な扱いを受けるネタも出てくると思うんですよ。取ってつけたような。
私はそういうことをしたくない。ですから、一つずつで充分です。話数も稼げ
ますしw 3つのネタが一つになるより3つのネタが3本の話になった方が
得でしょうww せっかくの御提案でしたが、遠慮させて頂きます。私に必要
なのは、一つのネタ、それだけです。ありがとうございました。
さて、ここらで怖い話でもするか。
何か奇妙な図案が描かれた古い本をユウジロウは読んでいた。
アカネも覗きたかったがの覗くと怒る。
だから放っておいた。
つづく
読んでいない時にこっそり読もうと思ったが、どこにしまってあるのか
見当もつかない。
しかししばらく経つと、ユウジロウは明らかに奇妙な行動を取るようになる。
一日、ずっと眠っているのだ。
食事も取らず、一日、ずっと寝ている。
夏休みだから問題ないのかも知れないが、それにしても異常だった。
起きている間も焦点の定まらない目で虚空を眺めてばかりいた。
アカネ自慢のバストを見せても注目もしない。
つづく
試しにペニスをしごいたりしてみたが反応はない。
起きている時は終始そんな感じで、食事もろくに取らない。
あとは寝てばかりいる。
基本的にアカネとユウジロウは同じベッドで寝ていた。
アカネが寝ようと思う時には既にユウジロウが眠っている。
その時気付いたのだが、寝ながらにして勃起しているのだ。
普段余り気にかけたことはないが、『朝立ち』という言葉もある。
睡眠中に勃起することもあるのだろうか?
つづく
久々に夜中の投下キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
wktk!wktk!
たまに起きてきては最低限の食事をとって、またベッドに戻る
というありさま。
誰に相談するわけにもいかず、仕方なく、母、ツネコに電話をした。
「あら、アカネから電話なんて珍しいね。どうかした?」
「うん。お兄ちゃんが変なんだ」
ユウジロウが住んでいる家とツネコの家はごく近い。
ツネコがユウジロウの様子を見に来た。
やはり寝ている。勃起もしている。しばらく観察していたが勃起は
おさまらない。
と、突然ニヤけたかと思えば、身体をびくんと震わせて、一瞬、
起きたかのような素振りは見せるがやはり寝ている。
つづく
と、勃起がおさまり、ペニスが萎えた。
もうしばらく観察していると、三十分もしないうちにまた勃起した。
明らかにおかしい。試しにパジャマのズボンとパンツを下ろしてみたが
とりあえずペニスが立っている。射精したあとも見られない。
ところがやはりしばらくすると、びくんと身体を震わせて、ペニスが萎えるのだ。
射精時の状態に似ている。
「これ、あなた、悪魔だよ」
ツネコが深刻そうに告げた。
つづく
「悪魔って?」
「寝ている男の精液を集める悪魔…」
「悪魔っているの?」
「分からないけど…実際今、見てるでしょ?精液が出ないのは、
吸い取られているから…」
「どうなるの?」
「…死ぬまで吸い尽くされるとか…」
確かに、そんなことがあってから、ユウジロウは明らかにやつれて
いった。食事も取らず、運動もせず、寝てばかりいるのだ。やつれて
当然である。
つづく
たまに目の下にクマを作って階下に下りてくる。そして、
ソーセージを一本とか、チーズを一欠けらとか、牛乳を一杯だけとか、
そんな食事とはいえないようなモノを口にするとまた二階へ上がって
眠る。
眠るとそこには快楽と悦楽の世界があった。全てが自分の思うがまま。
あの女優と交わりたいと思えば、その女優が出てくる。あのアイドルにペニス
をしゃぶってほしいと思えば次の瞬間にはそのアイドルがペニスにむしゃぶり
ついている。
たちまち射精を果たす。精液は女たちが喜んで舐め取ってくれる。
もう少し詳しくいえば、相手の女は三人だけなのである。その三人が夢の中で
変幻自在の変身を見せる。ユウジロウの思ったとおりの、望んだとおりの姿に
代わり、どんな変態行為でも望むままにしてくれる。
つづく
彼女たちは、行為そのものの快楽よりも、純粋に『精液』を求めた。
出せば出すだけ喜んでくれる。
このユウジロウ、高校時代などには一日二十回の射精に挑戦し、
成功した実績がある。
ところがそれから時は既に二十年が経ち、いわゆる『精力』もそろそろ
弱まっていた。それが約一時間に一度。二十四時間体制である。
射精の数実に二十四回。射精の数としては異常だ。
ろくに栄養も取っていないのでほとんど透明の、ぬるりとした液体しか
出ない。
それでも夢の呪縛からは逃れられないのか、ユウジロウは貪るように
快楽を求めた。
つづく
アカネが夜、一緒に寝ていても分かる。突然びくんと震える。
射精の時のそれと一緒だ。そう思って確かめてみれば、確かに
勃起が一時的に収まっている。しかししばらくするとまた勃起する。
やはり夢精だろう。一晩に何度も夢精を繰り返している。
けれど精液は出ない。母のいう通り悪魔なる存在に一滴残らず
横取りされているのだろうか。
起きてきたユウジロウはとにかく適当に食べてすぐに眠ろうとするが、
会話が出来ないわけでもない。
しかし何を聞いても、
「大丈夫。何でもない」
の一点張りだった。
つづく
わくてかしつつ おやつの準備♪イソイソ
もう半月も経つと、やつれているどころではなくなっている。
完全な栄養失調状態だ。肌の色もおかしい。
病院に行こうにも、本人がその気にならない。とにかく眠いらしい。
きっとあの奇妙な本に何かがあるとユウジロウの書斎を調べたが
乱雑すぎて手に負えない。
せっかく蘇らせたのにまた死ぬのかユウジロウ…。
庭には事情を知ってかしらずか、柴犬のユタカ(第二十五夜 『犬の生活』参照)
が舌を出して部屋を覗いている。
その晩、勃起と精液なき射精を相変わらず続けているユウジロウを
妹、アカネは抱きしめた。そして、人あらざる者に祈った。
つづく
仏でも神でもいい。とにかく兄を救ってくれと。
と、ユウジロウは目を見開いて、
「俺は大丈夫だ。心配するな」
と言った。しかしその顔に生気はなく、とても安心できる状態ではなかった。
「お兄ちゃん…」
体温も下がっているのか、妙に冷たい手を取って祈る。その間もユウジロウは
勃起していた。
翌日、ツネコが近所の神社でお札やらお守りやらを買ってきた。
気休めにもならないだろうが、と思いつつ彼女は部屋の至るところにお札を
貼った。
つづく
やべぇ!おやつ無い!と思ったら、食べかけのメロンパンを発見w
(;´Д`)ハァハァに期待
しかし状況は改善されなかった。
アカネはユウジロウが食べるようにと、簡単に摂取できて、
カロリーやビタミンを補給できるゼリー状の機能性食品を
買い揃えた。
起きてくる度に与える。
わずかな会話の機会もあった。それでもユウジロウは
「大丈夫だ。心配するな」
と弱々しい声をあげるばかりだった。しかしアカネは見た。その目。
目はぎらぎらとして鷹のようだった。目だけは活きている。
根拠のない、安心感をアカネは感じた。
つづく
機能性食品のゼリーを飲み干すとベッドへ向かう。
たちまちまどろみが訪れる。そして夢だ。
アイドルタレントにペニスをしゃぶらせ、若手の女優に乳首を
舐めさせる。キスの相手は売り出し中の美人歌手だ。
ありえない状況。芸能界には『枕営業』という言葉がある。
要するに芸能界での権力者、有名プロデューサーなどに
気に入られる為、まだ新人の娘たちが、彼らと肉体関係を
もつことで媚びを売り、仕事を得る。
しかし今のユウジロウの状況はそれを遥かに超越する。
顔はタレント級、テクニックもその道のプロレベルだ。
つづく
インポで立たぬはずのイチモツが勃起し、タレントやアイドルと
姿形が全く同じ娘相手にどんな変態行為も許される世界。
報酬は精液だけだ。途中でやめることもできる。拒否することも
できる。しかしこの快楽は何より変えがたい快楽だった。
この快楽の為ならば精液を出し尽くし死んでもいいと思える程
の快楽。『萌え』どころの騒ぎではない。むしろ『燃え』だ。
これほど熱い快楽があったか。永久にここにいたいとまで思う。
アカネの祈り。願い。言葉は遥か遠く、届かなかった。
快楽に身を委ねて、死ぬつもりなのかユウジロウ。その世界を
彼は知りながら選択したのだ。選択が甘かったのか。情報が
誤りだったか。それとも自ら望んだか。
つづく
もうじき一月になる。学校も始まる頃だ。事実、生徒は夏休み
とはいえ、その間教師には色々と仕事があった。全て休んでいる。
このままいけば明らかに廃人だ。
ユウジロウの耳元で悪魔が囁く。
「ねぇ…もっと気持ちいいこと、しよ…」
「もっと精液ちょうだい…欲しいの…」
「あぁ…ユウジロウ…もっと抱いて…」
夢の中を生きるユウジロウはさも優位に立っていながらにして悪魔の虜
となっているかに思えた。
考えることもできず、性欲をむき出しにして射精を続ける。
つづく
アカネは半信半疑であったがツネコには分かっていた。
連綿と続いてきた山形家の血。その血筋をツネコは信じていた。
山形の血侮るべからず(第九夜 『目合(まぐあい)』参照)。
夢の中でユウジロウは立ち上がった。しかし悪魔たちは逃す
まいと絡み付いてくる。なおもペニスを欲しがる。
その悪魔をユウジロウは振り払った。夢の中の話である。
「もう、いい。満ち足りた」
悪魔たちは更に誘惑するがユウジロウは微動だにせず、
またペニスが立つこともない。
いかなるテクニックをもってしても、人外の技をもってしても
ユウジロウのペニスは動かない。
つづく
何百年と続く山形の血をもってして、日本犯罪史上最悪とされる
岩手ノリオ(第十七夜 『禁忌の鎖』 参照)の血を引き継いだ男。
山形ユウジロウ。性欲に振り回されながらも、性欲を完璧にコントロール
する術を知っていた。動物的な本能を持ちながら、自我をもってしてその
本能すら支配下におく男。
彼の前に立ちはだかるは幻。全ては夢うつつ。
悪魔は恐れをなして逃げていった。これでいいのだ。一月。二四時間。
一時間ごとの射精により、より強力な『繁殖力』を求める一種の修行。
全ては思うままに進んだ。彼は決して鍛えられない『金玉』を鍛えたのだ。
悪魔をも利用して彼は強力な繁殖力と、いかなる快楽にも溺れず、流さ
れない自我をモノにしたのだ。
つづく
彼の求めるもの。それは完璧な『エロイズム』であった。いかなる
局面においても『エロ』であること。そしてあくまで自分が『エロ』に
流されないこと。山形ユウジロウ四〇台にして、完璧に『エロの
コントロール』を手に入れたのだった。
目覚めると、手が暖かかった。冷えている手をアカネが一晩、握ってくれて
いたのだ。
アカネの頬をつついて起こすと、「もう終わった。大丈夫だ」と告げた。
涙目のアカネが胸に飛び込んでくる。
それにしても腹が減った。
ユウジロウ四〇にして最大の試練であった。
アカネが用意した朝食をたちまち食べ終えると、ツネコの元へ、少しフラつく
足取りで向かった。
つづく
母、ツネコの家には、彼女を犯し、実の父となった岩手ノリオの
仏壇があった。
ユウジロウは静かに手を合わせた。
徳川の時代より続く闇の家系山形。犯罪史上最凶とされる岩手ノリオ。
その血の交わるところに自分がいる。
山形ユウジロウはじっと、岩手ノリオの遺影を眺めていた。
終
なんだこの話。なんかすげーな。自分で書いた割りにwww
やっぱ酒飲みながらはダメだわwwww
あと途中でメッセージをくれた方、嬉しかったです。感謝します。
一応急いで書いてるんですけど、それでもやっぱ約2時間は
かかりますから、お菓子でもお酒でもやりながらまったり読んで
くれることを作者として望んでいます。
本当にありがとうございました。
作者さん乙でした!
書いた後に作者さんが「何だかなー」となる
ネタをリクしてすまんです。。
>>58 いや、私の満足度なんてどうでもいいんですよ。納得できないなぁと思っても
読んでくれる人が『これはアリだ』と判断してくれれば。
そんなこといったら、私全作品に完璧な自信なんてないです。
評価してくれるのは読者様ですから、私本人が『駄作』と思っても『いや傑作』と
思う方もいらっしゃるでしょうし、逆もあるでしょう。
ただ、頂いたアイデアを上手くさばけなかったことについては私から謝罪しなければ
なりません。もう少し練って、明日に書いてもよかったわけですから。
その点についてはお詫びします。すいませんでした。
ただ、あなたが読んで面白いじゃんと思えばそれはそれで結構だったと思いますよ^^
あと、書かせてもらえば 第九夜 『目合(まぐあい)』 については、もう少し
詳しく書きたかったのでちょうどよかったと思います。まだ全ては明かせませんが、
『山形先生』が突然変異的にエロくなってしまったわけではなく、それには『山形家』
という『家系』が深く関わっていることを、書きたかったんです。
一応その9話ではそれを匂わせたんだけど、誰も疑問に思ってくれなかった。
流された感が強かったんですよね。
そういった意味で今回の話、少し退屈かもしれませんが、重要なストーリーだと
思っています。『山形の血』と『岩手ノリオ』の接点として。
そこにユウジロウがなぜこうなってしまったのか、というヒントがあるんですよ。
設定資料も何もありませんが、考えてるところは一応考えてるつもりなんでww
山形家の謎ですか・・・エロ教団が倒れる時の、
最後の辺りに出てきましたね。
そこにネタを絡めてくれたんですね。。ありがとうございました。
新作、楽しみにしています^^
乙です。
エロスを極めた男、山形カッコヨスw
エロプロですな!
何かに命懸けで挑む男の姿に惚れました。
例えそれがエロスであっても…w
最近、アカネと山形先生のエチーが無いので
オニャノコとしては、アカネが淋しそうに思えちゃうんです…。
男性陣は別の意見があるかもしれませんが、
私個人としては、機会があったらアカネと山形先生のエロをお願いしたいです
こんにちわ。作者です。今回の作品、泥酔した上での書き込み
だったようで、正直申し上げて、書いた記憶が全くないのです。
あー何か書いたなという記憶はあるのですが、内容は全く忘れていた。
改めて読んで見ると、ずっと後に明かそうと思っていた『山形家の秘密』
にもわずかに触れています。実はそれが『最終回』につながるはずでした。
また、現実の世界の月日と、作中の月日は基本的にだいたい一緒に
するつもりだったのですが、作中で一月経ってしまい、もう夏休みの
話は書けなくなり、次の話ではもう学校編に戻ります。
もう少し夏休みじゃなければならない話というのも書きたかったのですが
まぁ冬休みとか、次回に回そうかな、と。それまで続くかわかりませんが。
そこで、本来、最終回で明かすべきところの話をこれから投下します。
内容がそのまま最終回というわけではありません。最終回で明かすべき
だった秘密の部分をもう書いてしまうということです。
何故最終回だったかといえば、全くオカルトの要素がないのです。単に
山形がなぜ山形なのか、という点について言及するのみで、怖い部分
はありません。
だからこれを最終回として、あとは何の文句を言われようがそのまま消える
つもりでした。ですが、書き逃げもどうかと思い、板違い承知で書きます。
外伝的な意味合いで解釈して頂ければ幸いです。
これから書く物語は歴史考証など全てが全くのデタラメです。
ここはオカルト板ですがオカルト要素も全くありません。完全な『板違い』
です。といったところで、エロい話でもするか。
山形アカネとユウジロウは、母ツネコが暮らす実家を訪ねていた。
つづく
家はツネコ一人が暮らすには広すぎた。離れとして、別棟まである。
しかしその別棟は板張りで、何もない。『道場』として使用されていた。
相当の距離を置いて、ユウジロウとアカネは正座している。平服である。
中央の壁寄りには母ツネコがりりしい袴姿で座していた。
セミの声がうるさく、風通しの良い道場とはいえ、さすがに暑い。
つづく
歴史はさかのぼる。正確な資料は、関東大震災と、戦時の空襲に
よって失われた。
口伝に由れば豊臣秀吉の時代までさかのぼるとされているが、
謎だ。はっきりしているのは徳川家康に仕えていたということだ。
『将軍家御付艶事指南役』それが山形ソウエモンの肩書きだった。
将軍家に代々仕え、性交のありかたを伝授する役を担っていた。
如何にして己が快楽を得るか、また如何にして相手に快楽を与えるか。
その全てを研究、実践し将軍に伝授する。
また、マンネリ化するセックスを如何なるバリエーションをもって斬新な
ものとするか。現代でいうSM、フェティシズム、コスチュームプレイのような
ものまで彼の研究対象となっていた。
つづく
初代山形ソウエモンにより、一代にしてその技術はほぼ完成
とされた。女性が快楽を得るツボのようなもの、あらゆる性感帯、
前戯をはじめとするペッティング、結合後の術。ソウエモンは
変態の限りを尽くし、女の身体の全てを頭に叩き込んだ。
そして将軍に伝授された技術は将軍家の繁栄を促したのである。
更に二代目、山形マサノスケに技術は渡り、その時点でほぼ完成
されていた性技術に、『手込めの技(テゴメノギ)』が加わった。
これは、抵抗する女を、いかに効率よく犯すか、をまとめた技術
であった。それに初代ソウエモンの『艶技(エンギ)』の要素も加えられ、
二代目マサノスケは女を犯し、更に自分も快楽を得、更には
無理矢理犯されている女にも快楽を与えるという技術に発展する。
これは、いわゆる忍者、徳川家より各国に送り込まれた『草(クサ。
スパイのことといえばわかりやすいか)』にも伝授された。
女を犯しつつ快楽を与え、骨抜きにする。犯され激しく抵抗していた女
がたちまちのうちに性の虜となったという伝承が残っている。
つづく
しかし二代目マサノスケ本人はなかなか子を儲けることができず、
晩年やっと生まれた子供はあろうことか女であった。
しかしその女、山形キヌは、、マサノスケの『手込めの技(テゴメノギ)』、
初代ソウエモンの『艶技(エンギ)』を学び、伝授すると同時に自らから
実験台となり、更なる技術向上を目指す。そして、和姦、強姦、あらゆる
変態行為を全てまとめ『陰行流艶術(インギョウリュウエンジュツ)』
を編み出す。
一方で、三代目、山形キヌは、強姦、レイプなどから自分の身を守る
女性用の『陰行流艶遁術(インギョウリュウエントンジュツ)』を編み出す。
これはむしろ護身術に近く、旗本や大名の娘、大店の商人の娘などを
中心に伝授された。
『陰行流艶遁術』の恐ろしいところは、非力な女性が襲われた場合を
想定している為、相手の睾丸、目玉、指の関節、喉などを攻撃の中心
に据えているところだろう。
つづく
よって、一種の武術でありながら、試合が行われたことはない。
試合をすれば最後、負けた者は目を潰されるか、睾丸を潰されるか、
または匕首(あいくち。短刀)によって刺し殺されるか、といったところ
であろう。ちなみにこの『陰行流艶遁術(インギョウリュウエントンジュツ)』
は、初代ソウエモンの『艶技(エンギ)』、二代目マサノスケの『手込めの技(テゴメノギ)』
に倣う形で主に『お留め(オトメ)』と呼ばれた。
初代ソウエモンの『艶技(エンギ)』
二代目マサノスケの『手込めの技(テゴメノギ)』
それを統合、進化させた、三代目キヌの『陰行流艶術(インギョウリュウエンジュツ)』
同じく三代目キヌの『陰行流艶遁術(インギョウリュウエントンジュツ)』
これらの技術は山形家により守られ、代々伝えられ、それぞれの段階
で進化を繰り返し、時代のニーズによって改変もされ洗練されていった。
時代によって大きく変化したのは明治維新後で、『手込めの技(テゴメノギ)』
が、相手を和服と想定して組み上げられた技術であった為、これを洋装用に
変える必要が生じた。
『手込めの技(テゴメノギ)』には、嫌がる相手を組み伏せ、
更に嫌悪を快感へと導き、そうしながら、如何に相手を全裸にさせるかという
技術も含まれていたためだ。
つづく
それから時を経て、ユウジロウに至る。母ツネコは
『陰行流艶術(インギョウリュウエンジュツ)』を
ユウジロウに伝授し、また『陰行流艶遁術(インギョウリュウエントンジュツ)』
をアカネに伝授した。
ツネコは両方を会得していたが、ユウジロウの父、
史上最凶にして最悪のレイプ魔、岩手ノリオは彼女を犯すことに成功した。
つまりは『陰行流艶遁術(インギョウリュウエントンジュツ)』が彼には
通じなかったのである。完全なる敗北。子まではらまされた。
故にツネコはノリオを尊敬するのである。『お留め(オトメ)』に勝った唯一の
人間として。
現代。
先に動いたのはユウジロウであった。アカネを犯す。本気だ。アカネはそれを
拒否する。服を脱がされることもなく、性感帯を守る。決して自分が快楽を感じては
ならない。理性を保ち、なおかつ決して心を折らない。最後まで抵抗する。
仮にそれが何時間であろうと。
つづく
とにかくユウジロウは馬乗りを目指す。アカネは床をはいずる
様に回転しユウジロウの指関節を取る。
現代の総合格闘技や柔術の動きに似ている。レスリングの
ようでもある。
ツネコが叫ぶ。
「そこまで!」
ユウジロウとアカネはそのまま離れて礼をする。
「指を取ったね。あのまま折れば、ユウジロウは負けていた」
確かにその通りだった。骨折の痛みに耐えて、尚犯し続けるのは
不可能。痛みに耐えたとしても、指一本失えば、服を脱がすにも、
愛撫するにも支障が出る。
つづく
しかしアカネも服をたくしあげられ、ブラジャーも取れかかっている。
肩紐でぶら下がっている状態。指を取る前に性感帯である乳首を
責められたら、危なかった。
「本日は、これまで」
互いに礼。ツネコにも礼をすると、ユウジロウとアカネは帰路についた。
といっても十分もかからない。
「アカネ…」
「ん?」
「言いにくいんだけどさ」
「あはは。分かってるよ」
「何が?」
「『帰ったら、普通にセックスしようぜ』でしょ?」
ユウジロウは黙っていた。
そのとおりだったからだ。
終
>>62 あなたはいい方なんでしょうね。感情移入されて私の中のアカネもさぞ
喜んでいることと思います。今回は私のワガママで以上のような話に
なりましたが、ユウジロウとアカネのからみも次回、次々回あたりに
入れますね。約束します。
新作乙でしたー!
しかしユウジロウの祖先、テラスゴスwwwなるべくしてなった変態だったのですね。
一つ前の金玉修行といい、ある方向にはとてつもなく努力家な彼の姿には、
只ならぬものを感じておりましたが…血でしたか。血だったのですか!
男ユウジロウ、『陰行流艶術』後継者として更に進化して頂きたいです。
山形家の血と、レイプ魔の血、そりゃ最強な訳です。真言立川流が敵うわけがありません。
9話で「!???」と感じた部分も、今回スッキリできました。
それにしても今回、作者さんの設定の細かさに関心させられました。
明治の頃に服に合わせて変化したとか、そんなところまで考えが及ぶものなんですね。。
三代で完成形となるにあたり、女性の手が加わっているのも成る程…と。
ユウジロウの本質を知る上で重要な話だったと思います。
“ありえない男”山形ユウジロウに、リアリティを感じました!
自分は歴史も好きなので、面白かったですw
>>74 あーどちら様かは知りませんが、感想感謝します。
私は学もなく、歴史もからっきしダメなんですが、テレビの時代劇
なんかだけは好きなんですよね。特に言葉がいいじゃないですか。
「旗本」とか「奉行」とか、もう単語単位で響きに萌えます。
それを歴史好きな方に楽しんで頂けるなんて夢のようです。色々と
『そんなのはありえない』とか、『つまらん』と思われるのがセキノヤマ
かなぁと思っていたところで、素晴らしい言葉を頂き感謝致します。
本当にありがとうございました。今後ともよろしくです。
さて、ここらで怖い話でもするか。
夏休みも終わり静かな日常が戻ってきた。
とはいえ、まだ夏休みを続けるべきではないか、と思えるほど、
容赦なく強い日差しがアスファルトを焼いている。
つづく
山形家のペット、柴犬のユタカも日中の散歩はいやらしい。
恐らく焼けたアスファルトが肉球に熱いのだろう。
散歩がいやだから、芝生を張った狭い庭を行ったり来たり
している。
ユタカはもともと人間で弁護士(第二十五夜 『犬の生活』参照)である。
しばらくは弁護士だった頃の記憶があったようで、テレビのニュースを
興味深げに見たり、新聞を読もうとしたりしていたが、もうそうなことは
なくなり、完全に犬としての生活を楽しんでいるようだった。
家にやってきた当初はドッグフードには手をつけず、人が食べるものと
同じ物を食べていたが、今ではドッグフードに夢中だ。
何かして欲しいことかあると、小屋を離れて、庭がよく見える居間の
大きな窓の前にちょこんと座る。
つづく
「どした?」
雑誌を読んでいたアカネがユタカに気付いた。庭に出る。
ユタカはチョコチョコと走って、水飲み用の器の傍らに座って
尾を振った。
見れば水が空になっている。そうか水が飲みたいのか。
庭にある蛇口をひねる。水に触れてみると完全に湯になっている。
日差しのせいだ。
しばらく流し放しにすると、水はすぐに冷えたそれになった。
確認してから器を軽く洗ってやって水を満たす。
庭の地面に器を置くとユタカはすぐにピチャピチャと水を飲み始めた。
つづく
部屋の中に入れてやってもいいのだが、山形アカネは
若干潔癖にところがあって、犬の毛やノミで部屋が汚れるのが
少しいやだった。
ユタカを見届けると、庭の窓から部屋に入ってソファに寝転がる。
エアコンの効いた快適な部屋だ。何となく頭の中でお金の計算
をする。
一日かけて複数の男と関係を持てば一日に五十万程度は楽に
稼げる。ねだればそれは百万にも二百万にもなる。客はほとんど
高所得者だった。
しかし今日は何となくそんなことをする気になれない。相手が
最愛の兄、ユウジロウでもそうかもしれない。
生理が近いのか。彼女は生理が近づくと性欲が極端に弱くなるのだ。
つづく
なんだったっけ。あぁそうだ雑誌だ。
ソファの正面、ガラス張りの机の上に雑誌が伏せて置いてある。
『東京マスター』 イベントや映画、アミューズメントスポットなどを
紹介する雑誌だ。
結局夏休みは何処に行ったろう。現時点で無職なのだから夏休み
も何もないのだが、それでも夏休みという言葉は魅力的だ。何となく
テンションが上がる。どこかへ出かけたくなったり。
海(第二十四夜 『逢ふ事の』参照)と、友達とショッピングモールへ。
そのぐらい。外に出てないなぁと思いふと腕を見ると、透き通るように
白い。それはそれで嬉しいのだが、やはり夏はちょっとぐらいやけた
方がいいのではないか。
つづく
クルマの運転はできるから一人でどこにでも行けばいいのだが、
一人は退屈だ。友達もいるにはいるが働いていたり、育児に忙し
かったり、まだ大学に在籍していたりでタイミングがなかなか合わない。
少し兄が疎ましかった。あの夢魔の一件(第三十一夜参照)がなければ
一日ぐらいどこかに遊びに行けたはずだ。
暑いが秋は確実に近づいている。陽は傾き、晩方が迫っていた。
『東京マスター』も最新号だが夏休みの頃にはイベントも多くあっただろうが、
九月ともなるとそれも激減し、イベント紹介の記事にもロクなものがない。
電話台になっているキャビネットから財布を出すと、夕食の買出しに家を出た。
面倒だから今日はカレーにしよう。ルーだけ買ってくれば材料は揃っている。
残飯整理にもなるだろう。
つづく
新作投下ハジマテタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
熱烈支援!
美人のせいか、商店街の主人たちに人気があった。
必ず何かしら声をかけ、おまけをしてくれる。
アカネは自分が美人で、男好きのする顔であることを承知していたが
ナルシストではない。そういった意味で、自分だけおまけしてもらう
ことには複雑な心境だった。
何となく差別的なものを感じるのだ。下心のようなものも見えて、
それもいやだった。いつもいやらしい感情に晒されている気分。
カレーを作る。肉を少し買いすぎた。もったいない気もしたが余った肉
をユタカにやると飛び跳ねて喜んで生肉にむしゃぶりついている。
玄関のドアが開くなり、
「カレーの匂いはウチからかぁ?美味そうな匂いだなぁ!」
と兄の元気な声が響いた。
つづく
「もうそこの角を曲がった辺りからカレーの匂いがしてたぞ」
「へーそんなに遠くまで?」
「風のせいかもしれんね。湿っぽい風が吹いてるよ」
「そう…」
ふとアカネの態度が気になる。せっせと皿にゴハンを盛って
カレーをかける。動きは機敏だ。具合が悪いわけではなさそうだ。
机の横のマガジンラックに見覚えのない雑誌が刺さっている。
『東京マスター』
『まだまだ間に合う海水浴!』
『夏の穴場はココ!』
『暑い日はやっぱり映画!』
表紙にはそんな言葉が並んでいた。なるほど。
つづく
膳が整うと、「頂きます」と述べて、スプーンを持つ。
「生野菜もちゃんと食べてね」
お互い正面に座って、カレー皿とカレー皿の間にはボウル
に盛り付けられた生野菜があった。相当な量だ。
「明日、土曜日だよ」
「うん」
「どっか、連れていってやろうか?夏休みはあんな状態だったし」
「ん?あぁいいよ別に。いい、いい」
二十年一緒にいるのだ。分からないことはない。彼女が「いい、いい」
と繰り返す時は間違いなく遠慮している時だった。ユウジロウはその
まま話を続けた。
つづく
「どこがいい?海は一応いったからな。山かな?」
「だからいいってば」
「気ぃ使うなよ」
「…うん」
「で、何が見たい?」
「緑」
「みどり?」
「うん。山道みたいなところをドライブしたいかな」
「それだけ?」
「充分。なんか木が見たい。たくさんの木」
「そか…。樹海みたいな?」
「あーそんな鬱蒼とした感じじゃなくて。もうちょっと
スッキリした感じの」
つづく
悪い癖、というわけではないが、アカネは頻繁に抽象的というか、
漠然とした発言をして周囲を困らせる。
例えば「何を食べたいか?」と訊ねると、普通なら「ラーメン」とか
「焼肉」などと答えるだろう。ハッキリしない人でも「和食がいい」
とか「中華料理が食べたい」と言うだろう。
しかしアカネは「しょっぱいもの」とか「甘いもの」という答え方を
するのだ。しかもそれ以上聞いても詳しいことは言わない。だから
といって「何でもいい」というわけでもないようなのだ。
だから聞き手は、アカネの立場に立って、考えなくてはならない。
「スッキリした感じのたくさんの木」とはどんなものなのだろう。
スティック状にカットされた生のニンジンにカレーのルーを付けて
ポリポリとかじりながら考える。
つづく
導き出したイメージは、『アルプスの少女ハイジ』に出てくる
ような森だった。
「あれか、スイスの高原っぽい?」
「あーそうそうそんな感じ!」
何とかピッタリと的中したらしい。カレーを食べ終わったユウジロウ
は書斎に入るとパソコンを立ち上げてインターネットでそんな雰囲気
の場所はないかと色々検索してみた。
一応目的地は決まった。地図をプリントアウトする。ポンコツの愛車
赤い軽自動車にはカーナビなどついてはいない。今時カセットデッキ
搭載である。
つづく
今北!!!
まだ追い付いてないが一言だけ書かせてくれ!すでに
『萌・え』
ユタカ肉球いいよ肉球(*´Д`)
翌日、四時間かけて、近場の高原にたどりついた。
レジャー用の牧場もあったが、アカネは幼少の頃、幼稚園で
買われていたウシにいきなり手をかじられて、怪我をしたわけ
でもないのに、ウシ=凶暴というイメージが出来上がってしまって
今でも生きたウシが苦手だった。
「ミニブタもいるぞ」
「ウシがいるのはいやだ」
「俺、おうし座だぞ」
陰行流艶遁術、『お留め』にはえげつない技が多々ある(『第 X 夜』参照)
目突き、睾丸潰し、指取りは勿論、噛み付き、引っかき、つねるという技も
用いる。非力な人間が自分より腕力のある相手と対等にやりあうには、
そういった『通常ならば反則』と言われるような攻撃を積極的に取り入れた
結果だ。
つづく
人間それぞれ、同じことをしても場所によってダメージは異なる。
肩を引っぱたかれてね大して痛くはないが、太ももならば痛みは
その何倍にもなる。
『お留め』はそういった点でも進んだ技術を持っていた。
つねる。最も効果的な場所を。二の腕だ。ユウジロウは激痛に思わずブレーキ
を踏んだ。
「イタイジャナイカ!!」
「ウシは嫌いなの!」
「分かったよ。悪かったよ」
他にも理由はあった。この軽自動車という狭い空間。そこにユウジロウといれるのが
幸せだった。降りて、離れ離れになるのはいやだった。おとなしく、二人で、同じ空間で
同じものを見て、同じことを考えたかった。
つづく
しばらく山間の道を登っていくと、いよいよ高原のような雰囲気になってきた。
クーラーの効いた車内であったが、クーラーを止め窓を開ける。
さっぱりとした涼しい風が窓から飛び込んでする。それは清涼感に満ちて。
「クーラーなんかよりよっぽど涼しいな」
「うん。少し寒いくらい」
「窓、閉めるか?」
「大丈夫」
何処から何処まで歩くのか周囲に駅もないだろうに時折歩いている人間
がいる。それなりの装備をしているので地元の人間ではないのだろう。
『美空展望台 右に二キロ』
看板が出ている。運転にも少し疲れた。Y字の道を右に進み、展望台に
たどり着く。
つづく
眼下には、さきほどのレジャー牧場の芝が青々と広がっている。
山間の谷の部分には小さい集落もある。あんな所に住んでいる人は
どうやって生活しているのだろう。買い物も不便だろうに。やはり自給自足
のような生活を営んでいるのだろうか。
そんなことをユウジロウは考えていた。
いつの間にかアカネはステンレスの水筒からブラックコーヒーを注いで
一口飲むとユウジロウに手渡した。
「まだちょっと熱いからね」
「用意かいいな」
「サンドイッチもあるよ」
「へー…食べたいな」
つづく
アカネの気合の入れように驚いた。まさか水筒やらサンドイッチ
やらを持ってきているとは。もっと簡単なドライブをしたいだけかと
思ったが、彼女にとってはきちんとした観光だったのだ。
「なんかパンが湿気っちゃって…」
ふにやふにゃと頼りないサンドイッチであったが美味かった。随分
色んなものが挟んである。
二人きり。誰もいない。アカネが食べているサンドイッチのレタス
が咀嚼されるぱりぱりという音だけ小さく聞こえる。
展望台といっても何もなく、ただ十台程度のクルマが止められる、
見晴らしのいい駐車場といった風情だ。
恐らく、下のレジャー牧場までは行く人も多いのだろう。みんな
そこで遊んで、帰る。
つづく
サンドイッチかぁ…
お腹すいてきちゃったw
だからそれより高いこんな所には滅多に誰も来ないのだ。
現に走るクルマのエンジン音さえ聞こえない。
ベンチに並んで座る。高原の涼しい透明な風があって、
木と芝と太陽と雲がある。それだけ。
何となくユウジロウは並んで座るアカネの太ももに手を
やった。ジーンズのザラついた感触ではあるが、その中に
詰まっているアカネの柔らかな肌の弾力も感じる。
ぴくりとアカネが動いた。
何となく、流れで、キスをした。軽いキスだ。
腕を回して肩を優しくさすってやる。
つづく
身体が。アカネの身体がいう。
『え?本気?こんな所で?』
でも口からは淡い吐息が漏れるばかりで。
キスは次第に濃厚となり、ユウジロウの左手はアカネのTシャツ
の下から入り込んで胸をまさぐっている。
合わさる唇から漏れる吐息が熱くなった。
「また、つねられるかな?」
ユウジロウは聞いたが、アカネの手は既にユウジロウのペニスにあった。
緊張感。アカネの身体が堅い。
「大丈夫。誰も来ない」
すこし、堅さが緩んだ。
つづく
器用にブラを外すと、乳首を中指で丁寧にさする。
「あ…」
次第に隆起する乳首を軽くつまんで痛くない程度にひねり、こねる。
アカネの好きな行為だ。これをやられるとたまらない。吐息は更に
熱くなり、ユウジロウのズボンのジッパーを開けると、イチモツを
外へ出し握る。
「ね、舐めてもいい?口に欲しい…」
「いいよ」
基本的にインポであるからまだ勃起の兆候はない。その頼りない
ユウジロウ自身をアカネは口にした。
やがて勃起を果たす。ユウジロウはアカネを自分の膝の上に乗せて、
更に愛撫を続けた。
つづく
「次はアカネの番」
「…えっち」
耳に舌を入れる。ユウジロウは自ら肉体改造をし、舌を鍛え、
力の入れ方次第で、舌を細く、長くすることができた。
その改造には二十五年を要した。
細い舌が耳の奥に入っていく。ぞわぞわとした快感が、身体
中に走る。
「あ…だめ…」
ズボンと下着を膝まで降ろさせ、ユウジロウのゴッドハンドは
いよいよ最大の快楽を与える為に動いた。
既にアカネの陰部は愛液が滴らんばかりに濡れている。その
愛液を指にからませ、ローション代わりとしてクリトリスの愛撫
へ。
つづく
優しく、軽くひっかくようにクリトリスを刺激する。そのままベンチに
アカネを浅く座らせて、クリトリスに舌を這わせた。
「あっ!だめっお兄ちゃん!!そこだめなのっ!」
舌がピンクローターのように細かく振動する。これもユウジロウ
独自のトレーニングで開発した技術だ。
「すごい…舌が…あぁっ!びりびりするよぉ…」
更に膣内に指を入れる。二本。その二本の指が人間技とは思えぬ
動きをし、膣の中をかき乱す。
快楽に身体を海老反らせるアカネ。既に絶頂は近かった。
大胆にもユウジロウはズボンとパンツを下ろし下半身をむき出しに
した。
つづく
(´Д`)ハァハァ
新作キテタ━(゚∀゚≡゚∀゚)━!!
そのまま挿入する。
「俺の計算が正しければ生理前のはずだ…生でいいな?」
「…うん…生で…生でおちんちんちょうだい!」
大量の愛液がスムースにユウジロウを受け入れる。怖気を
振るうように彼女の全身に鳥肌が立った。
「…ぅぁあ…すごい…お兄ちゃん…おちんちんすごい…」
寝転がれない以上全ての体位が使えるわけではない。
それでもユウジロウは出来うる限りの体位でアカネを
攻め立てた。
原則、ユウジロウは性交の最中にペニスをヴァギナから
抜くことはない。とにかく挿入したまま体位を入れ替えるのだ。
つづく
な、生キタ━(Д゚(○=(゚∀゚)=○)Д゚)━!
これは、ペニスを抜いた瞬間に女が我に返ってしまうことに由来する。
ベンチにユウジロウが座り、その上にアカネが重なる形を取る。座位。
そのまま、ペニスが抜けないように、かつ迅速に、アカネの身体を反転
させ、向かい合いの座位から、お互い同じ方向を向く座位へと転向する。
背後から脇の下に手を差し入れ、乳房を愛撫する。アカネは喘ぐばかり
で、涙すらこぼしている。ある程度以上の快楽を得ると、アカネは何故か
自然と涙が出るのだ。
そのまま立ち上がり、展望台の柵にアカネを掴まらせ、バックから責める。
愛液が滴り、地面を塗らす。その頃にはアカネは号泣していた。
「気持ちいいよぉ…頭おかしくなる…はぁ…はぁ…」
そろそろ潮時とユウジロウは判断した。膣の締め付けが強くなってきている。
つづく
「一緒に…いくぞ…」
「うん」
腰のグラインドが激しさを増す。スピードも振幅も。
「あっ!壊れちゃうっ!!だめだよっ!!」
「イッキマ〜ス!!」
果てた。
腰砕けになったアカネは展望台の柵を握ったままずるずる
と体勢を下げる。ユウジロウは自分の身支度を終えると、
アカネを持ち上げ、下着とデニムのパンツをきちんと履かせて
やり、いわゆる『お姫様抱っこ』でベンチまで運んでやった。
つづく
その後も軽く肩をさするとか、顔にかかった髪を優しくどかせて
やったりした。軽いマッサージのように、いたわる様に身体中
をさすってやった。
事を済ませた後に行う『後戯』である。前戯に比べ余り重要視され
ないものではあるがユウジロウ的には重要な行為であった。
息が荒いので胸を撫でてやる。全くいやらしさを感じさせない。
「ね、お兄ちゃん…」
「ん?」
「最後の、『イッキマ〜ス』ってどうにかならないの?」
「うん。絶対言う」
どうもアカネは『イッキマ〜ス』が好きではないらしい。
つづく
ひとしきり休むと、クルマに戻った。
「これからどうする?」
「どうするって?」
「帰るか、もっと登ってみるか」
「上には何かあるのかな?」
「それは分からないな」
「もう少し、登ってみたい」
「わかった」
座席のリクライニングを少し倒してアカネは休んでいる。
まぁ適当に景色のいいところでも見つけたら起こしてやるか
と思ってみると、目は開いていた。どうも腰が疲れたようだ。
「大丈夫か?」
「平気平気。ごめんね。運転させてばっかで」
「いいよ」
つづく
しばらく似たような景色が続いたと思うと突然視界が開け、
異様なものが目に飛び込んできた。
それは巨大な橋だった。さすがにレインボーブリッジとまでは
いかないが、似たような構造の立派な吊り橋である。
山と山とをつないでいるらしい。下に川があるわけでもなく、単なる
谷だ。
「おい、アカネ…」
「うん。見てるよ。すごい橋だね…こんな山奥に…」
「これ相当金かかってるぞ…」
「地元の人が使うのかな?」
「地元ったって、この辺りに住んでる人間なんか…」
つづく
ゆっくりクルマを進める。橋から見る景色は絶景だった。
余りにキレイなのでアカネは携帯電話のカメラで撮影している。
「なんか、気持ち悪いなぁ。違和感というか…」
前人未到のような、深い森の中で、ふと真新しいペットボトルや、
菓子の袋を見つけた時のような違和感である。誰がそこに捨てた
のか。何の為にその人はここに来たのか。その疑問に奇妙な感覚
を覚えることがある。
長い端の半ば、欄干に何かが見えた。看板かなにか立て札のような
物かと思ったが人間だった。
女だ。ブルーのTシャツにベージュのスラックス。ごく普通のまだ若い
女が、欄干の上に立っている。
つづく
アカネにも見えているようだ。
「…な…何やってんの…あの人…?」
誰もが抱く疑問なはずだ。欄干の上に立っている。余りに危険な
行為である。子供であれば勇気試しのような遊びでそういった無茶
をするかもしれないが、若い女がそんなことをするとは到底考えら
れない。
考えられるとすれば、自殺だ。
「あの人こっち気付いてるのかな?」
その女は下だけを見ている。こちらには見向きもしない。
「こっち見ないよな…」
「気付いてないのかもよ」
つづく
恐ろしくなって、エンジンを切る。そしてそっとクルマを降りた。
ドアを閉めると音で気付かれそうなのでドアは開けたままにした。
下手に刺激を与えると慌てて飛び降りてしまう可能性がある。
そっと近づくことにした。
女は下ばかり見ている。
あと三十メートルといったところか。
と、女は突然ぐるんと首を回してこっちを見た。目をこれでもかと
見開いているそしてそのまま、自然に傾くような体勢になると、
どんどん傾いて、人形のように真っ直ぐに谷底へと落ちて行った。
つづく
慌てて欄干から下を見たがもう見えない。この高さなら
間違いなく死んでいるはずだ。
「…どうしよ…」
「警察…とりあえず警察だろう…」
携帯電話を見ると山深く、圏外だった。ユウジロウのも
アカネのもそうだ。
一度クルマに戻り電波が入るところを探す。橋を渡りきって
しばらく走ると何とか電波が入る場所を見つけた。
警察へ連絡する。電波状況が悪いのか途切れ途切れでは
あったが何とか話すことは出来た。ユウジロウが話す。
「飛び降り自殺を見たんですが…」
つづく
「えー、どこでですか??」
「あーここは…どこなんでしょうね…あー美空展望台ってありますよね?」
「はいはい。美空の展望台」
「そこの分かれ道があるじゃないですか。それを展望台じゃない方に行って…」
なんとか場所の説明は出来た。
「あー…服装はでんなでしたか?」
「青いTシャツにベージュのズボンでした」
「はぁ…青に…ベージュね…分かりました。通報ありがとうございました」
「私たちはどうすればいいんでしょうか?」
「あーそのまま、お帰りになるか、どこか目的地があれば行って頂いて結構ですよ」
てっきり現場検証やそういったものに付き合わされるのかと思っていたから拍子抜け
した。しかしそういうなら面倒なことにならずに済みそうだ。
つづく
何となくいやな雰囲気になって、帰ることにした。山道でUターン
して…。当然帰りにはあの橋を渡らざるを得ない。余り気持ちのいい
ものでもないが仕方ない。
橋にさしかかる。何かが見えた。近づく。青に、ベージュ。
クルマの気配に気付くと欄干の上にいたその女はあの時と全く同じ
動作でぐるんっとこっちを見た。目を異常に大きく見開いている。
そして傾いて。傾いて。大きい目はこちらに向けたまま、まっすぐ
真っ逆さまに、落ちていく。
ユウジロウはクルマを進めた。一体何事が起こっているのか。
現場を通過し、ふとバックミラーに目をやると、欄干の上に女が
立っていた。ブルーのTシャツ。ベージュのズボン。そして、
ぐるりとこちらを向く。異様に見開かれた目。そして、落下。
つづく
警察の態度がいい加減だったことが分かった気がした。
あの女はいつも落ちて、人がいようがいまいが、とにかく、
落ちて、落ちて、落ちて。何度も。何度も。昼も夜も。晴れて
いようが雨が降ろうが。
説明はつかないが、彼女は『そういうもの』なのだ。
たまたまそれを見た人が度々通報してくるのだろう。
しかし、警察にはどうしようもないのだ。『そういうもの』として
扱うしかないのだ。
帰り道、ユウジロウとアカネの口からあの女の話題は一度
たりとも出ることはなかった。
終
>> ID:3xWsHHstO さん
>> ID:g9WpaIscO さん
>> ID:ptCzgP2QO さん
ありがとー。助かったよー。もう寝ちゃったかな?途中盛り上げてもらって
本当に嬉しかったです。特に今日はアカネとユウジロウのエッチシーン
が長くて始めたのは0時4分で終わりが3時48分。4時間近くの長丁場
だったのよねぇ〜。ちょっと疲れた。
なんかもう話がストレートではじめエロ、あとオカルトみたいな感じで、
きっちり分かれちゃってるし(いつもはなるべくミックスする形にしてる)
面白いんだか何なんだか…。感想寄せてもらえるとすごい嬉しいです。
もしROMで見てた方、いらっしゃったら本当につきあってくれてありがとう。
今日はさすがに読むほうも辛かったと思う。大感謝です。ありがとうございました!!
うわーん、作者さん乙&ありがとうございました!
>>62です
アカネと山形先生のエチー、最後まで見届けました(´Д⊂
なんかいつもよりハァハァが長かったような!?
大満足です!満たされました!(変な意味じゃないですw)
落ちる女、コワカター(((;゚Д゚)))
アカネ達に危害を加えるわけでもなく、台詞も無いのに
すごいインパクト!
何故彼女は落下を繰り返すのか?それが分からないとこが逆に怖い!!
…もう、今から眠れないかもw
長丁場、乙でした!私のワガママに応えて頂いて、本当にありがとうございました(・∀・)
>>118=62 さん
ハァハァが長かったのは御依頼通りにする為でした。もうちょっとロマンチック
な方がよかったかなと思ったんですが、勢いあまって屋外(青カン)になって
しまって…。
丁寧な感想感謝します。エロとオカルト部分に一本きっちり線を引いた実験作
ということもあり、感想が気になってたんです。
『好きなようにやれ』と言われる方もおられると思うんですが、逆に難しいんで
すよね『好きなように』っていうのは。
また希望やネタみたいなものも含めて何かあったら遠慮なくお願いします。
本当まさか最後まで付き合って頂けるなんて思ってなくて。嬉しいです。
明日…というかもう今日ですがお仕事とかに差し障りませんか?いつでも
読めるものですから遠慮なさらず眠かったら寝てくださいね。途中でも。
本当にありがとうございました。
作者さん、今回のネタ元の
>>118さん、乙でした!
面白かったですー!
アカネの倦怠感と残暑が絡む描写、色っぽかったです。
エロシーンではすごくハァハァさせていただきましたw
そして、ラストはゾクリと・・・。
読んでて、某県の服〇牧場と、心霊スポット・虹の〇橋の近辺を連想しました。
話の舞台は別の場所と思いますが、雰囲気が似てていい所なんですよー。
次回作も期待してます。
>>120 あーうれしいなぁ。こんなもうほとんど朝までつきあって頂いて…。
その牧場と橋は知りませんでしたが、実際あるんですね。舞台となったのは
去年のゴールデンウィークにいった静岡…かなぁ。の、名も知らぬ場所です。
そこには小さくてウシとかヒツジと遊べる牧場があって、そこから山にすすんで
いくとこの作中の橋そのものみたいな立派な橋があるんですよ。
余りに立派なんでちょっと怖くて。思い出しながら書いてみました。
感想ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。
作者サマ、乙です!
いつも楽しみに拝見させていただいてマスーp(^-^)q
しかしながら一点気になっちゃって、、女サイドの意見でスミマセンが。。
生理前、生理中は100パー妊娠しないわけではないです。。
ましてやすごくデリケートになっている時期なので(雑菌など入りやすい)、アカネちゃんが大切なら気を配ってあげて欲しいス(´・ω・`)
スルーすればよいかもですが、現実世界で勘違いしちゃうと困るカナと思い…
水を差すような意見でホント申し訳ないです(>_<)
しかも携帯で(TДT)
これからはまた静かにROM住人してますね!
>>122 いつも読んで下さって感謝します。ありがとう。
まさしくあなたの仰る通りです。フィクションであることが前提である為、特に注意、
勧告はしませんでしたが、コンドームなしでのセックスには常に妊娠の可能性が
あります。
またコンドームも絶対的なものではありません。
『山形先生シリーズ』通して、強姦、近親相姦、売春、覗きなど、著しくモラルから
外れた行為の表記もあります。
しかしこれらを筆者が肯定、推奨しているわけでは決してありません。
物語の展開で、レイプから生まれる愛もあるという意味合いの言葉も登場しますが
レイプ、強姦は犯罪です。そこから生まれる愛などというものは一種のファンタジーに
過ぎません。
また屋外、廃屋などでのセックスは衛生的な問題もあり、これもまた推奨しません。
大部分の方には暗黙の了解として受け入れて頂けているとは思いますが、上記の
こと、くれぐれも御理解頂きたいです。
『山形先生シリーズ』は現実社会での犯罪行為を認めるものではありません。
以上のこと、【作者◆xDdCPf7i9g】 の名において宣言します。レイプ(・A・)イクナイ!!
(ちなみに、アカネはその性格上、現在ではピル(経口避妊薬)服用者という設定に
なっています。これも記すべきところを書き忘れていました。謝罪します。)
>>122 ROMにも関わらず、わざわざ携帯での御指摘、感謝しています。
誰か勘違いする方がこの後、出てくるやもしれないわけで、このような
勧告は必要と知りました。誰が見ているか分からない掲示板ですからね。
私の配慮が至らなかった点で、御手を煩わせてしまい申し訳ありませんでした。
私の方から動くべきであったと思います。今後とも何か至らない点がありましたら
御指導御鞭撻の程、お願いいたします。
125 :
O:2006/08/03(木) 17:55:52 ID:ptCzgP2QO
>>121 今朝の新作を仕上げた後に焼酎ですか。
すごいですねw
ごめんなさい誤爆しますた
さてここらで怖い話でもするか。
夏休みも終わり、そろそろ浮ついた雰囲気も消えて、校内は
学び舎としての空気を取り戻しつつあった。
つづく
福岡ユウコは担任を持っている上に、夏休みの宿題として出した課題の採点に
忙しそうだった。
一方で、ユウジロウは暇だった。座席からいえば、ユウジロウの右斜め前の席が
ユウコの席だった。向かい合うように席は並んでいるので、少し顔をあげれば、
顔を合わせそうなものだが、ユウジロウのデスクの本棚にはコンピューター関連
の分厚い本がバリケードを作っていて、それを遮ってしまっている。
できれば片付けたいのだが、片付けようがない量の本だった。
時折、伸びをするように背筋を伸ばすと、凛としたユウコの顔が見えた。
シャープな顎、小さいが筋の通った鼻、切れ長の目。全体にクールで冷たい
印象を与える彼女だが笑うと目尻が下がって柔和で愛嬌のある顔になる。
美しさと可愛らしさを持ち合わせた顔といえるだろう。性格も穏やかなのだが、
立ち居振る舞いは時としてモデルのような、恰好の良さを見せる。
そのせいか、男子生徒に留まらず、女子にも人気があった。
つづく
彼女がどこに住んでいるかは知らなかったが、それ程遠くから
通っている様子はない。
まさに美人OLといった趣のスーツ姿の日はクルマで通勤しているのだが、
週に何度かはジャージ姿でいる。ジャージ姿の時は運動不足解消の為、
自宅のマンションから走って通っているという。
だから何とか走って通勤できる範囲に住んでいるのだろう。
ユウジロウの机の上は乱雑に本が置かれているが、ある一箇所だけ、
隙間があって、あちら側を覗くことができた。ユウジロウはその隙間から
福岡ユウコの仕事する姿を眺めたり、携帯電話のカメラでこっそり彼女
を盗撮したりしていた。
デスクワークの時はメガネをかけていないのだが、教壇に立つ際には
メガネをかける。少々吊りあがった、彼女のキツさを更に際立たせる
黒いフレームのメガネだが、それがまた良く似合った。
つづく
彼女は二年D組の担任だったが、ユウジロウは何度かD組の生徒に頼み込んで
メガネ姿の写真をメールで送ってもらったりしていた。
生徒でなければお目にかかる機会がほとんどないのだ。職員室にいる時は原則
かけていない。
今日もその『秘密の隙間』からユウジロウは福岡先生を眺めていた。ユウジロウ
にとって彼女をどうにかして犯すことは容易なことではあったが、一応恋愛対象
なのでそういったことは考えもしなかった。
肉欲の塊、性欲の帝王、山形ユウジロウにも純愛の心はあったのだ。
ぼけぇと眺めているうちに昼休みになった。ユウジロウの昼食はアカネの
手作り弁当だ。少し開けるのが恐ろしい。ケンカした次の日や、
虫の居所が悪い日は、弁当箱全体に白飯を敷き詰め、ショウユを
かけただけの弁当だったりする。
つづく
つづく
朝、何となく機嫌が悪そうだった。生理の影響だと考えられた。
いわゆる『多い日』、生理三日目から四日目辺りになると、手が
つけられない程機嫌が悪くなることがある。
ちょうど今日辺りがそうだ。もう既に帰るのが憂鬱だ。
先月は、突然
「つねる際には、親指と人差し指をもって、出来うる限り薄く、
相手二の腕の肉をつまみ、やや爪を立て、相手二の腕の
皮膚を肉もろとも捻りちぎるが如くにして、渾身の力をもって
つねるべし」
などとさっぱり訳の分からないことを言ったかと思えば、アカネ
は急にユウジロウの二の腕の肉をつねってきた。たまらない
痛さで、今でも跡が残っている程だ。
つづく
果たして、今日の弁当はまともなものなのか。開ける。
弁当箱一面に白飯を敷き詰め、そこにスルメが乗っていた。
言うなれば、『スルメ丼弁当』 どう食べろというのか。
度々あることなので、ユウジロウは引き出しにいつもフリカケ
を常備していた。スルメをどかして、フリカケで食べる。
と、何となく部屋が暗くなった。なんだ、と顔を上げると、まだ
仕事を続けていた福岡先生が、午前中の仕事を切り上げて
立ち上がったところだった。ちょうど窓からの日差しを塞ぐ恰好になって、
福岡先生の影が、フリカケ飯を食べるユウジロウにかかったのだ。
憧れの女性の影の中にいる。それだけで軽い幸せを味わった。
ユウジロウはまだそんな純粋な気持ちがあったかと自分で感心
した。
つづく
見惚れていると、福岡ユウコと目があった。ユウコも別に
ユウジロウのことが嫌いだというわけではない。
挨拶代わりに、軽く微笑んだ。途端に大人の女から、少女っぽい
雰囲気に変わる。
「大変そうですな」
笑顔に誘われてユウジロウが声をかけた。
「ちょっと宿題出しすぎちゃったみたいですね」
整った顔で笑う。この性格、この容姿ならどこに行っても通用するだろう。
あらゆる男に愛されるだろう。ユウジロウは憧れながら、嫉妬に似た感情
も持った。あんん顔に生まれたら、誰だって幸せになれるだろうさ。世の中
とは不公平なものだ。
つづく
「美味しそうなお弁当ですね」
フリカケ弁当を指してのことだろう。明らかに皮肉なのだが、憎めない。
ユウジロウは照れ笑いして誤魔化した。
「いつも妹が作ってくれるんですけど、具合悪いみたいで」
「そうなんですか?」
「えぇ。病気ってわけじゃないんですがね」
デスクのヒキダシからコンビニの袋を取り出すと、『ウエイトダウン』と
書かれたゼリー状の機能性食品を取り出し、立ったまま一口、口に
した。
「ダイエット中なんですよ」
つづく
「充分細いじゃないですか」
「着痩せするだけですよ」
しばらく会話が続いた。こんなに会話をしたことがあっただろうか。
おそらく、ない。何となく好機を感じた。
正に今がアタックチャンスにのではなかろうか?
「ダイエット中になんですが、どうです?一杯」
「お酒かぁ…」
今日はジャージを着ている。ということは走ってきたということだ。酔っ払っても
差し障りはないだろう。
「流行りの焼酎でも。きゅっと。全国の焼酎を集めたいい店が駅前に
あるんですよ」
「へぇ…なんかちょっと、いいですね」
キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
つづく
下校時間。一応他の先生の目もあるので、学校から少し離れた
場所で待ち合わせた。ユウコが走ってくる。
「すいません。遅れちゃって」
「ははは。大丈夫ですよ」
「ところで…こんな恰好で大丈夫かな?」
ジャージ姿を気にしているようだ。
「大丈夫ですよ。気楽な店ですから」
やはり女性としては気になるところなのだろう。もっとも、ジャージと
いっても彼女の着ているジャージはかなり洒落ていて、平服としても
充分通用するデザインだった。
つづく
「お!ユウちゃん久しぶりだね!あれ??今日もまた美人と一緒?」
常連なので店主とも仲がいい。『今日もまた』というのはアカネのことだ。
妹であることは知っているはずだった。
「やだなマスターそれじゃ俺が女の子トッカエヒッカエしてるみたいに聞こえる
じゃない」
「実際結構やっちゃってんじゃないのぉ?」
「やってないよ全く。冗談もほどほどだよ」
「あははは」
快活な店主は喋りながら必死に焼き鳥を焼いている。厨房の中はかなりの温度
なのだろう。
つづく
『もう少し洒落た店の方がよかったか…』
と思ったが、ジャージを着ているということを気にしていたせいか
本来こういう雰囲気が好きなのか、ユウコは早速店主に声をかけたり
して楽しそうにしている。もう常連といった振舞いだ。
普段知らない福岡先生の本質を覗いた気がした。
「実はもう少し寡黙というか、おとなしい方かと思っていました」
「いやー普段はおちゃらけてますよー」
話を聞けば、クールでシャープな顔立ちが自分では嫌いだという。
本来はぬいぐるみや、可愛いらしい服などが好みらしい。しかし
大人っぽく見られる為に、そういったものに手を出せない。それが
苦痛だとも言った。
そんなこともあるものかとユウジロウは思う。確かに美人といっても
それが本人が望んだ顔とは限らない。
つづく
そういった意味では美人は美人で大変なのだなとユウジロウは
思う。
福岡ユウコの容姿からみれば、洒落たバーとか、夜景の綺麗な
レストランとか、そういったところが似合いそうだが、本人はそんな
ものには興味がないという。むしろ、ラーメン屋とか牛丼屋、賑やかな
居酒屋などが好きらしい。しかし容姿と吊り合わないのでなかなか
行きにくいようだ。
そんな話があって、盛り上がった。酒も相当進んだところで、とりあえず
ユウジロウが奢ることにしたが、福岡ユウコはそれだけは拒んだ。結局
ワリカンになった。
そしてそのまま隣の牛丼屋のチェーン店に入り、牛丼を食べる。確かに
ユウコは店の雰囲気から浮いていた。何となく、彼女の悩みを理解できた
気がした。しかしこの雰囲気にばっちり溶け込むユウジロウと一緒だ。
ユウコはそれが心強かった。
つづく
「家まで送りますよ」
湿気た風の吹く。夜。二人の距離は近かった。
手の甲がわずか触れて、ユウジロウは手を握ろうとしたが、臆した。
付き合いたい気持ちもあるが方や四十、ユウコは二十四。
歳の差がありすぎる。
「ここが、あたしのマンション」
近代的なマンションだった。セキュリティもかなりしっかりしている。
相羽 スズカのアパート(第三十話参照)とは大違いだ。
しかし教師の給料でこんなマンションが借りられるだろうか?
「寄っていきます?」
つづく
言い方に艶気がない。完全に無防備だ。同性の人間でも
誘っているような感じ。酔っているせいもあるのだろうか。
しかし寄らない手はない。
部屋は多少散らかっていた。これも予想外だった。きっちり
片付いた部屋に住んでいるように思っていた。偏見とは恐ろしい
ものだ。いつの間にか心に刷り込まれ、確かめてもいないのに
それが自分の常識になる。ユウジロウはこれからなるべく自分
の目でちゃんと見たものだけを信じるようにしようと思いなおした。
「何か飲みます?コーヒーかお茶…そうそうお酒もありますよ?」
「あ、じゃあお酒で」
「あたしもそうしよ」
平気で男を部屋に入れる。いや、俺だから入れたのか?一応
信頼できる人物と判断されたのだろうか?
つづく
「随分いいマンションですね…」
聞けば、福岡ユウコの実家はかなりの資産家で、今だ仕送り
をしてくるのだという。しかも、田舎の人間の勝手な先入観で
東京に出てきて妙な事件にでも巻き込まれたら大変だと、
勝手にこの高級マンションを借りてしまったのだと言う。
だからユウコ自身は十万円近い家賃を全く払っていないらしい。
全部親が払っているというのだ。更に毎月十万円の仕送りが
振り込まれる。
ある意味セレブだ。しかしユウジロウはそれ程しっかりした親
ならば、こんな歳の差のある男との結婚など許してくれるはずもないと、
諦めに入った。
仕方ない。とりあえず
レイプダケシテオコウカナ!
つづく
散らかってはいるが床には充分な広さがある。
ユウジロウはユウコを押し倒すと首筋に唇を当てた。
「ちょっ…山形先生…やめてください!」
熱い吐息を感じた。いい流れだ。一発正解。まちがいなく
ユウコの性感帯は首付近にある。恐らくは…
「ひっ!あぁっだめっ!!そこだめなのっ!!」
耳だ!耳で落とせる!愛撫と同時に衣服を脱がす。
ユウジロウからすればジャージは最も脱がせやすい衣服
の一つだ。
高級マンションだから防音もしっかりしているだろう。好都合だ。
つづく
見る見るうちに脱がされるジャージ。もはや神業の域に達していると
言えよう。そうしながら、第二の性感帯が、脇腹にあることも発見していた。
酔いも手伝って、ユウコは落ちた。その気になったのだ。
「山形先生…ベッドで…しよ…」
確かにフローリングでは色々と不都合だ。
優しくベッドへ運ぶと二人は愛し合った。膣に指を入れる。瞬間衝撃が
走った。
「まさか!」
「…ん?」
「お…俺が…初めてか??」
つづく
恥ずかしそうにユウコはうなずいた。
なんてことだ処女だったとは!女にとって、最初のセックスは
重要だ。初めてのセックスの相手のテクニックが稚拙であれば、一生
セックス嫌いになることもあるらしい。逆もまた然り。
心してかかるべし。
処女の相手は久しぶりだ。余り強烈なテクニックは使えない。しかし
そうでなければこっちが立たない。果たせるのかユウジロウ!
と、クローゼットの開いたほんの隙間から、何かの目が覗いていることに
気付く。
「だ…誰だっ!」
つづく
飛びのいて、クローゼットを開け放ったが人はいない。
「ど…どうしたの?」
「今ここから誰かが見てた…」
「やだ…怖いこと言わないで下さいよ…」
クローゼットは無人でそれどころか人が入れるようなスペースはない。
気のせいか…。
とりあえず電気を消して、再びユウコと交わう。
前戯を丁寧に。時間をかけて…。ゆっくり。処女膜を破る行為は痛みを
伴うことがあるが、処女膜の構造によっては、前戯に時間をかけ、
しっぽりと濡れた状態でゆっくりと挿入を行うことにより、出血、痛みを軽減、
またはなくすことができる。
つづく
と今度は枕の横に老婆の顔が現れた。にやにやとした老婆の
顔だけが枕の横にあるのだ。ユウジロウを見上げている。
まずい。この部屋には何かがいる。入るときには感じなかったが…。
その後も老婆は現れ続け、セックスどころではなくなっていた。
さすがのユウジロウも引かざるを得ない。ユウコに恥をかかせた
申し訳ない気持ちがあったが、中止になった。
ユウコは自分が処女で、何もせずただ横になって、ユウジロウに
何もしてやらなかったので、彼が怒ってやめたのかと思った。
「ごめんなさい…何も知らなくて…」
「いや、先生のせいじゃないんですよ…。ちょっとベランダに出ても
いいですか?」
「どうぞ…」
つづく
パンツ一枚でベランダに出たユウジロウはラッキーストライクを吸った。
ベランダに出たのは部屋がタバコ臭くならない為の配慮だ。
そしてそこにも老婆は現れた。
「オマエノセイダゾ!!」
笑顔で老婆は消えた。何と悪趣味な!人のセックスを邪魔する老婆とは!
携帯灰皿でタバコを揉み消すと部屋に戻った。
ユウコはベッドの上で布団にくるまっている。
「恥をかかせてしまってもうしわけない…」
「…いえ…こちらこそ…」
かける言葉もない。
つづく
「でも…なんで途中でやめたか、教えてください…」
正直にいうべきか、ユウジロウは迷った。しかしそれ以外で
彼女を傷つけずに説明するのも無理な気がした。
真実を語った。老婆が見えると。
「幽霊なんて…信じられないけど…」
どんな老婆かと聞くので特徴を言った。額に大きなホクロがあった。
そしてにこやかで、決して悪い霊のようには見えなかった。むしろ、
そうセックスを中止させる為に出て来た様な…そんな印象を受けた
ことも語った。
ユウコは話を聞くと、クローゼットからアルバムを出した。
つづく
「オデコにホクロって…」
古いアルバムのあるページを見せられた。
色あせたカラー写真で、可愛らしい女の子と。
額にホクロのある老婆が映っていた。
まさしく、その人である。
可愛らしい女の子は、ユウコだった。そして老婆は祖母だった。
「東京に出るなら、悪い男がいっぱいいるから気をつけなさい」
祖母は何度も言ったという。戦後の混乱の頃、自分も何かひどい目
にあった経験があったらしい。セキュリティのしっかりしたマンション
を借りるよう、親に進言したのも祖母だった。
つづく
そしてユウコが東京に来て間もなく、祖母は死んだ。亡くなる直前、
祖母から電話があった。祖母は心配していた。変な男はいないかい、
彼氏を選ぶ時はしっかりえらびなさいよ、悪い人とつきあっちゃいけないよ、
一生のこの人と決めた人をきちんと探すんだよ。
それだけ伝えると、もう肉体的に辛かったのだろう中途半端な雰囲気で
電話は切られた。それが最後の電話だった。
「優しいお婆ちゃんだったよ…」
「今も近くにいるよ。でも怒るわけでもなく、笑ってたよ」
「そうなんだ…ちょっと見たかったかな」
マンションを出ると、外灯の明るい道を歩く。一人きり。マンションまでの道も
明るいし、何軒かコンビニエンスストアもある。確かに安全という意味では
最高のマンションだろう。
外灯の下にもんぺ姿の老婆が立っている。額にホクロがあった。気まずそうに
ユウジロウは頭を下げると、老婆は何かを詫びるように腰を折った。
そのまま駅の方向へ。ユウコと来た居酒屋。店主が驚いた顔で出迎えた。
「あれユウちゃん忘れ物?」
「いや、飲み直しに来た」
「なんだぁフラれちゃったの??」
「そんなところ」
安物の芋焼酎が一杯。店主からの失恋見舞いのおごりだった。
終
キテター!新作投下乙です。
山形先生の純愛失恋話切ないです。
実在する人が語る過去の恋愛を聞いてるような気分になりましたよ。
勢いユウコ先生を襲ってしまいましたが山形先生、潔く身を引いて紳士ですね。
本当はど変態なのにw
さてここらで怖い話でもするか。
放課後、教師たちが三々五々職員室を出て行く中、教師山形ユウジロウは
簡単な書類の整理をしていた。あと十分もすれば帰れるだろう。
つづく
向かいの福岡ユウコももう帰り支度を済ませていた。黒いスーツがきまっている。
礼の事件後(第三十三話参照)、気まずくなるかとも思ったが、ユウジロウとユウコは
互いに適当な距離をおいて、いい関係を保っている。特にユウジロウが連れて行った
居酒屋『枡や』が気に入ったようで、たまに二人で飲みに行ったりもしていた。
「お先に失礼します」
「あー、お疲れですー」
丸みを帯びながらも、引き締まったヒップが歩くと艶っぽく左右に揺れる。タイトスカート
越しにその肉感が伝わってくるようだ。プロポーションという意味では妹アカネも敵わない
かもしれない。
さてそろそろ自分も帰ろうかと立ち上がると突然声をかけられた。自分が最後かと
思っていたので驚く。
つづく
失礼!
切ってしまいました(´・ω・`)
「あー山形先生…」
存在の薄い、徳島教頭だった。
「まだいらっしゃったんですか?」
「あの、ちょっとお願いがありましてな」
「はぁ」
「新しい部活を作りたいと、生徒から嘆願書があがってきとるんですわ」
「部活?」
話を聞けば、新しく『オカルト同好会』という部を作ってほしいという生徒からの
嘆願書が、ある教師を経由して上がってきたというのだ。嘆願書には生徒
七名の署名があった。
原則、最低で生徒七名が活動を望めば同好会を作ることができる。そして部員が
集まり、十名を越えれば、『クラブ(部)』になる決まりになっていた。
そしてユウジロウにその同好会の顧問になってくれないか、という相談だった。
つづく
徳島教頭は、どうも『オカルト同好会』というのが気に入らないらしい。
しかし七名の署名がある以上作らざるを得ない。
「そんなねぇ…中学生にもなって幽霊だのUFOだの…」
ぼそぼそと愚痴をこぼしている。部活動の顧問となると場合によっては
帰りが遅くなる。少し面倒な気もしたがユウジロウは引き受けることに
した。部活動の顧問となると若干給与が上増しされるのだ。
「オカルトだったらピッタリじゃん!」
冷えた缶ビールを冷蔵庫から出しながらアカネが言った。缶ビールを
受け取ったユウジロウは片手で器用にプルタブを開け、ぐびりと一口
飲んで大きく溜息をついた。
「まぁ、どこまで本気か分かったもんじゃないけど…」
つづく
「他の先生にイヤミの一つでも言われそうだよ。オカルト同好会の
顧問なんて」
自分もビールを飲みながらアカネが聞いた。
「どうして?」
「オカルトっていうとなんか怪しいイメージがあるだろう教育論的にも
そんな非科学的なものの同好会なんて…」
「なるほどね。非科学的だってさ」
窓から部屋の中を羨ましそうに覗いている柴犬のユタカに言った。ユタカは
首をかしげている。
「まぁとりあえず、明日その七人と会ってみるよ」
喉を鳴らしてビールを飲み干すとネクタイを外してソファに寝転んだ。
つづく
「あーまたそこで寝るー」
「寝てないよ」
「昨日もそこでそのまんま寝ちゃったじゃん。お風呂も入らないで。
超不潔!」
「一眠りしたら入るよ…」
既にユウジロウはまどろみの世界に入りつつあった。
翌朝。
「片腕が自由な際には、相手鎖骨と鎖骨の間、喉仏下部、正中線上に
存在する急所、仏骨に親指を深く突き入れ、更に下に押し下げるようにして
突くべし」
「ぐぅえっ!!」
つづく
カエルの断末魔のような声を上げてユウジロウはソファから
転がり落ちた。
昨晩、あのままユウジロウは寝てしまったようだ。
当然入浴もしていない。
「シャワーぐらい浴びて行きな。臭いよ!」
「あ…あぁ…わかったよ…」
喉の辺りをさすりながらユウジロウはバスルームに消えた。
風呂からあがり、ヒゲを剃り、アカネから弁当を受け取って、愛車で
通勤。恐らく今日の弁当はスルメ丼弁当かそれ以下のものに違いない。
昼。弁当を開ける。無理矢理食パン二枚が弁当箱に詰め込まれていた。
用意してあるフリカケもこうなっては無力だ。
つづく
昼休み中に放送で、『オカルト同好会』設立を希望する生徒七名
は放課後職員室に来ること、と放送をかける。
放課後、七名は集まった。
三年生の女子が三名、二年生の男子が二名、同じく二年生の女子が一名、
一年生の女子が一名。計七名。
普通は同学年、同クラスで頭数を揃えそうなものだが、随分バラけたメンバー
だ。三年生の女子三名は面識があるようだが、あとはそれぞれ他人といった
雰囲気。
「私たちが全クラス一つずつ回って、部員を集めました」
なるほど。その三年生の女子三名が各教室を行脚してオカルトに興味のある
人間を集めたらしい。そういった意味では相当本気だ。ただの興味半分の集まり
ではあるまい。
つづく
特に一年の女子などは一番後輩の上、同学年の者は一人もいない。
入るのにそれなり勇気のいったことだろう。
ユウジロウは教師として真面目に接することにした。
部室は通常ならばクラブハウスという長屋のような建物を使うのだが
運動系の部で満室。理科室は化学同好会、音楽室は吹奏楽部、
図工室はマンガ同好会、技術室は工作同好会、図書室は文学部が
使っている。
普段山形先生が担当している『情報倫理学』の電算室も、電算機
同好会に使われてしまっている。開いている部屋がない。
仕方がないので、とりあえず山形先生が担任を勤めている二年A組
を当面の間、部室とすることにした。どうしようもないことなので文句
こそ出なかったが一様に複雑な表情をしている。
つづく
それもそうだろう。専用の部室があるに越したことはない。
何となく人の部屋を間借りしているようで複雑な気分だ。
どんなことをしたいのかと問えば、休日を利用した心霊スポット
巡り、各種魔術、まじない、超自然現象の解明と研究。都市伝説
の収集…。
オカルトを信じない人間、オカルトが嫌いな人間が聞けば思わず
吹き出すような内容だったが山形先生は真摯な態度を崩さなかった。
生徒たちも真剣だった。
「ところで、そういう不思議な体験をした人はいるの?」
誰も動かなかった。体験はしていないらしい。これは好都合だった。
教育者としては、なるべくそういったことに深入りしないように誘導
したい気持ちがある。見えてもいないモノを信じるというのはある種
危険なのだ。見えなきモノは無きに等しい。確かに貴重な体験でも、
経験しない方がいい体験もある。
つづく
ユウジロウは完全に『見える』し、『感じる』人間であるから当然
幽霊は存在するかと問えば、「存在する」と答える。
しかしこのケースは特殊だ。生徒がカルトやあやしげで危険な
ものに巻き込まれない為には、否定する心が必要だった。
だからユウジロウはあくまで中立の立場を守ることにした。
あるかもしれない。ないかもしれない。人が見た、体験したと
言ってもそれはあくまで他人の体験であり、自分とは関係が
ない。自分の体験したこと、自分が直接見たものが最も重要
だということを生徒たちに伝えた。
生徒たちは神妙にユウジロウの話に聞き入っていた。
ところで、生徒の顔を見ると、三年生の女子三名。これが
アイドルグループかと思うばかりに美人揃いなのだ。
つづく
何となく二年生の男子二名は、この三年生の三人娘にほだされて
入部を決意したのではなかろうか。ユウジロウのオカルトに関する
話を聞いてはいるが理解できないといった感じでキョトンとしている。
教え子には手をかけまいと思ったユウジロウではあったが、性欲を
抑えることはできなかった。
ターゲットロック。目標は三体。一年生の娘も可愛らしい顔をしている
が幼すぎる。目標は三年生の女子、三名だ!
では早速、活動を始めようと、部室である2−Aの教室に向かった。
「まず何がしたい?」
つづく
問いかけになかなか答えは出なかったが、三年生の女子の一人が
「魔術というものを体験してみたい」
と語った。ユウジロウには専門外だが、彼の頭にまず浮かんだのは
『性魔術』という言葉だった。どうにか利用できないだろうか。
いやむしろカルト化した方がいいのではないか?オカルト同好会という
自分を中心とした宗教団体を作り上げるのだ。ユウジロウが教祖となり
教祖の言葉は絶対!逆らうものは死刑!
教育者としてのユウジロウの理性が、モラルが、超自我が、山形家と、
岩手ノリオの血に洗い流されていく。
俺には全てがペニスに見える。その女の持つボールペン!その女の
咥えているタバコ!全てペニスだ!世の中はペニスでできている!
つづく
そうだ!俺は山形家頭首、山形ユウジロウだ!!
恐るべき計画が動き始めた。学校内カルト。絶対神ユウジロウ
を中心とした性教団。団員は女だけ。しかも美人だけ。男は
全員死刑!
ユウジロウの野望は全世界の女を全て犯すこと。教え子だろうが
容赦はしない。なぜなら俺は変態だからだ!
野に放たれた野獣。宇宙の中心。唯一絶対の存在。全てを統べる者。
それがっっ山形ユウジロウだっっ!!
並んでいる机を全て教室の後ろへ寄せて広いスペースを作る。
「実は秘密にしていたが、私はアイレスタークロウリーに学んだ
正式な後継者の一人なんだ」
つづく
「人間でもっとも強い魔力とは何か分かるかね?」
しばらく考えていた三年三人娘の一人が答えた。
「愛の力とか…」
「否!性の力です。これは心理学者のフロイトも言っています。
人間は性欲で動いているのです」
「性欲…」
「まず本当の魔術をみたいなら裸になりなさい。なれない者は
すぐにここを去りたまえ」
ユウジロウは全裸となった。部員たちはかなり混乱している。
「さあこの開放感を味わうのだ!」
つづく
しかし活動初日に全裸になれというのも無理な話だ。
中学三年生といえばデリケートな年頃だ。まだ男の前に裸を
晒したこともない者もいるだろう。
明らかにユウジロウの勇み足だった。
誰一人、脱がない。
しまった…。一月か二月…マインドコントロールをする時間が
必要だったか…
しかしここで皆が服を脱がないからといって、おめおめとまた自分が
服を着るのも妙だ。
全裸の先生に、教え子七名。外には既に夕闇が訪れている。
つづく
『このあとどうなるんだろう』
という空気がいやという程伝わってくる。
「…君たちにはレベルが高すぎたようだな…」
全裸で座るユウジロウ。気まずい。
既に解散の危機な気がする。
よく考えたら男子もいるのだ。
しかし一応はオカルト同好会。何かが起こるのかもと
真面目にじっと見ている。
何か手品の一つでも仕込んでおくべきだった。
つづく
みんなの視線が集中する。
やめろ…見ても何も出てこないぞ…
「あっ!」
とりあえず大声を上げてみた。緊張感が戻る。
「悪魔がこの世に出たがっている!」
だからといって呪文を唱えたわけでも何をしたわけでもない。
生徒の反応は極めて薄い。カラクリは見破られている。
どうせ何も起こらないんだろうという冷めた視線。
つづく
キテル━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!!!!
何かに乗り移られたことにしよう。
「ぐおー俺はルシファーだー」
ルシファー程の高潔で上級の悪魔が単なる全裸男にとりつくはずもない。
生徒七人も黙って見ている。
「ルシファーだぞ!」
どう見てもユウジロウだ。
「わはは私は自由だー」
とりあえず教室を飛び出す。もう逃げよう。今日は無理だ。
つづく
全裸で逃げる。2−Aから最も遠いところへ逃げよう。
そこにはトイレがある。トイレに隠れるか。そしたらみんな
諦めて帰るかな。
「わはははははー」
異常なテンションで便所へ向かう。と、そこには用務員がいた。
まずい見られる!しかし用務員はにやりと笑っていた。
ここは…二階便所…。
まさか…。
「また来たのかいおまえさん…」
「鈴木マサムネ!!(第二十一夜 『六尺降臨』参照)」
つづく
また尻を掘られた。
オカルト同好会存続か、消滅か。全ては部員にかかっていた。
尻に太いペニスを突っ込まれながら、『お留め』(第 X 話参照)
の技術を学ばなかった自分を恨んだ。
ああ俺のオカルト同好会。校内カルト。自分の思い通りに動く
生徒たち。そんな夢を見ながら、ユウジロウは犯され続けた。
ユウジロウの野望、天へ届くか。
終
すいません。今回は本当すいません。
ちょうど校内カルトという部分に至った際、今話題になっている
某という韓国のカルト教団を思い出してしまいました。許せない
事件と書きたい作品の共通点を見てしまい、そのまま書くことが
はばかられ、このような中途半端なエンディングになってしまいました。
すいませんでした。申し訳ありません。
作者さん乙でした!いやー面白かったです。
作者さん的に中途半端との事ですが、そうは感じなかったですよ。
タイトル人さん乙です!
カコイイタイトルを次々と思い付いて、すごいです。
作者さん休息中かな。
マターリ待ってます(*^_^*)
ちょっと昨日はサボってしまいました。待っててくれた方々すいません…。
ネタがないので何かある方、投入願います。
ワガママを言いますがネタ投下の際は、原則、『オチ』まで書かないで
頂けると助かりますです。
さて、ここらで怖い話でもするか。
高校時代の友人が、精神病院に入院したというので、
山形アカネはその病院へと向かった。
つづく
初めて来た病院だが、広大だった。病室も数え切れないほどある。
窓に鉄格子をはめた部屋も見受けられる。
入り口の大きな自動ドアをくぐると、外来の患者も多く見られた。
やはり普通の病院とは雰囲気が違う。みんな肉体的には正常なのだ。
ただ心に何かしらの問題を抱えている。落ち込んだ様にうつむいている者もいれば、
そんなに大きい声ではないが、何か自分で勝手に作曲したらしい滅茶苦茶な歌を
唄っている者もいた。
カウンターで尋ねる。
「山岡シズエという女性が入院していると思うのですが…」
案内され、彼女の部屋へ。
つづく
広大な病院なので、口で説明するだけで病室の場所を
説明することは難しいらしい。看護婦が着いてきてくれた。
看護婦に聞くと、どうもシズエはレイプされ、精神に深い傷
を受けたことを知った。だからあまり、そういった部分を刺激
する話はしないでほしいと頼まれた。
病室にたどりつくと、看護婦は忙しそうに去っていった。
彼女がいるのは比較的症状の軽い者が入院するA棟だった。
そこには、彼女が上半身だけ起こして、ベッドの上から外を眺めている
姿があった。ドアが開いたことには気付いたのだろうが、外ばかり見ている。
つづく
「…シズ?」
高校時代の頃から変わらない呼び名を呼ぶと、やっと
振り返った。
「あ…アカネ…」
目の下にはクマを作っている。忌まわしい過去の悪夢に、
まともに寝ることが出来ないのだろうか。覇気といったものも
感じられない。
「お母さんから聞いて…」
「あぁお母さんか…余計なことして…ごめんね。わざわざこんな
所まで」
「いいのいいの。気にしないで」
つづく
「レイプ、されちゃってさ」
まさか向こうからその話を持ち出してくるとは思わなかった。
アカネは面を食らって言葉がでなくなった。
「あたし、もう駄目かも」
「何言ってるの。元気出さなきゃ」
ちぐはぐな会話。アカネもどこまでしていいやら分からない。
事件の詳細を聞くことで、相手の気持ちを吐き出させてしまった
方がいいのか、それとも黙っていればいいのか、無理にでも
明るい話をすればいいのか…。
「気、使わなくていいよ」
「使ってないよ」
「じゃなんでレイプのこと聞かないの?あたし、レイプされたって
言ったよね?」
つづく
「…うん。それは聞いたけど…」
「気にならないの?どんことされたかとか、何処でされたかとか」
「…聞いちゃ悪いかなと思って」
「ほら、気、使ってる」
「そ、そうだね…」
「だから誰も信用できない。男も、女も」
そう言われてしまうと会話すらできなくなる。帰った方がいいのか。
とりあえずアカネは素直になってみることにした。
「どこでレイプされたの?」
「北方公園を歩いてたの。夜。そしたらなんか口にあてられて。
気付いたらどこかの家の中だった。広い部屋。そこで犯されて。
最後また何か嗅がされて、気付いたらまた北方公園にいた」
つづく
想像以上にはっきり喋る。
「相手の数は?一人だけ?」
「五人いた」
「…そのみんなにされたの?」
「全員だよ」
警察には言った?
「あたしの妄想だったんじゃないかってさ。北方公園で気を失って、
気付いたら北方公園にいた。夢でも見てたんじゃないのって」
「ひどい」
「知ったふうなこと言わないで!」
つづく
急に怒鳴られて驚く。しかし今話している相手は仮にも精神病院に入院
している人間なのだ。精神のバランスが取れないのだろう。
「今、一番何がしたい?」
何となく聞いた。シズエは答えた。
「その五人、殺したい」
「そっか…そりゃそうだよね。でも怖かったでしょう?犯されて」
何も言わなかったがシズエは細かく震え、自分で自分を抱くように、
手を交差させて両の肩をさすりはじめた。
「そんな相手を、殺せるの?」
震えるばかりだった。とりあえず花瓶にささっていた、しおれた花束
を抜き、自分の買ったばかりの花束を花瓶に生けた。
つづく
アカネは彼女を抱いてやろうと近づいたが、シズエはそれすら拒否した。
自分の身体に触られること自体が恐怖なのだ。
「それじゃそろそろ帰ろうかな…」
「ありがとう。ごめんなさい。こんな状態で」
「いやいや、そんなことないよ。無理しないで。ごめんなさい。こちらこそ」
犯人は五人。仮に『お留め』(第 X 話参照)があれば彼女は身を守れた
だろうか。『陰行流艶遁術』、『お留め』には、複数の人間に襲われた際の回避法もあるが
相手は三人が限度、となっている。
いずれにせよ犯されるのか。女の憐れを感じた。
つづく
一日が経った。何となく、シズエのことが気になった。どうしてかは分からないが
気になって仕方ない。今日も見舞いに行こうと思ったが、失礼な話、病院までは
遠く、『面倒だな』という気持ちもあった。
そんなことを思いながら昼のワイドショーを見ていると、精神病院の入院患者が飛び降り
自殺をしたというニュースをキャスターが語った。
自殺した女の名は山岡シズエだった。病院の窓は、重度患者が入院する棟には鉄格子
がはめられていたが、軽度の患者の部屋にはそれがなかった。
つづく
しかし、かわりに窓を開けられない構造になっていた。だからシズエは花瓶で窓を割り、
そして病室のある四階から真っ逆さまに飛び降りた。
運悪く、その病室の下にレンガ造りの花壇があり、シズエはその花壇のちょうど角に
頭からぶつかったらしく頭蓋骨は陥没し、首の骨も粉々になっていて、病院としても
手の施しようがない状態だったという。
もう見舞いに行くことすら不可能になった。
やがて、中学教師で兄の山形ユウジロウが帰宅した。
「ね、お兄ちゃん、今までレイプって何人にした?」
唐突なしつもんであった。
つづく
「何人って言ってもなぁ…未遂もあるし、ほとんど和姦に近いけど
結局強姦になっちゃったのもあるし…正確な人数はわからんよ」
「…そう…」
冷たい目をしていた。アカネのこの目見るのは久しぶりだ。
歴史に残りそうな程のある大事件で逮捕された容疑者が実は冤罪
だったという事件。当時、アカネは小学生だったが事件に興味を持ち、
ユウジロウが分かりやすく、『実はね、この掴まったおじちゃんが、みんな
犯人だと思っていじめてたのに、犯人ではなかったんだよ。本当に悪い
人は別にいたんだ』と語った時のこと。
目の色が変わった。アカネの柔和な顔が一瞬にして変わった。何も
感じていないような無表情。しかし心の奥底にとてつもない何かが隠れて
いる。それが何かは分からない。
その時と同じ顔だ。ユウジロウは鮮明に覚えていた。
つづく
アカネ・・・
(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
夜もふけて、二人は一つのベッドで寝た。
たちまちユウジロウはイビキをかき始めていたが、アカネは
その冷たい目を天井に向けていた。
何時間経ったか、天井から何かが降りてきた。ゼリーのような
スライムのような何かが天井から滴り落ちてくる。
瞬間、アカネは、それが死んだシズエそのものだと分かった。
すっかり床に落ち、床に妙に粘ついた不気味な池を作った、
ゼリー状の何かの中央がぶくぶくと盛り上がり、人の顔の
形なった。紛れもなく山岡シズエだった。
アカネは起き上がってそれを見た。
つづく
憐れな女。若くして犯され、未来を断ち、自ら死を選択した女。
話もできない様子だ。口の部分がパクパクと動いている。
何を言いたいのか分からない。
ただアカネの脳裏には残っていた。あの会話。
「今、一番何がしたい?」
「その五人、殺したい」
アカネの奥歯がぎりりと鳴った。
起きだしたアカネはクローゼットを開け、奥深くに手を突っ込んだ。
つづく
やがてそれはアカネの手に握られて、出てきた。
匕首(小さな刀)だった。白木のツカにサヤ。イメージが分かりにくければ、
『ルパン3世』に出てくる、石川五右衛門が用いる斬鉄剣。あれの小型の
ものだ。ツカの上部やま山形家の家紋が焼き付けられている。
それをズボンのベルトに潜ませ、シズエが連れ去られた現場、北方公園に
向かう。二十三時ちょうどだった。
無料の駐車場に愛車、赤のポンコツ軽自動車を入れ公園に入っていく。
タンクトップに膝丈のカーゴパンツ。
やがて、口に何かガーゼのようなものを当てられ、アカネは昏倒した。
つづく
「おい、起きろよ」
激しく腹を蹴られる。見れば確かに大きな邸宅の空き部屋といった感じ。
十畳以上は確実にある広い部屋だ。何もない。柔らかなじゅうたんが
敷き詰められている。
まだ意識が薄い。しかし五人の男が見えた。
「起きろっつっんだよ!」
頬を張られた。遠慮がない。しかしおかげで意識ははっきりしてきた。
あと一発。強烈な一撃がほしい。
背中を思い切り蹴られる。完全に覚醒した。
つづく
同時にアカネは動いた。
『陰行流艶遁術』…。まずよろよろと意識朦朧を装って、下半身を
ひきずった状態で一人の男に近づき、ペニスを愛撫する。
「おいおいコイツもうほしがってるぜ!顔に似合わずヤリマンだぜ!」
ズボンのジッパーを下ろし、イチモツを取り出した。咥える。
「みんなも裸になって…」
潤んだ瞳で懇願する。そういわれて脱がない男があるものか。みんな、
嬉々として衣服を脱ぎ全裸となった。
つづく
イチモツを咥えていた口が上へ移動する。
「ね、舌、出して…」
どんなキスをしてくれるのだろうと何の躊躇いもなく男
は舌をべろりと出した。アカネがそれに口を合わせる。
次の瞬間には男の舌が噛み千切られていた。アカネが
ぺっと吐き出すと、じゅうたんの上に男の舌先が鮮血と
ともに転がった。
男は絶叫しながら口を押さえ、床を這いずり回っている。
驚いてもう一人の男がへたりこんだ。勿論全裸だ。足元
にちぎれた舌が転がったので、驚いて腰が抜けたのだ。
つづく
その男の足と足の間に、縮んだペニスがあり、だらしなく睾丸の袋
を見せている。アカネはその睾丸の片方を爪先で踏み潰した。
絶叫。そして失神。痛みに精神が耐えられなかったのだ。アカネは
さらにもう一方の睾丸も潰す。痛みで男が覚醒したが、またたちまち
のうちに気を失った。
男たちには何が起こっているのか理解できない。横に半分勃起した
ままりの男がいた。床の上を転がるようにして、その亀頭に口をつけ
るとそのまま婚姻の噛み付きで、噛み千切る。
亀頭だけがアカネの口の中にある。それを口から出すと、痛みで絶叫
をあげる男の口の中に、その男の亀頭を突っ込んだ。
残るは二人。しかし完全に戦意を喪失している。一人などは、床に膝
をついて、許しを請うように、両手の平をアカネに向けている。
つづく
その男の眼球の下にアカネは右手人差し指と中指を差し込む。
眼窩の中は生暖かった。そのまま眼窩の中で、人差し指と中指
をカギ状に曲げ、引っ掛け上げるように力を加える。眼球が潰れ
ないようにするにはその力に従う他ない。
男が立ち上がると指はそのままに、背負い投げの要領で男を
投げ飛ばす。眼窩に手を引っ掛けての投げ技。これほど壮絶な
技もあるまい。男の目玉は止め処ない流血にその視界を奪われ
た。
残るは一人。リーダー格の男だ。いつの間にかナイフを持っている。
「上等…」
アカネは彼の懐に飛び込み、彼の肘の裏を取り、そのまま肘関節
を支配。そこから折り曲げるようにして、相手の胸を突いた。
つづく
要するに、肘の関節を利用され、彼は自分で自分の胸を突いたのだ。
更にアカネは彼の背後に回ると、首を絞めた。
完全なるチョークスリーパー。脳に向かう酸素、血液、全てが止まる。
それを五分。男は完全に絶命した。
『陰行流艶遁術』『お留め』による五人抜きが完成した。
部屋にはステレオがあった。音楽を流す。
そしてそのまま部屋の外へ出た。長い廊下を持つ立派な邸宅だ。
階下に下りてリビングへ。そこには、リーダー格の男の両親と見られる
者が団欒していた。
突然現れた彼女に驚いているようだ。
つづく
耳を澄ませば、強姦部屋のステレオの音は聞こえる。
音量は、女の悲鳴程度の音量に設定しておいた。
つまり音はここまで聞こえるのだ。女の悲鳴が。
それをこの両親は無視していた。
「息子のこと、わかってんのか?」
父親らしき男は驚き、大声で息子を呼んだ。しかし既に
息子は死んでいる。
「お前たち、てめぇの息子が女かどわかしていること、知っていたな?」
父親は謝罪もせず、「このことは黙っておいてくれ。通報しないでくれ」
と訴えた。
つづく
「金なら幾らでもやる!息子の将来がかかってるんだ!!」
母親もうんうんとうなづいている。
「それが愛情かよ…あんたら腐ってるよ」
ゆっくりと歩き出し、父親の横を素通りする。その瞬間にきらめく
ものがあった。山形家に伝わる匕首だった。
頚動脈から大量の血を流し、父親はゆっくりと死んでいった。
「あなた!!」
台所のスペースにいた母親が近づく。
「あなたしっかりして!!あなたがいなくなったらどう生活していいか…」
つづく
「売春でもして生きることだな…。あんたならまだ稼げるよ」
匕首についた血を、クッキングペーパーで丁寧に拭き取ると、
アカネは表に出た。自宅からはそんなに遠くない場所だ。
見覚えはある。
ゆっくりと家の方向に向かって歩く。
携帯電話を出して、ある男に電話をかけた。
つづく
こともあろうに相手は警視総監であった。
「あーもしもし?アカネでーす!」
今、人を六人殺した人間の声では全くない。怯えも後悔もない声だった。
「あーアカネちゃん!どうしたの?寂しくなっちゃったかな??」
「ううん。そういうんじゃなくて、こんどタダでエッチさせてあげるから
ちょっと力貸して欲しいんだ」
「何々?何でも聞いちゃうよ!」
つづく
「今晩、六人が殺された事件。それってなかったよ。」
「え?」
「とにかく、今晩、六人が殺された事件ってのは、なかったの」
「あー!そうかそうか。六人は死んだけど、殺人じゃないんだね?」
「そうそう。そういうこと。さすが。頭いいね!暇な時、寄ってよ」
「明日でもいい??」
「もちろん。待ってる」
携帯のマイクにキスをしてアカネは電話を切った。
これで全てが片付いたのだ。資産家とその息子が死んだのも
事件にはならなかった。都合のいいことに、一人残った母親も
包丁で自らの命を絶った。
これで、いいのだ。
終
あ、ごめん6人皆殺しにしてねぇやキンタマ潰されただけで死ぬって
ありえんもんね…ごめんごめん。
ちょっと『仕事人風』の話かせ書きたくなって…。まぁ一応なんか
出血多量とかで死んじゃったことにしてください。
勢いで書いてるので…そのへんの矛盾は御理解下さい。すいません。
乙彼!おもしろかったよ。( ゚Д゚)⊃旦 <茶ドゾー
元ネタは有名なリンチ事件?
>>209 レスありがとー書いたあとすぐレスがあるとあへ読んでてくれんだーって安心
するよう…TT
余りリンチ事件は気にしなかったけど、ベースにはあるかも…。一応フェミニスト(!)
なんで、レイプとか許せない部分もあって…。言い訳すれば『山形先生のレイプ』は
愛あってのものなんですね。本当にファンタジーですけど。
レイプは絶対反対だし、実際にレイプまがいのことをした人がこないだ得意気にその
エピソードを語っていましたが(仕事で一緒になった方です)、吐き気がするほどいや
だったです。
でもレイプモノのアダルトビデオ見たりするのは好きだったり(リアルなヤツはだめ…)
まぁ今まで散々レイプを書いてきたので、贖罪だと思ってください。本当即レスはうれしい
です。ありがとうありがとう。励みになります!
さて、ここらで怖い話でもするか。
中学校教師、山形ユウジロウを中心とした『オカルト同好会』の面々が
部室である2−Aの教室に集合していた。
つづく
キタ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━( )━(゚ )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━━!!!!!
今回でもう五回以上、部員を集めた話し合いがなされているが、
結局何も決まらず、幽霊の存在をどう思うかとか、さすがにUFOは
いないとか、子供の頃の不思議な体験を話し合う程度で、部を挙げて
何かに取り組もうという建設的な意見が出てこない。
そのうち話すネタも尽きてきて、もともとわずかだった部員のうち、
二年の男子、二名は辞めてしまった。
辞めてしまったといっても、元々いた七名というのは『同好会』を活動
させるうえで最低限の人数なので、一応名簿には残してあった。
名簿から消してしまえば部員はたった五名となり、『同好会』として
扱われなくなってしまう。とにかく『同好会』と名のつくものには七名
の人間と顧問の教師が必要だった。
ちなみに現在、実質的に所属しているメンバーは三年生の女子が三名、
二年生、一年生の女子が一人ずつの計五名だ。
つづく
215 :
本当にあった怖い名無し:2006/08/08(火) 00:23:57 ID:A75ePO//0
ALL女子wktk
確かに、今や『幽霊部員』となった二年の男子二人は、先輩である
三年女子に見事釣られた感があった。
特にオカルトには興味はないようだったし、彼らをスカウトした三年の
女子はいずれも美人揃いだった。
一人は大人びた雰囲気で、顔だけ見たらまるで大学生のようだった。
もう一人は可愛らしい顔立ちにくりんとした大きな丸い目が特徴で、
そのままアイドルグループに所属してもそれなりの人気を得そうな顔立ち。
残る一人は、男子とも女子とも仲良くなっていけそうなサバサバした
快活な女性で、『近所にいるちょっと美人なお姉さん』といった風情だった。
そんな三人の先輩に誘われ、『オカルト』などというものはどうでもいいと
いう気持ちで飛び込んだのだろう。
しかし女五名に男二名では、会話に混じることも難しく、一年から三年まで、
女子がキャーキャーと騒いでいるのを、横でじっと大人しくしているだけだった。
そしてやがて参加することすらイヤになってしまったのだろう。
つづく
そういった意味合いでも、顧問であるユウジロウも彼女ら
を持て余していた。
そもそも『オカルト同好会』とは何なのか、何をもってして
『オカルト同好会』なのか、よく分かっていなかった。
ただ怪談を語り続ければいいのか、それとももっと実践的に
占いや、まじない、魔術のようなことを実践するべきなのか。
特に残った五名の女子のオカルトに対する情熱、感心は相当
高いようで、余り下手なことを言うのもはばかられた。
例えば心霊スポットに行ってみるというのも活動としてはありだが、
様々な危険性を伴う。その責任はユウジロウに課せられるはずだ。
余計、下手な動きは出来ない。
つづく
『ゴーストさま』という遊びも流行っているようだが(第四話『天体観測』参照)、
その手の遊びで集団ヒステリーに陥ったり、自己催眠によって精神状態が
おかしくなったりという話も聞いている。
本来なら禁止されているのだが彼女たちはお菓子や飲み物を持ち込んで
ワイワイやっている。ユウジロウは疑問を抱きつつ、やはり教室内では禁止
されているタバコに火を着け、全開にした窓から外へ煙を吐き出した。
と、ド忘れしていたことを思い出した。ユウジロウはカバンを開けると一冊の
古い本を出してきた。『悪魔召還の法』とある。
ユウジロウ自身『人あらざる者』を見る力を備えているため、大学時代、ほんの
少しだけそういったオカルト関係の研究に没頭した時期があった。ところが
卒業論文の締め切りに追われるうち、趣味だったオカルト研究はどうでもよく
なってしまい、現在に至っている。
つづく
この本は、そんな大学時代に東京、神田の古書店で手に入れた
本だった。古本で当時五千円。決して安い買い物ではなかった。
しかも内容は日本語なのだが難解を極めた。どうもヨーロッパで
発行されていた本を日本人の訳者が翻訳したものらしいのだが、
その訳者とは単なる大学の教授で、専門の翻訳家ではないから、
読み手のことなど考える余裕もなく、とりあえず日本語にしました、
という本のようだった。
しかし難解である、という点を除けば、かなりの資料価値はあった。
実際ユウジロウも何とか読み取って悪魔の召還に成功している。
(第三十一話『陰の験』参照)
車座になって、菓子を食べ食べ、怖い話談義に花を咲かせている
女子五名に、その本を見せた。
つづく
発行された年月日からすると、発行されてもう四十年は経つ。
その四十年の重みに、ボロくなった本が、『悪魔召還の法』と
いうおどろおどろしいタイトルと相まって、オカルト味を強めていた。
「悪魔を召還してみるというのはどうかな?」
提案するユウジロウに反対する者はいなかった。むしろ目を
輝かせている。
「本当にできるんですか??」
「分からない。でもやるだけやってみないか?」
「やりたい!」
前日、ユウジロウは本をぱらぱらと見て、実際にできそうなもの
をチョイスしておいた。例えば中には、堕胎した胎児、ヒツジの生き血、
ネコの頭部などが必要な儀式も多数あり、さすがにその準備はできず、
ユウジロウは簡単に何とかできそうなものを選んでおいたのだ
つづく
そこにはユウジロウの計算もあった。そのページにしおりを
挟んでおいてある。
必要なものは、リンゴと、ロープ、ロウソクに、そして精液であった。
賢明な読者諸君にはこの重要性がお分かり頂けることと思う。
とにかく、この儀式には、『精液』が『絶対』に『必要』なのだ。
ただし、これで悪魔を呼び出すのはいいが、何が出てくるか分からない。
ユウジロウは実際一度試して悪魔とコンタクトがとれた。そういった面では
かなり信頼性の高い文献なのだ。
何か厄介なものでなければいいが…。この書物、適当な日本語がない
場合、原語をそのまま記してある。このページなどはほとんど原語ばかり
で、最後に「充分に注意すべし」とある。
つづく
学校の近所の八百屋からリンゴを、ロウソクとロープは、
「何に使うの?」と怪訝そうな用務員に頼んで借りた。
ノコルハセイエキダ!!
「精液ってあれですよね。男の人の…」
「そうなんだよ!そこに困っているんだっ!」
芝居がかっている。ユウジロウの身体は徐々に性的衝動に
支配されつつあった。
「先生のを使うしか、手はないのでは?」
「どうやって取るんですか?」
「テツダッテ!!」
つづく
大人びた雰囲気の三年生リョウコは何となく意味を察したらしい。
さすが大人びている。恐らく、既に経験済みだろう。
「悪魔に会うには…それしか方法がない」
「どういうことですか?」
「みんなで先生のアソコを舐めるのだ」
「えぇぇ!!」
「無論、悪魔を見たくなければ拒否できるぞ」
「誰が舐めるの…?」
「まぁ。とりあえず三年生だな。次が二年。最後が一年」
つづく
「ぜ…全員で?」
「不公平だろ。だから全員で」
「先生、ズボン脱いで。パンツも」
キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
サバサバして性格の三年生、サエ言った。さすがサバサバしているだけあって
決めたとなれば行動が早い。いいぞいいぞみんな続け!!
一応ユウジロウは本心ではこんなことしたくないのだ、と言わんばかりの大袈裟
な演技でズボンとパンツを脱ぐ。
想像以上の速さでサエはユウジロウのペニスを咥えた。しかも手馴れている。
こいつも経験済みか。最近の中学生は…。デモ、キモチイイナ!!
つづく
このユウジロウ一応インポテンツである。しかし全く立たないという
わけでもない。ある程度以上の興奮を得られれば勃起を果たす。
夢を叶え給え…。
上半身も裸になってユウジロウは部員全員に体中を舐めろと命じた。
「えええぇ!やですそんなの!」
「これも悪魔召還のためだ。これが魔術なんだよ!何か呪文を唱えれば
たちまち何かが起こる、そんな魔術はないのだよ!人から見れば異常、
社会的に問題のある儀式、それがあっての魔術なんだ!だから魔術の奥義
は隠されるのだ。魔術とは不純なものなのだよ!わかったか!魔術を
舐めるな。俺を舐めろ!」
意味の分かるような分からないような大熱弁は生徒の心を動かした。
つづく
大人びたリョウコ、くりんとした愛らしい顔立ちのアヤ、
綺麗なお姉さん風のサエ。二年のマユ、一年のカエデ、
それぞれが戸惑いながらユウジロウの身体を子犬の
ように舐め始める。
極楽浄土!酒池肉林!桃源郷!快楽の園!
ここはどこだ!エデンだ!エデンに違いない。
いやエルドラドか!シャンバラか!バビロン!
ソドム!ゴモラ!
五枚の舌。熱い。舌にも色々あるものかと思う。薄い者、
厚い者…。
たちまちの勃起。
つづく
「どこを舐めたら精液でますか?」
「ここ気持ちいいですか?」
「早く精液出して…」
たまらない!中一と中三の差がこれほどまでとは!
ただ闇雲にどこを舐めればいいのか分からず、至る
ところを遠慮がちに舐める一年のカエデ。
経験はまだないだろうがビデオかマンガか、何かで
仕入れた情報だけで男の性感帯を刺激する二年のマユ。
そして恐らく経験済みの三人の三年生。しかし経験済み
とはいえテクニックは稚拙だ。
しかしその稚拙さがいい。たまらない。
つづく
「いかん!出そうだ!!」
目的は快楽ではなく、あくまで『精液』だ。儀式で使用する以上、
一度何かに保管しなくてはならない。しかしそんなものどこにもない。
やむをえず、一番手馴れた様子のリョウコが言った。
「あたしのお口に下さい!」
アタアァァァックチャアアアァァァァァンス!!
「あたしのお口に下さい!」
「あたしのお口に下さい!」
「あたしのお口に下さい!」
この台詞はたまらなかった。
つづく
相当量の精液がリョウコの口内に飛び出した。余りの勢いに
一瞬びくっと驚いたリョウコであったが、全ての精液を口の
中に溜めた。
かなり不味いのだろう。表情が苦しそうだ。気を利かせて
二年のマユが、ビスケットか何かが入っていた、トレイを
持ってきた。
一度そこに吐き出す。相当な量だ。いずれにせよこれで、
儀式の準備は整った。
儀式の詳細は省く。余りに危険な為だ。これは実際にある
悪魔の召還法である。
とりあえずロープで五芒星を作り、代表者一名がその中央に
立ち行われる。それだけ記しておこう。
つづく
召還に成功したのか失敗したのか、五芒星の中心の五角形を
形成する部分。その床が液体のようにたゆたゆと揺れ、その
たゆたう中から確かに何かが現れた。
しかし悪魔には見えない。というか、何なのか判別できない。
よって書き記すこともできない。概ね説明すれば、それは金属の
塊のような物体だった。しかし金属というのもハッキリしない。木材
かプラスチックに塗料を塗って、『金属風』にしたもののような感じ
もする。
手も足もなく、顔も胴体もない。とにかく金属らしい物体。ニョキニョキと
本体からは硬そうな棒が何本か不規則に飛び出していて、それを使って
弾くように歩く。歩くというか、飛び跳ねる。
つづく
棒・・・・
キタ――――(゚∀゚)――――!!
可愛らしくも見えた。何かの前衛芸術の作品のようにも見える。
大きさはルービックキューブ程度だ。手に乗る程の大きさ。
喋ることもしない。たまに飛び跳ねたり、そのまま浮いていたりする。
「これ…悪魔…?」
「…なんだろ…」
何となくユウジロウはヤバさを感じていた。何となく可愛い、変わった
形の置物のようにも見えるが、何かが違う。これは間違いなく悪魔だ。
その戻し方も『悪魔召還の法』には記されている。
とにかくこいつは戻すべき場所に戻すべきだ。
つづく
と、その奇妙な物体は二年生のマユの周りを飛び始め、手を出すと
そこに乗った。
「かわいい」
どうもマユになついたらしい。マユの手の上で飛んだり跳ねたりしている。
ユウジロウはそれを戻すよう諭したが、マユは自宅に持って帰ると言い張った。
夕闇が迫っている。用務員がひょっこり訪れ、『まだいたのか』という顔をした。
「あーすいません。すぐ帰りますので」
そのまま何となく帰ることになった。もう戻す儀式をする時間も、マユを説得
する時間も残されていなかった。
つづく
次の活動の時にマユを説得しようと思ったが、その日、マユは
来なかった。
そういえば、ユウジロウが担当する『情報倫理学』の授業にも
彼女は参加していなかった。
翌日、気になって、マユの担任である福岡ユウコに訊ねると、
ここしばらく学校を休んでいるという。
「いつ頃からですか?」
「もう…三日。今日で四日目ですね」
「そんなに?」
「えぇ。連絡もないんで…今日放課後家を訪ねてみようかと」
「御一緒してよろしいですか?」
「かまいませんけど…」
つづく
『担任でもないのになんで?』というような表情を福岡先生は見せたが
ユウジロウは気が気ではなかった。何もなければいいが…。
放課後。井上マユの自宅。インターホンに反応はない。門は簡単に
開けることが出来たが玄関のドアは施錠してある。
「留守なのかな…家族旅行とか…」
「連絡もなしに?」
「そんなことないよね…」
門から入ったユウジロウは裏手に回って窓から中を伺おうとしたが
カーテンが邪魔で見えない。胸騒ぎが止まらない。ものすごい、いや
な感じだ。
「構ってられん…」
つづく
ユウジロウは庭に置かれていた石をつかむと窓を叩き割った。
門の外にいた福岡先生が窓が割れる音を聞いて庭の方に
回ってきた。
「何してるんですか!」
「いやな予感がするんだ!」
窓の割れ目から手を突っ込んで開錠し、窓を開ける。慌てて
カーテンを開くとそこには血の海があった。
「こっちへ来るな!」
余りの剣幕に福岡ユウコは金縛りのように動けなくなった。
人間がパーツごとに切断されて部屋中至るところに落ちている。
つづく
人の手が、足首から先が、目玉が、耳が、鼻が…
とにかくそれらが血の海に無造作に転がっている。
土足で入る。居間の外、廊下も似たような状態だ。
一体何人分のパーツなのか。一人や二人殺した
ぐらいでこの血の海にはなるまい。
二階へ上がる。ドアがあった。ドアは血で汚れている。
というより、汚されている。血のついた手で、ドアに血を
塗りたくった感じだ。
何か匂う。部屋を開ける。清潔な部屋だった。むしろこの
部屋が正しいのだ。居間、廊下、血の海状態からすれば
この部屋は清潔で、何滴かの血液が床を汚してはいたが、
整頓された普通の部屋だ。
つづく
ベッドの上に血にまみれた服をまとった井上マユがいた。
ベッドの上に立っている。すらりと背が高い。顔や腕も血塗られている。
右手は包丁をもってダラリとさがっている。左手は胸のあたりで手のひらを
上に向けていた。その上には『あの悪魔』が乗っている。
何かの匂い。それは灯油だった。なんでこんなに灯油臭いのか。室内は清潔
だ。
「こ…これはどういうことだ…?」
「あはあはあは…えへえへ…悪魔がさ…天国連れてってくれるってさ…あはえへ」
つづく
「お前がやったのか?何人殺したんだ?御両親は!?」
「あは…えへ…天国行けたら超ラッキー。先生も一緒に行く?」
「落ち着け。まずこっちへこい。包丁は置いて…」
「天国…えへ…えへへへへへへへへ!!!」
『あの悪魔』が突然燃え盛った同時にマユとベッドが燃え上がった。
マユは頭から灯油を被っていたのだ。ベッドにも大量の灯油が
沁み込んでいたようだ。
火は瞬く間に広がり手の施しようがない。そのままでは自分も危険だ。
燃えながらマユは笑っている。
「えへへへへえへへへえへえへへへあはははははははははは!!」
つづく
携帯で一一九に通報する。家中いたるところに灯油が
まかれていたのか火の回りが速かった。
消防車が到着する頃にはもう全焼は免れない状態だった。
状況が分からずおろおろしている福岡先生をとりあえず
落ち着かせる。しかしどこまで語るべきか迷った。血の海、
マユが自ら火を放ったこと。そして『あの悪魔』…。
相当ショックだったようだが、いずれ新聞報道などで報じられる
であろうから、井上マユが自分で自宅に放火したことだけは
伝えた。そして、とりあえず自分の家に戻って、今日はもう
休むように言った。
つづく
消火活動をユウジロウは見ていた。家は何本かの柱を残して
完全に燃え尽きた。『あの悪魔』を探すが見当たらない。
現場にいた消防士、警察官にも聞いたが、『そんなものはなかった』
という答えだった。いっそあのまま燃えてくれれば…。ユウジロウは
願った。
消防士、斉藤カズマは、一日の仕事を終え、自分の住むアパートに
帰ってきた。妻が出迎える。
「おかえりなさい」
「ただいま」
「今日はどうだった?」
「大きい火事が一軒だけだよ」
「危なくなかった?」
「そんな心配するなって。俺だってプロだよ?」
つづく
「あーそうそう。お土産」
「おみやげ?」
「うん」
「珍しいこともあるんだね」
確かにプレゼントや土産など結婚して以来したことがない
カズマである。妻は嬉しそうに笑った。
「これ」
「なにこれ?」
かばんから取り出したそれは、金属の塊のような物体だった…。
終
乙です!
山形先生の体から生まれた悪魔!ラスト怖いよー(゚д゚;)
244 :
本当にあった怖い名無し:2006/08/08(火) 02:58:49 ID:YVkzJcMG0
お疲れさまです!すごいゾクゾクしたぁ。やっぱオカルトなんだと実感。
都市伝説の始まりみたいで怖いー!!
>>243 そうか!山形先生から生まれたのか!精液使ってるからそういやそうだ!
先生に似てオチャッピーな所も持ち合わせて欲しかったけど
まさに山形オカルトワールドで良かったです!
お疲れ様でした!寝ます〜。。。
>>243 そういえば山形から生まれたって形になるのか…そこまで考えてなかった…。
即感想感謝します。嬉しいです^^ また読んでやってください。
>>244 怖がって頂いてどうも(なんか日本語変?ww)
眠いのに付き合ってくださって…。ありがとうございます。
何か申し訳なくなっちゃいますね…。本当時間がある時でいいんで
ぱらぱらと読んでください。ライブで見る人の気持ちはわかりませんが…
待つのってストレスになりませんか?
即レスが来ると嬉しい半分、あー貴重な時間を頂いてしまったなぁという
気持ちにもなります。でも本当にありがとうございました。
ちょっとレス番確認してないけど、途中で色々レスいれてくれた
方々。この深夜で励みになりました。ありがとう。幸せを感じます。
今後ともよろしくです^^
待ち時間が楽しいのだ!
>>248 正直、PC閉じてベッドでマターリ携帯で閲覧・・・・
作者さんおやすみ!
>>250 あーなるほどそういう見方もあるんだね。なるほど。
よくわかりました。おやすみ。いい夢を^^
さてここらで怖い話でもするか。
今宵も駅前から少し外れた場所にある居酒屋『枡や(第三十四話『砂の楼閣』参照)』
は賑わっていた。
つづく
ユウジロウが暖簾をくぐる頃にはほぼ満席といった具合。
『枡や』のカウンターは椅子が一つずつ独立したものではなく、
ベンチのような長椅子だった。
店主が
「お、初代ユウちゃんが来たよみんな詰めてあげてな!」
と威勢のいい声を上げると自然とみんな腰を浮かせて詰めてくれる。
間に開いたほんのわずかなスペースに腰を降ろし、両隣の詰めてくれ
た連中に軽く礼を言う。
と思ったら左隣は福岡ユウコだった。
「あ、山形先生」
「なんだぁ福島先生、来てたんですか?誘ってくれればいいのに」
「何となく今日は一人で来たくて」
つづく
会話に店長が紛れ込む。
「今その姉さんと話してたのさ。名前聞いたらユウコって言う
らしいじゃないの。だから山形のユウちゃんが初代で、こっち姉さんが
二代目のユウちゃんだ、なんて話で盛り上がってたんだよ」
喋りながらも遠くで聞こえる「ビールもう一杯!」などという注文に、
「へーイ」と返事をしている。
かなりの人手不足なのだが、安いと評判の店だけあって、これ以上
アルバイトを雇うことはできなかった。しかしベテランの店員と店主の
働きで、なんとか対処していた。
また暖簾をくぐった客が入ってくる。
「なんだぁ今日は一杯かぁ」
つづく
「へぇ、おかげさまで…」
「じゃあ今日は女房の顔見ながら一杯やることにするよ」
おとなしく帰っていく。彼も常連客だった。
隣の客が酒の勢いでナンパしてきたり、身体を触ったりしてくるが、
福岡ユウコは気にしなかった。むしろこういった庶民的な雰囲気が
好きだった。
多少セクハラめいたことはあったが、ユウコ自身、例えどこかを
触られても『減るもんじゃなし』という考えがあった。それに、しつこく
つきまとってくる者がないのも気に入っていた。
「よぅ、姉ちゃん、俺と一緒に飲まねぇか?」
「せっかくだけど、遠慮しときます」
つづく
そして笑顔の一つでも見せれば
「ちぇ、フラれちまった」
の一言でやりとりを見ていた他の客が男を冷やかし、みんなで明るく笑う。
男はやけになって追加の酒を頼む。
そんな軽い雰囲気の店だった。
ふと気になった。カウンター席が直角に曲がって、その端。そこだけぽっかり
と席が開いているのだ。何だろうと眺めていると、隣のユウジロウがそれを察
したのか声をかけた。
「あの端っこの席のことはタブーだよ」
「え?」
「見てたでしょ?今。あの端っこの席」
つづく
「あぁ…はい」
「あそこはタブーなんだ。仮に満席でもあそこに座ったら
だめだ」
「そうなんですか?」
安物の麦焼酎のオンザロックを一気に飲み干すと、ユウジロウは
オカワリを頼みながら、小さい声でユウコに言った。
「気にしちゃだめだ。あの席のことは」
こそこそと何か喋っているのでオンザロックのオカワリをユウジロウ
の前に置くついでに聞いた。
「何?何かオイシイ話でもあるの?」
「ないない。ほら、あの端っこの席の話」
つづく
顎でその席を指すと、店長は
「あ、あぁ…」
とテンションを落として、焼き鳥を焼く作業に戻った。
学校のこと、私生活のこと、悩み、ユウジロウとユウコ、
『初代ユウちゃん』と『二代目ユウちゃん』は話に華を
咲かせた。
ほろ酔い気分で店を出ると、もう十一時を回っていた。
チビリチビリとではあったがもう四時間以上いたことになる。
これで料金一人頭二千円。
遅いし、マンションまで送るとユウジロウは言ったが、ユウコ
は遠慮した。しかし線路沿いの道までは一緒の道だ。
つづく
並んで歩く。そろそろ夜の空気が肌に涼しい。このままどこか
散歩に行きたい気分もある。
思い出したようにユウコが聞いた。
「あ、山形先生、あの端っこの席の話…」
「あぁ。知りたい?」
一瞬ユウジロウが肩を落としたことは、夜の闇に阻まれて、ユウコ
の目には見えなかった。
「あのお店の店長はね、元々赤坂の高級料亭の料理人だったんだ」
「へー…意外ですね」
「うん。まぁもともと賑やかな性格だったんだろうな。それであの店を
立てた」
つづく
「何せ元々腕のいい職人で、あの値段。たちまち客は
集まったよ。もう十五年ぐらい経つかなぁ」
「そんなに?」
「当時は駅前にはロクな店がなくてね。治安も悪かったよ」
十五年の移り変わりをユウジロウは手短に語った。
「当時、マキさんという女性がいたんだ。綺麗な人手ね。ちょうど
今の福岡先生ぐらいの歳だったかなぁ」
線路沿いの道だ。電車が駆け抜ける度に轟々とうるさい音を
立てる。
つづく
「その人は、あの俺がタブーって言った端っこの席。
あそこが彼女の指定席だったんだよ」
マキは美しく、たちまち『枡や』の常連のアイドルとなった。
ちょうどその頃、偶然ユウジロウは『枡や』にたどりつき、
その雰囲気が気に入って常連の仲間入りをした。
「本当に綺麗な人だったよ…」
当時、ユウジロウは何とかマキと関係を持ちたがっていた。
それは肉体関係でもよかったし、友人としての関係でも
よかった。
とにかくユウジロウはマキに惚れてしまったのだ。
つづく
「そんな時、事件が起きた」
「事件?」
「マキさんは、若い連中にクルマに押し込まれて、
誘拐されたんだ」
「…」
とんでもない話になってきたな、とユウコは身構えた。
「二週間経って、主犯格の男が捕まった。あとはイモヅル式だよ。
ところがマキさんは見つからなかった。警察が何とか犯人から
聞きだすと、犯人の一人がは『死んでしまったから海に捨てた』と
告白した」
つづく
「犯人の言う通りの場所からマキさんの遺体が上がった。
海水にふやけて随分ひどいアリサマだったらしいよ」
「…ヒドい…」
事件は大きく報道された。依頼、『枡や』のカウンターの端、
一人分は彼女の供養のため、いつも空けておくようになった。
いつマキが戻ってきてもいいように。
「そうなんだ…。聞いておいてよかった…」
「どうして?」
「だって知らなかったら、『あ、開いてる!』と思って、マキさん
の席に座っちゃうかもしれないじゃないですか」
「いや、あの場所からじゃ見えないけど、椅子の上には綺麗
に活けた花が乗っているはずだよ。だから座れない」
つづく
そのまま勢いで、結局福岡ユウコの住むマンションまで歩き着いて
しまった。
「少し寄っていきます?」
どういう意図なのか分からないが、セックスを望んでいるふうにも
見えなかったし、彼女は守られている。(第三十三話『優しき守護霊』参照)
とりあえず遠慮して玄関前で別れた。
マキは公園で誘拐された。しかし誘拐された際、ベンチで寝ていたと
犯人は証言した。
公園の付近住民も女性の悲鳴や助けを求める声はしなかったと言った。
そう。彼女は公園で寝ているところをそのまま拉致され、嬲られて、散々
変態行為の道具として使われて殺されたのだ。
つづく
ゆっくりとユウジロウは今来た線路沿いの道を歩いた。
何箇所か高架になっていて、下の歩行者用に作られた
細い道路と直角に交わる。その高架を潜れば線路の
向こう側へ出られる。
高架の下はちょっとしたトンネルのようになっていた。
壁一面に下品な落書きがされている。
ユウジロウは壁に触れた。一日中日陰になるからだろうか。
ひんやりと冷たい。
そう。ここでユウジロウはマキを犯した。十五年前の話だ。
マキはユウジロウのテクニックに翻弄され、散々喘いだ
挙句、気を失った。
つづく
今日もリアルタイムwww
マキという女がどんな女だったかは知らない。
知っているのは美人だということと、『枡や』の常連ということだけ。
家の場所すら分からなかった。財布も見たが名刺も免許証も
出てこない。
まだ若いユウジロウはあせった。とのあえず彼女の一度脱がせた
着衣を着せて、公園へ運び、ベンチに座らせた。何度も起こそうと
したが彼女は意識を取り戻さない。
しかし呼吸もあったし、脈もあった。
とりあえず近くの高架下の敷地を使った公園のベンチに彼女を
座らせると彼女の着ていた秋物のトレンチコートを布団のように
かけてやり、そのまま逃げた。
つづく
き、キテルーーーーーー!!!1
よし、皆さんご一緒に。
「も、萌え…」
そこへ、バンに乗って不良たちがやってきた。
運悪く、彼らは寝ている彼女を見つけ、そっとクルマに
乗せると、クルマが走り始めたそばから乱暴を働いた。
セックスから愛が生まれるなら、何故彼女と一晩いて
やらなかったのか。
まだ自信がなかった。訴えられたらどうしよう、逮捕されたら
どうしよう、そんな弱い気持ちがユウジロウを、寝ている女性
を公園に放っておく、という行動に走らせた。
今のテクニックがあればそれは回避できただろう。犯した女
全員に惚れられる自信がある。セックスを用いて、女性を虜
にする方法を知っている。
つづく
(;`・ω・)ゴクリ・・・
最近では訴えられるどころか、もっとしてくれと女に
せがまれる程の技術を持っている。
何故あんな未熟な時に…。
その高架下の公園も、高齢化社会の影響が子供も来ず、
夜な夜な不良が溜まる場となってしまい、付近住民の苦情から
取り壊されて、駐車場になっている。
一度今は無き公園のベンチに一礼し合掌すると、また線路沿い
の道を戻って『枡や』にたどりついた。
「あはは!またフラれたのかい?」
「…『二代目のユウちゃん』とは何にもないよ…」
何となく暗い影を落とすユウジロウに気付いて、店主は神妙に黙った。
つづく
自分のID
『2パクパクな嘘』って何だよorz
「森伊蔵ってあるかな?」
芋焼酎の中でも手に入りにくいとされる逸品、それが『森伊蔵』である。
「お!通だね。高いよ〜?」
「高くてもいいよ。ロックで二つ、くれるか?」
「二つ?」
「うん。一つはマキさんに」
つづく
何をユウジロウが考えているのかしらない。しかし聞いてはいけない
ことだろうと店主は思った。森伊蔵が二杯。一杯はユウジロウに、
一杯はカウンターの端に。
氷の冷たさで結露し、汗をかいているグラスから森伊蔵を一口、
舐めるように飲んだ。ユウジロウは他に何も頼まず、それだけで
閉店の時間まで十五年の昔に思いを馳せた。
遠くで氷がころりと転がる涼やかな音がした。見ればカウンター端に置かれた
グラスになみなみと注がれていた焼酎がなくなって、氷だけになっていた。
店主はそれを見た。すると本気か冗談か、優しい声でユウジロウに言った。
「マキさん、おかわりらしいですよ」
「好きなだけやってくれ。俺のオゴリで」
「毎度」
店主は少し寂しげに氷だけになったグラスと、森伊蔵の注がれたグラスを
取り替えると、焼き鳥を三本盛り合わせた皿をグラスの横に置いた。そして
ユウジロウに向き直って言う。
「あれは、店からのサービスです」
あえてユウジロウは何も言わず。森伊蔵を舐めていた。
終
>>266 >>268 >>270 せっかく盛り上げてくれたのにエロ超少な目しかもシンミリ系で
ごめんよぉ〜。でもちゃんと書きながら「おー見てる見てる」って
思った。ありがとう。ほんと嬉しかった!
>>275 いや、すごくよかった!
いい年こいたオッサンの自分は、むしろこういう話が大好物。
店主も粋だなあ。自分も今から『枡や』で飲みなおしたい気分だ。
>>276 ありがとう。嬉しい。やっぱりちょっと自分の精神的に、
こういうのしか書けない日、みたいのがあるんです。
ちょっと今日は精神的にエッチぃのはキツかった…。
みんなが嫌いなら、そいう日は休んじゃえと思うんですけど、
「こういうのもいい」と言って下さると助かります。仮に世界中
から批判があったとしても私はあなただけの為に哀愁漂う
話を書き続けます!(大袈裟すぎwww)
(*´Д`)ウホッw
>>275 おつかれ!今日は大人の話だね。
時々出てくるダンディー山形いいよー!
>>277 おーありがたいお言葉!実際に『枡や』みたいなお店が
地元であったらなって自分で思います。もちろん福岡先生つきでwww
ユウジロウがいたら…色々『女殺し』のツボを教わりたいかなww
またたまにシンミリした話も出てくると思うので、是非また覗いて
やって下さいな。ありがとう。
>>280 あ!ツーパクパクなウソだwww
そのレスついた時爆笑してしまってちょっと書けなくなったんだからな!www
仕事の都合でしばらく見れなかったんですが・・・今やっと追いつきました!
硬軟織り交ぜて読み応え十分!特に印象に残ったのは 第三十四夜 砂の楼閣 !
>>177で作者さんは中途半端なエンディングとおっしゃられてますが、
全体にライブな感じがでていて、先の読めない展開は第一話に通じるものがあったと思います。
オカルト同好会の話はまだまだ続くのかなと思ってましたが、36話で不祥事が起こってしまったので
その後オカルト同好会がどうなってしまったのか気になるところです・・・・
>>284 お疲れ様です。そんな中で読んで頂いて嬉しいです。
同好会は最低でも『7人』いないと解散になってしまうというルール
の中での一人死亡ですからね。どうなるんでしょうか?←俺もわかってない(笑)
でもまさす34話から1話に通じるライブ感を感じた、という御意見、
驚くと同時に、とても嬉しかったです。
また、是非遊びに来てください。ありがとうございました。
>>285 ×まさす
○まさか
パソコンデスクの高さが俺の座高と合わず、誤字が大変
多い…(キーボードが打ちにくい)
本編でも気になっている方多いと思います…すいません…
2ちゃんじゃ自分で修正ってわけにもいかず…。御理解
頂ければ幸いです…。
さてとんでもない時間だが怖い話でもするか。
山形アカネは念入りに化粧をしていた。
土曜日のごごである。
つづく
「あれ、今日は仕事の日?」
兄のユウジロウが聞いた。『仕事』とは即ち売春のことだった。
「ううん。今日、同窓会なの」
綺麗な青のアイシャドーをまぶたに塗りながらアカネは答えた。
「へー…いつの?」
「中三の時の」
すっぴんでもかなりの美貌である。化粧をすると女優クラスの美しさだった。
「そか…」
何となく夕食が心配になった。
つづく
「あ、ごはんなら冷蔵庫の中にあるから。ヤキソバだけど…」
「あぁそうか。あるならいいんだ。何でも」
「物足りなかったらファミレスか『枡や』にでも行って食べて」
「わかった」
平服で行くのも何となくいやで、一応スーツをまとった。スタイルの
せいかメイクのせいか、優秀なOLのように見える。
「じゃいってくるから」
「あぁ、気をつけろよ。どこまでだ?」
「新宿」
「いってらっしゃい」
遅刻でもしそうなのか、多少慌てた様子でアカネは出て行った。
つづく
夕闇が迫り、夜のしじまが訪れようという時間だ。
随分遅い。
二次会、三次会と盛り上がっているうちに帰ってくる
だろうと高を括った。
深夜十二時が迫っている。ユウジロウは一人、アカネが
作り置いてくれたヤキソバを電子レンジで暖めると、
それをツマミにビールを飲み始めた。
たちまち一時になった。一晩明ければ日曜日だ。仕事はない。
それにしても遅い。いつも自動車通勤なので、電車のダイヤに
ついては詳しくないが、そろそろ終電が走る頃だろう。
つづく
ヤキソバもビールもなくなり、深夜の映画放送を見るが
何となくアカネが気になった。
彼女は無断外泊を滅多にしない。必ずといっていいほど
一度は何かしらの形で連絡をくれる。電話であったり、
メールであったり。
しかし待てども彼女からの連絡はなかった。
アカネは同窓会が開かれるというレストランに着いた。
午後六時、五分前。何とか六時には間に合った。
建物から見るにかなり立派なレストランだ。同窓会で
貸し切っていると案内状にはあった。それで会費が
五千円。足りるのだろうか?
つづく
懐かしい顔ぶれがあちこちにいた。中学校三年の時の
同窓生だ。なんだかんだでもう七年近く経っている。
それでも案外顔は覚えているものだった。
年頃のせいか、男たちがアカネに群がる。中三の頃、
アカネはどちらかというと地味な存在だった。それが
今はすっかり美しくなって、洗練されたセンスまで身に
つけている。
何かと言い寄ってくる男子の群れを抜けて、仲の良かった
友人に声をかけた。
「ひさしぶりだね」
「今なにやってるの?」
つづく
お定まりの会話だ。実際アカネは中学生の頃は物静か
でおとなしい生徒だった。友達もそれほどいるわけでもない。
彼女が自分の美貌を知り、自分がどうも男好きのする容姿
をしていることに気付いたのは高校に入り、最初の彼氏が
できた頃だ。
褒め上手、話上手の彼で、アカネは随分と彼の影響を受けた。
その彼と付き合っているうちに自分の秘めたる魅力を見たのだった。
だからすっかり変わってしまったアカネは、驚きの声とともに
迎えられた。
印象が薄い女だったので、アカネをすっかり忘れていた者も
あったが、
「綺麗になったね」
と同性から褒められるのは悪い気がしなかった。
つづく
ある人をアカネは探していた。山下シンジという男だ。
彼とは中学一年生の時から三年までずっと一緒の
クラスで、アカネにとっては遅い初恋の相手だった。
それまでは兄、ユウジロウのことが好きだったのだが、
初めて他人に行為を寄せたのがシンジだった。
シンジは完全にモテるタイプだった。すらりと背が高く、
きりりとした顔立ち。勉強は得意という方でもなかった
ようだがスポーツに優れ、何より性格が優しかった。
地味で誰にも相手にされないアカネに、気をかけて、
優しくしてくれたのがシンジだった。
つづく
果たしてシンジはいた。当時から女子に人気があり、
現在でもそうなのか女子に囲まれていた。
アカネは会話の輪の中にそっと紛れ込んだ。
「あれ?山形さん?」
先に声をかけてくれたのはシンジの方だった。化粧も
しているし、だいぶ違った印象になり、気付いてくれない
だろうと思っていたアカネは驚いた。彼は覚えていて
くれたのだ。
「あ、はい。山形アカネです」
「そっかぁやっぱり山形さんかぁ!!」
つづく
気さくに話しかけるシンジを囲っていた女子たちはコソコソと
「あれ誰?」
「山形さんなんていたっけ?」
「いたよ。ほら、一番後ろの席の」
「あーあの地味な人?」
と話し合っているようだ。勿論アカネの耳には届いていない。
少しずつ人の輪は崩れ、シンジとアカネだけになった。
「随分と、その、なんというか、綺麗になったね」
恥ずかしげにシンジが言う。
「そんなことないよ。全然。変わってない。
「いや変わったよ。本当に綺麗になった!」
「そう?ありがとう…」
つづく
まんざらでもない気持ちだった。初恋の相手に、『綺麗になった』
と褒められたのだ。喜ぶなというほうが無理な話しだ。
七年のブランクほ埋めるように二人は話した。
シンジはどうも借金をしながらも会社を建てて、若くして一応
社長のポストにいると言う。苦労はしたが借金の全額返済まで
あと一歩らしい。
「へーすごいねー」
『金がある』というのはアカネにはどうでもいい話だった。ただ金が
欲しいだけなら、金の有り余っている連中を山程知っている。
しかしそんなことを知ってか知らずか、シンジは自分のサクセス
ストーリーを自慢げに話した。
つづく
話しているうちに、アカネは七年の時をさかのぼって、
ときめきを感じ始めていた。
七年経ってもどうも好きらしい。自分でも分からないが、
とにかくシンジへの想いは七年経った今でもどこかに
残っているようだった。
普段ならすっかり忘れ去られている過去。その過去が
むっくりとアカネの心を支配しつつあった。
時は過ぎ、いよいよ二次会へという運びになった時、
シンジはアカネに呟いた。
「このまま二人で消えないか?」
つづく
少しアルコールが入っていたせいもあるのかアカネは
シンジの誘いに乗った。
会場となったレストランの近くのコイン駐車場に、BMW
カブリオレがあった。分かりやすく言えば高級外車の
オープンカーだ。
暑くもなく寒くもなく、秋の夜にオープンカーは最適だった。
「でも一年で春と秋だけだよ。屋根を外せるのは。日本の
風土に基本的に合ってない。見栄だよ見栄」
物腰も穏やかで、実業家というだけあって知的だった。
オープンカーなのに、
「タバコを吸っても大丈夫?」
と気を使ってくれる。
つづく
ああ、兄以外にもこんな人を好きになることもあるのだな、と
アカネは感じた。
一生兄につきまとっているのだろうと考えていたから、この
シンジとの再開は新鮮なものだった。
都内をBMWが走る。洗車したて、ワックスもかけたてといった
印象で、都内の電飾の海がボンネットに反射して、美しい色
模様をつける。
光の海は、ボンネットに美しい軌跡を描きながら後方へと
流れていく。
静かに上品なテクノミュージックが流れていた。
つづく
「彼氏いるの?」
唐突に聞かれて、とまどう。まさか『兄が恋人代わり』とはいえない。
素直に
「今はいないよ」
と答えた。同時にシンジはアカネを口説き始めた。何気のない話
だが口説こうとしているのは分かる。
ただドキマギとしているアカネに、シンジは
「ちょっと俺のマンションに寄っていかないか?」
と誘いをかけてきた。アカネには軽い性的衝動が生まれていた。
このまま身を任せるのも悪くない。アカネは話に乗った。
つづく
清潔な部屋だった。マンションの一室で2LDKの間取り。居間は
何畳あるのか、かなり広かった。
「少し飲み直そう」
適当に酒が注がれる。
「あ、お酒は…ちょっと…」
「大丈夫。ジュースみたいなもんだよ」
自分でカクテルを作るつもりらしい。しかしシェイカーを振る腕は
素人のそれだ。『多少カッコつけている部分もあるのだろうな』と
アカネは思った。だからといってガッカリしたわけでもない。本来
男はそういうものだと、母、ツネコから聞かされている。
つづく
「そろそろ帰らないと電車が…」
そうアカネが告げると、
「ちょっとアルコール入っちゃったけど大丈夫。送っていくよ」
とシンジは微笑んだ。
何となく嫌な気分がしてきた。これはアカネの直感だ。このままだと
セックスに持ち込まれる。鋭いアカネはそう思った。
性的衝動はある。しかしこのまますっかりやられてしまっていいものか。
何となく初恋の淡い思い出が破壊されるようでいやだった。
そして、そんなことを考えながら、アカネは深い深い眠りの世界へ入っていった。
気付いた時には遅かった。全裸にされ、両の手首と足首をそれぞれロープで
つながれて、M字開脚のまま身動きの取れない状態になっていた。
つづく
『陰行流艶術』にも今でいうSMの型がある。それに近い拘束だ。
身動きはほとんど取れない。こうなれば『お留め』も無力だ。
しかしこの縄の複雑な結び。長年SMに携わってきた者の技術だ。
素人ではこうはいかない。どこかにスキがする。
しかしこれにはない。みっともなく女性自身をぱっくりと晒し、動けない。
「しくじった…」
口の中で呟いた時には遅かった。
四人の男に囲まれている。一人はシンジだ。あとの三人は見覚えがないが
いずれも年上のようだ。
つづく
「いいカモ拾ったねぇ」
「うん。上等だ」
「何の苦労もなく黙ってついてきやがった」
「馬鹿な女だ」
身動きが取れない以上このまま恐らくは強姦されるだろう。
アカネは覚悟を決めた。同時にシンジを憎んだ。
確かにシンジを勝手に好きになったのは自分だ。しかしこれは
許されない。しかも四人の男の会話から、これが初めてではない。
何度も同じ手口で女を犯している様子だ。
心に決める。どんな快楽があっても声を上げない。表情も変えない。
男たちがつまらないと捨てるまで、沈黙を守る。
つづく
それも『お留め』の技術の一つだった。下手に騒いだり、
喘いだり、抵抗することは、襲う相手のテンションも
上げてしまうのだ。
とにかく『つまらん女だ』と相手が思うまで、動かず、騒がず、
黙っている。それが今できる最高の対抗手段だった。
縄で大きさを強調するように縛られた胸を好き放題に嬲られて、
体中舐め回された上に犯される。
男たちは喜んでいるがアカネは黙っている。動きもしない。
世間一般でいう『マグロ』の状態である。
「どうだ俺に惚れてるんだろ?え?少しは喜べよコラ」
つづく
勃起したシンジのペニスで頬を叩かれる。
喋らない。動かない。抵抗しない。しかしアカネの目からは
涙が流れていた。これだけは止めることができなかった。
一方、なかなか帰ってこないアカネに業を煮やしたユウジロウは
落ち着きをなくしていた。もうとっくに終電の時間は過ぎている。
そんな中で確かに聞いた。
「…お兄ちゃん、助けて…」
間違いなくアカネの声だった。
いても立ってもいられないとは正にこのこと。アカネの身に何かが
起きていることを悟ったユウジロウは赤い軽自動車に乗り込んだ。
つづく
しかしどこへ行けばいいのか分からない。歯を噛み締める。
「助けて!」
聞こえる。聞こえてるぞアカネ!どこにいる!?
とりあえず母ツネコのもとへ。ツネコも門の前にたたずんでいた。
アカネの声を彼女も聞いたのだ。
「ユウジロウ!急いで!」
ポンコツ同然の赤い軽自動車が走る。速い。スカイラインGT−R
をはるか彼方に追い越して進む。
しかしツネコは何故場所まで分かるのか。
つづく
「ノリオさんが、呼んでいるのよ」
岩手ノリオ。ユウジロウの父でありアカネの守護者。
以前は人一人の頭を吹き飛ばす程の力(第十七話『禁忌の鎖』参照)
を持っていたが今回は手が出せないようだ。どうも月の満ち欠けか、
何らかの影響で、物理的攻撃が可能になったり、せいぜい喋ることが
精一杯だったりするらしい。
自分の父親が呼んでいる。自分の娘であり妹の危機を親父が教えて
くれている。ユウジロウは鬼と化した。
豊臣の世から続く血、犯罪史上最凶にして最悪の血、それの交わる
ところに鬼がいる。それが山形ユウジロウだ!
つづく
犯され続けながらアカネは寡黙に絶えていた。もちろん
コンドームも何もなく、容赦なく精液は子宮に流れ込む。
アカネはピルの服用者であるから妊娠することはないだろう。
それだけが救いだった。
しかし一晩でこの責め苦が終わるとは思えなかった。シンジ
たちはとにかく死ぬまで犯し続けるつもりらしい。まだ膣に
ペニスを入れられるぐらいならいい。
しかし他の責め苦に耐えられるかどうか。自信はなかった。
このまま死ぬのか山形アカネ!
しかしアカネを死なせない!力強い波動があった。
つづく
父、岩手ノリオの姿は見えず声も聞こえない。しかしツネコには
それが聞こえるらしい。的確な道案内だ。
エンジンがやられたのか、赤い軽自動車はマフラーからもうもう
と黒い煙を吐いている。
しかしユウジロウはアクセルを緩めようとはしなかった。
「何か腹減ったなぁ。コンビニ行って来るわ」
散々アカネを犯し、三発も膣の中に射精した男が部屋を出て行った。
コンビニまでは百メートルほどある。
そこに赤い軽自動車が止まっていた。
つづく
ツネコがクルマが飛び降り小走りに近づく。
聞こえた。岩手ノリオの声。
『四人いる。一人はそいつだ!』
すれ違い様。一瞬にして事は起こった。
仏骨!(第三十四話『砂の楼閣』参照)
長き鍛錬によりツネコの人差し指の一本貫き手は鋼鉄の硬さを持っていた。
「あとはあそこのマンション。5回の3号室。ユウジロウ!」
人差し指を血に染めたツネコが言う。
つづく
503号室のカギは開いていた。一人がコンビニエンスストアに行ったので
開けておいたのだろう。
しかしドアをくぐる者はコンビニエンスストアに行った者ではない。
鬼と化したユウジロウだった。誰も気付かない。ただアカネの裸体に
群がっている。
『陰行流艶術』には、『裏手』という技術が存在する。戦国時代などには
男色がタブーではなく普通に存在していた。この『裏手』は男色、いわゆる
対男の性愛の為に用いる技術だった。
無論ユウジロウ同性愛の気はない。しかし今こそ『裏手』の技術を使う時
であった。
「萌えねぇが仕方ねぇ。てめぇら全員ブッ殺す!」
つづく
『裏手』には危険な技もある。男の尻に勃起したペニスを背後から突っ込み、
スリーパーホールドの要領で首を絞める。この締め付けによって肛門が
閉まりより高い快楽を得ることができる。
突然現れた男にアナルを責められ首まで絞められる。さぞや驚いたこと
だろう。シンジも含め仲間二人が何事か理解する前に一人の男が死んだ。
「貴様ら俺の妹になにしやがったんだコラァ!!」
『陰行流艶術』、『裏手』、『奥攻め』と名のついたこの技も危険だ。勃起した
ペニスを相手の喉奥深くにとにかく突っ込むのだ。気道を塞ごうが食堂を
塞ごうがお構いなし。とにかく突っ込めるだけ突っ込む。吐瀉物を撒き散ら
しながら一人死んだ。
残るはシンジ一人のみ。セックスは一種全身運動である。そういった意味で
ユウジロウの肉体はかなり完成されていた。裸だけ見ればまるで総合格闘技
の競技者だ。
つづく
「アカネの縄をほどけ…」
鬼がいう。ほんの二分程度の時間で二人を死に追いやった鬼が言う。
従う他なかった。縄を解き、必死に詫びる。床に額をこすりつけてシンジは
許しを乞うた。
何とか立ち上がるアカネ。泣きながら兄の胸に飛び込もうとした。しかし、
待っていたのは強烈な張り手だった。
「未熟者めっ!!」
つづく
「…ごめんなさい…」
詫びるアカネに背を向けてユウジロウは言った。
「…あとは、任せる…」
一日明けて月曜日の朝刊に記事が載った。事件が遅かったので
翌日の日曜日には記事が間に合わなかったためだ。
『連続強姦グループ仲間割れで殺人!?』
彼らは相手によって結婚詐欺、レイプ、監禁、誘拐など様々な犯罪に
手を出しているらしかった。仲間割れが云々の部分はアカネが考え、
アカネのコネクションによって情報操作されたものだ。
シンジは逮捕され、起訴された。
事件当日。明け方近くまで何も喋らずむっつりと不機嫌そうなユウジロウ
ではあったが、朝になってようやく、「怖くなかったか?」とアカネをねぎらい
優しく抱いてやった。抱いてやると安心したのか、アカネはたちまち眠った。
「未熟者め…」
大きな溜息をついて、ユウジロウも睡魔に身を任せた。
終
正直、疲れた。少し眠る。おやすみ。
さすがに今日はライブで見た人いないでしょ?
ちょっと本気眠くて、もうちょっと感動するというか、
悪党どもをこらしめてセーセーする話を書きたかったの
だけど、今改めて読み返すと普通の話だね。
ごめんなさいでした。
さて、ここらで怖い話でもするか。
晩夏。そろそろ夜も過ごしやすくなった。ユウジロウがアダルトビデオを
鑑賞していると、愛犬ユタカの散歩を済ませたアカネが帰宅した。
つづく
「お兄ちゃん、エッチなビデオ見るときはカーテン閉めてよ…
お隣さんから丸見えなんだから…」
帰ってくるなりアカネは外をちらりと伺って、カーテンを閉めた。
返事もせずユウジロウはアダルトビデオを見続けている。
上級テクニックを持つということで、セックス指南の書籍まで
出している男優がちょうど女優を責めているところだった。
ユウジロウにとって、アダルトビデオを見ることは通常でいう
格闘技の試合のビデオを見るに等しい。
見ながらも指先がピクリピクリと動いている。
冷蔵庫から牛乳を取り出したアカネはグラスを机に置いて、
ユウジロウの隣に座った。
つづく
山形家では珍しい光景ではない。アカネの前でも
ユウジロウはアダルトビデオ鑑賞を続ける。
「…これも演技か…最近まともなビデオがない…」
何を見たのかは分からない。しかしユウジロウはその
ビデオの『絡み』が本気のものではなく、完全な演技
であることを悟った。興味が失せてビデオを止める。
「あ、そうそう、来週の土日、北方公園でお祭りだって」
散歩の途中、電柱にチラシが貼られているのを見た。
「祭か…」
つづく
北方公園。思い出深い公園だ。(第十四話『玄と黒』、第三十五話『閉じたいのちと血のねがい』参照)
そこで一人の男が死に、一人の女が犯された。
北方公園での祭はこの時期の恒例行事だった。公園内をぐるりと一周する遊歩道に沿って、
提灯がぶら下げられ、出店が並ぶ。しかし賑やかなのは遊歩道の灯りが届くところまでだ。
公園に植えられた木々の間には、木に光を遮られた静かな闇があった。
祭の最中、いい雰囲気になったカップルはその闇に身を沈ませて、忍び逢い、
全身で逢瀬を楽しむ。
祭が終り、月曜の早朝に散歩でもすれば、その残滓を、使用済みのコンドームという
形で見ることができる。
つづく
「去年は楽しかったな」
ぽつりと言うユウジロウに、牛乳を飲みながらアカネは答えた。
「激熱たこ焼きの話?」
「うん。それもあったな」
去年、北方公園の祭に二人で行った際、購入したたこ焼きが
熱すぎて思わずユウジロウが吐き出すということがあった。
当時はそんなくだらない一件で爆笑したものだが、どうも兄、
ユウジロウの反応がおかしい。
「何か考え事?」
「今年の祭は一人で行く」
「一人?それって寂しくない?」
つづく
「いや、一人で行く」
「どうして?」
「一晩で何人の女を犯せるか、試す」
とんでもないことをいう。思わず噴き出しそうになった牛乳を
何とか飲み込むと、アカネは聞いた。
「なにそれ?」
「『連斬り』を試してみたい。何人できるか…」
『陰行流艶術』でいうところの『連斬り』 これは一晩で連続して
何人もの女を朝まで犯し続けるという、修練の一種だった。
自分も相手もオーガズムを迎えて初めて『一回』と認められる。
自分だけが果てても『一回』とは認められず、相手だけが絶頂
を迎えても同様。
つづく
男女二名のオーガズムで始めて『一回』と認められる。
余りに過酷な修練の為、山形家通して見ても挑戦した者は少ない。
無理矢理に挑戦し、死亡したケースも伝えられている。
山形家の歴史の中で最も絶倫だったとされる八代目ゲンエモンの
一晩(正式な『連斬り』は、午後八時から翌朝五時までの十時間のウチ
とされる)に二十三人というのが最高記録とされているが、この情報も
かなり眉唾だった。
精液の大部分は精嚢からの分泌液とされるが、数回の射精で空になり、
再び溜まるには三日はかかると言われている。その常識からいえば、
一晩に二十三度の射精などというのは正に伝説的といえた。
しかし、ユウジロウは今回の挑戦に挑むにあたり、独自の技術を
編み出していた。
つづく
射精する精液の量をコントロールするのだ。
あり得ない話のようだが、ユウジロウは気の狂うような修行の末、
三年かけてその技法を身につけた。
通常射精される精液量は五、六ミリリットル。そのうちの三割程度
は前立腺からの分泌液で、残りが精嚢からの分泌液だ。
数回の射精で精嚢が空になるのであれぱ精嚢の中には
二十ミリリットル程度の精液があるはずだ。
これを一度の射精に一ミリリットルずつ使う。そうすれば一晩に
二十度の射精が可能になる。
ゲンエモンの二十三度には至らないかもしれないが、『連斬り』で
求められているものは『射精』にあらず、とりあえずはオーガズム
に達することだ。
つづく
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!
要するに『空砲(絶頂感はあるが何も出ない』が認められている。
なんとかなるかもしれない。
故にユウジロウは三日がけで精嚢に精液を溜めていた。
更に『連斬り』に備え、とにかく一日中射精しまくるという荒行も
悪魔の手を借りて成し遂げている(第三十一話『陰の験』参照)
当日。必死に止めるアカネを振り切って北方公園に向かう。
浴衣姿である。下着はつけていない。浴衣の裾を開けば即イチモツ
が顔を出す。これで服を脱ぐ時間を短縮できる。よって帯はやや
高めに巻いている。少し違和感があるが構わないだろう。
公園にたどりついたのは午後七時五十六分。強壮剤、ミナドリンA
を六本、一気に飲み干した。開始時間の八時まで、あと三分。
つづく
見届け人として母ツネコを選んだ。アカネでは私情を挟まれる
危険性があったからだ。
「8時…」
呟くツネコ。これからは一秒の猶予もない。十時間かけてとにかく
女を犯して犯して、犯しまくるのだ
三十分に一人の計算だと二十人。ゲンエモンの記録に三人届かない。
とにかく急ぐのだ!
遊歩道は提灯で明るくライトアップされている。話にならない。綿菓子屋
と射的屋の間を抜け、遊歩道からはずれ、林の中へ。
つづく
早速木陰でいちゃついているカップルを発見。
男を殴り飛ばし、悲鳴も上げず混乱している女を犯す。
相手も浴衣だ。犯しやすい。前戯に十分。入れて十分
二十分でセックスを完了させる。
「あっちょっ…やだ…だめっ…あぁん…」
ツネコがイったかどうかを確認。
「よし」
の声で次のターゲットへ。
ターゲットはそこら中にいた。闇に紛れて女を犯す。
つづく
そうさ俺はミッドナイトレイパー。容赦はしないぜ。俺のペニス
が白い火を吐く。その瞬間にはもうお前の意識は遠のいているのさ。
夜十時になると一応、祭は終了ということになっていて、出店も次々に
店舗を閉める。しかしこれからが本番だ提灯も消え、さらに薄暗くなった
公園内でカップルがいかがわしい行為に走るのだ。
その時が稼ぎ時とユウジロウは判断した。要するに『横取り』である。
既に挿入している男を女からひっぺがして男を倒し、既に濡れている
ヴァギナを頂く。これで前戯の時間を省ける。
二十時から五時。十時間あるといっても朝まで公園に人がいるとは限らない。
限界は午前三時だろう。それまでに二十三人、いっておきたい。
男を倒し失神させる、呆気に取られる女を犯す、揃って絶頂に達する、ツネコ
のジャッジ、次のターゲットに走る。
つづく
ちなみに、一人とやる度にコンドームを使用している。つけている
時間がじれったいが仕方ない。簡単に装着できるワンタッチタイプの
ものだ。
十時からのペースがすごい。一時間に約三人のペース。
八時の間に二人、九時の間に一人、十時の間に三人、十一の間に三人
日が変わって、0時になった段階で九人。目標は十人だった。九時の一人
が痛い。
疲れもかなりたまっている。チンコが赤く腫れあがっている。更にインポと
いうハンディキャップがユウジロウを苦しめる。精液の量のコントロールも
思い通りにいかなかった。既に『空砲』に近い状態だ。
つづく
0時の段階で犯した数九人。あと残り五時間。
ゲンエモンの記録に追いつくにはあと十四人。
厳しい。女によっては性的に未開発でになかなか
イってくれない者もいる。厳しい戦いは続く。
たちまち限界と見た三時になった。
0時の間に三人、一時の間に二人、二時の間に二人。
ペースは完全に落ちている。チンポコの感覚がなく、気持ちよくも
何ともない。相手はイったが自分が絶頂に達しない。ツネコの
ジャッジは厳しかった。
0時の段階で九人。日付が変わってから七人。合計十六人。
つづく
もう公園内に人がいない。とにかく女を求めて全力疾走してきた。
足も腰も悲鳴を上げている。
やはり三時がリミットだった公園内に人はいない。やむを得ず公園の外に
飛び出したユウジロウはコンビニに駆け込んだ。
女性店員だ!
「すいませんトイレ貸してください」
「どうぞー」
「すいません。ちょっと手をケガしているのでトイレのドアを開けてもらえませんか?」
「はーい」
トイレのドアを開けた瞬間に襲い掛かる。
「あっちょっ!やめてください!大声だしますよっ!」
「いいからいいから」
つづく
「やめ…あぁ…あぁん…らめぇ…」
堕ちた!何とか店員と共に果てて一人カウント。十七人目。
コンビニエンスストアは使える!しかし周囲のコンビニエンスストア
の定員はいずれも男だった。
「ちきしょう!」
四時になる。空が藍色に染まってきた。時間がない。と、公園内に
人が増えてきた。早朝の散歩だろうが年寄り揃いだ。しかし仕方ない。
老婆のカサついたヴァギナは濡れもしない。不成立。犬の散歩を
していた若い女性と結合。絶頂へ導く。十八人。残り時間、二十分。
と、全裸で『バックで入れてください』と言わんばかりの美女を発見。
露出狂か何かだろう。
つづく
既にしっぽりとアソコは濡れている。
入れる。
痛い!!
なんという締め付け!しかも固い!
ナンダコノマンコハ!!
膣内が激しくザラついている。肉棒から出血。
と、ツネコが止めた。
「そこまで。記録。十八名。お見事でした」
つづく
まだ時間はある。五時まで五分ある。
あとちょっとでこの女は堕ちるんだ!なぜ止める!!
講義するユウジロウの目の前でツネコは激しくパァンと手を打った。
「よく御覧なさい」
露出狂の女。それは複雑な形に歪曲した松の木だった。ちょうど
腰のあたりに穴がぽっかり開いている。
ユウジロウは木の穴にイチモツを挿入していたのだ。痛くないわけが
ない。それが単なる妄想か、摩訶不思議な現象かは分からない。
しかし平成の世に蘇った『陰行流艶術連斬りの儀』、記録は十八名。
八代目、山形ゲンエモンの二三名という記録には遠く及ばず。
更なる修練を自らに約束するユウジロウであった。
終
また名前欄忘れちゃった…作者です。
おなかすいた…寝るか食べるか迷う。
時間ある方、感想くれると嬉しいです。
乙です。エロ能力を変態趣味だけに使えない
山形先生は大変ですね。(つд`)
めくるめく展開の中、ツネコさんの冷静さがオカルトでした。
お疲れ様でした〜!面白かったです!
昨日のとまた違った感じで良かったです。昨日のはちょっとシリアスだったけど
今日のはユウジロウは一生懸命だったんだろうけど
ちょっと笑ってしまったwwwwwww
>>339 ありがとう。ツネコの冷静さ…確かにww 何も考えずに書いてました。
今後もよろしくお願いします。
>>340 『面白かった』といわれると励みになります。ちょっと今日の話は
無茶だったかなぁと自分でも思うんだけど読んでくれてありがと
でした。また立ち寄ってくださいね。ありがとう。
さて、ここらで怖い話でもするか。
『オカルト同好会』は発足間もないにも関わらず存続の危機に陥っていた。
つづく
同好会キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!
二人いた男子は幽霊部員状態で、残るメンバーの一人、マユが
死亡。(第三十六話『紅蓮栄華』参照)
しかも自ら親を殺し、家に火を放って自らも焼死としう壮絶な死に様。
活動には参加していないものの、一応名簿に残っている二人の男子は
いいとして、死んでしまった部員は名簿から消さざるを得ない。
同好会として、最低限必要な人数は七名。現時点で六名。早くも廃部
寸前の状態。またマユの死亡の原因が『オカルト同好会』にあるという
ことで、新しく部員を勧誘するにしても、白い目で見られるばかりだった。
そんな中、救世主が現れた。
つづく
霧原トオル。二年生の男子だった。勧誘したわけでもないのに、
突然部室である2−Aの教室に現れ、入部を希望した。
渡りに船だ。即日入部の手続きが完了した。
幽霊部員二人を含んでいるが、これで名簿上で七名。同好会
は続けられる。
十四歳にして大人びた、物静かな雰囲気をまとっている。しかし、
その何もかも全てを悟りきって、世間そのものを小馬鹿にしたような
目つきが気になった。しかし、なかなかの美男子で、彼が発する
ニヒルでクールな空気も彼の魅力と言えなくもない。
ただユウジロウは態度に出すことすらないにせよ、生理的に受け付けない
タイプだと感じた。
つづく
彼は同好会の活動時にも大人しかった。発言はほとんどない。
もっとも、彼以外全員女子なので、色々と口出しがしづらいの
だろうということは分かった。
ところがある日のこと、超能力に話題が及ぶにあたり、突如
彼は自分にそういった能力があることを明かした。
途端に同好会は盛り上がった。彼の能力をいぶかしむ向きも
あったが、『それならば立証してみせる』と彼はある女子の手を
優しく握り、彼女しか知りえない事実を次々に言い当てた。
人に触れることでその者の記憶、感情、考えていることなどが
分かるのだという。
つづく
私も私もと次々に女子が手を出す中、彼は落ち着いた様子を
崩すことなく、全ての質問に正解した。女子のイメージした食べ物、
動物、数字、記号、単語などをことごとく当てたのだ。
本物という他ない。
しかし彼の興味は顧問、山形ユウジロウに向いていた。
「どうです?先生もやってみませんか?」
心中、ユウジロウは穏やかではなかった。強姦、殺人、痴漢、盗撮、
もし本当に心の中が見えるとすれば、それらが白日の下に晒されてしまう。
つづく
相手の的中率が低ければ『残念でした』で済むのだが、
今のところ全てを言い当てている。
自分のだけハズレと言うわけにもいくまい。
「さ、先生、手を出して…」
何か、悪意を感じた。この霧原トオルという男、全てを
知っているのではないか。何か確信めいたものを感じる。
瞳が挑戦的だ。
既にトオルは右手を差し出して待っている。下手に断れば
自分は怪しいと言っているようなものだ。
しかしトオルの狙いはなんだ?なぜこれほど俺にこだわる
のか…。
つづく
(*゚∀゚)ドキドキ
やったーヽ(´∀`)ノ
スレを覗いてみたらリアルタイムで投下中だったーw
思い出す。『情報倫理学』の授業だ。
マウスを動かすのが苦手だ、ということで、彼の手の上に手を
重ね、指導したことがあった気がする。
既に俺はこの男の手を触れている。既に知っているのか?
いつまで経っても動かないユウジロウを女子が不審そうに
見ている視線を感じる。
やむを得ない。手を握る。何もない。ただ少し冷たい霧原
トオルの華奢な手の感覚だけだ。
どこまで覗かれているのか。どこまで分かってしまうのか。
たちまち手が汗ばむ。
つづく
霧原トオルは笑っている。いやな笑顔だ。大嫌いな人間の、
弱みを見つけたときのような嫌な目つき。それだけは分かる。
「なるほど…」
ゆっくりと手が離れる。滴る程の汗が掌にあった。
「えー何が見えたの?」
興味深げに女子が聞く。トオルは見下げた視線でユウジロウ
を一瞥すると、
「今日はカレーを食べたいらしい」
とだけ言った。大したことでもないので、女子もつまらなそうに
それ以上突っ込もうとはしなかった。
つづく
痛いほどユウジロウにはわかった。『全てを見られた』
勘に過ぎない。勘に過ぎないが、そう感じた。
黄昏が迫り、また次回と同好会は解散したが、教師用の
玄関からユウジロウが出ると、そこには霧原トオルが待っていた。
「山形先生…」
「どこまで見た…?」
「全て…」
全て、というのも曖昧だ。
「で、どうするつもりなんだ?」
「とりあえず、先生の家に行きましょうか?」
つづく
完全に上の立場を取られた。
赤い古ぼけた軽自動車。助手席にはトオルが乗る。
何も言わず彼は黙って正面を見ている。
その横顔を見ながら、ユウジロウはエンジンをかけた。
クルマで二十分。山形家。
クルマの音で妹アカネは兄の帰宅を知る。オカルト同好会
の顧問になって以来帰りが遅い時もある。
やっとかえってきた。出迎えるためアカネは玄関に向かった。
ドアが開く。
「おかえ…りなさい…」
つづく
兄、ユウジロウの隣に少年が立っている。
教え子だろうか?
「あ、失礼しました…お客さんが一緒だとは知らなかったものですから…」
一応詫びておく。
「アカネさんですね?」
「あ、はい」
「売春婦」
「…!?」
つづく
「先生、妹さんと、やらせてもらっていいですか?」
明らかにセックスのことを指しているのだろう。
アカネはワケが分からずキョトンとしている。
「断れば先生は先生でいられなくなる…」
「…アカネ、こいつに、抱かれてやってくれ…」
「え?どういうこと?」
「『お留め』とかいうやつ、使わないで大人しくしててくださいね」
所詮中学二年生だ。稚拙ではあったがセックスはできる。
胸を揉み服を脱がせ、蹂躙する。
つづく
『お留め』の技術を使えば簡単に抜け出せる。
しかし兄の目が『何もするな』と言っている。
このまま犯されるのか。この少年に。
ユウジロウは妹アカネが犯される様を見ている。
固く、拳を作った。
「後ろから殴るのは反則ですよ…山形先生」
何故だ!何故分かる?こいつの超能力は直接体に触って
なければ…。
いや、そうか、見ればアカネと触れている。アカネの視界に
自分がいる。アカネの目で見ているイメージを通じて俺を
見ているのか…。
つづく
「…あっ…はぁ…やだ…こんな…知らない子と…」
その幼稚なテクニック、自分の背より若干小さい身体で、恐らく
童貞の少年に犯される。それが妙に気持ち悪かった。
白い肌は若々しく、自分よりも水分があり、張りもある。スベスベ
とする感触も何か妙な感じだ。
「あっ!…お願い…お兄ちゃん…助けて…気持ち悪いよぉ…」
仕方がない。殺そう。殺してしまえば全てが終わりだ。
背後から手を伸ばす。瞬間、トオルは翻って、いつの間にか
手にしていたナイフをユウジロウの頬に当てた。
つづく
「邪魔はするな!教師でいられなくなるぞ!お前が犯した人間、
殺した人間、全て知ってるぞ。妹の人脈で何とかなると思うなよ!
警察が動かなくても、マスコミでもインターネットでもどうにでも
なるんだ!」
巧妙かつ狡猾。ここまでの敵にあったことはない。
「…何故そこまで俺を恨む…」
「俺の姉を殺したからだ」
「…俺は女を殺さない」
「お前は俺の姉を犯した。それから姉はおかしくなったんだ!
何もかも狂ったんだ!」
つづく
三年前。ユウジロウが犯した女。それが霧原トオルの姉、霧原リエ
だった。彼女は犯されたにも関わらず警察に訴え出るわけでもなく、
それどころか犯したユウジロウを愛してしまった。
リエはユウジロウを探した。しかし見つけることが出来なかった。
失意の中、姉は通常のセックスでは満足しなくなってしまった体、
ユウジロウへの想いを残したまま、失意の中で自殺した。
ちょうど同じ頃、弟トオルに変化が訪れた。人の心を読む能力。
その能力を手に入れた姉の死の直前、彼は姉の心の中を見た。
ユウジロウに犯されたこと。彼を愛してしまったこと。姉の全て
をトオルはその時初めて知った。
その直後、姉は死を選んだ。大好きな姉だった。それを犯された
上に殺されたのだ。トオルはユウジロウへの復讐を誓った。
つづく
そして、見つけた。まさか教師だとは思わなかった。しかし、
間違いなく、彼は姉を犯した男だった。
「だから俺はあんたを許さない」
「なるほど…。俺がお前の姉を犯したから、お前は俺の妹を
犯すのか」
「そんな単純なものじゃないけどね」
ユウジロウが、トオルの向こうに視線を移した。トオルも釣られて
振り返る。何もない。誰もいない。アカネが肌もあらわに廊下に
倒れているばかりだ。と、ユウジロウはナイフを持ってトオルの手
をつかんだ。
罠だったか!
つづく
手首を軽く捻るだけでトオルはナイフを落とした。
「女犯すのにナイフはいらない。続けろ」
投げ出されて、トオルは強姦を続けた。しかしもう気分は
萎えていた。何の充実感もない。
同じ苦しみをユウジロウと妹アカネに味あわせてやろう
と試みたが、虚しさが募るばかりだった。
「もうチンチン立ってないよ?」
冷静にアカネが告げた。トオルは泣いていた。復讐とは
何か。復讐をすれば何かが報われるのか。今の自分は
どうだ。
つづく
復讐もできない。方法も分からない。しかし大好きだった姉
の死を容認できない。姉を忘れることもできない。どうすれば
いい?姉の呪縛が解けない。三年の月日。何も変わらない。
姉への想いも、ユウジロウへの憎しみも。
しかしユウジロウをどうすればいい?姉が蘇るわけでもない。
戻ってくるわけでもない。
ユウジロウは泣くトオルの手を握った。頭にあるイメージは、
トオルの姉、リエを犯した時のイメージだ。かなりの数の女
を犯してきたが一人として忘れた女はいない。
勿論霧原リエのことを忘れたこともない。
流れていく。犯される姉のイメージ。そこからトオルはなにを
得るか。憎しみか。許しか。
つづく
悶え悦ぶ姉の淫らな姿が流れてくる。
反射的に手を振り解く。もう見たくない。
やはりユウジロウは…許せない!
瞳が怒りの色に染まった。ユウジロウは憐れを感じた。
落としたナイフを探す。ない。どこに…
刺されていたのはトオルだった。アカネがナイフを深々と
トオルの胸に突き立てていた。
つづく
「な…なんで…?」
「あなたがしようとしたことと一緒。お兄ちゃんの敵はあたしの敵…」
倒れるトオルの頭が何か柔らかいものに支えられた。姉の足…。
リエの膝枕だ…。
意識を失ったトオルの頭はアカネの脚の上にあった。
「殺したのか?」
「急所ははずれてる。生きてるよ」
「そいついなくなると、同好会やってけないんだよ」
「でも次同じことしたら殺すよ?」
「そん時はそん時だ」
ユウジロウは携帯電話で救急車を呼んだ。
終
なんか調子悪い…。駄作が続いてますな…自分的に…。
ごめんです。
作者さん乙です!
オカルト同好会が復活してうれしいです!でも・・・この後も存続できるのか!?WWW
ユウジロウとアカネのつながりの深さを感じさせる良作でしたよ!
機会があればオカルト同好会でUFOがらみのネタをお願いします。
単なるエロ目的かと思いきや、トオルには復讐という目的があったのですね。
昨夜はアカネがどうなってしまうのかとハラハラしながらも睡魔に勝てず、
携帯握り締めながら寝てしまいました…(´;ω;`)
開きっぱなしだったので起きたら充電切れてましたorz
それにしても、複雑な事情と特別な能力を持ったトオルが加わった事により、
オカルト同好会がこれからどうなっていくのか、非常に気になりますね。
しかし山形先生も変態でありながらもシブイなぁーwww
さてここらで怖い話でもするか。
霧原トオルが目覚めると見覚えのない天井があった。
決して寝心地のいいとは言えないベッド。
つづく
起き上がろうとすると、胸に軽い痛みと違和感があった。
「あ、まだそのまま起きちゃだめ」
誰かが優しく肩を押して、寝かせてくれた。
見ると山形アカネだった。俺を刺した女…。
「ごめんね」
素直にアカネは謝罪した。霧原トオルは黙って天井に埋め込まれた
蛍光管の照明を見ていた。
「とりあえず傷は縫ってもらった。まだ麻酔、効いてると思うけど、
そのうち痛みがあるかも」
つづく
声の方に首を傾ける。傷口が縫われているせいか、
皮膚が突っ張るような妙な感じが、胸と肩の間辺りに
あった。
「病院?」
「うん。首は、まっすぐにしてた方が良いってさ」
優しいアカネの顔があった。これが何の躊躇もなく人を刺した
女の顔か。トオルとゆっくりと首を戻して、再び天井を見た。
「不思議な力があるんだってね。手を握ると何でも分かるの?」
返事はない。感情のコントロールが出来なくなっていた。刺された怒り、
今こうやって付き添ってくれるありがたみ。アカネという人間が分からない。
善人なのか悪人なのか。味方なのか、敵なのか。
つづく
そっとアカネはトオルの手を両手で挟むように優しく握った。
何も感じなかった。トオルがこの能力を手に入れてから初めて
のことだった。
「何か見えるの?」
「何も…」
「そう」
少しアカネは寂しそうな顔をしたが、天井を見ているトオルには
見えなかった。
「御両親にはなんて連絡すればいい?」
つづく
「『あんたに刺されて病院にいる』って言ってもいいのか?」
「いいよ。本当のことだからね。でもだったら、あたしも貴方に犯された
ことを言うよ」
「…起こしてもらえる?」
肩を貸して、トオルを立たせる。立つと、トオルは病室を出た。待合室は
薄暗い。診療時間を過ぎた総合病院だった。
受付のカウンターの向こうに緑色の公衆電話があった。歩くのに支障は
ない。自宅に電話しているのか、しばらく電話の前に立つと、トオルはこちらに
戻ってきた。
「ケガして病院にいることだけは言っておいた」
「うん」
つづく
またベッドに戻る。しかし体力が奪われたわけでもない。
傷口のわずかな痛みと、皮膚が突っ張るような違和感
以外は、普段と同じだった。
刺された瞬間、トオルはアカネの手に触れた。その時に
かんじたアカネの心。彼女が急所を外し、ダメージや障害
の残らない場所を考えて刺したことは知っている。
病室に二人きり。
「山形先生は?」
「家にいると思うけど…」
「あの人や、あんたは一体何者なんだ?」
つづく
「…『あんた』って言うのやめてくれる?」
「じゃあ…アカネさん…だったっけ?」
「うん」
「山形先生や、アカネさんは何者なんだ?」
「お兄ちゃんに触ったときに何か見えたんでしょ?」
「見た」
「そのまんまだと思うよ」
部屋がノックされて、看護婦が入ってきた。
「あ、目、覚めたんですね?どうですか?痛みとか」
つづく
「少し気になるけど、大丈夫です」
「じゃ鎮痛剤と化膿止め、抗生物質出しておきますから
今日はもう結構ですよ」
クスリをもらい、治療費はアカネが出した。
さて、どうやって家に帰ろうかと思っていると、見覚えのあるクルマが
病院の出入り口の近くに停まっていた。
赤い軽自動車だ。ユウジロウである。
トオルはどえしようか思案している様子だったが、狭苦しい後部座席に
身を潜らせた。
走り出すと同時に、アカネにトオルのケガの容体を聞いた。とりあえず
無事だということを伝えるとユウジロウは自分の携帯電話を後部座席の
トオルに手渡した。
つづく
今日はハエ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!
「親御さんに連絡しろ。今日は帰らないが心配するなと」
「どういう意味ですか?」
「いいから電話しな」
「じゃ、自分の携帯でするよ」
携帯電話を座席の背もたれ越しに返すと、ズボンのポケットから
自分の携帯電話を取り出す。
自宅の電話番号を押し、心配そうにする親に、大事をとって
今晩は病院に一晩泊まる、明日には帰るから心配するなと伝える。
明日は土曜日だし学校もない。
親はしきりに心配し、何処の病院なのかなどと訊ねたが、救急車で
運ばれたので病院の名前が分からないなどと適当なことを言って
電話を切った。
つづく
たったそれだけの電話なのに随分と時間がかかった。
「随分心配性な親御さんだな」
「姉が自殺して、子供が俺一人になったからですよ」
トゲのある言い方だった。その姉を死に追いやったのは
ユウジロウだ。
「…お姉さんの件は、すまなかった…」
初めての謝罪。しかしトオルにはそれをどう受け取るべきか
分からなかった。
ユウジロウが直接、姉、霧原リエを殺したわけではない。
犯しただけだ。しかし無闇に乱暴し、姉を滅茶苦茶にした
わけではない。
つづく
それどころか姉はユウジロウを愛したのだ。
俺は一体何がしたいんだ!
無言のままクルマは走り続けた。
二時間後、ある山にたどりついた。ユウジロウが呟く。
「天高山という山だ」
「…!?」
忘れられぬ山。深夜なので気付かなかった。霧原リエが
自殺した山だ。しかし何故知っている?ユウジロウは犯して、
姉を捨てた。殺してもいないし、自殺にも立ち会っていない
はずだ。それを何故知っている?
つづく
赤い軽自動車は苦しそうに急な山道を登っていく。
道に沿って川でも流れているのだろうか。涼しげに、
流れる水の、音がする。
どれ程登っただろうか、やがてクルマはとまった。
エンジンも止めず、車内灯をつけると、薄ぼんやりと
車内が明るくなった。
「霧原、後ろの席にファイルがあるだろう?」
横を見ると、座席の上に随分と使い込まれたらしい
ファイルがあった。
「シオリの挟んである所、読んで見てくれないか?」
つづく
山中で自殺者が見つかったという小さい新聞記事の
切り抜きが貼られている。
山は名は天高山。死んだ者の名は霧原リエ…。
それだけの記事だったが横に細かく手書きの文字が
並んでいる。地図のようなイラストもあった。
それは、彼女が天高山のどこで、どんなふうに自殺
したのか、詳細に調べたメモだった。
「これは…」
「俺は確かに数多くの女を犯した。だが、俺は女は殺さない」
クルマから降りる。アカネは車内に残っている。
つづく
「降りないのか?」
しばらく待っているとトオルが覚悟を決めたように降りてきた。
一度だけ来た事がある。姉が死んだ場所。山道から森へ
少し入った場所。そこで姉は首をくくった。
懐中電灯を片手に森の中へユウジロウは入っていく。トオルも続いた。
そしてある木の前に立った。
「この木だ。ここでお前の姉さんは死んだ」
しかし、ユウジロウはなぜこんなことを調べたのだろう。恐らく地元の
警察か何かに問い合わせて、リエが死んでいた場所を聞いたのだ。
そんな必要がどこにあるのだろう。
つづく
リエが首をくくった木の前で、ユウジロウはだらりと手を下ろした。
懐中電灯の光が足元を照らす。木の根元だ。
そこには花束があった。既にしおれているが、確かに花束だ。
それ以外にも菓子の箱や未開封のジュースのペットボトルも
あった。
慌ててトオルはユウジロウに近づくと手を握った。
自分の犯した女が自殺した記事を読み、悲しげな表情を浮かべる
山形ユウジロウ。地元の警察に出向き、新聞記事を見せながら、
彼女が死んだ正確な場所を警官に尋ねるユウジロウ。聞き出した
場所に向かい線香と花束をたむけるユウジロウ。しかも一度では
ない。毎年。彼女の命日に。
家族すら墓参りで済ませている。現場に行く者などいなかった。
つづく
それをこの男は毎年、わざわざ二時間もかけて。
木に手をあて、ユウジロウは何やらぶつぶつ呟いている。
ユウジロウには見えた。霧原リエの姿。木の横にいる。
「見えるか?」
「な、何が…?」
「やっぱり見えねぇか…ここにな、お前の姉さんがいるんだ」
「え?」
おいでおいでとトオルを呼ぶと彼の手を優しく握り、何もない
空中にその手を持っていく。
つづく
何か感じた。そこだけ少し気温が低い。
何かが流れてくる。人に触れればその人の考えている
ことが分かる。人に触れればその人の感情や記憶、思考
が分かる。その時と一緒だ。
その能力を発揮するにはその行為に集中する必要があった。
何も考えず、ただちょっと触れただけでは何も流れてこない。
トオルの手首をつかんでいた手をユウジロウは離した。それでも
何かが流れてくる。何もないのに…。トオルは集中した。
そこには確かに姉の手があった。姉の記憶だ。姉の感情だ。
姉の思考だ。姿は見えないが確かにそこに姉がいる!
つづく
死んだ姉は幸せらしい。年に一度だが愛した男がやってきて、
愛をくれる。それが幸せらしい。
自殺したのはただ犯されて、捨てられたからではない。当時
の霧原家に原因があった。彼女には恋人がいた。結婚も約束
したが両親は反対した。霧原家は名家だった。
対して、リエの彼氏は立派な会社に勤めているわけでもなく、
平凡で純朴で優しい人だった。しかし身分違いという一言だけで
婚約は破棄された。
両親は別の男を紹介した。父の経営する会社に勤めるエリート
だった。しかし彼は、リエを出世の道具という程度にしか
見ていなかった。何せ社長の娘だ。結婚しておいて損はない。
その程度の愛情。
つづく
彼はいつも『仕事中』だった。遊んでくれるわけでもなく、
どこかに連れて行ってくれるわけでもない。ただ、身体
だけは求めてきた。それも単なるストレス解消といった
感じで、粗暴で、何の悦びもない独りよがりなセックス
だった。
両親に相談したが、もう両親はその男と結婚するべきだ
と決めてかかっていた。無論、その男も両親の前では
いい彼氏を演じた。
既に自殺の種は芽生えていた。リエは人生を捨てざる
を得なかった。
そんなとき、ユウジロウに出会ったのだ。自棄になって、
一人酒を飲み、ふらふらと歩いている彼女を、ユウジロウ
は最大級の愛をもって犯したのだ。
つづく
「だから、私は今は幸せよ」
最後にリエはそういった。トオルは泣いていた。しかし
目にかかる程の長い前髪と、山の闇がその涙を隠した。
「ここって交通の便が悪いでしょ?バイクかクルマの免許
とったらたまに遊びに来てよ。幸せだけど、ちょっと退屈
なんだよね」
楽しげだった。そんな姉を見たことはなかったかもしれない。
確かに自分も両親には一家言ある。父、母、両方ともに社長
で、家庭を顧みず、遊んでもらった記憶もない。
子供の頃、遊園地に連れて行ってもらったが、いよいよ入園
というところで父のポケベルが鳴り、遊園地直前で自宅に
引き返したこともある。
つづく
手を下げたトオルを見てユウジロウは言った。
「終わったか?」
「…はい…。すいませんでした…」
「いや、俺も、すまなかった。どうにせよキッカケを作って
しまったのは俺だ。自分を正当化するつもりはない」
帰り道、トオルは姉とどれ程仲が良かったかという話を
二時間、留まることなく話し、ずっと笑顔でいた。麻酔が
切れた傷口が、笑う度に少し痛かった。
終
>>368 >>ユウジロウとアカネのつながりの深さを感じさせる良作でしたよ!
>>機会があればオカルト同好会でUFOがらみのネタをお願いします。
ありがとう。そして了解!そろそろお盆だ!がんがん行くぞ!!
>>369 いつも遅くてごめんねぇ…。ライブにこだわらずゆっくり、暇な時間に
でも読んでください。読んでくださるだけで感激です!
394 :
本当にあった怖い名無し:2006/08/12(土) 23:16:13 ID:Mw29i6go0
はじめまして
ずっと読ませていただいてましたが、今回初めて
ライブで読めました(*´Д`*)ハァハァ
書き込み方も良く分からなくてすみません。
今回も渋くてよかったです(><)これからも頑張ってください
さてここらでUFOの話でもするか。
霧原トオルもだいぶ『オカルト同好会』に溶け込んだようである。
姉がいたので女性に対し抵抗がなく、もともと美男子というのも
影響しているのか女子も抵抗なく彼を受け入れている。
つづく
やはり注目すべきは『オカルト同好会』である以上、そういった
人には見えない者が見える顧問、山形ユウジロウと、触れる
だけで相手の感情、記憶、思考を読み取る超能力を持つ、
霧原トオル、ということなのだろうが、『オカルト』の裾野は広い。
超能力と霊能力ばかりがオカルトではない。
他にも、宗教的なもの、UFOやUMA、都市伝説、更に突っ込めば
各国神話、黒歴史、噂話なども『オカルト』の範疇に入れることができ
るだろう。
そんな中で今盛り上がっているのはUFOの話題であった。
きっかけはテレビだった。アメリカ、ネバダ州のエリア51。墜落したUFO
が保管されているだの、宇宙人との会談が行われているなど、何かと
噂の多い米軍基地である。
つづく
ライブ山形微妙に乗り遅れたー(TДT)
なんだか最近はしんみりと言うか、後からジワジワくる感じですね。
初期のはっちゃけた山形先生が懐かしい、、
初期のイメージはえびすさんにメガネをかけた感じを想像してましたが最近はダンディーなオヤジさんが浮かんじゃいます( ̄口 ̄)
しんみり系もすごく好きです!が、たまにははっちゃけた山形先生も見せてください(*'-^)-☆
二話めキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!
と思ったらサプライズライブー( ̄口 ̄)
そこで掃除夫として働いていた男が、こっそり撮影されたという
宇宙人の映像がその番組の目玉として流れたのだ。
不気味に頭が大きく、口は小さく目は大きい。手足は細く、華奢だ。
そんな奇怪な生物がアメリカ空軍の高官と会話をしながら基地内
の通路を歩いている映像だった。
他にも生中継で、UFOを人為的に呼ぶことができるという男が、
テレビ局の屋上から念を送り、UFOを呼び出す実験を行い、
実際に怪しい発光体をライブでカメラが捉えたのだ。
『オカルト同好会』としては放っておけない。しかもテレビでその、
UFOを呼び出したとされる怪しげな男は、
「私が特別なわけではない。誰でもUFOを呼び出すことができる!」
と断言したのだ。
つづく
と、いうわけで天文部との相談の上、天文部の活動が休みの日、
屋上を貸してもらえるように手配した。
暗い。夜だから当たり前である。しかも天文部はどうもオカルト
同好会を怪しい団体と見ているらしく、屋上に設置されている
部室には立ち入らないように、という条件を出した。いずれに
しても施錠されているのでドアが開かない。
秋の涼しい風で木の葉が舞っている。
「よし、宇宙人を呼ぼう!」
「どうやるの?」
「念じる」
「呪文を唱える」
「叫ぶ」
つづく
滅茶苦茶である。誰かが『これで貴方も宇宙人に遭える!』
と言う本を持ってきたが、ロクな情報が書いていない。
三年生のリョウコが言う。
「とりあえず手をつないで輪になろう」
サエも続いた。
「そうだ。それだ」
とりあえず手をつないで輪を作る。
「で?」
冷ややかにトオルが言った。全くUFOを信じていないらしい。
「UFOさんUFOさん、おいでになりましたら…」
「それ『ゴーストさま』のじゅもんじゃん」
「UFOに『さん』付けはおかしいよね」
つづく
「よし、とりあえず悪魔の時と同じように俺が全裸になる!」
早速ユウジロウが脱ぎ始めたがサエが止めた。
「もう先生舐めるのやだ」
「先生苦い」
部員が『先生の味』を知っている部活もないだろう。
「こんなんじゃこないよUFO」
完全にトオルは飽きていた。
「じゃあ念じるだけ念じてみよう」
「はーい」
つづく
ユウジロウの呼びかけでとりあえずそれぞれの
やり方で念じてみることにした。
人間の輪が静まり返る。
星でも航空機でも何でもUFOに見えてしまう。大体何を
もってUFOとするのか。
一年生のカエデが叫んだ。
「何?UFO来た?」
「その、あそこ…」
指差す先に何か光が見える。しかし何とも言えない。
凝視していると突然右へ、ものすごいスピードで移動した。
つづく
UFOキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
「第一種接近遭遇!!」
「みんな見たよね!?」
「見た見た!」
冷め切っているトオル以外は大盛り上がりだ。
「カメラカメラ!カメラ用意した方がいいよ!」
「携帯のじゃダメ?」
「ダメちゃんとしたやつ!」
「誰か持ってないの??」
「先生持ってきて!!」
女ばかり四人。とにかく賑やかだ。ユウジロウは仕方なく
職員室に降りると、備品の一眼レフのデジタルカメラを
持ってきた。
つづく
「あ!すごいカメラ!」
「じゃ先生カメラ係ね」
今度はユウジロウを覗いた五人で輪を作り、念じる。
西の空に光る何かを発見。今度は何だ!?と思うと消えた。
UFOキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
「先生!撮った!?」
「ただの光の点じゃないか。撮れないよ」
「もぉ〜超使えない!!」
「もっと近づくまで念じてみようよ」
つづく
ユウジロウはカメラの使い方に迷っていた。どうすればいいんだ?
ストロボ焚いても意味はないし…シボリとか感度とか…シャッタースピード
とか…カメラはよくわからんなぁ…
カメラのボタンをいろいろぼちぼち押しているとまた何かが現れたらしい。
また西の空だ。確かに光っている星でないことは確かだ。あんな明るい
星はない。しかも微妙に揺れている。飛行機やヘリコプターとの軌道でも
ないようだ。
本物だったらタダゴトではない。早くカメラの設定をしなければ。
「先生!早く撮ってよ!」
「ちょ、ちょっと待てって…あれなんだこれ?再生モード?ん?」
つづく
「先生早く!!」
女四人がわーわーきゃーきゃー。カメラは相変わらず
わけの分からない状態。ふと見ると信じていないらしい
トオルまで驚きの表情を浮かべている。
本当に来ているのか?
何となくカメラから目を離して西の空を見ると明らかに
妙なモノが飛んでいる。
「でた!アンアイデンティファイドフライングオブジェクト!!」
とにかくカメラを構えてシャッターを押す。何も起こらない。
畜生壊れたか!しかし今のこの状態なら携帯のカメラ程度
の低性能のカメラでも撮れるはずだ。
つづく
「み、みんな、携帯のカメラで撮るんだっ!」
「フラッシュはなしだよ!何かの攻撃かと思われたらビーム撃ってくるよ
ビーム!」
「マジで!?ビーム超怖い!」
携帯のカメラを向け撮影する。と、ゆっくりと飛行物体は離れていく。
「あ!離れてく!」
「また念じるのよ!」
「みんな!心を一つに!!」
完全に巻き込まれたトオルまでもが真剣に念じている。
その頃、ユウジロウはカメラの『簡易設定』というところで、『夜景モード』と
いうアイコンを出すことに成功した。『周囲が暗いところで光るものを撮影
するのに適したモードです』と説明が液晶画面に流れている。これだ!
つづく
「カ、カメラ準備できたぞ!!」
しかし皆念じているので返事はない。とりあえずカメラを西に向け
構える。
再び飛行物体が接近してくる。意外と小さく見える。
「もっと念じろ!近づけるんだっ!」
ファインダーを覗きながらユウジロウが檄を飛ばす。
「うおぉぉぉぉUFOさまあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
更に近づくもうすぐそこだ!撮影開始!シャッターも切れた。
ブレているかもしれない。ピンボケしているかもしれない。しかし
何かは映っているはずだ。
つづく
すると、飛行物体は除々に高度を下げてくる。どうやらこの屋上に
着陸するつもりらしい。
「きたきたきたきた!」
「気をつけて!味方とは限らないよ!」
「あたしたち標本にされちゃうかも!」
「そんなのいやだ!!」
典型的なアダムスキー型UFO。まさか本当に出会えるとは…。
感動でユウジロウは泣いた。
飛行物体から、細い脚が三本、伸びてくる。着陸。床の部分が開くと、
タラップが降りてきた。そこをゆっくりと降りてくる者の姿があった。
「だ…第三種接近遭遇!!」
つづく
今日は早い時間にキテター!(゚∀゚)
と思って感想書き込もうとしたら…
2話目キター!www(゚∀゚≡゚∀゚)≡3
やっべ、自分が子供の時のこと思い出したwwww
それは銀色のスーツ、地球上のもので例えれば、銀色の
ウェットスーツ。それに身を包んだ美女が現れた。
「は…はじめまして…あなたは宇宙人ですか?」
やはり男勝りの部分もあって勇気も人一倍だ。サエが訊ねた。
しかし美女はにこりと笑うだけで何も答えない。それにしても
美しい。スタイルも抜群で、身体にフィットしたスーツがセクシーだ。
「ダメだ通じてないみたい」
「でも笑ってるよ」
「あたしたちも笑おうか?」
「でももし、地球で言う笑顔が、あっちの星では怒ってる顔かも!」
「じゃあの人今怒ってるの?」
「そういう可能性もあるってこと」
つづく
「あ!そうだ!霧原くん!」
突然指名されてトオルと驚いた。
「あんた握手しといでよ!そしたら分かるでしょ?感情とか」
「えええぇ〜!俺がやるの?」
「あんただけの能力でしょ」
一歩二歩とトオルが近づくと向こうも笑顔で近づいてくる。
「は…はう…どぅーゆーどぅー」
そっと右手を差し出す。向こうは一瞬警戒したようだが、同じく手を
出してきた。握手成立。
「な…何考えてる?」
「なんだかわかんないよ!うまく集中できない!」
つづく
そこへズイと現れたのはユウジロウだ。
「コンニチワ!ワタシハニッポンジンデス!」
宇宙人はトオルの手を離し、ユウジロウの方を向いた。
気になったトオルはユウジロウの手にそっと触れた。
やっぱり!
ユウジロウは彼女に欲情している。これはマズい。
下手にレイプでもして怒り狂った宇宙人の仲間が
地球を滅ぼすかもしれない。
よく見ればもう勃起している。
これはもうどっかの国がミサイルに燃料を注入し終わった
ぐらいにヤバイ。
つづく
「せ、先生…先生は下がってた方が…」
「ワレワレ、ニッポンジン、ドクトクノ、アイサツヲ、オシエマス。
ソレハ、『セックス』ト、イイマス!!」
だめだ。目がイっている。あの、天高山。姉が自分の命を絶った
山で見せた正しい大人の男のユウジロウは何処に行ってしまったのか。
むしろこっちが彼の本質なのか…。やはり、殺しておくべきだった…。
トオルの後悔は既に遅い。
ユウジロウはワケのわからないことをつぶやきながら、UFOの中に、
美女の宇宙人と共に入っていった。
遠巻きに見ていて事情の知らない女子は大盛り上がりだ。
「だ…第四種接近遭遇!!」
つづく
UFOの中は狭いが、ワンルームマンションのような感じで、
一通りの生活ができるように工夫されて作られているようだ。
ベッドのようなものもある。宇宙人(美女)は、ベッドを指差した。
『寝転がれ』という意味だろうか。
「ドンナ、プレイガ、マッテイルノカナ!!」
なんのためらいもなく横たわるユウジロウ。金属製のベッドだ。
硬く、冷たい。すると宇宙人(美女)は、レーザーメスのような
道具で、ユウジロウの衣服を焼き切り始めた。衣服も皮膚の一部
だと思っているのだろうか。
ユウジロウは硬く冷たいベッドの上、丸裸にされた。もちろん
チンポコもギンギンに天を突いている。
つづく
宇宙人(美女)は興味深げにイチモツを見ている。
軽く触れる。
キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
しかしすぐに手を離し、匂いを嗅いだりしている。
「サワッテ、シゴイテ、イレサセテ!!」
次に頭に何か電極のようなものを着けられた。
宇宙人(美女)も同じ電極をつける。
「これでお話、できますか?」
直接脳に声が入ってくる感じ。電極のようなものは翻訳機なのだろう。
これで意思の疎通が出来る。セックスするにも都合がいい。性感帯
も人間と違うかもしれないからな!
つづく
「デキマスデキマス!」
「あなたは地球の日本人の男性ですね」
「ソウデスソウデス!」
「お願いがあるのですが」
「ナンデモイッテ!」
「精液を取らせてもらってよろしいですか?」
「キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!ドンドントッテ!!」
「では女性を呼んできます」
「え?」
宇宙人(美女)は別の部屋に消えた。かわりに現れたのは
かなり強烈なヤツだった。
言うなれば、『ポンキッキ』のガチャピンの相棒、ムック。
その赤く太い体毛が全てミミズのような生物。
つづく
「デダ━━(゚Д゚;)━━━!!!!!」
宇宙人(ムック)も電極をつけている。
「よろしく…」
大きな口を開く。口の中もミミズが大量にうねっている。
そこにイチモツが入っていく…。
「ギャアアァァァァァ…あっ…あぁ……きもちいいカモ……」
宇宙人(ムック)はユウジロウの精液を試験管のようなものに
保管すると礼をいって、UFOの運転席にあるボタンの一つを
押した。
つづく
気付くと、『オカルト同好会』の面々が屋上で倒れていた。
UFOはもういない。
時計を見ると、三十分程、ここで気を失っていたようだ。
部員全員から『UFOの中で何があったか』聞かれたが
何も答えられなかった。
「とにかく遅いから今日は帰ろう。親御さんが心配するから!
解散解散」
スキを見て、トオルは気付かれないようにそっとユウジロウの
手に触れた。宇宙人(ムック)とイチモツ…。
トオルは便所で二度、吐いた。
終
トオル…。
・゚・(σ∀`)σ・゚・。
ついに宇宙に進出かw
元ネタはスペースバンパイア?
悪魔の受胎の逆バージョン?
>>394 ずっと読んでくれてありがとう。渋かったり単にスケベだったり
するけど今後ともよろしくです。感想ありがとう!嬉しいです。
>>397 >>397 こんな感じでどうでしょうか?(笑)>はっちゃけ
途中でレスくれた人も感謝です!ありがとうございました!!
いやーもう一時…書いてると時間経つの早い…。
>>424 スペースバンパイア!懐かしいです。あの宇宙人はスタイルよかったですよね。
似ちゃったけど元ネタはありません。勢いで書いてるだけですwwww
ちょwwwムックwwwww
いやー、今夜はまたしんみりといいお話が読めたなぁ、
トオルの心もお姉さんも心も救われてよかったなあ…と思ったらwww
これこそ山形先生!って感じの展開wwww
深い愛を持った渋くてかっこいい山形先生の話と、
変態パワーを発揮した山形先生の話、
今夜は2本立てで楽しめました!
それにしても2本目はかなり勢いがありましたねーwww面白かったです!
>>427 ちょっと書いてる私本人の精神状態もあるんですけど、
これ以上しんみりした静かな話が続くと二度と戻れない
ような気がして、少しアルコールを入れて勢いだけで
書いてみました。
テンションはゲリラだった頃に近いと思います。ちょっと
オチが本気でキモい気もするんですが勘弁してください(笑)
読んでくれてありがとうです^^
連投すいません。
私は
>>369=非難所の通りすがりのロム専なのですが、
(っていってもわからないですよね汗)
ロム専もいいけれど、素直に感想書き込みながら読むのも楽しいなぁと思い、
最近書き込みするようになりました。
今後も書き込みしながら楽しく読みたいと思います^^
作者さん、これからも頑張ってくださいね♪
>>429 ありがとう^^ 感想でも文句でもネタでも何でもどんどん
書き込んじゃってください。その方が私も嬉しいです。
本当にありがとう
>>368でUFOネタをお願いした者です。
うは!面白ス!こんなすぐに、しかも面白い話を読ませていただいて感激です!
新キャラのトオルの活躍も良かったです。これからもオカルト同好会の活躍に期待!
「もう先生舐めるのやだ」
ワロスwww
>>431 毎度どうも^^
ナイスアシストでした。「UFO」という単語を見た瞬間に頭の中で
オープニングからエンディングまで全てが頭の中で完成しました。
やっぱり頂いたネタは新鮮なうちに料理した方がいいですからね。
あの
>>368 の発言がなければ一晩で二話は書けなかったと思います。
同好会もキャラが自分の中で完成しつつあるのでどんどん登場するでしょう。
しかし三年生の美人トリオ、受験とかどうなんだろ…作中ではもう秋なんですよねww
二年生にしておけばよかったなと今更後悔しています。実はエスカレーター式の
付属中学で受験勉強しなくていいって設定にしちゃおうかなとか考えたりして…。
悩みどころですよ。本当に。
連載乙です!
ここのとこダンディズム溢れる山形先生だったので、久々の変態っぷりにテラワロスwww
先生が宇宙人に近付いていく場面が好きですw
ほんと勢いのある展開で、読んでる側もテンション上がっちゃいました!
これはライブで読みたかったなぁ…><
さて、ここらで怖い話でもするか。
三連休の最終日、初日、二日目と色々と野暮用があって、
かまってやれなかったアカネをユウジロウは映画に誘った。
つづく
アメリカから日本へ向かう飛行機がハイジャックされ、
偶然乗客として乗り込んでいたアメリカ、ロサンゼルス警察
の勤務するアメリカ人刑事と、日本の警視庁に勤める
日本人刑事がお互い人種の壁を越え、協力し、ハイジャック犯
グループと戦う、そんな内容の映画だった。
日本人刑事を日本人俳優が好演し、話題になっている映画だ。
刑事の性格が真面目と不真面目、正反対なのも面白味の一つ
だった。日本人刑事は至って真面目、ところが相棒であるはずの
アメリカ人刑事はおちゃらけたキャラクターなのだ。
そのアメリカ人刑事を元コメディアンの俳優が演じていて、笑える
シーンも盛り込まれている。
他に面白い映画がない、という要因もあるが、人気は高く、今朝見た
ワイドショーの映画情報では観客動員数が今週で五週連続一位
だという。
つづく
公開当初はその出演している日本人俳優の人気も手伝って、
立ち見の客が出るほどだったらしいが、そろそろそれも落ち着いて、
チケット売り場には列もなかった。
あと二十分もすれば始まる。ユウジロウは大人のチケット二枚を
買って、一枚を
「はい、アカネの分」
とアカネに手渡した。アカネにとってはデートみたいなものだ。
明るく笑っている。
「映画なんて久しぶりだね」
「前見たのは何だっけ?」
「『サトリックス』の最後のやつだったかな?」
つづく
「いやそのあと何か韓国の映画見たぞ」
「あー見た見た」
「意外と印象が薄かった」
「ちょっと難しかったよ」
館内には売店があった。
「何飲む?」
「お兄ちゃんのと一緒でいいよ」
「じゃあ一番大きいの一つにしようか?」
「うん」
水分というものを山形アカネは余り取らない。五百ミリリットルの
ペットボトル一本、一日で飲みきらない程だ。
対してユウジロウは喉が渇いている時など、五百ミリリットル程度
なら一気に飲んでしまう。
つづく
だから飲み物を買ってもアカネは上映中にまず
飲みきれない。だから、最も大きいサイズの飲み物を
買って、アカネが少し、後の分をユウジロウが飲むと
いう飲み方が慣例になっていた。
いつも通り。二人で大きな飲み物と、ポップコーン。
映画が始まる。
全席指定の劇場だった。ちょうど中央の少し右寄り。
見やすい席だ。通路際の席に既に一人の若い女性が座っている。
席番を見ると彼女の隣の席と、もう一つ向こうの席が、ユウジロウたち
の席だった。
「すいません。前、失礼します」
つづく
クリス・タッカーとジャッキー・チェンのイメージで読もうと思います。
香港だけどw
キテター(・∀・)
女性の隣にユウジロウが座り、その奥にアカネが座る。
肘掛にドリンクホルダーが取り付けられていたので、
ユウジロウはそこにビックサイズのドリンクを置いた。
中身はウーロン茶だ。
バケツのように大きく見えるポップコーンはアカネが胸に
抱いて早速食べている。
隣の女性が気になる。アカネと同い年ぐらいだ。一人で
来ているのだろうか。横顔が美しかった。一番小さいサイズの
ドリンクを一口飲む。ストローを咥えるくちびるがセクシーだった。
『アカネがいなけりゃ声かけたのに…』
つづく
何となく見比べるとアカネの方が美人と言えるのだが
何せ兄妹だし、『美人は三日で飽きる』というところを
もう二十年も一緒にいる。
いくら綺麗な顔立ちとはいえ既に見慣れている。
何となくユウジロウがこちらを見ているので、ポップコーン
が気になるのかと思いアカネはユウジロウにポップコーン
を渡した。ユウジロウは首を横に振った。
その向こうに例の女性客の姿が見えた。美人だ。どうせ
その女のことでも考えているのだろうとアカネはユウジロウ
の耳を引っ張った。
「いてて…何すんだ!」
「静かに!」
つづく
場内が暗くなる。
携帯電話をマナーモードにするように、という注意のあと、
これから公開される映画の宣伝が流れる。
いずれも宣伝は優秀だ。それだけ見るとさも面白そうに
見える。しかし実際見て駄作だったということもままある。
クリスマスから正月にかけて公開される映画だ。いずれも
配給会社が力を入れている。
有名俳優のオンパレードだった。
この劇場は音響にもこだわっているらしく、様々な方向
から音が聞こえ、自分が現場にいるような臨場感を覚えた。
つづく
爆破シーンともなると大音響で自分の胸が音圧を感じるほどだ。
いよいよ本編が始まった。
アメリカの刑事、日本の刑事がどんないきさつで、同じ飛行機に
同乗する羽目になったのかが映画内で語られている。
一方、飛行機を乗っ取るテロリストグループのリーダー格の男を
演じているのは、普段なら、正義の主人公を主に演じている俳優で
悪役は初めてらしい。
普段、他の映画で、正義感溢れるヒーローを演じている彼が、
足手まといとなれば味方でさえ平気に殺す冷酷な悪役を演じると、
それはそれで妙な迫力がある。
二人は映画の世界に引き込まれていった。
つづく
と、ユウジロウの隣の女の手が、ユウジロウの膝に
置かれている手に重なってきた。
驚いたが声を出すわけにもいかない。
思わず彼女の方を見ると、潤んだ瞳でこちらを見ている。
手を握る力が強くなった。
どういうことだ?別に怖いシーンでもない。
痴女キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
もう映画なんかどうでもいい。ユウジロウも腕を彼女の
膝の上に置かれている手に上に持っていった。
手を重ねる。彼女がぴくりと脈打った。
つづく
見れば更に目を潤ませているではないか。
コレハホンモノダ!!
タイトなミニスカートの上から太ももを触る。
彼女はいやいやをするように首を振ったが、
本気でいやがっているふうでもない。
そのまま手を太ももと太ももの間に滑り込ませる。
「ぁ…」
小さく女が喘いだ。ちらりとアカネの方を見る。真剣に
映画を見ているようだ。よしよし。そのままそのまま。
隣の女性の肩を抱き、抱き寄せる。太ももを触っていた手を
乳房へ…。
つづく
もみ応えのあるバストだ。嫌いじゃない。彼女はそこで
初めて抵抗するように手を払ったが、どうも様子がおかしい。
恐らくそういうプレイなのだ。痴漢いやがりプレイ。これはアリ
だろう。嫌がっているが本気じゃない。本当はもっと滅茶苦茶
にしてほしいに違いない。
抱き寄せ耳に息を吹きかける。小声で囁く
「なんてスケベな女なんだ…」
彼女が一人で来ている理由が分かった気がする。痴漢されに
来ているのだ。こうなれば散々喜ばしてやろう。
耳、頬、胸、太もも、横腹、とにかく性感帯を責めまくる。
つづく
微妙な抵抗を見せる女。
劇場の音響システムが派手な音を立てる。
多分銃撃戦かなんかだろう。いいやそんなの別に。
女の吐息が激しくなる。触り放題だ。脚の隙間から
陰部を狙う。途端、女が身をこわばらせた。
脚が閉まる。しかしやがてその力も弱くなっていく。
パンスト越しにさえ濡れているのが分かる。
『スケベナオンナダ…』
パンスト越しなので正確な位置はつかめないが、
クリトリスはおそらくこの辺り。
つづく
ビクビクと身体を震わせて女は快感にむせび泣いている。
チラチラとアカネを警戒するが大丈夫だ。映画に見入っている。
後で映画の話になったらどうしよう。寝ていたとも言えないし…。
まあいいや。銃撃戦がすごかったとか適当に言っておけば
ごまかせるだろう。アクション大作なんてそんなもんだ。
散々もてあそんで九十分。映画も終わってエンドロールだ。
モウスコシ、サワッテイタカッタナ!!
彼女はユウジロウの左側の席にいた。だから左手一本で責めた。
やはり右手が使えないハンデは大きく、彼女を絶頂に導けなかったのが
残念だ。
つづく
さすがに右手を使えば右側にいるアカネに気付かれただろう。
まぁ触るだけ触れたしよかったよかった。
ユウジロウは左手を自分の膝の上に戻した。
映画など何秒も見ていない。
と、また女が手を重ねてきた。もっとしたいのか?相当のスキモノだ。
彼女はぎゅうとユウジロウの左手をつかんで離さない。しばらくすると、
彼女はそのまま立ち上がった。エンドロールは続いている。
ユウジロウは映画のエンドロールは最後まで見てから劇場を出るタイプだ。
映画を何秒も見ていない割りに、そのへんのこだわりは捨てたくなかった。
つづく
しかし女はユウジロウの手を引っ張って離さない。
どこかに連れて行こうとする。
あ!もしかしたらこのまま人気のないところで本番とか!
期待したがアカネがいる。無理だ。後できっと殺される。
アカネ独特の価値観だった。自分が関係ない場所でユウジロウが
レイプをしようがセックスをしようが構わない。ただ、一緒にいる時に
他の女を意識したり、ついていったりすることは許せないのだ。
しかし女の力もすごい。ユウジロウはそのまま引きずられるように
連行された。
つづく
アカネも気付いたらしく、
「え、お兄ちゃんちょっと待ってよ!」
と声をかけたがユウジロウはどんどん離れていく。
飲みかけのジュースもある。ポップコーンもある。自分の
バッグもある。アカネは慌てて帰り支度を始めた。
その頃、女は劇場のスタッフにユウジロウを引き渡していた。
「この人、痴漢です!」
「ええええぇぇぇぇぇぇ!!」
つづく
新手の恐喝か何かか?ハメられたのか?
ユウジロウはそのままスタッフルームへ連れていかれる。
女もついてきた。
スタッフの上役らしき人物が現れた。女は、必死に訴えた。
上映中散々痴漢行為をされたことを。
しかしユウジロウにも言い分はあった。
「最初に誘ったのはあんたじゃないか!!」
「そ…それは…」
話を整理するとこうだった。
つづく
女が映画を見ていると、左に座っていた男が、脚や胸を
触ってきた。痴漢だと思ったが満員に近い劇場の、ましてや
上映中に叫んだり騒いだりするのもはばかられて、助けを
求めるつもりで右隣にいたユウジロウの手に触れた。
あの時の潤んだ瞳は、そういう行為を望んでいたわけではなく、
単に恐怖に怯えた、助けを求める目だったのだ。
それをユウジロウは勘違いした。てっきり痴女だと思った。
助けを求めたのに、その男にも身体をまさぐられ、両隣から
痴漢行為を受けた。それが彼女の語った内容だった。
スタッフの上役は溜息をついた。
つづく
「いけませんなぁ。痴漢行為は…。言いたかありませんがウチの
劇場は被害が多くてね。そういった場合は全部警察に任せることに
しているんですわ」
警察…。やばい。自分を弁護する必要がある。
「ちょ、ちょっと待ってください、彼女は何の抵抗もしなかったんですよ!
声は出せないにしても何かしら抵抗はできるでしょう!」
「抵抗はしました。でもあなたより、最初に痴漢した右隣の人の方が
ひどくて、そっちに抵抗するのが精一杯で…」
話を聞きながらユウジロウの頭の中に『?』が浮かんだ。ちょっと待て。
この女、通路際の席にいたではないか。右隣の席なんかない。それに
俺を連行するなら『右隣の男』も連行すればよかったじゃないか!
つづく
激しくユウジロウはその点をついた。しかし女からは
曖昧な返答しか帰ってこない。
詳しく聞くと、確かに『右隣の席』はあったのだと言う。
しかし怒りに駆られて、いよいよ捕まえようとすると、
そこは通路で、何もなかった、と言う。
「あぁ…」
何か思い出したように上役は声を上げた。
「チケットの半券はお持ちですか?」
彼女もユウジロウも持っていた。席の番号などが
書いてある。
つづく
>>455 >>456 投下中に失礼します。上記レス番中の『右隣』という表現を
全て『左隣』と修正します。間違えてました。すいません。
女の席番は、H15。ユウジロウの席番は隣のH16。
その並びからすれば、H14に座っていた男が痴漢だ。
しかし、H14は、彼女の座っていたH15から、通路を
挟んだ向こう側だった。
やはり彼女の『左隣の席』はなかったのだ。
上役の男がその件について説明する。女も認めざる
を得ない事実。
女から先に、ユウジロウの手に触れたことになる。
そうなると女の証言の信憑性がかなり疑わしくなってくる。
つづく
「なんとか、示談ということで、お願いできませんかね?当劇場としましても
警察沙汰ということには余りしたくないのですよ」
話すテンションが随分と落ちたが上役の男はそういった。女としても、ないもの
をあったとは言えない。示談に応じた。
ユウジロウもいずれにしても痴漢行為に及んだわけであるから、深く謝罪した。
何となく納得のいかない三人だった。
スタッフルームを出ると、アカネがいた。
「もーどこ行ってたの!?」
「ごめんごめんちょっとトラブルで」
「もうちょっとで帰るところだったよ〜」
つづく
「帰りにアイスおごってやるから。勘弁勘弁」
「別にいいけど…」
上映時間の合間。劇場の清掃の時間に、上役の男は
女が座っていたH15の席へやってきて、床に膝がつくのも
構わず座席の下を覗き込んだ。
その席の下にはお札が貼ってあったが剥がれかかっていた。
座席の下に手を突っ込んで、今一度お札を正しく貼りなおすと、
手を合わせて何事か拝んだ。
そこにベテランのスタッフの一人がやってきた。
「どうしたんですか?」
「まただよ。また、出たんだ」
若いスタッフはしばらく考えていたが、席番を見るなり何事か思い出す。
「ああ…アレ…」
「やっぱり一年に一度は、神社にお願いしないとダメらしいな」
「ちょうど今日で、いきなりですか…」
「全く困ったもんだよ…」
終
作者さん乙です!
昨日も途中で力尽きてしまいました…^^;
次の日続きを読むというのも楽しみのひとつですけれどねw
今回も面白かったです!
それにしても、女性が座っていたその席では、過去になにがあったのでしょう…?
((((((;゚Д゚))))))
>>461 ありがとう^^ 2時間ぐらい続くからね^^;; こっちは書いてる
から退屈したり眠くなったりはしないけど待ってる方はつらいで
すよね。読んでくれてありがとうございます。
乙です〜。幽霊と山形先生に弄られまくった女性カワイソス・・・
>>463 確かにそうですね。不快に思われたならすいません。
連載乙です。3話分一気に読みました。
皆さんもおっしゃっていますが、UFO話はほんとにすばらしいですね。
テンポがよく、新キャラ“トオル”の存在が一層メリハリをつけているなあと感じます。
オカルト同好会の女子部員のにぎやかな若さ、トオルの冷静さ。そしてあの山形先生。
代わる代わる描写されていく様が、とにかく臨場感があるんですよ。
物語の一部が、普通の価値観を備えたトオルの視点でも描写される…
山形ワールドが広がったなあと感じた一作でした。
読み応えがありました。ありがとうございました。
>>465 書いていながらにして、自分も楽しかったです。いつもどこかで、
今後の展開に詰まるところもあるんですが、UFOの話はそれもなく
一気にいけました。
書いてて楽しかった。やはりそういうのが読んでいる側にも伝わるん
ですかね…。いつもそのぐらいのクオリティを保てるように頑張りたいと
思います。こちらひそありがとうございました。
>>まとめ人 さま
>>タイトル職人 さま
お手数おかけしました。いつもありがとうございます^^
さてここらで怖い話でもするか。
出勤前、ユウジロウは体中アザだらけだった。
映画館での痴漢行為がアカネにバレて、戒められた結果だった。
つづく
「お兄ちゃん」
声をかけてくるアカネに恐る恐るユウジロウは答えた。
「…ん?」
「今日、ごめん」
また映画館でのことを責められるのかと思えばどうも違うらしい。
「またか…」
「放っておけなくて…」
「世も末だ…最近多くないか?」
「そうだね」
そういうのが精一杯だった。
つづく
ユウジロウはそのまま仕事に行った。
家を出る前、ユウジロウは
「最期ぐらいせめてな…」
と言った。アカネは分かりきったようにうなずいた。
アカネは強めの酒を小さいグラスで一気に煽った。
酒には強いほうではない。一瞬むせて、吐き出しそうに
なりながら、何とか飲み込んだ。
待ち合わせの時間通りに、男はやってきた。
よれよれのスーツに小太りの身体を包んでいる。
つづく
「あの、山形アカネさんのお宅はこちらで…?」
「えぇ。入ってください。鍵は開いています」
男は家に入ってきた。アカネが出迎える。
「はじめまして…」
「あ、いや、どうも…」
緊張した様子で男は玄関でもたついている。
「申し訳ありませんが先にお金を頂きます」
慌てた様子で男は札束を出した。大した厚さではない。
つづく
受け取ったアカネは彼を寝室に通した。
「お約束の品はここにあります」
何か小さい、巾着袋のようなものをアカネは指先で振って見せた。
男はうつろな目でその揺れを追うように眼球を動かした。
「どんなプレイを望まれますか?」
「普通で結構です」
「最期ですよ」
「…はい」
そのまま二人はベッドに入った。
つづく
キスをして、愛撫をし、乳首をしゃぶって、陰部に舌を這わせる。
言うとおり、ごく普通だ。
しかしアカネは少し大袈裟に喘いだ。
アカネも彼の身体に触れ、ペニスを口に含んだ。
「いいんですか?」
問いかける男にアカネは無言で頷く。
「…好きにして下さい…。思うままに…」
目に涙を溜めて男は腰を振った。
つづく
やや醜い男の顔が更に醜く歪む。
枕の両端を強くつかんで、アカネは快感に喘いだ。
荒っぽい。不慣れなのだ。
膣の中を好きなようにかき乱され、奥深くに精液を注ぎ込まれた。
「す…すいません…」
「いえ…妊娠しないように、クスリを飲んでますから…」
ぐったりとしている男に、アカネが尋ねた。
「御満足頂けましたか…?御不満なら何度でも…」
つづく
やや考えた様子だったが、男は答えた。
「いえ、もう、結構です…。ありがとうございました」
「礼には及びません」
「あの…」
「はい?」
「少し、外を歩きたいんですが、付き合ってもらえませんか?」
笑顔でアカネは応えた。
つづく
歳の差は三十近い。仲のいい親子にでも見えるだろう。
川沿いの道を歩く。
アカネは何も聞かない。男はぽつりぽつりと喋った。
「妻にも逃げられましてね…」
「そうですか…。大変だったんですね…」
自分の一生を男は語った。大袈裟に聞くわけでもなく、アカネは
静かに黙って聞いていた。相槌だけは打つ。
「あはは…喋りすぎですかね?」
「そんなことないですよ」
つづく
秋の夕焼けの中を、二人の影が伸びていった。
川沿いの道は遊歩道になっていて、所々にベンチや
休憩所が設けられていた。
「少し座りましょうか?」
アカネが促すと、男は従った。
「ここは、いい所ですね」
「あたしもこの町が好きです」
「そうですか…。私は都会暮らしが多くて…こんなきれいな川、
何年ぶりに見たかな」
つづく
今度は川にまつわる思い出話が始まった。優しくアカネは
聞いた。
つるべ落としに日は暮れて、そろそろ暗くなってきた。
「じゃあそろそろ…。色々聞いてもらっちゃって…」
「いいえ。楽しいお話でした」
照れるように男は頭をかいた。
ポケットからアカネは小さい巾着袋を出した。いつの間に
買ったのか、缶コーヒーも手にしている。
「…あの、ちょっと聞いていいですか?」
つづく
黙って頷いた。
「私より、不幸な人はいましたかね?」
「人の辛さは人それぞれです。比べられません」
「そうですか。そうですよね」
納得すると男はタバコを出して一服つけた。
タバコ嫌いのアカネだが、何も言わずにいた。
コーヒーのプルタブを開け、小さい巾着袋から、
オブラートで包んだ粉薬をアカネは男に差し出した。
タバコを足で揉み消すと、男はそれらを受け取った。
つづく
「本当に…何も?」
「少し苦しいかもしれないけど」
コーヒーを一口含むと、しばらく何事か考えて、
オブラートを口に入れ一気に飲み込んだ。
目はじっとアカネを見ていた。アカネは笑っていた。
やがて目に力がなくなり、ベンチから転げそうになった男を
支え、座り直らせると、アカネは去っていった。
部活も今日はなく、家路を急ぐユウジロウは、見覚えのない
男と帰り道で出会った。
つづく
男は笑顔で、帽子を軽く上げて、挨拶するような仕草を
見せた。
とりあえずユウジロウも頭を下げた。
男が言う。
「どうも。ちょうど今、妹さんにお世話になって…」
「あぁ、そうですか。それはどうも」
軽く挨拶をすると、男は今ユウジロウが歩いてきた方向に歩んで行った。
振り返ると、もうその男はいなくなっていた。
つづく
「ただいまー」
ユウジロウが家に着くと、笑顔のアカネが出迎えた。
何となく、無理のある笑顔だな、とユウジロウは思った。
そういえば今日は仕事の日だったな…。
「今日ゴハン何もないんだ。外で食べよ!」
いつもそうだ。『その仕事』を済ませた日のアカネはヤケに
明るく振舞うのだ。
そういう日はユウジロウは彼女に合わせるようにしていた。
「よし!今日はハンバーグだっ!」
アカネを『タカイタカイ』すると、少し腰にきた。
終
なんて優しい話や…
作者さん乙です。
アカネはこんな辛い仕事もしていたのですね…。
少し悲しく切ないお話でした。
ところで関東のお盆は七月頃なのでしょうか?
私の地元(北海道です)は今時期がお盆で、今日お墓参りに行ってきました。
という事でお盆、もしくはお墓参りのネタというのはいかがでしょうか?
作中では夏休みが明けてしまっているので厳しいかもしれませんが(^^;
お墓参りに行ってなんとなく思いついただけですので、
使えなそうでしたら気にしないでくださいね(^^;
ハンバーグ食いたくなったwww
>>486 >作中では夏休みが明けてしまっているので厳しいかもしれませんが(^^;
秋ならお彼岸があるじゃないか!
>>486 お盆にさかのぼることはできるんです。で、『山形家』には宗家と分家が
あり、お盆という行事を通して、色々とイザコザがあるという話は随分前に
考えたんですよね。
ところが馬鹿をやってしまった。第三十一夜 『陰の験』 で、一月、
ユウジロウがほとんど眠りっぱなしという話を書いてしまった。(このせいで
現実の時間と作中の時間の間に差が出来てしまった)
だから、お盆の時期、ユウジロウはバリバリに寝てるわけですよ。(笑)
墓参りなんて行ける状態じゃない。それに、その『宗家と分家の争い』の話
は単にそういう話で、オカルト分、エロ分がゼロなんですね。ほとんど。あ、
エロはあるかな。もう余り書く気がないのでネタバレしちゃえば、宗家と分家
統一の為に、宗家の主人がアカネを嫁によこせと迫る話です。それによって
山形家を今一度一つにしようという。
だからやっぱりできるとすると『お彼岸』ですよねぇ…。どうしたものかな。
オカルト部が肝試しに墓に行くっていうのはちょっと違いますよね。何となく。
お彼岸にワーワーキャーキャーやるのも何となくおふざけが過ぎる気がする
し。もう少し情緒のある話しにしたいなぁ…もう一時間以上考えてるんですけど
なかなかでないもんですね…。
さて、ここらで怖い話でもするか。
アカネがまだ、小学校にも通っていない頃の話である。
暑い盆中日である。
つづく
将軍家に関わっていたというだけあって、山形家の墓は立派なものだった。
お盆には、宗家と分家が集まり、祖先の霊を祭る慣わしになっていた。
しかし世も移り変わり、宗家との縁を切り、住む所すら分からなくなった
分家もある。
今となっては盆に集まる分家は、山形ツネコらだけとなった。父もおらず、
ツネコとユウジロウ、幼いアカネのわずか三人だけだ。
山形家二代目マサノスケは、晩年まで子をもうけることができずにいた。
しかも何とか妻に産ませた子は女児であった。女児では『将軍家御付艶
事指南役』を継がせることはさすがにできない。(第 X 夜 参照)
やむなく養子を取り、『手込めの技(テゴメノギ)』と『艶技(エンギ)』を
仕込み、何とか『将軍家御付艶事指南役』の大役を継がせたのだ。
つづく
本来であれば、山形家の血を継ぐ者は二代目マサノスケ直接の
子、キヌである。
しかし、『将軍家御付艶事指南役』の要職を継いだのは養子の
センエモンだった。
そこから山形家のネジレが始まる。
本家であるはずの三代目キヌから、宗家の名をセンエモンが
奪い取ったのである。
時は経ち、現在に至るも、宗家はマサノスケの養子、センエモン
の家系となっている。
ちなみに、山形ツネコやユウジロウ、アカネは、本来宗家であった
はずのキヌ直系の血族だった。
つづく
更に宗家にとって気に入らないのは、『陰行流艶術(インギョウリュウエンジュツ)』、
『陰行流艶遁術(インギョウリュウエントンジュツ)』、つまりは『お留め(オトメ)』
の存在である。
これらは、三代目にして、『分家』として扱われている三代目、キヌが開発、
途上させた技術だ。
またもここでネジレが生じる。
『本家』センエモンの家系よりも、『分家』キヌの家系が、『技術的に上』になって
しまったのだ。
本家筋は何とか『陰行流艶術』、『陰行流艶遁術』の技術を奪おうとしたが、
血筋からすれば本家であるべきキヌは、半ば意地になってそれを阻止した。
つづく
結局、本家には『手込めの技(テゴメノギ)』と『艶技(エンギ)』
という完全とは言えない技術だけが伝わり、現在に至る。
分家には『陰行流艶術』、『陰行流艶遁術』が伝わり、現在に
至るも研究熱心な子孫によって発展が続いている。
このネジレが宗家と分家の争いを激化させ、特に、徳川の時代が
終焉を遂げると共に分家筋はその面倒な親戚付き合いから次々
と宗家から離れ、消えていった。
格闘技や武術ならともかく、セックスに用いる技術を継ぐというのも、
社会的道徳が重視されるにつれタブー視され、その蔑視から逃れる
為、家督を捨てた者も多かった。
つづく
そして結局残ったのが、二つの山形家である。
実際ツネコにはどうでもいいことであった。しかし、
本家には将軍家に仕えていたというプライドが未だに
残っていた。
ユウジロウは既に大人であったから、その事情がよく
分かっていたが、幼いアカネにもそのギスギスとした
空気はよくわかり、正月や盆といったイベントは、好きでは
なかった。
今朝も宗家に出かけるにあたり、墓参りと知った彼女は
泣き喚いた程である。
墓に参る前に一度本家に立ち寄り、挨拶を交わすのだが
その際にも何も言わず黙っていた。
つづく
本家は父、ソウタロウを筆頭に、妻ヨウコ、
息子に、高三のムネユキ、中二のシゲトモ、中一のノブヨシの、
男ばかりの三兄弟だ。
ソウタロウ考えの古い先代に育てられたせいか、は今だ
『山形家統一』を狙っており、アカネに目をつけていた。
アカネといずれかの息子をくっつけようという腹だ。
血筋は違えど宗家は宗家、『手込めの技』と『艶技』を受け継ぎ、
両親、三兄弟もいずれも変態揃いだ。
もっとも変態という意味でユウジロウにかなう者はいない。宗家と
言えど所詮その程度だ。いや、ユウジロウが特別、と言うべきか。
つづく
本家で軽く挨拶を交わした後、マイクロバスで両家ともに
墓へ向かい、墓参りを済ませた後、僧侶を呼び読経して頂く。
まだ幼稚園に通っているアカネに好色な視線を送る者が
あった。本家次男のシゲトモだ。彼はロリコンだった。
既に何人か犯している。本家は本家で、未だにやんごとなき
人々とつながりだけはもっており、相当なことでなければ、
簡単に揉み消すことが出来た。
ユウジロウはその視線を感じて、常にアカネを側に置く。
まだ幼すぎるアカネは、まだ『お留め』など習得していない。
向こうがその気になれば簡単に犯すことができる。
『手込めの技』の中には、『いかに短時間で犯すか』、という
技術も存在するので目を離すことはできない。
つづく
真上から打ち下ろす、厳しい日の光の中で、
墓に参り、線香を上げ、水をやり、心静かに
手を合わす。
静かな黙祷の中、アカネは見た。墓の向こうに、
テレビで観た者が立っていた。
男のくせにスカートのようなものを履いて、妙な
髪型をしている。腰に差しているものは刀だ。
アカネにはそれが見えた。大人が見たら一言で、
『侍』、『武士』と表現するだろう。
アカネは一人とことこと、その男の元に向かった。
羽織袴。胸にあるマークが墓に彫られているマークと
同じだとアカネは思った。
つづく
「あ、それ、一緒だよー」
優しそうに微笑む『侍』は何事かとアカネを見た。
「一緒一緒ぉ」
胸にある家紋を指差していると知った『侍』は、それと、
墓に彫られていた家紋が『一緒』だと言っているのだと
気付いた。
「おぉ、これか。これはな、『山形家』の家紋だ」
「名前も一緒ぉ」
「あはは。そうだそうだ。名も、一緒だ」
つづく
「あたしは山形アカネだよ」
「それがしは、山形トモノスケと申す」
「もうすもうす」
「つまらんだろう?退屈ではないか?」
「ん?」
「まだ分からぬか…」
ほとんど会話は通じなかった。しかし、トモノスケは小さい石を
拾っては投げてよこしたり、肩車をしてくたれたりと色々とアカネ
と遊んでやった。アカネは、辛気臭い墓参りより、よっぽど楽しい
とトモノスケと遊んだ。
つづく
二人手をつないで、広い墓地を歩く。暑いのは
辛いだろうと、トモノスケはわざわざ自分が日よけ
になって歩いた。無論、その気遣いをアカネは知らない。
墓地の端にまだ造成されていない土地があった。今後
墓が増えた際に利用する用地なのだろう。
「おじちゃん、これで人を殺す?」
刀を触りながらアカネが言う。
「うむ。しかし、それがしは、まだ人を殺めたことはない。
血生臭いことは嫌いだ」
言っていることの意味は分からないが、トモノスケがニコニコと
笑っているので多分そういうことはしない人だと受け取った。
つづく
「少し、離れていなさい」
砂利だけが敷かれたちょっとした広場の端にアカネが
立つと、それを見届けたトモノスケは刀を抜き、上段に
構えると気合一閃、刀を振り下ろし、そのまま横へ刀を
払ったが、刀の重みに振り回され、自分が回転し、砂利
の地面に惨めに倒れこんだ。
「…いかんいかん…」
「あはは!」
アカネは笑った。
「これでは、人は斬れんなぁ…」
つづく
なんとかライブの波に乗れたーヽ(゜▽、゜)ノ
ワクテカわっしょーい
恥ずかしそうに砂利の地面に座り、不器用に刀を鞘に
納めたトモノスケの元にアカネは駆け寄ると、肩を貸して
立たせてやり、袴の尻についた土埃を払ってやった。
「いや、かたじけない。大丈夫だ」
「ぐるんって回ったよ」
先ほどのトモノスケの動作を真似て見せる。
「あはは。面白い子だ!」
ひとしきり笑うと、アカネの顔をじっと見つめてトモノスケは言った。
「優しい御子じゃの。アカネと申したか?」
つづく
「アカネー」
「そうか…。そちに伝えてもらおう」
「ん?」
「トモノスケが分骨をしろと言っていたと。分かるか?」
アカネはかなり難しそうな顔をしていた。
「トモノスケが分骨をしろといっていた。トモノスケが…」
何度もトモノスケは繰り返した。
つづく
「トモノスケ…ガ…ブンコツ…」
「そうだそうだ。トモノスケが分骨しろと言っていた!」
「トモノスケガブンコツシロって言ってた!」
「ん!いい子だ!分かるか?覚えられるか?」
「トモノスケガブンコツシロって言ってた!」
何度も練習していると、アカネを呼ぶ声が聞こえた。
ツネコの声だ。他にもいる。
「あ、あなんところに!」
見つけてくれたのは宗家の妻ヨウコだった。そちらに
目をやって振り返ると、侍の姿はなかった。
アカネは急いで、自分を探しているらしい、ツネコらの
もとに走った。
つづく
ツネコに肩を揺さぶられ、叱られる。
「ダメでしょ!勝手に離れ…」
しかしそんなことよりアカネには記憶していることを吐き出すことが
重要だった。
「トモノスケガブンコツシロって言ってた!!」
覚えている限り。何度でも繰り返した。突然ワケの分からないことを
言い出したアカネであったが言っている意味はわかった。分骨。
墓を分けろという意味だろうがとても幼稚園の子が言う言葉ではない。
つづく
ましてやトモノスケの名を出している。山形トモノスケ。九代目宗家で
ある。トモノスケでは山形家の中でももっとも人格者とされ、一応
『手込めの技』を技術として継承しながらも決してあってはならない
『禁忌の技』とした人物だ。
その人格から数多くの女に愛され、たくさんの子をつくり、数多くの分家
を生み出す原因を作った人物ともされる。
山形家で唯一、血筋上の本家である三代目キヌの家系に対し損得勘定
一切なしの歩み寄りを見せた人物でもあることが記録に残っている。
また『将軍家御付艶事指南役』の役職を捨てる覚悟で、山形家の血筋
からいえば自分たちは分家で本来、本家はキヌの家系であることを公言
したという伝説も残っている。
その偉大な人物の名をなぜこのアカネが知っているのか。
つづく
宗家代表ソウタロウと、分家代表ツネコの間で話し合いが
持たれ、結局、アカネの発言は直接先祖であるトモノスケ
の発言と同意であるとされ、分骨は果たされた。
本家の立派な墓に比べればみすぼらしい墓ではあったが、
ツネコの家の近所の霊園に、もう一つの山形家代々の墓
が立てられた。無論トモノスケもそこに眠っている。
以来、宗家と分家は縁遠くなり、宗家ソウタロウの、息子の
嫁にアカネをもらうという計画も頓挫した。
もう十年以上、宗家の話は聞かない。まさか没落したなどと
いうことはないだろうが、ツネコも余計なことを考えず、愛した
岩手ノリオの思い出とともに平和に暮らすことができるように
なった。
全ては丸く収まったのである。
つづく
たまに時代劇を何となく見ていて、たまに
アカネが吹き出すことがある。
少し間の抜けた侍の姿を見たときである。
今でもあの暑い夏の日、刀に振り回されて
砂利に転んだトモノスケの姿を思い出すこと
があるのだ。
しかし覚えているのはたったそれだけ。転んだ
トモノスケの姿だけだった。
顔すら思い出せないのが少し寂しかった。
終
>>486 すいません。結局『墓参り』からは程遠い話になってしまって…。
エロも一切ありませんがこんなものでいかがでしょうか?
御不満だったら申し訳ないです。
アイデア頂けて嬉しかったです。また何かあったらよろしくお願いします!
513 :
486:2006/08/16(水) 11:34:27 ID:d4PUg8LVO
作者さん乙です!
ネタ採用ありがとうございました!嬉しいです!
山形家の血筋も更に明らかとなり、興味深く読ませて頂きました。
アカネの幼い頃の爽やかで心温まる思い出がとても素敵です^^
昨夜は親戚が集まり酒盛りが始まってしまったため、今お話を読み終えました(^^;
ネタ振りしておきながら感想が遅くなってしまい、スイマセンでしたm(_ _;)m
またネタを思いついたら書き込んでみますね^^
作者さん、本当にありがとうございました!^^
>>513 喜んで頂けたようで嬉しいです。感想ありがとうございます。
>>まとめ人 さま
いつもお世話になっています。まとめサイトの管理お疲れ様です。今回、
本家筋ということでうじゃうじゃ新しいキャラクターが出てきますが、まとめ
サイトの『登場人物一覧』には掲載しなくても結構です。多分もう二度と出てくる
こともないと思いますし。いつも御面倒おかけして申し訳ないです。
さて、ここらで変な話でもするか
風俗街には余りに不釣合いな男女だった。
つづく
初老のスーツの男に、同年輩の女。
着飾るわけでもなく、みすぼらしいわけでもない。
奇妙なことに二人で風俗店に入って行っては、しばらくすると
追い出されるように出てくる。
彼らは店に入っては聞いて回っているのだ。
「セックスの上手い男はいないか」
と。
追い出されて当然である。仮にいたとしても風俗店、客の男の住所
どころか名前すら知るはずもない。
つづく
何日か経つと、二人の姿は、新宿の雑居ビルにあった。
『エメラルド企画』 スチール製のドアにはそうあった。
そこはアダルトビデオの製作会社だった。
やはり二人の質問は同じ。
「セックスの上手い男はいないか?」
そこである名前を聞いた。ホーク有吉。日本で最も稼ぐと
言われているAV男優だった。
何とか彼に連絡は付かないかと懇願し、食い下がって、
ようやく彼への連絡が叶った。
つづく
事情を説明すると、ホーク有吉は『直接会う』と言う。
東京、五反田の喫茶店で彼と会った。
風貌からすると、暴力団紛いの男で、一見不安を覚えたが、
彼は意外と紳士だった。
話を聞き、二人に同情した。
しかし、願いが叶うことはなかった。
「…残念ですが、お話を聞く限り、私にはできません…」
ホーク有吉こと、有吉健二はそういって頭を深く下げた。
つづく
「どなたか、お心当たりはありませんか?」
二人は夫婦だった。妻の方が申し訳なさそうにしている有吉に
聞いた。
有吉はしばらく考えていた。仕事の仲間、今までにあった人物。
色々な人物を思い出したが適合する人物はなかなか思い当たらなかった。
しかし、色々と思い出しているとあるところで引っかかった。
「山形…」
聞き逃した初老の夫婦は聞き返した。
「なんと仰られましたか?」
つづく
もう既にAV業界ではベテラン。半ば引退している有吉であったが、
まだ若い頃、聞いた名があった。
その名は東京中、いや日本中の繁華街、風俗街で聞かれる名だった。
懐かしい。もう二十年は経つだろうか。
「山形…さんと言ったかな…」
「山形さん…」
「はい…」
かすかに残っている記憶のカスを削り取るようにポツリポツリと有吉は
初老の夫婦に『伝説の男』についての話を聞かせた。
特に美形というわけでもなく、洒落ているわけでもなく、話術に優れている
というわけでもなく、しかし次々に女を虜にするという男の伝説を。
つづく
初老の夫婦はその情報に期待した。しかし、有吉の口からは
『山形』という苗字以外に、具体的な情報は出てこなかった。
「私も名前を聞いただけで…実在する人物かどうか…」
最後はさすがの有吉も自信なさげだった。
三人は無言となり、夫婦を憐れに思った有吉は、彼が街で
遊んでいた当時、二十年前、繁華街で幅を効かせていた
顔役が現在住んでいる場所を教えた。
今では貸しビル業で成功しているという。
「お力になれなくて…」
これが日本のAV男優のトップかと思うほど申し訳なさそうな
顔をして、有吉は彼らを見送った。
つづく
今は、貸ビル業で財を成しているという男のもとへ、
夫婦は向かった。
門前払いを食うところだったが、『有吉の紹介で来た』と
いうとなんとか門を開けてもらうことができた。
さすが、当時の繁華街の顔役というだけあって、半ば暴力団の
親分という風体である。
趣味の悪いスーツに、怪訝そうな顔が乗っていた。
「で、何の用ですか?」
「有吉さんから伺ったのですが、二十年ほど前に街にいたという、
山形という方を探しているのですが…」
瞬間、恐れをなしたように男の顔が変わった。
つづく
「山形!」
「はい」
「ユ…ユウジロウ…山形…ユウジロウか…」
驚いた顔をしていた。態度が変わる。まさか二十年経って、
その名を聞くことになるとは思ってもいなかったと彼は語る。
彼の話す山形ユウジロウの話は凄まじいものだった。まさに
伝説。とてもではないが信じ難い話の数々だった。
彼は親切にも何軒かに電話し、山形ユウジロウの現在の
連絡先を教えてくれた。
ただし、『自分から聞いた』ということはユウジロウには決して
明かさないことを条件とした。
つづく
やっとたどりついた。ついにここまできた。
この間にも娘の容態は悪くなる一方だった。
確かに表札には『山形ユウジロウ』とある。
しかし彼が活躍したのは二十年も昔のこと。
現在どれほどのものか。期待は薄かった。
名を出しただけで、暴力団紛いの顔役の顔色が変わるほど
だ。どれほどの人物かと思ったが出迎えてくれたのは、まだ
若い娘だった。綺麗な顔立ちをしている。
事の仔細を話すと、彼女は夫婦を家に上げた。
話を聞けばその『山形ユウジロウ』という男、教師をしていると言う。
つづく
やはり伝説は伝説。既に教職に落ち着いてしまって、
願いは叶うまいと落胆の空気が流れること、その男は
現れた。
顔も良くない。見た目からも中年と分かる。どちらかと
いえばだらしのないタイプだ。
やはり伝説は伝説。夫婦は気落ちした。
しかしこのまま帰るわけにもいかない。事情だけ話す
ことにした。だが、全く期待はしなかった。
話の内容からすれば、とんでもない話だった。ユウジロウ
すら、一瞬戸惑った。
つづく
夫婦には二十歳になる娘がいた。が、もう死ぬとほぼ
決定していた。心臓に爆弾を抱え、大きな脈拍の変化、
血圧の変化だけでも下手をすれば死んでしまうという
のだ。
痩せ衰え、体力もない。自分で呼吸し、心臓を動かすの
がやっとの状態の娘と、セックスをしてほしいというのだ。
つまりは、興奮しただけで死んでしまう人間と、セックス
しろ、という話だった。
前代未聞である。どうセックスしろというのか。
しかし、もう余命幾ばくもない彼女の最後の希望なのだと言う。
つづく
「誰でもいいというが、娘さんにも好みのタイプというのが
あるでしょう。私は見ての通りの中年で…」
「もう、目も見えていないのです…やっと耳が聞こえている
程度で…」
聞けば聞くほど惨めな状態である。小説やドラマで、性描写
を見るうちに、それに憧れ、どうせ死ぬなら、その悦びを味わいたい
と彼女は訴えたのだと言う。
恥も外聞もないのだろう。とにかく余命少ない自分なりに『やりたいこと』
と『できること』を計算した結果だ。あれもしたい、これもしたい、でも、
あれも無理、これも無理、で最後に残った一つの希望。それがセックス
だった。
ユウジロウは、一度、容態を見たいと言い、翌土曜日、彼女の病院へ
向かった。
つづく
もう若いのか年老いているのか、分からない状態だった。
手足は極限まで細くなり、関節の部分だけがぼっこりと膨らんでいる
状態。目は開いているがもう何も見えず、苦しそうにはあはあと呼吸
だけしている。
「お兄ちゃん…」
現状を見たアカネは『これは無理だ』と兄の袖を引っ張った。
しかしユウジロウはそれを優しく制した。
その娘は自立呼吸ができ、心臓も動いている。ならば、色々とごちゃごちゃ
ついている機械を全て外すよう指示した。更に病室には二人きり、医師の
一人すら立ち合わせないことも条件だった。
つづく
「しかし君…」
「…この娘は今日処女を捨てるんだ。その瞬間を誰かに見られたいと
思うと思うか?あんたは自分のセックスを人に覗かせる趣味でもあるのか!?」
「彼女が死んだら裁判でも何でも起こすがいいさ。処女とやれて刑務所
行きなら本望だっ!」
既に全裸。しかし誰も不自然に思わないところがユウジロウの肉体から
ほとばしる説得力だった。
看護婦が彼女につながっている様々なケーブルを外す。
準備は整った。
「いいか、血圧、脈拍、呼吸、どれも急激に上昇させれば彼女は、死ぬ」
「…」
「そしてセックスとは、そのいずれもが急上昇する行為だ」
「…」
つづく
若い医師の言葉聞いてか聞かずかユウジロウは病室に入り扉を
閉めた。
覗くことは許されない。壁一枚向こうでは死を賭した交わりが
行われている。念の為救護班が編成された。
時間だけが経っていく。
一時間をかけ、ユウジロウは結合に成功していた。ゆったりとした
快楽が彼女を支配している。薄く涙を浮かべながら彼女は言った。
『いかせて…』
声にはなっていなかった。しかし確かに聞いた。このまま絶頂まで
持って行けと言うのか!初めてのセックスで!
つづく
挿入までの脈拍や血圧は支配できても絶頂時のそれまでは
責任が持てない。
ユウジロウは迷った。このまま彼女をイカせるべきか。
皮肉なことに、イケぱ生きず、イカねば生きる。しかし現時点で
セックスは続いている。考えている暇はない。
すぐに決断を下し、実行する必要があった。『陰行流艶術』の
全てを頭の中に浮かべてみても解決する術はない。
あとはユウジロウの勘と実力に委ねられた。
この後ユウジロウがどうしたか、敢えてここでは書くまい。
彼の真の実力を知る者ならば全てが分かるはずだ。
ユウジロウはその通りにした。
そして彼女は今も生きている。
ユウジロウの肉体はその後病院で十八時間、眠り続けなければ
ならないほど憔悴しきっていた。
終
オカルト分なくて本当申し訳ない…。
。・゚・(つД`)・゚・。セツナス
それにしても、ユウジロウの名はそんなところでまで語り継がれているのですねw
>>既に全裸。
バロスwww
535 :
本当にあった怖い名無し:2006/08/17(木) 14:57:08 ID:6vWmNiCn0
さてここらで怖い話でもするか。
2−A教室。放課後。オカルト同好会が開かれていた。
つづく
全く統率する気のない顧問のせいか、相変わらず
単なる集まりと化している。
そもそもやることがないのだ。
禁止されている菓子類やら飲み物を持ち込み、
それらをつまみながらオカルトの関係あるなしに
関わらず談笑する四名の女子。
全開にし窓際とは言え、やはり禁止されている教室
での喫煙を平気でする顧問。
何が楽しいのか一人教室の片隅でぼうと外を見ている
男子。
つづく
月水金が活動日となっていたが何をするわけでもない。
だが何故か出席率だけは高い。それぞれ一様に居心地は
いいのだ。
紫煙を窓の外の虚空に吐き出している顧問、山形ユウジロウ
のそばに、唯一の男子会員、霧原トオルがやってきた。
近づいた来た彼にユウジロウは気付いていたが何も言わなかった。
やがて、トオルの方から声をかけてきた。
「先生」
「ん〜」
「この、『手』のことなんですけど…」
つづく
((( つ・ω・)つお菓子と飲み物・・・
『手』とトオルが言えば即ち超能力のことである。彼は
触れた人の思考や記憶を読み取ることができた。
「『手』がどうかしたのか?」
「意外と不便なんですよね」
「へぇ…便利そうだけどね…」
まったりとした空気が流れている。携帯灰皿に吸殻を
詰め込んで、トオルの方に向き直る。
トオルはじっと手を見ていた。
「どう不便なんだ?」
「考えてることがわかるんだ」
「そりゃ知ってる」
つづく
余り彼の能力について詳しく聞いたことはなかった。
彼が語ろうとしなかったからだ。
しかし今日の彼は饒舌だった。聞けば、まず第一に、
一瞬触れただけで全てが読み取れるわけではないと
彼は言う。
「一瞬触れた時はその人がその瞬間一番強く考えてることが分かる」
「なるほど」
更に触れ続ければ次第に他の思考や記憶まで見えてくる。しかし
そんなに長い時間人と触れるケースなど余りないだろう。
「それで?」
つづく
何だかしどろもどろではっきり言わない。
というよりトオル自身もよく分かっていないらしいのだ。
とにかく言いたいことは、思考が嘘をつく場合もある、
ということらしい。
「思考が嘘をつくってのは?」
「例えば…思い込みとか」
何となく、ユウジロウには分かった気がした。
「今の俺を、読んでみろ」
そっと手を出す。トオルが触れた。
そこに見えたイメージは、妹アカネを惨殺するユウジロウの姿
だった。
慌てて手を離すと驚いた顔でまじまじとユウジロウの顔を覗き
込む。
「…まさか…」
「冗談だよ。冗談。そういうことが言いたいんだろ?」
わざとユウジロウはアカネを殺す自分のイメージを思い浮かべた
のだ。事実ではない。あくまで想像だった。
つづく
「あぁ…なんだ…そうか…そう。そんな感じ」
「読んだ結果が全て事実とは限らない」
「うんうん」
「人は自分にも嘘をつくからなぁ…」
またラッキーストライクを一本咥えると、火をつけ
美味そうに煙を吸い込んだ。
「この能力で読み取ったことは全て本当のことだと思ってた」
「時間をかければ嘘か本当か分かるんじゃないか?」
「時間をかければね」
つづく
「一瞬で分かればいいのにな…」
何となく、トオルの言わんとしていることがユウジロウには
分からなかった。時間をかければ分かるのであれば時間
をかければよいではないか。
「一瞬で分かる必要があるのか?」
「たまに」
「どんな時?」
と、なんの話をしているのかと興味を持った女子が集まってきた。
途端にトオルは口をつぐんだ。
「何の話ですか?」
つづく
トオルの様子を見ると目を伏せて、何か誤魔化している
ような態度だ。ユウジロウも合わせた。
「いやなんでもないよ。女子は楽しそうでいいなって話」
「全然来ませんもんね。男子」
そう。一応男子はトオル以外に二名が在籍していることに
なっている。名簿上は。幽霊部員なのだ。もう来ることも
ないだろう。
無理に引っ張ってくることもできるがその必要もないだろうと
ユウジロウは考えていた。
つづく
「今日はそろそろ解散しようか?」
五時。何かするなら別だが何もしないのなら適当な
時間だろう。
賑やかに女子が帰っていくと、教室には男二人が残った。
「なんか話あるなら聞くぞ?」
「なんでも。それじゃ。さよなら」
バッグを担ぐとトオルも帰っていった。
何となく中途半端な空気だ。
つづく
自宅にたどりついたユウジロウをアカネが迎えた。
と思ったらアカネの髪が急激に伸びていた。確か肩ぐらい
だった髪の毛が背中の真ん中程度まで伸びている。
「おいアカネ!呪われたのか!?」
「ん?」
「髪が伸びてるぞ!」
「あーエクステエクステ」
「えくすてえくすて?」
「エクステ」
「えくすて」
「そう」
「だから何だと言うのだ。髪が伸びているぞと言っている」
「だからエクステだってば」
つづく
「誰それ?」
「あー知らないの?付け毛だよ。付け毛」
「付け毛?」
「中学校の先生なのに知らないの?女の子とかそういう話
してない?」
「さぁ?」
「今はね、付け毛で簡単に髪長くできるんだよ」
「へー」
「ところでさ、今日の話って変じゃない?」
つづく
「今日の話?」
「うん。同好会かと思ったら何事もなく帰ってきちゃって、
エクステの話とか。なんか変だよね?」
「うん…」
「お兄ちゃんなんか知ってるんでしょ?」
「作者が大ピンチだということは痛いほど分かる」
「分かるよね。ネタもないのに眠いもんだから無理に始めちゃって」
「どうまとめようか完全にテンパってる」
「一日ぐらい休めばいいのに…」
つづく
「とにかく意地でも百話まで持って行きたいらしいよ」
「まだ半分以上あるね…」
「苦しいところだ…ところで、腹が減った」
「うん。作ってあるよ」
豆腐以外完全手作りの麻婆豆腐だった。アカネの得意料理の
一つだ。ユウジロウの好みに合わせて少し辛めにしてある。
とりあえずビールを煽ると、早速パクつきはじめる。
「今日は何かあった?」
「トオルっていただろ?」
つづく
「あの子その後平気?刺しちゃったからな…
悪いことした…」
「キズはもう大丈夫らしいんだけど…」
「他に?」
「うん。ほら触ったら人が分かるって能力」
「あーうんうん」
作者の大ピンチに構わず辛い麻婆豆腐を二人で食べるたちまち
暑くなり、冷房を強めた。彼岸が近いとは言え、まだ蒸し暑さは
残っていた。
「その人の心を全部読むには時間がかかるらしいんだ。それを
一瞬で読めたらいいのにって悩んでたよ」
つづく
「…へー…」
「どういうことだと思う?」
「ちょっと触っただけじゃだめなんだ?」
「それだけじゃその人がその時一番強く考えてることぐらいしか
分からないんだと」
「あー」
「絵と同じだろ。モナリザなんか一瞬だけ見たら、『女の人』としか
言えないけど、時間をかけて見れば背景とか、色々と見えてくる」
「なるほどね」
つづく
「しかしそれが何で一瞬で全てが見たいなんて
言い出すんだか…」
癖でラッキーストライクを出したが、アカネに掃われた。
「禁煙」
「ごめん」
「作者頑張れ」
「何今の?」
「一応言ってみた。相当苦しいみたいだから」
「まぁ奴なら何とかするさ…」
つづく
「で、何だっけ?」
「トオルの話」
「あー、一瞬で全てを知りたいって…」
「うんうん」
「それってさー。本当は一瞬で全てを知りたい人がいるんだけど、
その人とは一瞬しか触れないから困ってるんだよね?」
しばらくユウジロウは考えた。『本当は一瞬で全てを知りたい人
がいる』 ところが 『その人とは一瞬しか触れられない』 だから
『困る』
「鋭いな…」
つづく
「答えは一つだよ」
空になったユウジロウのグラスにビールを注ぎながら
アカネは言った。ユウジロウも答えが出た。
「恋だ!」
同時に叫んでいた。
「協力してやりたい気もするが…おっさんが頭突っ込む
もんでもないなぁ」
「そうかもね…。あの子ならなんとかするんじゃない?」
「ただ、相手が誰か気になるな…」
つづく
「あたしだったりして」
「それも一理あるから知りたいんだよ…」
グラス一杯のビールを煽る。作者も一杯一杯だ。
「中二ぐらいってのは一番ミサカイがないんだ」
「そうなの?」
「性欲一本でイケるからな。しかも小学生が相手でも
高学年辺りだったら歳が近い分ロリコンとはいえない」
「なるほどね」
「性対象が小五から三十五歳ぐらいになるからな」
つづく
「じゃああたしもバッチリだね」
「バッチリもバッチリだろ。年齢的には完璧だ」
「や〜んあたしだったらどぉしよぅ…」
「何のためらいもなく自分刺した女好きになるかね?」
「わかんないよぉ。一応その後看病したし」
「結構大人ぶった奴だから…福岡先生…いや三年の
三人娘…」
「そんな気になるなら本人に聞いてみたら?」
つづく
「もしも、もしもだぞ?アカネだったらどうする?」
「うぅ…年下はちょっと苦手…。デートするぐらいなら
いいけど…エッチはなぁ…」
「相手中二だぞ?犯罪だよ」
「そか」
「ところで」
「ん?」
「ロングヘア萌え…」
「あー。する?」
「是非」
つづく
アカネの肢体にからまるロングヘア(エクステ)は
魅惑的で、ユウジロウの欲情を促した。
寝不足ながらも存分にアカネの肉体を楽しみ、
その悦楽は二晩に渡った。
次の同好会の頃には、ユウジロウはヘロヘロの
状態だった。腰が痛い。
2−Aで自分の受け持つクラスのホームルームを
終え、しばらく待っていると、オカルト同好会の連中
がわらわらと集まってくる。
大体トオルは最後だった。何をしているのかは知らないが、
『もう来ないのかな』と思った頃にやっと来る。
つづく
呪われたのか!?にワラタwww
と思ったら作者さんピンチw
作者さんがんばれ!www
もの憂げなトオルは正に『美少年』といった感じで、
部屋の片隅にいる。
かったるそうに肩を落として、椅子に座る姿が、わざと
モテようとしてやっているのではないかと思われる程、
絵になる。
確かに、福岡先生にも、職員室で一度、彼の話を振った
ことがあるのだが、彼女をもってして、
「あぁ、あのカッコイイ子?」
と言わしめたトオルだ。
ユウジロウはそっと彼に近づいた。トオルは近づいてくる
ユウジロウを一瞥したが、再び視線を校庭に戻した。
つづく
「霧原…」
「うん?」
「こないだの話だが…」
「こないだ?」
「一瞬で全てが分かればいいのにって」
「あぁ、あの話…」
「解決したのか?」
「全然…」
「好きな子でもできたのか?」
ズバリと突き刺さった質問に冷静なトオルも答えに詰まった。
何も言わない。ただ、視線だけが、少し下がった。
つづく
「…自分の能力なんだから遠慮することはない…。
じっくり確認したらいいんじゃないか?」
トオルの視線がまっすぐユウジロウの目を見た。
「直接言葉で聞くより、楽だろう…。時間はかかっても本当の気持ちが
確かめられるのだから」
「そうかな…?」
「そうだと思うよ」
「じゃあ」
トオルは恥ずかしげに目を伏せると、ユウジロウの手に自分の手を重ねた。
工エエエエェ(゜Д゜;) ェエエエエ工
終
ちょwwwwマジですかwwwwwwww
ほんとに
工エエエエェ(゜Д゜;) ェエエエエ工
ちょwwwwまじですかwwwwwwwwww
ほんとに
工エエエエェ(゜Д゜;) ェエエエエ工
スマソ・・・・・・orz
作者さん乙でした!
もう駄目…限界…ごめんなさい。(笑)
>>まとめサイト さま
これまとめサイトに入れなくていいです(笑)
セルフパロディみたいなもんです。何でしょうこれは(笑)
すいません。本当ネタなくて、いつも、オチだけは考えてるんです。
それすら考えないで始めたらどうなるだろうって…やっぱり無理なんですね(笑)
オチは嫌いじゃないんですけど、トオルがこれじゃいくらなんでも…^^;;
すいません。許して。^^;;
>>539 >>557 おかげで助かりました。本当ありがとう。こんな結果になってしまってごめんです^^;;
作者さん乙ですw
いろんな意味で面白かったですwww
うわぁー今夜の話はリアルタイムで乗りたかったw
まとめて読んでて乗り遅れた・・・
オチにも笑いましたが、作者さんの書く話と住人さん達の
合いの手が絶妙で、私が初めてこのスレに来た人だったら
「何このネ申スレ」
と 呟いたと思いますw
作者さん、皆さん乙です!
まとめサイト全部読みました。そこで一言
「何このネ申スレ」w
作者さん、今後も素晴らしき作品期待してます
そして、まとめサイト管理の方乙です。
携帯からですが皆さんを応援しとります。
アッー!!!(爆笑)
この意外すぎるオチ、自分は好きですよ。
まとめサイトには載せなくていいとの事ですけれど、そんなの勿体無くってしっかり載せてきました。
作者さんが気になるようでしたら、別のカテゴリとして掲載するというのはいかがですか?
でも、中にはこういう話があっていいんじゃないかと思いますよ。
それと
>>514の登場人物一覧の件は了解しました。
お言葉に甘えて、掲載なしとさせていただいてますので…
連日の作品投下、ほんとに乙です。ありがとうございます。
時には休んで下さっても…という気持ちなんですが、
ご自身のテンション維持のためでもあるようですし、せめてネタの投下をさせていただきます。
秋といえば文化祭や体育祭、学校行事がさかんですので、そのへんでひとつお願いしたいです。
夏のネタでもOKでしたら、水泳・プールにちなんだ話とか…海の話と被りそうでしょうか;
今が春だったら、家庭訪問ネタを激しくお願いしたいところでしたw
>>573 まとめ人です。自分にまでお言葉をかけてくださり、本当にありがとうございます。
作者さんとタイトル職人さんあっての自分ですが、あなたのためにもまとめ作業がんばります!
面白かったですよw
オチも考えずに書いたとは思えなかったです。さすが作者さん!
また気が向いたらセルフパロディーの話をお願いします。
まとめサイトにある以上大切な一作品であり、『セルフパロディみたいなものだ』と
発言しましたがこれも撤回します。
夢でもなんでもありません。トオルがユウジロウに触れたのは事実として
このまま続行します。
今夜このまま書きたいのですが、疲れ目で、キーボードの文字が二重に見えますw
一応目薬はもらってあるのでいま、さしましたが、効き目がいまいち分かりません。
効いて来たら今夜投下、効かなかったらごめんなさい、一晩眠って明日夜の投下に
なります。よろしくです。
>>574 まとめサイト さま
>>この意外すぎるオチ、自分は好きですよ。
>>まとめサイトには載せなくていいとの事ですけれど、そんなの勿体無くってしっかり載せてきました
やってくれましたね(笑) 了解しました。そちらの判断にお任せします^^
ネタ投下感謝します。『文化祭』というの行事そのものを忘れていました。それ、いただきです^^
ただその前に解決しなきゃならんことが…(笑)
いつもありがとうございます^^
無理は禁物!ゆっくり休んでくださいな!!!
作者さん、大丈夫?
無理しないでくださいね><
>>578 御心配はありがたいのですが、『無理があるからこそ生まれるモノがある』と
知りました。(前回で(笑))
楽しんで書いてない時が正直あります。肉体的、精神的につらい時が確かに
あります。『とにかく100話』にこだわり過ぎている時も確かにあります。強引に
話数を稼ぐ為だけに書いている時もあります。
2ちゃんねる。それもほとんど名無しに近い状態で、お給料がでるわけでもなく、
何をそんなに意地になるのかと自分でも思いますが、私にとっては乗り越えたい
山なんです。やらせてください。100話まで。読んでくれる人が一人でもいるなら。
作者さんお疲れ様です!
トオル最高wwwww
>>576 そうだよ、作品は大事な自分の子どもみたいなもんだから大事にせにゃ。
しかも、こんなに面白いしw
後で色々思ってしまうだろうけどそれも作者さんやユウジロウの成長過程
みたいなモンとしてとらえたら?
面白いんだから大丈夫!!
次回作よろしく!
さてここらで変な話でもするか。
トオルに手を重ねられ、ユウジロウは固まっていた。
つづく
『陰行流艶術』には、『裏手』という技術が存在する。これは
男色専用、つまりは、ホモ専用の技術だ。技術的に、子々孫々
その全てを後継していかねばならないユウジロウは確かにその
技術をマスターしていた。(第三十八話 『憧憬』 参照)
ただし、それとユウジロウの趣味趣向は別物である。彼に同性愛の
気はない。
カチコチに固まっているとトオルが言った。
「勘違いするなよ!」
「へ?」
つづく
「俺が見たいのは先生じゃない…」
「ん?」
ユウジロウが何を考え思ったか、トオルには手に取る
ように分かった。しかしユウジロウには彼が何を見ているのかは
分からない。
「その…まぁいいや…」
またトオルは目を伏せた。ただ、手を離そうとはしなかった。意味が
分からない。とりあえずキスでもしてやろうかと唇を尖らせたら、
トオルに蹴飛ばされた。
「変態教師!」
つづく
騒ぎを聞きつけ、四人の女子が何事かと注目している。
「だって俺だろ?」
きょとんとしてユウジロウは言う。
「ちげぇよ!そんなワケねぇだろ!」
「照れるな霧原。お…俺が好きなんだろ…?」
四人の女子は目を向いている驚きの事実だ。まさか。
モテるタイプの霧原トオルが同性愛者でしかもよりに
よって相手が山形ユウジロウとは。
これは校内新聞トップニュースレベルの大事件だ。
つづく
見れば二人、手に手を取って愛を育んでいる。
四人、携帯のカメラを向けるのが同時だった。
瞬間トオルは手を離した。
「違ぇってば!」
シャッターチャンスを逃した。四人は一様に残念そうだ。
「霧原くん、もう一回」
「手を取って」
「見つめ合って」
「チュウして」
つづく
「だから違ぇって!」
女の誤解ほど恐ろしいものはない。
思い込みは即ち事実より強い力を持つ。
「愛があれば歳の差なんてねぇ」
「うん。性別だって」
「禁断の愛だね」
「教え子、歳の差、同性愛」
「うっわぁ…究極だね」
「しかも美男子と中年のおっさん」
「しかもブ男」
「スケベ」
つづく
完全に話が一人歩きしている。
トオルがこの現状を打破するには真実を告げるほかなかった。
とりあえず女子が落ち着くのを待って真実を語った。
「山形先生の妹が好きになった」
それが事実だった。確認のしようがないので、ユウジロウの
心の中に何かヒントはないかと探ろうとして彼の手を取ったと
いうのが真実だったらしい。
「先生に妹っていたの?」
「そういえば教育実習で来てたあの可愛い人?」
「あーそういえば山形先生の妹って言ってた!」
「似てなかったよね」
「だって普通に可愛い人だったもん」
つづく
「…一応血がつながっているのだが…」
実の妹が散々『美人』だの『可愛い』だの言われているので
ユウジロウも気になっているらしい。決して口には出せないが
実の父でもあるのだ。
「だって先生はブサイク」
「とっちかというとキモい」
「臭いし」
「おっさん臭い」
「…妹は?」
「美人だった」
「可愛い」
「おしゃれ」
つづく
評価の違いは驚くべきものだった。
「そういえば妹さんってどうなったんだっけ?」
「っつーかその後先生一回死ななかった?」
「あ。死んだ気がする」
「テレビ来たよね」
「そうなの?」
「だって生き返ったんだよ」
「なんか聞いたことある」
「なんか生徒拉致したよね?」
「あーなんかあって気がする」
その辺はユウジロウにとっても黒歴史だ。
思い出して欲しくはない。
つづく
ライブ間に合ったー!⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡(´⌒;;;≡≡≡
疲れ目作者さんガンガレ!(`・ω・´)
適当にうやむやにして、無理矢理トオルの話に戻した。
「そんなことはどうでもいいことだろう」
「そうだ霧原くんの話」
「そうだそうだ」
もうトオルも観念したらしい。あの日(第四十話 『塗炭』 参照)
以来、アカネのことが忘れられないらしいのだ。
「年上好みとはねぇ…」
「大人っぽいもんね。霧原」
「で、どうすんの?」
「告白?」
つづく
女子としてはかなり盛り上がっているようだ。
一方でトオルはすっかり冷めてしまっている。
ユウジロウはハタで見ていた、トオルが可哀想になってきた。
とりあえず話はそこまでということにして、無駄とは思うが女子には
緘口令を敷いて、なんとか返した。
ユウジロウとトオルは二人きりになった。トオルは知っている。ユウジロウ
と接触し心を読んだ。アカネとユウジロウの関係を知っていた。
兄弟にして親子。そして同時に恋人のような関係であること。それは何より
深い関係だった。
つづく
「どうするんだ…?」
一種、ユウジロウとは『恋敵』ということになる。トオルの心中は
複雑だった。ただの変態教師と思っていたユウジロウを『覗く』ことで、
彼へ尊敬の念も感じていたからだ。
様々な大人を『覗いて』きた。しかしいずれも、少年である彼自身と
変わりはなかった。それどころかよっぽど汚れていた。
その点ユウジロウは違う。思うように生き、また思うように生きる為
の力を持ち、他のどんな大人よりも大人に見えた。
確かに変態ではある。しかし周りの大人は両親を含めてこの変態より
も遥かに劣っていた。
つづく
一方で、ユウジロウにも課題はあった。いつかは、いや、
近いうちにアカネを嫁に出さなければならない。しかし、
自分がアカネに依存している部分が大きすぎる。
大事な妹であり、娘だ。誰にもやりたくない。誰にもやりたくないが、
誰にもやらないことが彼女の幸せに通じるとは限らない。
彼女もいつかは恋をするだろう。愛することを知るだろう。
それを容認する余裕が自分にあるか。いや、ない。何だかんだ
理由をつけて、アカネを手元に置いておこうとするだろう。
それではいかんのだ。自分の幸せ、安定ではなく、アカネの幸せ
を考えなければならない。今の自分にはそれができそうにない。
アカネ抜きの生活が考えられない。
つづく
そもそも自分が結婚しなければならないではないか!
もう40だ。適齢期はとっくに過ぎている。
トオルの問題を通して、自分の問題が浮かび上がってくる。
二人、赤いポンコツの軽自動車に乗っていた。
とりあえずブラブラとその辺を流している。
「どうしたもんかね…」
「どうしたもんかな…」
男二人。悩みはそれぞれだが、悩みは深い。
しかも作者は、今夜もオチを考えていなかった。
つづく
「ウチに来るか?」
問いかけるユウジロウの真意は『今夜、告白してみるか?』と
いうものだった。トオルはしばらく考えて、首を横に振った。
今のユウジロウとアカネの関係。そこに付け入ることはできない
と思ったからだ。恐らく自分だけじゃない。誰もできないだろう。
兄は妹の売春行為を認めている。つまりは肉体関係を結んだから
こっちのもの、というわけにはいかない。
もっと深いレベルでアカネとユウジロウはつながっている。
「でも、その関係もどうかと思いますよ…」
「…」
つづく
確かにその通りだった。一度自分たちの関係を見直す必要も
あるな、とユウジロウは思った。
分かっていたのだ。そんなことは。ただ先延ばしにしていただけで。
それをトオルという生徒の一言で痛感した。
「…もし百話までいくとして、アカネが誰かと結婚するって話
はあるんですかね?」
ユウジロウは呟いた。
「誰に聞いてるの?」
トオルは聞いた。
「これ書いてる人」
つづく
しかし、『これ書いてる人』は何も答えない。
ユウジロウは黙ってハンドルを握り返した。
自分とアカネの関係は永遠じゃないかもしれない。
思いなおす。シフトレバーにあるユウジロウの左手に
そつとトオルが手を重ねた。
不安が詰まっていた。
「関係は終わるかもしれないけど、妹さんが先生を
想う気持ちは永遠でしょ」
そうは言うが、それが奇麗事にしか聞こえないユウジロウ
であった。
ドライブは、もう少し続いた。
終
ちょっと調子戻るまで許してください。
調子戻ったらちゃんと『エロ怖い話』にガッツリ
戻しますんで。(笑)
あと『アッー!!!』を期待した人、ごめんなさい。
いくらなんでもそれは無理でした。今後も考えると^^;;
とりあえずちょっと休みたいです。
…今起きたら見覚えのない一本が…。でも俺の名前だし
IDも一緒だし…
寝ながら書いたのかな…記憶にない…内容もなんか変…
気持ち悪い…^^;;
すげぇ!作者タソに何かが憑いてるwww
また深酒したんですか?酒無しで記憶が飛んでるとしたら・・・まじヤバス!
個人的にはこのまま続けてもいいし、とりあえず保留にしてもどっちでもいいと思いますよ!
>>602 雑談になっちゃうけどやっちゃったねぇ…>深酒
やっぱりネタに苦しい時とか、ついね。『楽しんで書く』ってこと忘れちゃうんだよね。
仕事でもないのに。ってかまず俺が楽しんでないと読んでるほうもつまらないと
思うんだけどねぇ…。しんどくなって、飲んじゃう。
それにしても中途半端な所で終わってるなぁ…。文化祭の話に行きたいんだけど
ねぇ…。どう収集つけりゃいいんだこれ…^^;;
とりあえず収集ついてないんで、中途半端もいやだし、
オカルト分もエロ分もありませんが、一応ケリがつくまで
続けます。勿論一話で終わらせます。こんな時間ですが、
ライブ用のネタとしては使えないので投下します。
さてここらで恋の話でもするか…。
赤いポンコツの軽自動車は山形家のガレージへと入っていった。
つづく
「ちょ…先生!」
「ん?」
「ここ先生ん家じゃねぇか!」
「だからなんだ?」
家の中は自分の部屋以外禁煙なので、山形ユウジロウはチビた
ラッキーストライクをもったいぶる様に深々と吸うと、携帯用灰皿
に吸殻を揉み入れ、エンジンキーを抜いた。
「返せよ!」
「何を?」
つづく
「俺を!家に!」
「まぁまぁ。寄って飯でも食っていけ」
「飯でもって…」
「どうせ、今日もいないんだろ?親御さん」
霧原トオルの両親は、共に社長である。父母それぞれ別の会社の経営者なのだ。
仕事は多忙で、海外との取引も多く、家を留守にすることが多い。先週から父は
インドネシアに、母が香港に仕事の関係で行っていることをユウジロウは聞いていた。
ユウジロウは既に車外に出ている。もうクルマを出す気はないらしい。仕方なく
トオルもクルマを降りた。助手席側に回り込むと、ユウジロウはトオルの肩に手を
やって、玄関まで連れて行く。インターホンを押すと、アカネの声が返ってきた。
トオルが一瞬緊張するのが肩にかけている手から伝わってきた。
つづく
「あぁ、ただいま。俺だ」
「はーい」
鍵が開けられる。アカネは料理でもしていたのかエプロン姿だ。
「おかえりなさい…あれ?霧原さんも一緒なんだ?」
そういえば、『さん』付けで呼ばれたことなど滅多にない。あったとしても
病院や銀行の呼び出しとか、その程度だった。何となく、子供ではなく
大人として扱われているようでトオルは小恥ずかしかった。
「あぁ、お前のことが好きらしい」
「え?」
「!?」
つづく
「お前に惚れちまったらしい」
「てめぇ!」
何の予告もなく、突然事実を簡単に明かしてしまった
ユウジロウにトオルは激昂してつかみかかった。
ユウジロウは笑うわけでも怯えるわけでもなく。ただ
黙っている。アカネはただただ戸惑っていた。
「飯にしよう」
襟をつかんでいるトオルの手をユウジロウはいとも簡単
に外した。レイプをするにも力は必要だ。華奢なトオルの
手を払う程度のこと、ユウジロウには余裕だった。
つづく
食事は当然二人分しか用意されていないので、
それを三人で分けて、それぞれの量が微妙に少ない
という妙な食卓になった。
「いただきます」
先にユウジロウが食べ始めた。トオルとアカネは無言で、
黙って食卓についていたが、アカネが先に口を開いた。
「あの…霧原さん?」
トオルは一度生唾を飲んでから返事をした。
「は…はい…」
「お気持ちは嬉しいんですけど…あたし、どうも、その、
年下の男性っていうのは…」
つづく
十近い歳の差。普通なら一笑に付すところだろう。それをどうも
この山形アカネ、まともに受けている。きちんと告白として
受け取ってくれている。
触れたことはある。心を覗いた。売春めいたことをやっているのが
見えた。理解しがたいような変態的な行為に興じているのも知っている。
もっと何か暗い闇のような部分も見えた。(第四十話 『塗炭』)
かといって、単に軽い女ではないことも分かっているつもりだ。
自分をナイフで刺し、その上で看病してくれた。
しかし、これほど思案してくれるとは思わなかった。恐らくは玉砕。
告白するなり半笑いで断られて終わるだろうと思っていた。
つづく
傷つけないように言葉を選びながら…。モテないタイプ
ではないだろう。告白された数も少なくないはずだ。
それが何だ。十近く年齢が下の自分に何故そんなに気を
使う?いや気を使っているのとは少し違う気がする。
複雑な心境だがトオルはどちらかといえば嬉しかった。
アカネが自分のことを真剣に考えてくれていることが
嬉しかった。
アカネは初めて告白された少女のように、こまったなぁ
という表情をして本当に困っているようだ。
だんだんトオルは申し訳なくなってきた。好きになっては
いけない人を好きになってしまったのではないか。
つづく
「あの…もう、いいです…、よく、わかりました」
分かってはいなかったが分かった気がしたからトオルは
素直にそう言った。と、アカネは胸のつかえが取れたかの
ようにほっとした顔をして笑った。
「ごめんなさい」
不思議な人だ。告白すれば散々困って困って、分かったと
言えば謝りながら笑う。
「触ってみる?」
不思議そうに見ていたからだろうか、右手をアカネは出してきた。
『触って心を覗いてみる?』ということだろう。トオルは手に軽く触れた。
つづく
相手の純情な気持ちに対して、余りに不純な自分の申し訳なさ。
純情を不純で踏みにじった罪悪感。純情に対する尊敬と憧れ。
不純に身を落とさなければ自らを保てない哀しみ。
この人は売春なんかしたくないんだ。したくないのに、せざるを
得ない。純潔でありたいのに、初めから汚れている。いくら綺麗に
しても、汚れるスピードの方が圧倒的に早い。
あきらめて、この人は不浄の中に身を置いている。
ふと見ると、アカネは泣いていた。慌てて手を離す。
「…どうしても…ごめん…」
エクステンションで長くなった髪でその顔を隠すようにアカネは泣いた。
つづく
ライブ遭遇!!wktk
救いを求めるようにユウジロウを見る。
既に食事を終わらせているが、泣いている
アカネを見るわけでもなく、トオルの方を向く
わけでもなく、ただ、虚空を見ていた。
かといってぼおとしているわけでもない。目に
力はある。
「霧原よ…。悪いが俺にもアカネにも、山形の血が
流れている…」
逃げても逃げても追ってくるもの。汚すもの。拭っても
拭っても拭い去れないもの。それは山形の血統だった。
「俺はもうその血と争うのをやめた…。勝負から、降りたんだ…」
つづく
ユウジロウは虚空を見つめながら言った。更に続けた。
「ただ、こいつはまだ、降りてない。俺たちは『穢す者』だ」
『穢す者』 ユウジロウはその勝負から降りたと言った。
もう『穢す者』としての自分を受け入れ、周囲を汚す。しかし
アカネはその宿命とまだ戦っていると言う。
せめて綺麗なものは汚すまいと戦っている。だからアカネは
既に汚れた者としか交わらない。
だから純潔なトオルとはつきあえない。彼を汚したくない。
トオルは全てを理解した。
つづく
やっとアカネが泣き止むまでだいぶ時間がかかった。
トオルは声もかけず、食事にも手をつけずにそれを
待っていた。アカネが泣き止んで、顔を上げると、トオルは
笑って言った。
「友達になって下さい」
アカネは大きく頷いた。
「あは…、そんなこと言われたの始めてかも…」
「そうなんですか?」
「彼女になってっていうのは多いけど…友達って、いないかも」
「じゃあ俺友達一号ってことで!」
「うん。よろしくね。トオル」
つづく
「とりあえず、飯、食え」
ユウジロウが言うのを聞いて、アカネは慌ててトオルの
分を温めなおしたりしてやった。
確かに心を割って話せる友人など、アカネにはいなかった。
しかしトオルには全て見られた。無理に隠す必要もないのだ。
ユウジロウが立ち上がる。
「まぁ友達同士仲良くやってくれ…。邪魔、したくねぇんでな…」
そのまま玄関の方へ歩いていく。アカネが追った。
「お兄ちゃん…」
つづく
「気にするな。ちょっと、出るだけだ。帰り、霧原、家まで送ってやってくれ」
と、気付いたように大声で居間にいるトオルに声をかけた。
「あーそれから霧原、何なら一晩泊まっていってもいいぞぉ」
「あとは、適当にやってくれ。じゃあな」
ユウジロウは家を出て行った。トオルが気にする。
「先生、なんか怒っちゃったのかな?」
「ううん。あたしたち、二人きりにしてくれたのと、お兄ちゃんが一人に
なりたいだけだと思う」
「へー…」
つづく
兄弟といえどもそこまで分かるものかなとトオルは思った。
何となくユウジロウの態度が不機嫌そうだったのがどうも
引っかかった。
「ねぇ二人っきりだよ。えっちする?」
「してくれないくせに…」
「あはは…高校生になったらいいかも」
何となくトオルがユウジロウの態度を気にしたことをアカネ
は知っていた。だからつとめて明るく振舞った。ユウジロウが
不機嫌そうになった理由もアカネは分かっていた。
『枡や』は今夜も満席だった。
「相変わらずひでぇ混み様だ…」
つづく
居酒屋『枡や』には、常連たちから『奥座敷』と呼ばれる席が
存在する。
本来は、六人が座れるテーブルを二つ並べた座敷席があったのだが、
余りに客が多いのと、それに六人組だの五人組などという、
団体の客が少ないのと、両方の理由からテーブルを取っ払い、
単に畳の座敷があるだけのスペースが『奥座敷』だった。
ここはもう個人の客が一人で座ろうが、四人組が固まって座ろうが
お構いなし、詰めれば詰めるだけ人が入るスペース。ただ座布団も
なければテーブルもない。酒や食い物は畳に直接置くのがルールだ。
「おっ一代目!いらっしゃい!」
つづく
福岡ユウコも相当利用しているのだろう。ユウジロウの愛称
『ユウちゃん』はすっかり福岡先生に取られ、ユウジロウは
『一代目』と呼ばれるようになってしまった。
「奥座敷、いいかい?」
「カウンター、詰められるよ?」
「いや、今日は奥座敷だ…。熱燗とホッケ焼いたのくれ」
「へーい」
奥座敷に上がり、手刀を切って人をかきわけ、適当に空いている
場所に座り込む。
しばらくすると熱燗と、焼きたてのホッケが来た。
つづく
畳の上に直接焼いたホッケの皿を置いて、手酌で、
御猪口に熱燗を満たす。
一杯ぐいと飲んで、背中を丸めてほぐしたホッケの身
を大根おろしと頬張る。
「うめぇ…」
妹アカネは山形の血に抗い戦い続けている。それに比べて
自分はどうか。血統に振り回され、周りの者全てを穢していく。
自分に腹が立ったのだ。
『枡や』の『奥座敷』。そこには座布団もテーブルもない。皆そこに
いるものは一様に、冷たい座敷に直接座り、背中を丸めて酒をやる。
堂々と背筋を伸ばしている者などいない。第一背筋を伸ばしたら、
座敷に直接置かれている皿から食い物を取れないのだ。そこにはいつも
敗北感が満ちていた。何も語らず黙って、飲んで。
賑やかな『枡や』の中で最も静かな場所もまた『奥座敷』なのである。
そこには今日も哀愁漂う丸まった背中が幾つもあった。
一方、山形家であるが、色々と話し込んでいるうちに居間のソファで
二人とも寝入ってしまっていた。無論距離を置いて。
終
『枡や』にはしんみりと飲みたい客のための席まで用意してあるんですね。
益々行ってみたくなりました。
乙です!
>>625 早速の感想感謝です。まぁ「たまたまそういう席になっちゃった」という感じ
ですね。実際やってみてください。
直接床にツマミと酒を置いて、一人で飲む。結構負け犬気分を味わえますよ(笑)
>>626 今、それをやるとリアルに泣けてきそうですwww
あれ。24時間以上放置されてる。そろそろ始めるか…
さて、ここらで怖い話でもするか。
文化祭のシーズンである。山形先生勤める中学校でも
文化祭が開催されることになった。
つづく
問題はオカルト同好会だった。通常は各々、部活動、同好会は
それぞれの部室がそのまま展示室になるのだが、オカルト同好会
は2−Aの教室を間借りする形で活動している。
それぞれクラスの出し物もあるので2−Aの教室は優先的に2年
A組の展示室となる。
とすると、オカルト同好会は展示室を失うのである。
朝の職員会議。校長から、そろそろ各クラス各部、文化祭の準備
をはじめるよう説明があったので、山形ユウジロウは、はと気付いて
その旨、質問をした。
校長も困った様子である。と、教頭の徳島先生が、『第二科学室』の
使用許可を出した。
つづく
この中学校は、校舎全体が『く』の字型をしている。それぞれ、西棟、
東胸が直角に近い角度で曲がって構成されているのだ。
西棟は主に1−Aや、2−Aなどの普通教室があり、東棟には、図書室、
科学室、工作室、技術室、電算室、音楽室、視聴覚室などが集中してある。
更に四階建てで、一階には事務室や職員室、医務室などがあり、西棟
二階には三年生、三階には二年生、四階には一年生の教室が並んでいる。
徳島教頭の言った『第二科学室』とは『第二理科実験室』の通称で、東棟
四階の最も東寄り、つまり端にあった。
放課後の同好会でそのことを会員に伝えると、かなりのブーイングがあった。
「完全にナメてる」
「第二科学室なんか誰も来ない」
「よりによって最上階の一番端とはどういうことか」
つづく
「しょうがないだろ他の教室はいっぱいで、ましてや
ウチはできたばかりの同好会なんだから…まだ『部』
にもなってないんだぞ」
実質、『同好会』は『部』よりも格下の扱いになっていた。
部員が十名集まれば『部』として認められ、七名以上、
十名未満であれば『同好会』なのだ。七名未満の集まり
ならば学校から正式に同好会としての扱いすら受けられ
ない。
「でも『電算機同好会』なんか、ちゃんと『電算室』使わせて
もらってるじゃん」
「単なるオタクの集まりの癖に」
「だから、ウチはまだ新しい同好会なんだから。こないだ
できたばっかじゃないか」
つづく
何とかいさめて、とりあえず教室を移動する。『第二理科実験室』
は普段まず使用されることのない教室で、時折生徒の中でも、
「なんであんな所にあんなものがあるのか」
と話し合われるほどだ。しかも、『理科実験室』であるから通常
では常備されているはずのビーカーやフラスコ、顕微鏡や各種
薬品といった道具が一切ない。一階の『(第一)理科実験室』には
勿論全て用意されているが、『第二…』にはないのだ。つまり不完全
なのである。
そんなことから元より学校側が、『理科実験室』として使うつもりが
ないらしい。とりあえずある。そんな感じだった。
しかし備え付けの長い机は動かすこともできず、壁や机からはガスの
バルブが飛び出し、各所に妙に水圧の高い水道のある流し台があって、
『理科実験室』として使う以外に使い道がない。
つづく
教頭から預かってきた鍵を使って入る。しばらく使われて
いないせいか空気が淀んだ感じで、何か臭い。
リョウコやアヤが窓を全開にして新鮮な空気と入れ替える。
強い風が入ってくると、途端に埃が舞った。
「汚いなぁ」
「最悪」
「まず掃除からだね…」
掃除用具入れらしいスチールのロッカーを開けたが空だった。
全くの不備である。
「こんなとこで文化祭なのぉ?」
ユウジロウもホウキ一本ないことにさすがに呆れて生徒に同情
したが、声に出して不満を言うことはなかった。一緒になってぶうぶう
言ってもしょうがない。
つづく
とりあえず話し合いがもたれた。
通常ならばどんなものを展示するのか、展示の目玉は
何にするかというところを話し合うのだろうが、とりあえず、
部屋の構造の問題がある。
机というか作業台というか、とにかく広い部屋に三列の
長い机がしつらえてあって、これは床に完全に固定されて
動かすことすらできず、長い机の中央と両端には、実験器具
などを洗浄する為の小さい流し台が備え付けられている。
何か机に並べて展示するにしても、流し台が邪魔だ。そのまま
にしておくのもみっともない。何か布でもかけて隠そうか、まず
話はそこからだった。
とりあえず同好会長であるリョウコが取り仕切ったが話が進まず
いつの間にか主導権はサエに移っていた。
つづく
いつものパターンだった。サエはその男性的なさっぱり
した性格で次々に難題を仕切っていく。
とりあえず『問題の流し台』はどうしようもなさそうなので無視。
展示は写真を中心に。目玉はUFOのビデオということになった。
例のUFO事件(第四十二話『不惑知らず』参照)の際、最新の
携帯電話を持っていた一年生のカエデが携帯電話で屋上に着陸
するUFOのかなり鮮明な動画を撮っていたのだ。
「でもこれどうやって展示するの?」
「画像大きくするのどうやるんだっけ?」
女子がまたもめ出した。ユウジロウも詳しいことは知らない。
つづく
「携帯の動画の拡張子ってどうなってるんだ?
ファイルの種類は?mpeg?」
聞いたが誰も答えない。仕方ないが、とりあえずユウジロウが
メモリーカードを受け取って、自宅のパソコンでどうにかする
ということになった。
話し合いが進んだが、やはりUFO関連がメインになりそうだ。
そもそもまだ新しい同好会ゆえ、活動実績そのものが少ない。
悪魔を呼び出した件もあった(第三十六話『紅蓮栄華』参照)が、
死人が出ている上、場合によっては事件は尚も続いている可能性が
ある。少し問題がある。
あとは色々と適当に集めた都市伝説や怪談がある。これをどう展示
するかという課題もあった。
つづく
「パネルみたいにしても誰も読まないよね?」
「朗読したのをMDかなんかに撮って、ヘッドホンで
聴かせるとか?」
「採用」
一応真面目にやっている。ユウジロウは安心して眺めていた。
霧原トオルが全く登場しないので気になっている読者もいるだろうが
ちゃんと参加しているので安心してほしい。ただ何も発言しないだけだ。
『第二理科実験室』の正面には巨大なホワイトボードがあり、その横に
ぽつんと扉があった。話し合いは生徒に任せ、合鍵を使って何となく、
そのドアを開けてみる。
カビ臭い。細長い部屋で、棚がある。本来ならば『準備室』といった所
なのだろう。しかし薬品のビンが並んでいるわけでもなければ、ドクロ
の標本があるわけでもない。本当に何もなく、ガランとしている。
つづく
それはそれで、少し不気味だった。
いよいよ、『文化祭準備週間』となり、各部、各同好会、各クラス、
それぞれ忙しく動き始めた。
山形ユウジロウが担任を務める2年A組では、『学校周辺の動植物』
ということで、写真展示がメインになることになった。それぞれ部活や
同好会の展示に関わらない者などは、各クラスの出し物の作製に
携わることになる。
学校から貸し出されたデジタルカメラで校庭や学校周辺に生息する
鳥や昆虫、植物の写真を撮り、名前や特性を調べてプリントして展示
する。
自分はオカルト同好会があるので、ということで、実行委員に選んだ
責任ある生徒にそちらを任せて、ユウジロウは『第二理科実験室』
に向かった。
つづく
サエのてきぱきとした動きでこちらもこちらで的確に進んでいる。
ユウジロウは楽だった。それぞれに信頼できる生徒がいるといい。
今年は当たり年だ、ユウジロウは思った。
放課後。普段なら不気味さを増す薄暗い校舎であったが活気に
溢れている。各部、各クラスの生徒が右往左往している。暗く
なるにつれ、働いている生徒たちのテンションが上がっていくのが
不思議だった。あちこちで賑やかな声が聞こえる。
とりあえず、『オカルト同好会』ということで、少しでも不気味な雰囲気
と作ろうと黒い、ラシャ布のようなものを壁一面に貼り付けている。
男手がないとなかなか大変な作業だ。布だの紙だのという物はああ
見えて案外重かったりする。
つづく
トオルも手伝っているが彼も非力だ。頼りになっていない。
仕方がないのでユウジロウも手伝った。
「すごい先生って力あるんだね〜」
「こう見えてもブラジリアン柔術をやってるんだぞ!」
「何それ」
「あー先生そういえばUFOの画像どうした?」
「あぁ、ちょっと面倒だったけど抜き出したよ。パソコンで見れる
ようになってるから、開催中はずっとリピートで繰り返し動画が
流れるようにしよう。少し画像は荒いけどね」
「いいねいいね」
「怖い話のレコーディングは終わったのか?」
「あ、まだです。今日ウチ帰ったらやります」
「ん?みんなでやるんじゃないのか?」
「アヤが一人で。放送委員で慣れてるから」
「そうか」
つづく
そうなんだよね。夜が近づくとテンションあがったなぁ。懐かしいwwww
何と言ってもオカルトといえば心霊が第一だろう
ということで、心霊写真も何点か用意した。
とはいえインチキだ。ユウジロウがパソコンで
編集して作った、いわゆるバッタモノだが、集客の
為ならばと、何とかオッケーとなった。
かなり不気味な出来映えになっている。それを
パネルにして展示するのだ。
「あれ、ガビョウがないぞ?そっちのあるか?」
「こっちもカラッポです」
「誰か、職員室行ってガビョウもらってきてくれぇ」
つづく
とりあえず手の空いているリョウコが何気なく
「はーい」
と答えて部屋を出て行った。
そろそろ八時を回っている。一応学校としては、
『文化祭関連の作業の限度は九時まで』
としていた。だからそろそろ帰り支度をしている連中もいるし、
八時を目処にして帰宅したのか、さっき降りてきた頃より人が
少し減っているように感じる。
それでも人はたくさんいたから怖いという感じはない。そのまま
階段を降りていく。
つづく
しかし一階には人気がほとんどなかった。
一階にあるのは事務室や職員室、医務室などで、文化祭とは
ほとんど無縁な部屋が並ぶ。
今までリョウコは東棟四階の『第二理科実験室』にいて、東棟
の階段をずっと下ってきた。そして今一階にいる。
用がある職員室は一階の西棟にある。このまままっすぐ、
東棟を歩いて、ほぼ直角に曲がり、しばらく進めば目的の職員室だ。
リョウコは歩き出した。誰もいない。途中玄関を通るのだが、そこだけは
これから帰る生徒たちで賑やかだった。
曲がり角が見える。ほとんど直角に曲がっているので、その向こうの様子
は見えない。
つづく
曲がって西棟へ。と、突然暗くなった。様子が違う。
「?」
学校の廊下は全てグリーンで統一されている。そして
ベージュの壁にホワイトの天井。天井には埋め込み式の
照明。
ところが目の前に広がっているのは、木の床、壁、天井。
横を見ると窓枠まで木製だ。
天井からは薄暗い電球の照明器具がぶら下がっている。
「え?」
慌てて振り返るがずっと同じような光景が続いていた。
つづく
慌てて駆け戻る。誰もいない。玄関に向かうが、
やはり誰もいない。
「誰かぁ!」
叫んだが返事がない。木の壁にすぅと声が吸い込まれる。
静かで何の音もしない。
リョウコはとりあえず今来た方に向かって走った。
木戸がある。開けるが誰もいない。見覚えのない部屋。
コトリ…
音がした。慌てて振り向く。音が反響するのでどちらから
した音か分からない。あちらこちらを見ると何か揺れるモノ
が見えた。
つづく
コトリ…
揺れる。
コトリ…
揺れる。
人影だ。ゆっくりと身体を揺らしてこちらに来る。良かった。
誰かいた!
近づくとそれは山形ユウジロウだった。
「山形先生!」
構わず抱きつく。と、頭を何かが叩く。何だろう。でも先生の
手はここにあるし。
つづく
頭を指で、とんとんと叩かれているような感触。
と、今度は額に何かが垂れてきた。
叩かれてるんじゃない。
頭に何かが点々と垂れているんだ。
ぽた、ぽた、ぽた、ぽた。
抱きついていた身を離す。
「せんせ…」
明らかにユウジロウの様子はおかしかった。口元から唾液を
ぼたぼたと垂らしている。頭に垂れていたのは唾液だった。
つづく
「オカシテヤル…」
直感的にリョウコは逃げていた。走る。とにかく走る。
しかしユウジロウも追ってきた。足音で分かる。がむしゃらに、
激しい足音を立て、奇声をあげながら追ってくる。
「やめてっ!やめて先生っ!」
「オカシテヤル!!」
「やだっ!やだもう!こないでっ!!」
階段がある。駆け上がる。ひらりと舞ったスカートの裾を
ユウジロウがつかんだ。
「いやっ!」
つづく
と、床が腐っていたのか、ユウジロウの右足がズボリと
床にはまった。しかしスカートを握る手は離さない。
リョウコは慌ててスカートのホックを外しジッパーを下ろして
スカートから抜け出した。構っていられない。パンツ丸出しで
リョウコは階段を駆け上がる。
「マテ!ヤラセロ!!」
下からはユウジロウの叫ぶ声が聞こえる。泣きながらリョウコは
階段をとにかく上へ昇る。
「あ゛ー!!!」
わけの分からない奇声が近づいてくる。ユウジロウがまた追ってくる。
つづく
階段を上がりきってしまうと木の扉があった。
これ以上は進めない。
ユウジロウは派手な足音を立てて上がってくる。
パンツ姿のリョウコはとにかくドアに体当たりを繰り返した。
何度目かの体当たりでドアは破られる。転がり出たそこは
屋上だった。これ以上は逃げようがない。
屋上から叫ぶ。下界に向かって。
「誰かっ!助けてっ!警察呼んでっ!」
ぶち破ったドアを見るとユウジロウが興奮した様子で立っている。
もう逃げ切れない。リョウコの意識は遠のいた。
つづく
うっすら目を開けると、老人の姿があった。
「キャアッ!」
慌てて身構える。
「おー目が覚めたか…大丈夫だよ。用務員の鈴木だ」
…確かにどこかで見た覚えがある。
「え?あ…」
「屋上だよ。ここでぶっ倒れとった。何があった?大丈夫か?」
腰には毛布がかけてある。
「スカートが脱げとるんだよ」
つづく
用務員の鈴木は、彼女が警戒しないように適当に
距離をとった。そして両手を見せて自分は安全である
ことをアピールする。
優しそうな老人に抱きつきリョウコは泣いた。
落ち着きを取り戻したリョウコから話を聞いた鈴木は
とりあえず警察を呼んだ。
困りあぐねているふうであったが、リョウコは警察で、
はっきりと
「山形先生に襲われた」
と証言した。
つづく
深夜、警察は帰宅した山形ユウジロウに任意同行を求めた。
しかし、警察にリョウコが見つかったことを告げられると、彼は
心底安心した様子だった。
「…しかし彼女は君に襲われたと証言してるんだがね?」
「私に?ちょっとまって下さい私は彼女を探してたんですよ。
急にいなくなって…」
証言は食い違ったが、オカルト同好会の面々が山形ユウジロウ
を弁護した。ずっと一緒にいたと。
ガビョウを取りに職員室へリョウコが向かったが帰ってこず、しばらく
『第二理科実験室』で待っていたが、どれだけ待っても帰ってこないので
みんなで探していた。先生も一緒だった。
メンバーは一様にそう語った。
つづく
更に決定的だったのは、リョウコの自宅に、
「彼女はまだ戻っていませんか?」
と何度かユウジロウから電話があったのだ。
その時間はちょうどリョウコが、『山形先生に
襲われた』とする時間と一緒だった。
ともあれ無事でよかったと一件落着したのだが、
納得できない部分が多く残った。
しかし気になるのは、リョウコが見たと言う、古い
建物だ。明らかに今の学校とは違う場所で彼女は
襲われている。
古い木造の建物。
つづく
警察から解放された夜、ツネコの家を訪れた
ユウジロウは一部始終を語った。
「へぇ…木造の建物ねぇ…」
「学校みたいではあったらしいんだよ」
「あぁ、あの学校ができる前にも学校はあったわよ」
「嘘だろ?」
「あったのよ。あたし、そこの卒業生だもの」
「だって俺がガキの頃はあそこ畑だったぞ?」
「学校があったけど、潰れたのよ。その後しばらく畑だったけど、
新しい住宅ができた十年前にまた新しく学校にしたの」
つづく
「あたしが卒業してしばらく後、隣町の学校と統合して一度潰れた
のよ。そのあとしばらく廃校として残っていたけどね。あなたが生まれた
頃、畑になった」
「知らなかった…」
「その子、屋上に逃げたって?」
「そう。そしたら襲われなかったって」
「運がいい娘ね」
「ん?」
「高所恐怖症なのよ。あの人」
つづく
「は?」
「あなただったんでしょ?その襲った男」
「そう見えたって」
「あなたに似てたってことよね?」
「あ…」
「その廃校ね、あの人の『狩場』だったらしいわ」
ツネコは濃い茶をすすると岩手ノリオの仏壇を横目でちらりと見やった。
遺影の男はユウジロウと瓜二つだった。
終
予想外の展開にびっくりでした
てっきり、ユウジロウが準備室で何かにつかれたと思ったのに…
作者さん、文化祭中の話も(あるのかな?)期待してます。
文化祭懐かしいですね・・・昔を思い出しました。
あんまりいい思い出はないですorz
突然、木造校舎にワープ(?)してしまうシーンは
なんとなくゲームのサイレントヒルを思い出しました。
狩場って、岩手ノリオテラオソロシス。
レスありがとです。ちなみにまたコテ付け忘れました。
ちゃんと私です…
>>660 >作者さん、文化祭中の話も(あるのかな?)期待してます。
準備の話があっいて本番がないってのもアレなんで今日後ほど投下予定です。
>>661 >文化祭懐かしいですね・・・昔を思い出しました。
>あんまりいい思い出はないですorz
>突然、木造校舎にワープ(?)してしまうシーンは
>なんとなくゲームのサイレントヒルを思い出しました。
私も文化祭は思い出ないですね…。消極的だったので学校行事は全部どうにか
して関わらないようにしてました。おかげで思い出そのものがない。なんか運動会
で頑張ったとか、文化祭で夜まで働いたとか…。もっと普通に学校生活を楽しめ
ばよかったなぁと今になって思います。
サイレントヒルってのは怖いみたいですね。本体ないんでできないですけど。
怖さだけ楽しみたいんですけど、アクションゲーム自体が苦手なんで、ダメ
なんです。バイオハザードなんかもやりましたけど、怖い以前に進めない。
難しくて。死なないモードとかほしいですww
664 :
661:2006/08/21(月) 18:40:41 ID:0bv8aXCa0
>>663 サイレントヒル、映画化されてますよ!
まだ見てないですけど、ゲームの雰囲気がうまくでてるって評判らしいです。
文化祭後編も期待してますwktk!
さてここらで怖い話でもするか
色々とあったがいよいよ文化祭当日となった。
一応最終的な確認をしなければならない山形ユウジロウの
朝は早い。
つづく
「じゃ、がんばって」
朝からアカネの笑顔があった。靴を履くユウジロウの
背中でつつましくカバンを持って立つ姿は新妻のようだ。
「おまえも遊びにこいよ。よくできてるぞ。色々と」
「…うん…そうだね…」
一応アカネはまだ大学を辞める直前、教育実習生として
数日間だが学校に通っていた事実がある。(第一話 『七不思議』 参照)
大きなトラブルがあって、中途半端な形でやめてしまい、
それに対する後ろめたさもあるのだろう。まだそれ程日が経った
とはいえない。顔を覚えている者もあるだろう。
つづく
それを考えると気恥ずかしいような、後ろ髪引かれる思いで
なかなか学校に顔を出そうという気にはなれなかった。
それは兄に対する気遣いでもある。
自殺騒動から復活騒動、自分が絡んでいただけに、やっと
世間が落ち着いたところで自分が現れれば、またユウジロウが噂の
矢面に立たされるのではないかという懸念もあった。
その辺りは複雑だ。ユウジロウにも想うところは色々とあった。
アカネからカバンを受け取ると、玄関を出て行った。
「余り、気にしないでいいからな」
それだけ言い残して。
つづく
今日は市のお偉方やら、地元の名士らもやって来ると
いうことで、駐車場は空けておいてほしいという要望が
学校側から出されている。
よって珍しくバス通勤だ。歩いて行けない距離でもないの
だが、四十過ぎの足腰には辛かった。
何せ今日は文化祭で一日校内を行ったり来たり、歩き通し
になるだろう。
学校の目の前にバスが停まる。校門は賑やかにデコレーション
されていた。
天気もいい。屋上の天文台が朝日を受けて輝いている。
つづく
校庭を囲むように模擬店が並んでいる。既に準備に
取り掛かっている者の姿もあった。
今日はそこらで適当に昼食を摂るつもりで、弁当は
持ってきていない。何故か毎年恒例でサッカー部が作る、
『名物野郎ヤキソバ』というのが美味いのだ。秘伝のレシピが
代々サッカー部には伝わっているらしい。
『使い古したスパイクでダシを取る』などという噂もあったが
とにかく美味い、安い、大盛りの三拍子が揃っていた。
悪名高き女子テニス部も、恒例のフランクフルトの用意を
進めている。単なるフランクフルトだ。それを艶気たっぷりの
テニスウェア姿で男を誘い、なんと一本五百円という高値で
売りつけるのだ。
毎年、『中学生がそれでいいのか?』と問題になるが楽しみに
している男性教師もいて、いつも有耶無耶にされている。
つづく
そもそもその稼ぎが、部費の一部として欠かせないと
いうのだからすごい。散々荒稼ぎした挙句、夏の合宿
などは相当豪華だという噂もある。
フランクフルトの仕入れは一本およそ五十円だという。
十倍の値段で大量に売りさばくのである。
更に去年は好きな部員と一回五百円で携帯電話のカメラ
で写真が撮れるという商売をゲリラ的に始め、これは、
校内を巡回していた風紀委員によって阻止された。
ちなみにユウジロウ、この時の写真を十枚持っている。
五千円の散財であった。
職員室に着くと、もう先生それぞれ挨拶も抜きの忙しさだ。
ユウジロウもカバンを置いて、早速まずは2年A組の教室に
向かう。
つづく
『学校周辺の動植物』とあり、教室入り口は
塩化ビニール製のツタと、緑のカーテンで
覆われている。ジャングルに分け入っていくような
風情だ。
中には既に実行委員の二人が、展示品の最後の
点検をしていた。
「どうだ?具合は」
「完璧ですよ。何とか間に合いました。
「そうかそうか」
信頼できる実行委員がいるのでこちらは安心だろう。
と、何処からか鳥のさえずりのような音が聞こえてきた。
つづく
全体に緑一色で飾られた部屋と、センスよく飾られた動植物の
写真パネルとマッチして鳥のさえずりが涼しげでいい。
「おぉ、これも仕掛けなのか?」
「これ、ちゃんと生録音したんですよ」
「へぇ…よく取れてるなぁ。どこで取ったんだ?」
「…うちのベランダに鳥のエサまいて取りました」
「たいしたもんだ」
もうこれは手をだすことがない。ユウジロウは安心した。
さて、もう一箇所、オカルト同好会である。
つづく
慌しく走り回る生徒や先生らとすれ違いながら、
四階へ。
文化祭ともなれば『廊下は静かに』など言って
いられない。
西棟を進み、直角に曲がって東棟へ。突き当りが
オカルト同好会の展示室、『第二理科実験室』だ。
こちらは黒い布に縦に幾筋も切って、ノレン状にした
入り口。パソコンデスクが置いてあるが、モニター以外
は布で隠してある。布をめくりあげて、パソコンを起動すると、
霊のUFO動画が繰り返し再生されるように設定して、
キーボードと本体をまた布で隠す。
さてはまだ誰も来ていないらしい。仕方ないな…。
つづく
展示品を一通りチェックする。特に問題はない。
まぁ結成間もない同好会、ましてやたった会員五人にしては
よくやっている方だろう。
やがてわらわらと人が集まり始め、開催時刻の九時を迎えた。
人の入りは例年通り好調だ。そもそも来場する人間は、生徒の
保護者や学校の卒業生、近所の老人や子供と大体決まっている。
そんなに閑散とするわけがないのだ。
四階から校庭を見下ろすと、女子テニス部のフランクフルトがやはり
凄まじい人気を誇っているのが分かる。一体幾ら稼ぐのか。
以前は更にひどく、余りの稼ぎに税務署が来たという笑い話まである程
だ。
つづく
とりあえずユウジロウは女子テニス部のフランクフルト
を二本同時購入して、『テニス部と握手』のサービスを
受けていた。
「萌え…」
いつ何が起きてもいいように、風紀委員が目を光らせている。
目を離せば『パンツ見せたら一万円』などとエスカレートしそうな
怪しさがある。
更にサッカー部『名物野郎ヤキソバ』を食べユウジロウは満腹
だった。アカネはどうせ来ないだろうとお土産用にもう一パック
買って、職員室の自分の机の上に置くと、2−Aに顔を出す。
盛況だ。虫の写真パネルに子供が夢中になっている。
つづく
特に、隣のB組はかなりやる気のない『ピンボールゲーム』
なる出し物で、ただ教室をカラにして、手作りのピンボール
ゲーム台を二台置いただけという手の抜きよう。
おかげでかなりA組が引き立って見える。
『第二理科実験室』も盛況だ。特にアヤが一人で吹き込んだ
怪談のMDが人気らしい。一人ずつヘッドホンで聞くのだが
数名が並んでいる。一応MDのデッキは三台用意したのだが。
一トラックに一話ずつ入っていて、学校のOBらしい何人かの
男子が、
「おい、7番聞いてみ。超怖ぇ」
「マジでマジで?」
などとやっている。
つづく
アヤが、一話が余り長すぎると飽きるし、お客さんを待たせる
ことになる、というので、大体二分から長くても五分程度の怪談
を吹き込んでいるらしいのだが、ユウジロウは内容を知らない。
ネタはみんなで適当に持ち寄ったり創ったりしたというがどれ程
怖いのだろう。放送委員で話術に長けているアヤのテクニック
もあるのだろう。
受付をしていたアヤにそのことを告げると、大きな目を細めて
喜んでいる。
と、和服を着た立派な老夫婦がやって来た。町の名士か何か
だろう。にこにことしながら部屋を見回している。
「あ、こちらはオカルト同好会でございまして」
「あぁ、知っとるよ」
つづく
ユウジロウの案内も適当に、老夫婦は展示品を見始めた。
『UFOから降りてきたムック(ポンキッキ)のような怪物!!』
という絵に見入っている。書いたのは霧原トオルだ。彼には
絵の才能があり、特にアニメイラスト風の絵を描かせると
抜群の上手さがあった。ただ本人がそんなに得意なのに、
絵が好きではないという致命的な点があった。
だからそのイラストも無理矢理書かせたのだ。
老夫婦が見てそんなに楽しいものだろうかとも思ったが熱心
に色々と見ている。特にイラストに興味があるらしい。
勿論全てトオルが書いたものだ。ニコニコと満面の笑みで、
上品に絵を眺めていた。
つづく
帰りしな、懐から矢立を取り出すと、来賓者名簿に、
矢立から取り出した筆で名を書いた。
矢立とは、墨壺のついた筒に筆を入れて持ち歩く、
携帯用の筆記用具だ。要するに持ち歩く、スズリと、
毛筆である。現代では持ち歩いている者など滅多に
いないだろう。
それぞれ各展示室には来賓者名簿があり、訪れた
人に署名してもらうようになっていた。
それを後に、文化祭実行委員が集め、各展示場ごとに
集計して、どの展示場にどれほどの人が訪れたか、
数を発表することになっていた。
つづく
何という名の人か見ようとしたら、突如として大勢の
来客があり、その者たちが一斉に名簿に名前を書き始めた
ので、そのまま忘れてしまった。
しばらくするとツネコが一人でやってきた。
「アカネも誘ったんだけど…」
「やっぱり来ないか…」
ふと振り返るとアヤは消えてリョウコとサエがいた。それぞれ
見たいモノ、食べたいモノもあるだろうから、適当に持ち回りで
留守番をするようになっているのだ。
母ツネコを紹介する。ツネコは十六歳でユウジロウを産んで
いるので、それほど歳の差がないように見えるらしく、『若い!』
の連呼だった。
つづく
テニス部行きたい・・・・
さすがに照れたらしくツネコは顔を赤らめながら
「随分可愛い生徒さんたちね。息子をよろしくおねがいします」
と腰を折って、展示物もろくに見ないで帰っていった。
「先生のお母さんいくつ?」
「五十…いくつかな?十六で俺を産んでるから…」
「十六?あたしたちと一歳違いで赤ちゃんいたの?」
「あぁそうか。そういうことになるんだなぁ。そういえば」
「すごーい!」
つづく
そんな話をしていると霧原トオルが入ってきた。
「お昼でも食ってくれば?」
すっと客が遠のいたのは昼だからか。見ると校庭の模擬店
に昼食を摂る客が集中してえらいことになっている。
女子テニス部が気になるがあまりジロジロ見てもいられない。
「留守番、俺がしてるから」
じゃあということで、リョウコとサエは出て行った。
受付席に座ったはいいが客を呼び込むわけでもなければ
笑顔を振りまくわけでもない。相変わらずクールなトオルだった。
つづく
「お前、飯は?」
「…適当に食べた」
「何食った?」
「バスケ部のサンドイッチ」
「へーバスケ部はサンドイッチか…珍しいモノ作るな」
「ハンバーガーみたいだったけどね」
何となくトオルの態度がおかしい。いつもクールだが
更にクールだ。クールというよりつまらなそうだ。
こういうお祭り騒ぎのようなことが心底嫌いなのだろうか。
頬杖をついて、賑やかな校庭をずっと見つめていた。
そこに、賑やかな中年の婦人が入ってきた。
つづく
「どうも岡崎と申します。いつも娘がお世話になって…」
岡崎?そういえばリョウコの姓は岡崎だった。リョウコの
母親らしい。ユウジロウも一応威儀を正して教師らしく振舞う。
「あ、どうも。こちらこそ。大変いい娘さんをお持ちで…」
しばらくリョウコの母親とユウジロウの会話が続く。文化祭は
好きだがこういった生徒の親との付き合いというのはどうも苦手
だった。立場上、余り無駄に褒めちぎることもできないし、だから
といってけなすことも勿論できない。
むしろ立場無視で滅茶苦茶に褒めちぎれればどんなに楽かと
ユウジロウはいつも思う。褒め言葉なら幾らでもある。しかし
褒められる生徒だけではないのだ。
つづく
一しきり話して、受付に戻ると、トオルは更に不機嫌に
なっているようだ。
何となくユウジロウは気付いた。親か…。
トオルの両親は共に会社を経営していて忙しく世界を
飛び回っている。息子の学校行事などには目もくれない
のだろう。
大人びてはいるが寂しいのかもしれない。自分だって、
アカネが来てくれないことを幾ばくか寂しいと思う。自分が
作り上げたもの、自分がしていることを見せたいと思う。
トオルもそうなのかもしれない。
そういう意味でもトオルの少ない友人と言えるアカネには
来て欲しかった。
つづく
少しでも癒しになったかもしれない。
結局、そのことはトオルに聞けずじまいだった。
二人で黙って受付に座っている間、ほとんど客はなく、
食事を終えてアヤが戻ってくると、
「じゃよろしく」
と、またトオルはどこかに消えた。
午後になると客足が鈍り、校庭の模擬店でも『売り切れ』
が目立ち始める。そもそも商売でやっているわけではないから、
仕入れの量など計算していない。余っても困るわけだから、
少なめに材料を用意して、適当に閉める模擬店も多い。
つづく
涼しい風が吹いて、陽が傾く頃には、もう少し寂しさが
漂い始める。
明日一日、片付けの時間を取ってあるので片付ける必要は
ないが、明日が少しでも楽になるようにと客足が途絶えると
展示品をざっと片付け始める所が出てくる。
そうなると客の帰りに拍車がかかる。片付けているのを見て、
帰る脚が急ぐのだろう。
賑やかだった人がすぅとひいて、何か派手な呼び込みの
看板や旗が、かえって余計に寂しく見える。
午後四時。文化祭は終わった。
つづく
ユウジロウはサッカー部の『名物野郎ヤキソバ』
を持って帰った。こういったものは焼きたて、作りたてが
美味い。
一度冷めてしまうと、電子レンジなんかでは再現しきれない
味がある。
しかしそれでも『名物野郎ヤキソバ』は美味かった。アカネ
が感心している。
「これ、男の子が作るの?」
「野郎ヤキソバだからな」
「へー…おいし…」
「母さんは来たんだぞ」
「知ってる…。誘われたんだけど…」
つづく
それ以上、ユウジロウは突っ込まなかった。
「…アカネ…」
「ん?」
「テニスウェアって持ってる?」
「え?」
「テニスウェア…」
「…う〜ん…ないなぁ…」
「そうか」
「どうして?」
「なんでもない」
つづく
片付けも終り、日常が戻った。
霧原トオルの隣の席の女子は文化祭の実行委員だった。
ぶ厚い『来賓者名簿』の集計をしている。
トオルはその様子をぼけっと見ていた。
と、数える彼女の指が止まった。
「すごーい。ねぇ霧原テツザンって、霧原くんのお父さん?」
いきなり振られて驚く。
「え?は?」
つづく
さすがのトオルもクールを保ちきれなかったようだ。
「霧原テツザン…すごい名前だね。筆で書いてあるの」
来賓者名簿は通常備え付けのボールペンで書く。しかしそこには
力強い毛筆で、
『霧原テツザン』 『同 アヤメ』
とあった。トオルが覗き込む。確かにそうある。しかも『オカルト同好会』
の来賓者だ。しかしあり得ない名前だった。
霧原テツザンとアヤメ。それは今は亡き祖父と祖母の名だった。古風で
威厳のある人だった。いつも着物を着ていたっけ。そして優しかった。
二人連れ添うように逝ってしまったが、親がかまってくれない分、たくさん
甘やかしてくれた優しいおじいちゃんとおばあちゃんだった。
きっと誰かは見ているはずだ。受付には必ず誰かがいたのだから。今日は
同好会がある。みんなに聞いてみよう。僕の絵を見てくれたかな?
その日、トオルはにこにこと笑いながら、部室である2−Aの教室に
駆け込んできた。それはかつて祖父や祖母に見せた、その表情だった。
終
作者サマ乙です(b^-゜)
最後の最期にホロリとしちゃいましたよ、、
ウチの中学は当時できたばかりで、《文化祭もどき》だったのでウラヤマスィです。
こうなると体育祭バージョンもそのうち、、?
作者さん乙です(^^)
文化祭の話、面白かったです!
なんだか学生(生徒?)だった頃を思い出しちゃいました…(^^;
今日高校野球を観ていたせいもありますが、学生時代の爽やかさと眩しさの様なものを感じました。
出し物の描写もリアルでよかったです!
おばけ屋敷とか迷路とかやったなー、なんて学生時代の文化祭をリアルに思い出しました(^^;
合間に入る山形エッセンスも面白かったですし、ラストがまたいいですね!
お気に入りの作品がまた一つ増えました♪^^
ちょっ、フランクフルト一本500円てボッタクリ過ぎ(^^;) でもテニスウェアはいいかも
トオルの一面が見れたのもよかったです。
作者さん、乙です。まとめ人です。
文化祭の二本立て、とても面白かったですよ!
上で
>>693さんが仰っているように、描写がリアルで懐かしいと同時にも〜眩しくてw
また、2話目のラストがすごくいいですね。オカルト要素を含みつつ、しっとりと読める…
ほんと良い話だったなあと思いました。
ネタを出したのは今回が初めてでしたが、また名無しでコソーリとネタお願いしようと思っています。
ありがとうございました!
うはwアンカーマチガエチャッタヨ!
>>693さんと書いたのは
>>694さんでした。
>直接床にツマミと酒を置いて、一人で飲む。
を実行してみたら中々情緒があって、つい飲みすぎたようです。
失礼しました;
ぅわー今日なんかレスたくさんウレシス…ありがとですT_T
>>693 > こうなると体育祭バージョンもそのうち、、?
やりたいんだけどね…体育祭にお化け出しても怖くないし、みんな見てるからエロい
ことできないし、部活対抗ってわけでもないからなぁ…。でもやってみたいですね。
頂くかもしれません。少し頭ひねってみますね。…ってか俺またコテ忘れてた…。
>>694 > 今日高校野球を観ていたせいもありますが、学生時代の爽やかさと眩しさの様なものを感じました。
> 出し物の描写もリアルでよかったです!
> おばけ屋敷とか迷路とかやったなー、なんて学生時代の文化祭をリアルに思い出しました(^^;
本当ありがたいお言葉です。『お化け屋敷』は最初に考えたネタなんですけど
ちょっとありきたりかなと思ってやめました。ちょっとやってみたかった気がする
んですけどね。ベタに。
話書くときに、滅茶苦茶な所は滅茶苦茶に。でも現実的なところは思い切りリアルに、
ということに気をつかっているので『リアル』とおっしゃって頂けると嬉しい気持ちになります。
本当に読んでくださってありがとうございます。
>>695 > でもテニスウェアはいいかも
ちょっと中学生というより高校生っぽいですけどね。色気使う
中学生ってのもちょっと怖いですw
>>696 まとめ人 さま
いつもお疲れ様です。なんかタイトルの中の人との兼ね合いもあるので
作業大変じゃないですか?本当面倒だったらいつでも放棄して下さいね。
なくなったら寂しいけどww
怖い系、しんみり系、両方共に好きな方がいるようなので、楽なような難しい
ような…。でも紙一重なんですよね。ラスト20スレ分ぐらいで怖くもできるし、
しんみり方向に持っていくこともできる。自分も書いてると色々勉強になります。
またネタお待ちしています。本当よろしくです^^
夏期休暇で里帰りしておりました。
決してサボっていたわけではありませんぜ。
しかし、スランプと言いながらきっちりまとめてくるじゃないですか!
四十七夜を読んだあとなど「タイトルどうしよ?」って頭抱えちゃいましたw
いっそウェ工エエェェ(´д`)ェェエエ工工とかアーッにしようかと…www
気が付いたら50話越えましたね、おめでとうございます♪
>>580にありますが100話の区切りに到達したい気持ち分かります。
義務でも無いし、報酬のある仕事でもないのですが、何かやってみたいって事ありますね。
端から見たら無意味に見えても自分の中ではきっちり決着つけたいみたいな。
いいじゃないですか、お供いたしましょうぞ。私も読者の一人ですから。
タイトルの中の人より
>>タイトルの中の人 さま
ホーク有吉に目をつける辺りがさすがと言うか…。本当
細かいところまでよく読んで下さってるなぁと…つくづく嬉しい
限りです。
トモノスケがいざとなれば強いという見方もありますね。確かに。
私すら思いつかなかった斬新な視点です。確かに『必殺!』の
中村主水のようにダメに見せかけていただけかもしれませんね。
そう考えるとトモノスケを主役にした話が書きたくなってきましたww
四十七夜に関しては…どうも…御面倒おかけしましてww
いつもセンスのいいタイトル感謝します。やっと折り返し地点ですが
今後ともよろしくお願い致します…。
読者の皆様、いつの間にか、50話を超えていたようです。
ttp://makimo.to/cgi-bin/dat2html/dat2html.cgi?hobby7/2/occult/1150817684/&st=167 これが全ての始まりだったんですね。『2006/06/21(水) 01:24:19』が最も最初の
書き込みです。意外なことに、ほぼちょうど2ヶ月で、やっと50話にたどりつくことができました。
今では『さてここらで怖い話でもするか』がお約束の出だしですが、最初は
『とりあえず怖い話でもするか』だったんですねww
まさかシリーズ化するつもりなどなく始めて、若干過疎化してますが別板に避難場まで
作って頂き、たくさんの感想や応援のレスを頂きました。
見てる方が何人いるのか、増えているのか、減っているのか、分かりませんが、
読んでくださる皆様、並びに、まとめサイト製作者様、タイトル職人様にお礼
申し上げます。今までありがとうございました。これからもよろしくおねがいします。
さてここらで怖い話でもするか。
霧原トオルは、山形家にいることが多くなった。
週に、二、三度は山形家で夕食を食べる。
つづく
山形家と霧原家は近いとは言えず、それなり距離があった。
三キロ程あるだろうか。歩いて三十分ほどかかる。
しかし霧原家には親がいることが少なく、面倒であれば
そのまま泊まっていくこともできたので楽だった。
ただし、朝は別だ。互いに通勤、通学先は同じ中学校だが、
教師と生徒が一台のクルマで同伴出勤というのも、余り
いい話でもない。その場合トオルは歩いて通学した。
無論山形家に学校から来る際も一緒に来ることはない。
先にトオルが来る。その後でユウジロウが帰宅する。
両親が留守がちなトオルは、毎晩外食か、コンビニエンス
ストアの弁当、店屋物だった。それを一人で食べる。
つづく
可哀想だと思ったアカネが、ユウジロウに、晩の食事
に招待するように伝え、それがいつのまにか習慣化した
のだ。
今では何も言わなくてもトオルの方から勝手に来る。
ただ、突然来たり来なかったりすると、ゴハンを炊く量
などが問題になった。足りなかったり多かったり。だから
今では朝、トオルの方からアカネの携帯にメールすることに
なっている。夜、行きたい場合はメールをし、行かない場合
はメールをしない。
そのメールによってアカネは献立と量を考える。
いつの間にかそのシステムが成り立っていた。
つづく
無論、始めはトオルも遠慮がちであったし、来る度に
毎晩、律儀に走って帰っていた。
しかし今では慣れたものだ。テレビのチャンネルも勝手に
変えるし、ゴハンが足りなければ自分で炊飯器からゴハン
をよそる。
山形家の家計も考えて、来る度に五千円置いていく。たった
一度の食事で五千円は多すぎるとユウジロウは拒否していたが、
霧原家では毎晩一食五千円の食費というのが当たり前で、親から
きちんともらっている額がという。
無論多い。済ます気になれば五百円もかけずに食事ぐらいできる。
残りを小遣いとして懐に入れることもできるが他に充分な『留守番代』
ももらっているので、必要ないという。
つづく
ととと投下キテルーーーー!!!1
……しまった。水羊羹とみかんの缶詰しかねえ…_| ̄|○
まず、普通の『お小遣い』があって、それとは別に『留守番代』
それに毎晩五千円ずつの『食費』、更に携帯代なども親持ちで
あるというから、ある意味その辺のサラリーマンよりよっぽど裕福
なのである。
だから山形家ではトオルが来る度にきっちり五千円を受け取っていた。
ただし、その日に限っては一食に五千円をかけた豪華な料理が出る
わけではない。トオルの健康を気遣ったいつもの健康的なメニューだ。
無論余るがそれは山形家の取り分。いちいち計算して釣りを渡すことも
ない。全てそれがルールだった。
だからトオルとして見れば泊まった方が得なのだ。同じ金額で朝食にも
ありつけるのだから。
つづく
>>711 今日はゆっくりまったりで何時間かかるか分からないので
買ってきても間に合いますよwww
すいません途中ですがおかしくてレスしてしまいましたwwww
まとめ人さんですよね?乙です^^
今日もトオルが訪れていた。メニューは少しニラが
多目の野菜炒めに、肉豆腐、ほうれん草のオヒタシだ。
「オヒタシ…ちょっと失敗した。柔らかすぎて歯応えないかも」
「…シャキシャキしたのが好きなんだがなぁ」
「文句言わない」
「はい。頂きます」
「テレビは?」
「うたばん!」
「アンビリ!」
結局テレビに映し出されたのは『新・科捜研の女』だった。
つづく
「沢口靖子か!!」
「これ、面白いよ」
「アンビリは今日『伝説の金塊強盗』だぞ!」
「興味なし。アンビリは『怪奇特集』やらなくなってから駄目番組」
「倖田來未…」
「工エエェェ(´д`)ェェエエ工工」
「お前、意外だな!あぁいうのがいいのか!」
「う…歌だけだよ歌だけ!」
「男ってみんなあぁいうのがいいんだね」
つづく
「沢口靖子を見ろよちゃんと!」
「見てるよ!」
「慌てない…一行でレスしてるよ…」
「作者ぁ…」
『すいません…』
「しかしニラが多いな!」
「だってニラって使い切らないと何に使っていいのか
わかんないんだもん!」
「ねぇちょっとだけ『うたばん』にしていい?」
つづく
718 :
本当にあった怖い名無し:2006/08/22(火) 16:56:52 ID:x+nlsyuM0
「倖田來未か!変態め!」
「あれって変態なの?」
「そこまでとは言わないけど…」
「お前はちゃんと沢口靖子を見ろ!」
「だから見てるってば」
「もう駄目だテレビ消す」
「なんでよ!」
「トラブルの元だ。こういう時はNHKに限る」
つづく
ちょっとたんまです。
連投すると、
>ERROR!
>やはり貴方は投稿しすぎです。バイバイさるさん。
との表示がなされ書き込みできない恐らく新型のツールが導入された模様。
詳しいことは分かりませんが今までこんなことはなかったので『新型』と判断
します。
多分同一IPから単位時間内に一定以上のカキコがあった場合弾く仕様っぽい。
本作のような連投系コンテンツ(他にはそんなないと思うけど…)にはかなり脅威です。
よって、原因はっきりするまで一時的に投下停止します。
『運用板』でいいんだっけ?こういうのって。とりあえず『山形シリーズ』にとっては
致命的問題になる可能性大です。T_T
http://qb5.2ch.net/test/read.cgi/operate/1156100425/ やはり8/18あたりから実装され始めた連投防止の新型ツール
のようです。
>1) 一つのスレに
>2) ある時間(H)内に
>3) 最近の投稿(N)のうち沢山投稿(M回)したら
>4) 「バイバイさるさん」になる
>H N M は可変
とありますが、現時点の『山形先生』の書くスピードとは全く
噛みあいません。途中で他者からレスが入った場合、『連投』
と見なされるのかどうか分かりませんが、いずれにせよ、
現状では、今までのような続け方は不可能と思われます。
規制の緩い板で続行という手もあるかもしれませんが、オカ板を
離れたくないです。
解除にかかる時間が問題ですが場合によっては、『ゆっくり書き込む』か
『書き溜め→ゆっくり放出』ですが、リズム崩されると今までのクオリティ
を保つ自信はありません。
規制解除、規制緩和がない場合、読者の方々も一応『続行中止』を覚悟して下さい。
まとめサイトのブログを引き継ぎ、2ちゃんねるを離れて活動という
ことも視野に入れ、今後考えたいと思います。
とりあえず、どの程度の連投で発動するのか確認する為、テスト的に短編みたいなモノ
を投下する可能性がありますが、先まで投下していたモノとは無関係ですのでよろしくです。
>>711 喉渇きそうだな・・・
ファンタとベビースターでばっちりだ!!
と、思ったら・・・(´・ω・`)困ったね。
あ〜「肉豆腐」食いてぇ…と思いつつ、さっき買ってきたスルメを噛んでいたら
嫁がビールと「ほうれん草のおひたし」を差し出したのでワロタ
いや、これはワロてる場合じゃないな。
作者さん●使ってる?●持ちでも規制あるんかな。ちょい調べるか…
>>722 せっかく来てくださったのに…申し訳ないです…。
とりあえず調べた感じ、解除は30分程度…かなりリズム
狂わさられるな…というか、今でさえ、やっと2時間ぐらいで
一話書いているのが、途中で30分も止められたらそれこそ一話
書くのに何時間かかるかわからなくなる…。
『止まった!』と思ったら誰かの『合いの手』が途中で入れば『連投』
とは見なされないんだろうか…。でもそういうことだよな…。
読者さんに頼れ、ということか…。『止まった!』と思ったらレスを入れる。
すると俺が復帰するという…なんか効率悪いなぁ…。まったり読んでる
人には申し訳ないし、俺もなんか『合いの手』入る度に急かされてるみたい
に感じるし…。最悪のタイミングで最悪のツールだな…。
山形先生にも呪いがつきまとうのだろうか…(苦笑)
>>724 ●はさすがに使ってないです。一応もともと軽いユーザーなので…。
とりあえず凹んだというわけではありませんが、
何となく、つまらない気分になったのでもう今日は
休ませてもらいます。
ちょっと久しぶりにふてくされたりしてww
相手が2ちゃんねるじゃどうしようもありませんがね。
場所借りて書き込んでるだけですから。
お騒がせしました。あと、中途半端になっちゃってすいません。
とりあえず、ちょっとずつでも進める方向で考えようかなと。
何分あたり何回の書き込みで弾くのかが知りたいなぁ…。山形
なんて書いてる時間あるからそんなに急爆撃じゃない気が
するんだけど…5分に1レスぐらいだよねぇ…?
まだ新しいシステムだから厳し目にしてあるのかな。
むぅ〜由々しき事態ですねぇ〜
スクリプト荒らしへの防護策なんだろうけど、一般の人がとばっちり受けるのもなぁ…
ばいばいさるさんスレ見てきたら、しっかりオカ板も対象に入ってるし。困ったもんだ。
荒らしと連投を見分ける方法も無くは無いだろうが鯖に負担掛けそうだし…
運営側の処理だからしばし様子見するしかないのかな。
18日からだっけ、始まったの?俺おととい7連投、全て二分以内の投下したんだけど、ひっかからなかった。
他に検証した人居る?
あ、情報あったね。全部の板に入ったわけじゃないんだな。
ほの板は対象外か。
バイバイさるさんって今のところ試運転なんだね。
投稿間隔のほかに行数とかでもはじける仕組みになってるっぽいが、現在は30行までおk。
小説とかAA関係の板の実害が酷い模様…
いちおう●持ちは対象外らしいが、投稿のカウントだけはされてるようだ。
10連投〜12連投で止められたって報告が多い。
苦情が多いみたいだから、今後規制が緩くなる可能性に賭けたい。
このままで本格導入されたら泣くぞ俺は。
>>728−731
あの時間からふて寝してたら目が覚めてしまった…。
レスありがとです。運用系の話はよく分からない(詳しくない)ので
詳しそうな人たちがいて心強いです。
10〜12連投で止められるというお話がありますが、何分当たり
なんだろうなぁ…。山形先生のペースでいくと…参考出します。
かなりすんなり書いた記憶のある
>>680-690 で50分程度。
今回規制を受けた
>>707-717 で40分程度かかってますね。
1時間に10レスでバイバイさるさんかなぁ…。だとするとやっぱり
リズム合わない…テスト運用中らしいから、若干規制が緩くなれば
(30分で10レスまでおkとか)ちょうどいいかも。
でも一時間に10レスって結構普通じゃないかな??チャット状態の時
とかもっといくよねぇ。荒らしの範疇なんだろか…。
15:00ちょうどからから、一話投下しますが、テストです。山形先生の
物語とは異なります。
よって、まさめサイトに掲載も必要ありません。
問題になっている。『ばいばいさるさん』対応テストです。
今まではスピードを重視して、平均17行を1レスとして投下していましたが、
時間稼ぎの為に、30行1レスとして投下(行は私の使っている専ブラで容易に確認できます)
レス間の時間が倍近くになるはずです。その分ライブで読んでいる方は
『待ち時間』が長くなります。御了承下さい。
伝統(おやつを食いながら見る)を重んじて、ゆっくりとお楽しみ下さい(笑)
また話の内容については、一応オカルト板にのっとったモノになりますが責任持ちません。
あくまで『テスト』です。また、『ばいばいさるさん』を食らった場合、『避難所』に書き込めなくなった
旨、書き込みますのでもし、ライブでお楽しみの方、いらっしゃいましたら本スレに空レスでいいので
何か書き込んでくれると嬉しいです。それにより回避できるかチェックしたい気もします。
それでは。よろしくです。
さてここらで怖い話でもするか。
『枡や』は今日も賑わっていた。
ノレンが翻って、秋の夜の冷たい風が店内に舞った。
つづく
男は一枚の、木の葉と共に店に現れた。
ヨレたスーツ。冴えない顔。老けて見えるがまだ意外と若いかもしれない。
チビた煙草を咥え、余り大きくもない体を縮こまらせている。
初めて見る客だった。
「らっしぇい」
ほぼ満員の店内をぐるりと見回すと、カウンターの曲がり角へと向かった。
カウンターが直角に曲がっている。三人分の席がある。その一番奥。男は
そこを目指した。
「…ぁ」
焼き鳥を焼くのに忙しい店長の口元が動いた。しかし、男の動きの方が早かった。
カウンターの一番端の、ベンチ型の椅子には、花瓶があって、花が活けてある。
それを男はためらうことなく、カウンターの上に乗せ、空いた椅子に腰を降ろした。
「…いけねぇ…」
店長が呟く。そう。そこは、いわくつきの席だった。(第三十七話 『悔悟の神酒』 参照)
座る前なら注意もできそうなものだが、男はそこでもう皺だらけのコートを脱いで、
落ち着こうとしている。仏頂面のその客の頬は既に赤く、もう何軒か回ってきた様子で、
下手に注意すれば荒れそうなタイプだ。
長年そういった商売を続けて、大体客のタイプは分かる。店長は仕方なく何も言わずに
カウンターの上に乗っている花瓶を片付けた。
つづく
ある日、ある男がある女を犯した。腕には自信があった。
しかし女は敏感な体質だったのか、犯される際に何処か打ったのか、
そのまま昏倒して意識を失ってしまった。
目的はあくまでレイプで傷つけたいわけでも殺したいわけでもない。
困った男は女の財布や持ち物を漁って、住所か何か分かるものはないかと
探した。
が結局何も分からず、恐ろしくなった男は公園のベンチに女を座らせると、
女が居眠りでもしているように偽装してその場を立ち去ってしまった。
次に女を見つけたのは、地元の荒れた若者達だった。彼らは女を見つけるなり
クルマに運び込み、彼女を陵辱したのである。
最終的に女は殺され海に捨てられた。
女は『枡や』で飲んで帰宅する途中だった。
以来『枡や』では、彼女、マキのいつもの席を、供養の意味もあって封印したのだ。
誰も座れないように花瓶を置いて。誰も座れないように。
しかしこの客はその禁を破った。
皺だらけのコートをカウンターの下に作られた棚にぐしゃぐしゃとたたみもせずに
詰め込むと、ウイスキーの水割りだけを頼んだ。
つづく
「何か、つまみはいかがでしょう?いい魚が入ってますよ」
「いや、酒だけでいい」
赤ら顔で男は言った。それでも突出しは出る。レンコンのキンピラだった。
何も言わず、キンピラに七味唐辛子を軽く振ると、パリパリといい音をさせて
男はレンコンをかじった。
ウイスキーを飲む。飲むというよの煽る。たちまちに飲み干して、もう一杯
頼んだ。今度はウイスキーのロックだった。
氷がとけてもいないのに一息に飲んでむせる。
隣の女が笑った。
「…あ?」
いつの間に座ったのか隣には女がいた。
ストレートヘアが腰の辺りまである。艶気のあるいい女だった。男は笑う女を
無視して、ロックをもう一杯頼んだ。
「旦那、ちょいと飲み方が無茶ですぜ。ゆっくりおやりなさいな。閉店まではまだまだ
時間がごぜぇます」
「…せぇよ…」
何か言いたげだが、男が飲むペースはだいぶ落ち着いた。店長に言われたことより女に
笑われたことのほうが痛かった。
つづく
「ねぇ、あんた…」
少し鼻にかかる声を女が出した。
「あ?」
「そこ、あたしの席なんだよ」
「だから何だい。どけってのか?」
「…別に。かまやしないけど」
煙草に火を着けて吸う。安い煙草だ。美味いとも思わなかったが、男には
金がなかった。
「おい親父、今、幾らだ?」
「はい?」
「今までで金は幾らだって聞いてんだ」
「…あ、へぇ、水割りとロックですから、四百円になります」
「これは?」
突出しの料金を男は気にした。
「あ、ウチはお通しは無料ですんで」
「そうかい。随分安いね」
つづく
少し機嫌よさげに男は財布を覗いた。財布といっても
小銭入れだ。合皮でできていて、ジッパーがついている。
小銭だがそれなりに入ってはいるらしい。ジャラジャラと音を
させながら、コインの数を数える。
「みっともないね。よしなよ」
女がいうがお構いなしだ。
「おい親父、一番安いツマミは何だ?」
「柿の種かチーズ、枝豆なら百円で御用意できやすが」
「おう、枝豆くれ」
安い店にたまたま入れたことが相当嬉しいらしい。男は上機嫌だった。
やっと余裕ができたのか、そこで男は、隣の女が何も飲みもしなければ
食べてもいないことに気付いた。カウンターには調味料を載せるトレイが
あるばかりだ。
「…おいねぇさん、あんた、店の人?」
「いいや」
「何も飲まねぇ何も食わねぇでそこに座ってんのかい?」
「あたしは何もいらないんだよ。あんたが邪魔するから出てきたのさ」
「何言ってやがんだ?」
「だから言ったろ。そこ、あたしの席なんだよ」
つづく
話が食い違う。
枝豆を用意しながら、店長は一人でぶつぶつと何か喋っている男を
怪訝そうに見やった。まぁ酔っているのだろう。態度からして、金も
ないらしい。好きにやらしておいてやろう。店長はそのまま気にせず
枝豆を盛った皿を男の目の前に置いた。
「あたしの席に勝手に座ってるから、ちょっと祟ってやろうかと思ってさ」
「祟る?なんだいそりゃあ…」
「幽霊…っていうのかな?あたし、この世の人間じゃない」
無視して男は枝豆を食べている。
「信じちゃないか。まあいいよ。触ってご覧よ。触れないから」
枝豆の殻を顔目掛けて投げる。それは女を素通りして、後ろの壁に
貼ってあった、新人のグラマーなタレントがビールジョッキを水着で持っている
ビールのポスターに当たった。
「ちょいと旦那、ゴミ放らないで下さいよ!」
「…あ、あぁ、すまねぇ…」
慌てて枝豆の殻を拾う男を女がまた笑う。席に戻ってきた男はまじまじと女を
見た。
「ね。触れない。幽霊なんだよ」
「…こりゃあ驚いたね…初めて見たぜ…」
つづく
三杯目に一番安い焼酎を頼んだ男は感心するばかりだった。
「あんた、みんな見てご覧。一人で喋ってるから気にして見てるよ」
確かに店中の視線がちらちら男に向けられていた。
「お、俺にしか、見えないのかい?」
「そうだよ。だから言ってるでしょ。あんたを祟ってやろうかと出てきたって」
居た堪れなくなった男はわずかな料金を払って『枡や』を出た。女もついて来た。
「なんでぇついてくんのかよ。あんたの席はもう空けただろ!」
「もう取り憑いちゃったんだよ」
「取り憑いた!?冗談じゃねぇや!」
駅から少し離れていて人通りはない。男は路上でわめき散らした。
「祟るなら祟れってんだ。これ以上の不幸があるもんかと思ってたところだ。
やってもらおうじゃねぇか!」
「随分威勢がいいね」
「もう怖ぇもんなんかねぇ。今日でもう最後なんだ。ちょうどいいや」
「最後って?」
「死ぬんだよ。死ぃぬぅの!」
つづく
女の方が少し背が高い。男はかなり小柄だった。
風が吹いて、コートの襟を立てる。皺々のコートが風にたなびく。
また安い煙草を一本吸った。目に止まった煙草の自動販売機の前に
立ち止まるとまた黒い合皮の小銭入れからじゃらじゃらと小銭を出して、
マルボロを買った。
「へへ…これこれ」
まだ残っていた安物の煙草を捨てる。震える手でマルボロのパッケージ
を開けると、咥えていたタバコを投げ捨ててマルボロを一本、美味そうに
吸った。
「やっぱり美味ぇな」
小銭入れの金を全部出す。左手の手のひらが一杯になった。丁寧に数える。
一五四〇円あった。
「まだこんなにあらぁ。ステーキでも食うかな」
風の中、女は黒いロングスカートを風になびかせて、男を見ている。まつ毛の
長い、切れ長の美しい目をしていた。
「おい、ねぇさん、あんた、こう、祟りで人殺したりできるのかい?」
「…あんたはどうなのさ?」
「ん?」
つづく
「あんたは人を殺せる?」
「まぁ…そりゃあやる気になりゃあ殺すぐらいできるだろうけど…」
「別に殺したくもない?」
「そんな相手もいねぇしな」
「あたしも同じだよ。できるけど、別にしたいとも思わないね」
「なんでぇ祟るって言ったじゃねぇか」
「…死にたい男殺して祟りっていうのかね?」
「渡りに船だと思ったんだがね」
「普通、祟りって、されたくないことされるんじゃないの?」
「…違ぇねぇ」
つまらなそうに、男は大きくマルボロの煙を吸い込んだ。ぼつぼつ
歩いていると公園があった。
女の表情が固くなった。あの公園だ。自分が連れ去られた公園だ。
ここで連れ去られて、殺された。
つづく
今何気なく男が座ったベンチ。そうそこにあたしがいたんだ。
もう何年になるか。十五年?そんなになるか。おかげさまで、
ババアにならずに済んだわ。
「座らねぇのか?」
ベンチの横を男は空けたが女は立って顔を横に振った。
「寒くねぇのかい?そんな恰好で」
「幽霊が風邪をひく?」
「へへ…なるほど」
「さてと、どうやって死んでやるかな。ここで裸で寝てたら朝には
死んでるかな?」
「あんた、家は?」
「…ねぇ。アパート追い出されちまった。家賃払わねぇんだもん。当然
だわな」
「御実家は?」
「なんか親父とお袋が死んで財産分与がどうのこうのって揉めて。全部
親戚連中に取られたんじゃねぇかな。よくワカンネェや。俺ぁ頭悪ぃから」
つづく
よっしゃ!これでどうだー
「仕事はしてないの?」
「頭は悪ぃし。不器用だし、学もなければ腕もねぇ。中学出て、工場で
働いてたけどちょっと怪我しちまって。入院してるうちにクビになってさ。
しばらくアルバイトやってたんだけど、いい加減就職しねぇとなぁと思って
辞めて、面接受けたり履歴書送ったり…そんなことしてるうちに貯金も
なくなって…。頭も刈れない、風呂にも入れない、新しいスーツ買う金もねぇ
しまいにゃ証明写真も履歴書買う金もなくなってな。
どうだい。洒落にならねぇだろ?こんな恰好じゃ誰も雇ってくれねぇわな」
皺のコート、ヨレたスーツ、自分で切ったのか、ぼさぼさの頭髪。清潔には
見えない。門前払いはれても文句の言えない恰好だ。
「それでな、ちょっとだけ金を借りたんだ。五万円。迷ったね。競馬で増やすか、
パチンコで増やすか、それとも身なりをビシッとして就職活動ってのを続けるか…」
「…それでどうしたの?」
「へへ、五万円遊んで使い切って、そのまま死ぬことにしたのよ。それが一番
いいってな。返さなくていいんだ。一番楽だ」
「ばか…」
「今日まで一日に食費が百円だの五十円だのやって、水は人様の家の庭から
かっぱらったり、スーパーの駐車場からかっぱらったり…。それが一気に一日
五万円だぜ」
つづく
「今日一日で使い切ったの?」
「まだ千五百円も残ってるけど、まず…」
調子よく喋っていて急に顔を伏せた。
「…女?」
「えへへ…まだ童貞でよ…そのまま死んじまうのもやだから…三万円も使っちまった…」
恥ずかしそうに煙草を揉み消すと続けざまに新しい煙草を一本咥える。
「それから昼飯…牛丼。腹一杯食った」
「最後のランチが牛丼なの?」
「この恰好じゃあいいレストランも入れねぇだろ?…それにもともと食ったことねぇから
何食ったら美味いのかも分からねぇし…牛丼二杯も食ったんだ。味噌汁もお新香も
つけてさ。それでもまだ二万近く残ってるんだぜ。映画も見たな。あとカラオケに行って…」
「一人で?」
「…携帯も持ってねぇし…メールっての?そういうのも知らねぇし。一緒に飲み行くにも金
もったいなくてな…。いつの間にか誰もいなくなっちまった…」
「…ふぅん…」
少し男は寂しそうな顔をしたが、孤独に慣れている感じがした。ずっと一人。女は自分の生前
を思い出した。親に大切に育てられ、友達もたくさんいた。大学に通っている頃は散々遊んで
男も回りに幾らでもいた。一人で何か食べに行った経験など記憶になかった。
つづく
キタ!(゚∀゚)
途中で合いの手入るとどうなるのかのテストもかねて書き込み。
作者さん、邪魔しちゃったでしょうか?
ごめんなさい…(T_T)
自分はいつも華やかで賑やかだった。死んだ後だって、ああして自分の席を
大切にしてもらっている。賑やかな店の片隅で、寂しいと思ったことはない。
比べてこの男はどうだ。死ぬ覚悟をして尚、孤独。悪い人間じゃない。悪いことも
していない。むしろ実直に生きてきた。たまたま上手くいかなかっただけだ。その最期
がこれか。それでも満足気に笑っている男が惨めに見えた。
いや、それを『惨めだ』と思う自分がいけないのか。この人は今幸せなんだ。今日
一人きりで五万円を使って、人生で一番幸せな時間を過ごしてきたんだ。
「でも、最期一万円取られちまった」
「えー!!なんで!?」
「若い兄ちゃんにからまれちゃって…へへみっともねぇ…」
「最悪…もったいない…」
「…うん。最期は、キャバレーっていうのか?そういう所行ってみたかったなぁ」
「大体若い兄ちゃんにからまれたって、あんたは幾つなの?」
「俺?三十二」
「まだ若いじゃない!それこそもったいないよ!」
「ねぇさん事情が分かってねぇ。就職活動ってのしてみりゃ分かるよ。今時中学
しか出てねぇ男なんざ…。自慢じゃねぇけど体力仕事する体力もねぇんだ。意外
と病弱なんだ。コレで。ちょっとキツいとすぐブッ倒れちまう。みっともねぇ…」
つづく
>>749 とんでもない!ちょっと電話してたもんで遅れただけです。ライブ冷やかし歓迎ですよ!
なんか連投すると止められるシステムになったらしいのでレス数抑える為にこのまま本文に戻ります。
ごめんね。ありがとう^^
(以下、本文続き)
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確かに小柄で細い。肉体労働に耐えられそうではない。これが今の現状なのか。
自分は途中で人生から放り出されて、世間を知らない。でももし生きて世間の荒波に
揉まれていたら幸せになれただろうか。選択を誤らずに人生を渡って行けただろうか。
見れば三十二には見えない。もう四十位に見える。煙草をふかす顔が次第に淋しげ
に変わっていった。話し尽くしたのだ。
「ありがとよ。ねぇさん。話せてよかった。そろそろ、いくよ」
「…死ぬって意味?」
「うん。五万円も、もう返せねぇ。何だかおっかねぇ所で借りたんだ。俺なんかに貸して
くれるんだからマトモじゃねぇよ。住む場所もねぇ。コジキっていうのもなぁ…あれはあれで
大変そうだ。俺には無理だ。電車にでも飛び込むよ。ちょうど線路もあるし」
さっきから時折うるさく電車が行き来していた。線路際の公園である。高架になっているが、
登る為の足掛けのようなものがある。男はそこに手をかけた。細い腕。病弱というのは本当
かもしれない。あるいはもう何かしら病魔に冒されているかもしれない。そんな腕が見えた。
「…ちょっとあんた。おいで!」
「…ん?」
「いいからおいで!」
つづく
「どこに?」
「あんたちゃんと五万返しな。今日借りたなら明日返せばどんな
無茶な利息がついたって一晩で何十万にもならないでしょ?」
「ねぇさん無茶言うない。無理だよ。どこから五万出てくんだ?もう千五百円…
あそうだもう千五百円もあったんだ。これ使ってからにしよう…」
「ぶつぶつ行ってないで来てよ!」
何せ触れない。触れないから手を引っ張って連れて行くわけにもいかない。
しかし強く言うと男はやっとついて来た。
「どこ行くんだい?」
「さっきのお店」
「あーいいね。あそこなら安いから千五百円もあれば結構飲めそうだ」
女は気合を入れた。幽霊が気合を入れるとあることが起こる。ただし相当な気合が
必要だった。しかも疲れる。間に合うか。人はどうか。とにかく女は勝負に出た。
男が『枡や』の引き戸を開けた。風が舞う。満員の店の連中が一瞬ちらりと、入り口に
目をやった。そこにいたのは、小柄な男と、黒いロングスカートの女だった。
店長は固まり、店の客の何分の一かの連中の顔色が変わった。咥えていた煙草を口
から落とす者もいた。
「…マ…マキ…さん…?」
つづく
十五年前の女の姿を、店長と常連客は正確に覚えていた。黒いストレートのロングヘア。
長いまつ毛に切れ長の目。来るはずのない客が来た。
パニックになるどころか静まり返る店内。みんなが憧れていた女。唐突にいなくなった女。
二度と会えない女がそこにいる。
「いるいる…あんたら、あたしの顔に見覚えある奴全員悪いけどカンパしてもらうよ」
「マキさん…あんた…」
「あんたの鉄工所、まだ流行ってるの?」
「お…おかげさまで…」
「一万円ちょうだい(はぁと …あ、あんたもう十五年も経ったんだから少しは出世した?」
「…今は…部長になりまして…」
「えー!おめでとぉ!一万円ちょうだい(はぁと」
誰も断れない。次々に常連からカンパ(カツアゲ)を繰り返し、マキはたちまち十万円を
集めた。
「…あ、と…それから…新聞屋!」
「…は、はい!」
テーブル席の片隅で飲んでいた男が直立不動に立ち上がった。マキが生きているころから
新聞の販売店を営んでいた。通称は当時から『新聞屋』だった。
つづく
「随分あんた老けたわねぇ…」
「…そりゃあ…その、十五年も経ちますから…」
愛想笑いするが笑顔が引きつっている。
「新聞屋、まだやってんでしょ?」
「はい…」
「バイト一人入れてやって。部屋付きで。彼」
指差す先に男がいた。
「新聞配達ぐらいできるでしょ。個室完備だから部屋もある、と。んで、これ
お金。明日ちゃんと返しといで。残りはセンベツ」
集めた十万を男に渡す。更に男を店の連中に紹介してやった。最後に
「あたしの弟だと思って可愛がってやってね」
と付け加えた。今見れば男の方が年上に見えるが、そのままマキが生きていた
とすればマキが当然年上になる。確かに弟で正しい。マキの弟分と本人から
言われれば『枡や』常連衆としては放っておくわけにはいかない。
そしてマキは『疲れた』とだけ言い残すと、自分専用の席に座ってカウンターに
突っ伏し、そのまま薄くなって、消えた。一人ぐらいならばいいが、みんなに姿
を見せるのは『幽霊的に』疲れるらしい。気合が必要なのだ。
つづく
言われた通り借金を返した男は、新聞配達の仕事を始めた。
何とか頑張っている。
休みの前日は必ず『枡や』にやって来た。新聞配達なので、
『ブンちゃん』である。
「お、噂のブンちゃんが来たぞ!」
入って来るなり言われて立ち尽くしているとカウンターにいる
男一人と女二人が興味深げに振り返った。
「よ!ブンちゃん。この兄さんがマキさんの弟分ってわけ!」
「へぇ。あのマキさんのねぇ…よろしく」
「この男がね、山形先生。中学校の先生なんだよ。一代目のユウちゃん。
それからこっちの美人さんがその妹さんのアカネさんで、こっち側の美人
さんが福岡先生。二代目のユウちゃん」
「そんないっぺんに覚えられねぇや。山形先生と福岡先生と…アカリさん?」
「アカネアカネ」
「あーすまねぇ。アカネさん。アネゴと言いこの店は美人ばっか来るなぁ」
つづく
いつの頃からか、男はマキのことを『アネゴ』と呼ぶようになった。
「マキさんか…逢いたかったな…」
一代目がラッキーストライクの煙をくゆらせた。
「素敵な人だったんだったね」
二代目が続くと、マキのことを余り知らないアカネは少しヤキモチを
焼いたようだった。
「マキさんの話ばあぁぁぁっかり」
「あはは。アカネちゃんヤキモチかい?あの人は綺麗だったからねぇ。
でもアカネちゃんは可愛いから」
店長がフォローに入った。
「え。じゃああたしは?」
「二代目は…セクシー」
「何それ?」
一しきり笑うと、一代目はブンちゃんを隣に招いて、マキの話を熱心に
聞いた。
ラッキーストライクとマルボロの煙にいぶされた上、兄を取られて不機嫌に
なったアカネに、店長から好物のズリ(砂肝)が一本、内緒で手渡された。
終
作者さん長時間に渡っての投下乙です!
いやぁ面白かったです!
ホントいい話。しんみりきました。
まとめに載せない、との事ですが、勿体ないですよ!
私はまとめさんではありませんが、外伝的な話として残された方がいいのでは?
というか個人的に残して欲しいです。
途中スイマセンでした(^^;
私の書き込みのすぐあとに投下が止まってしまったので、少し焦りました(^^;
途中から名無しだった。行けた行けた。適当に考えた話だけどどうだろ…。
マキさんのイメージがいつの間にか江角マキコさんになってしまい、
止まらなくなりました…多分ストレートでロングって髪型のせい。
元々のイメージは実はずっと若い頃の飯島 愛さんなんですけどね。
15年前に亡くなったということでちょっとバブリーな感じで。
実は『山形先生』シリーズって全員芸能人のモデルがいるんですよね。(アカネ以外)
滅多に顔のディテールを出さないのでまず気付く人はいないだろうけど…。
一回しか出てこないキャラクターにも全部モデルがいるのでドラマ化する時は
簡単です…が通りすがりみたいなキャラクターのモデルがが人気絶頂の人だったりして…。
無理だね…。ちなみにファンがそんないなそうなので明かせば、『枡や』の店長は、
伊東四朗(顔かたちだけね)…。当たってた人いる?www
なんか出さないつもりだったけど最終的にはユウジロウまで出てきて、
ユウコ先生まで…。アカネと福岡先生が絡んだのって初めて?
ある意味本編より貴重な話になってしまった…。
>>757 ユウジロウ出てきちゃったのでまとめサイト行きですね。
公式なエピソードとします。本当はユウジロウでてくるつもりなかったんだけど
出せ出せとうるさくて…(私の中で…ww)
あの、ライブで冷やかされたりワクテカされると安心するタイプなので
どんどんやっちゃって下さい。そういうスレですよ。通な人は、まずライブ
遭遇したら、おやつを準備して、そのおやつを書き込む。これです。
今ではまとめ人さんぐらいしかしてくれないからちょっと淋しい…ww
ゲリラだった頃はぺヤングだったりこち亀(?)だったりなんかすごかった。
こち亀さんって元気かなぁ…。まだ見てます?覚えてますよーww
第五十二夜 切符
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1154276597/734 マキねぇさんの気風のよさが頭に残ったので、きっぷ…きっぷ…と考えていたらこうなりました。
ブンちゃんみたいなめぐり合わせの悪い人って現実にも居りますが、
やっぱり死んで良いことなんて無いですよね。
たまたま入った店でたまたま座った席の偶然の重なりなのですが、
ブンちゃんは幸せ行きの切符を手に入れました。
根が真面目な彼のことですから、必ず今までの不運を取り戻せるでしょう。
なんだか秋の夜長に黒糖焼酎片手に聞きたくなるような、しんみりとした(・∀・)イイ話ですね。
私はあまりおやつを口にしない性質なのですが、今日は夕ご飯はお供に鑑賞でした。
>>760 相変わらずすげぇセンス…。悔しくなりますよね。(笑)
『キップがいい』なんて日本語自体、すごいいい言葉なのに死後化してますよね。
滅多に使わない。それを感じ取って気風→切符と、これまた。ニクいねどーも!
お後がよろしいようで。。そんな感じを受けました。
ほんといつもサンクスです。
まとめサイト行き、それを聞いて安心しましたーヽ(´ー`)ノ
ペヤングさんとかこち亀さんとか懐かしいですね!
ひそかにロムっていてくれていたらいいですよねw
思えばたまたま見ていたスレにたまたま七不思議の話が投下されていて…
それが山形先生との出会いでしたが、正直こんな形で
物語を読める様になるなんて、思ってもいませんでした。
私はロム専でしたので、スレ立てしてくれた方々に感謝感謝です。
そして作者さん、まとめ人さん、タイトルさん、本当にいつもお疲れさまです!
私は読者としてついていきますので、皆様これからも頑張ってください!^^
今回の話、まじでホロっときそうになりました・・・
私、決して涙もろくは無いですよ。でも、目頭にジーンときました。
仕事がうまく行ってないとか、そういうのもあるのかな・・・ラストがまた微笑ましくて良かったです。
なんか、最近の作品はどれも会話のリズムが良くてドンドンと作中世界に引き込まれてしまいます。
ところで、連投規制の件はどうなったのでしょうか?
これまでのように山形先生の話が読めるように、善処していただければ幸いです・・・
>>763 お褒めの言葉ありがとうございます^^
善処と申されましても工夫のしようがありません。メモ帳などに書き溜めて投下することは
可能ですがライブ感が減りますし、何より書いてる私が楽しくない。作品の質もある意味で
低下すると思います。(もっと読み物的な要素が強くなり、単なる小説になる気がします)
というか、読んでいる感じ、印象が全く別物になる気がします。
現時点で最善なのはとにかくゆっくり投下することです。
一話に4時間以上かかります。これは私は勿論、ライブで読んでる人にも辛い状態だと
思います。今までは一話2時間でしたから。
前編。後編に分けて、二日で一話が完結ということも考えましたが、きちんの話のスジ
を考えて書いているわけではないので、私の気分などで一日目と二日目の雰囲気が
全く変わってしまう、記憶違いなどで一話の中に矛盾する点が出てくるなどの懸念も
あり断念せざるを得ません。
『一応』続けるつもりですが、現段階でどういう形で続けていくかは分からない状況です。
御理解下さい…。善処したくてもできない状況です。。
『バイバイさるさん』の為、思うような投稿ができず、今後を
思案しています。
よって今夜も『テスト』とします。まとめサイトへの投稿は不必要です。
前回『第五十二夜 切符』はたまたまうまくいきましたが今回はどうなるかわかりません。
あくまで『テスト』ですので、『バイバイさるさん』による途中停止、投稿中止の可能性が
あります。あらかじめ御了承下さい。
前回は、「まとめサイトへの掲載必要なし」としながらも、舞台を『枡や』とし、『山形先生
シリーズ』への依存が見られましたので結局、「まとめサイトへの掲載許可」となり、
まとめサイト管理人さまを混乱させてしまった気がします。
従って、今回は、『山形先生』を完全に離れます。繰り返し申し上げます。これは『テスト』
です。途中停止、投稿中止の可能性があります。あらかじめ御了承下さい。
ただし、今夜の投稿を中止する旨は、避難所へ報告致しますので、気になった方は一度
避難所を覗いて見て下さい。よろしくお願いします。
さてここらで不思議な話でもするか…
しばらく満足感に浸りながらスレッドを眺めて、約10分後に新着したレスポンスに、私は更なる
満足を味わった。八月二十三日。二十時前。五時間近く書き続けた。
これで給料でも振り込まれれば言うことはないのだが…。禁煙をして一年以上になるが、
それによって、やめられなくなってしまった禁煙用のパイプを咥えて、私は伸びをした。
背骨のどこかが軽い音を立てる。多少疲れている。キーボードの横のグラスに安物のウイスキー
を注いで、一口、すすった。熱い。アルコールが灼熱を伴って咽元を過ぎていく。食道が熱い。
と、タスクバーに納まっていたメッセンジャーがメールが来たことを通知した。食事を摂りたかったが
先にメールを見ることにした。
『山形先生作者 作者 ◆xDdCPf7i9g さまへ』
タイトルにはそうある。友人で私が某巨大掲示板の数ある板の一角で、小説めいたモノを連載している
ことを知っているのは、ある女性一人しかいない。彼女からだろうか。しかし『送信者』の欄には見慣れない
名がある。
マウスを操る手が止まった。何気ないそのメールが途端に怪しいものに見えてきた。
パソコン歴は短いほうではないが、使うばかりで内部的なこと、セキュリティ的なことは余り詳しくない。
ファイアウォール、バックドア、クラッキング、ウイルス、トロイの木馬…あらゆる聞き覚えのあるセキュリティ
用語だけが頭を巡るがどれもぱっとしない。
何者か分からない誰かからのメール。『山形先生作者 作者 ◆xDdCPf7i9g さまへ』…。私が、『山形先生』
と呼ばれる小説の作者であることを知る者はいないはずだ。ある一人の女性を除いて。
つづく
しかしその女性の名は既にアドレス帳に登録してあるし、『送信者』の欄には
彼女の名が出るはずだが、今見えているその名は見覚えのない、明らかな
ハンドルネームだ。
掲示板で『山形先生』を読んでいる誰かが送ってきた、と考えるのが妥当だが
私はメールアドレスを公表していない。『山形先生』の読者の中に私のメール
アドレスを知る者はないはずだ。
開いていいものか。迷った挙句、開く。
『突然のメール失礼致します。山形先生シリーズ楽しく拝読させて頂いています』
でそのメールは始まっている。悪戯でもなさそうだ。一応私信であるから詳しい
内容は省くが本文は短く、添付ファイルとして、テキストファイルがついていた。
テキストファイルを装ったウイルスか何かだろうか。第二の選択を迫られる。
メールは問題ないようだった。添付ファイルはどうか。
アンチウイルスソフトに通してみるが反応はない。ファイルサイズも小さいもので、
恐らく大丈夫だろうと一度保存して改めて開いて見た。
長文である。謎の文字列というわけでもない。丁寧な日本語で、書かれている内容
といえば、全て『山形先生』にまつわるものだった。
長大な感想文。そして分析。その文章はこんな一文で始まる。
『これは山形先生シリーズに対する私的な考察である。まず第一に特筆すべきは、
この小説ともよべる作品群の主な舞台といえる中学校の名称が不明という点である』
つづく
私生活かな?
件の女性の文章とは明らかに違うしっかりとした日本語。
誰も気付いていまいと思い、一人悦に入っていた事実をいきなりつきつけられた。
『山形先生』という作品の主な舞台は主人公、山形先生が通う中学校である。
しかし現時点で五十話を超える作中に具体的な中学校の名を書いたことは一度も
ない。確信的な私の軽い悪戯だった。誰にも気付かれないように仕込んだつもりだ。
読者が何かで『山形先生』を思い出す時、『あれ?あの中学って何中だっけ?』と
気にする。気になって作品を順に読み始める。しかし絶対に見つからない。作品の
舞台だ。容易に見つかるだろうと思われた中学校名がどこを何度読んでも出てこない。
『どうだ気になるだろう?』 私は思う。そんな悪趣味な、悪戯。最低でも、連載している
掲示板上で、『そういえば中学の名前は何ですか?』と質問を受けたことはない。誰もが
勝手に知っているはずと思い込んで、でも誰もが知らない。
そんな不思議な仕掛けを人知れずしたつもりでいた。それを頭から指摘された。
相当読み込んでいる人だ…。私は自分のメールアドレスがいつの間にか知られていた
という最も重大な問題を離れて、そのテキストに読み入った。
『作中に出てくる人物の特徴として、人生の落伍者、一般的に見て不幸な人物がある。
そしてその不幸な人物は必ず報われるのである。時としてそれは死(不幸せな人生から
の逃亡)をもって表現される。このことから鑑みるに、これは作者のカタルシスであり、
作者の投影といえる。また投稿時間の自由度などから作者は、無職またはフリーター
と考えられ、また自分の人生に決して満足しているとはいえない、と考えることができる
のである』
つづく
考察は作者である私自身にまで及ぶ。『山形先生』を媒体として、
この謎の送信者の思考が私を侵食する。無論ここでそれが正答
であるかどうか、記すことはできない。それは下手をすれば、私の
全てを晒す結果になるかもしれないからだ。
『また、霊といった存在に対する肯定的で独特な見解から作者は
死を望んでいる。つまり死後の世界に期待している姿勢が垣間見える
のである。また登場する女性が不自然なまでに一様に美女揃いである
点から、作者は醜形恐怖があり、また女性の可能性、男性である場合、
若干性倒錯の傾向が見られる』
テキストの口調が仮定的なものから断定的なものに変わる。一体何が
したいのか。テキストの中での作者、つまり私は、性倒錯がある醜形
恐怖症(自分が醜いと妄想的に思い込む病気)者の無職及びフリーター
ということになっている。
『セックスシーンや主人公山形ユウジロウの奇行などから考えると作者
の女性経験は浅く、一人ないし二人程度。性的には未完成でコンプレックス
を抱いている』
何とか書けそうな部分だけ抜粋して記す。テキストにはある意味辛辣な
表現もある。『送信者』は勝手な私の『真相』に近づく。
『喫煙シーンがあるが、アカネは煙草を嫌っている。アカネはXXXであるから
作者は現在禁煙中、もしくは元喫煙者』
つづく
中学の名前、、
あー。。そういえば。
まんまと悪戯に引っかかった1人デス(´・ω・`)
今日はノンフィクション?
ドキドキ(O_O)
禁煙用のパイプを口から離し、眺めた。伏字部分はここでは明かせない。
言ってしまえばそこは、謎の送信者の思ったとおりの真実が記されていたと
私が認めた、ということだ。
登場人物の台詞などを精神分析的に解析しそれを元に作者を覗く。
余りに悪趣味といえた。これが最も熱心な読者の至る境地なのか。
テキストはまだまだ続くがもうここで明かすことができる内容が少ない。
正直申し上げよう。私は敗北を認める。余りに正確、的確。私はモニターの
前で丸裸にされた。
更に舞台。ユウジロウが死体を犯した『廃病院』、ユウジロウの実家『ツネコの住む家』、
カーセックスを覗きに行った『龍神湖』、キノコの幻覚スープを奪った『松ヶ森』、
不良を使って帰宅途中の女を騙そうとした『堂坂公園』、連斬りを試した『北方公園』、
そして『枡や』や、度々登場する『川』…。
いつの間にか私がかなり正確に位置や場所を描写してしまった数々の場所。
『それらは恐らく作者本人の自宅をユウジロウの自宅と同位置とした場合、それぞれ
対応する何らかの場所があると考えられ、逆算することで作者本人の自宅位置が
特定できる』
まさか。確かにそれぞれモデルにした場所はある。しかしその名も雰囲気も、アレンジ
されている。分かってたまるものか。具体的に何県かすら書いたことはない。
『私が推測するに正確な場所の特定はできないがXXXのXX市内であることに間違いは
ない』
つづく
今日はサスペンスですね・・・ゴクリ(AA略
まるで軍隊の監視衛星か何かに発見されたような気分を味わった。
背中を冷たいものが流れていく。間違いなく、それは私の住む町の
名だった。
『XX市に中学校はX箇所あり、そのいずれかが物語の舞台である中学
であり、作者の通っていたそれである』
ここで謎の送信者はあるとんでもない方法でそのモデルとなった中学、
即ち私の通っていた中学校を割り出した。私は住んでいる市を見破られ、
更に、通っていた中学まで割り出されてしまった。
『恐らく作者は一人暮らしではなく自宅暮らし。ユウジロウが持ち家を持ち
妹と二人暮しをしているという設定は作者の強烈な願望からきている』
その通りだ。その中学に通っていた時と、私は同じ家に住んでいる。謎の
送信者の指摘もそうで、そうなればもう大体の住所は割れてしまったような
ものだ。その中学の通学範囲内に私はいる。
まだテキストは続いていたが、メッセンジャーがまた新着のメールがある
ことを知らせてくれた。その送信者もまた同じ名義だった。
今度はなぜか携帯のアドレスから送られてきている。
携帯からだというのに長文だ。時間を見る。二十時三十分。
『新作、携帯でチェックしました。乙です。ブンちゃんのモデルも作者さん
ですね』
つづく
うひゃっ、ライブ初遭遇だぁ(^o^)
え〜っと、つまみは……乾燥梅干しぐらいしかないや(ToT)
テストとはいえ…ドキドキの展開!(`・ω・´)
そうだ。さっきまで今日の分を書いていた。それを読んだ、新たな
感想、分析分。先の話が終了したのが二十時前。謎の送信者は
三十分足らずで分析し携帯のあの打ちにくいキーでこれだけの長文
メールを仕上げたのか。
大体何故携帯でチェックし、携帯でメールしてくるのだろう。
あり得ない考えが私を襲った。
『作者の自殺願望が今作でも強く投影されている。今作のブンちゃん
こそ作者そのものといっていいだろう。この線路に作者も実際飛び込もう
としたのがありありと伝わってくる』
…。『この線路に作者も実際飛び込もうとしたのが』…。『この線路に』…。
『この』…。
あり得ない考えが現実味を帯びた。この。この。この。謎の送信者は線路
が見える所からメールを打った。その線路はただの線路ではない。私が
以前飛び込もうとし、そして作中では『ブンちゃん』が飛び込もうとした、
『その』線路だ。
近い。もう謎の送信者は私の近くまで来ている。来てどうする?サインでも
求められるのか?それだけならまだいい。このまま逃げ出したい気持ちも
あるがメールの続きも気になる。
『作者の自殺願望は見るに耐えないものがある。また作品とは直接関係が
ないが、スレ中でのへりくだった態度、感想などに対する丁寧なレスポンス。
作者には対人恐怖の傾向も見られる。絶えず読者離れや作品に飽きられる
ことを恐れているのが分かる。見ていてしのびない気持ちになる』
つづく
気になる展開にドキドキ…風呂上がりのおやつはスイカにしまする
おやつがない!お酒だけでマターリ読んでます。
余計なお世話だ!だから何だと言うのだ!私は憤っていた。
『はっきり言う、見ていて痛々しいのである。山形先生は好きだが
好きが故に作者の心の痛みが見るに耐えないのである。よって
私はその執行者となる』
突然意味の分からない文面になった。執行者?どういうことだ。
もう一度、少し前から読み返す。
『自殺願望…恐れ…痛々しい…執行者となる…』
パソコンの電源もそのままに私は夜の町へと逃げていた。町と
行っても大した町ではない。住宅街だ。コンビニもない。
謎の送信者は私を自殺願望の強い男と勝手に判断し、それを
『執行』…つまり殺しに来たのだ。
自殺願望はないわけではない。いや、厳密に言えば、あった。
そう。山形先生を書き始めたきっかけは失恋の寂しさを紛らわせる
為だった。大失恋だった。だから立ち直るまでの間、随所にそういう
部分はあったかもしれない。しかし今は立ち直った。自殺なんて
とんでもない。
ただ、自分の一時的な自殺願望から私は人の弱さを知った。それは
失いたくなかった。だから私は弱かった自分を思い返して、それを
忘れないために、度々弱い、儚い人間を描いてきた。
今も自殺願望のカタマリである、などというのは謎の送信者の勝手な
思い違いだ!
つづく
で?で?どうなるの???
夜の町。しかし逃げると言ってもどこへ逃げる?
自宅にいるのが最も安全ではないか?
大体敵の顔も知らないのだ。誰から逃げればいいのかすら
分からない。
奴は『線路』といった。あの時点で駅か、その周辺にいたのだ。
駅から離れよう。そもそも奴は俺の顔を知っているのか?
いや、住所は恐らく割り出されている。下見ぐらいには来ている
かもしれない。可能性は充分にある。
不利だ。私は敵の顔を知らず、敵は私の顔を知っている。深く
夜の闇に潜る潜水艦に等しい。
一度家に戻ろう。よく考えれば一番安全だ。まさか奴も押し入って
くることはないだろう。
私は振り返った。腹が熱い。何かがある。何かに押されている。
私は振り返った奴の腹を刺した。深々と。何事が起こったか奴は
気付いていないらしい。悲鳴もあげず、もぞもぞと俺をまさぐっている。
全てお見通しだ。作者の思うこと。行動。私からすれば作者など、
『霧原トオルに触れられている人』と同じだ。作品から全てを読み取った。
そして今夜。私は執行者となって、作者の夢をかなえた。私にできる
精一杯のこと。これが『山形先生』の購読料だ。
つづく
私は自宅に戻る。目を閉じれば全て分かる。作者の思想、思考。
私は作者の家とはかけ離れた場所にいるが目を閉じれば作者の
家がありありと思い浮かぶ。部屋の構造も。みてはいないが作者
のセンスならこういった部屋に暮らしているはずだ。
八月二十四日。〇時前。
私は執行者であり、後継者だ。
そうもう一つ問題があった。トリップだ。だが作者の思考をもって
すれば作者がどんなトリップをつけていたかはっきりと分かる。
これからは私が作者になる。
ただ何も変わりはしない。目を閉じて見えるあの部屋で、彼の
自殺願望を心に再現しつつ、彼の思考で描けば、いつも通り
の『山形先生』が再現できる。
何も変わらない。読んでいる者には、何も分からない。
これを書いているのが、『作者』なのか『謎の送信者』なのか。
誰も分からない。IDがcsuzTWxy0 になった瞬間。
私は私になったのだ。
終
…コワス(・_・;)
作者サマは作者サマだよね?
リアルじゃないよねぇー?
えぇー(゚o゚) 作者さん…これはノンフィクションですよね?
熱烈ファン怖すぎ…
9時8分スタートの11時43分終り。3時間近くかな。
んでレス番766〜783…17レス…。
とりあえず止められないでまったり行けた。
スピード、ボリューム感どんな感じだったかな?
酒やって筋肉少女帯聞きながら、『かなり』 ゆっくり書いた。
一応サスペンス…っていうのかな。ジワジワ系だからゆっくり
でもライブ的にはおkでしょって感じで。その辺も含めて感想
お待ちしています。
>>785です
×ノンフィクション
○フィクション
でした。 m(__)m
((((((;゚Д゚))))))
一体どこまでがフィクションなのでしょうか…?(^^;
しかし本当にこんなメールが届いたら怖いなぁ…。
…って、本当に届いてたりして。
え?フィクションですよね、作者さん!?(^^;
サスペンスもいいですね!なんかドキドキしました…w
ゆっくりだと途中合いの手たくさん入るし、長くやる分ライブ遭遇
も増えるから楽しいね。
合いの手、感想くれた人ありがとです^^ すげーうれしい。
ところで今回のこの話、ちょっとどこまでリアルかどうかは明かせません。マジで…。
とりあえず全くのフィクションではない、ということだけ言っておきます…。
あと私自身の感想として『…本当に怖かった…ガクブル…』
殊能将之だっけ?彼を思い出した。
なんか、こういうどっちがどっち?みたいなストーリって面白い!
中学の名前は思いも付かなかったですが、実は公園の名前は気になっていましたw
現実にありそうな名前だし、モデルはどこかな〜って
タイトルの中の人より
>>790 うわーなんかタイトルの中の人様から普通の感想ってなんか新鮮!
ぅおぅ…プロの作家さんと並べられるとは…しかし頭絞ってこれは誰も
考えねぇだろ!と思っても同じようなこと考える方はいるんだなぁ…。
そのシュノウさんという方は名前ぐらいしか存じ上げませんが…。
あのハサミ男?なんだっけ?そんなの書いた人だと記憶。もしこの記憶
が当たってたら俺ちょっとすごいかも。何年も前にワイドショーみたいな
番組の書籍紹介コーナーで一回だけ見た記憶…もう何年も前…。
>>789 ちょwww
kwsk!wwwww
…って無理ですかねやっぱり(^^;
でもオカ板住人としてはかなり興味がある展開…w
>>789 でも、マジで作者氏は抱え込みすぎるんじゃないかと心配だ。
雑談の方もレスが少ないと落としてしまったほうが・・・って
テンション下がってるし。
ちゃんと見てる人は見てるし、ROM専だっているだろうし
あんま内に入らないように。本当に心配だぞw
>>793 抱え込むというか…ちょっと神経質で、本編にもあるけど実際対人恐怖気味で
あります。
でもだからそんな『作者』はもう死んだんだよ…そして『謎の送信者』に…ww
いや、本当にちょっと気にし屋なんです。本来2ちゃんねるなんか本当に
煽られたりするのが怖くてカキコできないような人間なんですよー。ROMですもん。
それがたまたま大失恋の腹いせに書き込んだのが何の因果かこんなことに…。
スレの雰囲気がとってもいいので調子こいて連載させてもらってますけど。
でも本当に色んな人からレス頂いたりしてその喜びは計り知れないので
心配無用ですよ。大丈夫です^^ 心配してくれてありがとう。
作者さんお疲れ様です。面白かったです。
次からこのペースですか?
明日からに備えて教えていただけますか。
>>795 そうですね。ちょっと不本意ですが、誤字が減る、文法的な体裁が
少し整うという利点はありますが、『バイバイさるさん』を回避しての
書き込み速度の限界を考えると、今日ぐらいの速度でギリギリじゃ
ないかと考えます。
少しボリュームは減り、速度も落ちる。ただ何レスで終了させるという
のを事前に計算できる程のスキルはないので、リズムは今回のテスト
作品程度、長さは2時間30分〜3時間30分程度で一話、と考えて
もらえると妥当かと存じます。
リズムが悪くなってしまったのは個人的に悔しいです。特にユーモラス
でリズミカルな会話シーンなどではその面白さも半減すると思います。
今回はサスペンス調だったのでゆっくりでもジワジワと迫る怖さを
楽しめたのではないかと思いますが、怖さ以上に面白さ、楽しさを追求
される『山形先生』がこのリズムで通用するか。やってみないと
わかりません。
一応やはり試験的にという前提ですが明日投下しますので、もし遭遇
できましたら御参加頂いて、感想頂けると嬉しいです。
約一週間分まとめて読んだ。すんごい読み応えありました。
中でも文化祭話と桝やのマキさんの話、いいですねぇ。テンポ良くて面白いし、作品中にいいタイミングで出てくる食べ物がたまりませんw
作者さん、まとめ人さん、タイトル人さん、いつも乙です。
スレ住人さん達のレスも楽しく読んでます。皆さん、本当に乙です!
>>791 正解。
ハサミ男です。
他にも何作か書いてるようですが、ハサミ男が一番面白かった。
オチはウェ工エエェェ(´д`)ェェエエ工工って感じでしたがw
さて、ここらで怖い話でもするか。
ホーク有吉(第四十六夜 『パンドラの匣』 参照)は、あるさびれた温泉街
へ来ていた。
つづく
ホークキタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!
『伝説のAV男優』、『魔法の指』、『黄金の腰』…。彼の栄光を彩る異名は
枚挙に暇がない。
現役にして既に伝説的アダルトビデオ男優である。当年とって四十六歳。
引退宣言こそしていないが事実上もうアダルトビデオの仕事はほとんど
していない。その知名度の高さからテレビ出演や講演活動、執筆活動
などでそれなりの収入を得ていた。
五十が限界、と彼は感じていた。それにしてもあと四年。もつか。
八〇年代のビデオデッキの家庭普及にあわせて急成長を遂げたアダルト
ビデオ業界。その創成期から業界を支えてきた。
夜の街をさすらう奔放な遊び人だった当時、『女を抱いて仕事になる』という
話を聞いて飛びついた。趣味と実益を兼ねる。一挙両得。そんな言葉が頭
にあった。
ギャラは二束三文で、到底生活できる額ではなく、文句を言えど
「女抱いて金をもらえるだけありがたいと思え」
と突っぱねられた。
生計を立てるには数をこなす必要があった。週に何人の女を抱いたか。
調子の良し悪し、気分の良し悪しなど関係なかった。とにかく見境なく女を
抱いた。その頃には趣味とは言えなくなっていた。
正直言えば、苦痛だった。街で浮名を流し、好きな時に好きな相手と、
好きな場所で好きなようにやる。いかにそれが幸せだったか。
つづく
そう。名声を得た今でこそあるが、本当に楽しかったのは当時だ。
思い出すこともない。アダルトビデオ男優となり、忙しく女を仕事として
抱いた。抱き続けた。性の衰えに脅威を感じ、容姿の衰えに恐怖を感じ、
ジムで肉体を何とか保ちながら二十余年。
青少年の羨望を集め、伝説の主人公となり、今に至る。人生を振り返る
余裕が最近になってやっとできた。
しかし遅すぎた。思い出せば楽しかった頃ははるか遠く。これから
どう生きるか。職業柄、婚期も逃した。生ける伝説と持てはやされては
いるが、それほど裕福というわけでもない。知名度にしても、『アダルト
ビデオ男優にしては高い』というだけで、たかが知れている。
テレビ出演や執筆活動もいつまで続けられるか。
しかし、男優として、相手はともかく六千人の女を抱いてきたことに誇り
を持っている。それだけは確かだ。
一生でそれだけの数の女を抱ける男などそうはいまい。
俺は頂点にいる。
その頂点である彼にある日、老夫婦が訪ねてきた。とにかく病弱で、
セックスをすればたちまちのうちに死んでしまうような娘とセックスを
してくれ、と老夫婦は懇願した。
つづく
彼は悩んだ。『伝説』としてふさわしい話ではないか。しかし、詳しく話を
聞けば聞くほど無理だった。
後でその事実を本にして売るなり、テレビカメラの前で語れば美談に
なる。しかしリスクが高すぎた。下手をすれば殺人犯に転落する。
悩んだ挙句、断った。今でもその判断が正しかったかは迷うところだった。
やればできたかもしれない。
その後、その娘がどうなったかは知らない。
しかし、その娘の話を聞いて、思い出したことがあった。『山形』という男の
名だった。
懐かしい名だ。もう二十年以上聞かぬ名だ。忙しさに思い出すこともなかった。
自分に集まる栄光にかき消されたその名。
まだビデオデッキすら家庭にそれほど普及していなかった時代。街に
繰り出しては女を漁り、好きなように抱いていた、あの頃。その名はホーク有吉、
当時本名有吉健二の背後に付きまとった。
日本中、とにかく繁華街、若者の街を飛び回り、あちこちで遊びまわっていた
彼は絶えずナンバー2の扱いだった。
ではナンバー1は誰かと問うならば。それは『山形』だった。
名も聞いたが記憶にない。忌々しい名だった。
つづく
「あんた、確かにウマいけど、もっとすごい男を知ってるよ」
コトを済ませて隣で煙草をふかす女は度々そう言ったものだった。
『いや、それはお前の身体が未熟だからさ。本当にウマい男
は俺のことさ』
心で呟き、女の発言を揉み消す。
それが今になって気になりはじめた。『伝説のAV男優』、
『魔法の指』、『黄金の腰』…本当か?踊らされているだけなのか?
老夫婦の訪問により、『山形』の名を思い出してからというもの、
有吉は当時押し殺していた苦悩を今更に感じるのであった。
『山形』誰なんだそいつは。顔もよくない。服の着こなしも良くない。
一見平凡。いやむしろ、モテない、サエない。デキないの三拍子
揃った男に見えると言う話は聞く。
それが女を抱くに至り豹変する。完璧なテクニックと絶妙なタイミング。
女の心をつかみ虜にする。一晩彼と共にした女は彼に狂い、愛し、
惚れ、求め、欲する。ところがその朝には彼は消えているのだ。
正体不明。当時は彼が『伝説』であった。
現在の『伝説』である彼は、過去の『伝説』との対決を望んだ。
人知れず。二十年の時を超えて。
つづく
東京、仙台、札幌、大阪、神戸…彼は正体を隠しさすらったが、
街の移り変わりは激しく、二十年の時の壁は大きかった。
そしてたどりついた温泉町。さびれて、観光客もいない。旅館を
訪ねようと入り口には立ったが、そこには
「お客様各位へ
事情により閉館致します。まことに申し訳ありません」
の貼り紙が寂しく風に吹かれているばかりだった。
来たことはある。とにかくいい女がいると聞けば、女に貢がせて
でも金を工面して遊び歩いていた頃だ。
当時、この町は半ば色街だった。男ばかりが遊びに来る。
旅館に泊まるとほぼ全ての旅館では女を抱え込んでいて、金
次第でその宿が雇っている女とセックスができた。
要するに売春宿の街だった。無論当時から非合法だ。しかし時と
共に取り締まりは厳しくなり、その街の存在自体を知る者も少なくなる。
当然だ。まさか観光ガイドブックに
「売春やってます」
とは書けまい。温泉地としては二流三流。旅館やホテルもそんな目的
のものばかりだからたかが知れている。やがて女を抱え込む経済力も
失い、旅館そのものを維持する力も失い、街そのものが維持できなく
なった。
つづく
何とか一軒の旅館を見つけた。陰気なたたずまいだ。
玄関をくぐると、もう老婆と言ってもいい女将が出迎えた。
一応サングラスで偽装したホーク有吉は開口一番率直に聞いた。
「ここは女が買えるかい?」
女将はにやりと笑うと
「…お客様…当館は旅館でございます…。花を買うことはできますが」
と答えた。それでいい。はっきりと『女を買う』といえばたちまち官権の
手に落ちる。『花を買う』は隠語だ。要するにここでは女を買えるのだ。
「早いつぼみではなく、枯れかかった花を探しているんだが…」
「…はい。当館では枯れかけの花ばかり御用意して御座います」
通常ならば『早いつぼみ』即ち『若い娘』を求めるところだろう。ところが
ここでは『枯れかけの花』、『歳のいった女』ばかり抱えていると言う。
よくやっていけるものだと思ったが、アダルトビデオの世界でも『熟女
ブーム』があり、そういう趣味の者もいるのだろうと納得した。
部屋に通される。もう既に布団が敷いてある。やはり最初から、
『そういった目的』の宿なのだろう。
つづく
一応茶の用意をしてくれるサービスはあるようだ。もたりと
した動作で女将が茶の用意をしてくれている。
有吉はその緩慢な動作を見ながら質問をした。
「もう二十年以上前の話ですが、山形という方を御存知ですか?」
キュウスを止め、女将は茶碗の底を眺めながら小さい声で言う。
「山形…はあ…。山形ユウジロウ様で…?」
そう。ユウジロウ。その名だ。ここには二十余年前の空気がまだ
流れているらしい。
「…そう。彼の相手をした女を呼んで欲しい」
「ほほほ…この宿の花は、全て山形様と関係しております…」
いやな記憶に間違いはないらしい。噂かと思っていた。『山形
ユウジロウが良い』という噂が噂を呼び、女の方から求め、その良さ
を次々に女に伝え、聞いた女がまた彼を試したがり…という夢のような
連鎖のうちに、山形ユウジロウなる男が売春宿一軒全ての女をモノにした
という話は幾つか聞いている。無論そんなことを普通にすれば莫大な
滞在費と、揚げ代(女を買う金)がかかるが、あろうことか、余りの良さに、
その費用を通常なら買われるはずの女が支払っていたと言うのだ。
自分を自分で買う。信じられない事態が、山形の手によって引き起こされて
いたという。
つづく
ホーク有吉キテター!(゚∀゚)
夜も更けたので今日はおやつ無しw
一服しながら楽しみますw(´ー`)y‐~
つまりユウジロウは女に快楽を与える引き換えに、自分の
懐を痛めるとこなく無料で宿に滞在し、女を抱いていたのだ。
金を払ってでもやりたい男。それがどれほどのものか。いや、
今の自分にはその価値があるはずだ。
有吉は部屋を出て行く女将に何も言わず茶をすすって女を
待った。ユウジロウとはるか以前、関係した女を。
やがて女は現れた。まだ若く見える。また三十にもいって
いないのではないか。幾ら商売女とは言え、女性に年齢を
いきなり聞くのははばかられた。
しかし聞けば確かに山形ユウジロウのことを昨日のことのように
覚えているという。
こんな温泉町にしては、美人の部類に入るであろうその女は、
伽の準備をしながらユウジロウの話を懐かしげに語った。
話の内容からすれば間違いない。この女、ユウジロウの肉体を
知っている。それにしても若い。もしや山形、最近にもここを訪れて
いるのではないか。
歳の頃からすれば自分と同じか少し若い程度だ。まだ現役で
おかしくはない。さもなれば…・
つづく
二十余年前の『伝説』ではなく、今現在の山形と勝負ができる。
当時は敗北を認めるとしようよう。しかし齢五十を前にして今はどうだ。
二十余年間で六千人の女を抱き、今や生ける伝説の名は自分のものだ。
いざ現在の『伝説』が、四半世紀前の『伝説』に挑む。
丹念なキス。ペッティング。女は喘いで、たちまちに濡れた。いつも通り。
二十年間、仕事として繰り返してきたことだ。
多少黒ずんだ乳首を口に含みながら、次第に愛撫の手を陰部へと
近づけていく。
「…そんなに…焦らしちゃいや…」
見えない『伝説』との勝負。有吉はプロとしての全てをその女にぶつけた。
女もプロである。必死に有吉のペニスに手を伸ばすが至らない。彼の
与える快楽が彼女をのけぞらせ、彼女に仕事を忘れさせる。
『最強の指』、『至極の指』、『快楽の指』、ペニスよりむしろ手だ。彼の伝説
を彩り、支えてきた指。その指が女のヴァギナにゆっくりと挿しこまれた。
『…お前にできるかユウジロウ!』
筆舌に尽くしがたいその動きと技術。彼女自身に挿入された指は、水を
得た魚のように、その中で踊り狂い、舞い狂う。全てはしたたかに濡れた
暗い穴の中。決してカメラにも映らない部分である。
つづく
したたり落ちる愛液が、有吉の腕全体に及ぶ。
女は快楽にむせび、身体を反り返す。隣の部屋どころか
外へも届くだろう喘ぎ声を響かせた。
「あっあぁあ…だめっ!!指だけでいっちゃうっ!!」
それほど大きいとは言えないペニス。しかし講演活動や、自身
の書籍の中で、ペニスの大きさは問題ではないと散々述べてきた
有吉である。十四センチのペニスが指に変わって挿入された。
ペッティングにかける時間。ヴァギナを愛撫する時間。指を抜いて
からペニスを挿入するまでの素早さ。全てが計算されていた。
間違いないはずだ。これでいい。撮影で監督に何か指示されるわけ
でもない。自分なりの最高のセックス。その形がここにある。
背後から責める。女の肩甲骨が艶っぽく左右に波打つ。
「…あぁ…いい…いい…」
背中の筋肉に疲労を感じる。しかしここで腰は止められない。
有吉の腰はクライマックスに向かって更に激しく前後する。
このまま正上位に移行すべきか。いや。アダルトビデオの撮影ではない。
このままバックでいこう。このまま果てさせよう。
気付けば。
女の首は畳の上に落ちていた。
つづく
頭のない身体に懸命に突き立てていた。
女がコウベを垂れているのかと思えば、違う。女の頭そのものが
そっくり落ちていたのだ。
ペニスを抜いて後ずさると、支えを失った身体が突っ伏すように潰れる。
上からのしかかって来た身体に弾き出されて、女の頭が転がった。
長い髪をまとったその顔は無念そうに有吉を見ている。
「…山形様は…もっとよかった…」
女は消えた。身体も、頭も。有吉は腐っているのか変に柔らかい畳の
上で全裸で座り込んでいた。朽ちかけたちゃぶ台の上には、ひび割れた
茶碗が乗っていた。
慌てて服を着て、飛び出す。全てが朽ちている。荒らされているわけ
ではないが、完全な廃屋だ。入り口の引き戸には鍵がかかっていたが、
内側からは簡単に開けることができた。
転がるように外へ飛び出る。誰もいない町。さびれた温泉町。
のんきに赤い原付バイクに乗った郵便配達員が、向こう角から現れた。
地面に座り込んでいる有吉に気付いてブレーキをかけた。
「おい、大丈夫かね?」
つづく
自分より年上の郵便配達員だった。
「…あ…この旅館は…」
「もう随分前に潰れたよ」
暇そうな郵便配達員はバイクから降りると道の傍らにあった小さい岩に
腰掛けると煙草を吸いながら語った。
二十年以上前この町に山形という若い男がやってきて、その宿に逗留した。
その宿ももちろん売春宿だった。男は店の女を次々に買うと、そのテクニックの
虜にしていった。やがて店の女は全てその男のモノとなった。
男の滞在費の面倒を見てやり、自分を売る金も自分で払う。山形は一銭も払う
ことなく、全て店の女に面倒を見させた。
店の女は山形に夢中になり、他の客と関係することをいやがった。女将が無理に
押し付けると、女は客のセックスに満足せず、全くつまらなそうにする。
金を払ってやっているのに相手の女が悦ばない。客として納得できるはずもなく、
客足は離れた。
相変わらず山形はいる。その滞在費や女の代金は全て店で雇い入れている
女が払っている。一軒の旅館の中で金が回っているだけ。
かといって山形が帰ろうとすれば、女もついて行くと言う。
しかしあくまで旅館である。山形の帰宅の日はやってきた。
つづく
一応山形は女たちに旅館にとどまるように説得し、
『また来るから』と去っていった。そう言われた以上女たちは
彼の再来を待ち続けた。
その間、彼女たちの仕事の質は明らかに落ちていった。
「だって下手なんだもん」
客の性的な技術のなさに不満を漏らすようになった女たち。
落ちる売り上げ。ついに女将とある一人の雇われ女の口論となり、
女将はその女を殺してしまった。厨房にあった包丁で首を一刺し
にしたのだ。
少し詳しい話を聞くとどうもその殺された女の特徴と、今さっき
自分が抱いた女の特徴が一致することが分かった。
一服つけ終わると、『無事でよかった』と郵便配達員は再び赤い
原付で去っていった。
首のない女自体のことはどうでもいい。それより彼女が言った
「…山形様は…もっとよかった…」
の言葉が気になった。
つづく
「何が伝説だ!」
誰もいない町で、伝説と呼ばれる男が叫ぶ。彼のいう『伝説』が、
今の『伝説』を指すのか、それとも四半世紀前の『伝説』を指すのか、
誰にも分からない。
「ユウジロオぉぉ!!」
叫ぶ。その声は秋の風に舞って、空に吸い込まれた。
全てを思い出す。アダルトビデオの世界へ飛び込んだ本当の理由。
趣味と実益を兼ねる。一挙両得。それは自分のプライドを納得させる
言い訳だった。
実体の見えない山形という男。どこへ言っても彼が最高だった。
彼に勝つ為。トップに立つ為自分はプロの道を選んだのだ。
その道を行かば、山形なる男に勝てると。
しかし現実はどうか。六千人の女を抱いても勝った気がしない。何も
知らない連中が名声だけは高めてくれたが、自分で納得したことは一度
たりともなかった。
そう有吉は二十余年、山形ユウジロウから逃げ続け、そして挑み続けた。
自分の年齢的な限界を見た今、決着だけはつけたかった。
ホーク有吉。当年とって四十六歳。まだ見ぬユウジロウへの挑戦は続く。
自由人として、己のあるがまま生きてきた彼の、唯一のやり残しである。
終
お疲れさまです!
登場人物のサイドストーリー的なお話も良いですねー!
本編では語られる事のない過去の話など、興味深いです^^
今回はまたエロの描写に色気というか艶があって、
相変わらず表現がうまいなぁなんて思いながら読んでいたら…
いきなりオカルトキター!((((((;゚∀゚))))))
今日はオカルト無しだろうと勝手に思い込んでいたので、
急なオカルト展開にかなり恐怖しましたw
それにしてもユウジロウはやっぱりすごい…www
ところでホーク有吉ですが、この名前のモデルはいるのでしょうか?
AV男優はチョコボール向井と加藤鷹?位しか知らないのですがw、
『ホーク有吉』という名前のセンスが凄いなぁと思いましてw
もちろんいい意味で、ですw
>>816 ありがとうございます!よりによってホーク有吉のスピンオフ作品に感想
頂けるとは思ってもいませんでした。
嬉しいです!感謝!
一応ですね、私の作品の見方の目安は最初の一行にあるんです。実は。
誰も注目していないかもしれないのでそろそろネタバレです。
『さてここらで怖い話でもするか』 とあれば間違いなくどこかにオカルト的な
味付けがされています。怖くはないかもしれませんが必ず幽霊や超能力、
心霊現象などが絡んできます。これが主です。ですが、
『そてここらでエロい話でもするか』 というのがたまにあります。これはエロ
ばかりで怖い部分は一切ありません。滅多にないですが使った記憶があるのは
『さてここらで楽しい話でもするか』 です。これはオカルトもエロもなく単に
楽しい話です。一応、板違いだという批判を回避する為に、『エロい』『楽しい』は
滅多にないです。一応オカルト板なので、オカルト的な要素は無理矢理でも
盛り込む傾向にありますww 今回は突然なので驚かれた人も多いのでは。
『ホーク有吉』のモデルはズバリAV男優の加藤鷹さんです。『鷹』という名前を
そのまま英訳させて頂いて『ホーク』としました。だから分かった方も多いんじゃ
ないかと思います。『ホーク』が『鷹』がどうかは自信ありません。間違ってたら
ごめんなさい。年齢設定なども近いものになっています。また、『ホーク近藤』、
『ホーク木下』などのありきたりな名前だと、プロレスラーっぽくなるのと、一応
『すごい人感』を出したかったので少し珍しい姓の『有吉』としました。これは、
『猿岩石』さんの片方の方から頂いています。
さてここらで予告でもするか。
その日、軽子沢中学は雨に打たれていた。秋の雨とは思えぬ嵐のような大雨である。
余りの稲妻に女子生徒はおろか男子生徒まで恐怖を感じ、時折地を響かせる落雷の
音に、授業どころではなくなっていた。
夕刻。雨足は強くなるばかりで、同好会の日ではなかったが、山形ユウジロウが担任
を勤める二年A組には放課後、オカルト同好会のメンバーが集まっていた。雨足の衰え
を待とうというのだ。
校内でも同様の現象が起こっていた。玄関まで降りてきたはいいが、傘を持ってしても
とても歩いて帰れる状況ではない。雷雲も近く、稲光と音の間隔は狭い。
玄関から見えるマンションの屋上に落雷する。激しい音に女子の恐怖の悲鳴が重なった。
廊下、玄関、階段は生徒でごった返していた。
しかし、その嵐を待っていたかの様に動き出す影があった。彼の脚は2−Aに向かっている。
学帽とロングコート。余りに異質である。無論、軽子沢中学では指定の学帽などない。
大正の頃の学生か、見ようによっては旧帝国陸軍軍人のようなたたずまい。稲光に照らされる
薄暗い放課後の校舎を一歩一歩進んでいる彼を何故か他の生徒は気にも留めない。
ロングコートをマントのようにひらめかせながら男は校舎を進む。
また雷光があった。深くかぶった学帽のツバの影に隠された男の口元が、一瞬見えた。
その口元は邪悪に微笑むように歪んでいた。
つづく
彼は一体何者なのか。悪魔か。天使か。仏か。鬼か。
猛烈な雨に閉ざされた学校。
過ぎ行く時間。
ツルベ落としに夜の闇が迫る秋の夕刻。
『あの日』以来の大事件が軽子沢中学を襲う!
稲光とともに現れたこの男が驚天動地の大事件を巻き起こす!
どうなる軽子沢中学!?
どうなるオカルト同好会!?
そしてその時、山形先生は!?
構想二分!制作費百五十円!超豪華オールスターキャストでお送りする
超長時間のメガトン級大長編が、奇しくも『24時間テレビ』の今夜、投下される!!
今 宵 、 ユ ウ ジ ロ ウ が 最 大 の 危 機 を 迎 え る ・ ・ ・
乞う御期待!!
ついに中学校名キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
メガテン…?
予告キター!www(゚∀゚)
しかも学校名が明らかになってるし!
制作費150円が何に使われているのかが気になるwww
ホーク有吉の解説ありがとうございました^^
なるほど、加藤鷹さんの鷹が名前の元でしたか。
自分で名前をあげておきながら気付きませんでした(^^;
初の予告編キター!!
150円はどう考えてもペットボトルのジュースです。
本当にありがとうございますwww
>>820 鋭い。バレるとは思わなかった。さすがオカ板です。お見事。
アトラス発売から1994年に発売されたスーパーファミコン用ゲーム、
『真・女神転生if...(しん・めがみてんせい いふ)』に登場する、
『軽子坂高校』から頂きました。こちらは『坂』ですね。山形先生のは
『沢』です。
恐らく私の尊敬するホラー漫画家楳図かずお先生の『漂流教室』に
インスパイアされて作られた作品です。
生徒数人を残した高校を突如地震が遅い、気付けば学校は魔界に
落ちていた、という設定で、しかもその地震はある生徒が自ら望んで
引き起こした人為的なものだった。残った生徒はパートナーを選択し、
学校と魔界(傲慢界、飽食界、憤怒界…といった『七つの大罪』が、
モチーフとなっている)を行き来しながら魔界脱出を試みる、といった
ゲームでした。
当時、高校生だった私はそのストーリーに衝撃を受け、思わず同人小説
めいたものを書くという暴挙に出ました。しかしそれをまさかゲームが元
とは言えず『オリジナルです』と国語の先生に見てもらった所、余りの出来
のよさに出版社に送ると言い出し、必死に止めた思い出が…ww
その、国語の先生、本多先生というのですが…あ名前出しちゃった。まぁ
いいだろ。本多先生がですね、唯一私の才能というか、文章力を認めて
下さった方で、彼に『書き続けなさい』と言われて早十余年。今の『山形先生』
に至るわけであります。本多先生、言われる通り書き続けて、これだけの
モノが書けるまでに至りました。本当にありがとうございます。
程度の低い学校で、本を読む人間なんていませんでしたから、本書いても
友達は読んでくれないわけですよ。読んでも『つまらん』ばかりで。それで
先生に見せていたんですね。いやぁ色々キツいことも言われたけどあの時
言われたことは今でも役に立ってるなぁ。スレチすまんです。
本多先生がいなければ、山形先生も存在してなかったかもしれないわけですね!?
本多先生GJ!
今夜の超大作投下待ち遠しいwk(゚∀゚)wk
24TVもあるし、おやつ大量購入行ってこよw
>>825 うへ!当たっちゃいました?
あれ、なんか聞いたことあるなぁ〜って感じだったので。
当てたのは実はタイトルの中の人だったりw
というか、このホーク有吉の回は凄いっすよ。
文章と言葉の使い方と構成が。
普通に小説読んでいる気分にさせられました。
本多先生が出版社に送ろうとしたのも頷けます。
(・∀・)イイ
さてここらで怖い話でもするか。
突如として降り出した雨に教室内はザワついていた。
「おいおい降ってきたよ」
「マジかよ。傘持ってねぇ」
「最悪」
「天気予報言ってたっけ?」
「タイミング悪ぃ…」
授業終了直前、一番気の緩む時間に騒ぎ始めた生徒に、福岡ユウコは
手を叩いて警告した。
「はいはい。ちゃんと静かに。黒板見て!」
女教師でありながら、本気で怒らせると怖い存在でもある。生徒らは、窓の
外を気にしつつ、正面に向き直った。新しいデザインの、割りと身体に密着
したデザインのジャージを福岡ユウコは着ている。自宅マンションから走って
通勤してきた彼女も、実際は雨のことが気になっていた。帰るまでにやんで
くれればいいが…。
しかし雨足は強くなるばかりで、下校時刻間際には台風にも劣らぬ大雨と
なっていた。更には雷鳴までもが轟き始める。秋雨と呼ぶには余りに風情の
ない、品のない大粒の雨である。
つづく
過敏な女子生徒が雷鳴に怯える中、二年A組の、下校時の
ホームルームは終わった。生徒らは三々五々帰宅の準備をし、
不安げに窓を覗きながら教室を出て行く。
担任の山形ユウジロウも一日の仕事の終わりに背骨を伸ばして、
疲れた身体を癒していた。それにしてもひどい雨だ。生徒たちは
大丈夫だろうか。多少気になった。
雨は窓を割らんばかりに叩き、落雷の地響きが校舎を揺るがす。
しかし、同時にこれだけ振ればすぐにやむだろうという思いもあった。
教室が無人になったのを確認して出席簿を手に教室を出ようとすると、
岡崎リョウコを先頭に、アヤとサエが教室に入ってきた。ユウジロウが
顧問を務めるオカルト同好会の面々である。
オカルト同好会の実施日は、月、水、金曜日と決まっている。火曜の
今日、三年生の彼女たちが二年のこの教室に用はないはずだった。
「ん?どうしたお前ら…」
「雨宿り」
「この雨じゃ帰れないよ。さずかに」
「臨時で部活!」
「部活じゃない。同好会だ」
仕方がないが可愛い教え子たちだ。邪険にするわけにもいかなかった。
つづく
長編投下キテタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!wktk!
校内は非常事態宣言下の様相を呈している。帰ろうにも
帰れないのだ。凄まじい雨に、落雷。しかも落雷は近い。
玄関に生徒たちが集結していたが、このまま帰ろうという
勇気ある者はいなかった。
いや現状で帰ることは勇気ではなく無謀と言えた。
得意げに折りたたみ傘を取り出し、玄関から出た生徒が
いたが、傘は意味をなさなかった。地面に弾き返された
雨粒が、下から彼を遅い、たちまち下から濡れていく。
構わず校庭の半ばまで近くまで歩を進めた彼であったが、
校庭を囲むように植えられているヒノキに落雷したのを見て
慌てて玄関へ戻った。
教室へ戻るのも馬鹿馬鹿しく、玄関付近でタムロする者、
階段に座り込む者で校内は溢れた。
状況が状況なだけに、教師たちもうるさく注意できない。
確かにまともな雨量ではない。帰宅できない生徒を非難
することは無理だった。
帰れないとなるや、何故か生徒たちのテンションが上がる。
騒がしい校舎の中、妖しい一つの影があった。
ロングコートに学帽。中学に指定された学帽はない。しかし
その影は時代がかった学帽をかぶっていた。
つづく
それは大正時代の学生のようでもあり、また見ようによっては
旧帝国陸軍の軍人のようでもあった。影は校舎の長い廊下を
まっすぐ進む。
影は四階西棟を下って、三階へ降りていく。
その間の階段にも、数多くの生徒が腰掛けていた。
二年生、霧原トオルは誰もいなくなった教室で一人窓の外を
眺めていた。ひどい雨だ。しかし雨より気になるものがあった。
手。彼の手は触れた人の思考、記憶、心を読むことができる。
その手がうずく。誰にも触れていないのに、うずいて止まらない。
しかし、そのうずきの原因が何なのか、彼にはまだ分からなかった。
それにしても嫌な感じだった。窓を開け、手を伸ばす。大粒の雨に
たちまち手は洗われた。気温に比べてだいぶ冷たい。詳しいことは
分からないが、寒冷前線みたいなものが関係しているのだろうか。
冷たい雨にも、その嫌悪感は流されなかった。窓を閉め、教室を
出たトオルは、放課後にしては人の多い廊下を進んだ。
A組の前を通る。ふと覗くと、オカルト同好会の面々が見えた。
今日は活動日じゃないのに…しかし妙な安心感があった。見知らぬ
街で家族に出会えたような。一度、教室を行き過ぎたが、彼はA組
の扉をくぐった。
つづく
「あ、霧原…」
「おぉやっぱ来たか」
「そんなんじゃないよ…」
机はいくらでもあるが、いつの間にか座る席は決まってくる。
トオルの席はみんなの席から少し離れた場所にある。しかし
決して離れすぎているわけではない。
そのいつもの席にトオルは座った。うつむいて、少し笑う。
こんな日に迎えられたことがほんの少し嬉しい、というか楽しかった。
同好会がある時、ユウジロウは必ずトオルのすぐ側にいた。
意識しているわけではないがやはり唯一の同性だからだろうか。
実際今日も、来てくれて助かった、とユウジロウは思っていた。
「やっぱ男の脚でも帰れんか…?」
「雨が強すぎる。すぐやむよ」
「…だといいがね…」
すぐやみそうにない。ユウジロウはポンコツの愛車に同好会の連中を
乗せて、送り返すことも必要かもしれないと考え始めていた。
つづく
意外ときっちりした性格のトオルは教室のドアをきちんと閉める。
大雑把なサエなどはドアを開けっ放しにするが、トオルは閉めるのだ。
その引き戸が開かれた。
そこに立っていた男は見覚えのないコートの男だった。
リョウコ、アヤ、サエ、トオル、そしてユウジロウ。それぞれが、それぞれ
誰かの知り合いであろうと誰もが思った。
男は何も語らない。ただ不気味に学帽の影からはみ出した口元に笑みを
浮かべている。
「…え?なに君?」
サエが言った。誰も答えない。誰も知らない。静かな空気の中、コートの男が
自ら言う。
「オカルト同好会はこちらで…?」
新入部員か。誰もがそう思った。人数はぎりぎり。それどころか幽霊部員が
二人もいて、完全な人材不足に陥っているオカルト同好会は随時、新人会員
歓迎の姿勢だった。
妙な風体をしているが、オカルト同好会である。変わり者が入会を求めても
不思議はない。
「お、新人さんかな?」
つづく
サエが入会希望者持って立ち上がるが、コートの男は片手
でそれを制した。
「オカルト同好会はこちらですね?」
「…そうだけど…なんだい?」
ユウジロウが訊ねた。
「…山形…ユウジロウ…」
生徒に呼び捨てにされる。教師としても我慢ならない行為だ。
余り礼儀や礼節にうるさいタイプではないが、ユウジロウは言った。
「山形先生と呼びなさい」
「ユウジロウ…貴様か…」
「ん?今何てった?」
「気にしないで下さい…山形先生…」
言い方にトゲがある。慇懃無礼。そんな言葉が頭を巡る。しかし
相手はただの生徒ではなさそうだ。何かただならぬ雰囲気を感じる。
ユウジロウは『情報倫理学』の授業を受け持っていて、ほとんどの
生徒を目にしている。しかしこの男に見覚えはない。だとすれば、
『情報倫理学』の授業がない一年生か?
つづく
投下待ってました!24時間テレビに負けるな!wktk!
『情報倫理学』は、二年生と三年生に限定されていた。一年生には
ない。見覚えがないとすれば、彼は一年生ということだ。
現時点で一年生であるカエデがいれば何か分かったかもしれないが
カエデは生憎来ていない。
「入会希望か?」
「私は会などという下らない枠に収まらない!」
宣言。男は宣言した。
「ただ文化祭で見た。この同好会の女たちは魅力だ…」
一年生…。昨年まで小学生だった者がいう言葉か。ユウジロウには留まらず、
リョウコやアヤ、サエも驚きの表情で彼を見つめている。
「オン アボキャ ベイロシャノウ マカボダラ
マニ ハンドマ ジンバラ ハラバリタヤ ウン!」
突然男が叫ぶと、校舎に特大の落雷があった。
「光明真言!」
「なにそれ!?」
「え…なんか…お経…?」
それほど特殊なものではない。全ての災いを避けると言われる短い経文の
一つだ。
つづく
実際、様々な漫画、小説など創作物の影響で、かなり神秘的
に描かれる様々な真言があるが、そのどれもそれほど特殊な
意味があるわけではない。
あくまで『お経』である。たまたま響きが日本語とは程遠く、
サンスクリット語であるから、さも魔術的なイメージにとられがち
だが、それはあくまで音からくるイメージに過ぎない。
よって唱えたからといって、たちまちに敵に何らかの被害を
与えるものではない。
今、男が真言を唱え、落雷があったのは偶然であると考えるのが
普通だ。しかしよりによってここはオカルト同好会である。
「スゴい!もう一回やって!」
「サンダラ!サンダラ!」
「そんなことより岡崎リョウコ君!君には悪霊がついているよ!」
「え!」
「私が払ってあげよう!」
ユウジロウは恐れている方向にことが流れている。これはマズい。
特に真言を得意げに披露する辺り、危険だ。
かつて自分が夢見た校内カルト。それが今この謎の男の手によって
現実のものになろうとしている。
つづく
男塾の東郷総司を思い出したのは俺だけ?
作者さん、長編がんばってー (゚∀゚)/~~
「ちょっと待て!お前は一体誰だ!」
「…私は…モッズ系猛禽類…オカルト太郎.と申します」
ワケが分からない。入会希望かどうか知らんが教師に名を
聞かれて偽名。これでいいのか?
「おい!オカルト太郎はないだろう」
「じゃ、本当にあった怖い名無し、で…」
「余りふざけるなよ。本名を言いなさい」
「…加藤…加藤ヤスノリ」
「加藤ヤスノリ…」
「一年B組。加藤ヤスノリ…」
どこかで聞いた名だ。
「ねぇねぇそれよりあたしの悪霊は?」
「うむ。払ってしんぜよう」
リョウコの背後で妙な動きを見せる加藤。それを見つめらがら
トオルが言った。
「先生、『帝都物語』…」
つづく
荒俣宏氏の長編小説、『帝都物語』。加藤ヤスノリ。そうだ。
その名だ。大日本帝国陸軍将校にして、帝都東京の滅亡
を計る魔人。
ユウジロウもその名は知っている。もうしばらく前、映画で見た。
やはりこの男偽名を使っている。しかもその名は伝奇小説から
取っている。その風貌も作中の加藤保憲を意識しているようだ。
やはり単なるオカルトオタクか。
「それじゃちょっと立って…そう。ちょっと腰を失礼しますよ」
「…あっ…くすぐったいよ…」
加藤(仮名)はリョウコの腰、いやむしろ尻に手をつけまさぐっている。
おのれ俺でさえまだ手をつけていないのに!
ユウジロウの怒りが燃える。
「待て!貴様一体何者だ!」
「…ん?もう気付いたか…。早いな」
「加藤ヤスノリ、偽名だな!?」
「…くくく…ははは…」
つづく
ぐはっ!そっちだったか
何かもう全てが芝居がかっている。一体何者なのか。そもそも本当に
本校の生徒なんだろうか。
「山形ユウジロウ…だから、名無しといっただろう…」
「本名を言えといってるんだ!」
怒るユウジロウを前に泰然と構えている。奇妙だ。一年生だとして
十三歳。背格好からすればそのような印象だがこの人を食った
態度は何だ。十三歳が大人を馬鹿にする態度ではない。
「福島トオル…清水コウタロウ…高村ヒロシ…高村タカシ…甲本ケンイチ…
『山の老人』…斉藤カズマ…山下シンジ…霧原リエ…」
名の羅列。しかしそれは次第にユウジロウの顔を蒼ざめさせた。最後の名、
姉、霧原リエの名に、トオルの目も光った。
誰も知らぬ名。警察でさえその名を並べることはできないはずだ。いずれの
接触方法にしてもユウジロウに関わり死んでいった者たち。
トオルが飛び出し、加藤(仮名)の肩に触れた。手を触ろうとすれば彼が
いやらしく撫で回しているリョウコの尻に誤って触れる可能性があったからだ。
彼の思考。心。それは余りに混沌としていて。
理解を超える。トオルはそのまま見続ければ自分の心まで汚染されそうな
気がして、慌てて手を離した。
ふらりを倒れかけたトオルの肩を支えて、ユウジロウは加藤(仮名)から
トオルを引き離しながら耳元で聞いた。
つづく
モッズ系で鳥肌実を連想してしまったorz
長編大作wktk(*・∀・)
「…わかんねぇ…ただ…やべぇ…」
新手の能力者か。いやそう考えるべきだろう。適当な真言や、
まやかしの発言はすべてフェイクか。
「…霧原リエは心外だったかな?…くくく…」
「どういう意味だ?」
「結果だけが全てではない。襲われた瞬間の恐怖は…消えても
残る。残り漂う…」
霧原リエ。トオルのあるはユウジロウに犯された。しかし犯されながらも
ユウジロウを愛し、探し続けた。結局その愛はかなわず、失意のうちに
彼女は死んだ。しかし今はユウジロウの丁寧な供養を受けて、霊体と
なりながらも幸せだと本人が語っている。
しかしそれは全て結果だ。現時点での話に過ぎない。犯される恐怖。
愛して捜し求めても見つからない寂しさ。自殺への恐怖。死への畏怖。
それはあったはずだ。結果として今は幸せだ、というだけで、そこに至る
には様々な障害があった。
その障害が消えずに残っているという。
「結果として得られる悦びと同時に存在する恐怖!見知らぬ男に肉体を
蹂躙される恥辱!そして一度の情事で愛し求めても、もう二度と会えぬ
寂寥!!いうなれば私はその恥辱と寂寥そのもの!」
つづく
学帽を脱ぐ。撫で付けたような七三分け。こけた頬。鼻だけは高い。
ある意味で美男子といえたが老けている。しかし身長は低い。
アンバランス。肌も生気が抜けたように青白い。
リョウコの尻からは手を離している。オカルト同好会の三年三人娘
には全く通じない話。突然意味不明の会話をする三人の男にじっと
見入っている。
これ以上はマズい。この男、どこまで真実を知っているのか。
話し振りからすれば全てだ。そもそもこの男は生きる人間なのか?
さすがにクールなトオルも心配げにユウジロウを見ることしかできない。
加藤(仮名)はユウジロウに近づくと耳元で囁いた。
「…また、殺すかい?」
生徒がいる。無理だ。
「俺の身体はお前に対する憎しみで一杯だ…。爆発寸前ってやつさ…。
どう償う?お前が償うかユウジロウ?一人で背負いきれる額じゃない…。
ツネコもアカネも頂いていくとしようか…?最悪な方法で…」
「…」
「それとも学校内に残っている連中に肩代わりしてもらうかい…?女も
全部食っちまうぜ…あの福岡って先生も、この同好会の連中も…」
つづく
因果応報とはこのことか。この男の存在はよく分からない。
しかし脅威であることに違いない。自分一人では背負いきれない
数々の罪。しかしツネコやアカネを巻き込むわけにはいかない…。
毒を食らわば皿まで…学校を潰すか…。
「俺に名などないよ…いうなればユウジロウ…山形ユウジロウだ…。
お前の闇。残りカス。置き去りにされた罪悪。むしろ俺はお前なのさ…
選択しな…自分で償うか…肩代わりさせるか…」
冷たい汗が噴き出してくる。同好会の誰かが何か色々と聞いてきているが
耳に入らない。
自分一人で責任を取ることはできない。ツネコやアカネにまで被害が及ぶ。
しかし逃げ場は残されている。ただし逃げれば今まで自分が守ってきた
教え子たちが、そして福岡ユウコが…。
四面楚歌。八方塞。どちらへ転んでもいい結果にはならない。自分のしてきた
行為がこの悪魔を産んだ。自業自得。
しかしそうなのか?自業自得なのか?違う。何か違う気がする。
ユウジロウの中に何かが芽生えた。それは小さく燃えている。
いや違う。罪悪の清算は既に済んでいる。
つづく
俺は罪など犯していない。償いは終わっている。
騙されるまい。この悪魔め!
リョウコはふと窓の外を見た。雨が小降りになってきていた。
「おい、雨…」
「あ、やっとマシになってきたな」
「やっと帰れるよー」
校内がまた騒がしくなってきた。
加藤(仮名)の顔が引きつっている何かを感じ取っているようだった。
「…俺の罪の償いは…愛を得た時点で完了している…」
心の中の炎が次第に強くなりつつある。燃える。
そう。さっきこの男は言った。『俺はお前だ』と。そうだ。敵は我にあり。
押し返せ。俺は山形ユウジロウ。山形家の母を持ち、戦後最凶のレイプ魔
を父に持つ呪われた存在。産まれたこと自体が呪いだ。この世に生を
受けたことが罪悪だ。この糞野郎は自分。俺は俺に負けるのか。
いや負けぬ。俺は、俺は山形ユウジロウだ!!
つづく
がんばれ、ユウジロウ
がんばれ、作者!
お風呂入ってこよう
(((つ・д・)つ
樹海に散った、白いワンピースの女、『枡や』の常連、マキ、
ユウジロウに犯されそして彼を愛した霧原リエ、
温泉町でユウジロウを待ち続け、女将に首を突かれ死んだ女…。
気付けば教室中にユウジロウを愛した女が集まっていた。
無論、オカルト同好会のメンバーたちには見えない。
『罪を償う必要があるなら、あたしたちが肩代わりするわ』
女たちの総意だった。その数は計り知れない。この学校に残っている
生徒の数を遥か上回る。
「馬鹿な!お前たちの恐怖、憎悪、蕭殺の想いが俺を産んだのだ!」
『嘘つくんじゃないよ』
『誰も望んじゃいない』
『単なるゴミの集まりでしょう?』
『くだらない』
心の底にあるユウジロウの罪悪感が消えていく。呪われた血と納得
しながら、常にあった疑問。それが溶けて流れていく。
加藤(仮名)も不自然な体勢になり溶けるように床に這いつくばっている。
ユウジロウの少しずつ垢のようにたまっていた罪悪感の権化。愚かで、
惨めな存在。
つづく
瞬間、また、この溶けゆく男に対して詫びたい気持ちが湧いた。
しかし詫びるまい。この者が罪悪感の権化であるならば、
罪悪感なく、見取ろう。
ユウジロウを愛する女たちの視線を浴びながら、それは崩れて、
溶けて、消えた。
『困ったらいつでも呼んでねユウちゃん』
『また遊びにくるから、ユウジロウもきてね』
『いつでも一緒だからね』
『生きてて離れ離れより、死んでいつも一緒の方が幸せだから、
気にしないでねー』
女は口々にユウジロウに言葉を残して消えていく。恐るべき愛の
エネルギーで守られる色魔。最強の愛に包まれる強姦魔。
その優しさ故、最強の敵に出会い、無限の愛に救われた男。未だ
ここにあり。
オカルト同好会のメンバー達は一体何が起こったのかときょとんと
していたが、晴れ渡り、夕焼けの空に導かれ挨拶もそこそこに帰宅の
途についた。
つづく
教室にはユウジロウとトオルだけが残った。
「大丈夫?」
「あぁ…今日、親父さんたちは?」
「相変わらず。いないよ」
「ウチで飯食ってけ」
「…うん」
帰宅後、トオルにアカネの相手をさせて、ユウジロウは今日助けてくれた
女たちの名をノートに連ねてそれぞれに一言ずつメッセージを書いて、
改めて供養と、今日の感謝の言葉とした。
そういえば兄がいないと部屋に突撃すると既にユウジロウはノートに
突っ伏して寝ていた。大量の女の名前と愛の言葉。
アカネはノートを破りに破いて狭い庭で燃やした。
つづく
(;・д・)ちょ、アカネさ〜ん?!
そこへ近づく男があった。学帽にロングコート。
「山形…アカネさん、ですね?」
「だったら何よ!?」
振り返ったその顔は鬼でも逃げ出す凄まじい形相だった。
「あ…何でもないです。すいません。どうも…」
そのまま男は帰っていった。ユウジロウを愛した全ての女。
その愛は計り知れない。しかしアカネの愛はたった一人にして
それを軽く上回っていた。
ユウジロウは眠る。起きれば加藤(仮名)よりも遥かに恐ろしい
相手を敵に戦わねばならない。相手は無論山形アカネである。
何となく機嫌の悪そうなアカネの腕にそっと触れたトオルは、
顔を真っ青にして深夜の自宅に戻っていった。
終
6時間!!疲れた…。ライブずっと見てた人いる?乙です。
そしてありがとです。とりあえず寝ます。ってか寝ましょう。
あ…24時間テレビ今微妙に面白そう…おやすみです…
作者氏乙!やっぱりアカネが最強か…。
おやすみなさい!
作者さん、乙です!
今日はゆっくり休んで下さい。
アカネ最強w
さて、ここらで怖い話でもするか。
十月が直前に迫っていた。
オカルト同好会は揉めに揉めていた。
つづく
ライブスタートに遭遇ー
(ノ^^)八(^^ )ノ
餃子をツマミにwktk
軽子沢中学では、迫る高校受験に備えて、各部や各同好会に
所属する三年生は原則十月で引退、ということになっていた。
同好会の必要最低人数は七名。うち三名が三年生のオカルト
同好会的には壊滅の危機だった。
ぎりぎりの七名での活動。うち二人は幽霊部員で、更に三人が
三年生。十月に入ってその三人がやめれば実際活動するメンバーは
二年の霧原トオルと一年の雪野カエデのたった二人。
当然『解散』という運び。せめて残りが五、六人いれば、『十月で三年生
が一気に減ってしまったので新入生が入る四月まで解散は差し止めて
欲しい』という要望は通るだろうが、さすがに二人、幽霊部員を何とか
足しても四人では『即解散』の可能性が高い。
と、始めはそんな話だったのだが、
「霧原、イケメンだから少しナンパすれば女はついて来るだろう」
というサエの無責任な一言で事態は急転する。
「引退するんなら最期になんかドーンと大きいことやりたいよね」
「悪魔、UFOと来たけど幽霊を見てない」
「心霊スポットツアー!」
「行きたい!」
つづく
お!いいタイミングw
夕飯食べたばかりだからおやつ食べられない〜w
こうなるともう女子ペースである。トオルは何か口を出すタイプ
でもないし、ユウジロウも生徒の自主性を重んじる教師だ。
「そこで…ばばーん!」
「おぉー!」
アヤが何やら小さいぬいぐるみのキーホルダーが無闇についた
バッグから取り出したのは『関東近県怨霊マップ』という本だった。
「近場であるかな?」
「チェック済み〜」
「読んで読んで!!」
話によれば、ここからクルマで二時間ほど走った所にある、杜野峠と
いう峠が有名な心霊スポットらしい。そこは付近の走り屋や暴走族の
メッカだったのだが、今から六年前のある日、大きな事故があり、大勢
の暴走族が死んだのだという。その亡霊が毎週土曜の夜になると現れ、
峠をバイクで暴走するらしいのだ。
「すげー大量にでるのかな?」
「一人二人じゃないでしょ?」
「だって暴走族の幽霊だよ?」
つづく
盛り上がる女子にユウジロウが口を挟んだ。
「おい暴走族ってそんなにビュンビュン飛ばさないぞ。あいつら
ゆっくりうるさく走るのが仕事だ。大体峠で事故があって大勢の
人間が同時に死ぬっておかしくないか?暴走族ならバイクがメイン。
事故で死ぬなら二、三人ってところだろ?」
少し見当違いな反論のような気がするが要するにユウジロウとしては
行かせたくないのだ。何かあれば監督責任は顧問の自分の肩に
かかってくる。面倒事は御免だった。
幽霊となれば夜、しかもそんな暴走族のメッカとされる峠などへ、
中学生を行かせるわけにはいかない。
「ちょっとまってちょっとまって」
まだ未練が残っているのか今度はリョウコが携帯サイトで何やら調べ
始めた。
「あった!あったよ!杜野峠で検索したらヒット!!」
「すごい!CIAみたい!」
「NASAだよNASA!」
もうFBIでもCIAでも何でもいい。ユウジロウは呆れた。
「で、何だって?」
「ちょっと待ってね…おぉお…なるほどぉ…」
つづく
話は七年前にさかのぼる。
女がリーダーを務める暴走族があった。かと言ってレディースではない。
男女混合の立派なチームで、当時この辺りでは最大最強と謳われ、
恐れられていた。活動範囲も広く、関東を統一する勢いとまで言われる。
その名も『愚麗死威(グレイシー)』思わず吹き出す名前だが、そのリーダー
の女、『紅暴走天女(クレナイボウソウテンニョ)』が適当につけた名前らしい。
つまりその女、たった一人、一代にしてそのグループを作り上げたのだ。
当初の本拠地は杜野峠を越え、山の向こうに出て、更にクルマで三時間程
走った田舎町。毎週土曜を集会の日として一晩かけてその田舎町と杜野
峠を往復していた。
やがて杜野峠に集まる他のグループとの抗争が始まり、結果、
『愚麗死威(グレイシー)』は他のグループを圧倒。次々に吸収し、一年で
巨大な組織に成長した。その勢力は今、軽子沢中学がある辺りまで及んで
いたというから凄まじい。
そして、ちょうど今の季節である。『愚麗死威(グレイシー)』初代総長、
『紅暴走天女(クレナイボウソウテンニョ)』の誕生日だった。原点回帰という
ことで、彼女たちは再び杜野峠に戻ってくる。あちらこちらに遠征しては
地元の暴走族を潰し、吸収していたから、杜野に戻るのは久しぶりだった。
しかし生憎その日は雨だった。
つづく
『愚麗死威』元々の地元である田舎町に終結した暴走族の
大軍団は悲嘆に暮れた。
せっかく総長の誕生日を祝おうと言うのに…。
と、深夜には雨が上がったのである。幸運。『愚麗死威』は
『紅暴走天女』を先頭に走り出した。その長い行列は、たどりついた
杜野峠全体を覆いつくさんばかりだったと言う。
しかし悲劇は起こった。
大規模な土砂崩れである。雨で地盤が緩んでいたのだ。固まって
走っていた為甚大な被害が出た。特に先頭付近を走っていた幹部
たちの多くが生き埋めとなり、死んだ。更に流れ落ち、積み上がった
土砂に後続のバイクが次々に突っ込み、更にそれを避けようとした
者は崖をバイクごと転げ落ち大惨事となった。
一方で、リーダーは生き残った。
直後、『愚麗死威』は解散した。幹部なしでは巨大に膨れ上がった
組織を統率し切れなかったという話もある。
これが六年前の事件のあらましである。そして生き埋めとなり死んだ、
『愚麗死威』のメンバーの霊が、今も土曜日になると杜野峠を走るのだ。
「すっげぇ話…」
「信じらんないね」
つづく
「でも出るってさ。しかもそのリーダーの誕生日って…」
「あ!来週の土曜日じゃん」
「土曜日の上に『紅暴走天女』の誕生日だよ…」
「先生!行こう!」
ついに決まってしまった…。サエがそう言い出したらもう決定
なのだ。何を言っても無駄だ。
「…しかし土曜日なのはいいとしてどうやっていくんだ?杜野峠は
電車じゃ無理だぞ」
「先生のクルマ!」
「四人乗りだよ」
「えー最悪。クルマ買いなよ。でっかいの」
「妹と二人暮らしでデカいクルマなんぞいらん!」
「あ、じゃウチの使っていいよ?」
今まで大人しかったトオルが言った。余計なこというなこの馬鹿!
「七人乗りだし」
「お前の家族って三人じゃなかったっけ?」
つづく
「でもクルマは七人乗りだよ」
もうユウジロウは好きなように巻き込まれるしかなかった。
「お前も行く?」
「行かない。怖いし。『愚麗死威』でしょ?知ってるよ。聞いたこと
あるもん。学生の時」
「へー…」
「極悪非道、喧嘩上等、少年院がナンボのもんじゃの超武闘派。
あたしの学校じゃ土曜の夜は原付乗ってブラつくのもみんな
怖がってたよ。そんなののお化けってすごいタチ悪そう。お兄ちゃん
も気をつけてね」
散々ビビらせてアカネはユウジロウを見送った。表に出るなり
ユウジロウはラッキーストライクを大きく吸った。気分は憂鬱である。
赤いポンコツの軽自動車で霧原家に着くと、既にみんな集合している
様子だった。各自の自転車が広い庭に並んでいる。玄関のチャイム
を押すと、ダンディズム溢れるトオルの父が出迎えてくれた。
「やぁ山形先生。はじめまして。トオルがいつもお世話になっています」
「いえいえこちらこそ霧原君には…」
つづく
まさか父親がいるとは思わなかった。身なりのいい紳士で、
パイプを咥えている。
西洋趣味の余りに分かりやすいタイプの金持ちだ。
それにしても教師が生徒の父親のクルマを借りて、心霊スポット
に連れて行く…問題にならないだろうか。ユウジロウはかなり心配
だったが、霧原の父は笑顔で認めてくれた。ちなみに、『心霊スポットに
行く』ということだけは伝えていない。あくまで『夜景を見に行く』という
ことになっている。
「ポンコツですし、保険にも入っているので気にせず運転して下さい。
実際、余り国内にいないものですから、たまには走らせないとといつも
気になっていたんです。助けると思って乗ってやって下さい」
そういって霧原の父は愛車、日産エルグランドのキーを渡した。そう
言われると助かる。しかし随分とデカい。まるで小型のバスだ。こんな
クルマ運転できるのだろうか。ユウジロウは少し不安だった。
「まぁ次の車検には買い換える予定ですから遠慮なくぶつけて下さい。
ははは」
車検のシールを見ると次の車検は今年の冬ということになっている。
なんだあと何ヶ月かで買い換えるのか。じゃ、ま、いいか。
生徒たちを乗せると丁重に礼と別れを述べてエンジンをかけた。
カーナビゲーション付きの快適な車内。まだ新車の匂いがする。これを
もう買い換えてしまうのか。
つづく