八年程前の体験です。
私が深夜のドライブを楽しんでいた時の事です。
運転手は私で、助手席には友人のT。
線路沿いの国道を海伝いに走行していました。
時刻は深夜0時を廻り、元々田舎という事もあって対向車も疎らで
ただ道なりにまっすぐ走らせるだけのドライブは単調で
眠気を紛らわせるのも含め、夏という事もあってか
止せばいいのに話題は怪談話になっていきました。
瀬○内海を右手に望みながら、左手には柵も無い線路。
小さな町を過ぎると、隣の市まで民家も無く街頭も無いので
点滅信号の光の中、只管に先を急いでいた其の時でした。
私の車の前を、白い小さな物が飛び出してきたのです。
私は思い切りハンドルを切り、対向車線にはみ出す様な形で急ブレーキをかけ
友人の悲鳴を聞きながらも無事に停車する事が出来ました。
対向車も後続車も無かったので、私達は怪我も無く済みましたが
私は暫く手が振るえ、友人の問に答えるのにも時間が必要でした。
続く
続き
T『急にどうしたの?なんでこんなとこで止まるの!?』
私『ごめん、だって犬かなにか急に飛び出してきたから・・・』
しかしTは見てないの一点張りで、私の話を信じようともしません。
轢いてしまった可能性もあると思ったので、私はTと車を降りると
車の周辺を探すことにしました。
線路側から飛び出してきたので、無事横切ったとしても其の先は海です。
周りには隠れる場所も無し、其れらしき物は見当たりません。
車の周辺や足回りを見ても、撥ねてしまった痕跡すらありません・・・。
T『もういいよ、何も無かったならそれで・・・。こんな所から早く離れよう?』
私は納得できないまま、Tに促されるように車に乗り込みました。
しかしTは一刻も早く其処から離れたいようだったので
理由も問わず車に乗り込みました。
【こんな所ってどういう意味なんだろう?】と思いながら
車のライトを点灯させた私の目に飛び込んできたのは
線路沿いの電柱に手向けられた菊の花束でした。
血の気が引いていくのと、友人の言葉を理解するのは同時で
数週間前に報道された人身事故が頭を駆け巡りました。
私が見たアレは、長毛種の小型犬だと思ったアレは・・・?
私の思考は其処でストップし、車の運転に集中したのは語るまでもありません。
其の先を考えたら、きっと二人でパニックになったでしょうから。
ですが今でも鮮明に思い出す、当時飛び出してきた塊が
人の頭部だと思うと、なぜか納得できるのです。
終りです。