【小説】ZOMBIE ゾンビ その17【創作】

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825本当にあった怖い名無し:2006/10/28(土) 00:41:29 ID:bkhQhW8g0
まったく、、、ゾンビに油揚げをさらわれた気分だったよ。
826本当にあった怖い名無し:2006/10/28(土) 00:42:24 ID:bkhQhW8g0
そうおもって僕は、天をあおいだ。
ゾンビが、くるりと輪を描いた。
827本当にあった怖い名無し:2006/10/28(土) 00:44:38 ID:gP97Ru5uO
昨日、バイオハザード観たけどおもしろかったなぁ
828本当にあった怖い名無し:2006/10/28(土) 21:37:14 ID:apxDCcumO
長年生きてると人間って恐いって思ってました。でも、もっと恐いのは人間の想像力であり、その産物の死者の可能性ですな。恐怖を生み出し、それを娯楽にする作家の皆さん、ありがとうm(__)m
829通勤電車男:2006/10/28(土) 22:50:16 ID:fHzPz6kcO
〜もどき...様、新作の投稿お疲れ様です!。
あたたかな陽の射す穏やかで幸せな公園での一コマと、その過去を
冷たい廃ビルで一人恋人の屍体を前に夢に見ている主人公。
このコントラストは強烈ですね!。短いお話にも関わらずこの様な
状況を迎えるまでの悲しいドラマを感じさせてくれて、
なんだかグッときてしまいました(;_;)。機会がありましたら
また投稿していただけるとうれしいです!。ありがとうございました!!。
830本当にあった怖い名無し:2006/10/29(日) 19:04:44 ID:N4Jzf0erO
バタリアン4が最悪につまらない。
831本当にあった怖い名無し:2006/10/29(日) 19:26:52 ID:W4rUqIwXO
>>830
5はどうよ?
832本当にあった怖い名無し:2006/10/29(日) 19:50:04 ID:mZCbcZ4t0
>>831
観てない。今からウエストオブザデッドを観る。
833〜もどき...( ´Д`)ノ:2006/10/29(日) 23:19:38 ID:2/4rItwR0
>>821
>>829
ご感想ありがとうございます。
短い話の中で、伝えるべきものをしっかり伝えられているかどうか
少し不安だったのですが、良い評価を頂けたって事は・・・それなりに出来て
いたってことでしょうか。
次は少し長めの話を考え中です。
ある程度出来上がってきたら、また上げさせてもらいますので、
よろしくお願いします。
834本当にあった怖い名無し:2006/10/31(火) 11:17:55 ID:bGYeUEc1O
ウェストオブ〜
いいよ。笑えるわこれ。
835本当にあった怖い名無し:2006/11/01(水) 10:57:24 ID:AUja7mhiO
836本当にあった怖い名無し:2006/11/02(木) 16:30:59 ID:DQKcAP5G0
生きてる
837本当にあった怖い名無し:2006/11/03(金) 00:53:23 ID:0y9NmiRuO
久しぶりに覗いてみたら酷いな・・・ここの荒廃ぶり・・・


おまいらみんな食われちまえ!
838本当にあった怖い名無し:2006/11/03(金) 02:55:35 ID:0bzBMMTB0
>>837は、一通り言いたいことを
書き込むと満足げにパソコンを閉じるのだった。
しかし何かがおかしい。
閉めたはずの玄関が開いている。

>>837よ。
満月の夜は気をつけろ。
角を曲がって見かけぬ影がやってくる。
廊下の泥は何だろう?猫が外で遊んできたのだろうか?
ゾンビはお前を狙っている。お前の足を腕を太ももを。
寒い夜に暖かい湯気を立ち上がらせる内臓を腹いっぱい食うのを。
そして最後に、そのろくでもないことを考える脳を
指でしゃぶりつくす。
奴らがやってくるときには生暖かい風が吹くという。
地獄のような天国のような風乗ってやってくる。

839ジンロ:2006/11/03(金) 05:25:31 ID:x2TNnW7ZO
ゲームサロンのバイオハザード小説スレで書いてたんですが……
512KBを越えたんで投下できず、明日までに新スレ建たなかったら、こちらに移住しようかと思ってるんですが、題材がバイオなもので投下してもいいのでしょうか?
840本当にあった怖い名無し:2006/11/03(金) 07:03:34 ID:P/iAgwRD0
ゾンビをどう定義するかだな。

走るゾンビまではほぼ無条件に受け容れられてた。
もう少し前にはプレデターのゾンビやら蚊のゾンビまでいた。
だからあとは話の内容次第なんじゃね?
841ジンロ:2006/11/03(金) 08:24:49 ID:oFTDh3Yk0
それではお言葉に甘えて・・・・・
拙い文章ですがお許し下さい。


バイオハザード


 俺は今までいくつかの戦場を渡り歩いてきた。
 地獄の様な戦場・・・だが、時には笑い、悲しみ、仲間と死線を乗り越えて来ることが出来た。
 しかし、ここは何だ?
 「地獄」と形容するのですら生ぬるい・・・・・

 俺はいつもの気怠い日々を過ごしていた。
 歳も30半ばを迎え、体力の衰えを感じ、傭兵として戦場から身を引き、今では戦闘インストラクターとして働く日々。これはこれでやりがいはあったが、何度も命をやりとりしていた体に、平和な日々という物は毒らしい。
 そんなときに飛び込んで来た話が、ある企業の私設軍隊の話だ。
 企業の名前は『アンブレラ』
 世界に展開する一流企業だ。
 一流企業が裏の仕事を任せるために私設軍隊を作るのは良くある話だ。
 俺は破格の報酬と待遇に・・・・・何より今もう一度戦場の風を感じるために誘いに乗った。
 いくつかの任務を終え、気付けば部隊長の任を受けるまでになっていた。

 そして、部隊長として最初の任務がこれだ。
「クソ、一体何なんだ!?」
 部下の一人、ブライアン伍長がそう呟いた。
 敷設された軍用テントの中で俺を含めた部下の4人が集まっていた。
 見張りの交代まで後、3時間ある。

842ジンロ:2006/11/03(金) 08:26:39 ID:oFTDh3Yk0
「上の方からは何も教えられてないんですか?」
 そう言って来たのは部隊一冷静な男、コールマン軍曹だ。
 俺は黙って首を横に振るとシガーに火を付けた。
「いや、命令はあくまでここの死守だ。もし、脱走者を発見し次第射殺せよとだけだ。」
「所詮、俺達は駒ですか・・・・」
 俺は煙を外に逃がそうとテントの入り口を開けると目に飛び込んで来たのは、高さ5メートルはあろうかという無骨なコンクリートの壁だ。
 夜風に乗って形容しがたい怨嗟の声が聞こえてくる。
 その声を忌々しく顔を歪め、火を地面でもみ消し入り口を閉じる。
「い・・・・いつまで続くんですか・・・・」
 そう、震える声で言ったのはウチの部隊で唯一女性、衛生兵のエレンだ。
「心配するな、任期は1週間と言う約束だ。もう少しだけ我慢してくれ。」
 俺がそう言った時だった。遠くで銃声が響く。
 皆一様に傍に置いてあったアサルトライフルを手に立ち上がりかける。
 俺はそれを手で制すとテントから顔だけだして外を確認する。
 また、銃声と共に笑い声が聞こえてきた。
 そして、テントに戻る。
「暇つぶしにアレでも潰してるんだろう・・・」
 その言葉に安堵の表情と共にライフルを元に戻して、座り直した。
「今、見張りについてるのは、確か・・・・」
「ああ、ダリオのクソ野郎共だ!」
 ブライアンは吐き捨てるようにそう言いカップに入ったブランデーを一気に飲み干す。
「私、あの人達嫌いです!」
843ジンロ:2006/11/03(金) 08:27:29 ID:oFTDh3Yk0
 そう言ったのは、先程までテントの端で震えていたエレナだ。
 俺とコールマンは顔を見合わせ肩を竦める。
 俺達の部隊とダリオの部隊は何かと反目してきた。
 任務を遂行する上で何度かかち合ったことがあり、その際にいざこざが絶えなかった。
 やり方の違いはあった。だが、それだけではない!
 ダリオ達のやり方は、手段のために目的を選んでいる節があった。
 人質の交渉するために出撃したにも関わらず、人質ごと犯人を射殺したこともあった。
 (アンブレラ社)も、それを許容していた節があったのだが・・・

「いつもは反目しているが今回だけはなるべく協力してくれよ?もし、アレを外に出したらコトだからな・・・・」
 俺がそう言うと渋々ながらも、皆頷く。
 皆もわかっているのだ・・・・いや、あの光景を見て解らぬものなどいない。
 死者の群れが跳梁跋扈し、生者を喰らっていく。正門で遭遇したあの光景を・・・・
 アレ等が外に放たれ、世界中がこの街・・・ラクーンシティと同じようになっている光景を想像するだけで、背筋に冷たい物が走る。
「時間まで銃の手入れを忘れるな。それとあまり飲み過ぎるなよ?特にブライアン・・・」
 俺の言葉に反応したブライアンは、注ぎかけていたブランデーをピタリと止めバツの悪そうな顔で懐に入れた。
 それを見て苦笑を漏らすと、俺はテントの外へと足を向ける。
「どちらへ?」
 コールマンが、俺の背中にそう問いかける。
「ああ、少し夜風に当たってくる。」
 そう言うと「僕もお供します。」っとコールマンもテントから這い出した。
 外は相変わらず渦巻く怨嗟の声と、時折聞こえる銃声。まさに地獄だ。
 俺達はテントから少し離れた場所にある車に寄りかかりシガーに火を付ける。
「あのゾンビ達どこから現れたんでしょうか?」
844ジンロ:2006/11/03(金) 08:29:52 ID:oFTDh3Yk0
 その言葉に、俺はゆっくりと煙を吐き出し「さぁな・・・」とだけ答える。
「ゾンビ・・・か?言い得て妙だな。だが、俺達に取っては原点は関係ない。求められる物は経過と結果だ・・・」
 そう言うと車に背を預け、ズズズズッと座り込む。
 コールマンは車のボンネットに飛び座る。
「経過と結果・・・・ですか・・・・」
 そう呟いて、コールマンは後ろに手を付いて体を反らし、夜空を見上げる。
 俺もつられて空を仰ぐ。
 煌々と月が世界を、俺達2人を優しい光で照らしていた。
「何も考えず、行動することは容易い。しかし、そこには意志がない。死して歩くに等しい。」
 ふと、そんな言葉が頭を過ぎり無意識に口に出ていたようだ。
 コールマンはその言葉に姿勢を戻し、こちらを見つめる。
「深い言葉ですね・・・ゲーテですか?」
「いや、俺の祖父の口癖だ。子供の頃は何の事かまったく解らなかったが・・・・・今なら何となく解るような気がする。」
 俺は立ち上がるとズボンをパンパンと土をはたき落とす。
「そろそろ、帰るぞ。少しでも休んでおいた方がいいからな。」
「了解です。アンディ少尉」
845ジンロ:2006/11/03(金) 08:31:50 ID:oFTDh3Yk0
 二人がテントに戻ると、そこには銃を分解、整備を終えたブライアンが寝そべっていた。「遅いッスよ!少尉と軍曹の分も整備しときました。」
 ブライアンはそう言って起き上がると、こちらを向きアグラをかく。
「ああ、すまんな!」と自分のライフルを手に取り、作動を確認する。
「うむ・・・作動が滑らかだ。さすがは工作兵出身だな。」
 俺はそう言うとマガジンを装弾積みの物と変える。
 コールマンも自分のライフルを手に作動を確認する。
「今度、僕の家の掃除機も直してもらおう。」と真顔でボソリと冗談とも本気とも取れない事を言いながら、彼は何度も頷く。
「相変わらず、冗談と本気が判らん奴だ。」
 俺の言葉にコールマンは顔を真っ赤にする。
 そんなコールマンを見てブライアンは腹を抱えて笑っている。

 つかの間の平和・・・・仮初めの平穏・・・・それが永遠に続くわけでない事は俺も、含め皆分かっていた。
 だからこそ、今この時間を大切にしたい。

 いつも通りのやりとりと、軽い冗談。
 それを何度か交わした後、隊員達はそれぞれテント内で仮眠を取りはじめた。

 どれ位の時間が経っただろうか、不意にテントの外、微かに土の踏む音が聞こえた。
 その微かな音に反応し、皆はじかれる様に飛び起きライフルを手にする。
 戦場で培われた勘、という奴だ。
 互いに視線だけを交わし、その勘が確実なものだと確認してゆく。
 空気が戦場独特のピリピリと焼け付くように変化していくのが手に取るように解る。

 複数の気配が布一つ向こうの世界で満ちている。
 明らかにテント・・・・いや、テントの中にいる者達に殺気を向けられている!
 俺はライフルを、慎重に最善の注意で装弾する。
 ・・・・ガチッ・・・・・
 そっと装弾したつもりだが、音が鳴るのは否めない。
(相手にも聞こえたか・・・・?)
 テントのすぐ外・・・・入り口から三歩程、離れた所で足音が止まる。     
 みんなに緊張が走る。
 そして、テントの入り口が音もなくゆっくりと開いてゆく。
846ジンロ:2006/11/03(金) 08:34:05 ID:oFTDh3Yk0
取り敢えずはこんなものですが、比較的モンスターより、ゾンビよりな書き方をさせていただきますのでご容赦を・・・・・
続きはもうあるんですが、今日はここまでと言うことで・・・・・
847本当にあった怖い名無し:2006/11/03(金) 08:42:38 ID:lBpO4ZTcO
緊張感のある文章だと思います。
ただ、たまに脱字や繋がりがわからない一文があったのが残念(´・ω・`)

続きが楽しみです!お疲れ様でしたm(_)m
848本当にあった怖い名無し:2006/11/03(金) 09:52:02 ID:ubRAoy5qO
ジンロさん乙。
でもバイオならこのオカ板にもバイオ小説スレあるから
そっちのほうがいいかも。
849本当にあった怖い名無し:2006/11/03(金) 10:43:42 ID:ubRAoy5qO
ごめん。なかった・・orn
でもバイオものはどうだろ。
850ジンロ:2006/11/03(金) 17:44:50 ID:x2TNnW7ZO
そうですね……
お目汚しすみませんでした。
他を当たる事にしますね。
851本当にあった怖い名無し:2006/11/03(金) 18:37:06 ID:bss0Yt5A0
続き待ってます。
852ひろし:2006/11/03(金) 20:58:03 ID:bss0Yt5A0
少し書いてみますた。投下しようかどうしよう。でもせっかく書いたので
思い切って投下してみます。

 プロローグ
 
 世界中でゾンビが大量に発生し、世界の秩序は崩壊し、
生き残った人々は、もはや人間的な感情を失いつつあった。親
は生きるために子供を食らい、子は親に逆らって立ち、不信と
悪業が横行する。
 人々は地下に逃れたが、そこは暗闇で覆われ、もはや光はな
く、愛も希望もすでに絶えた。力あるものが生き残るという摂
理は、この時にあっても変わることない。ある者は低俗で動物
的な暴力で人を支配し、昼の間も姦淫を行い、あくなき欲望に
身を任せ、人殺しを続ける。力のない者
は耐え忍ぶしかなく、血の涙を体に滲ませながら、ただ耐え忍
ぶ。絶望の中、自ら命を絶つ者は少なくない。
 地上ではゾンビが徘徊し、地下では悪が跳梁するこの世界を
神がお見捨てになるだろうか?それとも、これこそが聖書に書
かれた、最後の審判の時なのだろうか?
 人々は天に向かって血の叫びをあげる。神は我々をお見捨て
になったのか?なぜ神は全ての悪をお許しになるのか?なぜ、
我々を完全な姿で創造してくれなかったのか?しかし、神は答
えない。
 手を伸ばしても、そこには何もないこの世界で、暗闇
と絶望に包まれたこの世界で、それでも人々はわずかな希望と
光を見出そうとする。すべては虚しいことだとわかっていても。
 信じるものは救われるのだろうか?我々は救われるのだろう
か?最後の時は近く、もはやそこには希望も愛もない。絶望の
みが全てを包む。
853ひろし:2006/11/03(金) 20:59:17 ID:bss0Yt5A0
 冷ややかさが身に染みる早朝、建都は廃墟となったコンビ二
で、食料を探していた。お腹が吸い込まれそうな空腹感の中で、
わずかな期待感を抱いてやって来たのだが、やはりめぼしい物
は見付からない。ゾンビが発生して3ヶ月、ほとんどの食料品
は、多くの人々に略奪された。この小さなコンビ二も例外では
なかった。結局手にしたのは、ソーセージとガム、飴、
スナック菓子数種類の数点だけだった。これでは3日間我慢し
ていた空腹感を満たすことはできない。だが何もないよりは良
い。建都はわずかな満足感を覚えて、ソーセージにかぶりつい
た。久しぶりに味わう肉の味だ。
 ゾンビが発生する以前――平和な生活を送っている時は、こ
のような物を食べると、合成添加物のせいで気分が悪くなった
ものだが、今ではそのようなことを意識することすらない。冷た
いソーセージは口の中で、ゆっくりとほぐれていく。早く飲み
込んでしまいたい衝動を抑え、噛み続ける。少しでもこの至福
の瞬間を楽しみたかった。この幸せがいつまでも続けば良い。
ソーセージがいつまでもなくならないで欲しい。そう思った。
これを食べきってしまえば、また食料に対する不安や、ゾンビ
や地下世界にいる奴等への恐怖に悩まされなければならない。
そのことは彼の心に計り知れない重圧を与え、彼の神経は疲れ
きっていた。
 その疲れを癒すため、彼は廃ビルの一室で眠りにつく時、い
つも神様に死を願う。彼にとって明日など必要のないことだった。
明日は過酷な現実に過ぎない。その過酷な現実から逃れるために
は死ぬこと以外にない。自殺も考えないではなかったが、だが心
の底では生に執着しつづけている。だから3ヶ月もたった一人で
生き残ってこれたのだろう。体は骨と皮だけに痩せ細り、目は光
を放つのをやめ、顔は土色になり、大人のように老けた。それは
今の彼の心を体現ししているといっても良い。
854ひろし:2006/11/03(金) 21:00:11 ID:bss0Yt5A0
 建都はソーセージを食べ終えると、コンビ二の外へ出て、バイク
に乗り走り出した。時速50キロ。昼間はゾンビが出没することはな
く、安心して移動できる。
 心地よい風を受けながらスムーズにバイクは走る。 
 この荒廃した世界にあっても、風は心地よいものなのか、と改め
て考える。その風は少しの悪臭を放っていた。恐らく、そこら中に
散らばる死体のせいだろう。道行く道に死体は転がっている。生体
機能を完全に失い、ゾンビにすらなれなかった死体が。
 3ヶ月前、初めて死体を見た時、それは魂の抜け殻にすぎない、と
感じた。死体になんの存在価値があるだろうか?死体など肉にすぎ
ないではないか。今、存在価値のない死体が視界を流れて去って行
くが、それに対し感傷に浸ることはできない。むしろ死んであらゆ
る苦痛から解放された魂に、嫉妬さえ感じる。死は解放でしかない。
死に苦痛はない。生前、彼らはどのような思いで生活し、どのよう
な気持ちで死んでいったのだろうと考え、悲しみを感じることはある。
しかし今の建都の現実に比べれば、そのようなものは大して彼の心
に影響しないことだった。
855ひろし:2006/11/03(金) 21:01:37 ID:bss0Yt5A0
 ある中学校のはずれに、建都の住む廃ビルはあった。昼間であって
も、重たい雰囲気をかもしだしている廃ビルの一室を、彼はどうして
も好きになれず、例えそこに柔らかいソファーがあって、テレビが設
置されていたとしても、くつろいで過ごす事はできなかったろう。し
かし、そこは四方をコンクリートの壁に囲まれた、何もない殺風景な
部屋にすぎなかった。
 建都はスナック菓子の袋を開け、一口一口丁寧にかじった。これに
使われている塩が、舌から口全体、そして体全体に染み渡り、生き返
った気分になる。塩とは、これほどうまいものなのか、と気づかされ
る。素材の味を意識する暇もなく塩の味だけを求め、一口一口丁寧に
かじり続けた。喉が渇いたところで、昨日、川からペットボトルに汲
んできた水をがぶ飲みする。多少臭みがあるが、今ではそれはもう慣
れた。
 こうして過ごしていると、3ヶ月前の平和な日々が自然に脳裏に蘇っ
てくる。空調の行き届いた自分の部屋、床にはカーペットが敷かれて
いた。友達とそこで、母親が用意してくれたお菓子とお茶を楽しんだ。
夜7時ごろ、友達が帰った後で下のキッチンにいってみると、テーブル
に並んだ料理から、暖かい湯気が立ち込めていた。テーブルには、ビ
ーチュー、ご飯、白菜のスープ、アジの塩焼きが並んでいた。味付け
は多少薄めの、口に残らないさっぱりとした味付けだった。建都は母
親の料理が好きだった。
 母親は外見だけでなく、心まで綺麗な人だった。建都が生まれて、早
いうちから離婚し、女手一つで彼を育ててきた。建都の悩みは全て彼
女に打ち明け、そして彼女はどんな悩みでも真剣に聞いてくれた。そ
れだけ建都の心は母親に依存していただけに、今は生きているかどう
か、あるいは自分と同じ恐怖と絶望を味わっていないか、気懸かりだ
った。(続く?)
856本当にあった怖い名無し:2006/11/03(金) 21:05:25 ID:AlGe0/Gn0
ジンロさん乙です。

続きを是非お願いします!
857本当にあった怖い名無し:2006/11/03(金) 21:18:03 ID:C8q32m57O
>>853
健都って地下から抜け出したの?
858本当にあった怖い名無し:2006/11/03(金) 23:32:52 ID:6jzb79VY0
>>853
健都の母ってどうなったの?
859本当にあった怖い名無し:2006/11/04(土) 00:02:32 ID:C8q32m57O
>>852
プロローグはとてもよくできていました
860ジンロ:2006/11/04(土) 15:28:32 ID:XKys/2Hx0
 続きですが・・・・
 もし、スレ違いやダメならいってくださいね。
 荒れの元にはなりたくないもので・・・・・

 その瞬間、俺はテントの床を蹴り、テント外に転がり出る!
 屈んだ状態ですぐさまライフルを構え、その場にいる者を確認。ポイントする。
「仲間を撃つつもりか?勘弁してくれや。」
 そこにいたのは今、見張りをしているはずのダリオと彼の部下達だった。
「何をしに来た?返答によっては・・・・」
 ダリオの額に光点が灯る。
「何をだと?交代の時間が来たから、俺様が親切にも教えに来てやったんだぜ?」
 俺は先程まで肌を灼いていた殺気が引いて行くのを感じて、ゆっくりと銃を降ろす。
 テントに向けて手のひらをしたにする。
 しかし、未だに警戒は解いてはいない。「なら・・・いいんだがな・・・・」
 ダリオは振り向き、部下に肩を竦めると・・・
「おいおい!臆病者は大変だなぁ!?ちょっとしたことでビクビクしなきゃならねぇなんてなぁ?」
 そう言った瞬間、ダリオ達が下品な笑い声を上げる。
「・・・んだと!?もう一度言ってみろ!」
 テントの中から、ブライアンが出てくる。
 ダリオ達に怒りの足取りで近づいて行くが、それを俺は無言で制する。
「交代だったな。引き継ぎする事はあるか?」
 挑発に乗って来なかったことが面白くなかったのであろう。ダリオはチッと舌打ちして「ねーよ!」とだけ言うと、きびすを返し部下を引き連れ自分たちのテントへ戻ってゆく。
「どうして、言わせたままにするんっすか!?」
 怒りが収まらない、ブライアンが突っかかって来る。
 それに、俺が何かを言う前にコールマンが肩を掴んで止める。
「よせ!少尉だって、腹が立っているはずだ。だが、ここで揉めてどうする?相手もこちらに警戒していた。あのままやり合えば人死にが出てただろう?」
 その言葉に納得仕切れない様子の、ブライアンはライフルを片手に足早に塀の上に上がる為の階段へ向かう。
「まったく子供だな。アイツは・・・・」
 俺はそんなブライアンに苦笑を漏らすと、弾薬の入ったバックとライフルを持って階段へと向かった。
 その後ろにコールマンとエレナが続く。
 
861ジンロ:2006/11/04(土) 15:30:14 ID:XKys/2Hx0

 壁の上に立つ。今日はこれで三度目だ。
 夜風が腐敗臭と怨嗟の声を運んでくる。
 眼下にはゾンビの姿は無い。ただ、もう動くことのない死体が築かれていた。
(よくもここまで殺したもんだな・・・・)
 死体はことごとく頭部が打ち抜かれて倒れていた。
 おそらくは、ダリオ達の戦果だろう・・・・
 ふと女の死体を見たとき、えも言えぬ不快感が込み上げてくる。
 その死体はちょうど乳房の部分が打ち抜かれ、最後に額が打ち抜かれていた。
(ゲス共が!)
 非道な趣味に吐き気さえ覚えるが、顔には出さずに部下達の元へと歩いていく。
 銃を肩にかけ、ブライアンの側に立つ。
 暗視双眼で辺りを見ていたブライアンだったが、一瞬その動きが止まる。
「何か・・・・用ッスか?」
 ふてくされているような声が彼の口から出る。
「いやなに。まだ気にしてるのかと思ってな?」
「気にしてないッスよ・・・」
 即答でそう答えるが暗視双眼から目を離さない。
(どうも、厄介だな。)
 子供のようなその仕草と反応に、思わず頭を掻いてしまう。
 後ろからトントンと肩を叩かれて振り向くと、エレナがそこに立っていた。
 そして、そっと耳打ちしてくる。
「こう言う時はそっとしておいた方がいいと思いますよ・・・」
(確かに・・・・)
 俺はブライアンの肩をポンっと叩く。
「何かあったら無線で知らせてくれ。頼りにしてるよ。」とだけ言うと、その場を後にする。

862ジンロ:2006/11/04(土) 15:31:52 ID:XKys/2Hx0

 地獄を眼下に、どれぐらい経っただろうか?不意に無線がコール音を鳴らす。
 無線機に手を伸ばして応答する。
「こちらアンディだ。」
『少尉ですか!?ブライアンです!すぐにこっちへ来てください!』
 ブライアンの慌てた声が無線機から飛び込んできた。
「どうした?緊急か!?」
 そう言ったが、ブライアンはとにかく来てくれの一点張りだ。
 無線で連絡を告げる時は、用件と状況を細かく報告しろとあれほど注意したのだが。
(やれやれ)と肩を竦めると、ブライアンの歩哨ポイントまで駆ける。
 ブライアンの所に着くと、近くに配置していたエレナとコールマンは既に到着しており暗視双眼で何かを覗いている。
「なんだ?生存者か?」
「解りません。でも、徐々にこちらに向かっております。」
 コールマンが暗視双眼をこちらに手渡してきた。
 俺が受け取ると、代わりにコールマンはバックからスナイパーライフルを取り出し、それで覗き込む。
 俺も暗視双眼を覗き込んだ。
 その先にまだ距離があるものの二つの光点が浮かび上がる。
 光点・・・おそらく車のヘッドライトであろうそれも、こちらに向かって来ているようだ。
「車?距離は解るか?」
「距離およそ1,2マイル(およそ2`)速度は測りかねますが・・・・あの早さなら接触まで5分弱かと思います。」
 俺の質問に答えたのもコールマンだ。
 コールマンの持つドラグノフだと今の距離は射程圏外だろう。
「軍曹!対象が塀との距離0、2マイル(およそ300b)に入ったらタイヤを狙撃しろ!」
「0、2マイル。了解しました。」

863ジンロ:2006/11/04(土) 15:34:00 ID:XKys/2Hx0
 コールマンを除く部隊のみんなが固唾を飲む。
「距離推定0、7マイル!運転者確認!生存者です!」
 エレナの言葉に暗視双眼をから目を離さず応える。
「こちらも目標を確認した。予定は変わらず!」
「了解!」
「ブライアン!車の停車時に戦闘になる可能性もある。射撃準備!なるべく紳士的にやれ。エレナはサーチライトを準備!」
 ブライアンは暗視双眼を置き、肩に掛けていた銃に素早く弾を装填し、立射で狙いを定める。
 エレナは近くに設置されていたサーチライトに取り付き、いつでも照射出来る体制に入る。
「狙撃地点まで5,4,3,2,1・・・」
 最後のカウント代わりに、コールマンがトリガーを引く。そして発砲。
 パァァァァン!
 一発の銃声が辺りに響き渡る。
 車は右前輪は寸分違わず打ち抜かれてバーストする。
 右前輪のコントロールを失った車は、そこを支点にクルクルとスピンした後、塀の手前でようやく停止する。
 少しの沈黙・・・・
 時間にするとほんの2・3分のことだったが、動きがあるまで非常に長く感じた。
 車の運転席と助手席が開かれ、2つの人影らしきものが現れる。
「ライト!」
 エレナの操作するライトが、停車した車を中心にその者達を照らし出す。
 おそらく親子だろう。
 15歳前後の女の子をかばう様に覆い被さり、おびえた表情を見せる40前後の婦人の姿が浮かび上がった。
(親子か・・・・)
 俺は側にある拡声器を手に取る。
「ここは現在、『汚染区域』として封鎖されている!速やかに街に戻りなさい!」
 俺がそう言うと親子も何かを叫び返してきた。
「街は奴等が一杯で帰れないんです!助けてください!」
「ダメだ!それは許可されない!速やかに戻らない場合脱走者として射殺する!」
 俺がそう言っても親子は下がらず、その場から動かない。
(クソッ!)
 
864ジンロ:2006/11/04(土) 15:34:51 ID:XKys/2Hx0
今日はここまでです。
明日また投下しますね。
865本当にあった怖い名無し:2006/11/04(土) 17:10:47 ID:U5s3gGo00
ジンロさん

うん、なかなか面白いよ。微妙にスレ違いなのかもしれないが気にしない。
むしろ別スレの人から「何そんなとこで油売ってんだよ!戻れ!」ってなるかもしれないw
とにかく上げた以上、最後までここで頼むね。

ひろしさんも乙です。これからの展開が気になりますね。
866通勤電車男:2006/11/04(土) 21:55:06 ID:qslHE2QzO
ジンロ様・ひろし様、新作?の投稿お疲れ様です。
ジンロ様、バイオ設定作品ですね。厳密にはスレ違いかもしれませんが
良い刺激になるのかもしれません(o^-')b。
いずれにせよ車から出て来た親子をどうするのか、
あぁもう気になりまくりな訳デズヽ(。д゚)/゙。
ひろし様、塩の味を噛み締める主人公に極限状態を感じました。
心を母親に依存していた彼の、それでも生にしがみつく逞しい成長を
母親は喜んでくれると思います!...生きていれば(>_<)。
続編の投稿お待ちしております。ありがとうございました!。
867本当にあった怖い名無し:2006/11/04(土) 22:29:24 ID:u8lCmWzS0
ジンロさん乙です。
このあとの親子がどうなってしまうのかが気になります。
868本当にあった怖い名無し:2006/11/04(土) 23:46:12 ID:yGkaMJq+O
もうすぐ512KB
869ひろし:2006/11/05(日) 00:45:57 ID:3+pLSctK0
>>857,858,859>>866
読んでいただいてありがとうございます。とってもうれしいです。
建都は一時期地下に退避してましたが今は地上にいます。母親はどうなったのか
考えてません。最後に建都と母親の再会はドラマチックだな〜とは思うんですが。
>>859誉めていただいてうれしいです。前、雰囲気のある文章書ける人みて
すごいなあと思ってたんですが、少なくともプロローグの部分は少し自信がつき
ました。ありがとうございます。
870本当にあった怖い名無し:2006/11/05(日) 00:56:39 ID:uL/6Y1syO
>>869
ひろしさん、がんばってくださいね(^-^)
871ジンロ:2006/11/05(日) 07:24:16 ID:eQojcboI0
少し早いですが今日の分を投下です。


 仕方なく肩のライフルを手にすると、寄り添い合う二人に向けて発射する。
 タンッ!
 二人の足下に着弾して地面が小さな土埃が舞う!
 ビクッと身を震わせ二人できつく抱き合う。しかし、その場から動く様子は無い。
「次は威嚇ではない!最後の警告だ!直ちに街へと引き返せ!」
 母親らしき婦人は声を引き絞るように悲痛な声で叫ぶ。
「街に帰ってどうしろと言うの!?あの・・・あの化け物に生きたまま食べられる位なら・・・・ここで死んだ方がましよ!!」
 それだけ叫ぶとその場に泣き崩れる。
 娘はそんな母親をかばうように覆い被さった。
 静かになった塀の内部に母親の泣き声だけが響く。
 その時!?
「何をするんです!?止めなさい!」とコールマンの声が聞こえてきた。
 俺は咄嗟に振り向くとそこにはポールにロープの端を結びつけ、塀の内側にロープを投げ入れようとしている。ブライアンの姿だった。
「何をしている!?」
 俺が体で止めようとしたが間に合わず、ロープは弧を描き塀の内側に伸びていった!
「ブライアン伍長!あなた何をしようとしているのか解っているのですか?これは重大な規律違反ですよ!?」
 そう叫んだのは、コールマン軍曹だ。
「規律?ハッ!んなもんクソ喰らえだ!」
 俺はそんなブライアンを殴りつける!
「おまえは・・・・」
 そう言ったとき、俺とブライアンの間にエレナが立ちはだかる。
「やめてください!」
872ジンロ:2006/11/05(日) 07:26:22 ID:eQojcboI0
エレナはブライアンにしゃがみ込むと腰のメディカルパックを開ける。
 しかし、ブライアンは治療をしようとするエレナを押しのけ、勢いよく立ち上がる。
「少尉は・・・・少尉は平気なんっすか!?あの親子を見殺しにして?」
 ブライアンは俺の襟を両手で捻りあげて続ける。
「アンタに人としての誇りは無いのか!?軍人だから・・・・上の命令だけ守る?それでアンタはいいのかよ!?」
 ギリギリと俺の襟を締め上げていく。
「言いたいことはそれだけか?」
 俺はブライアンの肘の急所を下から叩き、手がゆるんだ瞬間!その手を取って捻りあげて押し倒す。
「痛ッ!」
「ったく!少しは考えて行動しろ!」
 俺に関節を完全に決められているにも関わらず、もがき暴れる。
「ガァ!は・・・なせ!」
 しかし、腕ははずれるところか、さらに決まっていく。
 俺は溜息一つ吐いて折れないように少し緩める。
(やれやれ・・・・)
「暴れるな!まずは落ち着け!俺は見捨てるとは言ってないだろうが!」
「「えっ?」」
 みんな間の抜けた声を上げ、ブライアンも暴れるのを止める。
「コールマン軍曹、脱走者は見つけ次第に射殺だが・・・・」
「はい・・・」
「さっきの揉み合いで大切な万年筆が塀の内側に落ちてしまった。取ってこようと思う。」
 そう言って塀の際まで歩いていく。
 その後ろをみんなついて行く。
「しかし、その間にあのゾンビ共に襲われたら大変だ。そうだろう?」
 そこまで言われて、ブライアンも気付いたのだろう。
「はい!少尉が戻られるまで援護いたします!」
 俺はその豹変に苦笑を漏らす。
「し・・・しかし・・・・」
 コールマンは意義を唱えようと口を開き掛ける。
 その時コールマンの袖が引っ張られ見てみると、エレナが口に人差し指を立てていた。
「なに、取ってくるだけだ。」っと言ってロープを腰に巻き、降下の準備をして、塀の内側へと身を躍らせる。
873ジンロ:2006/11/05(日) 07:26:57 ID:eQojcboI0
「まぁ、もしかしたら『生存者』をうっかり見つけて保護してしまうかもな?」
 それだけを言い放つように一気に降下した。
(生存者と脱走者か・・・・詭弁だな・・・)
 降下しながら自嘲の笑みを浮かべる。
 そして、地面に着地して、辺りの様子を探る。
 少し離れた茂みに何かがいる気配がする。
 しかし、姿は見えずこちらを伺っていることぐらいしか判断できない。
(ゾンビか?しかし、奴等に様子見なんて知能があるとは思えんが・・・・)
 茂みに注意しつつ、親子の元に近づく。
「こ・・・こないで!」
 娘の方がこっちに気付くと母を背にかばうようにこちらに立ちはだかる。
 その足は今にもへたり込むかのようにガクガクと震えているのが見てとれる。
「信じられないかもしれんが、あなた方を保護しに来た!」
 ライフルを足下に置いて手を挙げ近付いてゆく。
「う・・・嘘よ!?」
 そう言いつつ後ろへジリジリと後ずさる。
 俺は頭をボリボリと掻いて苦笑する。
「心配するな。俺達は何もしない。」
 その時!茂みの気配がザワリと動いた!
(!?)
 俺はライフルに飛びつくと茂みに向ける。
 左手で無線を取り、コールボタンを押した。
『少尉!どうかしましたか!?』
 無線に答えたのは、ブライアンだった。
「そちらから11時の方向の茂みだ!奴等が来るぞ!」
 その言葉が合図だったかのように、茂みから「それ」が飛び出してきた!
 エレナが茂みにサーチライトを向けると・・・・
 そこには犬がいた!
874ジンロ
いや、かつては犬だった物と言うべきだろう。
 目は窪み、皮膚は所々腐って垂れ下がっている。
 この任務に就く際に見た資料の中に載っていたのを思い出す。
(確か・・・ケルベロスか!?)
 平たく言えば軍用犬のゾンビだ。
 思い出し、ケルベロスにポイントした瞬間。
タンタタタンタタタタ・・・・・
 ライフルのフルオート音が聞こえてくる。
 ブライアンの援護だ!
 ケルベロスは銃弾の雨にも関わらずこっちに走ってくる。
(こい!仕留めてやる!)
 しかし、トリガーを引き絞る瞬間、ケルベロスは方向を急に変え親子に向けて疾走する。
「しまった!!はじめから狙いはそっちか!?」
 ケルベロスは一直線に親子に向かう。
 親子は咄嗟の事に何が起こっているのか解らず、その場から動くことは出来ない。
 ライフルで狙うが、射線上に親子がいるため撃てない。
 しかし、次の瞬間!ケルベロスの姿が横に吹き飛んだ!
『少尉!今です!』
 無線から聞こえてきた。コールマンの声に反応するかのようにM16がフルオートで無機質な連射音を放つ。
 銃弾は引きつけられるかのように、ケルベロスの体に次々と吸い込まれてゆく。
 着弾の度、ケルベロスの体が跳ね・・・足が・・・肉が・・・削れてゆく。
 それでも尚、獲物を求め立ち上がろうとあがく。
 俺はケルベロスに近づくと、頭にライフルを押しつけて再びトリガーを引き2度目の死を与えてやる。