ここは僕の街だ。
戦後に山を切り崩し出来た歴史の無い街。
メインストリートに並ぶのはアメリカの
模倣をしたのだろうか?ポプラが秋の風に
吹かれている。
そしてゾンビたちは月明かりを浴びて長い影を
引きずり、さまよい歩く。
「ねえそこの芝生はKさんのお気に入りだよ。はいっちゃだめじゃないか」
屋根に上るとショットガンで狙いをつける。
西の空は燃えている。
そろそろここにも火の手は来るだろう。
月を見上げ、神の与えてくれた自然の美しさに
涙をこぼす。
胸に聖書をそして神の名を呼ぶ。さようなら。
僕は銃口を咥え。そして引き金を引く。
さよなら多摩センター。最初から死んでいたんだこの街は。
俺は人間恐怖症で人の目を見て
話せなくて、話していると緊張して汗をかく
きもい男なんだ。
寝坊して昼になると、いつものように下(6階)の
レストラン街に行く。
レストラン街にいるのはトモちゃんで大学生だ。
いやだったと言うべきか?こんな状況では。
文学部日本語学科で卒業したら従兄弟と同じ会社に入って
かわいいお嫁さんになるのが夢だったという、ぽっちゃりした女の子だ。
「ともちゃん、今日は生肉を使おう。
生鮮食料品早く使わないともったいないよ」
「保存する方法は無いかしら?私今、ダイエットしてるの」
もちろんジョークってやつだ。トモちゃんは笑ってる。
俺はトモちゃんが愛しい。ゾンビが世界に出る前に
こんな会話が出来たらもっと人生は楽しかったろう。
「トモちゃん・・・・」
俺たちは、大して減ってない腹をかかえ
小型のプロパンガスでステーキを作る。
「これ、この店で一番高級な肉ね。脂っこいけど」
眼下には銀座の町が広がっている。
ゾンビたちは今日も忙しそうに(あいつらは腹が減らないのか?
っていうか食うもんもうないだろ?)
歩き回っている。俺はワインが飲みたいというトモちゃんに
なるべく高そうなワインをセラーから選んで来る。
「お嬢様。こちらがブルゴーニュの1940年モンです」
少女のように笑うトモコ。
俺たちは、いつまで冗談が言えるのだろう?
彼女は昨日、俺の胸の下で泣いていた。
当ての無い未来。引き伸ばされる時間。
生きてる意味の無い日々。
いや考えるのはよそう。夜になれば嫌でも考える。
光の無い夜には絶望がやってくる。光ひとつ無い闇に
身を浸し窓を見下ろした街は地獄だ。この闇こそ人間の深淵だろうか?
神よ、ああ神よ。
一年前
体操着の袋が宙を舞う。
ストローの先から零れ落ちるのは
牛乳だろうか?紙パックは教室の後ろから放物線を描き
最前列の史朗の背中に当たる。
いちだんと大きい爆笑が巻き起こる。
史朗はただ背中を丸め時が過ぎるのを待っている。
涙は出ない。もう彼の心は乾ききっているのだ。
現在
そして世界は崩壊し学校も崩壊した。
秩序は乱れ再構築する。
その真ん中にいるのはゾンビだ。
そして中心はやがて拡大し周縁を飲み込むだろう。
その前に、史朗にはやることがある。
許せない男がいる。いや女も。
達矢とルミコ。あのカップルを殺すまでは・・・
「史朗は、まだ生きているのよ彼に謝れば?」
達矢は窓の埃を無意識にいじりながら
窓の外のゾンビを眺める。
ゾンビは死なないのだろうか?自然に
エネルギーはなんだ?永久機関は存在しない・・・
「黙っててくれ。俺だってお前に何するかわからんぜ?」
ー史朗の家
史朗はゾンビの動き方を観察する。
歩きかた。表情。筋肉の動かし方。
それは史朗にとって楽しかった。
何よりも・・・生まれてこの方、こんなに
充実した日々は無い・・・
やがてゾンビの動き方をマスターすると
絵の具と泥を使いゾンビのような
化粧を始める。今日は新月だ。明かりは無いだろう。
闇とゾンビに扮した史朗は、やつらのいる
学校を襲い、奴らを殺すつもりだった。
殺し方も考えた。復讐のときだ。
ものごとは、うまくいかないものだ。
小説も現実も・・・
ゾンビの予想外の多さに計画を遂行することが
出来ないと感じた史朗は破れかぶれに
学校のバリケードを叩き壊した。
多くのゾンビが学校に進入した。
生きる肉の匂いをかぎつけて・・・
ゾンビに追われた史朗は屋上に逃げる。
そこには同じように逃げてきた達矢とルミエがいた。
「俺たちは、もうすぐ死ぬ。やつらには勝てんよ」
達矢は史朗を殺そうと持っていた包丁を
投げ捨てる。
「殺したければ殺せ。お前は俺を殺す権利がある」
やがて、ゾンビは屋上にやってきた。
史朗は給水等に上り、ルミエと達矢が来るのを待った。
はしごを上るとき蹴落とすつもりで。
「俺たちを上らせないんだろ?」
「史朗君。許してね。許してくれないだろうけど
許してね」
史朗は足を出さずに進路を空けて「この馬鹿やろう」久しぶりに
だした声は擦れていた。
そしてゾンビはやってきた。いまや屋上にあふれんばかりだ。
給水等のはしごに手こずってるゾンビもやがてここに来るだろう。
「俺は校舎の方に樹を伝って行ってみる」
史朗は三メートルは先にあるケヤキに指をさした。
二人は困惑しやがてうなずいた。
おわり
給水等 ×
給水塔 ○
都下の中学校。
井戸のある中学。
僕らが何千回目の大富豪を終えたとき
またいつものように夕日が沈もうとしていた。
暗く数字が読めなくなった僕は
あきらめてトランプを場の中央に置いた。
「やめる?」
「ちょっと休ませて」
僕は立ち上がり西の空を眺める。
幾羽ものカラスが赤く染まった空を
無きながらゴマ粒のような姿で
旋回している。あいつらは、どこからやってくるのだろう?
代々木公園か?井の頭公園?いや開いたビルディングや
家屋なぞ無数にある現在では、どこにだって住めるのだろう。
やがて人間のいなくなった世界に立つのはゾンビだろうか?カラスだろうか?
いや、あいつらカラスかもしれない。世界を見下ろし
電柱に立つ姿を見て立場が逆転したのを知ったのはずいぶん前。
何度も泣き、絶望の嗚咽をもらし知った事実。
それがこういうことだ。人間はもはや世界を構成する
ピラミッドの最下級にいる。そこから落ちるのも時間の問題かもしれない。
「ねえ?話があるの」
僕らは目を上げ幸恵のほうを見る。
「さっき、話してたんだけど私たち出来るだけ食料を備蓄
したほうがいいんじゃないかってこっちで話してたのよ。
そりゃ今は水だってあるし食料もある。でも他に生きている人たちが
いないとも限らないでしょ?それで食べられるものは
出来るだけ集めようって・・・これはでも私たちの考えだから
男子の意見も聞いてからにする。もちろん。それでどう思う?
まだ、待ったほうがいい?」
僕らは校庭で職員や教師たちが残していった
車の運転の練習をし近くにあるスーパー(それはコープという)まで行き
食料や雑用品。それから、ありとあらゆる
使える品を持ってきた。でもその時仲間の一人がやられた。
バックヤードに通じるドアから突然でてきたやつに
食われたのだ。リスクを犯してまで行く必要があるのか?
それが問題だった。でも本当に必要なものは燃料だ。
これから冬になる。今のように厚着をして過ごすというのも
無理かもしれない。それに薬。春になったら畑も作らなくては
いけないだろう。種も欲しい。
「必要なものをピックアップしないか?コープで
そろえられないものもあるだろうし、それなら一度に行って
リスクを抑えたほうがいい。どうかな?」
731 :
通勤電車男:2006/10/16(月) 23:52:51 ID:669FFwn/O
692様・まぐろ味付様・ken様、新作の投稿お疲れ様です。
692様、非常にコンパクトに纏められてますね!。それにも関わらず
「ヘルメットを被った母ゾンビ」
「・・・お父さんが待ってるよ」
等、様々なワードがこちらの想像を掻き立てます!(^o^)。
まぐろ味付様、ゲーム好きなフィンランド人!。頼もしい...のか(^_^;)。
「昨日までデッド○イジングしてたのサ〜♪」に期待してしまいますw。
...ソレニシテモ..オイシソウナ..オナマエデスネ..(/。△゚)/"
ken様、登場人物がいっぱいですね。そのうち合流するのでしょうか?。
だとすれば何かいろいろあった様な史郎・達矢組の行動にwktkです!。
あーでも“おわり”ってあったので、終わりデスカネ(^_^;)。
続編の投稿お待ちしております!。ありがとうございました!。
732 :
ken ◆r7Y88Tobf2 :2006/10/17(火) 00:41:53 ID:nI+Pqsgl0
>>732 別に作者が面白いと思ってるからといって読んでる人が面白いと思うわけでもないしww
書き出しなんてそんなもんです。そのうちノッてくるでしょ。続きガンバ。
春は、やってこないだろう。
少なくとも僕らの場所には。
仲間は皆、死んだ。
でも俺は思うんだ。人間は繁栄しすぎたんだってね。
そう、地球にとって環境を一番壊したのは誰だい?
いや俺は何かを説こうって言うじゃない。
美しい音楽、美しい文明、永遠を語り合った愛。友情。
僕らはいろいろなものを生み出したし、いろいろな
ものを失った。でも、もういいじゃないか?
僕ら人間は良くやったよ。俺が言うべきじゃないかもしれないけど
もう潮時だよ。いや・・・違うのかい?
幸恵の生んだ赤ん坊を屋上で冬の空に掲げる。
「神様。これが僕らの答えです!
どうですか?皆、死にました。僕らは正しかったですか?
正しい道を歩みましたか?」
俺は、もう以前の世界を忘れてしまった。
ゾンビのいる世界こそ日常、新しき正しき世界だと
見ている自分に驚いてしまう。
俺が死んだあとまた何か生まれそして死ぬのだろう。
さあ、時間だ。答えは見つかったかい?ケンよ。
太陽は傾きかけている。寒さが激しくなってきた。
とりあえず下に戻ろう。コーヒーを飲んでまた考え直せ。
新しいアイディアがうかぶだろう。
いや、もうたくさんだ。十分だよ。
俺は、立ちすくみ夕日を眺める。美しい夕日を。
いまは何も考えずにいたい。なにも
おわり
ゴメンナサイ。
>>幸恵の生んだ赤ん坊 ×
>>幸恵の生んだ死んでしまった赤ん坊 ○
ゾンビがいるよ。ゾンビが踊る。
華やかな衣装を着てゾンビが踊る。
「母さん。あれは何だい?」「父さん。ゾンビですよ。
私たちも踊りましょう」チークタイムは夢の中。
二人の見る夢は、遠い昔の幻か・・・
桃源郷のその先に行って見ましょう二人きり。
光の浴びてシャワーを浴びて。
流行のステップ踏んでみよう。
夜は長いよ。まだまだゾンビはやってくる。
眠らない街、東京の生と死が交差する。
太陽は死んで月が昇る。
さあさあ僕らも一緒に踊りましょ。
ドンドンツクツクドンツクドン。