202 :
age虫:
作り話だが。
売れない作家と、その友人が居て。
友人は常々、「もっとウケ狙いじゃないとダメじゃないか?」と言っていたが、
作家は「オレは大衆ウケなんか嫌いだ」と言う事で耳を貸そうとはせず、
一応何故か、出版社にはコネが有ったらしいが故に、生活は惨憺たるモノだった。
でもある日、友人がその作家宅を尋ねると、彼は妙に嬉しそうで、
理由を聞くと「素晴らしいアイディアが閃いたんだ、今書いている所で」と言う。
「悪魔って知っているだろ?あいつらは実は実在するんだ。
奴らは”魂”を欲しがってる。何に使うのか?長いこと疑問だったんだが、
やっとその謎が解けてね。魂と言う”物”を得る訳じゃない、それは権利だ。
解るかな・・・、人として産まれる、”その権利をそいつから買う”んだよ彼らは。
そいつが死んだら、その悪魔がその権利を使って”人として産まれる”訳だ・・・、
・・・そいつはどうなるかって?悪魔と入れ替わる、その後はそいつが悪魔になる。
どんな生活かは知らないが・・・、でも彼らの力は素晴らしい。一生を捧げても、
俺はきっと後悔しないと思う。それを売ってくれるんだ、買わない手は無いだろ?」
薄ら笑いの彼に、友人は少し恐くなって、でも、別に売った訳じゃ無いんだろ?と、
一応は聞いてみた。答は、まだちょっと迷っている、傑作になったら、多分。
・・・その半年ほど後、その作家は水死体で発見された。自殺、遺稿はしかし、
傑作として世に出て。悪魔との交流、その世界への賛美、そして魂を売るまで。
「恐ろしいまでのリアリティ」と評されたそれを、友人はでも、買わなかった。
その友人が後に言うには、”豚肉が食べられなくなった”と言う。あっちの生活を、
”彼は”時々、夢に出ては伝えてくるのだそうだ。そして必ず最後に言うには、
「お前も来ないか?ここは良いところだぞ・・・?」