前スレ>933が名前だけ出してブーイングを受けた「ババロワさんこんばんは」の
ストーリーを書いてみる。なお、前スレ>933は絵本と言っていたが、
自分が読んだのは文庫版。
「ババロワさんこんばんは」
(「森からのてがみ」所収 舟崎克彦 ポプラ社)
ある日の真夜中、猟師をしている「ぼく」のもとに「ババロワ・サンダラボッチ」と
名乗る人物から電話がかかってくる。「ぼく」を世界一の腕前と見こんで
頼みがあるとのこと。頼みとは、放っておけば地球が滅ぼされてしまうくらい
獰猛な、ある獣をとらえて欲しいと言うもの。目的は「ババロワさん」が計画中の、
世にも珍しい動物ばかりを集めた動物園をつくるのに、世界一強くて危険な
その獣がどうしても必要なため。どんな獣なのかは教えてもらえなかったが、
報酬はいくらでも出すという。今では高値で売れる動物は狩猟禁止となっており、
金銭的にも困っていた「ぼく」は、その依頼を受けることにする。
電話が終わると同時に「ぼく」の家の前に迎えの車が止まる。車に乗せられて
到着した屋敷は、とてつもなく大きく、とても建物の中とは思えない広さだった。
「ババロワさん」に案内され、暗い屋敷の中の階段を数百段も上り下りすると、
そこには未だかつて見たこともない奇妙な動物たちの入った檻が並んでいる。
さらに進み、長い廊下を通った扉の先、真っ暗闇の世界で、いよいよ
「世界一危険な獣」と対決することになる「ぼく」。
「ババロワさん」と立てた作戦は、まず「ぼく」が檻に入り、獣がその
においに誘われてよってきたところを麻酔弾で撃つと言うもの。
肝心の檻はどこにあるのかと「ぼく」が口を開きかけたとき、突然上から
大きな音がしたかと思うと、降ってきた檻に「ぼく」は閉じこめられてしまう。
檻の鍵をかける音と共に「やれやれ、これで一安心だ」とつぶやく
「ババロワさん」。
その不審な言動に、「ぼく」が「獣」は本当にここにいるのかと聞くと、
「いるとも」との言葉と共に目の前に一筋の光が射す。
そこに照らし出された鏡に映っていたのは、「ぼく」の姿だった…。
呆然とする「ぼく」に、「ババロワさん」は、自分たちは地球を自然動物公園
として使ってきたこと、少し目を離した隙に人間が増えすぎたこと、
このままでは地球の生き物は死滅し貴重な動物たちが失われるだろうこと、
その前に他の星に動物公園を移すことにしたことを語り出す。
そして、人間の中でもっとも手強い相手、すなわち「ぼく」も捕まえて
おきたかったと語る。「ババロワさん」は、そこで初めてニヤリと笑うと、
檻の中の「ぼく」にまばゆい金貨をバラバラと放り投げるのだった…。
こうして書いてみると、先の読める話かも知れないけど、初めて読んだ
子供のときは展開にびっくりした。
ちなみに「ぼく」は、害の無いような動物はできれば殺したくないが、
猟師くらいしか自分にはできないと悩んでいて、今回の報酬が入ったら
猟師をやめられると思っていた。「ババロワさん」ひどいや…。
この話は「ババロワさんいらっしゃい」という短編の中の1エピソードで、
他に「おくりもの」と「さようなら」があるんだけど、「こんばんは」以外では
「ババロワさん」は謎の人物だが敵対的じゃなく、ストーリーもどことなく
寂しさを感じさせる内容。
収録されてる「森からのてがみ」には、ほのぼのとした話から切ない話まで
いろいろ入っていて、子供向けの話なのに、大人になった今読んでも
結構面白かったなぁ(20年ぶりくらいで読み返してみたよ)。