840 :
芽理の父です:2006/01/24(火) 00:20:33 ID:qlA8CLoV0
用事を済ませたメリーはさっさと事務所から立ち去ることにした。
正面玄関から堂々と入り、堂々と立ち去るのがメリーの流儀である。
だから、それを知る者はそこで待ち受ける。
「素晴らしい手際だった」
ぱち、ぱち。どこからともなく現れたサラリーマン風の男は、拍手をしつつ親しみを込めて笑った。
どこにでもいそうな男である。すべてが平均的で、特徴というものが存在しない。そこが逆に不気味だった。
「相も変わらずの美しい仕事ぶりだ。腕は鈍っていないようだな」
「そう。ありがとう」
メリーは表情を動かさずに答える。どこか警戒しているようにも見えた。
おそらくこの二人は知人であっても友人ではないのだろう。
両者の間には、見えないが深い溝があった。
「……いつもの通り、お金も魂も要らないわ。その代わり、」
「ああ、分かっているさ、分かっているとも我らがメリー。
僕らは君に干渉しない。僕らが救われぬ魂の声を聞く。君は彼らを救済する。
僕らへの報酬は金銭と魂。君への報酬は無干渉の約束。いつも通り、これは実に理想の形だ。完璧な共生だな」
胸に手を置いて、芝居がかった仕草で男は応えた。
メリーは軽く頷く。
「それなら、いいわ」
男をよけて、メリーは歩を進める。
841 :
芽理の父です:2006/01/24(火) 00:21:14 ID:qlA8CLoV0
背を向け合った格好となった時に、男が言った。
「君は変わったな、メリー」
今までとは調子の違う声である。おそらくは本心からの言葉、それゆえに。
「昔は人間なんて花でも摘むように殺したじゃないか、分け隔てなく」
「今でも殺すわ、蝶の羽をもぐように」
「だが例外ができた。花でも蝶の羽でもない人間が」
それは分け隔てなく、とは違う。だからメリーは変わった。
「可愛らしい人間だね、彼は。実に美味そうで、食欲をそそる。君がつい勿体無くなって食べずにおいているのも、分かる気がするよ」
「透に手を出したら、あなたの後ろに立つわよ」
振り向いて男の背中を睨み付け、メリーは言った。
冷たい声だ。今までの無機質な人形めいた冷たさとは違う、絶対零度の静かな怒り。
後ろに立つ、とは、もちろん言葉通りの意味ではない。
メリーが口に出した場合、それはとても恐ろしい意味を持つ言葉となる。
それをよく知っている男は、だからこそ溜め息を吐いた。
「やれやれ、君を怒らせると怖いのは身に染みて知っているよ。だがどうしてそこまでする。まさか本当の本気で人間なんかを愛しているのかい? あのメリーともあろうものが」
「愛しているわ。腹立たしいほどにね」
一切の迷いというものが存在しない、即答だった。
男は呆れたとばかりに肩をすくめ、そしてそのまま闇に溶けていく。
「目を覚ませよ、メリー。僕らは化け物なんだぜ」
最後に一言、メリーの胸をじくりと痛ませて。
842 :
芽理の父です:2006/01/24(火) 00:21:59 ID:qlA8CLoV0
「あの馬鹿、まだ起きてる」
まだ明々と光が灯っているぼろアパートの二階を見上げ、メリーは半ば呆然として言った。
しかしどこか嬉しそうでもある。
「スカタン、蹴り飛ばして寝かしつけてやる」
早足で階段を上るときには、もう隠しようがないほど、その表情は笑顔。
帰る家があるというのは、こんなにも嬉しいものなのか。
待ってくれている人がいるというのは、こんなにも嬉しいことなのか。
すべてあの人間が教えてくれたことだった。
彼自身は馬鹿だから知らないだろう、どんなに心強く思っているか。
百万本の冷たいナイフよりも、温かい彼ひとりの方がずっとずっと大切だ。
ドアを開けたとき、そこに立っていた透の姿。愛しい人の姿。
どうしても我慢できず、メリーはその胸に飛び込んだ。
『メリーさん』はもう独りではない。
843 :
芽理の父です:2006/01/24(火) 00:27:48 ID:qlA8CLoV0
……というお話でしたとさ。完。
(´・ω・`)ヘタピーでごめんね とあるジャンルの三流SS書きだから許してね
段落明けとかないのは仕様です。掲示板連載なんて久しぶりだぜ
最後まで読んでくれた人に感謝。お客様は神様です。
>>827 ごめんね
ありがちな展開でごめんね
>>829 ちなみに返品は受け付けておりません
かっこええわぁ!
あだるとやわぁー!
続きってありますか?
もしよかったらゆっくりでもいいのでまたお願いします!!!
背後の設定も楽しそうですよねww
845 :
名無し:2006/01/24(火) 00:47:40 ID:X0NStHyWO
ぶぅらぼー。
拍手を贈らせてもらおう!
黙々と仕事をこなす芽理パパと件のメリーはどこか似ていてまさに孤高!
これからも応援します。
つーか次スレ立つかな?このスレ
846 :
本当にあった怖い名無し:2006/01/24(火) 00:49:50 ID:QgEnLsnrO
上げてみた
名無し氏も芽理パパもお疲れ様。
名無し氏、もう終わるのか・・・物語にはエンディングは必要だものね・・・。
でですね、皆さん、
多分、もうこのスレ、書き込みできなくなる気がするの。
オカ板は512KB?
>>846 の段階で474KB(484456Byte)、どっち?括弧内で見るのか?
で、次スレなんですが、一応テンプレのよーなものを作ってみました。
何か足りないものがあったら、ご指摘下さい。
あ、スレタイは
「私メリーさん 【二人目】」
にしようかと思ってますが、他に何かあればどーぞ。
>>126サソ
シリアス展開キタ。
+ +
∧_∧ +
(0゚・∀・) ワクワクテカテカ
(0゚∪ ∪ +
と__)__) +
>>芽理父サソ
ツンデレ、メリーさん萌え。
彼氏の前と仕事?の時のギャップもイイヽ(゚∀゚)ノ
続き是非キボンヌ。
名無し氏>>またまた
アンマ━━━━(●゚ω゚●)━━━━ィッッッ!!!
こりゃ最後までアマアマでつか?!たまらんっス!!!
芽理パパ>>かっこよすぎっス!!!超おもろかったよマジで!!!
前回のとは違うかっこよさがゴリゴリで美味しゅうございました。
今日も職人四天王のおかげでいい気持ちで寝れますわ☆
みなさんおやすみなさいノシ
852 :
名無し:2006/01/24(火) 05:32:21 ID:X0NStHyWO
LadyさんGJ
いいと思いますよ。
なんかこのスレ終わるのが少し寂しいですね。
ここまで思い入れのあるスレ初めてです。
次スレでも張り切っていきましょう。
…さて俺ももう一仕事しますかね。
>>851いやあまり、アマアマな展開は想定してない…
…かもしれません。
作者自身が、初期に想定していたエンディングと全く違うの考えてますからww
まあネタはばらさずエンディングに突き進みます。
853 :
名無し:2006/01/24(火) 06:31:55 ID:X0NStHyWO
…
ゆっくりと唇を離す。
「……キス。」
メリーはきょとんとしながら俺を見上げてくる。
また、見つめ合う。沈黙が訪れる。
今度はメリーが俺の首に腕を回し、自らの唇と俺の唇を合わせようと身を乗り出す。
……ゴチッ
「いって…!」
メリーの歯が俺の上唇を強打した。
「…あ。」
「へたくそ。」
からかってみる。
「…!‥なっ!」
そうこれ。メリーのこの怒ったような表情。なんだか懐かしい。
「お、女の子に恥をかかす気!?」
この調子この調子。
まだギャーギャー言ってるが、俺は立ち上がって尻についた砂をはたく。
「ち、チョット!聞いてるの!?アナタってば前々から思ってたけど、デリカシーってモンあるの!?」
854 :
名無し:2006/01/24(火) 06:35:27 ID:X0NStHyWO
俺は黙って、地べたにペタンと座るメリーを見つめる。
「なによ…?」
「はい。手。」
メリーは差し出された手を少し見つめてから、俺の方に視線を戻す。
「‥ま、これはアナタにしては上出来だわ。‥お言葉に甘えてあげる。」
俺はメリーをゆっくりと引き起こす。
立ち上がったメリーは、何だかちょこんとしてて、身長なんか俺の胸くらいまでだ。
「‥ありがと。…ちょっと屈んでくれない?」
「…?はいはい。」
「‥返事は一回よ。」
俺の頬に、羽毛のようにふわりと両手が添えられると、次には目の前にメリーの顔。重なる唇。上出来なキスだ。
855 :
名無し:2006/01/24(火) 06:39:28 ID:X0NStHyWO
「…ん」
やがてメリーは頬を赤らめながら唇を離す。
「これは‥お礼よ‥」
今度は俺まで真っ赤になる。
メリーは少し不貞腐れたように頬を膨らませて、視線を泳がせている。
「‥メリー。」
「な、何よ‥!」
視線は相変わらず俺を見ていないが、俺は言葉を繋げる。
「俺はこれから先、死にたいなんて絶対に思わないと誓う。」
視線が合う。
「お互いに、これで所在が分からなくなるわけだ。」
メリーの顔が少しだけ曇るが、表情はつとめて平静を装おうとしている。
「‥そ、そんなの知ってるわ…」
声が少し震えてる。
「だから‥」
メリーの目に、また涙が浮かんでる。
「…俺の家…来ないか?」
沈黙。一瞬の間。長く感じる。恥ずかしい。
「俺、メリーと離れたくない」
顔から火でも噴きそうだ。
メリーは今にも泣きだしそうな顔してる。
「…私も…離れたくなんかない…」
震える声。ポロポロと涙が落ちる。
やれやれと言ったところだ。俺は右手を差し出して言う。
「…一緒に帰ろ?」
メリーは袖で涙を拭うと、コクリと頷いて俺の右手を左手でしっかり掴む。
辺りはいつのまにか夕日に染まっていた。お互い何を言うでもなく歩きだす。
夕日の中をこうして、手を繋いで歩いていると、まるで仲の良い子供同士のようだ。
歌でも唄いながら歩こうか?それとも口笛かな。
そんな事はどうでもいいか。
一緒に帰ろう‥メリー。
856 :
名無し:2006/01/24(火) 06:47:00 ID:X0NStHyWO
>>834 126さん。
気付かなんだ。スマヌ。
んで、あと何個かチョコチョコと小ネタ挿んでから、エンディングへと向かおうかと思っております。
126さんの作品、今後も楽しみです。次スレもあると思うので、マッタリいきましょうぜ。
これが終わって、また何か小ネタ思いついたら投下させてもらおうかと思ってます。
857 :
名無し:2006/01/24(火) 07:34:50 ID:X0NStHyWO
……。
ナタも睡眠薬類も激物もチェーンソー(!?)も、剃刀以外は全部棄てた。
眉毛整えられなくなるからな。
…んで、今どんな状況かというと、一つのベッドに二人、背を向けるようにして布団をかぶっている。
ソファで寝るって言ったら、メリーが言いだしたんだ。
「さ‥寒いだろうから添寝してあげるって言ってんの!お、女の子に何度も言わせないで‥!」
…らしい。別に俺は変な事しようなんてこれっぽっちも思ってないんだ。
メリーが変に意識するから、こっちも何だか恥ずかしくなってしまう。
まったく。寝よう。寝てしまおう。おやすみ。‥ぐー。
858 :
名無し:2006/01/24(火) 07:36:30 ID:X0NStHyWO
…。
駄目だ。目が冴えてしまったじゃないか。メリーの所為だメリーの。
…そういや、メリーはいつも何処を寝床にしてたんだろう?身成りは綺麗だし。良い匂いだし。髪の毛サラサラだし。聞いてみようか?いややめとこう。
「ただの…暗闇よ…。」
「‥!?」
ビックリした。背後からメリーの声。俺の心が読めるのか?
「…何?テ、テレパシー…?」
「…声に出てたの。」
どうやら声に出ていたらしい。マジか?動揺しすぎだ俺。少し落ち着け。
んで…
「…暗闇って…?」
「言葉の通りよ。何処へでも繋がってる"死の闇"。目を閉じれば目蓋の裏からでも繋がってるわ。」
死後の世界?違うか。何だろう。
「ずっと…一人でいたの?」
「…うん。」
何を聞いてるんだ俺。
「人間は‥意識してなくても、個人差はあれ、大なり小なり闇を抱えて生きてるの。」
うん。知ってる。
「そんなものの集合体みたいなところよ。…暗くて、冷たくて、静かで、とても恐い場所」
俺は体をメリーの方に返す。
「…もう…あそこに…帰りたくない…。私…」
涙声。俺は黙ってメリーを抱き締めた。
「うん。必要ないよ。これからは‥。」
「‥うん。ありがとう‥」
メリーの髪、いい匂い。
これからは‥ずっと一緒。
俺はこの安らぎの中、いつのまにか深い眠りにおちていた。
名無しさん!乙です・・・・。
どきどき・・・・。
861 :
名無し:2006/01/24(火) 14:10:12 ID:X0NStHyWO
Ladyさん、126さんおはよう。
ついさっき、ラストまで一気に書き上げちゃいました。
では、参ります。
ラストまで…。
862 :
名無し:2006/01/24(火) 14:11:09 ID:X0NStHyWO
……
目が覚める。もう昼も大分過ぎだ。
メリーと出会って丁度一週間ってとこだ。
…身体を起こす。
傍らで小さく丸まっているメリー。よく眠ってる。
それはそうと、今日はライブが待っている。
「とりあえず…シャワーでも浴びよ…」
眠い頭を引き摺って洗面所へ。
服を脱ぐと流石に寒い。
脱いだ服を適当に投げ捨て、風呂場へ入ると早々に蛇口を捻りお湯を出す。
立ち上る湯気。
…メリーと暮らすなんて、嘘みたいだ。
頭からシャワーをかぶると、心なしか眠気も一緒に流れていく気がする。
…一週間、何だか永い一週間だったな。
…………。
863 :
名無し:2006/01/24(火) 14:12:09 ID:X0NStHyWO
髪もセットし、部屋に戻るとメリーが眠そうな目をこちらへ向けてきた。
寝呆けてるな。
「メリー。おはよう。」
「……おはよう…」
今にも眠ってしまいそうなメリーを見ていると、こっちまで睡魔がぶり返してきそうだ。
「今日、ライブやるんだ。」
「…うん。」
「〇〇楽器の二階の小さなハコなんだけど…」
「…うん?」
「ホラ、前に来た時あったろ?俺とはすれ違いになったけど。」
「あ…うん。」
「そこでやるんだ。今日の夜7時。」
「…うん。」
「俺はリハがあるから、もう行くけど…」
「へ‥?」
……解っているのだろうか?何か吹き出してしまう。…仕方ないな。
「…もう少し眠るといいよ。」
「…イヤ…私も‥いくの。」
「起きたら、ゆっくり来なよ。」
「……。」
「…ね?」
「…うん。」
メリーの頭を撫でる。寝るように促して、布団を掛けてやる。まだぼぅっと俺の顔を見ている。
俺は微笑みでかえす。そしてまたそっと頭を撫でてやる。
「…クゥ‥」
すぐに眠る。俺はそっと頬にキスをした。可愛い奴だな。
864 :
名無し:2006/01/24(火) 14:13:19 ID:X0NStHyWO
…さぁてと、行こうか。
ギターを肩に掛け、適当なブーツをベランダに放り投げる。
これを言うのも、久しぶりだ。
「いってきます。」
………。
そして夜。
メリーは起きたのだろうか。
プルルルルルル…ピ
…メリーだ。
「あ、私私。メリーよ。アナタ今何処にいるのよ!!」
それが、メリーの第一声だった
「目が覚めたらアナタいないじゃない?もぉ…」
電話の向こうでは、困ってしまって一人で何やら呟いている。
そう、彼女にはもう読めない。俺の居場所。
俺は何だか可笑しくて、溜息一つついて言った
「今、楽屋。」
「えぇぇ!?何でそんなトコにいんのさ!?」
ほんとこの子は。
「今日、バンド…ライブ…。起きた時言ったでしょ?」
「………あぁッ!」
やっぱり寝呆けてたか。
…彼女は所謂、都市伝説でご存じのメリーさんだ。
そのメリーは今俺と…まあ同棲みたいなもんをしている。
「ァアハハハ…私ったらまぁた…ハァ」
「いつになったら来てくれるのかな?ライブ始まっちゃうよ。」
「…!女の子に一人で夜道を歩けって、アナタはそう言いたいの?」
「わ、分かったよ…」
「…なぁんて嘘よ。今行くわ。すぐよ。」
「大丈夫なの?」
「うん。それに夜のお散歩って素敵じゃない?」
…………。
865 :
名無し:2006/01/24(火) 14:14:48 ID:X0NStHyWO
さてと、私のドレス…
それにしてもブカブカのYシャツね。あの人はどれだけ大きいのかしら?
出会って一週間だなぁ。何だか永いような短いような…色んな事あったもの。
…心が忙しかった。うんこれ。泣いたり笑ったり怒ったり喜んだり…一杯、いっぱぁい心が飛び跳ねてたもの。
好きな人。
「フフ‥。」
もう、あの闇は通らないわ。自分の足で行くの。場所だって知ってるし、すぐよ。
外に出ると、丸いお月様がキラキラ光っていた。薄明かりで夜の闇を照らしてくれているかのよう。
「今晩わ、お月様。今夜はご機嫌宜しいのね?」
なぁんて言ってみるけど、当然返事は返ってくるわけないの。
知っているわ。これはね?夜の王様への挨拶みたいなものなのよ?まるで詩人のようじゃなくて?
…なんていいから早く行こう。ほんとはね、恐いの。ほんの少しよ?
綺麗な空…。
866 :
名無し:2006/01/24(火) 14:15:42 ID:X0NStHyWO
「今晩わ、お月様。今夜はご機嫌宜しいのね?」
なぁんて言ってみるけど、当然返事は返ってくるわけないの。
知っているわ。これはね?夜の王様への挨拶みたいなものなのよ?まるで詩人のようじゃなくて?
…なんていいから早く行こう。ほんとはね、恐いの。ほんの少しよ?
………。
「はぁ…寒い‥」
風が冷たい。息が白い。
何だか楽しくなる。素敵な夜だわ。
夜は黒いマントをなびかせて
星の従者、月のランプ
暗闇は恐れをなして道を開けて
私はその真ん中を歩く
夜は黒いマントをなびかせて
星の従者、月のランプ
アナタへと続く夜の道
優しく照らしだしてくれる
867 :
名無し:2006/01/24(火) 14:16:53 ID:X0NStHyWO
…なぁんちゃって。
さてと到着よ王子様。私を迎えてちょうだい。
「メリー。」
いた。律儀に外で待っていてくれたんだ。私の大切な人。
「ゴメン。寒かっただろ?迎えにいけばよかった。」
…優しいのね。私はそっと胸に寄り添う。
「恐かったのか?」
「あったかい…」
彼の笑顔が綻んでる。私も素直に笑っちゃおう。
「さてと、帰ろうか。」
…はい?
「20分で3曲だから…その…ぶっ通しでやったら…終わっちゃった。」
終わっちゃったって…私の大冒険はぁ!?
「楽しみにしてくれてたんだ?」
「うん。少しだけ。…帰ろ?」
私達の家に一緒に…。私の帰るべき場所…。
……。
868 :
名無し:2006/01/24(火) 14:17:56 ID:X0NStHyWO
寄り添って夜道を歩く。
アナタは左で私は右。まぁるいお月様が、大きさの違う影を写し出すのって素敵。
それはね、私とアナタは一人じゃないって事なのよ。影は一つに溶け合って、ホラ私達ってもう一心同体みたいね?
…一人じゃない。
アナタと…
楽しくお喋りして、ご飯食べて、お風呂入って、一緒のお布団で眠る。そして夢を見るの。
悪夢かもしれない。辛い夢かも…。でもそれは遠い未来に楽しい夢にかわるわ。楽しみでしょ?
アナタがいるから私はそう思えるの。
今までの自分を笑い飛ばせる日まで、ずぅっと一緒よ。離さないわ。
869 :
名無し:2006/01/24(火) 14:20:48 ID:X0NStHyWO
………。
ふかふかのベッドにお布団。隣にはアナタ。
「おやすみ。」
優しそうな顔。
「おやすみなさい。」
アナタの腕の中で眠る。
いい匂いがして…それに、あったかい。
窓に目をやると、お月様が覗いてる。
ダメよ?覗きなんて。はしたないわ。
………。
…考える。今まで殺してきた人達の事…。
苦しそうな顔。安らぎに満ちた顔もあったけど。何故そうまでして死にたかったの?
なんだか悔しそうな表情ばかり…それを、私が作ったんだ。どうやって殺したかなんて今…思い出せない。
いいの。私にはもう必要ない事だわ。ただ、忘れはしない自分の罪。許されないかもしれない。だったら謝りながら生き抜いてやるわ。
私は人間…人間の女の子メリー。もう一人じゃないの。
……?。
そうね。しつこい暗闇さん。私にはそっちがお似合い?違うわ。居場所は自分で決めるの。
もう…騙され…ないわ…。
私は…暗闇に…なんて…戻ら…な…い…。
…………。
………。
……。
…。
870 :
名無し:2006/01/24(火) 14:27:05 ID:X0NStHyWO
………。
……。
…。
…ふと気が付くと。見慣れた部屋。大きな鏡。時計の針の音。私は裸。血塗れの手。
足元に転がるのは私を可愛がってくれていたパパ。
血を流して倒れてる。死んじゃったの?
状況を飲み込むために、目を閉じて…深呼吸。
……。
そうね。この人、私にナイフを握らせて自殺を謀ったんだ。
パパ?私はお人形じゃなくてよ?…メリー。貴方の自慢の一人娘なのよ?
ごめんなさい。パパ。貴方の事、ずっと、ずぅっと大嫌いだったわ。
私にあんなことして…。でも、許してあげる。
私はもう私を取り戻したんだもの。
立ち上がる。化粧台からマッチを取り出す。さて…あとは…
………。
871 :
名無し:2006/01/24(火) 14:29:28 ID:X0NStHyWO
空高く昇る炎。
燃え盛る屋敷。
「さようなら。」
夜空にはまぁるいお月様。白い息。冷たい夜の空気。思い出す…あの一週間…。
何故だか遠い昔の出来事のよう…。でも細かいところまで鮮明に思い出せる。
何だか思い出一杯もらっちゃったな…。嬉しいな。
私は…人間なの。人間の女の子なの。今やっと自分が認識できるわ。これ程嬉しくて楽しくてワクワクする事が他にあって?
…人形なんかであってたまるものですか…!
私は誰の所有物でもない。私に限らず、誰もが誰かを所有する事なんてできないの。
あの人だってもうじき気付く…あの人は生きるってきめたんだもの。
―少女は自らの胸に手をあてる。―
夜空…綺麗。
また会いに行くよ。待っててね?私の愛する人。
―そうして歩きだす。月明かりの照らす道を―
…夜は黒いマントをなびかせて
星の従者、月のランプ
暗闇は恐れをなして道を開けて
私はその真ん中を歩く
夜は黒いマントをなびかせて
星の従者、月のランプ
アナタへと続く夜の道
優しく照らしだしてくれる…。
私とアナタは繋がっているの。
872 :
名無し:2006/01/24(火) 14:36:24 ID:X0NStHyWO
終わりです。
ここまで付き合ってくれた皆さん。
本当にありがとうございました。
ラストなんですが、俺的にはアレが一番しっくりきてしまいまして。え。
苦情は受け付けません。ハイ。
携帯打ち込みによる拙い文章。さぞや読みにくく、解りにくいかと思います。
俺も今更ながら、原稿用紙の力を借りればよかったと、激しく後悔しております。
しかも読み返してないorzスマヌ。失格だな俺。
初期設定の崩壊は、補完しきれなかった感も否めず…orz
では、最後にもう一度。
本当にありがとうございました!
もう一杯一杯です。
またその内書きます。誰が止めても。
873 :
名無し:2006/01/24(火) 14:49:25 ID:X0NStHyWO
読み返したら、何だかお急ぎな感じと説明不足感が…
台無しだ。
でも、ま、いい経験になった。
これからは原稿用紙を使って腕を磨いていきましょうかね。
875 :
名無し:2006/01/24(火) 14:51:50 ID:X0NStHyWO
はい。了解。
萌えは苦手ですが、何かしら描かせて頂きます。
んで、ありがとうございました。
あ、名無しさん、
おれも向こうの絵の2番目のクレヨンぽいヤツ好き。
童話風のスリラーものに出てきそうで・・・。
最初のヤツや、新しいものもうますぎだと思うよ。
あのメリーのイメージにあうストーリーはあるのかぁ?
とも思うけど。(萌えじゃなくていーからね!)
………終わって…しまったか…。
あぁ、この余韻にひたりながら眠りたい。
けど今から飲み会涙。
名無しさん、ありがとう。
名無しさんのメリーを読みながら、別のメリーのお話を考えてしまいました。
しかし、今のが終わってからね。
って終るのかw
まさかツンデレ口調で褒めた絵師があの名無しさんだったとはwww
あの2番目のクレヨンの絵、漏れも大好き!
あと完結お疲れさんでした!!とてもヨカッタ!!!
アマ━━━━━(●゚∀゚●)━━━━━ィッッ!!!
向こうでツンデレ認定された俺も来ましたよw
名無しさん乙っす
文も絵も描けるなんて羨ましい・・・
いっそ漫画でよろしくw
>>234 は、初出は此所とは何の関連もない板の、全く不似合いなスレにカキコしたものを
わたしが自分でコピペしました ^^;
>>717 も わたしが書きました
んで、唐突に続きをw
なんか、頭クラクラするわ、迎え酒だなこれは、えーと、酒どこだ?
ん?うるせー紙コップだな、いいかげんにしてくれよ!
「もしもし、わたしメリーさん、あなた、何歳?」
あれ?ちょっと待て!このセリフ初めてか?
「もしもし、誰?」
「あなた、まだ未成年でしょ?なに、お酒なんか飲んで?」
なんだ、こいつ!えらそうに
うっせーよ、ほっとけよ、と、喋ろうとしている手に握っているのが紙コップだと、ふと気が付いた
「今日は、話にならないみたいね?また電話するわ、じゃ」
おい、なんだよ!ちょっと待てよ!
おれ、なんかわりー夢でもみたのか?
他の奴ら、ぐうぐう大いびきで寝てやがるし
耳に紙コップをあててみたけど、なにも聞こえない
ねみーから 寝よ!
んで、メリーって、誰だっけな?
881 :
名無し:2006/01/24(火) 23:23:18 ID:X0NStHyWO
>>878 >>879 覚えてますw
その節はどうもww
初めての板で少しテンパってたんで、かなり和みましたw
…んで、どうもありがとう皆さん。
拙く、いささか説明不足が目立つ文章、お付き合いいただきありがとうございました。
ちゃんと読み返さなかった自分が悔しくて悔しくてなりませんorz
読み返すたびに思います。
物語の筋が気に入っているだけに、力不足の自分がとことん恨めしいです。
今、コピペして原稿用紙に直す作業をしております。
修正+αの作業なんですが、もっと細かく、よりシンプルにを心掛けて作り直しております。
upはしないかもしれませんが。
んで、絵ですが。
何故かクレヨンで描いたメリーさんが好評な様子wwww遊び心が報われました。作者としても嬉しいかぎりです。
今度はこっちの板にもupしていきますんで、よろしくおねがいします。
んで、漫画はちと厳しいかとwwww
882 :
芽理の父です :2006/01/24(火) 23:33:57 ID:qlA8CLoV0
感想レスつけてくださった皆さんありがとです
メリーはあるのかないのかわからない続きをなんとかひねり出して
できれば投下しようかな―とか思ってます。(´・ω・`)キタイシナイデネ
名無しさん完結お疲れさまです。甘いものは大好物です
>>234 あ〜見落としてたかもしれません、すいませんでした。
遠慮せずに投下してくださいね。
・・・さて、このスレ、どのぐらいあと使えるんだ?
埋め代わりにネタ投下してみます。
最恐の和製ゴシックロリータ少女めりー
昔むかし、あるところにお爺さんとお婆さんが住んでいました
お爺さんが山へ芝刈りに、お婆さんが川へ洗濯に行くと
川上から大きな瓜が、どんぶらこーどんぶらこーと流れてきました
おばあさんは大喜びで瓜を家に持って帰りました
お爺さんと一緒に、瓜を包丁で切ると、中から立派な女の子が生まれてきました
二人はこの子を、「うりぃ・めりー」と呼んで、たいそう可愛がりました
やがてこの子はどんどん大きくなり
たった一年で10歳ぐらいの可愛い女の子になったのです
ある日めりーは、お爺さんとお婆さんにこう言いました
「じじい、ばばあ、今まで育ててくれてありがとー、
私は最恐の和製ゴシックロリータというコピーにひかれて
どうすれば最恐のゴシックロリータになれるか考えました
最恐なのだから手始めに鬼が島に行って、鬼を退治せねばなりません」
お爺さんもお婆さんもたいそう、驚いて悲しい顔をしましたが
最恐の少女になるなら仕方ない、と快く送り出すことにしました
お婆さんは箪笥から「ゴシック」なのだからと言って、もんぺを取り出しました
ばばぁ、「ゴシック」の意味知ってるか?
お爺さんは倉に行って、「最恐なのだから」といって鎌を持ってきました
じじい、それ草刈鎌・・・
だが最恐の和製ゴシックロリータ少女になるのだから小さいことは気にしません
めりーは、きびだんごを片手に鬼が島に向かいました
途中、犬が仲間になりたそうな目でこっちを見てました
サッカーボールのように蹴飛ばす
二、三回弾んだ後、犬は泣きながら逃げていきました
だがまだ最恐には程遠いです
次に、雉が仲間になりたそうな目でこっちを見てました
きびだんごでおびき寄せた後、羽をむしって体にデコレート
飛べなくなってしまったようですが、最恐なので気にしません
さらに進むと猿が交尾してました
めりーは二匹の邪魔をすると、オスざるの背後に回り
「あたし、めりー! あたし、めりー!」と絶叫
オナニーを教えてあげました
確実に最恐の和製ゴシックロリータ少女に近づいてます
おなかが空いたのできびだんごをいただきます
最後のおだんごの中に何かが入ってるのを発見
紙切れとお金が入ってました
「めりーや、おまえは食いしんぼだから、おだんご食べてしまうでしょう?
おだんごは家来に上げるのですよ、このお金で新しいおだんごを買いなさい 」
ばばぁの愛に泣きました
どうにかして三匹の家来を手に入れた私は
どうしたら鬼を退治して、最恐の和製ゴシックロリータ少女になれるか考えました
最恐なのだから怯えさせてやらねばならない
電話をすることにしましたが、この時代には電話はありません
いとこの「れでぃ」はカラスを使ってたのを思い出し
血と涙のにじむような苦労の果てに、雉を伝書鳩代わりに使うことにしました
血と涙がにじんでたのは雉の方ですが、最恐だから気にしません
「もしもし、私めりーさん、今あなたの島のそばにいるの」
鬼がめりーの手紙を受け取った時
めりーはもう島に上陸してました
雉のグズめ! グズめ! グズめ! だがタイミング的にはちょうどいい
最恐の和製ゴシックロリータ少女はもうすぐだ
次にめりーは矢文を使いました 狙いがそれて他の鬼に命中します
苦手なのよ弓は。まぁいいわ
「もしもし、私めりーさん、今あなたのお城の前にいるの」
次に陽動作戦を取るために犬と猿を鬼にけしかけます
あからさまに嫌な顔をしてましたが最恐だから気にしません
犬よ、おまえの子供は預かっている
猿よ、おまえの娘、援交してたぞ、学校にばれたら退学だよな
最恐の和製ゴシックロリータ少女は目の前です
めりーは騒ぎの中、ボス鬼の後ろに回りこみ
「私めりーさん! 刈り取ってやる刈り取ってやる!」と絶叫
振り向いた鬼の心臓に鎌をつきたてます
ところが、その鬼の正体はめりーを育てたお爺さんでした
「・・・待ってたよめりー、これでおまえは最恐の和製ゴシックロリータ少女だ・・・
おまえが間違って矢を射ったのがお婆さんだ・・・ 私たちは今まで悪事を重ねてきたが、
おまえを育ててるうちに今までの振る舞いを後悔するようになってねぇ、
悲しんじゃいけない・・・天罰だと思うことにするよ・・・強く 生きるんだ よ・・・
私は思いっきり泣きました
887 :
名無し:2006/01/25(水) 00:14:48 ID:KNx1A43bO
>>Ladyさん
大変、美味しく頂きましたww
最後じじいかよ!
みたいなw
>>芽理パパさん
虫歯になりますよw
俺もパパさんの作品大好物です。
また楽しみに待ってますね
〆⌒\ ♪
/'ζτλヽ
♭ノ(● ● )ヾ
ζ > △ ζι)
〆⌒/舎\⌒ゝ
〜 /イ ゝヘ〜
/ ノ ‡ 乂 )
\/--ハ-- \/
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
それにしても、これだけの作品が作れるのに、
「名無し」さんはもったいない気がするな。
なんか、他の名前を名乗ってもよさげな
気がする今日この頃。
889 :
本当にあった怖い名無し:
てすと