★★ウミガメのスープ★★463杯目 止められない味
【解説】
低視聴率続きのその監督は、次の「3時間ドラマスペシャル」に全てを賭けていた。
それだけに撮影が始まってから重要な役の女優が降板したのは痛かった。
じっくり代役を決めている時間などどこにも無い。
一旦は売り出し中の女優に決まりかけたが、彼女では視聴率が取れるとは限らない。
追い詰められた彼は、息抜きに大ヒットした昔の自分のドラマの記念写真を眺めた。
――あれ?よく見ると、手や足や顔など体の一部が消えかかっている人物がいる。
この人たち、消えている部分を怪我したり死んだりしてたよな?
彼は他のドラマの記念写真も出してみた。彼の考えは当たっていた。
怪我した者、死んだ者は1人残らず体の当該箇所が消えたり薄くなっている。
彼の目は前回のドラマの記念写真の、今は落ち目の女優に吸い寄せられた。
出演中トラブルを起こし、視聴率を落とした張本人だ。
全身、しかも顔の部分が大分薄くなっている。これって……もしかすると死ぬってことか?
彼は早速女優Aのスケジュールを調べた。
今月は今後空白が多いが、来月海外ロケがある。最近テロがちらほらある国だ。
落ち目だからこそ、こんな仕事も請けるんだろうな。やれやれ、かわいそうに。
よく見るとロケは彼のドラマの放映予定日の3日前――これは賭けだがチャンスだ。
監督はニヤリと笑った。落ち目とは言え、彼女は若いし知名度は高い。
事故で死ねばトップニュースだろうし、ワイドショーでも大きな話題だろう。
彼女の最後の出演になるこのドラマも、かなり視聴率を稼げるはずだ。
そう確信した彼はすぐさま出演依頼の電話をかけた。
スタッフは反対するだろうが、彼女を必ず代役として出演させてみせるさ。
そうだ台本も書き換えさせよう、あの役にはぜひ頭を怪我して死んでもらわないと。
拳銃で殺されるってのも良いかな?死に方まで一緒なら話題になるだろうからw
いつの間にか、無意識に彼は鼻歌を歌っていた。