∧∧∧山にまつわる怖い話Part20∧∧∧

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791全裸隊 ◆CH99uyNUDE
大地主の跡取りである知人から、1944年か45年頃に
撮影されたと思われる、妙な写真を見せられた。

撮影されたのは、山中にあった軍用品工場近くの路上で、
その工場は、東京から疎開してきたとの事だった。
コンクリートで固められ、内部をタイル張りにした半地下の建物は
頑丈で、今でもしっかり建っている。

彼の家を出発して2時間ほど山に入ったところだ。
その建物の前に汗を浮かべて俺達は立っている。
道は細く、苔に塗り固められ、草におおわれそうだが、石畳が敷かれ、
自動車での走行が可能だったのだろうと容易に想像できる。

写真に写っているのは、数人の日本人と、一人の若い白人男性。
笑顔がこぼれたり、口元を厳しく引き締めたりしている日本人に対し、
白人男性の表情は疲れきり、衣服をすっかり剥ぎ取られた姿で
立たされている。
「ここに居たらしいんだよ」
わざわざタイル張りにするような軍用品工場に、若い白人男性が、
アメリカやイギリスとの戦争中に居たという。

捕虜になった技術者が、ここで何かの技術指導をしていた可能性は
決して低くない。
逃亡を避けるため、衣服を着せないという措置は、当時の
日本でなら充分考えられる。
792全裸隊 ◆CH99uyNUDE :2005/07/10(日) 23:55:37 ID:DwQcju050
この白人男性が、例えば墜落した米軍機の搭乗員で、この写真が
撮影された時点で、まだ正式な捕虜になっておらず、米兵を見つけた
地元の住民が、無邪気に記念写真を撮ったのかもしれない。
当時の日本で、まともな撮影機材を持っている民間人が、
どれほどいたのかと、それを考えると、報道関係者や軍関係者によって
撮影された写真である可能性が高い。

写真に写っている日本人は地元の人間で、すでに全員が死亡している。
この写真を見つけたのは、彼の祖父の葬儀が終わった後で、家中の誰も、
この写真の事を知らなかったという。
知られたくなかったのだろうか、とも思える。
そして、捨てるに忍びない思いを抱えていたのだろうか。
彼の祖母は、あいまいに、白人は軍用工場に居たと教えてくれたという。
写真の中の彼の祖父は、にっこり笑って腕を組んでいる。

ひんやりしたタイルに触れ、何事かを感じたいような、
感じたくないような、そんな感情を持て余した。

彼の自宅敷地内にある墓地には、何も彫られていない
丸石が置かれている一角があるが、それについて彼は何も
聞かされていない。