親父から聞いた話。
俺が小さかったときに、家族三人で駅前のデパートに買い物に行ったんそうだ。
で、買い物が一通り終わった後、母親がデパートのトイレに入ったので外で待っていると、
しばらくして母親の悲鳴が聞こえたらしい。
その声があまりに尋常でないんで、近くにいた人に警備員を呼んでもらってトイレの中に飛び込むと、
俺の母親を個室に押し込もうとする一人の男がいたそうな。
そいつを取り押さえて警備員に引き渡し、警察の事情聴取が終わってしばらくすると、
警官に連れられて痴漢の母親が来たんだそうだ。
痴漢の母親曰く、
「あの子は重度の精神障害を負っていて可哀想なんだ。だから私も可哀想なんだ。私の気持ちをわかれ。示談にしろ」
だそうだ。
もちろんそんな言い分が通るはずもなく、痴漢は御用となり、後に精神病院に行きましたとさ。
母親にも痴漢に会うような時分があったんだなと、なんかしみじみしてしまったよ。
ちなみに俺は、痴漢と格闘する父親のそばで、何故かゲタゲタ笑っていたそうな。
ここの人たちにとっては刺激の薄い小話ってところかな。そのわりに長くてごめんね。