思いっきりドアを引く。待ってましたとばかりに飛び込んでくる感染者。・・・・2人居る!?
感染者達はドアの影になった俺に気付かず、真っ直ぐユウキに飛びつく。
タオルの巻かれた左手に1人目が噛み付こうとした瞬間、ユウキは手を感染者の口元から喉へずらした。
そのまま喉元をすくい上げ、すれ違うように前進し、しゃがみこむ。感染者の体が、浮いた。
ゴッ!!ものすごい音を立てて、後頭部から床のタイルに激突する感染者。
もう1人来る!
しかし、2人目の感染者はユウキの右肩を掴んで首筋に噛み付こうとした姿勢のまま、動かない。
ユウキが立ち上がると同時に、ゆっくりと真横に倒れこんだ。
倒れた感染者をよく見ると、顎から真下に向けてドライバーの柄が生えている。
いつの間に?鉄パイプを握って突っ立ったままの俺は、余程アホ面だったに違いない。
「やる事が人間離れして来たな。」
思わず本音が出る。今の殺陣を見る限り、こいつなら1度に4人ぐらい相手にしてしまいそうだ。
『合気道。立派な人間の技だ。人間だから、こんな芸当も覚えられる。喧嘩は【場慣れ】だ。』
ユウキは感染者の顎からドライバーを引き抜きながら、事も無げに言った。
なるほど。結局1番怖いのは人間様か。
そんな事を思いながら、俺はユウキと共に見知らぬオフィスを後にした。
エピソード1、終末の日常風景―ふぃn―