あるトンネルを探しています。
かつて勤めていた職場のバイトの女の子から聞いた話しです。
ある日、そのバイトの女の子(Mちゃん)とその彼氏(A男)、
Mちゃんの女友達(Cちゃん)とその彼氏(B男)で
「おばけトンネルに行こう」という話しになりました。
集合場所は両親と同居するMちゃん宅です。
そこにA男はクルマを置き、B男のクルマ1台で現地に向かうことにしました。
運転はB男。助手席にCちゃん。後席右側にA男。後席左側にMちゃんです。
目指す「おばけトンネル」はそれほど遠くはなかったと言います。
場所はわかりません。
何人かで百物語のように怪談話しをしていて質問できなかったのと、
その話しをしたときのIちゃんの表情に気圧されて聞かなかったのかもしれません。
ほどなく、彼女ら4人は目指すトンネルにつきました。
それらしい雰囲気があったためか、彼女らはトンネルの手前でクルマを一度止めます。
「ねえ、やっぱり止めない?」と助手席のCちゃんが言いました。
ちょっとヤンキーなA男は「もうビビってるのか」と笑い飛ばし、
竹を割ったような性格のMちゃんは「なんか感じるとか?」と一笑します。
「そういうんじゃないけど、なんかヤバい感じがするんだよねえ」
「で、どうすんだB男」とA男が後席から急かします。
いつもなら饒舌なB男ですがこの時はなぜか無口でした。
「これ通り抜けなきゃ来た意味ねえだろうが」とA男がさらに笑います。
この一言が車内の空気を決めました。
「だよね。よし! GO!」とMちゃんがB男の肩を叩きました。
クルマが前進し始めます。ここに来る途中から他の車両にはすでに出会っていません。