1 :
1:
「恐い話。」
彼女が口を開いた。
「とても恐い話を聞いたの。多分あなたが知っているどの話よりも恐いわ。」
僕はデスクに向けていた自分の身体を彼女の方に向けた。彼女はオカルト板の
住人でもないし、第一オカルト好きでさえない。そんな彼女の「とても恐い話」
に期待を抱くのは、馬鹿げているとはわかってはいたが、それでもオカルト板の
住人として、聞いておかなくてはならなかった。
「聞かせてくれないかな。」
僕はカップに半分残っていた冷めたコーヒーを飲みながら彼女の話に
耳を傾けた。
「・・・〜〜そこで、子供がお父さんに聞いたの。『なんでいつもお母さんを
おんぶしているの?』って。」
彼女は何かを期待するように僕の顔を覗き込んでいる。
僕は彼女の顔を見ていられなかった。やれやれこんな激しく
既出な話にどうレスしたらいいっていうんだ。
僕はひどく混乱していた。
2様
いいよいいよ〜
でも
>>1に見放されたらこのスレはおそらく終わりだな
4 :
モルダー捜査官:05/02/12 20:14:09 ID:Z+1iRds5O
村上祐子さんでオナニーしますた。
やれやれ
クソスレかと思ったらそこそこいい1だった
7 :
1/2:05/02/13 10:32:02 ID:OMGGiax80
その日僕は兄と一緒に母の田舎へ足を伸ばしていた。
空は雲ひとつなく、田には緑があふれんばかりに生い茂っていた。
天気はこれ以上にないというほどの晴天だったが、
僕と兄は(どうしてだかしらないが)外に出る気にはならなかった。
僕たちはあまりに時間を持て余したため部屋の隅にあったトランプを手に取り、ババヌキを始めた。
「ジョーカー持ってるんだろ?」僕は兄に聞いた。
「君がそう思うならそうかもしれないね。」兄は少し目を細めながら言った。
僕たちは、ババヌキを一時間ほど続けた。
電気をつけなくても庭先から差し込む日の光で十分明るかった。
「もうやめよう。二人でこんな事をしてるなんてばかげてる。」
兄はそう言うと手持ちのカード(もちろんジョーカーを含む)をその場に置き、
大きな田んぼの見える縁側に向かった。
「君はいつもそうだ。」そう言って僕も彼の後を追いかけた。
バナナンバナナンバナャーナ♪
バナナンバナナンバナャーナ♪
バナナンバナナンバナャーナ♪
バナナンバナナンバナャーナ♪
バナナンバナナンバナャーナ♪
バナナンバナナンバナャーナ♪
バナナンバナナンバナャーナ♪
バナナンバナナンバナャーナ♪
バナナンバナナンバナャーナ♪
バナナンバナナンバナャーナ♪
バナナンバナナンバナャーナ♪
バナナンバナナンバナャーナ♪
バナナンバナナンバナャーナ♪
9 :
2/2:05/02/13 10:34:14 ID:OMGGiax80
兄の横に立ち彼の顔を見上げると、何かを目を凝らして見つめて
いるのがわかった。兄の視線の先には見渡す限りの大きな田んぼ
、そしてその真ん中には雪のように真っ白な女性が立っているのが見えた。そして彼女の身体はまるで80年代に流行ったダンシングフラワーのように不規則に揺れていた。
「ねぇ」僕が先に口を開いた。
「あれは何だと思う。」
「さぁ、わからないな。」兄はいつもより低い声で答えた。
「いやーーーー」続けて兄が言った。
「わかった。でも君はわからない方がいい。」
僕は「それ」が何なのかひどく気にはなったが、突然奇声を
発し出した兄を制止するほうを優先した。
それから兄は誰とも会話する事はなかった。というより会話が
成り立たなかったと言っていい。口から発する言葉が単語として
意味を成すことさえ稀だった。
σ彼は壊れた。
「やっぱり下げておくべきだったわね。」
退屈そうにディスプレイを眺めながら彼女は言った。
その通りだった。
11 :
マン・オン・ザ・タイトロープ ◆MANtaiPMC6 :05/02/13 11:43:33 ID:7152k8Hq0
「良スレage」
ふいに聞こえた声に僕は振り返った。
声の主の彼も、自分が発した言葉に驚いたかのように
僕の顔を見つめている。
12 :
本当にあった怖い名無し:05/02/13 13:07:46 ID:Dt+6Pc+s0
やれやれ
13 :
モルダー捜査官:05/02/13 13:17:24 ID:f6eMY2fuO
>>12 どっちの「やれやれ」ですか?
呆れ果てたやれやれ?それとも、もっと遣れ遣れのほう?
14 :
本当にあった怖い名無し:05/02/13 13:27:41 ID:+F0NlMyd0
「やれやれ。」僕は
>>13を読みながらつぶやいた。
「本当にやれやれだ。」
15 :
1:05/02/13 16:27:54 ID:OMGGiax80
「オカルトよ」と彼女は言った。
「オカルトについて語るスレなの。」
「わかってるさ。皆わかってる。」と僕は言った。
「でも思ってたよりずっと難しいんだ。わからないかな。」
「わからないわ。」と彼女は素っ気無く答えた。
16 :
1:05/02/13 17:06:45 ID:OMGGiax80
僕がオカルトと聞いて思い出すのは夏休みにほぼ毎日見ていた
思いっきりテレビの心霊特集だ。あの頃の夏は最近のそれの
ように暑くはなかったような気がするが、
それは単に気のせいなのかもしれない。
どちらにしてもどうでも良いことだ。大事なのはその時には
確かに思いっきりテレビで心霊特集をやっていたという事なのだ。
「いつ終わったのかな?心霊特集。」僕は彼女に尋ねた。
「さぁ、でもそれって大事な事なの?」
「うん。大事な事かもしれない。でもそうではないかもしれない。」
「あなたって何もわからないのね。」
彼女は鼻で笑いながら言った。
「私は―」彼女は続けた。
「ん?」
「ごきげんようのサイコロから恐い話が無くなった方が大事な事だと思うわ。」
彼女の言うとおりだった。
ごきげんように比べれば夏の思いっきりテレビの
心霊特集なんて、今「なすび」がどこでどうしているかぐらい
どうでも良いことだった。
「コーヒーでもいれるよ。」
僕はそういって席を立った。
17 :
本当にあった怖い名無し:05/02/14 14:57:44 ID:eXk80uT+0
「ここには1しかいないのかな。」
僕は言った。
「とりあえずageておこう。」
他にどうしろというのだ。僕に出来ることは何もない。
「やべぇ、ここ面白い!」
そうつぶやいたのが僕だったかどうかはわからない。
でも、もしも僕だったら、それでも構わない。
ここはそう思えるスレだといえた。
僕の知り合いに霊が見える女の子がいる。
彼女によると、霊たちはごくあたりまえにこの世界の中にいるようだ。
歩道やバス停、深夜のコンビニエンスストア。
彼らはまるで散歩をする猫のように気ままに移動し、立ち止まる。
にわかには信じられない事なのだけれど。
「車を運転している時にふと目に入るのよ。たいていは通り過ぎた後に気がつくの。
そういえば彼らは《そう》だったんじゃないかって。」
彼女が言うには、彼らには顔が無いか、あるいはひどい怪我の跡が見えるという。
「一緒に居た人には見えたのかい?」と僕が尋ねると、彼女は静かに首を振る。
「見えないわ。それに、その時は彼らの事は絶対に口に出さないようにしてるの。
彼らを振り返ろうとも思わないわ。」
彼女は言った。
僕が彼女に振り返らない理由を尋ねると、
「理由はともかく、私はそれをするべきじゃないと思ったのよ。」
彼女は苛立たしげに首を振った。当たり前じゃない、と言わんばかりに。
それ以上は何を聞いても無駄だった。
語るべき事を語ってしまった彼女は、ムール貝のように口を閉ざしてしまった。
こうなれば僕にできることは何も無い。
僕はひどくがっかりした。
20 :
本当にあった怖い名無し:05/02/15 00:25:13 ID:Y8GYU8de0
「とりあえずここをageておこう」
このことを非難するヤシがいるかもしれない。
いろんな人間がいて、いろんな価値観がある。
でもこのままうまくスレを進行させていけば、そういう価値観の違いを
いつか埋めることができるだろうと僕は確信していた。
春樹風というか、そのまんまです
すいません
21 :
本当にあった怖い名無し:05/02/15 00:27:07 ID:6oGnqNlc0
やれやれ
22 :
本当にあった怖い名無し:05/02/15 01:33:07 ID:zcG8it4h0
「普通に面白いね、オカルト云々は抜きにして」
カウンターの中でジェイが言った。
「でも、結局、オカルトを語らなきゃ、意味がないってことさ。もっとも俺はオカルトなんて興味ないがね」
鼠がそう呟いてピーナッツの殻を床にぶちまける。
ふと僕はレシートを見た。まったく偶然にね。
いつもよりゼロが二つばかり多く並んでいた。
ジェイは平気そうに笑っている。鼠も笑っている。
背後に怖そうなお兄様が立っている。やれやれ。
23 :
本当にあった怖い名無し:05/02/15 01:56:25 ID:4eBedgQv0
「この人たちったら、なんにもわかってないわ。ほんと、なんにもわかっていないのよ」
彼女はそういうと、やれやれとばかりに首を横に振りながらノートパソコンを静かに閉じた。まるで何かの儀式みたいに。
あるいはぼくは、彼女にその理由を訊ねるべきだったのかもしれない。
なぜなら彼女は真っ直ぐな長い髪を、その細い指で左耳にかける仕草をしたからだ。
それは彼女が、何か話したいことがあるときの癖で、ぼくはその癖が好きだった。その癖と言うよりも、その癖によって露わになる彼女の耳が好きなのだ。
ところがなぜか、“それ”はなかった。
ぼくが愛してやまない左耳があるべき場所には、黒い穴がぽかんと開いているだけだった。
当然そこにかけられるはずだった髪はさらさらと元に戻り、黒い穴を隠してしまった。
あたりはしんとしていた。
24 :
本当にあった怖い名無し:05/02/15 01:57:19 ID:4eBedgQv0
あるいは見間違いだったかもしれないと思ったが、それを彼女に確かめるべきではないような気がした。
代わりにぼくは、自分の左耳に手を当てた。
なぜかそうするべきだと思ったのだ。
そこにはただ穴が開いているだけだった。
さっきぼくが見たような、黒い穴に違いなかった。やみくろが住んでいるみたいな、そんな穴だ。
「あなたもなんにもわかってないわ」
不意に彼女の声がした。
「あなたもなんにもわかっていない」
今度はぼくの目を見ながら、彼女はゆっくりと言った。そしてビニールでできた赤い帽子を目深にかぶると「行くわよ」と言った。
「行くってどこへ?」
やれやれ。我ながら間抜けだと思った。今回ぼくのせりふといったらこれだけじゃないか。
「水を聞きに行くのよ」
彼女はもうドアを開けていた。ついていかないわけには行かなかった。
25 :
本当にあった怖い名無し:05/02/15 14:09:38 ID:Mof+sJM00
駅に着くと、彼女は二人分の切符を買い、そのうちの一枚をぼくに渡しながら言った。
「黄色い電車で行くわよ」
黄色い電車。
彼女は昔から総武線のことをそう呼ぶのだ。
彼女のことなら何でも知っている。ぼくはそう思っていた。
あるいはそう思っていたかったのかもしれなかった。
黄色い電車。ぼくは心の中でそうつぶやいてみた。
そうとなれば目的地は神宮第二球場に違いない。
考えられることは、「彼女はやみくろに支配されている」
ただそれだけだった。
26 :
本当にあった怖い名無し:05/02/15 14:11:28 ID:Mof+sJM00
電車の中で、彼女は微動だにしなかった。
窓の外の、どこか一点をじっと見つめていた。
まるで景色なんて、動いていないみたいに。
電車が信濃町を過ぎても、彼女はぴくりともしなかった。
一体ぼくらはどこへ行こうとしているのだ。
そう思っていると、彼女はゆっくりとぼくの耳に口を近づけささやいた。
「やみくろに支配されているのは、あたしじゃない」
そう言い終わると、ぼくの耳を手のひらでそっとなでた。
正確に言うと、“ぼくの耳があったあたりを”だ。
「さあ着いたわ」
そこは中野だった。
「急ぎましょう。羊男に気付かれる前に」
27 :
1:05/02/15 16:46:56 ID:AcQEEhgX0
出来上がったばかりのペペロンチーノを食べながら
僕は言った。
「ちょっと塩を入れすぎたかもしれないな。」
「このくらいで良いんじゃない?あなたのパスタっていつも味が
薄すぎるのよ。」彼女は僕のほうをチラリと見ながら言った。
「そうかな。」
「そうよ。」
そういってまた、3口ほどパスタを口に運んだがやはり僕には辛すぎる。
フォークをテーブルの上に置いて水を飲みながら彼女に言った。
「それにしても、レスがなかなかついてるね。もう26だよ。」
「そうね。このテーマにしては良いペースだと思うわ。」
僕は横目で見ていたディスプレイからテーブルに視線を戻した。
彼女はもうほとんどパスタを食べ終えている。
彼女の舌がおかしいのか。それともおかしいのは僕の舌のほうなのか。
「もう、このスレに僕はいらないかな?1から名無しに戻っても良いと
思うかい?」
彼女はこっちを見ながら深くため息をついた。
「あなたって本当に・・・」そこまで言って彼女はしゃべるのをやめた。
「なんだい?」
「なんでもないわ。ごちそうさま。」
結局続きを言わないまま彼女は席を立った。すぐにキッチンから水の流れる
音が聞こえた。
「そうか、今日は彼女が洗い物をする番だったな。」
そう言って僕はすっかり冷めてしまったパスタを見ながら煙草に火をつけた。
もう僕の口に入ることはないだろう、残したパスタを見つめていると
なんだか人の顔に見えて少し笑えた。
28 :
1:05/02/15 17:09:55 ID:AcQEEhgX0
今日もオカルトの話を絡められなかった。
僕はしばらく自分の稚拙な文を読み返しながら言い訳を考えた。
オカルトとは何なんだろう。オカ板住人になって2年ほど経ってはいるけれど
いまいち理解していない。
傍にあった辞書で調べてみると、
【神秘的なさま。超自然的なさま。】と書いてある。
「超自然的―」
僕はある事を思い出して自分の書き込みを読み返した。
「―残したパスタが人の顔に見えた。っていうのも一応超自然的かな?」
少し強引な気もするけど、大体言い訳ってやつはいつもこんなものだ。
僕は自分への言い訳が終わったので満足してまた煙草に火をつけた。
29 :
本当にあった怖い名無し:05/02/15 20:25:09 ID:Y+BvT9040
「もう一度言おう。君の肩に手が乗っているんだ」
それ自体がなんらかのメタファーであるかのようにそう呟いた。
さっきまでビートルズを流していたレイディオは死んだ卵のように
息をひそめ、僕らの周りには確かな静寂が訪れていた。
−−肩に手が乗っている。
僕は突然の言葉に混乱し、例えて言うならばある種の困惑状態にいた。
その時の僕にはもうオカムロさんの白い裸体しか想像できなかったのだから。
このスレいいね。村上春樹読んだこと無いが。
彼女は窓の外を眺めながら話し始めた。と言っても、特に何も興味を引くものは見えない。
何か大事な話をする時だけ、彼女はいつも僕の目を見ない事を、僕は思い出した。
「人がね、見えるの」
僕はそれが聞こえなかったように、煙草の火を消した。
「人って?」
パソコンから彼女に視線を移して、そして窓の外の景色に移そうとしたけど、
僕はそれを途中でやめて、彼女の目を見た。
何年か前、別れ話の時もこんなふうに僕を見て事を、僕は思い出した。
思っていたよりも真剣な話なんだ、と判断すればいいのだろうか?
このスレにはどこかしら奇妙なところがある。この奇妙さは僕を一瞬混乱させた。
しかしこのスレの一体何がどう奇妙なのか、僕にはうまく説明する事ができなかた。
村上春樹でオカルトを語ってはいけないという理由は何もなかった。
33 :
19:05/02/15 22:58:04 ID:Y8GYU8de0
僕はふと気がついた
「このスレは自分自身が体験したオカルト的経験を語るところじゃなかったのかい?」
彼女は首を振った。
つまり僕は勘違いをしていたわけだ。
「つまりあなたは勘違いをしていたわけよ。」
彼女がささやくように言った。
「東京って・・・・」
彼女はまた目を逸らして話し始めた。
「東京って、人は何人くらいいるんだっけ、人口の事なんだけど」
僕はすぐにインターネットで調べて、島村部の人口もきっちりと足し算していった。
彼女は数字にはとても五月蝿くて、そして数字が生きがいでもあったからだ。
「現在、12289106人だね」
僕はよどみなく答えた。いや、よどみなく答えたつもりだった。
「その計算は、間違いないのかしら?」
予想していた質問と、全く同じ質問だった。彼女の薄い唇の動きまで想像通りで、
僕は喜びと幻滅を同時に獲得した。その気持ちは僕にとって、
大まかには不快と言ってもいいものだったのかもしれない。
なぜなら僕は、彼女の言葉の終わる前に計算機を取り出して見せたからだ。
四行も表示される、カ○オの一番高い計算機だった。僕の誇りでもあった。
「・・・・そう、間違いないなら、いいわ」
彼女は視線をちらとも動かさず、次の話題に入った。
35 :
本当にあった怖い名無し:05/02/16 12:41:58 ID:+k+EBwRn0
中野駅北口を出ると、商店街までの短い道なりにティッシュ配りがひしめき合っていた。
「しまった」
彼女が小さく舌打ちをした。
「どうしたの?」
「羊男がもうそこに来ているわ」
彼女の視線は、ティッシュ配りの中でもひときわ目を引く、唐辛子のような着ぐるみを着た人間に注がれていた。
「あれはどう見ても羊には見えないけれど」
言ってしまってからぼくは後悔した。彼女が気を悪くしなければいいのだが。
「外見に惑わされてはだめ。羊男だからといって羊に見えるとはかぎらないの。わかるかしら。羊男はどこにでもあらわれる。いろいろに姿を変えて」
「なるほど」とぼくは答えた。
36 :
本当にあった怖い名無し:05/02/16 12:42:48 ID:+k+EBwRn0
「いい?気配を消して、私についてきて。できるわよね?」
「もちろん」とぼくは答えた。
本当のところ、“気配を消す”というのがどういうことなのか、ぼくにはわからなかった。
ただ、今ここでそんなことを言うべきではない、ということだけははっきりしていた。
ぼくはできるだけ“気配を消して”彼女のあとをついていった。
「うまくいったのかな」
サンモールを抜け、ブロードウェイに入ったところで、ぼくは彼女に訊ねた。
「たぶん」と彼女は答えた。
さっきまでの緊張に張りつめた頬が、少しゆるんでいるのがわかった。
「だからといって油断してはだめ。羊男はどこにでもあらわれる」
彼女は自分に言い聞かせるように言った。
「いろいろに姿を変えて」とぼくが言った。
「そのとおり」と彼女が答えた。
37 :
本当にあった怖い名無し:05/02/16 13:37:42 ID:QJm4pS9M0
「私、オカルトって、よく知ってる」
彼女はテーブルに肘をついて、ぼくを顔を覗き込むようにしていった。
「そして、その言葉を聴くと、何故だか必ず眼鏡をかけた中年の痩せた男を思い出すの」
彼女の言葉の最後の方は、元気が無く聞き取り辛かった。
ぼくは自分で、冷蔵庫から缶ビールを出して半分飲んだ。今のぼくには、彼女に答えるためにそれだけのアルコールが必要だった。
「たぶん」
ぼくは缶ビールを彼女の肘の脇に並べておいた。
「きみの言っているのは、レトルト。その男は、ボンカレーの大村昆だよ」
>>37 まさかそう来るとは思わなかった。僕は呟いた。
「まさかそう来るとは思わなかったな。」
40 :
本当にあった怖い名無し:05/02/17 01:22:14 ID:e3fcHElP0
僕は思うのだけれど、
>>33や
>>37は面白い。
けれど、リベリオンや
>>35>>36の書くことは、どこがオカルトなのだろう。
僕にはそれが彼らの身に起こった事とも思えないし
オカルトについて語られた、いや、オカルトとして語られるべきものとも思えない。
彼女は言う。「でもそれは、あるいは彼らの身に実際に起こった事かもしれないのよ。」
41 :
本当にあった怖い名無し:05/02/17 02:07:06 ID:hN33UcMK0
みんな―ギャグに―逃げてるね
彼の言葉に、僕はスイングの一つでもかましたい気分になった。
もう一度、言うよ、みんな―ギャグに―逃げてるね
なぜかって? 知りたいのかい。本当に? じゃぁ言うよ。
それはだよ、君、1がオカルト板以外で宣伝しちゃったからだよ。
もしくは春樹がギャグだったということだ。それでエンド、いいだろ?
春樹が―オカルト―ってことかい
なんて強引な奴だ。
「素敵なスレね」
「僕もそう思うよ」
【外伝】
僕は長い時間激しい議論をしていた。でも、結局それには意味が無かったのだけれど。
そのせいでこんな時間まで仕事をしていたら、書きかけていた話しを思い出した。
「ちがう。これからオカルトになるんだ」
僕はほぼ無意識につぶやいていた。時間が自分の思ったとおりに使えない事は知っている。
それで、いつもこのスレの書き込みのことが頭にあったのだけれど、
今日に限って僕はそのことを忘れていた。オカルトな事を書かなきゃならない。
悔しいような気がして予告を書いておくと、僕の東京と彼女の東京は、
人口が違うっていう話になるらしい。
それを誰かが期待してくれたら、今夜も安心して寝られるような気がした。
いや。期待がなくてもいいのかもしれない。僕は多分書くだろうから。
「気にすることはないよ」僕は言った。
「
>>40は少しはやとちりだっただけさ」
僕の言葉をリベリオンが聞いているかどうかは分からなかった。
実のところ僕は
>>35の羊男だって気になるのだ。
続きを期待するのは、そう悪い事ではないように思えた。
45 :
本当にあった怖い名無し:05/02/17 09:34:12 ID:e3fcHElP0
僕は少し機嫌が悪かっただけなのかもしれない。
僕には僕のオカルトがあり、彼らには彼らのオカルトがある。
僕はオカルトという言葉に囚われすぎていたのだ。
これからはもう少しこのスレを楽しめるかもしれない。
「何だこのスレは!誰も村上春樹風じゃないじゃないか!!」男は声を荒らたげた。「あら、貴方は“さも村上春樹の全てを知っている”ように言うのね」彼女にそう言われ、何か言い返そうとした。しかし、言い返す言葉など無いことに気ずいた。
47 :
本当にあった怖い名無し:05/02/18 01:53:05 ID:7jIPkcWM0
>>23>>24>>25>>26>>35>>36 それから彼女はしばらくの間、口を開こうとはしなかった。
ブロードウェイを抜け、早稲田通りを右に折れても。
しかし彼女の様子には明らかな変化があらわれていた。
前にも増して早足になっていたし、なにより上下の唇を頻繁にこすり合わせていた。
これは彼女の“うれしくってたまらない”という時の癖で、これもまたぼくが好きな癖のひとつだった。彼女は気付いていないけれど。
「反応があるって素敵」
信号待ちで立ち止まると、もうこれ以上黙っていられないとばかりに彼女は言った。
横断歩道を渡って、“薬師あいロード”という商店街に入るつもりらしかった。
「うむ。悪くない」とぼくは答えた。
彼女が何のことを言っているのかはわからなかったけれど、反応があるというのは悪くないに違いない。
坂道を転がり落ちる、春の熊みたいに。
48 :
本当にあった怖い名無し:05/02/18 01:54:07 ID:7jIPkcWM0
商店街を足早に通り過ぎると、ぼくらは寺の入り口に立っていた。
「新井薬師」
ぼくは門の上に吊された、赤い提灯に書かれた文字を読み上げた。
「お薬師さん」と彼女は言って、境内をゆっくり進んでいった。
かすかに水の音がした。
見ると、天に向かって絡まり合った二頭の龍の口から、水がちろちろと流れ落ちている。
「白龍権現水」と彼女が言った。
「本田さんも、昔はここへ水を聞きに来たのよ」
「最近は来ないの?その本田さんって人は」
彼女は一瞬、なんていうことを聞くのかというような怪訝な表情を浮かべた。
あるいはその本田さんという人は、今はもうこの世にいないのかもしれなかった。
49 :
本当にあった怖い名無し:05/02/18 01:59:32 ID:ERFXmtFl0
>坂道を転がり落ちる、春の熊みたいに。
素敵だ!
本田さんキターーーー!!
ねじまき鳥キターーーー!!!
>>7みたいな村上風くねくねもいい。本当に作品にありそうで。
村上風猿夢が読みたい。
52 :
本当にあった怖い名無し:05/02/20 01:02:22 ID:gHAZVAL80
>>47>>48 彼女は黙って赤いビニールでできた帽子を取ると、二度ほど頭を左右に振った。黒い髪がたてたかすかな音が、ぼくのところまで聞こえた気がした。
「都内で水を聞くとしたらここが一番なのよ。むしろここの水を聞かなければ、お話にならないの」
そう言うと彼女は何かを促すようにぼくの顔をのぞき込んだ。
きっと彼女はぼくにその水を“聞いて”欲しいのだろうと思った。しかしぼくは“水を聞く”と言うことがどういうことなのかわからなかったので、取りあえず龍の口から流れ落ちる水の糸を両手で受けて、ゆっくりと口に運んだ。
静かな川の匂いがした。
恐ろしいほど“しん”とした川の匂いだ。
そしてその味は今まで飲んだどの水とも違っていた。
まるで、味が、ないのだ。
ただ冷たく溶けた透明なガラスの液体が塊になって、口から体の中に吸い込まれていくような不思議な感覚だけが残った。
「どう?おいしい?」彼女が訊いた。
「おいしい」とぼくは答えた。
おいしいかどうかと聞かれれば、それはおいしい水に違いなかった。
53 :
本当にあった怖い名無し:05/02/20 01:03:05 ID:gHAZVAL80
「ソマスもこの水を使えば良かったのよ。そうすればあんなことにならないですんだと思うの」
「あんなことって?」ぼくはそう訊いてから、もう一度水を飲んだ。
「ソマス・バーはもうないのよ。正確に言うと、ソマス・バーはあのままだし、ソマスもそこにいるけれど、それはもうソマス・バーじゃないってこと」
「なるほど。それなら、ソマスは今からでもこの水を使えばいいんじゃないかな」
「それは無理よ」
「どうして?」
「だってそこはギリシャだもの」
やれやれ。彼女の話はいつだってこんな風に唐突だった。
「ソマスは今でもいってるわ。“あれ”を書いたのが“ドイツ人か何か”だったらどんなに良かったかって」
「つまり“それ”を書いたのは“ドイツ人か何か”じゃなかった」
「残念ながら」
そう言って、彼女はしばらく何かを考えていた。
「何もかも、ずっと昔の出来事のような気がするわ」
54 :
本当にあった怖い名無し:05/02/20 01:44:42 ID:KCMDgixz0
「あなた『稲川淳二みたいな口調なスレですよ』っていうスレッドしってる?」
彼女テーブルに頬杖をつきながら、そうはつぶやいた。
「ああ知ってるよ」と僕は言った。
「つまらないレスにも稲川口調で答えることによって、目立った荒らしも存在しない、ある意味特殊な空間だよね」
「そうなのよ。なんだかこのスレも、そんな雰囲気になる気がしない?」
僕は何度か頭を振りながら彼女の顔を見た。
「僕は、ときどき君の言う言葉が理解できないことがあるよ。」
55 :
本当にあった怖い名無し:05/02/20 13:05:27 ID:BGLnI1gcO
僕の部屋に巨大なハンマーを持った灰色猿がどこからかやってきて、僕の後頭部を思い切り叩いた。
「次のレスは?」
灰色猿が尋ねた。
「56。」
「完全に伸びてる。」
当たり前だろ、あんなに沢山カキコンだんだ。スレだって伸びるに決まってるじゃないか。
57 :
本当にあった怖い名無し:05/02/21 15:37:18 ID:osl6ecmG0
>>52>>53 バッグから出したハンカチをぼくに渡すと、彼女は静かに水を見ていた。
「君も飲めば」とぼくは言った。
「私は・・・もういいの」
“もういい”の意味が、ぼくにはよくわからなかった。
彼女は一口も水を飲んでいないし、それどころか水に触ってもいないうことに、その時、気付いた。
「姉の友達が、今でも新宿のバーでここの水を使っているはずよ」
「姉さん?」
ぼくは驚いて言った。彼女に姉がいるなんて初耳だった。
「そうね、“いた”って言ったほうがいいのかもしれない。あるいは今でもどこかに“いる”のかもしれないけれど」
ぼくは悪いことを聞いてしまったのかも知れないと思った。けれども彼女は話し続けた。
「姉の友達とね、ずいぶん探したのよ。良い水があるところならどこへでも行ったわ。地中海のマルタ島、エーゲ海のクレタ島・・・。ソマスバーの島では、ずっと“いるかホテル”に泊まってた。タクシースクエアのすぐ横の、古くて小さい安ホテルなの」
「君がそんなに海外へ行っているとは知らなかった」とぼくは言った。
もしかしたらぼくは彼女のことなど何一つ知らないのかもしれなかった。
58 :
本当にあった怖い名無し:05/02/21 15:38:53 ID:osl6ecmG0
「さあ行くわよ。あなたの“いるかホテル”へ」
彼女はそう言うと帽子を被り歩き出した。
砂利を踏みしめる、ザッ、ザッという音がした。
丸正まで出ると、ぼくらは新井薬師通りを左折した。
しばらく行って西武新宿線の踏切を渡ると、最初の信号の二股で彼女は右の道を選んだ。
突き当たりに三井文庫があり、左手にちいさな公園があった。
そしてベンチには一人の老人が座っていた。
「本田さん」と彼女がつぶやいた。
その老人はまるで公園の一部みたいにじっとしていた。
不思議なオーラが放たれているのに、生気がまるで感じられなかった。
見開いた目は異常なほど透き通っていて、見えているのかどうかわからなかった。
そして耳があるべき部分には何もなかった。黒く開いた穴さえなかった。
「ぼくらもああなってしまうのかな」とぼくが訊いた。
「“あなたは”大丈夫よ」と彼女が答えた。
59 :
23:05/02/21 22:10:15 ID:aGZ60APS0
・・・・・・・・・・・ムッ・・・・・・・・・・・・・
60 :
本当にあった怖い名無し:05/02/21 22:12:41 ID:aGZ60APS0
↑
23じゃない
「そんなに怖くないが、君に聞いて貰いたい。まだ、君が2chねらーならばね。」
鼠はいつもの癖で自分の手の甲と平を交互に返し、それを確認するように見な
がらいった。
「僕らは永遠に2chねらーだろ。」
僕は、笑いながらいった。しかし、鼠は笑わずに自分の手から目を離さずにい
った。
「一般論はよそう。永遠の2chねらーなんてないんだよ。かつてマウが…まあ
OK、聞いてくれ、まだ4歳、5歳だった頃だ。正確には思い出せないんだ。
今までいろいろあったからね。なんやかやさ。当時僕に家には風呂が無なかっ
た。それで、よく母親と銭湯に行っていたんだ。よく母と女湯に入っていたよ、
まだその頃は小さかったからね。…ところで、もっとビールを飲まないか?」
もういい。と僕はいった。そして、目を閉じ鼠の母親の顔を思い出そうとした
が、思い出す事が出来なかった。そもそも鼠に母親がいた事さえ思い出せなか
った。ただ瞼の裏の暗闇には不規則な小さい光が動き回っているだけだった。
そのまま僕は目をつぶり黙っていると瞳の暗闇の中で鼠の声が聞こえてきた。
「ある日のこと、ひととおり自分の身体を洗った後、もう僕はやることがなく
なってしまった。風呂場でやることがなくなったとき程退屈なことはないんだ
よ。気の遠くなるような風呂場での退屈の時間、君はその時どうするかい。」
「凡庸な僕らには、便利な言葉がある。勃起する。」と僕はいった。
「やれやれ、一般論の王国では君は間違いなく王権をにぎれるよ。まあいい。
そして僕は風呂の中をゆっくりとクロールで泳いだんだよ。出来るだけゆっく
りとね。そう、湯船をプールいうファクターに見立ててね。 そして、往復で
2kmくらい泳いでふと気付くと湯船の横は、3、4の階段がありその上には
ドアがあったんだ。自分でも今まで気がつかなかった事が不思議なくらいさ。
そういう事ってあるだろ。」
僕はビールのプルタブを左くすり指に引掛け親指でまわしながら、まだ、ない。
とだけいった。
しかし、鼠はこれといってガッカリした風でもなくビールを一口飲んで話を続
けた。鼠の喉の音でゆっくりとビールが彼の胃袋におさまるが分かった。
「僕は、ふと気になってその階段を昇り、ドアの前まで行ったんだよ。もちろん
フルチンさ。いわゆるフリーチンポさ。
ドアノブのすぐ直下には大きな鍵穴があってね。胸ワクワクの愛がGISSIRI
色とりどりの夢がDOSSARIさ。・・・・・しかし、向こう側は何かに覆われて見え
ない状態で、僕の感情を満足させる物はそこに存在してなかった。そして、いっ
たん顔をあげたんだ。
でも、何を思ったかもう一度鍵穴を覗き込んだ。“これはクリリンの分〜!!”
ってね。すっかりクリリンの分を見忘れる所だったと気付いたのさ。」
僕は残り1枚のチーズクラッカーを食べながら「忘れられキャラ」の事を考えた。
そして朝からリンゴ一個しか食べていないことを思い出した。
「そして、ぼんやりとした明かりの中、ぼやけてボイラーとおぼしき器械が見えた
よ。夢中でその器械を確認しようとしたさ、…君も知っている通り僕はボイラーに
はちょっとしたこだわりをもっているからね。でも、すこし経つと、ドアの向こう
側の気配なのか、それとも何かが知らせてくれたのか、突然、僕は鍵穴から目を離
し身を引いたんだ。そして次の瞬間、鍵穴からはマイナスドライバーの先端が狂っ
たように 乱舞してきたんだ。明らかに僕が覗いていたのを知っていた動きだった。
…君は、僕が何をいいたいかわかるかい?」
鼠の話を聞き終えると僕は彼の言葉をゆっくりと脳に染み渡らせた。まるで、二杯目
のウィスキーがゆっくりと胃にしみこむように。そして、僕は一つ息を飲み込み答えた。
「つまり、君はマイナスドライバーはプラスドライバーに比べて、汎用性はあるが、
耐久性は低く、更にネジ山をつぶしやすい事を言いたいわけだね。」
64 :
本当にあった怖い名無し:05/02/23 00:02:17 ID:cYYhc68f0
>>57>>58 そこは少しばかり変わった場所だった。
向かいの真新しいマンションはどこか場違いだったし、その先の急な下り坂からは、明らかに空気が変わっていた。
つまりそこは“気”の行き止まりの様な場所だった。そしてなにより隣の公園には本田さんがいた。
ぼくらは上高田図書館の前に立っていた。
「いるかホテル」と彼女が言った。
「いい?あなたは今日からここに泊まって、毎日新井薬師に水を聞きに行くの」
「よくわからないな」とぼくは言った。
「そうね、確かにここは図書館よ。でもあなたにとっては“いるかホテル”なの。わかるかしら」
「わからない」
「OK、説明するわ。あなたはここに泊まる。もちろん誰にも気付かれないように。そして朝になったらお薬師さんへ水を聞きに行く。それを一週間続けるの。防犯カメラに写らないように気をつけないといけないわ」
「それと羊男にも」とぼくは言った。
65 :
本当にあった怖い名無し:05/02/23 00:03:10 ID:cYYhc68f0
「さあ、行って」と彼女は言った
「君はどうするの?」とぼくは訊ねた。
彼女は「あまり詳しくは話せないんだけど・・・」と口ごもりながら「哲学堂の猫たちに、毎日“松寿司”の魚を運ぶことになると思うわ」と答えた。
「知ってる?哲学堂の猫って、みんな“飛び猫”なのよ。だから“松寿司”の魚しか食べないの」
彼女はぼくの耳(正確には耳の穴)に口を近づけると、ものすごい秘密を告白するみたいにそう囁いて、そのままぼくの左頬に音を立ててキスをした。
そして「これはクリリンの分!」と叫ぶと、ぼくの股間をむんずと掴み、「メールするね!」と手を振りながら走り去っていった。やれやれ。
上高田図書館は2階建ての小さな図書館だった。
一体こんな小さな図書館の、どこに隠れる場所があるというのだ。
ぼくは一通り見て回ると、とりあえず目についた本を手に取り、パラパラとめくってみた。
それはマイナスドライバーの汎用性と耐久性について書かれた本で、特にそのネジ山のつぶしやすさについてかなりのページが割かれていた。
上高田図書館は小さいけれど、なかなか良い本を置いている。
ここならなんとか暇がつぶせそうかもしれないと思った。
その電話が鳴りだしたのは、夜明け前の時間だった。
その時僕は、昨晩からのあびる祭りでとても疲れていて、最初は電話の音であるかすら
分からない状態であった。それでもなんとか受話器を持ち上げると受話器からはすみれ
の声が聞こえてきた。
「ええと。今まで聞いたうちで一番怖かった話をしようと思うの。
この間のギリシャに行っている時ミュウから聞いた話だけれど。…ねえ聞いてる。」
「ああ。」とだけ僕はいった。僕はすごく疲れていて声に出すにはそれが精一杯だった。
すみれはそんな僕のささやかな疲労を最初から存在していないことのように話を続けた。
「その町でほんとにあったことなのよ。彼女の友達…つまりミュウの友達が1人暮で
ワンルームマンションに住んでいた時のことなんだけど、ある時その彼女の友達が遊び
に来て泊まって行くことになったのよ。ねえ聞いてるの。」
うん。とだけ僕はいった。
「あなたは、ああ、とか、うん、とかしか言えないの。確かに一番鶏が鳴く前に電話を
かけた事は悪いと思っているわ。でも、うら若い女の子が左右の靴下の柄も別々で夜明
け前の公衆電話からかけているのにもうちょっとましな枕詞は言えないの。」
「…ぬるぽ…ガッ」と僕はいった。
「まあ、いいわ。それも少しの進歩ね。本当は久しぶりに逝ってよしを聞きたかったけ
れど。話を続けるわ、…やがて夜になり、そろそろ寝よう、というときになって、友達
は床に寝ることになり、その家の子はいつものようにベッドで眠ることになったのね。
しばらくしてベッドの横の床に寝ころんだ友達が、『牛乳が飲みたい』と言いだしたのよ。
何故だと思う?」
「ベットの下にナイフを持った男がいた。」と僕はいった。
すみれは何もなかったように話を続けた。
「彼女の家には牛乳は買い置きがなかったので、『ジュースでいいでしょ』といったのだ
けれどもその友達はどうしても『牛乳が飲みたい』と言ってがんとして聞かなかったの。
何故だか分かる。」
「ベットの下にナイフを持った男がいたから。」と僕はいった。
すみれは、大きく溜息をついた。そして僕は、彼女が苛苛するとする癖、ハイライトの
フィルターをとんとんと電話機に打ち付けている彼女の姿を想像した。
「やれやれ、あなたは、何も分かっていないのね。まあいいわ。そして仕方がないので、
結局コンビニに行く為、外に出たの。だけれども、その牛乳マンセーといった子は外に
出た途端、警察に電話をかけ始めたの。ここまで話せば何故だかわかるわよね?」
「ベットの下に…」という僕の声をさえぎってすみれは話始めた。とんとん。
「事の真相は、その子が寝ようとベッドの横に寝ころんだとき、ベッドの下にナイフを
持った男が入り込んで横たわっているのを見つけの。
男はその子の方を見たけど、見られた子は気がついたのがばれるとヤバイ、と思って気づ
かないふりをして、なんとか友達を外に連れ出そうとしたのね。そして結局警察がその男
を捕まえ、事情を聞いたところ、男は『クルルンの分をくれてやるつもりだった』という
わけ。」
僕はこの話を聞いたとき疑いも無く実話であると思った。実話はミュウからすみれへそし
て僕へ。ショートからセカンドへそしてファーストへ …そういう事だ。
そして僕は、鳥山明が何故ある一定期間敵の名前を飲食物の名にしたのかを考え、ブラジ
ルのボーキサイト生産量が世界何番目かを考えた。
男は『クルルンの分…<やれやれ、クルルンって。
そんなすみれならば帰ってこなくていいな。
笑いましたありがとう。
2ちゃんねるの恋人。
でもすみれは帰ってきた。
なぜだかわからないけど、事実は事実として受け止めなくちゃいけない時も、この世にはあるのだ。
『でもすみれは帰ってきた』
声に出してみると、さっきより現実味が増したように思えた。
僕はブランデーを飲み干すと、満足して再び床についた。
片桐がアパートに帰るとそこにはかえるくんがいた。
立ち上がると身長は2mはゆうにあり、それはがっちりした蛙だった。
「片桐さんお帰りなさい。お邪魔させて頂いておりますよ。
そろそろ帰られる頃だと思いまして、お湯をわかしておきました。
さあさあ片桐さん、どうぞお座りください。」
片桐はカバンを両手で抱きかかえたままキッチンの椅子にすとんと座った。
「では、片桐さん。あなたにどうしても聞いて頂きたい事があります。
それはみみずくんの話です。
…ある病院に残り三ヶ月の命と診断されているみみずくんがいたのです。
お友達が二人お見舞いに来た時に、そのみみずくんのお母さんはまだ、
みみずくんの体がベットの上で起こせるうちに最後に写真を撮ろうと思い、
病気のみみずくんを真ん中にして三人の写真を撮ったのでした。
…ところで、片桐さんアンナ・カレーニナは読んだことはありますか?」
とかえるくんが言った。
「え、ええと。」と片桐はやっと口をあける事ができたが、まだ事態の把握は
出来そうにもなかった。
「すみません。ご紹介が遅れました。私のことはかえるくんとお呼び下さい。」
「…ところで、かえるさんは、」
「かえるくん。」
「かえるくんは、何かの象徴なのですか?何かの比喩なのでしょうか?それ
とも僕の幻覚でしょうか?」と片桐はいった。
「片桐さんのお気持ちはよく分かります。しかし私は、それ以上でもそれ
以下でもありません。無論、きちんと事前にお会いするアポイントメント
を取るべきでしたが、何分この話は急を要しますので、お邪魔させていた
だいた訳です。ところで片桐さん。あなたは白夜を読んだことがありますか?
もしまだお読みになっていなければ一度読むとよろしいですよ。」
きっとかえるくんはドフトエフスキーが好きなんだろう。そして、かえる
くんは話を続けた。
「結局それから一週間ほどで急に容体が悪くなり、三ヶ月ともたずに
みみずくんはなくなってしまいました。
葬式も終わり、多少落ち着きを取り戻したお母さんはある日、 病院で撮っ
た写真の事を思い出しました。それを現像に出し取りにいって見てみると、
その写真が見つかりません。写真屋さんに聞いてみると、『いや、現像に
失敗して…』というそうです。不審に思ったお母さんは…」
「ちょっとまって下さい。かえるさん」
「かえるくん」
「かえるくん。この話は私に関して何か関係があるのですか?」
「その答えはYESでありNOでもあります。また、NOでもありYESでも
あります。」
かえるくんは、もちろんですという風に水かきを軽く膝でぴしゃんと叩いて
話を続けた。
「みみずくんのお母さんは生前の最後の写真だからとしつこく写真屋さんに
迫ったそうです。 写真屋さんもしぶしぶ写真をとりだし、『見ない方がいいと
思いますけれど、驚かないで下さいね。』と写真を見せてくれました。
そこには、三人のみみずくんが写ってましたが、真ん中の亡くなったみみずくん
だけが ミイラのような状態で写っていたそうです。」
「え、ええと、両生類さん」
「かえるくん。」
「かえるくん。なぜ僕にこの話をするのですか。」と片桐は質問した。
「あなたがちゃきちゃきの生粋の2chねらーだからですよ。ぼくが2chねらーに
なれる確率はアンナ・カレーニナが驀進してくる機関車に勝てる確率より、少しま
しな程度でしょう。しかし片桐さんにはもって生まれたねらーファクターがあります。
身長1m60cmで、新宿の信用金庫に勤める40歳の独身男性。はげかけで腹が出て
扁平足で運痴で音痴で包茎で近眼。ハードルの高いねらー素質を全てクリアーして
います。」
「(そして、ロリで)…」とかえるくんはボソっと言って、話を続けた。
「それを見たお母さんはとても驚きましたが、供養してもらうといい写真を持ち帰り
ました。それにしても恐ろしい写真だったため霊能者のところで供養してもらう時に
これは何かを暗示しているのではないかとたずねました。でも、霊能者は言いたがり
ません。しかし無理に頼み込んで話を聞ける事になりました。その霊能者が言うに
は、『残念ですが、クリリンは地獄に落ちました。』」
やれやれ、またクリリンおちかと片桐はつぶやいた。
彼女にはじめて会ったのは、60年代風のピンボールマシンがある喫茶店だった。
その日も僕はメイプル・シロップをたっぷり入れたアップル・ティーと、シナモンのきいたドーナツという、
おきまりのメニューをたのしんでいた。
でもその日はいつもとすこし違っていた。なぜかというと、僕の前には真っ赤なワンピースの女の子が座っていたからだ。
おまけに彼女の体は半分透けていた。こんな相手、ベーブ・ルースなら肩をすくめて見送っただろう。
でも、ぼくはその日なんだか幽霊の力になってあげたい気分だったのだ。
その後のドライブでは、僕のプレミアのついたフォードがあやうく崖からダイブするところだった。
僕は缶詰のオイル・サーディンのような気分を味わったが、彼女は「とてもたのしい」と言った。
そうして僕は彼女に毎週末サービスをしつづけている。毎日はさすがにたまらないと僕が苦情を言い、
彼女はしぶしぶ承諾したからだ。
昨日、彼女は動物園にひとりで行って来たらしい。アリクイの檻の前に一日立って見ていたという。
「ねえ、アリクイにもストレスはあるのかしら」彼女は言った。「気になって成仏できないわ」
ジョン・レノンなら、こんな時どうしただろう。
うまいなぐさめの浮かばない僕は、この週末は図書館のアリクイ学の棚の前で丸一日をつぶすことになりそうだ。
76 :
本当にあった怖い名無し:05/02/25 00:08:06 ID:+aBWt3Iz0
>>64>>65 図書館の夜は、世界中の夜を集めても足りないくらい“しん”としていた。
ぼくは長机の下に収められた椅子を、3つ並べた上に体を横たえて、ブラジルのボーキサイト生産量が世界何番目かを考えていた。
ヴヴヴヴヴヴ
その時ジーンズのポケットに入れていた携帯のヴァイブレーターが作動した。
図書館を利用するもののマナーとして、あらかじめマナーモードにセットしてあったのだ。
〈no title 図書館はどう?〉
彼女からのメールだった。
〈Re:no title 悪くない〉送信。
ヴヴヴヴヴヴ
〈Re:Re:no title 怖くない?〉
〈Re:Re:Re:no title まさか!〉送信。
ヴヴヴヴヴヴ
〈あわてないで 聞いて欲しいんだけど〉
〈Re:あわてないで なに?〉送信。
ヴヴヴヴヴヴ
〈Re:Re:あわてないで あなたの椅子の下に、何かいないかしら?〉
ぼくは携帯の液晶を胸に当て、明かりが漏れないようにすると、息を潜め、耳を澄ませた。そして視線をゆっくりと向かいの窓に移動させた。
ギラリと光る二つの目玉と、確かに窓越しに目が合った。立ち上がると身長2mはゆうにありそうな、がっちりとした羊男だった。
ぼくはできるだけ静かに深呼吸して彼女にメールを打った。
〈Re:Re:あわてないで いた>あなたの椅子の下に、何かいないかしら?〉送信。
77 :
本当にあった怖い名無し:05/02/25 00:09:19 ID:+aBWt3Iz0
ヴヴヴヴヴヴ
〈Re:Re:Re:あわてないで あなたに気付いてる?〉
〈あわてるもんか どうもさっき目が合ったみたいだ〉
ぼくはできる限り平静を装って送信した。
ヴヴヴヴヴヴ
〈Re:あわてるもんか いい?最後まで気付かない振りをするのよ。このままメールを続けて〉
〈Re:Re:あわてるもんか わかった〉
ぼくがこの文章を送信しようとした時、別のヴァイブレーションが作動した音が聞こえた。
羊男の携帯だった。やはりマナーモードにしているのだ。
羊男が静かに携帯を開き、メールを読んでいる気配がした。
〈羊男も メールしている〉送信。
ヴヴヴヴヴヴ
羊男に緊張が走った気配がした。しかしそのヴァイブレーションはぼくの携帯だった。
〈Re:羊男も (*_*)〉
ヴヴヴヴヴヴ
ぼくも羊男もどきっとした。そのヴァイブレーションは羊男の携帯だった。
ヴヴヴヴヴヴ・・・ヴヴヴヴヴヴ・・・ヴヴヴヴヴヴ・・・
それからヴァイブレーションの音が響くたび、ぼくはどっと汗をかいた。羊男だって同じに違いなかった。
やがて「牛乳が飲みたい」とつぶやいて図書館をあとにしたのは羊男だった。ぼくは見事に勝利したわけだ。
〈羊男が 今外に出いていった〉送信。
ヴヴヴヴヴヴ
〈やったわね! (^o^) さっそくだけど・・・〉
〈Re:やったわね! なに?〉送信。
ヴヴヴヴヴヴ
〈ブラジルのボーキサイトの生産量って 世界で何番目だったかしら?〉
〈Re:ブラジルのボーキサイトの生産量って 4番目〉送信。
ブラジルのボーキサイトの生産量って 世界で何番目だったかしら?
これが彼女の最後のメールだった。
長文いいかげんうざ杉
オナニーはヤメレ('A`)
えー?長文いいじゃん。面白いし。
春樹風職人ガンガレ!楽しみにしてるよー。
>>77 村上春樹風スレなんてどこにだってある。
腐ったラウンジにさえ立っていた。
そしてそこだって、オナニースレだったんだ。
いいかい?所詮村上春樹風スレなんてオナニースレだ。
もう一度言う。
村 上 春 樹 風 ス レ な ん て オ ナ ニ ー ス レ だ。
オナニーを見たくないなら来なければいい。
独り言を書くならチラシの裏にすればいい。
ゆっくりと考えたいなら井戸の底に潜ればいい。
僕は言いたいことだけ言うと、受話器を置いた。
81 :
本当にあった怖い名無し:05/02/25 06:53:08 ID:pyei/kmI0
長文ウザイage
やれやれ
83 :
78:05/02/26 00:16:16 ID:xIEuLHgi0
僕は少しきつく言い過ぎたのかもしれない。
「オーケー。
>>80のようなレスは大歓迎さ。」
少し言い過ぎました、ごめん
とりあえず、
>>81は俺じゃないよ
「私よ」と女の声が言った。聞き覚えの無い声だった。
部屋の温度が急に下がった気がした。
「私よ」女はもう一度そう言った。僕は何か言おうとしたが
何を言うべきか、解らなかった。私よ?
僕はお腹が空いたのでパスタを茹でることにした。
パスタが茹で上がるまで待っていると電話が突然鳴った。
パスタが気になったがとりあえず出ることにした。
「はい、もしもし。」「私メリーさん」
・・・これはなんだ?新手のいたずら電話か?
「今駅前にいるの」「これはいたずら電話かい?僕は今パスタを茹でてるんだけど」
「私メリーさん、今商店街にいるの」僕の言葉を無視してその女は言い続けた。
「パスタが茹で上がりそうだからきるよ」「私メリーさん、今あなたのい」ガシャン!
僕はとっさに電話を切った、別に恐くなったわけじゃない、パスタが茹で上がるからだ。
茹で上がったパスタを食べているとまた電話が鳴った。
受話器を取ろうとしてさっきの電話を思い出し取るのをやめる。
電話はなり続けた、僕はめんどくさくなって電話の線を引き抜いた。
何もすることがなくなり僕は横になった。「電話に出ていたづら電話の相手をしてやってもよかったかもしれない・・・。」
しかし、それきり電話は黙り込んでいた。
>>85 お〜そのシチュにメリーさんを当てるとはうまい〜
せっかくだから最後までキボン。
今クレタ島にいるのみたいな。
>>85 『うまいけど、それって村上春樹風なのかしら?』
僕はコメントを控えることにした。
>>87 「だいぶ前に読んだきりなのでよく覚えてないのだけど」僕は言った。
「
>>85はねじまき鳥クロニクルの冒頭部分じゃないか?」
僕には
>>85は村上春樹の文章をそのまま引用しているように見える。
だが
>>87の彼女は「
>>85は村上春樹風ではない」という。
僕は混乱した。
僕は
>>88のレスを見て「著作権」という言葉が思い出され焦り始めた。
その時もう一人の僕が出てきてこう言った。
「おいおい君は何をそんなに不安になってるんだい?2ちゃんではパクリなんて当たり前だろ?
また前のアノ時のように君は怯えていくのかい?」
僕は数ヶ月前にワンクリック詐欺に騙されかけた時のことを思い出していた。
90 :
88:05/02/28 21:46:50 ID:kTOSgz7pO
いや覚えてないんで文章そのままじゃないかも。
ただねじまき鳥のパロディてある事は確かなので「村上春樹風ではない」というレスに???だったわけ。
それにネタスレだから引用とか構わないと思う…
上の方にある「坂を転がる春の熊」も村上先生の言葉だよね?
僕は
>>90の言葉を井戸の中で思い出していた、「そうさここはあくまで”パロディ”なんだ」そう自分に言い聞かせる。
「・・・そういえばリングの貞子って井戸から出てたな・・・。」何故か僕を不安が襲った。
手探りで縄梯子を探す。
僕は愕然とした。
縄梯子が消えていた。
>>90 僕は君にこんなことを言うべきでなかったのかもしれない。
あるいは僕はそもそも書き込みをすべきではなかったのかもしれない。
『あなたが言いたかったのは』
彼女は飲みかけのグラスを端においやってから言った。
『あなたが言いたかったのは
>>85は村上春樹の言葉の引用ではあるけど
決して村上春樹風ではない、そうでしょ』
そうかもしれない。
かくいう僕だって村上春樹風ではない可能性もあるのだ。
『井戸から出てこない貞子だっているわ』
そういうことだ。
>>76>>77 それからぼくは一日のほとんどを上高田図書館で過ごした。
羊男はあれ以来現れなかったけれど、隣の公園の本田さんは相変わらずどこかを見つめて佇んでいた。
午前中に一度外に出て、新井薬師まで歩いて白龍権現水を飲み、また真っ直ぐ図書館に帰ってきて本を読む。
このあたりをふらふらと散策しても良かったし、彼女がいるらしい哲学堂へ行ってみたいという気持もあったのだけれど、それよりも早くここへ帰って本を読みたかった。
それくらいここはぼくにとって居心地のいい場所になっていたのだ。
ところがどうしたことか、最近は読むべき本が無くなってしまったように感じる。
リベリオンの人口の話もどうなったのかわからないままだし、楽しみにしていた短編作家ものも見つけられなくなってしまった。
−−−おまえがageるからだよ
どこからか声がした。
−−−これからはsageでいこう。
ぼくは誓った。
彼女からメールが来なくなっても、ぼくはそれほど心配していなかった。
彼女には昔から“そういうところ”があったし、とにかく一週間新井薬師に通いさえすれば、ぼくにも何かしらわかることがあるのではないかと思っていたからだ。
一週間目の朝、まず隣の公園の本田さんが“忽然と”いなくなっていた。
そしてもうひとつ、ぼくはあることに気付いた。
この一週間、ぼくは白龍権現水以外、何一つ口にしていなかった。
食欲というものを全く感じなかったのだ。
それに気付くと同時に、忘れられていた食欲が急激にぼくを襲ってきた。
そして彼女に会いたくてたまらなくなった。
ぼくは今まで新井薬師に向かっていたのと逆方向の坂道を初めて下っていった。
突き当たりに川が流れていて、橋を渡ると、そこが哲学堂だった。
村上春樹風というのは
「僕」がいて
「僕」の周りにいる女が失踪して
その理由を探っていくと
女はなにやら精神世界に捕われてる
このワンパターンに尽きますか?
96 :
本当にあった怖い名無し:05/03/03 18:38:21 ID:dIziN3y40
そうかもしれない。
よくわからない。
僕はホラー映画に逝った時のことを思い出していた。
僕の周りにはカップルか僕と同じ暇人しかいない。
僕は話題の映画が流行ってる時ではなく、流行っていない時に逝くようにしていたが人が意外と多くて少し残念だった。
僕は恐い映画が苦手だ、しかも一番嫌いな日本のホラーだった。
映画が始まった、さっそく顔を白く塗った女性の幽霊がゆっくりとしかし確実に呪いで人を殺していく。
だが、僕は恐怖を感じなかった。なぜなら運の悪いことに2ちゃんねるでこの人の恐いメイクをしていない時の画像を見てしまったからだ。
全身白塗りの子供も出てきたが、ブリーフが笑えてだめだった。
ヒロインのシャワーシーンが映った。僕はズボンの股間が膨らむのを感じた。誰にも気づかれることは無いのだが、僕は顔を赤らめる。
映画が終り、皆無言で出てくる。僕は彼女を作りたいと思った。一人で見るホラーはつまらなすぎる、その時は彼女が欲しい理由なんてそんなものだった。
>>95 あるいはそうなのかもしれない。
僕にはよく分からないけれども。
>>92 「どういうことやねん」
モニターをじっと見つめたまま、彼女はそうつぶやいた。どういうことやねん。
たしかに――村上春樹の文章には力技の要素がとても強い。
一体どうしたらそんな結論になるのだ、という強引な纏め方も
「そういうことだ」彼はこの一言を用いることで完璧な説得力を持たせてしまう。
それは、生まれて初めて辞書で「かえるの子はかえる」ということわざを
見つけた時の衝撃に似ている。「転じて―」この一言と同質だ。
そしてぼくが考える限り
>>92はひどく村上春樹的だ。ぼくは92が気に入った。
「100ゲトよ」
誇らしげに彼女は言った。
僕はそろそろここにカキコしなければならないと思っていたが、恐い話はもう底を着いていた。
あの水の無い井戸のように。
しかし、僕はその時名案が浮かんだ、「そうだ!自分の恐怖体験を村上春樹のように書けばいいんだ!」
さっそく意気揚々としていたが、なぜか書くことが思い浮かばない。
何故だ?僕は途方にくれていた、その姿はあの庭にあった鳥の銅像ににていたかもしれない。
その時もう一人の僕が来てこう言った。「君のアイディアは悪くない、しかし君は人一倍霊感と言うものが無く、人一倍テレビの
恐怖番組で心霊写真が映っても霊をさがせないじゃないか。そんな君に恐怖体験なんか書けるのかい?」
そのとおりだった。
>>101 『微妙よ』
『微妙だわ』
双子は口を揃えて言った。
「こんなことを言うなんて、あなたはわたしをおかしな人間だと思うかもしれない。
それはわかっているの。百も承知よ。でも、ここは2ちゃんねる。そうでしょう?」
食べかけのドーナッツを皿に置くと、彼女はゆっくり話し始めた。
「火の鳥を見たのよ」
…やれやれ。ぼくは彼女の話に耳を傾けるふりをして、
昨日生まれて初めて立てたスレッドのことを考えていた。
「八歳の頃だった。家の近くにクヌギ畑があったのよ。
いつものようにそこで友人とかくれんぼをしていたの。夕方だったわ。
鬼になったわたしが10を数え振り向くと、そこには虹色の大きな鳥がいた。
驚いて、声を出そうとした瞬間に、その鳥はオレンジの空に飛んでいってしまった。
ねえ、こんなことって信じられる?」
「わからないな」
彼女は大きくため息をついた。
「何が本当で何がうそかなんて、誰も知ることができないのよ。誰も、ね」
鰻を食べながら、僕は怪談特集に500円を払ってその雑誌を読む事を想像してみた。
怪談特集じたいは悪くなさそうだったが、それに対して金を払うというのはちょっと妙なものだろうな、と僕は思った。
そして僕はその昔、怪談が山火事みたいに無料だったころのことを思い出した。
本当にそれは、山火事みたいに無料だったのだ。
「なんだか随分時間が流れた気がするわ」
彼女はコーヒーを飲みかけ、それが無くなっている事に気づくと、
今度はエスプレッソ・コーヒーを煎れて再び話し始めた。
「それで、人口の話なんだけど」
ぼくはわかっているよ、というようにうなづいて見せた。
「わたしの友達の東京は人がその三倍も多いんですって。信じられるかしら?」
彼女の言う友達の話も信じがたいが、それを真顔で言う彼女に僕は困惑した。
いや、困惑したというより、もうこの話が事実であるという事に困惑していた。
彼女は絶対に嘘をつかないし、そんな彼女の友達にも嘘吐きは居ない。
最初からその前提で始まっている、これはそういう話なのだろう。
「それで、どういうことだい?」
僕はできるだけ落ち着いて続きを促した。続きが聞きたかったかどうかはわからないが、
そうしなければいけないように思えたのだ。
「わたしの働いてる日本料理店があるでしょう?」
そういえば、彼女は日本料理店で働いていたかもしれない。アンキモが好きなのは、
もしかしたらそのせいかもしれないな、と僕は思った。
「一緒に働いてる子で、まゆこちゃんという子がいるんだけど、・・・・そうね
さだこの髪形をしてる、ちょっと暗い子なんだけど、その子の話だと、
東京はどんどん【違う世界の人】が増えてきているんですって」
僕は静かにうなづいて見せたが、心の中ではメガネの男が、「なんだってー!!」
と驚愕しているイメージが浮かんでいた。そう、たぶん僕は驚いていたんだと思う。
そして、それを認めたくなかった。そういうものだ。
「微妙だわ」と208
「微妙ね」と209
>>105 「非常に読みにくいね。それに文法だっておかしい」
鼠はピーナッツの粉をはたきながら言った。
2005年、それはオカ板の年であった。
2005年、僕は生きるためにオカ板にカキコしつづけ、オカ板にカキコするために生きつづけた。
糞スレから立ちのぼる罵声こそが僕の誇りであり、救いようのないネタスレこそが僕の希望であった。
僕はコンピュータの専門店に行って3DCADにでも使えそうな高性能なコンピュータを手に入れ、
電話回線を引き、ADSL回線を契約し、ネットを巡って専用ブラウザをダウンロードし、書店で2chの専門書を見つけ、
1ダース単位で過去ログを保存した。
僕はありとあらゆる種類のスレを読み、ありとあらゆる種類のスレを立てた。
人魚の乳首やヤツら(たぶんグレイ)や霊魂や何やかやの匂いは、細かい粒子となって板中に飛び散り、
渾然一体となって僕の使っていた狭い17インチのディスプレイ・モニタの隅々へと吸い込まれていった。
ネタにもマジ話にもコテハンにも現場突撃にも地域別にも宗教にもDQNにも、下半身にも、それはしみついた。
なんだかまるでオカルトと言う単語があらわす混沌のような匂いだった。
紀元2005年、オカ板の年の出来事である。
>>105 「これは村上春樹風ではないわね」
笠原メイは黒いサングラスを外しながら言った。
「なぜそう思うの?」と僕は訊ねた。どういうわけか、そうせずにはいられなかったのだ。
「なぜって、そんなのわからないわよ。ものごとには全て理由があるわけじゃないもの」
「そうかもしれない」と僕は言った。
あるいはそうなのかもしれない。ものごとには全てに理由があるわけじゃない。
彼女は外したサングラスをテーブルの上にそっと置いた。
「
>>105には基本的な間違いがあるわ」
「間違い?」
「そうよ。とっても、基本的なね」
彼女は「とっても」の部分を強調してそう言った。
僕は彼女が105の間違いについて再び話し始めるのを待った。
しかし、彼女はなかなか話し始めなかった。
しかたないので、僕はすっかり氷の溶けたコカ・コーラを一口飲んだ。
間違い?一体、何が間違っているのだろう?
僕にはよくわからなかった。
しばらくして彼女は言った。
「うなづく、じゃなくて、正確には『うなずく』なのよ」
そう言って彼女は突然立ち上がり、足を引きずりながら行ってしまった。
あ〜またいちいちうるさい難癖野郎か
と思ったら誤字指摘でワロスw
僕は深夜2時半にこのスレにやってきた。
とても静かな夜だった。聞こえてくるのは、通りを走る車の音だけだ。
このスレに関して、僕は今まで一貫してROMに徹してきた。
僕はこのスレの雰囲気がとても好きだったけれど、ここに自分がレスするなんて今まで考えてもみなかったのだ。
僕はこのスレを改めて1から読み直してみた。そして初めてレスすることに決めた。
なぜそうしようと思ったのかは、僕自身にもわからない。
今、僕の部屋には僕自身がパソコンのキーを打つパタパタという音が響く。
なぜ僕は突然ここにレスする気になったのだろう?と、僕はまた考える。
しかしいくら考えても、やはりその理由はよくわからない。
そんなことを考えているあいだも、僕の手は僕の意識とは無関係にキーの上を這う。
まるで何かが僕の手を勝手に動かしているみたいだ。
そう、まるで何かにとり憑かれたみたいに・・・・・。
僕はふと顔を上げる。部屋の大きな窓の外には、夜の深い闇が広がっている。
まるで井戸の中を覗き込んでいるみたいに、黒く深い闇がそこにある。
窓にはパソコンに向かって座る僕の姿が映っている。コーヒーを飲みながら、
ぼんやりと真夜中のオカ板に向かう僕だ。
でも、そこに映る僕の姿はいつもとは何かが違っていることに気付く。
何だろう?一体、何が違うのだろう?僕は必死で考える。
やがて僕は気がつく。
僕の髪はいつのまにか真っ白になっている。
「とにかく」
彼は持っていた小説から顔をあげて僕の方を見て言った。
正確には僕の後ろにいる壁を見ていたのかもしれない。
「リベリオン ◆1sbbp3Vb3o とかいう奴はコテハンを名乗るほどではないね」
僕は反射的に答えた。
「村上春樹を好きなんだろうということはわかるけれど──」
彼はおだやかに僕の言葉を遮った。
「そう、よくわかるよ。だけど文章が下手すぎるし、読みにくい。
名無しの中で目立つには、それこそ誰もが頷けるような文章を書くべきだ。
そもそも下手な文章だと返って今回のように集中砲火を受けることになる。
コテハンを名乗るということはそもそもそういうことなんだ」
彼は持っていた小説をひざの上に置いた。そして自分に確認するように
二回ばかり小さく頷き、僕にしか聞こえないように小さな声で言った。
「結局のところ、彼は『本当にあった怖い名無し』を名前欄に
コピーアンドペーストしてから書きこむべきだと思う」
僕は煙草をくわえて、煙を吸いこんだ。
気分がほんの少しだけすっきりとした。
あたりはしんとしていて、時計の針の音だけが響いていた。
ほったらかしだった、そう思って書いたが、
それはどうも負の方向にレス番を増やすだけの結果に終わったようだ。
そこには誤字もあり、そして文法の間違いもあり、
あらためて見ると確かにひどい文章だ。
これは世界の終わりなのかもしれない。
でも、今更名無しには戻れなかった。僕は一人でうなづいた。
そう、何回もうなづいたんだ。決してうなずいたわけじゃない。
僕は小学校から持ってきてそのまま卒業してしまって返せないままでいた本を持ってきた。
すると彼女は言った。「あら、その本懐かしいわね。何に使うの?オカルトには向いてないとおもうけど・・・。」
僕は確かにオカルト向きでない童話集の本を持っていた。「これにね、”永遠に終わらない話”ってゆうのがあるんだ、
それを村上春樹風に乗せたら面白いかなって」彼女はそれを聞いて呆れていた。
「貴方は何か勘違いしているようね、”永遠に終わらない話”なんてぜんぜんオカルトじゃないじゃない、
スレ違いもいいとこだわ。いい?そんなことをしたら彼から返ってくる選択肢は2つしかなくなるのよ。
1つ、”全然オカルトじゃないと村上春樹風に返される”これでかなり貴方はしばらく欝になるわ。」
僕は黙って聞いていた。
「2つ、”ときたま見かける謎の双子が「微妙」と言って去って逝く”これでも貴方は欝になるわね?そうじゃない?
だからそんなことはしないで黙ってROMってなさい。」
僕は困惑しながら言った。「で、でも彼らが”なかなかだった”って言ってくれる選択s」
彼女は僕の言葉を途中で遮る様に首を振った。「その選択肢はまず無いわ。」
僕は外を見た、空は夕暮れで黄金色に輝いていた。明日から暖かくなるらしい、早く春が来ないかな。
115 :
1:05/03/12 17:38:59 ID:3r/TvAcx0
「少なくとも−」
僕は言いかけた後に、もしかしたらいわなければよかったかもしれないと
思った。でも、もうそれは遅すぎた。
「少なくとも何だい?」
住人の一人が文の続きを催促してきたのだ。
僕は無視しようかとも思ったがこのスレの1としていっておかなくてはなかった。
「うん。少なくともリベリオンってコテハンは僕よりはずっとましな文章を書いてると思うんだ。」
「なぜそう思うんだい?」すぐに、ほとんど反射的に、他の住人が僕に尋ねた。
彼は特にその理由について感心があるようではなかったけれど、なんとなく聞いた。
そんな感じに見えた。
「うん。 実は…」
僕がこのスレをたてたのは間違いだったのだろうか?それとも僕が他の板で村上春樹スレを
偶然見つけてしまった事がそもそもの間違いだったんだろうか?僕一人では答えが出せなかった。
「実は僕、村上春樹の本って一冊も読んだことないんだ。」
誰も何も言わなかった。何もいわないまま皆去っていってしまった。
「やれやれだ。」
僕は村上春樹というよりジョジョのほうが馴染深いこのせりふを口にしてみた。
でもそれで何が変わるというわけでもなかった。
僕は1の正直な報告を見た。それは別に構わない、ああ読んだことがなくてもいいさ。
ただ僕が気にかかったのは「やれやれだ。」じゃなくて「やれやれだぜ。」じゃなかったかな?
ということぐらいだ。僕はジョジョは第三部と第四部しか見たことがないからどーもこーも
言えるわけじゃない、ただそう思っただけだ。
よりにもよって、僕はクモザルの運転する電車に乗ってしまった。
そのアトラクションは、車両の後ろから順番に乗客が殺されてゆく、という悪趣味なもので、
それもどんな殺し方をするかアナウンスで知らせるという念の入れようだ。
僕のすぐ後ろには髪の長い女の子が座っていた。彼女はグレープ・ドロップスをなめながら、
後ろのほうの騒ぎをまったく気にもとめていないかのようにサリンジャーを読んでいた。
「次はえぐり出し〜えぐり出しです」とアナウンスがながれた。
僕は缶ビールを飲み干す。思えば人生なんていつもこんな感じで終わるものだ。
彼女のヒステリックな声がやんだ。
「次は挽肉〜挽肉です〜」またアナウンスが流れる。
羊男たちが僕の膝に乗り、妙ちきりんな機械のスイッチをいれた。
僕の最後の言葉はカール・パーキンスからもらうことにしよう。
俺の命をとったっていい。
俺の体を好きなだけきざんでいい。
何でもいいから、
やりたいようにやれよ。
でもな、ベイビー、
俺のブルー・スエード・シューズにだけは手を出すんじゃないぜ。
>>93>>94 哲学堂が有数のオカルトスポットであることはぼくも知っていた。
もっともそれがどういう意味なのかということまでは知らなかったけれど、「妖怪門」をくぐり、「幽霊梅」のあたりまで歩けば、その意味を理解しないわけにはいかなかった。
まず異様だったのは、行き交う人が皆、一心不乱に“うなづいて”いることだった。
正直ぼくは、それまで“うなづく”という動作があることを知らなかった。
あるいは気付いていなかったと言ったほうがいいのかもしれない。
しかしそれは明らかに“うなづいて”いるのであって、決して“うなずいて”いるのではないのだ。
つまりそれは恋人と変人くらい違っていた。そういうことだ。
そして時々姿を現す猫たちは、確かに“飛び猫”で、彼女が毎日運んだ“松寿司”の魚を食べていたに違いなかった。
ぼくは所々に立てられている案内板を読みながら、彼女が辿ったであろう道を歩いてみることにした。
哲学堂七十七場。そこは実に摩訶不思議な空間だった。
理想の彼岸に達する「理想橋」。切られて血を流した「天狗松」。神秘に帰する「神秘洞」。精神が俗界を離れて霊化する「鬼神窟」。
鬼をかたどった灯籠があると思えば、狸をかたどった灯籠が現れる。
しかしそんな説明書きの中で一番気になったのは「絶對城」の案内板だった。
〜万巻の書物を読みつくすことは絶対の妙境に到達する道程であって・・・云々
「絶對城」の横には、カッコで図書館と書いてある。
「絶對城(図書館)」。
さらに気になったのは、その絶對城碑の上に、赤いビニールの切れ端がいくつも散らばっていたことだった。
それは彼女がいつもかぶっていた帽子の切れ端に似ていた。
ぼくは彼女が羊男の妙ちきりんな機械で挽肉にされているところを想像し、慌ててそれを否定した。
その日は女の子からかかってきた突然の電話で始まった。
モグラやアシカから起きぬけにかかってくる電話なら絶対とらないところだが、でも女の子ならべつだ。
「もしもし。わたしリカちゃん」
幼いような、それでいて何か惹きつけるような声だ。
自分のことを自分で「リカちゃん」と呼ぶような女の子は大体そんな声をしている。
困ったことに僕は「リカ」という名前の女の子を60人知っていた。
こんな時適当に話をあわせたりすると後々やっかいなことになる。
「すまないけど、どのリカちゃんだったっけ」僕は正直に訊いた。
「金髪の巻き毛のリカちゃんよ」彼女は言った。
しかし困ったことに金髪の巻き毛のリカちゃんを僕は52人知っているのだ。
「他に特徴は無いかい?」
「フリフリドレスのリカちゃんよ」
困ったことに金髪の巻き毛でフリフリドレスのリカちゃんは47人いる。
「顔は?眼鏡とか、前歯の矯正とか、ほくろとか」我ながら馬鹿な質問だと思った。
「眼鏡も矯正もないわ。ほくろは左目の下よ」よかった。これで28人まで絞り込めた。
「どこに住んでたっけ?」
「あなたのおうちのそばよ」12人。
「今どこにいるの?」
「あなたのお部屋の前よ」5人。
ピンポーン、とチャイムが鳴った。ドアを開けると、フリフリに金髪の女の子が5人立っていた。
やっぱりだ、と僕は思った。いつだってそうなのだ。
「今日は何だい?家賃なら昨日左端から二番目のリカちゃんに払ったとこだよね」
「きょうは」右端が言った。
「配電盤の故障を直しに来たのよ」真ん中。
「あがらせてもらうわね」左端。
今リカちゃん達は楽しそうに壊れかけの配電盤を修理している。終わったらまた散歩に行くのだろう。
僕らのお決まりのコースがあるのだ。そしてその後はリカちゃん会議に書記として参加する。
今日の議題としてリカちゃん達に背番号をつけてみることを提案したらどうだろう、と僕は思いついた。
そしてその案を紙に書いてシュレッダーにかけた。僕はなんというか、そういう性格なのだ。
書いた当人の僕は120と121の文の時系列が変だと知るはめになった。
その日は、で始まっているのに終わりは今日だ。
この間違いに気付いたあしかは、あたまを地面にめりこませ、
尾びれを叩き続けている。これは彼なりの喜びの表現なのだ。
やれやれ。言われる前に言え、か。
僕はこうして今この文章をタイプしている。
あしかの喜びの表現はまだまだ続きそうだ。
僕はヒマをみつけてはこのスレを覗く。
レスが増えてもいないのに、なぜか気になって覗いてしまうのだ。
そして同じ文章を何度も繰り返し読み直してしまう。
オーケー。認めよう。
僕はこのスレが気になってしかたないのだ。
僕 は こ の ス レ が 好 き だ。
>>117 「いいと思うわ」
「いいと思う」
僕だって双子の意見と同じだった。
彼は見事にオカルトな村上春樹をやってのけたのだ。
ねえ、このスレだってまだまだ捨てたものじゃないよ。
僕は鼠に今すぐ伝えたかった。
125 :
本当にあった怖い名無し:05/03/16 04:18:18 ID:HpOekBoE0
なぜだろう。
僕は声に出してつぶやいてみた。
よくわからないな。
けれどもこのスレには何か僕をひきつけるものがあった。
それはまるで木の枝から離れた林檎が地面に引き寄せられるように。
「私だってこのスレが好きだわ。きっとあなたとは比べ物にならないくらい」
>>126 「そうかもしれないな」
僕はうなづいた。
「うなずく」でも「うなづく」でもどちらでもいい
しつこい・・・
「素敵なスレね。私も何か書いてみたいわ。」
マッキントッシュの画面を見ながら、彼女はそうつぶやいた。
外では春の雨が降っていて、カップのコーヒーは冷めかけていた。
「何かオカルトネタでもあるの?」
僕は読んでいた新聞から顔を上げ、彼女の肩越しに白いiBookをのぞき込ん
で言った。
「ネタは・・・無いわね。」
「じゃあ、とにかく何か村上春樹風に書いてみたら?」
「そんな才能も・・・無いわ。」
「だったら、他人の書いたものにケチつけるくらいしかできないじゃない
か。」
「みっともないわね。そんなみっともないことできないわ」
「いや、それもまた良しさ。人生にはスパイスが必要なんだ。スタイル抜群
の女の子が、ほつれたパンツを履いているみたいに。」
僕はしばらく見なかったこのスレがのびているのに驚いた。
「やっぱり村上春樹のファンは多いんだ」僕は少しハニカミながら言った。
僕は全然村上春樹と関係無い本を読んでいる、夕焼けのような赤いトレーナーを着ている彼女に尋ねた。
「僕も
>>117や
>>120みたいなものを書いてみたいな、何かいいアイディアはない?」
彼女は首を少し傾げてこちらを見ながら言った。
「とりあえずそのふざけたコテハンを辞めてみたらどうなの?」
僕は首を傾げながら彼女から視線を逸らした。彼女が先にその癖を始めたのか、僕が始めたのかなんてもう覚えてなんかいない。
名も無い双子に褒められるために今日も僕はオカルトを捜しに逝く。
不動産屋の女の子につれられて、物件を見に行った。
とても素敵な部屋だった。壁紙も、カーペットの色も、僕の好みにとても合っている。
「どうやって僕の好きな部屋がわかったんだい」と彼女に聞いてみた。
「僕がジェームス・ボンドなら君を疑ってみるとこさ」
彼女はかわいらしく笑い、「これはよくあるタイプの部屋よ」と言った。
「あなたが普通の部屋がいいって言うからつれて来たんだわ」
そのとおりだった。僕はステレオタイプが好きなのだ。
しかし僕はひとつ気になる点を見つけてしまった。
奥の部屋が間取りからするとすこし狭いようなのだ。
「おかしいな。この壁の向こうにもうひと部屋あるんじゃないのかい」
「面白い発想ね。どんな部屋があると思う?」彼女が聞いた。
「たとえば」僕が言った。
「こんなのはどうかな。中にかわいそうな人が閉じ込められているんだ」
「あらそう」彼女が言った。「じゃあこの部屋はもうすでに入居済みってわけね」
やれやれ。女の子という生き物はなんて現実的に出来ているのだろう。
「ということは中にいるのは人間じゃないな」
「それなら何がいるの?」
「そうだな。イヌワシとか、カンガルーとか」
それから僕たちは話し合いの場を近くの喫茶店に移した。
僕は普通にホット・アメリカン。彼女はカプチーノとドーナツを頼んだ。
そして僕たちは考えつく限りの動物を列挙してみた。動物図鑑が一冊書けそうなボリュームだった。
「で、ほんとはどうなんだい?」僕は彼女に聞いてみた。「中に何がいるのか教えてくれよ」
「なんにもいないわ」数秒間僕をじっと見て彼女は答えた。
「青いクレヨンで、おとうさんだしておとうさんだして、って内壁一面に書いてあるだけよ」
面白いと思ったが、僕は結局その部屋は借りなかった。だって僕はステレオタイプが好きなのだ。
>>118>>119 「ずいぶん遅かったじゃないか」
その時不意に背後から声がした。
ぼくはびっくりして振り返ったけれど、そこには誰もいなかった。
しかしそれは背後からではなく、足元から発せられたものだったようだ。
ぼくの足元には、もう何年も洗われていない玄関マットみたいな猫が、大きな口を開けてあくびをし終わったところで、ぼくを一瞥すると音も立てずに絶對城碑の上に飛び乗った。
「ふん。当然図書館の本は全部読んで来たんだろうな?」
猫はけだるそうにそう言うと、ひげの根元あたりをごしごしとこすった。
「と、としょかん?」
「あー。お前もか。まったく」
猫は両耳をひょいと外側に向け、ぐいんと軽く伸びをした。
「最近はろくに本も読まずここに来るヤツが増えてんだ。話が合わなくて困るよ。これからあんたのことはカワムラさんと呼ぼう。どうせ聞いたところでたいした名前もないんだろ」
やれやれ、参ったな。ほんとうに参ったよ。
「ところでカワムラさん。例のものは持ってきたかね?」
「例のもの?」
「捜し物か、そうでなけりゃ何か知りたいことがあって来たんだろ?」
猫はそう言うと、ピンク色の薄い舌で口のまわりをぺろんと舐めた。
「ああ、あの、女の子を捜しているんです。ビニールの赤い帽子をかぶった子なんだけど」
「ミカさんだね?」
ミカというのは確かに彼女の名前だった。どうやら彼女はぼくのように適当な名前をつけられたりはしなかったようだ。
「ミカさんとは実に話が合ったね。特にキルケゴールのことなんかでさ。うん、ミカさんは何でも知っていたよ。ありゃきっと、図書館3つ分くらいの本は読んでるだろうな」
ぼくが知っている限り、彼女が熱心に読んでいるのは2ちゃんねるのオカルト板以外ないのだが。
「最後に話したのはいつだったかな。確かボーキサイトの話をしたんだった。ブラジルのボーキサイトの生産量が世界何位かというような話。おっといけねぇ。しゃべりすぎちまうところだった。早くおくれよ、松寿司の魚をさ。続きはそれからだ」
「There's no such thing as perfect OCCULT.
Just like there's no such thing as perfect HARUKI!」
そういうことだ。
今僕にできることはただひとつ、このスレを保守することだ。
ゆっくりと、確実に、スレを保守するんだ。
135 :
本当にあった怖い名無し:2005/03/25(金) 02:40:03 ID:Qq/Az1K50
ヽ(・ω・)/ ズコー age忘れ
\(.\ ノ
、ハ,,、  ̄
 ̄´´
「どうやら確実にスレを保守することはできなかったようね。」
彼女の言うとおりだった。
僕は上げ忘れていたのだ。
このスレはageておかなければならない。
なぜかなんて分からない。けれどもそうしなければならないような気がするのだ。
さあ語れ。オカルトを語るのだ。
軽やかなステップを踏みながら。
138 :
本当にあった怖い名無し:2005/03/29(火) 10:25:45 ID:totOyyc0O
『あなた…、………てっ…るわよ』
受話器越しの女の声はひどく聞きづらく、知らない声だった。
「失礼ですが、聞き取れないんです。はっきり喋ってください」
僕は頼みながら、ガスコンロの火を止めた。しかし熱されたフライパンのお好み焼きはジュージューと香ばしく鳴き続けた。
『ない…が、(ジュー)ささ……わよ…』(ジュー)
「ちょっと待って、今お好み焼きを焼いているんだ…」
僕は電話の音量を最大にまで機能操作した。
『あなたの耳にナイフが刺さってるわよ!』
今度ははっきりと聞き取れた。
確かに僕の耳には果物ナイフが深々と刺さり、多分脳にまで達している。
しかし、なんだってわかりきったことを知らない女から電話で言われなけれねばならないのだ。
「ああ、そうなんだ。確かに僕の耳にはナイフが刺さってる。知っているなら、もっと大きな声で話してくれたら良いじゃないか!」
僕は声を荒げつつ、電話を逆手に持ち換えればすむことだと気づいた。
無傷なほうの耳に受話器を押し当てると、鮮明にツーツーと電子音がこだました。
お好み焼きは少し焦げてしまったが、仕方がない。
そしてお好み焼きを切るには包丁を使うし、キッチンに果物ナイフが余分にないわけではない。
僕は早めの昼食をとりつつ、電話の女が僕にナイフを刺した僕の妻である可能性について考えた。
139 :
本当にあった怖い名無し:アンゴルモア暦06/04/01(金) 17:03:51 ID:jJR2LKhV0
あげヽ(´ー`)ノ
140 :
本当にあった怖い名無し:2005/04/08(金) 02:51:51 ID:kbJMdBdB0
「僕はもう忘れ去られてるのかもしれない」
そんな気がするんだ、と彼女に言ってみた。
「忘れ去られてなんかいないわ、あなたはもともとその程度なのよ。」
彼女の的確な言葉はしばしば僕を傷つける。
けれど認めよう、ぼくはもともとこの程度だったのだ。
141 :
本当にあった怖い名無し:2005/04/08(金) 03:20:14 ID:9LRHlYQY0
「それで、
>>140のどのあたりがオカルトなんだい?」
>>141 「僕と君とは同じ過ちを犯しているようだね。」
まいったな。そんな想いは言葉にするとこうだ
「やれやれだな…」
まいったな、意味が分からない。
「削除依頼出してこようか?」それはあまりにもあまりにも唐突だった。
ほんとうにやれやれだ。
4月に入ってからこのスレにはオカルトなレスが一つも出ていない。
もしかしたら、ただのネタ切れなのかもしれない。
あるいはみんなお花見で忙しいだけなのかもしれない。
あるいは、これは何かの準備期間なのかもしれない。
まだこれからじゃないか。
「まだこれからじゃないか」と僕は声に出して言ってみた。
そうだ。世の中はオカルトみたいなものじゃないか。
オカルトは決して尽きることはないのだ。
「教えてやるよ」
誰かが僕の耳元で囁いた。なまあたたかい息が、僕の耳に触れた。
「オマエの存在自体、オカルトなんだよ」
冷たい汗が、僕の背骨を伝ってまっすぐに流れ落ちた。
僕の見たビデオは、どうやら「呪いのビデオ」だったらしい。このビデオは僕の誕生日に彼女がくれたやつだ。彼女はとても趣味が良い。
「やれやれ、良い趣味してる。」
僕は吐き捨てる様に言うと、近くにあった金属バットを拾い上げた。今、髪の長い女が僕の部屋のテレビの画面から這い出て来ているところなのだ。まるで安っぽいホラー映画みたいだ。
女は這いずるように僕に近づいてきた。僕は握りしめたバットを女めがけて思い切り振り降ろした。
嫌な音がして女の頭頂部は割れ、血しぶきがが上がった。
僕はもがいている女にとどめの一撃を与えるために、もう一度バットを振りかぶった。
女は最後の力を振り絞る様にゆっくりと顔を上げた。
その顔を見て僕は固まった。
クミコだった。
148 :
本当にあった怖い名無し:2005/04/13(水) 15:57:16 ID:OQDq7zEo0
まげ
151 :
本当にあった怖い名無し:2005/04/16(土) 21:02:00 ID:DDBtV8W+O
あげ
152 :
本当にあった怖い名無し:2005/04/20(水) 11:12:24 ID:Tx60jYXg0
「あげ?」
「そう、あげさ。」
153 :
名無し:2005/04/24(日) 13:27:55 ID:sxKWix++O
完全な闇だ。
完全な闇の中で、あまりにも鋭利に光るウイスキーグラスだけが、脳髄に突き刺さるようにしてそこにあった。
彼のグラスが何か確信的に揺れた。それに合わせて僕のグラスも揺れる。金のウイスキーが波を立てる。
僕達はグラスを重ねた
「何故――」
鼠は鼠としての声を上げた
「何故俺は死んだのにまた酒を飲めるんだろうな」
彼のグラスは少しまた波を立て、僕はそれだけで彼の“弱い”心が動くのを感じる
僕はただベッドの中にいるのだ
目の前にはあの懐しき時代の海が波音を立て
今は夏だった
彼の声はまさにそこでビールを飲むときの彼の声であったし、僕は肌に心地よい日差しの刺激を感じることができた。
僕はまだ僕だけの定住する部屋で、入り口から出口へと通り過ぎる人々を目で追った
穴は深く 暗く 重く 広がる
154 :
名無し:2005/04/24(日) 13:28:48 ID:sxKWix++O
「―君が」僕の実験的に出した声は比較的現実的にその空間に根を下ろすことができた。それで安心して僕は言葉を続けた
「羊を殺したからだよ、決まってるじゃないか」
「‥ああ、まさにそうだろうな」彼は言った。
「でも俺は感謝してるんだぜ。お前がこの場所にまだいてくれたからこうして会えたんだ」
「分かってる」僕は負け惜しみを言うように言った
「僕がこの場所にいるから君に会えた」
彼の喉の鳴る音がした。ウイスキーを飲んだのだ。そのウイスキーグラスはジェイズ・バーのもので、それが僕にはとても嬉しかった
「―なぁ‥本当のことを言えよ、お前は別の所に行きたいんだろ?そうだ、そして絶対にそうすべきなんだよ」「おい―」僕は言葉を遮るように云った。彼は僕の望みを一息で踏み潰してしまう
「季節は変わるよ」
―――「―――」
「早急に。迅速に。だから君はそれに合わせなきゃいけない。分かるだろ?ここはもう消えるんだ。お前のことだから、もう全部分かってるんだろ?俺は最後の最後に会いにきたんだ」
「ひどい」なんだってこう、過去を引きずるなと言いに過去がやってきたりするんだ。
「――ああ―」鼠が言う。
「ひどいな」僕が言う。
「――夏に会いたかったんだよ」
ウイスキーはすごく綺麗だったし、
闇はそれでも昔の海を映しだしていた
それはとてもひどいことだった
殺人的に。人を一人殺すほどに。
155 :
本当にあった怖い名無し:2005/04/25(月) 05:14:43 ID:TXXNTMUa0
あげてみようと思う
「あげるの?」
彼女は可笑しそうに笑いながら僕を見た
「あぁ、あげるよ」
「そう」
彼女の笑いを含んだ声を聞きながら窓を開けた
また、今日が始まる
>>156 「ふむ。」
窓を開けたことによって僕がわかったのは、今日は寒いということくらいだ。
「やれやれ。」
一人で生きるようになってから、僕のアンテナはひどく鈍くなってしまった。ねじまき鳥の声も、今はもう聞こえない。僕は彼女を失ってしまったし―
そこまで考えて、僕はふりむいた。
「ねぇ、さっき君は何か言ったかな。」
僕の声が、空っぽの部屋に消えていった。
僕は3〜4畳の部屋に居る。今日も青い空に白い雲が流れていく。
突然誰かが部屋の外の階段を駆け上がる、もちろん人間だ。しかも出来損ないの人間だ。
ふすまがガラリと乱暴に開かれ顔の全ての穴から水を出している少年が今にも泣きそうな(もう泣いているが)
顔で立っている。
そして、僕にしがみ付いてきた「ウノネェ?アノジュノウォジョモメ、マァチジャルカモブベ」
心配しないで欲しい、彼は正常な人間だ、ただ顔がもう酷い洪水を起こしているのでちゃんと喋れないのだ。
「なるほど、郷田くんと骨皮君が「お前のスレ全然最近レス付いてないでやんのー、やーいやーい」と苛めれた訳だね?」「うん」
良かった、ちゃんと僕の推測は合っていた様だ。
「だからあいつらが震え上がるようなオカルト話してよ〜、お願いだよ〜いつものオカルト出してよ〜」
「んもう、延びた君はショウガナイなぁ」僕は妙に間の抜けた声で無限に続くポケットに手を入れ、オカルトな所からオカルトな話を出す。
159 :
本当にあった怖い名無し:2005/04/29(金) 12:51:57 ID:LZuO/kdyO
「やれやれ」
僕は言った。
いつの間にこんなに下がったのだろう。僕はこのスレが好きだ
「age」
四月後半のあいだ義姉は、すべての時間をテレビの前で過ごした。新築マンションの
片側が崩れ、列車が不自然にねじ曲がり、大勢の救命隊やショベルが一箇所に集中してる風景を
ただ黙ってにらんでいた。
「よれよれ」
僕が記憶してるだけでも、朝の9時から夕方の6時までのあいだ、彼女が呟いたのはその一言だけだった。
七時のニュースが終わり十時のニュースまでの少しの時間、僕達は夕食にありついた。
彼女は、鼻の穴からパスタを吹きだしそうな勢いで、まるで蝉の幼虫がカランと通り過ごした時間を取り戻すみたいに
喋り続けた。
鈍く銀色の腹を空へ向けた車両の窓のひとつから、よれよれの老婆がこちらを覗いてたのを見たらしい。
「ほんとよ、私確かに見たわ」
「やれやれ」
僕は呟いて兄が結婚記念日にととってあったワインの栓をぬいた。
凡庸な僕から見て彼の存在はいささか非日常的であった。また、彼は救いがたい体毛で
覆われている為、他人が彼の容姿をすんなり受け入れるとは思えなかった。フォルクス
ワーゲンのエンジンが、BMWのトランスミッションにすんなり取りつけられないように。
オーケー認めよう。僕は彼のことが嫌いだ。
そもそも彼は自らの年齢を誤魔化してした。彼は年齢を聞かれたとき必ず「永遠の5歳
です。」と言った。彼にとって5歳がなにか特別な記号であるかのように。
彼は日頃から自然派を自負しており、趣味志向はおいしい物を食べ、花が大好きである事
をことさら強調した。また、自己分析をちょっぴりのんびり屋と位置付けていた。
しかし、それら全ては異性からコケティッシュの評価を得る為の準備された脚本であった。
その様に彼が自己を語る時、その巧妙に用意されたコケティッシュ評までのフローチャート
を描く時、僕は、なんだかまるでぐったりした子猫を何匹か積み重ねたみたいに生あたた
かく不安定な気持ちになった。
彼の常に挙動不審な目の動きと独特の慌てた話し方をした。しかし、僕に言わせればそれも
意図的な彼の演出であった。
そして何をするのも僕と彼はペアを組まされた。しかし、肉体的労働はいつも僕が担当した。
組織の上下関係では僕が師匠であり彼が弟子であったにもかかわらずだ。
またそうした役割をすんなりこなしている僕ら見て世間は、仲がいい親友と評価した。
それも僕が彼のことが嫌いに成る要因のひとつだった。
またムックという彼の名前もお中元で貰うヨックモックを思い出させ、僕をいつも落ち着か
ない気分にさせた。
僕はいつも仕事帰りの京浜東北線・大船行の電車の中で何度も自分に言いきかせた。
全ては終った事にして彼の存在を忘れようとした。でも忘れることなんてできなかった。
結局のところ何ひとつ終ってはいなかった。
僕は右手のエネルギーボールをさすりながら、電車のドアの曇りガラスに彼が一番気に
している事を書いた。「着ぐるみ野郎」と。
162 :
本当にあった怖い名無し:2005/05/04(水) 23:23:49 ID:BYXlfZPE0
「これは、オカルトなの?」と俺に尋ねるのは止めてくれ
163 :
本当にあった怖い名無し:2005/05/05(木) 02:46:17 ID:urh3xHguO
「でもこれはオカルトなのよ、そしてこれはあなたがあげるの。」と彼女はうつ向き加減に呟いた。
164 :
本当にあった怖い名無し:2005/05/05(木) 11:32:11 ID:TOfcMfGRO
マクドナルドのハンバーガーを、食べたくなりました(@_@)
165 :
本当にあった怖い名無し:2005/05/07(土) 02:06:40 ID:RUy+QP5yO
ここまで、村上春樹ぽいと思えるレスがなかった件
166 :
本当にあった怖い名無し:2005/05/07(土) 04:53:40 ID:usRp0uNM0
>>165 「あなたには想像力が欠如してるのよ。」
彼女は布団の中で
>>165に手コキをしながらそう言った。
島本さんキター
168 :
本当にあった怖い名無し:2005/05/14(土) 02:11:19 ID:bZly14GD0
(たまには上げるべきなのよ…)
性交の後のまどろみの中、彼女がそうささやいたように見えたが
あるいはそれは僕が見た夢の中での事だったのかもしれない。
169 :
本当にあった怖い名無し:2005/05/15(日) 23:36:40 ID:WjJT2OaLO
「結局、僕達の間にもう語るべき事は何も残されていないんじゃないかな。きっと全ては語り尽くされてしまったんだよ。」
彼は慎重に言葉を選びながらそう言った。
「でも僕は待ってみようと思うんです。誰かが僕のところにやって来て、再びオカルトを語り出すのを。どうしてかはわからないけど、そうしなくちゃいけないような気がするんです。」
僕がそう言うと、彼は半ば諦めたような笑みを口元に浮かべて言った。
「そんな気がするんだね?」
僕は黙って頷いた。
だけど本当はそんな自信なんか少しも無かった。そんなこと信じるなんて狂気の沙汰と言っても
良かった。
でも、僕が期待しなかったら誰が期待する?僕が待たなかったら誰が待つ?
これはいわば使命と言ってよかった。と思う。これは本当に勝ち目の無い賭と言って良かった。
僕だってどんなに”勝ち目”のある目に賭けられたら良かったことか。でも僕の宿命が
それを許さなかった。宿命という言葉は適切じゃないかもしれない。普段僕も
そういう言葉は使わないから。でも、そのときだけは宿命と言いたかった。
171 :
本当にあった怖い名無し:2005/05/16(月) 01:01:45 ID:3jDwJgwe0
オカルト?
やれやれ
わたしの作った歌聴く?
>>132>>133 哲学堂から、緩やかな坂道を新井薬師に向かって歩いていく途中に松寿司は
あった。
ぼくが松寿司の魚を持参していないことを告白すると、猫は憮然とした表情
で「しょうがねぇな、少しなら待ってやってもいいぜ」と言うのだった。
松寿司は商店街と言うよりは住宅街と言った方が良いような場所に佇む、ど
の町にも一軒はありそうな寿司屋だったが、その慎ましさが、かえってぼく
を緊張させた。
そもそもぼくは、初めての店に一人で入るということが得意な方ではない
し、まして突然「哲学堂の飛び猫の・・・」などと話を切り出すことはでき
そうになかった。
ぼくは意を決して引き戸を開け、店員の威勢のいいあいさつを伏し目がちに
やりすごすと、テーブル席について上寿司を注文した。
少しこの寿司屋を観察したいという気持もあったけれど、カウンターで初対
面の大将と会話を交わしながらネタを注文するなどということは、少なくと
も今のぼくには不可能に思われた。
中途半端な時間のせいか、あるいはこれがいつもの光景なのか、店はがらが
らだった。
ぼくの他には、カウンターの右隅にお客が一人いるだけで、あとはカウン
ター内に大将と若旦那とおぼしき二人がいるだけだった。
カウンターの客は薄汚れたコートに身を包み、背を丸め、一心不乱で寿司を
詰め込んでいるように見えた。
ぼくたち四人は、まるで気まずい場所のエレベーターで鉢合わせしてしまっ
たようにお互いがそれぞれ別の場所を見ていた。
ところがしばらくすると、入れ替わり立ち替わり人が訪ねては立ち去っていった。
見ると誰かが訪ねてくるたびに、若大将とおぼしき人が手際よく何かを包ん
で渡しているのだった。
ぼくが不思議そうに見ていることに気付いた彼は
「飛び猫のね。ほら、哲学堂にいるでしょ。あれ、飛び猫だから」と言った。
「飛び猫?」
ぼくはまるで初めて聞いたかのようにそう答えた。
「そう。ほら、以前中野にイワシが大量に降ったってニュースになったこと
あったでしょ?あのイワシがね、まだうちの裏庭に降るんですよ」
「イワシが」
言われてみればたしかにそんなニュースを聞いたことがあった。
「相手は飛び猫だからねぇ、イワシ持ってく人もそれぞれいろんな事情があ
るんだね。もちろんそんなこといちいち聞いたりしないけどさ」
するとさっきまで一心不乱に寿司を詰め込んでいたカウンターの客が、じろりとこちらを見た。
本田さんだった。
オカ板コテハンを村上ストーリーに登場させてみて欲しい〜。
もことか。
春の坂道を熊のようにころがってそう。
176 :
本当にあった怖い名無し:2005/05/31(火) 23:56:25 ID:DUIPoyHSO
鼠 ageてもいいかな?
177 :
本当にあった怖い名無し:2005/06/06(月) 14:21:18 ID:zSzh5ulfO
「…八王子は都内最恐のスポットよ。モチロン行ったことはないけど」
「モチロン」
「そう。モチロンよ」
彼女は勝ち誇ったように言った。
「だって、あそこには――うわなにをするqwせcdfbyんふmじこlp」
僕は、僕以外の者が居なくなった部屋に寝転んだまま、キーボードのq,a,zの
上に指を三本置き、そのまま右に移動させると、高い確率で”ふじこ”が
出現する。―という事象について考えていた。
179 :
本当にあった怖い名無し:2005/06/17(金) 11:32:07 ID:og/Fjadz0
「あげ、よ。」
「あげ?」
「そう、あげ。」
180 :
ふじこでないねー:2005/06/17(金) 11:41:40 ID:KoSKal+j0
亜zsぇdrcftvgyぶhんじmこ、lp。;@・「:
でた!
ぶhんじmこ?
やれやれ
182 :
本当にあった怖い名無し:
「あzwxせdcrftvgybふんじmこ、l。;」
窓の外を眺めると「ふんじmこ、l。」が微笑んでいた。
また始まったか・・
と、僕はつぶやいて窓をあけてやった。