超常現象はエシュロンによって起きる

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56本当にあった怖い名無し
「福祉コスト抑制」手術6万人 スウェーデン不妊法の過去
1997年08月30日 夕刊 1総

 視力が弱く、学校の黒板の文字を読めなかった少女は「知恵遅れ」
とみなされ、不妊手術を強いられた。ある少年は「性的な不品行」を理由に
手術をさせられた。スウェーデンは、世界から称賛される福祉国家への歩み
の陰で、一九七〇年代までに六万人に上る社会的弱者に不妊手術を施してい
た。「社会的コストを抑える」ために選んだ冷徹な政策が、いま、この国に
大きな負い目を背負わせることになった。(ストックホルム=橋本聡)

 マリア・ノディンさん(七二)が病院に連れていかれたのは十七歳の時だっ
た。医師は「お前は知恵遅れだから、赤ん坊の面倒をみられない」と告げ、不
妊手術をした。結婚後、周囲の人たちから「赤ちゃんはまだなの」と聞かれる
たびに、つらい思いをした。

 「目が悪いのに、貧しくて眼鏡を買えなかったから、黒板の字が読めなか
った。それで、知恵遅れとみなされたのよ。大人になってから車の運転免許
も取り、ちゃんと働いてきた私が正常じゃないと思う?」

 昨年、政府に補償金十万クローネ(約百六十万円)の支払いを求める手紙
を送った。しかし、「手術承諾書に署名していた」と、相手にされなかった
。「サインしないと病院から帰さない、といわれたからなのに……」

 スウェーデンが「不妊法」を導入したのは三五年のことだ。今回、告発の
口火を切ったダーゲンス・ニュヘテル紙が入手した公文書によると、はじめ
は精神障害者を対象にしていた。その後、しだいに「混血」や「放浪癖」
「視力障害者」「性的、社会的な逸脱者」などに、網をひろげていった。

57本当にあった怖い名無し:04/12/15 23:47:18 ID:/tuBljpX
「社会福祉国家を建設するために、不健康な人たちや劣った人たちが増え
ないようにしようとの発想だった」と、記事を書いたマチェイ・サレンバ記
者(四六)は話す。

 スウェーデン型福祉の原点は、ノーベル賞を受賞したミュルダール夫妻の
共著「人口問題の危機」(三四年)だといわれる。「夫妻も、この不妊法を
支持していた。当時は、だれもが社会の発展に役立つと信じて疑わなかった


 五〇年代には、年に平均二千人に施術された。六三年には、ニルスと呼ば
れる十六歳の少年が「性的早熟」の診断のもとに、不妊手術を受けたケース
もあった。七六年に法律が廃止されるまで、医療関係者は黙々と“作業”を
続けていた。

58本当にあった怖い名無し:04/12/15 23:48:17 ID:/tuBljpX
不妊法と福祉を取り上げた「優生学と福祉」(九一年)の著者、ルンド大
学のグンナル・ブローベリ歴史学教授は「この法律の目的は、遺伝病が子孫
に及ばないようにすることや、子どもの面倒をみられない家庭への福祉コス
トを抑えることだった」と指摘する。

 法律が廃止されたのも「政府が非を認めたからではない」。避妊薬の開発
などで、不妊手術という手段をとらなくても対応できるようになった。女性
解放運動が進み、個人の権利を尊重する機運が高まった。それが主な理由だ
という。

 教授の著書は出版当時、ほとんど話題にならなかった。それが今回、ニュ
ヘテル紙のキャンペーンが大きな反響を呼んだのは、内外メディアの注目に
加え、ナチスの金塊問題など欧州での「戦中・戦後の問い直し」の機運があ
った。

不妊法はノルウェー、デンマーク、スイスなどでも実施されたことがあり
、「歴史問い直し」の波が改めて広がっている。


59本当にあった怖い名無し:04/12/15 23:49:19 ID:/tuBljpX
スウェーデンで不妊法の対象になった人々のうち、二万人から二万五千人
がまだ、生存しているとみられている。しかし、国に対して補償を求める動
きは鈍い。手術を受けたことが周囲に分かり、「劣っている」と思われるの
を嫌うからだ。

 それでも、これまでに約三十人が名乗り出た。承諾書に本人の署名がない
といった「手続き上の不備」があった十六人に、政府は最高五万クローネ
(約八十万円)を支払った。

 マルゴット・バールストローム保健・社会問題相は二十八日、「過去への
責任」を認め、特別調査委員会をつくって被害者全員への補償方法などを諮
問する、と述べた。なぜ、四十年もの間、歴代政府は不妊法を存続させてい
たのか。記者団の質問攻めにあった三十九歳の女性閣僚は口ごもった。

「私には分からない。私の世代には説明のつかないことです」

 【写真説明】

 マリア・ノディンさんはいま、福祉国家の「暗部」を告発する=ダーゲン
ス・ニュヘテル紙提供